説明

2−アミノ置換4−オキソ−4H−クロメン−8−イル−トリフルオロ−メタンスルホン酸エステルの合成

本発明は、式(I)の化合物を式(III)の化合物から合成する方法であって、(a) 適切な反応条件によって式(III)の化合物からアリル基を除去し、式(II)の化合物を得る段階;および(b) 式(II)の化合物をトリフレート化剤と反応させて式(I)の化合物を得る段階を含む方法に関する。


[式中、RN1およびRN2は独立に水素、置換されていてもよいC1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基から選択されるか、それらが結合している窒素原子とともに、4から8個の環原子を有する置換されていてもよい複素環を一緒に形成していてもよい]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロメノン・トリフレート類およびそれから誘導される化合物の合成の改良された方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記化合物:
【化1】

は、WO03/024949、リーイらの報告(Leahy, J.J.J., ら, Bioorg. Med. Chem. Lett., 14, 6083-6087 (2004))およびハードキャスルの報告(Hardcastle, I. R., ら, J. Med. Chem., 48, 7829-7846 (2005))においてDNA依存性タンパク質キナーゼ(DNA−PK)を阻害するものであると開示されている。
【0003】
その後、やはりDNA−PKを阻害するその化合物の誘導体が、WO2006/032869に開示されている。
【0004】
これらの化合物は一般に、下記式(A)の中間体から合成されている。
【化2】

【0005】
この化合物は、WO03/024949に記載の下記の方法に従って合成された。
【化3】

【0006】
段階a:ピリジン(0.96mL、11.9mmol)およびジメチルアミノピリジン(0、07g、0.58mmol)をジクロロメタン(25mL)に溶かした2,3−ジヒドロキシ安息香酸メチル()(4.00g、23.80mmol)のサンプルに加えた。混合物を冷却して0℃とし、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(4.40mL、26.18mmol)をシリンジによって滴下した。反応混合物を昇温させて室温とし、そのまま60時間攪拌した。有機層を1M HCl(40mL)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、真空下に濃縮して乾固させた。固形物を酢酸エチルから再結晶して、白色結晶()を得た(2.62g、8.73mmol、収率37%)。
【0007】
段階b:ジイソプロピルアミン(5.1mL、3.0mmol)のTHF(30mL)中溶液を冷却して−70℃とし、2.5Mのn−ブチルリチウムのヘキサン中溶液(14.0mL、35mmol)をゆっくり加え、昇温させて0℃とし、15分間攪拌した。溶液を冷却して−10℃とし、温度を−10℃以下に維持しながらN−アセチルモルホリン()のTHF(25mL)中溶液をゆっくり加えた。反応混合物をこの温度で90分間攪拌し、2−ヒドロキシ−3−トリフルオロメタンスルホニルオキシ−安息香酸メチルエステル()のTHF(25mL)中溶液で処理し、次に追加のTHF(5mL)を加えた。反応混合物をゆっくり昇温させて室温とし、16時間攪拌した。溶液を水(5mL)および2M塩酸(50mL)で反応停止し、DCM中に抽出した(80mLで3回)。有機抽出液を合わせ、ブライン(50mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下に溶媒留去して、油状残留物を得た。粗生成物を熱エーテル中で激しく撹拌し、それによって白色固形物が沈殿した。これを氷で冷却した後に、濾過および冷エーテルでの洗浄によって回収して、所望の化合物()を淡褐色固形物として得た(1.10g、2.54mmol、収率36%)。
【0008】
段階c:トリフルオロ−メタンスルホン酸2−ヒドロキシ−3−(3−モルホリン−4−イル−3−オキソ−プロピオニル)−フェニルエステル()のDCM(35mL)中溶液を無水トリフル酸(3.8mL、23mmol)で処理し、室温で窒素下に16時間攪拌した。混合物を減圧下に溶媒留去し、メタノール(80mL)に再溶解させた。この溶液を4時間攪拌し、水(80mL)で処理し、さらに1時間攪拌した。混合物を真空下に溶媒留去してメタノールを除去した。得られた水性混合物を、飽和重炭酸ナトリウムで処理することでpH8に調整し、次いでDCM中に抽出した(150mLで3回)。抽出液を硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下に溶媒留去して固形物を得た。粗生成物を部分的にDCMに溶かし、シリカカラムに加え、DCMおよびそれに続くDCM中の1%;2%;5%のメタノールで溶離した。所望の生成物を含む全ての分画を合わせ、真空下に溶媒留去して橙赤色固形物を得た。粗生成物を熱メタノールに溶かし、活性炭で処理し、セライトで濾過し、メタノールから再結晶して、所望の化合物であるトリフルオロ−メタンスルホン酸2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イルエステル(A)を白色固形物として得た(0.25g、0.662mmol、収率28.79%)。
【0009】
この方法の総収率は、全体で3.9%であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第03/024949号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/032869号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Leahy, J.J.J., ら, Bioorg. Med. Chem. Lett., 14, 6083-6087 (2004)
【非特許文献2】Hardcastle, I. R., ら, J. Med. Chem., 48, 7829-7846 (2005)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前記中間体の重要性を鑑みて本発明者らは、収率が改善される前記中間体および関連化合物を得る経路を考案した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明の第一の態様は、式(I)の化合物:
【化4】

[式中、RN1およびRN2は独立に水素、置換されていてもよいC1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基から選択されるか、それらが結合している窒素原子とともに、4から8個の環原子を有する置換されていてもよい複素環を一緒に形成していてもよい。]を、式(III)の化合物:
【化5】

から合成する方法であって、
(a)適切な反応条件によって式(III)の化合物からアリル基を除去し、式(II)の化合物:
【化6】

を得る段階;および
(b)式(II)の化合物をトリフレート化剤と反応させて式(I)の化合物を得る段階
を含む前記方法を提供する。
【0014】
アリル基は、適切な反応条件によって除去することができる。そのような適切な反応条件は、グリーンらの著作(Protective Groups in Organic Synthesis, Greene, T.W. and Wuts, P.G.M., 第3版, John Wiley & Sons, 1999;参照によって本明細書に組み込まれる)の68から72頁に挙げられている。特に、全ての保護基の除去と同じように、その条件は、脱保護される分子の残りの部分に影響を与えないようなものでなければならない。特に、除去は好ましくは、エタノール中にて1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)の存在下にウィルキンソンの触媒Rh(PPhClを用いて行われる。この触媒は、通常行われる第2の酸性開裂段階を行う必要なしに、この反応を進行させることが認められている。
【0015】
トリフレート化段階は、無水トリフル酸もしくはN−フェニルトリフルオロメタンスルホンイミド(PhNTf)などの公知のトリフレート化剤を用いて実施することができる。本発明の一部の実施形態では、トリエチルアミン中のPhNTfを用いる。
【0016】
式(III)の化合物は、式(IV)の化合物:
【化7】

から、閉環によって合成することができる。従って、本発明の第1の態様の好ましい実施形態は、式(IV)の化合物の閉環による式(III)の化合物の製造を含む。
【0017】
式(IV)の化合物の閉環には、適当な適合性の溶媒(例えばDCM)中での、無水トリフル酸のような酸無水物による処理が必要である。
【0018】
式(IV)の化合物は、2つの可能な経路によって合成することができる。ある一群の実施形態では、第1の態様の方法にさらに、式(V)の化合物:
【化8】

から、2−アリル基の選択的除去によって式(IV)の化合物を合成する段階がある。従って、上記実施形態の別の好ましい実施形態は、2−アリル基の選択的除去によって式(V)の化合物から式(IV)の化合物を合成する段階を有する。
【0019】
式(V)の化合物の2−アリル基の選択的除去は好ましくは、TiClおよびBuNIを用いて行う。
【0020】
式(V)の化合物は、化合物
【化9】

と式(VI)の化合物:
【化10】

とをカップリングさせることで合成することができる。
【0021】
従って、上記実施形態の好ましい実施形態はさらに、化合物を式(VI)の化合物とカップリングさせる段階を含む。
【0022】
化合物と式(VI)の化合物とのカップリングは、THFなどの好適に適合性の溶媒中、例えば金属(特にはリチウム)のジイソプロピルアミド(LDA)を用いることによって、式(VI)の化合物の金属(例えばリチウム)エノラートをin situで発生させることで行うことができる。
【0023】
化合物は、化合物
【化11】

から、両方のフェノール性基をアリルエーテル基に変換することで製造することができる。従って、上記実施形態の別の好ましい実施形態はさらに、化合物上の両方のフェノール性基をアリルエーテル基に変換することで化合物を得る段階を有する。
【0024】
化合物のフェノール性基の変換による化合物の生成は、例えばグリーンらの著作(Protective Groups in Organic Synthesis, Greene, T.W. and Wuts, P.G.M., 第3版, John Wiley & Sons, 1999;参照によって本明細書に組み込まれる)の68から72頁に挙げられている標準的な条件によって行うことができる。一部の実施形態において、例えば、アセトニトリルなどの好適に適合性の溶媒中、塩基(例:炭酸カリウム)とともに、臭化アリルを用いることができる。
【0025】
別の実施形態群では、第1の態様の方法はさらに、式(VII)の化合物:
【化12】

から、ベーカー・ベンカタラマン転位によって式(IV)の化合物を合成する段階を有する。従って、本発明の第1の態様の別の好ましい実施形態は、ベーカー・ベンカタラマン転位によって式(VII)の化合物から式(IV)の化合物を合成する段階を有する。
【0026】
ベーカー・ベンカタラマン転位は、標準的な反応条件を用いることで、すなわち塩基を用いて実施することができる。一部の実施形態では、ピリジンなどの好適に適合性の溶媒中の水酸化カリウムを用いることができる。
【0027】
式(VII)の化合物は、化合物17
【化13】

と式(VIII)の化合物:
【化14】

とをカップリングさせることで合成することができる。
【0028】
従って、上記実施形態の別の好ましい実施形態は、化合物17と式(VIII)の化合物とをカップリングさせて式(VII)の化合物を得る段階を有する。
【0029】
化合物17と式(VIII)の化合物とのカップリングは、アセトニトリルなどの好適に適合性の溶媒中にて、例えば炭酸セシウムを用いることで行うことができる。
【0030】
化合物17は、化合物16
【化15】

から、2−アリル基の選択的除去によって合成することができる。従って、上記実施形態の別の好ましい実施形態は、化合物16の2−アリル基を選択的に除去することで化合物17を得る段階を有する。
【0031】
化合物16については、その2−アリル基を上記の式(V)の化合物と同様にして選択的に除去することができる。
【0032】
化合物16は、化合物15
【化16】

から、酸化によって合成することができる。従って、上記実施形態の別の好ましい実施形態はさらに、化合物15を酸化して化合物16を得る段階を有する。
【0033】
化合物15の酸化は、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、MnOもしくはデス−マーチン試薬を用いて行うことができ、PCCが好ましい。
【0034】
化合物15は、化合物14
【化17】

から、グリニャール試薬を用いることによるメチル化によって合成することができる。従って、上記実施形態の別の好ましい実施形態はさらに、化合物14をメチル化して化合物15を得る段階を有する。
【0035】
化合物14のメチル化は、例えばMeMgBrでの処理によって行うことができる。
【0036】
化合物14は、化合物
【化18】

から、両方のフェノール性基のアリルエーテル基への変換によって合成することができる。従って、上記実施形態の別の好ましい実施形態はさらに、化合物の両方のフェノール性基をアリルエーテル基に変換することで化合物14を得る段階を有する。
【0037】
化合物5の変換は、上記の化合物1についてのものと同じ方法で行うことができる。
【0038】
式(I)の化合物は、下記式(IX)の化合物の合成に用いることができる。
【化19】

【0039】
[式中、
N1およびRN2は独立に水素、置換されていてもよいC1−7アルキル基、C3−20複素環基、もしくはC5−20アリール基から選択されるか、またはそれらが結合している窒素原子とともに一体となって、4から8個の環原子を有する置換されていてもよい複素環を形成していてもよく;
Qは、−NH−C(=O)−もしくは−O−であり;
Yは、置換されていてもよいC1−5アルキレン基であり;
Xは、SRS1もしくはNRN3N4から選択され、
S1、もしくはRN3およびRN4は独立に、水素、置換されていてもよいC1−7アルキル、C5−20アリールもしくはC3−20複素環基から選択されるか、RおよびRが一体となって、それらが結合している窒素原子とともに、4から8個の環原子を有する置換されていてもよい複素環を形成していてもよく;
Qが−O−である場合、Xはさらに−C(=O)−NRN5N6から選択され、RN5およびRN6は独立に水素、置換されていてもよいC1−7アルキル、C5−20アリールもしくはC3−20複素環基から選択されるか、RN5およびRN6が一体となって、それらが結合している窒素原子とともに、4から8個の環原子を有する置換されていてもよい複素環を形成していてもよく;
Qが−NH−C(=O)−である場合、−Y−Xはさらに、C1−7アルキルから選択されてもよい]。
【0040】
これらの化合物および式Iの化合物からのそれらの合成については、WO2006/032869(参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。通常、式(IX)の化合物は、置換ジベンゾチオフェン基の前駆体:
【化20】

と式Iの化合物とのスズキ−ミヤウラカップリングによって、またはトリフレートのボロネート基への変換とそれに続く置換ジベンゾチオフェン基の前駆体のトリフレートのカップリングによって合成される。
【0041】
従って、本発明の第2の態様は、式(I)の化合物からの式(IX)の化合物の合成を含み、ここで式(I)の化合物は本発明の第1の態様に従って合成されるものである。
【0042】
式(I)の化合物は、下記式(X)の化合物の合成においても用いることができる。
【化21】

【0043】
[式中、
N1およびRN2は独立に水素、置換されていてもよいC1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基から選択されるか、またはそれらが結合している窒素原子とともに一体となって、4から8個の環原子を有する置換されていてもよい複素環を形成していてもよく;
、Z、Z、ZおよびZは、それらが結合している炭素原子とともに、芳香族環を形成しており;
は、CR、N、NH、SおよびOからなる群から選択され;Zは、CRであり;Zは、CR、N、NH、SおよびOからなる群から選択され;Zは直接結合であるか、O、N、NH、SおよびCHからなる群から選択され;Zは、O、N、NH、SおよびCHからなる群から選択され;
はHであり;
は、ハロもしくは置換されていてもよいC5−20アリールから選択され;
は、H、OH、NO、NHおよびQ−Y−Xからなる群から選択され、
Qは、−NH−C(=O)−もしくは−O−であり;
Yは、置換されていてもよいC1−5アルキレン基であり;
Xは、SRS1もしくはNRN3N4から選択され、
S1またはRN3およびRN4は独立に、水素、置換されていてもよいC1−7アルキル、C5−20アリールもしくはC3−20複素環基から選択されるか、RN3およびRN4は一体となって、それらが結合している窒素原子とともに、4から8個の環原子を有する置換されていてもよい複素環を形成していてもよく;
Qが−O−である場合、Xはさらに、−C(=O)−NRN5N6から選択されてもよく、RN5およびRN6は独立に水素、置換されていてもよいC1−7アルキル、C5−20アリールもしくはC3−20複素環基から選択されるか、RN5およびRN6が一体となって、それらが結合している窒素原子とともに、4から8個の環原子を有する置換されていてもよい複素環を形成していてもよく;
Qが−NH−C(=O)−である場合、−Y−Xはさらに、C1−7アルキルから選択されてもよい]。
【0044】
、Z、Z、ZおよびZは、ZおよびZが結合している炭素原子を含むそれらが形成している基が芳香族となるように選択される。
【0045】
これらの化合物および式(I)の化合物からのそれらの合成は、同時係属中の出願PCT/GB2006/001379およびUS11/403763(これらは参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。概して、式(X)の化合物は、例えば下記のもの:
【化22】

などの置換フェニル基の前駆体と式Iの化合物とのスズキ−ミヤウラカップリングによって、またはトリフレートのボロネート基への変換、およびそれに続く置換フェニル基の前駆体のトリフレートとのカップリングによって合成される。
【0046】
従って、本発明の第3の態様は、式(I)の化合物からの式(X)の化合物の合成を含み、ここで式(I)の化合物は本発明の第1の態様に従って合成されるものである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
定義
1−7アルキル:本明細書で使用される「C1−7アルキル」という用語は、1から7個の炭素原子を有するC1−7炭化水素化合物から1個の水素原子を除去することで得られる1価部分に関するものであり、それは脂肪族もしくは脂環式またはこれらの組み合わせであることができ、飽和、部分不飽和、もしくは完全不飽和であることができる。
【0048】
飽和直鎖C1−7アルキル基の例にはメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、およびn−ペンチル(アミル)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
飽和分岐C1−7アルキル基の例には、イソ−プロピル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、およびネオ−ペンチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
飽和脂環式C1−7アルキル基(「C3−7シクロアルキル」基とも称される)の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルなどの基、ならびに置換された基(例えば、そのような基を含む基)、例えばメチルシクロプロピル、ジメチルシクロプロピル、メチルシクロブチル、ジメチルシクロブチル、メチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、ジメチルシクロヘキシル、シクロプロピルメチルおよびシクロヘキシルメチルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
1以上の炭素−炭素二重結合を有する不飽和C1−7アルキル基(「C2−7アルケニル」基とも称される)の例には、エテニル(ビニル、−CH=CH)、2−プロペニル(アリル、−CH−CH=CH)、イソプロペニル(−C(CH)=CH)、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニルなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
1以上の炭素−炭素三重結合を有する不飽和C1−7アルキル基(「C2−7アルキニル」基とも称される)の例には、エチニル(エチニル)および2−プロピニル(プロパルギル)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
1以上の炭素−炭素二重結合を有する不飽和脂環式(炭素環式)C1−7アルキル基(「C3−7シクロアルケニル」基とも称される)の例には、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニルなどの置換されていない基、ならびにシクロプロペニルメチルおよびシクロヘキセニルメチルなどの置換されている基(例えば、前記のような基を含む基)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
3−20複素環:本明細書で使用される「C3−20複素環」という用語は、C3−20複素環化合物の環原子から1個の水素原子を除去することで得られる1価部分に関するものであり、前記化合物は1個の環もしくは2個以上の環(例:スピロ、縮合、架橋環)を有し、3から20個の環原子を有し、その環原子のうちの1から10個が環ヘテロ原子であり、前記環のうちの少なくとも1個が複素環である。好ましくは、各環は3から7個の環原子を有し、そのうちの1から4個は環ヘテロ原子である。「C3−20」は、炭素原子であるかヘテロ原子であるかを問わず、環原子を指す。
【0055】
1個の窒素環原子を有するC3−20複素環基の例には、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン類(テトラヒドロピロール)、ピロリン(例:3−ピロリン、2,5−ジヒドロピロール)、2H−ピロールもしくは3H−ピロール(イソピロール、イソアゾール)、ピペリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジンおよびアゼピンから誘導されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
1個の酸素環原子を有するC3−20複素環基の例には、オキシラン、オキセタン、オキソラン(テトラヒドロフラン)、オキソール(ジヒドロフラン)、オキサン(テトラヒドロピラン)、ジヒドロピラン、ピラン(C)およびオキセピンから誘導されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない.置換C3−20複素環基の例には、環状形の糖類、例えばフラノース類およびピラノース類などがあり、それには例えばリボース、リキソース、キシロース、ガラクトース、ショ糖、果糖およびアラビノースなどがある。
【0057】
1個の硫黄環原子を有するC3−20複素環基の例には、チイラン、チエタン、チオラン(テトラヒドロチオフェン)、チアン(テトラヒドロチオピラン)およびチエパンから誘導されるものにはなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
2個の酸素環原子を有するC3−20複素環基の例には、ジオキソラン、ジオキサンおよびジオキセパンから誘導されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
2個の窒素環原子を有するC3−20複素環基の例には、イミダゾリジン、ピラゾリジン(ジアゾリジン)、イミダゾリン、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)およびピペラジンから誘導されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
1個の窒素環原子および1個の酸素環原子を有するC3−20複素環基の例には、テトラヒドロオキサゾール、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール、ジヒドロイソオキサゾール、モルホリン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジンおよびオキサジンから誘導されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
1個の酸素環原子および1個の硫黄環原子を有するC3−20複素環基の例には、オキサチオランおよびオキサチアン(チオキサン)から誘導されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
1個の窒素環原子および1個の硫黄環原子を有するC3−20複素環基の例には、チアゾリン、チアゾリジンおよびチオモルホリンから誘導されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
3−20複素環基の他の例には、オキサジアジンおよびオキサチアジンなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
さらに1以上のオキソ(=O)基を有する複素環基の例には、限定するものではないが、以下から誘導されるものなどがある:
フラノン、ピロン、ピロリドン(ピロリジノン)、ピラゾロン(ピラゾリノン)、イミダゾリドン、チアゾロンおよびイソチアゾロンなどのC複素環;
ピペリジノン(ピペリドン)、ピペリジンジオン、ピペラジノン、ピペラジンジオン、ピリダジノンおよびピリミジノン(例:シトシン、チミン、ウラシル)およびバルビツール酸などのC複素環;
オキシインドール、プリノン(例:グアニン)、ベンゾオキサゾリノン、ベンゾピロン(例:クマリン)などの縮合複素環;
無水マレイン酸、無水コハク酸および無水グルタル酸など(これらに限定されるものではない)の環状無水物(環中に−C(=O)−O−C(=O)−を有する基);
炭酸エチレンおよび炭酸1,2−プロピレンなどの環状炭酸エステル(環中に−O−C(=O)−O−を有する基);
コハク酸イミド、マレイミド、フタルイミドおよびグルタルイミドなど(これらに限定されるものではない)のイミド類(環中に−C(=O)−NR−C(=O)−を有する基);
β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン(2−ピペリドン)およびε−カプロラクトンなど(これらに限定されるものではない)のラクトン類(環状エステル、環中に−O−C(=O)−を有する基);
β−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム(2−ピロリドン)、δ−バレロラクタムおよびε−カプロラクタムなど(これらに限定されるものではない)のラクタム類(環状アミド、環中に−NR−C(=O)−を有する基);
2−オキサゾリドンなどの環状カルバメート類(環中に−O−C(=O)−NR−を有する基);
2−イミダゾリドンおよびピリミジン−2,4−ジオンなどの環状尿素類(環中に−NR−C(=O)−NR−を有する基)(例:、チミン、ウラシル)。
【0065】
5−20アリール:本明細書で使用される「C5−20アリール」という用語は、C5−20芳香族化合物の芳香族環原子から1個の水素原子を除去することで得られる1価部分を言い、前記化合物は1個の環もしくは2個以上の環(例えば縮合環)を有し、5から20個の環原子を有し、前記環のうちの少なくとも1個が芳香族環である。好ましくは、各環は5から7個の環原子を有する。
【0066】
環原子は、「カルボアリール基」の場合のように全て炭素原子であることができ、その場合にその基は簡便に、「C5−20カルボアリール」基と称することができる。
【0067】
環ヘテロ原子を持たないC5−20アリール基(すなわち、C5−20カルボアリール基)の例には、ベンゼン(すなわちフェニル)(C)、ナフタレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、ナフタセン(C18)およびピレン(C16)から誘導されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
縮合環を有し、それの一つが芳香族環ではないアリール基の例には、インデンおよびフルオレンから誘導される基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
あるいは、前記環原子は、「ヘテロアリール基」の場合のように酸素、窒素および硫黄など(これらに限定されるものではない)の1以上のヘテロ原子を含むことができる。この場合、その基は簡便に「C5−20ヘテロアリール」基と称することができ、「C5−20」は炭素原子であるかヘテロ原子であるかを問わず環原子を指す。好ましくは、各環は5から7個の環原子を有し、そのうちの0から4個が環ヘテロ原子である。
【0070】
5−20ヘテロアリール基の例には、フラン(オキソール)、チオフェン(チオール)、ピロール(アゾール)、イミダゾール(1,3−ジアゾール)、ピラゾール(1,2−ジアゾール)、トリアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサジアゾールおよびオキサトリアゾールから誘導されるCヘテロアリール基;ならびにイソオキサジン、ピリジン(アジン)、ピリダジン(1,2−ジアジン)、ピリミジン(1,3−ジアジン;例えばシトシン、チミン、ウラシル)、ピリダジン(1,4−ジアジン)、トリアジン、テトラゾールおよびオキサジアゾール(フラザン)から誘導されるCヘテロアリール基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
縮合環を含むC5−20複素環基(それの一部はC5−20ヘテロアリール基である)の例には、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、インドール、イソインドール、プリン(例:アデニン、グアニン)、ベンゾチオフェン、ベンズイミダゾールから誘導されるC複素環基;キノリン、イソキノリン、ベンゾジアジン、ピリドピリジン、キノキサリンから誘導されるC10複素環基;カルバゾール、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフランから誘導されるC13複素環基;アクリジン、キサンテン、フェノキサチイン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジンから誘導されるC14複素環基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
上記のC1−7アルキル、C3−20複素環およびC5−20アリール基はそれ自体、単独であるか別の置換基の一部であるかを問わず、それら自体および下記に挙げた別の置換基から選択される1以上の基で置換されていてもよい。
【0073】
ハロ:−F、−Cl、−Br、および−I。
【0074】
ヒドロキシ:−OH。
【0075】
エーテル:−OR(Rはエーテル置換基、例えばC1−7アルキル基(下記に記載のC1−7アルコキシ基とも称される)、C3−20複素環基(C3−20複素環オキシ基とも称される)もしくはC5−20アリール基(C5−20アリールオキシ基とも称される)、好ましくはC1−7アルキル基である。)。
【0076】
1−7アルコキシ:−OR(RはC1−7アルキル基である。)。C1−7アルコキシ基の例には、−OCH(メトキシ)、−OCHCH(エトキシ)および−OC(CH(tert−ブトキシ)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
オキソ(ケト、−オン):=O。環状化合物および/または置換基としてオキソ基(=O)を有する基の例としては、限定するものではないが以下のものが挙げられる:シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンなどの炭素環化合物;ピロン、ピロリドン、ピラゾロン、ピラゾリノン、ピペリドン、ピペリジンジオン、ピペラジンジオンおよびイミダゾリドンなどの複素環;無水マレイン酸および無水コハク酸など(これらに限定されるものではない)の環状無水物;炭酸プロピレンなどの環状炭酸エステル;コハク酸イミドおよびマレイミドなど(これらに限定されるものではない)のイミド類;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトンおよびε−カプロラクトンなど(これらに限定されるものではない)のラクトン類(環状エステル、環中に−O−C(=O)−);ならびにβ−プロピオラクタム、γ−ブチロラクタム(2−ピロリドン)、δ−バレロラクタムおよびε−カプロラクタムなど(これらに限定されるものではない)のラクタム類(環状アミド、環中に−NH−C(=O)−)。
【0078】
イミノ(イミン):=NR(Rはイミノ置換基、例えば水素、C1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくは水素もしくはC1−7アルキル基である)。エステル基の例には、=NH、=NMe、=NEtおよび=NPhなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0079】
ホルミル(カルバルデヒド、カルボキシアルデヒド):−C(=O)H。
【0080】
アシル(ケト):−C(=O)R(Rはアシル置換基、例えばC1−7アルキル基(C1−7アルキルアシルもしくはC1−7アルカノイルとも称される)、C3−20複素環基(C3−20複素環アシルとも称される)もしくはC20アリール基(C5−20アリールアシルとも称される)、好ましくはC1−7アルキル基である)。アシル基の例には、−C(=O)CH(アセチル)、−C(=O)CHCH(プロピオニル)、−C(=O)C(CH(ブチリル)および−C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0081】
カルボキシ(カルボン酸):−COOH。
【0082】
エステル(カルボキシレート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):−C(=O)OR(Rはエステル置換基、例えばC1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である)。エステル基の例には、−C(=O)OCH、−C(=O)OCHCH、−C(=O)OC(CHおよび−C(=O)OPhなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0083】
アシルオキシ(逆エステル):−OC(=O)R(Rはアシルオキシ置換基、例えばC1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である)。アシルオキシ基の例には、−OC(=O)CH(アセトキシ)、−OC(=O)CHCH、−OC(=O)C(CH、−OC(=O)Phおよび−OC(=O)CHPhなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0084】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド):−C(=O)NR(RおよびRは独立に、アミノ基に関して定義のアミノ置換基である)。アミド基の例には、−C(=O)NH、−C(=O)NHCH、−C(=O)N(CH、−C(=O)NHCHCHおよび−C(=O)N(CHCHならびにRおよびRがそれらが結合している窒素原子と一体となって、例えばピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニルおよびピペラジノカルボニルでのような複素環構造を形成しているアミド基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
アシルアミド(アシルアミノ):−NRC(=O)R(Rはアミド置換基、例えば水素、C1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくは水素もしくはC1−7アルキル基であり、Rはアシル置換基、例えばC1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくは水素もしくはC1−7アルキル基である)。アシルアミド基の例には、−NHC(=O)CH、−NHC(=O)CHCHおよび−NHC(=O)Phなどがあるが、これらに限定されるものではない。RおよびRが一体となって、例えばスクシンイミジル、マレイミジルおよびフタルイミジルの場合ように環状構造を形成していてもよい。
【化23】

【0086】
アシルウレイド:−N(R)C(O)NRC(O)R(RおよびRは独立に、ウレイド置換基、例えば水素、C1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくは水素もしくはC1−7アルキル基である。Rはアシル基について定義のアシル基である。)。アシルウレイド基の例には、−NHCONHC(O)H、−NHCONMeC(O)H、−NHCONEtC(O)H、−NHCONMeC(O)Me、−NHCONEtC(O)Et、−NMeCONHC(O)Et、−NMeCONHC(O)Me、−NMeCONHC(O)Et、−NMeCONMeC(O)Me、−NMeCONEtC(O)Etおよび−NMeCONHC(O)Phなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0087】
カルバメート:−NR−C(O)−OR(Rはアミノ基について定義のアミノ置換基であり、Rはエステル基について定義のエステル基である。)。カルバメート基の例には、−NH−C(O)−O−Me、−NMe−C(O)−O−Me、−NH−C(O)−O−Et、−NMe−C(O)−O−t−ブチル、および−NH−C(O)−O−Phなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
チオアミド(チオカルバミル):−C(=S)NR(RおよびRは独立に、アミノ基について定義のアミノ置換基である)。アミド基の例には、−C(=S)NH、−C(=S)NHCH、−C(=S)N(CHおよび−C(=S)NHCHCHなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
テトラゾリル:4個の窒素原子および1個の炭素原子を有する5員芳香族環、
【化24】

【0090】
アミノ:−NR(RおよびRは独立に、アミノ置換基、例えば水素、C1−7アルキル基(C1−7アルキルアミノもしくはジ−C1−7アルキルアミノとも称される)、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくはHもしくはC1−7アルキル基であるか、「環状」アミノ基の場合には、RおよびRがそれらが結合している窒素原子と一体となって、4から8個の環原子を有する複素環を形成している)。アミノ基の例には、−NH、−NHCH、−NHC(CH、−N(CH、−N(CHCHおよび−NHPhなどがあるが、これらに限定されるものではない。環状アミノ基の例には、アジリジノ、アゼチジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノおよびチオモルホリノなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0091】
イミノ:=NR(Rはイミノ置換基、例えば水素、C1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくはHもしくはC1−7アルキル基である)。
【0092】
アミジン:−C(=NR)NR(各Rはアミジン置換基、例えば水素、C1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくはHもしくはC1−7アルキル基である)。アミジン基の例には−C(=NH)NHである。
【0093】
カルバゾイル(ヒドラジノカルボニル):−C(O)−NN−R(Rはアミノ基について定義のアミノ置換基である)。アジノ基の例には、−C(O)−NN−H、−C(O)−NN−Me、−C(O)−NN−Et、−C(O)−NN−Phおよび−C(O)−NN−CH−Phなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0094】
ニトロ:−NO
ニトロソ:−NO
アジド:−N
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):−CN
イソシアノ:−NC
シアナト:−OCN
イソシアナト:−NCO
チオシアノ(チオシアナト):−SCN
イソチオシアノ(イソチオシアナト):−NCS
スルフヒドリル(チオール、メルカプト):−SH。
【0095】
チオエーテル(スルフィド):−SR(Rはチオエーテル置換基、例えばC1−7アルキル基(C1−7アルキルチオ基とも称される)、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である)。C1−7アルキルチオ基の例には、−SCHおよび−SCHCHなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
ジスルフィド:−SS−R(Rはジスルフィド置換基、例えばC1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基(本明細書においてはC1−7アルキルジスルフィドとも称される)である)。C1−7アルキルジスルフィド基の例には、−SSCHおよび−SSCHCHなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
スルホン(スルホニル):−S(=O)R(Rはスルホン置換基、例えばC1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である)。スルホン基の例には、−S(=O)CH(メタンスルホニル、メシル)、−S(=O)CF(トリフリル)、−S(=O)CHCH、−S(=O)(ノナフリル)、−S(=O)CHCF(トレシル)、−S(=O)Ph(フェニルスルホニル)、4−メチルフェニルスルホニル(トシル)、4−ブロモフェニルスルホニル(ブロシル)および4−ニトロフェニル(ノシル)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
スルフィン(スルフィニル、スルホキシド):−S(=O)R(Rはスルフィン置換基、例えばC1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である)。スルフィン基の例には、−S(=O)CHおよび−S(=O)CHCHなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
スルホニルオキシ:−OS(=O)R(Rはスルホニルオキシ置換基、例えばC1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である)。スルホニルオキシ基の例には、−OS(=O)CHおよび−OS(=O)CHCHなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0100】
スルフィニルオキシ:−OS(=O)R(Rはスルフィニルオキシ置換基、例えばC1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である)。スルフィニルオキシ基の例には、−OS(=O)CHおよび−OS(=O)CHCHなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
スルファミノ:−NRS(=O)OH(Rはアミノ基について定義のアミノ置換基である)。スルファミノ基の例には、−NHS(=O)OHおよび−N(CH)S(=O)OHなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0102】
スルホンアミノ:−NRS(=O)R(Rはアミノ基について定義のアミノ置換基であり、Rはスルホンアミノ置換基、例えばC1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である)。スルホンアミノ基の例には、−NHS(=O)CHおよび−N(CH)S(=O)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
スルフィンアミノ:−NRS(=O)R(Rはアミノ基について定義のアミノ置換基であり、Rはスルフィンアミノ置換基、例えばC1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である)。スルフィンアミノ基の例には、−NHS(=O)CHおよび−N(CH)S(=O)Cなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
スルファミル:−S(=O)NR(RおよびRは独立に、アミノ基について定義のアミノ置換基である)。スルファミル基の例には、−S(=O)NH、−S(=O)NH(CH)、−S(=O)N(CH、−S(=O)NH(CHCH)、−S(=O)N(CHCHおよび−S(=O)NHPhなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
スルホンアミノ:−NRS(=O)R(Rはアミノ基について定義のアミノ置換基であり、Rはスルホンアミノ置換基、例えばCアルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくはC1−7アルキル基である)。スルホンアミノ基の例には、−NHS(=O)CHおよび−N(CH)S(=O)などがあるが、これらに限定されるものではない。特別な種類のスルホンアミノ基は、スルタムから誘導されるものであり、この基においては、RおよびRのうちの一方がC5−20アリール基、好ましくはフェニルであり、RおよびRのうちの他方が、C1−7アルキル基から誘導される二座配位基などのC5−20アリール基に連結された二座配位基である。そのような基の例には、
【化25】

などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0106】
ホスホルアミダイト:−OP(OR)−NR(RおよびRはホスホルアミダイト置換基、例えば−H、(置換されていてもよい)C1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくは−H、C1−7アルキル基もしくはC5−20アリール基である)。ホスホルアミダイト基の例には、−OP(OCHCH)−N(CH、−OP(OCHCH)−N(i−Pr)、および−OP(OCHCHCN)−N(i−Pr)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0107】
ホスホルアミデート:−OP(=O)(OR)−NR(RおよびRは、ホスホルアミデート置換基、例えば−H、(置換されていてもよい)C1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基、好ましくは−H、C1−7アルキル基もしくはC5−20アリール基である)。ホスホルアミデート基の例には、−OP(=O)(OCHCH)−N(CH、−OP(=O)(OCHCH)−N(i−Pr)、および−OP(=O)(OCHCHCN)−N(i−Pr)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
多くの場合、置換基自体が置換されていてもよい。例えば、C1−7アルコキシ基は、例えばC1−7アルキル(C1−7アルキル−C1−7アルコキシ基とも称される)、例えばシクロヘキシルメトキシ、C3−20複素環基(C5−20アリール−C1−7アルコキシ基とも称される)、例えばフタルイミドエトキシまたはC5−20アリール基(C5−20アリール−C1−7アルコキシ基とも称される)、例えばベンジルオキシで置換されていてもよい。
【0109】
異性体、塩および溶媒和物
ある種の化合物は、1以上の特定の幾何異性体、光学異性体、エナンチオマー異性体、ジアステレオマー異性体、エピマー異性体、立体異性体、互変異性体、立体配置異性体もしくはアノマー異性体で存在する場合があり、例えばシス−およびトランス−体;E−およびZ−体;c−、t−およびr−体;エンド−およびエキソ−体;R−、S−およびメソ−体;D−およびL−体;d−およびl−体;(+)および(−)体;ケト−、エノール−およびエノレート−体;シン−およびアンチ−体;シンクリナル−およびアンチクリナル−体;α−およびβ−体;アキシャルおよびエカトリアル体;舟形−、いす形−、ねじれ形−、エンベロープ形−および半いす形−体;ならびにこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されるものではない(これらは以下、「異性体」(「異性体形」)と総称される)。
【0110】
留意すべき点として、互変異性体について下記で説明する場合を除き、具体的には、本明細書で使用される「異性体」という用語から、構造(もしくは構成)異性体(すなわち、空間における原子の位置によってだけではなく、原子間の結合の仕方において異なる異性体)は除外される。例えば、メトキシ基−OCHについて言及した場合、それの構造異性体であるヒドロキシメチル基−CHOHについて言及したものと解釈すべきではない。同様に、オルト−クロロフェニルについて言及した場合は、それの構造異性体であるメタ−クロロフェニルに言及したものと解釈すべきではない。しかしながら、ある構造の一群について言及することは、その群に含まれる構造異性体をも包含する可能性がある(例えば、C1−7アルキルはn−プロピルおよびイソ−プロピルを含み;ブチルはn−、イソ−、sec−およびtert−ブチルを含み;メトキシフェニルはオルト−、メタ−およびパラ−メトキシフェニルを含む)。
【0111】
上記の除外は、例えば次の互変異性の対:ケト/エノール(下記に図示)、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、N−ニトロソ/ヒドロキシアゾ、ならびにニトロ/アシ−ニトロでのような互変異性体、例えばケト−、エノール−およびエノレート−形に関するものではない。
【化26】

【0112】
留意すべき点として、具体的には、「異性体」という用語には1以上の同位体置換を有する化合物が含まれる。例えば、HはH、H(D)およびH(T)を含むいずれかの同位体形であることができ;Cは12C、13Cおよび14Cを含むいずれかの同位体形であることができ;Oは16Oおよび18Oを含むいずれかの同位体形であることができる等である。
【0113】
別段の断りがない限り、特定の化合物に対する言及は、全てのそのような異性体形を含むものであり、それには(全体もしくは部分的に)ラセミ体およびそれらの他の混合物が含まれる。そのような異性体の製造(例:不斉合成)および分離(例:分別結晶およびクロマトグラフィー手段)の方法は、当業界で公知であるか、公知の手法で本明細書に記載の方法または公知の方法に調整を加えることで容易に得られる。
【0114】
別段の断りがない限り、特定の化合物に対する言及は、例えば下記に記載のようなそれのイオン形、塩形および溶媒和物形をも含むものである。
【0115】
活性化合物の相当する塩、例えば製薬上許容される塩を製造、精製および/または取り扱うことが簡便もしくは望ましい場合がある。製薬上許容される塩の例は、バージらの著作(Berge et al., 1977, ″Pharmaceutically Acceptable Salts″, J. Pharm. Sci., Vol. 66, pp. 1-19)に記載されている。
【0116】
例えば、化合物がアニオン性であるか、アニオン性であることができる官能基(例えば、−COOHは−COOであることができる)を有する場合、好適なカチオンと塩を形成することができる。好適な無機カチオンの例には、NaおよびKなどのアルカリ金属イオン、Ca2+およびMg2+などのアルカリ土類カチオン、ならびにAl3+などの他のカチオンなどがあるが、これらに限定されるものではない。好適な有機カチオンの例には、アンモニウムイオン(すなわち、NH)および置換アンモニウムイオン(例えば、NH、NH、NHR、NR)などがあるが、これらに限定されるものではない。一部の好適な置換アンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミンおよびトロメタミン、ならびにリジンおよびアルギニンなどのアミノ酸から誘導されるものがある。一般的な四級アンモニウムイオンの1例はN(CHである。
【0117】
化合物がカチオン性であるか、カチオン性となり得る官能基(例えば、−NHは−NHであることができる)を有する場合、好適なアニオンと塩を形成することができる。好適な無機アニオンの例には、次の無機酸:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸および亜リン酸から誘導されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。好適な有機アニオンの例には、次の有機酸:酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、乳酸、リンゴ酸、パモ酸、酒石酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、安息香酸、桂皮酸、ピルビン酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、フェニルスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、パントテン酸、イセチオン酸、吉草酸、ラクトビオン酸およびグルコン酸から誘導されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。好適な高分子アニオンの例には、次の高分子酸:タンニン酸、カルボキシメチルセルロースから誘導されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
活性化合物の相当する溶媒和物を製造、精製および/または取り扱うことが簡便もしくは望ましい場合がある。「溶媒和物」という用語は本明細書において、溶質(例:活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒の複合体を指す従来の意味で用いられる。溶媒が水である場合、溶媒和物は簡便には、水和物、例えば一水和物、二水和物、三水和物として言及され得る。
【0119】
さらに好ましいもの
全ての化合物
本発明において、RN1およびRN2がそれらが結合している窒素原子とともに、4から8個の原子を有する複素環を形成していることが好ましい。この複素環は、少なくとも1個の窒素環原子を含まなければならない上記で定義のC4−20複素環基(4個という最小の環原子を有する場合を除く)の一部を形成していることができる。RN1およびRN2がそれらが結合している窒素原子とともに、5、6もしくは7個の原子、より好ましくは6個の環原子を有する複素環を形成していることが好ましい。
【0120】
1個の窒素原子を有する単環には、アゼチジン、アゼチジン、ピロリジン(テトラヒドロピロール)、ピロリン(例:3−ピロリン、2,5−ジヒドロピロール)、2H−ピロールもしくは3H−ピロール(イソピロール、イソアゾール)、ピペリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジンおよびアゼピンなどがあり;2個の窒素原子のものには、イミダゾリジン、ピラゾリジン(ジアゾリジン)、イミダゾリン、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)およびピペラジンなどがあり;1個の窒素および1個の酸素のものには、テトラヒドロオキサゾール、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール、ジヒドロイソオキサゾール、モルホリン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジンおよびオキサジンなどがあり;1個の窒素および1個の硫黄のものには、チアゾリン、チアゾリジンおよびチオモルホリンなどがある。
【0121】
好ましい環は、窒素以外に1個のヘテロ原子を含むものであり、特には好ましいヘテロ原子は酸素および硫黄である。従って、好ましい基にはモルホリノ、チオモルホリノ、チアゾリニルなどがある。別のヘテロ原子を持たない好ましい基には、ピロリジノなどがある。
【0122】
最も好ましい基は、モルホリノおよびチオモルホリノである。
【0123】
上記で言及したように、これらの複素環基自体が置換されていてもよく、好ましい種類の置換基はC1−7アルキル基である。複素環基がモルホリノである場合、その置換基もしくは複数の置換基は、好ましくはメチルもしくはエチルであり、より好ましくはメチルである。単一のメチル置換基は、最も好ましくは2位にある。
【0124】
上記の単環基だけでなく、架橋もしくは交差構造を有する環も想到される。基が窒素および酸素原子を含むこれらの種類の環の例には、下記のものがある。
【化27】

【0125】
これらの名称は、それぞれ8−オキサ−3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクト−3−イル、6−オキサ−3−アザ−ビシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−イル、2−オキサ−5−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イルおよび7−オキサ−3−アザ−ビシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−イルである。
【0126】
式(IX)の化合物
Qが−NH−C(=O)−である場合、Xは好ましくはNRN3N4である。Yが置換されていてもよいC1−3アルキレン基、より好ましくは置換されていてもよいC1−2アルキレン基、最も好ましくはC1−2アルキレン基であることがさらに好ましい。
【0127】
Qが−O−であり、XがNRN3N4である場合、Yは好ましくは置換されていてもよいC1−3アルキレン基、より好ましくは置換されていてもよいC1−2アルキレン基、最も好ましくはC1−2アルキレン基である。
【0128】
一部の実施形態において、RN3およびRN4は好ましくは独立に、Hおよび置換されていてもよいC1−7アルキル、より好ましくはHおよび置換されていてもよいC1−4アルキル、最も好ましくはHおよび置換されていてもよいC1−2アルキルから選択される。好ましい適宜の置換基には、ヒドロキシ、メトキシ、−NH、置換されていてもよいC−アリールおよび置換されていてもよいC5−6複素環などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0129】
他の実施形態では、RN3およびRN4が、それらが結合している窒素原子と一体となって、4から8個の環原子を有する置換されていてもよい窒素含有複素環を形成している。好ましくは、その複素環は5から7個の環原子を有する。好ましい基の例には、モルホリノ、ピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニルおよびテトラヒドロピロロなどがある。これらの基は置換されていてもよく、特に好ましい基は置換されていてもよいピペラジニルであり、その置換基は好ましくはパラ窒素原子上である。好ましいN−置換基には、置換されていてもよいC1−4アルキル、置換されていてもよいCアリールおよびアシル(アシル置換基としてC1−4アルキル基を有する)などがある。
【0130】
本発明の第2の態様の一部の好ましい化合物は、下記式(IXa)によって表すことができる。
【化28】

【0131】
式中、
N1、RN2およびQは式(IX)について定義のとおりであり;
nは、1から7、好ましくは1から4、最も好ましくは1もしくは2であり;
N5は、水素、置換されていてもよいC1−7アルキル(好ましくは置換されていてもよいC1−4アルキル)、置換されていてもよいC5−20アリール(好ましくは置換されていてもよいCアリール)およびアシル(そのアシル置換基は好ましくはC1−4アルキルである)から選択される。
【0132】
およびRの好ましいものについては、上記で示したRおよびRについてのものと同じであることができる。
【0133】
式(X)の化合物
、Z、Z、ZおよびZ
が単結合ではない場合、Z、Z、Z、ZおよびZならびにZおよびZが結合している炭素原子が6員芳香族環を形成しており、Z、Z、ZおよびZのうちの1個もしくは2個がNであり、残りがCHであることが好ましい。Zが単結合である場合、Z、Z、Z、ZおよびZならびにZおよびZが結合している炭素原子が5員芳香族環を形成しており、Z、ZおよびZのうちの1個もしくは2個がS、OおよびNから選択され、残りがCHであることが好ましい。Z、ZおよびZのうちの一つがOおよびSから選択され、他のものが両方ともCHであるか、一方がNであり、他方がCHであることが好ましい場合がある。
【0134】
、Z、Z、ZおよびZは、それらが結合している炭素原子と一体となって、好ましくは置換されたフェニル、チオフェニル、フラニル、チアゾリル、イミダゾリル、ピリジル、ピリミジニル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリルから選択される置換アリール基を形成している。より好ましくはそれらは、置換フェニル、チアゾリル、チオフェニルもしくはピリジルから選択される基を形成している。
【0135】
は好ましくはSもしくはCRであり、Rは好ましくはHである。
【0136】
は好ましくはCRである。Rは、好ましくは置換されていてもよいC5−20アリールであり、より好ましくはC5−6アリールである。
【0137】
一部の好ましい実施形態は、Cヘテロアリール、ピリジルおよびフェニルとしてのRを有し、そのうちフェニルが最も好ましい。Rは好ましくは置換されていない。
【0138】
がC5−20アリールである実施形態において、それは1以上の縮合環を含むことができる。これらの実施形態では、Rは好ましくは、ナフチル、インドリル、キノリニルおよびイソキノリニルから選択されてもよい。
【0139】
がCヘテロアリールである実施形態において、それは好ましくはフラン、チオフェン、2−メチル−チオフェン、2−ニトロチオフェン、チオフェン−2−イルアミン、チアゾール、イミダゾールおよび1−メチル−1H−イミダゾールから誘導される基から選択される。
【0140】
が置換アリールである実施形態において、適宜の置換基は好ましくはハロ(最も好ましくはフルオロ)、C5−20アリール、R、OR、SORおよびCORから選択され、RはC1−7アルキルである。
【0141】
は好ましくはNもしくはCRであり、RはHもしくはQ−Y−Xである。
【0142】
は好ましくは直接結合もしくはCHである。
【0143】
は好ましくはN、SもしくはCHである。
【0144】

、Z、ZおよびZがいずれもCHを表し、ZがCRを表す場合、RがQ−Y−Xであることが好ましい。Z、Z、ZおよびZのうちの少なくとも1個がO、NもしくはSである場合、RがHであることが好ましい。
【0145】
NRN3N4およびNRN5N6についての好ましいものは、式(IX)の化合物での場合と同じである。
【0146】
(実施例)
一般的実験法
市販の原料を、シグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich, Gillingham, Dorset, UK)およびランカスター(Lancaster, Morecambe, Lancashire, UK)から購入した。乾燥DMF、メタノール、エタノール、DCM、アセトニトリルおよびピリジンは、シュアシール(SureSeal;商標名)瓶入りでアルドリッチから入手した。トリエチルアミンは、水素化カルシウムでの蒸留によって乾燥し、窒素下に水酸化カリウムを入れて保存した。テトラヒドロフラン(THF)は、不活性雰囲気下にナトリウムベンゾフェノンケチルで蒸留することで乾燥した。反応はいずれも、別段の断りがない限り、窒素もしくはアルゴンの不活性雰囲気下で実施した。
【0147】
融点は、スチュアート・サイエンティフィック(Stuart Scientific)融点計で測定し、未補正である。
【0148】
LCMSスペクトラムは、ウォーターズ社(Waters)996光ダイオードアレイ検出器、ウォーターズ600制御装置およびウォーターズ2700サンプルマネージャー(Sample Manager)と組み合わせたマイクロマス・プラットフォーム(Micromass Platform)LCを用いて記録した。分離は、いずれも0.05%ギ酸を含むHO(A)およびMeOH(B)を用いる定組成溶離を用いて、ウォーターズ・シンメトリー(Symmetry)C18 カラム(4.6×20nm)もしくはウォーターズ・アトラニス(Atlanis)C18カラム(4.6×50nm)で行った。使用した勾配は、5分間かけてA:B95:5から5:95であった。
【0149】
NMRスペクトラムは、溶媒としてCDCl、d−MeOHもしくはd−DMSOを用いるブルカー・スペクトロスピン(Bruker Spectrospin)AC300Eスペクトル計(Hは300MHz、13Cは75MHz)もしくはJEOL JNM−LA500スペクトル計(Hは500MHz、13Cは125MHz)で記録した。化学シフト(δ)は、テトラメチルシラン(TMS)から低磁場の百万分率(ppm)で報告する。多重項は、s(一重項)、d(二重項)、t(三重項)、q(四重項)、m(多重項)、br(広範囲);またはこれらの組み合わせによって示す。カップリング定数(J)は、ヘルツ(Hz)で測定する。
【0150】
IRスペクトラムは、無希釈サンプルとしてバイオ−ラド(Bio-Rad)FTS3000MXダイヤモンドATR上で記録した。
【0151】
カラムクロマトグラフィーは、ダビシル(Davisil)(40から63μA)シリカゲルを用いて行った。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、裏材をアルミニウムとする塗布済みシリカゲル60F254プレートを用いて行い、紫外(UV)光で可視化した。
【0152】
HRMSは、MAT95装置のMAT900を用いて、ウェールズ大学化学学部EPSRC国立質量スペクトルサービスセンター(EPSRC National Mass Spectrometry Service Centre, Chemistry Department, University of Wales, SA2 8PP Swansea)が得たものである。
【実施例1】
【0153】
【化29】

【0154】
(a)2,3−ジヒドロキシ−安息香酸メチルエステル(1)
この方法は、コールマンらの報告(Coleman, R.S. & Grant, E.B.; J.Am.Chem.Soc., 117(44), 10889 (1995);参照によって本明細書に組み込まれる)に開示されている。2,3−ジヒドロキシ−安息香酸(15g、97.3mmol)をメタノール(150mL)に溶かし、攪拌しながら冷却して0℃とした。濃硫酸(9mL)を溶液に滴下した。反応混合物を12時間加熱還流したところ、褐色になった。溶媒を留去して、淡褐色油状物を得た。酢酸エチルおよび飽和NaHCO水溶液を、発泡が停止するまで加えた。水相を酢酸エチルで抽出し(150mLで3回)、有機層をNaSOを用いて乾燥した。得られた溶液を減圧下に濃縮して、淡褐色固形物を得た(16.47g、99%)。
【0155】
1H NMR(300MHz, CDCl3):δ3.97(3H, s), 5.70(1H, s), 6.82(1H, t, J=8.0Hz), 7.10(1H, d, J=7.9Hz), 7.32(1H, d, J=8.0Hz), 10.9(1H, s). 13C NMR(75MHz, CDCl3):δ52.9, 112.8, 119.6, 120.3, 121.0, 145.4, 149.2, 171.2. 融点:83-85℃. IR:3455, 2363, 2222, 2163, 1987, 1668, 1607, 1458, 1340cm-1. HRMS:[M+NH4]+計算値:186.0761. 実測値:186.0762。
【0156】
(b)2,3−ビス−アリルオキシ−安息香酸メチルエステル(7)
2,3−ジヒドロキシ−安息香酸メチルエステル()(18.4g、109.5mmol)および炭酸カリウム(37.8g、273.8mmol)をアセトニトリル(180mL)に溶かした。臭化アリル(20.6mL、241.0mmol)を20分間かけて滴下して、淡黄色不透明溶液を得た。これを9時間加熱還流した。形成された不透明黄色液体を酢酸エチル(150mL)で希釈し、水(200mLで2回)およびブライン(150mLで1回)で洗浄した。得られた橙赤色溶液をNaSOで乾燥し、減圧下に濃縮して、褐色油状物を得た(22.32g、82%)。
【0157】
1H NMR(300MHz, CDCl3):δ3.85(3H, s), 4.55(4H, d, J=5.4Hz), 5.10-5.45(4H, m), 5.85-6.10(2H, m), 7.08(2H, d, J=4.8Hz), 7.17(1H, t, J=4.8Hz). 13C NMR(75MHz, CDCl3):δ52.2, 69.8, 74.8, 117.7, 118.4, 122.6, 123.7, 125.1, 132.5, 133.2, 133.4, 147.6, 152.8, 166.8. IR:3082, 2952, 2871, 1726, 1581, 1470, 1422, 1357, 1308cm-1. HRMS:[M+NH4]+計算値:249.1121. 実測値:249.1124。
【0158】
(c)1−(2,3−ビス−アリルオキシ−フェニル)−3−モルホリン−4−イル−プロパン−1,3−ジオン(9)
N−アセチルモルホリン(8)(0.5mL、4.46mmol)のTHF(20mL)中混合物を−78℃に冷却したものに、リチウムジイソプロピルアミン(LDA)1.8MのTHF中溶液(2.48mL、4.46mmol)を、温度を−70℃以下に維持しながら30分間で滴下した。反応混合物を昇温させて−10℃とし、1時間攪拌した。2,3−ビス−アリルオキシ−安息香酸メチルエステル()(0.554g、2.23mmol)のTHF(5mL)中溶液を、−78℃で冷却した反応混合物に、温度を−70℃以下に維持しながら滴下した。反応混合物を昇温させて室温とし、2時間攪拌し、HCl水溶液(2M)でpH1へと酸性にした。反応混合物をDCM中に抽出し(30mLで3回)、合わせた有機層をNaSOで乾燥し、濃縮した。反応粗生成物を、溶離液としてMeOH:DCM(1:99から5:95)を用いるシリカでのクロマトグラフィーによって精製して、標題化合物を淡黄色油状物として得た(0.655g、85%)。
【0159】
1H NMR(300MHz, CDCl3):δ3.20-3.75(8H, m), 4.15(2H, s), 4.45 4.65(4H, m), 5.2-5.4(4H, m), 5.90-6.10(2H, m), 7.05-7.25(3H, m). 13C NMR(75MHz, CDCl3):δ40.5, 47.8, 49.6, 67.0, 67.1, 70.0, 74.4, 75.0, 89.5, 117.4, 117.9, 118.3, 119.9, 121.8, 124.5, 129.9, 133.0, 133.4, 133.9, 134.4, 147.0, 147.6, 152.1, 152.5, 166.5, 169.3, 171.7, 196.3. IR:2968, 2916, 2860, 2040, 1671, 1615, 14581361, 1268cm-1. HRMS:[M+H]+計算値:345.1649. 実測値:346.1652。
【0160】
(d)1−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−フェニル)−3−モルホリン−4−イル−プロパン−1,3−ジオン(10)
ヨウ化テトラブチルアンモニウム(1.62g、4.38mmol)のDCM(15mL)中溶液を冷却して−78℃とした。塩化チタン(IV)(DCM中の1M溶液、4.40mL、4.38mmol)を−78℃で30分間かけて滴下した。10分後、1−(2,3−ビス−アリルオキシ−フェニル)−3−モルホリン−4−イル−プロパン−1,3−ジオン()(0.72g、2.08mmol)のDCM(15mL)中溶液を滴下して、暗褐色溶液を得た。反応液を−78℃で1時間攪拌し、1時間かけて昇温させて0℃とした。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液に投入し、水相をDCMで抽出した(100mLで3回)。橙赤色有機層を塩化アンモニウム溶液で洗浄し、NaSOを用いて乾燥した。これを減圧下に濃縮して褐色油状物を得て、それを溶離液としてMeOH:DCM(2:98)を用いるシリカでのカラムクロマトグラフィーによって精製して、生成物を油状物として得た(0.63g、収率99%)。
【0161】
1H NMR(300MHz, CDCl3):δ3.30-3.50(8H, m), 4.05(2H, s), 4.65(2H, d, J=5.4Hz), 5.17-5.23(2H, dd, Jcis=10.1Hz, Jtrans=16.4Hz), 5.95-6.05(1H, m), 6.81(1H, t, J=8.1Hz), 7.08(1H, d, J=8.1Hz), 7.35(1H, d, J=8.2Hz). 13C NMR(75MHz, CDCl3):δ, 42.6, 47.0, 59.3, 66.9, 70.0, 74.3, 119.1, 119.7, 120.2, 121.1, 122.6, 132.9, 147.9, 153.6, 165.4, 201.6. IR:3227, 2966, 2922, 2860, 2247, 1622, 1587, 1444, 1364cm-1. HRMS:[M+H]+計算値:306.1336. 実測値:306.1341。
【0162】
(e)8−アリルオキシ−2−モルホリン−4−イル−クロメン−4−オン(11)
1−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−フェニル)−3−モルホリン−4−イル−プロパン−1,3−ジオン(10)(0.38g、1.25mmol)をDCM(20mL)に溶かし、冷却して0℃とした。0℃で攪拌しながら無水トリフル酸(TfO)(0.80mL、4.50mmol)を加えた。反応液を昇温させて室温とし、15時間攪拌した。減圧下に溶媒留去して褐色残留物を得た。これをMeOH(40mL)に再度溶かし、1時間攪拌した。溶媒留去し、残留物を半飽和重炭酸ナトリウムで希釈し、水相をDCMで抽出した(50mLで3回)。合わせた有機層をブラインで洗浄し、NaSOで乾燥した。溶媒を減圧下に除去して、黄色固形物を得た。これを酢酸エチルおよびガソリンから再結晶して、淡クリーム色固形物を得た(0.33g、収率92%)。
【0163】
1H NMR(300MHz, CDCl3):δ3.45-3.55(4H, m), 3.75-3.85(4H, m), 4.75(2H, d, J=5.1Hz), 5.25-5.50(2H, dd, Jtrans=18.8Hz, Jcis=11.9Hz), 5.51(1H, s), 6.10-6.20(1H, m), 7.12(1H, d, J=8.0Hz), 7.25(1H, t, J=7.9Hz), 7.75(1H, d, J=7.9Hz). 13C NMR(75MHz, CDCl3):δ45.0, 52.7, 59.2, 67.1, 70.2, 87.6, 115.7, 117.2, 118.3, 124.1, 124.8, 133.0, 144.3, 147.1, 162.8, 177.5。融点:134-136℃. IR:2868, 1641, 1570, 1406, 1348, 1269, 1242, 1180, 1112, 1030, 866cm-1. HRMS:[M+H]+計算値:288.1230. 実測値:288.1232。
【0164】
(f)8−ヒドロキシ−2−モルホリン−4−イル−クロメン−4−オン(12)
8−アリルオキシ−2−モルホリン−4−イル−クロメン−4−オン(11)(0.05g、0.174mmol)の脱気エタノール(4mL)中混合物に、トリフェニルホスフィンルテニウム(I)クロライド(11.27mg、0.012mmol)およびDabco(1.95mg、0.0174mmol)を加えた。この褐色混合物を3時間加熱還流した。反応混合物をセライト層で濾過し、減圧下に濃縮して褐色油状物を得た。これを、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(MeOH:DCM;10:90)を用いて精製して、淡黄色固形物を得た(0.04g、収率93%)。
【0165】
1H NMR(300MHz, MeOD):δ3.75(4H, m), 3.87(4H, m), 5.48(1H, s), 7.12(2H, m), 7.38(1H, d, J=7.7Hz). 13C NMR(75MHz, MeOD):δ46.5, 55.2, 67.5, 87.4, 116.0, 120.5, 126.7, 131.8, 132.1, 135.5, 135.7, 144.7, 164.7。融点:240-247℃. IR:2966, 2920, 2362, 1718, 1617, 1562, 1480, 1360cm-1. HRMS:[M+H]+計算値:248.0917. 実測値:248.0916。
【0166】
(g)トリフルオロ−メタンスルホン酸2−モルホリン−4−イル−4−オキソ−4H−クロメン−8−イルエステル(A)
8−ヒドロキシ−2−モルホリン−4−イル−クロメン−4−オン(12)(0.007g、0.03mmol)およびN−フェニルトリフルイミド(0.04g、0.11mmol)のTHF(4mL)中混合物に、トリエチルアミン(0.017mL、0.11mmol)を加えた。反応混合物を70℃で4時間、室温で12時間攪拌した。水(10mL)を反応混合物に加え、DCMで抽出した(10mLで3回)。合わせた有機層をMgSOで乾燥し、減圧下に濃縮した。粗反応混合物を、MeOH:DCM(2:98から5:95)を用いるカラムでのクロマトグラフィーによって精製して、所望の化合物を淡クリーム色固形物として得た(0.006g、53%)。
【0167】
1H NMR(300MHz, CDCl3):δ3.45-3.60(4H, m), 3.70-3.80(4H, m), 5.68(1H, s), 7.50(1H, t, J=8.1Hz), 7.80(1H, d, J=7.9Hz), 8.10(1H, d, J=7.9Hz). 13C NMR(75MHz, DMSO-d6):δ45.1, 65.5, 87.0, 124.9, 125.4, 125.5, 125.6, 136.4, 145.1, 161.8, 173.5. 融点:136-138℃. IR:2866, 1607, 1559, 1483, 1418, 1362cm-1. HRMS:[M+H]+計算値:280.0410. 実測値:280.0411。
【0168】
化合物の総収率は35%であった。
【実施例2】
【0169】
【化30】

【0170】
(a)2,3−ジ−アリルオキシベンズアルデヒド(14)
この経路は、アヌンジアタらの報告(Annunziata, R., et al., Eur. J. Org. Chem., 3067 (1999);参照によって本明細書に組み込まれる)に記載されている。炭酸カリウム(15g、110mmol)を含む2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒド(13)(6.22g、5mmol)のアセトニトリル(40mL)中混合物に、臭化アリル(7.77mL、90mmol)を20分間かけて、室温にてN雰囲気下で滴下した。反応混合物を4時間加熱還流した(80から85℃)。混合物をEtOAc(150mL)で希釈し、水(200mLで2回)、ブライン(200mL)で洗浄し、MgSOで乾燥した。油状生成物を高真空下に乾燥させた(8.80g、89%)。
【0171】
1H-NMR(300MHz, CDCl3):δ4.50(4H, d, J=5.5Hz), 5.25(4H, m), 6.00(2H, m), 7.00-7.10(2H, m), 7.25(1H, m), 10.30(1H, s). 13C-NMR(300MHz, CDCl3):δ70.23, 75.54, 118.2, 119.3, 119.8, 120.1, 124.5, 130.7, 133.0, 133.5, 151.9, 152.3, 190.8. IR:ν3078, 2865, 1682, 1582, 1465, 1389, 1244, 923cm-1. HRMS:[M+H]+計算値:219.1016. 実測値:219.1015。
【0172】
(b)1−(2,3−ジアリルオキシ−フェニル)−エタノール(15)
2,3−ビス−アリルオキシベンズアルデヒド(14)(1g、4.5mmol)のTHF(10mL)中溶液に、メチルマグネシウムブロマイド(1.5mL、4.5mmol)のDCM(1.5mL)中溶液を、0℃にてN雰囲気下に15分間滴下した。混合物を4時間攪拌し、そして室温で1時間攪拌した。反応液を10%酢酸水溶液(25mL)および氷で反応停止し、EtOAcで抽出し(50mLで3回)、メタ亜硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し(50mLで2回)、MgSOで乾燥し、減圧下に濃縮した。残留物を、溶離液としてEtOAc/ガソリン(15:85)を用いるシリカでのクロマトグラフィーによって精製して、生成物を無色油状物として得た(0.88g、82%)。
【0173】
1H-NMR(300MHz, CDCl3):δ1.40(3H, d, J=6.5Hz), 4.5-4.4(4H, m), 5.10(1H, q, J=6.5Hz), 5.3-5.4(4H, m), 5.9-6.0(2H, m), 6.6-6.8(1H, m), 7.00(2H, m). 13C-NMR(75MHz, CDCl3):δ24.1, 66.3, 69.9, 74.3, 117.8, 118.1, 118.6, 124.5, 130.0, 133.5, 134.5, 139.7, 145.5, 151.7. IR:2992, 2922, 1584, 1471, 1265, 1197, 985, 921, 786cm-1. HRMS:[M+NH4]+計算値:252.1594. 実測値:252.1598。
(c)1−(2,3−ジアリルオキシフェニル)エタノン(16)
1−(2,3−ビスアリルオキシ−フェニル)−エタノール(15)(5.7g、24mmol)の乾燥DCM(50mL)中溶液に、セライト(10g)およびPCC(16g、73.6mmol)を加えた。反応混合物を5時間攪拌し、セライトで濾過した。濾液をHCl水溶液(2M)、ブラインで洗浄し、MgSOで乾燥し、減圧下に濃縮した。残留物を、溶離液としてEtOAc/ガソリン(5:95)を用いるシリカでのクロマトグラフィーを用いて精製して、標題化合物を無色油状物として得た(4.86g、85%)。
【0174】
1H-NMR:(300MHz, CDCl3);δ2.55(3H, s), 4.6-4.5(4H, m), 5.1-5.3(4H, m), 5.9-6.1(2H, m), 7.0-7.2(3H, m). 13C-NMR:(75MHz, CDCl3);δ31.9, 70.2, 75.0, 117.8, 118.1, 118.7, 121.5, 124.3, 133.2, 133.9, 134.0, 147.0, 152.0, 200.0. IR:ν3080, 2867, 1677, 1577, 1463, 1419, 1356, 1307, 1257, 1211cm-1. HRMS:[M+H]+計算値:233.1172. 実測値:233.1172。
【0175】
(d)1−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−フェニル)エタノン(17)
nBuNI(17g、46mmol)のDCM(15mL)中溶液に、TiCl(DCM中の1M溶液、46mL、46mmol)を−78℃で30分間滴下した。10分後、1−(2,3−ジアリルオキシ−フェニル)−エタノン(16)(4.86g、21mmol)のDCM(20mL)中溶液を加えた。反応液を−78℃で4時間攪拌した。混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)に投入し、ヘキサンで抽出した(120mLで3回)。合わせた有機層をNaSOで乾燥し、濾過した。溶媒を留去して黄色固形物を得て、それをEtOAcからの再結晶によって精製して、生成物を黄色針状物として得ることができた(3.22g、80%)。
【0176】
1H-NMR:(300MHz, CDCl3), δ2.55(3H, s), 4.5-4.6(2H, d, J=5.4Hz), 5.2-5.4(2H, m), 5.9-6.1(1H, m), 6.75(1H, t, J=8Hz), 7.00(1H, s), 7.30(1H, d, J=8Hz), 12.50(1H, s). 13C-NMR:(75MHz.CDCl3);δ25.9, 69.0, 117.0, 117.07, 118.3, 118.8, 121.3, 131.8, 146.6, 152.2, 203.7. 融点:51-52℃. IR:ν2860, 1639, 1448, 1582, 1365, 1321, 1292, 1238, 1031, 935cm-1. HRMS:[M+H]+計算値:193.0859. 実測値:193.0858。
【0177】
(e)モルホリン−4−カルボン酸2−アセチル−6−(アリルオキシ)フェニル(19)
炭酸セシウム(0.110g、0.34mmol)を含む1−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−フェニル)エタノン(17)(0.05g、0.26mmol)のアセトニトリル(8mL)中混合物に、4−モルホリンカルボニルクロライド(18)(0.05mL、0.4mmol)を、室温でN雰囲気下に滴下した。反応混合物を12時間加熱還流した(80−85℃)。混合物をEtOAc(30mL)で希釈し、水(250mLで2回)、ブライン(30mL)で洗浄し、MgSOで乾燥した。油状生成物を、溶離液としてEtOAc/ガソリン(30:70)を用いるカラムでのクロマトグラフィーによって精製して、標題生成物を淡黄色油状物として得た(0.7g、86%)。
【0178】
1H-NMR:(300MHz, CDCl3);2.47(3H, s), 3.35(2H, m), 3.60(6H, m), 4.50(2H, d, J=5.4Hz), 5.20-5.30(2H, dd;Jcis=10.1Hz, Jtrans=16.4Hz), 5.95-6.05(1H, m), 7.03(1H, d, J=8.1Hz), 7.13(1H, t, J=8.1Hz), 7.35(1H, d, J=8.2Hz). 13C-NMR:(75MHz, CDCl3);δ30.14, 44.6, 45.2, 53.3, 66.5, 69.6, 117.2, 117.6, 121.2, 125.7.1, 132.5, 132.7, 139.7, 151.0, 152.7, 197.7. IR:ν2.860, 1718, 1679, 1579, 1415, 1314, 1270, 1197, 1110, 1046, 1012, 853, 787cm-1. HRMS:[M+H]+計算値:306.1336. 実測値:306.1337。
【0179】
(f)1−(3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−フェニル)−3−モルホリン−4−イル−プロパン−1,3−ジオン(10)
モルホリン−4−カルボン酸2−アセチル−6−(アリルオキシ)フェニル(19)(0.08g、0.27mmol)およびピリジン(5mL)の混合物に、微粉末状のKOH(0.08g、1.3mmol)を加えた。18時間後、混合物を10%酢酸水溶液(10mL)で希釈し、DCMで抽出し(15mLで3回)、MgSOで乾燥した。得られた黄色固形物を、溶離液としてEtOAc/ガソリン(80:20)を用いるシリカでのクロマトグラフィーによって精製して、所望の生成物と確認された褐色−黄色油状物を得た(0.05g、62%)。
【0180】
次に、実施例1での方法に従って、化合物(10)から化合物を合成し、総収率は19%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化1】

[式中、RN1およびRN2は独立に水素、置換されていてもよいC1−7アルキル基、C3−20複素環基もしくはC5−20アリール基から選択されるか、またはそれらが結合している窒素原子とともに、4から8個の環原子を有する置換されていてもよい複素環を一緒に形成していてもよい。]を、式(III)の化合物:
【化2】

から合成する方法であって、
(a)適切な反応条件によって式(III)の化合物からアリル基を除去し、式(II)の化合物:
【化3】

を得る段階;および
(b)式(II)の化合物をトリフレート化剤と反応させて式(I)の化合物を得る段階
を含む前記方法。
【請求項2】
段階(a)において、前記アリル基の除去を、エタノール中にて1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタンの存在下にRh(PPhClを用いて実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(b)を、無水トリフル酸もしくはN−フェニルトリフルオロメタンスルホンイミド(PhNTf)を用いて実施する、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
段階(b)を、トリエチルアミン中のPhNTfを用いて実施する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
式(III)の化合物を、式(IV)の化合物:
【化4】

から、閉環によって合成する、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記閉環を、DCM中の無水トリフル酸を用いて行う、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
式(IV)の化合物を、式(V)の化合物:
【化5】

から、2−アリル基の選択的除去によって合成する、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記2−アリル基の選択的除去を、TiClおよびBuNIを用いて行う、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
化合物
【化6】

と式(VI)の化合物:
【化7】

とをカップリングさせることにより、式(V)の化合物を合成する、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記カップリングを、THF中のリチウムジイソプロピルアミド(LDA)を用いて、式(VI)の化合物のリチウムエノラートをin situで発生させることで行う、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
化合物を、化合物
【化8】

から、両方のフェノール性基をアリルエーテル基に変換することで製造する、請求項9または請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記変換を、アセトニトリル中炭酸カリウムとともに臭化アリルを用いて実施する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式(IV)の化合物を、式(VII)の化合物:
【化9】

から、ベーカー・ベンカタラマン転位によって合成する、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項14】
前記ベーカー・ベンカタラマン転位を、ピリジン中の水酸化カリウムを用いて実施する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
化合物17
【化10】

と式(VIII)の化合物:
【化11】

とをカップリングさせることにより、式(VII)の化合物を合成する、請求項13または請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記カップリングを、アセトニトリル中の炭酸セシウムを用いて行う、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
化合物17を、化合物16
【化12】

から、2−アリル基の選択的除去によって合成する、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記2−アリル基の選択的除去を、TiClおよびBuNIを用いて実施する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
化合物16を、化合物15
【化13】

から、酸化によって合成する、請求項17または請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記酸化を、クロロクロム酸ピリジニウム(PCC)、MnOもしくはデス−マーチン試薬を用いて行う、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記酸化をPCCを用いて行う、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
化合物15を、化合物14
【化14】

から、グリニャール試薬を用いることによるメチル化によって合成する、請求項19から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記メチル化を、MeMgBrでの処理によって行う、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
化合物14を、化合物
【化15】

から、両方のフェノール性基のアリルエーテル基への変換によって合成する、請求項21または請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記変換を、アセトニトリル中の炭酸カリウムとともに臭化アリルを用いて行う、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記式(I)の化合物をさらに、下記式(IX)の化合物に変換する段階を有する、請求項1から25のいずれか1項に記載の方法。
【化16】

[式中、
N1およびRN2は化合物(I)について定義のとおりであり;
Qは、−NH−C(=O)−もしくは−O−であり;
Yは、置換されていてもよいC1−5アルキレン基であり;
Xは、SRS1もしくはNRN3N4から選択され、
S1、もしくはRN3およびRN4は独立に、水素、置換されていてもよいC1−7アルキル、C5−20アリールもしくはC3−20複素環基から選択され、またはRおよびRは一体となって、それらが結合している窒素原子とともに、4から8個の環原子を有する置換されていてもよい複素環を形成してもよく;
Qが−O−である場合、Xはさらに−C(=O)−NRN5N6から選択され、RN5およびRN6は独立に水素、置換されていてもよいC1−7アルキル、C5−20アリールもしくはC3−20複素環基から選択されるか、RN5およびRN6は一体となって、それらが結合している窒素原子とともに、4から8個の環原子を有する置換されていてもよい複素環を形成してもよく;
Qが−NH−C(=O)−である場合、−Y−Xはさらに、C1−7アルキルから選択されてもよい。]

【公表番号】特表2009−543856(P2009−543856A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520046(P2009−520046)
【出願日】平成19年7月18日(2007.7.18)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002718
【国際公開番号】WO2008/009934
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(503160629)クドス ファーマシューティカルズ リミテッド (23)
【出願人】(598176569)キャンサー・リサーチ・テクノロジー・リミテッド (57)
【氏名又は名称原語表記】CANCER RESEARCH TECHNOLOGY LIMITED
【Fターム(参考)】