説明

2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体の製造方法

【課題】 入手容易な2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体から簡便な操作により極めて効率的且つ高い光学純度で2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体を製造する方法、及びその中間体を提供する。
【解決手段】 入手容易な2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体を出発原料とし、ビニルエーテル化、クライゼン転位、不飽和結合の還元反応を経て2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬、農薬の中間体や生理活性物質などとして有用な2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体の製造方法及びその合成中間体である新規化合物のビニルエーテル誘導体、2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体及び2−置換−2−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸エステル誘導体に関する。
【0002】
特に、WO96/08484に記載されている胆汁酸輸送及びタウロコール酸吸収の阻害活性を有するベンゾチエピン類の合成中間体として有用な2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医薬、農薬の中間体や生理活性物質等として有用な2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体、2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体、2−置換−2−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸エステル誘導体及び2−置換−2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体の製造方法はいくつか知られている。まず、2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体の製造方法については例えば、
(一)2−エチルマロン酸ジエステルを出発原料とし、数工程を経て2−エチル−2−(アルコキシカルボニル)ヘキサン酸を製造した後、カルボン酸部位を活性化剤で活性化させ、水素化ホウ素ナトリウムで還元することにより2−エチル−2−ヒドロキシメチルへキサン酸メチルを得る方法(特許文献1)、
(二)4−メトキシフェニル酢酸メチルにメチルヨージドと反応させてメチル化し、次にクロロ炭酸メチルと反応させてジ置換マロン酸ジメチルとした後、メチルエステル部位の片方を酵素を用いて加水分解してカルボン酸とし、カルボン酸部位を活性化剤で活性化させ、水素化ホウ素ナトリウムで還元することにより2−(4−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシメチルプロピオン酸メチルを得る方法(非特許文献1)
が挙げられる。
【0004】
また、2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の製造方法については例えば、
(三)3−メトキシフェニル酢酸メチル又は3,4−ジメトキシフェニル酢酸メチルにアリルブロミドと反応させてアリル化し、次にクロロ炭酸メチルと反応させてジ置換マロン酸ジメチルとした後、メチルエステル部位の片方を酵素を用いて加水分解してカルボン酸とし、カルボン酸部位を活性化剤で活性化させ、水素化ホウ素ナトリウムで還元することにより2−(3−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシメチル−3−ペンテン酸メチル又は2−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−ヒドロキシメチル−3−ペンテン酸メチルとし、水酸基を酸化することにより2−(3−メトキシフェニル)−2−ホルミル−3−ペンテン酸メチル又は2−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−ホルミル−3−ペンテン酸メチルを得る方法(非特許文献1)
が挙げられる。
【0005】
また、2−置換−2−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸エステル誘導体の製造方法については、例えば、
(四)3−メトキシフェニル酢酸メチル又は3,4−ジメトキシフェニル酢酸メチルにアリルブロミドと反応させてアリル化し、次にクロロ炭酸メチルと反応させてジ置換マロン酸ジメチルとした後、メチルエステル部位の片方を酵素を用いて加水分解してカルボン酸とし、カルボン酸部位を活性化剤で活性化させ、水素化ホウ素ナトリウムで還元することにより2−(3−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシメチル−3−ペンテン酸メチル又は2−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−ヒドロキシメチル−3−ペンテン酸メチルを得る方法(非特許文献1)
が挙げられる。
【0006】
また、2−置換−2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体を製造する方法については、例えば、
(五)2−ホルミルヘキサン酸エステルに対し、タリウム(I)エトキシド存在下でエチルハライドを反応させることにより2−エチル−2−ホルミルへキサン酸エステルを得る方法(非特許文献2)、
(六)メタクリル酸エステル誘導体をロジウム触媒存在下でヒドロホルミル化反応を行うことにより2−置換−2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体を製造する方法(非特許文献3)
等が挙げられる。
【特許文献1】US 2004/014774 A1
【非特許文献1】Tetrahedron Asymmetry、10巻、3877頁、(1999)
【非特許文献2】J.Org.Chem.、45巻、2576頁、(1980
【非特許文献3】Tetrahedron Letters、45巻、4043頁、(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、まず第一に、2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体の製造方法において、上記(一)の方法は2−エチルマロン酸ジエステルを出発原料とし、数工程を経て2−エチル−2−(アルコキシカルボニル)ヘキサン酸を製造した後、カルボン酸部位を活性化剤で活性化させ、水素化ホウ素ナトリウムで還元することにより2−エチル−2−ヒドロキシメチルへキサン酸メチル得るために工程数が多く、生産性の観点から工業的製法としては適当ではない。
【0008】
また、上記(二)の方法は、2−(4−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシメチルプロピオン酸メチルのみの製造方法にしか言及されておらず、2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体の一般的な製造方法ではない。
【0009】
第二に、2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の製造方法において、上記(三)の方法は、3−メトキシフェニル酢酸メチル又は3,4−ジメトキシフェニル酢酸メチルにアリルブロミドと反応させてアリル化し、次にクロロ炭酸メチルと反応させてジ置換マロン酸ジメチルとした後、メチルエステル部位の片方を酵素を用いて加水分解してカルボン酸とし、カルボン酸部位を活性化剤で活性化させ、水素化ホウ素ナトリウムで還元することにより2−(3−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシメチル−3−ペンテン酸メチル又は2−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−ヒドロキシメチル−3−ペンテン酸メチルとし、水酸基を酸化することにより2−(3−メトキシフェニル)−2−ホルミル−3−ペンテン酸メチル又は2−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−ホルミル−3−ペンテン酸メチルを製造しているために工程数が多く、生産性の観点から工業的製法には適していない。
【0010】
また、2−(3−メトキシフェニル)−2−ホルミル−3−ペンテン酸メチル又は2−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−ホルミル−3−ペンテン酸メチルの2例の製造方法にしか言及されておらず、2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の一般的な製造方法ではない。
【0011】
第三に、2−置換−2−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸エステル誘導体の製造方法において、上記(四)の方法は、3−メトキシフェニル酢酸メチル又は3,4−ジメトキシフェニル酢酸メチルにアリルブロミドと反応させてアリル化し、次にクロロ炭酸メチルと反応させてジ置換マロン酸ジメチルとした後、メチルエステル部位の片方を酵素を用いて加水分解してカルボン酸とし、カルボン酸部位を活性化剤で活性化させ、水素化ホウ素ナトリウムで還元することにより2−(3−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシメチル−3−ペンテン酸メチル又は2−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−ヒドロキシメチル−3−ペンテン酸メチルを製造しているため、生産性の観点から工業的に適していない。また、2−(3−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシメチル−3−ペンテン酸メチル又は2−(3,4−ジメトキシフェニル)−2−ヒドロキシメチル−3−ペンテン酸メチルの2例の製造方法にしか言及されておらず、2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の一般的な製造方法ではない。
【0012】
第四に、2−置換−2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体を製造する方法において、上記(五)の方法は、反応にタリウム(I)エトキシドを化学量論量用いているが、タリウム(I)エトキシドは高価であるため、経済性の観点から工業化に適していない。また、上記(六)の方法は、水素と一酸化炭素の混合ガス雰囲気下で反応を行うが、8〜40気圧の高圧条件で反応を行うために専用の製造設備が必要となり、工業的製法として優れた方法ではない。
【0013】
以上のように、いずれの方法も工業的製法として経済性、生産性等解決すべき課題を有しており、安価且つ効率的に製造することができる製造方法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記に鑑み、入手容易な2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体を出発原料とし、ビニルエーテル化、クライゼン転位、不飽和結合の還元を経て極めて効率的に且つ高い光学純度で2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体を製造できる方法を見出した。即ち、本発明は、一般式(1)
【0015】
【化16】

(式中、R1及びR2はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、R1及びR2は互いに同じ又は異なっていてもよい)で表される2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体を触媒存在下、一般式(2);
【0016】
【化17】

(式中、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、R4及びR5は互いに同じ又は異なっていてもよく、*は不斉炭素中心を表す。)で表されるアルコール誘導体と反応させることを特徴とする一般式(3);
【0017】
【化18】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、*は前記に同じ。)で表されるビニルエーテル誘導体の製造方法である。
【0018】
また、本発明は、一般式(1)で表される2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体が、一般式(4);
【0019】
【化19】

(式中、R1及びR2はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、R1及びR2は互いに同じ又は異なっていてもよい)で表されるカルボン酸エステル誘導体を、チタン化合物及び有機塩基存在下で一般式(5);
【0020】
【化20】

(式中、R6は炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表す。)で表される蟻酸エステル誘導体と反応させることにより得られることを特徴とするビニルエーテル誘導体の製造方法でもある。
【0021】
また、本発明は一般式(3)で表されるビニルエーテル誘導体を転位反応させることを特徴とする一般式(6)
【0022】
【化21】

(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の製造方法でもある。
【0023】
また、本発明は一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体を還元剤及び/又は還元触媒で処理することにより炭素−炭素二重結合とホルミル基を還元することを特徴とする一般式(7);
【0024】
【化22】

(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体の製造方法でもある。
【0025】
その好ましい実施態様としては、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の炭素−炭素二重結合及びホルミル基を一工程で還元することを特徴とする2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体の製造方法、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の炭素−炭素二重結合を還元することにより一般式(8);
【0026】
【化23】

(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、若しくは置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表される2−置換−2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体を得た後、ホルミル基を還元することを特徴とする2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体の製造方法、又は、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体のホルミル基を還元することにより一般式(9);
【0027】
【化24】

(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸エステル誘導体を得た後、炭素−炭素二重結合を還元することを特徴とする2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体の製造方法である。
【0028】
また、本発明は一般式(3);
【0029】
【化25】

(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表されるビニルエーテル誘導体を提供するものでもある。
【0030】
また、本発明は一般式(6);
【0031】
【化26】

(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体を提供するものでもある。
【0032】
また、本発明は一般式(9);
【0033】
【化27】

(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸エステル誘導体を提供するものでもある。
【0034】
また、本発明は一般式(10);
【0035】
【化28】

(式中、R7、R10及びR11はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R8は置換基を有してもよい炭素数4〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、R9は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表される2−置換−2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体を提供するものでもある。
【発明の効果】
【0036】
本発明の製造方法は、入手容易な2−ホルミルカルボン酸エステルを出発原料とし、ビニルエーテル化、クライゼン転位、不飽和結合の還元を経て極めて効率的に且つ高い光学純度で医薬、農薬の中間体や生理活性物質として有用な2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体を提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の態様は下記スキームにより説明されるため、発明の詳細について各工程ごとに説明する。
【0038】
【化29】

まず、一般式(4)及び(5)で表される化合物から一般式(1)で表される化合物を製造する工程について説明する。
【0039】
一般式(4)で表されるカルボン酸エステル誘導体において、R1及びR2はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよい。具体的には、R1及びR2として、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、n−デシル基、ベンジル基、o−メトキシベンジル基、m−メトキシベンジル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、o−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、p−クロロベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−ニメトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基等が挙げられ、その中でも、R1及びR2のいずれか又は両方がメチル基又はエチル基であるのが好ましく、さらにはR1及びR2のいずれか又は両方がエチル基であるのがより好ましく、R1がメチル基で及びR2がエチル基であるのも好ましく、最も好ましいのはR1及びR2の両方がエチル基である。一般式(5)で表される蟻酸エステル誘導体において、R6は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表す。具体的には、R6として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、n−デシル基、ベンジル基、o−メトキシベンジル基、m−メトキシベンジル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、o−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、p−クロロベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−ニメトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基等が挙げられ、そのなかでもメチル基又はエチル基が好ましく、最も好ましいのはエチル基である。これら、一般式(4)で表されるカルボン酸エステル誘導体及び一般式(5)で表される蟻酸エステル誘導体は一般に入手可能である。
【0040】
本工程において一般式(4)で表されるカルボン酸エステル誘導体は、チタン化合物及び有機塩基の存在下、一般式(5)で表される蟻酸エステル誘導体と反応し、一般式(1)で表される2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体へと変換される。
【0041】
本反応に用いられるチタン化合物として例えば、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、ジクロロビス(トリフルオロメタンスルホン酸)チタン等のハロゲン化チタン類が好適に使用でき、四塩化チタンが最も好適に使用できる。
【0042】
チタン化合物の使用量は使用するチタン化合物の種類、有機塩基の種類、溶媒の種類、反応の条件によって異なるが、一般式(4)で表される化合物に対して、1〜5倍モル量、好ましくは1.5〜3倍モル量である。
【0043】
また、本反応に用いられる有機塩基としては例えば、N−エチルピペリジン、ピリジン、2,6−ルチジン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のアミン類が好適に使用でき、トリエチルアミンが最も好適に使用できる。
【0044】
有機塩基の使用量は使用する有機塩基の種類、チタン化合物の種類、溶媒の種類、反応の条件によって異なるが、一般式(4)で表される化合物に対して、1〜5倍モル量、好ましくは2〜4倍モル量である。
【0045】
一般式(5)で表される化合物の使用量は使用するチタン化合物の種類、有機塩基の種類、溶媒の種類、反応の条件によって異なるが、一般式(4)で表される化合物に対して1〜5倍モル量、好ましくは2〜4倍モル量である。
【0046】
また、反応には通常溶媒が使用され、反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン等の非プロトン性溶媒やジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。上記溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよく、この場合、その混合比率に特に制限はない。上記溶媒のうち、好適なものはジクロロメタン、トルエンである。
【0047】
反応での基質濃度は、溶媒に対する一般式(4)で表される化合物の濃度として、通常、30w/v%以下であるが、好ましくは20w/v%以下である。
反応温度としては、−30℃から用いる溶媒の沸点の範囲から選択でき、好ましくは0℃〜60℃の範囲である。
【0048】
また、反応時間は通常、30分から24時間を要する。
【0049】
反応終了後は、必要に応じて溶媒を留去後、反応液を水に加えるか、又は、反応液に水を加えた後、トルエン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルムなどの有機溶媒で抽出、水洗浄、濃縮などの操作を経て一般式(1)で表される化合物を取得することができる。取得した化合物はカラムクロマトグラフィや蒸留によって分離、精製を行ってもよい。
【0050】
次に一般式(1)で表される2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体から一般式(3)で表されるビニルエーテル誘導体を製造する工程について説明する。
【0051】
一般式(1)で表される2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体は、一般式(4)で表されるカルボン酸エステル誘導体と一般式(5)で表される蟻酸エステル誘導体から上述した方法で好ましく得ることが出来るが、他の方法で合成したものであっても差し支えない。一般式(1)で表される2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体の置換基R1,R2の具体例や好ましい例は、一般式(4)で表されるカルボン酸エステル誘導体と同じである。
【0052】
一般式(2)で表されるアルコール誘導体は、例えば、特開平6−72926に記載の方法、すなわち、2−ヒドロキシエステル誘導体の水酸基をアセタール保護し、エステル基を還元してアルデヒドとした後、Wittig試薬と反応させ、水酸基のアセタール保護基を脱保護することにより容易に得ることができるが、他の方法で合成したものであっても差し支えない。一般式(2)で表されるアルコール誘導体において、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、具体的には、Rとして、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、n−デシル基、ベンジル基、o−メトキシベンジル基、m−メトキシベンジル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、o−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、p−クロロベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−ニメトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基等が挙げられ、そのなかでもメチル基又はフェニル基が好ましく、最も好ましいのはメチル基である。R及びRはそれぞれ、水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよい。具体的には、R及びRとして、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、n−デシル基、ベンジル基、o−メトキシベンジル基、m−メトキシベンジル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、o−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、p−クロロベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−ニメトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基等が挙げられ、そのなかでもR4及びR5のいずれか又は両方が水素原子又はメチル基であるのが好ましく、さらにはR4及びR5のいずれか又は両方が水素原子であるのがより好ましく、最も好ましいのはR4及びR5の両方が水素原子である。また、*は不斉炭素中心を表す。
【0053】
すなわち、一般式(2)で表されるアルコール誘導体は不斉炭素中心を有するが、本発明においては、光学活性体又はラセミ体のいずれもが本発明の範囲に含まれる。好ましいのは光学活性体であり、最も好ましいのは不斉炭素中心の絶対配置が(R)−体の化合物である。なお、光学活性2−ヒドロキシエステル誘導体を出発原料とし、上記方法に従って反応を行うことにより対応する一般式(2)で表される光学活性アルコール誘導体を得ることができる。
【0054】
本工程において一般式(1)で表される2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体は、触媒の存在下、一般式(2)で表されるアルコール誘導体と反応し、一般式(3)で表されるビニルエーテル誘導体へと変換される。
【0055】
本反応に用いられる触媒としてルイス酸やブレンステッド酸等が挙げられる。
【0056】
ルイス酸としては例えば、塩化カルシウムや塩化マグネシウム、臭化マグネシウム等のマグネシウム化合物が好適に使用でき、塩化マグネシウムが最も好適に使用できる。ブレンステッド酸としては例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸類などが好適に使用できる。
【0057】
触媒の使用量は使用する触媒の種類、溶媒の種類、反応の条件により異なるが、一般式(1)で表される化合物に対して、0.001〜5倍モル量、好ましくは0.01〜3倍モル量である。
【0058】
一般式(2)で表される化合物の使用量は使用する触媒の種類、溶媒の種類、反応の条件により異なるが、一般式(1)で表される化合物に対して、0.5〜5倍モル量、好ましくは0.6〜3倍モル量である。
【0059】
また、反応には通常溶媒が使用され、反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン等の非プロトン性溶媒やジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。上記溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよく、この場合、その混合比率に特に制限はない。上記溶媒のうち、好適なものはトルエンである。
【0060】
反応での基質濃度は、溶媒に対する一般式(1)で表される化合物の濃度として、通常、30w/v%以下であるが、好ましくは20w/v%以下である。
反応温度としては、−30℃から用いる溶媒の沸点の範囲から選択でき、好ましくは0℃〜110℃の範囲である。
【0061】
また、反応時間は通常、30分から48時間を要する。
【0062】
反応終了後は、必要に応じて触媒を濾過又は溶媒を留去後、反応液を水に加えるか、又は、反応液に水を加えた後、トルエン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルムなどの有機溶媒で抽出、水洗浄、濃縮などの操作を経て一般式(3)で表される化合物を取得することができる。取得した化合物はカラムクロマトグラフィや蒸留によって分離、精製を行ってもよい。
【0063】
本工程で得られる一般式(3)で表されるビニルエーテル誘導体は、本発明者らにより2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体製造における有用性が確認された新規化合物である。
【0064】
一般式(3)で表されるビニルエーテル誘導体の置換基R1、R2、R3、R4、R5の具体例や好ましい例は、原料となる一般式(2)で表されるアルコール誘導体及び一般式(4)で表されるカルボン酸エステル誘導体にそれぞれ由来する。すなわち、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。具体的には、R1、R2、R4及びR5として、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、n−デシル基、ベンジル基、o−メトキシベンジル基、m−メトキシベンジル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、o−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、p−クロロベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−ニメトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基等が挙げられ、その中でも、R1及びR2のいずれか又は両方がメチル基又はエチル基であるのが好ましく、さらにはR1及びR2のいずれか又は両方がエチル基であるのがより好ましく、R1がメチル基で及びR2がエチル基であるのも好ましく、最も好ましいのはR1及びR2の両方がエチル基である。また、R4及びR5としてはそのいずれか又は両方が水素原子又はメチル基であるのが好ましく、さらにはR4及びR5のいずれか又は両方が水素原子であるのがより好ましく、最も好ましいのはR4及びR5の両方が水素原子である。R3としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、n−デシル基、ベンジル基、o−メトキシベンジル基、m−メトキシベンジル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、o−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、p−クロロベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−ニメトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基等が挙げられ、そのなかでもメチル基又はフェニル基が好ましく、最も好ましいのはメチル基である。
【0065】
一般式(3)で表されるビニルエーテル誘導体は不斉炭素中心を有するが、本発明においては、光学活性体又はラセミ体のいずれもが本発明の範囲に含まれる。好ましいのは光学活性体であり、最も好ましいのは不斉炭素中心の絶対配置が(R)−体の化合物である。また、一般式(3)で表される光学活性アルコール誘導体はビニルオキシ部分に幾何異性を有するが、E体、Z体又はE体及びZ体の混合物、いずれもが本発明の範囲に含まれる。
【0066】
次に一般式(3)で表されるビニルエーテル誘導体から一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体を製造する工程について説明する。
【0067】
一般式(3)で表されるビニルエーテル誘導体は、上述した方法で好ましく得ることが出来るが、他の方法で合成したものであっても差し支えない。一般式(3)で表される2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体の置換基R1、R2、R3、R4、R5の具体例や好ましい例は、上述したとおりである。
【0068】
本工程において一般式(3)で表される化合物は、転位反応させることにより一般式(6)で表される化合物へと変換される。
【0069】
本発明における転位反応方法としては特に限定されず、加熱処理によって行うことも出来るが、好ましくは転位反応触媒共存下反応を実施することが好ましく、その際に用いられる転位反応触媒として金属化合物やブレンステッド酸等が挙げられる。
【0070】
金属化合物としては例えば、ヘキサフルオロリン酸銀、四塩化チタン、イッテルビウムトリフルオロメタンスルホネート、酸化イッテルビウム、パラジウム、アルミニウムイソプロポキシド、イットリウムイソプロポキシドやマグネシウムトリフルオロメタンスルホネート、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムエトキシド等のマグネシウム化合物が好適に使用でき、水酸化マグネシウムが最も好適に使用できる。ブレンステッド酸としては例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸類や2,6−ジメチルフェノール、p−トルエンスルホン酸ピリジン塩等が好適に使用できる。
【0071】
転位反応触媒の使用量は使用する触媒の種類、溶媒の種類、反応の条件により異なるが、一般式(3)で表される化合物に対して、0.001〜5倍モル量、好ましくは0.01〜2倍モル量である。
【0072】
また、反応には通常溶媒が使用され、反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン等の非プロトン性溶媒やジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。上記溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよく、この場合、その混合比率に特に制限はない。上記溶媒のうち、好適なものはクロロベンゼン、シクロペンチルメチルエーテル、トルエンである。
【0073】
反応での基質濃度は、溶媒に対する一般式(3)で表される化合物の濃度として、通常、30w/v%以下であるが、好ましくは20w/v%以下である。
反応温度としては、−30℃から用いる溶媒の沸点の範囲から選択でき、好ましくは0℃〜110℃の範囲である。
【0074】
また、反応時間は通常、30分から48時間を要する。
【0075】
反応終了後は、必要に応じて触媒を濾過又は溶媒を留去後、反応液を水に加えるか、又は、反応液に水を加えた後、トルエン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルムなどの有機溶媒で抽出、水洗浄、濃縮などの操作を経て一般式(6)で表される化合物を取得することができる。取得した化合物はカラムクロマトグラフィや蒸留によって分離、精製を行ってもよい。
【0076】
本工程によって得られる一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体も本発明者らにより2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体製造における有用性が確認された新規化合物である。
【0077】
一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸誘導体の置換基R1、R2、R3、R4、R5の具体例や好ましい例は、原料となる一般式(3)で表されるビニルエーテル誘導体に由来する。すなわち、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。具体的には、R1、R2、R4及びR5として、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、n−デシル基、ベンジル基、o−メトキシベンジル基、m−メトキシベンジル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、o−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、p−クロロベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−ニメトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基等が挙げられ、その中でも、R1及びR2のいずれか又は両方がメチル基又はエチル基であるのが好ましく、さらにはR1及びR2のいずれか又は両方がエチル基であるのがより好ましく、R1がメチル基で及びR2がエチル基であるのも好ましく、最も好ましいのはR1及びR2の両方がエチル基である。また、R4及びR5としてはそのいずれか又は両方が水素原子又はメチル基であるのが好ましく、さらにはR4及びR5のいずれか又は両方が水素原子であるのがより好ましく、最も好ましいのはR4及びR5の両方が水素原子である。R3としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、n−デシル基、ベンジル基、o−メトキシベンジル基、m−メトキシベンジル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、o−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、p−クロロベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−ニメトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基等が挙げられ、そのなかでもメチル基又はフェニル基が好ましく、最も好ましいのはメチル基である。
【0078】
一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体は2位の位置に不斉炭素中心を有するが、光学活性体又はラセミ体のいずれもが本発明の範囲に含まれる。好ましいのは光学活性体であり、最も好ましいのは2位の位置の不斉炭素中心の絶対配置が(R)−体の化合物である。本工程において、一般式(3)で表されるビニルエーテル誘導体の立体配置は、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の2位の不斉炭素中心の立体配置に転写される。また、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体は、R4とR5が異なる場合には、3位の位置にも不斉炭素中心を有する。本発明においては、2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体(6)の3位の位置の立体配置は(R)−体、(S)−体のいずれであっても、その混合物であってもよく、光学活性体又はラセミ体のいずれもが本発明の範囲に含まれる。また、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体は炭素−炭素二重結合部分に幾何異性を有するが、E体、Z体又はE体及びZ体の混合物、いずれもが本発明の範囲に含まれる。
【0079】
次に一般式(6)で表される化合物から一般式(7)で表される化合物を製造する工程について説明する。
【0080】
本工程において一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体は、還元剤及び/又は還元触媒で処理することにより一般式(7)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体へと変換される。
【0081】
一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体は、上述した方法で好ましく得ることが出来るが、他の方法で合成したものであっても差し支えない。一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の置換基R1、R2、R3、R4、R5の具体例や好ましい例は、上述したとおりである。
【0082】
本工程を実施するにあたっては、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の炭素−炭素二重結合及びホルミル基を一工程で還元し、一般式(7)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体へと変換する方法、ならびに、炭素−炭素二重結合の還元とホルミル基の還元をそれぞれ個別に行い、二工程で一般式(7)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体への変換する方法が挙げられる。二工程で実施する場合さらに、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の炭素−炭素二重結合を還元して一般式(8)で表される2−置換−2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体へと変換した後、ホルミル基を還元することにより一般式(7)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体へと変換する方法又は、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体のホルミル基を還元して一般式(9)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸エステル誘導体へと変換した後、炭素−炭素二重結合を還元して一般式(7)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体へと変換する方法が挙げられる。いずれの方法を用いても構わないが、一般式(7)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体を目的物とする場合には、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の炭素−炭素二重結合及びホルミル基を一工程で還元する方法で得るのが好ましい。
【0083】
まず、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の炭素−炭素二重結合及びホルミル基を一工程で還元し、一般式(7)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体へと変換する方法について説明する。
【0084】
本方法に用いられる還元触媒として例えば、PtO2(酸化白金)やラネーニッケル等が挙げられ、ラネーニッケルが好適に使用できる。触媒の使用量は使用する溶媒の種類、反応の条件により異なるが、一般式(6)で表される化合物に対して、0.001〜5w/v倍、好ましくは0.01〜3w/v倍である。
【0085】
また、ラネーニッケルを触媒に用いる場合、本反応は三級アミン共存下で行うことにより反応を円滑に進行させることができる。共存させる三級アミンとして例えば、トリブチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−エチルピペリジン、2,6−ルチジン、ピリジン等が挙げられ、トリエチルアミンが好適に使用できる。
【0086】
三級アミンの使用量は、使用する溶媒の種類、反応の条件により異なるが、一般式(6)で表される化合物に対して、0.05〜10.0w/w倍、好ましくは、0.1〜5.0w/w倍である。
【0087】
また、反応には通常溶媒が使用され、反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の非プロトン性溶媒やジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒やメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール系溶媒やアセトン、アセトニトリル、水、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル等が挙げられる。上記溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよく、この場合、その混合比率に特に制限はない。上記溶媒のうち、好適なものはメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール等のアルコール系溶媒であり、最も好適なのものはエタノールである。
【0088】
反応での基質濃度は、溶媒に対する一般式(6)で表される化合物の濃度として、通常、30w/v%以下であるが、好ましくは20w/v%以下である。
【0089】
反応温度としては、−30℃から用いる溶媒の沸点の範囲から選択でき、好ましくは0℃〜60℃の範囲である。
【0090】
また、反応時間は通常、30分から48時間を要する。
【0091】
なお、反応は水素雰囲気下で行うが、この時の水素気圧の範囲は1〜100気圧の範囲から選択でき、好ましくは1〜5気圧である。
【0092】
反応終了後は、必要に応じて還元触媒を濾過又は溶媒を留去後、反応液を水に加えるか、又は、反応液に水を加えた後、トルエン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルムなどの有機溶媒で抽出、水洗浄、濃縮などの操作を経て一般式(7)で表される化合物を取得することができる。取得した化合物はカラムクロマトグラフィや蒸留によって分離、精製を行ってもよい。
【0093】
本工程において、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の立体配置は一般式(7)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体に転写される。従って、一般式(7)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体は2位の位置に不斉炭素中心を有し、R4とR5が異なる場合には3位の位置にも不斉炭素中心を有するが、本発明においては、光学活性体又はラセミ体のいずれもが本発明の範囲に含まれる。好ましいのは光学活性体であり、最も好ましいのは2位の位置の不斉炭素中心の絶対配置が(R)−体の化合物である。
【0094】
次に、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の炭素−炭素二重結合を還元して一般式(8)で表される2−置換−2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体へと変換した後、ホルミル基を還元することにより一般式(7)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体へと変換する方法について説明する。
【0095】
一般式(6)で表される化合物の炭素−炭素二重結合を還元し、一般式(8)で表される化合物へと変換する際に用いられる還元触媒としては、一般的に炭素−炭素多重結合の還元に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、Pd/C、Pd(OH)2/C、Pt/C、PtO2等が好適に使用できる。還元触媒の使用量は使用する溶媒の種類、反応の条件により異なるが、一般式(6)で表される化合物に対して、0.001〜1w/w倍、好ましくは0.01〜0.5w/w倍である。
【0096】
また、反応には通常溶媒が使用され、反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の非プロトン性溶媒やジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒やメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール系溶媒やアセトン、アセトニトリル、水、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル等が挙げられる。上記溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよく、この場合、その混合比率に特に制限はない。上記溶媒のうち、好適なものはメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール等のアルコール系溶媒であり、最も好適なのものはエタノールである。
【0097】
反応での基質濃度は、溶媒に対する一般式(6)で表される化合物の濃度として、通常、30w/v%以下であるが、好ましくは20w/v%以下である。
【0098】
反応温度としては、−30℃から用いる溶媒の沸点の範囲から選択でき、好ましくは0℃〜60℃の範囲である。
【0099】
また、反応時間は通常、30分から48時間を要する。
【0100】
なお、反応は水素雰囲気下で行うが、この時の水素気圧の範囲は1〜100気圧の範囲から選択でき、好ましくは1〜5気圧である。
反応終了後は、必要に応じて還元触媒の濾過、抽出、カラムクロマトグラフィや蒸留による分離、精製を行ってもよいし、上記の操作を行わずに引き続いてホルミル基の還元を行ってもよい。
【0101】
一般式(8)で表される化合物のホルミル基を還元し、一般式(7)で表される化合物へと変換する際に用いられる還元剤又は還元触媒としては、一般的にホルミル基の還元に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、ラネーニッケル、Ru/C、RuO2等の金属触媒や水素化ホウ素ナトリウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、水素化アルミニウムリチウム等の水素化金属化合物等が好適に使用できる。還元剤又は還元触媒の使用量は使用する溶媒の種類、反応の条件により異なるが、一般式(8)で表される化合物に対して、0.001〜3w/w倍、好ましくは0.01〜2w/w倍である。
【0102】
また、反応には通常溶媒が使用され、反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の非プロトン性溶媒やジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒やメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール系溶媒やアセトン、アセトニトリル、水、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル等が挙げられる。上記溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよく、この場合、その混合比率に特に制限はない。上記溶媒のうち、好適なものはメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール等のアルコール系溶媒やテトラヒドロフランである。
【0103】
反応での基質濃度は、溶媒に対する一般式(8)で表される化合物の濃度として、通常、30w/v%以下であるが、好ましくは20w/v%以下である。
【0104】
反応温度としては、−30℃から用いる溶媒の沸点の範囲から選択でき、好ましくは0℃〜60℃の範囲である。また、反応時間は通常、30分から48時間を要する。
【0105】
なお、還元触媒を用いて反応を行う場合、反応は水素雰囲気下で行うが、この時の水素気圧の範囲は1〜100気圧の範囲から選択でき、好ましくは1〜5気圧である。
【0106】
反応終了後は、必要に応じて還元剤又は還元触媒を濾過又は溶媒を留去後、反応液を水に加えるか、又は、反応液に水を加えた後、トルエン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルムなどの有機溶媒で抽出、水洗浄、濃縮などの操作を経て一般式(7)で表される化合物を取得することができる。取得した化合物はカラムクロマトグラフィや蒸留によって分離、精製を行ってもよい。
【0107】
本工程の中間体である、一般式(8)で表される2−置換−2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体のうち、置換基R2の炭素数が4以上の場合、すなわち、一般式(10)で表される2−置換−2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体は本発明者らにより2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体製造における有用性が確認された新規化合物である。
【0108】
一般式(10)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸誘導体において、R7、R10及びR11はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、Rは置換基を有してもよい炭素数4〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。具体的には、R7、R10及びR11としてそれぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、n−デシル基、ベンジル基、o−メトキシベンジル基、m−メトキシベンジル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、o−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、p−クロロベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−ニメトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基等が挙げられ、R7としてはメチル基又はエチル基が好ましく、最も好ましいのはエチル基である。R10及びR11としてはそのいずれか又は両方が水素原子又はメチル基であるのが好ましく、さらにはR10及びR11のいずれか又は両方が水素原子であるのがより好ましく、最も好ましいのはR10及びR11の両方が水素原子である。また、R8としては、具体的には、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、n−デシル基、ベンジル基、o−メトキシベンジル基、m−メトキシベンジル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、o−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、p−クロロベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−ニメトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基等が挙げられ、その中でも、n−ブチル基又はn−ペンチル基であるのが好ましく、最も好ましくはn−ブチル基である。また、R9としては具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、n−デシル基、ベンジル基、o−メトキシベンジル基、m−メトキシベンジル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、o−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、p−クロロベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−ニメトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基等が挙げられ、そのなかでもメチル基又はフェニル基が好ましく、最も好ましいのはメチル基である。
【0109】
なお、一般式(10)で表される2−置換−2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体は2位の位置に不斉炭素中心を有し、R10とR11が異なる場合には3位の位置にも不斉炭素中心を有するが、本発明においては、光学活性体又はラセミ体のいずれもが本発明の範囲に含まれる。好ましいのは光学活性体であり、最も好ましいのは2位の位置の不斉炭素中心の絶対配置が(R)−体の化合物である。
【0110】
また、一般式(10)で表される2−置換−2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体は炭素−炭素二重結合部分に幾何異性を有するが、E体、Z体又はE体及びZ体の混合物、いずれもが本発明の範囲に含まれる。
【0111】
本工程において、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の立体配置は一般式(8)で表される2−置換−2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体、そして一般式(7)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体に転写される。
【0112】
次に、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体のホルミル基を還元して一般式(9)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸エステル誘導体へと変換した後、炭素−炭素二重結合を還元して一般式(7)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体へと変換する方法について説明する。
【0113】
一般式(6)で表される化合物のホルミル基を還元し、一般式(9)で表される化合物へと変換する際に用いられる還元剤又は還元触媒としては、一般的にホルミル基の還元に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、ラネーニッケル、Ru/C、RuO2等の金属触媒や水素化ホウ素ナトリウム、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、水素化アルミニウムリチウム等の水素化金属化合物等が好適に使用できる。還元剤又は還元触媒の使用量は使用する溶媒の種類、反応の条件により異なるが、一般式(6)で表される化合物に対して、0.001〜3w/w倍、好ましくは0.01〜2w/w倍である。
【0114】
また、反応には通常溶媒が使用され、反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の非プロトン性溶媒やジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒やメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール系溶媒やアセトン、アセトニトリル、水、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル等が挙げられる。上記溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよく、この場合、その混合比率に特に制限はない。上記溶媒のうち、好適なものはメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール等のアルコール系溶媒やテトラヒドロフランである。
【0115】
反応での基質濃度は、溶媒に対する一般式(6)で表される化合物の濃度として、通常、30w/v%以下であるが、好ましくは20w/v%以下である。
【0116】
反応温度としては、−30℃から用いる溶媒の沸点の範囲から選択でき、好ましくは0℃〜60℃の範囲である。また、反応時間は通常、30分から48時間を要する。
【0117】
なお、還元触媒を用いて反応を行う場合、反応は水素雰囲気下で行うが、この時の水素気圧の範囲は1〜100気圧の範囲から選択でき、好ましくは1〜5気圧である。
【0118】
反応終了後は、必要に応じて還元剤又は還元触媒の濾過、抽出、カラムクロマトグラフィや蒸留による分離、精製を行ってもよいし、上記の操作を行わずに引き続いて炭素−炭素二重結合の還元を行ってもよい。
【0119】
一般式(9)で表される化合物の炭素−炭素二重結合を還元し、一般式(7)で表される化合物へと変換する際に用いられる還元触媒としては、一般的に炭素−炭素多重結合の還元に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、Pd/C、Pd(OH)2/C、Pt/C、PtO2等が好適に使用でき、還元触媒の使用量は使用する溶媒の種類、反応の条件により異なるが、一般式(9)で表される化合物に対して、0.001〜1w/w倍、好ましくは0.01〜0.5w/w倍である。
【0120】
また、反応には通常溶媒が使用され、反応溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタン、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の非プロトン性溶媒やジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒やメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール系溶媒やアセトン、アセトニトリル、水、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル等が挙げられる。上記溶媒は単独で用いてもよいし、混合して用いてもよく、この場合、その混合比率に特に制限はない。上記溶媒のうち、好適なものはメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール等のアルコール系溶媒であり、最も好適なのものはエタノールである。
【0121】
反応での基質濃度は、溶媒に対する一般式(9)で表される化合物の濃度として、通常、30w/v%以下であるが、好ましくは20w/v%以下である。
【0122】
反応温度としては、−30℃から用いる溶媒の沸点の範囲から選択でき、好ましくは0℃〜60℃の範囲である。また、反応時間は通常、30分から48時間を要する。
【0123】
なお、反応は水素雰囲気下で行うが、この時の水素気圧の範囲は1〜100気圧の範囲から選択でき、好ましくは1〜5気圧である。
【0124】
反応終了後は、必要に応じて還元触媒を濾過又は溶媒を留去後、水に加えるか、又は、水を加えた後、トルエン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルムなどの有機溶媒で抽出、水洗浄、濃縮などの操作を経て一般式(7)で表される化合物を取得することができる。取得した化合物はカラムクロマトグラフィや蒸留によって分離、精製を行ってもよい。
【0125】
本工程における中間体である、一般式(9)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸エステル誘導体も本発明者らにより2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体製造における有用性が確認された新規化合物である。
【0126】
一般式(9)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸誘導体の置換基R1、R2、R3、R4、R5の具体例や好ましい例は、原料となる一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体に由来する。すなわち、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。具体的には、R1、R2、R4及びR5として、それぞれ、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、n−デシル基、ベンジル基、o−メトキシベンジル基、m−メトキシベンジル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、o−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、p−クロロベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−ニメトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基等が挙げられ、その中でも、R1及びR2のいずれか又は両方がメチル基又はエチル基であるのが好ましく、さらにはR1及びR2のいずれか又は両方がエチル基であるのがより好ましく、R1がメチル基で及びR2がエチル基であるのも好ましく、最も好ましいのはR1及びR2の両方がエチル基である。また、R4及びR5としてはそのいずれか又は両方が水素原子又はメチル基であるのが好ましく、さらにはR4及びR5のいずれか又は両方が水素原子であるのがより好ましく、最も好ましいのはR4及びR5の両方が水素原子である。R3としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロヘキシル基、n−へプチル基、シクロヘキシルメチル基、n−オクチル基、n−デシル基、ベンジル基、o−メトキシベンジル基、m−メトキシベンジル基、p−メトキシベンジル基、o−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、p−ニトロベンジル基、o−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、p−クロロベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−メチルベンジル基、フェニル基、o−メトキシフェニル基、m−メトキシフェニル基、p−ニメトキシフェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基、p−クロロフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルフェニル基、p−メチルフェニル基が挙げられ、そのなかでもメチル基又はフェニル基が好ましく、最も好ましいのはメチル基である。
【0127】
本工程において、一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の立体配置は一般式(9)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸エステル誘導体、そして一般式(7)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体に転写される。従って、一般式(9)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸エステル誘導体及び一般式(7)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体は2位の位置に不斉炭素中心を有し、R4とR5が異なる場合には3位の位置にも不斉炭素中心を有するが、本発明においては、光学活性体又はラセミ体のいずれもが本発明の範囲に含まれる。好ましいのは光学活性体であり、最も好ましいのは2位の位置の不斉炭素中心の絶対配置が(R)−体の化合物である。また、一般式(9)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸エステル誘導体は炭素−炭素二重結合部分に幾何異性を有するが、E体、Z体又はE体及びZ体の混合物、いずれもが本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0128】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0129】
(実施例1)
2−ホルミル酪酸エチルの製造
酪酸エチル232.3g及び蟻酸エチル444.5gを5Lセパラブルフラスコに秤量し、トルエン2000mLを加えて窒素雰囲気下とした。室温下で四塩化チタン754gを80分間かけて滴下し、室温下で30分撹拌した。トリエチルアミン485.7gを室温下で85分間かけて滴下し、室温下で70分間撹拌した。反応溶液を氷浴で冷却しながら蒸留水1300mLを50分間かけて滴下後、分液し、水層をトルエン2000mLで抽出した。トルエン層を混合し、蒸留水500mLで2回洗浄した後、減圧濃縮することにより2−ホルミル酪酸エチル191.2gを含む油状物901.3gを得た。なお、1H−NMRスペクトルから表題化合物とそのケト−エノール互変異性体との混合物(約6:4の混合比)として存在している。
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ0.97〜1.06(t、J=7.4Hz、3H)、1.29〜1.35(t、J=7.1Hz、3H)、2.09〜2.13(m、2H)、3.17〜3.22(d,t、J=2.4Hz、7.1、0.4H)、4.22〜4.28(q、J=7.1Hz、2H)、6.99〜7.02(d、J=11.4Hz、0.6H)、9.72(d、J=1.4Hz、0.4H)、11.38〜11.41(d、J=12.4Hz、0.6H)
(実施例2)
1−(1−ブテン−3−オキシ)−1−ブテン−2−カルボン酸エチルの製造
実施例1記載の方法によって得られた2−ホルミル酪酸エチル 117.1gを含有する油状物551.8g及び1−ブテン−3−オール 63g、塩化マグネシウム 155gをトルエン400mLに溶解し、室温で25時間攪拌した。溶液を桐山ロートでろ過し、濾液に蒸留水500mLを加えた。濃塩酸にてpH1に調整、分液し、トルエン層を蒸留水500mLで洗浄した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾別し溶媒をエバポレーターにて減圧濃縮することにより1−(1−ブテン−3−オキシ)−1−ブテン−2−カルボン酸エチル127.2gを含有する淡黄色油状物212.5gを得た。収率79%。
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ0.98〜1.02(t、J=7.6Hz、3H)、1.25〜1.29(t、J=7.1Hz、3H)、1.38(d、J=6.6Hz、3H)、2.24〜2.30(q、J=7.3Hz、2H)、4.15〜4.17(q、J=6.6Hz、2H)、4.39〜4.45(m、1H)、5.18〜5.21(d、J=10.5Hz、1H)、5.24〜5.28(d、J=17.5Hz、1H)、5.79〜5.87(m、1H)、7.33(s、1H)
(実施例3)
1−(1−ブテン−3−オキシ)−1−ブテン−2−カルボン酸エチルの製造
実施例1記載の方法に準じて得られた2−ホルミル酪酸エチル 3.0gを含有する油状物5.2g及び1−ブテン−3−オール3g、塩化マグネシウム 4gをトルエン40mLに溶解し、室温で32時間攪拌した。溶液に蒸留水20mLを加え、濃塩酸にてpH1に調整、分液し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、濾別し溶媒をエバポレーターにて減圧濃縮することにより1−(1−ブテン−3−オキシ)−1−ブテン−2−カルボン酸エチル3.2gを含有する淡黄色油状物8.2gを得た。収率77%。
【0130】
(実施例4)
(R)−2−エチル−2−ホルミル−3−ヘキセン酸エチルの製造
1−ブテン−3−オールの代わりに(R)−1−ブテン−3−オールを用いる以外は実施例2と同様にして、1−[(R)−1−ブテン−3−オキシ]−1−ブテン−2−カルボン酸エチルを含有する油状物を調製した。1L三口フラスコに、この1−[(R)−1−ブテン−3−オキシ]−1−ブテン−2−カルボン酸エチル41.7gを含有する油状物315.5g、水酸化マグネシウム12.3g及びトルエン100mLを混合し、100℃で24時間撹拌した。反応液を室温まで冷却後、桐山ロートでろ過し、濾液に蒸留水80mLを加えた。濃塩酸2.95gを加えてpH1.7に調整、分液し、トルエン層を蒸留水80mLで洗浄した後、減圧濃縮することにより(R)−2−エチル−2−ホルミル−3−ヘキセン酸エチル36.4g(光学純度84%e.e.)を含有する淡黄色油状物78.4gを得た。なお、生成物は幾何異性体、トランス体及びシス体の混合物であった。
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ0.84〜0.88(m、6H)、1.26〜1.32(m、3H)、1.60〜1.64(m、3H)、1.77〜1.91(m、2H)、2.47〜2.57(d、J=6.8、7.3、2H)、4.20〜4.26(q、J=7.3、2H)、5.25〜5.54(m、2H)、9.79(s、1H)
(実施例5)
(S)−2−エチル−2−ホルミル−3−ヘキセン酸エチルの製造
1−ブテン−3−オールの代わりに(S)−1−ブテン−3−オールを用いる以外は実施例2と同様にして、1−[(S)−1−ブテン−3−オキシ]−1−ブテン−2−カルボン酸エチルを含有する油状物を調製した。この1−[(S)−1−ブテン−3−オキシ]−1−ブテン−2−カルボン酸エチル175mgを含有する油状物199mg、塩化マグネシウム95mg及びトルエン2mLを混合し、100℃で26.5時間撹拌した。室温まで冷却後、濾過、トルエンで洗浄した後、濾液を減圧濃縮することにより(S)−2−エチル−2−ホルミル−3−ヘキセン酸エチル117mg(光学純度82%e.e.)を含む淡黄色油状物を得た。
【0131】
(実施例6)
(S)−2−エチル−2−ホルミル−3−ヘキセン酸エチルの製造
1−ブテン−3−オールの代わりに(S)−1−ブテン−3−オールを用いる以外は実施例2と同様にして、1−[(S)−1−ブテン−3−オキシ]−1−ブテン−2−カルボン酸エチルを含有する油状物を調製した。この1−[(S)−1−ブテン−3−オキシ]−1−ブテン−2−カルボン酸エチル175mgを含有する油状物199mg、臭化マグネシウム184mg及びトルエン2mLを混合し、100℃で7.5時間撹拌した。室温まで冷却後、濾過、トルエンで洗浄した後、濾液を減圧濃縮することにより(S)−2−エチル−2−ホルミル−3−ヘキセン酸エチル10mgを含む淡黄色油状物を得た。
【0132】
(実施例7)
(S)−2−エチル−2−ホルミル−3−ヘキセン酸エチルの製造
1−ブテン−3−オールの代わりに(S)−1−ブテン−3−オールを用いる以外は実施例2と同様にして、1−[(S)−1−ブテン−3−オキシ]−1−ブテン−2−カルボン酸エチルを含有する油状物を調製した。この1−[(S)−1−ブテン−3−オキシ]−1−ブテン−2−カルボン酸エチル100mg、2,6−ジメチルフェノール61mg及びトルエン1mLを混合し、100℃で28.5時間撹拌した。室温まで冷却後、濾過、トルエンで洗浄した後、濾液を減圧濃縮することにより(S)−2−エチル−2−ホルミル−3−ヘキセン酸エチル57mg(光学純度84%e.e.)を含む淡黄色油状物を得た。
【0133】
(実施例8)
(S)−2−エチル−2−ホルミル−3−ヘキセン酸エチルの製造
1−ブテン−3−オールの代わりに(S)−1−ブテン−3−オールを用いる以外は実施例2と同様にして、1−[(S)−1−ブテン−3−オキシ]−1−ブテン−2−カルボン酸エチルを含有する油状物を調製した。この1−[(S)−1−ブテン−3−オキシ]−1−ブテン−2−カルボン酸エチル100mg、アルミニウムトリイソプロポキシド102mg及びトルエン1mLを混合し、90℃で70.5時間撹拌した。室温まで冷却後、濾過、トルエンで洗浄した後、濾液を減圧濃縮することにより(S)−2−エチル−2−ホルミル−3−ヘキセン酸エチル51mg(光学純度87%e.e.)を含む淡黄色油状物を得た。
【0134】
(実施例9)
2−エチル−2−ホルミル−3−ヘキサン酸エチルの製造
光学活性1−[(R)−1−ブテン−3−オキシ]−1−ブテン−2−カルボン酸エチルの代わりに、実施例3で得られた1−(1−ブテン−3−オキシ)−1−ブテン−2−カルボン酸エチルを用いる以外は実施例4と同様にして作成した、2−エチル−2−ホルミル−3−ヘキセン酸エチル200mg、酸化白金9mg、塩化第二鉄32.5mgをエタノール2mlに溶解し、水素1気圧下、25℃で20時間攪拌した。反応混合物を酢酸エチルにて抽出した。有機相を乾燥後、減圧濃縮することにより、表題化合物を無色液体として194mg得た。1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ0.84(t、J=7.3Hz、3H)、0.88(t、J=7.3Hz,3H)、1.10−1.26(m、4H),1.29(t、J=7.1Hz、3H),1.70−1.91(m、4H)、4.24(q、J=7.3Hz,2H),9.82(s、1H)
(実施例10)
2−エチル−2−ヒドロキシメチル−3−ヘキセン酸エチルの製造
酢酸0.50g、THF10ml混合溶液を0℃に氷冷し、ここに水素化ホウ素ナトリウム0.32gを加えた。さらに0℃で30分間攪拌後、実施例9と同様の方法で得られた2−エチル−2−ホルミル−3−ヘキセン酸エチル4.07gのTHF10ml溶液を滴下したのち、室温で2時間攪拌した。水を加え反応を停止し、酢酸エチル抽出した。有機相を乾燥後、減圧濃縮し粗生成物を得た。これをシリカゲルカラムにより精製し、表題化合物を0.27g得た。1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ0.84〜0.88(t、J=7.6Hz、3H)、1.26〜1.52(t、J=7.2Hz、3H)、1.54〜1.71(m、5H)、2.17〜2.40(m、3H)、3.61〜3.72(m、2H)、4.15〜4.20(q、J=7.1Hz、2H)、5.32〜5.54(m、2H)
(実施例11)
2−エチル−2−ヒドロキシメチル−3−ヘキセン酸エチルの製造
50mLナス型フラスコに酢酸0.50g及びTHF10mLを加えて氷冷し、水素化ホウ素ナトリウム0.32g、実施例9と同様の方法で得られた2−エチル−2−ホルミル−3−ヘキセン酸エチル4.07gのTHF5mL溶液を順次加え、氷冷下で2時間撹拌した。反応液に蒸留水、酢酸エチルを加えて抽出し、酢酸エチル層を減圧濃縮した。減圧濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒 n−ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で分離精製することにより2−エチル−2−ヒドロキシメチル−3−ヘキセン酸エチル2.97gを得た。
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ0.84〜0.88(t、J=7.6Hz、3H)、1.26〜1.52(t、J=7.2Hz、3H)、1.54〜1.71(m、5H)、2.17〜2.40(m、3H)、3.61〜3.72(m、2H)、4.15〜4.20(q、J=7.1Hz、2H)、5.32〜5.54(m、2H)
(実施例12)
(R)−2−エチル−2−ヒドロキシメチルヘキサン酸エチルの製造
2L四つ口フラスコに含水ラネーニッケル(川研ファインケミカル株式会社製)117.5gを秤取り、実施例4で得られた(R)−2−エチル−2−ホルミル−3−ヘキセン酸エチル36.4g(光学純度84%e.e.)を含有する淡黄色油状物77.1g、トリエチルアミン71.6mL及びエタノール716mLを加え、室温、常圧水素雰囲気下で6時間撹拌した。反応容器を窒素雰囲気下とした後に、ラネーニッケルを濾過、蒸留水100mLで一回及び酢酸エチル200mLで2回洗浄した。濾液を減圧濃縮した後、残渣に酢酸エチル150mL及び1M−塩酸50mLを加えて抽出し、酢酸エチル層を蒸留水20mLで洗浄した。この酢酸エチル層を減圧濃縮することにより、(R)−2−エチル−2−ヒドロキシメチルヘキサン酸エチル32.6g(光学純度83%e.e.)を含有する油状物72.9gを得た。
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ0.81〜0.95(m、6H)、1.19〜1.33(m、5H)、1.52〜1.68(m、4H)、2.18〜2.22(t、J=6.6Hz、1H)、3.63〜3.71(d,d、J=1.2Hz、6.6Hz、2H)、4.14〜4.20(q、J=7.1Hz、2H)
(参考例1)
(R)−2−エチル−2−ヒドロキシメチルヘキサン酸の製造
実施例12で得られた(R)−2−エチル−2−ヒドロキシメチルヘキサン酸エチル32.4g(光学純度83%e.e.)を含有する油状物72.5g及び水酸化リチウム一水和物33.6gを1L三口フラスコに秤取り、蒸留水320mL、エタノール320mLを加え、50℃で18時間撹拌した。反応溶液を室温まで冷却後、減圧濃縮し、濃縮残渣に酢酸エチル250mL、蒸留水200mLを加えて抽出、分液した。水層に濃塩酸を加えてpH2.0に調整し、酢酸エチル200mLで三回抽出した。酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄し、減圧濃縮することにより(R)−2−エチル−2−ヒドロキシメチルヘキサン酸28.4g(光学純度82%e.e.)を含む油状物63.4gを得た。
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ0.91(m、6H)、1.24〜1.33(m、4H)、1.61〜1.71(m、4H)、3.71(d、J=1.0Hz、2H)
(参考例2)
(S)−2−エチル−2−ブロモメチルヘキサン酸の製造
参考例1で得られた(R)−2−エチル−2−ヒドロキシメチルヘキサン酸5.36g(光学純度98%e.e.)、48%臭化水素水溶液75mL及び濃硫酸12.5mLを混合し、100℃で6時間撹拌した。室温まで冷却後、飽和食塩水50mLを加え、酢酸エチル100mLで三回抽出し、酢酸エチル層を飽和食塩水で二回洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮することにより(S)−2−エチル−2−ブロモメチルヘキサン酸5.01gを含む淡黄色油状物6.35g(光学純度97%e.e.)を得た。
1H−NMR(400MHz、CDCl3)δ0.84〜1.15(m、6H)、1.15〜1.36(m、4H)、1.66〜1.78(m、4H)、3.58(s、2H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1);
【化1】

(式中、R1及びRはそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、R1及びRは互いに同じ又は異なっていてもよい)で表される2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体を触媒存在下、一般式(2);
【化2】

(式中、Rは置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、R4及びRはそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、R4及びR5は互いに同じ又は異なっていてもよい。*は不斉炭素中心を表す。)で表されるアルコール誘導体と反応させることを特徴とする一般式(3);
【化3】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、*は前記に同じ。)で表されるビニルエーテル誘導体の製造方法。
【請求項2】
がエチル基である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
がエチル基である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
一般式(2)で表されるアルコール誘導体として、不斉炭素中心の絶対配置が(R)−体又は(S)−体である光学活性なアルコール誘導体を用いる請求項1〜3に記載の製造方法。
【請求項5】
がメチル基である請求項1〜4に記載の製造方法。
【請求項6】
とRのいずれか又は両方が水素原子である請求項1〜5に記載の製造方法。
【請求項7】
触媒としてルイス酸を用いる請求項1〜6に記載の製造方法。
【請求項8】
ルイス酸がマグネシウム化合物である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
触媒としてスルホン酸類を用いる請求項1〜6に記載の製造方法。
【請求項10】
一般式(1)で表される2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体が、一般式(4);
【化4】

(式中、R1及びR2はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、R1及びR2は互いに同じ又は異なっていてもよい。)で表されるカルボン酸エステル誘導体を、チタン化合物及び有機塩基存在下で一般式(5);
【化5】

(式中、R6は炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表す。)で表される蟻酸エステル誘導体と反応させることにより得られることを特徴とする請求項1〜9に記載の製造方法。
【請求項11】
一般式(3);
【化6】

(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、R1及びR2は互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表されるビニルエーテル誘導体を転位反応させることを特徴とする一般式(6)
【化7】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、*は前記に同じ。)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の製造方法。
【請求項12】
一般式(3)で表されるビニルエーテル誘導体から一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体を製造する工程において、転位反応触媒存在下にて反応を行うことを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
転位反応触媒が金属化合物である請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
金属化合物がマグネシウム化合物である請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
転位反応触媒がブレンステッド酸である請求項12に記載の製造方法。
【請求項16】
1がエチル基である請求項11〜15に記載の製造方法。
【請求項17】
2がエチル基である請求項11〜16に記載の製造方法。
【請求項18】
一般式(3)で表されるビニルエーテル誘導体として、不斉炭素中心の絶対配置が(R)−体又は(S)−体である光学活性なビニルエーテル誘導体を用いる請求項11〜17に記載の製造方法。
【請求項19】
3がメチル基である請求項11〜18に記載の製造方法。
【請求項20】
4とR5のいずれか又は両方が水素原子である請求項11〜19に記載の製造方法。
【請求項21】
一般式(3)で表されるビニルエーテル誘導体が請求項1に記載の方法により得られることを特徴とする請求項11〜20に記載の製造方法。
【請求項22】
一般式(6);
【化8】

(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体を、還元剤及び/又は還元触媒で処理することにより、炭素−炭素二重結合とホルミル基を還元することを特徴とする一般式(7)
【化9】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、*は前記に同じ。)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル誘導体の製造方法。
【請求項23】
一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の炭素−炭素二重結合及びホルミル基を一工程で還元することを特徴とする請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
還元触媒としてラネーニッケルを用いて水素接触還元することを特徴とする請求項23に記載の製造方法。
【請求項25】
三級アミン共存下で反応を行うことを特徴とする請求項24に記載の製造方法。
【請求項26】
一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体の炭素−炭素二重結合を還元することにより一般式(8);
【化10】

(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表される2−置換−2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体を得た後に、ホルミル基を還元することを特徴とする請求項22に記載の製造方法。
【請求項27】
一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体のホルミル基を還元することにより一般式(9);
【化11】

(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、若しくは置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸エステル誘導体を得た後に、炭素−炭素二重結合を還元することを特徴とする請求項22に記載の製造方法。
【請求項28】
還元触媒として金属触媒を用いた水素接触還元を行う請求項22に記載の製造方法。
【請求項29】
還元剤が水素化金属化合物である請求項26〜28に記載の製造方法。
【請求項30】
水素雰囲気下で反応を行うことを特徴とする請求項22〜29に記載の製造方法。
【請求項31】
1がエチル基である請求項22〜30に記載の製造方法。
【請求項32】
2がエチル基である請求項22〜31に記載の製造方法。
【請求項33】
一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体として、不斉炭素中心の絶対配置が(2R)−体又は(2S)−体である光学活性2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体を用いる請求項22〜32に記載の製造方法。
【請求項34】
3がメチル基である請求項22〜33に記載の製造方法。
【請求項35】
4とR5のいずれか又は両方が水素原子である請求項22〜34に記載の製造方法。
【請求項36】
一般式(6)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和エステル誘導体が、請求項11に記載の方法により得られたものであることを特徴とする請求項22〜35に記載の製造方法。
【請求項37】
一般式(3);
【化12】

(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、若しくは置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表されるビニルエーテル誘導体。
【請求項38】
不斉炭素中心の絶対配置が(R)−又は(S)−体の光学活性体である請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
1がエチル基である請求項37又は38に記載の化合物。
【請求項40】
2がエチル基である請求項37〜39に記載の化合物。
【請求項41】
3がメチル基である請求項37〜40に記載の化合物。
【請求項42】
4とR5のいずれか又は両方が水素原子である請求項37〜41に記載の化合物。
【請求項43】
一般式(6);
【化13】

(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、若しくは置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表される2−置換−2−ホルミル不飽和カルボン酸エステル誘導体。
【請求項44】
不斉炭素中心の絶対配置が(2R)−体又は(2S)−体の光学活性体である請求項43に記載の化合物。
【請求項45】
1がエチル基である請求項43又は44に記載の化合物。
【請求項46】
2がエチル基である請求項43〜45に記載の化合物。
【請求項47】
3がメチル基である請求項43〜46に記載の化合物。
【請求項48】
4とR5のいずれか又は両方が水素原子である請求項43〜47に記載の化合物。
【請求項49】
一般式(9);
【化14】

(式中、R1、R2、R4及びR5はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R3は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表される2−置換−2−ヒドロキシメチル不飽和カルボン酸エステル誘導体。
【請求項50】
不斉炭素中心の絶対配置が(2R)−又は(2S)−体の光学活性体である請求項49に記載の化合物。
【請求項51】
1がエチル基である請求項49又は50に記載の化合物。
【請求項52】
2がエチル基である請求項49〜51に記載の化合物。
【請求項53】
3がメチル基である請求項49〜52に記載の化合物。
【請求項54】
4とR5のいずれか又は両方が水素原子である請求項49〜53に記載の化合物。
【請求項55】
一般式(10);
【化15】

(式中、R7、R10及びR11はそれぞれ水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、若しくは置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、それらは互いに同じ又は異なっていてもよく、R8は水素原子、置換基を有してもよい炭素数4〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、R9は置換基を有してもよい炭素数1〜10の環状若しくは非環状のアルキル基、置換基を有してもよい炭素数7〜10のアラルキル基、又は置換基を有してもよい炭素数6〜10のアリール基を表し、*は不斉炭素中心を表す。)で表される2−置換−2−ホルミルカルボン酸エステル誘導体。
【請求項56】
不斉炭素中心の絶対配置が(2R)−又は(2S)−体の光学活性体である請求項55に記載の化合物。
【請求項57】
7がエチル基である請求項55又は56に記載の化合物。
【請求項58】
8がブチル基である請求項55〜57に記載の化合物。
【請求項59】
9がメチル基である請求項55〜58に記載の化合物。
【請求項60】
10とR11のいずれ又は両方が水素原子である請求項55〜59に記載の化合物。

【公開番号】特開2006−219404(P2006−219404A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33230(P2005−33230)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】