説明

2−アミノ−3−ブテン−1−オール化合物の製造方法

【課題】2−アミノ−3−ブテン−1−オール化合物を製造できる新たな方法を提供する。
【解決手段】フタルイミドと3−ブテン−1,2−エポキシドから得られる2−フタルイミド−3−ブテノール化合物とアンモニアとを反応させる工程を有することを特徴とする式(2)


(式中、R、R及びRはそれぞれ、はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は水素原子を表す。)で示される2−アミノ−3−ブテン−1−オール化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−アミノ−3−ブテン−1−オール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−アミノ−3−ブテン−1−オール化合物の製造方法として、例えば、非特許文献1には、1,2−エポキシブテンに対してアンモニア水を作用させ、2−アミノ−3−ブテン−1−オールを得る方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Journal of the American Chemical Society,第79巻,第4792〜4796頁(1950年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、2−アミノ−3−ブテン−1−オール化合物を製造できる新たな方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討し、本発明に至った。
【0006】
即ち本発明は、以下の通りである。
〔1〕式(3)

(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は水素原子を表す。R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は水素原子を表すか、RとRとが結合してシクロアルキル環又は芳香環を形成する。破線は、当該箇所が二重結合であってもよいことを表す。)
で示されるアルケニルイミド化合物とアンモニアとを反応させる工程を有することを特徴とする式(2)

(式中、R、R及びRはそれぞれ、上記で定義した通り。)
で示される2−アミノ−3−ブテン−1−オール化合物の製造方法。
〔2〕前記工程が、アンモニウム塩の存在下に前記式(3)で示されるアルケニルイミド化合物とアンモニアとを反応させる工程であることを特徴とする〔1〕記載の製造方法。
〔3〕前記式(3)で示されるアルケニルイミド化合物が、パラジウム触媒の存在下に式(1)

(式中、R、R及びRはそれぞれ、上記で定義した通り。)
で示される化合物と、式(4)

(式中、R、R及び破線はそれぞれ、上記で定義した通り。)
で示される化合物とを反応させる工程を経て得られたものである前記〔1〕又は〔2〕記載の製造方法。
〔4〕前記式(4)で示される化合物が、前記式(3)で示されるアルケニルイミド化合物とアンモニアとを反応させる工程を経て回収されたものである前記〔3〕記載の製造方法。
〔5〕R、R及びRが全て水素原子である前記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2−アミノ−3−ブテン−1−オール化合物を製造できる新たな方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明は、前記式(3)で示されるアルケニルイミド化合物(以下、化合物(3)と記すことがある。)とアンモニアとを反応させる工程(以下、工程Bと記すことがある。)を含むことを特徴とする。以下、化合物(3)とアンモニアとの反応を、本反応と記すことがある。本反応により、化合物(3)は前記式(2)で示される2−アミノ−3−ブテン−1−オール化合物(以下、化合物(2)と記すことがある。)に変換される。
【0009】
式(3)において、R、R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は水素原子を表す。R、R及びRは、全て水素原子であることが好ましい。
【0010】
、R及びRでそれぞれ独立に表される、置換基を有していてもよいアルキル基におけるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びメンチル基等の直鎖状、分枝鎖状又は環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。かかるアルキル基は、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アリール基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基及びエトキシ基が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が挙げられ、アリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられる。置換基を有するアルキル基としては、例えばクロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基及びベンジル基が挙げられる。
【0011】
、R及びRでそれぞれ独立に表される、置換基を有していてもよいアリール基におけるアリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。かかるアリール基は、例えば、上記したアルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アリール基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい。R、R及びRでそれぞれ独立に表される、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基及び4−メトキシフェニル基が挙げられる。
【0012】
式(3)において、R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は水素原子を表すか、RとRとが結合してシクロアルキル環又は芳香環を形成する。
【0013】
及びRでそれぞれ独立に表される、置換基を有していてもよいアルキル基におけるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基及びメンチル基等の直鎖状、分枝鎖状又は環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。かかるアルキル基は、例えば、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アリール基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基及びエトキシ基が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が挙げられ、アリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられる。置換基を有するアルキル基としては、例えばクロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、2−メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基及びベンジル基が挙げられる。
【0014】
及びRでそれぞれ独立に表される、置換基を有していてもよいアリール基におけるアリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。かかるアリール基は、例えば、上記したアルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アリール基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよい。R及びRでそれぞれ独立に表される、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基及び4−メトキシフェニル基が挙げられる。
【0015】
とRとが結合して形成されるシクロアルキル環としては、例えばシクロペンチル環、シクロヘキシル環、シクロヘプチル環及びシクロオクチル環が挙げられる。
とRとが結合して形成される芳香環としては、例えばベンゼン環が挙げられる。ここで、ベンゼン環等の芳香環に含まれる水素原子は、アルコキシ基、ハロゲン原子、アルコキシカルボニル基、アリール基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の基で置換されていてもよい。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基及びエトキシ基が挙げられ、ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が挙げられ、アリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられる。
【0016】
式(3)において、破線は、当該箇所が二重結合であってもよいことを表す。
【0017】
化合物(3)としては、例えば3−ブテン−2−フタルイミド−1−オール、3−メチル−3−ブテン−2−フタルイミド−1−オール、4−フェニル−3−ブテン−2−フタルイミド−1−オール、3−ブテン−2−マレイミド−1−オール、3−メチル−3−ブテン−2−マレイミド−1−オール、4−フェニル−3−ブテン−2−マレイミド−1−オール、3−ブテン−2−スクシンイミド−1−オール、3−メチル−3−ブテン−2−スクシンイミド−1−オール及び4−フェニル−3−ブテン−2−スクシンイミド−1−オールが挙げられる。
【0018】
化合物(3)は、好ましくは、パラジウム触媒の存在下に式(1)

(式中、R、R及びRはそれぞれ、上記で定義した通り。)
で示される化合物(以下、化合物(1)と記すことがある。)と、式(4)

(式中、R、R及び破線はそれぞれ、上記で定義した通り。)
で示される化合物(以下、化合物(4)と記すことがある。)とを反応させる工程(以下、工程Aと記すことがある、)を経て製造される。即ち、本発明は前記工程Bに加えて、さらにかかる工程Aを含むことが好ましい。以下、工程Aの反応を、本開環反応と記すことがある。
【0019】
化合物(1)としては、例えば1,2−エポキシ−3−ブテン、1,2−エポキシ−3−メチル−3−ブテン、1,2−エポキシ−4−フェニル−3−ブテン等が挙げられる。
化合物(1)は、例えば、銀含有触媒の存在下にジエン化合物を酸素酸化する方法(例えば、特許第2854059号公報参照。)等の公知の方法により製造することができる。
【0020】
化合物(4)としては、例えばフタルイミド、4,5−ジクロルフタルイミド、ヘキサヒドロフタルイミド、テトラヒドロフタルイミド、コハク酸イミド、2,3−ジメチルコハク酸イミド、2−メチルコハク酸イミド、2,3−ジフェニルコハク酸イミド、2−フェニルコハク酸イミド、マレイミド、2,3−ジメチルマレイミド、2−メチルマレイミド、2,3−ジフェニルマレイミド及び2−フェニルマレイミド等が挙げられる。
化合物(4)は、市販品であってもよいし、公知の方法により製造したものであってもよい。
【0021】
本開環反応に用いられるパラジウム触媒は、パラジウム元素を含有する化合物であれば、パラジウムの価数やその配位子は限定されず、好ましくは、パラジウムとリン化合物とから構成される、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体等のパラジウム触媒が挙げられる。かかるパラジウム触媒は、市販品であってもよく、リン化合物とパラジウム化合物とを反応させることにより調製されたものであってもよい。パラジウム触媒は、より好ましくは、0価パラジウムとリン化合物とから構成される。
【0022】
パラジウム触媒の調製に用いられるパラジウム化合物としては、例えば1,5-ジフェニル−1,4−ペンタジエン−3−オン(パラジウム)錯体、ビス(1,5-ジフェニル−1,4−ペンタジエン−3−オン)(パラジウム)錯体、トリス(1,5-ジフェニル−1,4−ペンタジエン−3−オン)ジ(パラジウム)クロロホルム錯体、アリルパラジウムクロライドダイマー、シクロオクタジエンパラジウムジクロライド、シクロオクタジエンパラジウムジブロマイド、ノルボルナジエンパラジウムジブロマイド、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトン、ビスアセトニトリルジクロロパラジウム及びビスベンゾニトリルジクロロパラジウムが挙げられる。パラジウム化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
パラジウム触媒の調製に用いられるリン化合物は、一種であってもよく、二種以上の混合物であってもよい。リン化合物は、分子内に3価のリン原子を1以上有する化合物であり、例えば、PR(但し、R、R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルコキシ基又は置換基を有していてもよいアリールオキシ基を表す。)で示されるリン化合物である。
【0024】
、R及びRでそれぞれ独立に表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。かかるアルキル基は、例えばメトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等のハロゲン原子;メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェニル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基等のアリール基;並びにカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも一種の基を有していてもよく、かかる基を有するアルキル基としては、例えばクロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基及びベンジル基が挙げられる。
【0025】
、R及びRでそれぞれ独立に表されるアリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基及びフェロセニル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。かかるアリール基は、上記したアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の基を有していてもよく、かかる基を有していてもよいアリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基及び4−メトキシフェニル基等が挙げられる。
【0026】
、R及びRでそれぞれ独立に表されるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロプロポキシ基、シクロペンチルオキシ基及びシクロヘキシルオキシ基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。かかるアルコキシ基は、例えば、メトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子及び臭素原子等のハロゲン原子;メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェニル基及びナフチル基等のアリール基;並びにカルボキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の基を有していてもよく、かかる基を有するアルコキシ基としては、例えばクロロメトキシ基、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基及びベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0027】
、R及びRでそれぞれ独立に表されるアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基及びナフトキシ基等の炭素数6〜10のアリールオキシ基が挙げられる。かかるアリールオキシ基は、上記したアルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。かかるアリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基及び4−メトキシフェノキシ基が挙げられる。
【0028】
、R及びRでそれぞれ独立に表されるアルキル基、アリール基、アルコキシ基及びアリールオキシ基は、−PR(但し、R及びRはそれぞれ上記で定義した通り)で表される基を有していてもよい。
【0029】
かかるリン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(4−クロロフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフタレン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビフェニル、1,1’−オキシビス[2,1−フェニレンビス(ジフェニルホスフィン)]、トリイソプロピルホスフィン、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリイソプロピルホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト及びトリフェニルホスファイト等が挙げられ、好ましくは1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンである。
【0030】
リン化合物とパラジウム化合物との反応は、溶媒の非存在下に又は後述する本開環反応に用いられる溶媒の存在下に、リン化合物とパラジウム化合物とを混合することにより行われる。かかる反応により、パラジウム触媒が調製される。パラジウム化合物の使用量は、化合物(1)1モルに対して、0.000001モル〜0.1モルの範囲が好ましく、0.000001モル〜0.01モルの範囲がより好ましい。リン化合物の使用量は、パラジウム化合物に含まれるパラジウム原子1モルに対して、リン原子として、1モル〜10モルの範囲が好ましく、1モル〜3モルの範囲がより好ましい。
【0031】
本開環反応は、溶媒の非存在下に、又は、溶媒の存在下に実施される。溶媒としては、有機溶媒が用いられる。有機溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル及びテトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール及びtert−ブタノール等のアルコール溶媒;並びにアセトニトリル及びプロピオニトリル等のニトリル溶媒が挙げられる。有機溶媒の使用量は特に制限されず、容積効率等を考慮すると、実用的には、化合物(1)に対して、100重量倍以下である。
【0032】
本開環反応は、まず、溶媒の非存在下に又は溶媒の存在下にパラジウム触媒を調製し、このパラジウム触媒に、例えば、化合物(1)と化合物(4)とを添加し、混合することにより実施される。その添加順序は特に制限されず、好ましくは、パラジウム触媒に化合物(4)を添加し、得られた混合物に、化合物(1)を添加する方法が挙げられる。
【0033】
本開環反応は、常圧条件下でも実施できるし、加圧条件下でも実施できる。
本開環反応における反応温度は、−20℃〜150℃度の範囲が好ましく、0℃〜100℃の範囲がより好ましい。反応温度が150℃よりも高い場合は副反応により高沸点を有する副生成物が増加する傾向にあり、反応温度が−20℃よりも低い場合は、反応性が低下する傾向にある。
【0034】
反応の進行度合いは、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の分析手段により確認することができる。
【0035】
反応終了後、反応混合物は通常、化合物(3)を含んでおり、これをこのまま工程Bに用いることもできるし、必要に応じて、濾過によりパラジウム触媒を除去した後、濃縮処理、晶析処理等することにより、生成した化合物(3)を分離し、取り出して工程Bに用いることもできる。
【0036】
得られた化合物(3)は、例えば再結晶、カラムクロマトグラフィ等の精製手段によりさらに精製して工程Bに用いてもよい。
【0037】
本反応に用いられるアンモニアは、ガス状のものであってもよく、ガスを液化させたものであってもよい。また、市販の、或いは自製した、メタノール等の極性溶媒にアンモニアが溶解した溶液でもよい。好ましくは、ガス状のもの、ガスを液化させたもの又はメタノールにアンモニアが溶解したメタノール溶液が用いられる。
アンモニアの使用量は、化合物(3)1モルに対して、好ましくは1モル以上である。使用量の上限は特にないが、生産効率等を考慮すると、実用的には、化合物(3)1モルに対して、100モル以下である。
【0038】
本反応は、好ましくは、溶媒の存在下に実施される。溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル及びテトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール及びtert−ブタノール等のアルコール溶媒;並びに、アセトニトリル及びプロピオニトリル等のニトリル溶媒が挙げられる。溶媒は、好ましくはアルコール溶媒であり、さらに好ましくは、メタノールである。溶媒の使用量は特に制限されず、容積効率等を考慮すると、実用的には、化合物(3)に対して、100重量倍以下である。
【0039】
また本反応では反応を円滑に進行させるために、アンモニウム塩の存在下に実施することが好ましい。アンモニウム塩としては、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム等が挙げられる。アンモニウム塩の使用量は、化合物(3)1モルに対して、好ましくは0.01モル〜1モルの範囲である。
【0040】
本反応は、例えば、必要に応じて用いる溶媒及びアンモニウム塩の存在下に、化合物(3)とアンモニアとを接触、混合することにより実施される。その混合順序は特に制限されない。
【0041】
本反応は、常圧条件下でも実施でき、加圧条件下でも実施できる。本反応は、好ましくは、0.3MPa〜2MPaの加圧条件下で実施される。
反応温度は、0℃〜150℃の範囲が好ましく、40℃〜100℃の範囲がより好ましい。反応温度が150℃よりも高い場合は、副反応により高い沸点を有する副生物の生成が増加する傾向にあり、反応温度が0℃よりも低い場合は、反応性が低下する傾向にある。
【0042】
反応の進行度合いは、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の分析手段により確認することができる。
【0043】
反応終了後、反応混合物は通常、目的の化合物(2)と、副生物である化合物(4)とを含んでおり、必要に応じて過剰に使用したアンモニアを脱ガスすることにより回収した後、得られた溶液を例えば、以下の(a)〜(d)のいずれかに記載される方法により処理することで、生成した化合物(2)と化合物(4)とを分離し、化合物(2)を取り出し、精製するとともに、化合物(4)を回収することが可能である。(a)例えば、前記得られた溶液から、必要に応じて、アルコール溶媒等の溶媒を留去した後、残渣に、水と相溶性のない溶媒および鉱酸を加え、化合物(2)の鉱酸塩を水層に溶解させ、化合物(4)を有機層に溶解させ、これら水層と有機層とを分離する。得られた水層を中和した後、有機溶媒で抽出し、抽出液を濃縮することで化合物(2)を得ることができる。(b)例えば、前記得られた溶液に、化合物(4)を溶解しにくいヘキサン、ヘプタン等の飽和炭化水素溶媒を加え、化合物(4)を析出させた後、ろ過操作により化合物(2)と化合物(4)とを分離できる。(c)例えば、前記得られた溶液から溶媒を留去した後、残渣を、蒸留することで、化合物(2)と化合物(4)とを分離できる。(d)例えば、前記得られた溶液に、化合物(2)と塩を形成する有機酸を加え、形成された塩をろ過することで、化合物(2)と化合物(4)とを分離できる。かかる分離工程を、工程Cと記すこともある。
【0044】
得られた化合物(2)は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ等の精製手段によりさらに精製してもよい。
【0045】
かくして得られる化合物(2)としては、例えば3−ブテン−2−アミノ−1−オール、3−メチル−3−ブテン−2−アミノ−1−オール及び4−フェニル−3−ブテン−2−アミノ−1−オール等が挙げられる。
【0046】
また、(a)〜(d)のいずれかに記載される方法により回収された化合物(4)或いは化合物(4)を含有する溶液は、そのままもしくは必要に応じて濃縮処理等を行った後、工程Aに使用することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0048】
実施例1(工程A:2−フタルイミド−3−ブテノールの合成)
磁気回転子を付した100mLのシュレンク反応管に、窒素雰囲気下、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム1mg、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン2mg、フタルイミド295mg及びテトラヒドロフラン500mgを加え、20−25℃で15分間攪拌した。ここに、3−ブテン−1,2−エポキシド140mgを加え、20−25℃で、2時間攪拌、さらに内温60℃で2時間攪拌、保持した。反応後、反応混合物を室温まで冷却し、得られた反応混合物をガスクロマトグラフィー(GC)分析(内部標準法)したところ、2−フタルイミド−3−ブテノールの収率は90%であった。
【0049】
実施例2(工程A:2−フタルイミド−3−ブテノールの合成)
磁気回転子を付した100mLのシュレンク反応管に、窒素雰囲気下、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム35mg、トリフェニルホスフィン50mg、フタルイミド295mg及びテトラヒドロフラン500mgを加え、20−25℃で15分間攪拌した。ここに、3−ブテン−1,2−エポキシド140mgを加え、20−25℃で、2時間攪拌、保持した。反応後、得られた反応混合物をガスクロマトグラフィー(GC)分析(内部標準法)したところ、2−フタルイミド−3−ブテノールの収率は86%であった。
【0050】
実施例3(工程A:2−フタルイミド−3−ブテノールの合成)
磁気回転子を付した100mLのシュレンク反応管に、窒素雰囲気下、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム4mg、トリイソプロポキシホスフィン30mg、フタルイミド295mg及びテトラヒドロフラン500mgを加え、20−25℃で15分間攪拌した。ここに、3−ブテン−1,2−エポキシド140mgを加え、20−25℃で、2時間攪拌、保持した。反応後、得られた反応混合物をガスクロマトグラフィー(GC)分析(内部標準法)したところ、2−フタルイミド−3−ブテノールの収率は75%であった。
【0051】
実施例4(工程A:2−フタルイミド−3−ブテノールの合成)
磁気回転子を付した300mLのシュレンク反応管に、窒素雰囲気下、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム124mg、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン200mg及びフタルイミド10.5g、テトラヒドロフラン100gを加え、内温40℃で15分間攪拌した。ここに、3−ブテン−1,2−エポキシド5gを40℃、2時間かけて攪拌下、滴下し、さらに内温60℃で2時間攪拌、保持した。反応後、得られた反応混合物を室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィー(GC)分析(内部標準法)したところ、2−フタルイミド−3−ブテノールの収率は96%であった。
テトラヒドロフランを留去すると、2−フタルイミド−3−ブテノール15.5gが結晶として得られた。
【0052】
実施例5(工程B:2−アミノ−3−ブテノールの合成)
磁気回転子を付した100mLのステンレス製反応管に、実施例4で得られた2−フタルイミド−3−ブテノール1g、15重量%アンモニア/メタノール液10gを加え、内温80℃で6時間攪拌した。反応後、室温まで冷却し、反応液を濃縮して、オイルを得た。このオイルに酢酸エチル10gと、10重量%塩酸水10g加え、分液し、水層を濃縮すると薄黄色結晶420mgが得られた。この薄黄色結晶は、H−NMRより、2−アミノ−3−ブテノール塩酸塩であることが確認された。H−NMR(内部標準法)では純度80%であった。収率59%。
分液で得られた酢酸エチル層をガスクロマトグラフィー(GC)分析(内部標準法)したところ、2−フタルイミド−3−ブテノールの回収率は35%であり、フタルイミドの収率は60%であった。
【0053】
実施例6(工程A:2−フタルイミド−3−ブテノールの合成)
磁気回転子を付した300mLのシュレンク反応管に、窒素雰囲気下、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム124mg、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン200mg、フタルイミド10.5g及びテトラヒドロフラン100gを加え、内温40℃で15分間攪拌した。ここに、3−ブテン−1,2−エポキシド5gを40℃、2時間かけて攪拌下、滴下し、さらに内温60℃で2時間攪拌、保持した。反応後、得られた反応混合物を室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィー(GC)分析(内部標準法)したところ、2−フタルイミド−3−ブテノールの収率は80%であった。
テトラヒドロフランを留去し、析出した結晶をろ過して、2−フタルイミド−3−ブテノール11.5gが結晶として得られた。
【0054】
実施例7(工程B及びC:2−アミノ−3−ブテノールの合成及びフタルイミドの回収)
磁気回転子を付した100mLのステンレス製反応管に、実施例6で得られた2−フタルイミド−3−ブテノール10.5g、15重量%アンモニア/メタノール液66gと酢酸アンモニウム370mgを加え、内温90℃で18時間攪拌した。反応後、室温まで冷却し、生成したフタルイミドをろ過で回収した。ろ液を濃縮して、もう一度、析出したフタルイミドを回収し、少量の酢酸エチルで結晶を洗浄し、ろ洗液を合一してオイルを得た。このオイルに酢酸エチル20gと、8重量%塩酸水26g加え、分液し、水層を得た。水層が、アルカリ性になるまで水酸化ナトリウムを加え、テトラヒドロフランを加えると分液したので、得られた有機層を濃縮し、薄黄色オイルを得た。このオイルを減圧蒸留し、圧力0.67kPaで塔頂温度60℃〜63℃の成分として、2−アミノ−3−ブテノールを、2.0g得た。ガスクロマトグラフィー(GC)分析(面積百分率法)では純度95%であった。収率47%。
【0055】
実施例8(工程A:2−フタルイミド−3−ブテノールの合成)
磁気回転子を付した100mLのシュレンク反応管に、窒素雰囲気下、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム80mg、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン150mg、実施例7で回収したフタルイミド1.9g及びテトラヒドロフラン10gを加え、内温40℃で15分間攪拌した。ここに、3−ブテン−1,2−エポキシド500mgを40℃、10分間かけて攪拌下、滴下し、さらに内温40℃で2時間攪拌、保持した。反応後、得られた反応混合物を室温まで冷却し、ガスクロマトグラフィー(GC)分析(内部標準法)したところ、2−フタルイミド−3−ブテノールの収率は8%であった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
2−アミノ−3−ブテン−1−オール化合物は、機能性高分子用モノマーとして重要な化合物であり、医農薬等の生物活性物質原料としても重要な化合物である。本発明は、2−アミノ−3−ブテン−1−オール化合物を製造する方法として、産業上利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(3)

(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は水素原子を表す。R及びRはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基又は水素原子を表すか、RとRとが結合してシクロアルキル環又は芳香環を形成する。破線は、当該箇所が二重結合であってもよいことを表す。)
で示されるアルケニルイミド化合物とアンモニアとを反応させる工程を有することを特徴とする式(2)

(式中、R、R及びRはそれぞれ、上記で定義した通り。)
で示される2−アミノ−3−ブテン−1−オール化合物の製造方法。
【請求項2】
前記工程が、アンモニウム塩の存在下に前記式(3)で示されるアルケニルイミド化合物とアンモニアとを反応させる工程であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記式(3)で示されるアルケニルイミド化合物が、パラジウム触媒の存在下に式(1)

(式中、R、R及びRはそれぞれ、上記で定義した通り。)
で示される化合物と、式(4)

(式中、R、R及び破線はそれぞれ、上記で定義した通り。)
で示される化合物とを反応させる工程を経て得られたものである請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記式(4)で示される化合物が、前記式(3)で示されるアルケニルイミド化合物とアンモニアとを反応させる工程を経て回収されたものである請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
、R及びRが全て水素原子である請求項1〜4のいずれか記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−184219(P2012−184219A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−17675(P2012−17675)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】