説明

2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−ビタミンD類似物質

本発明は、2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−ビタミンD類似物質、特定的には、2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−1α,25−ジヒドロキシビタミンD、並びにこれらの医薬としての使用を開示する。この化合物は、比較的高い転写活性を示し、未分化細胞の増殖を抑止し、単球への分化を誘発するという顕著な活性を示し、従って、このことは、抗癌剤としての使用、及び乾癬のような皮膚疾患の治療、及びしわ、皮膚のたるみ、乾燥肌、不十分な皮脂分泌のような皮膚の状態のための使用の証拠となる。また、この化合物は、天然ホルモンである1α,25−ジヒドロキシビタミンDと比較して、in vivoで骨のカルシウムを動員する活性が低く、in vivoで腸のカルシウムを移動する活性が同様であり、従って、ヒトの自己免疫障害又は炎症性疾患、及び腎性骨ジストロフィーを治療するために使用することができる。また、この化合物は、肥満を治療又は予防するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンD化合物に関し、さらに特定的には、2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−ビタミンD類似物質、及びこれらの医薬としての使用に関する。
【0002】
天然ホルモンである1α,25−ジヒドロキシビタミンD、及びそのエルゴステロール群の類似物質、すなわち、1α,25−ジヒドロキシビタミンDは、動物及びヒトにおけるカルシウムホメオスタシスの極めて強力な調整剤であることが知られており、細胞分化におけるこれらの活性も、Ostrem et al.によって、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、84、2610(1987)で確立されている。1α−ヒドロキシビタミンD、1α−ヒドロキシビタミンD、種々の側鎖が認定されているビタミン及びフッ素化された類似物質を含め、これらの代謝物の多くの構造類似物質が調製され、試験されている。これらの化合物のうち、いくつかは、細胞分化及びカルシウム調節において興味深い分離活性を示す。この活性の差は、腎性骨ジストロフィー、ビタミンD抵抗性くる病、骨粗鬆症、乾癬、特定の悪性腫瘍といった種々の疾患の治療で有用であり得る。
【0003】
別の種類のビタミンD類似物質、すなわち、いわゆる19−ノル−ビタミンD化合物は、ビタミンD系では典型的なA環の環外メチレン基(炭素19)が2個の水素原子と置き換わっていることを特徴とする。このような19−ノル−類似物質(例えば、1α,25−ジヒドロキシ−19−ノル−ビタミンD)の生物学的試験は、細胞分化を誘導する高い能力を有し、カルシウム動員活性が極めて低いという選択的な活性プロフィールを明らかにした。従って、これらの化合物は、悪性腫瘍の治療、又は種々の皮膚障害の治療の治療薬剤として有用な可能性を秘めている。このような19−ノル−ビタミンD類似物質の2つの異なる合成方法が記載されている(Perlman et al.、Tetrahedron Lett.31、1823(1990);Perlman et al.、Tetrahedron Lett.32、7663(1991)、DeLuca et al.、米国特許第5,086,191号)。
【0004】
米国特許第4,666,634において、1α,25−ジヒドロキシビタミンDの2β−ヒドロキシ類似物質及びアルコキシ類似物質(例えば、ED−71)が記載されており、骨粗鬆症の有望な薬物として、及び抗腫瘍剤として、中外グループによって試験されている。また、Okano et al.、Biochem.Biophys.Res.Commun.163、1444(1989)を参照。1α,25−ジヒドロキシビタミンDの他の2−置換された(ヒドロキシアルキルで、例えば、ED−120、フルオロアルキル基で)A環類似物質も調製され、試験されている(Miyamoto et al.、Chem.Pharm.Bull.41、1111(1993);Nishii et al.、Osteoporosis Int.Suppl.1、190(1993);Posner et al.、J.Org.Chem.59、7855(1994)、及び、J.Org.Chem.60、4617(1995))。
【0005】
1α,25−ジヒドロキシ−19−ノル−ビタミンDの2−置換された類似物質、すなわち、2位で、ヒドロキシ基又はアルコキシ基で置換された化合物(DeLuca et al.、米国特許第5,536,713号)、2−アルキル基で置換された化合物(DeLuca et al、米国特許第5,945,410号)、および2−アルキリデン基で置換された化合物(DeLuca et al、米国特許第5,843,928号)も合成されており、これらは、興味深く選択的な活性プロフィールを示す。これらのすべての研究は、ビタミンD受容体の結合部位が、合成されたビタミンD類似物質のC−2に異なる置換基を受け入れることが可能であることを示す。
【0006】
薬理学的に重要なビタミンD化合物である19−ノル群を調査する努力を続けていく中で、炭素2(C−2)にメチレン置換基が存在し、炭素1(C−1)にヒドロキシル基が存在し、炭素20(C−20)に短い側鎖が結合していることを特徴とする類似物質も合成され、試験されている。1α−ヒドロキシ−2−メチレン−19−ノル−プレグナカルシフェロールは、米国特許第6,566,352号に記載されており、一方、1α−ヒドロキシ−2−メチレン−19−ノル−ホモプレグナカルシフェロールは、米国特許第6,579,861号に記載されており、1α−ヒドロキシ−2−メチレン−19−ノル−ビスホモプレグナカルシフェロールは、米国特許第6,627,622号に記載されている。これら3種類の化合物はすべて、ビタミンD受容体に対して相対的に高い結合活性を有しており、比較的高い細胞分化活性を有しているが、1α,25−ジヒドロキシビタミンDと比較して、カルシウム血症活性は、それがあったとしても非常に低い。これらの生物学的活性は、’352特許、’861特許、’622特許に記載されているように、これらの化合物を、種々の医薬用途の優れた候補物質にする。
【0007】
17−エンビタミンD化合物、ならびに側鎖に二重結合を有するビタミンD化合物も知られており、種々の薬理学的用途が提案されている。骨粗鬆症のような骨の疾患、乾癬のような皮膚障害、白血病のような癌、しわのような美容に関する状態は、このような化合物で提案されている用途のうち、ほんのいくつかである。17−エン化合物は、米国特許第5,545,633号;第5,929,056号、第6,399,797号に記載されており、一方、二重結合を有する側鎖を有する2−アルキリデン化合物は、例えば、米国特許第5,843,928号に記載されている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−ビタミンD類似物質、それらの生物学的活性、及びそれらの化合物の種々の薬理学的用途に関する。これまでに知られていない、これらの新規ビタミンD化合物は、2−位(C−2)にメチレン基を有し、二重結合が、側鎖の炭素原子20と21の間に位置する、19−ノル−ビタミンD類似物質である。好ましいビタミンD類似物質は、2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−1α,25−ジヒドロキシビタミンD(以下、「Vit III 20−21」と称する)である。
【0009】
構造的に、これらの2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−ビタミンD類似物質は、以下に示される一般式Iによって特徴づけられ、
【化1】

式中、X、X、Xは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ、水素又はヒドロキシ保護基から選択される。好ましい類似物質は、以下の式Iaを有する、2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−1α,25−ジヒドロキシビタミンDである。
【化2】

上の化合物I、特にIaは、望ましく、極めて有益な生物学的活性パターンを示す。これらの化合物は、ビタミンD受容体に対し、比較的に結合性が高いことを特徴とし、天然のホルモン1α,25−ジヒドロキシビタミンDとほぼ等しい効能がある。また、これらの化合物も、用量に依存する様式で、腸のカルシウム輸送をin vivoで促進する能力を有し、これらは、1α,25−ジヒドロキシビタミンDと比較して、腸のカルシウム輸送活性は、ほぼ同じであるか、等しいと分類されるであろう。また、これらの化合物I、特にIaは、骨からカルシウムを動員する能力もいくらか有しており、これらは、骨のカルシウムを動員する活性は、1α,25−ジヒドロキシビタミンDよりも低いと分類されるであろう。プレプロ副甲状腺ホルモン遺伝子(Darwish & DeLuca、Arch.Biochem.Biophys.365、123−130、1999)および副甲状腺が増殖を抑制する場合、血清カルシウムが生理学的レベルを超えた値まで上がることは望ましくない。骨のカルシウム動員活性が比較的低く、細胞分化に対しても非常に活性である、これらの類似物質は、腎性骨ジストロフィーの二次性副甲状腺機能亢進症を抑制するための治療として有用であると予想される。
【0010】
また、本発明の化合物I、特にIaは、免疫系の失調によって特徴づけられるヒトの障害、例えば、多発性硬化症、ループス、糖尿病、移植片対宿主拒絶反応、臓器移植の拒絶反応を含む自己免疫疾患の治療及び予防、さらに、関節リウマチ、喘息のような炎症性疾患、セリアック病、潰瘍性大腸炎、クローン病のような炎症性腸疾患の治療に特に適していることが発見されている。座瘡、脱毛症、高血圧は、本発明の化合物で治療し得る他の状態である。
【0011】
また、上の化合物I、特にIaは、比較的高い細胞分化活性と、転写を促進することによっても特徴づけられる。従って、これらの化合物は、乾癬を治療するため、又は抗癌剤、特に、白血病、結腸癌、乳癌、皮膚癌、前立腺癌の抗癌剤として治療薬剤も提供する。それに加えて、これらが比較的高い細胞分化活性を有するため、これらの化合物は、しわ、十分な皮膚の水分が失われること、すなわち、乾燥肌、十分な皮膚の堅さが失われること、すなわち、皮膚のたるみ、不十分な皮脂分泌を含む種々の皮膚の状態を治療するための治療薬剤を提供する。従って、これらの化合物の使用は、皮膚を保湿するだけではなく、皮膚の障壁機能も高める。
【0012】
本発明の式I、特に式Iaの化合物は、肥満を予防するか、又は治療し、脂肪細胞の分化を阻害し、SCD−1遺伝子の転写を阻害し、及び/又は、動物対象の体脂肪を減らすことにも有用である。従って、ある実施形態では、肥満を予防するか、又は治療する方法、脂肪細胞の分化を阻害する方法、SCD−1遺伝子の転写を阻害する方法、及び/又は動物対象の体脂肪を減らす方法は、動物対象に、式Iの1つ以上の化合物、又は式Iの1つ以上の化合物を含む医薬組成物を有効な量投与することを含む。1つ以上の化合物又は医薬組成物を対象に投与すると、脂肪細胞の分化を阻害し、遺伝子の転写を阻害し、及び/又は動物対象において体脂肪を減らす。
【0013】
上述の1つ以上の化合物は、上述の疾患及び障害を治療するために、組成物の約0.01μg/g〜約1000μg/gの量で、好ましくは、組成物の約0.1μg/g〜約500μg/gの量で組成物中に存在してもよく、約0.01μg/日〜約1000μg/日、好ましくは、約0.1μg/日〜約500μg/日の用量で、局所投与、経皮投与、経口投与、直腸投与、経鼻投与、舌下投与又は非経口投与されてもよい。
【0014】
図面において、図1〜5は、以下、「1,25(OH)」と称する天然のホルモンである1α,25−ジヒドロキシビタミンDと比較した、以下「Vit III 20−21」と称する2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−1α,25−ジヒドロキシビタミンDの種々の生物学的活性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、全長組み換えラットビタミンD受容体に対する結合について、[H]−1,25−(OH)−Dと競合する、Vit III 20−21及び1,25(OH)の相対活性を示すグラフである。
【図2】図2は、Vit III 20−21及び1,25(OH)の濃度の関数として、HL−60細胞分化の割合(%)を示すグラフである。
【図3】図3は、1,25(OH)のin vitroでの転写活性をVit III 20−21と比較して示すグラフである。
【図4】図4は、1,25(OH)が、骨のカルシウムを動員する活性をVit III 20−21と比較して示すグラフである。
【図5】図5は、1,25(OH)が、腸のカルシウムを移動させる活性をVit III 20−21と比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
炭素2(C−2)にメチレン置換基が存在し、二重結合が、側鎖の炭素原子20と21の間に位置することを特徴とする19−ノルビタミンD類似物質である2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−1α,25−ジヒドロキシビタミンD(本明細書では「Vit III 20−21」と称する)が合成され、試験された。C−2位置にある比較的小さなメチレン基は、ビタミンD受容体への結合を妨害しないはずであるため、このようなビタミンD類似物質は、興味深い標的であると思われる。構造的に、この19−ノル類似物質は、本明細書ですでに示された一般式Iaによって特徴づけられ、そのプロドラッグ(保護されたヒドロキシ形態)は、本明細書ですでに示された一般式Iによって特徴づけられる。
【0017】
構造Iを有する2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−ビタミンD類似物質の調製は、通常の一般的な方法によって行うことができ、すなわち、Windaus−Grundmann型の二環式ケトンIIをアリルホスフィンオキシドIIIと縮合させて、対応する2−メチレン−19−ノル−ビタミンD類似物質IVにした後、後者の化合物のC−1、C−3で脱保護する(本明細書のスキームIVを参照)。
【化3】

構造II、III、IVにおいて、X基、X基、X基は、ヒドロキシ保護基であり、好ましくは、t−ブチルジメチルシリルであり、縮合反応に感受性であるか、又は縮合反応を妨害するであろう任意の官能基は、当該技術分野で十分に知られているように適切に保護されることも理解される。上に示されるプロセスは、収束型合成の概念の適用をあらわしており、ビタミンD化合物を調製するのに有効に適用されている[例えば、Lythgoe et al.、J.Chem.Soc.Perkin Trans.I、590(1978);Lythgoe、Chem.Soc.Rev.9、449(1983);Toh et al.、J.Org.Chem.48、1414(1983);Baggiolini et al.、J.Org.Chem.51、3098(1986);Sardina et al.、J.Org.Chem.51、1264(1986);J.Org.Chem.51、1269(1986);DeLuca et al.、米国特許第5,086,191号;DeLuca et al.、米国特許第5,536,713号]。
【0018】
一般構造IIのヒドリンダノンは既知ではない。これは、本明細書のスキームI、II、IIIに示されている方法によって調製することができる(化合物Vit III 20−21の調製を参照)。
【0019】
一般構造IIIの必要なホスフィンオキシドを調製するために、Perlman et al.、Tetrahedron Lett.32、7663(1991)、DeLuca et al.、米国特許第5,086,191号に記載されているように、市販の(1R,3R,4S,5R)−(−)−キナ酸から容易に得られるキナ酸メチル誘導体から出発する合成経路が開発されている。
【0020】
化合物I及びIaの全体的な合成プロセスは、「2−Alkylidene−19−Nor−Vitamin D Compounds」という名称の米国特許第5,843,928号に示され、もっと完全に記載されており、この明細書は、特に、参照により組み込まれる。
【0021】
この記載及び特許請求の範囲で使用される場合、用語「ヒドロキシ保護基」は、ヒドロキシ官能基を一時的に保護するために一般的に使用される任意の基を示し、例えば、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルシリル基又はアルキルアリールシリル基(以下、単に「シリル」基と称する)及びアルコキシアルキル基を意味する。アルコキシカルボニル保護基は、アルキル−O−CO−群であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル又はアリルオキシカルボニルである。用語「アシル」は、すべての異性体形態での1〜6個の炭素を有するアルカノイル基、又は1〜6個の炭素を有するカルボキシアルカノイル基、例えば、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、又は、芳香族アシル基、例えば、ベンゾイル基、又はハロ基、ニトロ基又はアルキル置換されたベンゾイル基を意味する。用語「アルキル」は、この記載及び特許請求の範囲で使用される場合、すべての異性体形態での1〜10個の炭素を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル基を意味する。アルコキシアルキル保護基は、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエトキシメチル、又はテトラヒドロフラニル及びテトラヒドロピラニルのような群である。好ましいシリル保護基は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、ジブチルメチルシリル、ジフェニルメチルシリル、フェニルジメチルシリル、ジフェニル−t−ブチルシリル、及び類似するアルキル化シリル基である。用語「アリール」は、フェニル置換されたフェニル基、又はアルキル置換されたフェニル基、ニトロ置換されたフェニル基、又はハロ置換されたフェニル基を表す。
【0022】
「保護されたヒドロキシ」基は、ヒドロキシ官能基を一時的又は永久的に保護するために一般的に使用される、例えば、すでに定義された、シリル基、アルコキシアルキル基、アシル基又はアルコキシカルボニル基のような、上述のいずれかの基によって誘導体化されたか、又は保護されたヒドロキシ基である。用語「ヒドロキシアルキル」、「重水素化アルキル」、「フルオロアルキル」は、それぞれ、1個以上のヒドロキシ基、重水素、又はフルオロ基で置換されたアルキル基を指す。
【0023】
さらに特定的には、以下の実例となる例及び記載、並びに化合物Vit III 20−21を調製する詳細な実例のための本明細書のスキームI、II、III、IVに対して、参照がなされるべきである。
【0024】
この例では、アラビア数字(1、2、3)によって特定される特定の生成物は、スキームI、II、III、IVで特定される特定の構造を指す。
【実施例】
【0025】
化学。紫外線(UV)吸収スペクトルは、記載した溶媒中、Hitachi Model 60−100 UV−vis分光計で記録された。H核磁気共鳴(NMR)スペクトルは、Bruker AM−500 FT分光計を用い、重水素クロロホルム中、500MHzで報告された。化学シフト(δ)は、内部MeSi(δ0.00)からの低磁場で報告される。マススペクトルは、Kratos DS−50 TC装置に、Kratos MS−55データシステムを取り付け、70eVで報告された。試料を、直接挿入プローブを介し、120〜250℃に維持されているイオン源に導入した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、Waters Associates液体クロマトグラフをModel 6000A 溶媒送達システム、Model 6 UK Universalインジェクタ、Model 486の調整可能な吸光度検出器、R 401型示差屈折計を取り付けて行った。
【0026】
(実施例1)
デス−A,B−23,24−ジノルコラン−8β,22−ジオール(2)。火力乾燥した1000mL二口フラスコに、エルゴカルシフェロール1(5g、12.6mmol)、ピリジン(5mL)および無水MeOH(400mL)を入れた。この溶液を、アルゴン雰囲気下、−78℃まで冷却した。この溶液が、深い青色になり、この色が維持されるまで、Oを通気した(約1時間)。この溶液を、青色が消えるまで、Oで処理した(15分)。次いで、NaBH(1.5g、39.7mmol)を添加した。15分後、第2の量のNaBH(1.5g、39.7mmol)を添加し、反応物を室温まで加温した。次いで、第3の量のNaBH(1.5g、39.7mmol)を添加し、反応物を一晩撹拌した。水(50mL)を加えることによって、反応物をクエンチした。メタノールを減圧下で蒸発させ、残渣を酢酸エチルに溶解した。有機層を、1N HCl水溶液(100mL)、飽和NaHCO溶液(100mL)、およびブライン(100mL)で洗浄した。有機層を乾燥し(NaSO)、濾過し、蒸発させた。シリカゲルクロマトグラフィー(25% 酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、ジオール2を白色固体として2.18g(10.3mmol、81%)得た。Mp 110〜111℃;H NMR(400MHz,CDCl)δ:0.96(3H,s),1.03(3H,d,J=6.6Hz),3.38(1H,dd,J=10.5,6.7Hz),3.64(1H,dd,J=10.5,3.2Hz),4.09(1H,m);13C NMR(100MHz,CDCl)δ:69.2,67.8,52.9,52.4,41.8,40.2,38.2,33.6,26.6,22.6,17.4,16.6,13.6;MS m/z(相対強度):212(M,2),194(M−HO,15),179(M−HO−CH,18),125(43),111(100);C1322O[M−HO]として算出した正確な質量は194.1671,測定値は194.1665である。
【0027】
デス−A,B−22−(p−トルエンスルホニルオキシ)−23,24−ジノルコラン−8β−オール(3)。ジオール2(1g、4.71mmol)の無水ピリジン(12mL)溶液を−25℃まで冷却し、あらかじめ冷却しておいた塩化トシル(1.08g、5.66mmol)の無水ピリジン(2mL)溶液を滴下した。反応混合物を、この温度で4時間撹拌し、0℃まで加温し、この温度でさらに20時間撹拌した。この混合物を、CHCl(50mL)で希釈し、飽和CuSO溶液(30mL)、1N HCl(30mL)および水(50mL)で洗浄した。有機層を乾燥し(NaSO)、濾過し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(25% 酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、ヒドロキシルトシレート3を1.7g(4.64mmol、98%)得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ:0.89(3H,s),0.96(3H,d,J=6.6Hz),2.45(3H,s),3.8(1H,dd,J=9.2,6.2Hz),3.95(1H,dd,J=9.2,3.0Hz),4.06(1H,m),7.35(2H,d,J=8.2Hz),7.78(2H,d,J=8.2Hz);13C NMR(100MHz,CDCl)δ:144.7,133.0,129.8,127.9,75.6,69.0,60.4,52.2,41.9,40.1,35.7,33.5,26.4,22.4,21.6,17.3,16.7,13.4;MS m/z(相対積分値):366(M,6),194(14),179(16),125(30),111(100);C2030SONa(M+Na)として算出した正確な質量は389.1763,測定値は389.1768である。
【0028】
デス−A,B−8β−[(tert−ブチルジメチルシリル)オキシ]−22−(p−トルエンスルホニルオキシ)−23,24−ジノルコラン(4)。0℃に冷却した、ヒドロキシルトシレート3(1.5g、4.09mmol)の無水DMF(20mL)溶液に、2,6−ルチジン(0.580mL、0.52g、4.92mmol)を添加し、次いで、TBSOTf(1.1mL、1.30g、4.92mmol)を添加した。この溶液を0℃で15分間撹拌し、水(10mL)を添加した。この混合物をCHClで抽出し(40mL×3回)、合わせた有機層を、1N NaOH水溶液(40mL)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5% 酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、4を1.94g(4.04mmol、99%)得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ:0.01(6H,s),0.88(12H,s),0.96(3H,d,J=6.8Hz),2.45(3H,s),3.81(1H,dd,J=9.2,6.4Hz),3.97(1H,dd,J=9.7,3.0Hz),3.99(1H,m),7.34(2H,d,J=8.08Hz),7.79(2H,d,J=8.2Hz)。13C NMR(100MHz,CDCl)δ:114.5,133.4,129.8,127.9,74.8,69.3,52.3,52.6,42.2,40.5,35.8,34.4,26.6,25.9,23.0,21.6,18.0,17.6,16.8,13.7,−4.8,−5.1。
【0029】
デス−A,B−8β−[(tert−ブチルジメチルシリル)オキシ]−23,24−ジノルコラン−22−アール(5)。4(1.9g、3.96mmol)のDMSO(5mL)溶液を、NaHCO(1.5g、17.9mmol)のDMSO(20mL)懸濁物に、室温で添加した。混合物を、アルゴン下、15分間で150℃まで加熱し、室温まで冷却した。水(50mL)、次いで酢酸エチル(50mL)を添加し、水相を酢酸エチルで抽出した(30mL×3回)。合わせた有機層を乾燥し(NaSO)、濾過し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(2% 酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、アルデヒド5を0.93g(2.87mmol、73%)得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ:0.01(6H,2s),0.89(9H,s),0.97(3H,s),1.09(3H,d,J=6.8Hz),2.35(1H,m),4.03(1H,m),9.58(1H,d,J=3.2Hz)。13C NMR(100MHz,CDCl)δ:205.2,69.1,52.4,51.8,49.1,42.7,40.5,30.8,34.3,26.2,25.8,23.3,17.6,14.1,13.3,−4.7,−5.1。
【0030】
デス−A,B−8β−[(tert−ブチルジメチルシリル)オキシ]−プレグナン−20−オン(6)。火力乾燥したフラスコに、t−BuOK(1.55g、13.9mmol)および無水t−BuOH(30mL)を室温で入れた。この溶液に、Oを15分間通気した。この反応混合物に、アルデヒド5(0.9g、2.78mmol)の無水t−BuOH(15mL)溶液を添加し、この溶液に、Oをさらに10分間通気した。反応物を水(15mL)でクエンチし、エーテルで抽出した(30mL×3回)。合わせた有機層を乾燥し(NaSO)、濾過し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(3% 酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、ケトン6を0.61g(1.97mmol、71%)得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ:0.01(6H,s),0.84(3H,s),0.87(9H,s),2.08(3H,s),2.46(1H,t,J=9.1Hz),4.03(1H,m)。13C NMR(100MHz,CDCl)δ:209.5,69.0,64.5,53.2,43.7,39.8,34.2,31.6,25.8,23.2,21.8,17.6,15.5,−4.8,−5.2。
【0031】
5−ブロモ−2−メチル−2−ペンタノール(8)。−20℃に冷却した、エチル−4−ブロモブチレート7(5g、25.6mmol)の無水ジエチルエーテル(50mL)溶液に、アルゴン雰囲気下、30分かけてメチルマグネシウムブロミドの3M ジエチルエーテル溶液(17.1mL、6.11g、51.3mmol)を添加した。この反応混合物を、室温で一晩撹拌した。この反応混合物を加水分解するために、飽和塩化アンモニウム溶液を添加し、次いで、生成した無機塩を溶解するために、1N HCl溶液を添加した。水相をエーテルで抽出した(50mL×3回)。合わせた抽出物を、水(100mL)、飽和NaCl溶液(100mL)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、濾過し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、三級アルコール8を3.1g(17.1mmol、67%)を得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ:1.27(6H,s),1.64(2H,m),1.96(2H,m),3.44(2H,t,J=6.68Hz)。
【0032】
5−ブロモ−2−メチル−2−[(tert−ブチルジメチルシリル)オキシ]−ペンタン(9)。−50℃に冷却した、アルコール8(3g、16.6mmol)の無水CHCl(50mL)溶液に、2,6−ルチジン(2.32mL、2.13g、19.89mmol)を添加し、次いで、TBSOTf(4.57mL、5.26g、19.9mmol)を添加した。この溶液を0℃で15分間撹拌し、水(10mL)を添加した。この混合物をCHClで抽出し(40mL×3回)、合わせた有機層を、1N NaOH水溶液(40mL)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、濾過し、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(5% 酢酸エチル/ヘキサン)によって精製して、9を3.9g(13.2mmol、80%)得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ:0.07(6H,s),0.85(9H,s),1.21(6H,s),1.55(2H,m),1.95(2H,m),3.41(2H,t,J=6.8Hz)。
【0033】
デス−A,B−コレスタ−20(21)−エン−8β,25−ジオール(16):マグネシウム粉末(0.23g、9.68mmol)の無水ジエチルエーテル(5mL)懸濁物を撹拌し、アルゴン雰囲気下、室温で、時に、35℃まで加熱しつつ、5−ブロモ−2−メチル−2[(tert−ブチルジメチルシリル)オキシ]ペンタン9(2.84g、9.68mmol)の無水エーテル(20mL、触媒量のヨウ素を含有する)溶液を滴下した。加え終わったら、この混合物を室温で1時間撹拌し、40℃で1時間撹拌した。次いで、0℃まで冷却し、ケトン6(0.6g、1.94mmol)の無水ジエチルエーテル(10mL)溶液を、30分かけて滴下した。反応混合物を室温で3時間撹拌した後、NHCl水溶液(20mL)で加水分解した。有機層を分離し、水相を酢酸エチルで抽出した(30mL×3回)。合わせた有機層を、水(40mL)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、蒸発させた。残渣のカラムクロマトグラフィーによって、アルコール10の混合物を0.95g(94%)得た。アルコール10の混合物(0.95g、1.8mmol)の無水ピリジン(20mL)溶液に、アルゴン雰囲気下、オキシ塩化リン(3mL)を滴下した。反応物を室温で一晩撹拌し、氷水に注ぎ、エーテルで抽出した(20mL×3回)。有機層を、飽和CuSO溶液(30mL)、1N HCl(30mL)、水(50mL)で洗浄した。有機層を乾燥し(NaSO)、濾過し、濃縮した。粗混合物のカラムクロマトグラフィーによって、オレフィン11a、11b、12a、12b、13の混合物を0.72g(78%)得た。オレフィン混合物をさらに精製することなくメタノール(20mL)に溶解し、p−トルエンスルホン酸一水和物(p−TSA)(0.100g)を0℃で添加した。反応混合物を室温で3日間撹拌した[さらなる量のp−TSAが連続して添加した(100mg、24時間;75mg、36時間;50mg、48時間)]。メタノールを蒸発させ、残渣を酢酸エチル(30mL)で希釈した。有機層を、飽和NaHCO水溶液(20mL)、水(20mL)で洗浄し、乾燥し(NaCO)、蒸発させた。残渣をカラムクロマトグラフィーで精製して、オレフィンアルコールの混合物を284mg得た。
【0034】
デス−A,B−20(21)−エン−8β,25−ジオール(16)。上述のオレフィンアルコールを、IPA/ヘキサン(5/95)溶媒系を用い、HPLC(9.4mm×25cm zorbax−silカラム、4ml/分)で分離した。ジオール17−20Z 15b及びジオール20−21 16を、Rv=45mLで一緒に溶出した。このアルコールを、一緒に酸化した。
【0035】
25−(トリエチルシリルオキシ)−デス−A,B−コレスタ−20(21)−エン−8−オン(22)。アルコール15b及び16の混合物(34mg、121μmol)の無水CHCl(5mL)溶液に、室温でPDC(68mg、182μmol)を添加した。反応物をアルゴン雰囲気下で3時間撹拌した後、この溶液を、酢酸エチルを用いてセライトパッドに通した。濾液を濃縮し、Sep−Pakカートリッジに入れ、酢酸エチル/ヘキサン(20/80)で溶出して、ケトンの混合物を無色油状物として30.2mg(108μmol、89%)得た。−50℃に冷却した、ケトン(30.2mg、108μmol)の無水CHCl(10mL)溶液に、2,6−ルチジン(25μL、23mg、217μmol)を添加し、次いで、TESOTf(37μL、43mg、163μmol)を添加した。この溶液を、0℃で15分間撹拌し、水(10mL)を添加した。この混合物をCHClで抽出し(5mL×3回)、合わせた有機層を、1N NaOH水溶液(10mL)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、濾過し、濃縮した。残渣を、酢酸エチル/ヘキサン(5/95)溶媒系を用い、HPLC(9.4mm×25cm Zorbax−Silカラム、4ml/分)で精製した。純粋なケトン22 8.7mg(22μmol、20%)を、無色油状物としてR=38mLで溶出した。H NMR(400MHz,CDCl)δ:0.56(3H,s),0.57(6H,q,J=7.84Hz),0.94(9H,t,J=7.96Hz),1.20(6H,s),4.83及び4.92(1H及び1H,それぞれs);13C NMR(100MHz,CDCl)δ:211.7,148.1,110.7,73.3,61.6,56.29,50.3,44.8,40.8,37.9,37.8,29.9,25.5,24.0,23.0,18.9,13.2,7.1,6.8。MS m/z(相対強度):No M,363([M−C,17),334([M−2xC,4),103(100)。C2444SiNa[M+Na]として算出した正確な質量は415.3008,実測値415.3004。
【0036】
1α,25 ジヒドロキシ−20(21)−エン−2−メチレン−19−ノルビタミンD(24)。ホスフィンオキシド1862mg、106μmol)の無水THF(750μL)溶液に、−25℃で、アルゴン下、撹拌しつつ、ジ−n−ブチルエーテル中、1.8MのPhLi(65μL、9.8mg、117μmol)をゆっくりと添加した。溶液は深い橙色に変わった。混合物をその温度で20分間撹拌し、−78℃まで冷却した。あらかじめ冷却した(−78℃)、ケトン22(8.7mg、22μmol)の無水THF(100μL)溶液を、ゆっくりと添加した。この混合物を、アルゴン雰囲気下、−78℃で3時間撹拌し、0℃で18時間撹拌した。酢酸エチルを添加し、有機層をブラインで洗浄し、乾燥し(NaSO)、蒸発させた。残渣をSep−Pakカートリッジに入れ、1% 酢酸エチル/ヘキサンで溶出して、19−ノル保護されたビタミン誘導体を得た。このビタミンを、ヘキサン/IPA(99.95:0.05)溶媒系を用いてHPLC(9.4mm×25cm Zorbax−Silカラム、4ml/分)でさらに精製した。純粋な化合物23、14.8mg(19μmol、88%)を、無色油状物としてR=18mLで溶出した。[α]20−9.74(c 0.74,CHCl);UV(ヘキサン中):λmax 245.1,253.8,263.7nm;H NMR(400MHz,CDCl)δ:0.034,0.053,0.076,0.084(それぞれ3H,それぞれs),0.45(3H,s),0.56(6H,q,J=7.86Hz),0.87,0.90(それぞれ9H,それぞれs),0.95(9H,t,J=7.88Hz),1.20(6H,s),2.19(1H,dd,J=12.4,8.4Hz),2.35(1H,dd,J=12.68,1.88Hz),2.47(1H,dd,J=13.4,4.96Hz),2.53(1H,dd,J=13.2,5.8Hz),2.83(1H,dd,J=11.96,2.16Hz),4.43(2H,m),4.81,4.88,4.93及び4.97(それぞれ1H,それぞれs),5.86及び6.22(それぞれ1H,それぞれd,J=11Hz);MS m/z(相対強度):No M,481(2),263(100);C4584SiNa[M+Na]として算出した正確な質量は779.5624,実測値779.5629。
【0037】
保護されたビタミン23(14.8mg、19μmol)を、無水THF(50μL)に溶解し、TBAF(196μL、51.2mg、190μmol)で処理し、暗状態で、室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣をSep−Pakカートリッジに入れ、30% 酢酸エチル/ヘキサンで溶出して、脱保護されたビタミンを得た。このビタミンを、HPLC(9.4mm×25cm Zorbax Silカラム、3mL/分)によって、ヘキサン/IPA(85/15)を溶媒系として用いてさらに精製した。純粋なビタミン24、4.1mg(9.9μmol、51%)を、R=33mLで溶出した:UV(エタノール中)λmax 244.8,253.2,262.8nm;H NMR(400MHz,CDCl)δ:0.46(3H,s),1.22(6H,s),1.57(3H,br s),2.29(2H,m),2.57(1H,dd,J=13.3,3.6Hz),2.84(2H,M),4.48(2H,m),4.83及び4.88(1H及び1H,それぞれs),5.09及び5.11(1H及び1H,それぞれs),5.90及び6.35(1H及び1H,それぞれd,J=11.2Hz);MS m/z(相対強度):414(M,85),396(M−H,23),381[M−CH−HO],10),285(20),243(30),91(100);C2742Na([M+Na])として算出した正確な質量は437.3032,測定値は437.3042である。
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0038】
(2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−1α,25−ジヒドロキシビタミンDの生物学的活性)
2−位にメチレン基を導入すること、および側鎖の炭素原子20と21との間に二重結合を導入することは、1α,25−ジヒドロキシビタミンDと比較して、全長組み換えラットビタミンD受容体に対するVit III 20−21の結合にほとんど影響を及ぼさなかった。化合物Vit III 20−21は、標準物質1,25−(OH)と比較して、核内ビタミンD受容体に対して同じ親和性で結合した(図1)。これらの結果から、化合物Vit III 20−21は、同等の生体活性を有するであろうと予想され得る。しかし、驚くべきことに、化合物Vit III 20−21は、固有の生体活性を有し、極めて選択的な類似物質である。
【0039】
図5は、Vit III 20−21が、in vivoで腸のカルシウムを移動させる活性を上昇させる顕著な能力を用量に依存する様式で有し、天然ホルモンである1,25−ジヒドロキシビタミンD(1,25(OH))の能力と比較して、腸のカルシウム移動の刺激において、明らかにほぼ同じ活性を有することを示す。Vit III 20−21は、1,25(OH)と同様の効力で、腸のカルシウム移動を刺激した。
【0040】
図4は、Vit III 20−21が、1,25(OH)と比較して、骨のカルシウムを動員する活性が少ないことを示す。Vit III 20−21は、骨のカルシウムを動員する活性をいくらか有するが、明らかに、1,25(OH)と比較して、骨からカルシウムを動員する効力が低い。
【0041】
従って、図4及び図5は、Vit III 20−21が、比較的に顕著な腸のカルシウム移動活性を有するが、骨のカルシウム動員活性が比較的低いことを特徴とし得ることを示す。
【0042】
図2は、Vit III 20−21が、HL−60細胞分化、すなわち、HL−60細胞を単球に分化させることにおいて、1,25(OH)よりも約3〜4倍以上強力であることを示しており、このことは、乾癬及び癌の治療に対し、特に、白血病、結腸癌、乳癌、皮膚癌、前立腺癌に対し、優れた候補物質にする。それに加えて、Vit III 20−21が相対的に高い細胞分化活性を有するため、この化合物は、しわ、十分な皮膚の水分が失われること、すなわち、乾燥肌、十分な皮膚の堅さが失われること、すなわち、皮膚のたるみ、不十分な皮脂分泌を含む種々の皮膚の状態を治療するための治療薬剤を提供する。従って、この化合物の使用は、皮膚を保湿するだけではなく、皮膚の障壁機能も高める。
【0043】
図3は、骨の細胞において、化合物Vit III 20−21が、24−ヒドロキシラーゼ遺伝子の転写を高めることにおいて1,25(OH)よりも1log以上、すなわち、10倍以上強力であることを示す。この結果を、図2の細胞分化活性とあわせると、Vit III 20−21が、細胞分化、遺伝子転写を引き起こし、細胞成長を抑制するという直接的な細胞活性を有しているため、乾癬に極めて有効である可能性を示唆している。また、これらのデータは、Vit III 20−21が、抗癌剤として、特に、白血病、結腸癌、乳癌、皮膚癌、前立腺癌に対して顕著な活性を有する可能性を示している。
【0044】
HL−60分化に対し、Vit III 20−21の活性が強いことは、Vit III 20−21が、副甲状腺の成長を抑制し、プレプロ副甲状腺遺伝子を抑制する活性がある可能性を示唆している。
【0045】
(実験法)
(ビタミンD受容体の結合)
(試験物質)
(タンパク質源)
全長組み換えラット受容体が、E.coli BL21(DE3)Codon Plus RIL細胞で発現され、2種類の異なるカラムクロマトグラフィーシステムを用いて均一になるように精製した。第1の系は、このタンパク質に対し、C−末端ヒスチジンタグを利用するニッケル親和性樹脂であった。この樹脂から溶出したタンパク質を、イオン交換クロマトグラフィー(S−Sepharose Fast Flow)を用いてさらに精製した。精製したタンパク質を等分し、液体窒素で迅速に凍結し、使用するまで−80℃で保存した。結合アッセイで使用するために、このタンパク質を、0.1% Chaps洗浄剤を含むTEDK50(50mM Tris、1.5mM EDTA、pH7.4、5mM DTT、150mM KCl)で希釈した。受容体タンパク質及びリガンド濃度は、受容体に結合する添加された放射能標識されたリガンドが20%を超えないように最適化された。
【0046】
(試験薬物)
標識されていないリガンドを、エタノールに溶解し、UV分光光度法を用いて濃度を決定した(1,25(OH):モル吸光係数=18,200及びλmax=265nm;類似物質:モル吸光係数=42,000及びλmax=252nm)。放射能標識されたリガンド(H−1,25(OH)、約159Ci/mmole)を、最終濃度が1nMになるようにエタノールに添加した。
【0047】
(アッセイ条件)
放射能標識されたリガンド及び標識されていないリガンドを、最終エタノール濃度が10%以下になるように希釈したタンパク質100mclに添加し、混合して、結合を平衡状態にするため、氷上で一晩インキュベーションした。次の日に、ヒドロキシルアパタイトスラリー(50%)100mclをそれぞれの管に添加し、10分間隔で30分間混合した。ヒドロキシルアパタイトを、遠心分離によって収集し、次いで、0.5% Titron X−100を含有するTris−EDTAバッファ(50mM Tris、1.5mM EDTA、pH7.4)で3回洗浄した。最後の洗浄が終わったら、Biosafe IIシンチレーションカクテル4mlを含有するシンチレーションバイアルにペレットを移し、混合して、シンチレーションカウンターに置いた。放射能標識されたリガンドのみを含む管から、全結合を決定した。
【0048】
(HL−60の分化)
(試験物質)
(試験薬物)
試験薬物を、エタノールに溶解し、UV分光光度法を用いて濃度を決定した。細胞培養物中に存在する最終エタノール濃度(≦0.2)を変えずに、さまざまな薬物濃度を試験することができるように、段階希釈物を調製した。
【0049】
(細胞)
ヒト前骨髄球性白血病(HL60)細胞を、10%胎児ウシ血清を含有するRPMI−1640培地で成長させた。この細胞を、5%CO存在下、37℃でインキュベーションした。
【0050】
(アッセイ条件)
HL60細胞を、1.2×10細胞/mlで播種した。播種してから18時間後、2ッ組の細胞を、薬物で処理した。4日後、細胞を採集し、ニトロブルーテトラゾリウム還元アッセイを行った(Collins et al.、1979;J.Exp.Med.149:969−974)。分化した細胞の割合は、合計200細胞を計数し、細胞内に黒〜青色のホルマザンの沈殿を含む数を記録することによって決定した。単球細胞への分化の検証を、食作用活性を測定することによって決定した(データは示されていない)。
【0051】
(in vitroでの転写アッセイ)
転写活性を、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の上流の24−ヒドロキシラーゼ(24Ohase)遺伝子プロモーターで安定にトランスフェクトされたROS 17/2.8(骨)細胞で測定した(Arbour et al.、1998)。細胞には、さまざまな投与量を与えた。投与の16時間後、細胞が採集し、ルシフェラーゼ活性を、照度計を用いて測定した。
【0052】
RLU=相対ルシフェラーゼユニット
【0053】
(腸のカルシウム移動及び骨のカルシウム動員)
雄の離乳期Sprague−Dawleyラットを、Diet 11(0.47% Ca)食餌+AEK油の状態に1週間置き、次いで、Diet 11(0.02% Ca)+AEK油の状態に3週間置いた。次いで、このラットを、0.47% Caを含む食餌に1週間変更し、次いで、0.02% Caを含有する食餌に2週間変更した。0.02% カルシウムの食餌の最後の週に、投与量の投与を開始した。約24時間の間隔をあけて、4回連続して腹腔内投与を行った。最後の投与から24時間後、切断された頸部から血液採集し、血清カルシウム濃度を、骨のカルシウム動員の測定値として測定した。反転腸管法を用いて腸のカルシウム移動を分析するために、最初の腸10cmも採集した。
【0054】
(データの解釈)
生物学的知見のまとめ。この化合物は、天然のホルモンと同じ親和性でVDRに結合し、1,25(OH)と比較して、約3〜4倍以上の細胞分化活性を示し、10倍を超えるin vitroでの遺伝子転写活性を示す。この化合物は、in vivoで、天然ホルモンと比較して、カルシウム動員の活性が顕著に低く、腸のカルシウム移動活性がほぼ同じであり、このことにより、この化合物は、癌、腎性骨ジストロフィー、自己免疫疾患、皮膚の状態又は乾癬のような疾患を治療する潜在的に価値のある薬剤である。この化合物は、1,25(OH)と比較して、in vitroでの効力が大きいが、この天然ホルモンと比較して、in vivoでは、カルシウム動員活性が低く、腸内では同様の活性を示す。Vit III 20−21は、骨の貯蔵庫からカルシウムを動員する効能は低いが、細胞分化における効能は高いために、すでに作られている化合物よりも安全性の範囲が大きい化合物をもたらすため、依然として、治療薬開発には潜在的に価値のある化合物である。Vit III 20−21は、上に列挙した疾患の治療に有用なだけではなく、上に列挙した疾患の予防にも有用であろう。
【0055】
(VDRへの結合、HL60細胞分化、及び転写活性)
Vit III 20−21(K=1x10−10M)は、全長組み換えラットビタミンD受容体に対する結合について、[H]−1,25−(OH)−Dと競合する能力に関し、天然ホルモンである1α,25−ジヒドロキシビタミンD(K=5x10−11M)と等しい活性を有する(図1)。Vit III 20−21は、1α,25−ジヒドロキシビタミンD(EC50=2x10−9M)と比較した場合、HL−60の細胞分化を促進する能力(有効性又は効力)において、約3〜4倍以上の活性を示す(EC50=7x10−11M)(図2を参照)。また、化合物Vit III 20−21(EC50=2x10−11M)は、1α,25−ジヒドロキシビタミンD(EC50=3x10−10M)よりも、骨細胞における転写活性が約10倍以上大きい(図3を参照)。これらの結果は、Vit III 20−21が、細胞分化、遺伝子転写を引き起こし、細胞成長を抑制するという直接的な細胞活性を有しているため、乾癬に極めて有効である可能性を示唆している。また、これらのデータは、Vit III 20−21が、抗癌剤として、特に、白血病、結腸癌、乳癌、皮膚癌、前立腺癌に対して顕著な活性を有する可能性を示しており、さらに、乾燥肌(皮膚の水分が失われること)、過度な皮膚のたるみ(不十分な皮膚の堅さ)、不十分な皮脂分泌、しわのような皮膚の状態に対して顕著な活性を有する可能性を示している。また、Vit III 20−21は、二次的な副甲状腺機能亢進症を抑制することに非常に活性があると予想されるであろう。
【0056】
ビタミンD欠損動物における、骨からのカルシウム動員及び腸のカルシウム吸収。低カルシウムの食餌(0.02%)を与えたビタミンD欠損ラットを使い、腸及び骨におけるVit III 20−21及び1,25(OH)の活性を試験した。予想されたように、天然のホルモン(1,25(OH))は、260pmol/日の投与量で血清カルシウム濃度を増加させた(図4)。図4に報告されている試験は、Vit III 20−21が、骨からカルシウムを動員する活性が比較的低いか、ほとんどないことを示す。260pmol/日のVit III 20−21を連続して4日間投与しても、骨のカルシウムを動員せず、Vit III 20−21の量を2,340pmol/日に増やすまで、なんら実質的なさらなる影響はなかった。
【0057】
腸のカルシウム移動を、反転腸管法を用いて、同じ動物群で評価した(図5)。これらの結果は、化合物Vit III 20−21が、260pmol/日で投与されると、腸のカルシウム移動を促進することを示し、その活性は、1,25(OH)と同じであるか、又は等しく、260pmol/日の投与量で顕著に増加する。従って、Vit III 20−21は、推奨される、より低めの投与量において、腸のカルシウムを移動する活性が1,25(OH)と同様であると結論づけることができるだろう。
【0058】
これらの結果は、Vit III 20−21が、本明細書に記載されるような多くのヒトの治療のために、優れた候補物質であることを示しており、腎性骨ジストロフィー、自己免疫疾患、癌、多くの種類の皮膚状態、乾癬の二次的な副甲状腺機能亢進症を抑制するといった多くの状況で特に有用な可能性があることを示している。Vit III 20−21は、乾癬を治療するのに優れた候補物質である。なぜなら、(1)Vit III 20−21は、顕著なVDR結合活性、転写活性、細胞分化活性を有しており、(2)Vit III 20−21は、1,25(OH)とは異なり、比較的低い投与量で高カルシウム血症の弊害がほとんどなく、(3)Vit III 20−21は、簡単に合成されるからである。Vit III 20−21は、ビタミンD受容体に比べて顕著な結合活性を有しているが、血清カルシウムを上げる能力はほとんどないので、このことは、腎性骨ジストロフィーの二次的な副甲状腺機能亢進症の治療に特に有用である可能性がある。
【0059】
また、これらのデータは、本発明の化合物Vit III 20−21が、免疫系の失調によって特徴づけられるヒトの障害、例えば、多発性硬化症、ループス、糖尿病、移植片対宿主拒絶反応、臓器移植の拒絶反応を含む自己免疫疾患の治療及び予防に特に適しており、さらに、関節リウマチ、喘息のような炎症性疾患、セリアック病、潰瘍性大腸炎、クローン病のような炎症性腸疾患の治療に特に適していることも示している。座瘡、脱毛症、高血圧は、本発明の化合物Vit III 20−21で治療可能な他の状態である。
【0060】
本発明の式Iの化合物、特に式Iaの化合物は、肥満を予防するか、又は治療し、脂肪細胞の分化を阻害し、SCD−1遺伝子の転写を阻害し、及び/又は、動物対象の体脂肪を減らすことにも有用である。従って、ある実施形態では、肥満を予防するか、又は治療する方法、脂肪細胞の分化を阻害する方法、SCD−1遺伝子の転写を阻害する方法、及び/又は動物対象の体脂肪を減らす方法は、動物対象に、式Iの1つ以上の化合物、又は式Iの1つ以上の化合物を含む医薬組成物を有効量で投与することを含む。化合物又は医薬組成物を対象に投与すると、脂肪細胞の分化を阻害し、遺伝子の転写を阻害し、及び/又は動物対象において体脂肪を減らす。動物は、ヒトであってもよく、イヌ又はネコのような飼育されている動物、又は農業用動物であってもよく、特に、ヒトが消費するための肉を提供する動物、例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、キジ又はウズラのような鳥類、ウシ、ヒツジ、ヤギ又はブタのような動物であってもよい。
【0061】
予防及び/又は治療の目的で、式Iに定義される本発明の化合物、特にVit III 20−21は、医薬用途のために、当該技術分野で既知の従来の方法に従って、無害な溶媒の溶液、又は適切な溶媒又は担体のエマルション、懸濁物又は分散物、又は固体担体とともに丸薬、錠剤又はカプセルとして配合されてもよい。また、任意のこのような配合物は、安定化剤、抗酸化剤、結合剤、着色剤、乳化剤又は味覚改質剤のような、他の医薬的に許容され、毒性のない賦形剤を含有していてもよい。
【0062】
式Iの化合物、特にVit III 20−21は、経口、局所、非経口、直腸、経鼻、舌下又は経皮で投与されてもよい。この化合物は、注射によって、又は静脈内注入又は適切な滅菌溶液によって、又は、液体又は固体の投薬形態で、消化管を経て、又は、クリーム、軟膏、パッチ又は経皮塗布するのに適した同様のビヒクルの形態で、有益に投与される。化合物I、特にVit III 20−21の投与量が1日あたり0.01μg〜1000μg、好ましくは、1日あたり約0.1μg〜約500μgであることが、予防及び/又は治療目的で適しており、このような投与量は、当該技術分野では十分に理解されているように、治療すべき疾患、疾患の重篤度、対象の応答によって調整される。この化合物が作用について特異性を示すため、それぞれを単独で適切に投与してもよく、骨中の無機質の動員及びカルシウム移動の刺激が異なるレベルであることが有益であることが分かっている状況では、別の活性があるビタミンD化合物、例えば、1α−ヒドロキシビタミンD又はD、すなわち1α,25−ジヒドロキシビタミンDの投与量を段階的に変えて併用投与してもよい。
【0063】
上述の治療で使用するための組成物は、活性成分として上の式I及びIaによって定義されるような有効な量の化合物I、特にVit III 20−21と、適切な担体とを含む。本発明に従って使用するための、このような化合物の有効な量は、組成物1gあたり、約0.01μg〜約1000μg、好ましくは、組成物1gあたり、約0.1μg〜約500μgであり、約0.01μg/日〜約1000μg/日の投与量で、好ましくは、約0.1μg/日〜約500μg/日の投与量で、局所、経皮、経口、直腸、経鼻、舌下、又は非経口で投与されてもよい。
【0064】
化合物I、特にVit III 20−21は、クリーム、ローション、軟膏、局所用パッチ、丸薬、カプセル又は錠剤、坐剤、エアロゾルとして配合されてもよく、又は、医薬的に無害で許容される溶媒又は油の溶液、エマルション、分散物又は懸濁物として液体形態で配合されてもよく、このような製剤は、それに加えて、安定化剤、酸化防止剤、乳化剤、着色剤、結合剤又は味覚改質剤のような、他の医薬的に無害又は有益な成分を含有していてもよい。
【0065】
化合物I、特にVit III 20−21は、前骨髄球から正常なマクロファージへの分化に影響を与えるのに十分な量で投与されるのが有益な場合がある。上述のような投与量が適しており、与えられている量は、当該技術分野で十分に理解されているように、疾患の重篤度、対象の状態及び反応に従って調整すべきであることが理解される。
【0066】
本発明の配合物は、従って医薬的に許容される担体と組み合わせて、活性成分を含み、場合により、他の治療成分を含む。担体は、配合物の他の成分と適合性を有し、受容者に有害ではないという観点で、「許容される」ものでなければならない。
【0067】
経口投与に適した本発明の配合物は、それぞれ所定量の活性成分を含むカプセル、小袋、錠剤又は薬用キャンディーのような別個の投与単位の形態、粉末又は顆粒の形態、水系液体又は非水系液体の溶液又は懸濁物の形態、又は、水中油エマルション又は油中水エマルションの形態であり得る。
【0068】
直腸投与のための配合物は、活性成分と、ココアバターのような担体とが組み込まれた坐剤の形態、または浣腸剤の形態であってもよい。
【0069】
非経口投与に適した配合物は、便宜上、油系又は水系の活性成分の滅菌製剤を含み、好ましくは、受容者の血液と等張性である。
【0070】
局所投与に適した配合物は、塗布薬、ローション、膏薬、水中油エマルション又は油中水エマルション、例えば、クリーム、軟膏又はペースト、又は、溶液又は懸濁物、例えば、点薬、又はスプレーのような、液体又は半液体の製剤を含む。
【0071】
経鼻投与の場合、粉末の吸入、スプレー缶、ネブライザ又はアトマイザを用いて分注する自己噴射式配合物又はスプレー式配合物を用いてもよい。配合物が分注される場合、好ましくは、粒径は、10〜100μの範囲である。
【0072】
配合物は、便宜上、投薬単位形態で存在していてもよく、医薬分野でよく知られている任意の方法によって調製することができる。用語「投薬単位」とは、単位を意味し、すなわち、活性成分を、それ自体で含むか、又は、医薬品用の固体又は液体の希釈剤又は担体とともに混合物として含む、物理的及び化学的に安定な単位投与量として患者に投与することが可能な1つの投与量を意味する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式を有する化合物。
【化1】

〔式中、X、X、Xは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ、水素又はヒドロキシ保護基から選択される。〕
【請求項2】
が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
、X、Xがすべてt−ブチルジメチルシリルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
有効な量の請求項1に記載の少なくとも1つの化合物を、医薬的に許容される賦形剤とともに含有する、医薬組成物。
【請求項6】
前記有効量が、前記組成物1gあたり約0.01μg〜約1000μgを含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記有効量が、前記組成物1gあたり約0.1μg〜約500μgを含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項8】
下式を有する、2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−1α,25−ジヒドロキシビタミンD
【化2】

【請求項9】
有効な量の2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−1α,25−ジヒドロキシビタミンDを、医薬的に許容される賦形剤とともに含有する、医薬組成物。
【請求項10】
前記有効量が、前記組成物1gあたり約0.01μg〜約1000μgを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記有効量が、前記組成物1gあたり約0.1μg〜約500μgを含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
有効な量の下式を有する化合物を、乾癬を患う対象に投与することを含む、乾癬を治療する方法。
【化3】

〔式中、X、X、Xは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ、水素又はヒドロキシ保護基から選択される。〕
【請求項13】
前記化合物が経口投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が非経口投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記化合物が経皮投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物が局所投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物が直腸投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物が経鼻投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物が舌下投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記化合物が、約0.01μg/日〜約1000μg/日の用量で投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記化合物が、下式を有する、2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−1α,25−ジヒドロキシビタミンDである、請求項12に記載の方法。
【化4】

【請求項22】
白血病、結腸癌、乳癌、皮膚癌又は前立腺癌からなる群より選択される疾患を患う対象に、有効な量の下式を有する化合物を投与することを含む、前記疾患を治療する方法。
【化5】

〔式中、X、X、Xは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ、水素又はヒドロキシ保護基から選択される。〕
【請求項23】
前記化合物が経口投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記化合物が非経口投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記化合物が経皮投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記化合物が直腸投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記化合物が経鼻投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物が舌下投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記化合物が、約0.01μg/日〜約1000μg/日の用量で投与される、請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記化合物が、下式を有する、2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−1α,25−ジヒドロキシビタミンDである、請求項22に記載の方法。
【化6】

【請求項31】
多発性硬化症、ループス、糖尿病、移植片対宿主拒絶反応、臓器移植の拒絶反応からなる群より選択される自己免疫疾患を患う対象に、有効な量の下式を有する化合物を投与することを含む、前記疾患を治療する方法。
【化7】

〔式中、X、X、Xは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ、水素又はヒドロキシ保護基から選択される。〕
【請求項32】
前記化合物が経口投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記化合物が非経口投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記化合物が経皮投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記化合物が直腸投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記化合物が経鼻投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記化合物が舌下投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記化合物が、約0.01μg/日〜約1000μg/日の用量で投与される、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
前記化合物が、下式を有する、2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−1α,25−ジヒドロキシビタミンDである、請求項31に記載の方法。
【化8】

【請求項40】
関節リウマチ、喘息、炎症性腸疾患からなる群より選択される炎症性疾患を患う対象に、有効な量の下式を有する化合物を投与することを含む、前記疾患を治療する方法。
【化9】

〔式中、X、X、Xは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ、水素又はヒドロキシ保護基から選択される。〕
【請求項41】
前記化合物が経口投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記化合物が非経口投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記化合物が経皮投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記化合物が直腸投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記化合物が経鼻投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記化合物が舌下投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項47】
前記化合物が、約0.01μg/日〜約1000μg/日の用量で投与される、請求項40に記載の方法。
【請求項48】
前記化合物が、下式を有する、2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−1α,25−ジヒドロキシビタミンDである、請求項40に記載の方法。
【化10】

【請求項49】
しわ、十分な皮膚の堅さが失われること、十分な皮膚の水分が失われること、不十分な皮脂分泌からなる群より選択される皮膚の状態を有する対象に、有効な量の下式を有する化合物を投与することを含む、前記状態を治療する方法。
【化11】

〔式中、X、X、Xは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ、水素又はヒドロキシ保護基から選択される。〕
【請求項50】
前記化合物が経口投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記化合物が非経口投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
前記化合物が経皮投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記化合物が局所投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項54】
前記化合物が直腸投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項55】
前記化合物が経鼻投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項56】
前記化合物が舌下投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項57】
前記化合物が、約0.01μg/日〜約1000μg/日の用量で投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項58】
前記化合物が、下式を有する、2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−1α,25−ジヒドロキシビタミンDである、請求項49に記載の方法。
【化12】

【請求項59】
腎性骨ジストロフィーを患う対象に、有効な量の下式を有する化合物を投与することを含む、腎性骨ジストロフィーを治療する方法。
【化13】

〔式中、X、X、Xは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ、水素又はヒドロキシ保護基から選択される。〕
【請求項60】
前記化合物が経口投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記化合物が非経口投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記化合物が経皮投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項63】
前記化合物が直腸投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記化合物が経鼻投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項65】
前記化合物が舌下投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項66】
前記化合物が、約0.01μg/日〜約1000μg/日の用量で投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項67】
前記化合物が、下式を有する、2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−1α,25−ジヒドロキシビタミンDである、請求項59に記載の方法。
【化14】

【請求項68】
動物の肥満を治療するか、又は予防する、脂肪細胞の分化を阻害する、SCD−1遺伝子の転写を阻害する、及び/又は体脂肪を減らすことが必要な動物に、有効な量の下式を有する化合物を投与することを含む、動物の肥満を治療するか、又は予防する方法、脂肪細胞の分化を阻害する方法、SCD−1遺伝子の転写を阻害する方法、及び/又は動物の体脂肪を減らす方法。
【化15】

〔式中、X、X、Xは、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ、水素又はヒドロキシ保護基から選択される。〕
【請求項69】
前記化合物が経口投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記化合物が非経口投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記化合物が経皮投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
前記化合物が直腸投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項73】
前記化合物が経鼻投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項74】
前記化合物が舌下投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項75】
前記化合物が、約0.01μg/日〜約1000μg/日の用量で投与される、請求項68に記載の方法。
【請求項76】
前記化合物が、下式を有する、2−メチレン−20(21)−デヒドロ−19−ノル−1α,25−ジヒドロキシビタミンDである、請求項68に記載の方法。
【化16】

【請求項77】
前記動物がヒトである、請求項68に記載の方法。
【請求項78】
前記動物が飼育されている動物である、請求項68に記載の方法。
【請求項79】
前記動物が農業用動物である、請求項68に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−527700(P2011−527700A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517622(P2011−517622)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/050110
【国際公開番号】WO2010/006172
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(510180382)
【Fターム(参考)】