説明

2−アルキニルアデノシン誘導体の製造法

本発明は、下式Aの2−アルキニルアデノシン誘導体またはその立体異性体、医薬的に許容しうる塩、水和物、溶媒化合物、酸塩水和物もしくは同形結晶体の製造法を提供し、該製造法は、2−ヨードアデノシン−5’−N−エチルウロンアミドを下式Bの化合物と接触させる工程から成る。この方法は、たとえばアデノシンレセプタ・アゴニストである2−アルキニルアデノシン誘導体の製造に有用である。


[式中、Zは−C(=O)ORまたは−CHOC(=O)R、ここでRはC〜Cアルキルである]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−アルキニルアデノシン誘導体製造の改良法、より詳しくは、一定の具体的態様でアデノシンレセプタ・アゴニストである2−アルキニルアデノシン誘導体製造の改良法、もっと詳しくは、一定の具体的態様でAアデノシンレセプタ・アゴニストである2−アルキニルアデノシン誘導体製造の改良法に関する。
【背景技術】
【0002】
アデノシンは、幾つかの生理学的機能を調節することが知られている。心臓血管系レベルで、アデノシンは強い血管拡張薬および心抑制薬である。中枢神経系において、アデノシンは鎮静、抗不安および抗てんかん作用を誘発する。腎レベルで、アデノシンは二相作用を発揮して、低濃度では血管収縮を、高用量では血管拡張を誘発する。アデノシンは、脂肪細胞に対し脂肪分解インヒビターとして、また血小板に対し抗凝集薬として作用する(Stone T.W.,Purine Receptors and their Pharmacological Roles,Advances in Drug Research,Academic Press Limited,18,291-429; Progress Cardiovasc.Dis.1989,32,73-97)。
【0003】
幾つかの研究によれば、アデノシン作用は細胞膜にある2つの亜類型レセプタによって仲介され、親和性の高い1つは、アデニレートシクラーゼ酵素の活性を阻害し(Aレセプタ)、そして他の親和性の低いものは、同酵素の活性を刺激する(Aレセプタ)ことが示されている(J.Med.Chem.1982,25,197-207;Physiol.Rev.1990,70(3),761-845;J.Med.Chem.1992,35,407-422)。両レセプタは、生体の種々の器官に広く分配されている。しかしながら、ある組織では、両レセプタの内主として1つのみしか存在しない場合がある。たとえば、Aレセプタは心レベルにおいてAレセプタより優勢であり、一方、血管レベルや血小板ではAレセプタがAレセプタより優勢である。
【0004】
またはAレセプタのいずれかと選択的に相互作用しうる化合物は、興味ある薬理学的パターンを有しうるだろう。さらに、Aレセプタと相互作用する化合物の、血管拡張活性は抗凝集作用と共に、ひどい心臓血管病状、たとえば虚血性心臓障害、高血圧およびアテローム性硬化症の処置において有用な治療適用に導くことができる。しかも、中枢神経系に対する作用のため、A選択的薬剤の使用は、脳血管性虚血、てんかんおよび種々の情動障害、たとえば不安や精神病の処置に予見することができる。
【0005】
以前では、アデノシン以外にAレセプタに対しアゴニスト活性を有する公知の化合物は、アデノシン−5’−N−エチルウロンアミドもしくはNECAのみであった(Mol.Pharmacol.,1986,25,331-336)。残念ながら、NECAはAレセプタに対しても活性で、このためAレセプタ単独の場合の特異性に欠ける。A親和性を有する唯一入手しうる化合物であったので、レセプタ結合の薬理試験にNECAが用いられた。
【0006】
しかして、より最近では、Aレセプタ選択性を有する一定のNECA誘導体が開発されている。これらの化合物は、C2位がフェニルアミノ基で置換されたNECA誘導体である。たとえば、2−(p−(カルボキシエチル)フェニルエチルアミノ)−5’−N−エチルウロンアミド化合物(CGS21680指定)(J.Pharmacol.Exp.Ther.,1989,251,888-893)が、Aレセプタに関する薬理学実験の対照化合物になっている。
【0007】
他に選択的Aアゴニスト活性を有するプリン誘導体が、たとえばGB−A−2203149、EP−A−0309112、EP−A−0267878、EP−A−0277917およびEP−A−0323807に開示されている。プリン基の2位の置換は、所望の選択性を付与する見込みがあると考えられる(J.Med.Chem.1992,35,407-422)。2−アルキニルプリン誘導体が、EP−A−0219876およびUS−A−4956345に開示されている。
【0008】
US−A−5593975に、エチン位がアリール、複素環式またはヒドロキシアルキル基で置換され、かつリボシド残基がN−アルキル(またはシクロアルキル)−ウロンアミドで置換された2−アルキニルアデノシン誘導体が開示されている。これらの化合物は、強いAアゴニスト活性を示し、このため、心臓血管病状、たとえば心虚血、高血圧およびアテローム性硬化症の処置や、中枢神経系の疾患、たとえば脳血管性虚血、てんかんおよび情動障害(不安や精神病)の処置に有用である旨報告されている。
【0009】
US−A−5593975の2−アルキニルアデノシン誘導体は、下記一般式を有する。
【化1】

式中、Rは水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、フェニルC−Cアルキル;
【0010】
は下記(a)〜(d)の意義の1つを有し:
(a)必要に応じて1〜3個のハロゲン原子(塩素、フッ素または臭素)、C−Cアルキル、C−Cハロアルキル、C−Cアルコキシ、C−Cハロアルコキシ、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cアルコキシアルキル、C−Cアルキルチオ、チオ、CHO、シアノメチル、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、カルボキシ、C−Cアシル、アミノ、C−Cモノアルキルアミノ、C−Cジアルキルアミノ、メチレンジオキシもしくはアミノカルボニルで置換されるフェニルまたはナフチル、
(b)式:−(CH)m−Hetの基(ここで、mは0または1〜3の整数およびHetは酸素、窒素もしくは硫黄から選ばれる1〜3個のヘテロ原子を含有し、炭素原子または窒素原子を介して結合し、必要に応じてベンゾ縮合した5もしくは6員複素環式芳香族または非芳香族環である)、
【0011】
(c)必要に応じて不飽和を含有するC−CシクロアルキルまたはC−Cアルケニル、
(d)式:
【化2】

の成分、ここで、Rは水素、メチルまたはフェニル、
はOH、NH、ジアルキルアミノ、ハロゲンまたはシアノ、
は水素、C−C直鎖もしくは分枝鎖アルキル、C−CシクロアルキルもしくはC−Cシクロアルケニル、フェニルC−Cアルキル、または
とRが共に合して5もしくは6員炭素環式環を形成、またはRが水素でRとRが共に合してオキソ基もしくは対応するアセタール誘導体を形成、
Rが水素でなくおよび/またはRがエチルでないとき、RはC−C直鎖もしくは分枝鎖アルキルであってもよく、および
nは0または1〜4であり;および
【0012】
はC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、フェニルまたはベンジルであって、但し、Rが水素でないときまたはRが水素でRがシクロペンチル、フェニルまたはベンジルのとき、RはC−C直鎖もしくは分枝鎖アルキルであってもよい。
【0013】
US−A−5593975の2−アルキニルアデノシン化合物は、下記に示される一般合成の反応式によって製造される。
【化3】

【0014】
反応式IおよびIIにおいて、R’およびR’はそれぞれ、RおよびRと同意義を有し、またはそれらはそれぞれ、たとえば存在しうる保護基の脱離によってRおよびRに変換でき、反応条件に適合しうる基;YはBrまたはI;およびXは塩素、臭素または沃素である。
反応式IおよびIIで示される反応は、触媒(たとえばビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリドおよびハロゲン化第一銅)および適当な酸−結合剤、たとえば有機塩基(たとえばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンまたはピリジン)の存在下で行なわれる。
溶媒として、置換アミド(たとえばジメチルホルムアミド)、エーテル(たとえばジオキサンまたはテトラヒドロフラン)、アセトニトリルまたは必要に応じてこれら溶媒の2種以上の混合物が、好適に使用される。
【0015】
式II(式中、Yは沃素およびR’は水素)の化合物は、2−ヨードアデノシン(Nairら,Synthesis,1982,670-672)から、下記反応式IIIに従って製造することができる。
【化4】

【0016】
下記反応式IVに従って、式VIII(式中、Yは沃素であり、R’は水素でなく)の化合物を製造することができる。
【化5】

反応式IVにおいて、R,RおよびRは前記と同意義である。
【0017】
式Vの化合物は、式IIとIIIの化合物の反応で報告の条件下、化合物IIとアセチレン誘導体、たとえば1−トリメチルシリルアセチレンの反応によって製造される。化合物IIIおよびIVは公知であるか、または周知の方法に従って製造できる。
US−B−6322771に、下式IXの化合物が開示されている。
【化6】

【0018】
式中、(a)各Rは個別に水素、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、フェニルまたはフェニルC−Cアルキル;
(b)Xは−CHOH、−CO、−OC(O)R、−CHOC(O)Rまたは−C(O)NR
(c)R,RおよびRのそれぞれは個別に、H;C−Cアルキル;1〜3個のC−Cアルコキシ、C−Cシクロアルキル、C−Cアルキルチオ、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノ(C−Cアルキル)アミノ、ジ(C−Cアルキル)アミノもしくはC−C10アリール(ここで、アリールは1〜3個のハロゲン、C−Cアルキル、ヒドロキシ、アミノ、モノ(C−Cアルキル)アミノもしくはジ(C−Cアルキル)アミノで置換されてよく)で置換されたC−Cアルキル;C−C10アリール;または1〜3個のハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノ(C−Cアルキル)アミノ、ジ(C−Cアルキル)アミノもしくはC−Cアルキルで置換されたC−C10アリール;および
(d)Rは(X−(Z)−)n[(C−C10)シクロアルキル]−(Z’)−、ここで、ZおよびZ’は個別に、必要に応じて1〜3個のSで中断される(C−C10)アルキルもしくは非パーオキシドO、または存在せずおよびnは1〜3である。
【0019】
式IXの化合物は、US−A−5278150、US−A−5140015、US−A−5877180、US−A−5593975およびUS−A−4956345に開示の合成法によって製造しうることが記載されている。
US−B−6322771に、各RがH、XがエチルアミノカルボニルおよびRが下記式で示される、4−カルボキシシクロヘキシルメチル(DWH−146a)、4−メトキシカルボニルシクロヘキシルメチル(DWH−146e)または4−アセトキシメチル−シクロヘキルメチル(JMR−193)である式IXの好ましい化合物が開示されている。
【化7】

【0020】
US−B−6322771によれば、メチル・4−[3−(6−アミノ−9−(5−[(エチルアミノ)カルボニル]−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロ−Z−フラニル−9H−2−プリニル)−2−プロピニル]−1−シクロヘキサンカルボキシレート(DWH−146e)の合成は、Pd(II)触媒を利用して、ヨードアデノシン誘導体,(N−エチル−1’−デオキシ−1’−(アミノ−2−ヨード−9H−プリン−9−イル)−β−D−リボフランウロンアミド)とメチル・4−(2−プロピニル)−1−シクロヘキサンカルボキシレートのクロスカップリングによって行なわれる。
【0021】
最初にグアノシンから、これを無水酢酸で処理して糖ヒドロキシルをアセチル化させることにより、ヨード−アデノシン誘導体を製造する。次いで得られる化合物の6位を、塩化テトラメチルアンモニウムおよびオキシ塩化リンで塩素化する。改変したサンドマイアー(Sandmeyer)反応で2位の沃素化を行った後、6−Clおよび糖アセテートのアンモニアによる置換を行なう。2’および3’ヒドロキシルをアセトニドとして保護し、5’ヒドロキシルを過マンガン酸カリウムで酸化して酸とする。2’および3’アセトニドの脱保護、エタノールによる5’酸のフィッシャー・エステル化、次いで得られるエチルエステルのエチルアミンによるエチルアミドへの変換を行ない、N−エチル−1’−デオキシ−1’−(アミノ−2−ヨード−9H−プリン−9−イル)−β−D−リボフランウロンアミドを得る。
【0022】
出発物質としてトランス−1,4−シクロヘキサンジメタノールを用い、アセチレン[メチル・4−(2−プロピニル)−1−シクロヘキサンカルボキシレート]を合成する。最初にトランス−ジオールをモノトシル化した後、該トシレートのアセチレンアニオンによる置換を行なう。得られるヒドロキシルアセチレン種のヒドロキシルをジヨーンズ試薬で酸化して酸とした後、(トリメチルシリル)ジアゾメタンでメチル化を行って、メチル・4−(2−プロピニル)−1−シクロヘキサンカルボキシレートを得る。
【0023】
次に、N−エチル−1’−デオキシ−1’−(アミノ−2−ヨード−9H−プリン−9−イル)−β−D−リボフランウロンアミドとメチル・4−(2−プロピニル)−1−シクロヘキサンカルボキシレートのクロスカップリング反応を行なう。N,N−ジメチルホルムアミド(0.5mL)、アセトニトリル(1mL)、トリエチルアミン(0.25mL)、およびN−エチル−1’−デオキシ−1’−(アミノ−2−ヨード−9H−プリン−9−イル)−β−D−リボフランウロンアミド(25mg、0.06ミリモル)の溶液に、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(1mg、2モル%)および沃化銅(I)(0.06mg、0.5モル%)を加える。得られる混合物にメチル・4−(2−プロピニル)−1−シクロヘキサンカルボキシレート(54mg、0.3ミリモル)を加え、次いで反応液を窒素雰囲気下で16時間撹拌する。溶媒を減圧除去し、得られる残渣を20%メタノール/クロロホルム中、フラッシュクロマトグラフィー(Rf=0.45)に付して、19mg(オフホワイト固体、mp125℃(分解))の4−[3−(6−アミノ−9−(5−[(エチルアミノ)カルボニル−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロ−Z−フラニル)−9H−2−プリニル)−2−プロピニル]−1−シクロヘキサンカルボキシレート(DWH−146e)を得る。
【0024】
上記したDWH−146eを含む2−アルキニルアデノシン誘導体を製造するこれらの合成法は、付与する収率が所望より低く、長期の反応時間を要し、かつ大規模なクロマトグラフィー精製を要する。たとえばUS−A−5593975において、アセトニド保護(上記反応式IIIの第1工程)は、カラムクロマトグラフィーによる精製を要する。さらに、酸化手順(上記反応式IIIの第2工程)は、長期の反応時間を要し、かつ2−ヨード位の競合酸化に基づき厄介であることが注目される(Hommaら,J.Med.Chem.,1992,35,2881-2890)。US−B−6322771において、シクロヘキサン−含有アセチレンの合成の第1工程は、出発のジオールからの所望のモノ−トシル生成物とビス−トシル生成物の分離のため、カラムクロマトグラフィーによる精製を要する。シクロヘキサン−含有アセチレンの合成の第2工程では、長期の反応時間、大過剰のアセチレンアニオンおよびカラムクロマトグラフィーによる精製が必要である。さらに、シクロヘキサン−含有アセチレンと2−ヨードNECAのクロスカップリング反応は、クロマトグラフィー後乏しい収率で進行する。
【0025】
従って、従来技術の方法に比し高い収率を付与しかつ精製が少なくて済む、2−アルキニルアデノシン誘導体を製造する合成法の改良が必要である。我々は、別の試薬および工程を用いて、2−アルキニルアデノシン誘導体を高収率で製造し、しかもクロマトグラフィー精製をそれほど要しない改良法を見出した。
【発明の開示】
【0026】
1つの具体例において、本発明は、式A:
【化8】

[式中、Zは−C(=O)ORまたは−CHOC(=O)R、ここでRはC〜Cアルキル、好ましくはメチルである]
の化合物、またはその立体異性体、医薬的に許容しうる塩、水和物、溶媒化合物、酸塩水和物もしくは同形結晶体を製造する方法であって、
2−ヨードアデノシン−5’−N−エチルウロンアミドを式B:
【化9】

[式中、Zは上記と同意義である]
の化合物と接触させる工程から成ることを特徴とする製造法に指向される。
【0027】
本発明は就中、別の試薬および工程を用いて、従来法より高い収率を付与しかつ精製が少なくて済む、2−アルキニルアデノシン誘導体を製造する改良合成法に指向される。
【0028】
別の具体例において、本発明は、2−ヨードアデノシン−5’−N−エチルウロンアミドを製造する方法であって、
2−ヨードアデノシンを準備し;
該2−ヨードアデノシンのヒドロキシル基をアセトニド基で保護し;
該アセトニド−保護2−ヨードアデノシンの第一アルコールを酸化して、アセトニド−保護2−ヨードアデノシンの酸誘導体とし;
該酸誘導体をアセトニド−保護2−ヨードアデノシンのN−エチルアミド誘導体に変換し;次いで
該アセトニド−保護2−ヨードアデノシンのN−エチルアミドを脱保護して、2−ヨードアデノシン−5’−N−エチルウロンアミドを形成する
工程から成ることを特徴とする製造法に指向される。
【0029】
他の具体例において、本発明は、式B:
【化10】

[式中、Zは−CHOC(=O)R、ここでRはC〜Cアルキルである]
の化合物を製造する方法であって、
1,4−メタノールシクロヘキサンを準備し;
該1,4−メタノールシクロヘキサンのモノ−トシル誘導体を製造し;
該1,4−メタノールシクロヘキサンのモノ−トシル誘導体から式:
【化11】

のアセチリド−置換化合物を製造し;次いで
該アセチリド−置換化合物を式B:
【化12】

[式中、Zは上記と同意義である]
の化合物に変換する
工程から成ることを特徴とする製造法に指向される。
【0030】
さらに他の具体例において、本発明は、式B:
【化13】

[式中、Zは−C(=O)OR、ここでRはC〜Cアルキルである]
の化合物を製造する方法であって、
1,4−メタノールシクロヘキサンを準備し;
該1,4−メタノールシクロヘキサンのモノ−トシル誘導体を製造し;
該1,4−メタノールシクロヘキサンのモノ−トシル誘導体から式:
【化14】

のアセチリド−置換化合物を製造し;
該アセチリド−置換化合物をラジカル酸化(radical oxidation)で酸化し;次いで
該酸化生成物をエステル化して、式B:
【化15】

[式中、Zは上記と同意義である]
の化合物とする
工程から成ることを特徴とする製造法に指向される。
【0031】
1つの好ましい具体例において、2−ヨードアデノシン−5’−N−エチルウロンアミドを、2−ヨードアデノシンから製造する。
別の好ましい具体例において、式Bの化合物を1,4−メタノールシクロヘキサンから製造する。
【0032】
本明細書で用いる語句“立体異性体”とは、同一の化学構造を有するが、原子または基の空間配列が異なる化合物を指称する。式Aの化合物は、1個以上の不斉炭素を有することができ、また式Aは可能な立体異性体およびその混合物、並びにラセミ化合物変種、特に本明細書で論じる活性を有するものの全てを包含することが理解される。本発明方法で製造される化合物は、光学活性体またはラセミ体で単離しうる。
【0033】
すなわち、特別な立体化学または異性体形態についての指示がない限り、全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ形状および構造の全ての幾何異性体が意図される。式Aの化合物の立体異性体は、有機合成の当業者にとって公知の通常の手順を用いて、選択的に合成または純粋な光学活性体で分離することができる。たとえば、立体異性体の混合物は、標準技法(これらに限定されるものでないが、ラセミ体の分割、正常,逆相およびキラルクロマトグラフィー、優先的塩形成、再結晶等を包含)により、またはキラル出発物質からのキラル合成もしくは標的キラル中心の意図的合成により分離しうる。
【0034】
本発明の化合物に関して本明細書で用いる“医薬的に許容しうる塩”とは、式Aの親化合物がその酸塩または塩基塩の形成によって変性される開示化合物の誘導体を指称する。医薬的に許容しうる塩の具体例としては、これらに限定されるものでないが、アミンなどの塩基性残基の無機または有機酸塩;カルボン酸などの酸性残基のアルカリまたは有機塩基塩等が挙げられる。医薬的に許容しうる塩は、たとえば非毒性無機または有機酸から形成される親化合物の通常の非毒性塩または第4級アンモニウム塩を包含する。
【0035】
たとえば、かかる通常の非毒性塩としては、塩酸、臭酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などの無機酸から誘導される塩;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸(pamoic acid)、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸などの有機酸から誘導される塩が挙げられる。これらの生理学的に許容しうる塩は、当該分野で公知の方法により、たとえば遊離アミン塩基を水性アルコール中過剰の該酸と共に溶解するか、または遊離カルボン酸を水酸化物などのアルカリ金属塩基で、もしくはアミンで中和することによって製造される。
【0036】
本明細書で用いる“C〜Cアルキル”とは、約1〜5個の炭素原子(およびその範囲内で特定数の炭素原子の全ての組合せ)を有する、必要に応じて置換される飽和直鎖、分枝鎖または環式炭化水素を指称し、たとえばこれらに限定されるものでないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、イソペンチルおよびネオペンチルが挙げられる。
【0037】
反応式A:2−ヨードNECAの合成
本発明方法の要件の1つは、2−ヨードNECA化合物を準備することである。この化合物は、下記反応式Aに示される4つの工程で製造しうる。
【化16】

【0038】
2−ヨードNECAを製造する別の方法は、G. Cristallaら,J. Med. Chem. 1992, 35:2363-68に記載されている。
反応式Aの出発物質,2−ヨードアデノシン(1)は、Toronto Research Chemicalsのような出所から商業上入手しうる。2−ヨードアデノシンは、Matsudaら,J. Med. Chem., 1992, 35:241-252 および Nairら,Synthesis, 1982, 670-672に記載の方法で合成されてもよい。
【0039】
工程A1において、2−ヨードアデノシン(1)を、リボース環の2’および3’炭素のヒドロキシル基を保護することにより、その保護体(2)、好ましくはアセトニド−保護体に変換する。この保護は、たとえば過剰のアセトン溶媒またはアセトン溶媒を含む混合物中、70%過塩素酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸または他のスルホン酸を用いて行ってよい。この工程は、室温にて1〜5時間で実施しうる。酸はたとえば、水性炭酸ナトリウムで中和しうる。
【0040】
生成物(2)は、たとえばジクロロメタンの濃縮で固体とし、次いで40℃で減圧乾燥することにより、ジクロロメタンに抽出されてよい。この工程によって、たとえば90〜93%の如き高い収率が得られる。この2−ヨードアデノシン(1)のそのアセトニド体(2)への急変換の改良アプローチは、なめらかにかつ高収率で進行し、さらなる精製を要しない。以前に報告された手順では、クロマトグラフィー分離が必要である(WO99/61054、Hommaら,J. Med. Chem. 1992, 35, 2881-2890)。
【0041】
工程A2において、第一アルコール(2)を酸(3)に酸化する。この工程は、約8〜24時間で実施でき、簡単な単離で高収率が得られる。これは、たとえばビス−アセトキシヨードベンゼンと、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)(EPP J. G. および Widlanski T. S., J. Org. Chem. 1999, 64, 293)、超原子価沃素種、TEMPOの4−ベンジルオキシ誘導体を含むTEMPOの誘導体等との併用などのラジカル酸化で行なうことができる。
【0042】
反応はアセトニトリルなどの溶媒中、以下の手順によって実施されてよい。すなわち、各成分を周囲温度で約3時間混合し、約0℃に冷却し、得られる固体を濾別し、冷溶媒で洗い、次いで昇温下、たとえば50℃で約8〜18時間減圧乾燥する。典型的な収率は、80%の如く高い。慣用の過マンガン酸塩を用いる酸化手順は、長い反応時間を要するか(US−A−5593975)、あるいは2−ヨード位での競合酸化の問題がある(Hommaら,J. Med. Chem., 1992, 35, 2881-2890)。また慣用のRu(III)触媒を用いる酸化手順では、低収率をもたらし、かつクロマトグラフィー精製を要する(Hommaら,J. Med. Chem. 1992, 35, 2881-2890)。
【0043】
工程A3において、酸(3)を好ましくはワンポット(one pot)反応で、N−エチルアミド(4)に変換する。ある一定の具体例では、N−エチルジメチルアミノプロピルカルボジイミド(EDC)などのカルボジイミドを用いて、酸をスクシンイミド誘導体として活性化してもよい。次いで活性化した酸を過剰のエチルアミンで処理することにより、アミドを好収率かつ穏当な純度で得ることができる。好ましい具体例において、工程A3は、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)を用いて酸を活性化、たとえば約35℃で約3時間混合し、次いで約5〜10℃に冷却することによって実施されてよい。
【0044】
次に反応溶液を直接エタノールで処理し、エチルアミンで飽和にし、再結晶後にN−エチルアミド生成物(4)を、高純度および収率で得ることができる。再結晶は、たとえば最初に粗生成物(4)を最小容量まで蒸留し、残渣をジクロロメタンに溶解し、酸および塩基で洗い、ジクロロメタンをエタノールに交換し、0℃に2〜5時間冷却し、生成物を濾過し、約40℃で12〜24時間減圧乾燥することによって実施されてよい。典型的な収率は、65〜70%の範囲にある。好ましくは、反応混合物にエチルアミンを4〜8Mのエタノール溶液で加え、たとえば約16時間攪拌する。別法として、反応混合物をガス状エチルアミンで飽和にしてもよい。
【0045】
工程A4において、適当な酸、たとえばトリフルオロ酢酸/水またはギ酸/水を用いて生成物(4)を脱保護することにより、基本中間体,2−ヨードNECA(5)を純粋な粉末で生成でき、これをそのまま次工程に使用しうる。この脱保護は、反応体を約3〜5時間混合することによって行なうことができる。化合物(5)は、たとえば以下の手順で抽出することができる。すなわち、混合物を約10℃に冷却し、これをメチルt−ブチルエーテル(MTBE)などの溶剤に加え、添加終了後約2時間攪拌し、濾過し、溶剤で洗い、約40℃で減圧乾燥する。
【0046】
適当な酸は、たとえば無機および有機酸を包含し、有機酸が好ましい。好適な酸としては、たとえば塩酸、トリフルオロ酢酸およびギ酸が挙げられ、トリフルオロ酢酸が好ましい。化合物4を脱保護するのに用いる酸の量は、たとえば用いる個々の酸、および脱保護にかかわる個々の化合物4に応じて変化させてもよい。概して、大過剰の酸が使用でき、それは反応溶媒としても使用されるからである。一般のガイダンスとして、化合物4の脱保護は広範囲の温度で行なうことができる。好ましくは反応は、化合物5を形成するのに十分な温度および時間で行なわれる。
【0047】
個々の温度および時間は、たとえばかかわる個々の化合物4および酸、並びに用いる個々の溶剤に応じて変化させてよい。好ましい態様では、化合物4の脱保護は約10〜35℃の温度、およびその温度範囲内の全ての組合せで行ってよい。より好ましくは、化合物4の脱保護はほぼ室温で行ってよい。この工程での収率は、典型例として90〜95%の範囲内にある。
化合物5は、化合物1からの全収率62%で得られ、クロマトグラフィー精製の必要がなかったのに対し、以前の方法で報告された収率(WO00/44763)は30%であった。
【0048】
反応式B1:Zが−CHOC(=O)R(ここで、RはC〜Cアルキル)であるシクロヘキサン−含有アセチレンの合成
【化17】

【0049】
反応式B2:Zが−C(=O)OR(ここで、RはC〜Cアルキル)であるシクロヘキサン−含有アセチレンの合成
【化18】

【0050】
他の基本中間体,アルキンエステル(10)および(12)の合成も、従来の手順に比し改良されている。
反応式B1およびB2の出発物質,純トランス−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルエステル(6)は、好ましくは約0.2重量%以下のシス異性体を含有し、Aldrichの如き出所から商業上入手することができる。
【0051】
ジエステル(6)を還元剤、たとえば水素化リチウムアルミニウムで還元することにより、純トランス−ジオール(7)を容易に得ることができる(工程B1−1またはB2−1)。一般にジエステル(6)は、還元剤の溶液に対し該溶液の温度を−10〜+25℃、好ましくは10℃以下に保持することによって決定される速度で加えられる。純トランス−ジオールを製造する他の適当な還元剤しては、たとえばエステルをアルコールに還元しうるボランやアラン(alane)剤が挙げられる。ある一定の好ましい具体例において、商業上入手しうる98%トランス異性体のジオール(7)を、2−エトキシエチルアセテートから再結晶して、99.5%以上レベルの純粋なトランス異性体にすることができる。
【0052】
工程B1−2およびB2−2において、純モノ−トシル誘導体を製造し、別途クロマトグラフィー精製せずに単離しうる。残留ジオール出発物質(7)を水性ワークアップ(workup)により除去し、ジトシル生成物をメタノールによる選択的沈殿で除去して、純モノ−トシル誘導体(8)を溶液状態とする。簡単な蒸発を行って、純粋形態の所望生成物(8)を収率53%で得る。これは、報告された手順、すなわち保護されたモノ−トシル誘導体を、2回のクロマトグラフィー精製後に収率51%で得る手順(Rieger J.M.、Brown M.L.、Sullivan G.W.、Linden J. および MacDonald T.L., J. Med. Chem., 2000, 44, 531-539)、あるいは1回工程手順の使用後に収率35%で得る手順(WO00/44763)と対照的である。
【0053】
トシレートのアセチリド置換は問題を含み、大過剰の試薬や長い反応時間、あるいは保護された中間体の加熱使用を要することが報告されている(Rieger J.M.、Brown M.L.、Sullivan G.W.、Linden J. および MacDonald T.L., J.Med, Chem., 2000, 44, 531-539)。本発明のリチウムアセチリド−エチレンジアミン複合体およびジメチルスルホキシド(DMSO)を用いる工程B2−3は、迅速で、高収率(90%)をもたらし、加熱工程や、さらなる精製あるいは生成物アルコール(9)を得るための脱保護の必要がない。
【0054】
Zが−C(=O)OR(ここで、RはC〜Cアルキル)であるシクロヘキサン−含有アセチレン化合物の場合(反応式B2)、工程B2−4で標準ショーンズ酸化条件を用いて化合物9を酸化する。ヒドロキシルアセチレン種のヒドロキシルの、標準ジョーンズ酸化条件を用いる酸化は、70〜75%の収率を与えることが報告されている(Rieger J.M.、Brown M.L.、Sullivan G.W.、Linden J. および MacDonald T.L., J.Med. Chem. 2000, 44, 531-539; WO00/44763)。工程B2−4のTEMPO/ビス−アセトキシヨードベンゼン(BAIB)の使用は、この変換を素早く(約3時間)かつなめらかに実施するのに緩和な条件を高い単離収率(95%)で付与する。
【0055】
工程B2−5において、カルボン酸(11)を以下の手順で所望エステル(12)に変換しうる。すなわち、適当なアルコール(化合物(12)の場合はメタノール、またはエタノールもしくは1−プロパノール)や触媒、たとえば濃硫酸、塩酸、無水塩化水素、p−トルエンスルホン酸および酸型のイオン交換樹脂を用いて簡単なフィッシャーエステル化反応を行った後、蒸留して生成物(12)を良好な収率および純度で生成し、しかもトリメチルシリルジアゾメタンのような高価な試薬を使用せずに。
【0056】
この改良合成は、4工程でクロマトグラフィー精製せずに所望のエステル−アルキンを全収率40%で付与する。これは、3回のカラムクロマトグラフィー工程後に4工程で収率22%にて進行する従来合成(Rieger J.M.、Brown M.L.、Sullivan G.W.、Linden J.および MacDonald T.L., J.Med. Chem, 2000, 44, 531-539)、または4回のクロマトグラフィー精製を伴ない6工程で全収率28%に進行する従来合成(WO00/44763)と対照的である。
工程B1−4において、トランス−4−(2−プロピニル)−シクロヘキシルメタノール9を、そのアセトキシメチル誘導体10に変換する。すなわち、4,4−ジメチルアミノピリジン触媒を用い、化合物9を無水酢酸/トリエチルアミンでアセチル化して、所望のアセトキシメチル誘導体10を得る。
【0057】
反応式C1:反応式B1の生成物と反応式Aの生成物とのクロスカップリングによる、Zが−CHOC(=O)R(ここで、RはC〜Cアルキル)である式Aの化合物の製造
【化19】

【0058】
反応式C2:反応式B2の生成物と反応式Aの生成物とのクロスカップリングによる、Zが−C(=O)OR(ここで、RはC〜Cアルキル)である式Aの化合物の製造
【化20】

【0059】
本発明の式Aの化合物は、以下の手順で製造しうる。すなわち、化合物10を化合物5とソナガシラ・クロスカップリングさせてZが−CHOC(=O)Rである化合物Aを製造するか(反応式C1)、あるいは化合物12を化合物5と同カップリングさせてZが−C(=O)ORである化合物Aを製造する(反応式C2)。一般に、ハライド−含有化合物(化合物10または化合物12のいずれか)とアルキン(たとえば50%過剰で)を、不活性ヘッドスペースガス、好ましくは窒素またはアルゴン下、適当な無水溶剤、たとえばジメチルホルムアミドまたはN−メチルピロリジンに溶解させてよい。
【0060】
不活性ヘッドスペースを維持しながら、沃化銅を加えた後、パラジウム触媒、好ましくはビス−トリフェニルホスフィン・パラジウムジクロリドを加える。反応液を周囲温度で約2〜5時間、好ましくは約2時間攪拌し、アリールハライドの消失を監視する。アリールハライドが消費されると、溶媒をジクロロメタンに交換し、溶液をEDTAで洗って銅を除去し、乾燥し、濾過し、濃縮する。残渣は、フラッシュクロマトグラフィーおよび/または再結晶で精製しうる。
【0061】
ソナガシラカップリングの条件は、ホスフィンまたは他の補助溶剤を加えずにパラジウム・ビス−トリフェニルホスフィンジクロリド/トリエチルアミン+ジメチルホルムアミドの使用で変えてもよい。これは従来方法におけるような一夜加熱とは反対に、室温で反応を進行させ2時間での完了を可能ならしめる。フラッシュクロマトグラフィー精製後の収率は76%で、これは報告された24%または60%(Rieger J.M.、Brown M.L.、Sullivan G.W.、Linden J.および MacDonald T.L., J.Med. Chem., 2000, 44, 531-539; WO00/44763)と対立する。たとえ高精製の形態が望まれても、分取HPLC精製は収率を71%に低下させるにすぎない。
【0062】
すなわち、本発明の方法は、1回のクロマトグラフィー精製を伴なう10工程で、所望
最終生成物を全収率17.6%にて、高純度の形態、好ましくはシス−異性体不純物の混入<0.2%で製造する。かかる工程の全ては、適切な製造規模への重要なスケールアップに従順である。これは、同じ数の工程で全収率1.6%を付与する従来法(Rieger J.M.、Brown M.L.、Sullivan G.W.、Linden J.およびMacDonald T.L., J.Med. Chem., 2000, 44, 531-539)、あるいは工程数を追加して全収率5%を付与する従来法(WO00/44763)と対照的である。各ケースにおいて、かなりの数のクロマトグラフィー精製が必要とされるが、これは適切な製造規模へのスケールアップに有意な結果をもたらす。
【0063】
アデノシン誘導体の製造に関して、本発明の方法は、従来の製造法と比較して、収率、純度、製造の容易さおよび/または中間体と最終生成物の単離の改良、並びにより産業上有用な反応条件および作業性を提供しうる。本発明方法は特に、工業的規模、たとえばマルチキログラムからトン分量もしくはそれ以上のアデノシン誘導体を含む、大規模のアデノシン誘導体の製造に有用である。特に、中間体からアデノシン誘導体への単離および/または精製工程は、本発明方法の使用によって、有利に実質上もしくは完全に回避することができる。
【0064】
本発明方法は特に、アデノシン誘導体が実質上純粋な形態で得られうるという点で有利である。本明細書で用いる語句“実質上純粋な形態”とは、本発明方法を用いて製造されるアデノシン誘導体が好ましくは、有機不純物が実質的に全くないことを意味する。本明細書で用いる語句“有機不純物”とは、所望の生成物以外の有機物質、化合物等を指称し、たとえば未反応の出発試薬、未反応の中間体化合物などを含め、典型的に合成有機化学の変換に付随しうる、式Aの化合物のシス−異性体が挙げられる。好ましい態様において、本発明方法は、たとえばHPLCなどの標準分析技法で測定して、少なくとも約75%純粋なアデノシン化合物を付与しうる。
【0065】
好ましくは、本発明方法を用いて製造されるアデノシン誘導体は少なくとも約80%純粋であってよく、少なくとも約85%の純度がより好ましい。さらにより好ましくは、本発明方法を用いて製造されるアデノシン誘導体は少なくとも約90%純粋であってよく、少なくとも約95%の純度がより好ましい。特に好ましい具体例において、本発明方法を用いて製造されるアデノシン誘導体は約95%以上純粋であってよく、約99.8%の純度がさらにより好ましく、約100%の純度が特に好ましい。
【0066】
化合物Aの塩が望まれる場合、適当な酸を加えた後、得られる溶液を冷却し、種結晶を加えて結晶性塩を得る。好ましくは、選択した酸は該塩を形成でき、しかも標的化合物の保全に影響を及ぼさないものである。すなわち、緩酸、たとえばスルホン酸が好ましい。特に、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、樟脳スルホン酸、および他のスルホン酸が適切な結晶性塩を製造しうる。特に好ましい酸は、メタンスルホン酸である。
【0067】
しかしながら、酸の無水形状が入手しうるとき、多数の他の塩も可能であることが理解されよう。たとえば、塩化水素、臭化水素、リン酸、硫酸または硝酸などの鉱酸を用いて、適切な結晶性塩を製造しうる。他の有機酸、たとえばフマル酸、コハク酸、シュウ酸、クエン酸等を用いて、適切な結晶性塩を製造されてもよく、但し、それらは化合物Aの塩基性部分をプロトン化するのに十分酸性であることが条件である。
【0068】
しかしながら、適切な条件下で、化合物Aの結晶性塩の製造に他の溶剤を使用されてよく、たとえば、これらに限定されるものでないが酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピルを含むエステル溶剤;これらに限定されるものでないがt−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテルを含むエーテル溶剤;およびこれらに限定されるものでないがトルエンやアニソールを含む芳香族溶剤が挙げられる。他の溶剤も当業者にとって容易に理解されよう。生成物の濾別および好ましくは別途の結晶化溶剤による洗浄により、化合物Aを得る。
【0069】
本明細書を通じて記載の化合物は、他の形態で使用または製造できる。たとえば、多数のアミノ含有化合物は、酸付加塩として使用または製造できる。かかる塩はたびたび、化合物の単離および取扱い特性を改善する。たとえば試薬、反応条件等に応じて、本明細書記載の化合物を、たとえばその塩酸塩またはトシレート塩で使用または製造することができる。また同形結晶体、全てのキラルおよびラセミ体、水和物、溶媒化合物、および酸塩水和物も、本発明の技術的範囲内に属しうることが意図される。
【0070】
本発明のある一定の酸性または塩基性化合物は、両性イオンで存在しうる。化合物の遊離酸、遊離塩基および両性イオンを含む全ての形状が、本発明の技術的範囲内に属しうることが意図される。アミノ基およびカルボキシル基の両方を含有する化合物はたびたび、その両性イオン体と平衡状態で存在することが当該分野で周知である。すなわち、本明細書を通じて記載の、たとえばアミノ基とカルボキシル基の両方を含有する化合物はいずれも、その対応する両性イオンへの言及を包含する。
【0071】
本明細書および特許請求の範囲に記載の合成法の反応は、有機合成分野の当業者によって容易に選択しうる適当な溶媒中で実施されてよい。一般に、適切な溶媒は、反応を実施する温度、すなわち、溶媒の凍結温度から溶媒の沸点までの範囲にある温度で、出発物質(反応体)、中間体または生成物と実質的に反応しない溶媒である。所定の反応を、1種の溶媒または2種以上の溶媒混合物中で実施されてよい。個々の反応に応じて、反応後の個々のワークアップ用の適切な溶媒が選択されてよい。本明細書で用いる適当な溶媒としては、具体例であってこれらに限定されないが、塩素化溶媒、炭化水素溶媒、芳香族溶媒、エーテル溶媒、プロトン性溶媒、極性非プロトン性溶媒、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0072】
適当なハロゲン化溶媒としては、これらに限定されるものでないが、四塩化炭素、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルム、クロロホルム、ブロモクロロメタン、ジブロモメタン、塩化ブチル、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、2−クロロプロパン、ヘキサフルオロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、フルオロトリクロロメタン、クロロトリフルオロメチン、ブロモトリフルオロメタン、四フッ化炭素、ジクロロフルオロメタン,クロロジフルオロメタン、トリフルオロメタン、1,2−ジクロロテトラフルオロエタンおよびヘキサフルオロエタンが挙げられる。
【0073】
適当な炭化水素溶媒としては、これらに限定されるものでないが、アルカンまたは芳香族溶媒、たとえばシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、トルエン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、エチルベンゼン、m,oもしくはp−キシレン、オクタン、インダン、ノナン、ベンゼン、エチルベンゼン、およびm,oもしくはp−キシレンが挙げられる。
適当なエーテル溶媒としては、これらに限定されるものでないが、ジメトキシメタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、フラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、アニソール、またはt−ブチルメチルエーテルが挙げられる。
【0074】
適当なプロトン性溶媒としては、これらに限定されるものでないが、水、メタノール、エタノール、2−ニトロエタノール、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、エチレングリコール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、1−ブタノール、2−ブタノール、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコール、1,2もしくは3−ペンタノール、ネオペンチルアルコール、t−ペンチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェノール、およびグリセロールが挙げられる。
【0075】
適当な非プロトン性溶媒としては、これらに限定されるものでないが、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセタミド(DMAC)、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N−メルアセタミド、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル(ACN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピオニトリル、エチルホルメート、酢酸メチル、ヘキサクロロアセトン、アセトン、エチルメチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸t−ブチル、スルホラン(テトラメチレンスルホン)、N,N−ジメチルプロピオンアミド、ニトロメタン、ニトロベンゼン、およびヘキサメチルホスホラミドが挙げられる。
【実施例】
【0076】
次に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。実施例の全ては、実際の例である。これらの実施例は、例証のみを目的とするもので、特許請求の範囲を限定するものではない。
実施例1
[(1R,2R,4R,5R)−4−(6−アミノ−2−ヨードプリン−9−イル)−7,7−ジメチル−3,6,8−トリオキサビシクロ[3.3.0]オクト−2−イル]メタン−1−オール(化合物2)の合成
0℃に冷却したアセトン(200mL)中の2−ヨードアデノシン1(10.0g、25.4ミリモル)の懸濁液に、70%過塩素酸(4.0mL)を滴下し、これにより約5℃の発熱が起こる。
【0077】
得られる無色溶液を30分にわたり室温まで加温せしめ、次いでさらに45分間攪拌する。1M−NaCO(50mL)を加えると、固体が沈殿する。この後、攪拌下全ての固体が溶解するまで注意して水(300mL)を滴下する。混合物を三分量のCHClで抽出する。コンバインした有機物を塩水で洗い、乾燥し(NaSO)、濾過し、蒸発して化合物2(10.26g、93%)を無色固体で得る。
1H-NMR (600 MHz, DMSO d6): 1.32 (s, 3H), 1.54 (s, 3H), 3.54 (m, 2H), 4.19 (m, 1H), 4.93 (dd, 1H), 5.05 (t, 1H), 5.27 (dd, 1H), 6.05 (d, 1H), 7.74 (bs, 2H), 8.28 (s, 1H); 13C-NMR (150 MHz, DMSO d6): 25.45, 27.08, 85.69, 86.09, 88.44, 92.59, 114.92, 120.39, 142.47, 151.08, 157.20, 173.14. LRMS (ES): m/z = 434.0 (M+H, 100%).
【0078】
実施例2:1’−デオキシ−1’−(6−アミノ−2−ヨード−9H−プリン−9−イル)−2’,3’−O−イソプロピリデン−β−D−リボフランウロン酸(化合物3)の合成
0℃に冷却したCHCN(200mL)および水(50mL)中の化合物2(10.0g、23.1ミリモル)の溶液に、ヨードベンゼンジアセテート(16.4g、50.8ミリモル)およびTEMPO(0.72g、20ミリモル)を加える。混合物を0℃で30分間攪拌し、次いで室温まで加温せしめ、22h攪拌する。溶媒を蒸発し、得られる残渣をn−ヘプタン(400mL)と共に一夜トリチュレートする。固体を濾別し、n−ヘプタンで洗い、減圧乾燥して化合物3(9.80g、95%)をオフホワイト固体で得る。
1H-NMR (600 MHz, CD3OD): 1.45 (s, 3H), 1.65 (s, 3H), 4.78 (d, 1H), 5.50 (d, 1H), 5.67 (dd, 1H), 6.31 (s, 1H), 8.14 (s, 1H); 13C-NMR (150 MHz, CD3OD): 25.45, 27.08, 85.69, 86.09, 88.44, 92.59, 114.92, 120.39, 142.47, 151.08, 157.20, 173.14. LRMS (ES): 448.0 (M+H, 100%).
【0079】
実施例3:N−エチル−1’−デキオシ−1’−(6−アミノ−2−ヨード−9H−プリン−9−イル)−2’,3’−O−イソプロピリデン−β−D−リボフランウロンアミド(化合物4)の合成
50%エタノール/CHCl(160mL)中の化合物3(8.0g、17.9ミリモル)の溶液に、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン(EEDQ)(4.65g、18.8ミリモル)を一度に加える。混合物を室温で24時間攪拌する。エタノール(80mL)を加え、反応溶液に4時間にわたりエチルアミンガス(〜45g)を吹き込む。反応液を室温で20時間攪拌した後、溶媒を蒸発する。得られる固体をCHClに溶解し、0.1M−HClおよび1M−NaCOで連続して洗う。有機物を乾燥し(NaSO)、濾過し、蒸発して化合物4を淡黄色固体で得、これをCHCl/ヘキサンから再結晶して、化合物4(6.0g、71%)を白色固体で得る。m.p.204−206℃。
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): 0.68 (t, 3H), 1.32 (s, 3H), 1.52 (s, 3H), 2.81 (m, 1H), 2.91 (m, 1H), 4.53 (s, 1H), 5.33 (m, 1H), 5.36 (m, 1H), 6.27 (s, 1H), 7.43 (t, 1H), 7.68 (s, 2H), 8.16 (s, 1H); 13C-NMR (150 MHz, DMSO-d6): 14.07, 25.06, 26.61, 33.07, 83.15, 83.35, 112.77, 118.71, 120.68, 139.99, 149.31, 155.81, 167.92. LRMS (ES): m/z = 475.0 (M+H, 100%).
【0080】
実施例4:[(2S,3S,4R,5R)−5−(6−アミノ−2−ヨードプリン−9−イル)−3,4−ジヒドロキシオキソラン−2−イル]−N−エチルカルボキサミド(化合物5)の合成
10%水性トリフルオロ酢酸の攪拌溶液(1100mL)に、化合物4(80g、168ミリモル)を攪拌しながら5分にわたり加える。溶液を室温で1時間攪拌し、次いで減圧濃縮する。得られる褐色油状物をメチルt−ブチルエーテル(MTBE)と共にトリチュレートして、固体を得、これを濾別し、MTBEでリンスし、減圧乾燥して化合物5(72.7g、99%)を白色粉末で得る。
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): 1.05 (t, 3H), 3.24 (m, 2H), 4.17 (dd, 1H), 4.31 (d, 1H), 4.58 (dd, 1H), 5.91 (d, 1H), 7.74 (bs, 2H), 8.10 (t, 1H), 8.38 (s, 1H); 13C-NMR (150 MHz, DMSO-d6): 14.78, 26.77, 33.47, 72.65, 72.94, 84.20, 119.16, 120.91, 149.84, 155.90, 169.00; LRMS (ES): m/z = 435.1 (M+H, 100%)
【0081】
実施例5:トランス−[(4−ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メタン−1−オール(化合物7)の合成
4℃に冷却した無水テトラヒドロフラン(600mL)中の水素化リチウムアルミニウム(7.6g、0.2モル)の懸濁液に正圧窒素下で、無水テトラヒドロフラン(400mL)中のトランス−1,4−ジメチル−シクロヘキサンジカルボキシレート6(20g、0.1モル)の溶液を、その滴下中に温度<10℃に維持する速度にて、30分にわたり滴下する。反応液を冷却しながらさらに30分攪拌し、次いで室温まで加温せしめ、70時間攪拌する。反応液を4℃に冷却し、水(7.6mL)を注意して加えた後、15%NaOH(7.6mL)および水(22.8mL)を加える。混合物を徐々に室温まで加温せしめ、次いで室温で5時間攪拌する。得られる無色懸濁液を濾過し、濾液を濃縮して化合物7(13.0g、90%)をオフホワイト固体で得る。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 0.83 (m, 4H), 1.26 (m, 2H), 1.72 (d, 4 H), 3.19 (t, 4H), 4.34 (t, 2H); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): 29.05, 40.63, 66.79.
【0082】
実施例6:トランス−[{(4−ヒドロキシメチル)シクロヘキシル}メチル]4−メチルベンゼンスルホネート(化合物8)の合成
室温で攪拌した無水ピリジン(1L)中の化合物7(100g、0.69モル)の溶液に、p−トルエンスルホニルクロリド(132g、0.69モル)を少量づつ加える。反応液を1時間攪拌すると、その時間にかけて無色沈殿物の形成が見られる。反応温度を−10℃に冷却し、水(トータル4L)を注意して加え、温度を<20℃に保持する。混合物をCHClで抽出し、3M−HClで洗い、乾燥し(MgSO)、濾過し、蒸発する。粗残渣を無水MeOHと共にトリチュレートし、得られる固体を濾去する。濾液を蒸発して、化合物8(110g、53%)を淡黄色油状物で得る。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 0.91 (m, 4H), 1.37 (m, 1H), 1.58 (m, 1H), 1.75 (m, 4H), 1.84, (s, 1H), 2.42 (s, 3H), 3.39 (d, 2H), 3.80 (d, 2H), 7.34 (d, 2H), 7.75 (d, 2H); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): 21.53, 28.32, 28.34, 37.22, 39.99, 68.07, 75.16, 127.73, 129.72, 132.85, 144.62.
【0083】
実施例7:(4−プロプ−2−イニルシクロヘキシル)メタン−1−オール(化合物9)の合成
DMSO(1.46L)中の化合物8(110g、0.37モル)の溶液に、リチウムアセチリド/エチレンジアミン複合体(純度>90%、101.4g、1.10モル)を一度に加える。反応液を周囲温度で2時間攪拌する。次いで水(3.8L)を35分にわたり用心深く加え、溶液温度を<37℃に維持する。次いでメチルt−ブチルエーテル(MTBE)(3L)を加え、二相混合物を10分間激しく攪拌する。有機相を分離し、水性相をさらにMTBEで抽出する。コンバインした抽出物を水洗し、乾燥し(MgSO)、濾別し、蒸発して化合物9(50.3g、90%)を淡黄色油状物で得る。
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): 0.96 (m, 4H), 1.41 (m, 2H), 1.82 (m, 4 H), 1.94, (t, 1H), 2.07 (d of d, 2H), 2.16 (s, 1H), 3.39 (d, 2H); 13C-NMR (100 MHz, CDCl3): 25.91, 29.04, 31.71, 37.04, 40.07, 68.23, 69.01, 83.24.
【0084】
実施例8:トランス−4−(2−プロピニル)−シクロヘキシルメタノールアセテート(化合物10)の合成
ジクロロメタン(300mL)中のトランス−4−(2−プロピニル)−シクロヘキシルメタノール(化合物9)(15g、98ミリモル)、トリエチルアミン(TEA)(15.1mL、108ミリモル)および4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(0.6g、5ミリモル)の溶液を、攪拌しながら窒素下で2℃に冷却する。無水酢酸(AcO)(10.2mL、108ミリモル)を滴下し、温度を10℃以下に保持する。氷浴温で30分の攪拌後、10%炭酸カリウム溶液(300mL)で反応を抑える。各層を分離し、有機層を1N−HCl、水および塩水で連続して洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、減圧濃縮して20gの生成物を黄色油状物で得、これを減圧下(0.5トル、70℃)で球対球(bulb to bulb)蒸留に付して、生成物(化合物10)を無色油状物で得る(17g、89%)。
1H-NMR (600 MHz, CDCl3): 1.03 (m, 4H), 1.46 (m, 1H), 1.59 (m, 1H), 1.85 (dd, 4H), 1.89 (t, 1H), 2.05 (t, 3H), 2.11 (dd, 2H), 3.89 (d, 2H).
【0085】
実施例9:4−プロプ−2−イニルシクロヘキサン・カルボン酸(化合物11)の合成
0℃に冷却した50%アセトニトリル/水(35mL)中の化合物9(2.45g、16ミリモル)の懸濁液に、ビス−アセトキシ−ヨードベンゼン(BAIB)(11.4g、35ミリモル)およびTEMPO(502mg、3.2ミリモル)を加える。反応混合物を0℃で1時間、次いで室温で90分間攪拌する。溶媒を蒸発し、残渣をCHCN/HO(1:1、100mL)に溶解する。もう一度溶媒を蒸発し、この操作を繰返して、ヨードベンゼンを共沸混合物で除去する。生成する化合物11(2.53g、95%)を褐色粘着固体で得、これをさらなる精製せずに、次工程に移す。
1H-NMR (600 MHz, CD3OD): 1.13 (dq, 2H), 1.45 (dq, 2H), 1.48 (m, 1H), 1.93 (dd, 2H), 2.03 (dd, 2H), 2.12 (dd, 2H), 2.2-2.3 (m, 2H).
【0086】
実施例10:メチル4−プロプ−2−イニルシクロヘキサンカルボキシレート(化合物12)の合成
メタノール(10mL)中の化合物11(0.88g、5.29ミリモル)の溶液に、濃HCl(0.5mL)を加え、混合物を室温で2時間攪拌する。溶媒を蒸発し、残渣をCHClに溶解し、乾燥し(NaSO)、濾過し、蒸発して淡黄色油状物を得る。油状物を球対球蒸留(500mトル、140℃)で精製して、化合物12(0.80g、84%)を淡ピンク色油状物で得る。
1H-NMR (600 MHz, CD3OD): 1.13 (dq, 2H), 1.45 (dq, 2H), 1.48 (m, 1H), 1.94 (dd, 2H), 2.01 (dd, 2H), 2.12 (dd, 2H), 2.24 (t, 1H), 2.28 (m, 1H), 3.68 (s, 3H); 13C-NMR (150 MHz, CD3OD): 26.55, 29.96, 32.48, 37.79, 44.31, 52.08, 70.57, 83.44; FTIR (KBr) 1743 (C=O), 2117 (C≡C), 2872, 2953 (C-H), 3314 cm-1 (C≡C-H)
【0087】
実施例11:1−[2−[3−[トランス−4−[(アセチルオキシ)メチル]シクロヘキシル]−1−プロピニル]−6−アミノ−9H−プリン−9−イル]−1−デオキシ−N−エチル−β−D−リボフランウロンアミド(Zが−CHOC(=O)CHの化合物A)
乾燥ジオキサン(2mL)中の1−(6−アミノ−2−ヨード−9H−プリン−9−イル)−1−デオキシ−N−エチル−β−D−リボフランウロンアミド5(75mg、0.17ミリモル)の攪拌懸濁液に、トランス−4−(2−プロピニル)−シクロヘキシルメタノールアセテート10(54mg、0.28ミリモル)、トリエチルアミン(78μL、0.56ミリモル)、沃化銅(11.3mg、59μモル)、ビス−アセトニトリルパラジウムジクロリド(11.8mg、45μモル)およびトリ(t−ブチル)ホスフィン(ヘキサン中10%、93μL、30μモル)を加える。これを室温で20時間攪拌し、次いでトリエチルアミン(1mL)を加え、溶液を50℃に5時間加熱する。別途アリコートのシクロヘキシルメタノールアセテート(100mg)、CuI(5mg)、Pd(MeCN)Cl(10mg)およびトリ(t−ブチル)ホスフィン(200μL)と共に、ジメチルホルムアミド(2mL)を加え、加熱を26時間続ける。
【0088】
溶媒を減圧除去し、残渣をクロロホルムに溶解し、0.01M−NaEDTA溶液(50mL×2)および塩水で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、蒸発する。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール=95:5)で精製して、生成物(Zが−CHOC(=O)CHの化合物A)を褐色固体で得る(40mg、47%)。
1H-NMR (600 MHz, DMSO-d6): 1.01 (m, 4H), 1.06 (t, 3H), 1.48 (m, 2H), 1.8 (dd, 4H), 2.00 (s, 3H), 2.32 (d, 2H), 3.25 (m, 1H), 3.30 (m, 1H), 3.83(d, 2H), 4.11 (t, 1H), 4.30 (d, 1H), 4.57 (m, 1H), 5.53 (d, 1H), 5.73 (d, 1H), 5.92 (d, 1H), 7.52 (bs, 2H) 8.41 (s, 1H), 8.73 (t, 1H); 13C-NMR (150 MHz, CD3OD): 14.94, 25.67, 28.21, 31.30, 33.28, 36.38, 36.50, 68.52, 71.80, 73.11, 81.93, 84.38, 84.65, 87.64, 119.06, 141.45, 145.63, 148.95, 155.96, 169.17, 170.38; LRMS (ES): 501.2 (M+H, 100%).
【0089】
実施例12:1−[2−[3−[トランス−4−[(アセチルオキシ)メチル]シクロヘキシル]−1−プロピニル]−6−アミノ−9H−プリン−9−イル]−1−デオキシ−N−エチル−β−D−リボフランウロンアミド(Zが−CHOC(=O)CHの化合物A)
別法として、Zが−CHOC(=O)CHの化合物Aは、以下の手順で得ることができる。
フラスコに窒素雰囲気下、化合物5(33g、76ミリモル)、化合物10(22.3g、115ミリモル)、乾燥ジメチルホルムアミド(330mL)およびトリエチルアミン(115mL)を入れる。攪拌溶液に乾燥窒素を15分間散布し、次いで沃化銅(2.21g、11.6ミリモル)およびパラジウム・ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド(4g、5.7ミリモル)を加え、窒素パージを維持する。反応液を室温で1.5時間攪拌し、減圧濃縮して褐色油状物を得る。これをジクロロメタンに再溶解し、四分量の0.1N−EDTA溶液で洗う。有機物を乾燥し(NaSO)、濾過し、減圧濃縮する。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中1−7%メタノール勾配)で精製して、Zが−CHOC(=O)CHの化合物Aを淡黄色固体で得る。
【0090】
実施例13:4−{3−[6−アミノ−9−(5−エチルカルバモイル−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)−9H−プリン−2−イル]プロプ−2−イニル}シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル(Zが−C(=O)OCHの化合物A)の合成
フラスコに窒素雰囲気下、化合物5(33g、76ミリモル)、化合物12(20.7g、115ミリモル)、乾燥ジメチルホルムアミド(330mL)およびトリエチルアミン(115mL)を入れる。攪拌溶液に乾燥窒素を15分間散布し、次いで沃化銅(2.21g、11.6ミリモル)およびパラジウム・ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロリド(4g、5.7ミリモル)を加え、窒素パージを維持する。反応液を室温で1.5時間攪拌し、減圧濃縮して褐色油状物を得る。これをジクロロメタンに再溶解し、四分量の0.1N−EDTA溶液で洗う。有機物を乾燥し(NaSO)、濾過し、減圧濃縮する。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(ジクロロメタン中1−7%メタノール勾配)で精製して、Zが−C(=O)OCHの化合物A(28.1g、76%)を淡黄色固体で得る。
【0091】
実施例14:4−{3−[6−アミノ−9−(5−エチルカルバモイル−3,4−ジヒドロキシテトラヒドロフラン−2−イル)−9H−プリン−2−イル]プロプ−2−イニル}シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル(Zが−C(=O)OCHの化合物A)の精製
Zが−C(=O)OCHの化合物Aの精製は、2つの方法:分取HPLCと再結晶で行った。
分取HPLCは、6Lの25%アセトニトリル/0.05N酢酸アンモニア中のZが−C(=O)OCHの化合物A22.8gの注入溶液を用い、60分にわたる25%−40%Bの勾配(A=0.05N酢酸アンモニウム,pH=5.0;B=アセトニトリル)で、Dynamax C−18(8μm、60A、15×30cm)にて実施する。溶出液を270nMで監視し、生成物画分を単離する。生成物画分をコンバインし、同容量の水で希釈する。これらを同じカラムに注入し、30分にわたる20%−80%Bの勾配(A=水;B=アセトニトリル)で運転して、塩を除去する。生成物画分をコンバインし、冷凍し、凍結乾燥してZが−C(=O)OCHの化合物A(21.4g、94%)を綿状白色粉末で得る。
【0092】
結晶化は、2−プロパノール/メチルt−ブチルエーテル(MTBE)(10:1)から行なう。Zが−C(=O)OCHの化合物Aを最小量の温2−PrOHに溶解し、加温しながらMTBEを加える。溶液を0℃浴で攪拌しながら冷却せしめる。これを−8℃で一夜静置させ、次いで濾過し、2−PrOH/MTBE(1:1)で洗った後MTBEで洗い、次いで減圧乾燥して、Zが−C(=O)OCHの化合物Aを白色流動性粉末で得る。
1H-NMR (600 MHz, CD3OD): 1.21 (t, 3H), 1.22 (dq, 2H), 1.48 (dq, 2H), 1.65 (m, 1H), 2.04 (dt, 4H), 2.34 (dt, 1H), 2.45 (d, 2H), 3.44 (dm, 2H), 3.69 (S, 3h), 4.36 (dd, 1H), 4.50 (d, 1H), 4.74 (dd, 1H), 6.07 (d, 1H, 8.48 (s, 1H); 13C-NMR (150 MHz, CD3OD): 14.78, 26.77, 33.47, 72.65, 72.94, 84.20, 119.16, 120.91, 149.84, 155.90, 169.00; LRMS (ES): 487.2 (M+H, 100%).
【0093】
本明細書において、物理的性質(たとえば分子量)または化学的性質(たとえば化学式)に関する範囲が使用されているとき、その範囲や特定実施態様の全ての組合せが含まれることが意図される。
本明細書で引用もしくは記載した各特許、特許出願および刊行物の開示内容については、そのままの状態を参考までに本発明で援用される。
【0094】
当業者であれば、本発明の好ましい実施態様に対し多数の変更や改変を成しうること、またかかる変更や改良を本発明の精神から逸脱することなく成しうることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式A:
【化1】

[式中、Zは−C(=O)ORまたは−CHOC(=O)R、ここでRはC〜Cアルキルである]
の化合物、またはその立体異性体、医薬的に許容しうる塩、水和物、溶媒化合物、酸塩水和物もしくは同形結晶体を製造する方法であって、
2−ヨードアデノシン−5’−N−エチルウロンアミドを式B:
【化2】

[式中、Zは上記と同意義である]
の化合物と接触させる工程から成ることを特徴とする製造法。
【請求項2】
Zが−C(=O)OCHまたは−CHOC(=O)CHである請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
2−ヨードアデノシン−5’−N−エチルウロンアミドを、2−ヨードアデノシンから製造する請求項1に記載の製造法。
【請求項4】
2−ヨードアデノシンを、式:
【化3】

の2−ヨードアデノシンのアセトニド−保護体に変換する工程をさらに包含する請求項3に記載の製造法。
【請求項5】
2−ヨードアデノシンのアセトニド−保護体を、式:
【化4】

の化合物に酸化する工程をさらに包含する請求項4に記載の製造法。
【請求項6】
酸化工程がラジカル酸化である請求項5に記載の製造法。
【請求項7】
酸化工程が、ビス−アセトキシヨードベンゼンと2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)からなる混合物の使用を包含する請求項5に記載の製造法。
【請求項8】
式:
【化5】

の化合物を、式:
【化6】

の化合物に変換する工程をさらに包含する請求項5に記載の製造法。
【請求項9】
変換工程がワンポット反応で進行する請求項8に記載の製造法。
【請求項10】
変換工程が、スクシンイミド誘導体と過剰のエチルアミンの使用を包含する請求項8に記載の製造法。
【請求項11】
変換工程が、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン、エタノールおよびエチルアミンからなる組成物の使用を包含する請求項8に記載の製造法。
【請求項12】
式:
【化7】

の化合物を脱保護して、2−ヨードアデノシン−5’−N−エチルウロンアミドを形成する工程をさらに包含する請求項8に記載の製造法。
【請求項13】
式Bの化合物を、1,4−メタノールシクロヘキサンから製造する請求項1に記載の製造法。
【請求項14】
1,4−メタノールシクロヘキサンを、トランス−1,4−ジメチル−シクロヘキサンジカルボキシレートからなる反応混合物から製造する請求項13に記載の製造法。
【請求項15】
反応混合物が、1,4−ジメチル−シクロヘキサンジカルボキシレートの合計重量に基づき、約0.2重量%以下のシス−1,4−ジメチル−シクロヘキサンジカルボキシレートを含有する請求項14に記載の製造法。
【請求項16】
1,4−メタノールシクロヘキサンを、1,4−ジメチル−シクロヘキサンジカルボキシレートを還元する工程からなる方法で製造する請求項13に記載の製造法。
【請求項17】
1,4−メタノールシクロヘキサンのモノ−トシル誘導体を製造する工程をさらに包含する請求項13に記載の製造法。
【請求項18】
式:
【化8】

のトシル誘導体をアセチリド置換して、式:
【化9】

のアセチリド−置換化合物を形成する工程をさらに包含する請求項17に記載の製造法。
【請求項19】
アセチリド−置換化合物を、式B(式中、Zは−CHOC(=O)Rである)の化合物に変換する工程をさらに包含する請求項18に記載の製造法。
【請求項20】
アセチリド−置換化合物を酸化し、該酸化生成物をエステル化して式B(式中、Zは−C(=O)ORである)の化合物とする工程をさらに包含する請求項18に記載の製造法。
【請求項21】
2−ヨードアデノシン−5’−N−エチルウロンアミドを製造する方法であって、
2−ヨードアデノシンを準備し;
該2−ヨードアデノシンのヒドロキシル基をアセトニド基で保護し;
該アセトニド−保護2−ヨードアデノシンの第一アルコールを酸化して、アセトニド−保護2−ヨードアデノシンの酸誘導体とし;
該酸誘導体をアセトニド−保護2−ヨードアデノシンのN−エチルアミド誘導体に変換し;次いで
該アセトニド−保護2−ヨードアデノシンのN−エチルアミドを脱保護して、2−ヨードアデノシン−5’−N−エチルウロンアミドを形成する
工程から成ることを特徴とする製造法。
【請求項22】
式B:
【化10】

[式中、Zは−CHOC(=O)R、ここでRはC〜Cアルキルである]
の化合物を製造する方法であって、
1,4−メタノールシクロヘキサンを準備し;
該1,4−メタノールシクロヘキサンのモノ−トシル誘導体を製造し;
該1,4−メタノールシクロヘキサンのモノ−トシル誘導体から式:
【化11】

のアセチリド−置換化合物を製造し;次いで
該アセチリド−置換化合物を式B:
【化12】

[式中、Zは上記と同意義である]
の化合物に変換する
工程から成ることを特徴とする製造法。
【請求項23】
式B:
【化13】

[式中、Zは−C(=O)OR、ここでRはC〜Cアルキルである]
の化合物を製造する方法であって、
1,4−メタノールシクロヘキサンを準備し;
該1,4−メタノールシクロヘキサンのモノ−トシル誘導体を製造し;
該1,4−メタノールシクロヘキサンのモノ−トシル誘導体から式:
【化14】

のアセチリド−置換化合物を製造し;
該アセチリド−置換化合物をラジカル酸化で酸化し;次いで
該酸化生成物をエステル化して、式B:
【化15】

[式中、Zは上記と同意義である]
の化合物とする
工程から成ることを特徴とする製造法。
【請求項24】
酸化工程が、ビス−アセトキシヨードベンゼンと2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)からなる混合物の使用を包含する請求項23に記載の製造法。
【請求項25】
1,4−メタノールシクロヘキサンを、トランス−1,4−ジメチル−シクロヘキサンジカルボキシレートからなる反応混合物から製造する請求項22または23に記載の製造法。
【請求項26】
反応混合物が、1,4−ジメチル−シクロヘキサンジカルボキシレートの合計重量に基づき、約0.2重量%以下のシス−1,4−ジメチル−シクロヘキサンジカルボキシレートを含有する請求項25に記載の製造法。
【請求項27】
1,4−メタノールシクロヘキサンを、1,4−ジメチル−シクロヘキサンジカルボキシレートを還元する工程からなる方法で製造する請求項22または23に記載の製造法。

【公表番号】特表2007−501278(P2007−501278A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533232(P2006−533232)
【出願日】平成16年5月19日(2004.5.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/015783
【国際公開番号】WO2004/104017
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(503021180)ブリストル−マイヤーズ・スクイブ・ファーマ・カンパニー (10)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB PHARMA COMPANY
【Fターム(参考)】