説明

2−ハロ−4−ニトロイミダゾール及びその中間体の製造方法

本発明は、2−ハロ−4−ニトロイミダゾール及びその中間体を製造する方法に関する。更に、本発明は、4−ニトロイミダゾールをニトロ化反応に供することを含む1,4−ジニトロイミダゾールを製造方法に関する。更に、本発明は、イミダゾールをニトロ化反応に供することを含む4−ニトロイミダゾールを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−ハロ−4−ニトロイミダゾール及びその中間体を製造する方法に関する。更に、本発明は、4−ニトロイミダゾールをニトロ化反応に供することを含む1,4−ジニトロイミダゾールを製造する方法に関する。更に、本発明は、イミダゾールをニトロ化反応に供することを含む4−ニトロイミダゾールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−ハロ−4−ニトロイミダゾールは、特に様々な医薬又は農薬の合成のための中間体として有用な化合物である。とりわけ、それは抗結核剤を製造するための中間体として有用である。
【0003】
これらの化合物を製造するための効率的及び経済的方法を開発する必要性が存在する。
【0004】
非特許文献1は、4−ニトロイミダゾールを酢酸中で硝酸と反応させて1,4−ジニトロイミダゾールを製造する方法を開示している。1,4−ジニトロイミダゾールは、次に、ジクロロメタンを用いて抽出する。2−ハロ−4−ニトロイミダゾールをどのように製造するかについての開示はない。
【0005】
非特許文献2は、ニトロイミダゾールを氷酢酸中で発煙硝酸と反応させ、続いて無水酢酸を添加することによる1,4−ジニトロイミダゾールの合成を開示している。得られた化合物は、次に、その溶液から塩化エチレンを用いて抽出する。非特許文献2は、また、2,4−ジニトロイミダゾールを得るために1,4−ジニトロイミダゾールを120℃で加熱する工程も開示している。2−ハロ−4−ニトロイミダゾールをどのように製造するかについての開示はない。
【0006】
特許文献1は、2,4−ジニトロイミダゾールの製造方法を開示している。第1の工程において、1,4−ジニトロイミダゾールは、無水酢酸の存在下での、氷酢酸中の4−ニトロイミダゾールの硝酸との反応によって製造される。この化合物は、次に沈殿させ、ろ過する。第2の工程において、1,4−ジニトロイミダゾールをクロロベンゼン中で加熱することによって2,4−ジニトロイミダゾールが製造される。得られた収率を算出することができるがやや低値(63%)である。
【0007】
非特許文献3は、1,4−ジニトロイミダゾールの熱異性化による2,4−ジニトロイミダゾールの製法を開示している。この文献は、また、2,4−ジニトロイミダゾールをそれぞれ濃塩酸及び濃臭化水素酸と還流下で反応させることによる2−クロロ−4−ニトロイミダゾール及び2−ブロモ−4−ニトロイミダゾールの製法も開示している(別の反応に関して)。しかし、その収率はやや低値(2−クロロ−4−ニトロイミダゾール67%、2−ブロモ−4−ニトロイミダゾール30%)である。
【0008】
特許文献2は、4−ニトロイミダゾールのヨウ素化及び次いでその得られた化合物の還元を含む2−クロロ−4−ニトロイミダゾール又は2−ブロモ−4−ニトロイミダゾールの製造方法を開示している。
【0009】
特許文献3は、1−アルコキシアルキル−2−ブロモ−4−ニトロイミダゾールの塩化水素との反応を含む2−クロロ−4−ニトロイミダゾールの製造方法を開示している。
【0010】
2−クロロ−4−ニトロイミダゾール又は2−ブロモ−4−ニトロイミダゾールの従来の製造方法に関しては、下記式(1)で示されるように、4−ニトロイミダゾール(I)をニトロ化して得られた1,4−ジニトロイミダゾール(II)を単離及び乾燥していた。次いで、1,4−ジニトロイミダゾール(II)を熱転位して得られた2,4−ジニトロイミダゾール(III)を単離及び乾燥し、最後に2,4−ジニトロイミダゾール(III)を塩酸又は臭化水素酸により処理して、2−クロロ−4−ニトロイミダゾール(IV)又は2−ブロモ−4−ニトロイミダゾール(V)を得る合成方法が知られている。
【0011】
【化1】

【0012】
4−ニトロイミダゾールからの1,4−ジニトロイミダゾールの製造方法、1,4−ジニトロイミダゾールからの2,4−ジニトロイミダゾールの製造方法、2,4−ジニトロイミダゾールからの2−クロロ−4−ニトロイミダゾール又は2−ブロモ−4−ニトロイミダゾールの製造方法に関しては以下の文献(特許文献1及び非特許文献3〜5)に記載された方法が知られている。
【0013】
非特許文献4における4−ニトロイミダゾールから1,4−ジニトロイミダゾールを製造する方法に関しては、4−ニトロイミダゾールを酢酸に添加し、比重1.5の硝酸を滴下した後、無水酢酸を添加してニトロ化反応を行う。次いでその反応溶液をジクロロメタンにより抽出し、そのジクロロメタン層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、ジクロロメタンを減圧留去することで、1,4−ジニトロイミダゾールを収率71.5%で製造している。
【0014】
非特許文献5においては、氷酢酸中の4−ニトロイミダゾールに100質量%の硝酸を滴下して加え、更に無水酢酸を滴下してニトロ化反応を行い、次いで砕いた氷に反応溶液を加え、ろ過、洗浄及び減圧乾燥を行うことにより、1,4−ジニトロイミダゾールを52.1%の収率で製造している。
【0015】
特許文献4においては、氷酢酸中に溶解した4−ニトロイミダゾールに98質量%の硝酸を滴下して加え、更に無水酢酸を滴下してニトロ化反応を行い、次いで砕いた氷にその反応溶液を加え、ろ過及び乾燥を行うことで、1,4−ジニトロイミダゾールを69.1%の収率で製造している。
【0016】
また、非特許文献5においては、1,4−ジニトロイミダゾールから2,4−ジニトロイミダゾールを製造する方法として、単離及び乾燥させた1,4−ジニトロイミダゾールを、クロロベンゼン中で115℃にて熱転位反応させ、その後、その溶液を濃縮して結晶化させている。その後、結晶をろ過し、60℃以下で減圧乾燥することにより、2,4−ジニトロイミダゾールを87.5%の収率で製造している。
【0017】
非特許文献3においては、単離及び乾燥した2,4−ジニトロイミダゾールを塩酸又は臭化水素酸で還流することにより塩素化又は臭素化反応をさせ、2−クロロ−4−ニトロイミダゾール及び2−ブロモ−4−ニトロイミダゾールをそれぞれ67%及び30%の収率で製造している。
【0018】
特許文献4においては、単離及び乾燥させた1,4−ジニトロイミダゾールを95〜98℃の範囲で加熱して熱転位反応させ、2,4−ジニトロイミダゾールを製造している。
【0019】
従来、2−クロロ−4−ニトロイミダゾールを合成するための一般的方法に関しては、次の非特許文献3に記載されている方法が知られている。
【0020】
非特許文献3においては、2,4−ジニトロイミダゾールに濃塩酸を添加した後、得られた溶液を3時間還流して塩素化反応を行い、冷却、ろ過及び洗浄することで2−クロロ−4−ニトロイミダゾールを67%の収率で製造している。
【0021】
1,4−ジニトロイミダゾールは、様々な医薬、農薬及び火薬の中間体として幅広く使用されている物質である。従来採用されている、1,4−ジニトロイミダゾールを合成するための一般的な方法としては下記文献(非特許文献4及び5、並びに特許文献1)に記載されている方法が知られている。
【0022】
非特許文献4においては、4−ニトロイミダゾールを酢酸に添加し、比重1.5の硝酸を滴下した後、無水酢酸を添加してニトロ化反応を行い、次いでその反応溶液をジクロロメタンで抽出し、そのジクロロメタン層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、ジクロロメタンを減圧留去することにより、1,4−ジニトロイミダゾールを71.5%の収率で製造している。ここで、日本化学会編の化学便覧基礎編IIによれば、25℃における硝酸の比重が1.5となる質量%濃度は、比重の値の小数点第2位を四捨五入すると、82〜100質量%の範囲内となる。これによると、非特許文献4で使用している硝酸の濃度は、82〜100質量%の範囲内であることが理解できる。
【0023】
非特許文献5においては、氷酢酸中の4−ニトロイミダゾールに100質量%の硝酸を滴下して加え、更に無水酢酸をそこに滴下して加えてニトロ化反応を行い、次いで砕いた氷に反応溶液を加え、ろ過、洗浄及び減圧乾燥を行うことにより、1,4−ジニトロイミダゾールを52.1%の収率で製造している。
【0024】
特許文献1においては、氷酢酸中に溶解した4−ニトロイミダゾールに98質量%の硝酸を滴下し、更に無水酢酸を滴下してニトロ化反応を行い、次いで砕いた氷の中に反応溶液を加え、ろ過、乾燥を行うことにより、1,4−ジニトロイミダゾールを69.1%の収率で製造している。
【0025】
イミダゾール(I)をニトロ化して4−ニトロイミダゾール(II)を得る従来の方法としては、次の文献(非特許文献4及び5)に記載されている方法が知られている。
【0026】
非特許文献4においては、イミダゾールに硝酸を30〜40℃で加えた後、その溶液を氷で冷却しながら濃硫酸を滴下し、75℃まで昇温し、1時間撹拌する。次にこの溶液を冷却し、硝酸と濃硫酸の混合溶液を加える。この溶液を更に1時間加熱撹拌して、その反応液を氷中に注ぎ、ろ過、洗浄及び乾燥することによって4−ニトロイミダゾールを73%の収率で製造している。
【0027】
非特許文献5においては、イミダゾールを硝酸に溶解した後、その溶液を0〜5℃に冷却し、濃硫酸を滴下する。この溶液を2時間還流した後、その溶液を室温まで冷却してから氷に注ぎ、ろ過、洗浄及び乾燥することによって4−ニトロイミダゾールを60%の収率で製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】米国特許第5,387,297号
【特許文献2】欧州特許第1−720838号
【特許文献3】WO2006035960A
【非特許文献】
【0029】
【非特許文献1】Grimmettら、Aust.J.Chem.、42巻、1281頁、1989年
【非特許文献2】Suwinskiら、Polish Journal of Chemistry、「ニトロイミダゾール、パートIX(Nitroimidazoles, Part IX)」、XI、61巻、913頁、1987年
【非特許文献3】Jerzy SUWINSKI、Ewa SALWINSKA、Jan WATRAS及びMaria WIDEL、Polish Journal of Chemistry、56巻、1261〜1272頁(1982年)
【非特許文献4】Novikov S.S.、Khemel’ nitskii L.I.、Lebedev O. V.、Sevast’ yanova V.V.、Epishina L.V.、Khim.Geterotski.Soedin.、No.4、503〜507頁(1970年)
【非特許文献5】S.Bulusu、R.Damavarapu、J.R.Autera、R.Behrens,Jr.、L.M.Minier、J.Villanueva及びJayasuriya、T.Axenrod、J.Phys.Chem.99巻、5009〜5015頁(1995年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
第1に、本発明の目的は、2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの既存の方法より効率的な製造方法を提供することである。
第2に、1,4−ジニトロイミダゾール及び2,4−ジニトロイミダゾールの安全性に関する本発明者らによる評価の結果を表1に示す。本発明者らは、1,4−ジニトロイミダゾールの熱安定性をDSCにより評価し、その結果、1,4−ジニトロイミダゾールの分解開始温度は156℃であることが明らかとなり、それは1,4−ジニトロイミダゾールが著しく低い分解温度、したがって低い熱安定性を有していることを意味する。また、1,4−ジニトロイミダゾールのJIS K 4810に従った落槌感度試験では2級と判定され、感度が著しく高いことが確認された。このことから、1,4−ジニトロイミダゾールの乾燥固体の取り扱いにおいて十分な安全性を確保することは極めて困難であることが分かる。
【0031】
また、2,4−ジニトロイミダゾールの分解温度は272℃であり、熱的には安定であると考えられるが、その分解熱は4076J/gと高く、火薬類と同等の熱量を持つことから衝撃等による万一の分解、爆発の際は甚大な被害を生じるおそれがある。
【0032】
【表1】

【0033】
非特許文献3〜5及び特許文献1に記載されている合成方法は、全て、1,4−ジニトロイミダゾール又は2,4−ジニトロイミダゾールを単離及び乾燥させ、その化合物を、それぞれ2,4−ジニトロイミダゾール又は2−クロロ−4−ニトロイミダゾールを合成原料として使用している。
【0034】
これらの方法においては、1,4−ジニトロイミダゾール及び2,4−ジニトロイミダゾールは共に乾燥固体として取り扱わねばならず、過度の摩擦や衝撃が乾燥固体に加わった場合、分解、発火又は爆発のおそれがあり、それ故これらの方法は製造における安全性の面から好ましいとは言えない。
【0035】
上述した安全性の観点から、1,4−ジニトロイミダゾール又は2,4−ジニトロイミダゾールは、単離及び乾燥せずに次工程の反応を行うことが望ましいが、それぞれの化合物を製造する際に生じる副生成物等の不純物が次工程でも混在することになる。最終化合物の2−クロロ−4−ニトロイミダゾール及び2−ブロモ−4−ニトロイミダゾールを混入することになる不純物としては、主に4−ニトロイミダゾールが挙げられ、それは、1,4−ジニトロイミダゾールを製造する際の未反応原料として残存し、又は1,4−ジニトロイミダゾールの加水分解によって生じる。2−クロロ−4−ニトロイミダゾール及び2−ブロモ−4−ニトロイミダゾールは医薬品の中間体として用いられるため、副生成物等の不純物の混入は避けるべきである。
【0036】
上記の事情に鑑み、本発明の目的は、分解及び/又は爆発等のリスクを低減して、安全に、4−ニトロイミダゾールから、2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを製造する方法を提供することである。
【0037】
更に別の目的は、分解及び/又は爆発等のリスクを低減して、安全に、且つ、高純度で4−ニトロイミダゾールから、2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを製造する方法を提供することである。
【0038】
第3に、非特許文献3に記載された方法によれば、目的化合物である2−クロロ−4−ニトロイミダゾールの収率は67%と低く、そのような低収率は工業的な規模で製造する上で好ましくなく、更なる収率向上が望まれる。
【0039】
実際に、本発明者らが、非特許文献3に記載された方法に従って2,4−ジニトロイミダゾールを濃塩酸で塩素化反応を行い、次いで収率向上のために反応液を0℃以下で長時間冷却したが、収率の大幅な改善は見られず冷却による収率向上には限界があることが確認された。
【0040】
上記の事情に鑑み、本発明の目的は、2,4−ジニトロイミダゾールをハロゲン化剤によりハロゲン化反応に供することにより2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを製造する方法において、簡便に、且つ、収率良く、2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを製造する方法を提供することである。
【0041】
第4に、上記文献に記載されているいずれの方法においても、4−ニトロイミダゾールを、酢酸に溶解し、次いで80質量%以上の高濃度の硝酸と無水酢酸を添加して1,4−ジニトロイミダゾールを製造している。
【0042】
実際に、本発明者らが、上記文献に記載されている方法に従って、1,4−ジニトロイミダゾールの製造を実施したところ、4−ニトロイミダゾールの酢酸溶液に硝酸を滴下した際に固体が析出し、粘度の高いスラリー状態となった。これに伴って、撹拌羽根に過剰な負荷がかかり、撹拌羽根の破損、撹拌停止の事態が生じた。
【0043】
また、このスラリー状態で無水酢酸を滴下すると、撹拌が確実に行われずに局所的なニトロ化反応が起こり得、局部的に多大な反応熱を生じ得ることが考えられる。本発明者らが1,4−ジニトロイミダゾールの示差走査熱量測定DSCによる熱安定性を評価した結果、1,4−ジニトロイミダゾールの分解開始温度が156℃であることが明らかとなり、これは1,4−ジニトロイミダゾールが、一般的なニトロ化合物と比較して著しく分解温度が低く、したがって熱安定性が低いことを意味する。従って、局部的に多大な反応熱が生じた場合、熱安定性が極めて低い1,4−ジニトロイミダゾールは、自己分解を起こし、発火及び爆発に至るおそれがある。
【0044】
更に、硝酸の濃度が70質量%を超えると、その酸化力が強過ぎて、配管、ポンプ及び容器の材質が制限される傾向があることから、1,4−ジニトロイミダゾールを工業的に製造することが困難となる。また、70質量%を超える濃度を有する硝酸は、一酸化窒素ガスや二酸化窒素ガスなどの人体に有害なガスを発生するおそれがあり、取り扱いの面でも好ましくない。
【0045】
これらの問題を回避するために、本発明者は、上記文献に記載された従来法において、80質量%以上の高濃度を有する硝酸の代わりに質量%以下の濃度を有する硝酸を用いて4−ニトロイミダゾールのニトロ化反応を行ったところ、1,4−ジニトロイミダゾールの収率が著しく低下した。
【0046】
上記の事情に鑑み、本発明の目的は、酸化力及び有害性が高く、工業的製造において不適な高濃度の硝酸を用いることなく、安全に、且つ、収率良く、1,4−ジニトロイミダゾールを製造する方法を提供することである。
【0047】
第5に、上記文献に記載されている4−ニトロイミダゾールの製造方法においては、0℃〜40℃のイミダゾール、硝酸及び濃硫酸の混液の温度は、75℃以上まで昇温させる。これらの方法においては75℃以上に昇温する過程で、イミダゾールのニトロ化反応が急激に進行し、その反応熱により急激に温度が上昇して暴走反応を起こすおそれがある。
【0048】
実際に、本発明者らが、上記文献の方法に従って小規模で製造を行ったところ,イミダゾール、硫酸及び濃硝酸を添加した後、75℃へ昇温する過程によって途中からイミダゾールのニトロ化反応が急激に進行し、反応液の温度を制御できない暴走現象が観察された。
【0049】
このように反応液の温度制御が不能になった場合、反応液の温度が硝酸や濃硫酸の沸点に達して、多量の酸性ガスが急激に発生し、爆発等の危険性を生じるおそれがある。
【0050】
上記の事情に鑑み、本発明の目的は、イミダゾールをニトロ化反応に供して4−ニトロイミダゾールを製造する方法において、急激な反応を生じることなく、安全に、4−ニトロイミダゾールを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0051】
本発明の目的は、式(I)
【化2】


(式中、Xは、Cl又はBrである)の化合物の製造方法であって、
(i)式(II)
【化3】


の化合物を、酢酸と無水酢酸の混合物中の硝酸を用いてニトロ化して、式(III)
【化4】


の化合物を得る工程と、
(ii)式(III)の化合物を式(IV)
【化5】


の化合物に熱転位させる工程と、
(iii)式(IV)の化合物を塩素化剤又は臭素化剤と反応させる工程と、
を含む上記製造方法によって達成される。
【0052】
好ましい実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含む。
【0053】
一実施形態によれば、該方法は、連続的である。
【0054】
一実施形態によれば、該方法は、工程(i)の後に、1,4−ジニトロイミダゾールを好ましくはジクロロメタンにより抽出する工程を更に含む。
【0055】
一実施形態によれば、該方法は、工程(i)の後に、好ましくはイオン性水溶液によりクエンチする工程を更に含む。
【0056】
一実施形態によれば、クエンチ及び抽出の工程は同時に行われる。
【0057】
一実施形態によれば、該熱転位反応温度は、100℃と150℃の間、好ましくは120℃と130℃の間、より好ましくは125℃である。
【0058】
一実施形態によれば、該熱転位は、還流下のクロロベンゼン中で行われる。
【0059】
一実施形態によれば、該塩素化剤は、塩酸である。
【0060】
一実施形態によれば、該臭素化剤は、臭化水素酸である。
【0061】
一実施形態によれば、工程(i)の後に該反応混合物の連続的な洗浄工程が続く。
【0062】
一実施形態によれば、工程(iii)は、60℃と150℃の間、好ましくは100℃と110℃の間の温度で行われる。
【0063】
本発明の別の目的は、抗結核剤の製造方法であって、
(i)式(II)の化合物を、酢酸と無水酢酸の混合物中の硝酸を用いてニトロ化して式(III)の化合物を得る工程と、
(ii)式(III)の化合物を、式(IV)の化合物に熱転位させる工程と、
(iii)式(IV)の化合物を、塩素化剤又は臭素化剤と反応させて式(i)の化合物を得る工程と、
(iv)式(I)の化合物を、2−メチルオキシラン−2−イルメチル−4−ニトロベンゾエートと反応させる工程と、
(v)工程(iv)で得られた化合物を、塩化メタンスルホニルと反応させる工程と、
(vi)工程(v)で得られた化合物を、閉環させる工程と、
(vii)工程(vi)の化合物を、
【化6】


である式RHの化合物と反応させて式(VII)
【化7】


の化合物を得る工程と、
(viii)式(VII)の化合物を、閉環させて式(VIII)
【化8】


の化合物を得る工程と、
を含む。
【0064】
本発明の更なる特徴及び利点は、非限定の例として与えられる以下の本発明の実施形態の説明から明らかとなろう。
【0065】
更にまた、本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、2−ハロ−4−ニトロイミダゾールは、4−ニトロイミダゾールから、
(i)4−ニトロイミダゾールをニトロ化して1,4−ジニトロイミダゾールを得る工程と、
(ii)前記1,4−ジニトロイミダゾールを単離又は乾燥する操作なしで、溶媒に溶解又は溶媒で湿潤した状態で熱転位反応を行うことにより2,4−ジニトロイミダゾールを得る工程と、
(iii)前記2,4−ジニトロイミダゾールを前記熱転位反応の溶媒で湿潤した状態でハロゲン化剤を用いてハロゲン化する工程と、
を含む方法によって、爆発等のリスクを低減して安全に製造できることを見出した。
【0066】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの製造方法であって、
(i)4−ニトロイミダゾールをニトロ化して1,4−ジニトロイミダゾールを得る工程と、
(ii)前記1,4−ジニトロイミダゾールを単離又は乾燥する操作なしで、溶媒に溶解又は溶媒で湿潤した状態で熱転位反応を行うことにより2,4−ジニトロイミダゾールを得る工程と、
(iii)前記2,4−ジニトロイミダゾールを前記熱転位反応の溶媒で湿潤した状態でハロゲン化剤を用いてハロゲン化する工程と、
を含む上記製造方法。
[2]
(iv)2,4−ジニトロイミダゾールのハロゲン化によって得られた2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを水及び/又はC3以下のアルコールを溶媒として使用して再結晶させる工程を更に含む、上記[1]に記載の製造方法。
[3]
前記工程(iv)が、2−ハロ−4−ニトロイミダゾール100質量部に対して、10〜40質量部の水及び/又はC3以下のアルコール中に2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを加熱溶解した後、その溶液を再結晶させるために冷却する工程である上記[2]に記載の製造方法。
[4]
前記工程(ii)において1,4−ジニトロイミダゾールを溶解又は湿潤する溶媒が、熱転位反応における溶媒と同一である、上記[1]から[3]までのいずれかに記載の製造方法。
[5]
前記工程(ii)において1,4−ジニトロイミダゾールを溶解又は湿潤する溶媒が、水と分離し、且つ95℃以上の沸点を有する有機溶媒である、上記[1]から[4]までのいずれかに記載の製造方法。
[6]
前記工程(iii)が、2,4−ジニトロイミダゾール100質量部に対して、2,4−ジニトロイミダゾールを5質量部以上の熱転位反応の溶媒で湿潤した状態で、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化する工程である、上記[1]から[5]までのいずれかに記載の製造方法。
【0067】
更に、本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、2−ハロ−4−ニトロイミダゾールは、驚くべきことに、2,4−ジニトロイミダゾールのハロゲン化反応後の反応液に水を加えることで、簡便、且つ、高収率で製造できることを見出し、本発明者は本発明を完成させた。
【0068】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
[7]
2,4−ジニトロイミダゾールをハロゲン化剤によりハロゲン化反応に供することにより2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを製造する方法であって、ハロゲン化反応後の反応液に水を加えて2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを析出させる工程を含む、上記製造方法。
[8]
水が、2,4−ジニトロイミダゾールのハロゲン化反応後の反応液に、使用したハロゲン化剤の100質量部に対して25〜200質量部の量で加えられる、上記[7]に記載の製造方法。
[9]
ハロゲン化剤が、2,4−ジニトロイミダゾールのハロゲン化反応のために2,4−ジニトロイミダゾール1モルに対して5〜20モルの量で使用される、上記[7]又は[8]に記載の製造方法。
[10]
ハロゲン化剤が、塩酸又は臭化水素酸である、上記[7]から[9]までのいずれかに記載の製造方法。
[11]
塩酸の濃度が、20〜38質量%である、上記[10]に記載の製造方法。
[12]
臭化水素酸の濃度が、20〜49質量%である、上記[10]に記載の製造方法。
【0069】
更に、本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意研究を行い、4−ニトロイミダゾールを無水酢酸と50〜70質量%の濃度を有する硝酸によりニトロ化する、4−ニトロイミダゾールをニトロ化反応に供する工程を含む、1,4−ジニトロイミダゾールの製造方法によって、高濃度を有する硝酸を使用せずに、1,4−ジニトロイミダゾールを、安全に、且つ、高収率で製造することができることを見出すことによって達成された。
【0070】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
[13]
4−ニトロイミダゾールをニトロ化反応に供する工程を含む1,4−ジニトロイミダゾールの製造方法であって、4−ニトロイミダゾールを、無水酢酸と50〜70質量%の濃度を有する硝酸によりニトロ化する上記製造方法。
[14]
無水酢酸の量が、1モルの硝酸に対して2.5〜22.5モルの量で使用される、上記[13]に記載の1,4−ジニトロイミダゾールの製造方法。
[15]
硝酸の量が、1モルの4−ニトロイミダゾールに対して1〜5モルの量で使用される、上記[13]又は[14]に記載の1,4−ジニトロイミダゾールの製造方法。
[16]
ニトロ化反応が、15〜30℃の反応温度で行われる、上記[13]から[15]までのいずれかに記載の1,4−ジニトロイミダゾールの製造方法。
【0071】
更に、本発明者は、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、イミダゾールをニトロ化反応に供する工程を含み、ニトロ化反応は、イミダゾールの硫酸溶液を65〜110℃に加温した後に、硝酸を加えることによって行うか、又は、前記ニトロ化反応は、イミダゾールの硝酸溶液を65〜110℃に加温した後に、そこに硫酸を加えることによって行う、4−ニトロイミダゾールの製造方法によって、急激な反応を生じることなく、安全に、製造することができることを見出し、かくして本発明を完成した。
【0072】
即ち、本発明は、次のとおりである。
[17]
イミダゾールをニトロ化反応に供する工程を含む4−ニトロイミダゾールの製造方法であって、前記ニトロ化反応は、イミダゾールの硫酸溶液を65〜110℃に加温した後に、硝酸を加えることによって行われるか、又は、前記ニトロ化反応は、イミダゾールの硝酸溶液を65〜110℃に加温した後に、硫酸を加えることによって行われる、上記4−ニトロイミダゾールの製造方法。
[18]
加温前にイミダゾールを溶解する硫酸又は硝酸の量が、1モルのイミダゾールに対して2.5〜5モルの量である、上記[17]に記載の4−ニトロイミダゾールの製造方法。
[19]
硫酸の濃度が、95〜100質量%である、上記[17]又は[18]に記載の4−ニトロイミダゾールの製造方法。
[20]
硝酸の濃度が、50〜70質量%である、上記[17]から[19]までのいずれかに記載の4−ニトロイミダゾールの製造方法。
[21]
加温後にイミダゾールの硫酸溶液又は硝酸溶液に添加する硫酸又は硝酸の量が、加温前にイミダゾールを溶解する硫酸又は硝酸1モルに対して0.5〜1.0モルの量である、上記[17]から[20]までのいずれかに記載の4−ニトロイミダゾールの製造方法。
【発明の効果】
【0073】
本発明によれば、2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを4−ニトロイミダゾールから従来の方法より効率的に製造することができる。
【0074】
本発明によれば、2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを4−ニトロイミダゾールから、分解及び/又は爆発等のリスクを低減して、安全に、製造することができる。
【0075】
更には、2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを4−ニトロイミダゾールから、高純度で、分解及び/又は爆発等のリスクを低減して、安全に、製造することができる。
【0076】
更に、本発明によれば、2,4−ジニトロイミダゾールをハロゲン化剤によりハロゲン化反応に供することにより2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを製造する方法において、簡便に、且つ、高い収率で2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを製造する方法を提供することができる。
【0077】
更に、本発明によれば、4−ニトロイミダゾールをニトロ化反応に供する工程を含む1,4−ジニトロイミダゾールの製造方法において、高い酸化力及び有害性を有しており、工業的製造において不適な高濃度の硝酸を用いることなく、安全に、且つ、高い収率で、1,4−ジニトロイミダゾールを製造する方法を提供することができる。
【0078】
更に、本発明によれば、イミダゾールをニトロ化反応に供して4−ニトロイミダゾールを製造する方法において、急激な反応を生じることなく、安全に、4−ニトロイミダゾールを製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0079】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施形態と呼ぶ)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0080】
2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの製造方法1
本発明は、式(I)
【化9】


(式中、Xは、Cl又はBrである)
の化合物の製造方法に関する。
この方法は、式(II)
【化10】


の化合物をニトロ化して、式(III)
【化11】


の化合物を得る工程(i)を含む。
【0081】
ニトロ化は、硝酸を用いて行う。硝酸は、4−ニトロイミダゾール対硝酸のモル比で1:1〜1:4、好ましくは1:1〜1:2、より好ましくは約1:1.5の比で加えることができる。
【0082】
ニトロ化は、適当な溶媒、酢酸と無水酢酸、の混合物中で行う。無水酢酸/酢酸のモル比は、3:1と1:10の間、好ましくは1:1と1:5の間、より好ましくは1:2と1:3の間である。
【0083】
その反応は、0.01バールと20バールの間、好ましくは0.1バールと5バールの間、より好ましくは0.5バールと2バールの間にある圧力、更により好ましくは大気圧下で行う。反応温度は、5℃と30℃の間、好ましくは20℃と25℃の間である。
【0084】
反応を停止するために、反応混合物は、例えば、水又はNaClの水溶液の添加によりクエンチすることができる。
【0085】
好ましくは、該混合物は、クエンチ溶液としてのイオン性水溶液によりクエンチする。より好ましくは、水への高い溶解度を有する塩の水溶液を使用する。使用することができる塩は、例えば、KCl、CaCl、又はNaBrである。
【0086】
得られた式(III)の化合物は、反応混合物から抽出又は沈殿させることができる。
【0087】
好ましくは、得られた化合物は抽出する。この抽出は、任意の適当な溶媒又は溶媒の混合物を用いて行うことができる。好ましくは、その溶媒は水と混和性ではない。例えば、その溶媒は、クロロベンゼンである。好ましくは、その抽出溶媒は酢酸ブチルと組み合わせたキシレンである。より好ましくは、その溶媒は、10%(容積%)の酢酸ブチルと組み合わせたキシレンである。代案として、その溶媒はジクロロメタンである。
【0088】
好ましくは、該反応混合物は、クエンチし、次いで抽出するか、又は同時に、即ち、過程の同一工程においてクエンチ及び抽出をする。
【0089】
クエンチ溶液の塩は、式(III)の化合物をその抽出溶媒中に移行することを強要する。
【0090】
その抽出された混合物は、1つ又は複数の適当な溶液を用いて洗浄することができる。
【0091】
その抽出された混合物溶液は、水溶液、例えば塩化ナトリウムの水溶液により洗浄することができる。代案として、その抽出された混合物は、炭酸水素ナトリウムの水溶液により洗浄する。代案として、その抽出された混合物は、水により洗浄する。
【0092】
好ましくは、その抽出された混合物は中和する。特に、その混合物は、適当な塩基の添加により中和する。その塩基は、有機又は無機塩基であり得る。例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを使用することができる。
【0093】
好ましくは、その中和の終点におけるpHは、6と9の間、より好ましくは7と8の間である。
【0094】
生成物の自己分解を防止するように、中和反応の温度は、約30℃を超えないことが好ましい。中和は発熱性であり、したがって混合物の温度は、好ましくは制御して調節する。任意の適当な調節装置を使用することができる。例えば、冷却器を使用することができる。中和後、有機相と水相とを分離する。
【0095】
好ましくは、抽出した混合物は、1回又は同じか若しくは異なる溶液による連続洗浄により洗浄する。
【0096】
例えば、該混合物は、水溶液により洗浄した後、中和し、最後に別の水溶液により洗浄することができる。
【0097】
抽出した混合物は、中和した後、水溶液により洗浄した後、水で洗浄することができる。
【0098】
好ましくは、抽出した溶液は、NaOHの溶液により中和し、NaHCOの水溶液により洗浄した後、水で洗浄する。
【0099】
その抽出溶媒は、すぐ後に続く工程の前に除去することができる。別の実施形態において、それは、部分的に、例えば、20〜90容積%、好ましくは30〜70容積%を除去するだけでよく、次の工程の溶媒を加え、次に2つの溶媒の混合物を蒸留してその抽出溶媒を除去する。
【0100】
当該方法は、式(III)の化合物を式(IV)
【化12】


の化合物に熱転位させる工程も含む。
【0101】
好ましくは、抽出作業に由来する溶媒は、部分的に除去する。その溶媒は、任意の適当な分離の方法によって部分的に除去することができる。好ましくは、その溶媒は蒸留する。例えば、その抽出溶媒がジクロロメタンである場合、その溶媒は、40℃、大気圧で蒸留することができる。
【0102】
好ましくは、該溶媒の含水量は制御する。それは、何らかの望ましくない副生成物を避けるために、500ppmを越えないことが好ましい。特に4−ニトロイミダゾールの水との逆反応による副生成物が生成する可能性がある。必要に応じて、水は、任意の適当な方法によって除去することができ、水は、いくらかでもある場合は抽出溶媒の蒸留の間に除去されることが好ましい。
【0103】
必要な場合、その水の除去は、転位反応が始まる前に行われることが必要である。
【0104】
該熱転位反応は、任意の適当な溶媒又は溶媒の混合物中で行うことができる。例えば、その溶媒は、クロロベンゼン、トルエン又はキシレンである。好ましくは、その溶媒はクロロベンゼンである。
【0105】
その反応温度は、45℃と130℃の間にある。好ましくは、その温度は、100℃と130℃の間にあり、より好ましくはその温度は約125℃である。
【0106】
その反応は、0.01バールと20バールの間、好ましくは0.1バールと5バールの間、より好ましくは0.5バールと2バールの間にある圧力、更により好ましくは大気圧下で行う。
【0107】
好ましくは、該熱転位は、還流下で行う。
【0108】
得られた化合物は、次に反応混合物から分離することができる。その化合物を分離するための任意の適当な方法を使用することができる。例えば、その化合物は、沈殿させるか、又は適当な溶媒により抽出することができる。
【0109】
好ましくは、その化合物は、その溶液を式(IV)の化合物が沈殿する温度に冷却することによって、好ましくは0℃と5℃の間の温度で沈殿させる。次にその溶媒をろ過する。
【0110】
当該方法は、式(IV)の化合物を塩素化剤又は臭素化剤と反応させる工程も含む。
【0111】
該塩素化剤は、任意の適当な塩素化剤であり得る。例えば、塩酸又はオキシ塩化リンを使用することができる。好ましくは塩酸を使用する。
【0112】
該臭素化剤は、任意の適当な臭素化剤であり得る。例えば、臭化水素酸、臭素、又はN−ブロモスクシンイミドを使用することができる。好ましくは、臭化水素酸を使用する。
【0113】
その反応温度は、40℃と160℃の間にある。好ましくは、その温度は、80℃と120℃の間にある。より好ましくは、その温度は、100℃と110℃の間にある。
【0114】
その反応は、0.01バールと20バールの間、好ましくは0.1バールと5バールの間、より好ましくは0.5バールと2バールの間にある圧力、更により好ましくは大気圧下で行う。
【0115】
得られた式(I)の化合物は、その反応混合物から分離することができる。それは、抽出するか又はろ別することができる。
【0116】
当該方法は、連続式法又はバッチ式法であり得る。好ましくはその方法は連続式法である。
【0117】
好ましくは、該反応物は、連続流中に供給する。得られた製品は連続的方法で取り出す。別法では、該反応物は、断続的流れ又はパルス状流れとして供給することができ、且つ/又は、その製品は、断続的流れ又はパルス状流れとして取り出すことができる。
【0118】
連続式法は、バッチ式法よりも実施するのが簡単であり、効率的である。
【0119】
次に、式(I)の化合物は、抗菌薬を製造するために使用することができる。
【0120】
式(I)の化合物から出発する抗菌薬の製造は、欧州特許出願公開EP−A−1555267に記載されている。その抗菌薬は、EP−A−1555267に記載されている任意の化合物、特に、請求項1から43までのいずれか一項に記載の対象化合物であり得る。
【0121】
好ましくは、該抗菌薬は、式(VIII)
【化13】


の化合物である。
【0122】
Rは、(CHに相当し、nは1であり、Rは請求項1から43までに示されている意味を有する。
【0123】
式Iの化合物による抗菌薬の製造は、当技術分野で知られている任意の方法に従って、特にEP−A−1555267に明示されている方法、特に請求項46及び47の製造方法に従って行うことができる。
【0124】
2−ブロモ−4−ニトロイミダゾールから出発して(R)−2−メチル−6−ニトロ−2−{4−[4−(4−トリフルオロメトキシフェノキシ)ピペリジン−1−イル]フェノキシメチル}−2,3−ジヒドロイミダゾ[2,1−b]オキサゾールを製造するには、特に欧州特許出願公開EP−A−1555267の実施例3、4、6及び129がやはり参照される。
【0125】
2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの製造方法2
本実施形態の2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの製造方法は、(i)4−ニトロイミダゾールをニトロ化して1,4−ジニトロイミダゾールを得る工程と、(ii)前記1,4−ジニトロイミダゾールを単離又は乾燥する操作なしで、溶媒に溶解又は溶媒で湿潤した状態で熱転位反応を行うことにより2,4−ジニトロイミダゾールを得る工程と、(iii)前記2,4−ジニトロイミダゾールを前記熱転位反応の溶媒で湿潤した状態でハロゲン化剤を用いてハロゲン化する工程と、を含む2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの製造方法である。
【0126】
本実施形態の製造方法は、下記の式(2)で表されるスキームに従った方法である。
【0127】
【化14】

【0128】
(式中、Xはハロゲン原子を示す。)
【0129】
ここで、Xで示されるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のいずれか1つを意味する。
【0130】
以下、各工程について説明する。
【0131】
[工程(i)]
工程(i)は、4−ニトロイミダゾールをニトロ化して1,4−ジニトロイミダゾールを得る工程である。この工程における具体的な手順としては、特に限定はされないが、例えば、以下の4通りの方法が挙げられる。
(1)4−ニトロイミダゾールを無水酢酸に溶解及び/又は懸濁させた後、硝酸を滴下して加えてニトロ化反応を行う方法、
(2)4−ニトロイミダゾールを硝酸に溶解及び/又は懸濁させた後、無水酢酸を滴下して加えてニトロ化反応を行う方法、
(3)無水酢酸と硝酸の混合溶液に4−ニトロイミダゾールを添加してニトロ化反応を行う方法、及び
(4)4−ニトロイミダゾールを酢酸に溶解及び/又は懸濁させた後、無水酢酸と硝酸の混合溶液を滴下してニトロ化反応を行う方法。
【0132】
硝酸の使用量は、4−ニトロイミダゾール1モルに対して少なくとも等モル量、好ましくは1〜5モルで使用する。硝酸の濃度は、好ましくは50〜100質量%、より好ましくは50〜70質量%、更に好ましくは65〜70質量%である。
【0133】
無水酢酸の使用量は、硝酸1モルに対して、少なくとも等モル量、好ましくは2.5〜22.5モル、より好ましくは4〜10モルで使用する。
【0134】
4−ニトロイミダゾールを溶解する酢酸の使用量は、4−ニトロイミダゾール1モルに対して通常は0〜10モル程度である。
【0135】
ニトロ化反応を行うための反応温度は、通常は0〜30℃程度であり、好ましくは15〜30℃である。ニトロ化反応の反応時間は、通常は1〜10時間程度である。
【0136】
ニトロ化反応後、反応液は氷水中に添加し、有機溶媒により抽出を行う。その後、有機層をアルカリ水溶液により中和した後、有機層を分離し、脱水剤により脱水を行う。
【0137】
抽出に用いられる有機溶媒(以下、抽出溶媒ともいう)は、1,4−ジニトロイミダゾールを溶解し、且つ、水と相溶性がなく、分離するものである限りは特に限定されることはなく、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル等は、それらが1,4−ジニトロイミダゾールを容易に抽出し、水と良く分離するので好適に使用することができる。
【0138】
この抽出溶媒は、好ましくは95℃以上の沸点を有する有機溶媒である。抽出溶媒の沸点が95℃以上であると、1,4−ジニトロイミダゾールの2,4−ジニトロイミダゾールへの熱転位のために必要な温度である95℃で加熱することができる。それ故、この抽出溶媒は、後述する工程(ii)の熱転位反応のために使用する溶媒と同じものとして使用することができる。95℃以上の沸点を有する有機溶媒の例としては、クロロベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、トルエン、エチルベンゼン、ジブチルエーテル、オクタノールが挙げられる。
【0139】
有機層の中和に使用するアルカリ水溶液としては、1,4−ジニトロイミダゾールの分解を抑制する観点から、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液等の弱アルカリ性水溶液を用いるのが好ましい。
【0140】
脱水剤は、1,4−ジニトロイミダゾールに影響を与えず、有機溶媒中の水分を吸着し、ろ過によって除去できる限りは特に限定されず、硫酸マグネシウム、モレキュラーシーブス等の一般的な脱水剤を使用することができる。
【0141】
[工程(ii)]
工程(ii)は、1,4−ジニトロイミダゾールを単離又は乾燥する操作なしで、溶媒に溶解又は溶媒で湿潤した状態で熱転位反応を行うことにより2,4−ジニトロイミダゾールを得る工程である。
【0142】
上述したように抽出溶媒の沸点が95℃以上である場合には、1,4−ジニトロイミダゾールを2,4−ジニトロイミダゾールに熱転位させるのに必要とされる温度である95℃に加熱することができる。それ故、抽出溶媒は、以下で説明する(ii)の熱転位反応のために使用する溶媒として別の溶媒を使用することなくそれをそのまま使用することができる。
【0143】
抽出溶媒が95℃以下の沸点を有する場合には、その抽出溶媒を1,4−ジニトロイミダゾールが乾固しない程度まで留去した後、95℃以上の沸点を有する溶媒を、1,4−ジニトロイミダゾールがその中に溶解及び/又は懸濁するように添加し、次いで熱転位反応を行う。
【0144】
熱転位における反応温度は、通常95〜130℃、好ましくは100〜125℃である。熱転位反応における溶媒の量は、1,4−ジニトロイミダゾールが完全に溶解しうる量より多いことが好ましい。
【0145】
かくして得られた2,4−ジニトロイミダゾールは、反応液を濃縮し、固体をろ過することによって得られ、次の工程である工程(iii)は、2,4−ジニトロイミダゾールを乾燥することなく、2,4−ジニトロイミダゾールを熱転位反応の溶媒で湿潤させた状態を保ったままで行う。
【0146】
[工程(iii)]
工程(iii)は、2,4−ジニトロイミダゾールを前記熱転位反応のための溶媒で湿潤した状態でハロゲン化剤を用いてハロゲン化する工程である。
【0147】
熱転位反応に用いた有機溶媒で湿潤した状態の2,4−ジニトロイミダゾールをハロゲン化剤で処理することで、2−ハロ−4−ニトロイミダゾールは、従来の方法と比較してより安全に得ることができる。
【0148】
「熱転位反応に用いた溶媒で2,4−ジニトロイミダゾールを湿潤した状態」とは、好ましくは2,4−ジニトロイミダゾール100質量部対して溶媒5質量部以上を含有している状態を意味する。溶媒が、2,4−ジニトロイミダゾール100質量部対して5質量部以上の量で含有されている場合、2,4−ジニトロイミダゾールのJIS K 4810に従った摩擦感度及び落槌感度は両方とも8級となり、それは乾燥状態における2,4−ジニトロイミダゾールのそれぞれ摩擦感度6級及び落槌感度7級と比較して鈍化しており、それ故2−ハロ−4−ニトロイミダゾールをより安全に製造することができる。
【0149】
本実施形態における2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを混入する不純物については、表2に示すとおり、1,4−ジニトロイミダゾール及び2,4−ジニトロイミダゾールが単離又は乾燥する操作なしで次の工程に供される場合には、1,4−ジニトロイミダゾール及び2,4−ジニトロイミダゾールが単離され、乾燥される場合と比較してより高い含量で存在する。しかし、2,4−ジニトロイミダゾールのハロゲン化のハロゲン化剤として塩酸及び臭化水素酸を使用すること、更には得られた2−ハロ−4−ニトロイミダゾール水又はC3以下のアルコール溶媒に加熱溶解させ、次いで混合物を冷却し、再結晶させることにより4−ニトロイミダゾールの混入を低減することができ、2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを高純度で得ることが可能となる。
【0150】
【表2】

【0151】
目的化合物2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの具体例としては、2−フルオロ−4−ニトロイミダゾール、2−クロロ−4−ニトロイミダゾール、2−ブロモ−4−ニトロイミダゾール、2−ヨード−4−ニトロイミダゾールが挙げられる。
【0152】
ハロゲン化剤は、特に限定されず、目的化合物として2−フルオロ−4−ニトロイミダゾールを製造する場合には、フッ化水素酸等を使用することができ、目的化合物として2−クロロ−4−ニトロイミダゾールを製造する場合には、塩酸、オキシ塩化リン、塩化チオニル、塩素、2−クロロエタノール等を使用することができ、目的化合物として2−ブロモ−4−ニトロイミダゾールを製造する場合には、臭化水素酸、臭素等を使用することができ、目的化合物として2−ヨード−4−ニトロイミダゾールを製造する場合には、ヨウ化水素酸、ヨウ素等を使用することができる。
【0153】
ハロゲン化反応に用いるハロゲン化剤が塩酸である場合、塩酸の濃度は、好ましくは20〜38質量%であり、より好ましくは30〜36質量%である。塩酸は、1モルの2,4−ジニトロイミダゾールに対して好ましくは5〜50モル、より好ましくは10〜30モルの量で使用する。塩素化反応の反応温度は、一般的には80〜120℃、より好ましくは90〜110℃である。反応時間は、一般的には、0.5〜10時間である。
【0154】
ハロゲン化反応に用いるハロゲン化剤が臭化水素酸である場合、臭化水素酸の濃度は、好ましくは20〜49質量%であり、より好ましくは45〜49質量%である。臭化水素酸は、1モルの2,4−ジニトロイミダゾールに対して好ましくは10〜30モルの量で使用する。臭素化反応の反応温度は、一般的には80〜140℃であり、反応性、選択性の面から、より好ましくは100〜120℃である。反応時間は、一般的には0.5〜5時間であり、反応性、選択性の面から、より好ましくは1〜3時間である。
【0155】
本実施形態の製造方法により得られた2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの単離方法に関しては、ハロゲン化反応液を冷却し、続いて、ろ過、洗浄及び乾燥する方法、ハロゲン化反応液を冷却し、続いて、中和、ろ過、洗浄及び乾燥する方法、ハロゲン化反応液に水を加え、続いて、ろ過、洗浄及び乾燥する方法を使用することができる。
【0156】
[工程(iv)]
更に、本実施形態の製造方法においては、2,4−ジニトロイミダゾールのハロゲン化後に、得られた2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを、溶媒として水及び/又はC3以下のアルコールを使用して再結晶させる工程(iv)を更に含むことができる。
【0157】
2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを、溶媒としての水及び/又はC3以下のアルコールに加熱溶解した後、冷却することで2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを再結晶し、必要に応じてろ過、洗浄及び乾燥することで高純度の2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを得ることができる。
【0158】
再結晶用の水及び/又はC3以下のアルコールの量は、100質量部の2−ハロ−4−ニトロイミダゾールに対して好ましくは10〜40質量部である。水及び/又はC3以下のアルコールの量が上記の範囲内であるとき、再結晶に伴う収率の低下を最小限に制御することができる。
【0159】
加熱して溶解するための温度は、好ましくは60〜100℃であり、冷却温度は、好ましくは0〜20℃である。ろ過後のろ液は、別バッチで製造した2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを再結晶する際の溶媒として代替することができる。
【0160】
ろ液は、2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの飽和水溶液であることから、別バッチで製造された2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの再結晶溶媒として使用することで収率の低下を抑制することができる。
【0161】
2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの製造方法3
本実施形態の2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの製造方法は、2,4−ジニトロイミダゾールをハロゲン化剤によりハロゲン化反応に供することにより2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを製造する方法であって、ハロゲン化反応後の反応液に水を加えて2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを析出させる工程を含む方法である。
【0162】
本実施形態の製造方法は、次式(3)によって表されるスキームに従った方法である。
【0163】
【化15】

【0164】
(式中、Xは、ハロゲン原子を表す。)
【0165】
ここで、Xで示されるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のいずれか1つを意味する。
【0166】
目的化合物である2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの具体例としては、2−フルオロ−4−ニトロイミダゾール、2−クロロ−4−ニトロイミダゾール、2−ブロモ−4−ニトロイミダゾール、2−ヨード−4−ニトロイミダゾールが挙げられる。
【0167】
本実施形態におけるハロゲン化剤は、特に限定されず、目的化合物として2−フルオロ−4−ニトロイミダゾールを製造する場合には、フッ化水素酸等を使用することができ、目的化合物として2−クロロ−4−ニトロイミダゾールを製造する場合には、塩酸、オキシ塩化リン、塩化チオニル、塩素、2−クロロエタノール等を使用することができ、目的化合物として2−ブロモ−4−ニトロイミダゾールを製造する場合には、臭化水素酸、臭素等を使用することができ、目的化合物として2−ヨード−4−ニトロイミダゾールを製造する場合には、ヨウ化水素酸、ヨウ素等を使用することができる。
【0168】
ハロゲン化反応に用いるハロゲン化剤が塩酸である場合、塩酸の濃度は、好ましくは20〜38質量%であり、より好ましくは30〜36質量%である。塩酸の濃度が20質量%未満であると、ハロゲン化反応はゆっくり進行するのみで収率が低下する傾向があり、塩酸の濃度が38質量%を超えると塩酸の沸点が低下し、それ故ハロゲン化反応の進行が困難となり、収率が低下する傾向がある。ハロゲン化剤が、臭化水素酸である場合、臭化水素酸の濃度は、好ましくは20〜49質量%、より好ましくは45〜49質量%である。臭化水素酸の濃度が20質量%未満であると、ハロゲン化反応はゆっくり進行するのみで収率が低下する傾向があり、臭化水素酸の濃度が49質量%を超えると臭化水素酸の沸点が低下し、それ故ハロゲン化反応の進行が困難となり、収率が低下する傾向がある。
【0169】
ハロゲン化反応に使用するハロゲン化剤は、1モルの2,4−ジニトロイミダゾールに対して好ましくは5〜20モル、より好ましくは12〜20モルである。ハロゲン化剤が、5モル未満の量で使用される場合は、ハロゲン化反応はゆっくり進行するのみで収率が低下する傾向がある。ハロゲン化剤が20モルを超える量で使用される場合は、ハロゲン化剤中に溶解する2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの量が増加するために収率が低下する傾向がある。
【0170】
ハロゲン化反応を行うための反応温度は、一般的には80〜120℃、好ましくは90〜110℃である。反応時間は、一般的には0.5〜10時間である。
【0171】
ハロゲン化反応後の反応液に加える水の量は、使用されたハロゲン化剤の100質量部に対して、好ましくは25〜200質量部、より好ましくは65〜125質量部、更により好ましくは75〜115質量部である。水の量が25質量部未満であるとき、反応液中のハロゲン化剤の濃度が高くなり、2−ハロ−4−ニトロイミダゾールが反応液中に溶解し、収率が低下する傾向がある。一方、水の量が200質量部を超えるときは液量の増加により2−ハロ−4−ニトロイミダゾールが反応液に溶解し、収率が低下する傾向がある。
【0172】
反応液に水を加えた後、反応液は冷却することができる。冷却のための冷却温度は一般的には0〜25℃であり、好ましくは0〜10℃である。
【0173】
本実施形態の製造方法により得られた2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの単離方法に関しては、反応液を冷却し、後に、ろ過、洗浄及び乾燥が続く方法、反応液を冷却し、後に、中和、ろ過、洗浄及び乾燥が続く方法を使用することができる。
【0174】
1,4−ジニトロイミダゾールの製造方法
本実施形態の1,4−ジニトロイミダゾールの製造方法は、4−ニトロイミダゾールをニトロ化反応に供することを含む1,4−ジニトロイミダゾールの製造方法であって、4−ニトロイミダゾールを無水酢酸と50〜70質量%の濃度を有する硝酸でニトロ化する。
【0175】
本実施形態の製造方法においては、ニトロ化剤である硝酸アセチルを無水酢酸と硝酸から生成し、これを4−ニトロイミダゾールと反応させてニトロ化反応を行うことにより1,4−ジニトロイミダゾールを製造する。
【0176】
無水酢酸は硝酸に含まれる水と反応するため、ニトロ化剤の硝酸アセチルと目的化合物である1,4−ジニトロイミダゾールの水による分解を抑制する効果があり、結果として、1,4−ジニトロイミダゾールの収率を向上させることができる。
【0177】
本実施形態の製造方法における具体的な手順としては、特に限定はされないが、例えば、以下の4通りの方法が挙げられる。
(1)4−ニトロイミダゾールを無水酢酸に溶解及び/又は懸濁させ、次いでそこに50〜70質量%の濃度を有する硝酸を滴下して加えてニトロ化反応を行う方法、(2)4−ニトロイミダゾールを50〜70質量%の濃度を有する硝酸に溶解及び/又は懸濁させ、次いでそこに無水酢酸を滴下して加えてニトロ化反応を行う方法、(3)無水酢酸と50〜70質量%の濃度を有する硝酸の混合溶液に4−ニトロイミダゾールを加えてニトロ化反応を行う方法、及び、(4)4−ニトロイミダゾールを酢酸に溶解及び/又は懸濁させ、次に無水酢酸と50〜70質量%の濃度を有する硝酸の混合溶液をそこに滴下して加えてニトロ化反応を行う方法。
【0178】
本実施形態の製造方法において使用される硝酸の濃度は50〜70質量%であり、好ましくは65〜70質量%である。硝酸の濃度が50質量%未満であるときは、ニトロ化反応はゆっくり進行するのみで、収率が低下する傾向があり、硝酸の濃度が70質量%を超えるときは反応中にスラリー状態が生じ、それによって局部的に多大な反応熱が発生するおそれがある。
【0179】
無水酢酸の使用量は、1モルの硝酸に対して、好ましくは2.5〜22.5モル、より好ましくは4〜10モルの量で使用する。無水酢酸が2.5モル未満の量で使用されるときは、ニトロ化剤である硝酸アセチルが硝酸に含まれている水分によって分解し、収率が低下する傾向がある。無水酢酸が22.5モルを超える量で使用されるときは、反応溶液の量が増加するために収率が低下する傾向がある。
【0180】
硝酸の使用量は、1モルの4−ニトロイミダゾールに対して少なくとも等モル量、好ましくは1〜5モル使用する。硝酸の使用量が1モル未満であるとき、収率は減少する傾向があり、硝酸の使用量が5モルを超えるときは反応溶液の量の増加のために収率は減少する傾向がある。
【0181】
ニトロ化反応を行うための反応温度は、好ましくは15℃〜30℃である。反応温度が15℃未満であるときは反応速度が遅く、爆発性の硝酸アセチルが系内に未反応で残存する可能性があるために好ましくない。その一方で、反応温度が30℃を超えるときは、硝酸アセチルの分解が促進され、収率が低下する傾向がある。ニトロ化反応の反応時間は、一般的にはほぼ1〜10時間である。
【0182】
かくして得られた1,4−ジニトロイミダゾールは、例えば、反応液に有機溶媒及びアルカリ水溶液を加えて反応液を分離し、有機層を得て、得られた有機層を続いて濃縮し、乾固することによって単離することができる。
【0183】
4−ニトロイミダゾールの製造方法
本実施形態の4−ニトロイミダゾールの製造方法は、イミダゾールをニトロ化反応に供することを含む4−ニトロイミダゾールの製造方法であって、イミダゾールの硫酸溶液を65〜110℃に加温し、次いでそこに硝酸を加えてニトロ化反応を行うか、又はイミダゾールの硝酸溶液を65〜110℃に加温し、次いでそこに硫酸を加えてニトロ化反応を行う。
【0184】
イミダゾールから4−ニトロイミダゾールを製造するためのニトロ化反応は発熱反応である。上記非特許文献4及び非特許文献5の方法においては全ての原料を1つの溶液とし、その温度を4−ニトロイミダゾールを製造するために上昇させ、したがって、イミダゾールの全量が一斉に発熱を伴うニトロ化反応を生じる可能性があり、したがって大量の熱を発生し、反応温度を制御不可能にし、暴走反応をもたらすおそれがある。
【0185】
これに対して、本実施形態の製造方法においては、そのニトロ化反応はイミダゾールの硫酸溶液を65〜110℃に加温し、次いでそこに硝酸を加えることによって実施するか、又はそのニトロ化反応は、イミダゾールの硝酸溶液を65〜110℃に加温し、次いでそこに硫酸を加えることにより実施するために、イミダゾールのニトロ化は、加温後に添加した量の硝酸又は硫酸によってのみゆっくりと進行し、よって、その反応を適切に制御することができる。したがって、4−ニトロイミダゾールは、急激な反応を生じることなく安全に製造することができる。
【0186】
本実施形態の製造方法においては、ニトロ化反応は、イミダゾールを溶解した硫酸又は硝酸溶液を65〜110℃、好ましくは70〜90℃に加温し、次いでそこに硝酸又は硫酸を加えることにより実施する。イミダゾールの硫酸又は硝酸の溶液の温度が65℃未満であるときは、ニトロ化反応の反応速度が遅くなり、それは硝酸が速やかに消費されず、多量のイミダゾールと硝酸が未反応のまま残留することを意味する。結果として、該混合物を加温した際に従来法と同様に反応温度の制御ができなくなるおそれがある。一方、イミダゾールの硫酸又は硝酸の溶液の温度が110℃を超えるときは、硝酸の熱分解が生じ、4−ニトロイミダゾールの収率が低下する傾向があり得る。
【0187】
加温する前のイミダゾールを溶解する硫酸又は硝酸は、1モルのイミダゾールに対して、好ましくは2.5〜5モル、より好ましくは3〜4モルである。硫酸又は硝酸が2.5モル未満の量で使用されるときは、ニトロ化反応がゆっくり進行する傾向がある。硫酸又は硝酸が5モルより多い量で使用されるときは、該溶液に添加される中和のためのアンモニウム水の量が増加し、そこに4−ニトロイミダゾールが溶解するために、収率が低下する傾向がある。
【0188】
イミダゾールの硫酸又は硝酸の溶液に硝酸又は硫酸を加える方法は、反応を適切に制御できる限りは特に限定はされないが、反応系への順次添加が好ましく、反応系への滴下方式の添加がより好ましい。本明細書で使用されているこの「順次添加」とは、反応に必要であり、同時に反応を制御することが可能な硝酸又は硫酸の量を少しずつ連続的又は断続的に加えることを意味する。
【0189】
本実施形態の製造方法において使用される硫酸の濃度は、好ましくは95〜100質量%、より好ましくは97〜100質量%である。硫酸の濃度が95質量%未満であるときは、ニトロ化反応の進行が遅い傾向がある。
【0190】
本実施形態の製造方法において使用される硝酸の濃度は、好ましくは50〜70質量%、より好ましくは65〜70質量%である。硝酸の濃度が50質量%未満であるときは、ニトロ化反応がゆっくり進行する傾向があり、4−ニトロイミダゾールの収率が低下する傾向がある。硝酸の濃度が70質量%を超えるときは、硝酸の酸化力が強過ぎて、送液又は液保管のための配管、ポンプ及び容器の材質が限定される傾向がある。また、一酸化窒素ガス及び二酸化窒素ガス等の人体に有害なガスを発生するおそれがあり、取り扱いの面でも好ましくない。
【0191】
加温後にイミダゾールの硫酸溶液又は硝酸溶液に加えられる硫酸又は硝酸は、加温前のイミダゾールを溶解する1モルの硫酸又は硝酸に対して好ましくは0.5〜2.0モル、より好ましくは0.8〜1.2モルである。硫酸又は硝酸が0.5モル未満又は2.0モルを超える量で使用されるときは収率が低下する傾向がある。
【0192】
イミダゾールの硫酸又は硝酸溶液に硝酸又は硫酸を添加した後は、一般的にはほぼ80℃〜100℃、好ましくは90℃〜100℃の反応温度を保ち、ニトロ化反応をほぼ1〜10時間継続する。
【0193】
かくして得られた4−ニトロイミダゾールは、例えば、反応液中に氷水、アルカリ水溶液を添加し、続いて、ろ過、洗浄及び乾燥することによって単離することができる。
【実施例】
【0194】
以下に本実施形態を具体的に説明した実施例を例示するが、本実施形態はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0195】
全ての当量(eq.)は、モル当量であり、出発材料4−ニトロイミダゾールに対して計算される。
【0196】
(実施例1)
工程1
第1の容器中で、1.00当量の4−ニトロイミダゾール(固体)を2.01当量の無水酢酸及び5.83当量の酢酸と共に混合する。その混合物を15℃に冷却する。この懸濁液中に1.5当量の硝酸を投入する。この反応は弱い発熱があり、反応混合物の温度が15℃を超えないことを確保しなければならない。硝酸の添加後その反応混合物は23〜25℃まで加温し、3時間撹拌する。約2時間の撹拌後に黄橙色の溶液が現れる。
【0197】
第2の容器において、69.72当量の水及び7.35当量の塩化ナトリウムを混合し、全ての塩化ナトリウムが溶解するまで周囲温度で撹拌した。19.17当量のジクロロメタンを加える。その後2相の混合物を15℃に冷却する。
【0198】
第1の容器の反応混合物を撹拌容器(第2の容器)に投入する。クエンチすると、弱い発熱があり、20℃を超えないことを確保しなければならない。投入後第2の容器の内容物を30分間撹拌し、その後相分離させた。上の水相は廃棄し、一方、下の有機相は製品の1,4−ジニトロイミダゾールを含有し、第2の容器中に残す。
【0199】
中間の第三の相が、時折2つの相の間に現れるので、下の有機相と共に第2の容器に留まるようにする。
【0200】
中和のため、18.51当量の35%(w/w、重量対重量)の水酸化ナトリウムを第2の容器に投入する。その中和反応は、発熱性であり、したがって、30℃を超えないことが確保されなければならない。この後処理の工程は30℃より上の温度が1,4−ジニトロイミダゾールの自己加速分解につながるために重大な意味を持つ。中和の終点のpHは、7と8の間である。
【0201】
投入後第2の容器の内容物を30分間撹拌し、その後相分離させた。上の水相は廃棄し、一方、下の有機相は1,4−ジニトロイミダゾールを含有し、第2の容器に残す。相分離は良好である。上の水相の色は、暗赤色〜黄褐色である。中間相は消えている。
【0202】
3.25当量の5%(w/w)の炭酸水素ナトリウム水溶液を第2の容器に加える。弱いガス発生が見られる。第2の容器の内容物を30分間撹拌する。その後相分離させる。上の水相は廃棄し、一方、下の有機相は1,4−ジニトロイミダゾールを含有し、第2の容器に残す。相分離は良好である。上の水相の色は、黄色である。
【0203】
14.60当量の水を、第2の容器に加える。第2の容器の内容物を30分間撹拌する。その後相分離させた。上の水相は、廃棄し、一方、下の有機相は1,4−ジニトロイミダゾールを含有し、第2の容器に残す。相分離は良好である。上の水相の色は、明黄色である。
【0204】
工程2
第2の容器中でジクロロメタンに溶解した1,4−ジニトロイミダゾールを周囲温度で蒸留する。容器中の内温は40℃であり、排出蒸気の温度は38〜41℃である。
【0205】
残留物中の水分含有量は、500ppmに制限される。必要な場合、残留物中の水分含有量が500ppmを下回るまで、水/ジクロロメタン異相共沸混合物を除去しなければならない。この水分含有量は、カールフィシャー法により制御する。
【0206】
固体が沈殿し始めるまで、ジクロロメタンの半分を蒸留によって除去する。このジクロロメタンの留出物は、再利用することができる。このジクロロメタンの品質は、屈折率によって制御することができる(nD20≦1.426がジクロロメタン含有量≧95%(w/w)に一致する)。
【0207】
11.12当量のクロロベンゼンを第2の容器に加え、周囲温度で蒸留を続ける。第2の容器内の温度は45〜126℃であり、排出蒸気の温度は32〜120℃である。50℃までのヘッド温度での留出物は再利用することができる。50℃を超えるその留出物は廃棄する。ジクロロメタン含有量の制御は回折係数によってなされる。留出物は淡褐色であり、亜硝酸ガスを生ずる。
【0208】
溶媒交換の後、第2の容器中の混合物は、転位反応を行うため125℃の還流下で7時間撹拌する。6時間後に第1の工程管理を行うことができ、2,4−ジニトロイミダゾールへの99.0%を超える転化率が達成されるはずである。
【0209】
その反応混合物を0〜2℃まで冷却し、この温度で1時間撹拌する。沈殿した2,4−ジニトロイミダゾールをろ過する。母液の色はオレンジ色である。
【0210】
ろ過ケーキを1.29当量のクロロベンゼンにより洗浄する。固体の2,4−ジニトロイミダゾールは衝撃及び摩擦に感受性であるため、ろ過ケーキはこの段階では乾燥しないように注意すべきである。鈍化させるためには10〜15%(w/w)の残留クロロベンゼンの量で十分である。
【0211】
工程2の生成物は、96%(w/w)の含有量を有する湿潤した2,4−ジニトロイミダゾール(収率:67%)である。
【0212】
工程3
2−クロロ−4−ニトロイミダゾールの製造
第3の容器中で、クロロベンゼンにより湿潤している3当量の2,4−ジニトロイミダゾールを、11.0当量の37%(w/w)塩酸及び水と混合する。その懸濁液を105℃に加熱する。
【0213】
70〜80℃の温度で蒸留が始まる。その反応混合物を105℃まで加熱する間に水、クロロベンゼン及び塩酸が蒸留される。
【0214】
105℃の温度に到達したら、その混合物を105℃で7時間撹拌する。転化率は98%を超えるはずである。105℃までの加熱は、その混合物が発泡する傾向があるので注意して行う必要がある。
【0215】
反応後、その混合物は10℃まで冷却し、沈殿物をろ別する。
【0216】
そのろ過ケーキを3つに分けた2.09当量の水により洗浄し、減圧下45℃で、乾燥による減量が0.5%(w/w)以下になるまで乾燥する。
【0217】
その生成物は、2−クロロ−4−ニトロイミダゾールである(収率65〜80%、純度>98%)。
【0218】
2−ブロモ−4−ニトロイミダゾールの製造
第3の容器中で、クロロベンゼンにより湿潤している1当量の2,4−ジニトロイミダゾールを、15.96当量の47%(w/w)臭化水素酸及び1.5当量の尿素と混合する。その懸濁液を105℃に加熱する。
【0219】
70〜80℃の温度で蒸留が始まる。その反応混合物を105℃まで加熱する間に水、クロロベンゼン及び臭化水素酸が蒸留される。
【0220】
105℃の温度に到達したら、その混合物を105℃で14時間撹拌する。転化率は98%を超えるはずである。
【0221】
反応後、その混合物は0℃まで冷却し、沈殿物をろ別する。
【0222】
そのろ過ケーキを3つに分けた77.22当量の水により洗浄し、減圧下40〜50℃で、乾燥による減量が0.5%(w/w)以下になるまで乾燥する。
【0223】
(実施例2−1)
1,4−ジニトロイミダゾール及び2,4−ジニトロイミダゾールの製造
20gの4−ニトロイミダゾールをフラスコに入れた後、36.4mLの酢酸を添加し、反応溶液の温度を20℃以下に保ちながら、14.6mLの97質量%の硝酸を滴下して加えた。硝酸の滴下後、36.4mLの無水酢酸を滴下して添加し、反応溶液の温度を25℃に昇温後、得られた混合物を3時間反応させた。反応終了後、その反応溶液を100gの氷水中に加えた。100mLの塩化メチレンによる抽出を3回行い、この有機層を100mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液にて2回洗浄した。その有機層を分離し、脱水のために30gの硫酸マグネシウムを加え、1,4−ジニトロイミダゾールをジクロロメタン溶液として得た。次いで、エバポレーターにより溶液量を乾固しない程度まで留去した後、300mLのクロロベンゼンを加え、2,4−ジニトロイミダゾールに転換するため、この溶液を125℃に昇温して、24時間反応させた。反応後、析出した固体をろ過し、クロロベンゼンに湿潤した固体として、25.3gの2,4−ジニトロイミダゾール(クロロベンゼン湿潤率10質量%、収率82.3%)を得た。
【0224】
IR吸収スペクトル(KBr):3147,1550,1509,1340,1107cm−1
【0225】
H−NMRスペクトル(DMSO−d)δppm:8.53(s,1H),9.98(br,s,1H)
により2,4−ジニトロイミダゾールであることが同定された。
【0226】
(実施例2−2、別法)
1,4−ジニトロイミダゾール及び2,4−ジニトロイミダゾールの製造
20gの4−ニトロイミダゾールをフラスコに入れた後、36.4mLの酢酸を添加し、反応溶液の温度を20℃以下に保ちながら、14.6mLの97質量%の硝酸を滴下した。硝酸の滴下後、36.4mLの無水酢酸を滴下し、その反応溶液の温度を25℃に昇温後、得られた混合物を3時間反応させた。反応終了後、その反応溶液を100gの氷水中に添加した。100mLのp−キシレンによる抽出を4回行い、この有機層を100mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液により2回洗浄した。その有機層を分液し、30gの硫酸マグネシウムを添加して脱水を行うことで、1,4−ジニトロイミダゾールをp−キシレン溶液として取得した。次いで溶媒をエバポレーターにより2/3程度の量まで留去した後、2,4−ジニトロイミダゾールに転換させるため、この溶液を125℃に昇温して、24時間反応させた。反応終了後、析出した固体をろ過してp−キシレンに湿潤した固体として、24.1gの2,4−ジニトロイミダゾール(p−キシレン湿潤率15質量%、収率74.9%)を得た。
IR吸収スペクトル(KBr):3147,1550,1509,1340,1107cm−1
H−NMRスペクトル(DMSO−d)δppm:8.53(s,1H),9.98(br,s,1H)
により、2,4−ジニトロイミダゾールであることが同定された。
【0227】
(実施例3−1)
2−クロロ−4−ニトロイミダゾールの製造
クロロベンゼンで湿潤した65.8gの2,4−ジニトロイミダゾール(クロロベンゼン湿潤率31質量%)を660mLの35質量%の塩酸中に添加し、反応液の温度を100℃に昇温し、5時間反応させた。反応後、溶液を冷却し、晶析した。結晶をろ過した後、930mLの水に90℃で加熱溶解し、冷却、ろ過、乾燥することで、33.0gの2−クロロ−4−ニトロイミダゾール(収率70.7%)(HPLC純度97.6%)を得た。
IR吸収スペクトル(KBr):3152,1556,1510,1473,1405,1375,1194,1092,822cm−1
H−NMRスペクトル(DMSO−d)δppm:8.42(s,1H),14.2(br,s,1H)
により2−クロロ−4−ニトロイミダゾールであることが同定された。
【0228】
(実施例3−2、別法)
2−ブロモ−4−ニトロイミダゾールの製造
p−キシレンで湿潤した145.6gの2,4−ジニトロイミダゾール(p−キシレン湿潤率12質量%)に2033.5gの49質量%の臭化水素酸を滴下した。反応液を100℃まで昇温し、5時間反応させた。反応後、反応液を冷却しながら、2000mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液により徐々に中和して結晶を析出させた。結晶をろ過後、3000mLの水に95℃で加熱溶解し、冷却、ろ過、乾燥することで、75.0gの2−ブロモ−4−ニトロイミダゾール(収率47.6%)(HPLC純度100%)を得た。
IR吸収スペクトル(KBr):3209,3146,1547,1514,1453,1390,1084,823cm−1
H−NMRスペクトル(DMSO−d)δppm:8.43(s,1H)
により2−ブロモ−4−ニトロイミダゾールであることが同定された。
【0229】
(実施例4)
2−クロロ−4−ニトロイミダゾールの製造
5.0gの2,4−ジニトロイミダゾール(純度92.3%)を30mLの35質量%の塩酸中に添加した。反応液を95℃まで昇温し、7時間反応させた。反応後、43gの水を加え、0℃に冷却し、晶析した。結晶をろ過し、乾燥させ、3.31gの2−クロロ−4−ニトロイミダゾールを得た(収率77.1%)。
IR吸収スペクトル(KBr):3152,1556,1510,1473,1405,1375,1194,1092,822cm−1
H−NMRスペクトル(DMSO−d)δppm:8.42(s,1H),14.2(br,s,1H)
により2−クロロ−4−ニトロイミダゾールであることが同定された。
【0230】
(比較例1)
5.0gの2,4−ジニトロイミダゾール(純度92.3%)を62mLの35質量%の塩酸中に添加した。反応液を95℃まで昇温し、7時間反応させた。反応後、0℃に冷却し、晶析した。結晶をろ過し、乾燥させ、2.88gの2−クロロ−4−ニトロイミダゾールを得た(収率67.1%)。
【0231】
(実施例5)
20gの4−ニトロイミダゾールをフラスコに入れた後、144.5mLの無水酢酸を添加し、25℃に保ちながら、14.5mLの69質量%の硝酸を滴下した。硝酸の滴下後、得られた混合物を25℃で3時間撹拌した。反応溶液を100gの氷水中に添加し、300mLのジクロロメタンにより抽出した。その有機層を300mLの飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した後、30gの硫酸マグネシウムで乾燥した。有機層をろ過して、溶媒を減圧留去し、21gの1,4−ジニトロイミダゾールを得た(収率75.1%)。
IR吸収スペクトル(KBr):3147,1550,1509,1340,1107cm−1
H−NMRスペクトル(DMSO−d)δppm:8.53(s,1H),9.98(br,s,1H)
【0232】
(実施例6)
60mLの95質量%濃硫酸をフラスコに入れた後、20gのイミダゾールを添加し、完全に溶解させた。イミダゾールの硫酸溶液を、70℃に昇温し、60mLの69質量%硝酸を滴下した。硝酸の滴下後、得られた混合物の温度を100℃に昇温し、5時間撹拌した。反応溶液を100gの氷水中に添加し、25質量%アンモニア水で中和した後、ろ過、洗浄及び乾燥を行うことにより、26gの4−ニトロイミダゾールを得た(収率78.2%)。
IR吸収スペクトル(KBr):3141,3012,2883,2821,1557,1510,1496,1431,1383,1253,991,868cm−1
H−NMRスペクトル(DMSO−d)δppm:7.83(s,1H),8.30(s,1H),13.1(br,s,1H)
により4−ニトロイミダゾールであることが同定された。
【産業上の利用可能性】
【0233】
本発明の製造方法は、特に、火薬や医薬等の分野における産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの製造方法であって、
ハロゲンがCl又はBrであり、
(i)4−ニトロイミダゾールを酢酸と無水酢酸の混合物中の硝酸を用いてニトロ化して1,4−ニトロイミダゾールを得る工程と、
(ii)1,4−ニトロイミダゾールを2,4−ニトロイミダゾールに熱転位させる工程と、
(iii)2,4−ニトロイミダゾールを塩素化剤又は臭素化剤と反応させる工程と
を含む上記製造方法。
【請求項2】
連続的である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(i)の後に、1,4−ジニトロイミダゾールの好ましくはジクロロメタンによる抽出の工程を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(i)の後に、好ましくはイオン性水溶液によりクエンチする工程を更に含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
クエンチ及び抽出の工程が同時に行われる、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
熱転位反応温度が、100℃と150℃の間、好ましくは120℃と130℃の間、より好ましくは125℃である、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
熱転位を、還流下のクロロベンゼン中で行う、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
塩素化剤が、塩酸である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
臭素化剤が、臭化水素酸である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(i)の後に反応混合物の連続的な洗浄工程が続く、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(iii)を、60℃と150℃の間、好ましくは100℃と110℃の間の温度で行う、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(i)の後に、60℃と150℃の間、好ましくは100℃と110℃の間の温度で行われるクエンチする工程が続く、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
抗結核剤の製造方法であって、
(i)4−ニトロイミダゾールを酢酸と無水酢酸の混合物中の硝酸を用いてニトロ化して1,4−ニトロイミダゾールを得る工程と、
(ii)1,4−ニトロイミダゾールを2,4−ニトロイミダゾールに熱転位させる工程と、
(iii)2,4−ニトロイミダゾールを塩素化剤又は臭素化剤と反応させて2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを得る工程と、
(iv)2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを2−メチルオキシラン−2−イルメチル−4−ニトロベンゾエートと反応させる工程と、
(v)工程(iv)で得られた化合物を塩化メタンスルホニルと反応させる工程と、
(vi)工程(v)で得られた化合物を閉環させる工程と、
(vii)工程(vi)で得られた化合物を塩化メタンスルホニルと反応させる工程と、
(viii)工程(vii)の化合物を、
【化1】


である式RHの化合物と反応させて式(VII)
【化2】


の化合物を得る工程と、
(ix)式(VII)の化合物を閉環させて式(VIII)
【化3】


の化合物を得る工程と
を含む上記製造方法。
【請求項14】
2−ハロ−4−ニトロイミダゾールの製造方法であって、
(i)4−ニトロイミダゾールをニトロ化して1,4−ジニトロイミダゾールを得る工程と、
(ii)前記1,4−ジニトロイミダゾールを単離又は乾燥する操作なしで、溶媒に溶解又は溶媒で湿潤した状態で熱転位反応を行うことにより2,4−ジニトロイミダゾールを得る工程と、
(iii)前記2,4−ジニトロイミダゾールを前記熱転位反応の溶媒で湿潤した状態でハロゲン化剤を用いてハロゲン化する工程と
を含む上記製造方法。
【請求項15】
(iv)2,4−ジニトロイミダゾールのハロゲン化によって得られた2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを水及び/又はC3以下のアルコールを溶媒として使用して再結晶させる工程を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記工程(iv)が、2−ハロ−4−ニトロイミダゾール100質量部に対して、10〜40質量部の水及び/又はC3以下のアルコール中に2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを加熱溶解した後、その溶液を再結晶させるために冷却する工程である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記工程(ii)において1,4−ジニトロイミダゾールを溶解又は湿潤する溶媒が、熱転位反応における溶媒と同一である、請求項14から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記工程(ii)において1,4−ジニトロイミダゾールを溶解又は湿潤する溶媒が、水と分離し、且つ95℃以上の沸点を有する有機溶媒である、請求項14から17までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記工程(iii)が、2,4−ジニトロイミダゾール100質量部に対して、2,4−ジニトロイミダゾールを5質量部以上の熱転位反応の溶媒で湿潤した状態で、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化する工程である、請求項14から18までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
2,4−ジニトロイミダゾールをハロゲン化剤によりハロゲン化反応に供することにより2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを製造する方法であって、ハロゲン化反応後の反応液に水を加えて2−ハロ−4−ニトロイミダゾールを析出させる工程を含む、上記製造方法。
【請求項21】
水が、2,4−ジニトロイミダゾールのハロゲン化反応後の反応液に、使用したハロゲン化剤の100質量部に対して25〜200質量部の量で加えられる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ハロゲン化剤が、2,4−ジニトロイミダゾールのハロゲン化反応のために2,4−ジニトロイミダゾール1モルに対して5〜20モルの量で使用される、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
ハロゲン化剤が、塩酸又は臭化水素酸である、請求項20から22までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
塩酸の濃度が、20〜38質量%である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
臭化水素酸の濃度が、20〜49質量%である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
4−ニトロイミダゾールをニトロ化反応に供する工程を含む1,4−ジニトロイミダゾールの製造方法であって、4−ニトロイミダゾールを、無水酢酸と50〜70質量%の濃度を有する硝酸によりニトロ化する上記製造方法。
【請求項27】
無水酢酸の量が、1モルの硝酸に対して2.5〜22.5モルの量で使用される、請求項26に記載の1,4−ジニトロイミダゾールの方法。
【請求項28】
硝酸の量が、1モルの4−ニトロイミダゾールに対して1〜5モルの量で使用される、請求項26又は27に記載の1,4−ジニトロイミダゾールの方法。
【請求項29】
ニトロ化反応が、15〜30℃の反応温度で行われる、請求項26から28までのいずれか一項に記載の1,4−ジニトロイミダゾールの方法。
【請求項30】
イミダゾールをニトロ化反応に供する工程を含む4−ニトロイミダゾールの製造方法であって、前記ニトロ化反応は、イミダゾールの硫酸溶液を65〜110℃に加温した後に、硝酸をそこに加えることによって行われるか、又は、前記ニトロ化反応は、イミダゾールの硝酸溶液を65〜110℃に加温した後に、硫酸を加えることによって行われる上記製造方法。
【請求項31】
加温前にイミダゾールを溶解する硫酸又は硝酸の量が、1モルのイミダゾールに対して2.5〜5モルの量である、請求項30に記載の4−ニトロイミダゾールの方法。
【請求項32】
硫酸の濃度が、95〜100質量%である、請求項30又は31に記載の4−ニトロイミダゾールの方法。
【請求項33】
硝酸の濃度が、50〜70質量%である、請求項30から32までのいずれか一項に記載の4−ニトロイミダゾールの方法。
【請求項34】
加温後にイミダゾールの硫酸溶液又は硝酸溶液に添加する硫酸又は硝酸の量が、加温前にイミダゾールを溶解する硫酸又は硝酸1モルに対して0.5〜2.0モルの量である、請求項30から33までのいずれか一項に記載の4−ニトロイミダゾールの方法。

【公表番号】特表2012−500183(P2012−500183A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507723(P2011−507723)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【国際出願番号】PCT/JP2009/065015
【国際公開番号】WO2010/021409
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(597060405)デイナミート ノーベル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング エクスプロジーフシュトッフ− ウント ジステームテヒニク (5)
【氏名又は名称原語表記】Dynamit Nobel GmbH Explosivstoff− und Systemtechnik
【住所又は居所原語表記】Kalkstrasse 218,D−51377 Leverkusen,Germany
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】