説明

2−シアノ−4−フルオロピロリジン誘導体の製造法

【課題】4-フルオロ-1-({[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]アミノ}アセチル)ピロリジン-2-カルボニトリルの新規製造法及び該製造法に必要なの中間体を提供する。
【解決手段】式(I)で示される新規な2-アミノカルボニル-4-フルオロピロリジン誘導体、及び該化合物を用いた、1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性疾患、肥満の治療及び/又は予防剤として有用な4-フルオロ-1-({[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]アミノ}アセチル)ピロリジン-2-カルボニトリルの製造法。
【化】


[式中、R1はH若しくはアミノ基の保護基を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、殊にジペプチジルペプチダーゼIV(以下、DPP-IVと言う。)阻害剤、より具体的には例えば1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン抵抗性疾患、及び肥満の治療剤及び/又は予防剤として有用な、4-フルオロ-1-({[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]アミノ}アセチル)ピロリジン-2-カルボニトリル(以下、化合物Aと言う。)又はその塩の新規製造法、並びに、該製造法の中間体として有用な、新規2-アミノカルボニル-4-フルオロピロリジン誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物A又はその塩は、DPP-IV阻害作用を有し、インスリン依存性糖尿病(1型糖尿病)、インスリン非依存性糖尿病(2型糖尿病)、インスリン抵抗性疾患、及び肥満等の治療及び/又は予防に有用であることが知られている(特許文献1)。
特許文献1には、化合物Aが以下の製造法(以下、製造法Xと言う。)に従って製造されたことが記載されている。
【化3】

[式中、Meはメチルを示す。以下同様。]
【0003】
また、別の2-シアノ-4-フルオロピロリジン誘導体の製造法として、以下の製造法(以下、製造法Yと言う。)が知られている(特許文献2)。
【化4】

[式中、iPrはイソプロピルを示し、NEt(iPr)2はN-エチルジイソプロピルアミンを示す。]
【0004】
しかし、いずれの文献にも、本発明化合物及び本発明化合物を製造原料とする化合物Aの製造法についての記載はない。
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO 2004/009544号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO 03/002553号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、化合物A又はその塩の別途製造法について鋭意検討した結果、以下に示す製造法2が化合物A又はその塩の優れた製造法であること、及び当該製造法において原料として用いられる下記式(I)で示される新規2-アミノカルボニル-4-フルオロピロリジン誘導体が、化合物Aを効率よく製造するための優れた中間体であることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明によれば、下記製造法2で示される化合物A又はその塩の新規製造法における中間体として有用な、式(I)で示される新規2-アミノカルボニル-4-フルオロピロリジン誘導体、又はその塩が提供される。
【化5】

[式中、R1はH若しくはアミノ基の保護基を示す。以下同様。]
【0008】
ここで、R1としては、アミノ基の保護基が好ましく、このアミノ基の保護基としては、低級アルキルオキシカルボニル、若しくは低級アルキルカルボニルが好ましく、tert-ブトキシカルボニル、アセチル、ピバロイル若しくはメトキシカルボニルが特に好ましい。その中でも、tert-ブトキシカルボニルが最も好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、上記式(I)で示される化合物のアミノカルボニル基をシアノ基に変換する工程、及び、R1がアミノ基の保護基である場合には、アミノ基の保護基を除去する工程を含むことを特徴とする、式(II)
【化6】

で示される4-フルオロ-1-({[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]アミノ}アセチル)ピロリジン-2-カルボニトリル又はその塩の製造法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
一般的に、工業的生産を行う際には、量の面及びコストの面からカラム精製は困難であることが多い。従って、最終目的化合物を含めて、その中間体であっても、結晶化により精製できることが望ましい。さらに、最終目的物を生成させる工程に当たっては、その原料化合物の純度が高ければ高いほど、その工程における副反応を抑制することができ、不純物の生成が軽減できる。従って、工業的生産においては、特に最終目的化合物の前駆体となる化合物の純度が高いことが要求される。
また、工業的生産においては、環境の面からジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系の溶媒を使うことはできるだけ避けるべきであり、そのためには化合物の脂溶性を上げることが重要となる。
これらの点に関して、本発明の方法によれば、最終生成物である式(II)で示される化合物の前駆体として化合物(I)が存在し、特にR1がアミノ基の保護基である場合には、該保護基の存在により前駆体の結晶化が期待でき、収率向上、カラム精製の回避につながることが予想される。また、保護基の存在により脂溶性が向上する結果、ハロゲン系の溶媒以外の溶媒への溶解性が向上し、これらハロゲン系の溶媒の使用を回避できることが予想される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書中、「低級アルキル」とは、C1-6の直鎖又は分枝上のアルキルであり、具体的には例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル若しくはヘキシル、又はイソプロピル等のこれらの構造異性体であり、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、又はtert-ブチルであり、特に好ましくはメチル、又はtert-ブチルである。
【0012】
また、「アミノ基の保護基」としては、カルボニルアミノ基をシアノ基に変換する工程において、その反応条件により脱離せず、かつ、その保護基を除去する工程において、化合物中の官能基、特にシアノ基、メタンスルホニルアミノ基に影響を与えない反応条件により除去できる保護基であればいずれでもよく、それらの保護基を選択するに当たっては、例えばグリーン(Greene)及びウッツ(Wuts)著、「Protective Groups in Organic Synthesis(Third Edition)」の記載を参照することができる。具体的には、カルボニルアミノ基をシアノ基に変換する工程における塩基性条件によっては脱離せず、かつ、その保護基を除去する工程において、本発明化合物中の官能基、特にシアノ基、メタンスルホニルアミノ基に影響を与えない酸性条件により除去できる保護基であること望ましい。これらの基のうち、好ましくは低級アルキルオキシカルボニル、及び低級アルキルカルボニルであり、より好ましくはtert-ブトキシカルボニル、アセチル、ピバロイル、メトキシカルボニルを挙げることができる。この中でもtert-ブトキシカルボニルが特に好ましい。
【0013】
また、本明細書中、式(I)及び(II)で示される化合物は、不斉炭素を有するため光学異性体が存在する。本発明には、これら光学異性体の混合物や単離されたもの、及びこれらを用いた製造法を包含する。これらの光学異性体のうち、好ましくは(2S,4S)-体、即ち下記式で示される化合物である。
【化7】

【0014】
また、本発明には、本発明化合物の一部が放射性同位元素でラベル化された化合物、及び化合物の一部が放射性同位元素でラベル化された化合物を用いた製造法も包含される。
さらに、本発明には、本発明化合物の塩、水和物及び溶媒和物、並びに塩を形成し、水和し、若しくは溶媒和した化合物を用いた製造法も包含される。かかる塩として、具体的には例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機塩との塩や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸又はグルタミン酸等の有機酸との塩、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の金属を含む無機塩基との塩、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リジン、オルニチン等の有機塩基との塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0015】
以下、本発明にかかる製造法につきさらに説明する。
なお、本発明にかかる製造法において、必要に応じて、また官能基の種類によって、当該官能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基、即ち容易に当該官能基に転化可能な基に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。しかる後、必要に応じて保護基を除去し、所望の化合物を得ることができる。このような官能基しては、例えばカルボキシル基やアミノ基を挙げることができ、それらの保護基としては、例えば上述の「Protective Groups in Organic Synthesis(Third Edition)」に記載の保護基を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜用いればよい。
【0016】
(中間体の製造法)
【化8】

[式中、R1は前述の意味を示し、Xは脱離基を示し、Rは低級アルキルを示す。また、それぞれの化合物中のR1は同一であっても、異なっていてもよい。]
ここで、Xで示される脱離基とは、N-アルキル化反応において脱離基となる基であればいずれでもよく、具体的には、クロロ、ブロモ、ヨード等のハロゲン;メタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル、エタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、p-トルエンスルホニル;等のスルホニル基を挙げることができる。
本製造法は、下記製造法1において式(I)で示される化合物を製造する際の原料となる式(B)で示される化合物の製造法であり、化合物(i-5)のエステル基をカルボキシル基に変換することにより製造することができる。代表的には、低級アルキルエステルの加水分解反応を挙げることができ、その反応は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類;メタノール(MeOH)、エタノール(EtOH)、2-プロパノール(iPrOH)等のアルコール類;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒;ピリジン;水;又はこれらの混合溶媒;等の、反応に不活性な溶媒中、硫酸、塩酸、臭化水素酸等の鉱酸、ギ酸、酢酸等の有機酸、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム若しくはアンモニア等の塩基存在下、冷却化乃至加熱還流下に行うことができ、反応温度は反応条件に応じて適宜選択することができる。この他、上述の「Protective Groups in Organic Synthesis(Third Edition)」に記載されている方法若しくはこれに準じる方法を適用することもできる。
化合物(i-5)の製造法としては、代表的に2つの方法を挙げることができる。
即ち、1つの方法は、(i-1)で示される保護されていてもよいアミンと(i-2)で示される脱離基を有するアセチルピロリジン誘導体とをN-アルキル化反応に付し、必要に応じてアルキル付加体の2級アミンを保護若しくは脱保護する方法であり、もう1つの方法は、(i-3)で示される保護されていてもよいアミンを有する酢酸誘導体と、(i-4)で示されるピロリジン誘導体とを縮合反応に付し、必要に応じて縮合体の2級アミンを保護若しくは脱保護する方法である。いずれの反応も、当業者に自明である方法、それに準じた方法、及びそれらの変法を用いて容易に製造することができる。
なお、本製造法の原料化合物となる化合物(i-1)は下記参考例2又は下記参考例7の方法若しくはそれらに準じた方法により、化合物(i-2)は下記参考例4又は下記参考例5の方法若しくはそれらに準じた方法により、化合物(i-3)は下記参考例1乃至下記参考例3の方法若しくはそれらに準じた方法、あるいは下記参考例1、下記参考例2、下記参考例3、下記参考例6及び下記参考例7のいずれかの方法を組み合わせた方法若しくはそれらの準じた方法を組み合わせた方法により、化合物(i-4)はJournal of Organic Chemistry, 41巻, 1653ページ(1976年)の記載の方法若しくはそれに準じた方法により製造することができる。
【0017】
(製造法1)式(I)で示される化合物の製造法
【化9】

本製造法は、上述の化合物(B)を原料として、本発明化合物である式(I)で示される化合物を製造する方法である。
本製造法においては、化合物(B)の反応性誘導体を用いることもでき、反応性誘導体としては、酸クロリド、酸ブロミド等の酸ハライド;酸アジド;N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、p-ニトロフェノール、N-ヒドロキシスクシンイミド等との活性エステル;対称型酸無水物;ピバロイルハライド、p-トルエンスルホン酸ハライド等との混合酸無水物;クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸イソプロピル等のハロ炭酸アルキルエステルと反応させて得られる炭酸エステルとの混合酸無水物;塩化ジフェニルホスホリルやジフェニルホスホリルアジド等と反応させて得られるリン酸系混合酸無水物;等が挙げられる。特に、本製造法においては、化合物(B)とハロ炭酸アルキルエステルとを反応させて得られる炭酸エステルとの混合酸無水物に対してアンモニアを作用させる方法が簡便容易に適用できるため好ましい。なお、化合物(B)を遊離酸で反応させる場合、あるいは活性エステルを単離せずに反応させる場合には、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1,1’-カルボニルビス-1H-イミダゾール、ジエチルホスホリルシアニド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI)等の縮合剤を用いることもできる。
反応は、使用する反応性誘導体や縮合剤によっても異なるが、水;ハロゲン化炭化水素類;芳香族炭化水素類;エーテル類;酢酸エチル(EtOAc)、酢酸イソプロピル(iPrOAc)、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸イソプロピル等のエステル類;アセトニトリル;非プロトン性極性溶媒;又はこれらの混合溶媒等の、反応に不活性な溶媒中、冷却化、冷却乃至室温下又は室温乃至加熱下に行うことができる。
【0018】
(製造法2)式(I)で示される化合物を用いた、式(II)で示される化合物の製造法
【化10】

本製造法は、本発明化合物である式(I)で示される化合物を原料として、式(II)で示される化合物Aを製造する方法である。
本製造法においては、アミノカルボニル基をシアノ基に変換するに際して、五酸化二リン;五塩化リン;塩化ホスホリル;塩化チオニル;p-トルエンスルホニルクロリド、メタンスルホニルクロリド等のスルホニルハライド;ホスゲン;無水酢酸等の酸無水物;クロロ炭酸エチル等のハロ炭酸エステル;イソシアン酸クロロスルホニル;ジシクロヘキシルカルボジイミド等を挙げることができる。
反応は、使用する反応試剤によっても異なるが、芳香族炭化水素類;エーテル類;ハロゲン化炭化水素類;ピリジン;アセトニトリル;又はこれらの混合溶媒等の、反応に不活性な溶媒中、冷却下、冷却乃至室温下又は室温乃至過熱化に行うことができ、反応温度は反応条件に応じて適宜選択することができる。
R1がアミノ基の保護基である場合には、上記のアミノカルボニル基をシアノ基に変換する工程の後、R1を除去する工程に付すことにより、式(II)で示される化合物Aを製造することができる。アミノ基の保護基であるR1を工程する反応としては、上述の「Protective Groups in Organic Synthesis(Third Edition)」に記載されている方法若しくはこれに準じる方法を適用することができ、特に、本工程に付される化合物中に存在するシアノ基、メタンスルホニル基に影響を与えない反応条件、例えば酸性条件を用いて除去できるアミノ基の保護基をR1として採用することが好ましい。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。また、実施例において使用される原料化合物の製造法を参考例として示した。
なお、NMRは(CH3)4Siを内部標準とし、カッコ内に示す溶媒中で測定した1H-NMRにおけるピーク値(ppm)を示す。
【0020】
参考例1
上記特許文献1に記載の方法に従って製造した4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-アミン一塩酸塩0.41 gにアセトニトリル4 mL、N-エチルジイソプロピルアミン0.94 mLを加え、氷冷下撹拌しながらブロモ酢酸エチル0.2 mLを5 ℃以下で加えた。反応液を50 ℃で一晩、さらに60 ℃で一晩加熱撹拌した後、溶媒を減圧下留去した。残渣にEtOAc 5 mL、水道水5 mLを加えて分液し、水層をEtOAc 5 mLで2回抽出し、有機層を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液(以下同様);EtOAc:EtOH=9:1)で精製することにより{[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]アミノ}酢酸エチルエステル0.28 gを茶色油状物として得た。
NMR(CD3OD):1.02(s,3H),1.17(t,3H),1.48-1.62(m,4H),2.73(s,3H),3.06-3.24(m,4H),3.28(s,2H),4.09(ABq,2H).
FAB-MS m/z:279(M+1).
【0021】
参考例2
参考例1の化合物0.99 gに1,4-ジオキサン10 mL、トリエチルアミン0.6 mL、ジ-tert-ブチルジカルボナート1.6 mLを加え、80 ℃で5時間加熱撹拌し、さらにトリエチルアミン0.9 mL、ジ-tert-ブチルジカルボナート2.5 mLを加え80 ℃で二晩加熱撹拌した。反応液に水道水2 mL加えて溶媒を減圧下留去し、残渣にAcOEt 5 mL、水道水5 mLを加えて分液した。有機層を5 % (w/v) 炭酸水素ナトリウム水溶液5 mLで洗浄し、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣にトルエン1 mL、ヘプタン5 mLを加えて結晶化させることにより{(tert-ブトキシカルボニル)[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]アミノ}酢酸エチルエステル1.05 gを淡黄色結晶として得た。
NMR(CDCl3):1.29(t,3H),1.42(s,3H),1.43(s,9H),1.88-1.94(m,2H),2.33-2.40(m,2H),2.80(s,3H),3.17-3.36(m,4H),3.93(s,2H),4.18(ABq,2H).
FAB-MS:m/z:379(M+1).
【0022】
参考例3
参考例2の化合物5.6 gにMeOH 28 mL、10 % (w/v) 水酸化ナトリウム水溶液12 mLを加え、45 ℃で90分間加熱撹拌した。溶媒を減圧下留去し、残渣に水道水30 mL、トルエン30 mLを加えて分液し、水層に氷冷下撹拌しながら1 M塩酸30 mLを加えてpHを酸性にした。クロロホルム100 mLを加え加熱溶解させて分液し、水層をクロロホルム100 mLで2回抽出し、有機層を減圧下留去した。残渣にMeOH 200 mLを加えて溶媒を減圧下留去し、残渣にiPrOH 17 mLを加えて加熱溶解させ、水道水17 mLを加えて結晶化させることにより{(tert-ブトキシカルボニル)[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]アミノ}酢酸4.85 gを淡黄色結晶として得た。
NMR(CDCl3):1.42(s,3H),1.44(s,9H),1.91-1.97(m,2H),2.31-2.37(m,2H),2.79(s,3H),3.15-3.37(m,4H),4.00(s,2H).
FAB-MS:m/z:349(M-1).
【0023】
参考例4
Journal of Organic Chemistry, 41巻, 1653ページ(1976年)に記載の方法により製造できる、(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-カルボン酸メチルエステル一塩酸塩2.51 gにアセトニトリル25 mL、トリエチルアミン4.75 mL、HOBt 2.16 g、参考例3の化合物4.00 gを加え、アセトニトリル15 mLで洗いこんだ。反応液に氷冷下撹拌しながらEDCI 3.06 gを加え、アセトニトリル10 mLで洗いこんだ。反応液を室温で一晩撹拌し、濾過して不溶物を除去した後、溶媒を減圧下留去した。残渣にクロロホルム40 mLを加え、水道水20 mLで2回洗浄し、有機層を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc)で精製することにより(2S,4S)-1-({(tert-ブトキシカルボニル)[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]アミノ}アセチル)-4-フルオロピロリジン-2-カルボン酸メチルエステル5.4 gを無色アモルファスとして得た。
NMR(CDCl3):1.44(s,9H),1.46(s,3H),1.87-2.57(m,6H),2.79,2.83(s,3H),3.14-3.54(m,4H),3.72,3.80(s,3H),3.74-4.15(m,4H),4.64,4.79(d,1H),5.23,5.33(dt,1H).
FAB-MS:m/z:480(M+1).
【0024】
参考例5
(2S,4S)-4-フルオロピロリジン-2-カルボン酸メチルエステル一塩酸塩5.0 gにアセトニトリル25 mL、N-エチルジイソプロピルアミン10 mLを加え、氷冷下撹拌しながら塩化クロロアセチル2.4 mLを18 ℃以下で加え、アセトニトリル5 mLで洗いこんだ。反応液を7 ℃以下で3時間撹拌し、溶媒を減圧下留去した。残渣にクロロホルム25 mL、水道水25 mLを加えて分液し、水層をクロロホルム15 mLで2回抽出し、有機層を減圧下留去した。残渣をトルエン50 mLで3回共沸し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:MeOH=20:1)で精製することにより(2S,4S)-1-(クロロアセチル)-4-フルオロピロリジン-2-カルボン酸メチルエステル5.35 gを無色油状物として得た。
NMR(DMSO-d6):2.23-2.55(m,2H),3.52-3.97(m,2H),3.63,3.68(s,3H),4.30,4.42(ABq,2H),4.62,4.93(d,1H),5.32,5.40(d,1H).
ESI-MS:m/z:224(M+1).
【0025】
参考例6
参考例5の化合物4.97 gにアセトニトリル40 mL、4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-アミン一塩酸塩5.85 g、N-エチルジイソプロピルアミン11.6 mLを加え、80 ℃で一晩加熱撹拌した。溶媒を減圧下留去し、残渣にクロロホルム50 mL、水道水50 mLを加えて分液し、水層をクロロホルム25 mLで1回抽出した。有機層を1 % (v/v) 酢酸20 mLで3回洗浄し、水層をクロロホルム20 mLで3回抽出し、有機層を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:MeOH=10:1)で精製することにより(2S,4S)-4-フルオロ-1-({[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]アミノ}アセチル)ピロジリン-2-カルボン酸メチルエステル4.41 gを無色アモルファスとして得た。
NMR(CDCl3):1.09,1.12(s,3H),1.59-1.70(m,4H),2.26-2.59(m,2H),2.78(s,3H),3.15-3.36(m,4H),3.35(ABq,2H),3.69-3.92(m,2H),3.75,3.79(s,3H),4.58,4.80(d,1H),5.25,5.33(dt,1H).
ESI-MS:m/z:380(M+1).
【0026】
参考例7
参考例6の化合物4.22 gに1,4-ジオキサン40 mL、ジ-tert-ブチルジカルボナート13 mLを加え、還流温度にて3日間加熱撹拌した。反応液にMeOH 10 mLを加えて溶媒を減圧下留去し、残渣にクロロホルム40 mLを加え、水道水20 mLで2回洗浄した後、有機層を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(EtOAc)で精製することにより(2S,4S)-1-({(tert-ブトキシカルボニル)[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]アミノ}アセチル)-4-フルオロピロリジン-2-カルボン酸メチルエステル4.88 gを無色アモルファスとして得た。
NMR(CDCl3):1.44(s,9H),1.46(s,3H),1.87-2.56(m,6H),2.79,2.83(s,3H),3.15-3.54(m,4H),3.72,3.80(s,3H),3.74-4.15(m,4H),4.63,4.79(d,1H),5.23,5.33(dt,1H).
FAB-MS:m/z:480(M+1).
【0027】
参考例8
参考例4若しくは参考例7に従って製造された化合物10.12 gにMeOH 100 mL、25 % (w/v) 水酸化ナトリウム水溶液10 mL、水道水20 mLを加え、45 ℃で130分間加熱撹拌した。溶媒を減圧下留去し、残渣にトルエン50 mL、水道水50 mLを加えて分液し、水層に氷冷下撹拌しながら1 M塩酸62.5 mLを加えてpHを酸性にした。クロロホルム50 mLを加えて分液し、水層をクロロホルム50 mLで2回抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濾過した後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:MeOH:AcOH=10:1:0.2)で精製することにより(2S,4S)-1-({(tert-ブトキシカルボニル)[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]アミノ}アセチル)-4-フルオロピロリジン-2-カルボン酸9.0 gを無色アモルファスとして得た。
NMR(CDCl3):1.43(s,9H),1.44(s,3H),1.86-2.74(m,6H),2.77,2.82(s,3H),3.11-3.51(m,4H),3.69-4.15(m,4H),4.64,4.82(d,1H),5.24,5.34(d,1H).
FAB-MS:m/z:466(M+1).
【0028】
実施例1
参考例8の化合物5.0 gにiPrOAc 10 mL、トリエチルアミン1.8 mLを加え、撹拌して溶解させた。クロロ炭酸エチル1.25 mLのiPrOAc溶液(25 mL)に、氷冷下撹拌しながら反応液を5 ℃以下で加え、iPrOAc 5 mLで洗いこんだ。25 %アンモニア水15 mLとiPrOAc 15 mLの混合溶液に、氷浴下撹拌しながら反応液を6 ℃以下で加え、iPrOAc 5.0 mLで洗いこみ、5 ℃以下で2時間撹拌した。反応液を分液し、水層をiPrOAc 10 mLで1回抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濾過した後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:MeOH:AcOH=10:1:0.2)で精製することによりtert-ブチル{2-[(2S,4S)-2-(アミノカルボニル)-4-フルオロピロリジン-1-イル]-2-オキソエチル}[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]カルバマート4.67 gを無色アモルファスとして得た。
NMR(CDCl3):1.44(s,9H),1.45(s,3H),1.89-2.87(m,6H),2.81(s,3H),3.11-3.45(m,4H),3.70-4.05(m,2H),3.96(ABq,2H),4.51,4.72(d,1H),5.26,5.32(dt,1H),6.31,6.45(brs,1H),6.94,7.05(brs,1H).
FAB-MS:m/z:465(M+1).
【0029】
実施例2
実施例1の化合物4.5 gのアセトニトリル溶液(18 mL)に氷浴下DMF 0.75 mL、ピリジン4.7 mL加えて10分間撹拌した後、塩化チオニル1.05 mLを加え、アセトニトリル4.5 mLで洗いこみ、7 ℃以下で2時間撹拌した。さらに塩化チオニル0.35 mLを加え10 ℃以下で1時間撹拌した後、溶媒を減圧下留去した。残渣にクロロホルム180 mL、5 % (w/v) 炭酸水素ナトリウム水溶液180 mLを加えてしばらく撹拌した後、濾過して不溶物を除去した。濾液を分液し、水層をクロロホルム100 mLで2回抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濾過した後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:MeOH:AcOH=10:1:0.2)で精製した後、iPrOH 18 mL、水道水9 mLを加えて結晶化させることによりtert-ブチル{2-[(2S,4S)-2-シアノ-4-フルオロピロリジン-1-イル]-2-オキソエチル}[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]カルバマート2.69 gを淡茶色結晶として得た。
NMR(CDCl3):1.44(s,9H),1.47(s,3H),1.86-2.77(m,6H),2.82(s,3H),3.13-3.50(m,4H),3.65-4.21(m,2H),3.97(s,2H),4.94(d,1H),5.35,5.44(d,1H).
FAB-MS:m/z:447(M+1).
【0030】
実施例3
実施例2の化合物2.0 gにジクロロメタン20 mLを加え、40 ℃付近で加熱撹拌しながらp-トルエンスルホン酸一水和物1.27 gを加えた。、反応液を40 ℃付近で2時間加熱撹拌した後、析出した結晶を濾過することにより(2S,4S)-4-フルオロ-1-({[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]アミノ}アセチル)ピロリジン-2-カルボニトリル一p-トルエンスルホン酸塩一水和物2.21 gを白色結晶として得た。
NMR(D2O):1.39,1.41(s,3H),1.83-1.95(m,4H),2.30(s,3H),2.32-2.76(m,2H),2.92(s,3H),2.94-2.97(m,2H),3.62-4.20(m,4H),4.01(ABq,2H),4.96,5.13(d,1H),5.42,5.47(dt,1H),7.27(d,2H),7.59(d,2H).
ESI-MS:m/z:347(M+1).
【0031】
実施例4
実施例3の化合物2.0 gに5 % (w/v) 炭酸水素ナトリウム水溶液30 mLを加え、加温して溶解させた。反応液にクロロホルム20 mLを加えて分液し、水層をクロロホルム20 mLで2回抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥、濾過した後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:MeOH:25 %アンモニア水=10:1.5:0.2)で精製することにより(2S,4S)-4-フルオロ-1-({[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]アミノ}アセチル)ピロリジン-2-カルボニトリル0.99 gを無色アモルファスとして得た。
NMR(CDCl3):1.12,1.14(s,3H),1.67(brs,4H),2.26-2.73(m,2H),2.78(s,3H),3.13-4.06(m,6H),3.33(ABq,2H),4.88,4.95(d,1H),5.37,5.45(dt,1H).
ESI-MS:m/z:347(M+1).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示される2-アミノカルボニル-4-フルオロピロリジン誘導体、又はその塩。
【化1】

[式中、Meはメチルを示し、R1はH若しくはアミノ基の保護基を示す。]
【請求項2】
R1がアミノ基の保護基である、請求項1の化合物。
【請求項3】
R1が、低級アルキルオキシカルボニル、若しくは低級アルキルカルボニルである請求項2の化合物。
【請求項4】
式(II)
【化2】

[式中、Meはメチルを示す。]
で示される4-フルオロ-1-({[4-メチル-1-(メタンスルホニル)ピペリジン-4-イル]アミノ}アセチル)ピロリジン-2-カルボニトリル又はその塩の製造法であって、請求項1記載の式(I)で示される化合物のアミノカルボニル基をシアノ基に変換する工程、及び、R1がアミノ基の保護基である場合には、アミノ基の保護基を除去する工程を含むことを特徴とする製造法。