説明

2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンニトリル(HMTBN)の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブタンアミド(HMTBM)への接触変換のための方法

このプロセスは、活性相を含む固体触媒の存在下で実行される。触媒は調合されており、変換は本質的に強い無機酸を含まない媒質中で実行される。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、以下に示す2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタンニトリル(HMTBN)の2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタンアミド(HMTBM)への接触変換に関する。
【化1】

【0002】
このようにして得られたHMTBMは、例えば、メチオニンの水酸化類縁体である2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタン酸(HMTBA)の製造のために使用され得る。メチオニンは動物栄養における食品添加物として広く使用される必須アミノ酸である。
【0003】
数多くの文献が、2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチロニトリル(HMTBN)の2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチルアミド(HMTBM)および/または2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタン酸(HMTBA)への接触変換を記載する。
【0004】
例えばこの変換は、化学量論比または超化学量論比で硫酸のような強い無機酸が存在する元で記述されている。強い無機酸を使用する主な欠点は、HMTBNについて選択的な制御を不可能にするそれらの高い触媒活性であり、さらに、容易に利用できない非常に大量の無機生成物の副生成物を生じることである。特に、HMTBNに対する強い無機酸の触媒活性は、導入された全てのHMTBNが極めて迅速に変換されるほどである。生成したHMTBMは、特に水と反応してHMTBAおよびアンモニア水を生成する。例えば硫酸の場合は、放出されるアンモニア水と反応し得、その後に処理される必要がある硫酸アンモニウムを生成するであろう。
【0005】
環境的な理由から、この酸水和に対して提案された代替案の一つは、(例えば特許US6 900 037 B2およびWO 2002/070717によれば)ロドコッカス(Rhodococcus)のような、ニトリル水和酵素がHMTBNをHMTBMに変換することができる酵素によるプロセスである。このプロセスを不利にする主な欠点は、酵素を合成する難しさ、および、したがってHMTBNが得られた後に反応媒質からそれらを取出すことの難しさにある。反応媒質から酵素を取出すための特許WO 2002/00869によって提供される解決策は、酵素を含有する水不溶性の顆粒を使用することである。しかしながら、これらの顆粒を得るためのプロセスは複雑であり、顆粒中の酵素の触媒活性は非常に大きく減じられる。弱い触媒活性はHMTBMについてまさに選択的となり得るが、HMTBNのHMTBNへの変換のための反応の持続時間を延ばさなければならない。
【0006】
不均一触媒によるプロセスも既知である。米国特許US 5 386 056によれば、HMTBNの水和が、水/アセトン混合物(450/150)中で酸化マンガンをベースとするバルク触媒の存在下で実行される。使用される酸化マンガンの量は、シアノヒドリン1 molあたり0.75 molである。使用される酸化マンガンの性質に強く関係するので、この反応は再現することが困難であることが明らかとなっている。例えば、軟マンガン鉱の存在下では水和反応が生じないことが明らかである。さらに、この特許によるHMTBNの水和についての条件は、副生成物を生じずに再現性のある収率を得るために最適化することが容易であるとは思われない。
【0007】
特許FR 2 750 987は、硫黄原子上への酸化からの生成物を何ら生じることなく、低温下(0〜60℃)で、シリカに担持された酸化マンガンをベースとする触媒の存在のもと、水中でのHMTBNまたはメチルプロピオアミノニトリルシアノヒドリンの、対応するアミドへの水和のための反応を記載する。この特許によれば、MnO2/HMTBNまたはMnO2/メチルチオプロピオアミノニトリルシアノヒドリンのモル比は、0.05〜1.5である。シリカに対する酸化マンガンの重量比は、好ましくは5〜10 %である。この特許FR 2 750 987の例において、酸化マンガンをシリカ上に担持させることは反応の選択性を向上させることができるが、沈着された少量の活性相は、長い反応時間および/または非常に低いシアノヒドリン濃度を要することを意味することがわかる。
【0008】
反応媒質に使用される水の量は反応について本質的ではないが、反応時間があまりに長いか、および/または温度があまりに高い場合に、生成したHMTBMのいくらかが反応媒質の水と反応することがあり、HMTBAを生成するか、および/またはHMTBMの縮合副生成物を生じることが当業者に既知である。さらに、HMTBAの生成の場合は、放出されるアンモニア水が反応媒質の水素ポテンシャル(pH)の増大を誘起し、塩基性のpHでは、いまだ反応していないHMTBNの分解を生じ、その結果全体としてHMTBMの生成量が減少する。
【0009】
したがって、3つの連続する工程でHMTBAを作るためのプロセスを記載する特許EP 0 601 195 A1において、第1の工程は不均一触媒、好ましくは酸化マンガンまたは金属ボラート(四ホウ酸ナトリウム)の存在下でのHMTBNのHMTBMへの接触変換を含み、反応媒質の水の一部をアセトンまたはメタノールのような水溶性有機溶媒で置換し、反応の選択性を向上させるために硫酸を加えることが推奨される。この特許によれば、反応の効率水準を向上させるために硫酸が添加されるが、アンモニア水の生成を避けるために極めて限定された量で添加される。この例において、水/アセトン溶媒中、酸化マンガンおよび硫酸の存在下、60℃で6時間の反応の後に得られる最高のHMTBMの収率は89 %である。
【0010】
纏めると、先行技術は、HMTBNの水和のための強い触媒活性と、HMTBMについての良好な選択性とを調和させることは困難であることを示す。最高の効率水準は、酸化マンガンをベースとする触媒について記載される。特に、最高の選択性は、シリカに担持された酸化マンガンについて得られる。担持された酸化マンガンの含有量が低いことは、長い反応時間、または非常に低い濃度のHMTBNを含む反応媒質を示唆する。
【0011】
本発明の目的の一つは、先述したプロセスの代替案であるが、その欠点を持たないものを提供することである。
【0012】
したがって、本発明の第1の目的は、強い無機酸を添加することなく、望まれない副生成物の生成を抑え、無機廃棄物を生じず、かつHMTBNの分解を防ぐために、短い反応時間で2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタンニトリル(HMTBN)から2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタンアミド(HMTBM)を生成するための十分な活性および選択性がある固体触媒を提供することである。
【0013】
本発明の著者は、HMTBNのHMTBMへの選択的水和のための活性相を調合することは、反応時間を抑えることが可能な与えられた条件下で固体触媒を活性化することを可能にし、さらに反応の選択性を向上させることを発見している。触媒の調合は希釈剤中で実行される。
【0014】
HMTBNのHMTBMへの選択的水和のための活性相を希釈剤中で調合することは、反応にアクセス可能かつ有効な活性相の量を増やし、かつ触媒の機械的強度特性を向上させ得ることもわかっている。
【0015】
触媒の機械的強度を強化することは、反応媒質中での触媒の活性相の浸出に起因した、経時的な触媒活性の損失の抑制を可能にする。それ故に、本発明は触媒の寿命を向上させることもできる。
【0016】
最後に、調合された固体触媒を持つ他の利点は、連続する反応器中で反応を実行することを可能にすることである。したがって、反応時間は非常に容易に制御することができる。反応媒質からの触媒の分離が容易になる。例えば、触媒が温度で空気流のもと、反応器中で直接的に再生されることも想定され得る。
【0017】
したがって、本発明の第1の目的は、活性相を含む固体触媒の存在下でのHMTBNのHMTBMへの接触変換のためのプロセスであって、前記触媒は調合されており、かつ前記変換は本質的に強い無機酸を含まない媒質中で実行される。
【0018】
「本質的に強い無機酸を含まない」という表現は、存在する場合でもせいぜい痕跡量、すなわち媒質の総重量に対して0.1重量%未満の比率であることを意味する。
【0019】
この発明によれば、HMTBNのHMTBMへの選択的水和のための活性相は、少なくとも1つの金属酸化物で構成される。この活性相の比率は、好ましくは触媒の総重量に対して少なくとも30重量%である。
【0020】
これらの酸化物を構成する金属元素は、有利には、銅、ニッケル、鉄、ジルコニウム、マンガンおよびセリウム、ならびにその組合せを含む群より選択される。好ましい金属酸化物は酸化マンガンおよび酸化セリウムである。それらは、HMTBNのHMTBMへの選択的水和を促進するために、単独または組合せで存在し得る。
【0021】
本発明の他の特徴によれば、希釈剤は、酸化ジルコニウム、酸化チタン、アルミナ、シリカ、ベントナイトおよびアタパルジャイトのような粘土、ならびにその組合せを含む群より選択される。前記希釈剤の比率は、好ましくは触媒の総重量に対して最高で70重量%である。本発明の好ましい希釈剤として、シリカおよびアルミナ、ならびにその組合せについて言及がなされ得る。
【0022】
一般に、触媒の調合は、少なくとも活性相を調合する第1の工程、および、その後の熱処理の第2の工程を含む。調合プロセスの例として、バインダーの存在下での湿式造粒または押出しを用いたプロセスについて言及がなされ得る。熱処理工程は、一般に50〜100℃の(低温)乾燥工程であり、その後、活性相を露出させる目的の200〜600℃での焼成工程が続く。
【0023】
「バインダー」という用語は、水、天然ポリマー、有機ポリマーおよび糖類から選択される任意のバインダーであって、触媒の調製の間に活性相と希釈剤の結合を確保させ得ることを特徴とする。
【0024】
「天然ポリマー」という用語は、任意の天然ポリマー、例えばデンプン、ゼラチン、アルギン酸もしくはアルギン酸ナトリウム、およびその組合せを指すことを意図している。
【0025】
「有機ポリマー」という用語は、任意の有機ポリマー、例えばポリビニルピロリドン、メチルセルロースまたはポリエチレングリコール、ならびにその組合せを指すことを意図している。
【0026】
「糖類」という用語は、任意の糖類、例えばグルコース、スクロースまたはソルビトール、ならびにその組合せを指すことを意図している。
【0027】
このバインダーのリストは例示のために与えられ、網羅的なものではない。したがって、本発明のいくつかの特性を向上させ得る任意のバインダーが適切であり、毒性化合物を生成しないバインダーであるか、またはバインダー自体が環境もしくは触媒反応に対して有毒でないバインダーが好ましい。
【0028】
造粒によってこれらの組成物を得るためのプロセスの第1の態様は以下の、
- 調合される触媒の所望の組成によって規定される比率の活性相と希釈剤の粉末の混合物を調製する工程と、
- 所望される調合を有する小径の( < 1 mm)顆粒であって、開始剤と呼ばれる顆粒を作る工程と、
- バインダーの希釈液を調製する工程と、
- 開始剤をパン型造粒機とも呼ばれる造粒皿に導入し、予め調製された活性相と希釈剤の粉末の混合物を前記開始剤に連続的かつ緩徐に添加し、かつバインダー溶液を同時に噴霧する工程と、
- 「遠心分離によって自然に選別された」顆粒を作り、所望の粒径に到達次第、前記顆粒を回転速度および皿の傾斜によって皿から取出す工程と、
- 前記顆粒を乾燥させ、焼成する工程と
を含む。
【0029】
低剪断(low share)または高剪断(high share)のミキサー造粒によってこれらの組成物を得るためのプロセスの第2の態様が使用される。
【0030】
これらのミキサーは、粉体混合物を動かすことができるピン型またはプラウ剪断(ploughshare)型ブレードの1つ以上のローターを具備する。この態様は以下の、
- 調合される触媒の所望の組成によって規定される比率no
活性相と希釈剤の粉末の混合物を調製する工程と、
- バインダーを噴霧の形態で組入れ、それにより顆粒の成長を確保し、導入されるバインダーの量を制御することによって粒径分布を制御することを可能にする(その他重要な造粒パラメータは回転速度および接触時間パラメータである)工程と
を含む。
【0031】
引続いての球体化処理を伴うか、または伴わない顆粒は、引続いて乾燥され、焼成される。
【0032】
押出しによってこれらの組成物を得るためのプロセスの第3の態様は、以下の、
- 調合される触媒の所望の組成によって規定される比率の活性相と希釈剤の粉末の混合物を調製する工程と、
- バインダーを導入する工程と、
- ペーストが得られるまで混合物を混練する工程と、
- このようにして得られたペーストを所望の径のダイに導入する工程と、
- 所望の径の固体を回収し、所望される目的の長さに切断する工程と、
- 押出材を得る工程と、
- 押出材を乾燥させ、焼成する工程と
を含む。
【0033】
押出材は、粉末すなわち活性相と希釈剤の混合物、および、その後にバインダーを押出機に導入することによって連続的に作られる。ペーストは、このようにして例えばシングルまたはダブルスクリューによってインサイチュ(in situ)で作られ、その後、「スパゲッティストリング(spaghetti string)」の形態で押出され、その長さは調合によって、または例えばロータリーナイフによって機械的に制御される。それらは、引続いて乾燥され、その後、焼成される。
【0034】
本発明の触媒は、0〜100℃、より好ましくは20〜90℃の温度での、HMTBNのHMTBMへの非常に高度な選択的水和についての強い活性を示す。
【0035】
反応時間は、有利には45分超、好ましくは60分超である。
【0036】
HMTBNのHMTBMへの接触水和は、液相または気相で実行され得る。
【0037】
これらの条件下では、HMTBNは、溶液中で溶液の総重量に対して20〜80%存在する。HMTBNは水およびアセトンもしくはメタノールのような水溶性溶媒から選択される溶媒または溶媒の混合物中で溶液状態にある。
【0038】
本発明のプロセスの変形によれば、HMTBNはそれが作り出される反応媒質中に存在する。それは例えば、シアン化水素と3-(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(MTPA)の反応によって、あるいはアクロレインとシアン化水素から、中間生成物を単離することなく、その後にメチルメルカプタン(MSH)を添加することによって得ることができる。
【0039】
HMTBNのHMTBMへの接触水和は、閉鎖系の反応器中で、または連続的に実行され得る。工業的には、反応は連続反応器中で触媒の固定床によって実行されるか、または完全に攪拌された反応器中で実行され得る。特に触媒の固定床による連続反応が好ましい。
【0040】
先述したように、本発明のプロセスは、2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタン酸(HMTBA)の調製に有利に使用され得、以下の、
- 先に定義された本発明のプロセスによってHMTBNのHMTBMへの変換を実行する工程と、
- HMTBMのHMTBAへの変換を実行する工程と
を含む。
【0041】
HMTBMのHMTBAへの変換のための工程は、当業者に周知の条件で実行され得る。
【0042】
したがって、この工程は、好ましくは二酸化チタンおよび二酸化ジルコニウムから選択された1つ以上の金属酸化物をベースとする触媒の存在下で接触によって実行され得る。
【0043】
この変換工程は、H2SO4、H3PO4およびHClから選択される無機酸のような酸の存在下での水和によっても実行され得る。例として、酸はH2SO4であり、反応条件は出願EP-A-1 097 130中に記載されたものである。
【0044】
HMTBAは、アミダーゼの存在下でHMTBMから酵素によっても実行され得る。
【0045】
アンモニウム塩(HMTBS)の形態で得られる場合、任意でHMTBAとの混合物としてのアンモニウム塩は、中和、電気透析および蒸留から有利に選択される変換処理を受ける。中和工程は樹脂上で実行されるか、または酸中和によって実行され得る。
【0046】
以下の例の目的は、その範囲を限定することなく本発明を説明することである。
【0047】
例1:触媒Aの調製
90重量%の酸化セリウムおよび10重量%のアルミナの組成を持つ調合触媒が湿式造粒によって調製される。
【0048】
この触媒を調製するために、Rhodiaからの酸化セリウムHSA-5およびCondeaからのアルミナSB3およびバインダーとしての水が使用される。
【0049】
90重量%の酸化セリウムおよび10重量%のアルミナで構成された粉末の混合物が調製される。この組成物のための10重量%の開始剤が、造粒皿中で調製される。粉末の混合物はその後、連続的に、緩徐に導入され、かつ造粒を効率的にするために水が同時に噴霧される。作られた顆粒は、「遠心分離によって自然に選別」され、前記顆粒は、粒径が(4〜5 mm)に到達次第、回転の速度および皿の傾斜によって皿から取出される。
【0050】
それらは回収され、60℃のオーブン中で12時間乾燥され、その後、500℃で2時間焼成される。
【0051】
例2:触媒Bの調製
90重量%のα型の酸化マンガンおよび10重量%のアルミナの組成を持つ調合触媒が押出しによって調製される。
【0052】
この触媒を調製するために、Comilogからのα型酸化マグネシウムHAS (バッチ番号103514-12)およびCondeaからのアルミナSB3が使用される。
【0053】
「90重量%のα型酸化マンガン」および「10重量%のアルミナ」の粉末が混合される。
【0054】
67 gの粉末の混合物がブラベンダー混練機に導入され、32 mLの精製水が8分間に渡って導入される。水を導入した後の混練時間は20分である。得られたペーストはその後、1.5 mmの多孔ダイに導入される。作られたスパゲッティストリングは滑らかで、容易に千切れる。それらは60℃のオーブン中で18時間乾燥される。これらの乾燥されたスパゲッティストリングはその後、400℃にて2時間の工程で焼成される。
【0055】
焼成の後に得られた押出材は、3〜20 mmの範囲の長さを持つ。
【0056】
比較例3:特許FR 2 750 987による触媒Cの調製
1リットルの一口フラスコ中で、常温下で水(240 mL)中にKMnO4 (15.6 g; 95.9 mmol)を溶解する。その後、シリカ60 (Merck、240 g)を添加し、混合物を2時間機械的に攪拌する。ロータリーエバポレーター(浴温60℃)によって、真空下で水を除去する。次に、得られた紫色の粉末を、激しく攪拌されたMnSO4-H2O (37.2 g; 220.1 mmol)の水溶液(400 mL)に添加する。混合物を3時間攪拌し、茶色がかった固体を、ガラス濾過器を通して濾過する。この固体を、マンガンイオン(アンモニア水による処理によって沈殿が形成されることを特徴とする)が洗浄水中から完全に消失するまで水で洗浄する。固体をフィルタ上で完全に脱水し、ペトリ皿に置く。層の厚さは0.5 cmである。乾燥は、110℃で通気されたオーブン中で2時間実行される。このようにして得られた細かい茶色の粉末の重量は248 gである。
【0057】
例4:粉末触媒A、BおよびCの存在下、2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタンニトリルの2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタンアミドへの水和
この例は、先の例の組成物の存在下、かつ以下の条件での、2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタンニトリルの変換を測定した結果を与える。
【0058】
上記例のうちの一つによる5 gの化合物を粉砕し、100〜200 μmの粒径画分を回収するための篩にかける。
【0059】
この粒径画分0.6 gをショット(Schott)管中に導入する。HMTBNの23重量%水溶液で構成された反応混合物を、触媒を入れたショット管中に導入する。その後、磁気攪拌子をショット管中に置き、反応混合物を均質化するために攪拌する。
【0060】
このようにして仕込まれたショット管を、その後75℃まで加熱する。初期反応時間は、75℃の温度に到達する時点までと考える。
【0061】
60分の反応の後、加熱を停止し、濾過によって触媒を反応媒質から取出す。濾液の組成はHPLCによって分析される。
【0062】
時間tでのHMTBNの変換は、最初に導入されたHMTBNについて計算され、時間tでのHMTBMおよびHMTBAのような種々の反応生成物についての選択性は、時間tで生成したこの生成物の量および時間tでのHMTBNの量について計算される。
【0063】
粉末触媒の触媒性能を表1に与える。
【表1】

【0064】
本発明の組成物(AおよびB)が、特許FR 2 750 987中に記載された触媒(C)よりも強い触媒活性を持つことが、表1中の結果からわかる。硫酸を添加せず75℃で60分間の反応の後、HMTBNの変換は、本発明の例については90%超であり、それらのHMTBMについての選択性は70 %超であるが、比較例の触媒(C)は13 %のHMTBNの変換、およびHMTBMについて63 %の選択性しか示さない。
【0065】
例5:触媒Bの存在下、2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタンニトリルの2-ヒドロキシ-4-メチルチオブチルアミドへの水和
この例は、時間に渡る触媒Bの存在下、かつ以下の方法での、2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタンニトリルの変換を測定した結果を与える。
【0066】
例2に記載された80 mLの触媒Bを、流再循環によって固定床バッチ反応器中に導入する。反応流中でHMTBNが28重量%となるように水で希釈された180 mLのHMTBNの工業流(industrial flow)を反応器中に導入する。反応流を12 L/hの循環流量にて、反応器中で循環させる。反応器を75℃の温度にする。最初の反応時間は、75℃の温度に到達する時点までと考える。流の試料は、反応の進行をモニターするために、反応の経過に渡って採取される。採取される量はごく少量であり、流量は反応の間中一定であると考えられる。採取された試料の組成はHPLCによって同定される。
【0067】
時間tでのHMTBNの変換は最初に導入されたHMTBNについて計算され、時間tでのHMTBMについての選択性は、時間tでのHMTBMの量および時間tでの変換されたHMTBNの量について計算される。
【0068】
時間に渡る触媒Bの触媒性能を図1に与える。
【0069】
触媒BがHMTBNの水和に対して非常に活性があり、HMTBMについて非常に選択性があることが図1からわかる。さらに、生成したHMTBMは経時的に非常に安定であり、かつHMTBAに分解しない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性相を含む固体触媒の存在下での2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタンニトリル(HMTBN)の2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタンアミド(HMTBM)への接触変換のためのプロセスであって、前記触媒は調合されており、前記変換は本質的に強い無機酸を含まない媒質中で実行されることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記触媒の前記活性相が、酸化銅、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化マンガンおよび酸化セリウム、ならびにこれらの酸化物の組合せから選択される少なくとも1つの金属酸化物を含むことを特徴とする請求項1によるプロセス。
【請求項3】
前記触媒が、少なくとも1つの希釈剤の存在下で調合されることを特徴とする請求項1または2によるプロセス。
【請求項4】
前記希釈剤が、酸化ジルコニウム、酸化チタン、アルミナ、シリカ、ベントナイトおよびアタパルジャイトのような粘土、ならびにその組合せから選択されることを特徴とする請求項3によるプロセス。
【請求項5】
前記活性相の比率が、前記触媒に対して少なくとも30 % (w/w)であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1項によるプロセス。
【請求項6】
前記希釈剤の比率が、前記触媒に対して最高で70 % (w/w)であることを特徴とする請求項3〜5のうちのいずれか1項によるプロセス。
【請求項7】
前記触媒が、押出しおよび湿式造粒から選択される第1の工程、および、その後の熱処理の第2の工程によって調合されることを特徴とする先行する請求項のうちのいずれか1項によるプロセス。
【請求項8】
前記調合工程が、前記活性相と前記希釈剤の間の結合を確保するバインダーを伴って実行されることを特徴とする請求項7によるプロセス。
【請求項9】
前記バインダーが、水、天然ポリマー、有機ポリマーおよび糖類から選択される請求項8によるプロセス。
【請求項10】
前記熱処理工程が乾燥およびその後の焼成であることを特徴とする請求項7によるプロセス。
【請求項11】
前記変換が、0〜100℃、好ましくは20〜90℃の範囲の温度で実行されることを特徴とする請求項1〜10のうちのいずれか1項によるプロセス。
【請求項12】
前記変換の持続時間が、45分超、好ましくは60分超であることを特徴とする請求項1〜11のうちのいずれか1項によるプロセス。
【請求項13】
前記HMTBNが、溶液中で総重量に対して20〜80重量%存在することを特徴とする請求項1〜12のうちのいずれか1項によるプロセス。
【請求項14】
前記HMTBNが、水およびアセトンもしくはメタノールのような水溶性溶媒から選択される溶媒または溶媒の混合物中で溶液状態にあることを特徴とする請求項13によるプロセス。
【請求項15】
前記HMTBNが、HMTBNが作り出される反応媒質中に存在することを特徴とする請求項1〜13のうちのいずれか1項によるプロセス。
【請求項16】
前記HMTBNが、シアン化水素と3-(メチルチオ)プロピオンアルデヒド(MTPA)の反応によって得られることを特徴とする請求項15によるプロセス。
【請求項17】
前記HMTBNがアクロレインとシアン化水素から、中間性生物の単離をせずに、次にメチルメルカプタン(MSH)を添加することによって得られることを特徴とする請求項15によるプロセス。
【請求項18】
2-ヒドロキシ-4-メチルチオブタン酸(HMTBA)を作るためのプロセスであって、以下の、
- HMTBNのHMTBMへの変換を請求項1〜17のうちのいずれか1項に規定されたプロセスによって実行する工程と、
- 前記HMTBMのHMTBAへの変換を実行する工程と
を含むことを特徴とするプロセス。
【請求項19】
前記HMTBMをHMTBAに変換するための工程が、好ましくは二酸化チタンおよび二酸化ジルコニウムから選択される1つ以上の金属酸化物をベースとする触媒の存在下で実行されることを特徴とする請求項18によるプロセス。
【請求項20】
前記HMTBMのHMTBAへの変換のための工程が、アミダーゼの存在下で酵素によって実行されることを特徴とする請求項18によるプロセス。
【請求項21】
前記HMTBNのHMTBAへの変換のための工程が、好ましくはH2SO4、H3PO4およびHClから選択される無機酸の存在下での前記HMTBMの水和によって実行されることを特徴とする請求項18によるプロセス。
【請求項22】
前記HMTBMの水和が、硫酸を含む水溶液中で実行されることを特徴とする請求項21によるプロセス。
【請求項23】
前記HMTBAが、アンモニウム塩であるHMTBSの形態で得られることを特徴とする請求項18〜22のうちのいずれか1項によるプロセス。
【請求項24】
前記HMTBAが、前記アンモニウム塩から中和、電気透析および蒸留から選択される少なくとも1つの工程によって得られることを特徴とする請求項23によるプロセス。
【請求項25】
前記中和工程が樹脂上で実行されるか、または酸中和によって実行されることを特徴とする請求項24によるプロセス。

【図1】
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【公表番号】特表2010−535182(P2010−535182A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518723(P2010−518723)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051432
【国際公開番号】WO2009/024712
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(504437960)アディッセオ・アイルランド・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】