説明

2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミンの低圧製造法

本明細書中ではニッケルと炭素に支持されたパラジウムとの複合触媒系、または単独のパラジウムをドープしたラネー(Raney)型触媒を用いた1−アミノ−2−シアノ−1−シクロペンテンの低圧水素化による2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミンの製造方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、炭素に支持されたパラジウムと組み合わせてニッケルを含む複合触媒系または単独のパラジウムをドープしたラネー(Raney)型触媒による2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミン(AMC)への1−アミノ−2−シアノ−1−シクロペンテン(CPI)の選択的低圧水素化について記載している。
【背景技術】
【0002】
2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミン(AMC)は、米国特許公報(特許文献1)中でラジール(Lazier)およびホーク(Howk)により最初に報告され、同氏等はアルミナに支持されたニッケル触媒または細かくした非支持コバルト触媒のいずれかを用いて2000〜3000psiのH2、120℃でCPIを水素化することによりこのジアミンを調製した。Niを用いた収率は36%であり、またCoを用いた収率は59%であった。第VIII族金属触媒の存在下での反応の場合は、最低でも1500psiの水素ガス圧が使用された。
【0003】
(特許文献2)中でシャベール(Chabert)は、ニッケル22〜43%、クロム0.2〜1.8%、鉄1.5〜5%を含有し、残りがアルミニウムと付随する不純物である粉末ラネー型触媒の存在下でのCPIの触媒による水素化の方法について記載している。この方法は、93℃および1160〜1305psiの水素圧において水性の水酸化ナトリウムおよびエタノール中で行われる。このAMCの収率は54%である。
【0004】
(非特許文献1)は、炭素に支持されたパラジウムとニッケルの組合せを用いた、Bocで保護したアミンの存在下でのニトリルの還元の方法を開示している。この参考文献は、2−イミノニトリル類をそれらの対応するジアミン類に還元するためにこれらの触媒の組合せを使用することについては開示しておらず、またこのような転化用にパラジウムをドープしたラネー型ニッケルを使用することについても開示していない。
【0005】
AMCは、ポリウレタン架橋剤用の、ポリアミド変性剤用の、金属キレート剤用のエポキシ硬化剤の配合、および多くの他の用途に有用な高価な分子である。AMCは、様々な触媒による水素化法によってCPIから生産されてきた。これらの従来技術の方法の大部分は、高圧の水素、大量の腐食性水酸化ナトリウムを必要とするか、あるいは低いAMC純度および/または収率に帰結する。
【0006】
【特許文献1】米国特許第2,292,949号明細書
【特許文献2】GB1397576号明細書
【非特許文献1】クランケおよびギルバート(Klenke and Gilbert)、Journal of Organic Chemistry,(2001),66,2480〜2483
【非特許文献2】トンプソン・Q・E(Thompson,Q.E.)、J.Am.Chem.Soc.,(1958),80,5483〜5487
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、多量の水酸化ナトリウム水溶液を使用せずに、経済的でありかつ比較的低圧の水素を用いるAMCの高収率製造方法を提供することである。AMC製造に対してこれらの改善を組み合わせることによって、より容易な操作およびより低い全体的生産コストを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミンを調製するための方法を開示し、この方法は、(i)不活性ガスでパージし、約25℃〜約50℃の温度において水素によって約50〜500psiまで加圧した容器中で適切な溶媒と触媒系を組み合わせることにより活性化された触媒を調製する工程であって、上記触媒系がニッケルと炭素に支持されたパラジウムとを含むか、またはパラジウムをドープしたラネー(Raney)型ニッケルを含む、工程、(ii)上記活性化された触媒を、1−アミノ−2−シアノ−1−シクロペンテン、少なくとも等モル量の無水アンモニア、および、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される無機塩基の水溶液と接触させる工程、(iii)約50℃〜約150℃の温度まで、および約500psi〜約1500psiの水素圧力まで容器の温度を上昇させることにより容器を加圧し、この温度と圧力を粗2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミンを得るのに十分な時間維持する工程、(iv)粗2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミン生成物を分離する工程、および(v)任意選択的に粗2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミンを精製してより純粋な2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミンを得る工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書では、(i)ニッケルと炭素に支持されたパラジウムとの組合せ、あるいは(ii)パラジウムをドープしたラネー型ニッケルを含む二元または複合触媒系の存在下でのCPIのAMCへの低圧水素化の方法を開示する。この方法は、約500〜約1500psiの圧力のH2、約50℃〜約150℃の温度において、付加的なアンモニアおよび水性無機塩基と共に約1〜約12時間行う。
【0010】
本明細書中で使用する触媒はスラリー型粒子であり、CPIを工程に投入するに先立って適切な溶媒系中で約50〜約500psiのH2圧力、約25〜約50℃において約1〜4時間活性化しなければならない。出発2−イミノニトリル、すなわち1−アミノ−2−シアノ−1−シクロペンテン(CPI)は、塩基が触媒するアジポニトリルの環化により製造される。この方法は(非特許文献2)に開示されている。トルエンなどの非極性芳香族溶媒中でアジポニトリルをナトリウムt−ブトキシド(1:1モル当量)などの立体障害を有する塩基で処理することにより、約75%の収率および約97%を超える純度でCPIが生成される。
【0011】
CPIの低圧水素化に適した触媒には、ニッケル含有触媒、好ましくは非支持金属ニッケルまたは骨格ニッケル(例えばデグッサ(Degussa)Ni B113W、ラネーNi 2800)と炭素に支持されたパラジウム(例えばヘレウス(Heraeus)K0236、炭素支持10%パラジウム)約5〜約10重量%との組合せ、あるいはパラジウムをドープしたラネーNi 2000の単独触媒系が挙げられる。PdをドープしたラネーNi触媒が好ましい。
【0012】
炭素支持パラジウムと組み合わせたニッケルの触媒系を使用する場合、炭素支持パラジウム触媒の使用量はニッケル触媒に対して約5〜20重量%であり、これはNiに対してPd約0.25〜2重量%に相当する。パラジウムをドープしたラネーニッケルの単独触媒系ではパラジウムのドープ量は、ニッケル含量に対して約0.25〜1.0重量%であり、約0.5重量%が好ましい。スラリー触媒は粉末、顆粒、または他の比較的微細な粒子の形態であることができ、一方、固定床触媒はより大きな顆粒、押出物、錠剤、球体などとして使用することができる。CPIに対する総触媒使用量は10gのCPI当たり触媒約1gであるが、転化速度を増すにはより多い使用量が必要なこともある。両触媒系の場合、この触媒は使用に先立って、オートクレーブなどの反応容器中で、それを水、非プロトン性極性有機溶媒、非プロトン性極性有機溶媒の組合せ、または非プロトン性極性有機溶媒と水の組合せ、好ましくはジオキサン/脱イオン水(約3:1v/v)の溶媒ブレンド物と組み合わせて、温度を約25℃から約50℃まで上昇させ、2体積量のN2でパージし、次いで約50psi〜約500psiまで圧力まで水素を加えることによって活性化する。これらの条件を約1〜4時間保って触媒系を活性化させる。
【0013】
触媒系の活性化後、低圧水素化を一般には約500psi〜約1500psiの間の水素の存在下において反応容器中で行う。窒素またはアルゴンを最初に反応容器から空気を除去するために使用し、またニッケル触媒上の微量の酸素の影響をできるだけ少なくするために反応の間ずっと加えることができる。この触媒を、CPI、少なくとも当モル量の無水アンモニア(NH3/CPIのモル比約5/1)、および無機塩基水溶液と接触させる。好適な塩基には、ナトリウム、カリウム、およびリチウムの水酸化物が挙げられる。
【0014】
水素化を行う反応容器は、容器の温度を約50℃〜約150℃の温度まで、また約500psi〜約1500psiの水素圧まで上昇させることによって加圧される。この温度および水素圧は、触媒寿命を持続させ、またAMCへの転化率およびAMCに対する選択率を増すために反応を通じて維持される。約50℃〜約150℃の温度が水素化の際のCPIのAMCへの転化にとって好ましい。より高い約150℃〜約200℃の温度は、より高い許容できない濃度の第二および第三アミンを生ずる。
【0015】
本発明の方法は適切な溶媒中で行われる。好適な溶媒には水、非プロトン性極性有機溶媒、非プロトン性極性有機溶媒の組合せ、または非プロトン性極性有機溶媒と水の組合せが挙げられる。これらの例には、ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、水、およびこれらの組合せが挙げられるがそれらには限定されない。約1:1v/vのジオキサン/水ないし約5:1v/vのジオキサン/水のジオキサン/水の組合せを含む溶液が好ましく、最も好ましくは約3:1v/vのジオキサン/水である。
【0016】
この方法は一般には攪拌バッチ方式(スラリー触媒)で行われ、その触媒を上記手順で活性化した後にそのオートクレーブにCPI、50%無機塩基水溶液(CPIに対して約2重量%の溶液)を装入する。この無機塩基水溶液は、別個に水の添加を伴う無機塩基として加えることもできる。この方法をバッチ方式で行う場合、触媒活性化のステップ(I)の後、だがその活性化触媒をCPI、無水アンモニア、および無機塩基水溶液と接触させる前に、その温度および圧力を周囲条件にする。
【0017】
本発明の方法に使用するCPIは、非極性芳香族溶媒中でアジポニトリルをモル当量の立体障害を有する塩基と接触させることによって生成することができる。そのCPIを単離し、ジオキサン/水の溶液に溶解することができる。
【0018】
AMCの精製は、反応混合物をN2またはアルゴンなどの不活性ガス中での真空濾過、続いて真空蒸留により触媒から分離することによって行うことができ、また達成される。AMCは、例えばポリウレタン架橋剤用、ポリアミド変性剤用、金属キレート剤用などのエポキシ硬化剤の配合において有用な分子である。
【実施例】
【0019】
(実施例1:ニッケルとパラジウム/炭素との混合物を用いた1−アミノ−2−シアノ−1−シクロペンテン(CPI)の2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミン(AMC)への水素化)
1000ccオートクレーブに、液状デグッサニッケル触媒(B113W)を30グラム、ヘレウスK023の10%Pd/C触媒を5グラム、1,4−ジオキサンを480mL、および脱イオン水を160mL装入した。この混合物をオートクレーブ中で2体積量の窒素でN2パージした。次いでこの混合物を300psi、35℃において水素で3時間活性化させた。この混合物を室温まで冷却し、ガス抜きし、2体積量の窒素でパージした。CPIを50グラム、50%NaOH水溶液を1グラム、および無水アンモニアを75グラム加えた。この反応物を75℃、1500psiの水素で、反応の間ずっと水素を再加圧して圧力を1500psi±100psiに保ちながら12時間攪拌した。12時間の終りに反応物を冷却し、ガス抜きし、脱イオン水で洗い流した。この反応混合物をN2雰囲気下で目の粗い焼結ガラスフィルター漏斗を通して濾過し、透明で粘性の黄色の油になるまで真空中で濃縮した。この油を、留分分割器を備えたビグローカラム(Vigreaux column)を用いて蒸留して48℃、圧力4mmHgで生成物を回収した。この生成物のガスクロマトグラフィによる純度は>99%。生成物の収率は65%であった。
【0020】
(実施例2:パラジウム助触ラネー2000ニッケルを用いたCPIのAMCへの水素化)
触媒が0.5重量%のパラジウム助触ラネーNi 2000であることを除いて実施例1と同じ触媒前処理を行った。10グラムの出発CPIを加えた1グラムの触媒を加熱し、1500psiのH2(再加圧を伴う)および過剰のNH3と共に150℃で6時間攪拌した。ガスクロマトグラフィの結果は、転化率100%およびAMCに対する選択率>95%を示した。
【0021】
(比較例1:Niを加えないことの影響を示すための5%Pd/Cを用いたCPIのAMCへの水素化)
100ccオートクレーブに、ジオキサンを50mL、DI水を15mL、および5%ヘレウスK0203(Pd/C)を2グラム装入した。この混合物をH2により300psiまで35℃で3時間加圧した。この混合物を室温まで冷却し、ガス抜きし、次いでCPIを5g、続いて無水アンモニアを4g加えた。この容器を150℃でH2により1500psiに加圧(必要に応じて再加圧する)し6時間加熱した。次いでこの混合物を室温まで冷却し、ガス抜きし、3体積量のN2でパージし、ガスクロマトグラフィにより分析した。この生成物はCPIが92%未反応であり、AMCが0%であった。
【0022】
(比較例2:Pd/Cを加えないことの影響を示すためのNiを用いたCPIのAMCへの水素化)
100ccオートクレーブに、ジオキサンを50mL、DI水を15mL、およびデグッサ−ヒュルス(Degussa−Huls)B111Wのニッケルを2グラム装入した。この混合物をH2で300psiまで35℃で3時間加圧した。この混合物を室温まで冷却し、ガス抜きし、次いでCPIを5g、続いて無水アンモニアを4g加えた。この容器を150℃でH2により1500psiに加圧(必要に応じて再加圧する)し、6時間加熱した。次いでこの混合物を室温まで冷却し、ガス抜きし、3体積量のN2でパージし、ガスクロマトグラフィにより分析した。この生成物は95%未反応のCPI、および0%のAMCを含有した。
【0023】
(比較例3:Niを加えず、溶媒混合物をメタノールに変え、温度と圧力を下げることの影響を示すための5%Pd/Cを用いたCPIのAMCへの水素化)
100ccオートクレーブに5gのCPIを、25mLのメタノール、1gのNH3、および1gの5%Pd/CのヘレウスK0227触媒と共に装入した。このオートクレーブをN2で3回パージし、次いで60℃まで、また300psiのH2で6時間加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、N2で3回パージし、オートクレーブから吸引して取り出した。その生成物のガスクロマトグラフィの結果は、99%未反応のCPIを示した。
【0024】
(比較例4:Pdを加えず、溶媒混合物をメタノールに変え、圧力を下げることの影響を示すためのNiを用いたCPIのAMCへの水素化)
比較例3と同じ手順および設備を使用し、メタノール50mL中1時間の5gのCPI、0.2gのデグッサ−ヒュルスB111Wのニッケルスラリー、150℃、1000psiのH2、および1gのNH3であった。ガスクロマトグラフィの結果は、主に未反応のCPIであり、AMCの形跡は少しもなかった。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、炭素に支持されたパラジウムと組み合わせてニッケルを含む複合触媒系または単独のパラジウムをドープしたラネー(Raney)型触媒による2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミン(AMC)への1−アミノ−2−シアノ−1−シクロペンテン(CPI)の選択的低圧水素化について記載している。
【背景技術】
【0002】
2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミン(AMC)は、米国特許公報(特許文献1)中でラジール(Lazier)およびホーク(Howk)により最初に報告され、同氏等はアルミナに支持されたニッケル触媒または細かくした非支持コバルト触媒のいずれかを用いて2000〜3000psiのH2、120℃でCPIを水素化することによりこのジアミンを調製した。Niを用いた収率は36%であり、またCoを用いた収率は59%であった。第VIII族金属触媒の存在下での反応の場合は、最低でも1500psiの水素ガス圧が使用された。
【0003】
(特許文献2)中でシャベール(Chabert)は、ニッケル22〜43%、クロム0.2〜1.8%、鉄1.5〜5%を含有し、残りがアルミニウムと付随する不純物である粉末ラネー型触媒の存在下でのCPIの触媒による水素化の方法について記載している。この方法は、93℃および1160〜1305psiの水素圧において水性の水酸化ナトリウムおよびエタノール中で行われる。このAMCの収率は54%である。
【0004】
(非特許文献1)は、炭素に支持されたパラジウムとニッケルの組合せを用いた、Bocで保護したアミンの存在下でのニトリルの還元の方法を開示している。この参考文献は、2−イミノニトリル類をそれらの対応するジアミン類に還元するためにこれらの触媒の組合せを使用することについては開示しておらず、またこのような転化用にパラジウムをドープしたラネー型ニッケルを使用することについても開示していない。
【0005】
AMCは、ポリウレタン架橋剤用の、ポリアミド変性剤用の、金属キレート剤用のエポキシ硬化剤の配合、および多くの他の用途に有用な高価な分子である。AMCは、様々な触媒による水素化法によってCPIから生産されてきた。これらの従来技術の方法の大部分は、高圧の水素、大量の腐食性水酸化ナトリウムを必要とするか、あるいは低いAMC純度および/または収率に帰結する。
【0006】
【特許文献1】米国特許第2,292,949号明細書
【特許文献2】GB1397576号明細書
【非特許文献1】クランケおよびギルバート(Klenke and Gilbert)、Journal of Organic Chemistry,(2001),66,2480〜2483
【非特許文献2】トンプソン・Q・E(Thompson,Q.E.)、J.Am.Chem.Soc.,(1958),80,5483〜5487
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、多量の水酸化ナトリウム水溶液を使用せずに、経済的でありかつ比較的低圧の水素を用いるAMCの高収率製造方法を提供することである。AMC製造に対してこれらの改善を組み合わせることによって、より容易な操作およびより低い全体的生産コストを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミンを調製するための方法を開示し、この方法は、(i)不活性ガスでパージし、25℃〜50℃の温度において水素によって50〜500psi(344〜3447kPa)まで加圧した容器中で適切な溶媒と触媒系を組み合わせることにより活性化された触媒を調製する工程であって、上記触媒系がニッケルと炭素に支持されたパラジウムとを含むか、またはパラジウムをドープしたラネー(Raney)型ニッケルを含む、工程、(ii)上記活性化された触媒を、1−アミノ−2−シアノ−1−シクロペンテン、少なくとも等モル量の無水アンモニア、および、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される無機塩基の水溶液と接触させる工程、(iii)50℃〜150℃の温度まで、および500psi(3447kPa)〜1500psi(10342kPa)の水素圧力まで容器の温度を上昇させることにより容器を加圧し、この温度と圧力を粗2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミンを得るのに十分な時間維持する工程、(iv)粗2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミン生成物を分離する工程、および(v)任意選択的に粗2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミンを精製してより純粋な2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミンを得る工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書では、(i)ニッケルと炭素に支持されたパラジウムとの組合せ、あるいは(ii)パラジウムをドープしたラネー型ニッケルを含む二元または複合触媒系の存在下でのCPIのAMCへの低圧水素化の方法を開示する。この方法は、500〜1500psi(3447〜10342kPa)の圧力のH、50℃〜150℃の温度において、付加的なアンモニアおよび水性無機塩基と共に1〜12時間行う。
【0010】
本明細書中で使用する触媒はスラリー型粒子であり、CPIを工程に投入するに先立って適切な溶媒系中で50〜500psi(344〜3447kPa)のH圧力、25〜50℃において1〜4時間活性化しなければならない。出発2−イミノニトリル、すなわち1−アミノ−2−シアノ−1−シクロペンテン(CPI)は、塩基が触媒するアジポニトリルの環化により製造される。この方法は(非特許文献2)に開示されている。トルエンなどの非極性芳香族溶媒中でアジポニトリルをナトリウムt−ブトキシド(1:1モル当量)などの立体障害を有する塩基で処理することにより、約75%の収率および97%を超える純度でCPIが生成される。
【0011】
CPIの低圧水素化に適した触媒には、ニッケル含有触媒、好ましくは非支持金属ニッケルまたは骨格ニッケル(例えばデグッサ(Degussa)Ni B113W、ラネーNi 2800)と炭素に支持されたパラジウム(例えばヘレウス(Heraeus)K0236、炭素支持10%パラジウム)5〜10重量%との組合せ、あるいはパラジウムをドープしたラネーNi 2000の単独触媒系が挙げられる。PdをドープしたラネーNi触媒が好ましい。
【0012】
炭素支持パラジウムと組み合わせたニッケルの触媒系を使用する場合、炭素支持パラジウム触媒の使用量はニッケル触媒に対して5〜20重量%であり、これはNiに対してPd0.25〜2重量%に相当する。パラジウムをドープしたラネーニッケルの単独触媒系ではパラジウムのドープ量は、ニッケル含量に対して0.25〜1.0重量%であり、0.5重量%が好ましい。スラリー触媒は粉末、顆粒、または他の比較的微細な粒子の形態であることができ、一方、固定床触媒はより大きな顆粒、押出物、錠剤、球体などとして使用することができる。CPIに対する総触媒使用量は10gのCPI当たり触媒1gであるが、転化速度を増すにはより多い使用量が必要なこともある。両触媒系の場合、この触媒は使用に先立って、オートクレーブなどの反応容器中で、それを水、非プロトン性極性有機溶媒、複数種の非プロトン性極性有機溶媒の組合せ、または非プロトン性極性有機溶媒と水の組合せ、好ましくはジオキサン/脱イオン水(3:1v/v)の溶媒ブレンド物と組み合わせて、温度を約25℃から50℃まで上昇させ、2体積量のNでパージし、次いで50psi(344kPa)〜500psi(3447kPa)まで圧力まで水素を加えることによって活性化する。これらの条件を1〜4時間保って触媒系を活性化させる。
【0013】
触媒系の活性化後、低圧水素化を一般には500psi(3447kPa)〜1500psi(10342kPa)の間の水素の存在下において反応容器中で行う。窒素またはアルゴンを最初に反応容器から空気を除去するために使用し、またニッケル触媒上の微量の酸素の影響をできるだけ少なくするために反応の間ずっと加えることができる。この触媒を、CPI、少なくとも当モル量の無水アンモニア(NH/CPIのモル比5/1)、および無機塩基水溶液と接触させる。好適な塩基には、ナトリウム、カリウム、およびリチウムの水酸化物が挙げられる。
【0014】
水素化を行う反応容器は、容器の温度を50℃〜150℃の温度まで、また500psi(3447kPa)〜1500psi(10342kPa)の水素圧まで上昇させることによって加圧される。この温度および水素圧は、触媒寿命を持続させ、またAMCへの転化率およびAMCに対する選択率を増すために反応を通じて維持される。50℃〜150℃の温度が水素化の際のCPIのAMCへの転化にとって好ましい。より高い150℃〜200℃の温度は、より高い許容できない濃度の第二および第三アミンを生ずる。
【0015】
本発明の方法は適切な溶媒中で行われる。好適な溶媒には水、非プロトン性極性有機溶媒、複数種の非プロトン性極性有機溶媒の組合せ、または非プロトン性極性有機溶媒と水の組合せが挙げられる。これらの例には、ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、水、およびこれらの組合せが挙げられるがそれらには限定されない。1:1v/vのジオキサン/水ないし5:1v/vのジオキサン/水のジオキサン/水の組合せを含む溶液が好ましく、最も好ましくは3:1v/vのジオキサン/水である。
【0016】
この方法は一般には攪拌バッチ方式(スラリー触媒)で行われ、その触媒を上記手順で活性化した後にそのオートクレーブにCPI、50%無機塩基水溶液(CPIに対して約2重量%の溶液)を装入する。この無機塩基水溶液は、別個に水の添加を伴う無機塩基として加えることもできる。この方法をバッチ方式で行う場合、触媒活性化のステップ(I)の後、だがその活性化触媒をCPI、無水アンモニア、および無機塩基水溶液と接触させる前に、その温度および圧力を周囲条件にする。
【0017】
本発明の方法に使用するCPIは、非極性芳香族溶媒中でアジポニトリルをモル当量の立体障害を有する塩基と接触させることによって生成することができる。そのCPIを単離し、ジオキサン/水の溶液に溶解することができる。
【0018】
AMCの精製は、反応混合物をNまたはアルゴンなどの不活性ガス中での真空濾過、続いて真空蒸留により触媒から分離することによって行うことができ、また達成される。AMCは、例えばポリウレタン架橋剤用、ポリアミド変性剤用、金属キレート剤用などのエポキシ硬化剤の配合において有用な分子である。
【実施例】
【0019】
(実施例1:ニッケルとパラジウム/炭素との混合物を用いた1−アミノ−2−シアノ−1−シクロペンテン(CPI)の2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミン(AMC)への水素化)
1000ccオートクレーブに、液状デグッサニッケル触媒(B113W)を30グラム、ヘレウスK023の10%Pd/C触媒を5グラム、1,4−ジオキサンを480mL、および脱イオン水を160mL装入した。この混合物をオートクレーブ中で2体積量の窒素でNパージした。次いでこの混合物を300psi(2068kPa)、35℃において水素で3時間活性化させた。この混合物を室温まで冷却し、ガス抜きし、2体積量の窒素でパージした。CPIを50グラム、50%NaOH水溶液を1グラム、および無水アンモニアを75グラム加えた。この反応物を75℃、1500psi(10342kPa)の水素で、反応の間ずっと水素を再加圧して圧力を1500psi(10342kPa)±100psi(689kPa)に保ちながら12時間攪拌した。12時間の終りに反応物を冷却し、ガス抜きし、脱イオン水で洗い流した。この反応混合物をN雰囲気下で目の粗い焼結ガラスフィルター漏斗を通して濾過し、透明で粘性の黄色の油になるまで真空中で濃縮した。この油を、留分分割器を備えたビグローカラム(Vigreaux column)を用いて蒸留して48℃、圧力4mmHg(0.53kPa)で生成物を回収した。この生成物のガスクロマトグラフィによる純度は>99%。生成物の収率は65%であった。
【0020】
(実施例2:パラジウム助触ラネー2000ニッケルを用いたCPIのAMCへの水素化)
触媒が0.5重量%のパラジウム助触ラネーNi 2000であることを除いて実施例1と同じ触媒前処理を行った。10グラムの出発CPIを加えた1グラムの触媒を加熱し、1500psi(10342kPa)のH(再加圧を伴う)および過剰のNHと共に150℃で6時間攪拌した。ガスクロマトグラフィの結果は、転化率100%およびAMCに対する選択率>95%を示した。
【0021】
(比較例1:Niを加えないことの影響を示すための5%Pd/Cを用いたCPIのAMCへの水素化)
100ccオートクレーブに、ジオキサンを50mL、DI水を15mL、および5%ヘレウスK0203(Pd/C)を2グラム装入した。この混合物をHにより300psi(2068kPa)まで35℃で3時間加圧した。この混合物を室温まで冷却し、ガス抜きし、次いでCPIを5g、続いて無水アンモニアを4g加えた。この容器を150℃でHにより1500psi(10342kPa)に加圧(必要に応じて再加圧する)し6時間加熱した。次いでこの混合物を室温まで冷却し、ガス抜きし、3体積量のNでパージし、ガスクロマトグラフィにより分析した。この生成物はCPIが92%未反応であり、AMCが0%であった。
【0022】
(比較例2:Pd/Cを加えないことの影響を示すためのNiを用いたCPIのAMCへの水素化)
100ccオートクレーブに、ジオキサンを50mL、DI水を15mL、およびデグッサ−ヒュルス(Degussa−Huls)B111Wのニッケルを2グラム装入した。この混合物をHで300psi(2068kPa)まで35℃で3時間加圧した。この混合物を室温まで冷却し、ガス抜きし、次いでCPIを5g、続いて無水アンモニアを4g加えた。この容器を150℃でHにより1500psi(10342kPa)に加圧(必要に応じて再加圧する)し、6時間加熱した。次いでこの混合物を室温まで冷却し、ガス抜きし、3体積量のNでパージし、ガスクロマトグラフィにより分析した。この生成物は95%未反応のCPI、および0%のAMCを含有した。
【0023】
(比較例3:Niを加えず、溶媒混合物をメタノールに変え、温度と圧力を下げることの影響を示すための5%Pd/Cを用いたCPIのAMCへの水素化)
100ccオートクレーブに5gのCPIを、25mLのメタノール、1gのNH、および1gの5%Pd/CのヘレウスK0227触媒と共に装入した。このオートクレーブをNで3回パージし、次いで60℃まで、また300psi(2068kPa)のHで6時間加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、Nで3回パージし、オートクレーブから吸引して取り出した。その生成物のガスクロマトグラフィの結果は、99%未反応のCPIを示した。
【0024】
(比較例4:Pdを加えず、溶媒混合物をメタノールに変え、圧力を下げることの影響を示すためのNiを用いたCPIのAMCへの水素化)
比較例3と同じ手順および設備を使用し、メタノール50mL中1時間の5gのCPI、0.2gのデグッサ−ヒュルスB111Wのニッケルスラリー、150℃、1000psi(6895kPa)のH、および1gのNHであった。ガスクロマトグラフィの結果は、主に未反応のCPIであり、AMCの形跡は少しもなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミンの調製方法であって、前記方法は、
(i)不活性ガスでパージし、約25℃〜約50℃の温度において水素によって約50〜500psiまで加圧した容器中で適切な溶媒と触媒系を組み合わせることにより活性化された触媒を調製する工程であって、前記触媒系がニッケルと炭素に支持されたパラジウムとを含むか、またはパラジウムをドープしたラネー(Raney)型ニッケルを含む、工程、
(ii)前記活性化された触媒を、1−アミノ−2−シアノ−1−シクロペンテン、少なくとも等モル量の無水アンモニア、および、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される無機塩基の水溶液と接触させる工程、
(iii)約50℃〜約150℃の温度まで、および約500psi〜約1500psiの水素圧力まで前記容器の前記温度を上昇させることにより前記容器を加圧し、前記温度と圧力を粗2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミンを得るのに十分な時間維持する工程、
(iv)粗2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミン生成物を分離する工程、および
(v)任意選択的に粗2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミンを精製してより純粋な2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミンを得る工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程(ii)の前記1−アミノ−2−シアノ−1−シクロペンテンが、アジポニトリルを非極性芳香族溶媒中でモル当量の立体障害を有する塩基と接触させて1−アミノ−2−シアノ−1−シクロペンテンを生成し、このステップの1−アミノ−2−シアノ−1−シクロペンテン生成物を単離することによって得られることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(ii)の前記1−アミノ−2−シアノ−1−シクロペンテンをジオキサン/水溶媒中に溶解することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法がバッチ方式で行われ、かつ前記方法が前記温度および圧力を工程(i)の後、且つ、工程(ii)の前に周囲条件まで下げる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記2−(アミノメチル)−1−シクロペンチルアミンが蒸留によって精製されることを特徴とする請求項1または3に記載の方法。
【請求項6】
前記適切な溶媒が、水、非プロトン性極性有機溶媒、非プロトン性極性有機溶媒の組合せ、または非プロトン性極性有機溶媒と水の組合せであることを特徴とする請求項1または3に記載の方法。
【請求項7】
前記適切な溶媒がジオキサン/水の溶液であることを特徴とする請求項6に記載の方法。

【公表番号】特表2006−526622(P2006−526622A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509246(P2006−509246)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/007761
【国際公開番号】WO2004/108655
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505245302)インヴィスタ テクノロジー エスアエルエル (81)
【Fターム(参考)】