説明

2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸の製造方法

【課題】 医薬品として有用な2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸を分離困難な2量体の副生を抑制して、簡便に、しかも高収率、高純度で、製造する方法を提供する。
【解決手段】 2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸を、無機塩基及び/又は無機塩類の存在下、ポリリン酸中で環化反応をさせて、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸を出発原料として用いて、無機塩基及び/又は無機塩類の存在下に、ポリリン酸中でこの化合物をフリーデル・クラフツ反応により分子内環化させる2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非ステロイド性鎮痛・抗炎症剤として有用な医薬品である2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸は、下記式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)と略記することがある。)であり、一般名ザルトプロフェンと呼ばれている。
【0003】
【化1】

上記2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)は、下記式(2)
【0004】
【化2】

で表されるジカルボン酸化合物である2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸を出発原料として用いて、これをフリーデル・クラフツ反応型の分子内環化反応させることにより得ることができる。
【0005】
2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)は優れた抗炎症作用と鎮痛作用を有する医薬品として知られている(特許文献1参照)。
【0006】
2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の製造方法としては、有機溶媒の非存在下で、2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸(2)をポリリン酸と加熱して、2個のカルボン酸基の一方のみをフリーデル・クラフツ反応型の分子内環化反応により合成する方法がある(特許文献2)。
【0007】
この方法は、84.8%と高い単離収率で目的化合物が得られる方法であるが、原料化合物に対して大過剰(例えば原料化合物の20質量倍)のポリリン酸を反応に用いる必要がある。このため、上記方法は原料費の増加の点、及び廃液処理の煩雑さの点で問題がある。
【0008】
この問題を解決する方法として、反応をトルエン等の有機溶媒の存在下で行なうことにより、ポリリン酸の使用量を原料質量の4〜6倍に減少させる方法が提案されている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開昭55−53282号公報
【特許文献2】特公平01−29793号公報(実施例3)
【特許文献3】特開昭57−171991号公報(第1表)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献2又は3に記載されている方法で2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)を製造すると、除去が困難な副生物が生成して精製できなくなる問題がある。この副生物は、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が2量体化して生成したものと推察される。この副生物は、本発明者が検討したあらゆる精製方法において、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)と挙動が似ているため、除去し難く、たとえ除去できたとしても目的化合物(1)の収率が低くなる。また、環化反応が終了した後も、生成した2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)自身が反応して2量体化する反応であるため、本来の主反応に平行して副反応が起こり、制御する事が困難である。このため、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の収率を一定に制御する事が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった。その結果、無機塩基及び/又は無機塩類を添加したポリリン酸中で環化反応を行うと、副生物がほとんど生成せずに反応が終了し、その結果高純度の2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が高収率で得られる事を見出し、本発明を完成するに至った。したがって、本発明の目的とするところは、副生物の生成を抑制して、高純度の2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)を収率良く製造することのできる製造方法を提供することにある。
【0011】
即ち、本発明は、2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸(2)を、無機塩基及び/又は無機塩類の存在下、ポリリン酸中で環化反応をさせることを特徴とする2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法によれば、無機塩基及び/又は無機塩の存在下に2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸(2)を分子内環化させているので、分離困難な2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の2量体化を抑制し、目的化合物(1)を高収率かつ高純度で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸(2))
本発明製造方法に於て、出発原料として使用される2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸(2)は、例えば特開昭57−106678号公報に記載の5−(1−シアノエチル)−2−フェニルチオフェニル酢酸エステルを加水分解する方法や、特開平8−99953号公報に記載されているメチル5−(1−メトキシカルボニルエチル)−2−フェニルチオフェニルアセテートを水酸化ナトリウムにより加水分解する方法、特開平10−226683号公報に記載されている2−(4−アミノ−3−カルボキシメチルフェニル)プロピオン酸を酸性下でジアゾ化した後、チオフェノールと反応させる方法などにより合成できる。
【0014】
(無機塩基、無機塩類)
本発明で使用される無機塩基は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、その他の金属などの水酸化物及びそれらの水和物である。
【0015】
本発明で使用される無機塩類は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、その他の金属などの塩類で、金属と対イオンとでイオン結合した化合物及びそれら水和物である。
【0016】
これらの無機塩基及び無機塩類は、試薬或いは工業原料として入手容易なものが何ら制限なく使用できる。
【0017】
無機塩基を具体的に例示すると、水酸化リチウム・1水和物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム・n水和物などが挙げられる。
【0018】
無機塩類を具体的に例示すると、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硫酸リチウム・1水和物、酢酸リチウム・2水和物等のリチウム塩類;
フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム・10水和物、炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム・1水和物、炭酸ナトリウム・10水和物、炭酸水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸ナトリウム・3水和物、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・1水和物、リン酸二水素ナトリウム・2水和物、リン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム・12水和物、リン酸二ナトリウム・7水和物、リン酸二ナトリウム・12水和物等のナトリウム塩類;
フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硫酸カリウム、硫酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、酢酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素カリウム・3水和物、リン酸三カリウム等のカリウム塩類;
フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化マグネシウム・6水和物、臭化マグネシウム、臭化マグネシウム・6水和物、ヨウ化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、リン酸水素マグネシウム・3水和物、リン酸マグネシウム第二・3水和物、リン酸マグネシウム第三・8水和物、硫酸マグネシウム、硫酸マグネシウム・7水和物、硫酸マグネシウム・n水和物等のマグネシウム塩類;
フッ化カルシウム、塩化カルシウム、塩化カルシウム・2水和物、塩化カルシウム・6水和物、塩化カルシウム・n水和物、臭化カルシウム・2水和物、臭化カルシウム・6水和物、ヨウ化カルシウム、ヨウ化カルシウム・n水和物、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム・1水和物、酢酸カルシウム・n水和物、リン酸二水素カルシウム・1水和物、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム・2水和物、リン酸三カルシウム等のカルシウム塩類;
フッ化アルミニウム、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、酢酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウム水和物、硫酸アルミニウム・14〜18水和物等のアルミニウム塩類等を挙げる事ができる。
【0019】
これらの中でも、副生物の抑制率が高く、反応速度が大きいなどの観点から、アルミニウム塩類、ナトリウム塩類、カリウム塩類、マグネシウム塩類、リチウム塩類が好ましく、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム・n水和物、リン酸アルミニウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム・1水和物、リン酸二水素ナトリウム・2水和物、リン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム・12水和物、リン酸二ナトリウム・7水和物、リン酸二ナトリウム・12水和物、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素カリウム・3水和物、リン酸三カリウム等がより好ましい。
【0020】
これらの無機塩基或いは無機塩類は、単独で使用しても、混合物として使用しても良い。混合比率も制限がない。
【0021】
これらの無機塩基或いは無機塩類の使用量は特に限定されないが、少な過ぎると不純物抑制作用が不足し、過度に多量の使用は、無機塩基或いは無機塩類自身が不純物として製品である2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)中に残存する可能性があり、また製造コストが増加する。従って、出発原料の2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸(2)100質量部に対して0.1質量部〜30質量部使用することが好ましく、0.5質量部〜20質量部使用することがより好ましい。無機塩基或いは無機塩類を反応系へ添加する方法としては特に制限はなく、例えばポリリン酸中にあらかじめ無機塩基、無機塩類を添加しておく方法が例示できる。
【0022】
(ポリリン酸)
本発明において使用するポリリン酸は、特に限定されず、例えばリン酸を加熱して調製したもや、リン酸と無水リン酸(五酸化ニリン)とを混合して調製したものが例示できる。
【0023】
リン酸を加熱して調製するポリリン酸は、試薬或いは工業的に入手できるものが何ら制限なく使用できる。リン酸と無水リン酸とを混合してポリリン酸を調製する場合は、リン酸(正リン酸)に所定のリン酸濃度となるように無水リン酸(五酸化ニリン)を添加し、或いは無水リン酸(五酸化ニリン)にリン酸を滴下する等の方法で両者を混合し、必要に応じて攪拌すればよい。
【0024】
なお、リン酸と無水リン酸(五酸化ニリン)を混合する際には、リン酸中の水分と無水リン酸(五酸化ニリン)とが反応して発熱するため、冷却をしながら両者を混合することが望ましい。混合が終了した後、無水リン酸(五酸化ニリン)を完全に溶解させるために混合物を加熱してもよい。このとき使用するリン酸および無水リン酸(五酸化ニリン)は試薬或いは工業的に容易に入手できるものが何ら制限なく使用できる。
【0025】
2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸(2)1質量部に対するポリリン酸の使用量は1〜20質量部程度である。ポリリン酸の使用量が1質量部未満の場合は、反応が十分に進行しない。また、ポリリン酸の使用量が20質量部を超える場合は、ポリリン酸を加えた量に比例して反応速度が大きくならない。更に、ポリリン酸の使用量が20質量部を超える場合は、原料コストおよび廃液処理の手間や製造コストが増加し、その結果利点が少なくなる。従って、本発明においては、2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸(2)1質量部に対するポリリン酸の使用量は、2〜18質量部、特に4〜16質量部が好ましい。
【0026】
(反応条件)
原料の2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸(2)を分子内環化させる反応は、ポリリン酸と接触させることにより好適に行なうことができる。この反応は、有機溶媒の存在下又は非存在下で行なうことができる。
【0027】
効率性およびコストの観点から、具体的には有機溶媒の使用に要する原材料費を削減でき、製造工程において使用する有機溶媒の除去や廃液となった有機溶媒の処理操作が(更には、これら操作に伴う費用が)不要になり、また更には反応釜(反応器)に仕込める原料の量を多くでき、その結果釜収率を高くすることができる(1バッチあたりの製造量を多くすることができる)という理由から、分子内環化反応は、有機溶媒の非存在下で行なうことが好ましい。
【0028】
分子内環化反応において有機溶媒を使用する場合、有機溶媒は水と相溶せず、反応を阻害しない有機溶媒が好ましい。このような有機溶媒を具体的に例示すると、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素類;ニトロベンゼン等のニトロ化芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;ジメチルカーボネート等のカーボネート類等を挙げる事ができる。これらの中でも、特に高い収率が期待できる、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化芳香族炭化水素類が好適に採用される。これら有機溶媒の使用量は特に制限が無いが、あまり量が多いと、一バッチあたりの収量が小さくなるため経済的ではない。通常、使用する原料の2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸(2)の0.1〜60質量倍、好ましくは1〜50質量倍となるように有機溶媒を使用することが好ましい。
【0029】
分子内環化反応における一般的な反応条件は次のとおりである。即ち、反応温度はあまり低いと反応速度が低下し、あまり高いと不純物の生成が増加するため、20℃〜110℃、好ましくは30℃〜100℃が好ましい。反応圧力は、常圧、減圧、加圧のいずれの状態でも良い。攪拌下で反応させることが好ましい。
【0030】
反応終了後、常法に従って反応液から2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)を単離する。例えば、反応後の反応液を氷中に投入し、析出する結晶をろ過や遠心分離することにより単離しても良い。また反応液から目的物を溶媒により抽出し、抽出液を洗浄後、溶媒を留去し、更に乾燥を行なっても良い。
【実施例】
【0031】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何等制限されるものではない。
【0032】
実施例1
塩化カルシウム管、攪拌羽、温度計を備えた200mlの三つ口フラスコ中で、冷却下、85%リン酸30gに五酸化ニリン25gを加え、ポリリン酸を調製した。次いで、70℃に加熱し、五酸化ニリンを溶解させた。水酸化アルミニウムを0.06g添加して70℃で30分間攪拌した後、2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸10g(31.6mmol)を投入し、70℃で5時間攪拌した。
【0033】
反応終了後、冷却下、反応液に水40gを添加してポリリン酸を分解した後、ジクロロメタン72mlを加え生成物を抽出した。抽出液を水36mlで三回洗浄した後、硫酸マグネシウムで抽出液を乾燥した。溶媒を留去すると、9.29g(収率98.5%)の粗2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が得られた。高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと称す)で純度を測定したところ98.72%であった。2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の2量体の含有率は0.05%であった。
【0034】
実施例2
実施例1の水酸化アルミニウムに代えて水酸化マグネシウム0.06gを添加した以外は実施例1と同様に操作した。その結果、9.21g(収率97.7%)の粗2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が得られた。HPLCで純度を測定したところ98.13%であり、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の2量体の含有率は0.09%であった。
【0035】
実施例3
実施例1の水酸化アルミニウムに代えてリン酸ナトリウム0.06gを添加した以外は実施例1と同様に操作した。その結果、9.20g(収率97.6%)の粗2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が得られた。HPLCで純度を測定したところ98.02%であり、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の2量体の含有率は0.15%であった。
【0036】
実施例4
実施例1の水酸化アルミニウムに代えて塩化カリウム0.06gを添加した以外は実施例1と同様に操作した。その結果、9.16g(収率97.1%)の粗2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が得られた。HPLCで純度を測定したところ98.12%であり、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の2量体の含有率は0.12%であった。
【0037】
実施例5
実施例1の水酸化アルミニウムに代えて硫酸マグネシウム0.06gを添加した以外は実施例1と同様の操作を行った。その結果、9.17g(収率97.2%)の粗2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が得られた。HPLCで純度を測定したところ98.01%であり、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の2量体の含有率は0.11%であった。
【0038】
実施例6
実施例1の水酸化アルミニウムに代えて水酸化アルミニウム・n水和物0.06gを添加し、反応時間を7時間とした以外は実施例1と同様に操作した。その結果、9.24g(収率98.0%)の粗2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が得られた。HPLCで純度を測定したところ98.51%であり、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の2量体の含有率は0.08%であった。
【0039】
実施例7
実施例1の水酸化アルミニウムに代えて硫酸ナトリウム・10水和物0.06gを添加した以外は実施例1と同様に操作した。その結果、9.22g(収率97.8%)の粗2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が得られた。HPLCで純度を測定したところ98.32%であり、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の2量体の含有率は0.10%であった。
【0040】
実施例8
実施例1の水酸化アルミニウムに代えてリン酸アルミニウム0.06gを添加した以外は実施例1と同様に操作した。その結果、9.20g(収率97.6%)の粗2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が得られた。HPLCで純度を測定したところ98.88%であり、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の2量体の含有率は0.08%であった。
【0041】
実施例9
実施例1の水酸化アルミニウムに代えてリン酸三カルシウム0.06gを添加した以外は、実施例1と同様に操作した。その結果、9.19g(収率97.5%)の粗2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が得られた。HPLCで純度を測定したところ98.10%であり、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の2量体の含有率は0.12%であった。
【0042】
実施例10
実施例1の水酸化アルミニウム0.06gに代えて水酸化アルミニウム2.2gを添加した以外は実施例1と同様に操作した。その結果、9.21g(収率97.7%)の粗2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が得られた。HPLCで純度を測定したところ98.51%であり、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の2量体の含有率は0.05%であった。
【0043】
実施例11
実施例3のリン酸ナトリウム0.06gに代えてリン酸ナトリウム2.2gを添加した以外は実施例1と同様に操作した。その結果、9.19g(収率97.5%)の粗2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が得られた。HPLCで純度を測定したところ98.11%であり、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の2量体の含有率は0.13%であった。
【0044】
実施例12
実施例1の85%リン酸30gに五酸化ニリン25gを加え、ポリリン酸を調製し、70℃に加熱し反応させる操作に代えて、和光純薬工業株式会社製試薬のポリリン酸50g、ジクロロメタン50mlを使用し、還流温度で5時間反応させた以外は実施例1と同様に操作した。
【0045】
その結果、9.27g(収率98.3%)の粗2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が得られた。HPLCで純度を測定したところ99.01%であり、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸の2量体の含有率は0.02%であった。
【0046】
実施例13
実施例1の水酸化アルミニウム0.06gに代えて水酸化アルミニウム0.06gと、リン酸ナトリウム0.06gとの混合物を添加した以外は実施例1と同様に操作した。その結果、9.20g(収率97.6%)の粗2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が得られた。HPLCで純度を測定したところ98.56%であり、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の2量体の含有率は0.04%であった。
【0047】
比較例1
水酸化アルミニウムを添加せずに反応を行った以外は、実施例1と同様に操作した。その結果、9.02g(収率95.6%)の粗2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が得られた。HPLCで純度を測定したところ95.13%であり、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の2量体の含有率は2.26%であった。
【0048】
比較例2
実施例12において、水酸化アルミニウムを添加せずに反応を行った以外は実施例12と同様に操作した。その結果、9.13g(収率96.8%)の粗2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)が得られた。HPLCで純度を測定したところ96.14%であり、2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸(1)の2量体の含有率は0.99%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸を、無機塩基及び/又は無機塩類の存在下、ポリリン酸中で環化反応をさせることを特徴とする2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸の製造方法。
【請求項2】
無機塩基及び/又は無機塩類の使用量が、2−(3−カルボキシメチル−4−フェニルチオフェニル)プロピオン酸100質量部に対して0.1〜30質量部である請求項1に記載の2−(10、11−ジヒドロ−10−オキシジベンゾ〔b、f〕チエピン−2−イル)プロピオン酸の製造方法。

【公開番号】特開2006−273731(P2006−273731A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−92977(P2005−92977)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】