説明

2−フェニルベンズイミダゾールおよび2−フェニルインドール、その製造方法ならびに使用

【課題】従来技術の欠点を有しない、適当な水溶性を有する非常に効果的なPARP阻害剤を提供する。
【解決手段】一般式Iの置換された2−フェニルベンズイミダゾールおよび2−フェニルインドール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規2−フェニルベンズイミダゾールおよび2−フェニルインドール、その製法および薬剤製造のための酵素ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼまたはPARP(EC2.4.2.30)阻害剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)またはポリ(ADP−リボース)シンターゼ(PARS)は、公知のように、細胞核中に見出される調節酵素である(K. Ikai等、J. Histochem. Cytochem. 1983、31、1261〜1264)。PARPはDNAブリッジの修復に重要な役割を果たすと考えられている(M. S. Satho等、Nature 1992、356、356〜358)。DNA鎖の損傷または破壊は酵素PARPを活性化し、PARPは活性時にNADからADP−リボースへの変換を触媒する(S. Shaw、 Adv. Radiat. Biol.、1984、11、1〜69)。この過程の間に、NADからニコチンアミドが放出される。他の酵素のエネルギーキャリアーATPが滅失すると、ニコチンアミドは再度NADに変換される。PARPが過剰に活性化されると非生理学的にATPが多量消費され、極端な場合にはこれにより細胞損傷および細胞死が誘導される。
【0003】
スーパーオキシドアニオン、NOおよび過酸化水素のようなフリーラジカルが細胞中でのDNA損傷を誘発しPARPを活性化することは公知である。様々な異常生理条件において多量のフリーラジカル形成が見られ、このことから、フリーラジカルの蓄積が観察細胞および組織の損傷を誘導したりその原因となったりすると考えられる。例えばこれには、組織の虚血状態、例えば卒中、心筋梗塞(C. Thiemermann等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1997、94、679〜683)または腎臓の虚血だけでなく、例えば 心筋梗塞の消散後に生じるような再灌流損傷も含まれる(前記参照:C. Thiemermann等)。従って、酵素PARPの阻害は、このような障害を少なくとも部分的に予防または緩和することを意味すると言える。PARP阻害剤は、多くの疾患の治療のための新規治療手段となり得る。
【0004】
酵素PARPはDNA損傷の修復に影響を及ぼし、細胞増殖抑制作用物質との組合せが腫瘍組織に対してより高い作用能力を発揮することから、癌性疾患の治療に重要な役割を果たすことができる(G. Chen等、Cancer Chemo. Pharmacol. 1988, 22, 303)。
【0005】
腫瘍の例は、白血病、神経膠芽腫、リンパ腫、メラノーマ、乳癌および子宮頚癌であるが、これに限定するものではない。
【0006】
さらに、PARPが免疫抑制作用を示すことが見出された(D. Weltin等、Int. J. Immunopharmacol. 1995, 17, 265〜271)。
【0007】
PARPが、免疫不全またはリウマチ様関節炎および敗血症ショックのような免疫系が重要な役割を担う疾患に関連し、PARP阻害剤が、疾患の経過に好ましい影響を及ぼすことが見出された(H. Kroeger等、Inflammation 1996, 20, 203〜215;W. Ehrlich等、Rheumatol. Int. 1995, 15, 171〜172;C. Szabo等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1998、95、3867〜3872;S. Cuzzocrea等、Eur. J. Pharmacol. 1998, 342, 67〜76)。
【0008】
本発明の意味する範囲で、PARPは前記PARP酵素のイソ酵素をも意味するものと理解される。
【0009】
さらに、PARP阻害剤3−アミノベンズアミドは、循環ショックのためのモデルにおいて防護効果を示した(S. Cuzzocrea等、Br. J. Pharmacol. 1997, 121, 1065〜1074)。
【0010】
同様に、酵素PARPの阻害剤が糖尿病治療薬として有用であるという試験的示唆もある(V. Burkart等、Nature Med. 1999, 5, 314〜319)。
【0011】
2−フェニルベンズイミダゾールは広く記載されている。従ってDE3830060には、赤血球凝集阻害剤としてアルキル化誘導体が記載されている。DE3522230には、2−フェニルベンズイミダゾールのエステル誘導体が血小板凝集阻害剤として記載されている。フェニル環上に置換されたアミン基を有するハロゲン−置換2−フェニルベンズイミダゾールがMCP−1拮抗剤として、WO9806703に記載されている。
【0012】
ベンズイミダゾール基がアミド基により置換された2−フェニルベンズイミダゾールも公知である。WO9412461には、フェニル環にアルキルオキシ基を有する2−フェニルベンズイミダゾールの5−アミド誘導体が、cAMPホスホジエステラーゼの阻害剤として記載されている。類似誘導体がDE3546575に記載され(例、実施例15)、これらの化合物は陽性の変力作用を有する。3位にピリジル基を有する4−アミド誘導体もcAMPホスホジエステラーゼ阻害剤として、WO9748697に記載されている。
【0013】
2−フェニルベンズイミダジル−4−アミドの合成が、J. Chem. Soc. Perkin Trans 1, 1979, 2303〜2307に記載されている。アミド基上に別の置換されたアルキル鎖を有しかつ細胞毒性作用を有すると言われる類似化合物が、J. Med. Chem. 1990, 33, 814〜819に記載されている。WO9704771には、しかしながら、PARSを阻害するベンズイミダゾール−4−アミドが記載される。特に、2位にフェニル環を有する誘導体が活性であると記載され、フェニル環は付加的に簡単な置換基、例えばニトロ、メトキシおよびCFで置換されていてもよい。これらの物質が酵素PARPに対して優れた阻害作用を示す場合であっても、記載される誘導体は水溶液に僅かしかまたは全く溶解せず、従って水溶液として投与することができないという欠点を有する。
【0014】
卒中のような様々な治療において、有効化合物を輸液として静脈投与する。このとき有効物質、ここではPARP阻害剤が、生理学的なpHまたはその近隣のpH(例、pH5〜8)において十分な水溶性を示さなければならず、そうであれば輸液を製造できる。しかし、記載した多くのPARP阻害剤、特に活性の高いPARP阻害剤は、これらのpHで低い水溶性しか示さないかまたは全く水に溶解しないという欠点を有し、従って、静脈投与には不向きである。この種の有効化合物は、水溶性の改善を目的とする助剤を併用して投与することだけが可能である(WO9704771参照)。これらの助剤は例えば、ポリエチレングリコールおよびジメチルスルホキシドであるが、しばしば副作用を誘発し不耐性でさえある。適当な水溶性を有する非常に効果的なPARP阻害剤は、これまで記載されていない。
【特許文献1】DE3830060
【特許文献2】DE3522230
【特許文献3】WO9806703
【特許文献4】WO9412461
【特許文献5】DE3546575
【特許文献6】WO9748697
【特許文献7】WO9704771
【非特許文献1】K. Ikai等、J. Histochem. Cytochem. 1983、31、1261〜1264
【非特許文献2】M. S. Satho等、Nature 1992、356、356〜358
【非特許文献3】S. Shaw、 Adv. Radiat. Biol.、1984、11、1〜69
【非特許文献4】C. Thiemermann等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、1997、94、679〜683
【非特許文献5】G. Chen等、Cancer Chemo. Pharmacol. 1988, 22, 303
【非特許文献6】D. Weltin等、Int. J. Immunopharmacol. 1995, 17, 265〜271
【非特許文献7】H. Kroeger等、Inflammation 1996, 20, 203〜215
【非特許文献8】W. Ehrlich等、Rheumatol. Int. 1995, 15, 171〜172
【非特許文献9】C. Szabo等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1998、95、3867〜3872
【非特許文献10】S. Cuzzocrea等、Eur. J. Pharmacol. 1998, 342, 67〜76
【非特許文献11】S. Cuzzocrea等、Br. J. Pharmacol. 1997, 121, 1065〜1074
【非特許文献12】V. Burkart等、Nature Med. 1999, 5, 314〜319
【非特許文献13】J. Chem. Soc. Perkin Trans 1, 1979, 2303〜2307
【非特許文献14】J. Med. Chem. 1990, 33, 814〜819
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の課題は、従来技術の欠点を有しない、適当な水溶性を有する非常に効果的なPARP阻害剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
意外にも、フェニル環に付加的にアミン基を有する2−フェニルベンズイミダゾールが大変有効な阻害剤であることが見出され、この阻害剤は、脂肪族アミン基が組み込まれることにより酸との塩形成が可能となって、結果的に水溶性が著しく増大している。
【0017】
本発明では、式Iの新規2−フェニルベンズイミダゾールおよび2−フェニルインドール誘導体が記載され、これはすでに記載された化合物と比較して利点を有しかつ潜在的なPARP阻害剤であると同時に適当な水溶性を示し、輸液としての投与が可能である。
【0018】
本発明は、一般式I:
【化1】

[式中、
Aは、NまたはCHであり、
は、水素、分枝鎖および直鎖C〜C−アルキルであり、この際、アルキル基の1つの炭素原子がさらにOR11または基Rをを有していてよく、ここで
11は、水素またはC〜C−アルキルであり、
は、水素、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、分枝鎖および直鎖C〜C−アルキル、ニトロ、CF、CN、NR2122、NH−CO−R23、OR21であり、ここで
21およびR22は相互に独立して水素またはC〜C−アルキルであり、
23は、水素、C〜C−アルキルまたはフェニルであり、
は、−(CH−NR3132、−(CH−NR3334であり、この際qは0、1、2または3であってよく、
31は、水素、C〜C−アルキル、(CHNR3334であり、
32は、(CHNR3334であり、
ここで、R31およびR32が相互に独立している場合には、rは、2、3、4、5または6であり、R33およびR34は、相互に独立して水素、C〜C−アルキル、窒素原子といっしょになった付加的にO、N−C〜C−アルキル、N−C〜C−フェニルまたはNHから選択されるヘテロ原子を有する3〜8個の原子から成る環であり、フェニル−C〜C−アルキルであり、この際、フェニル環はC〜C−アルキル、ハロゲン、ニトロ、SONR3536(R35、R36は相互に独立して水素、C〜C−アルキルまたは窒素原子といっしょになった付加的にO、S、SO、N−C〜C−アルキル、N−C〜C−フェニルまたはNHから選択されるヘテロ原子を有する3〜8個の原子から成る環である)、C〜C−アルコキシ、S(O)−R37(R37は、水素、C〜C−アルキルである)、CF、(CH0〜4−COR37、(CH0〜4−NR3536、(CH0〜4CONR3536、(CH0〜4OR37−CHCOOR37から成る群より選択される3個までの同一または異なる置換基で置換されていてよく、
は、水素、分枝鎖および直鎖C〜C−アルキル、塩素、臭素、フッ素、ニトロ、シアノ、NR4142、NH−CO−R43、OR41であり、ここで
41およびR42は相互に独立して水素またはC〜C−アルキルであり、
43は、C〜C−アルキルまたはフェニルである]の置換された2−フェニルベンズイミダゾールおよび2−フェニルインドールに関する。
【0019】
一般式I中の基Rの有利な位置は、ベンズイミダゾール環に対して3位または4位である。基Rも同様に、ベンズイミダゾール環に対して3位または4位が有利である。
【0020】
有利なAは窒素である。
【0021】
有利なRは水素である。
【0022】
有利なRは、水素、分枝鎖または直鎖C〜C−アルキル、ニトロ、CN、NH、O−C〜C−アルキルである。Rは、特に有利に水素である。
【0023】
有利なRは、(CH1〜2NR3536およびN(R37)−(CH2〜3NR35であり、ここでR37は水素およびC〜C−アルキルであってよく、R35およびR36は、相互に独立して水素およびC〜C−アルキルおよびいっしょになったNR3536として、ピペリジン、ピロリジン、アゼピンおよびピペラジンのような脂環式アミンであってもよく、ここで2級N原子上のピペラジンは付加的に水素またはC〜C−アルキルで置換されていてよい。
【0024】
有利なRは水素である。
【0025】
前記の有利な内容を個々に組み合わせたものが特に有利である。
【0026】
式Iの化合物はラセミ化合物として、エナンチオマーの純化合物またはジアステレオマーとして使用できる。エナンチオマーの純化合物が所望される場合、これを、例えば旋光性を有する好適な塩基または酸を用いて式Iの化合物またはその中間体を古典的に分割することにより獲得する。
【0027】
本発明は、式Iの化合物のメソメリーまたは互変異性化合物にも関する。
【0028】
本発明はさらに、式Iの化合物の生理学的に認容性の塩に関し、これは式Iの化合物を好適な酸または塩基と反応させることにより獲得できる。好適な酸および塩基は、例えばFortscheitte der Arzneimittelforschung, 1996, Birkhaeuser Verlag, Vol. 10, 224〜285に列挙される。これらには、例えば塩酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、リン酸、メタンスルホン酸、酢酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸等、および水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムおよびトリスがある。
【0029】
プロドラッグは、in vivoで一般式Iの化合物に代謝される化合物を意味すると理解される。典型的なプロドラッグは、アミノ酸のホスフェート、カルバメート、エステルおよびその他である。
【0030】
本発明の物質Iは、WO9806703に概要されるベンズイミダゾールおよびインドールの製法、および合成スキーム1〜3に類似する様々な方法で製造できる。
【0031】
【数1】

【0032】
ベンズイミダゾールVIIはベンズアルデヒドをフェニレンジアミンと縮合することにより得られ、反応は有利に極性溶媒、例えばエタノールまたはジメチルホルムアミド中で、酢酸のような酸を添加し、原則的に80〜120℃の高温で実施する。水溶液として添加される銅(II)塩のような弱酸を添加するのがこの反応には好適である。
【0033】
【数2】

【0034】
フェニレンジアミンVII中でR=NHであれば、本発明のIの化合物は縮合により直接形成される。同様に、R=O−アルキルの場合、このエステルは場合により高温高圧でアンモニアと反応させてアミドIを得る。さらに、エステルVIIIは、アルコール、ブタノールおよびエタノールまたは別のジメチルホルムアミドのような極性溶媒中で、有利には80〜130℃の高温でヒドラジンと反応でき、ヒドラジドVIII(R=NHNH)を付加的に、還流下でアルコール中のラネーニッケルのような還元条件下で還元し、アミドIを得ることができる。
【0035】
I(R=H)中のベンズイミダゾール基への基Rの導入は、前記のようなアルキル化条件で実施するが(V〜VI参照)、反応成分R−L(L=前記の脱離基)を使用しなければならない(スキーム1参照)。
【0036】
【数3】

【0037】
スキーム1のベンズアルデヒドVIに代わり、XI(スキーム2参照)の安息香酸またはXIV(スキーム3参照)のベンゾニトリルを、ベンズアルデヒドの代わりに使用できる。これらの誘導体の製造は、置換ベンズアルデヒドVの製造に類似して実施される。XIから出発し、二段階で縮合してVIIを得る。最初に、安息香酸XIをアニリンVIとペプチド様結合により反応させてアミドXIIを得る。この反応を、Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie(Methods of Organic Chemistry)、4th Ed. E5, Chap. VまたはC.R. Larock, Comprehensive Organic Trasformations, VCH Publisher, 1989, 972に列挙されるような慣用の条件で実施する。ベンズイミダゾールを得るための閉環を、60〜180℃のような高温で、ジメチルホルムアミドのような溶剤の存在または不在下に、酢酸のような酸を添加してまたは酢酸中で直接実施する。
【0038】
フェニレンジアミンVIIとベンゾニトリルXIVとの反応を同様に慣用の条件下に実施する。この場合の反応を、ジメチルホルムアミドのような溶剤中で酸を添加して、またはポリホスホン酸中で、60〜200℃の高温で実施する。しかし、ベンゾニトリルからアミジンを製造する慣用の方法、例えばHouben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie, E5, 1304、f. J. Amer. Chem. Soc. 1957, 427およびJ. Org. Chem. 1987, 1017に記載される方法を利用してもよい。
【0039】
本発明の置換した2−フェニルベンズイミダゾールおよび2−フェニルインドールIは、酵素ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼまたはPARP(EC2.4.2.30)の阻害剤である。
【0040】
本発明の置換した2−フェニルベンズイミダゾールおよび2−フェニルインドールIの阻害作用を、文献公知の酵素試験を利用して測定し、活性標準としてK値を測定した。2−フェニルベンズイミダゾールおよび2−フェニルインドールIを、酵素ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼまたはPARP(EC2.4.2.30)の阻害作用に関する方法により測定した。
【0041】
一般式Iの置換された2−フェニルベンズイミダゾールおよび2−フェニルインドールは、いわゆるポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)またはポリ(ADP−リボース)シンターゼ(PARS)の阻害剤であり、従って、これらの酵素の酵素活性の上昇に関連する疾患の治療および予防に利用できる。
【0042】
式Iの化合物は、虚血後の障害の治療薬の製造および様々な組織で虚血が予測される場合の予防に使用できる。
【0043】
本発明の一般式Iの2−フェニルベンズイミダゾールおよび2−フェニルインドールは従って、虚血、外傷(頭部外傷)、塊状出血、くも膜下出血および卒中の後に起こる神経変性疾患の治療および予防、多梗塞性痴呆(muotiple infarct dementia)のような神経変性疾患、アルツハイマー病、ハンチントン病およびてんかん、特に全身性のてんかん発作、例えば小発作および強直間代発作および局所性のてんかん発作、例えば側頭葉てんかんおよび複雑部分発作の治療および予防、さらに、虚血性心疾患後の心臓の障害および腎性虚血後の腎臓の障害、例えば急性腎臓機能不全、急性腎不全または腎移植中および後に起こる障害の治療および予防のために使用できる。一般式Iの化合物は、さらに、急性心筋梗塞およびその医薬による(例えばTPA、レテプラーゼ、ストレプトキナーゼによる、もしくはレーザーまたはロタブレーター(Rotablator)を用いた機械的な手段による)消散時および消散後に生じる障害および心臓弁置換術、動脈瘤切除および心臓移植時および後の微小梗塞の治療のために使用できる。同様に、本発明の2−フェニルベンズイミダゾールおよび2−フェニルインドールIを、重篤な狭窄冠状動脈、例えばPTCAおよびバイパス手術ならびに重篤な狭窄末梢動脈、特に脚の動脈の血管再生における治療に使用できる。さらに、2−フェニルベンズイミダゾールおよび2−フェニルインドールIは、腫瘍およびその転移の化学療法にとって有益であり、炎症およびリウマチ様関節炎のようなリウマチ障害の治療に使用できる。
【0044】
慣用の医薬助剤に加えて、本発明の医薬品は治療有効量の化合物Iを含有する。
【0045】
粉剤、軟膏またはスプレーのような局所的な外用のために、有効化合物を慣用の濃度で含有してよい。原則的に、有効化合物は0.001〜1質量%、有利に0.001〜0.1質量%の量で含有される。
【0046】
内用の場合、製造物は個体量で投与される。個体量では、体重1kgに対して0.1〜100mgで提供される。製造物は疾患の特性および程度に応じて、一日に一回以上の量で投与される。
【0047】
所望の投与形態に応じて、本発明の医薬品は、有効化合物に加え慣用の担体および希釈剤を含有する。局所外用の場合には、工業的な医薬助剤、例えばエタノール、イソプロパノール、エトキシル化ヒマシ油、エトキシル化水素化ヒマシ油、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコステアリン酸、エトキシル化脂肪族アルコール、パラフィン油、ワセリンおよび羊毛脂を使用できる。内用には、例えば乳糖、プロピレングリコール、エタノール、デンプン、タルクおよびポリビニルピロリドンが好適である。
【0048】
抗酸化剤、例えばトコフェロールおよびブチル化ヒドロキシアニソールならびにブチル化ヒドロキシトルエン、調味添加物、安定化剤、乳化剤および滑沢剤をさらに含有していてよい。
【0049】
製造物中に有効化合物の他に含有される物質および医薬品製造に使用される物質は毒性に関して認容性であり、各有効化合物と混和性である。医薬品の製造は、慣用の方法、例えば有効化合物を多の慣用の担体および希釈剤と混合することにより実施される。
【0050】
医薬品は種々の投与方法、例えば経口投与、非経口投与、例えば輸液の静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与および局所投与により投与できる。従って、製造物の形、例えば錠剤、乳剤、輸液および注射溶液、ペースト、軟膏、ジェル、クリーム、ローション、粉剤およびスプレーが可能である。
【実施例】
【0051】
例1
2−(4−(N,N−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチ−1−イルメチルアミノ)フェニル)−ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
a)エチル2−(4−N,N−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチ−1−イルメチル−アミノ)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキシレート
エチル2,3−ジアミノベンゾエート2.0g(12mmol)をメタノール100ml中に溶解し、酢酸1.7ml(27.7mmol)と混合した。4−(2−(N,N−ジエチルアミノ)−エチ−1−イルメチルアミノ)ベンズアルデヒド2.4g(10.1mmol)をメタノール100ml中に溶解し、次いで30分かけて滴加した。水(30ml)中の酢酸銅(II)1.7g(8.5mmol)溶液を次いで滴加し、さらに全体を還流下に50分加熱した。反応溶液を50℃まで冷却し、32%濃度の塩酸20mlを注意深く添加した。水20ml中の硫化ナトリウム水和物3.9g(16.2mmol)も滴加し、全体を10分間攪拌した。沈殿物を吸引濾過し、濾液を炭酸水素ナトリウム水溶液の添加によりアルカリ性にした。水相を酢酸エチルで抽出し、有機相を分離し、乾燥し、真空中で濃縮した。生成物2.6gを得た。
b)2−(4−(N,N−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチ−1−イルメチルアミノ)フェニル)−ベンズイミダゾール−4−カルボヒドラジド
中間体1 2.6g(6.8mmol)およびヒドラジン水化物3.4g(68.3mmol)をn−ブタノール70mlへ添加し、混合物を120℃で12時間加熱した。ブタノールを真空中で除去した。得られた残留物を水と酢酸エチルとに分配した。有機相を分離し、乾燥し、真空中で濃縮した。生成物1.1gを得た。
c)2−(4−(N,N−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチ−1−イルメチルアミノ)フェニル)−ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
ラネーニッケル1gを、ジメチルホルムアミド30ml中の中間体1b 1.1g(2.9mmol)へ添加し、全体を120℃で8時間加熱した。反応混合物を濾過し、濾液を真空中で濃縮した。得られた残留物を水と酢酸エチルとに分配した。有機相を分離し、乾燥し、真空中で濃縮した。生成物0.9gを得た。
【0052】

【0053】
例2
2−(4−(N,N−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチ−1−イルメチルアミノ)フェニル)−ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
化合物を例1の方法と同様にして製造した。
【0054】

【0055】
例3
2−(3−(2−(N,N−ジメチルアミノ)エチ−1−イル)−4−ニトロフェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
a)メチル3−(E−2−N,N−ジメチルアミノエテン−1−イル)−4−ニトロベンゾエート
エチル3−メチル−4−ニトロベンゾエート10g(47.8mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール30mlをジメチルホルムアミド100ml中で8時間還流した。次いで混合物を真空中で濃縮した。残留物をトルエン100ml中に溶解し、石油エーテルの添加により生成物を沈殿させた。生成物7.5gを得た。
b)3−(2−N,N−ジメチルアミノエチ−1−イル)−4−ニトロベンジルアルコール
水素化ホウ素ナトリウム2.0g(53mmol)を少量ずつ、エタノール70ml中の中間体3a 7g(26.5mmol)へ添加した。次いで、全体を還流下に30分間加熱した。反応溶液を次に、真空中で濃縮した。得られた残留物を水と酢酸エチルとに分配した。有機相を分離し、水および塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、乾燥し、真空中で濃縮した。得られた油をエタノール中に溶解し、エーテル性塩化水素溶液で処理した。生成物を塩酸塩として結晶化した。2.5gを得た。
c)3−(2−N,N−ジメチルアミノエチ−1−イル)−4−ニトロベンズアルデヒド
中間体3b 2.35g(9mmol)およびトリエチルアミン6.3ml(45mmol)をジメチルスルホキシド50ml中に溶解した。次いで、ピリジン−三酸化硫黄アダクト2.9g(18mmol)を少量づつ添加し、全体を60分間攪拌した。混合物を真空中で濃縮し、残留物を水と酢酸エチルとに分配した。有機相を水で洗浄し、さらに2回洗浄し、乾燥し、真空中で濃縮した。生成物1.8gを得た。
d)2−(3−(2−(N,N−ジメチルアミノ)エチ−1−イル)−4−ニトロフェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
例29a、bおよびcの方法と同様にして中間体51cを反応させ、生成物を得た。
【0056】

【0057】
以下の例をWO9806703に記載される方法またはこの明細書に記載される方法と同様にして製造してよい。
1. 2−(4−(ジメチルアミノ)メチル)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
2. 2−(4−(ジメチルアミノ)メチル)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
3. 2−(4−(ピロリジン−1−イル)メチル)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
4. 2−(4−(ピペリジン−1−イル)メチル)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
5. 2−(4−アミノメチル)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
6. 2−(4−(メチルアミノ)メチル)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
7. 2−(4−(プロピルアミノ)メチルフェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
8. 2−(4−(2−(ジエチルアミノ)エチ−1−イル)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
9. 2−(4−(2−(ジメチルアミノ)エチ−1−イル)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
10. 2−(4−(2−アミノエチ−1−イル)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
11. 1−(2−(2−(メチルアミノ)エチ−1−イル)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
12. 2−(4−(2−(エチルアミノ)エチ−1−イル)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
13. 2−(4−(2−ピロリジン−1−イル)エチ−1−イル)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
14. 2−(4−(2−(ピペリジン−1−イル)エチ−1−イル)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
15. 2−(3−(ジエチルアミノ)メチル)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
16. 2−(3−(ジメチルアミノ)メチル)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
17. 2−(3−(ピロリジン−1−イル)メチル)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
18. 2−(3−ピペリジン−1−イル)メチル)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
19. 2−(3−アミノメチル)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
20. 2−(3−(メチルアミノ)メチル)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
21. 2−(3−(n−プロピルアミノ)メチル)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
22. 2−(3−(2−(ジエチルアミノ)エチ−1−イル)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
23. 2−(3−(2−(ジメチルアミノ)エチ−1−イル)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
24. 2−(3−(2−アミノエチ−1−イル)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
25. 2−(3−(2−(N−メチルアミノ)エチ−1−イル)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
26. 2−(3−(2−N−メチルアミノ)エチ−1−イル)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
27. 2−(3−(2−(ピロリジン−1−イル)エチ−1−イル)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
28. 2−(3−(2−(ピペリジン−1−イル)エチ−1−イル)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
29. 2−(4−N,N−(2−アミノエチ−1−イル)メチルアミノ)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
30. 2−(4−N−(2−(ジエチルアミノ)エチ−1−イル)アミノ)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
31. 2−(4−N−(2−(ジメチルアミノ)エチ−1−イル)アミノ)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
32. 2−(4−N−(2−アミノエチ−1−イル)アミノ)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
33. 2−(3−N,N−(2−(ジメチルアミノ)エチ−1−イル)メチルアミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
34. 2−(3−N,N−(2−アミノエチ−1−イル)メチルアミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
35. 2−(3−N−(2−(ジエチルアミノ)エチ−1−イル)アミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
36. 2−(3−N−(2−(ジエチルアミノ)エチ−1−イル)アミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
37. 2−(3−N−(2−アミノエチ−1−イル)アミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
38. 2−(3−N,N−(d−(ジエチルアミノ)プロプ−1−イル)メチルアミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
39. 2−(3−N,N−(D−(ジメチルアミノ)プロプ−1−イル)メチルアミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
40. 2−(3−N,N−(3−アミノプロプ−1−イル)メチルアミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
41. 2−(3−N−(D−(ジメチルアミノ)プロプ−1−イル)メチルアミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
42. 2−(3−N−(3−(ジメチルアミノ)プロプ−1−イル)アミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
43. 2−(3−N−(3−アミノプロプ−1−イル)アミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
44. 2−(3−N,N−(2−ピロリジオン−1−イル−エチ−1−イル)メチルアミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
45. 2−(3−N−(2−(ピロリジオン−1−イル)アミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
46. 2−(3−N,N−(3−(ピロリジン−1−イル)プロプ−1−イル)メチルアミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
47. 2−(3−N,N−(3−(ピペリジン−1−イル)プロプ−1−イル)メチルアミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
48. 2−(3−N,N−(2−(ピペリジン−1−イル)エチ−1−イル)メチルアミノ)フェニルベンズイミダゾール−4−カルボキサミド
【0058】
例A:酵素ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼまたはPARP(EC2.4.2.30)の阻害
96穴マイクロタイタープレート(Falcon)をヒストン(タイプII−AS;SIGMA H7755)で被覆した。このために、ヒストンを炭酸バッファー(0.05M NaHCO;pH9.4)に溶解して50μg/mlの濃度にした。マイクロタイタープレートの各ウェルにそれぞれこのヒストン溶液100μlを入れて一晩インキュベートした。ヒストン溶液を除去し、各ウェルに炭酸バッファー中の1%濃度BSA(ウシ血清アルブミン)200μlを入れて、室温で2時間インキュベートした。次いで、洗浄バッファー(PBS中の0.05%のTween10)で3回洗浄した。酵素反応は、酵素反応溶液(反応バッファー(1M trisHCl pH8.0、100mM MgCl、10mM DTT)5μl、PARP0.5μl(c=0.22μg/μl)、活性化DNA(SIGMA D−4522、水中の1mg/ml)4μl、HO 40.5μl)50μlを各ウェルに入れ、阻害剤溶液10μlと共に10分間プレインキュベートする。酵素反応を、基質溶液(反応バッファー(前記参照)4μl、NAD溶液8μl(水中の100μM)、HO28μl)40μlの添加により開始する。反応時間は室温で20分である。反応は、洗浄バッファー(前記参照)で3回洗浄することにより停止する。特異的な抗−ポリ−ADP−リボース抗体を入れて、室温で1時間インキュベートする。使用した抗体はモノクローナル抗−ポリ−ADP−リボース抗体"10H"であった(Kawamaitsu H等(1984)Monoclonal antibodies to poly (adenosine diphosphate ribose)recognize different structures. Biochemistry 23, 3771〜3777)。ポリクローナル抗体を使用してもよい。
【0059】
抗体は抗体バッファー(PBS中の1%BSA;0.05%Tween20)中で1:5000に希釈して使用した。洗浄バッファーで3回洗浄した後、二次抗体を用いて室温で1時間インキュベートした。ここで、モノクローナル抗体は、ペルオキシダーゼに結合した抗マウスIgG(Boehringer Mannheim)であり、ウサギ抗体は、ペルオキシダーゼに結合した抗−ウサギIgG(SIGMA A−6154)であり、それぞれ抗体バッファー中で1:10000に希釈して使用した。洗浄バッファーで3回洗浄した後、色試薬(SIGMA、TMBレディーミックスT8540)100μ/ウェルを用いて、室温で約15分色反応(color reaction)を実施した。色反応は、2MのHSO 100μlを添加することにより停止される。直ちにこれを測定した(450nm対620nm;ELISAプレート読み取り装置"イージーリーダー(Easy Reader)"EAR340AT、SLTLabinstruments、Austria)。測定した阻害剤のIC50値は、阻害剤の濃度で示され、最大色濃度変化の半分を示す位置である。Ki値は阻害定数(inhibition constant)に相当する。以下のKi値が測定された:
例1: 16nM
例2: 10nM
例3: 4nM
【0060】
例B: 水溶性の測定
測定対象の化合物を特定の体積の水に直接溶解し、得られた溶液を酢酸ナトリウム溶液を用いてpH5〜6に調節し、試験有効化合物の濃度を得る。測定物質が水溶性塩として存在しない場合、これをできる限り少量のジメチルスルホキシド中に溶解し、水で希釈し(ジメチルスルホキシドの終濃度≦1%)、その後pHをさらにここでも調節した。潜在的なPARP阻害剤NU1076(WO9704771)はここで<0.01%の溶解度を示し、これに比較して本発明の例では>0.5%の溶解度を示した。
【0061】
例C: 細胞アッセイにおけるPARP阻害剤の試験
PARP阻害剤の作用を試験するために、真核細胞系を化学物質で処理し、それにより細胞系のDNAは損傷を受け、結果的に細胞中に存在するPARP酵素が活性化される。酵素の活性により、ポリ−ADP−リボース(PAR)の鎖がタンパク質上に形成される。これらの鎖は特異的な抗体により結合する。これはさらに蛍光標識された二次抗体により結合する。蛍光を蛍光スキャナーを用いて測定すると、酵素PARPの活性に比例する。PARP阻害剤は蛍光シグナルの減弱により認識される。細胞の計数が異なることが原因で結果が改変されるのを避けるために、細胞のDNAをさらに染料で標識し、その蛍光を同様に蛍光スキャナーで測定する。
【0062】
ヒト細胞系C4Iを、24穴の細胞培養プレート中のRPMI培地中で、37℃、5%COで、10%ウシ胎児血清を用いて、厚い細胞ローン(cell lawn)が得られるまでインキュベートした。細胞をDMEMで洗浄し、DMEM中の試験PARP阻害剤を様々な濃度で添加した。37℃で20分インキュベートした後、過酸化水素で濃度を1mMにし、混合物を37℃でさらに10分インキュベートした。コントロールとして、いくつかの穴の細胞は過酸化水素を処理しないか(PARP活性なし)または阻害剤を添加しない(PARPの最大活性)。細胞をPBSで1回洗浄し、予め−20℃に冷却しておいたメタノール/アセトン混合物(メタノール7質量部、アセトン3質量部)の添加により−20℃で10分間固定した。次いで、細胞を乾燥し、室温で10分間かけてPBSの添加により細胞を再度含水させ、0.05%のTween20および5%の粉乳を含むPBS中で、室温で30分かけて非特異的結合部位を遮断する。マウス−抗PAR抗体を、0.05%のTween20および5%の粉乳を含むPBS中の20μg/ml濃度で添加し、混合物を37℃で1時間インキュベートする。結合していない抗体をPBSで5分づつ5回洗浄して除去する。混合物を、希釈した抗−マウスFITC結合二次抗体(希釈は1:50、0.05%のTween20、5%の粉乳、DAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール)1μg/mlを含むPBS中)と共に37℃で30分インキュベートする。結合していない抗体を、PBSで5分づつ5回洗浄して除去する。FITCおよびDAPI蛍光を、蛍光スキャナーを用いて穴の様々な場所で測定する。分析時、FITCシグナルをDAPIシグナルに標準化する。種々の阻害剤濃度の標準値を片対数プロットすることにより、IC50値を算出する。以下のIC50値が測定された:
例1: 115nM
例2: 119nM
例3: 118nM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
Aは、NまたはCHであり、
は、水素、分枝鎖または直鎖C〜C−アルキルであり、この際、アルキル基の1つの炭素原子がさらにOR11を有していてよく、ここで
11は、水素またはC〜C−アルキルであり、
は、水素、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素、分枝鎖または直鎖C〜C−アルキル、ニトロ、CF、CN、NR2122、NH−CO−R23、OR21であり、ここで
21およびR22は相互に独立して水素またはC〜C−アルキルであり、
23は、水素、C〜C−アルキルまたはフェニルであり、
は、−NR3132、−(CH)q−NR3334であり、この際qは1、2または3であってよく、
31は、水素、C〜C−アルキル、(CHNR3334であり、
32は、(CHNR3334であり、
ここで、rは、2、3、4、5または6であり、R33およびR34は、相互に独立して水素、C〜C−アルキル、窒素原子といっしょになった付加的にO、N−C〜C−アルキル、N−C〜C−フェニルまたはNHから選択されるヘテロ原子を有していてよい3〜8個の原子から成る環、フェニル−C〜C−アルキルであり、この際、フェニル環はC〜C−アルキル、ハロゲン、ニトロ、SONR3536(R35,R36は相互に独立して水素、C〜C−アルキルまたは窒素原子といっしょになった付加的にO、S、SO、N−C〜C−アルキル、N−C〜C−フェニルまたはNHから選択されるヘテロ原子を有していてよい3〜8個の原子から成る環である)、C〜C−アルコキシ、S(O)−R37(R37は、水素、C〜C−アルキルである)、CF、(CH0〜4−COR37、(CH0〜4−NR3536、(CH0〜4CONR3536、(CH0〜4OR37−CHCOOR37から成る群より選択される3つまでの同一のまたは異なる置換基により置換されていてよく、
は、水素、分枝鎖または直鎖C〜C−アルキル、塩素、臭素、フッ素、ニトロ、シアノ、NR4142、NH−CO−R43、OR41であり、ここで
41およびR42は相互に独立して水素またはC〜C−アルキルであり、
43は、C〜C−アルキルまたはフェニルである]の化合物またはその互変異性形、可能なエナンチオマーまたはジアステレオマー形または可能な生理学的に認容性の塩の、PARP活性の異常な上昇を生じる疾患の治療薬を製造するための有効成分としての使用。
【請求項2】
がベンズイミダゾール環に対して3位でありかつRが4位であるか、またはRが4位でありかつRが3位である、請求項1記載の化合物の使用。
【請求項3】
およびRが水素である、請求項1または2記載の化合物の使用。
【請求項4】
が水素、分枝鎖または直鎖C〜C−アルキル、ニトロ、CN、NH、O−C〜C−アルキルである、請求項1から3までのいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項5】
が、(CH1〜2NR3536またはN(R37)−(CH2〜3NR35であり、ここでR37は水素またはC〜C−アルキルであってよく、R35およびR36は、相互に独立して水素またはC〜C−アルキルであるか、またはいっしょになったNR3536はピペリジン、ピロリジン、アゼピンおよびピペラジンであってもよく、ここで2級N原子上のピペラジンは付加的に水素またはC〜C−アルキルで置換されていてよい、請求項1から4までのいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項6】
が水素でありAが窒素である、請求項1から5までのいずれか1項記載の化合物の使用。
【請求項7】
神経変性疾患および神経性障害の治療薬を製造するための有効成分としての、請求項1から6までのいずれか1項記載の式Iの化合物の使用。
【請求項8】
疾患が、虚血、外傷または塊状出血により起こる神経変性疾患および神経性障害である、請求項7記載の使用。
【請求項9】
疾患が、卒中または頭部外傷である、請求項8記載の使用。
【請求項10】
疾患が、アルツハイマー病、パーキンソン病またはハンチントン病である、請求項8記載の使用。
【請求項11】
虚血による障害の治療または予防のための薬剤を製造するための有効成分としての、請求項1から6までのいずれか1項記載の式Iの化合物の使用。
【請求項12】
てんかんの治療薬、特に全身性のてんかん発作および局所性のてんかん発作の治療薬の製造のための有効成分としての、請求項1から6までのいずれか1項記載の式Iの化合物の使用。
【請求項13】
全身性のてんかん発作が小発作および強直間代発作であり、局所性のてんかん発作が側頭葉てんかんおよび複雑部分発作である、請求項12記載の使用。
【請求項14】
腎虚血後の腎臓の障害の治療薬および腎移植時ならびに腎移植後の治療薬を製造するための有効成分としての、請求項1から6までのいずれか1項記載の式Iの化合物の使用。
【請求項15】
虚血性心疾患後の心臓の障害の治療薬を製造するための有効成分としての、請求項1から6までのいずれか1項記載の式Iの化合物の使用。
【請求項16】
心臓弁置換術、動脈瘤切除および心臓移植の間および後の微小梗塞の治療薬を製造するための有効成分としての、請求項1から6までのいずれか1項記載の式Iの化合物の使用。
【請求項17】
重篤な狭窄冠状動脈あるいは重篤な狭窄末梢動脈、特に脚の動脈の血管再生における治療薬を製造するための有効成分としての、請求項1から6までのいずれか1項記載の式Iの化合物の使用。
【請求項18】
重篤な狭窄冠状動脈の血管再生がPTCAおよびバイパス手術である、請求項17記載の使用。
【請求項19】
急性心筋梗塞およびその薬剤的消散および機械的消散時および消散後の障害の治療薬を製造するための有効成分としての、請求項1から6までのいずれか1項記載の式Iの化合物の使用。
【請求項20】
腫瘍およびその転移の治療薬を製造するための有効成分としての、請求項1から6までのいずれか1項記載の式Iの化合物の使用。
【請求項21】
多組織不全の敗血症および"急性呼吸窮迫症候群"の治療薬を製造するための有効成分としての、請求項6記載の式Iの化合物の使用。
【請求項22】
多組織不全の敗血症が敗血症ショックである、請求項21記載の使用。
【請求項23】
免疫不全およびリウマチ障害の治療薬を製造するための有効成分としての、請求項1から6までのいずれか1項記載の式Iの化合物の使用。
【請求項24】
免疫不全が炎症であり、リウマチ障害がリウマチ様関節炎である、請求項23記載の使用。
【請求項25】
糖尿病の治療薬を製造するための有効成分としての、請求項6記載の式Iの化合物の使用。
【請求項26】
2−(4−(N,N−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチ−1−イルメチルアミノ)フェニル)−ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド、2−(4−(N,N−2−(N,N−ジメチルアミノ)−エチ−1−イルメチルアミノ)フェニル)ベンズイミダゾール−4−カルボキサミド、2−(3−(2−(N,N−ジメチルアミノ)エチ−1−イル)−4−ニトロフェニル)−ベンズイミダゾール−4−カルボキサミドまたはその塩から成る群より選択される化合物。

【公開番号】特開2009−120609(P2009−120609A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285818(P2008−285818)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【分割の表示】特願2000−582371(P2000−582371)の分割
【原出願日】平成11年11月5日(1999.11.5)
【出願人】(502159343)アボット ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (24)
【氏名又は名称原語表記】Abbott GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Max−Planck−Ring 2, D−65205 Wiesbaden, Germany
【Fターム(参考)】