説明

2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールの新規製造法およびその中間体

【課題】人体に対して安全で、環境負荷が少なく、かつ安価な原材料を用いて大量製造が可能な2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールの製造法を提供すること。
【解決手段】一般式[1]
【化1】


「式中、Rは、水素原子またはヒドロキシル保護基を;RおよびRは、同一または異なって置換されていてもよいアルキル基、または、一緒になって置換されていてもよいアルキレンもしくはアルケニレン基を示す。」で表されるアセタール誘導体を製造中間体とする製造法は、医薬品の合成中間体として重要な2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールを安全かつ容易に製造する方法として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品の製造中間体として重要な2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールの新規製造法ならびにその製造中間体である新規なアセタール誘導体およびその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールは、医薬品の製造中間体として重要な化合物である。たとえば、神経変性疾患治療薬として開発されている1−(3−(2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エトキシ)プロピル)アゼチジン−3−オール=マレイン酸塩は、2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールから製造される(特許文献1、2)。
また、2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールの製造法としては、たとえば、5−メチル−1−ベンゾチオフェンをN−ブロモスクシンイミドでブロモ化し、シアン化合物との反応に付し(1−ベンゾチオフェン−5−イル)アセトニトリルとした後、加水分解、次いで還元する方法が知られている(非特許文献1、2、3)。また、5−ブロモ−1−ベンゾチオフェンにマグネシウムを作用させ、グリニャール(Grignard)試薬とした後、エチレンオキシドと反応に付す方法が知られている(特許文献3)。さらに、5−(1−ベンゾチオフェン)カルバルデヒドをメトキシメチレンイリドとウィッティヒ(Wittig)反応に付した後、加水分解して(1−ベンゾチオフェン−5−イル)アセトアルデヒドとし、次いで還元する方法が知られている(特許文献4)。
しかし、これらの製造法は、(1)中間体が刺激性を有する、(2)毒性の高い試薬(シアン化合物)を使用する、(3)発癌性のある試薬(エチレンオキシド)を使用する、(4)発火性の高い試薬(ブチルリチウム、グリニャール試薬)を使用する、(5)反応操作が煩雑である、などの欠点を有するため、工業的な製造法として満足できるものではない。
【0003】
【特許文献1】国際公開第00/76957号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/035647号パンフレット
【特許文献3】EP0129478号公報
【特許文献4】国際公開第99/31056号パンフレット
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J. Med. Chem.)、1991年、第34巻、p.65−73
【非特許文献2】ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J. Med. Chem.)、1997年、第40巻、p.1049−1062
【非特許文献3】日本化学雑誌、1967年、第88巻、p.445−447
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人体に対して安全で、環境負荷が少なく、かつ安価な原材料を用いて大量製造が可能な2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールの製造法が、強く望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下において、本発明者らは鋭意検討を行った結果、次の一般式[1]
【化1】

「式中、Rは、水素原子またはヒドロキシル保護基を;RおよびRは、同一または異なって置換されていてもよいアルキル基、または、一緒になって置換されていてもよいアルキレンもしくはアルケニレン基を示す。」で表されるアセタール誘導体が、2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールの製造において重要な製造中間体であること、ならびに一般式[2]
【化2】

「式中、Xは、ハロゲン原子または置換されていてもよいアルカンスルホニルオキシもしくはアリールスルホニルオキシ基を;R1は、前記と同様の意味を有する。」で表されるハロフェネチルアルコール誘導体を、パラジウム触媒の存在下、一般式[3]
【化3】

「式中、RおよびRは、前記と同様の意味を有する。」で表されるチオール誘導体またはその塩とのカップリング反応に付すことにより、一般式[1]のアセタール誘導体が製造できること、および一般式[1]のアセタール誘導体を、酸の存在下、分子内閉環反応し、必要に応じ脱保護反応に付すことにより、2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールが簡便に製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0006】
本発明の新規な一般式[1]で表されるアセタール誘導体を製造中間体とすることで、医薬の中間体として有用な2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールをより簡便に、かつ工業的に製造できるという優れた効果が奏される。また、本発明の製造法は、(1)刺激性を有する中間体を経由しない、(2)毒性の高い試薬(シアン化合物)を使用しない、(3)発癌性のある試薬(エチレンオキシド)を使用しない、(4)発火性の高い試薬(ブチルリチウム、グリニャール試薬)を使用しない、(5)反応操作が簡便である、などの特徴を有している。すなわち、本発明の製造法は、人体に対して安全で、環境負荷が少なく、2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールの工業的な製造法として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、特にことわらない限り、ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子を;アルキル基とは、たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチルなどの直鎖状または分枝鎖状のC1−12アルキル基を;アルキレン基とは、たとえば、エチレン、プロピレン、ブチレンおよび2−メチルプロピレンなどの直鎖状または分枝鎖状のC2−6アルキレン基を;シクロアルキル基とは、たとえば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基を;アルコキシ基とは、たとえば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシおよびイソペンチルオキシなどの直鎖状または分枝鎖状のC1−6アルキルオキシ基を;アルケニル基とは、たとえば、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニルおよびオクテニルなどの直鎖状または分枝鎖状のC2−12アルケニル基を;アルケニレン基とは、たとえば、ビニレン、プロペニレン、1−ブテニレンおよび2−ブテニレンなどの直鎖状または分枝鎖状のC2−6アルケニレン基を;アリール基とは、たとえば、フェニル、ナフチル、インダニルおよびインデニルなどの基を;アルアルキル基とは、たとえば、ベンジル、ジフェニルメチル、トリチルおよびフェネチルなどのアルC1−6アルキル基を;アルカンスルホニルオキシ基とは、たとえば、メタンスルホニルオキシおよびエタンスルホニルオキシなどのC1−6アルカンスルホニルオキシ基を;アリールスルホニルオキシ基とは、たとえば、ベンゼンスルホニルオキシおよびトルエンスルホニルオキシなどの基を;アルカンスルホニル基とは、たとえば、メタンスルホニル、トリクロロメタンスルホニル、トリフルオロメタンスルホニル、エタンスルホニルおよびプロパンスルホニルなどのC1−6アルカンスルホニル基を;アリールスルホニル基とは、たとえば、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニルおよびナフタレンスルホニルなどの基;アルキルアミノ基とは、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノおよびジブチルアミノなどのモノ−またはジ−C1−6アルキルアミノ基;アシル基とは、たとえば、ホルミル基、アセチル、イソバレイル、プロピオニルおよびピバロイルなどのC2−12アルカノイル基、ベンジルカルボニルなどのアルアルキルカルボニル基ならびにベンゾイルおよびナフトイルなどのアロイル基を;
【0008】
アルキルオキシカルボニル基とは、たとえば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、1,1−ジメチルプロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニルおよびtert−ペンチルオキシカルボニルなどの直鎖状または分枝鎖状のC1−12アルキルオキシカルボニル基を;アルアルキルオキシカルボニル基とは、たとえば、ベンジルオキシカルボニルおよびフェネチルオキシカルボニル基などのアルC1−6アルキルオキシカルボニル基を;複素環オキシカルボニル基とは、たとえば、2−フルフリルオキシカルボニルおよび8−キノリルオキシカルボニルなどの基を;含酸素複素環式基とは、たとえば、2−テトラヒドロピラニルおよび2−テトラヒドロフラニルなどの基を;含硫黄複素環式基とは、たとえば、テトラヒドロチオピラニルなどの基を;アルコキシアルキル基とは、たとえば、メトキシメチルおよび1−エトキシエチルなどのC1−6アルキルオキシC1−6アルキル基を;アルアルキルオキシアルキル基とは、たとえば、ベンジルオキシメチルおよびフェネチルオキシメチルなどのアルC1−6アルキルオキシC1−6アルキル基を;置換シリル基とは、たとえば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリブチルシリル、トリベンジルシリルおよびトリフェニルシリルなどの基を意味する。
【0009】
ヒドロキシル保護基としては、通常のヒドロキシル基の保護基として使用し得るすべての基を含み、たとえば、W.グリーン(W.Greene)ら、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、ジョン・ウィリイ・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,INC.)、1999年、第3版、p.17−245に記載されている基が挙げられる。具体的には、たとえば、置換されていてもよいアシル、アルキルオキシカルボニル、アルアルキルオキシカルボニル、複素環オキシカルボニル、アルキル、アルケニル、アルアルキル、含酸素複素環式、含硫黄複素環式、アルコキシアルキル、アルアルキルオキシアルキルおよび置換シリル基などが挙げられる。
【0010】
のヒドロキシル保護基におけるアシル、アルキルオキシカルボニル、アルアルキルオキシカルボニル、複素環オキシカルボニル、アルキル、アルケニル、アルアルキル、含酸素複素環式、含硫黄複素環式、アルコキシアルキル、アルアルキルオキシアルキルおよび置換シリル基は、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルアルキル基、アルコキシ基、置換シリル基、シアノ基、アシル基、アルカンスルホニル基、アリールスルホニル基およびアルキルアミノ基から選ばれる1つ以上の基で置換されてもよい。たとえば、Rのヒドロキシル保護基がアシル基の場合、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アリール基およびアルコキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されてもよい。
およびRのアルキル、アルキレンまたはアルケニレン基は、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルアルキル基、アリール基およびアルコキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されてもよい。
Xのアルカンスルホニルオキシ基は、1つ以上のハロゲン原子で置換されてもよい。
Xのアリールスルホニルオキシ基は、ハロゲン原子、ニトロ基、アルキル基およびアルコキシ基から選ばれる1つ以上の基で置換されてもよい。
【0011】
一般式[1]で表される本発明化合物において、好ましい化合物としては、以下の化合物が挙げられる。
が、水素原子または置換されていてもよいアシル基である化合物が、好ましく、置換されていてもよいアシル基である化合物が、より好ましく、置換されていてもよいベンゾイル基である化合物が、さらに好ましく、ベンゾイル基である化合物が、よりさらに好ましい。
およびRが、同一または異なって置換されていてもよいアルキル基、または、一緒になって置換されていてもよいアルキレン基である化合物が、好ましく、同一または異なって置換されていてもよいアルキル基である化合物が、より好ましく、同一または異なってメチル基またはエチル基である化合物が、さらに好ましい。
【0012】
本発明において、好ましい製造法としては、以下の方法が挙げられる。
【0013】
一般式[1]
【化4】

「式中、R、RおよびRは、前記と同様の意味を有する。」で表されるアセタール誘導体の製造における、一般式[2]
【化5】

「式中、RおよびXは、前記と同様の意味を有する。」で表されるハロフェネチルアルコール誘導体を、パラジウム触媒の存在下、一般式[3]
【化6】

「式中、RおよびRは、前記と同様の意味を有する。」で表されるチオール誘導体またはその塩とのカップリング反応に付す方法において、一般式[2]の化合物のRが、水素原子または置換されていてもよいアシル基、Xが、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子または置換されていてもよいアルカンスルホニルオキシ基;一般式[3]の化合物またはその塩のRおよびRが、同一または異なって置換されていてもよいアルキル基、または、一緒になって置換されていてもよいアルキレン基である化合物を用いる方法が、好ましい。一般式[2]の化合物のRが、置換されていてもよいアシル基、Xが、臭素原子、ヨウ素原子または置換されていてもよいアルカンスルホニルオキシ基;一般式[3]の化合物またはその塩のRおよびRが、同一または異なって置換されていてもよいアルキル基である化合物を用いる方法が、より好ましい。一般式[2]の化合物のRが、置換されていてもよいベンゾイル基、Xが、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基;一般式[3]の化合物またはその塩のRおよびRが、同一または異なってメチル基またはエチル基である化合物を用いる方法が、さらに好ましい。一般式[2]の化合物のRが、ベンゾイル基、Xが、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基;一般式[3]の化合物またはその塩のRおよびRが、同一または異なってメチル基またはエチル基である化合物を用いる方法が、よりさらに好ましい。
【0014】
2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールの製造における、一般式[1]
【化7】

「式中、R、RおよびRは、前記と同様の意味を有する。」で表されるアセタール誘導体を、酸の存在下、分子内閉環反応に付し、必要に応じ脱保護反応に付す方法において、一般式[1]の化合物のRが、水素原子または置換されていてもよいアシル基、RおよびRが、同一または異なって置換されていてもよいアルキル基、または、一緒になって置換されていてもよいアルキレン基である化合物を用いる方法が、好ましい。Rが、置換されていてもよいアシル基、RおよびRが、同一または異なって置換されていてもよいアルキル基である化合物を用いる方法が、より好ましい。Rが、置換されていてもよいベンゾイル基、RおよびRが、同一または異なってメチル基またはエチル基である化合物を用いる方法が、さらに好ましい。Rが、ベンゾイル基、RおよびRが、同一または異なってメチル基またはエチル基である化合物を用いる方法が、よりさらに好ましい。
【0015】
次に、本発明の製造方法について説明する。
【0016】
一般式[2]の化合物から一般式[1]のアセタール誘導体の製造法について説明する。
【0017】
[製造法1]

「式中、R1、R、RおよびXは、前記と同様の意味を有する。」
【0018】
一般式[2]の化合物として、たとえば、2−(4−ブロモフェニル)エタノールなどが市販されている。また、2−(4−ブロモフェニル)エチル=アセタート、2−(4−ヨードフェニル)エタノール、2−(4−ヨードフェニル)エチル=アセタートおよび4−(2−(アセトキシ)エチル)フェニル=トリフルオロメタンスルホナートなどが知られている。
一般式[3]の化合物またはその塩として、たとえば、2−メルカプトアセトアルデヒド=ジメチルアセタール(特開昭63−233970号公報)、2−メルカプトアセトアルデヒド=ジエチルアセタール(特開平08−119967号公報)および2−メルカプトメチル−1,3−ジオキソラン(DE3927992号公報)などが知られている。
【0019】
一般式[2]の化合物を、パラジウム触媒の存在下、塩基の存在下または不存在下、配位子の存在下または不存在下、一般式[3]の化合物またはその塩とのカップリング反応に付すことにより、一般式[1]の化合物を製造することができる。
【0020】
この反応で使用される溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、たとえば、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサンおよびシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンおよびビス(2−メトキシエチル)エーテルなどのエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよび1−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;酢酸エチルなどのエステル類;アセトンなどのケトン類;ならびにアセトニトリルなどのニトリル類などが挙げられ、これらは、混合して使用してもよい。好ましい溶媒としては芳香族炭化水素類およびアミド類が挙げられ、トルエンおよび1−メチル−2−ピロリドンがより好ましい。溶媒の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、一般式[2]の化合物に対して1〜20倍量(v/w)、より好ましくは1〜10倍量(v/w)である。
【0021】
この反応で使用されるパラジウム触媒としては、たとえば、パラジウム−炭素およびパラジウム黒などの金属パラジウム;塩化パラジウムなどの無機パラジウム塩;酢酸パラジウムなどの有機パラジウム塩;テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)クロリドおよびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)などの有機パラジウム錯体;ならびにポリマー担持ビス(アセタート)トリフェニルホスフィンパラジウム(II)およびポリマー担持ジ(アセタート)ジシクロヘキシルホスフィンパラジウム(II)などのポリマー固定化有機パラジウム錯体などが挙げられる。好ましいパラジウム触媒としては、無機パラジウム塩、有機パラジウム塩および有機パラジウム錯体などが挙げられ、塩化パラジウム、酢酸パラジウムおよびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)がより好ましい。パラジウム触媒の使用量は、一般式[2]の化合物に対して、0.0001倍モル以上であればよく、好ましくは、0.001〜0.02倍モルである。
【0022】
この反応で所望により使用される塩基としては、たとえば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)およびピリジンなどの有機塩基;ナトリウム=メトキシド、ナトリウム=エトキシド、カリウム=tert−ブトキシドおよびナトリウム=tert−ブトキシドなどの金属アルコキシド;ならびに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸バリウム、水素化ナトリウムおよび水素化カリウムなどの無機塩基などが挙げられる。好ましい塩基としては、トリエチルアミンおよびN,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基が挙げられ、トリエチルアミンがより好ましい。塩基の使用量は、一般式[2]の化合物に対して、1倍モル以上であればよく、好ましくは、1〜3倍モルである。
【0023】
この反応で所望により使用される配位子としては、たとえば、トリメチルホスフィンおよびトリ(tert−ブチル)ホスフィンなどのトリアルキルホスフィン類;トリシクロヘキシルホスフィンなどのトリシクロアルキルホスフィン類;トリフェニルホスフィンおよびトリトリルホスフィンなどのトリアリールホスフィン類;トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイトおよびトリブチルホスファイトなどのトリアルキルホスファイト類;トリシクロヘキシルホスファイトなどのトリシクロアルキルホスファイト類;トリフェニルホスファイトなどのトリアリールホスファイト類;1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾリウムクロリドなどのイミダゾリウム塩;アセチルアセトンおよびオクタフルオロアセチルアセトンなどのジケトン類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミンおよびトリイソプロピルアミンなどのアミン類;1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン;ならびに2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチルなどが挙げられる。好ましい配位子としては、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンおよび2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチルが挙げられる。配位子の使用量は、一般式[2]の化合物に対して、0.0001倍モル以上であればよく、好ましくは、0.001〜0.02倍モルである。
【0024】
この反応で用いる一般式[3]の化合物またはその塩の使用量は、一般式[2]の化合物に対して1倍モル以上であればよく、好ましくは、1〜2倍モルである。
この反応は、0〜200℃、好ましくは、50〜120℃で1分間〜24時間実施すればよい。また、不活性ガス気流下で行うことが好ましく、不活性ガスとしては、窒素およびアルゴンなどが挙げられる。
上記の製造法において、一般式[3]の化合物は、塩として用いることもでき、それらの塩としては、たとえば、ナトリウム、カリウムおよびセシウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;ならびにトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)およびピリジンなどの含窒素有機塩基との塩などが挙げられる。
【0025】
このようにして得られた一般式[1]の化合物は、必要に応じ、たとえば、ヒドロキシル基のアシル化反応、カルボキシル基の加水分解反応など、自体公知の方法を適時組み合わせて、他の一般式[1]の化合物に誘導することができる。また、一般式[1]の化合物は、単離せずにそのまま次の反応に用いてもよい。
【0026】
一般式[1]の化合物から式[4a]で表される2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールの製造法について説明する。
【0027】
[製造法2]

「式中、R、RおよびRは、前記と同様の意味を有する。」
【0028】
(2−1)
一般式[1]の化合物を、酸の存在下、分子内閉環反応に付すことにより、一般式[4]の化合物を製造することができる。
この反応で使用される溶媒としては、反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、たとえば、ヘキサン、シクロヘキサンおよびヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレンおよびメシチレンなどの芳香族炭化水素類;ならびにジクロロエタン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられ、これらは、混合して使用してもよい。好ましい溶媒としては、芳香族炭化水素類およびハロゲン化炭化水素類が挙げられ、トルエンおよびクロロベンゼンがより好ましい。溶媒の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、一般式[1]の化合物に対して1〜20倍量(v/w)、より好ましくは1〜10倍量(v/w)である。
【0029】
この反応で使用される酸としては、たとえば、オルトリン酸、メタリン酸、ポリリン酸および五酸化二リンなどのリン酸類;ならびに三フッ化ホウ素ジエチル錯体、塩化亜鉛および塩化錫などのルイス酸が挙げられる。好ましい酸としては、リン酸類が挙げられ、オルトリン酸および五酸化二リンがより好ましい。酸の使用量は、特に限定されないが、一般式[1]の化合物に対して1倍モル以上あればよく、好ましくは、1〜10倍モルである。
この反応は、水を添加して反応に付すことが好ましく、添加される水の量は、特に限定されないが、一般式[1]の化合物に対して、0.2〜1倍量(w/w)添加することが、好ましい。
この反応は、0℃から反応系の還流温度の範囲で実施すればよく、還流下に30分間〜24時間実施することが、好ましい。また、反応に伴い生成するアルコールおよび水を、共沸により留去しながら反応することが、より好ましい。
【0030】
また、一般式[1]の化合物を、自体公知の方法で脱保護し、一般式[5]のアルデヒド体を単離してもよい。得られた一般式[5]の化合物は、上記で述べた条件で、酸の存在下、分子内閉環反応に付すことにより、一般式[4]の化合物を製造することができる。
このようにして得られた一般式[4]の化合物は、単離せずにそのまま次の反応に用いてもよい。
【0031】
(2−2)
一般式[4]の化合物を、必要に応じ脱保護反応に付すことにより、式[4a]で表される2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールへ誘導することができる。
のヒドロキシル保護基の脱保護反応は、たとえば、W.グリーン(W.Greene)ら、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、ジョン・ウィリイ・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,INC.)、1999年、第3版、p.17−245などに記載の方法またはそれに準じた方法で行えばよい。
【0032】
たとえば、Rが置換されていてもよいアシル基である場合、一般式[4]の化合物を、塩基の存在下、加水分解反応に付すことにより、式[4a]で表される2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールへ誘導することができる。
【0033】
この反応で使用される溶媒としては、反応に影響を及ぼさないものであれば特に限定されないが、たとえば、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンおよびビス(2−メトキシエチル)エーテルなどのエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドおよび1−メチル−2−ピロリドンなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;アセトンおよび2−ブタノンなどのケトン類;メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノールおよびブタノールなどのアルコール類;アセトニトリルなどのニトリル類;ならびに水などが挙げられ、これらは混合して使用してもよい。好ましい溶媒としては、アルコール類が挙げられ、2−プロパノールがより好ましい。溶媒の使用量は、特に限定されないが、好ましくは、一般式[4]の化合物に対して1〜20倍量(v/w)、より好ましくは1〜10倍量(v/w)である。
【0034】
この反応で使用される塩基としては、たとえば、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルピペリジン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)およびピリジンなどの有機塩基;ナトリウム=メトキシド、ナトリウム=エトキシド、カリウム=tert−ブトキシドおよびナトリウム=tert−ブトキシドなどの金属アルコキシド;ならびに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムおよび炭酸バリウムなどの無機塩基などが挙げられる。好ましい塩基としては、無機塩基などが挙げられ、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが、より好ましい。塩基の使用量は、一般式[4]の化合物に対して、1倍モル以上であればよく、好ましくは、1〜2倍モルである。
【0035】
この反応で用いる水の使用量は、1倍モル以上であればよく、好ましくは、溶媒としての機能をもたせるため、0.5〜2倍量(w/w)である。
この反応は、0〜200℃、好ましくは、0〜100℃で1分間〜24時間実施すればよい。
【0036】
上記で述べた製造法により得られた、一般式[1]、[4]および[5]の化合物ならびに式[4a]で表される2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールは、抽出、晶出、蒸留およびカラムクロマトグラフィーなどの通常の方法によって単離精製することができる。
また、上記で述べた製造法における一般式[1]、[2]、[3]、[4]および[5]の化合物またはその塩において、異性体(たとえば、光学異性体、幾何異性体および互変異性体など)が存在する場合、これらすべての異性体を使用することができ、また、金属塩、水和物、溶媒和物およびすべての結晶形を使用することができる。
【0037】
つぎに、本発明を参考例および実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
溶離液における混合比は、容量比である。特に記載のない場合、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにおける担体は、富士シリシア化学株式会社、B.W.シリカゲル、BW−127ZHまたはPSQ100Bである。
各実施例において各略号は、以下の意味を有する。
Bz:ベンゾイル、Et:エチル、Me:メチル、Tf:トリフルオロメタンスルホニル
【0038】
参考例1

4−ヨードフェネチルアルコール6.19gをトルエン20mLに溶解し、トリエチルアミン2.77gおよび塩化ベンゾイル3.85gを加え、室温で1時間攪拌した。反応液に水20mLを加えた後、攪拌した。有機層を分取し、水20mLおよび飽和食塩水20mLで順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物に、トルエン5mLおよびシクロヘキサン20mLを加えて冷却後、析出物をろ取し、白色固体の4−ヨードフェネチル=ベンゾアート6.58gを得た。
1H-NMR(CDCl3)δ値:3.02(2H,t,J=6.8Hz),4.50(2H,t,J=6.8Hz),7.00-7.10(2H,m),7.40-7.50(2H,m),7.50-7.60(1H,m),7.60-7.70(2H,m),7.95-8.05(2H,m)
【0039】
参考例2

メチル=(4−ヒドロキシフェニル)アセタート10.0gをトルエン50mLに懸濁し、トリエチルアミン7.31gを加えた後、氷冷下、トリフルオロメタンスルホン酸無水物18.7gを滴下し、同温度で0.5時間撹拌した。反応液を氷水100mLに加えた。有機層を分取し、水および飽和食塩水で順次洗浄後、活性炭処理し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、褐色油状の4−((メトキシカルボニル)メチル)フェニル=トリフルオロメタンスルホナート17.8gを得た。
1H-NMR(CDCl3)δ値:3.66(2H,s),3.72(3H,s),7.20-7.30(2H,m),7.35-7.40(2H,m).
【0040】
参考例3

塩化リチウム3.03gをジグライム62mLに懸濁し、水素化ホウ素ナトリウム2.70gを加えた後、室温で0.5時間撹拌した。反応液に氷冷下、4−((メトキシカルボニル)メチル)フェニル=トリフルオロメタンスルホナート17.8gのジグライム27mL溶液を滴下し、室温で1.5時間撹拌後、塩化リチウム0.76gおよび水素化ホウ素ナトリウム0.68gを加え、室温で2時間撹拌した。反応液を冷却後、アセトン18mL、6mol/L塩酸9mL、水90mLおよびトルエン90mLを加えた後、不溶物をろ去した。有機層を分取し、3回水洗後、飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、淡黄色油状の4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル=トリフルオロメタンスルホナート15.8gを得た。
1H-NMR(CDCl3)δ値:1.49(1H,t,J=5.6Hz),2.90(2H,t,J=6.5Hz),3.80-3.95(2H,m),7.15-7.25(2H,m),7.30-7.35(2H,m).
【0041】
参考例4

4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル=トリフルオロメタンスルホナート15.8gをトルエン79mLに溶解し、トリエチルアミン6.49gを加えた後、氷冷下、塩化ベンゾイル8.19gを滴下し、室温で0.5時間撹拌した。反応液に水79mLを加えた。有機層を分取し、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物に2−プロパノールを加えて冷却後、析出物をろ取し、白色固体の4−(2−(ベンゾイルオキシ)エチル)フェニル=トリフルオロメタンスルホナート14.6gを得た。
1H-NMR(CDCl3)δ値:3.12(2H,t,J=6.8Hz),4.54(2H,t,J=6.8Hz),7.20-7.30(2H,m),7.30-7.40(2H,m),7.40-7.50(2H,m),7.50-7.60(1H,m),7.95-8.05(2H,m).
【0042】
実施例1

窒素雰囲気下、2−(4−ヨードフェニル)エチル=ベンゾアート0.50gを1−メチル−2−ピロリドン5mLに溶解し、2−メルカプトアセトアルデヒド=ジエチルアセタール0.26g、トリエチルアミン0.35g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.03gおよび1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン0.06gを加え、55℃で3時間撹拌した。反応液を冷却後、水および酢酸エチルを加えた。有機層を分取し、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=15:1)で精製し、黄色油状の4−((2,2−ジエトキシエチル)チオ)フェネチル=ベンゾアート0.45gを得た。
1H-NMR(CDCl3)δ値:1.18(6H,t,J=7.1Hz),3.04(2H,t,J=6.9Hz),3.11(2H,d,J=5.6Hz),3.45-3.70(4H,m),4.51(2H,t,J=6.9Hz),4.63(1H,t,J=5.6Hz),7.15-7.25(2H,m),7.30-7.40(2H,m),7.40-7.50(2H,m),7.50-7.60(1H,m),7.95-8.05(2H,m)
【0043】
実施例2

アルゴン雰囲気下、4−ヨードフェネチル=ベンゾアート1.00gを1−メチル−2−ピロリドン5mLに溶解し、2−メルカプトアセトアルデヒド=ジエチルアセタール0.51g、トリエチルアミン0.69g、酢酸パラジウム0.03gおよび1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン0.08gを加え、80〜90℃で0.5時間撹拌した。反応液を冷却し、氷水および酢酸エチル混液に滴下した。有機層を分取し、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、淡黄色油状の4−((2,2−ジエトキシエチル)チオ)フェネチル=ベンゾアート1.05gを得た。
CDCl3中における1H-NMRは、実施例1の値と一致した。
【0044】
実施例3

窒素雰囲気下、2−(4−ヨードフェニル)エチル=ベンゾアート1.00gをトルエン5mLに溶解し、2−メルカプトアセトアルデヒド=ジエチルアセタール0.47g、トリエチルアミン0.32g、酢酸パラジウム0.01gおよび1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン0.03gを加え、90〜100℃で2時間撹拌した。反応液を冷却後、水を加え、6mol/L塩酸でpH1に調整した。有機層を分取し、水を加え、5mol/L水酸化ナトリウム水溶液でpH12に調整した。有機層を分取し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、淡黄色油状の4−((2,2−ジエトキシエチル)チオ)フェネチル=ベンゾアート1.05gを得た。
CDCl3中における1H-NMRは、実施例1の値と一致した。
【0045】
実施例4

窒素雰囲気下、2−(4−ヨードフェニル)エチル=ベンゾアート2.00gをトルエン10mLに溶解し、2−メルカプトアセトアルデヒド=ジエチルアセタール0.94g、トリエチルアミン1.38g、塩化パラジウム0.01gおよび2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル0.04gを加え、5時間加熱還流した。反応後の4−((2,2−ジエトキシエチル)チオ)フェネチル=ベンゾアートの生成率は、HPLCで分析した結果、57%であった。
【0046】
実施例5

窒素雰囲気下、2−(4−ブロモフェニル)エチル=ベンゾアート1.00gをトルエン5mLに溶解し、2−メルカプトアセトアルデヒド=ジエチルアセタール0.54g、トリエチルアミン0.80g、酢酸パラジウム0.01gおよび1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン0.04gを加え、8時間加熱還流した。反応後の4−((2,2−ジエトキシエチル)チオ)フェネチル=ベンゾアートの生成率は、HPLCで分析した結果、35%であった。
【0047】
実施例6

アルゴン雰囲気下、4−(2−(ベンゾイルオキシ)エチル)フェニル=トリフルオロメタンスルホナート0.50gを1−メチル−2−ピロリドン5mLに溶解し、2−メルカプトアセトアルデヒド=ジエチルアセタール0.24g、トリエチルアミン0.33g、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)0.02gおよび1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン0.04gを加え、80℃で2時間撹拌した。反応液を冷却後、水および酢酸エチルを加えた。有機層を分取し、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、無色油状の4−((2,2−ジエトキシエチル)チオ)フェネチル=ベンゾアート0.42gを得た。
CDCl3中における1H-NMRは、実施例1の値と一致した。
【0048】
実施例7

4−((2,2−ジエトキシエチル)チオ)フェネチル=ベンゾアート1.05gをトルエン10mLに溶解し、85%リン酸0.3mLを加え、加熱還流下、2.5時間共沸脱水した。反応液を冷却し、水、セライトおよび活性炭を加えて撹拌した後、不溶物をろ去した。有機層を分取し、飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン:トルエン=1:1)で精製し、淡黄色固体の2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エチル=ベンゾアート0.67gを得た。
1H-NMR(CDCl3)δ値:3.20(2H,t,J=7.0Hz),4.59(2H,t,J=7.0Hz),7.25-7.35(2H,m),7.40-7.45(3H,m),7.50-7.60(1H,m),7.74(1H,s),7.83(1H,d,J=8.3Hz),8.00-8.05(2H,m)
【0049】
実施例8

4−((2,2−ジエトキシエチル)チオ)フェネチル=ベンゾアート1.5gをクロロベンゼン15mLに溶解し、五酸化二リン0.57gおよび水0.5mLを加え、加熱還流下、7時間共沸脱水した。反応液を冷却し、不溶物をろ去し、水およびトルエンを加えて撹拌した。有機層を分取し、水および飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;ヘキサン:酢酸エチル=30:1)で精製し、白色固体の2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エチル=ベンゾアート0.84gを得た。
CDCl3中における1H-NMRは、実施例7の値と一致した。
【0050】
実施例9

窒素雰囲気下、4−ヨードフェネチル=ベンゾアート100.0gをトルエン500mLに溶解し、2−メルカプトアセトアルデヒド=ジエチルアセタール44.8g、トリエチルアミン34.5g、酢酸パラジウム0.06gおよび1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン0.16gを加え、85〜95℃で7時間撹拌した。反応液を冷却後、水200mLを加え、6mol/L塩酸でpH2に調整した。有機層を分取し、水200mLを加え、2mol/L水酸化ナトリウム水溶液でpH12に調整した。有機層を分取し、水洗し、4−((2,2−ジエトキシエチル)チオ)フェネチル=ベンゾアートを含むトルエン溶液529gを得た。このトルエン溶液291gにシリカゲル5.5gを加え、0.5時間撹拌後、不溶物をろ去し、ろ滓をトルエン165mLで洗浄した。ろ液と洗液を合わせ、トルエン110mL、85%リン酸16.5mLおよび水27.5mLを加え、加熱還流下、1時間共沸脱水した。水27.5mLを加え、加熱還流下、8時間共沸脱水した。反応液を冷却後、水165mL、セライト5.5gおよび活性炭5.5gを加えて撹拌した後、不溶物をろ去し、ろ滓をトルエン55mLで洗浄した。ろ液と洗液を合わせ、有機層を分取し、水洗後、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物にシクロヘキサンを加えて冷却後、析出物をろ取し、黄色固体の2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エチル=ベンゾアート34.5gを得た。
CDCl3中における1H-NMRは、実施例7の値と一致した。
【0051】
実施例10

2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エチル=ベンゾアート46.0gを2−プロパノール70mL、水70mLおよび水酸化ナトリウム9.77g混液に加え、50〜60℃で3時間攪拌した。反応液を冷却後、トルエン140mLおよび水140mLを加えた。有機層を分取し、水洗後、活性炭処理し、減圧下で溶媒を留去した。得られた残留物にシクロヘキサンを加え、析出物をろ取し、白色固体の2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノール26.9gを得た。
1H-NMR(CDCl3)δ値:1.40-1.55(1H,m),2.98(2H,t,J=6.5Hz),3.90(2H,t,J=6.5Hz),7.21(1H,dd,J=1.5,8.3Hz),7.29(1H,dd,J=0.7,5.4Hz),7.43(1H,d,J=5.4Hz),7.65-7.70(1H,m),7.82(1H,d,J=8.3Hz)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
【化1】

「式中、Rは、水素原子またはヒドロキシル保護基を;RおよびRは、同一または異なって置換されていてもよいアルキル基、または、一緒になって置換されていてもよいアルキレンもしくはアルケニレン基を示す。」で表されるアセタール誘導体。
【請求項2】
1が、水素原子または置換されていてもよいアシル基;RおよびRが、同一または異なって置換されていてもよいアルキル基、または、一緒になって置換されていてもよいアルキレン基である請求項1記載のアセタール誘導体。
【請求項3】
1が、置換されていてもよいアシル基;RおよびRが、同一または異なって置換されていてもよいアルキル基である請求項1〜2記載のアセタール誘導体。
【請求項4】
1が、置換されていてもよいベンゾイル基;RおよびRが、同一または異なってメチル基またはエチル基である請求項1〜3記載のアセタール誘導体。
【請求項5】
一般式
【化2】

「式中、Xは、ハロゲン原子または置換されていてもよいアルカンスルホニルオキシもしくはアリールスルホニルオキシ基を;Rは、水素原子またはヒドロキシル保護基を示す。」で表されるハロフェネチルアルコール誘導体を、パラジウム触媒の存在下、一般式
【化3】

「式中、RおよびRは、同一または異なって置換されていてもよいアルキル基、または、一緒になって置換されていてもよいアルキレンもしくはアルケニレン基を示す。」で表されるチオール誘導体またはその塩とのカップリング反応に付し、一般式
【化4】

「式中、R、RおよびRは、前記と同様の意味を有する。」で表されるアセタール誘導体を得、ついで、酸の存在下、分子内閉環反応し、必要に応じ脱保護反応に付すことを特徴とする、2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールの製造法。
【請求項6】
一般式
【化5】

「式中、Xは、ハロゲン原子または置換されていてもよいアルカンスルホニルオキシもしくはアリールスルホニルオキシ基を;Rは、水素原子またはヒドロキシル保護基を示す。」で表されるハロフェネチルアルコール誘導体を、パラジウム触媒の存在下、一般式
【化6】

「式中、RおよびRは、同一または異なって置換されていてもよいアルキル基、または、一緒になって置換されていてもよいアルキレンもしくはアルケニレン基を示す。」で表されるチオール誘導体またはその塩とのカップリング反応に付すことを特徴とする、一般式
【化7】

「式中、R、RおよびRは、前記と同様の意味を有する。」で表されるアセタール誘導体の製造法。
【請求項7】
一般式
【化8】

「式中、Rは、水素原子またはヒドロキシル保護基を;RおよびRは、同一または異なって置換されていてもよいアルキル基、または、一緒になって置換されていてもよいアルキレンもしくはアルケニレン基を示す。」で表されるアセタール誘導体を、酸の存在下、分子内閉環反応し、必要に応じ脱保護反応に付すことを特徴とする、2−(1−ベンゾチオフェン−5−イル)エタノールの製造法。

【公開番号】特開2006−328058(P2006−328058A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−121581(P2006−121581)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【出願人】(000003698)富山化学工業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】