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2−メチルグリシジルエステルの新規製法
説明

2−メチルグリシジルエステルの新規製法

【課題】医薬品および生理活性物質の合成中間体として重要な2−メチルグリシジルエステル、殊にその光学活性体の高収率かつ経済的な製造法を提供する。
【解決手段】3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基性試剤を作用させ、分子内閉環させることにより2−メチルグリシドールとし、次いで、無水酢酸、無水プロピオン酸、および無水酪酸等のアシル化剤と塩基存在下において反応させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品および生理活性物質の合成中間体として重要な2−メチルグリシジルエステルおよびその光学活性体の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−メチルグリシジルエステルは、各種医薬品製造において重要な合成中間体である。この2−メチルグリシジルエステルは不斉炭素を有し、光学異性が存在する。
近年、光学活性化合物からなる医薬品の開発に際して、それぞれの光学活性体についての検討が行なわれている。すなわち、これら一連の化合物の光学活性体を容易にかつ高い光学純度で製造する方法の確立が極めて重要な課題であるが、光学活性2−メチルグリシジルエステルの製法はほとんど報告されておらず、i)2−メチルグリシジルエステルの速度論的光学分割による方法(非特許文献1参照)、ii)2−メチルグリシドールの速度論的光学分割法による方法(非特許文献2参照)、iii)メタアリルエステルの不斉エポキシ化による反応(非特許文献3参照)が知られている。
しかし、i)、ii)の方法はいずれも選択性は低く、高い光学純度の2−メチルグリシジルエステルを製造する効率の良い方法とはいえない。また、iii)の方法では原料となるメタアリルエステルを目的化合物に応じて作り分ける必要があり、汎用性に問題がある。
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc., 1984, 106, 7250-7251.
【非特許文献2】Tetrahedron Asymmetry, 1993, 4(1), 85-90.
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc., 1995, 117, 6412-6413.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記課題を解決するにあたり、3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールから高収率で、さらに3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールが光学活性体の場合にはその光学純度を損なうことなく2−メチルグリシジルエステルを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールに塩基性試剤を作用させ分子内環化させた後に、塩基存在下アシル化剤と反応させることにより効率よく目的化合物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
【化1】

(式中、Xはハロゲン原子を意味する。)
で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールに塩基性試剤を作用させ、分子内閉環させることにより、下記式(2)
【化2】

で表される2−メチルグリシドールとし、次いで、下記式(3a)または(3b)
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を意味し、Yはハロゲン原子を意味する。)
で表されるアシル化剤と塩基存在下において反応させることを特徴とする、下記式(4)
【化4】

(式中、Rは前掲と同じ基を意味する。)
で表される2−メチルグリシジルエステルの製造法に関する。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールから高収率で、さらに3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールが光学活性体の場合にはその光学純度を損なうことなく2−メチルグリシジルエステルを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明を更に詳細に説明する。
一般式(1)で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールの分子内環化反応により、式(2)で表される2−メチルグリシドールが得られる。
【0007】
原料である一般式(1)の3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールはどのような方法で得てもよい。例えばXが塩素原子であるラセミ体の3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールはメタリルクロライドを過酢酸等で酸化してメチルエピクロルヒドリンとし、それを酸存在下水和開裂させる方法が周知である。また、その光学活性体は、例えばL−酒石酸ジブチルとβ-メタリルアルコールから合成して導く方法(特開昭63−150234)や、微生物によるキラル分割を利用する方法(特願2005−000116)に従って入手することができる。
【0008】
式(1)で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールの置換基Xで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、好ましくは塩素原子、臭素原子である。
【0009】
上記3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(1)の具体例としては、3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール、3−ブロモ−2−メチル−1,2−プロパンジオール等が挙げられ、特に3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールが好ましく用いられる。
【0010】
使用する塩基性試剤としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリ金属水素化物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウムベンジルオキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウム tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコラート、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩、ナトリウムアミド、マグネシウムアミド等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アミド、1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン等のアミン類が挙げられるが、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウム tert−ブトキシド等のアルカリ金属アルコラートであり、更に好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、カリウム tert−ブトキシドである。
【0011】
使用する塩基性試剤の好ましい使用量としては、3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(1)に対して0.5〜5当量であり、更に好ましくは0.9〜2.0当量である。
【0012】
尚、本反応は必要に応じて添加剤を使用することができる。使用できる添加剤としては、4−ジメチルアミノピリジン、15−クラウン−5、18−クラウン−6等のクラウンエーテル類、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等のヨウ化アルカリ金属塩、臭化ナトリウム、臭化カリウム等の臭化アルカリ金属塩等の試薬を用いることができ、0.1〜10モル%量添加することによって反応が促進される。
【0013】
使用することができる溶媒としては、水溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、またはこれらの混合溶媒が挙げられる。これらの溶媒の使用量は特に制限はない。
【0014】
反応温度は普通は−80℃から溶媒の還流温度まででよく、好ましくは−10〜50℃までである。また、反応圧力は通常は常圧で十分であるが、必要に応じ、加圧・減圧下において行うことも可能である。
【0015】
式(2)で表される2−メチルグリシドールのアシル化により、一般式(4)で表される2−メチルグリシジルエステルが得られる。
【0016】
アシル化の際に使用するアシル化剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水イソ吉草酸等のカルボン酸無水物、アセチルクロリド、アセチルブロミド、プロピオニルクロリド、ブチリルクロリド等のカルボン酸ハロゲン化物が挙げられる。好ましいアシル化剤としてはブチリルクロリド、無水酢酸、無水酪酸等が挙げられる。
【0017】
使用するアシル化剤の使用量としては、3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(1)に対して1.0〜5.0当量が好ましく、更に好ましくは1.1〜2.0当量である。
【0018】
使用することができる塩基としては、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、コリジン等の3級アミンが例示され、好ましくはピリジンである。ピリジンは溶媒としても兼用できる。
【0019】
塩基の使用量としては、3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(1)に対して1.0〜6.0当量が好ましく、更に好ましくは1.1〜2.5当量である。
【0020】
本反応は必要に応じて4−ジメチルアミノピリジンを3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(1)に対して0.1〜10モル%量添加することによって反応が促進される。
【0021】
使用することができる溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、並びにこれらの混合溶媒等が挙げられる。好ましい溶媒はトルエン、tert−ブチルメチルエーテル、1,2−ジクロロエタンである。これらの溶媒の使用量は特に制限はない。
【0022】
反応温度は、普通は−80℃から溶媒の還流温度まででよく、好ましくは−10〜40℃までである。
【0023】
本発明は以上のように2つの工程からなるが、第1工程の反応で得られる2−メチルグリシドールは単離精製を行うことなく、アシル化剤を添加することでそのまま第2工程を行うこと、即ちワンポットによる操作が可能である。その場合、第2工程で添加する塩基は、第1工程で予め添加しておくことも可能である。
【0024】
反応終了後は、反応液中の溶媒を塩基水洗、酸水洗、水洗、減圧下に留去後、残渣を有機溶媒にて抽出、有機層中の蒸留溶媒を減圧下に留去し、残渣を蒸留、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の精製処理をすることにより、簡便に目的物が得られる。
【0025】
原料として光学活性な3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを用いた場合には、顕著なラセミ化は起こらず、目的とする光学活性な2−メチルグリシジルエステルが得られる。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[製造例1]
ペプトン10g/L、酵母エキス10g/L、グリセリン10g/Lからなる組成の培地100ml(pH7.0)を、500mL容のバッフル付き三角フラスコに入れ、121℃で15分間、加圧蒸気滅菌した。次いで、あらかじめ同栄養培地プレートで生育させたシュードモナスsp.DS−SI−5株を1白金耳分植菌し、30℃で24時間好気的に培養した。得られた培養液を遠心し、菌体を回収した。
上記三角フラスコ中に、菌体100mLを20mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁し、懸濁液にラセミ体3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールを2.5%(v/v)とCaCO3を3.6%とを加え、30℃、120rpmで48時間反応させた。反応終了後、反応液を取り出し、遠心操作により菌体を除去し、上清液を得た。この上清液をエバポレーターで濃縮し、エーテルにより抽出した。続いて無水硫酸マグネシウムにより脱水後、減圧下でエーテルを除去し、S体の3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール(ラセミ体の3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールからの残存率40.9%、光学純度99%ee)を得た。
【0027】
[実施例1]
(R)−2−メチルグリシジルアセテート(4a)の製造
(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール12.45g(100mmol)、トルエン50mL、ピリジン15.82g(200mmol)の混合液を氷冷し、カリウム tert−ブトキシド10.66g(95mmol)を順次内温が10℃を超えないように添加し、そのまま氷冷下1.5時間撹拌後、無水酢酸11.23g(110mmol)を滴下し、1時間撹拌後、4−ジメチルアミノピリジン2.44mg(0.2mmol)を添加して更に2.5時間撹拌し、純水40mL、14%炭酸カリウム水溶液39.5gで2回、14%塩酸26.1g、純水33.2gで洗浄後濃縮し、12.10gの粗油を得た。粗油を減圧蒸留によって精製し、10.67g(82.0%)の(R)−2−メチルグリシジルアセテートを99%e.e.の光学純度で得た。
【0028】
【化5】

【0029】
[実施例2]
(R)−2−メチルグリシジルブチレート(4b)の製造
(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール12.46g(100mmol)、トルエン50mL、ピリジン15.82g(200mmol)の混合液を氷冷し、カリウム tert−ブトキシド10.66g(95mmol)を順次内温が10℃を超えないように添加し、そのまま氷冷下2時間撹拌後、無水酪酸17.4g(110mmol)を滴下し、1時間撹拌後、4−ジメチルアミノピリジン2.44mg(0.2mmol)を添加して更に2.5時間撹拌し、純水40mL、14%炭酸カリウム水溶液39.5gで2回、14%塩酸26.1g、純水33.2gで洗浄後濃縮し、15.45gの粗油を得た。粗油を減圧蒸留によって精製し、12.90g(81.5%)の(R)−2−メチルグリシジルブチレートを99%e.e.の光学純度で得た。
【0030】
【化6】

【0031】
[実施例3]
(R)−2−メチルグリシジルブチレート(4b)の製造
(S)−3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオール12.46g(100mmol)、トルエン45mL、ピリジン15.82g(200mmol)の混合液を氷冷し、カリウム tert−ブトキシド11.78g(105mmol)を内温が15℃を超えないように添加し、そのまま2時間撹拌後、ブチリルクロリド11.73g(110mmol)を滴下し、2時間撹拌後、純水40mL、7%炭酸水素ナトリウム水溶液33.0mL、5%塩酸36.0mL、純水33mLで2回洗浄後濃縮し、16.13gの粗油を得た。粗油を減圧蒸留によって精製し、11.82g(74.7%)の(R)−2−メチルグリシジルブチレートを99%e.e.の光学純度で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(式中、Xはハロゲン原子を意味する。)
で表される3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールに塩基性試剤を作用させ、分子内閉環させることにより、下記式(2)
【化2】

で表される2−メチルグリシドールとし、次いで、下記式(3a)または(3b)
【化3】

(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を意味し、Yはハロゲン原子を意味する。)
で表されるアシル化剤と塩基存在下において反応させることを特徴とする、下記式(4)
【化4】

(式中、Rは前掲と同じ基を意味する。)
で表される2−メチルグリシジルエステルの製造法。
【請求項2】
3−ハロゲノ−2−メチル−1,2−プロパンジオールが3−クロロ−2−メチル−1,2−プロパンジオールである請求項1記載の2−メチルグリシジルエステルの製造法。
【請求項3】
アシル化剤が、無水酢酸、無水プロピオン酸、および無水酪酸からなる群から選択される少なくとも一種である請求項1または2記載の2−メチルグリシジルエステルの製造法。
【請求項4】
アシル化剤が、アセチルクロリド、プロピオニルクロリド、およびブチリルクロリドからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1または2記載の2−メチルグリシジルエステルの製造法。
【請求項5】
2−メチル−1,2−プロパンジオールが光学活性体である請求項1〜4のいずれかに記載の光学活性な2−メチルグリシジルエステルの製造法。

【公開番号】特開2007−314426(P2007−314426A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128305(P2006−128305)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】