説明

2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルの製造方法

【課題】2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルの製造方法を提供する。
【解決手段】
亜鉛試薬と2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エステルのカップリング反応が、コバルト触媒及びジアミン系配位子存在下に効率的に進行し、医農薬や機能性材料などの製造中間体として有用な2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルを製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルは、医農薬や機能性材料の製造中間体として極めて重要な化合物である。
従来の2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルの製造方法として、特許文献1にフェニルアセチルクロリドから三工程で、2,2−ジフルオロ−2−フェニル酢酸エステルを製造する方法が開示されているが、2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルの製造に関する記載は一切ない。
特許文献2には、2,2−ジフルオロ−2−フェニルセレニル酢酸エステルを光照射条件により置換ベンゼンと反応させ、2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルを製造する方法が開示されている。原料のジフェニルジセレニドが高価であることや、ラジカル反応を用いることから工業的製造方法とは言い難い。
非特許文献1には、ベンゾイルギ酸エステルをジエチルアミノ硫黄トリフルオリド(DAST)を用いて2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルに変換する方法が開示されている。しかし、高価かつ爆発性の高いDASTを使用していることから、工業的製造方法とは言い難い。
非特許文献2には、アリール酢酸エステルから塩基とフッ素化剤を用いて求核的にジフルオロ化を行い、2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルを製造する方法が開示されている。しかしながら、低温(−78度)反応を必要とし、かつ高価なフッ素化剤を使用するため、工業的な方法とは言い難い。
非特許文献3には、アリールヨージドとブロモジフルオロ酢酸エステルとを金属銅存在下反応させて2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルを製造する方法が開示されている。この製造方法は化学両論量以上の金属銅を必要とし、経済的に非効率な方法である。さらに、アリールブロミドとの反応は進行しないため、実用的な方法とは言い難い。
非特許文献4には、アリールグリニャール試薬とアルキルハライドがコバルト触媒及びN,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン存在下にクロスカップリング反応が進行することが開示されている。しかしながら、本発明の2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エステルをアルキルハライドとして用いた反応の記載はない。非特許文献4記載の条件で、2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルの製造を行ったが、低収率でしか目的物が得られなかった(比較例−1)。
そのため、簡便な2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルの工業的に容易で経済的な製造方法が求められている。
【0003】
【特許文献1】特開平20−184411号
【特許文献2】特開平17−145913号
【非特許文献1】J.Org.Chem.,45巻,2883−2887ページ,1980年
【非特許文献2】Chimia,58巻,148−152ページ,2004年
【非特許文献3】Chem.Pharm.Bull.,47巻,1013−1016ページ,1999年
【非特許文献4】J.Am.Chem.Soc.,128巻,1886−1889ページ,2006年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、医農薬や機能性材料などの製造中間体として有用な2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルの簡便で経済的な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を鑑み鋭意検討を重ねた結果、亜鉛試薬(1)と2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エステル(2)を、コバルト触媒及びジアミン系配位子存在下に反応させることにより、2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステル(3)が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明は、一般式(1)
【化4】

(式中、Arは置換されていてもよいアリール基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アセトキシ基又はトリフルオロメチルスルホニルオキシ基を示し、LはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを示す。)で表される亜鉛試薬と、一般式(2)
【化5】

(式中、Rは置換されていてもよい炭素数1から6のアルキル基を示す。)で表される2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エステルを、コバルト触媒及びジアミン系配位子の存在下に反応させることを特徴とする、一般式(3)
【化6】

(式中、ArおよびRは前記と同じ内容を示す。)で表される2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルの製造方法に関するものである。
【0007】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0008】
Arで示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等を例示することができる。これらのアリール基は、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜4のハロアルキル基、炭素数1〜4のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数6〜10のアリールオキシ基、炭素数1〜5のアルキルチオ基、炭素数2〜5のアルキルカルボニル基、炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、シアノ基、置換されていてもよいフェニル基等で置換されていても良い。
【0009】
具体的に、Arで示される置換されていてもよいフェニル基として、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、2,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、メシチル基、2−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基、2,4−ジエチルフェニル基、3,5−ジエチルフェニル基、2−プロピルフェニル基、4−プロピルフェニル基、2−イソプロピルフェニル基、2,4−ジイソプロピルフェニル基、2−ブチルフェニル基、2−tert−ブチルフェニル基、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3−ブロモフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−フルオロ−3−メチルフェニル基、4−フルオロ−2−メチルフェニル基、2−フルオロ−3−メチルフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、2−ビニルフェニル基、3−ビニルフェニル基、4−ビニルフェニル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)フェニル基、3−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)フェニル基、4−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)フェニル基、2,3−(メチレンジオキシ)フェニル基、3,4−(メチレンジオキシ)フェニル基、2−フェノキシフェニル基、3−フェノキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、4−(ナフチル−1−イルオキシ)フェニル基、2−メチルチオフェニル基、3−メチルチオフェニル基、4−メチルチオフェニル基、2−メチルカルボニルフェニル基、3−メチルカルボニルフェニル基、4−メチルカルボニルフェニル基、2−メトキシカルボニルフェニル基、3−メトキシカルボニルフェニル基、4−メトキシカルボニルフェニル基、2−エトキシカルボニルフェニル基、3−エトキシカルボニルフェニル基、4−エトキシカルボニルフェニル基、2−シアノフェニル基、3−シアノフェニル基、4−シアノフェニル基、ビフェニル−4−イル基、4’−メトキシビフェニル−4イル基、4’−メトキシカルボニルビフェニル−4−イル等、4’−シアノビフェニル−4−イル基等を例示することができる。
【0010】
具体的に、Arで示される置換されていてもよいナフチル基として、4−メチルナフタレン−1−イル基、4−トリフルオロメチルナフタレン−1−イル基、4−ブチルナフタレン−1−イル基、5−メチルナフタレン−1−イル基、5−トリフルオロメチルナフタレン−1−イル基、5−ブチルナフタレン−1−イル基、6−トリフルオロメチルナフタレン−2−イル基、7−トリフルオロメチルナフタレン−2−イル基、2−フルオロナフタレン−1−イル基、3−フルオロナフタレン−1−イル基、4−フルオロナフタレン−1−イル基、2,3−ジフルオロナフタレン−1−イル、3,4−ジフルオロナフタレン−1−イル基、1,4−ジフルオロナフタレン−2−イル基、2−ビニルナフタレン−1−イル基、2−アリルナフタレン−1−イル基、2−メトキシナフタレン−1−イル基、3−メトキシナフタレン−1−イル、4−メトキシナフタレン−1−イル基、5−メトキシナフタレン−1−イル基、6−メトキシナフタレン−1−イル基、7−メトキシナフタレン−1−イル基、8−メトキシナフタレン−1−イル基、1−メトキシナフタレン−2−イル基、3−メトキシナフタレン−2−イル、4−メトキシナフタレン−2−イル基、5−メトキシナフタレン−2−イル基、6−メトキシナフタレン−2−イル基、7−メトキシナフタレン−2−イル基、8−メトキシナフタレン−2−イル基、2−メトキシカルボニルナフタレン−1−イル基、4−メトキシカルボニルナフタレン−1−イル基、6−メトキシカルボニルナフタレン−1−イル基、8−メトキシカルボニルナフタレン−1−イル基、1−メトキシカルボニルナフタレン−2−イル基、3−メトキシカルボニルナフタレン−2−イル、4−メトキシカルボニルナフタレン−2−イル基、6−メトキシカルボニルナフタレン−2−イル基、2−シアノナフタレン−1−イル基、3−シアノナフタレン−1−イル、4−シアノナフタレン−1−イル基、8−シアノナフタレン−1−イル基、1−シアノナフタレン−2−イル基、3−シアノナフタレン−2−イル、4−シアノナフタレン−2−イル基、8−シアノナフタレン−2−イル基等を例示することができる。Arは収率がよい点で、置換されていてもよいフェニル基が望ましい。
【0011】
Xは、原料入手が容易な点および効率が良い点で塩素原子又は臭素原子が望ましい。
【0012】
Rで示される炭素数1から6のアルキル基としては、直鎖状、環状もしくは分岐状のいずれであってもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロプロピル基、シクロプロピルメチル、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル等を例示することができる。これらのアルキル基は、炭素数1〜4のアルコキシ基、または置換されていてもよいフェニル基等で置換されていても良く、例えばメトキシメチル基、2−エトキシエチル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基等を例示することができる。Rは収率が良い点でメチル基またはエチル基が望ましい。
【0013】
次に、本発明の製造方法について、詳しく述べる。
【0014】
本発明の原料である亜鉛試薬(1)の製造方法に特に制限はなく、対応する塩化(アリール)マグネシウム、臭化(アリール)マグネシウム、ヨウ化(アリール)マグネシウム、またはアリールリチウムと塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛を反応させることにより製造することができる。また、対応する塩化(アリール)マグネシウム、臭化(アリール)マグネシウム、ヨウ化(アリール)マグネシウム、またはアリールリチウムをN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン存在下に、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、酢酸亜鉛、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)亜鉛、亜鉛−銅合金等の亜鉛化合物を反応させることにより製造することもできる。また、対応する塩化アリール、臭化アリールまたはヨウ化アリールを、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン存在下に、金属亜鉛、亜鉛−銀合金、亜鉛−銅合金等と反応させることにより製造することもできる(非特許文献5)。本製造方法の亜鉛試薬(1)は、配位子としてN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを用いることは必須である。N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンが非存在下の製造方法においては、目的物の収率が低い(比較例−2)。
【0015】
【非特許文献5】Organic Reactions,58巻,417−731ページ,2001年
【0016】
亜鉛試薬(1)の製造に用いることのできる溶媒は、反応を阻害しない溶媒であれば良く、具体的には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン等を挙げることができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。反応における収率が良い点で、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドンが望ましい。
【0017】
得られた亜鉛試薬(1)は、調製後に単離して用いても良いが、溶液のまま2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステル(3)の製造に供することもできる。
【0018】
本発明の原料である2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エステル(2)は一部市販されているが、文献記載の方法またはそれに準じた方法により調製することができる。(特許文献3)。
【0019】
【特許文献3】特開平20−133262号
【0020】
本発明の製造法で用いることのできるコバルト触媒として、具体的には、フッ化コバルト(II)、塩化コバルト(II)、臭化コバルト(II)、ヨウ化コバルト(II)、酢酸コバルト(II)、硝酸コバルト(II)等を用いることができる。収率が良い点で、塩化コバルト(II)が望ましい。
【0021】
本発明の製造方法において、コバルト触媒の配位子としてジアミン系配位子を添加することが必須である。ジアミン系配位子として、具体的に、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロピレンジアミン、2,3−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン等を例示することができる。収率が良い点で、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサンが望ましい。
【0022】
本発明の製造法に用いることのできる溶媒は、反応を阻害しない溶媒であれば良く、具体的には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン等を挙げることができ、適宜これらを組み合わせて用いても良い。反応における収率が良い点で、テトラヒドロフランが好ましい。
【0023】
亜鉛試薬(1)と2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エステル(2)とのモル比は、10:1から1:1が望ましく、収率が良い点で2:1から1:1がさらに望ましい。
【0024】
2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エステル(2)とコバルト触媒とのモル比は、1:1から1:0.01が望ましく、収率が良い点で1:0.1から1:0.05がさらに望ましい。
【0025】
コバルト触媒とジアミン配位子とのモル比は、1:1から1:5が望ましく、収率が良い点で1:1から1:2がさらに望ましい。
【0026】
反応温度は、−78℃から100℃の範囲から適宜選ばれた温度で行うことができる。収率が良い点で−20℃から室温の範囲が望ましい。
【0027】
反応後の溶液から目的物を単離する方法に特に限定はないが、溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、分取薄層クロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー、再結晶または昇華等の汎用的な方法で目的物を得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、医農薬や機能性材料などの製造中間体として有用な2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルを効率良く製造する方法として有効である。例えば、動脈硬化治療薬(特許文献4)の中間体である2,2−ジフルオロ−2−(4’−メトキシビフェニル−4−イル)酢酸エチルを製造することができる(実施例16)。
【0029】
【特許文献4】特開平20−88136号
【実施例】
【0030】
次に本発明を実施例及び比較例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
実施例−1
【化7】

25mLのナス型フラスコに塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)(756mg,3.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(0.75mL)を加え、0℃に冷却し、臭化フェニルマグネシウムの1.09Mテトラヒドロフラン溶液(2.75mL,3.0mmol)を滴下した。室温にて30分間攪拌し、フェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(約0.86M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加え、0℃ にて先に調製したフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(2.3mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて16時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,2.0mL)を加え、水層をジエチルエーテル(2.0mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(2.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(2.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(10:1)]により精製し、2,2−ジフルオロ−2−フェニル酢酸エチル(148mg,収率74%)を無色油状物として得た。
H−NMR(250MHz,CDCl):δ7.62(brd,J=8.0Hz,2H),7.52−7.44(m,3H),4.31(q,J=7.5Hz,2H),1.31(t,J=7.5Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−104.2.
【0032】
実施例−2
【化8】

25mLのナス型フラスコに塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)(1.01g,4.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(1.0mL)を加え、0℃に冷却し、臭化(4−メトキシフェニル)マグネシウムの0.5Mテトラヒドロフラン溶液(8.0mL,4.0mmol)を滴下した。室温にて30分間攪拌し、4−メトキシフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(約0.44M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加え、0℃ にて先に調製した4−メトキシフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(4.5mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて4時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,2.0mL)を加え、水層をジエチルエーテル(2.0mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(2.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(2.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(10:1)]により精製することで、2,2−ジフルオロ−2−(4−メトキシフェニル)酢酸エチル(182mg,収率79%)を無色油状物として得た。
H−NMR(250MHz,CDCl):δ7.56(d,J=8.8Hz,2H),6.97(d,J=8.8Hz,2H),4.32(q,J=7.3Hz,2H),3.86(s,3H),1.33(t,J=7.3Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−102.9.
GCEIMS(相対強度)::m/z230(M,12),157(CHOCCF,100),114(11).
【0033】
実施例−3
【化9】

25mLのナス型フラスコに塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)(1.01g,4.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(2.0mL)を加え、0℃に冷却し、臭化(3−メトキシフェニル)マグネシウムの1.0Mテトラヒドロフラン溶液(4.0mL,4.0mmol)を滴下し、室温にて30分間攪拌し、3−メトキシフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(約0.67M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加え、0℃ にて先に調製した3−メトキシフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(3.0mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて24時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,2.0mL)を加え、水層をジエチルエーテル(2.0mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(2.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(2.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(10:1)]により精製することで、2,2−ジフルオロ−2−(3−メトキシフェニル)酢酸エチル(181mg,収率79%)を無色油状物として得た。
H−NMR(250MHz,CDCl):δ7.35(dd,J=8.3,8.3Hz,1H),7.35(ddd,J=7.8,1.5,1.0Hz,1H),7.11(brdd,J=2.5,1.5Hz,1H),6.90(ddd,J=8.3,2.5,1.0Hz,1H),4.30(q,J=7.3Hz,2H),3.86(s,3H),1.31(t,J=7.3Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−104.0.
【0034】
実施例−4
【化10】

25mLのナス型フラスコに塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)(1.01g,4.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(1.0mL)を加え、0℃に冷却し、臭化(4−フルオロフェニル)マグネシウムの1.0Mテトラヒドロフラン溶液(4.0mL,4.0mmol)を滴下し、室温にて30分間攪拌し、4−フルオロフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(約0.80M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加え、0℃にて先に調製した4−フルオロフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(2.5mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて4時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,2.0mL)を加え、水層をジエチルエーテル(2.0mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(2.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(2.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(10:1)]により精製することで、2,2−ジフルオロ−2−(4−フルオロフェニル)酢酸エチル(152mg,収率70%)を無色油状物として得た。
H−NMR(250MHz,CDCl):δ7.64(brdd,J=8.8,5.3Hz,2H),7.16(brt,J=8.8Hz,2H),4.32(q,J=7.0Hz,2H),3.86(s,3H),1.33(t,J=7.0Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−103.6(d,J=2.8Hz,2F),−109.3(t,J=2.8Hz,1F).
GCEIMS(相対強度)::m/z218(M,5.4),145(FCCF,100),95(FC,11),75(7.1).
【0035】
実施例−5
【化11】

25mLのナス型フラスコに塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)(1.01g,4.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(1.0mL)を加え、0℃に冷却し、塩化(2−メチルフェニル)マグネシウムの1.0Mテトラヒドロフラン溶液(4.0mL,4.0mmol)を滴下し、室温にて30分間攪拌し、2−メチルフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(約0.80M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加え、0℃ にて先に調製した2−メチルフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(2.5mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて14時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,2.0mL)を加え、水層をジエチルエーテル(2.0mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(2.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(2.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(10:1)]により精製することで、2,2−ジフルオロ−2−(2−メチルフェニル)酢酸エチル(131mg,収率61%)を無色油状物として得た。
H−NMR(250MHz,CDCl):δ7.59(brd,J=7.8Hz,1H),7.43−7.23(m,3H),4.32(q,J=7.0Hz,2H),2.42(t,J=2.0Hz,3H),1.30(t,J=7.0Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−101.6.
GCEIMS(相対強度):m/z214(M,7.3),141(CHC6HCF,100),91(CH,17).
【0036】
実施例−6
【化12】

25mLのナス型フラスコに塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)(1.01g,4.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(1.0mL)を加え、0℃に冷却し、臭化(4−メチルフェニル)マグネシウムの1.0Mテトラヒドロフラン溶液(4.0mL,4.0mmol)を滴下し、室温にて30分間攪拌し、4−メチルフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(約0.80M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加え、0℃ にて先に調製した4−メチルフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(2.5mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて16時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,2.0mL)を加え、水層をジエチルエーテル(2.0mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(2.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(2.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(10:1)]により精製することで、2,2−ジフルオロ−2−(4−メチルフェニル)酢酸エチル(150mg,収率70%)を無色油状物として得た。
H−NMR(250MHz,CDCl):δ7.49(brd,J=8.3Hz,2H),7.25(brd,J=8.3Hz,2H),4.30(q,J=7.0Hz,2H),2.39(br.s,3H),1.30(t,J=7.0Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−103.7.
GCEIMS(相対強度):m/z214(M,10),141(CHCF,100),91(CH,10).
【0037】
実施例−7
【化13】

25mLのナス型フラスコに塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)(1.01g,4.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(2.0mL)を加え、0℃に冷却し、臭化(4−フェノキシフェニル)マグネシウムの0.5Mテトラヒドロフラン溶液(8.0mL,4.0mmol)を滴下し、室温にて30分間攪拌し、4−フェノキシフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(約0.40M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0 mmol)を加え、室温にて先に調製した4−フェノキシフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(5.0mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて17時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,2.0mL)を加え、水層をジエチルエーテル(2.0 mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(2.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(2.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(8:1)]と薄層分取クロマトグラフィー[SiOプレート(250x250x0.5mm)、ヘキサン−酢酸エチル(20:1)]により精製することで、2,2−ジフルオロ−2−(4−フェノキシフェニル)酢酸エチル(210mg,収率72%)を無色油状物として得た。
H−NMR(250MHz,CDCl):δ 7.56(brd,J=8.8Hz,2H),7.38(brdd,J=8.3,7.5Hz,2H),7.17(brt,J=7.5Hz,1H),7.08−6.98(m,4H),4.32(q,J=7.0Hz,2H),1.31(t,J=7.0Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−103.0.
【0038】
実施例−8
【化14】

25mLのナス型フラスコに塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)(1.01g,4.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(2.0mL)を加え、0℃に冷却し、臭化(4−クロロフェニル)マグネシウムの1.0Mジエチルエーテル溶液(4.0mL,4.0mmol)を滴下し、室温にて30分間攪拌し、4−クロロフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(約0.67M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加え、室温にて先に調製した4−クロロフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(3.0mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて19時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,2.0mL)を加え、水層をジエチルエーテル(2.0mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(2.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(2.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(8:1)]により精製することで、2−(4−クロロフェニル)−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(112mg,収率48%)を無色油状物として得た。
H−NMR(250MHz,CDCl):δ7.65−7.40(m,4H),4.30(q,J=7.0Hz,2H),1.30(t,J=7.0Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−104.1.
【0039】
実施例−9
【化15】

25mLのナス型フラスコに塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)(1.01g,4.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(2.0mL)を加え、0℃に冷却し、臭化(4−フルオロ−3−メチルフェニル)マグネシウムの0.5Mテトラヒドロフラン溶液(8.0mL,4.0mmol)を滴下し、室温にて30分間攪拌し、4−フルオロ−3−メチルフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(約0.40M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加え、室温にて先に調製した4−フルオロ−3−メチルフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(5.0mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて16時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,2.0mL)を加え、水層をジエチルエーテル(2.0mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(2.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(2.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(8:1)]により精製することで、2,2−ジフルオロ−2−(4−フルオロ−3−メチルフェニル)酢酸エチル(160mg,収率69%)を無色油状物として得た。
H−NMR(250MHz,CDCl):δ7.46−7.36(m,2H),7.07(t,J=8.8Hz,1H),4.31(q,J=7.0Hz,2H),2.32(br.d,J=2.5Hz,3H),1.31(t,J=7.0Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−103.3(d,J=3.0Hz,2F),−113.7(t,J=3.0Hz,1F).
【0040】
実施例−10
【化16】

100mLのナス型フラスコにマグネシム(630mg,25.9mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(6.1mL)を加えた後、少量のヨウ素を加え、室温にて5分間攪拌した。1−ブロモ−3,4−ジフルオロベンゼン(5.00g,25.9mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(20mL)の一部(1mL)を滴下し、加熱した。発熱が起こり、溶液の色が消失した後、室温にて残りの溶液を40分間かけて滴下した。滴下完了後、室温にて2時間30分攪拌した後、室温に放冷することで、臭化(3,4−ジフルオロフェニル)マグネシウムのテトラヒドロフラン溶液(約0.89M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)(756mg,3.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(0.75mL)を加え、0℃に冷却した。臭化(3,4−ジフルオロフェニル)マグネシウムの約0.89Mテトラヒドロフラン溶液(3.4mL,3.0mmol)を滴下後、室温にて30分間攪拌し、3,4−ジフルオロフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(約0.72M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加え、室温にて先に調製した3,4−ジフルオロフェニル亜鉛試薬の無水テトラヒドロフラン溶液(2.8mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて12時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,2.0mL)を加え、水層をジエチルエーテル(2.0mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(2.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(2.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(10:1)]により精製することで、2,2−ジフルオロ−2−(3,4−ジフルオロフェニル)酢酸エチル(138mg,収率58%)を無色油状物として得た。
H−NMR(250MHz,CDCl):δ7.53−7.21(m,3H),4.34(q,J=7.3Hz,2H),1.34(t,J=7.3Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−103.6(d,J=2.4Hz,1F),−133.5(dt,J=21,2.4Hz,1F),−135.7(d,J=21Hz,1F).
GCEIMS(相対強度):m/z236(M,6),163(FCF,100),113(F,9.0).
【0041】
実施例−11
【化17】

100mLのナス型フラスコにマグネシム(486mg,20mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(10mL)を加えた後、少量のヨウ素を加え、室温にて5分間攪拌した。反応液に4−ブロモチオアニソール(4.06g,20mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(10mL)の一部(1mL)を滴下し、加熱した。発熱が起こり、溶液の色が消失した後、還流が保たれるように、残りの溶液を40分間かけて滴下した。滴下完了後、加熱還流下1時間攪拌した後、室温に放冷することで、臭化(4−メチルチオフェニル)マグネシウムのテトラヒドロフラン溶液(約1.0M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンン)亜鉛(II)(1.01g,4.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(2.0mL)を加え、0℃に冷却し、臭化4−チオアニソールマグネシウムの約1.0Mテトラヒドロフラン溶液(4.0mL,4.0mmol)を滴下し、室温にて30分間攪拌し、4−メチルチオフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(0.67M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加え、室温にて先に調製した4−メチルチオフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(3.0mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて19時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,2.0mL)を加え、水層をジエチルエーテル(2.0mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(2.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(2.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(10:1)]と薄層分取クロマトグラフィー[SiOプレート(250x250x0.5mm)、ヘキサン−酢酸エチル(20:1)]により精製することで、2,2−ジフルオロ−2−(4−メチルチオフェニル)酢酸エチル(141mg,収率57%)を無色油状物として得た。
H−NMR(250MHz,CDCl):δ7.51(d,J=8.8Hz,2H),7.28(d,J=8.8Hz,2H),4.30(q,J=7.0Hz,2H),2.50(s,3H),1.30(t,J=7.0Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−103.9.
【0042】
実施例−12
【化18】

100mLのナス型フラスコにマグネシム(243mg,10mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(10mL)を加えた後、少量のヨウ素を加え、室温にて5分間攪拌した。反応液に1、4−ジブロモベンゼン(2.36g,10mmol)の一部(0.1g)を滴下し、加熱した。発熱が起こり、溶液の色が消失した後、還流が保たれるように、残りの原料を30分間かけて滴下した。滴下完了後、加熱還流下2時間攪拌した後、室温に放冷することで、臭化(4−ブロモフェニル)マグネシウムのテトラヒドロフラン溶液(約1.0M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)(757mg,3.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン1.5mLを加え、0℃に冷却し、臭化(4−ブロモフェニル)マグネシウムの約1.0Mテトラヒドロフラン溶液(3.0mL,3.0mmol)を滴下し、室温にて30分間攪拌し、4−ブロモフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(約0.67M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加え、室温にて先に調製した4−ブロモフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(3.0mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて16時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,2.0mL)を加え、水層をジエチルエーテル(2.0mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(2.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(2.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(10:1)]と薄層分取クロマトグラフィー[SiOプレート(250x250x0.5mm)、ヘキサン−酢酸エチル(10:1)]により精製することで、2−(4−ブロモフェニル)−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(151mg,収率54%、19F−NMRより純度70%)を無色油状物として得た。
H−NMR(250MHz,CDCl):δ7.70−7.40(m,4H),4.30(q,J=7.0Hz,2H),1.33(t,J=7.0Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−104.1.
【0043】
実施例−13
【化19】

100mLのナス型フラスコにマグネシム(486mg,20mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(10mL)を加えた後、少量のヨウ素を加え、室温にて5分間攪拌した。反応液に1−ブロモ−3,4−メチレンジオキシベンゼン(4.02g,20mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(8.2mL)の一部(0.5ml)を滴下し、加熱した。発熱が起こり、溶液の色が消失した後、還流が保たれるように、残りの溶液を40分間かけて滴下した。滴下完了後、加熱還流下2時間攪拌した後、室温に放冷することで、臭化[3,4−(メチレンジオキシ)フェニル]マグネシウムのテトラヒドロフラン溶液(約1.2M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)(1.01g,4.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(2.0mL)を加え、0℃に冷却し、臭化[3,4−(メチレンジオキシ)フェニル]マグネシウムの約1.2Mテトラヒドロフラン溶液(3.3mL,4.0mmol)を滴下し、室温にて30分間攪拌し、3,4−(メチレンジオキシ)フェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(約0.75M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加え、室温にて先に調製した3,4−(メチレンジオキシ)フェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(2.7mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて20時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,2.0mL)を加え、水層をジエチルエーテル(2.0mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(2.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(2.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(5:1)]と薄層分取クロマトグラフィー[SiOプレート(250x250x0.5mm)、ヘキサン−酢酸エチル(10:1)]により精製することで、2,2−ジフルオロ−2−[3,4−(メチレンジオキシ)フェニル]酢酸エチル(144mg,収率49%)を無色油状物として得た。
H−NMR(250MHz,CDCl):δ7.11(brd,J=8.3Hz,1H),7.05(brd,J=1.8Hz,1H),6.85(d,J=8.8Hz,1H),6.02(s,2H),4.29(q,J=7.3Hz,2H),1.31(t,J=7.3Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−102.5.
【0044】
実施例−14
【化20】

100mLのナス型フラスコにマグネシム(486mg,20mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(10mL)を加えた後、少量のヨウ素を加え、室温にて5分間攪拌した。反応液に4−ブロモトリフルオロベンゾフルオリド(4.50g,20mmol)の一部(0.1g)を滴下し、加熱した。発熱が起こり、溶液の色が消失した後、還流が保たれるように、残りの原料を30分間かけて滴下した。滴下完了後、加熱還流下2時間攪拌した後、室温に放冷することで、臭化(4−トリフルオロメチルフェニル)マグネシウムのテトラヒドロフラン溶液(約1.6M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)(1.01g,4.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(2.0mL)を加え、0℃に冷却し、臭化(4−トリフルオロメチルフェニル)マグネシウムの約1.6Mテトラヒドロフラン溶液(3.3mL,4.0mmol)を滴下し、室温にて30分間攪拌し、4−トリフルオロメチルフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(約0.94M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加え、室温にて先に調製した4−トリフルオロメチルフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(2.1mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて20時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,2.0mL)を加え、水層をジエチルエーテル(2.0mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(2.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(2.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を薄層分取クロマトグラフィー[SiOプレート(250x250x0.5mm)、ヘキサン]により精製することで、2,2−ジフルオロ−2−(4−トリフルオロメチルフェニル)酢酸エチル(157mg,収率59%)を無色油状物として得た。
H−NMR(250MHz,CDCl):δ7.79−7.70(m,4H),4.32(q,J=7.3Hz,2H),1.33(t,J=7.3Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−63.3(s,3F),−104.8(s,2F).
【0045】
実施例−15
【化21】

25mLのナス型フラスコにp−ヨード安息香酸メチル(786mg,3.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(6.0mL)に溶解させた後、−20℃に冷却した。この溶液に塩化i−プロピルマグネシウムの2.0Mテトラヒドロフラン溶液(1.5mL)を加え、−20℃にて1時間攪拌した。GCEIMSにて原料の消失を確認後、反応液を0℃に冷却して塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)(756mg,3.0mmol)を加え、室温にて30分間攪拌し、4−メトキシカルボニルフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(約0.40M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加え、室温にて先に調製した4−メトキシカルボニルフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(5.0mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて18時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,2.0mL)を加え、水層をジエチルエーテル(2.0mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(2.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(2.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(10:1)]により精製することで、2,2−ジフルオロ−2−(4−メトキシカルボニルフェニル)酢酸エチル(131mg,収率51%)を無色油状物として得た。
H−NMR(250MHz,CDCl):δ8.13(d,J=8.5Hz,2H),7.69(d,J=8.5Hz,2H),4.28(q,J=7.5Hz,2H),3.95(s,3H),1.33(t,J=7.5Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−104.8.
GCEIMS(相対強度):m/z258(M,4.5),227(OCCCFCOOEt,12),185(CHOOCCCF,100),157(23),126(27).
【0046】
実施例−16
【化22】

100mLのナス型フラスコにマグネシム(194mg,8.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(8.0mL)を加えた後、少量のヨウ素を加え、室温にて5分間攪拌した。反応液に4−ブロモ−4’−メトキシビフェニル(2.10g,8.0mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(20mL)の一部(0.5mL)を滴下し、加熱した。発熱が起こり、溶液の色が消失した後、還流が保たれるように、残りの溶液を30分間かけて滴下した。滴下完了後、加熱還流下3時間攪拌した後、室温に放冷することで、臭化(4’−メトキシビフェニル−4−イル)マグネシウムのテトラヒドロフラン溶液(約0.20M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに塩化(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン)亜鉛(II)(756mg,3.0mmol)を取り、系内をアルゴン雰囲気下とした。無水テトラヒドロフラン(1.5mL)を加え、0℃にて臭化(4’−メトキシビフェニル−4−イル)マグネシウムの約0.20Mテトラヒドロフラン溶液(15mL,3.0mmol)を滴下し、室温にて30分間攪拌し、4’−メトキシビフェニル−4−イル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(約0.18M)を調製した。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下1分間加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)に溶解し、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加え、室温にて先に調製した4’−メトキシビフェニル−4−イル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液(2.7mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて20時間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液:水(1:1,10mL)を加え、水層を酢酸エチル(10mLx3)にて抽出した。有機層を合わせて、水(5.0mL)と飽和塩化ナトリウム水溶液(5.0mL)にて順次洗浄し、乾燥後、減圧濃縮した。得られた粗生成物を中圧カラムクロマトグラフィー[ヘキサン−酢酸エチル(5:1)]と薄層分取クロマトグラフィー[SiOプレート(250x250x1.0mm)、ヘキサン−酢酸エチル(6:1)]により精製することで、2,2−ジフルオロ−2−(4’−メトキシビフェニル−4−イル)酢酸エチル(207mg,収率68%、GC純度:90%)を白色固体として得た。
m.p.:64−68℃.
H−NMR(250MHz,CDCl):δ7.66(d,J=9.0Hz,2H),7.62(d,J=9.0Hz,2H),7.54(brd,J=8.8Hz,2H),6.99(brd,J=8.8Hz,2H),4.32(q,J=7.0Hz,2H),3.86(s,3H),1.35(t,J=7.0Hz,3H).
19F−NMR(235MHz,CDCl):δ−103.8.
GCEIMS(相対強度):m/z306(M,33),233(CHOCCF,100),218(OCCF,11),190(20).
【0047】
比較例−1
【化23】

25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)、α,α,α−トリフルオロトルエン(146mg,1.0mmol)及びn−デカン(142mg,1.0mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)を加え、5分間攪拌した。この溶液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加えた後、0℃にて臭化フェニルマグネシウムの1.09Mテトラヒドロフラン溶液(1.1mL,1.2mmol)を滴下した。室温にて20分間攪拌した後、内部標準をα,α,α−トリフルオロトルエンおよびn−デカンとした19F−NMR及びGCEIMSより、2,2−ジフルオロ−2−フェニル酢酸エチルの生成を確認した(収率22%)。
【0048】
比較例−2
【化24】

25mLのナス型フラスコ中、塩化亜鉛(II)の0.5Mテトラヒドロフラン溶液(4.0mL,2.0mmol)にアルゴン雰囲気下0℃で、臭化4−メトキシフェニルマグネシウムの0.5Mテトラヒドロフラン溶液(4.0mL,2.0mmol)を滴下し、室温にて30分間攪拌し、p−メトキシフェニル亜鉛試薬のテトラヒドロフラン溶液を調製した。0℃で、この懸濁液に2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エチル(0.13mL,1.0mmol)を加えた。
25mLのナス型フラスコに無水塩化コバルト(6.5mg,0.05mmol)を取り、減圧下加熱乾燥した。系内をアルゴン雰囲気下とした後、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン(10mg,0.06mmol)、α,α,α―トリフルオロトルエン(146mg,1.0mmol)とn−デカン(142mg,1.0mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(3.0mL)を加えた。得られた溶液を、調製したp−メトキシフェニル亜鉛試薬−ブロモジフルオロ酢酸エチルのテトラヒドロフラン懸濁液に加え、室温にて4時間攪拌した。内部標準をα,α,α−トリフルオロトルエンおよびn−デカンとした19F−NMR及びGCEIMSより、2,2−ジフルオロ−2−(4−メトキシフェニル)酢酸エチルの生成を確認した(収率5%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Arは置換されていてもよいアリール基を示し、Xは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、アセトキシ基又はトリフルオロメチルスルホニルオキシ基を示し、LはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンを示す。)で表される亜鉛試薬と、一般式(2)
【化2】

(式中、Rは置換されていてもよい炭素数1から6のアルキル基を示す。)で表される2−ブロモ−2,2−ジフルオロ酢酸エステルを、コバルト触媒及びジアミン系配位子の存在下に反応させることを特徴とする、一般式(3)
【化3】

(式中、ArおよびRは前記と同じ内容を示す。)で表される2−アリール−2,2−ジフルオロ酢酸エステルの製造方法。
【請求項2】
Arが置換されていてもよいフェニル基である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
Rがメチル基又はエチル基である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
Xが臭素原子又は塩素原子である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
コバルト触媒が塩化コバルト(II)である請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
ジアミン系配位子が、N,N,N’,N’−テトラメチル−trans−1,2−ジアミノシクロヘキサンである請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。


【公開番号】特開2010−116363(P2010−116363A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291851(P2008−291851)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000173762)財団法人相模中央化学研究所 (151)
【Fターム(参考)】