説明

2−アミノベンゾイル誘導体

本発明は、2-アミノベンゾイル-アルキルアミン、-アルキルアミドおよび-アルキルチオアミド、および様々な生理学的症状の処置および予防へのそれらの適用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な2-アミノベンゾイル誘導体、それらを含有する医薬製剤、および様々な疾患を処置または予防するための医薬の製造における該化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は概して新規な化合物、治療におけるそれらの使用、およびそれらを含有する医薬製剤に関する。
【0003】
アミノ酸、トリプトファンは、「キヌレニン経路」によって生物学的に変換される(Beadle, G. W., Mitchell, H. K., and Nyc, J. F., Proc. Nat. Acad. SC., 33, 155 (1948); Charles Heidelberger, Mary E. Gullberg, Agnes Fay Morgan, and Samuel Lepkovsky TRYPTOPHAN METABOLISM. I. CONCERNING THE MECHANISM OF THE MAMMALIAN CONVERSION OF TRYPTOPHAN INTO KYNURENINE, KYNURENIC ACID, AND NICOTINIC ACID. J. Biol. Chem. (1949) 179: 143-150を参照のこと)。食事由来の全トリプトファンのうち95%より多くがキヌレニンに代謝される(Wolf, H. -Studies on tryptophan metabolism in man. Scand J Clin Lab Invest 136(suppl.): 1-186, 1974)。周辺組織、特に肝臓において、トリプトファンのインドール環は、トリプトファンジオキシゲナーゼまたはインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼによって修飾され、ホルミルキヌレニンを生じる。その後ホルミルキヌレニンは、キヌレニンホルミラーゼによりキヌレニン経路の主要化合物であるL-キヌレニンに素早く変換される(W. Eugene Knox and Alan H. Mehler THE CONVERSION OF TRYPTOPHAN TO KYNURENINE IN LIVER. I. THE COUPLED TRYPTOPHAN PEROXIDASE-OXIDASE SYSTEM FORMING FORMYLKYNURENINE J. Biol. Chem. (1950) 187: 419-430)。L-キヌレニンは、血液、脳および周辺器官に低濃度で存在し、大型中性アミノ酸担体によって血液脳関門を容易に通過することができる。L-キヌレニンは哺乳類組織において3種の酵素によって代謝される:3-ヒドロキシ-キヌレニン(3-HK)を生じるキヌレニン3-ヒドロキシラーゼ;アントラニル酸を生じるキヌレニナーゼおよびキヌレン酸形成を引き起こすキヌレニンアミノトランスフェラーゼ(KAT)。3-HKは、同じKATによって代謝され、該経路の代謝的に不活性な副産物であるキサンツレン酸を生じるか、またはキヌレニナーゼによって代謝され、3-ヒドロキシアントラニル酸を生じ、最終的にキノリン酸に変換される。最後に、キノリン酸はキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼによって代謝され、ニコチン酸モノヌクレオチド、次いで最終生成物NAD+などの分解生成物を生じる。
【0004】
キヌレン酸、3-ヒドロキシキヌレニンおよびキノリン酸はすべて、この分解カスケードの神経活性中間体である。3-ヒドロキシキヌレニンは、フリーラジカル生成体(free radical generator)であり、アポトーシスの誘発、興奮毒性の増強、白内障形成、神経変性疾患、脳卒中、外傷性損傷、神経ウイルス病および神経炎症を引き起こすことが示されている。キノリン酸は、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)レセプターアゴニストおよびフリーラジカル生成体であり、興奮毒性、神経変性疾患、脳卒中、外傷性脳損傷、癲癇、脳性マラリア、周生期低酸素症、神経ウイルス病および神経炎症を引き起こし得る物質である。内因性のキノリン酸は、NMDAレセプター活性化を引き起こす可能性があり、その結果興奮毒性および神経毒性が促進され、NMDAレセプターが媒介する生理学的および病理学的作用が導かれる。この3つの向神経活性キヌレニンのうち、キヌレン酸(KYNA)は近年最も注目されている。神経抑制性化合物として20年前に初めて記載された、非生理学的に高濃度のKYNAは、イオンチャンネル型グルタミン酸レセプターの広域性アンタゴニストである。高濃度のKYNAは抗痙攣性であり、興奮毒性損傷に対して優れた保護作用を示す。非常に低濃度では、KYNAはNMDAレセプターのグリシンコアゴニスト部位の競合的ブロッカーとして、またα7ニコチン性アセチルコリンレセプターの非競合的インヒビターとして働く。これら2つのCa2+浸透性レセプターに対するKYNAの親和性は、ヒト脳におけるKYNA濃度範囲にあり、これが調度齧歯類の脳における(低)KYNA量に近いということは、グルタミン酸作動性およびコリン作動性神経伝達における生理学的作用を示唆している。そのような役割についての直接的なサポートは、例えば、ラットの線条体におけるインビボ研究で提供されており、そこではKYNA濃度の減少が興奮毒性傷害に対する脆弱性を強め、逆にKYNAが適度に上昇するとグルタミン酸の放出が抑制される(Schwarcz R, Pellicciari R. Manipulation of brain kynurenines: glial targets, neuronal effects, and clinical opportunities. J Pharmacol Exp Ther. 2002 : 303:1-10)。
【0005】
キヌレニンは、神経変性および発作性疾患の病態生理学に関与するだけでなく、多数の病原学的に多様なCNS疾患にも影響することが示唆されているので、キヌレニンの生成を調節することは重要である。我々は本明細書に記載の2-アミノベンゾイル誘導体(キヌレニン様化合物)がそのような治療的介入に有用であることを提案する。提案する作用機序は、これらに限定するものではないが、キヌレニン経路内酵素の阻害、および/または中間化合物の阻害、および/またはフリーラジカル形成の阻害による。
【発明の開示】
【0006】
[発明の概要]
本発明は、式(I):
【化1】

[式中、AはC1-6アルキレン;R、R1およびR2は独立して水素、ハロ、ハロアルキル、アリール、複素環基、ヘテロアリール基、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヒドロキシアルキル、ニトロ、アミノ、シアノ、シアナミド、グアニジン、アミジノ、アシルアミド、ヒドロキシ、チオール、アシルオキシ、アジド、アルコキシ、カルボキシ、カルボニルアミド、S-アルキルまたはアルキルチオール(alkylyhiol);Xは>C1-6アルキレン、>C=Oまたは>C=Sまたは単結合;Yは水素、ハロ、ハロアルキル、アリール、複素環基、ヘテロアリール基、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヒドロキシアルキル、ニトロ、アミノ、シアノ、シアナミド、グアニジン、アミジノ、アシルアミド、ヒドロキシ、チオール、アシルオキシ、アジド、アルコキシ、カルボキシ、カルボニルアミドスチリル(水素、ハロ、ハロアルキル、アリール、複素環基、ヘテロアリール基、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヒドロキシアルキル、ニトロ、アミノ、シアノ、シアナミド、グアニジン、アミジノ、アシルアミド、ヒドロキシ、チオール、アシルオキシ、アジド、アルコキシ、S-アルキル、アルキルチオールまたは-COQ(ここでQはヒドロキシ、C1-6アルコキシ、アミノ、モノ-C1-6アルキルアミノ、ジ-C1-6アルキルアミノ、ヒドロキシルアミノ、C1-4アルコキシアミノまたはアリール-C1-4-アルコキシアミノである)のうちから独立して選択される4までの置換基によって環置換されていてもよい)であるが、(a)同時にXが>C=O、Yがメチル、AがCH2CH2、Rが5-メトキシ、R1がHまたはホルミルおよびR2がHである化合物、および(b)-A(R2)-NH-X-Y部分が-CH2CH(COQ)-NH2または-CH(ハロアルキル)-CH(COQ)-NH2である化合物は除く。]
を有する化合物、およびその立体異性体および製薬的に許容される塩に関する。
【0007】
本発明の好ましい化合物であるサブグループ(式II)は、Rが水素、メチルまたはメトキシ、R1が水素またはホルミル、R2が水素またはカルボキシル、R3が水素、ハロ、ハロアルキル、アリール、複素環基、ヘテロアリール基、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヒドロキシアルキル、ニトロ、アミノ、シアノ、シアナミド、グアニジン、アミジノ、アシルアミド、ヒドロキシ、チオール、アシルオキシ、アジド、アルコキシ、カルボキシ、カルボニルアミド、S-アルキルまたはアルキルチオールと定義するもので、この定義は本発明の化合物の普遍性に影響することなく、またその立体異性体および製薬的に許容される塩も含む。
【化2】

【0008】
本発明の化合物の別のサブグループは、式(I)において、Xが2-フリル、2-ジヒドロフリル、2-テトラヒドロフリルまたは(2-R°-COO-)フェニルであり、そのうちいずれもC1-4アルキル、C1-4アルコキシ、OH、ニトロから選択される1から2の置換基で置換されていてもよく、Yが水素またはスチリル(ハロゲン、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、OH、ニトロ、アリール、アリール-C1-4アルキルまたはアリール-C1-4アルコキシのうちから独立して選択される2までの置換基で環置換されている)と定義するものであり、またその立体異性体および製薬的に許容される塩も含む。
【0009】
本発明はまたその範囲内に、活性成分としての式(I)の化合物またはその製薬的に許容される塩ならびに式(I)でカバーされるあらゆる潜在的異性体または異性体の混合物の治療的有効量を、1またはそれ以上の製薬的に許容される希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、賦形剤および担体と関連づけて含有する医薬製剤、特に従来から医薬および動物用製剤に用いられている製剤を含む。本発明の医薬製剤はヒトおよび/または動物への投与に適合させてもよい。
【0010】
式(I)の化合物は、脳卒中、虚血、CNSの外傷、低血糖および手術、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、パーキンソン病およびダウン症候群のような神経変性疾患を含むCNS疾患に関係する神経細胞の損失の処置および/または予防および/または最小化、興奮性アミノ酸の過剰刺激、精神疾患、例えば、睡眠障害、癲癇および他の痙攣性疾患、不安、精神医学的疾患、精神病、老年性認知症、多発脳梗塞性認知症、慢性疼痛(無痛覚症)、緑内障、CMV網膜炎、尿失禁といった有害な症状の処置または予防、および麻酔状態の誘導ならびに認知の促進、および麻薬耐性および禁断症状の防止に有用である。
【0011】
本発明の化合物の投与による処置に反応すると考えられる症状をさらに詳述または説明すると、そのような症状には、不能;高血圧を含む心臓血管疾患、血液凝固の防止、消炎(anti-inflammation)、神経障害、時間生物学に基づく疾患、例えば、時差ボケ、睡眠相後退症候群(delayed sleep syndrome)、交代勤務睡眠障害(shift-work problems)のような概日リズム睡眠障害(circadian sleep disorders)、および季節性関連疾患、例えば、季節性情動障害(SAD);内分泌徴候(endocrine indications)、例えば、避妊および不妊症、性早熟症、月経前症候群、高プロラクチン血症、および成長ホルモン欠損症;例えば癌および他の増殖性疾患(良性および腫瘍性前立腺肥大(prostate growth))などの腫瘍性疾患、AIDSを含む免疫系疾患、老化関連症状、眼科疾患、群発性頭痛、片頭痛、肌の保護(skin-protection)、糖尿病の安定化および体重増加疾患(レプチン、肥満)、また動物育種、例えば、繁殖性、思春期、毛色の制御の補助が含まれる。
【0012】
[発明の詳細な説明]
すでに上述したサブグループに加え、本発明の好ましい化合物の別のサブグループは、式(I)においてXが2,4-ジニトロフェニル基、AがCH2CH2またはCH2CHCOOH、R2とYがそれぞれ水素と定義され、この定義は本発明の化合物の普遍性に影響しない。
【0013】
本発明の化合物の別のサブグループは、式(I)においてR2が水素であり、且つ以下の状態、すなわちRが5-メトキシおよび/またはAがCH2CH2またはCH2CHCOOHのうち、少なくとも1つがあてはまると定義され、またこれらのサブグループでは、好ましくはR1も水素である。本発明の化合物において、特にR1=Hの場合、XおよびYの組み合わせの例は以下のとおりである:
Xが-CO-およびYが2-フリル;または
Xが-CO-およびYが2-テトラヒドロフリル;または
Xが-CH2-およびYが2-テトラヒドロフリル;または
Xが-CO-およびYが2-アセトキシフェニル;または
Xが-CO-およびYが3,4-ジヒドロキシスチリルまたは3,4-ジヒドロキシシンナモイルオキシ。
【0014】
本発明はまたその範囲内に、活性成分としての式(I)の化合物またはその製薬的に許容される塩ならびに式(I)でカバーされるあらゆる潜在的異性体または異性体の混合物の治療的有効量を、1またはそれ以上の製薬的に許容される希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、賦形剤および担体と関連づけて含有する医薬製剤、特に従来から医薬および動物用製剤に用いられている製剤を含む。本発明の医薬製剤はヒトおよび/または動物への投与に適合させてもよい。
【0015】
本発明の医薬製剤は、好ましくは少なくとも1の以下の性質を特徴とする:
(i) 経口、直腸、非経口、経頬側、肺内(例えば吸入により)または経皮投与に適している;
(ii) 単位用量剤形であり、各単位用量には前記の少なくとも1の化合物が0.0025-1000mgの範囲で含まれる;
(iii) 前記少なくとも1の化合物が所定の制御速度で放出される、放出制御製剤である。
【0016】
経口投与において、該医薬製剤は、例えば錠剤、カプセル剤、乳剤、溶液剤、シロップ剤または懸濁剤として用いてもよい。非経口投与において、該製剤はアンプルとして、もしくは水性または油性ビヒクルの懸濁剤、溶剤または乳剤として用いてもよい。懸濁化、可溶化および/または分散剤の要不要は、当然ながら具体的態様に用いるビヒクルにおける溶解度もしくは活性化合物から考慮する。該製剤は、例えば生理学的に適合する防腐剤および抗酸化剤をさらに含有してもよい。局所適用に用いる製剤、例えばクリーム、ローションまたはペーストにおいて、活性成分は従来の油性または乳化賦形剤と混合してもよい。
【0017】
該医薬製剤は、カカオバターまたは他のグリセリドのような従来の坐剤用基剤を含む坐剤として用いてもよい。または、該製剤は、あらかじめ設定した時間をかけて活性製剤を体内で徐々に放出するデポー形態で用いてもよい。さらに、本発明の化合物は経頬側、肺内または経皮輸送系を用いて投与してもよい。
【0018】
また、式(I)の化合物およびその塩と、他の活性成分、特に他の神経遮断薬、感情調整薬、抗不安薬、精神安定薬、鎮痛薬、抗パーキンソン病薬(ドーパミン作動薬および非ドーパミン作動薬)などとの組み合わせも、本発明の範囲に含まれる。
【0019】
本発明の化合物は、脳卒中、虚血、CNSの外傷、低血糖および手術、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、パーキンソン病およびダウン症候群のような神経変性疾患を含むCNS疾患に関係する神経細胞の損失の処置および/または予防および/または最小化、興奮性アミノ酸の過剰刺激、精神疾患、例えば、睡眠障害、癲癇および他の痙攣性疾患、不安、精神医学的疾患、精神病、老年性認知症、多発脳梗塞性認知症、慢性疼痛(無痛覚症)、緑内障、CMV網膜炎、尿失禁といった有害な症状の処置または予防、および麻酔状態の誘導ならびに認知の促進、および麻薬耐性および禁断症状の防止に有用である。
【0020】
本発明の化合物の投与による処置に反応すると考えられる症状をさらに詳述または説明すると、そのような症状には、不能;高血圧を含む心臓血管疾患、血液凝固の防止、抗炎症(anti-inflammatory)、神経障害、時間生物学に基づく疾患、例えば、時差ボケ、睡眠相後退症候群、交代勤務睡眠障害のような概日リズム睡眠障害、および季節性関連疾患、例えば、季節性情動障害(SAD);内分泌徴候、例えば、避妊および不妊症、性早熟症、月経前症候群、高プロラクチン血症、および成長ホルモン欠損症;例えば癌および他の増殖性疾患(良性および腫瘍性前立腺肥大)などの腫瘍性疾患;AIDSを含む免疫系疾患;老化関連症状;眼科疾患;群発性頭痛、片頭痛;肌の保護、糖尿病の安定化および体重増加疾患(レプチン、肥満)、また動物育種、例えば、繁殖性、思春期、毛色の制御の補助が含まれる。
【0021】
以下の実施例で本発明を例証する。以下の実施例は例示に過ぎず、いずれにせよ本発明の範囲の限定を意図するものではないことを理解されたい。
【実施例1】
【0022】
2-(2-アミノベンゾイル)-N-(2,4-ジニトロフェニル)エチルアミン。
【化3】

キヌラミン(Kynuramine)・2HBr(125mg)を50ccのフラスコ中無水エタノール5ccに溶解する。次いでEtOH 5ccに対し2,4-ジニトロフルオロベンゼン71mgの溶液を加える(黄色透明溶液が生じる)。5分後、そのフラスコに、10%NaHCO3溶液2ccを滴加する。反応を室温で一晩おく。翌朝生じた明黄色沈殿をろ過し、水およびエタノールで洗浄し、UHVで乾燥させ、80mgの産物を得る(収率約63%)。
【実施例2】
【0023】
3-(2-アミノベンゾイル)-2-(2,4-ジニトロアニリノ)プロパン酸。
【化4】

L-キヌレニン(125mg)を50ccのフラスコ中無水エタノール5ccに溶解する。次いでEtOH 5ccに対し2,4-ジニトロフルオロベンゼン71mgの溶液を加える(黄色透明溶液が生じる)。5分後、そのフラスコに、10%NaHCO3溶液2ccを滴加する。反応を室温で一晩おく。翌朝生じた明黄色沈殿をろ過し、水およびエタノールで洗浄し、UHVで乾燥させ、80mgの産物を得る(収率約71%)。
【0024】
本発明はまた、式(I)の化合物の製薬的に許容される塩、および式(I)でカバーされる潜在的異性体および異性体の混合物も含む。
【0025】
[本発明化合物の動物実験]
実験1:
閾値下用量のLドーパ供与/非供与MPTP処置マウスを用いた抗パーキンソニズム活性の評価
【0026】
動物:体重22-25gの月齢6ヶ月のオスのC57 BL/6マウスを用いた。マウスの研究室到着後、温度調節した室内(21±1℃)で一定の明-暗スケジュール(12時間入/12時間切、06.00時から18.00時の間に照明をつける)に2週間順応させた。その間、食物および水が自由に摂取できる状態を維持した。それらを12匹のマウス群に分けて収容し、明るい時間帯(08.00時から15.00時)にのみ検査した。どの検査も通常照明の室内で実施した。各検査室(つまり活性検査ケージ)は、12cmの厚さの壁とフロントパネルの付いた、薄暗い照明の防音木箱の中に置いた。
【0027】
行動測定法および装置:(深さ1cmのおがくず面上からそれぞれ2および8cmの2種類の高さの)2系列の赤外線内にそれぞれ置いたマクロロン(macrolon)齧歯類検査ケージ(40×25×15cm)からなる自動装置を、MPTPおよび対照マウスの自発および/または薬物性運動活性の測定に用いた。以下のパラメーターを測定した:移動運動(LOCOMOTION)を、低グリッドの赤外線で測定した。マウスが、検査ケージ内の水平面において移動した時のみカウントを記録した。立ち上がり運動(REARING)は、少なくとも1の高い方の赤外線が遮断された時間を通して記録した、つまり、記録したカウント数は立ち上がり運動に費やされた時間の長さに比例する。全運動(TOTAL ACTIVITY)は、検査ケージと常に接触しているセンサー(カウンターウェイトのついたレバーに載せた、蓄音機の針の様なピックアップ)で測定した。センサーは、移動運動および立ち上がり運動のみならず、身震い(shaking)、振戦(tremors)、ひっかき行動および毛繕いから生じた振動など、検査ケージから受けたあらゆる種類の振動を記録した。
【0028】
行動測定(移動運動、立ち上がり運動および総運動):MPTP注射(2×40mg/kg、皮下注射、24時間間隔)後12日目のマウスに、2-(2-アミノベンゾイル)-N-(2,4-ジニトロフェニル)エチルアミン(0.3、1、3、10mg/kg)またはビヒクル(10%DMSO、1%CMC)を腹腔内注射した後、即座に活性検査室に移し、運動行動を60分間モニターした。60分後、マウスにLドーパ5mg/kgを注射(皮下注射)し、検査室に置き、さらに240分間運動測定を続けた。各投与は、最も少ない投与量から始めて2日ずつ隔てて行った。
【0029】
表1は、2-(2-アミノベンゾイル)-N-(2,4-ジニトロフェニル)エチルアミンまたはビヒクルのいずれかを投与し、閾値下用量のLドーパを投与した、MPTP処置および対照マウスの、平均(±標準偏差)移動運動、立ち上がり運動および全運動カウントを表す。1%有意性はアスタリスクで示す(Tukey HSD test)。
【表1】

【0030】
Lドーパ注射前の始めの60分間は、MPTP処置ビヒクルマウスと比較すると、2-(2-アミノベンゾイル)-N-(2,4-ジニトロフェニル)エチルアミンはどの投与量でも効果がなかった。しかし、閾値下用量のLドーパとともに投与した場合、2-(2-アミノベンゾイル)-N-(2,4-ジニトロフェニル)エチルアミンは、全3種の行動パラメーターを有意に向上させた。2-(2-アミノベンゾイル)-N-(2,4-ジニトロフェニル)エチルアミン(1、3または10mg/kg)は、MPTPビヒクル群と比較して、MPTP処置マウスの移動運動、立ち上がり運動および全運動を有意に向上させた。
【0031】
ビヒクル対照動物に2-(2-アミノベンゾイル)-N-(2,4-ジニトロフェニル)エチルアミンをどの投与量で投与しても効果はなかった。
【0032】
実験2:
ラットの生の単離海馬神経におけるNMDA活性化電流の電気生理学的特性
【0033】
海馬神経の単離:ウィスターラット(12-14日)を麻酔せずに断頭し、海馬を取り出した。以下を含有する(mM)溶液中で、手作業で切片状に(0.2-0.4mm)切断した:150 NaCl;5 KCl;1.25 NaH2PO4;2 CaCl2;2 MgCl2;26 NaHCO3;20 グルコース。切片をこの溶液中30分間室温でプレインキュベートした。コウジカビ(aspergillus oryzae)由来のプロテアーゼ0.4mg/mlを含有する、低Ca2+濃度(0.5mm)の同じ溶液で酵素処理を行った。該酵素溶液中32℃で10分以内インキュベーションを行った。次いで切片を正常Ca2+濃度の酵素不含溶液で維持し、6-8時間以内に単離神経の取得に使用した。全行程を通じて、95%O2および5%CO2ガス混合物で溶液を継続的に飽和させ、pH7.4を維持した。細胞を解離させるために、以下を含有する(mM)細胞外液に切片を移した:150 NaCl;5 KCl;2 CaCl2;10 N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸(Hepes);NaOHでpHを7.4に調整。振動解離法(vibrodissociation method)で海馬切片のCAおよびCA3領域から単細胞を単離した。それらは直径10-15μmで樹状突起樹の一部が保存されていた。単離後それらは通常1-2時間の記録に適していた。
【0034】
生理食塩水および化学物質:細胞外液の内容物は以下の通りであった(mM):130 NaCl、5 KCl、2 CaCl2、20 N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸(Hepes);0.1μm TTX、10μmグリシン、300μm l-アスパラギン酸;pHはNaOHで7.4に調整した。
【0035】
細胞内液の内容物は以下の通りであった(mM):110 CSF、20 Tris-HCl(ph=7.2)。L-アスパラギン酸およびグリシン溶液は実験当日に調製した。
【0036】
検査物質2-(2-アミノベンゾイル)-N-(2,4-ジニトロフェニル)エチルアミンはDMSOに溶解させた。
【0037】
電流の記録およびデータ解析:「ジャンピングテーブル(jumping table)」セットアップを用いた高速「濃度固定(concentration clamp)」法(Pharma Robot、Kiev)で薬物含有溶液を適用した。パッチクランプ技術のホールセルコンフィギュレーションで電流を記録した。電流の記録はEPC-7 L/Mパッチクランプ増幅器を用いて行った。
【0038】
NMDA活性化電流:電流は3kHzのフィルター(3極活性ベッセルフィルター(three-pole active Bessel filter))に通し、NMDA活性化電流について1点につき6000μsの速度でデジタル処理した。NMDA誘導性膜貫通電流を、対照および検査溶液中10μMグリシンおよび300μM L-アスパラギン酸存在下で測定した。固定電位-70mVで電流を記録した。
【0039】
計算:各物質濃度における電流阻害は少なくとも4細胞の平均値である。物質の効果は、I/Io比(Iは物質を作用させた場合の電流、Ioは対照条件での電流)の平均で決定した。S.D.は標準偏差を表す。
【0040】
NMDA活性化電流に対する10μM 2(2-アミノベンゾイル)-n-2,4-ジニトロフェニルエチルアミンの作用効果:
【表2】

【0041】
この実験で、2-(2-アミノベンゾイル)-N-(2,4-ジニトロフェニル)エチルアミンがNMDAレセプターに対する遮断作用を有することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、AはC1-6アルキレン;R、R1およびR2は独立して水素、ハロ、ハロアルキル、アリール、複素環基、ヘテロアリール基、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヒドロキシアルキル、ニトロ、アミノ、シアノ、シアナミド、グアニジン、アミジノ、アシルアミド、ヒドロキシ、チオール、アシルオキシ、アジド、アルコキシ、カルボキシ、カルボニルアミド、S-アルキルまたはアルキルチオール;Xは>C1-6アルキレン、>C=Oまたは>C=Sまたは単結合;Yは水素、ハロ、ハロアルキル、アリール、複素環基、ヘテロアリール基、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヒドロキシアルキル、ニトロ、アミノ、シアノ、シアナミド、グアニジン、アミジノ、アシルアミド、ヒドロキシ、チオール、アシルオキシ、アジド、アルコキシ、カルボキシ、カルボニルアミド、スチリル(水素、ハロ、ハロアルキル、アリール、複素環基、ヘテロアリール基、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヒドロキシアルキル、ニトロ、アミノ、シアノ、シアナミド、グアニジン、アミジノ、アシルアミド、ヒドロキシ、チオール、アシルオキシ、アジド、アルコキシ、S-アルキル、アルキルチオールまたは-COQ(ここでQはヒドロキシ、C1-6アルコキシ、アミノ、モノ-C1-6アルキルアミノ、ジ-C1-6アルキルアミノ、ヒドロキシルアミノ、C1-4アルコキシアミノまたはアリール-C1-4-アルコキシアミノである)のうちから独立して選択される4までの置換基によって環置換されていてもよい)であるが、(a)同時にXが>C=O、Yがメチル、AがCH2CH2、Rが5-メトキシ、R1がHまたはホルミルおよびR2がHである化合物、(b)-A(R2)-NH-X-Y部分が-CH2CH(COQ)-NH2または-CH(ハロアルキル)-CH(COQ)-NH2である化合物、および(c)同時にXが単結合、Yがアリールアルキル、AがCH2CH2CH2、R1およびR2の両方がH、Rが4-ハロである化合物(ここで-CO-A(R2)-NH-X-Y部分は図示したベンゼン環の1位に位置するとみなされる)は除く。]
を有する化合物、およびその立体異性体および製薬的に許容される塩。
【請求項2】
式(II):
【化2】

[式中、Rは水素、メチルまたはメトキシ、R1は水素またはホルミル、R2は水素またはカルボキシル、R3は水素、ハロ、ハロアルキル、アリール、複素環基、ヘテロアリール基、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヒドロキシアルキル、ニトロ、アミノ、シアノ、シアナミド、グアニジン、アミジノ、アシルアミド、ヒドロキシ、チオール、アシルオキシ、アジド、アルコキシ、カルボキシ、カルボニルアミド、S-アルキルまたはアルキルチオール。]
を有する請求項1に記載の化合物、およびその立体異性体および製薬的に許容される塩。
【請求項3】
式(I)において、Yが2-フリル、2-ジヒドロフリル、2-テトラヒドロフリルまたは(2-R°-COO-)フェニルであり、いずれもC1-4アルキル、C1-4アルコキシ、OH、ニトロから選択される1から2の置換基によって置換されていてもよく、またはYが水素またはスチリル(ハロゲン、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、OH、ニトロ、アリール、アリール-C1-4アルキルまたはアリール-C1-4アルコキシのうちから独立して選択される2までの置換基によって環置換されていている)である請求項1に記載の化合物、およびその立体異性体および製薬的に許容される塩。
【請求項4】
式(I)において、R2が水素であり、且つ少なくとも1の以下の状態があてはまる、請求項1に記載の化合物、およびその立体異性体および製薬的に許容される塩:
Rが5-メトキシ;および/または
AがCH2CH2またはCH2CHCOOH;および/または
R1が水素;および/または
Xが単結合でYが2,4-ジニトロフェニル基。
【請求項5】
式(I)において、XおよびYが以下の組み合わせから選択される、請求項1に記載の化合物、およびその立体異性体および製薬的に許容される塩:
Xが-CO-およびYが2-フリル;または
Xが-CO-およびYが2-テトラヒドロフリル;または
Xが-CH2-およびYが2-テトラヒドロフリル;または
Xが-CO-およびYが2-アセトキシフェニル;または
Xが-CO-およびYが3,4-ジヒドロキシスチリルまたは3,4-ジヒドロキシシンナモイルオキシ。
【請求項6】
少なくとも1の以下の状態があてはまる、請求項5に記載の化合物:
Rが5-メトキシ;および/または
AがCH2CH2またはCH2CHCOOH;および/または
R1が水素。
【請求項7】
3-(2-アミノベンゾイル)-2-(2,4-ジニトロアニリノ)プロパン酸である、請求項1に記載の化合物、およびその立体異性体および製薬的に許容される塩。
【請求項8】
2-(2-アミノベンゾイル)-N-(2,4-ジニトロフェニル)エチルアミンである、請求項1に記載の化合物およびその製薬的に許容される塩。
【請求項9】
少なくとも1の請求項1に記載の化合物の治療的有効量を、希釈剤、防腐剤、溶解剤、乳化剤、アジュバント、賦形剤および担体から選択される少なくとも1の製薬的に許容される成分と関連づけて含有する医薬製剤。
【請求項10】
さらに少なくとも1の以下の性質を特徴とする、請求項9に記載の医薬製剤:
(i) 経口、直腸、非経口、経頬側、肺内または経皮投与に適している;
(ii) 単位用量剤形であり、各単位用量には前記少なくとも1の化合物が0.0025-1000mgの範囲で含まれる;
(iii) 前記少なくとも1の化合物が所定の制御速度で放出される、放出制御製剤である;
(iv) 神経遮断薬、感情調整薬、抗不安薬、精神安定薬、鎮痛薬および抗パーキンソン薬から選択される少なくとも1の既知の治療的活性成分をさらに含む。
【請求項11】
脳卒中、虚血、CNSの外傷、低血糖および手術、神経変性疾患を含むCNS疾患、興奮性アミノ酸の過剰刺激、精神疾患、癲癇および他の痙攣性疾患、不安、精神病、老年性認知症、多発脳梗塞性認知症、慢性疼痛(無痛覚症)、緑内障、CMV網膜炎、尿失禁から選択される生理学的状態を処置または予防するための医薬、麻酔状態の誘導、認知の促進、麻薬耐性および禁断症状の防止、不能、高血圧を含む心臓血管疾患、血液凝固の防止、神経障害、抗炎症、時間生物学関連疾患、季節性関連疾患、内分泌徴候、避妊および不妊症、性早熟症、月経前症候群、高プロラクチン血症および成長ホルモン欠損症、腫瘍性疾患、他の増殖性疾患(良性および腫瘍性前立腺肥大)、免疫系疾患、老化関連症状、眼科疾患、群発性頭痛、片頭痛、肌の保護、糖尿病の安定化および体重増加疾患のための医薬、および動物育種に使用する医薬を製造するための、請求項1ないし8のいずれかに記載の少なくとも1の化合物、または請求項9または10に記載の医薬製剤の使用。

【公表番号】特表2007−518673(P2007−518673A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516814(P2006−516814)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/IL2004/000567
【国際公開番号】WO2004/112690
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(397058965)ニューリム ファーマシューティカルズ(1991)リミテッド (3)
【Fターム(参考)】