説明

2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸含有水性液剤

2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物とチロキサポールなどのアルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーまたはモノステアリン酸グリコールなどのポリエチレングリコール脂坊酸エステルとを含有する水性液剤は安定であり、防腐剤が配合されている場合でも防腐剤は長期間にわたって、充分な防腐効力を有するので、点眼剤として眼瞼炎、結膜炎、強膜炎および術後炎症などの治療に有用である。また、点鼻剤としてアレルギー性鼻炎および炎症性鼻炎(慢性鼻炎、肥厚性鼻炎、鼻茸など)の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物を含有する水性液剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物とアルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーまたはポリエチレングリコール脂肪酸エステルを含有する水性液剤に関する。
【背景技術】
次の式(I):

で表され、化学名が2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸(一般名:ブロムフェナク)である化合物を包含するベンゾイルフェニル酢酸誘導体が知られている(特開昭52−23052号、対応US特許4,045,576号)。2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸、その薬理学的に許容できる塩およびそれらの水和物は、非ステロイド性抗炎症剤として知られ、眼科領域においては外眼部および前眼部の炎症性疾患(例えば眼瞼炎、結膜炎、強膜炎、術後炎症など)に対して有効であり、そのナトリウム塩が点眼液の形態で実用に供されている(「最近の新薬2001」、2001年版、株式会社薬事日報社、2001年5月11日、p.27−29)。
上記点眼液は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸に、水溶性高分子(ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなど)および亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム塩、亜硫酸カリウム塩など)を添加することにより、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の安定化が図られている(特許第2683676号、対応US特許4,910,225号)。
また上記以外の点眼剤として、特許第2954356号(対応US特許5,603,929号、5,653,972号)には、酸性眼科用試剤に抗菌性高分子4級アンモニウム化合物およびホウ酸を配合させてなる安定な眼科用組成物が報告されている。酸性眼科用試剤の例示として2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸が挙げられている。
また、特許第2954356号には、「塩化ベンザルコニウムは、眼科用溶液において広く使用される保存剤である。しかし、塩化ベンザルコニウムおよび他の4級アンモニウム化合物は、一般に非ステロイド系抗炎症薬剤のような、酸性基を有する薬剤の眼科用組成物と適合しないと考えられる。これらの保存剤は、荷電した薬剤化合物と錯体を形成するにつれて、機能する能力を失う」旨記載されている。
これら先行技術には、アルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーまたはポリエチレングリコール脂肪酸エステルが、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩などの水性液剤の安定化を図れ、かつ塩化ベンザルコニウムおよび他の4級アンモニウム化合物の防腐効力の低下を抑制する旨の記載はない。
【発明の開示】
本発明は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物を含有する、眼に刺激のないpH領域において安定で、しかも塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤が配合されている場合は、防腐効力が実質的に劣化しない水性液剤を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、水溶液における2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物の安定化方法を提供することにある。
さらに本発明の他の目的は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物および防腐剤を含有する水性液剤中に、特に塩化ベンザルコニウムなどの第4級アンモニウム塩類が防腐剤として配合されている場合に、防腐剤の防腐効力の低下が抑制された水性液剤を提供することにある。
本発明者らは種々検討を重ねた結果、水性液剤中の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸、その薬理学的に許容される塩またはそれらの水和物の水性液剤が、例えばチロキサポールなどのアルキルアリールポリエーテル型ポリマーまたは、例えばモノステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステルの添加により、眼刺激のないpH領域において安定で、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の経時変化を抑制できること、さらに水性液剤が防腐剤を含有する場合、防腐剤の防腐効力が劣化することを長期間にわたり抑制できることを見出し、さらに研究を進めて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1)2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物と、アルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーまたはポリエチレングリコール脂肪酸エステルを含有することを特徴とする水性液剤、
(2)アルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーはその重合度が3〜10であり、アルキルの炭素数が1〜18であり、アリールがフェニル残基であり、かつポリエーテルアルコールが式O(CHCHO)Hで表され、式中のXは5〜100の整数を示すものである上記(1)記載の水性液剤、
(3)アルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーがチロキサポールである上記(1)または(2)に記載の水性液剤、
(4)ポリエチレングリコール脂肪酸エステル中の脂肪酸の炭素数が12〜18である上記(1)記載の水性液剤、
(5)ポリエチレングリコール脂肪酸エステルがモノステアリン酸ポリエチレングリコールである上記(1)または(4)に記載の水性液剤、
(6)アルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーの濃度は下限濃度が0.01w/v%で、上限濃度が0.5w/v%の範囲から選択される上記(1)〜(3)のいずれかに記載の水性液剤、
(7)ポリエチレングリコール脂肪酸エステルの濃度は下限濃度が0.02w/v%で、上限濃度が0.1w/v%の範囲から選択される上記(1)、(2)または(4)のいずれかに記載の水性液剤、
(8)2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物の濃度は0.01〜0.5w/v%である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の水性液剤、
(9)防腐剤として塩化ベンザルコニウムを含有する上記(1)〜(8)のいずれかに記載の水性液剤、
(10)2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の薬理学的に許容できる塩がナトリウム塩である上記(1)〜(9)のいずれかに記載の水性液剤、
(11)水性液剤のpHが7〜9の範囲内である上記(1)〜(10)のいずれかに記載の水性液剤、
(12)水性液剤のpHが7.5〜8.5の範囲内である上記(11)に記載の水性液剤、
(13)点眼液である上記(1)〜(12)のいずれかに記載の水性液剤、
(14)点鼻液である上記(1)〜(12)のいずれかに記載の水性液剤、
(15)2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム・水和物、およびチロキサポール0.01w/v%〜0.5w/v%を含有する点眼液、
(16)2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム・水和物、およびモノステアリン酸ポリエチレングリコール0.02w/v%〜0.1w/v%を含有する点眼液、
(17)2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物を含有する水性液剤にチロキサポールまたはモノステアリン酸ポリエチレングリコールを配合することを特徴とする、水性液剤中の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸、その薬理学的に許容できる塩およびそれらの水和物を安定化する方法、および
(18)2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物および防腐剤を含有する水性液剤にチロキサポールまたはモノステアリン酸ポリエチレングリコールを配合することを特徴とする、該水性液剤中の防腐剤の防腐効力の低下を抑制する方法、
に関する。
本発明によれば、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物を含有する水性液剤に、チロキサポールなどのアルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーまたはモノステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステルを配合することにより、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物を含有する安定な水性液剤を調製できる。また、本発明の水性液剤は、防腐剤が配合される場合に、充分な防腐効力も有している。
したがって、本発明の水性液剤は、例えば点眼液として、例えば眼瞼炎、結膜炎、強膜炎、術後炎症などの治療に有利に用いられる。また、点鼻剤として、例えばアレルギー性鼻炎および炎症性鼻炎(例えば慢性鼻炎、肥厚性鼻炎、鼻茸など)などの治療に有利に用いることができる。
本発明において、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の薬理学的に許容できる塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩やカルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩などが挙げられる。これらの塩のうち、特にナトリウム塩が好ましい。
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸およびその薬理学的に許容できる塩は、例えば、特開昭52−23052号(対応US特許4,045,576号)記載の方法またはそれに準じた方法により適宜製造することができる。これら化合物は、合成の条件、再結晶の条件などによりそれらの水和物として得られる。水和物としては例えば1/2水和物、1水和物、3/2水和物などが例示されるが、3/2水和物が好ましい。
本発明の水性液剤において、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物の含有量(濃度範囲)は、通常、0.01w/v%〜0.5w/v%程度、好ましくは0.05w/v%〜0.2w/v%程度、特に好ましくは0.1w/v%程度とし、使用目的、適応症状の程度に応じて適宜増減するのが好ましい。
本発明において2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物の安定化剤として用いられる、非イオン性界面活性剤のアルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーのアルキルの炭素数は1〜18程度である。具体的には、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−エチルプロピル基、4−メチルペンチル基、1,1ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、イソウンデシル基、ドデシル基、イソドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ペンタデシル基、イソペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基およびそれらの異性体などが挙げられるが、これらのうちオクチル基およびその異性体(例えばイソオクチル基、sec−オクチル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、1,5−ジメチルヘキシル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基など)が好ましく、オクチル基の異性体である1,1,3,3−テトラメチルブチル基が特に好ましい。
アルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーのアリールはフェニル残基が好ましい。ポリエーテルアルコールとしては、式O(CHCHO)H(式中のXは5〜100の整数を示す。)で表されるポリエーテルアルコール、好ましくはXは5〜30の整数であるポリエーテルアルコール、さらに好ましくはXは8〜10の整数であるポリエーテルアルコールである。
ポリマーの平均重合度は3〜10程度が好ましい。
上記アルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーのうち、下記構造を有するチロキサポール(Tyloxapol)が特に好ましい。

本発明において2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物の安定化剤として用いられる、非イオン性界面活性剤のポリエチレングリコール脂肪酸エステルの脂肪酸は炭素数12〜18の脂肪酸が好ましい。具体的化合物としては、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(ステアリン酸ポリオキシル8、ステアリン酸ポリオキシル40など)、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジラウリル酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコールなどが挙げられる。これらのうちモノステアリン酸ポリエチレングリコールが好ましく、ステアリン酸ポリオキシル40(Polyoxyl 40 stearate)が特に好ましい。ステアリン酸ポリオキシル40は、酸化エチレンの縮重合体のモノステアリン酸エステルで、C1735COO(CHCHO)Hで表され、nは約40の非イオン性界面活性剤である。
本発明の水性液剤において、アルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーの含有量(濃度範囲)は使用する化合物の種類などによって異なるが、下限0.01w/v%程度、上限0.5w/v%程度である。たとえば、チロキサポールの含有量(濃度範囲)は、下限0.01、0.02または0.03w/v%程度、上限0.05、0.1、0.3または0.5w/v%程度、好ましくは下限0.02w/v%程度、上限0.05w/v%程度である。
本発明の水性液剤において、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルの含有量(濃度範囲)は使用する化合物の種類などによって異なるが、下限0.02w/v%程度、上限0.1w/v%程度である。たとえば、モノステアリン酸ポリエチレングリコールの含有量(濃度範囲)は、下限0.02w/v%程度、上限0.1w/v%程度、好ましくは下限0.02w/v%程度、上限0.05w/v%程度である。
本発明の水性液剤において、たとえばチロキサポールの配合比は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物1重量部に対し、下限0.1または0.2重量部程度、上限0.5、1、3または5重量部程度である。
本発明の水性液剤において、たとえばモノステアリン酸ポリエチレングリコールの配合比は、2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物1重量部に対し、下限0.2重量部程度、上限0.5、1重量部程度である。
本発明の水性液剤に用いられる防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウムや塩化ベンゼトニウムなどの第4級アンモニウム塩類、グルコン酸クロルヘキシジンなどが挙げられるが、特に塩化ベンザルコニウムが好ましい。
さらに、本発明の水性液剤には、本発明の目的に反しない限り、通常用いられる等張化剤、緩衝剤、粘稠化剤、安定化剤、キレート剤、pH調整剤、芳香剤などの各種添加剤を適宜添加してもよい。等張化剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ブドウ糖、プロピレングリコールなどが挙げられる。緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、ホウ酸、ホウ砂、アミノ酸などが挙げられる。粘稠化剤としては、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられる。安定化剤としては、亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩などが挙げられる。キレート剤としては、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、縮合燐酸ナトリウムなどが挙げられる。pH調整剤としては、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸などが挙げられる。芳香剤としては、1−メントール、ボルネオール、カンフル、ユーカリ油などが挙げられる。
本発明の水性液剤に配合される上記各添加剤の濃度は、例えば等張化剤は浸透圧比が0.8〜1.2程度になる濃度に配合し、緩衝剤は0.01〜2w/v%程度、粘稠化剤は0.1〜10w/v%程度である。
本発明の水性液剤のpHは、約6〜9程度、好ましくは約7〜9程度、特に好ましくは約7.5〜8.5程度に調整される。
本発明の水性液剤においては、本発明の目的に反しない限り、その他の同種または別種の薬効成分を適宜含有させてもよい。
本発明の水性液剤は、自体公知の調製法、例えば、第14改正日本薬局方、製剤総則の液剤あるいは点眼剤に記載された方法で製造することができる。
本発明の水性液剤は、温血動物(例えば、ヒト、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコなど)に使用することができる。
本発明の水性液剤は、上記した成分を例えば蒸留水、滅菌精製水に溶解させることにより容易に製造される。例えば、点眼剤として使用する場合は、外眼部および前眼部の炎症性疾患、具体的には例えば眼瞼炎、結膜炎、強膜炎、術後炎症などに用いることができる。その投与量は、例えば2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム・水和物0.1w/v%含有する本発明の点眼剤を成人に点眼する場合は、1回1〜2滴を1日3〜6回点眼すればよい。なお、適応症状の程度などにより、適宜投与回数を増減する。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、実験例、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実験例1 2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウムの安定性試験
第1表に示す4処方の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム配合の点眼液を調製し、ポリプロピレン容器に充填後、60℃における安定性について試験した。

第1表の残存率(%)は、容器からの水分の飛散を補正した値である。第1表から明らかなように、pH7.0、60℃、4週において、チロキサポール、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリソルベート80配合点眼液の順で2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウムは安定であった。
また、チロキサポール配合点眼液(処方A−02およびA−03)において、チロキサポール0.02w/v%配合した処方A−03の方が0.15w/v%配合した処方A−02よりも2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウムは安定であった。
実験例2 2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウムの安定性試験
第2表に示す5処方の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸配合の点眼液を調製し、ポリプロピレン容器に充填した。60℃、4週間保存後、点眼液中の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸量および点眼液のpHを測定した。

点眼液調整時の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウムを100%としたときの、60℃、4週後の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウムの残存率およびpHを第2表に示した。なお残存率は容器からの水分の飛散を補正した値である。第2表から明らかなように、pH約8.2において、0.02、0.03および0.05w/v%チロキサポールまたは0.02、0.05w/v%ステアリン酸ポリオキシル40を配合した処方A−04、A−05、A−06、A−07およびA−08は、60℃、4週で2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウムの残存率が90%以上であり、点眼液剤として充分な安定性を示した。
実験例3 2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム含有水性液剤の防腐効力試験
実験例2の処方A−04、A−05およびA−07について、Staphylococcus aureus(以下、S.aureusと略記する。)、Escherichia Coli(以下、E.coliと略記する。)、Pseudomonas aeruginosa(以下、P.aeruginosaと略記する。)、Candida albicans(以下、C.albicansと略記する。)およびAspergillus niger(以下、A.nigerと略記する。)に対する防腐効力につき試験した。
その結果を第3−1表、第3−2表および第3−3表に示す。



第3−1表、第3−2表および第3−3表から明らかなように、処方A−04の防腐効力は欧州薬局方(European Pharmacopoeia;EP)のEP−A基準(criteria A)、処方A−05およびA−07の防腐効力はEP−B基準(criteria B)に適合することがわかった。
EP−A基準およびEP−B基準は以下のとおりである。
EP−A基準;
細菌(S.aureus,P.aeruginosa)の生菌数が、接種6時間後に1/100以下、24時間後に1/1000以下となり、28日後に生菌が検出されないこと。
真菌(C.albicans,A.niger)の生菌数が、接種7日後に1/100以下、以降は7日後と同レベルかそれ以下となること。
EP−B基準;
細菌(S.aureus,P.aeruginosa)の生菌数が、接種24時間後に1/10以下、7日後に1/1000以下となり、以降は7日後と同レベルかそれ以下となること。
真菌(C.albicans,A.niger)の生菌数が、接種14日後に1/10以下、以降は7日後と同レベルかそれ以下となること。
実施例1 点眼液
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム・3/2
水和物 0.1g
ホウ酸 1.1g
ホウ砂 1.1g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
チロキサポール 0.02g
ポリビニルピロリドン(K−30) 2.0g
エデト酸ナトリウム 0.02g
水酸化ナトリウム 適量
滅菌精製水 全量100mL
pH8.17
以上の成分を用いて、常法により点眼液とする。
実施例2 点眼液
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム・3/2
水和物 0.1g
ホウ酸 1.1g
ホウ砂 1.1g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
チロキサポール 0.05g
ポリビニルピロリドン(K−30) 2.0g
エデト酸ナトリウム 0.02g
水酸化ナトリウム 適量
滅菌精製水 全量100mL
pH8.16
以上の成分を用いて、常法により点眼液とする。
実施例3 点眼液
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム・3/2
水和物 0.1g
ホウ酸 1.1g
ホウ砂 1.1g
塩化ベンザルコニウム 0.005g
ステアリン酸ポリオキシル40 0.02g
ポリビニルピロリドン(K−30) 2.0g
エデト酸ナトリウム 0.02g
水酸化ナトリウム 適量
滅菌精製水 全量100mL
pH8.19
以上の成分を用いて、常法により点眼液とする。
【産業上の利用可能性】
本発明の水性液剤は、例えば点眼液として、眼瞼炎、結膜炎、強膜炎および術後炎症などの治療に有用である。また、点鼻剤として、アレルギー性鼻炎および炎症性鼻炎(慢性鼻炎、肥厚性鼻炎、鼻茸など)の治療に有用である。
本出願は日本で出願された特願2003−12427を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。また、本明細書において引用された特許および特許出願を含む文献は、引用したことによってその内容のすべてが開示されたと同程度に本明細書中に組み込まれるものである。さらに、本発明は、前述の説明および実施例に特に記載した以外も、実施できることは明らかであるので、上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変および変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物と、アルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーまたはポリエチレングリコール脂肪酸エステルを含有することを特徴とする水性液剤。
【請求項2】
アルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーはその重合度が3〜10であり、アルキルの炭素数が1〜18であり、アリールがフェニル残基であり、かつポリエーテルアルコールが式O(CHCHO)Hで表され、式中のXは5〜100の整数を示すものである請求の範囲1記載の水性液剤。
【請求項3】
アルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーがチロキサポールである請求の範囲1または2に記載の水性液剤。
【請求項4】
ポリエチレングリコール脂肪酸エステル中の脂肪酸の炭素数が12〜18である請求の範囲1記載の水性液剤。
【請求項5】
ポリエチレングリコール脂肪酸エステルがモノステアリン酸ポリエチレングリコールである請求の範囲1または4に記載の水性液剤。
【請求項6】
アルキルアリールポリエーテルアルコール型ポリマーの濃度は下限濃度が0.01w/v%で、上限濃度が0.5w/v%の範囲から選択される請求の範囲1〜3のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項7】
ポリエチレングリコール脂肪酸エステルの濃度は下限濃度が0.02w/v%で、上限濃度が0.1w/v%の範囲から選択される請求の範囲1、2または4のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項8】
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物の濃度は0.01〜0.5w/v%である請求の範囲1〜7のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項9】
防腐剤として塩化ベンザルコニウムを含有する請求の範囲1〜8のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項10】
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸の薬理学的に許容できる塩がナトリウム塩である請求の範囲1〜9のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項11】
水性液剤のpHが7〜9の範囲内である請求の範囲1〜10のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項12】
水性液剤のpHが7.5〜8.5の範囲内である請求の範囲11に記載の水性液剤。
【請求項13】
点眼液である請求の範囲1〜12のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項14】
点鼻液である請求の範囲1〜12のいずれかに記載の水性液剤。
【請求項15】
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム・水和物、およびチロキサポール0.01w/v%〜0.5w/v%を含有する点眼液。
【請求項16】
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸ナトリウム・水和物、およびモノステアリン酸ポリエチレングリコール0.02w/v%〜0.1w/v%を含有する点眼液。
【請求項17】
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物を含有する水性液剤にチロキサポールまたはモノステアリン酸ポリエチレングリコールを配合することを特徴とする、水性液剤中の2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸、その薬理学的に許容できる塩およびそれらの水和物を安定化する方法。
【請求項18】
2−アミノ−3−(4−ブロモベンゾイル)フェニル酢酸もしくはその薬理学的に許容できる塩またはそれらの水和物および防腐剤を含有する水性液剤にチロキサポールまたはモノステアリン酸ポリエチレングリコールを配合することを特徴とする、該水性液剤中の防腐剤の防腐効力の低下を抑制する方法。

【国際公開番号】WO2004/064828
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−508062(P2005−508062)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000350
【国際出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【出願人】(000199175)千寿製薬株式会社 (46)
【Fターム(参考)】