説明

2−プロピルオクタン酸の脳移行性向上プロドラッグおよびその用途

【課題】
医薬品として有用な2−プロピルオクタン酸の脳移行性向上プロドラッグを提供する。
【解決手段】
一般式(I)
【化1】


[式中、すべての記号は明細書に記載の通り。]
一般式(I)で示される化合物、その塩およびその溶媒和物は、2−プロピルオクタン酸と比較して脳移行性が向上したプロドラッグであり、パーキンソン病、パーキンソン症候群、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症等の神経変性疾患、脳卒中、脳血管障害、脳梗塞、脳脊髄外傷後の神経機能障害、感染症に伴う脳脊髄疾患等の予防および治療剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品として有用な2−プロピルオクタン酸の脳移行性向上プロドラッグおよびその用途に関する。
【0002】
さらに詳しく言えば、本発明は
(1) 2−プロピルオクタン酸のプロドラッグ、
(2) 2−プロピルオクタン酸の脳移行性向上プロドラッグ、
(3) 一般式(I)
【0003】
【化1】

【0004】
[式中、すべての記号は後記と同じ意味を表す。]
で示される化合物、その塩およびその溶媒和物、ならびに
(4) 前記一般式(I)で示される化合物、その塩およびその溶媒和物を有効成分とする医薬に関する。
【背景技術】
【0005】
アストロサイト機能改善作用を有する2−プロピルオクタン酸は、脳梗塞等の神経変性疾患、脳卒中や脳脊髄外傷後の神経機能障害、脳腫瘍、感染症に伴う脳脊髄疾患等の中枢神経系疾患の予防および治療剤として有用であることが報告されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、2−プロピルオクタン酸が、パーキンソン病またはパーキンソン症候群の予防および治療剤として有用であることが報告されている(特許文献2参照)。
【0007】
さらに2−プロピルオクタン酸のこれらの作用は、細胞内S100β含量の減少作用に基づく異常活性化アストロサイトの機能改善作用によるものであることが報告されている(非特許文献1参照)。
【0008】
ところで、一般に、in vitroの試験系において優れた薬効を示す化合物であっても、ヒトに投与した際には望ましい効果が得られない場合がある。これは、生体内においては、化合物が吸収されにくかったり、または吸収されたとしても速やかに肝臓あるいは血中で代謝を受け、不活化されてしまったりすることに起因する。医薬品の開発においては、これらの問題を回避するために、化合物を化学的に修飾してプロドラッグとする手法がよく用いられている。
【0009】
またよく知られているように、脳への物質の移行には、「血液から脳へ」および「脳脊髄液から脳へ」の2種類の経路があり、それぞれの経路での物質の通過を制御する存在として「血液−脳関門」および「脳脊髄液−脳関門」が考えられているが、薬物の脳移行性を考える上で特に重要なのは「血液−脳関門」である。一般に「血液−脳関門」を介した物質の透過性はその物質の脂溶性と相関性があることがわかっており、様々な脂溶性プロドラッグが研究されている。
【0010】
一方、フロリダ大学のボーダー(N.Bodor)教授らは、「血液−脳関門」を容易に通過し、脳内の薬物濃度を高めることを目的として、NAD−NADH酸化還元系を利用したジヒドロピリジン型プロドラッグを報告している(非特許文献2参照)。
【0011】
2−プロピルオクタン酸が前記した薬理作用を発現するためには、2−プロピルオクタン酸が脳へ移行することが重要であるが、上記の引用文献には、2−プロピルオクタン酸の脳移行性についての記載や脳移行性向上を指向した2−プロピルオクタン酸のプロドラッグに関する記載や示唆は一切ない。
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0632008号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1174131号明細書
【非特許文献1】Tateishi.N. 他8名、ジャーナル・オブ・セレブラル・ブラッド・フロウ・アンド・メタボリズム(Journal of cerebral blood flow & metabolism)、2002年、第22巻、723−734頁
【非特許文献2】Bodor.N. 他、サイエンス(Science)、1981年、第214巻、1370−1372頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
2−プロピルオクタン酸はアルツハイマー病やパーキンソン病等の神経変性疾患、脳卒中や脳脊髄外傷後の神経機能障害、脳梗塞、脳腫瘍、感染症に伴う脳脊髄疾患等の中枢神経系疾患の予防および治療薬として有用であるが、より脳移行性を向上することで、投与量の低下を実現することができ、かつ副作用の軽減につながると考えられ、そのようなプロドラッグの開発が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、医薬として有用な2−プロピルオクタン酸をプロドラッグ化することで、より脳移行性が向上し、投与量を減少させ、かつ副作用が軽減できると考え、鋭意検討した結果、一般式(I)で示される本発明化合物が、この目的にかなうことを見出し、本発明を完成した。
【0015】
一般式(I)で示される本発明化合物は、2−プロピルオクタン酸のプロドラッグであり、2−プロピルオクタン酸の投与量を減少させ、かつ副作用が軽減でき、医薬品として有用である。
【0016】
すなわち、本発明は、
[1] 2−プロピルオクタン酸のプロドラッグ;
[2] 2−プロピルオクタン酸が(2R)−2−プロピルオクタン酸である前項[1]記載のプロドラッグ;
[3] 2−プロピルオクタン酸と比較して脳移行性が向上していることを特徴とする前項[1]記載のプロドラッグ;
[4] 一般式(I)
【0017】
【化2】

【0018】
(式中、Aは酸素原子または置換されていてもよい窒素原子を表し、環Bはさらに置換基を有していてもよい環状基を表し、DおよびEはそれぞれ独立して、置換されていてもよいC1〜8アルキレン基、置換されていてもよいC2〜8アルケニレン基、置換されていてもよいC2〜8アルキニレン基、または結合手を表し、Mは主鎖に酸素原子、窒素原子、硫黄原子および/またはリン原子を含むスペーサー、または結合手を表し、Rは水素原子または置換基を表し、mは1〜3の整数を表し、かつmが2以上のとき複数のDおよび複数のMはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、nは0または1〜2の整数を表し、かつnが2のとき複数の環Bは同じでも異なっていてもよく、
【0019】
【化3】

【0020】
はα配置、β配置またはそれらの任意の比率の混合物であることを表す。ただし、
【0021】
【化4】

【0022】
は、(1)水酸基、(2)1個のフェニル基で置換されていてもよいC1〜4アルコキシ基、または(3)NR基(基中、RおよびRはそれぞれ独立して、(a)水素原子、(b)C1〜4アルコキシ基またはカルボキシル基で置換されていてもよいフェニル基、(c)1個の窒素原子を含有する4〜7員の複素環、(d)C1〜4アルコキシ基またはカルボキシル基で置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよいC1〜4アルキル基、(e)1個の窒素原子を含有する4〜7員の複素環で置換されたC1〜4アルキル基、または(f)RおよびRが結合する窒素原子と一緒になって、(i) 1〜2個の窒素原子を含有する4〜7員の飽和複素環、(ii) 1個の窒素原子および1個の酸素原子を含有する4〜7員の飽和複素環、または (iii) アミノ酸残基を表す。)を表さないものとする。)
で示される化合物、その塩またはその溶媒和物である前項[1]記載のプロドラッグ;
[5] 一般式(I−1)
【0023】
【化5】

【0024】
(式中、Dは置換されていてもよいC1〜4アルキレン基または置換されていてもよいC2〜4アルケニレン基を表し、Qは酸素原子または置換されていてもよい窒素原子を表し、その他の記号は前項[4記載と同じ意味を表す。]
または一般式(I−2)
【0025】
【化6】

【0026】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)
で示される前項[4]記載の化合物;
[6] 一般式(I−1−1)
【0027】
【化7】

【0028】
(式中、環Bは置換基を有していてもよいジヒドロピリジン環を表し、その他の記号は前項[4]および[5記載と同じ意味を表す。]
または一般式(I−2−1)
【0029】
【化8】

【0030】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)
で示される前項[5]記載の化合物;
[7] 一般式(I−3)
【0031】
【化9】

【0032】
(式中、Gは保護されていてもよい水酸基を表し、その他の記号は前項[4]記載と同じ意味を表す。)
または一般式(I−4)
【0033】
【化10】

【0034】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)
で示される前項[4]記載の化合物;
[8] 環Bが置換基を有していてもよいシクロヘキサン、ベンゼン、ナフタレン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾール、ピリジン、ジヒドロピリジン、ジオキソラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン環またはステロイド骨格である前項[4]記載の化合物;
[9] Dが置換されていてもよいC1〜4アルキレン基、置換されていてもよいC2〜4アルケニレン基、または結合手である前項[4]記載の化合物;
[10] Eが置換されていてもよいC1〜4アルキレン基、置換されていてもよいC2〜4アルケニレン基、または結合手である前項[4]記載の化合物;
[11] Mが
【0035】
【化11】

【0036】
(式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Rは保護されていてもよい水酸基または「O」を表す。)
、または結合手である前項[4]記載の化合物;
[12] Rが(1)水素原子、(2)置換されていてもよいメチル基、(3)置換されていてもよい環状基、(4)オキソ基、(5)水酸基、(6)メトキシ基、(7)置換されていてもよいC1〜20アシルオキシ基、(8)置換されていてもよいカルボニル基、(9)メチル基で置換されていてもよいカルバモイル基、(10)ニトロ基、(11)メチル基で置換されていてもよいアミノ基、または(12)塩素原子である前項[4]記載の化合物;
[13] 2−プロピルオクタン酸のプロドラッグを含有してなる医薬組成物;
[14] アストロサイト機能改善剤である前項[13]記載の組成物;
[15] 神経変性疾患の予防および/または治療剤である前項[13]記載の組成物;
[16] 2−プロピルオクタン酸のプロドラッグと、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、ニコチン受容体調節薬、βセクレターゼ阻害薬、γセクレターゼ阻害薬、βアミロイド蛋白凝集阻害薬、βアミロイドワクチン、βアミロイド分解酵素、脳機能賦活薬、脳循環代謝改善薬、ドーパミン受容体作動薬、モノアミン酸化酵素阻害薬、抗コリン薬、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害薬、筋萎縮性側索硬化症治療薬、神経栄養因子、アポトーシス阻害薬、抗うつ薬、抗不安薬、抗てんかん薬、降圧薬、カルシウム受容体拮抗薬、糖尿病治療薬、高脂血症治療薬、アルドース還元酵素阻害薬、非ステロイド性抗炎症薬、疾患修飾性抗リウマチ薬、抗サイトカイン薬、ステロイド薬、抗血栓薬、ファクターXa阻害薬、ファクターVIIa阻害薬、抗酸化薬およびグリセリン製剤から選ばれる1種または2種以上とを組み合わせてなる医薬;
[17] 2−プロピルオクタン酸のプロドラッグを哺乳動物に投与することからなる神経変性疾患の予防および/または治療方法;
[18] 神経変性疾患の予防および/または治療剤の製造のための2−プロピルオクタン酸のプロドラッグの使用;
[19] 一般式(I−R)
【0037】
【化12】

【0038】
[式中、
【0039】
【化13】

【0040】
はβ配置であることを表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。]
で示される化合物、その塩またはその溶媒和物である前項[2]記載のプロドラッグ;
[20] 一般式(I)および(I−R)で示される化合物、その塩またはその溶媒和物の製造方法;および
[21] 2−プロピルオクタン酸をプロドラッグ化し、脳移行性を向上させる方法に関する。
【0041】
本明細書中、2−プロピルオクタン酸とは、(2R)−2−プロピルオクタン酸、(2S)−2−プロピルオクタン酸、およびそれらの任意の比率の混合物をすべて含む。
【0042】
本明細書中、(2R)−2−プロピルオクタン酸とは、特記しない限り実質的に純粋な(2R)−2−プロピルオクタン酸を表し、好ましくは90%ee 以上の(2R)−2−プロピルオクタン酸を表す。
【0043】
本明細書中、プロドラッグとは、一般に、薬物の安全性、吸収性の増大、作用の持続化、臓器指向性の向上等を目的として、薬物を化学的に修飾した誘導体で、投与後、生体内において酵素的または化学的にもとの薬物に変換される化合物をいい、廣川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻「分子設計」163−198頁や、Prog. Med.5:2157−2161(1985)に記載されているような、生理的条件でもとの化合物に変換されるものも含む。また、2−プロピルオクタン酸のプロドラッグ(以下、本発明のプロドラッグ、あるいは単にプロドラッグと略記する場合がある。)とは、2−プロピルオクタン酸を化学的に修飾した誘導体で、投与後、生体内において酵素的または化学的に変換されることで2−プロピルオクタン酸となる化合物であればよく、その構造は特に限定されるものではない。本発明のプロドラッグは、2−プロピルオクタン酸に比較して、物性、体内動態(消化管吸収、血中濃度、組織分布(特に脳)等)等が改善され、治療価値が高いという特徴を有する。これらの性質は、当業者には明らかなように、通常、医薬品の研究開発において行われるような、動態学的な解析や薬理試験、安全性試験等によって容易に確認することが可能である。このような条件を満たすプロドラッグとして、一般式(I)
【0044】
【化14】

【0045】
[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]
で示される化合物、その塩またはその溶媒和物等を挙げることができる。
【0046】
本明細書中、環Bで表される「さらに置換基を有していてもよい環状基」における「環状基」とは、「炭素環」、「複素環」または「ステロイド骨格」から任意の二個の水素原子を除いてできる二価基を表す。
【0047】
前記「炭素環」とは、例えば「C3〜15の炭素環」を表す。「C3〜15の炭素環」には、「C3〜15の単環、二環または三環式炭素環」および「C3〜15のスピロ結合した二環式炭素環および架橋した二環式炭素環」等が含まれる。「C3〜15の単環、二環または三環式炭素環」とは、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカン、シクロトリドデカン、シクロテトラデカン、シクロペンタデカン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、ベンゼン、ペンタレン、パーヒドロペンタレン、アズレン、パーヒドロアズレン、インデン、パーヒドロインデン、インダン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、パーヒドロナフタレン、6,7−ジヒドロ−5H−ベンゾ[7]アヌレン、5H−ベンゾ[7]アヌレン、ヘプタレン、パーヒドロヘプタレン、ビフェニレン、as−インダセン、s−インダセン、アセナフチレン、アセナフテン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン環等が挙げられる。「C3〜15のスピロ結合した二環式炭素環および架橋した二環式炭素環」とは、スピロ[4.4]ノナン、スピロ[4.5]デカン、スピロ[5.5]ウンデカン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタ−2−エン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[2.2.2]オクタ−2−エン、アダマンタン、ノルアダマンタン環等が挙げられる。
【0048】
前記「複素環」とは、例えば「1〜5個の窒素原子、1〜2個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む3〜15員の複素環」を表す。「1〜5個の窒素原子、1〜2個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む3〜15員の複素環」には、「1〜5個の窒素原子、1〜2個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む3〜15員の単環、二環または三環式複素環」および「1〜5個の窒素原子、1〜2個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む3〜15員のスピロ結合した二環式複素環および架橋した二環式複素環」等が含まれる。「1〜5個の窒素原子、1〜2個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む3〜15員の単環、二環または三環式複素環」とは、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、アゼピン、ジアゼピン、フラン、ピラン、オキセピン、チオフェン、チオピラン、チエピン、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラザン、オキサジアゾール、オキサジン、オキサジアジン、オキサゼピン、オキサジアゼピン、チアジアゾール、チアジン、チアジアジン、チアゼピン、チアジアゼピン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジチアナフタレン、インダゾール、キノリン、イソキノリン、キノリジン、プリン、フタラジン、プテリジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、クロメン、ベンゾオキセピン、ベンゾオキサゼピン、ベンゾオキサジアゼピン、ベンゾチエピン、ベンゾチアゼピン、ベンゾチアジアゼピン、ベンゾアゼピン、ベンゾジアゼピン、ベンゾフラザン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアゾール、カルバゾール、β−カルボリン、アクリジン、フェナジン、ジベンゾフラン、キサンテン、ジベンゾチオフェン、フェノチアジン、フェノキサジン、フェノキサチイン、チアンスレン、フェナントリジン、フェナントロリン、ペリミジン、アジリジン、アゼチジン、ピロリン、ピロリジン、イミダゾリン、イミダゾリジン、トリアゾリン、トリアゾリジン、テトラゾリン、テトラゾリジン、ピラゾリン、ピラゾリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ジヒドロピラジン、テトラヒドロピラジン、ピペラジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、パーヒドロピリミジン、ジヒドロピリダジン、テトラヒドロピリダジン、パーヒドロピリダジン、ジヒドロアゼピン、テトラヒドロアゼピン、パーヒドロアゼピン、ジヒドロジアゼピン、テトラヒドロジアゼピン、パーヒドロジアゼピン、オキシラン、オキセタン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、ジヒドロオキセピン、テトラヒドロオキセピン、パーヒドロオキセピン、チイラン、チエタン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ジヒドロチオピラン、テトラヒドロチオピラン、ジヒドロチエピン、テトラヒドロチエピン、パーヒドロチエピン、ジヒドロオキサゾール、テトラヒドロオキサゾール(オキサゾリジン)、ジヒドロイソオキサゾール、テトラヒドロイソオキサゾール(イソオキサゾリジン)、ジヒドロチアゾール、テトラヒドロチアゾール(チアゾリジン)、ジヒドロイソチアゾール、テトラヒドロイソチアゾール(イソチアゾリジン)、ジヒドロフラザン、テトラヒドロフラザン、ジヒドロオキサジアゾール、テトラヒドロオキサジアゾール(オキサジアゾリジン)、ジヒドロオキサジン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロオキサジアジン、テトラヒドロオキサジアジン、ジヒドロオキサゼピン、テトラヒドロオキサゼピン、パーヒドロオキサゼピン、ジヒドロオキサジアゼピン、テトラヒドロオキサジアゼピン、パーヒドロオキサジアゼピン、ジヒドロチアジアゾール、テトラヒドロチアジアゾール(チアジアゾリジン)、ジヒドロチアジン、テトラヒドロチアジン、ジヒドロチアジアジン、テトラヒドロチアジアジン、ジヒドロチアゼピン、テトラヒドロチアゼピン、パーヒドロチアゼピン、ジヒドロチアジアゼピン、テトラヒドロチアジアゼピン、パーヒドロチアジアゼピン、モルホリン、チオモルホリン、オキサチアン、インドリン、イソインドリン、ジヒドロベンゾフラン、パーヒドロベンゾフラン、ジヒドロイソベンゾフラン、パーヒドロイソベンゾフラン、ジヒドロベンゾチオフェン、パーヒドロベンゾチオフェン、ジヒドロイソベンゾチオフェン、パーヒドロイソベンゾチオフェン、ジヒドロインダゾール、パーヒドロインダゾール、ジヒドロキノリン、テトラヒドロキノリン、パーヒドロキノリン、ジヒドロイソキノリン、テトラヒドロイソキノリン、パーヒドロイソキノリン、ジヒドロフタラジン、テトラヒドロフタラジン、パーヒドロフタラジン、ジヒドロナフチリジン、テトラヒドロナフチリジン、パーヒドロナフチリジン、ジヒドロキノキサリン、テトラヒドロキノキサリン、パーヒドロキノキサリン、ジヒドロキナゾリン、テトラヒドロキナゾリン、パーヒドロキナゾリン、ジヒドロシンノリン、テトラヒドロシンノリン、パーヒドロシンノリン、ベンゾオキサチアン、ジヒドロベンゾオキサジン、ジヒドロベンゾチアジン、ピラジノモルホリン、ジヒドロベンゾオキサゾール、パーヒドロベンゾオキサゾール、ジヒドロベンゾチアゾール、パーヒドロベンゾチアゾール、ジヒドロベンゾイミダゾール、パーヒドロベンゾイミダゾール、ジヒドロベンゾアゼピン、テトラヒドロベンゾアゼピン、ジヒドロベンゾジアゼピン、テトラヒドロベンゾジアゼピン、ベンゾジオキセパン、ジヒドロベンゾオキサゼピン、テトラヒドロベンゾオキサゼピン、ジヒドロカルバゾール、テトラヒドロカルバゾール、パーヒドロカルバゾール、ジヒドロアクリジン、テトラヒドロアクリジン、パーヒドロアクリジン、ジヒドロジベンゾフラン、ジヒドロジベンゾチオフェン、テトラヒドロジベンゾフラン、テトラヒドロジベンゾチオフェン、パーヒドロジベンゾフラン、パーヒドロジベンゾチオフェン、ジオキソラン、ジオキサン、ジチオラン、ジチアン、ジオキサインダン、ベンゾジオキサン、クロメン、クロマン、ベンゾジチオラン、ベンゾジチアン環等が挙げられる。「1〜5個の窒素原子、1〜2個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む3〜15員のスピロ結合した二環式複素環および架橋した二環式複素環」とは、アザスピロ[4.4]ノナン、オキサザスピロ[4.4]ノナン、オキサアザスピロ[2.5]オクタン、アザスピロ[4.5]デカン、1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン、2,7−ジアザスピロ[4.5]デカン、1,4,9−トリアザスピロ[5.5]ウンデカン、オキサザスピロ[4.5]デカン、アザスピロ[5.5]ウンデカン、アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.1.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン(8−アザビシクロ[3.2.1]オクタン環等)、アザビシクロ[2.2.2]オクタン(2−アザビシクロ[2.2.2]オクタン環等)、アザビシクロ[2.1.1]ヘキサン(5−アザビシクロ[2.1.1]ヘキサン環等)環等が挙げられる。
【0049】
本明細書中、環Bで表される「置換基を有していてもよいステロイド骨格」における「ステロイド骨格」とは、一般にステロイド骨格と称されるものであればどのようなものであってもよいが、通常、パーヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン骨格を指す。「置換基を有していてもよいステロイド骨格」としては、例えば、式(A)に示すコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソコール酸、ウルソデオキシコール酸から誘導される構造が挙げられる。
【0050】
【化15】

【0051】
本明細書中、環Bで表される「さらに置換基を有していてもよい環状基」における「置換基」とは、置換基であれば特に限定されないが、例えば以下に例示する置換基が挙げられる。(1)置換されていてもよいC1〜20アルキル基、(2)置換されていてもよいC2〜20アルケニル基、(3)置換されていてもよいC2〜20アルキニル基、(4)置換されていてもよいC1〜20アルキリデン基、(5)置換されていてもよい環状基、(6)オキソ基、(7)水酸基、(8)置換されていてもよいC1〜20アルキルオキシ基、(9)置換されていてもよいC2〜20アルケニルオキシ基、(10)置換されていてもよいC2〜20アルキニルオキシ基、(11)置換されていてもよい環状基で保護されていてもよい水酸基、(12)置換されていてもよいC1〜20アシルオキシ基、(13)チオキソ基、(14)メルカプト基、(15)置換されていてもよいC1〜20アルキルチオ基、(16)置換されていてもよいC2〜20アルケニルチオ基、(17)置換されていてもよいC2〜20アルキニルチオ基、(18)置換されていてもよい環状基で置換されたメルカプト基、(19)置換されていてもよいC1〜20アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基等)、(20)置換されていてもよいC2〜20アルケニルスルフィニル基、(21)置換されていてもよいC2〜20アルキニルスルフィニル基、(22)置換されていてもよい環状基で置換されたスルフィニル基(例えば、フェニルスルフィニル基等)、(23)置換されていてもよいC1〜20アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、(24)置換されていてもよいC2〜20アルケニルスルホニル基、(25)置換されていてもよいC2〜20アルキニルスルホニル基、(26)置換されていてもよい環状基で置換されたスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基等)、(27)置換されていてもよいスルフィノ基、(28)置換されていてもよいスルホ基、(29)置換されていてもよいスルファモイル基(例えば、無置換のスルファモイル基、N−モノまたはジ−(置換されていてもよいアルキル)スルファモイル基(基中、置換されていてもよいアルキルは、前記「置換されていてもよいC1〜20アルキル基」と同じ意味を表す。)等が挙げられ、具体的には、例えば、N−モノ−C1〜6アルキルスルファモイル基(例えば、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N−プロピルスルファモイル基、N−イソプロピルスルファモイル基、N−ブチルスルファモイル基、N−イソブチルスルファモイル基、N−(tert−ブチル)スルファモイル基、N−ペンチルスルファモイル基、N−ヘキシルスルファモイル基等)、N,N−ジC1〜6アルキルスルファモイル基(例えば、N,N−ジメチルスルファモイル基、N,N−ジエチルスルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N,N−ジブチルスルファモイル基、N,N−ジペンチルスルファモイル基、N,N−ジヘキシルスルファモイル基、N−メチル−N−エチルスルファモイル基等)等が挙げられる。置換基が2個のとき、それらが結合する窒素原子と一緒になって、1〜5個の窒素原子、1個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む5〜7員の単環複素環を形成してもよい。(この複素環は、C1〜8アルキル基、水酸基、またはアミノ基によって置換されていてもよい。))、(30)置換されていてもよいカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基等のC1−6アルコキシカルボニル基等、例えば、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基等のC3〜8シクロアルカノイル基、例えば、ベンゾイル基等のC6〜10アリールカルボニル基、例えば、モルホリン−4−イルカルボニル基、ピペリジン−1−イルカルボニル基、1−メチルピペラジン−4−イルカルボニル基等の置換基を有していてもよい複素環カルボニル基等)、(31)置換されていてもよいC1〜20アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ピバロイル基等)、(32)置換されていてもよいカルバモイル基(例えば、無置換のカルバモイル基、N−モノまたはジ−(置換されていてもよいアルキル)カルバモイル基(基中、置換されていてもよいアルキルは、前記「置換されていてもよいC1〜20アルキル基」と同じ意味を表す。)、N−モノまたはジ−(置換されていてもよい炭素環または複素環)カルバモイル基(基中、置換されていてもよい炭素環または複素環は、前記「置換基を有していてもよい炭素環」または「置換基を有していてもよい複素環」と同じ意味を表す。)等が挙げられ、具体的には、例えば、N−モノ−C1〜6アルキルカルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N−プロピルカルバモイル基、N−イソプロピルカルバモイル基、N−ブチルカルバモイル基、N−イソブチルカルバモイル基、N−(tert−ブチル)カルバモイル基、N−ペンチルカルバモイル基、N−ヘキシルカルバモイル基等)、水酸基が置換したN−モノ−C1〜6アルキルカルバモイル基(例えば、N−ヒドロキシメチルカルバモイル基、N−(2−ヒドロキシエチル)カルバモイル基、N−(3−ヒドロキシプロピル)カルバモイル基、N−(4−ヒドロキシブチル)カルバモイル基等)、アミノ基またはジメチルアミノ基が置換したN−モノ−C1〜6アルキルカルバモイル基(例えば、N−アミノメチルカルバモイル基、N−(2−アミノエチル)カルバモイル基、N−(3−アミノプロピル)カルバモイル基、N−(4−アミノブチル)カルバモイル基、N−(ジメチルアミノ)メチルカルバモイル基、N−(2−ジメチルアミノエチル)カルバモイル基、N−(3−ジメチルアミノプロピル)カルバモイル基、N−(4−ジメチルアミノブチル)カルバモイル基等)、N−モノ(置換されていてもよい炭素環)カルバモイル基(例えば、N−シクロプロピルカルバモイル基、N−シクロペンチルカルバモイル基、N−シクロヘキシルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基等)、N,N−ジC1〜6アルキルカルバモイル基(例えば、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N,N−ジプロピルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基、N,N−ジペンチルカルバモイル基、N,N−ジヘキシルカルバモイル基、N−メチル−N−エチルカルバモイル基等)等が挙げられる。置換基が2個のとき、それらが結合する窒素原子と一緒になって、1〜5個の窒素原子、1個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む5〜7員の単環複素環を形成してもよい。(この複素環は、C1〜8アルキル基、水酸基、またはアミノ基によって置換されていてもよい。))、(33)シアノ基、(34)置換されていてもよいアミジノ基(置換基が2個のとき、それらが結合する窒素原子と一緒になって、1〜5個の窒素原子、1個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む5〜7員の単環複素環を形成してもよい。(この複素環は、C1〜8アルキル基、水酸基、またはアミノ基によって置換されていてもよい。))、(35)ニトロ基、(36)ニトロソ基、(37)置換されていてもよいイミノ基(例えば、無置換のイミノ基、C1〜6アルキル基が置換したイミノ基(例えば、メチルイミノ基、エチルイミノ基等)、置換基を有していてもよいC6〜10アリール基が置換したイミノ基(例えば、フェニルイミノ基、p−フルオロフェニルイミノ基、p−クロロフェニルイミノ基等)、ヒドロキシイミノ基等の水酸基が置換したイミノ基等)、(38)置換されていてもよいアミノ基(例えば、モノ−またはジ−C1〜6アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等)、モノ−またはジ−C6〜10アリールアミノ基(例えば、フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基等)、モノ−C1〜6アルキル−モノ−C6〜10アリールアミノ基(例えば、N−フェニル−N−メチルアミノ基、N−フェニル−N−エチルアミノ基等)が挙げられる。置換基が2個のとき、それらが結合する窒素原子と一緒になって、1〜5個の窒素原子、1個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む5〜7員の単環複素環を形成してもよい。(この複素環は、C1〜8アルキル基、水酸基、またはアミノ基によって置換されていてもよい。))、(39)ハロゲン原子、(40)カルボキシ基、(41)ホスホノ基(−PO(OH))、(42)ジヒドロキシボリル基(−B(OH))、(43)C1〜20アルキルカルボニルヒドラジノ基(例えば、メチルカルボニルヒドラジノ基、エチルカルボニルヒドラジノ基等)、(44)例えば、ベンゾアルデヒド ヒドラゾン基、p−メトキシベンゾアルデヒド ヒドラゾン基等の置換基を有していてもよいC6〜10アリールヒドラゾン基等が挙げられる。これらは置換可能な任意の位置に、置換可能な任意の数だけ置換していてもよい。ここで前記(5)、(11)、(18)、(22)および(26)で例示した置換基において「置換されていてもよい環状基」における「環状基」とは、前記した環Bで表される「さらに置換基を有していてもよい環状基」における「環状基」と同じ意味を表し、前記(1)〜(44)で例示した置換基において「置換されていてもよい」における「置換」基としては、(1)C1〜20アルキル基、(2)C2〜20アルケニル基、(3)C2〜20アルキニル基、(4)C1〜20アルキリデン基、(5)環状基、(6)環状基で置換されたC1〜20アルキル基、(7)オキソ基、(8)水酸基、(9)C1〜20アルキルオキシ基、(10)C2〜20アルケニルオキシ基、(11)C2〜20アルキニルオキシ基、(12)環状基で保護されていてもよい水酸基、(13)C1〜20アシルオキシ基、(14)チオキソ基、(15)メルカプト基、(16)C1〜20アルキルチオ基、(17)C2〜20アルケニルチオ基、(18)C2〜20アルキニルチオ基、(19)環状基で置換されたメルカプト基、(20)C1〜20アルキルスルフィニル基、(21)C2〜20アルケニルスルフィニル基、(22)C2〜20アルキニルスルフィニル基、(23)環状基で置換されたスルフィニル基、(24)C1〜20アルキルスルホニル基、(25)C2〜20アルケニルスルホニル基、(26)C2〜20アルキニルスルホニル基、(27)環状基で置換されたスルホニル基、(28)環状基で置換されたC1〜20アルキルスルホニル基、(29)スルフィノ基、(30)スルホ基、(31)スルファモイル基、(32)C1〜20アシル基、(33)環状基で置換されたC1〜20アシル基、(34)環状基で置換されたカルボニル基、(35)カルバモイル基、(36)シアノ基、(37)アミジノ基、(38)ニトロ基、(39)ニトロソ基、(40)イミノ基、(41)アミノ基、(42)ハロゲン原子、(43)カルボキシ基等が挙げられ、これらは置換可能な任意の位置に、置換可能な任意の数だけ置換していてもよい。ここで前記(1)〜(43)で例示した「環状基」、「環状基で置換された」または「環状基で保護されていてもよい」における「環状基」とは、前記した環Bで表される「さらに置換基を有していてもよい環状基」における「環状基」と同じ意味を表す。
【0052】
本明細書中、「C1〜20アルキル基」とは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル基およびそれらの異性体である。
【0053】
本明細書中、「C2〜20アルケニル基」とは、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、イコセニル基およびそれらの異性体である。
【0054】
本明細書中、「C2〜20アルキニル基」とは、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ペンタデシニル、ヘキサデシニル、ヘプタデシニル、オクタデシニル、ノナデシニル、イコシニル基およびそれらの異性体である。
【0055】
本明細書中、「C1〜20アルキリデン基」とは、メチリデン、エチリデン、プロピリデン、ブチリデン、ペンチリデン、ヘキシリデン、ヘプチリデン、オクチリデン、ノニリデン、デシリデン、ウンデシリデン、ドデシリデン、トリデシリデン、テトラデシリデン、ペンタデシリデン、ヘキサデシリデン、ヘプタデシリデン、オクタデシリデン、ノナデシリデン、イコシリデン基およびこれらの異性体である。
【0056】
本明細書中、「C1〜20アルキルオキシ基」とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、ヘプタデシルオキシ、オクタデシルオキシ、ノナデシルオキシ、イコシルオキシ基およびそれらの異性体である。
【0057】
本明細書中、「C2〜20アルケニルオキシ基」とは、エテニルオキシ、プロペニルオキシ、ブテニルオキシ、ペンテニルオキシ、ヘキセニルオキシ、ヘプテニルオキシ、オクテニルオキシ、ノネニルオキシ、デセニルオキシ、ウンデセニルオキシ、ドデセニルオキシ、トリデセニルオキシ、テトラデセニルオキシ、ペンタデセニルオキシ、ヘキサデセニルオキシ、ヘプタデセニルオキシ、オクタデセニルオキシ、ノナデセニルオキシ、イコセニルオキシ基およびそれらの異性体である。
【0058】
本明細書中、「C2〜20アルキニルオキシ基」とは、エチニルオキシ、プロピニルオキシ、ブチニルオキシ、ペンチニルオキシ、ヘキシニルオキシ、ヘプチニルオキシ、オクチニルオキシ、ノニニルオキシ、デシニルオキシ、ウンデシニルオキシ、ドデシニルオキシ、トリデシニルオキシ、テトラデシニルオキシ、ペンタデシニルオキシ、ヘキサデシニルオキシ、ヘプタデシニルオキシ、オクタデシニルオキシ、ノナデシニルオキシ、イコシニルオキシ基およびそれらの異性体である。
【0059】
本明細書中、「C1〜20アルキルチオ基」とは、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘキシルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ、ノニルチオ、デシルチオ、ウンデシルチオ、ドデシルチオ、トリデシルチオ、テトラデシルチオ、ペンタデシルチオ、ヘキサデシルチオ、ヘプタデシルチオ、オクタデシルチオ、ノナデシルチオ、イコシルチオ基およびそれらの異性体である。
【0060】
本明細書中、「C2〜20アルケニルチオ基」とは、エテニルチオ、プロペニルチオ、ブテニルチオ、ペンテニルチオ、ヘキセニルチオ、ヘプテニルチオ、オクテニルチオ、ノネニルチオ、デセニルチオ、ウンデセニルチオ、ドデセニルチオ、トリデセニルチオ、テトラデセニルチオ、ペンタデセニルチオ、ヘキサデセニルチオ、ヘプタデセニルチオ、オクタデセニルチオ、ノナデセニルチオ、イコセニルチオ基およびそれらの異性体である。
【0061】
本明細書中、「C2〜20アルキニルチオ基」とは、エチニルチオ、プロピニルチオ、ブチニルチオ、ペンチニルチオ、ヘキシニルチオ、ヘプチニルチオ、オクチニルチオ、ノニニルチオ、デシニルチオ、ウンデシニルチオ、ドデシニルチオ、トリデシニルチオ、テトラデシニルチオ、ペンタデシニルチオ、ヘキサデシニルチオ、ヘプタデシニルチオ、オクタデシニルチオ、ノナデシニルチオ、イコシニルチオ基およびそれらの異性体である。
【0062】
本明細書中、「C1〜20アルキルスルフィニル基」とは、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル、ペンチルスルフィニル、ヘキシルスルフィニル、ヘプチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、ノニルスルフィニル、デシルスルフィニル、ウンデシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、トリデシルスルフィニル、テトラデシルスルフィニル、ペンタデシルスルフィニル、ヘキサデシルスルフィニル、ヘプタデシルスルフィニル、オクタデシルスルフィニル、ノナデシルスルフィニル、イコシルスルフィニル基およびそれらの異性体である。
【0063】
本明細書中、「C2〜20アルケニルスルフィニル基」とは、エテニルスルフィニル、プロペニルスルフィニル、ブテニルスルフィニル、ペンテニルスルフィニル、ヘキセニルスルフィニル、ヘプテニルスルフィニル、オクテニルスルフィニル、ノネニルスルフィニル、デセニルスルフィニル、ウンデセニルスルフィニル、ドデセニルスルフィニル、トリデセニルスルフィニル、テトラデセニルスルフィニル、ペンタデセニルスルフィニル、ヘキサデセニルスルフィニル、ヘプタデセニルスルフィニル、オクタデセニルスルフィニル、ノナデセニルスルフィニル、イコセニルスルフィニル基およびそれらの異性体である。
【0064】
本明細書中、「C2〜20アルキニルスルフィニル基」とは、エチニルスルフィニル、プロピニルスルフィニル、ブチニルスルフィニル、ペンチニルスルフィニル、ヘキシニルスルフィニル、ヘプチニルスルフィニル、オクチニルスルフィニル、ノニニルスルフィニル、デシニルスルフィニル、ウンデシニルスルフィニル、ドデシニルスルフィニル、トリデシニルスルフィニル、テトラデシニルスルフィニル、ペンタデシニルスルフィニル、ヘキサデシニルスルフィニル、ヘプタデシニルスルフィニル、オクタデシニルスルフィニル、ノナデシニルスルフィニル、イコシニルスルフィニル基およびそれらの異性体である。
【0065】
本明細書中、「C1〜20アルキルスルホニル基」とは、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘキシルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル、ノニルスルホニル、デシルスルホニル、ウンデシルスルホニル、ドデシルスルホニル、トリデシルスルホニル、テトラデシルスルホニル、ペンタデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、ヘプタデシルスルホニル、オクタデシルスルホニル、ノナデシルスルホニル、イコシルスルホニル基およびそれらの異性体である。
【0066】
本明細書中、「C2〜20アルケニルスルホニル基」とは、エテニルスルホニル、プロペニルスルホニル、ブテニルスルホニル、ペンテニルスルホニル、ヘキセニルスルホニル、ヘプテニルスルホニル、オクテニルスルホニル、ノネニルスルホニル、デセニルスルホニル、ウンデセニルスルホニル、ドデセニルスルホニル、トリデセニルスルホニル、テトラデセニルスルホニル、ペンタデセニルスルホニル、ヘキサデセニルスルホニル、ヘプタデセニルスルホニル、オクタデセニルスルホニル、ノナデセニルスルホニル、イコセニルスルホニル基およびそれらの異性体である。
【0067】
本明細書中、「C2〜20アルキニルスルホニル基」とは、エチニルスルホニル、プロピニルスルホニル、ブチニルスルホニル、ペンチニルスルホニル、ヘキシニルスルホニル、ヘプチニルスルホニル、オクチニルスルホニル、ノニニルスルホニル、デシニルスルホニル、ウンデシニルスルホニル、ドデシニルスルホニル、トリデシニルスルホニル、テトラデシニルスルホニル、ペンタデシニルスルホニル、ヘキサデシニルスルホニル、ヘプタデシニルスルホニル、オクタデシニルスルホニル、ノナデシニルスルホニル、イコシニルスルホニル基およびそれらの異性体である。
【0068】
本明細書中、「C1〜20アシル基」とは、メタノイル、エタノイル、プロパノイル、ブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、ヘプタデカノイル、オクタデカノイル、ノナデカノイル、イコサノイル基およびそれらの異性体である。
【0069】
本明細書中、「C1〜20アシルオキシ基」とは、メタノイルオキシ、エタノイルオキシ、プロパノイルオキシ、ブタノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ヘプタノイルオキシ、オクタノイルオキシ、ノナノイルオキシ、デカノイルオキシ、ウンデカノイルオキシ、ドデカノイルオキシ、トリデカノイルオキシ、テトラデカノイルオキシ、ペンタデカノイルオキシ、ヘキサデカノイルオキシ、ヘプタデカノイルオキシ、オクタデカノイルオキシ、ノナデカノイルオキシ、イコサノイルオキシ基およびそれらの異性体である。
【0070】
本明細書中、環Bで表される「さらに置換基を有していてもよいジヒドロピリジン環」における「置換基」とは、前記した環Bで表される「さらに置換基を有していてもよい環状基」における「置換基」と同じ意味を表す。
【0071】
本明細書中、AおよびQで表される「置換されていてもよい窒素原子」における「置換」基とは、前記した環Bで表される「さらに置換基を有していてもよい環状基」における「置換基」と同じ意味を表す。
【0072】
本明細書中、Gで表される「保護されていてもよい水酸基」における「保護」基としては、前記した環Bで表される「さらに置換基を有していてもよい環状基」における「置換基」と同じ意味を表す。
【0073】
本明細書中、DおよびEで表される「置換されていてもよいC1〜8アルキレン基、置換されていてもよいC2〜8アルケニレン基、置換されていてもよいC2〜8アルキニレン基」における「置換」基とは、前記した環Bで表される「さらに置換基を有していてもよい環状基」における「置換基」と同じ意味を表す。
【0074】
本明細書中、D、DおよびEで表される「置換されていてもよいC1〜4アルキレン基または置換されていてもよいC2〜4アルケニレン基」における「置換」基とは、前記した環Bで表される「さらに置換基を有していてもよい環状基」における「置換基」と同じ意味を表す。
【0075】
本明細書中、Mで表される「主鎖に酸素原子、窒素原子、硫黄原子および/またはリン原子を含むスペーサー」とは、主鎖に酸素原子、窒素原子、硫黄原子および/またはリン原子を少なくとも一つ含むスペーサーを表し、主鎖にその他の原子(炭素原子等)が存在していても構わない。「主鎖に酸素原子、窒素原子、硫黄原子および/またはリン原子を含むスペーサー」として、例えば、
【0076】
【化16】

【0077】
[式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Rは保護されていてもよい水酸基または「O」を表す。]
が挙げられる。
【0078】
本明細書中、R、RおよびRで表される「置換基」とは、前記した環Bで表される「さらに置換基を有していてもよい環状基」における「置換基」と同じ意味を表す。
【0079】
本明細書中、Rで表される「保護されていてもよい水酸基」における「保護」基としては、前記した環Bで表される「さらに置換基を有していてもよい環状基」における「置換基」と同じ意味を表す。
【0080】
本明細書中、Rで表される「O」とは、酸素アニオンを表すが、Rが「O」を表す場合、必ず分子内にカチオンパート(例えば四級化された窒素原子)が存在するものとする。
【0081】
本明細書中、D、EおよびMで表される「結合手」とは、間に他の原子を介さずに直接結合することをいう。
【0082】
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素である。
【0083】
本明細書中、「C1〜8アルキレン基」とは、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン基およびそれらの異性体である。
【0084】
本明細書中、「C1〜4アルキレン基」とは、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン基およびそれらの異性体である。
【0085】
本明細書中、「C2〜8アルケニレン基」とは、エテニレン、プロペニレン、ブテニレン、ペンテニレン、ヘキセニレン、ヘプテニレン、オクテニレン基およびそれらの異性体である。
【0086】
本明細書中、「C2〜4アルケニレン基」とは、エテニレン、プロペニレン、ブテニレン基およびそれらの異性体である。
【0087】
本明細書中、「C2〜8アルキニレン基」とは、エチニレン、プロピニレン、ブチニレン、ペンチニレン、ヘキシニレン、ヘプチニレン、オクチニレン基およびそれらの異性体である。
【0088】
本明細書中、一般式(I)で示される化合物中、ただし書きで除く化合物は、欧州特許公開第0632088号明細書にて開示された化合物である。以下、このただし書きの部分に記載された基の説明を記載する。
【0089】
C1〜4アルコキシ基とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ基およびそれらの異性体基を表す。
【0090】
1個の窒素原子を含有する4〜7員の複素環とは、例えば、ピロール、ピリジン、アゼピンまたはそれらの一部が飽和した環または全部が飽和した環(ピロリジン、ピペリジン等)を表す。
【0091】
C1〜4アルキル基とは、メチル、エチル、プロピル、ブチル基およびそれらの異性体基を表す。
【0092】
およびRが結合する窒素原子と一緒になって形成する、1〜2個の窒素原子を含有する4〜7員の飽和複素環とは、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、パーヒドロアゼピン、ピラゾリジン、イミダゾリジン、パーヒドロジアジン(ピペラジン等)、パーヒドロジアゼピン環を表す。
【0093】
およびRが結合する窒素原子と一緒になって形成する、1個の窒素原子および1個の酸素原子を含有する4〜7員の飽和複素環とは、オキサゾリジン、パーヒドロオキサジン(モルホリン等)、パーヒドロオキサゼピン環を表す。
【0094】
およびRが結合する窒素原子と一緒になって形成する、アミノ酸残基とは、グリシン、アラニン、セリン、システイン、シスチン、スレオニン、バリン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、フェニルアラニン、チロシン、チロニン、プロリン、ヒドロキシプロリン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン、オルニチン、ヒスチジン残基およびこれらのエステル(C1〜4アルキルエステルまたはベンジルエステル等)を表す。
【0095】
本発明中、Aとしては、酸素原子および置換されていてもよい窒素原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。
【0096】
本発明中、環Bとしては、置換基を有していてもよいC3〜10の単環または二環式炭素環、置換基を有していてもよい1〜5個の窒素原子、1〜2個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む3〜10員の単環または二環式複素環、および置換基を有していてもよいステロイド骨格が好ましく、置換基を有していてもよいシクロヘキサン、ベンゼン、ナフタレン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾール、ピリジン、ジヒドロピリジン、ジオキソラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン環、および置換基を有していてもよいステロイド骨格がより好ましい。また、このときの置換基としては、1〜3個のハロゲン原子で置換されていてもよいC1〜4アルキル基、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、カルボキシ基、置換されていてもよいカルボニル基およびハロゲン原子が好ましく、メチル基、トリフルオロメチル基、オキソ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メトキシカルボニル基および塩素原子がより好ましい。
【0097】
本発明中、Dとしては、置換されていてもよいC1〜8アルキレン基、置換されていてもよいC2〜8アルケニレン基、および結合手が好ましく、置換されていてもよいC1〜4アルキレン基、置換されていてもよいC2〜4アルケニレン基、および結合手がより好ましく、置換されていてもよいメチレン、エチレン、トリメチレン、プロペニレン基、および結合手が最も好ましい。また、このときの置換基としては、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、置換されていてもよい窒素原子が好ましく、オキソ基、ベンジル基で保護されていてもよい水酸基、C14〜17アシル基で保護された水酸基、およびC14〜17アシル基で置換された窒素原子がより好ましい。
【0098】
本発明中、Eとしては、置換されていてもよいC1〜8アルキレン基、置換されていてもよいC2〜8アルケニレン基、および結合手が好ましく、置換されていてもよいC1〜4アルキレン基、置換されていてもよいC2〜4アルケニレン基、および結合手がより好ましく、置換されていてもよいメチレン、エチレン、トリメチレン、プロペニレン基、および結合手が最も好ましい。また、このときの置換基としては、オキソ基、保護されていてもよい水酸基、および置換されていてもよい窒素原子が好ましく、オキソ基がより好ましい。
【0099】
本発明中、Mとしては、
【0100】
【化17】

【0101】
[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]
、および結合手が好ましく、
【0102】
【化18】

【0103】
[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]
、および結合手がより好ましい。RおよびRとしては、水素原子および置換されていてもよいC1〜8アルキル基が好ましく、水素原子およびメチル基がより好ましい。Rとしては、保護されていてもよい水酸基および「O」が好ましく、メトキシ基および「O」がより好ましい。
【0104】
本発明中、Rとしては、(1)水素原子、(2)置換されていてもよいC1〜20アルキル基、(3)置換されていてもよいC2〜20アルケニル基、(4)置換されていてもよいC1〜20アルキリデン基、(5)置換されていてもよい環状基、(6)オキソ基、(7)水酸基、(8)置換されていてもよいC1〜20アルキルオキシ基、(9)置換されていてもよい環状基で保護されていてもよい水酸基、(10)置換されていてもよいC1〜20アシルオキシ基、(11)メルカプト基、(12)置換されていてもよいC1〜20アルキルチオ基、(13)置換されていてもよいカルボニル基、(14)置換されていてもよいC1〜20アシル基、(15)置換されていてもよいカルバモイル基(ここで置換基が2個のとき、それらが結合する窒素原子と一緒になって、1〜5個の窒素原子、1個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む5〜7員の単環複素環を形成してもよく、該複素環は、C1〜8アルキル基、水酸基、またはアミノ基によって置換されていてもよい。)、(16)シアノ基、(17)ニトロ基、(18)置換されていてもよいアミノ基(ここで置換基が2個のとき、それらが結合する窒素原子と一緒になって、1〜5個の窒素原子、1個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む5〜7員の単環複素環を形成してもよく、該複素環は、C1〜8アルキル基、水酸基、またはアミノ基によって置換されていてもよい。)、および(19)ハロゲン原子が好ましく、(1)水素原子、(2)置換されていてもよいC1〜4アルキル基、(3)置換されていてもよい環状基、(4)オキソ基、(5)水酸基、(6)置換されていてもよいC1〜4アルキルオキシ基、(7)置換されていてもよい環状基で保護されていてもよい水酸基、(8)置換されていてもよいC1〜20アシルオキシ基、(9)メルカプト基、(10)置換されていてもよいカルボニル基、(11)置換されていてもよいカルバモイル基(ここで置換基が2個のとき、それらが結合する窒素原子と一緒になって、1〜5個の窒素原子、1個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む5〜7員の単環複素環を形成してもよく、該複素環は、C1〜8アルキル基、水酸基、またはアミノ基によって置換されていてもよい。)、(12)ニトロ基、(13)置換されていてもよいアミノ基(ここで置換基が2個のとき、それらが結合する窒素原子と一緒になって、1〜5個の窒素原子、1個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む5〜7員の単環複素環を形成してもよく、該複素環は、C1〜8アルキル基、水酸基、またはアミノ基によって置換されていてもよい。)、および(14)ハロゲン原子がより好ましく、(1)水素原子、(2)置換されていてもよいメチル基、(3)置換されていてもよい環状基、(4)オキソ基、(5)水酸基、(6)メトキシ基、(7)置換されていてもよいC1〜20アシルオキシ基、(8)置換されていてもよいカルボニル基、(9)メチル基で置換されていてもよいカルバモイル基、(10)ニトロ基、(11)メチル基で置換されていてもよいアミノ基、および(12)塩素原子が最も好ましい。また、上記に例示した「置換されていてもよい」における「置換」基としては、C1〜20アルキル基、環状基、環状基で置換されたC1〜20アルキル基、オキソ基、水酸基、C1〜20アルキルオキシ基、C1〜20アシルオキシ基、C1〜20アシル基、ハロゲン原子が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、環状基、ベンジル基、オキソ基、水酸基、C1〜8アルキルオキシ基、塩素原子がより好ましい。さらに、このときの環状基としては、置換基を有していてもよいC3〜10の単環または二環式炭素環、置換基を有していてもよい1〜5個の窒素原子、1〜2個の酸素原子および/または1個の硫黄原子を含む3〜10員の単環または二環式複素環、および置換基を有していてもよいステロイド骨格が好ましく、置換基を有していてもよいシクロヘキサン、ベンゼン、ナフタレン、ピロリジン、ピペリジン、イミダゾール、ピリジン、ジヒドロピリジン、ジオキソラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン環、および置換基を有していてもよいステロイド骨格がより好ましい。
【0105】
本発明中、mとしては1が好ましい。
【0106】
本発明中、nとしては0、1および2が好ましく、0および1がより好ましい。
【0107】
一般式(I)で示される本発明化合物のうち、好ましい化合物としては、一般式(I−1)
【0108】
【化19】

【0109】
[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]、
一般式(I−2)
【0110】
【化20】

【0111】
[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]
一般式(I−3)
【0112】
【化21】

【0113】
[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]、
一般式(I−4)
【0114】
【化22】

【0115】
[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]、および
一般式(I−5)
【0116】
【化23】

【0117】
[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]
で示される化合物、その塩またはその溶媒和物が挙げられる。
【0118】
一般式(I)で示される本発明化合物のうち、より好ましい化合物としては、一般式(I−1−1)
【0119】
【化24】

【0120】
[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]、および
一般式(I−2−1)
【0121】
【化25】

【0122】
[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]
で示される化合物、その塩またはその溶媒和物が挙げられる。
【0123】
また、本発明においては、好ましい基、好ましい環として上に列挙した組み合わせを含む一般式(I)で示される化合物がすべて好ましい。
【0124】
さらに具体的な態様として、以下に示す化合物、その塩またはその溶媒和物が挙げられる。
(1) (2R)−2−プロピルオクタン酸 1−(アセチルオキシ)エチルエステル、(2) (2R)−2−プロピルオクタン酸 1−(アセチルオキシ)−1−メチルエチルエステル、
(3) (2R)−2−プロピルオクタン酸 1−{[(シクロヘキシルオキシ)カルボニル]オキシ}エチルエステル、
(4) エタン−1,2−ジイル (2R,2’R)ビス(2−プロピルオクタノアート)、
(5) パルミチン酸 2−{[(2R)−2−プロピルオクタノイル]オキシ}エチルエステル、
(6) 4−オキソ−4−(2−{[(2R)−2−プロピルオクタノイル]オキシ}エトキシ)ブタン酸ナトリウム、
(7) ピペリジン−3−カルボン酸 2−{[(2R)−2−プロピルオクタノイル]オキシ}エチルエステル、
(8) 1,4−ジヒドロピリジン−3−カルボン酸 2−{[(2R)−2−プロピルオクタノイル]オキシ}エチルエステル、
(9) 3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸 2−{[(2R)−2−プロピルオクタノイル]オキシ}エチルエステル、
(10) 3−{[(2R)−2−プロピルオクタノイル]オキシ}プロパン−1,2−ジイル ジオクタデカノアート、
(11) 2−{[(2R)−2−プロピルオクタノイル]オキシ}プロパン−1,3−ジイル ジペンタデカノアート、
(12) (2R)−2−プロピルオクタン酸無水物、
(13) (2R)−2−プロピルオクタン酸 3−オキソ−1,3−ジヒドロ−2−ベンゾフラン−1−イルエステル、
(14) (2R)−2−プロピルオクタン酸 (5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソラ−4−イル)メチルエステル、
(15) (2R)−2−プロピルオクタン酸 [(4R)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル]メチルエステル、
(16) (2R)−2−プロピルオクタン酸 3−エトキシ−1−メチル−3−オキソプロピルエステル、
(17) (4R)−4−((3R,5R,7R,8R,9S,10S,12S,13R,14S,17R)−7,12−ジヒドロキシ−10,13−ジメチル−3−{[(1−{[(2R)−2−プロピルオクタノイル]オキシ}エトキシ)カルボニル]オキシ}ヘキサデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−17−イル)ペンタン酸、
(18) コール酸 2−{[(2R)−2−プロピルオクタノイル]オキシ}エチルエステル、および
(19) (2R)−2−プロピルオクタン酸 2−(ジメチルアミノ)−2−オキソエチルエステル。
[異性体]
本発明においては、特に指示しない限り異性体はこれをすべて包含する。例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルオキシ基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アルキニルオキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アシル基およびアシルオキシ基には直鎖のものおよび分枝鎖のものが含まれる。さらに、二重結合、環、縮合環における異性体(E体、Z体、シス体、トランス体)、不斉炭素の存在等による異性体(R体、S体、α配置、β配置、エナンチオマー、ジアステレオマー)、旋光性を有する光学活性体(D体、L体、d体、l体)、クロマトグラフィー分離による極性体(高極性体、低極性体)、平衡化合物、回転異性体、およびこれらの任意の割合の混合物、ラセミ混合物は、すべて本発明に含まれる。
【0125】
本発明においては、特に断わらない限り、当業者にとって明らかなように記号
【0126】
【化26】

【0127】
はα配置であることを表し、
【0128】
【化27】

【0129】
はβ配置であることを表し、
【0130】
【化28】

【0131】
はα配置、β配置またはそれらの任意の比率の混合物であることを表し、
【0132】
【化29】

【0133】
はα配置とβ配置の任意の比率の混合物であることを表す。
【0134】
また、一般式(I)で示される化合物は同位元素(例えば、H、14C、35S、125I)等で標識されていてもよい。
[塩および溶媒和物]
一般式(I)で示される本発明化合物は、公知の方法で塩に変換される。
【0135】
塩は、毒性のない、水溶性のものが好ましい。
【0136】
一般式(I)で示される本発明化合物の塩としては、例えば、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム、リチウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩(テトラメチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等)、有機アミン(トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン等)の塩、酸付加物塩(無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩等)、有機酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩等)等)が挙げられる。
【0137】
さらに塩には、四級アンモニウム塩も含まれる。四級アンモニウム塩とは、一般式(I)で示される化合物に窒素原子が含まれている場合、その窒素原子が、R基によって四級化されたものを表す。ここでR基は、C1〜8アルキル基、フェニル基によって置換されたC1〜8アルキル基を表す。
【0138】
また、N−オキシド体とは、一般式(I)で示される化合物に窒素原子が含まれている場合、その窒素原子が、酸化されたものを表す。一般式(I)で示される化合物に窒素原子が含まれている場合、任意の方法でN−オキシド体にすることができる。一般式(I)で示される本発明化合物の塩およびN−オキシド体には、溶媒和物、または上記一般式(I)で示される本発明化合物のアルカリ(土類)金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、酸付加物塩の溶媒和物も含まれる。
【0139】
一般式(I)で示される本発明化合物またはその塩は、公知の方法により溶媒和物に変換することもできる。
【0140】
溶媒和物は、毒性のない、水溶性のものが好ましい。
【0141】
一般式(I)で示される本発明化合物の溶媒和物としては、例えば、水、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール等)等の溶媒和物が挙げられる。
[本発明化合物の製造方法]
一般式(I)で示される本発明化合物は、公知の方法、例えば国際公開WO02/092068号パンフレットに記載の方法、コンプレヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ(Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations、第2版)(Richard C.Larock著、John Wiley & Sons Inc、1999)に記載された方法、あるいは以下に示す方法および/またはそれに準じた方法を適宜改良して組み合わせて用いることで製造することができる。なお、以下の各製造方法において、原料化合物は塩として用いてもよい。このような塩としては、前記した一般式(I)の塩として記載したものが用いられる。
【0142】
なお、当業者にとっては容易に考えられることではあるが、以下に示す一般式(I)で示される本発明化合物の製造原料および中間体化合物が、水酸基、カルボキシル基、アミノ基またはメルカプト基を有する場合、それらを適宜、保護/脱保護反応に付すことによって目的とする一般式(I)で示される本発明化合物の製造を容易にすることができる。
【0143】
水酸基の保護基としては、例えば、メチル基、トリチル基、メトキシメチル(MOM)基、1−エトキシエチル(EE)基、メトキシエトキシメチル(MEM)基、2−テトラヒドロピラニル(THP)基、トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)基、t−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基、アセチル(Ac)基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ベンジル(Bn)基、p−メトキシベンジル基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル(Troc)基等が挙げられる。
【0144】
カルボキシ基の保護基としては、例えば、メチル基、エチル基、t−ブチル基、アリル基、フェナシル基、ベンジル基等が挙げられる。
【0145】
アミノ基の保護基としては、例えばベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル(Alloc)基、1−メチル−1−(4−ビフェニル)エトキシカルボニル(Bpoc)基、トリフルオロアセチル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、ベンジル(Bn)基、p−メトキシベンジル基、ベンジルオキシメチル(BOM)基、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル(SEM)基等が挙げられる。
【0146】
メルカプト基の保護基としては、例えば、ベンジル基、メトキシベンジル基、メトキシメチル(MOM)基、2−テトラヒドロピラニル(THP)基、ジフェニルメチル基、アセチル(Ac)基等が挙げられる。
【0147】
水酸基、カルボキシル基、アミノ基またはメルカプト基の保護基としては、上記した以外にも容易にかつ選択的に脱離できる基であれば特に限定されない。例えば、Protective Groups in Organic Synthesis(T.W.Greene、John Wiley & Sons Inc、1999)に記載されたものも用いられる。
【0148】
水酸基、カルボキシル基、アミノ基またはメルカプト基の保護基の脱保護反応は、よく知られており、例えば、
(1)アルカリ加水分解、
(2)酸性条件下における脱保護反応、
(3)加水素分解による脱保護反応、
(4)金属錯体を用いた脱保護反応、
(5)金属を用いた脱保護反応、
(6)シリル基の脱保護反応等が挙げられる。
【0149】
これらの方法を具体的に説明すると、
(1)アルカリ加水分解による脱保護反応(例えば、トリフルオロアセチル基等)は、例えば、有機溶媒(メタノール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)中、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化バリウム、水酸化カルシウム等)または炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)あるいはその水溶液もしくはこれらの混合物を用いて、0〜40℃の温度で行なわれる。
【0150】
(2)酸条件下での脱保護反応(例えば、t−ブトキシカルボニル基、トリチル基等の脱保護反応)は、例えば、水または有機溶媒(ジクロロメタン、クロロホルム、1,4−ジオキサン、酢酸エチル、アニソール等)中、有機酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸等)、または無機酸(塩酸、硫酸等)もしくはこれらの混合物(臭化水素/酢酸等)中、0〜100℃の温度で行なわれる。
【0151】
(3)加水素分解による脱保護反応(例えば、ベンジル基、ベンズヒドリル基、ベンジルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基等の脱保護反応)は、例えば、溶媒(エーテル系(テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチルエーテル等)、アルコール系(メタノール、エタノール等)、ベンゼン系(ベンゼン、トルエン等)、ケトン系(アセトン、メチルエチルケトン等)、ニトリル系(アセトニトリル等)、アミド系(N,N−ジメチルホルムアミド等)、水、酢酸エチル、酢酸またはそれらの2以上の混合溶媒等)中、触媒(パラジウム−炭素、パラジウム黒、水酸化パラジウム、酸化白金、ラネーニッケル等)の存在下、常圧または加圧下の水素雰囲気下またはギ酸アンモニウム存在下、0〜200℃の温度で行なわれる。
【0152】
(4)金属錯体を用いる脱保護反応(例えば、アリルオキシカルボニル基等の脱保護反応)は、例えば、有機溶媒(ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトニトリル、1,4−ジオキサン、エタノール等)、水またはそれらの混合溶媒中、トラップ試薬(水素化トリブチルスズ、トリエチルシラン、ジメドン、モルホリン、ジエチルアミン、ピロリジン等)、有機酸(酢酸、ギ酸、2−エチルヘキサン酸等)および/または有機酸塩(2−エチルヘキサン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム等)の存在下、ホスフィン系試薬(トリフェニルホスフィン等)の存在下または非存在下、金属錯体(テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、二塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)等)を用いて、0〜40℃の温度で行なわれる。
【0153】
(5)金属を用いる脱保護反応は、例えば、酸性溶媒(酢酸、pH4.2〜7.2の緩衝液またはそれらの溶液とテトラヒドロフラン等の有機溶媒との混合液)中、粉末亜鉛の存在下、必要であれば超音波をかけながら、0℃〜40℃の温度で行なわれる。
【0154】
(6)シリル基の脱保護反応は、例えば、水と混和しうる有機溶媒(テトラヒドロフラン、アセトニトリル等)中、テトラブチルアンモニウムフルオリドを用いて、0〜40℃の温度で行なわれる。
【0155】
[1] 一般式(I)で示される本発明化合物のうち、Aが酸素原子である化合物、すなわち一般式(I−A)
【0156】
【化30】

【0157】
[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]
で示される化合物は、2−プロピルオクタン酸と、一般式(II)
【0158】
【化31】

【0159】
[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]
で示される化合物とをエステル化反応に付すことで製造することができる。このエステル化反応は公知であり、例えば、
(1)縮合剤を用いる方法
(2)混合酸無水物を用いる方法、
(3)酸ハライドを用いる方法、
等が挙げられる。
【0160】
これらの方法を具体的に説明すると、
(1)縮合剤を用いる方法は、例えば、2−プロピルオクタン酸を有機溶媒(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド類等が用いられる。これらの溶媒は単独で用いることもできるし、また必要に応じて二種またはそれ以上の多種類を適当な割合、例えば1:1〜1:10の割合で混合して用いてもよい。)中、または無溶媒で、塩基(例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアルキルアミン類、例えばN,N−ジメチルアニリン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の芳香族アミン類等)の存在下または非存在下、縮合剤(例えば、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1−エチル−3−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]カルボジイミド(EDC)、1,1’−カルボニルジイミダゾール(CDI)、2−クロロ−1−メチルピリジニウムヨウ素、1−プロピルホスホン酸環状無水物(1-propanephosphonic acid cyclic anhydride、PPA)等)を用い、1−ヒドロキシベンズトリアゾール(HOBt)を用いるか用いないで、一般式(II)で示される化合物と0〜40℃で反応させることにより行なわれる。
【0161】
(2)混合酸無水物を用いる方法は、例えば、2−プロピルオクタン酸を有機溶媒(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド類が用いられる。これらの溶媒は単独で用いることもできるし、また必要に応じて二種またはそれ以上の多種類を適当な割合、例えば1:1〜1:10の割合で混合して用いてもよい。)中または無溶媒で、塩基(例えば、ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、N,N−ジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルエチルアミン等)の存在下、酸ハライド(例えば、ピバロイルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド、メタンスルホニルクロリド等)、または酸誘導体(例えば、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソブチル等)と、0〜40℃で反応させ、得られた混合酸無水物を有機溶媒(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド類等が用いられる。これらの溶媒は単独で用いることもできるし、また必要に応じて二種またはそれ以上の多種類を適当な割合、例えば1:1〜1:10の割合で混合して用いてもよい。)中、一般式(II)で示される化合物と0〜40℃で反応させることにより行なわれる。
【0162】
(3)酸ハライドを用いる方法は、例えば、2−プロピルオクタン酸を有機溶媒(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド類等が用いられる。これらの溶媒は単独で用いることもできるし、また必要に応じて二種またはそれ以上の多種類を適当な割合、例えば1:1〜1:10の割合で混合して用いてもよい。)中または無溶媒で、酸ハライド化剤(例えば、オキザリルクロリド、塩化チオニル、五塩化リン、三塩化リン等)と−20℃〜還流温度で反応させ、得られた酸ハライドを塩基(例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン等のアルキルアミン類、例えばN,N−ジメチルアニリン、ピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等の芳香族アミン類等)の存在下、一般式(II)で示される化合物と0〜40℃で反応させることにより行なわれる。また、得られた酸ハライドを有機溶媒(例えば、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等が用いられる。これらの溶媒は単独で用いることもできるし、また必要に応じて二種またはそれ以上の多種類を適当な割合、例えば1:1〜1:10の割合で混合して用いてもよい。)中、アルカリ水溶液(例えば、重曹水または水酸化ナトリウム溶液等)を用いて、一般式(II)で示される化合物と0〜40℃で反応させることにより行なうこともできる。
【0163】
これら(1)、(2)および(3)の反応は、いずれも不活性ガス(アルゴン、窒素等)雰囲気下、無水条件で行なうことが望ましい。
【0164】
さらに必要であれば、この反応に引き続いて公知の方法によって、目的の非毒性塩に変換する操作を行なってもよい。
【0165】
[2] 一般式(I)で示される本発明化合物のうち、Aが置換されていてもよい窒素原子である化合物、すなわち一般式(I−B)
【0166】
【化32】

【0167】
[式中、RI−Bは水素原子または置換基(該置換基は前記「置換されていてもよい窒素原子」における「置換」基と同じ意味を表す。)を表し、その他の記号は前記と同じ意味を表す。]
で示される化合物は、2−プロピルオクタン酸と、一般式(III)
【0168】
【化33】

【0169】
[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]
で示される化合物とをアミド化反応に付すことで製造することができる。このアミド化反応は公知であり、例えば、一般式(II)で示される化合物の代わりに一般式(III)で示されるアミン化合物を用いて、前記したエステル化反応と同様の方法に準じて行なうことが出来る。さらに必要であれば、この反応に引き続いて公知の方法によって、目的の非毒性塩に変換する操作を行なってもよい。
【0170】
本発明において、原料として用いられる2−プロピルオクタン酸、一般式(II)および(III)で示される化合物は、それ自体公知であるか、あるいは公知の方法、例えば欧州特許公開第0632008号明細書、国際公開第99/58513号パンフレット、国際公開第00/48982号パンフレット、国際公開第03/051852号パンフレット、国際公開第03/097851号パンフレット等に記載の方法、コンプレヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ(Comprehensive Organic Transformations:A Guide to Functional Group Preparations、第2版)(Richard C.Larock著、John Wiley & Sons Inc、1999)に記載された方法および/またはそれに準じた方法等を適宜改良して組み合わせて用いることで製造することができる。
【0171】
本明細書中の各反応において、適宜、高分子ポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール等)に担持させた固相担持試薬を用いてもよい。
【0172】
本明細書中の各反応において、反応生成物は通常の精製手段、例えば、常圧下または減圧下における蒸留、シリカゲルまたはケイ酸マグネシウムを用いた高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、イオン交換樹脂、スカベンジャー樹脂あるいはカラムクロマトグラフィーまたは洗浄、再結晶等の方法により精製することができる。精製は各反応ごとに行なってもよいし、いくつかの反応終了後に行なってもよい。
[医薬品への適用]
本発明プロドラッグは、生体内に投与した際に、酵素的または化学的に変換されることで2−プロピルオクタン酸となって薬理活性を発現するものであるため、2−プロピルオクタン酸が奏功する疾患、患者であればどのような場合であっても予防および/または治療剤として用いることができる。2−プロピルオクタン酸、その塩およびその溶媒和物は、アストロサイト機能改善作用を有しており、ヒトを含めた動物、特にヒトにおいて、幹細胞、神経前駆細胞または神経細胞の生着、分化、増殖および/または成熟促進物質として、または神経栄養因子活性増強物質、神経栄養因子様物質、神経変性抑制物質として、神経細胞死を抑制し、神経細胞の新生、再生および/または軸索進展により神経組織および神経機能の修復・再生を促進する。
【0173】
また、2−プロピルオクタン酸、その塩およびその溶媒和物は、神経変性疾患の予防、悪性化抑制および/または治療に有用である。ここで神経変性疾患は、神経細胞の変性を伴う疾患をすべて包含し、その病因によって限定されるものではない。神経変性疾患として具体的には、例えば、パーキンソン病もしくはパーキンソン症候群、アルツハイマー病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、家族性筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、オリーブ橋小脳萎縮症、皮質基底核変性症、家族性痴呆症、前頭側頭型痴呆症、老年性痴呆、びまん性レビー小体病、線条体−黒質変性症、舞踏病−無定位運動症、ジストニア、メージ症候群、晩発性小脳皮質萎縮症、家族性痙性対麻痺、運動神経病、マッカードジョセフ病、Pick病、脳卒中または脳血管障害(例えば、脳出血(例えば、高血圧性脳内出血等)もしくはクモ膜下出血後、または脳血栓もしくは塞栓発症後の脳梗塞および脳梗塞後の神経機能障害、一過性虚血発作等)、脳脊髄外傷後の神経機能障害、脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎、急性小脳炎、横断性脊髄炎等)、脳腫瘍(例えば、星状膠細胞腫等)、感染症に伴う脳脊髄疾患(例えば、髄膜炎、脳膿瘍、クロッツフェルド−ヤコブ病、エイズ痴呆等)、精神疾患(統合失調症、躁うつ病、神経症、心身症、てんかん等)等が挙げられる。神経変性疾患として好ましくは、例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺、オリーブ橋小脳萎縮症、脳卒中(例えば、脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞、一過性虚血発作等)、脳脊髄外傷後の神経機能障害、脱髄疾患(例えば、多発性硬化症等)、脳腫瘍(例えば、星状膠細胞腫等)、感染症に伴う脳脊髄疾患(例えば、髄膜炎、脳膿瘍、クロイツフェルド−ヤコブ病、エイズ痴呆等)、神経変性疾患としてより好ましくは、例えば、脳卒中、脳梗塞等である。とりわけ、急性期脳梗塞が好ましい。厳密に解されるべきでは無いが、急性期脳梗塞とは、発症後2週間以内の脳梗塞を意味する。
【0174】
また、2−プロピルオクタン酸、その塩およびその溶媒和物は、神経再生を要する疾患の治療、神経障害の治療にも有用である。ここで神経障害は、神経機能の障害であればすべて包含する。神経障害としては、例えば、一過性失明(例えば、一過性黒内障等)、意識障害、反対側片麻痺、感覚障害、同名性半盲等、失語、交代性片麻痺、両側性四肢麻痺、感覚障害、同名性半盲、めまい、耳鳴、眼振、複視、昏睡等が挙げられるが、好ましくは、神経変性疾患に伴うこれらの神経障害である。神経変性疾患に伴う神経障害、例えば、脳梗塞における神経障害は、血管閉塞部位により様々であり、また障害されるレベルによっても症状が異なるが、主に上記の神経障害が見られる。
【0175】
2−プロピルオクタン酸、その塩およびその溶媒和物は、S100β増加抑制作用を有するため、S100β増加を抑制することによっても、前記の障害や疾患(例えば、神経変性疾患、神経障害、または神経再生を要する疾患等)の治療剤として機能することができる。
【0176】
本発明プロドラッグ、または本発明プロドラッグと他の薬剤の併用剤を上記の目的で用いるには、通常、ヒトおよび動物においては全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。また、生体に投与する場合、外科的に、例えば、脳室内等に直接投与することも可能である。
【0177】
投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、経口投与の場合、通常、成人一人当たり、1回につき、1μgから5000mgの範囲で1日1回から数回経口投与される。非経口投与の場合は、成人一人当たり、1回につき、0.1ngから500mgの範囲で1日1回から数回非経口投与される。非経口投与形態は、好ましくは、静脈内投与であり、1日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。
【0178】
もちろん前記したように、投与・処置量は種々の条件により変動するので、上記投与・処置量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与・処置の必要な場合もある。
【0179】
本発明プロドラッグ、または本発明プロドラッグと他の薬剤の併用剤を投与する際には、経口投与のための内服用固形剤、内服用液剤および、非経口投与のための注射剤、外用剤、坐剤、点眼剤、吸入剤等として用いられる。
【0180】
経口投与のための内服用固形剤には、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤等が含まれる。カプセル剤には、ハードカプセルおよびソフトカプセルが含まれる。また錠剤には舌下錠、口腔内貼付錠、口腔内速崩壊錠等が含まれる。このような内服用固形剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質はそのままか、または賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。さらにゼラチンのような吸収されうる物質のカプセルも包含される。
【0181】
舌下錠は公知の方法に準じて製造、調製される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質に賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、コロイダルシリカ、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(デンプン、L−ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、膨潤剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カーボポール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、グアーガム等)、膨潤補助剤(グルコース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルトース、トレハロース、リン酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、グリシン、グルタミン酸、アルギニン等)、安定剤、溶解補助剤(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、香味料(オレンジ、ストロベリー、ミント、レモン、バニラ等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。また、必要に応じて常用される防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を加えることもできる。口腔内貼付錠は公知の方法に準じて製造、調製される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質に賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、コロイダルシリカ、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(デンプン、L−ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、付着剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カーボポール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、グアーガム等)、付着補助剤(グルコース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルトース、トレハロース、リン酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、グリシン、グルタミン酸、アルギニン等)、安定剤、溶解補助剤(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、香味料(オレンジ、ストロベリー、ミント、レモン、バニラ等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。また、必要に応じて常用される防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を加えることもできる。口腔内速崩壊錠は公知の方法に準じて製造、調製される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質をそのまま、あるいは原末もしくは造粒原末粒子に適当なコーティング剤(エチルセルロース、ヒドキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリル酸メタクリル酸コポリマー等)、可塑剤(ポリエチレングリコール、クエン酸トリエチル等)を用いて被覆を施した活性物質に賦形剤(ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、コロイダルシリカ、デンプン等)、結合剤(ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(デンプン、L−ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム等)、分散補助剤(グルコース、フルクトース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルトース、トレハロース、リン酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩、グリシン、グルタミン酸、アルギニン等)、安定剤、溶解補助剤(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グルタミン酸、アスパラギン酸等)、香味料(オレンジ、ストロベリー、ミント、レモン、バニラ等)等と混合され、常法に従って製剤化して用いられる。また、必要によりコーティング剤(白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。また、必要に応じて常用される防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤等の添加物を加えることもできる。
【0182】
経口投与のための内服用液剤は、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤・乳剤、シロップ剤、エリキシル剤等を含む。このような液剤においては、ひとつまたはそれ以上の活性物質が、一般的に用いられる希釈剤(精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0183】
非経口投与のための外用剤の剤形には、例えば、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、貼付剤、リニメント剤、噴霧剤、吸入剤、スプレー剤、点眼剤、および点鼻剤等が含まれる。これらはひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、公知の方法または通常使用されている処方により製造、調製される。
【0184】
軟膏剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に研和、または溶融させて製造、調製される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0185】
ゲル剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させて製造、調製される。ゲル基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、低級アルコール(エタノール、イソプロピルアルコール等)、ゲル化剤(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース等)、中和剤(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等)、界面活性剤(モノステアリン酸ポリエチレングリコール等)、ガム類、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0186】
クリーム剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融または乳化させて製造、調製される。クリーム基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸エステル、低級アルコール、炭化水素類、多価アルコール(プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等)、高級アルコール(2−ヘキシルデカノール、セタノール等)、乳化剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、脂肪酸エステル類等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0187】
湿布剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、練合物とし支持体上に展延塗布して製造される。湿布基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、増粘剤(ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース等)、湿潤剤(尿素、グリセリン、プロピレングリコール等)、充填剤(カオリン、酸化亜鉛、タルク、カルシウム、マグネシウム等)、水、溶解補助剤、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0188】
貼付剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を基剤に溶融させ、支持体上に展延塗布して製造される。貼付剤用基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高分子基剤、油脂、高級脂肪酸、粘着付与剤、かぶれ防止剤から選ばれるもの単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0189】
リニメント剤は公知または通常使用されている処方により製造される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物を水、アルコール(エタノール、ポリエチレングリコール等)、高級脂肪酸、グリセリン、セッケン、乳化剤、懸濁化剤等から選ばれるもの単独または2種以上に溶解、懸濁または乳化させて製造、調製される。さらに、保存剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0190】
噴霧剤、吸入剤、およびスプレー剤は、一般的に用いられる希釈剤以外に亜硫酸水素ナトリウムのような安定剤と等張性を与えるような緩衝剤、例えば塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムあるいはクエン酸のような等張剤を含有していてもよい。スプレー剤の製造方法は、例えば米国特許第2,868,691号パンフレットおよび同第3,095,355号パンフレットに詳しく記載されている。また、エアロゾル剤としても構わない。
【0191】
非経口投与のための注射剤としては、溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含する。注射剤は、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造、調製される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0192】
非経口投与のための点眼剤には、点眼液、懸濁型点眼液、乳濁型点眼液、用時溶解型点眼液および眼軟膏が含まれる。これらの点眼剤は公知の方法に準じて製造、調製される。例えば、ひとつまたはそれ以上の活性物質を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。点眼剤の溶剤としては、例えば、滅菌精製水、生理食塩水、その他の水性溶剤または注射用非水性用剤(例えば、植物油等)等およびそれらの組み合わせが用いられる。点眼剤は、等張化剤(塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、緩衝化剤(リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、界面活性化剤(ポリソルベート80(登録商標)、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等)、安定化剤(クエン酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム等)、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)等を必要に応じて適宜選択して含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか、無菌操作法によって製造、調製される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の滅菌精製水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0193】
非経口投与のための吸入剤としては、エアロゾル剤、吸入用粉末剤又は吸入用液剤が含まれ、当該吸入用液剤は用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁させて使用する形態であってもよい。これらの吸入剤は公知の方法に準じて製造される。例えば、吸入用液剤の場合には、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、着色剤、緩衝化剤(リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、等張化剤(塩化ナトリウム、濃グリセリン等)、増粘剤(カリボキシビニルポリマー等)、吸収促進剤等を必要に応じて適宜選択して調製される。
【0194】
吸入用粉末剤の場合には、滑沢剤(ステアリン酸およびその塩等)、結合剤(デンプン、デキストリン等)、賦形剤(乳糖、セルロース等)、着色剤、防腐剤(塩化ベンザルコニウム、パラベン等)、吸収促進剤等を必要に応じて適宜選択して調製される。
【0195】
吸入用液剤を投与する際には通常噴霧器(アトマイザー、ネブライザー)が使用され、吸入用粉末剤を投与する際には通常粉末薬剤用吸入投与器が使用される。
【0196】
非経口投与のためその他の組成物としては、ひとつまたはそれ以上の活性物質を含み、常法により処方される直腸内投与のための坐剤および腟内投与のためのペッサリー等が含まれる。
【0197】
本発明プロドラッグは、
1)その化合物の予防および/または治療効果の補完および/または増強、
2)その化合物の動態・吸収改善、投与量の低減、
および/または
3)その化合物の副作用の軽減
のために他の薬剤と組み合わせて、併用剤として投与してもよい。
【0198】
本発明プロドラッグと他の薬剤の併用剤は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、また別々の製剤にして投与する形態をとってもよい。この別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また時間差による投与は、本発明プロドラッグを先に投与し、他の薬剤を後に投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、本発明プロドラッグを後に投与してもかまわず、それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。
【0199】
本発明プロドラッグの予防および/または治療効果を補完および/または増強する他の薬剤の併用剤は、本明細書中に例示したものに限定されない。また、本発明プロドラッグの予防および/または治療効果を補完および/または増強する他の薬剤の併用剤には、本明細書中に示したメカニズムに基づいて、現在までに見出されているものだけでなく、今後見出されるものも含まれる。
【0200】
上記併用剤により、予防および/または治療効果を奏する疾患は特に限定されず、本発明プロドラッグの予防および/または治療効果を補完および/または増強する疾患であればよい。
【0201】
このような併用薬として例えば、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、ニコチン受容体調節薬、βアミロイド蛋白産生、分泌、蓄積、凝集および/または沈着抑制薬(例えば、βセクレターゼ阻害薬、γセクレターゼ阻害薬、βアミロイド蛋白凝集阻害薬、βアミロイドワクチン、βアミロイド分解酵素等)、脳機能賦活薬、脳循環代謝改善薬、他のパーキンソン病治療薬(例えば、ドーパミン受容体作動薬、モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬、抗コリン薬、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬等)、筋萎縮性側索硬化症治療薬、神経栄養因子、痴呆の進行に伴う異常行動、徘徊等の治療薬、アポトーシス阻害薬、神経分化・再生促進薬、抗うつ薬、抗不安薬、抗てんかん薬、降圧薬、カルシウム受容体拮抗薬、糖尿病治療薬、コレステロール低下薬等の高脂血症治療薬(例えば、スタチン系、フィブラート系、スクワレン合成酵素阻害薬等)、アルドース還元酵素阻害薬、非ステロイド性抗炎症薬、疾患修飾性抗リウマチ薬、抗サイトカイン薬(例えば、TNF阻害薬、MAPキナーゼ阻害薬等)、ステロイド薬、性ホルモンまたはその誘導体、副甲状腺ホルモン(例えば、PTH)、ファクターXa阻害薬、ファクターVIIa阻害薬、抗酸化薬、グリセリン製剤等が挙げられる。
【0202】
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬としては、例えば、塩酸ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、ザナペジル(TAK−147)が挙げられる。
【0203】
βセクレターゼ阻害薬としては、例えば、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−(N,N−ジメチルアミノ)メチルテトラリン、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−(N,N−ジプロピルアミノ)メチルテトラリン、2−(N,N−ジメチルアミノ)メチル−6−(4’−メトキシビフェニル−4−イル)メトキシテトラリン、6−(4−ビフェニリル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル]テトラリン、2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]−6−(4’−メチルビフェニル−4−イル)メトキシテトラリン、2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]−6−(4’−メトキシビフェニル−4−イル)メトキシテトラリン、6−(2’,4’−ジメトキシビフェニル−4−イル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、6−[4−(1,3−ベンゾジオキソール−5−イル)フェニル]メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、6−(3’,4’−ジメトキシビフェニル−4−イル)メトキシ−2−[2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル]テトラリン、その光学活性体、その塩およびその水和物、OM99−2(WO01/00663が挙げられる。
【0204】
βアミロイド蛋白凝集阻害薬としては、例えば、PTI−00703、ALZHEMED(NC−531)、PPI−368(特表平11−514333)、PPI−558(特表平2001−500852)、SKF−74652(Biochem. J.,340(1)巻,283−289,1999年)が挙げられる。
【0205】
脳機能賦活薬としては、例えば、アニラセタム、ニセルゴリンが挙げられる。
【0206】
脳循環代謝改善薬としては、例えば、イデベノン、ホパンテン酸カルシウム、塩酸アマンタジン、塩酸メクロフェノキサート、メシル酸ジヒドロエルゴトキシン、塩酸ピリチオキシン、γ−アミノ酪酸、塩酸ビフェメラン、マレイン酸リスリド、塩酸インデロキサジン、ニセルゴリン、プロペントフィリンが挙げられる。
【0207】
ドーパミン受容体作動薬としては、例えば、L−ドーパ、ブロモクリプテン、パーゴライド、タリペキソール、プラシペキソール、カベルゴリン、アダマンタジンが挙げられる。
【0208】
モノアミン酸化酵素(MAO)阻害薬としては、例えば、サフラジン、デプレニル、セルジリン(セレギリン)、レマセミド(remacemide),リルゾール(riluzole)が挙げられる。
【0209】
抗コリン薬としては、例えば、トリヘキシフェニジル、ビペリデンが挙げられる。
【0210】
カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ(COMT)阻害薬としては、例えば、エンタカポンが挙げられる。
【0211】
筋萎縮性側索硬化症治療薬としては、例えば、リルゾール、神経栄養因子(例えば、ABS−205)が挙げられる。
【0212】
アポトーシス阻害薬としては、例えば、CPI−1189、IDN−6556、CEP−1347が挙げられる。
【0213】
神経分化・再生促進薬としては、例えば、レテプリニム(Leteprinim)、キサリプローデン(Xaliproden;SR−57746−A)、SB−216763が挙げられる。
【0214】
抗てんかん薬としては、例えば、フェノバルビタール、メホバルビタール、メタルビタール、プリミドン、フェニトイン、エトトイン、トリメタジオン、エトスクシミド、アセチルフェネトライド、カルバマゼピン、アセタゾラミド、ジアゼパム、バルプロ酸ナトリウムが挙げられる。
【0215】
スタチン系の高脂血症治療薬としては、例えば、プラバスタチンナトリウム、アトロバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチンが挙げられる。
【0216】
フィブラート系の高脂血症治療薬としては、例えば、クロフィブラートが挙げられる。
【0217】
非ステロイド性抗炎症薬としては、例えば、メロキシカム、テオキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、アスピリンが挙げられる。
【0218】
ステロイド薬としては、例えば、デキサメサゾン、ヘキセストロール、酢酸コルチゾンが挙げられる。
【0219】
性ホルモンまたはその誘導体としては、例えば、プロゲステロン、エストラジオール、安息香酸エストラジオールが挙げられる。
【0220】
抗酸化薬としては、例えば、エダラボンが挙げられる。
【0221】
グリセリン製剤としては、例えば、グリセオールが挙げられる。
【0222】
また、本発明プロドラッグは、抗血栓薬(血栓溶解薬を含む)と同時に投与することにより、抗血栓薬の血栓溶解作用を抑制することなく、相乗的に患者の生存率あるいは神経症状を改善し、脳梗塞の治療に用いることができる。抗血栓薬としては、例えば、組織性プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)、アルテプラーゼ、ウロビリノーゲン、ウロキナーゼ、チソキナーゼ、ヘパリン、経口抗凝固薬(ワーファリン)、合成抗トロンビン薬(メシル酸ガベキサート、メシル酸ナファモスタット、アルガトロバン等)、抗血小板薬(アスピリン、ジピリダモール、塩酸チクロピン、ベラプロストナトリウム、シロスタゾール、オザグレルナトリウム等)が挙げられ、より好ましくは、組織性プラスミノーゲン活性化因子またはワーファリンである。脳梗塞には、脳出血、くも膜下出血、白質異常症が含まれる。
【0223】
さらに、本発明プロドラッグは、抗血栓薬と同時に投与することによる、あるいは抗血栓薬の投与後に投与することによる神経変性疾患治療方法、脳虚血疾患治療方法さらには脳梗塞治療方法に使用することができる。また、本発明プロドラッグと上記抗血栓薬をともに製剤化することもできる。
【0224】
以上の併用薬剤は例示であって、本発明の併用剤はこれらに限定されるものではない。
【0225】
本発明の併用剤における、本発明プロドラッグの投与量、投与方法は前記した本発明プロドラッグと同様のものを用いることができる。
【0226】
本発明プロドラッグと他の薬剤の重量比は特に限定されない。他の薬剤は、任意の2種以上を組み合わせて投与してもよい。
[毒性]
本発明プロドラッグの毒性は低いものであり、医薬として使用するために十分に安全であると判断できる。また、本発明プロドラッグは生体内において酵素的または化学的に変換されることで2−プロピルオクタン酸となって薬理活性を示すものであるが、その活性本体である2−プロピルオクタン酸の毒性も十分に低いものであり、例えば、イヌを用いた単回静脈内投与でも、100mg/kgで死亡例が見られなかった。
【発明の効果】
【0227】
本発明プロドラッグは、2−プロピルオクタン酸と比較して、脳移行性が向上したプロドラッグであり、その結果、2−プロピルオクタン酸の投与量を減少させ、かつ副作用が軽減できるものである。
【0228】
[薬理活性]
本発明プロドラッグを生体内に投与した際に、2−プロピルオクタン酸と同様の薬理効果を発現するということは、公知の試験方法、例えば、欧州特許第0632008号明細書や欧州特許公開第1174131号明細書等に記載の動物モデル等によって確認することができる。
【0229】
本発明プロドラッグの脳移行性が、2−プロピルオクタン酸と比較して向上していることは、公知の試験方法、例えば、特許第2804177号公報等に記載の動物モデル等によって確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0230】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0231】
本明細書中に用いた化合物名は、一般的にIUPACの規則に準じて命名を行なうコンピュータプログラムであるACD/Nameバッチ(登録商標、Advanced Chemistry Development Inc.社製)を用いるか、または、IUPAC命名法に準じて命名したものである。
【0232】
製剤例1:
コール酸 2−{[(2R)−2−プロピルオクタノイル]オキシ}エチルエステル(100g)、カルボキシメチルセルロースカルシウム(崩壊剤)(20.0g)、ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤)(10.0g)および微結晶セルロース(870g)を常法により混合した後打錠して、一錠中に10mgの活性成分を含有する錠剤1万錠を得る。
【0233】
製剤例2:
コール酸 2−{[(2R)−2−プロピルオクタノイル]オキシ}エチルエステル(200g)、マンニトール(2kg)および蒸留水(50L)を常法により混合した後、除塵フィルターでろ過し、5mlずつアンプルに充填し、オートクレーブで加熱滅菌して、1アンプル中20mgの活性成分を含有するアンプル1万本を得る。
【産業上の利用可能性】
【0234】
本発明は、以下に示すような医薬品への適用が可能である。
【0235】
本発明プロドラッグは、アストロサイト機能改善作用を有しており、神経変性疾患治療剤として有用である。具体的には、例えば、パーキンソン病もしくはパーキンソン症候群、アルツハイマー病、ダウン症、筋萎縮性側索硬化症、家族性筋萎縮性側索硬化症、進行性核上麻痺、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症、オリーブ橋小脳萎縮症、皮質基底核変性症、家族性痴呆症、前頭側頭型痴呆症、老年性痴呆、びまん性レビー小体病、線条体−黒質変性症、舞踏病−無定位運動症、ジストニア、メージ症候群、晩発性小脳皮質萎縮症、家族性痙性対麻痺、運動神経病、マッカードジョセフ病、Pick病、脳卒中(例えば、脳出血(例えば、高血圧性脳内出血等)、脳梗塞(例えば、脳血栓、脳塞栓等)、一過性虚血発作、クモ膜下出血等)、脳脊髄外傷後の神経機能障害、脱髄疾患(例えば、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎、急性小脳炎、横断性脊髄炎)、脳腫瘍(例えば、星状膠細胞腫)、感染症に伴う脳脊髄疾患(例えば、髄膜炎、脳膿瘍、クロッツフェルド−ヤコブ病、エイズ痴呆)、精神疾患(統合失調症、躁うつ病、神経症、心身症、てんかん等)等の神経変性疾患や、一過性失明(例えば、一過性黒内障等)、意識障害、反対側片麻痺、感覚障害、同名性半盲等、失語、交代性片麻痺、両側性四肢麻痺、感覚障害、同名性半盲、めまい、耳鳴、眼振、複視、昏睡等の神経障害の予防および/または治療が挙げられる。さらに、薬理学的に懸念される副作用が軽減されると期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−プロピルオクタン酸のプロドラッグ。
【請求項2】
2−プロピルオクタン酸が(2R)−2−プロピルオクタン酸である請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項3】
2−プロピルオクタン酸と比較して脳移行性が向上していることを特徴とする請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項4】
一般式(I)
【化1】

[式中、Aは酸素原子または置換されていてもよい窒素原子を表し、環Bはさらに置換基を有していてもよい環状基を表し、DおよびEはそれぞれ独立して、置換されていてもよいC1〜8アルキレン基、置換されていてもよいC2〜8アルケニレン基、置換されていてもよいC2〜8アルキニレン基、または結合手を表し、Mは主鎖に酸素原子、窒素原子、硫黄原子および/またはリン原子を含むスペーサー、または結合手を表し、Rは水素原子または置換基を表し、mは1〜3の整数を表し、かつmが2以上のとき複数のDおよび複数のMはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、nは0または1〜2の整数を表し、かつnが2のとき複数の環Bは同じでも異なっていてもよく、
【化2】

はα配置、β配置またはそれらの任意の比率の混合物であることを表す。ただし、
【化3】

は、(1)水酸基、(2)1個のフェニル基で置換されていてもよいC1〜4アルコキシ基、または(3)NR基(基中、RおよびRはそれぞれ独立して、(a)水素原子、(b)C1〜4アルコキシ基またはカルボキシル基で置換されていてもよいフェニル基、(c)1個の窒素原子を含有する4〜7員の複素環、(d)C1〜4アルコキシ基またはカルボキシル基で置換されていてもよいフェニル基で置換されていてもよいC1〜4アルキル基、(e)1個の窒素原子を含有する4〜7員の複素環で置換されたC1〜4アルキル基、または(f)RおよびRが結合する窒素原子と一緒になって、(i) 1〜2個の窒素原子を含有する4〜7員の飽和複素環、(ii) 1個の窒素原子および1個の酸素原子を含有する4〜7員の飽和複素環、または (iii) アミノ酸残基を表す。)を表さないものとする。]
で示される化合物、その塩またはその溶媒和物である請求項1記載のプロドラッグ。
【請求項5】
一般式(I−1)
【化4】

[式中、Dは置換されていてもよいC1〜4アルキレン基または置換されていてもよいC2〜4アルケニレン基を表し、Qは酸素原子または置換されていてもよい窒素原子を表し、その他の記号は請求項4記載と同じ意味を表す。]
または一般式(I−2)
【化5】

[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]
で示される請求項4記載の化合物。
【請求項6】
一般式(I−1−1)
【化6】

[式中、環Bはさらに置換基を有していてもよいジヒドロピリジン環を表し、その他の記号は請求項4および5記載と同じ意味を表す。]
または一般式(I−2−1)
【化7】

[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]
で示される請求項5記載の化合物。
【請求項7】
一般式(I−3)
【化8】

[式中、Gは保護されていてもよい水酸基を表し、その他の記号は請求項4記載と同じ意味を表す。]
または一般式(I−4)
【化9】

[式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。]
で示される請求項4記載の化合物。
【請求項8】
環Bが置換基を有していてもよいシクロヘキサン、ベンゼン、ナフタレン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾール、ピリジン、ジヒドロピリジン、ジオキソラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン環またはステロイド骨格である請求項4記載の化合物。
【請求項9】
Dが置換されていてもよいC1〜4アルキレン基、置換されていてもよいC2〜4アルケニレン基、または結合手である請求項4記載の化合物。
【請求項10】
Eが置換されていてもよいC1〜4アルキレン基、置換されていてもよいC2〜4アルケニレン基、または結合手である請求項4記載の化合物。
【請求項11】
Mが
【化10】

[式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子または置換基を表し、Rは保護されていてもよい水酸基または「O」を表す。]
、または結合手である請求項4記載の化合物。
【請求項12】
Rが(1)水素原子、(2)置換されていてもよいメチル基、(3)置換されていてもよい環状基、(4)オキソ基、(5)水酸基、(6)メトキシ基、(7)置換されていてもよいC1〜20アシルオキシ基、(8)置換されていてもよいカルボニル基、(9)メチル基で置換されていてもよいカルバモイル基、(10)ニトロ基、(11)メチル基で置換されていてもよいアミノ基、または(12)塩素原子である請求項4記載の化合物。
【請求項13】
2−プロピルオクタン酸のプロドラッグを含有してなる医薬組成物。
【請求項14】
アストロサイト機能改善剤である請求項13記載の組成物。
【請求項15】
神経変性疾患の予防および/または治療剤である請求項13記載の組成物。
【請求項16】
2−プロピルオクタン酸のプロドラッグと、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬、ニコチン受容体調節薬、βセクレターゼ阻害薬、γセクレターゼ阻害薬、βアミロイド蛋白凝集阻害薬、βアミロイドワクチン、βアミロイド分解酵素、脳機能賦活薬、脳循環代謝改善薬、ドーパミン受容体作動薬、モノアミン酸化酵素阻害薬、抗コリン薬、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害薬、筋萎縮性側索硬化症治療薬、神経栄養因子、アポトーシス阻害薬、抗うつ薬、抗不安薬、抗てんかん薬、降圧薬、カルシウム受容体拮抗薬、糖尿病治療薬、高脂血症治療薬、アルドース還元酵素阻害薬、非ステロイド性抗炎症薬、疾患修飾性抗リウマチ薬、抗サイトカイン薬、ステロイド薬、抗血栓薬、ファクターXa阻害薬、ファクターVIIa阻害薬、抗酸化薬およびグリセリン製剤から選ばれる1種または2種以上とを組み合わせてなる医薬。
【請求項17】
2−プロピルオクタン酸のプロドラッグを哺乳動物に投与することからなる神経変性疾患の予防および/または治療方法。
【請求項18】
神経変性疾患の予防および/または治療剤の製造のための2−プロピルオクタン酸のプロドラッグの使用。
【請求項19】
一般式(I−R)
【化11】

[式中、
【化12】

はβ配置であることを表し、その他の記号は請求項4記載と同じ意味を表す。]
で示される化合物、その塩またはその溶媒和物である請求項2記載のプロドラッグ。

【公開番号】特開2006−16318(P2006−16318A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193922(P2004−193922)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】