説明

2−アミノ−3−アルコキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン誘導体

【課題】統合失調症、不安及びその関連疾患、うつ病、二極性障害、てんかん等の精神医学的障害の治療及び予防効果を有するグループIIメタボトロピックグルタミン酸受容体に拮抗する薬物を提供する。
【解決手段】式[I]


[式中、R1及びR2は水素原子、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、フェニル基置換アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アミノアルキル基、アルコキシアルキル基を示し、R3は、ナフチル基、置換フェニル基を示し、R4は、水素原子、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、置換フェニル基を示す。又は、R3及びR4が共にフェニル基を示す。]で表される2−アミノ−3−アルコキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬として有用な2−アミノ−3−アルコキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体に関する。更に詳しくは、統合失調症、不安及びその関連疾患、二極性障害、てんかん等の精神医学的障害、並びに、薬物依存症、認知障害、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、筋硬直に伴う運動障害、脳虚血、脳不全、脊髄障害、頭部障害等の神経学的疾患の治療及び予防に有効な新規2−アミノ−3−アルコキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、グルタミン酸受容体遺伝子のクロ−ニングが相次ぎ、グルタミン酸受容体には驚異的な数のサブタイプが存在することが明かとなった。現在、グルミン酸受容体は「受容体がイオンチャネル型構造を持つイオノトロピック型」及び「受容体がG−タンパク質と共役しているメタボトロピック型」の2つに大きく分類されている(非特許文献1参照)。そして、イオノトロピック受容体は薬理学的にN−メチル−D−アスパラギン酸(NMDA)、α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチルイソキサゾ−ル−4−プロピオネ−ト(AMPA)及びカイネ−トの3種類に分類され(非特許文献1参照)、メタボトロピック受容体はタイプ1〜タイプ8の8種類に分類される(非特許文献2及び3参照)。
【0003】
また、メタボトロピックグルタミン酸受容体は薬理学的に3つのグループに分類される。この中で、グループII(mGluR2/mGluR3)は、アデニルサイクラーゼと結合し、サイクリックアデノシン1リン酸(cAMP)のホルスコリン刺激性の蓄積を抑制する(非特許文献4参照)ことから、グループIIメタボトロピックグルタミン酸受容体に拮抗する化合物は急性及び慢性の精神医学的疾患並びに神経学的疾患の治療又は予防に有効であると考えられる。
【0004】
さらに、グループIIメタボトロピックグルタミン酸レセプタに対するリガンドとして2−アミノ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体が記述されているが(特許文献1参照)、3位に、官能基化されたベンジルオキシ基、ジフェニルメチルオキシ基、またはナフチルメチルオキシ基を有する2−アミノ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体の記載は無い。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−86597号公報
【非特許文献1】
Science, 258, p.597-603, 1992年
【非特許文献2】
J.Neurosci., 13, p.1372-1378, 1993年
【非特許文献3】
Neuropharmacol., 34, p.1-26, 1995年
【非特許文献4】
Trends Pharmacol. Sci., 14, p.13,1993年
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、統合失調症、不安及びその関連疾患、うつ病、二極性障害、てんかん等の精神医学的障害の治療及び予防、並びに、薬物依存症、認知障害、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、筋硬直に伴う運動障害、脳虚血、脳不全、脊髄障害、頭部障害等の神経学的疾患の治療効果及び予防効果を有する薬物であって、グループIIメタボトロピックグルタミン酸受容体に拮抗する薬物を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは2−アミノ−3−アルコキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体について鋭意検討した結果、特許文献1において、グループIIメタボトロピックグルタミン酸レセプタに対するリガンドとして記載の2−アミノ−3−ベンジルオキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボンは、mGluR2及びmGluR3のそれぞれを発現させた細胞を使用し、「Mol.Pharmacol.,53,228−233,1998」に掲載されている方法に従い、受容体結合試験で、IC50=11.54nMのグループIIメタボトロピックグルタミン酸レセプタに対する親和性を有し、本試験例記載の[35S]GTPγS結合により測定した結果、IC50=157.7nMの拮抗作用を有した。一方、本発明で提案の新規2−アミノ−3−アルコキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体(例えば、本発明化合物5では、IC50=2.7nMの親和性を有し、IC50=34.2nMの拮抗作用を有する。)は、グループIIメタボトロピックグルタミン酸受容体に対して、特許文献1で報告されている化合物より高い拮抗作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
かかる本発明は、式[I]
【0009】
【化3】

【0010】
[式中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子、C1-10アルキル基、フェニル基、ナフチル基、1若しくは2個のフェニル基で置換されたC1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、ヒドロキシC2-10アルキル基、 C1-10アルコキシカルボニルC1-10アルキル基、アミノC2-10アルキル基、又はC1-10アルコキシC1-10アルキル基を示し、R3は、ナフチル基、又はシアノ基、フェニル基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1〜5個の置換基で置換されたフェニル基を示し、R4は、水素原子、C1-10アルキル基、フェニル基、ナフチル基、又はシアノ基、フェニル基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1〜5個の置換基で置換されたフェニル基を示す。又は、R3及びR4が共にフェニル基を示す。]で表される2−アミノ−3−アルコキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物である。
【0011】
本発明において使用される用語が以下に定義される。
【0012】
1-10アルキル基とは炭素原子を1〜10個有する直鎖状、炭素原子を3〜10個有する分岐鎖状、又は炭素原子を3〜10個有する環状アルキル基である。直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。分岐鎖状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、5−メチルヘキシル基、3−エチルペンチル基、1−プロピルブチル基、1,4−ジメチルペンチル基、3,4−ジメチルペンチル基、1,2,3−トリメチルブチル基、1−イソプロピルブチル基、4,4−ジメチルペンチル基、5−メチルヘプチル基、4−エチルヘキシル基、2−プロピルペンチル基、2,5−ジメチルヘキシル基、4,5−ジメチルヘキシル基、2−エチル−3−メチルペンチル基、1,2,4−トリメチルペンチル基、2−メチル−1−イソプロピルブチル基、3−メチルオクチル基、2,5−ジメチルヘプチル基、1−(1−メチルプロピル)−2−メチルブチル基、1,4,5−トリメチルヘキシル基、1,2,3,4−テトラメチルペンチル基、6−メチルノニル基、5−エチル−2−メチルヘプチル基、2,3−ジメチル−1−(1−メチルプロピル)ブチル基、シクロプロピルメチル基、2−(シクロプロピル)エチル基、3−(シクロブチル)ペンチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基などを挙げることができる。環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、などが挙げられる。
【0013】
1若しくは2個のフェニル基で置換されたC1-10アルキル基とは、例えば,ベンジル基、ジフェニルメチル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、1−メチル−2−フェニルペンチル基などである。
【0014】
2-10アルケニル基とは、少なくとも1個の二重結合を有する、炭素原子を2〜10個有する直鎖状、炭素原子を3〜10個有する分岐鎖状、又は、炭素原子を5〜10個有する環状アルケニル基を示し、例えば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−メチル−2−ヘキセニル基、2−シクロペンテニル基などである。
【0015】
2-10アルキニル基とは、少なくとも1個の三重結合を有する、炭素原子2〜10個有する直鎖状又は炭素原子を4〜10個有する分岐状のアルキニル基を指し、例えば、2−プロピニル基、3−ブチニル基、4−ペンチニル基、5−ヘキシニル基、6−ヘプチニル基、7−オクチニル基、8−ノナイル基、9−デシニル基、3−ペンチニル基、4−メチル−2−ペンチニル基などである。
ヒドロキシC2-6アルキル基とは、少なくとも1個のヒドロキシル基によって置換されたC2-6アルキル基を示し、例えば、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、2−ヒドロキシプロピル基、2、3−ジヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシ−3−メチルブチル基などである。
【0016】
1-10アルコキシカルボニルC1-10アルキル基とは、炭素数1〜10個の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシカルボニル基によって置換された炭素数1〜10個のアルキル基を示し、例えば、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロピルオキシカルボニルメチル基、イソプロポキシカルボニルメチル基、ブチルトキシカルボニルメチル基、イソブトキシカルボニルメチル基、t−ブトキシカルボニルメチル基、ペンチルオキシカルボニルメチル基、ヘキシルオキシカルボニルメチル基、2−(エトキシカルボニル)エチル基、3−(エトキシカルボニル)プロピル基、4−(エトキシカルボニル)ブチル基、4−(エトキシカルボニル)ペンチル基、4−(エトキシカルボニル)−3−メチルペンチル基などが挙げられる。
【0017】
アミノC2-10アルキル基とは、少なくとも1個のアミノ基で置換されたC2-10アルコキシ基を示し、例えば、アミノエチル基、3−アミノプロピル基、4−アミノブチル基、5−アミノペンチル基、7−アミノヘプチル基、2−アミノプロピル基、2,4−ジアミノブチル基などが挙げられる。
【0018】
1-10アルコキシC1-10アルキル基とは、炭素数1〜6個の直鎖または分岐鎖状のアルキル基によって置換された炭素数1〜10個のアルキル基を指し、例えば、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−プロポキシエトキシ基、2−イソプロポキシエトキシ基、2−ブトキシエトキシ基、2−イソブトキシエトキシ基、2−t−ブトキシエトキシ基、2−ペンチルオキシエトキシ基、2−ヘキセニルオキシエトキシ基、3−エトキシプロポキシ基、4−エトキシブトキシ基、4−エトキシ−3−メトキシブチル基、4−エトキシ−3−メチルペンチル基などが挙げられる。
【0019】
シアノ基、フェニル基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1〜5個の置換基で置換されたフェニル基とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基及びフェニル基から選択される1〜5個の置換基で置換されたフェニル基を示し、例えば、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、2−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、2−ヨードフェニル基、3−ヨードフェニル基、4−ヨードフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−シアノフェニル基、3−シアノフェニル基、4−シアノフェニル基、2−フェニルフェニル基、3−フェニルフェニル基、4−フェニルフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、2,6−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2,3−ジブロモフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2,5−ジブロモフェニル基、2,6−ジブロモフェニル基、3,4−ジブロモフェニル基、3,5−ジブロモフェニル基、2,3−ジヨードフェニル基、2,4−ジヨードフェニル基、2,5−ジヨードフェニル基、2,6−ジヨードフェニル基、3,4−ジヨードフェニル基、3,5−ジヨードフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、2,6−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,3−ジシアノフェニル基、2,4−ジシアノフェニル基、2,5−ジシアノフェニル基、2,6−ジシアノフェニル基、3,4−ジシアノフェニル基、3,5−ジシアノフェニル基、2,3−ジフェニルフェニル基、2,4−ジフェニルフェニル基、2,5−ジフェニルフェニル基、2,6−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、2−クロロ−3−フルオロフェニル基、2−クロロ−4−フルオロフェニル基、2−クロロ−5−フルオロフェニル基、2−クロロ−5−フルオロフェニル基、3−クロロ−4−フルオロフェニル基、3−クロロ−5−フルオロフェニル基、5−クロロ−2−フルオロフェニル基、4−クロロ−3−フルオロフェニル基、4−クロロ−2−フルオロフェニル基、3−クロロ−2−フルオロフェニル基、3−ブロモ−2−クロロフェニル基、4−ブロモ−2−クロロフェニル基、5−ブロモ−2−クロロフェニル基、2−ブロモ−6−クロロフェニル基、4−ブロモ−3−クロロフェニル基、3−ブロモ−5−ヨードフェニル基、4−ブロモ−2−ヨードフェニル基、4−ブロモ−2−ヨードフェニル基、3−ブロモ−2−ヨードフェニル基、2−クロロ−3−シアノフェニル基、2−クロロ−4−シアノフェニル基、2−クロロ−5−シアノフェニル基、2−クロロ−6−シアノフェニル基、3−クロロ−4−シアノフェニル基、3−クロロ−5−フェニルフェニル基、5−クロロ−2−フェニルフェニル基、4−クロロ−3−フェニルフェニル基、4−クロロ−2−フェニルフェニル基、3−クロロ−2−フェニルフェニル基、2,3,4−トリクロロフェニル基、2,3,5−トリクロロフェニル基、2,4,5−トリクロロフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、3,4,5−トリクロロフェニル基、2,3,4−トリブロモフェニル基、2,3,5−トリブロモフェニル基、2,4,5−トリブロモフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、3,4,5−トリブロモフェニル基、2,3,4−トリフルオロフェニル基、2,3,5−トリフルオロフェニル基、2,4,5−フルオロフェニル基、2,4,6−トリフルオロフェニル基、3,4,5−トリフルオロフェニル基、2,3,4−トリヨードフェニル基、2,3,5−トリヨードフェニル基、2,4,5−トリヨードフェニル基、2,4,6−トリヨードフェニル基、3,4,5−トリヨードフェニル基、2,3,4−トリシアノフェニル基、2,3,5−トリシアノフェニル基、2,4,5−トリシアノフェニル基、2,4,6−トリシアノフェニル基、3,4,5−トリシアノフェニル基、2,3,4−トリフェニルフェニル基、2,3,5−トリフェニルフェニル基、2,4,5−トリフェニルフェニル基、2,4,6−トリフェニルフェニル基、3,4,5−トリフェニルフェニル基、4−シアノ−3,5−ジクロロフェニル基、3−シアノ−4,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジクロロ−5−フェニルフェニル基、3,5−ジクロロ−4−フェニルフェニル基、2−シアノ−3,5−ジクロロフェニル基、2−シアノ−3,4−ジクロロフェニル基、2−シアノ−4,5−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロ−2−フェニルフェニル基、3,4−ジクロロ−2−フェニルフェニル基、4,5−ジクロロ−2−フェニルフェニル基、2,3,4,5−テトラクロロフェニル基、2,3,4,5−テトラフルオロフェニル基、2−シアノ−3,4,5−トリクロロフェニル基、2−フェニル−3,4,5−トリクロロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基などである。
【0020】
また、本発明における医薬上許容される塩とは、例えば、硫酸、塩酸、燐酸などの鉱酸との塩、酢酸、シュウ酸、乳酸、酒石酸、フマール酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸との塩、トリメチルアミン、メチルアミンなどのアミンとの塩、又はナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンなどの金属イオンとの塩などである。
【0021】
式[I]で表される化合物のビシクロ[3.1.0]ヘキサン環上には5つの不斉炭素原子が存在する。
【0022】
本発明の好ましい立体は、式[II]で表される絶対構造を有する光学活性体であるが、そのエナンチオマー、ラセミ体などのエナンチオマー混合物として存在しうる。すなわち、本発明の化合物は次の式[II]で表される化合物の光学活性体、ラセミ体等のエナンチオマー混合物及びジアステレオマー混合物を全て含むものである。
【0023】
【化4】

【0024】
さらに、式[I]又は[II]においてR1及びR2の一方若しくは双方が水素原子以外を示すとき、すなわちエステル誘導体はグループIIメタボトロピックグルタミン酸受容体に影響を及ぼさない。しかし、このエステル誘導体は生体内で加水分解され、グループIIメタボトロピックグルタミン酸受容体に影響を及ぼす2−アミノ−3−アルコキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体に変わる。したがって、エステル誘導体はプロドラッグとして機能するため、極めて有用な化合物である。
【0025】
式[I]で示される本発明化合物は、以下に示す製造法により供給される(以下のR1、R2、R3及びR4は前記と同義である。)。
【0026】
まず、本発明化合物[I]を合成するために必要な合成中間体(6)は、下記のように製造することができる。
【0027】
【化5】

【0028】
工程1:化合物(1)を不活性溶媒中、塩基の存在下、例えば、無水トリフルオロメタンスルホン酸、N−フェニル−ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)などのトリフルオロメタンスルホニル化剤と反応することにより、化合物(2)へと導くことができる。ここで、不活性溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリル、又はこれらの混合溶媒等を使用することができる。塩基としては、例えば、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等のアミン類、水素化カリウム、水素化ナトリウム等の無機塩基類、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムヘキサメチルジシラザン等の金属アミド類、ナリトウム メトキシド、カリウム t−ブトキシド等の金属アルコラート類を用いることができる。
【0029】
工程2:化合物(2)を不活性溶媒中、遷移金属触媒存在下、例えば、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類、又は炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基類の存在下、一酸化炭素及びR2OHと反応することによって化合物(3)へと導くことができる(Tetrahedron Letters 26, 1109(1985) 参照)。ここで遷移金属触媒とは、例えば0価のパラジウム試薬であり、例えば酢酸パラジウム(II)などの2価のパラジウムとトリフェニルホスフィン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1−ビナフチル(BINAP)などの配位子を用いて反応系内で調製することができる。また、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)等の0価のパラジウム試薬を直接用いることもできる。不活性溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサンなどの炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、又はこれらの混合溶媒等を使用することができる。
【0030】
工程3:化合物(3)を不活性溶媒中、例えば四酸化オスミウムなどを用いた一般的なジオール化反応(M. Hudlicky,“Oxidations in Organic Chemistry”参照)やAD−mixを試薬とするSharplessの不斉シス−ジヒドロキシル化反応(Sharpless AD)(Tetrahedron Asymmetry 4, 133(1993)、J. Org. Chem. 57, 2768(1992)、J. Org. Chem. 61, 2582(1996)参照)などを用いてジオールへと酸化し、化合物(4)へ導くことができる。ここで、不活性溶媒とは、例えば t−ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン、ヘキサンなどの炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリル、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、水、又はこれらの混合溶媒等を使用することができる。
【0031】
工程4:化合物(4)を例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリル、又はこれらの混合溶媒等の不活性溶媒中、トリエチルアミン、N−メチルモルホリン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類、又は炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基類の存在下あるいは非存在下、塩化チオニルと反応後、ベンゼン、トルエン、ヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリル、アセトン、水、又はこれらの混合溶媒等の不活性溶媒中、過酸化水素、オキソン、三塩化ルテニウム−メタ過ヨウ素酸ナトリウム等の一般的な酸化剤(M. Hudlicky,“Oxidations in Organic Chemistry”参照)にて酸化し、化合物(5)に導くことができる。
【0032】
工程5:化合物(5)を例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、アセトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、水、又はこれらの混合溶媒等の不活性溶媒中、アジ化ナトリウムと反応した後、加水分解することによって、合成中間体である化合物(6)に導くことができる(J. Am. Chem. Soc. 110, 7538(1988)参照)。
【0033】
【化6】

【0034】
工程6:R1及びR2が水素原子以外である化合物(6)の水酸基を例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、又はこれらの混合溶媒等の不活性溶媒中、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、又は塩化水素等のブレンステッド酸触媒、三フッ化ホウ素・ジエチルエーテル錯体、塩化亜鉛、塩化スズ、又はトリメチルシリル−トリフルオロメタンスルホネート等のルイス酸触媒の存在下、Xが、2,2,2−トリクロロアセトイミドイロキシ基である式R34CHXで表される化合物と反応することにより、化合物(7)に導くことができる(J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, 2247(1985)、Synthesis, 568 (1987)参照)。
【0035】
さらに、R1及びR2が水素原子以外である化合物(6)の水酸基を例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン等のアミド類、ジメチルスルホキシド、又はこれらの混合溶媒等の不活性溶媒中、水素化ナトリウム、水素化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基類、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムジイソプロピルアミド、ナトリウムアミド等の金属アミド類、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン等の有機塩基類、カリウム t-ブトキシド等の塩基の存在下、Xが、2,2,2−トリクロロアセトイミドイロキシ基以外の式R34CHXで表される化合物と反応することにより、化合物(7)に導くこともできる。ここでXは脱離基であり、例えばハロゲン原子、トシルスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、トリルスルホネート等である。
【0036】
工程7:化合物(7)は例えば、ベンゼン、トルエン、ヘキサンなどの炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル系溶媒、アセトニトリル、アセトン、水、又はこれらの混合溶媒等の不活性溶媒中、亜リン酸トリエチル、トリメチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等によるスタウンジンガー(Staudinger)反応(Bull. Chem. Soc. Fr., 815(1985)参照)、エタノール、メタノール等のアルコール類、酢酸エチルなどのエステル類、N,N−ジメチルホルムアミド、水、又はこれらの混合溶媒等の不活性溶媒中におけるパラジウム/カーボン、パラジウムブラックなどの金属触媒存在下での水素添加、リチウムアミノボロヒドリド等によるヒドリド還元等に代表される一般的なアジド基の還元反応(A. F. Abdel-Magid , “Reductions in Organic Synthesis”参照)によって本発明の化合物(8)に導くことができる。
【0037】
工程8:化合物(8)の式COOR1及びCOOR2で示される部分を一般的な加水分解反応(T. W. Greene , P. G. M. Wuts,“Protective Groups in Organic Synthesis”参照)にてカルボン酸へと変換し、本発明化合物である化合物[I]へ導くことができる。
本発明において、グループIIメタボトロピックグルタミン酸受容体拮抗作用を有する化合物とは、mGluR2及びmGluR3のそれぞれを発現させた細胞を使用し、「Mol.Pharmacol.,53,228−233,1998」に掲載されている方法に従い、受容体結合実験において濃度依存的な抑制作用を示し、mGluR2/R3に対する親和性においてグルタミン酸と同等以上の親和性を示し、さらに、GTPγS結合により測定したとき、グルタミン酸誘発GTPγS結合に拮抗する化合物をいう。または、cAMP量をcAMP測定キットにより測定したとき、グルタミン酸のフォルスコリン刺激cAMP増加抑制作用に拮抗する化合物をいう。
【0038】
本発明化合物は1種又は2種以上の医薬的に許容される担体、賦形剤及び希釈剤と組み合わされて医薬的製剤とされうる。前記担体、賦形剤及び希釈剤としては、例えば、水、乳糖、デキストロース、フラクトース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、でんぷん、ガム、ゼラチン、アルギネート、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、セルロース、水シロップ、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルキルパラヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、グリセリン、ゴマ油、オリーブ油、大豆油などの各種油が挙げられる。
【0039】
本発明化合物は、これらの担体、賦形剤又は希釈剤、そして、必要に応じて一般に使用される増量剤、結合剤、崩壊剤、pH調整剤、溶解剤などの添加剤が混合された上で、常用の製剤技術によって錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、液剤、乳剤、懸濁剤、軟膏剤、注射剤、皮膚貼付剤などの経口又は非経口用医薬、特にグループIIメタボトロピックグルタミン酸受容体拮抗薬として調製される。
【0040】
本発明の化合物は成人患者に対して0.01〜500mgを1日1回又は数回に分けて経口又は非経口で投与することが可能であるが、使用の容易性及び薬効の点からみて経口投与することが好ましい。なお、この投与量は治療対象となる疾病の種類、患者の年齢、体重、症状などにより適宜増減することが可能である。
【0041】
以下に実施例及び試験例を示し本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
(参考例1)
(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アジド−3−ヒドロキシ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸ジエチルエステルの合成
窒素雰囲気下、0.94Mリチウムヘキサメチルジシラザンテトラヒドロフラン溶液112mLに−60〜−55℃にて、(1S,5R,6S)−2−オキソ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−6−カルボン酸エチルエステル14.7gのテトラヒドロフラン56mL溶液を滴下し、−60℃にて1時間攪拌した。N−フェニル−ビス(トリフルオロメタンスルホンイミド)34.3gのテトラヒドロフラン112mL溶液を−60〜−55℃に保ちながら滴下し、−60℃にて2時間攪拌した。反応溶液を室温まで上昇させ、さらに2時間攪拌した。ジエチルエーテルを加えて希釈後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にてクエンチし、ジエチルエーテルにて抽出した。有機層を合わせて飽和塩化ナトリウムにて洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィーにて精製した。得られた(1S,5R,6S)−2−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサ−2−エン−6−カルボン酸エチルエステルを直ちにN,N−ジメチルホルムアミド130mLに溶解し、室温にて酢酸パラジウム559mg、トリフェニルホスフィン1.31g、エタノール130mL次いでジイソプロピルエチルアミン14.3mLを加えた後、一酸化炭素を20分間溶液に通した。一酸化炭素雰囲気下、室温にて2時間攪拌した。反応溶液に1M塩酸を加え、ジエチルエーテルにて2回抽出した。有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200(和光純薬製)、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=20:1)にて精製し、(1S,5R,6S)ビシクロ[3.1.0]ヘキサ−2−エン−2,6−ジカルボン酸ジエチルエステル14.3gを得た。
1H-NMR(300MHz,CDCl3)δ(ppm);1.26(t,J=7.1Hz,3H),1.31(t,J=6.8Hz,3H),2.22-2.30(m,1 H),2.59-2.91(m,4H),4.08-4.29(m,4H),6.53(s,1H).
MS(ESI)(Pos)m/z; 247(M+Na)+
[α]D26= +145.5°(CHCl3,C=0.95)
【0043】
(1S,5R,6S)ビシクロ[3.1.0]ヘキサ−2−エン−2,6−ジカルボン酸ジエチルエステル14.3gのアセトニトリル370mL、水130mL溶液に50%N−メチルモルホリン−N−オキシド26.3mL及び4%四酸化オスミウム水溶液20.2mLを加え、室温で1時間攪拌した。反応溶液に、0℃にて亜硫酸水素ナトリウムを加え、室温にて1時間攪拌した。セライト濾過後、濾液を減圧下濃縮した。酢酸エチルにて2回抽出後、有機層を合わせて飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200(和光純薬製)、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=2:1)にて精製し(1S,2S,3R,5R,6S)−2,3−ジヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサ−2,6−ジカルボン酸ジエチルエステル13.5gを得た。
1H-NMR(200MHz,CDCl3)δ(ppm);1.25(t,J=7.3Hz,3H),1.33(t,J=7.0Hz,3H),1.73-2.16(m,4H),2.27-2.45(m,2H),3.83(s,1H),4.00-4.15(m,1H),4.12(q,J=7.0Hz, 2H),4.21-4.41(m,2H).
MS(ESI)(Pos)m/z; 281(M+Na)+
[α]D27 = -89.7°(CHCl3,C=0.32)
【0044】
窒素雰囲気下、(1S,2S,3R,5R,6S)−2,3−ジヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 ジエチルエステル13.5gのジクロロメタン190mL溶液にトリエチルアミン16mLを加えたの後、7℃から20℃にて塩化チオニル5.7mLを滴下した。0℃にて15分間攪拌した。反応液に水を加え、水及び飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣を四塩化炭素97mL、アセトニトリル97mL及び水115mLに溶解した。この溶液にメタ過ヨウ素酸ナトリウム14.5g、及び三塩化ルテニウム水和物120mgを加え、0℃にて1時間攪拌した。セライト濾過後、濾液に水を加え、ジエチルエーテルにて2回抽出を行った。有機層を合わせて飽和塩化ナトリウム水溶液にて洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200(和光純薬製)、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=4:1)にて精製し(1S,1aS、1bS、4aR,5aR)−3,3−ジオキソ−テトラヒドロ−2,4−ジオキサ−3λ6−チア−シクロプロパ[a]ペンタレン−1,1b−ジカルボン酸ジエチルエステル14.2gを得た。
1H-NMR(200MHz,CDCl3)δ(ppm); 1.26(t,J=7.3Hz,3H),1.37(t,J=7.3Hz,3H),1.71 (dd,J=3.5,3.5Hz,1H),2.26-2.38(m,1H),2.56-2.68(m,3H),4.14(q,J=7.3Hz,2H), 4.29-4.47(m,2H),5.35(dd,J=6.2,6.2Hz,1H).
MS(ESI)(Pos)m/z; 343(M+Na)+
[α]D26 = -35.7°(CHCl3,C=0.27)
【0045】
N,N−ジメチルホルムアミド180mL及び水18mLに溶解した(1S,1aS、1bS、4aR,5aR)−3,3−ジオキソ−テトラヒドロ−2,4−ジオキサ−3λ6−チア−シクロプロパ[a]ペンタレン−1,1b−ジカルボン酸ジエチルエステル14.2gにアジ化ナトリウム5.2gを加え、50℃にて1時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、残渣をジエチルエーテル900mL及び水25mLに溶解した後、氷浴中20%硫酸70mLを滴下し、室温にて21時間攪拌した。酢酸エチルにて2回抽出した。有機層を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウムにて洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:シリカゲル60(球状)40−50μm(関東化学)、展開溶媒:クロロホルム:酢酸エチル6:1)にて精製し(1R,2R,3R,5R,6S)−2−アジド−3−ヒドロキシ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸ジエチルエステル7.53gを得た。
1H-NMR(200MHz,CDCl3)δ(ppm);1.27(t,J=7.3Hz,3H),1.38(t,J=7.3Hz,3H),1.83 (dd,J=3.1,3.1 Hz,1H),1.99-2.46(m,4H),3.73-3.90 (m,1H),4.14(q,J=7.0Hz, 2H),4.36(q,J=7.0Hz,2H).
MS(ESI)(Pos)m/z; 306(M+Na)+
[α]D27 = -49.1°(CHCl3,C=0.22)
【0046】
(実施例1)
(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アミノ−3−(ナフタレン−2−イルメトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステルおよび(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アミノ−3−(ナフタレン−2−イルメトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸の合成
(1)60%水素化ナトリウム(油性)8.0mgをヘキサンで2回洗浄後、テトラヒドロフラン0.3mLに懸濁させ、テトラヒドロフラン0.5mLに溶解したナフタレン−2−イル−メチルアルコール321mgを滴下した。室温にて30分間攪拌後、食塩−氷にて冷却下、トリクロロアセトニトリル293mgを滴下した。この温度で20分間、氷冷下20分間、水浴下20分間、更に室温にて60分間攪拌した。反応溶液を減圧下濃縮し、残渣にペンタン0.2mLとメタノール8μLを加え、室温にて30分間激しく攪拌した。無機塩を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、粗のナフタレン−2−イル−メチル−2,2,2−トリクロロアセトイミデート606mgを得た。
【0047】
粗のナフタレン−2−イル−メチル−2,2,2−トリクロロアセトイミデート409mg及び(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アジド−3−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル311mgをジクロロメタン1.2mL及びシクロヘキサン2.4mLに溶解した。室温にてトリフルオロメタンスルホン酸を12μL加えた後、1時間攪拌後、無機塩を濾別し、氷冷下、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加した。クロロホルムにて2回抽出した後、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=15:1〜3:1)にて精製し、(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アジド−3−(ナフタレン−2−イルメトキシ)−6−フルオロビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル108mgを得た。
1H-NMR(200MHz,CDCl3)δ(ppm); 1.24 (3H, t, J=7.2Hz), 1.72 (1H, t, J=3.1Hz), 1.98-2.30(4H, m), 3.64 (1H, t, J=7.9 Hz), 4.11 (2H, q, J=7.2 Hz), 4.59 (1H, d, J=12.3Hz), 4.72 (1H, d, J=12.3 Hz), 5.24 (1H, d, J=12.3 Hz), 5.36 (2H, d, J=12.3 Hz), 7.15-7.90 (12H, m).
MS(ESI)(Pos)m/z; 508(M+Na)+
[α]D27 = +17.6°(CHCl3,C=2.3)
【0048】
(2)テトラヒドロフラン3mL及び水0.3mLに溶解した(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アジド−3−(ナフタレン−2−イルメトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル105mgに1Mトリメチルホスフィン/テトラヒドロフラン溶液0.24mLを加え、室温にて12時間攪拌した。ジエチルエーテルにて希釈後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=2:1〜1:1)にて精製し、(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アミノ−3−(ナフタレン−2−イルメトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル73mgを得た。
【0049】
(3)テトラヒドロフラン1.4mL及び水0.7mLに溶解した(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アミノ−3−(ナフタレン−2−イルメトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル6−エチルエステル70mgに水酸化リチウム水和物16.0mgを加え、室温にて7日間攪拌した。溶媒を減圧下留去した後、残渣をイオン交換樹脂(AG50W−X8 Resin(H型)、展開溶媒:水、50%テトラヒドロフラン水溶液、10%ピリジン水溶液)にて精製し、(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アミノ−3−(ナフタレン−2−イルメトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸39mgを得た。
【0050】
(実施例2)
(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アミノ−3−((R*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル、(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アミノ−3−((S*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル、(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アミノ−3−((R*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸および(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アミノ−3−((S*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸の合成
(1)60%水素化ナトリウム(油性)10mgをヘキサンで2回洗浄後、テトラヒドロフラン0.3mLに懸濁させ、テトラヒドロフラン0.5mLに溶解した1−(3,4−ジクロロフェニル)エタノール500mgを滴下した。室温にて30分間攪拌後、食塩−氷にて冷却下、トリクロロアセトニトリル0.26mLを滴下した。この温度で15分間、氷冷下15分間、水浴下15分間、更に室温にて60分間攪拌した。反応溶液を減圧下濃縮し、残渣にペンタン0.46mL及びメタノール9.3μLを加え、室温にて10分間激しく攪拌した。無機塩を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、粗の1−(3,4−ジクロロフェニル)エチル−2,2,2−トリクロロアセトイミデート860mgを得た。
【0051】
粗の1−(3,4−ジクロロフェニル)エチル−2,2,2−トリクロロアセトイミデート548mg及び(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アジド−3−ヒドロキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル375mgをジクロロメタン1.4mL及びシクロヘキサン2.8mLに溶解し、トリフルオロメタンスルホン酸を14μL加えた。室温にて30分間攪拌後、無機塩を濾別し、氷冷下、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加した。クロロホルムにて2回抽出した後、有機層を合わせて飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムにて乾燥した。乾燥剤を濾別後、濾液を減圧下濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:ワコウゲルC200、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=20:1)にて精製し、(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アジド−3−((R*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル(Rf値:0.72、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=3:1、TLC:シリカゲル 60F254)196mg及び(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アジド−3−((S*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル(Rf値:0.65、展開溶媒:ヘキサン−酢酸エチル=3:1、TLC:シリカゲル 60F254)238mgを得た。
【0052】
(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アジド−3−((R*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル:
1H-NMR(200MHz,CDCl3)δ(ppm); 1.14-1.29 (6H, m), 1.63 (1H, dd, J=2.6, 2.6Hz), 1.90-2.29 (4H, m), 3.33 (1H, dd, J=8.1,8 .1 Hz), 4.09 (2H, q, J=7.2 Hz), 4.58 (1H, q, J=6.2Hz), 5.25 (1H, d, J=11.9 Hz), 5.42 (1H, d, J=11.9Hz), 6.98-7.06 (1H, m), 7.24-7.49 (7H, m).
MS(ESI)(Pos)m/z; 540(M+Na)+
[α]D26 = +78.5°(CHCl3,C=3.2)
【0053】
(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アジド−3−((S*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル:
1H-NMR(200MHz,CDCl3)δ(ppm);1.18-1.29 (6H, m), 1.65 (1H, dd, J=3.3, 3.3 Hz), 2.01-2.35 (4H, m), 3.44 (1H, dd, J=7.9, 7.9 Hz), 4.10 (2H, q, J=7.3 Hz), 4.32 (1H, q, J=6.6Hz), 5.16 (1H, d, J=12.3 Hz), 5.33 (1H, d, J=12.3 Hz), 7.03-7.11 (1H, m), 7.30-7.44 (7H, m).
MS(ESI)(Pos)m/z; 540(M+Na)+
[α]D27 = -15.5°(CHCl3,C=3.2)
【0054】
(2)実施例1の(2)と同様にして、(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アジド−3−((R*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル189mg及び(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アジド−3−((S*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル214mgより(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アミノ−3−((R*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル150mg及び(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アミノ−3−((S*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル179mgをそれぞれ得た。
【0055】
(3)実施例1の(3)と同様にして、(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アミノ−3−((R*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル146mg及び(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アミノ−3−((S*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸 2−ベンジルエステル 6−エチルエステル165mgより(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アミノ−3−((R*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸93.0mg及び(1S,2R,3R,5R,6S)−2−アミノ−3−((S*)−1−(3,4−ジクロロフェニル)エトキシ)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸16.0mgを得た。
【0056】
以下、実施例1及び2に記載の化合物、並びに同様にして得た化合物の構造、物性及び受容体親和性を表1に示す。
【0057】
【表1】

【表2】表1の続き

【表3】表1の続き

【表4】表1の続き

【表5】表1の続き

【表6】表1の続き

【表7】表1の続き

【表8】表1の続き

【0058】
(試験例1)被検薬の代謝型グルタメート受容体mGluR2安定発現CHO細胞での[35S]GTPγS結合試験に及ぼす効果(拮抗作用)
代謝型グルタメート受容体mGluR2安定発現CHO細胞を、10%透析牛胎児血清含有ダルベッコ改変イーグル培地[1% proline, 50 units/ml penicillin,50μg/mL streptomycin,2mM L-glutamine(用時添加)]で T−225フラスコに播種し、37℃、5%CO2下で培養を行った。コンフルエントの状態でPBS(−)で2回洗浄してセルスクレ−パ−で細胞を剥離し、4℃、1000×g、15分間遠心分離を行って細胞を回収した。得られた沈さは、−80℃で保存した。用時溶解して、20mM HEPES緩衝液(pH7.4)に懸濁した。懸濁液をホモジナイザ−で20秒間ホモジナイズ後、4℃、48,000×g、20分間遠心分離を行って沈さを得た。上記緩衝液で再度懸濁、ホモジナイズ後に37℃、15分間インキュベ−トし、4℃、48,000×g、20分間遠心分離を行った。さらに得られた沈さを、2回遠心洗浄した後に20mM HEPES緩衝液(100mM NaCl,10mM MgCl2,10μM GDP,pH7.4)でホモジナイズして膜画分を得た。結合試験は、膜濃度50μg/ assayで行った。膜画分に被検薬を加えて30℃で20分間インキュベートを行った。その後3nM [35S]GTPγSを添加して、30℃で1時間インキュベ−ションを行った。Filter Mate Universal harvesterを用いてGF/Cフィルタ−プレート上に吸引濾過することによって反応を停止した。吸引濾過後、フィルタ−は氷冷20mM HEPES緩衝液(pH7.4)で3回洗浄した。得られたフィルタ−プレートに40μLのScinti cocktailを添加して45℃で乾燥した。Top Count NXTで蛍光活性を測定した。非特異的結合は300μM GTPγS存在下で測定し、各結合量から差し引いた。拮抗作用は、30μM グルタミン酸の[35S]GTPγS結合量に対して50%抑制する被検薬の濃度IC50値を求めた。
【0059】
(試験例2)被検薬の代謝型グルタメート受容体mGluR2安定発現CHO細胞での[3H]MGS0008受容体結合試験に対する効果(受容体親和性)
代謝型グルタメート受容体mGluR2安定発現CHO細胞を、10%透析牛胎児血清含有ダルベッコ改変イーグル培地[1% proline, 50 units/mL penicillin,50μg/mL streptomycin,2mM L-glutamine(用時添加)]で T−225フラスコに播種し、37℃、5%CO2下で培養を行った。コンフルエントの状態でPBS(−)で2回洗浄してセルスクレ−パ−で細胞を剥離し、4℃、1000×g、15分間遠心分離を行って細胞を回収した。得られた沈さは、−80℃で保存した。用時溶解して、50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁した。懸濁液をホモジナイザ−で20秒間ホモジナイズ後、4℃、48,000×g、20分間遠心分離を行って沈さを得た。上記緩衝液で再度懸濁、ホモジナイズ後に37℃、15分間インキュベ−トし、4℃、48,000×g、20分間遠心分離を行った。さらに得られた沈さを、2回遠心洗浄した後に50mM Tris-HCl緩衝液(2mM MgCl2,pH7.4)でホモジナイズして膜画分を得た。受容体結合試験は、膜濃度50〜200μg/0.5mL assayの範囲で行った。膜画分に被検薬と3nM[3H]MGS0008を添加して、25℃で1時間インキュベ−ションを行った。Brandel cell harvesterを用いて0.3% polyethylenimineに予め浸したWhatman GF/Cフィルタ−上に吸引濾過することによって反応を停止した。吸引濾過後、フィルタ−は氷冷50mM Tris-HCl緩衝液(2mM MgCl2,pH7.4)3mLで3回洗浄した。得られたフィルタ−に10mLのAquasol-2を添加して6時間以上放置して、Beckman LS6000液体シンチレ−ションカウンタ−で蛍光活性を測定した。非特異的結合は10μM LY354740存在下で測定し、各結合量から差し引いた。溶媒による[3H]MGS0008結合量に対して50%抑制する被検薬の濃度IC50値を求めた。
【0060】
【発明の効果】
本発明により、メタボトロピックグルタミン酸受容体の拮抗薬が提供できるようになった。従って、統合失調症、不安およびその関連疾患、うつ病、二極性障害、てんかん等の精神医学障害の治療および予防、薬物依存症、認知障害、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、筋硬直に伴う運動障害、脳虚血、脳不全、脊髄障害、頭部障害等の精神学的疾患の治療および予防、鎮痙、鎮痛、鎮吐等に有効な医薬品の提供も可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[I]
【化1】

[式中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子、C1-10アルキル基、フェニル基、ナフチル基、1若しくは2個のフェニル基で置換されたC1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、ヒドロキシC2-10アルキル基、 C1-10アルコキシカルボニルC1-10アルキル基、アミノC2-10アルキル基、又はC1-10アルコキシC1-10アルキル基を示し、R3は、ナフチル基、又はシアノ基、フェニル基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1〜5個の置換基で置換されたフェニル基を示し、R4は、水素原子、C1-10アルキル基、フェニル基、ナフチル基、又はシアノ基、フェニル基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1〜5個の置換基で置換されたフェニル基を示す。又は、R3及びR4が共にフェニル基を示す。]で表される2−アミノ−3−アルコキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物。
【請求項2】
式[II]
【化2】

[式中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子、C1-10アルキル基、フェニル基、ナフチル基、1若しくは2個のフェニル基で置換されたC1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、ヒドロキシC2-10アルキル基、 C1-10アルコキシカルボニルC1-10アルキル基、アミノC2-10アルキル基、又はC1-10アルコキシC1-10アルキル基を示し、R3は、ナフチル基、又はシアノ基、フェニル基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1〜5個の置換基で置換されたフェニル基を示し、R4は、水素原子、C1-10アルキル基、フェニル基、ナフチル基、又はシアノ基、フェニル基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1〜5個の置換基で置換されたフェニル基を示す。又は、R3及びR4が共にフェニル基を示す。]で表される2−アミノ−3−アルコキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物。
【請求項3】
請求項2記載の式[II]において、R1及びR2は共に水素原子を示し、R3は、ナフチル基、又はシアノ基、フェニル基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1〜2個の置換基で置換されたフェニル基を示し、R4は、水素原子、C1-10アルキル基、フェニル基、ナフチル基、又はシアノ基、フェニル基及びハロゲン原子からなる群より選ばれる1〜2個の置換基で置換されたフェニル基を示し、又は、R3 及びR4が共にフェニル基を示す2−アミノ−3−アルコキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物。
【請求項4】
請求項2記載の式[II]において、R1及びR2が共に水素原子を示し、R3は、ナフチル基、2位がシアノ基若しくはフェニル基で置換されたフェニル基、又は3位、4位、5位が1〜2個のハロゲン原子で置換されたフェニル基を示し、R4は、水素原子、C1-6アルキル基、フェニル基、ナフチル基、2位がシアノ基若しくはフェニル基で置換されたフェニル基、又は3位、4位、5位が1〜2個のハロゲン原子で置換されたフェニル基を示し、又は、R3 及びR4が共にフェニル基を示す2−アミノ−3−アルコキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の2−アミノ−3−アルコキシビシクロ[3.1.0]ヘキサン−2,6−ジカルボン酸誘導体、その医薬上許容される塩又はその水和物を有効成分とする医薬。
【請求項6】
グループIIメタボトロピックグルタミン酸受容体拮抗薬である請求項5記載の医薬。

【公開番号】特開2007−63129(P2007−63129A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−181932(P2003−181932)
【出願日】平成15年6月26日(2003.6.26)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】