説明

2‐(2‐ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールの紫外線吸収ケトン

【課題】紫外線吸収化合物、その調製法、並びに被覆剤、プラスチック、及び局所適用剤中の保護剤及び安定剤としての使用を提供する。
【解決手段】本化合物は2‐(2‐ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾールの式Iのケトン誘導体である。
【化1】


式中、R1は水素原子又はハロゲン原子、又は1〜4炭素原子の直鎖又は分岐低級アルキル基又は低級アルコキシ基であり;R2は非置換又は置換アリール基、又は1〜18炭素原子を有する非置換又は置換直鎖又は分岐アルキル基、又は5〜6炭素原子を有する脂環式基であり;R3は直鎖又は分岐アルキル基、又はアルキルアリール基、又はアルコキシル基、又はフェニル基、又はアルキル基で置換されたフェニル基、シクロアルキル基、カルボアルコキシ基、塩素、又はアリールアルキル基である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆剤、プラスチック、及び局所適用剤中の保護剤及び安定剤として有用な紫外線吸収剤に関する。特に、本発明は、2‐(2‐ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾールのケトン誘導体である化合物群と、これらの紫外線吸収ケトンを含有する組成物とに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性重合体及び被覆組成物を製造し処理する技術の問題は、紫外線(UV)光源に長期間曝された後のそれらの不安定性である。光、酸素、及び熱が重合体の劣化を引き起こし、重合体の機械的及び物理的特性が劣化することはよく知られている。被覆剤及びプラスチックはUV放射に曝された後、望ましくない色変化及び機械的強度低下を呈しやすい。これらの要因による損傷を防ぐ又は少なくとも遅らせるために、UV光吸収化合物が安定剤としてプラスチックに加えられる。
【0003】
ベンゾトリアゾールは長い間、重要な部類のUV吸収剤で、多くの工業用途でUV安定剤として広く商業的な重要性を有し受け入れられてきた。その製造及び有用性に関する先行技術が豊富である。例を下記に示す。
【0004】
特許文献1は、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールはUV領域の光を非常に強く吸収するが、波長が400nmに近づくとほとんど吸収せず無色で可視域の光には光化学反応しないため、UV光吸収重合体組成物の保護を含む用途にとって望ましい全体吸収特性を有することを示した。
【0005】
特許文献2は、2‐アリール‐2H‐ベンゾトリアゾール光吸収剤の合成に有用なo‐ニトロアゾベンゼン中間体を調製するための高苛性カップリングプロセスを開示する。
【0006】
適切なUV光安定剤を選択する時、様々な考慮項目が存在する。融和性はその1つである。多くの安定剤が安定化対象の重合体又は被覆組成物と融和しないことが分かっている。別の重要な考慮項目は、重合体内とプロセス中とにおける安定剤の揮発性である。安定剤は、プラスチック又は被膜の寿命の間、重合体基質内に留まるよう十分高い分子量を持たなければならない。多くの重合体は安定剤を気化させる非常に高い温度で処理される。
【0007】
重合体融和性を改善し、揮発性を低減するために、適切な側鎖をベンゾトリアゾールのフェノール環又はベンゼン環に結合させてきた。例を下記に示す。
【0008】
特許文献3及び特許文献4は、2‐(2‐ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾールのヒドロキシル基に対してオルト位及び/又はパラ位をクミル基又は置換クミル基で置換した置換体を開示する。
【0009】
特許文献5は、ヒドロキシ基に対してオルト位とパラ位にメチル基とカルボドデシルオキシエチル基を有する2‐(2‐ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾール光安定剤を開示する。これらは、例えばポリアミド及びポリエステル中で使用される。
【0010】
特許文献6は、ヒドロキシル基に対してオルト位とパラ位にtert‐ブチル基を有する2‐(2‐ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾール光安定剤を開示する。これらは、カラー写真の材料中で共安定剤と共に使用される。
【0011】
特許文献7及び特許文献8は、ヒドロキシ基に対してオルト位とパラ位にtert‐ブチル基と‐CH2CH2COOR酸又はエステル基をそれぞれ有する2‐(2‐ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾールUV吸収剤を開示する。これらは、特にラッカーと写真材料の安定化と改善のために使用される。これらの化合物は置換2‐(2‐ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾールの単量体又はエステル結合二量体である。
【0012】
特許文献9及び特許文献10は、3位(ヒドロキシル基に対してオルト位)がαクミル基で、5位(パラ位)が様々なアルキル化部分(置換基、又は大きなtert‐アルキル基で置換された化合物)の混合体で置換された2‐(2‐ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾールの可溶性の結晶形を開示する。
【0013】
特許文献11及び特許文献12は、ベンゼン環の5位が電子求引基で置換された2‐(2‐ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾール単量体及び二量体を開示する。これらの化合物を自動車被覆剤に混合した時、特にフェニル環の3位もフェニル基又はフェニルアルキル基で置換した場合(例えば、5‐トリフルオロメチル‐2(2‐ヒドロキシ‐3‐α‐クミル‐5‐tert‐オクチルフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾール)、改善された耐久性と低損失率を示したと記載されている。
【0014】
特許文献13は、酸触媒の存在下100〜200℃で8〜30炭素原子の直鎖又は分岐アルケンを用いる2‐(2‐ヒドロキシ‐5‐アルキルフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾール又は2‐(2‐ヒドロキシ‐3,5‐ジアルキルフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾールの付随する脱アルキル化、断片化、及び再アルキル化を伴うアルキル化により調製された液体置換2H‐ベンゾトリアゾール混合物を開示する。
【0015】
様々な用途に使用されるUV光感応重合体及び組成物の種類は多様であるので、これらの多様な化学系に最適な1組の特性を提供するであろう側鎖置換基又は修飾基の単一のセットは存在しない。また、多くの場合、修飾基は分子のUV吸収特性をあまり増加させず、修飾基の追加の分子量はUV光安定剤の光吸収特性に貢献しない。従って、モル吸光係数を下げるので、修飾された安定剤のUV吸収特性は実際には下がりうる。
【0016】
UV光保護のレベルと効率を改善する1つの手法は、材料の組合せを使用することであった。例を下記に示す。
【0017】
特許文献14は、PVC、ポリスチレン等の硬い熱可塑性樹脂のためのUV吸収剤と、安定剤としての置換メラミン誘導体との組合せを開示する。
【0018】
特許文献15及び特許文献16は、酸触媒焼き付けラッカーを安定化させるために様々な立体障害アミン光安定剤、例えばN‐置換2、2、6、6‐テトラアルキルピペラジン化合物、それらの酸付加塩又は金属化合物との錯体を、必要によって別の安定剤、特に置換ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールと一緒に使用することを開示する。
【0019】
幾つかの研究が、ベンゾトリアゾールに様々な置換基を導入するか、又は既知のUV発色団(固有吸収を増加させうる)を結合することでUV吸収剤をより効率的及び/又は効果的にしようと試みてきた。例を下記に示す。
【0020】
特許文献17は、ベンゾトリアゾールオルト‐エステル紫外線安定剤と有機組成物中でのその使用を開示する。具体的には、置換2‐(2‐ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾールをアリール酸クロライド、例えば塩化ベンゾイル又は塩化イソフタロイルと反応させてオルトエステルを形成、即ち、フェニル環の2‐ヒドロキシ基をエステル化する。ジ又はトリ官能アリールカルボン酸を使用して2‐(2‐ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾールの多量体エステルを生成する。オルトエステルのUV吸収効率及び他のヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールとの比較に関するデータは開示されていない。
【0021】
特許文献18は、ベンゾトリアゾール安定剤とベンゾフェノン安定剤の揮発性は、これらの異なるUV光吸収化学部分をメチレン橋で結合することで大きく低減しうることを発見した。得られたUV吸収剤は、メチレン基で結合された個別ベンゾトリアゾール部分と個別ベンゾフェノン部分とからなる。分子のUV光吸収特性は報告されていない。
【0022】
耐久性、有効性、及び特定の溶剤の使用への要求がより厳しくなるとともに、なお一層安定で、耐久性があり、効果的で、効率的なUV安定剤の探究が続いている。また、プラスチック及び被覆剤に使用される重合体系は多様であるので、様々な重合体用途に適合しうる一群の紫外線吸収化合物を提供できる多用途プロセス化学も必要とされている。
【0023】
2‐(2‐ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールのフェニル環のヒドロキシ基に対してオルト位をアシル基で置換した一群のケトンを効率的に調製できることが分かった。驚くことにケトン置換基はUV吸収を増加させ、2‐(3’‐アルキル‐2’ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール及び2‐ヒドロキシフェニルナフトトリアゾール内の大きな3’アルキル基に見られるような吸収の減少(例えば特許文献19)はないことが分かった。本発明のUV吸収剤は、2‐(2‐ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールとヒドロキシベンゾフェノンの両方の構造要素を有する。特に、中央のフェニル環に結合したヒドロキシル基とケト基との隣接は「混成」構造を提供する。この混成構造はこれらの基の水素結合を可能にし、これらの化合物のUV吸収特性を増加させ、効率とスペクトル範囲を改善すると考えられる。
【0024】
ケトンが2‐(2‐ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールとベンゼン環とを架橋する幾つかの混成異形では、当該化合物はベンゾトリアゾールとベンゾフェノンとのUV吸収特性を有する。即ち、中央のヒドロキシフェニル基はベンゾトリアゾールとフェノンとの間で共有される。
【0025】
このように、これらの化合物のケトン置換基は融点等の物理的特性に影響するだけでなく、改善されたUV吸収効率、即ち、モル吸光係数と、UV‐A及びUV‐Bスペクトルを亘るより広い有効範囲とを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】米国特許第3004896号明細書
【特許文献2】米国特許第4275004号明細書
【特許文献3】米国特許第4226763号明細書
【特許文献4】米国特許第4278589号明細書
【特許文献5】米国特許第3766205号明細書
【特許文献6】特開昭54−95233号公報
【特許文献7】米国特許第4853471号明細書
【特許文献8】米国特許第5032498号明細書
【特許文献9】米国特許第5554760号明細書
【特許文献10】米国特許第5574166号明細書
【特許文献11】米国特許第5977219号明細書
【特許文献12】米国特許第6166218号明細書
【特許文献13】米国特許第5240975号明細書
【特許文献14】米国特許第3496136号明細書
【特許文献15】米国特許第4413933号明細書
【特許文献16】米国特許第4426471号明細書
【特許文献17】米国特許第3936418号明細書
【特許文献18】米国特許第5362881号明細書
【特許文献19】米国特許第4129521号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は式Iで表わされる紫外線吸収化合物を提供する。
【0028】
【化1】

式中、R1は水素又はハロゲン原子、又は1〜4炭素原子の直鎖又は分岐低級アルキル基又は低級アルコキシ基であり、
2は非置換又は置換アリール基、又は1〜30炭素原子、好ましくは1〜18炭素原子を有する非置換又は置換直鎖又は分岐アルキル基、又は5〜6炭素原子を有する非置換又は置換脂環式基であり、
3は1〜14炭素原子、好ましくは1〜8炭素原子、最も好ましくは1〜5炭素原子の直鎖又は分岐アルキル基、又は7〜12炭素原子のアルキルアリール基、又は1〜4炭素原子のアルコキシ基、又はフェニル基、1〜8炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェニル基、5〜6炭素原子を有するシクロアルキル基、又は2〜9炭素原子を有するカルボアルコキシ基、又は塩素、又は7〜9炭素原子を有するアリールアルキル基である。
【0029】
本発明は、式(I)の紫外線吸収化合物を含有する物質組成物を更に含む。このような組成物の1つの実施形態は、担体と0.01%〜10%の式(I)のUV光吸収ケトンとを含む紫外線(UV)吸収組成物である。これらの組成物は、UV損傷を受け易い基体に塗布された時、保護被膜として働く。
【0030】
別の実施形態では、該物質組成物はUV光による劣化し易い有機材料、例えばプラスチックと重量で0.1%〜10%、好ましくは0.1%〜5%の式(I)のUV光吸収ケトンとの組み合わせを含む。
【0031】
本発明は、プリフォームした2H‐ベンゾトリアゾールを適当なアシル化剤、例えば酸、酸ハロゲン化物(例えば酸塩化物)、又は無水物と反応させてケトンを形成するUV光吸収化合物の調製プロセスも含む。
【0032】
これらの発明の化合物、プロセス、組成物、及び他の変形は本発明の下記の説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の化合物1(2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾール;カーブA)のUV吸収スペクトルを従来のUV吸収剤(2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐クミル‐5‐tert‐オクチル)ベンゾトリアゾール(カーブB)、2‐ヒドロキシ‐5‐メチルベンゾフェノン(カーブC)、及び化合物1の前駆体であるエステル中間体(カーブD)と比較するグラフである。実施例1で説明する。
【図2】化合物1(2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾール;カーブA)のUV吸収スペクトルを化合物4(2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾール;カーブE)と化合物5(2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ノナノイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾール;カーブF)のUV吸収スペクトルと比較するグラフである。実施例4で説明する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
別途指定がなければ、本明細書で使用される%又は重量%は、説明されている組成物又は成分の全重量に対する成分の重量パーセントを指す。
【0035】
実施例と比較例又は別途指定する場合を除いて、本明細書において物質量又は反応条件、物質の物理的特性、及び/又は使用を表す全ての数字は、単語「約」が付いていると理解されるべきである。別途指定がなければ、全ての量は最終組成物の重量に対する値である。
【0036】
本明細書において、列挙したステップ又は選択肢は、必ずしも全てを網羅していない。
【0037】
本発明は、紫外線(以下、UV)吸収化合物、これらの調製、及びこれらの化合物を含有する特定の種類の組成物に関する。UV吸収化合物とこれらの化合物を含有する組成物を、好適な実施形態と選択可能な成分と代替成分とを含め下記に詳細に説明する。
【0038】
UV吸収化合物
本発明のUV吸収化合物は、アシル基が2‐(2‐ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールのヒドロキシル基に隣接(位置は3位)しているケトンである。この化合物は式(I)で表わされる。
【0039】
【化2】

【0040】
1はハロゲン原子、又は1〜4炭素原子の直鎖又は分岐低級アルキル基又は低級アルコキシ基である。
2は置換又は非置換アリール基、又は1〜30炭素原子、好ましくは1〜18炭素原子を有する非置換又は置換直鎖又は分岐アルキル基、又は5〜6炭素原子を有する非置換又は置換脂環式基である。
本発明の目的のため、用語「アリール基」を芳香族炭化水素部分と定義する。
アリール基は好ましくは6〜12炭素原子を含み、例えばフェニル基、ナフチル基、ナフチル基、ビフェニル基、及びフェナントリル基を含んでよい。アリール基は好ましくはフェニル基である。
【0041】
3は1〜14、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜5炭素原子の直鎖又は分岐アルキル基、又は7〜12炭素原子のアルキルアリール基、又は1〜4炭素原子のアルコキシ基、又はフェニル基、1〜8炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェニル基、又は5〜6炭素原子のシクロアルキル基、又は2〜9炭素原子のカルボアルコキシ基、又は塩素、又は7〜9炭素原子のアリールアルキル基である。
【0042】
1は1〜4炭素原子の低級アルキル基、例えばメチル基、エチル基、又はn‐ブチル基であってもよい。R1は塩素等のハロゲン化物、また、R1は1〜4炭素原子の低級アルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、又はn‐ブトキシ基であってもよい。また、R1は2〜9炭素原子のカルボアルコキシ基、例えばカルボメトキシ基、カルボエトキシ基、又はカルボ‐n‐オクトキシ基であってもよい。
好ましくは、R1は水素又はハロゲン化物、又は1〜2炭素原子の低級アルキル基、又はメトキシ基である。
最も好ましくは、R1は水素又は塩素である。
【0043】
2は非置換又は置換フェニル基であってもよい。
2は1〜8炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、又はtert‐ブチル基で置換されたフェニル基であってもよい。
2は1〜4炭素原子を有するアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、又はn‐ブトキシ基で置換されたフェニル基であってもよい。
2は1〜4炭素原子を有するカルボキシアルキル基、例えばカルボキシメチル基、カルボキシエチル基、又はカルボキシブチル基で置換されたフェニル基であってもよい。
2は2〜9炭素原子のカルボアルコキシ基、例えばカルボメトキシ基、カルボエトキシ基、カルボ‐n‐ブトキシ基、又はカルボ‐n‐オクトキシ基で置換されたフェニル基であってもよい。
2はカルボキシル基で置換されたフェニル基であってもよい。
2は2〜30、好ましくは1〜18、好ましくは2〜8炭素原子、好ましくは2〜5炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基であってもよい。
【0044】
2は1〜30炭素原子、好ましくは1〜18炭素原子、好ましくは1〜8炭素原子、好ましくは1〜5炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基であって、1〜8炭素原子を有するアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、又はtert‐ブトキシ基で置換された、又はカルボキシル基又はフェニル基で置換されたアルキル基であってもよい。
2は例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、tert‐ブチル基、アミル基、tert‐オクチル基、2‐エチルヘキシル基、クミル基、又はカルボキシル基であってもよい。
2はシクロヘキシル基などの5〜6炭素原子を有する脂環式基、又は1〜8炭素原子を有するアルキル基又はアルコキシル基で置換された脂環式基であってもよい。
好ましくは、R2はフェニル基又は1〜5炭素原子を有するアルキル基、又はシクロヘキシル基である。
2は1〜9炭素原子を有する非置換直鎖又は分岐アルキル基;1〜8炭素原子を有するアルコキシル基又はカルボキシル基で置換された1〜9炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基;又はシクロヘキシル基、1〜4炭素原子を有するアルキル基で置換されたシクロヘキシル基、又は1〜4炭素原子を有するアルコキシル基で置換されたシクロヘキシル基であってもよい。
【0045】
3は1〜12、好ましくは1〜6、最も好ましくは1〜5炭素原子のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、sec‐ブチル基、tert‐ブチル基、又はアミル基であってもよい。
また、R3は1〜5炭素原子を有するアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、又はn‐ブトキシ基であってもよい。また、R3はメチル基、tert‐ブチル基、tert‐アミル基などの1〜5炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェニル基であってもよい。また、R3は5〜6炭素原子のシクロアルキル基、例えばシクロペンチル基又はシクロへキシル基であってもよい。また、R3は2〜5炭素原子のカルボアルコキシ基、例えばカルボメトキシ基、カルボエトキシ基、カルボ‐n‐ブトキシ基であってもよい。また、R3は7〜9炭素原子のアリールアルキル基、例えばベンジル基、α‐メチルベンジル基、又はα,α‐ジメチルベンジル基であってもよい。
3は1〜5炭素原子の直鎖又は分岐アルキル基、又は約7〜約12炭素原子を有するアルキルアリール基、又は1〜4炭素原子のアルコキシ基、又はフェニル基、又は1〜8炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェニル基、又は5〜6炭素原子のシクロアルキル基、又は2〜9炭素原子のカルボアルコキシ基、又は塩素、又は7〜12炭素原子のアリールアルキル基であってもよい。
好ましくは、R3は1〜5炭素原子のアルキル基、シクロへキシル基、フェニル基、α‐メチルベンジル基、α,α‐ジメチルベンジル基(即ち、クミル基)、又はアミル基である。
好ましくは、R3はメチル基、tert‐ブチル基、tert‐アミル基、sec‐ブチル基、シクロへキシル基、カルボキシエチル基、α‐メチルベンジル基、又はα,α‐ジメチルベンジル基である。
【0046】
本発明の範囲に入る具体的な化合物の命名に使用される規約は、これらを2‐(2‐ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールの誘導体であって、ケトン基がフェニル環の3位に位置する置換基の成分である誘導体として取り扱うことである。
【0047】
本発明の化合物の1つの実施形態は、式Vで表わされる構造を有している。
【0048】
【化3】

式中、R1及びR3は上述した意味を有し、R4は水素、又は1〜8炭素原子、好ましくは1〜6炭素原子、より好ましくは1〜4炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、又は1〜4炭素原子を有するアルコキシ基、又は2〜9炭素原子を有するカルボキシアルキル基、又は2〜9炭素原子のカルボアルコキシ基、又はカルボキシル基である。
【0049】
式Vで表わされる化合物はベンゾトリアゾールとベンゾフェノンと(両方とも強いUV発色団である)の混成構造体である。これらの化合物のUVスペクトルは、両方の成分のスペクトル特性により280〜約350nmの広い吸収を提供する。特許文献18に開示されたメチレン結合ベンゾフェノン‐ベンゾトリアゾール化合物と比較して、本発明の式Iで表わされる混成構造体は、トリアゾール基とベンゾイル基とに共有されるヒドロキシフェニル基を1つだけ有する。
【0050】
中央フェノールの共有により、式Vで表わされる分子は、従来のベンゾトリアゾール(図1、カーブB)よりかなり高い質量UV吸光係数と、UVAとUVBスペクトル(図1、カーブA)に亘るより広い吸収とを有する。この特有の分子特徴は、本発明の混成変異体(即ち、式Vの化合物)をかなり効率的なUV吸収剤にする。
【0051】
式Vの好適な変異体はR1=HまたはClを有する。R4は水素又は1〜4炭素原子を有する低級アルキル基又は低級アルコキシル基であり、R3はメチル基、エチル基、tert‐ブチル基、アミル基、又はクミル基である。
【0052】
下記は、R2はアリール基、又は式Vの範囲内の置換アリール基である式Iの化合物の代表例である:2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐イソプロピル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐クミル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3’‐イソプロピルベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐アミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3’‐メトキシ‐ベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3’‐メチルベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3’‐メトキシ‐ベンゾイル)‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾール。
【0053】
2は1〜30炭素原子、好ましくは1〜18炭素原子を有する非置換又は置換直鎖又は分岐アルキル基、又は5〜6炭素原子を有する脂環式基である場合、該化合物は混成「フェノン」構造要素(フェニル環のヒドロキシル基に隣接するケト基)を保持し、改善されたUV吸収特性を提供する。
【0054】
下記は、R2は1〜18炭素原子を有する非置換又は置換直鎖又は分岐アルキル基、又は5〜6炭素原子を有する脂環式基である式Iのこのような混成化合物の代表例である:2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(1’‐カルボキシプロパノイル)‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(1’‐カルボキシ‐1‐メチル‐プロペノイル)‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐シクロヘキサノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(1’‐カルボキシプロパノイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(1’‐カルボキシプロペノイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐シクロヘキサノイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(1’‐カルボキシプロパノイル)‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐シクロヘキサノイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(1’‐カルボキシプロパノイル)‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ノナノイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾール。
【0055】
合成
本発明は強酸又はルイス酸又はアシリウムイオン塩の存在下で2‐ベンゾトリアゾリル‐4‐置換フェノールを酸ハロゲン化物、酸、無水物等のアシル化剤と反応させることで式Iのベンゾトリアゾールケトンを調製するプロセスを更に提供する。
【0056】
適切な酸ハロゲン化物は酸塩化物である。適切な酸塩化物群は、例えば非置換又は置換塩化ベンゾイル、非置換又は置換塩化アルカノイル、塩化シクロヘキサノイル、置換塩化シクロヘキサノイル、及びこれらの混合物を含んでもよい。
【0057】
適切な無水物群は、例えば無水酢酸を含んでもよい。無水安息香酸及び無水コハク酸もある条件の下で適切である場合がある。
【0058】
塩化アルカノイルのアルキル基は約7〜8より多い炭素原子を含み、分岐している場合、鎖がより小さな断片に分解するか又は異性化する可能性がある。置換基の統計的な混合物を生成できるこのプロセスは、異なるR2置換基(即ち、異なる鎖長さ又は異性体構造)を有する化合物の混合物を生成する。このような混合物でもなお有用なUV吸収剤であり、低融点又は低結晶性、例えば液体状態(下記参照)等の有用な特性を有している可能性がある。このような混合物はUV光安定剤として有用である限り本発明の範囲内である。
【0059】
本プロセスを、2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾール(式V)を生成する2‐ベンゾトリアゾリル‐4‐メチルフェノール(式VI)と塩化ベンゾイルとの反応を用いて下記に例示する。塩化アルキル酸を使用してケトンを調製する方法を実施例4に例示する。
【0060】
プロセス条件と中間体はもちろん所望のUV吸収変異体に依存する。本発明の他の化合物は類似の方法で調製できる。例えば、適切に置換された2‐ベンゾトリアゾリル‐4‐ヒドロカルビルフェノールと、適切に置換された酸塩化物又は適切な条件下で他のアシル化剤とを使用して上記で開示したUV吸収化合物を生成することができる。
【0061】
この場合の全体反応を下記のように表すことができる。
【0062】
【化4】

【0063】
特許文献17に開示されたベンゾトリアゾールのオルトエステルの合成(50〜60℃で15時間単一ステップで実行される)と比較して、このプロセスは2ステップ(うち1つ又は両方がより高い温度で実行される)で実行され、驚くほど優れたUV吸収特性(下記参照)を有する非常に異なる構造体が生成される。
【0064】
第1ステップは非プロトン溶媒、例えば塩化メチレン、トルエン、ベンゼン、キシレン、炭化水素、例えばヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、及び石油スピリット、脂環式エーテル、例えばフラン、テトラヒドロフラン、ジオキサン内で実行できる。
【0065】
ベンゾトリアゾール、酸塩化物、例えば塩化ベンゾイル、酸触媒(例えばAlCl3)、及び選択可能な溶媒を組み合わせ、還流条件下で大気圧で加熱する。ベンゾトリアゾールと酸塩化物との比は約3:1〜約1:3、好ましくは約3:1〜約1:1.5の範囲である。
【0066】
ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール反応物を当分野で既知の任意の方法(米国特許第5097041号、第4943637号、第5104992号に開示された方法を含む)で調製してよい。2‐アリール‐2H‐ベンゾトリアゾール単量体はo‐ニトロアゾベンゼンを還元し2‐フェニルベンゾトリアゾール‐N‐オキシド中間体を経ることで生成されてもよい。様々な還元方法が知られている。o‐ニトロアゾベンゼンの2‐フェニルベンゾトリアゾールへの水酸化ナトリウムの存在下で亜鉛による還元は米国特許第3018269号、第3230194号、第3773751号、第4041044号、第4224451号に開示されている。アルデヒド還元剤と芳香族ケトン触媒とを使用する還元が米国特許第4835284号に開示されている。サッカリドと芳香族ケトン触媒とを使用する還元が米国特許第4780541号に開示されている。これら全ての特許を本明細書に援用する。これらはアゾ染料をサッカリドで芳香族ケトン触媒存在下で還元的環化することによりヒドロキシフェニルベンゾトリアゾールを調製する方法を示す。この触媒は還元剤から水素を受け取り還元される物質に与える働きをする。いずれの場合でも、サッカリド還元は芳香族ケトン触媒、例えば置換又は非置換フルオレノンによって触媒される。
【0067】
第2ステップでは、溶媒を蒸留により除去し、温度を上げる(例えば、160℃)。このステップはステップ1で形成された任意のエステルのフリース転位を開始させ、パラ位はH以外の置換基でなければならないR3でブロックされておりパラ位の置換は望ましくないのでアシル基(例えば、ベンゾイル基)をヒドロキシ基に対してオルト位へ移動させることで、所望のケトンを形成すると考えられる。
【0068】
なお、高い沸点を有する非芳香族有機溶媒もステップ1及び2の溶媒として適切である。このような溶媒を本発明の化合物の調製に使用する場合、フリース転位を開始する前に溶媒を除去する必要はない。このような溶媒はこれらに限定されないが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルを含む。
【0069】
次に、ステップ2で形成された反応混合物の温度を約90℃未満に下げ、十分な水を泡立つのが止むまで加える。
【0070】
オプションとして、上記反応で形成された生成物(式V)を連続抽出により精製することができる。この連続抽出では生成混合物中に存在するエステルを加水分解し、加水分解により水溶性変異体に変換し、水相へ抽出する。先ず、含水HClを有機相に加え、混合物を還流条件下で攪拌する。次にこの混合物を冷却し、水層を排出する。次に含水NaOHを有機相に加え、混合物を再び還流条件下で攪拌し、冷却し、水相を再び排出する。次に含水HClを該有機相に加え、混合物を再び還流させ攪拌し、冷却し、水相を再び排出する。最後に、残った有機相を数回洗浄して目的のケトンを得る。
【0071】
4つの方法が生成物と純度とを特定するために使用される。i)UVスペクトルが2‐(2‐ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールの特徴的な2つの吸収ピーク、約310と345nmと、ヒドロキシベンゾフェノンの300nmと約250nmの間の重要なスペクトル特徴との両方を含むことを確認するためのUV分光法、ii)ベンゾイル変異体の場合、ヒドロキシ基と2種類のフェニルプロトンとの存在を確認するためのプロトンNMR同定、iii)反応物又はエステル中間体と比較してより長い保持時間を有するケトンと整合する単一GCピークを示すガスクロマトグラフィー、iv)第1ステップ後で高温処理(第2ステップ)の前に、ベンゾトリアゾール部分又はベンゾフェノン部分に特有の2モードのUV吸収スペクトルを示さないエステル中間体(化合物1の前駆体)を分離すること。これらの方法の結果を下記実施例1に例示する。
【0072】
ある用途では、R1、R2、R3置換基のうち1つ以上が異なる式IのUV吸収化合物の混合物を使用することが望ましい。例えば、R2がアルキル基である場合、異なるR2アルキル鎖長さ、異性体、又は分岐度を有する異なるUV化合物の混合物を使用することで、有機溶媒又は溶融重合体から結晶化し易いUV吸収化合物の傾向を低減することが出来る。このような混合物は、特に重合体膜又はプラスチックにおいて改善された融和性(例えば、溶解度)を示しうる。
【0073】
1、R2、R3置換基のうち1つ以上が異なるUV吸収化合物の混合物を得るために、この混合物の異なる成分を勿論別々に合成することが出来る。しかし、幾つかのケースでは、複数のベンゾトリアゾールフェノールと酸塩化物反応物との混合物を使用することでそのまま混合物を形成するのが便利である。有利な溶解度、吸収、又は他の物理的又は化学的特性を有するUV吸収化合物の混合物を形成する上記の合成におけるこのような混合反応物の使用は、本発明の範囲内であると考えられる。
【0074】
なお、特許文献13に開示されたアルキル化プロセスと対比して、元になるベンゾトリアゾールは2‐(2‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾールを含んでよい。しかし、より多くの炭素原子を有するアルキル基も使用することが出来る。
【0075】
用途
式Iの化合物は紫外線放射に曝されることによる損傷から材料を保護するのに広く有用である。本発明に係る化合物をUV光線から保護されるべき材料、例えばプラスチックに直接含ませるか、又は保護被膜、ホイル、及びカバーに含ませることが出来る。保護される材料又は保護被膜は、この活性なUV吸収成分を例えば0.001%〜15%、好ましくは0.1%〜10%、好ましくは0.01%〜5%含有してよい。人の皮膚用の非光化学反応剤において、活性剤の含有量は調剤の不揮発性成分に対して0.1%〜10%であるのが有利である。
【0076】
本発明の1つの実施形態は、0.1〜5重量%の本発明の1つ以上の紫外線吸収化合物で安定化させた、光による劣化し易い有機材料を含む物質組成物である。本発明のUV吸収化合物は、合成重合体である有機材料、例えばポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、及び他の様々な重合体及び混合物(詳細に後述する)を保護するのに特に適している。しかし、有機材料はセルロース系重合体(例えば、木材)などの天然重合体であってもよい。材料の種類をより詳細に後述する。
【0077】
本発明のUV吸収化合物は、物質組成物が熱可塑性又は熱硬化性重合体である場合、特に適している。このような組成物は高温で高いせん断応力下で通常形成される。本発明のUV吸収化合物は熱的に安定で不揮発性であるので、組成物のプロセス中に失われることがない。
【0078】
上記組成物における使用に適切な紫外線吸収化合物は、これらに限定されないが2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐イソプロピル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐クミル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3‐イソプロピルベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐アミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3’‐メトキシ‐ベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3’‐メチルベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3’‐メトキシ‐ベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐シクロヘキサノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐シクロヘキサノイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ノナノイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾールを含む。
【0079】
本発明の別の実施形態は、担体と、該担体内に均一に分散された重量で0.01%〜10%、好ましくは0.1%〜5%の式Iの紫外線吸収化合物とを含む紫外線吸収組成物である。
【0080】
本明細書で使用される用語「担体」は、UV光曝露による損傷を受け易い基体上の保護被膜、ホイル、膜、又はカバーを構成する任意の適切な材料、又は材料の組合せを広く含む。該担体はUV損傷に耐性がある必要はなく、たいてい自身は耐性がない。従って、本発明の化合物を、UV保護を越えた有益な目的のための被膜、膜、ホイル、又はカバーの完全性と特性を保護するために使用してもよい。
【0081】
適切な担体群は1つ以上の重合体、好ましくは膜形成重合体、例えばポリエステル、ポリエステル樹脂、ポリアミド、ビニル重合体、セルロースエーテル、セルロースエステル、ポリウレタン、ポリ炭化水素、アクリル重合体、ラテックス重合体、アルキド樹脂、ゼラチン等のポリペプチド、及びこれらの混合物を含む。
【0082】
或いは、紫外線吸収組成物は生物組織をUV放射から保護するために使用できる。この場合、担体は化粧品として許容できる、即ち、生物組織、一般的には人組織への局所適用に安全な材料、例えば化粧品として許容できる軟膏、クリーム、ローション、ゲル、スプレーなどである。このような担体は油及びワックス、例えば炭化水素油及びワックス、例えば鉱油、植物油及びワックス、例えばトリグリセリド、エステル油、シリコーン油、ワックス、例えば揮発性シリコーン及びポリジメンチルシロキサン、フルオロカーボン油、水(通常、相溶化剤を含有する)、及びこれらの混合物を含む。
【0083】
本発明の化合物は、UV放射による損傷を受け易い広範囲の有機重合体との組み合わせにおいて効果的な安定剤である。安定化されうる重合体及び混合物は下記を含む。
【0084】
モノ‐又はジオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリメチルブテン‐1、ポリメチルペンテン‐1、ポリイソプレン、ポリブタジエン、これらの共重合体;ポリスチレン及びスチレンの共重合体、例えばスチレン/ブタジエン、スチレン/アクリロニトリル、スチレン/アクリロニトリル/メタクリル酸塩、アクリル酸エステルで修飾したスチレン/アクリロニトリル共重合体;スチレンのグラフト共重合体、例えばスチレンとポリブタジエン及びアクリロニトリル/ポリブタジエン/スチレン又はABSプラスチックとのグラフト重合体;ハロゲン含有ビニル重合体及び共重合体、例えば塩化ポリビニル、塩化ポリビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体;アクリル重合体、例えばポリアクリル酸塩及びポリメタクリル酸塩、ポリアクリリックアミド及びポリアクリロニトリル;アクリル酸の共重合体及び1つ以上のその誘導体、及びメラミンホルムアルデヒド樹脂;ビニル及びアリル含有重合体及び共重合体、例えばポリビニルアルコール、酢酸ポリビニル、ステアリン酸ポリビニル、安息香酸ポリビニル、マレイン酸ポリビニル、ポリビニルブチラール、フタル酸ポリアリル、ポリアリルメラミン、エチレン/酢酸ビニル;エポキシドから誘導されたホモ重合体及び共重合体、例えば酸化ポリエチレン、又はビス‐グリシジルエーテルから誘導された重合体;ポリアセタール、例えばポリオキシメチレン、酸化エチレンを含有するポリオキシメチレン;酸化ポリアルキレン、例えばポリオキシエチレン、酸化ポリプロピレン又は酸化ポリイソブチレン;酸化ポリフェニレン;ポリウレタン及びポリ尿素、例えばウレタン被膜に含まれる;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリアミド及びコポリアミド、例えばポリアミド6、ポリアミド6/6、ポリアミド6/10、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリ‐m‐フェニレン‐イソフタルアミド;ポリエステル、例えばポリエチレングリコールテレフタラート、ポリ‐1,4‐ジメチロール‐シクロヘキサンテレフタラート、架橋重合体、例えばフェノール/ホルムアルデヒド、尿素/ホルムアルデヒド及びメラミン/ホルムアルデヒド樹脂;アルキド樹脂、例えばグリセロール/フタル酸樹脂、及びこれとメラミン/ホルムアルデヒド樹脂との混合物;飽和及び不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとのコポリエステル及び架橋剤としてビニル化合物から誘導された不飽和ポリエステル樹脂、及びそのハロゲン含有耐炎性修飾体;天然重合体、例えばセルロース、ゴム、及び化学的に修飾されたそれらの同族の誘導体、例えば酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、セルロースエーテル、例えばメチルセルロース。
【0085】
本発明の化合物は、光による劣化し易い多数の有機基体のための非常に効果的な安定剤であり、高温時、安定化された組成物からの損失に耐性があると期待される。
【0086】
従って、本発明の化合物は、下記の重合体の保護のための安定剤として特に有用である:ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(ブチレンテレフタラート)、又はそれらの共重合体;ポリカーボネート、例えばビスフェノールA及びホスゲンから誘導されたポリカーボネート、又はそれらの共重合体;ポリスルホン;ポリアミド、例えばNYLON‐6、NYLON‐6,6、NYLON‐6,10など、及びコポリアミド;熱硬化性アクリル樹脂;熱可塑性アクリル樹脂;ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、コポリオレフィンなど;及び高温処理製造を必要とする任意の重合体系。
【0087】
一般に、本発明のUV安定剤は、安定化される組成物の約0.1〜約5重量%の濃度で使用されるが、濃度は基体と用途によって変わり、より高い濃度も使用できる。有利な範囲は約0.5〜約3%である。
【0088】
式IのUV吸収化合物(「光安定剤」又は単に「安定剤」とも称す)は、成形品又は被覆剤を製造する前の適切な段階で容易に従来の手法で有機重合体に混合することが出来る。例えば、この安定剤を乾燥粉末状の重合体と混合してもよいし、安定剤の懸濁液又は乳濁液を重合体の溶液、懸濁液、又は乳濁液と混合してもよい。
【0089】
製造された重合体組成物、例えばプラスチック部品又は物は、押出し成形機で重合体を軟化点まで加熱しUV吸収化合物と他の添加物を溶融物に加えてほぼ均一な物理的混合物を形成することで、形成される。
【0090】
UV損傷を受け易い熱可塑性重合体材料と本発明の化合物を所望の量だけ混合し、重合体の軟化点を超える温度まで加熱することが出来る。押出し成形機での加熱と結合される化合物の混合とは当分野で既知の方法で実行される。加熱と混合とはどちらの順で実行されてもよいが、好適な実施形態では、これらの処理は同時に行われる。混合はバンバリーミキサー、単軸又は2軸押出機、リボンブレンダー、射出成形機、2ロール粉砕器などを含む任意の適切な装置で実行されて、重合体材料と結合される化合物とのほぼ均一な混合物が形成される。混合ステップは通常約38℃〜約350℃の範囲の温度で約0.1分〜約20分間、好ましくは約0.1分〜約10分間実行される。
【0091】
本発明のUV吸収材料は熱硬化性アクリル樹脂と熱可塑性アクリル樹脂と、自動車の仕上げ及び類似の被覆用途に使用される熱架橋性アクリル、アルキド、又はポリエステル樹脂を安定化するのに有用である。これらの物質は“Encyclopedia of Polymer Science and Technology”, Interscience Publishers, New York, Volume 1 (1964), pp. 273 to 276とVolume 13 (1970), pp. 530 to 532、及びW. R. Fuller, “Understanding Paint”, American Paint Journal, St. Louis, 1965, pp. 124 to 135に記載されている。
【0092】
本発明に従って、光、酸素、及び水分に対して安定化することが出来るアクリル、アルキド、又はポリエステル樹脂及び樹脂ラッカーは、従来の焼き付けラッカーであり、例えば、H. Kittel’s “Lehrbuch der Lacke und Beschichtungen” (“Textbook of Lacquers and Coatings”), Volume 1, Part 2, pp. 735 and 742 (Berlin, 1972)、及びH. Wagner, H. F. Sarx, “Lackkunstharze” (“Synthetic Resins for Lacquers”), pp. 229 to 235に記載されている。
【0093】
本発明に係る化合物による熱架橋可能なアクリル樹脂系金属効果ラッカーの安定化は別の関連する用途である。これらの樹脂から調製された安定化されていない金属効果ラッカーは、その優れた物理的及び化学的特性にもかかわらず、UV光が上面被膜を妨げられることなく通過でき下の被膜にクラックを生じるので不適切である。熱架橋可能でアクリル樹脂系、メラミン樹脂系、アルキド樹脂系、ポリエステル樹脂系、エポキシ樹脂系、又はこれらの混合樹脂系の他のラッカー及び被覆剤も本発明に係る化合物により効果的に安定化できる。
【0094】
金属効果を達成するために、従来のアルミニウム顔料を無溶媒接合剤(ラッカー樹脂)に対して1〜10重量%の濃度で使用する。安定化されたラッカーを従来の1被膜又は2被膜プロセスにより塗布することが出来る。後者の場合、顔料を含有する最初のラッカーを先ず塗布し、次に透明なラッカーで被覆する。このラッカーは0.5〜5%の本発明のUV吸収化合物を含有するのが好ましい。
【0095】
ラッカー中に存在する可能性のある追加の添加剤は、他の従来の光安定剤、フェノール酸化防止剤、顔料、染料、金属非活性化剤などである。
【0096】
UV吸収化合物は焼き付けラッカー、特に熱架橋可能なアクリル樹脂、アルキド樹脂、又はポリエステル樹脂(必要であればメラミン/ホルムアルデヒド樹脂、エポキシド樹脂、又はポリイソシアネートと光の作用に抗して架橋結合しうる)に基づく2層単一ラッカー被膜を安定化するのに有用である。ラッカーは通常従来の2被膜プロセスにより塗布される。例えば、商業上入手可能な充填剤が20〜30μの層厚みで予め焼成されたコイル被覆金属板上に、顔料を含有する下塗りラッカーを20〜30μ厚の層となるよう吹き付け、約5分間空気乾燥させた後、未だ濡れたままで上塗りラッカーを35〜40μ厚の層となるよう塗布する。約15分間更に空気乾燥させた後、ラッカーを架橋剤の性質に依り80℃〜150℃で約30分間ベークする。
【0097】
本発明に係るUV吸収化合物と安定化のために使用する任意の追加の添加剤とは、顔料を含まない上塗りラッカーにだけ混合されるか、又は顔料を含まない上塗りラッカーと顔料を含む下塗りラッカーの両方に混合されるかが可能である。好ましくは、光安定剤は、アクリル/メラミン樹脂系上塗りラッカー等の顔料を含まない上塗りラッカーに混合される。
【0098】
本発明は写真材料の形態又は写真材料の一部をなす安定化された有機材料にも関する。この写真材料は、上層に安定剤を除く写真材料に対して好ましくは0.1〜5重量%の本発明のUV吸収化合物を含む。
【0099】
本発明の化合物を光安定機能を提供するために上記のように使用するが、安定化される組成物の調製において本発明の化合物はしばしば他の安定剤と(他の光安定剤とさえ)組み合わされる。本安定剤はフェノール酸化防止剤、顔料、着色剤又は染料、光安定剤、例えばヒンダードアミン、金属非活性化剤などと一緒に使用されてもよい。
【0100】
省略可能な成分として、典型的には約0.1〜約10重量%、好ましくは、約0.5〜約5重量%の濃度で混合される適切な材料の例は、下記の添加剤を含む。
【0101】
酸化防止剤、例えば様々なフェノール、ヒドロキノンの誘導体、水酸化チオジフェニルエーテル;アルキリデン‐ビスフェノール;O‐,N‐及びS‐ベンジル化合物;ヒドロキシベンジル化マロネート;ヒドロキシベンジル芳香族化合物;s‐トリアジン化合物;β‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオン酸のアミド;β‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル)‐プロピオン酸のエステルと一価又は多価アルコール;β‐(5‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシ‐3‐メチルフェニルプロピオン酸のエステルと一価又は多価アルコール、例えばメタノール、エタノール、オクタデカノール、1,6‐ヘキサンジオール、1,9‐ノナンジオール、エチレングリコール、1,2‐プロパンジオール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリスリトール、3‐チア‐ウンデカノール、3‐チア‐ペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、イソシアヌル酸トリヒドロキシエチル、及び4‐ヒドロキシメチル‐1‐ホスファ‐2,6,7‐トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタン;3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシフェニル酢酸のエステルと一価又は多価アルコール;ベンジルホスホン酸塩、及びこれらの適切な混合物。
【0102】
光安定剤、例えば随意に置換された安息香酸のエステル;立体障害のアミン又はアミノエーテル、例えば米国特許第4547537号に記載されたもの(この特許を本明細書に援用する);ビス(1‐オクチルオキシ‐2,2,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)セバケート、4‐ベンゾイル‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン、4‐ステアリルオキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン、ビス‐(2,2,6,6‐テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス‐(1,2,2,6,6‐ペンタメチルピペリジル)2‐n‐ブチル‐2‐(2‐ヒドロキシ‐3,5‐ジ‐tert‐ブチルベンジル)マロネート、又は3‐n‐オクチル‐7,7,9,9‐トリメチル‐1,3,8‐トリアザスピロ[4.5]デカン‐2,4‐ジオン;シュウ酸ジアミド;金属非活性化剤、例えばオキサニリド、イソフタル酸ジヒドラジド;塩基性共安定剤;核生成剤、例えば4‐tert‐ブチルベンゾアート、アジピン酸、又はジフェニル酢酸;亜リン酸塩及び亜ホスホン酸塩、及びこれらの適切な混合物。
【0103】
他の適切な立体障害のアミンの例は、独国特許出願公開第2500134号、米国特許第4110304号、又はR. GachterとH. Muller, “Taschenbuch der Kunststoff-Additive” (“Pocketbook of Plastics Additives”), Hanser Verlag, Munich, 1979に記載されたアミン、ビス‐(1,2,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジル)セバケートまたはビス‐(1,2,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジル)2‐n‐ブチル‐2‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)マロネートである。
【0104】
有用な立体障害のアミンは米国特許第4314933号に記載された2,2,6,6‐テトラアルキルピペリジン系アミンである。この特許を本明細書に援用する。
【0105】
別の種類の適切な光安定剤は米国特許第5112890号に記載された所謂N‐OR1‐置換ヒンダードアミンである。この特許を本明細書に援用する。これらのヒンダードエーテルアミン安定剤の例は下記を含む:(1‐アセトキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐4‐イル)‐4‐ヒドロキシ‐3,5‐ジ‐tert‐ブチルベンゾアート;ジ‐(12‐アセトキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐4‐イル)セバケート;2‐(4‐ヒドロキシ‐3,5‐ジ‐tert‐ブチルベンジル)‐2‐(1‐アセトキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペルジン‐4‐イル)n‐ブチルマロネート;ジ‐(1‐シクロヘキシルオキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペルジン‐4‐イル)セバケート;ジ‐(1‐ヘプチルオキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペルジン‐4‐イル)セバケート;ジ‐(1‐メトキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペルジン‐4‐イル)セバケート;ジ‐(1‐ノニルオキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペルジン‐4‐イル)セバケート;ジ‐[1‐(α‐メチルベンジルオキシ)‐2,2,6,6‐テトラメチルピペルジン‐4‐イル)セバケート;ジ‐(1‐ベンゾイルオキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペルジン‐4‐イル)セバケート;ジ‐(1‐ベンジルオキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペルジン‐4‐イル)セバケート;ジ‐[1‐(α‐メチルベンジルオキシ)‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐4‐イル)テレフタラート;ジ‐(1‐n‐ブチルカルバモイルオキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐4‐イル)n‐ブチルマロネート;ジ‐(1‐エトキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペルジン‐4‐イル)セバケート;及びジ‐(1‐オクチルオキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペルジン‐4‐イル)セバケート。
【0106】
安定化される組成物に混合できる他の添加剤は、硫黄共力剤、例えばチオジプロピオン酸ジラウリル、潤滑剤、例えばステアリルアルコール、充填剤、補強剤、石綿、カオリン、タルク、ガラス繊維、顔料、光学的光沢剤、耐炎剤、静電気防止剤、発泡剤、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、硫酸バリウム、金属酸化物、水酸化物、カーボンブラック、及び黒鉛である。
【0107】
立体障害アミン光安定剤は、本発明のUV吸収化合物と組み合わせて特に有用であり、被膜の特に光、水、及び湿気に対する追加の保護を提供する。立体障害アミンと本発明に係る安定剤との組合せは、自動車上塗りラッカー、酸触媒熱硬化樹脂被膜組成物等の用途の焼き付けラッカー被膜の風化に曝された時の光沢の優れた保持と膨れ及び薄片化への耐性とを可能にし、硬化時間を阻害することなく光、水分、及び酸素の有害な効果に対する耐性を改善する。
【0108】
本発明の光安定化合物は、他の種類のUV吸収化合物、例えばベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、アクリル酸誘導体、アリール‐s‐トリアジン。有機ニッケル化合物、及びオキサニリドと組み合わせて使用することも出来る。
【0109】
本発明のUV吸収化合物と組み合わせて使用できる適切なベンゾトリアゾールUV吸収化合物の例は、これらに限定されないが下記を含む:2‐[2‐ヒドロキシ‐3,5‐ジ(α,α‐ジメチルベンジル)フェニル]‐2H‐ベンゾトリアゾール、2‐(2‐ヒドロキシ‐3,5‐ジ‐tert‐オクチルフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾール、2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐α,α‐ジメチルベンジル‐5‐tert‐オクチルフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾール、2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐tert‐オクチル‐5‐α,α‐ジメチルベンジルフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾール、2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐tert‐ブチル‐5‐(2(オメガ‐ヒドロキシ‐オクタ(エチレンオキシ)カルボニル)エチルフェニル]‐2H‐ベンゾトリアゾール、2‐(2‐ヒドロキシ‐3,5‐ジ‐tert‐アミルフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾール、ドデシル化2‐(2‐ヒドロキシ‐5‐メチルフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾール、5‐クロロ‐2‐[2‐ヒドロキシ‐3,5‐ジ(α,α‐ジメチルベンジル)フェニル]‐2H‐ベンゾトリアゾール、5‐クロロ‐2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐α,α‐ジメチルベンジル‐5‐tert‐オクチルフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾール、5‐クロロ‐2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐tert‐オクチル‐5‐α,α‐ジメチルベンジルフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾール、5‐クロロ‐2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐tert‐ブチル‐5‐(2‐(オメガ‐ヒドロキシオクタ‐(エチレンオキシ)‐エチルフェニル]‐2H‐ベンゾトリアゾール、5‐クロロ‐2‐(2‐ヒドロキシ‐5‐tert‐オクチルフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾール、5‐クロロ‐2‐(2‐ヒドロキシ‐3,5‐diatert‐アミルフェニル)‐2H‐ベンゾトリアゾール、及び5‐クロロ‐2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐tert‐ブチル‐5‐(2‐オクチルオキシカルボニル)エチルフェニル]‐2H‐ベンゾトリアゾール。
【0110】
実施例
下記の実施例は本発明の例示として示されており、本発明の範囲を限定するようには全く意図されていない。
【0111】
実施例1
2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾールの調製:
112.5gの2‐(2‐ヒドロキシ‐5‐メチル)ベンゾトリアゾール、84gの塩化ベンゾイル、及び133g塩化アルミニウムを1000mlCH2Cl2に溶解した。この混合物を2時間還流した後、この混合物からCH2Cl2を蒸留により完全に除去して三口丸底フラスコに入ったエステル中間体を得た。次に温度を160℃に上げ、溶融状態の混合物を機械的攪拌器で30分間完全に混合した。次に加熱を止め、混合物を温度が90℃未満に下がるまで攪拌した。この時点で、塩化アルミニウムの分解からの泡が発生しなくなるまで十分な水をこの混合物に加えた。
【0112】
次に500mlの追加の水を50gの濃縮HClと一緒にこの混合物に加えた。次にこの混合物を還流条件下でもう1時間攪拌し室温まで冷却した。次に水様層を完全に排出し、500mlの水を50gの45%NaOHと一緒にこの混合物に加えた。次にこの混合物をもう1時間還流し室温まで冷却した。水様層を再び排出した。次に500mlの水を50gの濃縮HClと一緒に加え、還流条件下で混合し冷却して水相を分離した。残留有機相を水で数回洗浄し、乾燥させて融点166〜167.8℃の固形物(化合物1)を得た。収量は65%(107グラム)であった。
【0113】
生成物のサンプルを塩化メチレンに溶解しGCで分析した。保持時間が開始反応物とエステル中間体のいずれとも異なるより長い単一ピークが得られた。
【0114】
1H‐NMRピーク同定は、化合物1が2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾールであることと合致する2‐ヒドロキシ基とオルトベンゾイル基との存在を確認した。
【0115】
また、エステル中間体を安息香酸と2‐(2‐ヒドロキシ‐5‐メチル)ベンゾトリアゾールとの硫酸又はp‐トルエンスルホン酸等の強酸性条件下で典型的なエステル化により得た。フリース転位の前に分離されたエステル中間体と上記のエステル化処理により得たものとのUVスペクトルは一致した。これを図1のカーブDとして示す。明らかに、カーブDは典型的なベンゾトリアゾールUV吸収もベンゾフェノンUV吸収も示していない。このことは、生成物2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾールはエステルではないことを示す。
【0116】
更に、生成物は2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾールであるという確認が図1に示すUVスペクトルにより提供された。カーブAはこの生成物のスペクトルである。カーブBは、従来の典型的なベンゾトリアゾールUV吸収剤である2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐クミル‐5‐tert‐オクチル)ベンゾトリアゾールのスペクトルである。カーブCは2‐ヒドロキシ‐4‐メチルベンゾフェノンのスペクトルである。カーブAとBを比較すると2つの特徴が観察される。先ず、典型的なベンゾトリアゾールのスペクトル(カーブB)に存在する約310と350nmの2つのピークは同等の強度である。一方、生成物2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾールのスペクトル(カーブA)は350nmに相対的により強い吸収と300nm未満の波長においてより強い吸収とを示している。生成物のこれらのスペクトル特徴は、2‐ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール(カーブB)とベンゾフェノン発色団(カーブC)の両方を含む構造と合致する。
【0117】
GC、1H‐NMR、及びUV分光法により提供された証拠とエステル中間体の分離は、化合物1が2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾールであることを示している。
【0118】
実施例2
2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐tert‐ブチル)ベンゾトリアゾールの調製:
2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐tert‐ブチル)ベンゾトリアゾールは下記のプロセスで生成されると予想される。130.2gの2‐(2‐ヒドロキシ‐5‐tert‐ブチル)ベンゾトリアゾール、84gの塩化ベンゾイル、及び133g塩化アルミニウムを1000mlCH2Cl2に溶解する。この混合物を2時間還流した後、この混合物からCH2Cl2を蒸留により完全に除去する。次に温度を160℃に上げ、溶融状態の混合物を機械的攪拌器で30分間完全に混合する。次に加熱を止め、混合物を温度が90℃未満に下がるまで攪拌する。この時点で、塩化アルミニウムの分解からの泡が発生しなくなるまで十分な水をこの混合物に加える。
【0119】
次に500mlの追加の水を50gの濃縮HClと一緒にこの混合物に加える。次にこの混合物を還流条件下でもう1時間攪拌し室温まで冷却する。次に水様層を完全に排出し、500mlの水を50gの45%NaOHと一緒にこの混合物に加える。次にこの混合物をもう1時間還流し室温まで冷却する。水様層を再び排出する。次に500mlの水を50gの濃縮HClと一緒に加え、還流条件下で混合し冷却して水相を分離する。残留有機相を水で数回洗浄し、乾燥させて2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾール(化合物2)を得る。その構造は実施例1で述べた方法で確認される。
【0120】
実施例3
2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐(m‐メチルベンゾイル)‐5‐メチル)ベンゾトリアゾールの調製:
2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐(m‐メチルベンゾイル)‐5‐メチル)ベンゾトリアゾールは下記のプロセスで生成されると予想される。112.5gの2‐(2‐ヒドロキシ‐5‐メチル)ベンゾトリアゾール、92.8gの塩化m‐メチルベンゾイル、及び133g塩化アルミニウムを1000mlCH2Cl2に溶解する。この混合物を2時間還流した後、この混合物からCH2Cl2を蒸留により完全に除去する。次に温度を160℃に上げ、溶融状態の混合物を機械的攪拌器で30分間完全に混合する。次に加熱を止め、混合物を温度が90℃未満に下がるまで攪拌する。この時点で、塩化アルミニウムの分解からの泡が発生しなくなるまで十分な水をこの混合物に加える。
【0121】
次に500mlの追加の水を50gの濃縮HClと一緒にこの混合物に加える。次にこの混合物を還流条件下でもう1時間攪拌し室温まで冷却する。次に水様層を完全に排出し、500mlの水を50gの45%NaOHと一緒にこの混合物に加える。次にこの混合物をもう1時間還流し室温まで冷却する。水様層を再び排出する。次に500mlの水を50gの濃縮HClと一緒に加え、還流条件下で混合し冷却して水相を分離する。残留有機相を水で数回洗浄し、乾燥させて2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾール(化合物3)を得る。その構造は実施例1で述べた方法で確認される。
【0122】
実施例4
2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾールの調製:
45gの2‐(2’‐ヒドロキシ‐5’‐メチル)ベンゾトリアゾール、16gの塩化アセチル、及び60g塩化アルミニウムを200mlCH2Cl2に溶解した。この混合物を2時間還流した後、この混合物からCH2Cl2を蒸留により完全に除去した。次に温度を130℃に上げ、溶融状態の混合物を機械的攪拌器で60分間完全に混合した。次に加熱を止め、混合物を温度が100℃未満に下がるまで攪拌した。この時点で、泡が発生しなくなるまで十分な水をこの混合物に加えた。
【0123】
200mlの追加の水を50gの濃縮HClと一緒にこの混合物に加えた。次にこの混合物をもう1時間還流し室温まで冷却した。水様層を完全に排出した後、生成物を200mlの水で2回洗浄した。600mlの水を50gの10%NaOHと一緒に加え、この混合物をもう1時間還流し冷却した。水様層を再び排出した。最後に生成物を水100mlで2回洗浄し、乾燥させて32gの2‐(2’‐ヒドロキシ‐3’‐アセチル‐5’‐メチル)ベンゾトリアゾール(化合物4と称す)を得た。その構造は実施例1で使用した方法で確認された。化合物4の吸収スペクトルを図2のカーブEで示す。スペクトル特徴は明らかである(2‐ヒドロキシ基の存在を示すダブルピークと3‐ケト基に特有の低波長における高UV吸収)。
【0124】
実施例5
2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ノナノイル‐5’‐メチル)ベンゾトリアゾールの調製:
上記実施例4と類似であるが、反応において16gの塩化アセチルを40gの塩化ノナノイルで置き換えた。アルキル鎖は高温でのフリース転位により断片化されるので、様々な分子量のケトンに対応する保持時間を有する多数のGCピークから明らかなように、最終生成物は異なる鎖長さのアルキル基の統計的混合物からなっていた。混合物の総重量は45.3gであった。生成物(化合物5と称す)は液体であり、このことは上記結晶化を妨げる様々な異性体の存在と合致する。化合物5の吸収スペクトルを図2のカーブFで示す。スペクトル特徴は明らかである。
【0125】
2‐(2‐ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾールのケトン誘導体のUV吸収スペクトルの特徴は、式IのR2が脂肪族部分であるか芳香族部分であるかにかかわらず同じであることを図2は示す。結果は上記ベンゾフェノン‐ベンゾトリアゾール混成構造の追加のUV吸収も示す(カーブE、FをカーブAと比較して)。
【0126】
実施例6
従来のベンゾトリアゾールと比較した2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾールの吸光係数:
0.2185gの化合物1(2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾール)を100mlCHCl3に溶解し貯蔵液を調製した。1.5mlの貯蔵液を100mlCHCl3で希釈し最終濃度2.19×10-5グラム/mlにし、1cm経路長さの石英キュベットに移した。UVスペクトルを取得し吸収ピークを測定した。
【0127】
商業上入手可能なUV吸収ベンゾトリアゾール誘導体であるTINUVIN928(2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐クミル‐5‐tert‐オクチル))のCHCl3中のUVスペクトルを類似の方法で得た。
【0128】
上記化合物のそれぞれの吸収最大における吸光係数をBear’s法則(即ち、吸光度は吸光係数×経路長さ×濃度(重量%又はモル濃度)に等しい)から導いた。結果を下記の表1に示す。この結果は本発明のUV吸収化合物の質量吸光係数はベンゾフェノン‐ベンゾトリアゾール混成構造のために従来の典型的なベンゾトリアゾールより約35%高いことを示している。
【0129】
【表1】

【0130】
実施例7
加速風化後の熱硬化アクリル被膜の光沢値の保持に対するベンゾトリアゾール安定剤の影響:
熱硬化アクリル被膜の光沢保持に対する上記実施例で調製した混成ベンゾトリアゾール化合物1〜3の影響を下記の手順で示すことが出来る。幾つかの熱硬化アクリル樹脂及びアルキド/アクリル樹脂を2重量%の本発明のベンゾトリアゾール光吸収安定剤を含有するよう調製し、ガラス板上に1μ厚の被膜として被覆する。この被膜を高温で選択した時間、例えば120℃〜150℃で20〜30分間加熱して硬化させる。被覆/硬化中のベンゾトリアゾール光安定剤の損失は被膜のUV吸収分析により確認することが出来る。被膜の吸収度のどんな減少も硬化ステップにおけるベンゾトリアゾール安定剤の損失に関係している。
【0131】
次に、これらの硬化した被膜は、各サイクルで60℃4時間のUV照射と50℃4時間の凝縮(雨)とが交互する合計670時間の加速風化試験を受ける。風化を受けた被膜の吸収度のどんな減少も硬化及び風化におけるベンゾトリアゾール安定剤の損失に関係する。
【0132】
化合物1を含有する組成物は、加速風化後に光吸収剤を含まない対照よりずっと高い光沢値保持を提供すると期待される。
【0133】
実施例8
加速風化後のアクリルエナメル及びラッカーの光沢値の保持に対するベンゾトリアゾール安定剤の影響:
光沢保持に対する上記実施例で調製した混成ベンゾトリアゾール化合物1の影響を下記の手順で示すことが出来る。幾つかの熱硬化アクリルエナメル及び熱可塑性アクリルラッカーのサンプルをUV光安定剤を含有するよう調製する。
【0134】
エナメル又はラッカーの光沢値の最初と多サイクル加速風化試験に曝された後とを比較する。各サイクルは60℃4時間のUV照射と50℃4時間の凝縮(水分)とを含む。
【0135】
化合物1を1重量%と2重量%含有する組成物は、200サイクル(800時間)と50サイクル(200時間)の加速風化後に光吸収剤を含まない対照よりずっと高い光沢値を提供すると期待される。
【0136】
実施例9
ポリエチレンテレフタラートの安定化:
ポリエチレンテレフタラートの安定化を下記の手順で示すことが出来る。0.5%の実施例1の化合物1を安定剤として270℃の溶融ポリエチレンテレフタラートに加え、窒素雰囲気中で攪拌する。得られた重合体を固体二酸化炭素で粉砕する。
【0137】
次に安定化された組成物を高温で押し出し成形して膜にする。この時、安定剤の損失はほとんどない。次に膜は化学線放射に曝される。安定化された膜は、安定化されていないポリエステルでできた膜より長い期間望ましい物理的特性を保持すると期待される。
【0138】
実施例10
ポリカーボネートの安定化:
本発明のUV吸収化合物によるポリカーボネートの安定化を下記の手順で示すことが出来る。ポリカーボネート(Lexan、ゼネラルエレクトリック社)を、例えば濃度0.3%の実施例1で調製した化合物のどちらかと混合押出し成形機内で混合する。安定化された組成物を高温で押し出し成形してシートにする。この時、安定剤の損失はほとんどない。このシートは、安定剤を含まないシートより長い期間その物理的特性をUV光に曝された後、維持すると期待される。
【0139】
実施例11
熱可塑性アクリルラッカーの上塗りの光沢値と剥離値:
本発明のUV吸収化合物単独及び立体障害アミン光安定剤との組合せの影響を下記の手順で示すことが出来る。シルバーメタリック熱可塑性アクリルラッカーを、例えば化合物1、化合物2、又は化合物3単独又は下記との組合せを含有するよう調製できる。ビス‐(2,2,6,6‐テトラメチル‐4‐ピペリジル)セバケートまたはビス‐(1,2,2,6,6‐ペンタメチル‐4‐ピペリジル)2‐n‐ブチル‐2‐(3,5‐ジ‐tert‐ブチル‐4‐ヒドロキシベンジル)マロネート;(1‐アセトキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐4‐イル)‐4‐ヒドロキシ‐3,5‐ジ‐tert‐ブチルベンゾアート;ジ‐(12‐アセトキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペリジン‐4‐イル)セバケート;2‐(4‐ヒドロキシ‐3,5‐ジ‐tert‐ブチルベンジル)‐2‐(1‐アセトキシ‐2,2,6,6‐テトラメチルピペルジン‐4‐イル)n‐ブチルマロネート。このラッカーは金属パネル上のエポキシエステルからなる下地上に上塗りとして吹き付けることが出来る。硬化スケジュールは48℃で10分間加熱後、155℃で30分間加熱である。最初の上塗り膜厚は2.0〜2.2ミル(50〜55ミクロン、0.0508〜0.0559mm)である。
【0140】
次に、該パネルを太陽に対して5°の角度の非加熱の黒い箱に入れ南フロリダ又はポルトリコ等の気候に1年間曝す。
【0141】
長い曝露に続いて、パネルを38℃相対湿度100%の一定湿度室に96時間置く。次に、パネルを湿度室から取り出し、拭いて水気をとり直ちにクロスハッチテープ付着試験を用いて評価する。次に、パネルを室温で1時間回復させた後、クロスハッチテープ付着試験を同じパネルの異なる箇所に行う。サンプルは最も厳しい剥離条件、即ち、加湿直後から1時間の回復期間後、通常改善された耐剥離性を示す。
【0142】
クロスハッチテープ付着試験は、パネル上の上塗り膜を貫通するクロスハッチを作る多刃ナイフの使用を含む。アセテート繊維粘着テープをクロスハッチ領域に貼り、引き剥がす。テープと一緒に剥がれた上塗りがあればその量を目視検査することは、剥離量の相対的評価を与える。0(クロスハッチ剥離なし)〜5(完全なクロスハッチ剥離)の評価システムを使用できる。
【0143】
上記処置の結果は、本発明のUV吸収化合物1を含有するサンプルは、安定剤を含まない対照と比べて長い太陽曝露中の光沢損失への優れた耐性を示すこと、及びUV吸収化合物と立体障害アミンを含有するピペリジルとの両方を含有する膜は長い太陽曝露後に最高の耐剥離性を示すことを証明すると期待される。
【0144】
また、その結果は化合物1は熱可塑性アクリル上塗りを1年間の強い太陽曝露後、加湿直後の最も厳しい試験条件下で剥離から保護することを示すと期待される。
【0145】
実施例12
下記の実施例は、本発明のUV吸収化合物が提供する顔料を含む組成物の色保護の改善の測定方法を例示する。
【0146】
UV吸収化合物1をポリアセタールペレット(DELRIN.RTM. 500P NC010、デュポン社)とミキサーで乾燥混合する。この乾燥混合物を約210℃の融点で2軸押出し成形機を用いて押し出しペレットにする。これらのペレットを約210℃で射出成形機を用いて試験小板に成形する。これらの小板を自動車試験規格SAE‐J1885に従ってキセノンアークWeather-Ometerに入れて曝す。曝露の総照射量をキロジュール/平方メートル(kJ/m2)で測定する。曝露されたサンプルの色を曝露されていないサンプルと比較しASTM‐D2244に従って色差(ΔE)として測定することで、曝露されたサンプルの色変化を測定する。
【0147】
化合物1を含有することは、UV吸収化合物を含まない対照と比べて、色変化、即ち、曝露されたサンプルと曝露されていないサンプルとの色差を大きく低減すると期待される。
【0148】
本発明を特定の実施形態を用いて説明したが、本発明の多くの他の形態及び変形が当業者には明らかであろう。添付の請求項及び本発明全体は、本発明の思想と範囲に入るこのような明らかな形態及び変形を全て含むと理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表わされる紫外線吸収化合物。
【化1】

式中、R1は水素又はハロゲン原子、又は1〜4炭素原子の直鎖又は分岐低級アルキル基又は低級アルコキシ基であり、
2は非置換又は置換アリール基、又は1〜18炭素原子を有する非置換又は置換直鎖又は分岐アルキル基、又は5〜6炭素原子を有する置換又は非置換脂環式基であり、
R3は1〜14炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、又は7〜12炭素原子を有するアルキルアリール基、又は1〜4炭素原子を有するアルコキシ基、又はフェニル基、1〜8炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェニル基、又は5〜6炭素原子を有するシクロアルキル基、又は2〜9炭素原子を有するカルボアルコキシ基、又は塩素、又は7〜9炭素原子を有するアリールアルキル基である。
【請求項2】
式Vで表わされる紫外線吸収化合物。
【化2】

式中、R1は水素原子、ハロゲン原子、1〜4炭素原子を有する直鎖又は分岐低級アルキル基、又は1〜4炭素原子を有する低級アルコキシ基であり、
3は1〜5炭素原子の直鎖又は分岐アルキル基、又は1〜12炭素原子のアルキルアリール基、又は1〜4炭素原子を有するアルコキシル基、又はフェニル基、1〜8炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェニル基、又は5〜6炭素原子を有するシクロアルキル基、又は2〜9炭素原子を有するカルボアルコキシ基、又は塩素、又は7〜9炭素原子を有するアリールアルキル基であり、
4は水素原子、又は1〜8炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基、又は1〜4炭素原子を有するアルコキシ基、又は2〜9炭素原子を有するカルボアルコキシ基、又はカルボキシル基である。
【請求項3】
1はHまたはClであり、R3はメチル基、エチル基、tert‐ブチル基、アミル基、又はクミル基であり、R4は水素原子又は1〜4炭素原子を有する低級アルキル基又は低級アルコキシル基である請求項2に記載の紫外線吸収化合物。
【請求項4】
該紫外線吸収化合物は上記式Vに対応し、2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐イソプロピル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐クミル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐tert‐オクチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3’‐イソプロピルベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐アミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3’‐メトキシ‐ベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3’‐メチルベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3’‐メトキシ‐ベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールである請求項2に記載の紫外線吸収化合物。
【請求項5】
1は水素原子、ハロゲン原子、1〜4炭素原子を有する直鎖又は分岐低級アルキル基、又は1〜4炭素原子を有する低級アルコキシ基であり、
2は1〜9炭素原子を有する非置換直鎖又は分岐アルキル基;1〜8炭素原子を有するアルコキシル基、又はカルボキシル基で置換された1〜9炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基;シクロヘキシル基、又は1〜4炭素原子を有するアルキル基で置換されたシクロヘキシル基、又は1〜4炭素原子を有するアルコキシル基で置換されたシクロヘキシル基であり、
3は1〜8炭素原子の直鎖又は分岐アルキル基、又は約7〜約12炭素原子を有するアルキルアリール基、又は1〜4炭素原子のアルコキシ基、又はフェニル基、又は1〜8炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェニル基、又は5〜6炭素原子のシクロアルキル基、又は2〜9炭素原子のカルボアルコキシ基、又は塩素、又は7〜9炭素原子のアリールアルキル基である請求項1に記載の紫外線吸収化合物。
【請求項6】
1はHまたはClであり、R2はメチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、tert‐ブチル基、アミル基、tert‐オクチル基、2‐エチルヘキシル基、クミル基、又はシクロヘキシル基であり、R3はメチル基、エチル基、tert‐ブチル基、アミル基、又はクミル基である請求項5に記載の紫外線吸収化合物。
【請求項7】
該紫外線吸収化合物は2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐シクロヘキサノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐シクロヘキサノイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐シクロヘキサノイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ノナノイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾールである請求項5に記載の紫外線吸収化合物。
【請求項8】
i)担体と、
ii)該担体内に均一に分散された0.01%〜10%の請求項1の紫外線吸収化合物とを含む紫外線吸収組成物。
【請求項9】
前記担体はポリエステル、ポリエステル樹脂、ポリアミド、ビニル重合体、セルロースエーテル、セルロースエステル、ポリウレタン、ポリ炭化水素、アクリル重合体、ラテックス重合体、ポリペプチド、アルキド樹脂、及びこれらの混合物からなるグループから選択された重合体を含む請求項8に記載の紫外線吸収組成物。
【請求項10】
前記重合体は膜を形成する請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記紫外線吸収化合物は2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐イソプロピル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐クミル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐tert‐オクチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3‐イソプロピルベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐アミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3‐メトキシ‐ベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3‐メチルベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3‐メトキシ‐ベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐シクロヘキサノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐シクロヘキサノイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐シクロヘキサノイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ノナノイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾールである請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
染料又は顔料、又は金属粒子、又はこれらの組合せを更に含む請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記担体は軟膏、クリーム、ローション、ゲル、及びスプレーからなるグループから選択された化粧品組成物を含む請求項8に記載の紫外線吸収組成物。
【請求項14】
1つ以上の立体障害アミン安定剤を更に含む請求項9に記載の組成物。
【請求項15】
前記1つ以上の立体障害アミン安定剤は、ポリアルキルピペリジン、N‐OR置換障害アミン、及びこれらの組合せからなるグループから選択される請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
0.1〜10重量%の請求項1の紫外線吸収成分で安定化される光により劣化し易い有機材料を含む組成物。
【請求項17】
前記有機材料は合成又は天然重合体である請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記重合体はポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ尿素、ポリウレタン、ポリペプチド、セルロース重合体、及びこれらの混合物又は組合せからなるグループから選択される請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記紫外線吸収化合物は2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐イソプロピル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐クミル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐tert‐オクチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3‐イソプロピルベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐ベンゾイル‐5‐アミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3‐メトキシ‐ベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3‐メチルベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(3‐メトキシ‐ベンゾイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐シクロヘキサノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐シクロヘキサノイル‐5‐tert‐ブチル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐シクロヘキサノイル‐5‐クミル‐フェニル]‐ベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐アセチル‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐プロパノイル‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐[2‐ヒドロキシ‐3‐(2’,2’‐ジメチルプロパノイル)‐5‐メチル‐フェニル]‐5‐クロロベンゾトリアゾールまたは2‐(2‐ヒドロキシ‐3‐ノナノイル‐5‐メチル)ベンゾトリアゾールである請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
前記有機材料は熱硬化性又は熱可塑性重合体組成物である請求項16に記載の組成物。
【請求項21】
1つ以上の立体障害アミン安定剤を更に含む請求項16に記載の組成物。
【請求項22】
前記1つ以上の立体障害アミン安定剤は、ポリアルキルピペリジン、N‐OR置換障害アミン、及びこれらの組合せからなるグループから選択される請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
下記のステップを含むプロセスにより調製された請求項1に記載の紫外線吸収化合物。
i)2‐ベンゾトリアゾリル‐4‐ヒドロカルビルフェノールを酸塩化物又は有機酸又は有機無水物と酸触媒及び選択可能な溶媒の存在下、ある温度で還流条件下で反応させることと、[ここで、2‐ベンゾトリアゾリル‐4‐ヒドロカルビルフェノールと酸塩化物又は有機酸又は有機無水物との比は約3:1〜約1:3である]
ii)該温度を約100℃と約250℃の間の温度に式Iの該紫外線吸収化合物を生成するのに十分な時間上げること。
【請求項24】
前記酸塩化物は1〜18炭素原子を有する非置換又は置換塩化アルカノイル、塩化ベンゾイル、置換塩化ベンゾイル、塩化シクロヘキサノイル、置換塩化シクロヘキサノイル、及びこれらの混合物からなるグループから選択され、前記有機酸は安息香酸、置換安息香酸、1〜18炭素原子を有するアルカン酸、1〜18炭素原子を有する置換アルカン酸、シクロヘキサン酸、置換シクロヘキサン酸、及びこれらの混合物からなるグループから選択され、前記無水物は無水酢酸、無水安息香酸、無水コハク酸、及びこれらの混合物からなるグループから選択される請求項23に記載の紫外線吸収化合物。
【請求項25】
前記酸性触媒はアシル化剤に含まれている請求項23に記載の紫外線吸収化合物。
【請求項26】
前記選択可能な溶媒は塩化メチレン、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、石油スピリット、フラン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びこれらの混合物からなるグループから選択された非プロトン溶媒である請求項23に記載の紫外線吸収化合物。
【請求項27】
前記プロセスは、ステップii)で形成された生成物を、生成混合物中に存在するエステルを加水分解し、加水分解により水溶性変異体に変換し、水相へ抽出する連続抽出により精製することを更に含む請求項23に記載の紫外線吸収化合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−504162(P2012−504162A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530045(P2011−530045)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/005392
【国際公開番号】WO2010/039229
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(511077281)
【Fターム(参考)】