2−(1−ピペラジニル)−5−メチルベンゼンスルホン酸誘導体を含む注射用水溶液

【課題】アミノベンゼンスルホン酸誘導体を含有する安定性に優れた注射用水溶液を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)


で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含有する注射用水溶液にトロメタモールを含有する注射用水溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は下記一般式(I)
【0002】
【化1】

【0003】
(式中、R1 は水素原子、C1−C6 のアルキル基、C3−C7 のシクロアルキル基、C1−C4 のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、又はC6−C12のアリール基を表し;R2 は水素原子、C1−C6 のアルキル基、又はシアノ基、ニトロ基、C1−C6 のアルコキシ基、ハロゲン原子、C1−C6 のアルキル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる1又は2以上の置換基を有していてもよいC7−C12のアラルキル基を表し;nは1から4の整数を表す)
で示される2−(1−ピペラジニル)−5−メチルベンゼンスルホン酸誘導体、その塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含有する注射用水溶液に関する。
【背景技術】
【0004】
上記一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体は、細胞内カルシウムイオンの過蓄積を抑制する作用を有し、これらの化合物は各種の循環器系疾患、例えば狭心症、心筋梗塞、高血圧、心不全あるいは不整脈等の予防及び治療に有用であることが明らかにされている(特許文献1、特許文献2等)。さらに、これら特許文献1や特許文献2には注射用水溶液を製造するための一般的な添加剤についても記載されている。これらの添加剤を用いて注射用水溶液を製造することは可能であるが、医療現場で実際に使用可能な注射用水溶液を提供するためには、一定期間の保存安定性が保証された製剤とする必要がある。しかしながら上記特許文献には安定な注射用水溶液を得るための添加剤の種類や量については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−7263号公報、欧州公開390654号公報
【特許文献2】特開平9−221479号公報、欧州公開779283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な製剤の開発を行う際には、薬効成分である化合物の基礎物性を考慮し、薬剤学的に許容されうる添加剤等を加え最終的な処方を決定する。この処方においては、製剤の有効成分の品質を一定に保つことが重要な目的の一つである。品質が変化する理由の一つとして、有効成分の分解による不純物の発生が挙げられる。分解により製剤中有効成分の濃度は低下し、長期保存中に所定の濃度以下になった場合は、人体への投与後の薬効に対する影響が懸念される。また、大量に生成した分解物が毒性を有する為に、人体への投与に際して副作用の懸念がある場合がある。あるいは、生成した分解物により、製剤そのものの物性が変化する可能性もある。そのため、ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)のガイドラインにおいて、有効成分の分解物量が一定の閾値を超えた場合には、その分解物の構造決定や安全性試験を行う旨の規定が存在する。例えば、医薬審発第0624001号(平成15年6月24日)にて、最大一日投与量が100mg〜2gの製剤中で、分解生成物が0.2%あるいは1日総摂取量3mgのいずれか低い方を超える場合には、その分解生成物の安全性確認が必要であるとされている(同号別紙1)。
【0007】
分解物生成状態の測定は一般に安定性試験と呼ばれている。日本においては、新有効成分含有医薬品を当局に申請する際にはこの安定性に関する資料を提出することが義務付けられている(薬食発第0331015号、平成17年3月31日)。安定性に関する資料としては長期保存試験、苛酷試験および加速試験の結果が挙げられている(同号別表1)。長期保存試験としては例えば製剤を25℃中で36ヶ月保存する試験、苛酷試験としては例えば製剤を60℃中で1ヶ月保存する試験、加速試験としては例えば40℃中で3ヶ月あるいは6ヶ月保存する試験が挙げられる。
【0008】
注射用水溶液に関しても同様のことがいえるが、特にヒトにおける静脈内投与を目的とした注射用水溶液を開発する場合、使用可能な添加剤が限定されるため、安定性に優れた処方を決定するには困難を要する。上記一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体(以下、「本願有効成分」ということもある。)は、水、あるいは生理食塩液中において、徐々に加水分解を受け、分解不純物を生じることから保存安定性に問題がある。また、本願有効成分は光、熱、pH等により分解物の生成が加速されることが判明している。よって本願有効成分を含有する安定性に優れた注射用水溶液の開発には相当な困難が予想された。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、主分解物生成量を低値に抑えることが可能な保存安定性に優れた注射用水溶液を提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1)下記一般式(I)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、R1 は水素原子、C1−C6 のアルキル基、C3−C7 のシクロアルキル基、C1−C4 のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、又はC6−C12のアリール基を表し;R2 は水素原子、C1−C6 のアルキル基、又はシアノ基、ニトロ基、C1−C6 のアルコキシ基、ハロゲン原子、C1−C6 のアルキル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる1又は2以上の置換基を有していてもよいC7−C12のアラルキル基を表し;nは1から4の整数を表す)
で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含有し、かつトロメタモールを含有する注射用水溶液。
(2)トロメタモール濃度が5mM以上50mM以下である、上記(1)に記載の注射用水溶液。
(3)pHが6.0以上8.0以下である上記(1)または(2)に記載の注射用水溶液。
(4)一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導対若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の濃度が1mg/ml以上20mg/ml以下である、上記(1)から(3)のいずれかに記載の注射剤。
(5)25℃で36ヶ月保存後、以下の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.2%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下である、一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含有する注射用水溶液。
測定条件:
(移動相組成)
リン酸二水素ナトリウム二水和物7.8gを水/アセトニトリル混液(6/1)1000mlに溶解したもの
(使用カラム)
内径4.6mm、長さ25cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクチルシリル化シリカゲルを充填したもの
(カラム温度)
40℃付近の一定温度
(流量)
7ml/分
(検出器)
紫外吸光光度計(測定波長248nm)
(6)40℃で3ヶ月保存後、(5)に記載の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.1%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下である、一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含有する注射用水溶液。
(7)40℃で6ヶ月保存後、(5)に記載の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.2%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下である、一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含有する注射用水溶液。
(8)60℃で1ヶ月保存後、(5)に記載の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.1%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下である、一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含有する注射用水溶液。
(9)一般式(I)で示される化合物が5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸もしくはその塩、又はそれらの水和物もしくは溶媒和物である上記(1)から(8)のいずれかに記載の注射用水溶液。
(10)一般式(I)で示される化合物が5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸無水物である上記(9)に記載の注射用水溶液。
(11) 一般式(I)で示される化合物が5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸一水和物である前記(9)に記載の注射用水溶液。
(12)トロメタモール濃度が10mM以上20mM以下、pHが6.5以上7.5以下であることを特徴とし、一般式(I)で示される化合物を5mg/ml以上15mg/ml以下の濃度で含有する、上記(11)に記載の注射用水溶液。
(13)上記(1)から(12)のいずれかに記載の注射用水溶液が容器に充填された注射剤。
(14)容器が密閉容器である上記(13)に記載の注射剤。
(15)密閉容器の気相部が不活性ガスで置換されたものである、上記(14)に記載の注射剤。
(16)不活性ガスが窒素である、上記(15)に記載の注射剤。
(17)下記一般式(I)
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、R1 は水素原子、C1−C6 のアルキル基、C3−C7 のシクロアルキル基、C1−C4 のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、又はC6−C12のアリール基を表し;R2 は水素原子、C1−C6 のアルキル基、又はシアノ基、ニトロ基、C1−C6 のアルコキシ基、ハロゲン原子、C1−C6 のアルキル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる1又は2以上の置換基を有していてもよいC7−C12のアラルキル基を表し;nは1から4の整数を表す)
で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含有する注射剤において、トロメタモールを含有することにより該一般式(I)の化合物の分解を抑制する、注射用水溶液の安定化方法。
(18)トロメタモール濃度が5mM以上50mM以下である、上記(17)に記載の安定化方法。
(19)pHが6.0以上8.0以下である上記(17)または(18)に記載の安定化方法。
(20)一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導対若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の濃度が1mg/ml以上20mg/ml以下である、上記(17)から(19)のいずれかに記載の安定化方法。
(21)25℃で36ヶ月保存後、以下の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.2%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下となっている、上記(17)から(20)のいずれかに記載の安定化方法。
測定条件:
(移動相組成)
リン酸二水素ナトリウム二水和物7.8gを水/アセトニトリル混液(6/1)1000mlに溶解したもの
(使用カラム)
内径4.6mm、長さ25cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクチルシリル化シリカゲルを充填したもの
(カラム温度)
40℃付近の一定温度
(流量)
7ml/分
(検出器)
紫外吸光光度計(測定波長248nm)
(22)40℃で3ヶ月保存後、上記(21)に記載の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.1%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下となっている、上記(17)から(20)のいずれかに記載の安定化方法。
(23)40℃で6ヶ月保存後、前記(21)に記載の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.2%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下となっている、前記(17)から(20)のいずれかに記載の安定化方法。
(24)60℃で1ヶ月保存後、前記(21)に記載の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.1%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)となっている、前記(17)から(20)のいずれかに記載の安定化方法。
(25)一般式(I)で示される化合物が5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸もしくはその塩、又はそれらの水和物もしくは溶媒和物である上記(17)から(24)のいずれかに記載の安定化方法。
(26)一般式(I)で示される化合物が5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸無水物である上記(25)に記載の安定化方法。
(27) 一般式(I)で示される化合物が5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸一水和物である前記(25)に記載の注射剤。
(28)トロメタモール濃度が10mM以上20mM以下、pHが6.5以上7.5以下、かつ容器内の気相分を窒素で置換したことを特徴とし、一般式(I)で示される化合物を5mg/ml以上15mg/ml以下の濃度で含有する、上記(27)に記載の安定化方法。
(29)上記(17)から(28)のいずれかに記載の安定化方法であって、さらに注射用水溶液を容器に充填させることを特徴とする注射用水溶液の安定化方法。
(30)容器が密閉容器である上記(29)に記載の安定化方法。
(31)密閉容器の気相部を不活性ガスで置換することを特徴とする、上記(30)に記載の安定化方法。
(32)不活性ガスが窒素である、(31)に記載の安定化方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明に記載の組成にすることにより、化合物(I)の注射用水溶液を長期間保存した場合でも、化合物(I)の分解物の生成量を非常に低く抑制することができる。例えば25℃で36ヶ月保存後、一定の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量を0.2%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明注射用水溶液の有効成分としては、上記一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体もしくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を挙げることができる。上記一般式(I)中、R1 で定義されるC1−C6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、 tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、 tert-ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基等が挙げられる。C3−C7 のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。C1−C4 のハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。C6−C12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0017】
1の好ましい例として、水素原子、C1−C6のアルキル基、C5−C6のシクロアルキル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン原子又はフェニル基が挙げられ、さらに好ましい例として、R1がC1−C3のアルキル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、塩素原子、臭素原子又はフェニル基が挙げられ、特にメチル基又はプロピル基であることが好ましい。
【0018】
2 で定義されるC1−C6 のアルキル基としては、例えば、上記R1で定義したようなアルキル基が挙げられる。C7−C12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。このアラルキル基は、シアノ基;ニトロ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、 tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、 tert-ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基等のC1−C6 のアルコキシ基;上記R1で定義したようなハロゲン原子;上記R1で定義したようなアルキル基及びアミノ基からなる群から選ばれる1又は2個以上の置換基を有していてもよい。
【0019】
2の好ましい例としては、水素原子、C1―C3のアルキル基、並びに、C1−C3のアルキル基、C1−C3のアルコキシ基及びハロゲン原子から選ばれる1又は2以上の置換基を有していても良いC7−C12のアラルキル基が、さらに好ましい例としては、R2が水素原子又は1もしくは2以上のC1−C3のアルコキシ基で置換されていてもよいC7―C12のアラルキル基が挙げられ、特に、水素原子であることが好ましい。
【0020】
また、上記一般式(I)中、nとしては2であることが好ましい。
【0021】
なお、本発明における好適な具体例としては、下記表1及び表2に示す化合物を挙げることができる。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
【表3】

【0025】
【表4】

【0026】
【表5】

【0027】
【表6】

【0028】
【表7】

【0029】
【表8】

【0030】
【表9】

【0031】
上記表1及び表2中、R1の置換位置が5位である化合物が好ましく、さらに好適な化合物としては以下の化合物が挙げられる。
5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸;
5−トリフルオロメチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸;
5−n−プロピル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸;
5−フェニル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸;
5−クロロ−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸;
5−ブロモ−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸;
5−iso−プロピル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸;
5−シクロヘキシル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸;
5−n−プロピル−2−(1−ホモピペラジニル)ベンゼンスルホン酸;
5−n−プロピル−2−[4−(2,3,4−トリメトキシベンジル)−1−ピペラジニル]ベンゼンスルホン酸;
5−n−プロピル−2−[4−(3,4−ジメトキシベンジル)−1−ピペラジニル]ベンゼンスルホン酸
なお、上記の化合物のうち、特に好ましい例としては、5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸及び5−n−プロピル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸を挙げることができる。
【0032】
また上記で挙げた化合物の薬学的に許容されうる塩類も本発明の範囲に包含される。上記化合物の塩類としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、トリエチルアミン塩等の低級アルキルアミン塩、2−ヒドロキシエチルアミン塩、ビス−(2−ヒドロキシエチル)アミン塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩、N−メチル−D−グルカミン塩等のヒドロキシ低級アルキルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩等のシクロアルキルアミン塩、N,N−ジベンジルエチレンジアミン塩等のベンジルアミン塩、ジベンジルアミン塩等のアミン塩;塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;又は、フマル酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩等の有機酸塩等が挙げられる。
【0033】
なお、塩や遊離形態の化合物の他、これらの任意の水和物あるいは溶媒和物を本発明の医薬の有効成分として用いても良い。上記化合物の溶媒和物を形成しうる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸エチル、塩化メチレン等が挙げられる。
【0034】
本発明の医薬の有効成分としては、5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸及び5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸 一水和物を最も好ましいものとして挙げることができる。
【0035】
上記一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体は公知の化合物であり、例えば特開平3−7263号及び特開平9−221479号各号公報、欧州特許出願公開公報390654号及び779283号、並びに、米国特許公報5053409号及び5990113号等に記載の方法により、容易に合成することができ、当業者が容易に入手することができる化合物である。
【0036】
本発明注射用水溶液において本願有効成分の濃度は好ましくは1mg/ml以上20mg/ml以下であり、より好ましくは5mg/ml以上15mg/ml以下である。
【0037】
本発明において用いるトロメタモールの濃度としては、2mM以上50mM以下であることが望ましい。さらに望ましくは、5mM以上50mM以下であり、最も望ましくは、10mM以上20mM以下である。
【0038】
本発明注射用水溶液のpHとしては、好ましくは6.0以上8.0以下であり、より好ましくは6.0以上7.5以下であり、最も好ましくは6.5以上7.5以下(7±0.5)である。注射用水溶液のpHをこの様な値とするため必要に応じてpH調整剤を加えることもできる。本発明注射用水溶液に用いるpH調整剤は上記の範囲付近にpH緩衝能力のある薬学的に許容されている緩衝剤であれば、特に制限されない。
【0039】
本発明注射用水溶液は人体に投与した際の溶血性、疼痛性を緩和させる等の理由から、注射用水溶液の浸透圧を0.9%生理食塩水と等張にすることが好ましい。0.9%生理食塩水と等張であるとは、0.9%生理食塩水と本発明注射財の浸透圧比が0.8〜1.2の間であること、好ましくは0.9〜1.1の間であることを意味する。等張にするために用いる物質は薬学的に許容されているものであれば特に制限されないが、好ましくは塩化ナトリウムを挙げることができる。
【0040】
本発明注射用水溶液には上記のpH調整剤や等張化剤等の添加剤の他、無痛化剤、防腐剤等の添加剤を必要に応じて添加することできる。
【0041】
本発明注射用水溶液は、容器に充填して保存・使用することができる。容器としては、密閉容器であることが望ましい。密閉容器の形態としては、アンプル、バイアルあるいはバッグ等が挙げられる。容器の材質としては、ガラス、プラスチック等が挙げられる。本発明注射用水溶液をアンプルやバイアル等の容器に充填する場合、容器空間の気相部を不活性ガスで置換することが好ましい。また不活性ガスの好ましい例としては窒素を挙げることができる。
【0042】
本発明注射用水溶液においては、含有される化合物(I)の主分解物は生じないこと、すなわち高速液体クロマトグラフィーにおいて主分解物のピークが形成されない、あるいは検出限界以下となることが非常に望ましいが、保存温度や保存期間によって化合物(I)の主分解物が生じることがある。化合物(I)の主分解物のピークが形成されたとしても、本発明注射用水溶液を25℃で36ヶ月保存後の場合、その生成量が1.0%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下、望ましくは0.5%以下、さらに望ましくは0.2%以下であれば良い。40℃で3ヶ月保存後の場合、その生成量が1.0%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下、望ましくは0.5%以下、さらに望ましくは0.2%以下、最も望ましくは0.1%以下であれば良い。40℃で6ヶ月保存後の場合、その生成量が1.0%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下、望ましくは0.5%以下、さらに望ましくは0.2%以下であれば良い。あるいは60℃で1ヶ月保存後に、その生成量が1.0%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下、望ましくは0.5%以下、さらに望ましくは0.2%以下、最も望ましくは0.1%以下であれば良い。最も望ましくは、25℃で36ヶ月保存後に、化合物(I)の主分解物の生成量が0.2%以下であることが挙げられる。化合物(I)の主分解物としては、高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出されるピークの物質が挙げられる。ここで高速液体クロマトグラフィーの測定条件は前記の通りである。
【0043】
主分解物の生成量は、高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値を求めることによって算出できる。具体的には、化合物(I)の高速液体クロマトグラフィーにおけるピーク面積値に対する、前記測定条件において相対保持時間1.2に検出される主分解物のピーク面積値の比として計算することができる。あるいは、前記測定条件において化合物(I)の注射用水溶液を測定した際の全ピークの面積値総和に対する、上記主分解物のピーク面積値の比として計算することもできる。
【0044】
本発明注射用水溶液は、本発明有効成分の量として、1日量0.01mg/kg〜100mg/kgの範囲を連続投与または間欠投与することが好ましく、年令、性別、病態、症状の有無等により、適宜増減することが更に好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び試験例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0046】
また以下の実施例及び比較例で用いた本化合物は特開平9−221479号公報記載の方法に準じて製造した5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸一水和物である。
【0047】
(実施例1)
0.1Mトロメタモール水溶液に0.1M〜1M塩酸水溶液を添加してpH7.8〜8.0のトロメタモール水溶液を作製した。このトロメタモール水溶液に、本化合物を5.4mg/mL、0.1M〜1M塩酸水溶液を添加してpHを7.5付近に調整し、これに最終量にて等張となる塩化ナトリウムを加えた。最後に注射用蒸留水でトロメタモール濃度が50mMになるように全量を調整した。この溶液を10mL用のバイアルに充填し、ゴム栓、アルミキャップで密閉し、蒸気滅菌を施し注射剤を得た。
【0048】
(実施例2)
実施例1の塩化ナトリウムを添加せずに、他は実施例1と同様の方法で注射剤を得た。
【0049】
(実施例3)
実施例1と同様の方法によりpH7付近の注射剤を得た。
【0050】
(実施例4)
0.1Mトロメタモール水溶液に0.1M〜1M塩酸水溶液を添加してpH6.3〜6.5のトロメタモール水溶液を作製した。このトロメタモール水溶液に、本化合物を5.4mg/mL、0.1M〜1M塩酸水溶液を添加してpHを6.0に調整し、これに最終量にて等張となる塩化ナトリウムを加えた。その後は実施例1と同様の方法で注射剤を得た。
【0051】
(実施例5)
0.1Mトロメタモール水溶液に0.1M〜1M塩酸水溶液を添加してpH8.5付近のトロメタモール水溶液を作製した。このトロメタモール水溶液に、本化合物を10.7mg/mL、0.1M〜1M塩酸水溶液を添加してpHを6.0に調整し、これに最終量にて等張となる塩化ナトリウムを加えた。その後は実施例1と同様の方法で注射剤を得た。
【0052】
(実施例6)
実施例5と同様の方法によりpH6.5の注射剤を得た。
【0053】
(実施例7)
実施例5と同様の方法によりpH7.0の注射剤を得た。
【0054】
(実施例8)
実施例5と同様の方法によりpH7.5の注射剤を得た。
【0055】
(実施例9)
実施例5と同様の方法によりpH8.0の注射剤を得た。
【0056】
(実施例10)
0.1Mトロメタモール水溶液に0.1M〜1M塩酸水溶液を添加してpH7.2付近のトロメタモール水溶液を作製した。このトロメタモール水溶液に、本化合物を10.7mg/mL、0.1M〜1M塩酸水溶液を添加してpHを7.0に調整し、これに最終量にて等張となる塩化ナトリウムを加えた。最後に注射用蒸留水でトロメタモール濃度が2mMになるように全量を調整した。その後は実施例1と同様の方法で注射剤を得た。
【0057】
(実施例11)
実施例10と同様の方法によりトロメタモール濃度が5mMの注射剤を得た。
【0058】
(実施例12)
実施例10と同様の方法によりトロメタモール濃度が10mMの注射剤を得た。
【0059】
(実施例13)
実施例10と同様の方法によりトロメタモール濃度が20mMの注射剤を得た。
【0060】
(実施例14)
実施例13と同様の方法により調製した溶液を10mL用のバイアルに充填し、気相部を窒素置換し、ゴム栓、アルミキャップで密閉し、蒸気滅菌を施し注射剤を得た。
【0061】
(比較例1)
本化合物を1.1mg/mLになるように緩衝剤(リン酸、酢酸、ホウ酸の混液−各3mM)に添加溶解した。100mM水酸化ナトリウムを添加してpHを3に調整した溶液を得た。
【0062】
(比較例2)
比較例1と同様の方法でpH4の溶液を得た。
【0063】
(比較例3)
比較例1と同様の方法でpH5の溶液を得た。
【0064】
(比較例4)
比較例1と同様の方法でpH6の溶液を得た。
【0065】
(比較例5)
比較例1と同様の方法でpH7の溶液を得た。
【0066】
(比較例6)
比較例1と同様の方法でpH8の溶液を得た。
【0067】
(比較例7)
注射用蒸留水に本化合物を5.4mg/mLになるように添加溶解させた後、この溶液を10mL用のバイアルに充填し、ゴム栓、アルミキャップで密閉し、蒸気滅菌を施し注射剤を得た。
【0068】
(比較例8)
比較例7の注射用蒸留水に代えて生理食塩液を用いて、他は比較例7と同様の方法で注射剤を得た。
【0069】
(比較例9)
比較例7の注射用蒸留水に代えて10mM NaCl水溶液を用いて、他は比較例7と同様の方法で注射剤を得た。
【0070】
(比較例10)
10mMリン酸水溶液に10mMリン酸水素2ナトリウム水溶液を添加してpHを7付近とする10mMリン酸塩水溶液を作製した。このリン酸水溶液に、本化合物を5.4mg/mL、最終量にて等張となる塩化ナトリウムを加えた。この溶液を10mL用のバイアルに充填し、ゴム栓、アルミキャップで密閉し、蒸気滅菌を施し注射剤を得た。
【0071】
(比較例11)
10mMリン酸水溶液に10mMリン酸水素2ナトリウム水溶液を添加してpH6の10mMリン酸塩水溶液を作製した。このリン酸水溶液に本化合物を5.4mg/mLになるように添加した。この溶液を10mL用のバイアルに充填し、ゴム栓、アルミキャップで密閉し、蒸気滅菌を施し注射剤を得た。
【0072】
(比較例12)
10mMクエン酸水溶液に10mMクエン酸3ナトリウム水溶液を添加してpH6の10mMクエン酸塩水溶液を作製した。このクエン酸水溶液に本化合物を5.4mg/mLになるように添加した。この溶液を10mL用のバイアルに充填し、ゴム栓、アルミキャップで密閉し、蒸気滅菌を施し注射剤を得た。
【0073】
(比較例13)
10mM酢酸水溶液に10mM酢酸ナトリウム3ナトリウム水溶液を添加してpH6の10mM酢酸塩水溶液を作製した。この酢酸水溶液に本化合物を5.4mg/mLになるように添加した。この溶液を10mL用のバイアルに充填し、ゴム栓、アルミキャップで密閉し、蒸気滅菌を施し注射剤を得た。
【0074】
(比較例14)
生理食塩液に本化合物を10.7mg/mLになるように添加溶解させた後、この溶液を10mL用のバイアルに充填し、ゴム栓、アルミキャップで密閉し、蒸気滅菌を施し注射剤を得た。
【0075】
(試験例1)
溶液pHが本化合物の分解物生成に及ぼす影響
比較例1〜6で得られた注射用水溶液を80℃の恒温槽に14日間保存し、下記HPLC条件で検出されるR.R.T(相対保持時間)約1.2に検出される主分解物の生成量(*1)の経時変化を測定した。その結果は次の表に示すとおりであり、pH5以上の溶液中において本化合物の分解が抑制されることが判明した。
【0076】
【表10】

【0077】
HPLC条件:(以下の試験例における条件も同様である。)
(移動相組成)
リン酸二水素ナトリウム二水和物 7.8gを水/アセトニトリル混液(6/1)1000mLに溶かしたもの
(使用カラム)
内径4.6mm、長さ25cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクチルシリル化シリカゲルを充填したもの
(カラム温度)
40℃付近の一定温度
(流量)
約0.7mL/分
(検出器)
紫外吸光光度計(測定波長248nm)

(*1)
試験例1〜7における主分解物生成量は、下記のようにして求めた。
主分解物生成量(%)=
(HPLCクロマトグラムにおける主分解物のピーク面積値)/(HPLCクロマトグラムにおけるその他のピーク面積値の和)×100(%)
試験例8および9における主分解物生成量は、下記のようにして求めた。
主分解物生成量(%)=
(HPLCクロマトグラムにおける主分解物のピーク面積値)/(HPLCクロマトグラムにおける本化合物のピーク面積値)×100(%)

(試験例2)
pH6における各種pH調整剤が本化合物の分解物生成に及ぼす影響
実施例4及び比較例11〜13得られた注射剤を60℃の恒温槽に保存し、主分解物生成量(*1)の経時変化をHPLC法により測定した。その結果は次の表に示すとおりであり、本発明の注射剤はpH調整剤としてトロメタモールを使用することで本化合物の分解抑制に顕著に寄与することが認められた。
【0078】
【表11】

【0079】
(試験例3)
pH7.0におけるリン酸塩とトロメタモールが本化合物の分解物生成に及ぼす影響
実施例3及び比較10で得られた注射剤を60℃の恒温槽に保存し、主分解物生成量(*1)の経時変化をHPLC法により測定した。その結果は次の表に示すとおりであり、本発明の注射剤はpH調節剤としてトロメタモールを使用することで本化合物の安定性が向上することが認められた。試験例2の結果も含め考察するとトロメタモールの本化合物に対する安定化効果はイオン強度(ここでは塩化ナトリウム)によらず顕著であることが確認された。
【0080】
【表12】

【0081】
(試験例4)
トロメタモールによる安定化効果
実施例1、2及び比較例7〜9で得られた注射剤を60℃の恒温槽に保存し、主分解物生成量(*1)の経時変化をHPLC法により測定した。又pHの経時変化についても記載した。その結果は次の表に示すとおりである。本発明の注射剤はpHの経時変化がなく、かつ主分解物生成の抑制されていることが認められた。イオン強度(ここでは塩化ナトリウムを使用)が本化合物の分解抑制に与える影響が確認されたが、トロメタモールはイオン強度に関わらず本化合物の安定化に顕著に寄与することが明らかとなった。
【0082】
【表13】

【0083】
(試験例5)
pHの安定化効果
実施例5〜9で得られた注射剤を80℃の恒温槽に保存し、主分解物生成量(*1)の経時変化をHPLC法により測定した。その結果は次の表に示すとおりである。本発明の注射用水溶液はトロメタモールを緩衝剤として用いた場合pH6以上pH8以下において、主分解物生成が抑制されていることが認められた。特にpH6.5以上7.5以下においてその効果は顕著であった。
【0084】
【表14】

【0085】
(試験例6)
トロメタモールによる安定化効果
実施例3、10〜13及び比較例14で得られた注射剤を80℃の恒温槽に保存し、主分解物生成量(*1)の経時変化をHPLC法により測定した。その結果は次の表に示すとおりである。本発明の注射剤はpH調節剤としてトロメタモールを使用することで本化合物の安定性が向上することが認められた。特にトロメタモール濃度が5mM以上において安定性の向上は顕著であった。また試験例4の結果も含め考察するとトロメタモールの本化合物に対する安定化効果はイオン強度(ここでは塩化ナトリウム)によらず顕著であることが確認された。
【0086】
【表15】

【0087】
(試験例7)
気相部分の窒素の安定化効果
実施例13、14で得られた注射剤を60℃の恒温槽に保存し、主分解物生成量(*1)の経時変化をHPLC法により測定した。その結果は次の表に示すとおりである。本発明の注射剤はバイアル気相部分に窒素を充填することで本化合物の安定性が向上することが認められた。
【0088】
【表16】

【0089】
次に、本願化合物を含有する注射剤を25℃で36ヶ月保存した場合の効果を確認するために以下の検討を行った。
【0090】
(実施例15)
注射用蒸留水に、本化合物、トロメタモールおよび塩化ナトリウムを、最終濃度としてそれぞれ5mg/mL、50mMおよび110mMとなるよう溶解した。本溶液に1M塩酸水溶液を添加してpHを7.0に調製し、注射用蒸留水で全量を調整し、最終溶液とした。本溶液を0.2μmのフィルターでろ過したのち、25mL用のバイアルに充填し、気相部を窒素置換し、ゴム栓、アルミキャップで密閉し、蒸気滅菌を施し注射剤を得た。
【0091】
(実施例16)
注射用蒸留水に、本化合物、トロメタモールおよび塩化ナトリウムを、最終濃度としてそれぞれ10mg/mL、20mMおよび120mMとなるよう溶解した。本溶液に1M塩酸水溶液を添加してpHを7.0に調製し、注射用蒸留水で全量を調整し、最終溶液とした。本溶液を0.2μmのフィルターでろ過したのち、25mL用のバイアルに充填し、気相部を窒素置換し、ゴム栓、アルミキャップで密閉し、蒸気滅菌を施し注射剤を得た。
【0092】
(試験例8)
25℃36ヶ月安定性試験
実施例15および実施例16で得られた注射剤を25℃の恒温槽に36ヶ月間保存し、試験例1と同様のHPLC条件で検出されるR.R.T.(相対保持時間)約1.2に検出される主分解物の生成量(*1)の3、6、9、12、18、24、30および36ヵ月後の経時変化を測定した。その結果は表17に示すとおりである。トロメタモールを20mM含有し、溶液のpHを7.0に調整し、気相部分を窒素で置換した実施例16の注射剤において本化合物の分解が36ヵ月後も0.01%未満であることが判明した。またトロメタモールを50mM含有し、溶液のpHを7.5に調整した実施例15の注射剤においても、本化合物の分解が24ヶ月後において0.13%の低値を示した。上記のように25℃で24ヶ月保存後の主分解物の生成量が低く抑えられることから、本化合物の注射剤においてトロメタモールは主分解物の生成を抑制する効果が高いことがわかった。特に36ヵ月後の主分解物生成量が実施例16においてより低いことから、主分解物抑制効果に関してはトロメタモールの添加量20mMがより適していることが示唆された。
【0093】
【表17】

【0094】
次に、本願化合物を含有する注射剤を40℃で6ヶ月保存した場合の効果を確認するために以下の検討を行った。
【0095】
(試験例9)
40℃3ヶ月および6ヶ月安定性試験
実施例15および実施例16で得られた注射剤を40℃の恒温槽に6ヶ月間保存し、試験例1と同様のHPLC条件で検出されるR.R.T.(相対保持時間)約1.2に検出される主分解物の生成量(*1)の1、3および6ヵ月後の経時変化を測定した。その結果は表18に示すとおりである。トロメタモールを20mM含有し、溶液のpHを7.0に調整し、気相部分を窒素で置換した実施例16の注射剤において本化合物の分解は3ヵ月後も6ヵ月後も0.1%未満であることが判明した。またトロメタモールを50mM含有し、溶液のpHを7.5に調整した実施例15の注射剤においても、本化合物の分解が0.1%未満であり、6ヶ月後においても0.06%の低値を示した。本化合物の注射剤においてトロメタモールは主分解物の生成を抑制する効果が高いこと、その効果は特に実施例16の通りトロメタモール20mMにおいてより高いことが判明した。
【0096】
【表18】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明によれば、アミノベンゼンスルホン酸誘導体もしくはその塩、又はそれらの水和物もしくは溶媒和物を有効成分として含む保存安定性に優れた注射用水溶液を提供することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)
【化1】

(式中、R1 は水素原子、C1−C6 のアルキル基、C3−C7 のシクロアルキル基、C1−C4 のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、又はC6−C12のアリール基を表し;R2 は水素原子、C1−C6 のアルキル基、又はシアノ基、ニトロ基、C1−C6 のアルコキシ基、ハロゲン原子、C1−C6 のアルキル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる1又は2以上の置換基を有していてもよいC7−C12のアラルキル基を表し;nは1から4の整数を表す)
で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含有し、かつトロメタモールを含有する注射用水溶液。
【請求項2】
トロメタモール濃度が5mM以上50mM以下である、請求項1に記載の注射用水溶液。
【請求項3】
pHが6.0以上8.0以下である請求項1または2に記載の注射用水溶液。
【請求項4】
一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の濃度が1mg/ml以上20mg/ml以下である、請求項1から3のいずれかに記載の注射用水溶液。
【請求項5】
25℃で36ヶ月保存後、以下の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.2%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下である、一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含有する注射用水溶液。
測定条件:
(移動相組成)
リン酸二水素ナトリウム二水和物7.8gを水/アセトニトリル混液(6/1)1000mlに溶解したもの
(使用カラム)
内径4.6mm、長さ25cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクチルシリル化シリカゲルを充填したもの
(カラム温度)
40℃付近の一定温度
(流量)
7ml/分
(検出器)
紫外吸光光度計(測定波長248nm)
【請求項6】
40℃で3ヶ月保存後、請求項5に記載の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.1%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下である、一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含有する注射用水溶液。
【請求項7】
40℃で6ヶ月保存後、請求項5に記載の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.2%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下である、一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含有する注射用水溶液。
【請求項8】
60℃で1ヶ月保存後、請求項5に記載の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.1%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下である、一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含有する注射用水溶液。
【請求項9】
一般式(I)で示される化合物が5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸もしくはその塩、又はそれらの水和物もしくは溶媒和物である請求項1から8のいずれかに記載の注射用水溶液。
【請求項10】
一般式(I)で示される化合物が5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸無水物である請求項9に記載の注射用水溶液。
【請求項11】
一般式(I)で示される化合物が5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸一水和物である請求項9に記載の注射用水溶液。
【請求項12】
トロメタモール濃度が10mM以上20mM以下、pHが6.5以上7.5以下であることを特徴とし、一般式(I)で示される化合物を5mg/ml以上15mg/ml以下の濃度で含有する、請求項11に記載の注射用水溶液。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の注射用水溶液が容器に充填された注射剤。
【請求項14】
容器が密閉容器である請求項13に記載の注射剤。
【請求項15】
密閉容器の気相部が不活性ガスで置換されたものである、請求項14に記載の注射剤。
【請求項16】
不活性ガスが窒素である、請求項15に記載の注射剤。
【請求項17】
下記一般式(I)
【化2】

(式中、R1 は水素原子、C1−C6 のアルキル基、C3−C7 のシクロアルキル基、C1−C4 のハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、又はC6−C12のアリール基を表し;R2 は水素原子、C1−C6 のアルキル基、又はシアノ基、ニトロ基、C1−C6 のアルコキシ基、ハロゲン原子、C1−C6 のアルキル基、及びアミノ基からなる群から選ばれる1又は2以上の置換基を有していてもよいC7−C12のアラルキル基を表し;nは1から4の整数を表す)
で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を含有する注射剤において、トロメタモールを含有することにより該一般式(I)の化合物の分解を抑制する、注射用水溶液の安定化方法。
【請求項18】
トロメタモール濃度が5mM以上50mM以下である、請求項17に記載の安定化方法。
【請求項19】
pHが6.0以上8.0以下である請求項17または18に記載の安定化方法。
【請求項20】
一般式(I)で示されるアミノベンゼンスルホン酸誘導体若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の濃度が1mg/ml以上20mg/ml以下である、請求項17から19のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項21】
25℃で36ヶ月保存後、以下の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.2%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下となっている、請求項17から20のいずれかに記載の安定化方法。
測定条件:
(移動相組成)
リン酸二水素ナトリウム二水和物7.8gを水/アセトニトリル混液(6/1)1000mlに溶解したもの
(使用カラム)
内径4.6mm、長さ25cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフ用オクチルシリル化シリカゲルを充填したもの
(カラム温度)
40℃付近の一定温度
(流量)
7ml/分
(検出器)
紫外吸光光度計(測定波長248nm)
【請求項22】
40℃で3ヶ月保存後、請求項21に記載の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.1%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下となっている、請求項17から20のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項23】
40℃で6ヶ月保存後、請求項21に記載の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.2%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)以下となっている、請求項17から20のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項24】
60℃で1ヶ月保存後、請求項21に記載の高速液体クロマトグラフィーの測定条件で検出される相対保持時間1.2に検出される主分解物の生成量が0.1%(高速液体クロマトグラフィーの主分解物のピーク面積値より算出)となっている、請求項17から20のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項25】
一般式(I)で示される化合物が5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸もしくはその塩、又はそれらの水和物もしくは溶媒和物である請求項17から24のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項26】
一般式(I)で示される化合物が5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸無水物である請求項25に記載の安定化方法。
【請求項27】
一般式(I)で示される化合物が5−メチル−2−(1−ピペラジニル)ベンゼンスルホン酸一水和物である請求項25に記載の注射剤。
【請求項28】
トロメタモール濃度が10mM以上20mM以下、pHが6.5以上7.5以下、かつ容器内の気相分を窒素で置換したことを特徴とし、一般式(I)で示される化合物を5mg/ml以上15mg/ml以下の濃度で含有する、請求項27に記載の安定化方法。
【請求項29】
請求項17から28のいずれかに記載の安定化方法によって得られた注射用水溶液を容器に充填させることを特徴とする注射剤の安定化方法。
【請求項30】
容器が密閉容器である請求項29に記載の注射剤の安定化方法。
【請求項31】
密閉容器の気相部を不活性ガスで置換することを特徴とする、請求項30に記載の注射剤の安定化方法。
【請求項32】
不活性ガスが窒素である、請求項31に記載の注射剤の安定化方法。

【公開番号】特開2012−176899(P2012−176899A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120485(P2009−120485)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000002956)田辺三菱製薬株式会社 (225)
【Fターム(参考)】