説明

2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物の製造方法

【課題】 本発明の課題は、取り扱いやすい反応試剤を用い、簡便な方法にて、高収率で2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物を得る、工業的に好適な2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物の製造方法を提供することにある。
【解決手段】 本発明の課題は、アンモニア源の存在下、1−[2−(2’,4’−ジ置換フェニル)2−オキソエチル]ピリジニウム塩と環状不飽和アルデヒド化合物とを反応させることを特徴とする、2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物の製造方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物の製法に関する。本発明により製造される2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物は、有機電界発光素子の発光材料(例えば、イリジウム錯体)用原料として有用な化合物である(例えば、特許文献1参照)。
【背景技術】
【0002】
従来、2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物を製造する方法としては、例えば、以下の方法が開示されている。
(1)トルエン中、触媒量のテトラキストリフェニルホスフィンパラジウムの存在下、2,4−ジフルオロブロモベンゼンと2−(トリブチルスタニル)ピリジンとを反応させ、収率59%で2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)ピリジンを得る方法(例えば、非特許文献1参照)。
(2)酢酸アンモニウムの存在下、1−[2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−2−オキソエチル]ピリジニウムブロマイドと2−メチル−2−プロペナールとをメタノール中で反応させ、収率86%で5−メチル−2−(2’、4’−ジフルオロフェニル)ピリジンを得る方法(例えば、非特許文献2参照)。
(3)酢酸アンモニウムの存在下、1−[2−フェニル−2−オキソエチル]ピリジニウムヨージドと(1R)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン−2−カルボキシアルデヒドとをN,N−ジメチルホルムアミド中で反応させ、収率46%で5,6,7,8−テトラヒドロ−7,7−ジメチル−3−フェニル−6,8−メタノイソキノリン得る方法(例えば、非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3929690公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Chemistry Letters.,35巻,748ページ(2006年)
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society.,127巻,7502ページ(2005年)
【非特許文献3】Advanced Materials.,13巻,1245ページ(2001年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記記載の(1)の方法においては、高価なパラジウム触媒や取り扱いの難しい有機金属試薬を使用する等、工業的な製造方法としては不利であった。又、(2)の方法においては、具体的に本願発明の化合物についての合成例が何ら記載されていない上に、原料化合物のカウンターアニオンとして臭素が使用されているが、それ以外のカウンターアニオンとの比較検討はなされていなかった。更に、本願発明者らは、前記(3)の方法による2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物の製造を試みたが、極めて収率が悪いことが確認された(比較例として(3)の方法(非特許文献3の方法)で合成を行っている)。
【0006】
本発明の課題は、即ち、上記問題点を解決し、取り扱いやすい反応試剤を用い、簡便な方法にて、高収率で2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物を得る、工業的に好適な2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、アンモニア源の存在下、一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R及びRは、同一又は異なっていても良く、フッ素原子又はフルオロアルキル基を表し、Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)
で示される1−[2−(2’,4’−ジ置換フェニル)2−オキソエチル]ピリジニウム塩と一般式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R及びRは同一又は異なっていても良く、水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基、Aはメチレン基を示し、nは0又は1を示す。)
で示される環状不飽和アルデヒド化合物とを反応させることを特徴とする、一般式(3)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、R、R、R、R、A及びnは前記と同義である。)
で示される2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物の製造方法によって解決される。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、取り扱いやすい反応試剤を用い、簡便な方法にて、高収率で2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物を得る、工業的に好適な2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の反応において使用する1−[2−(2’,4’−ジ置換フェニル)2−オキソエチル]ピリジニウム塩(以下、化合物(1)と称する)は、前記の一般式(1)で示される。その一般式(1)において、R及びRは、同一又は異なっていても良く、フッ素原子又はフルオロアルキル基であり、具体的には、フッ素原子;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基等のフルオロアルキル基が挙げられるが、好ましくはフッ素原子、トリフルオロメチル基である。又、Xは塩素原子又は臭素原子である。
【0016】
前記1−[2−(2’,4’−ジ置換フェニル)2−オキソエチル]ピリジニウム塩のうち、例えば、1−[2−(2’,4’−ジ置換フェニル)2−オキソエチル]ピリジニウムクロライドは、2−クロロ−1−(2’,4’−ジフルオロフェニル)エタノンとピリジンを反応させることによって得ることが出来る化合物である(後述の参考例1に記載)。
【0017】
又、1−[2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−2−オキソエチル]ピリジニウムブロマイドは、例えば、2,4−ジフルオロフェニルアセトフェノンと臭素とを反応させて2−ブロモ−1−(2’,4’−ジフルオロフェニル)エタノンとした後、ピリジンを反応させることによって得ることが出来る化合物である(後述の参考例2に記載)。
【0018】
本発明の反応においては使用する環状不飽和アルデヒド化合物(以下、化合物(2)と称する)は、前記の一般式(2)で示される。その一般式(2)において、R及びRは同一又は異なっていても良く、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示すが、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基であるが、好ましくはメチル基である。又、Aはメチレン基であり、nは0又は1を示すが、好ましくは1である。
【0019】
前記環状不飽和アルデヒド化合物の使用量は、化合物(1)に対して、好ましくは0.5〜10モル、更に好ましくは0.7〜3モルである。
【0020】
本発明の反応において使用するアンモニア源としては、反応中にアンモニアを生じさせるものならば特に限定されないが、例えば、液体アンモニア;アンモニア溶液(有機溶媒溶液又は水溶液);ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の有機酸アンモニウム塩;塩酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等の無機酸アンモニウム塩;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類が挙げられるが、好ましくは有機酸アンモニウム塩であり、更に好ましくは酢酸アンモニウムが使用される。なお、これらのアンモニア源は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0021】
前記アンモニア源の使用量は、化合物(1)に対して、好ましくは1〜30モル、更に好ましくは1〜20モルである。
【0022】
本発明の反応は溶媒の存在下で行うのが望ましく、使用される溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されず、例えば、水;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;N,N’−ジメチルイミダゾリジノン等の尿素類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;スルホラン等のスルホン類;メタノール、エタノール、プロパノール等アルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等エーテル類が挙げられるが、好ましくはアミド類、アルコール類、更に好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、メタノールが使用される。なお、これらの溶媒は単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0023】
前記溶媒の使用量は、反応液の均一性や攪拌性により適宜調節するが、化合物(1)1gに対して、好ましくは0.01〜200g、更に好ましくは1〜100gである。
【0024】
本発明の反応は、例えば、化合物(1)、化合物(2)、アンモニア源及び溶媒を混合し、攪拌しながら反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは0〜200℃、更に好ましくは30〜150℃であり、反応圧力は特に制限されない。反応温度が前記範囲よりも低い場合には反応速度が極めて低下し、又、高い場合には副反応が起こりやすくなる。
【0025】
本発明の反応により、一般式(1)で示される2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物が得られるが、反応終了後、例えば、濾過、中和、抽出、濃縮、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法を組み合わせることによって単離・精製される。
【実施例】
【0026】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0027】
参考例1(1−[2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−2−オキソエチル]ピリジニウムクロライド)の合成)
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた100mlのガラス製三口フラスコに、2−クロロ−1−(2’,4’−ジフルオロフェニル)エタノン1.9g(10mmol)及びピリジン40mlを加え、攪拌しながら室温で4時間反応させた。反応終了後、析出物を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄した。得られた固体を乾燥させ、淡褐色固体として1−[2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−2−オキソエチル]ピリジニウムクロライド2.4gを得た(単離収率;89%)。
【0028】
参考例2(1−[2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−2−オキソエチル]ピリジニウムブロマイド)の合成
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた100mlのガラス製三口フラスコに、2,4−ジフルオロアセトフェノン5.0g(32mmol)及びクロロホルム30mlを加え攪拌した。次いで、臭素5.1g(32mmol)をクロロホルム8.5mlに溶解した溶液を、液温を5〜10℃を保ちながら滴下し、室温で攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応液に水を加え、クロロホルム層をチオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、濾液を減圧下で濃縮し、得られた濃縮物にピリジン60mlを加えて13時間攪拌させた。析出した固体を濾過した後、ジエチルエーテルで洗浄後に乾燥させて、1−[2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−2−オキソエチル]ピリジニウムブロマイド6.3gを得た(単離収率;63%)。
【0029】
実施例1(R=R=フッ素原子、X=塩素原子の場合;5,6,7,8−テトラヒドロ−7,7−ジメチル−3−(2’,4'−ジフルオロフェニル)−6,8−メタノイソキノリンの合成)
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた300mlのガラス製四つ口フラスコに、参考例1と同様にして合成した1−[2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−2−オキソエチル]ピリジニウムクロライド14g(52mmol)、(1R)−(−)−ミルテナール((1R)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン−2−カルボキシアルデヒド)5.9g(39mmol)、酢酸アンモニウム33g(430mmol)及びメタノール230mlを加え、攪拌しながら14時間60〜65℃で反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、減圧下で濃縮した。得られた濃縮物に水を加え、ヘキサンで3回抽出した。抽出液を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧下で濃縮した後、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=400/15(容量比))で精製し、褐色油状物として、5,6,7,8−テトラヒドロ−7,7−ジメチル−3−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−6,8−メタノイソキノリン6.5gを得た(単離収率;59%)。
なお、5,6,7,8−テトラヒドロ−7,7−ジメチル−3−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−6,8−メタノイソキノリンの物性値は以下の通りであった。
【0030】
H−NMR(CDCl,δ(ppm));8.24(1H、m)、7.93(1H、m)、7.50(1H、m)、6.96(1H、m)、6.88(1H、m)、3.01(2H、m)、2.84(1H、m)、2.71(1H、m)、2.31(1H、m)、1.69(3H、s)、1.23(1H、m)、0.66(3H、s)
【0031】
実施例2(R=R=フッ素原子、X=塩素原子の場合;5,6,7,8−テトラヒドロ−7,7−ジメチル−3−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−6,8−メタノイソキノリンの合成)
温度計、還流冷却器及び攪拌装置を備えた100mlのガラス製三口フラスコに、参考例1と同様な方法で合成した1−[2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−2−オキソエチル]ピリジニウムクロライド1.2g(4.4mmol)、(1R)−(−)−ミルテナール((1R)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン−2−カルボキシアルデヒド)0.56g(3.7mmol)、酢酸アンモニウム2.9g(38mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド30mlを加え、攪拌しながら60〜70℃で4時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、反応液に水及びヘキサンを加えた。得られた有機層を水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、得られた濾液を減圧下で濃縮し、濃縮物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=400/15(容量比))で精製し、褐色油状物として、5,6,7,8−テトラヒドロ−7,7−ジメチル−3−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−6,8−メタノイソキノリン0.75gを得た(単離収率;70%)。
【0032】
実施例3(R=R=フッ素原子、X=臭素原子の場合;5,6,7,8−テトラヒドロ−7,7−ジメチル−3−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−6,8−メタノイソキノリンの合成)
温度計、還流冷却器及び攪拌装置を備えた300mlのガラス製三口フラスコに、参考例2と同様な方法で合成した1−[2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−2−オキソエチル]−ピリジニウムブロマイド6.7g(21mmol)、(1R)−(−)−ミルテナール((1R)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン−2−カルボキシアルデヒド)2.6g(17mmol)、酢酸アンモニウム14g(182mmol)及びメタノール110mlを加え、攪拌しながら60〜65℃で反応させた。反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、濃縮物に水を加え、ヘキサンで3回抽出した。抽出液を水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。濾過後、得られた濾液を減圧下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=400/15(容量比))で精製し、褐色油状物として、5,6,7,8−テトラヒドロ−7,7−ジメチル−3−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−6,8−メタノイソキノリン3.0gを得た(単離収率;62%)。
【0033】
参考例3(1−[2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−2−オキソエチル]ピリジニウムヨージド)の合成)
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた100mlのガラス製三口フラスコに、2,4−ジフルオロアセトフェノン10g(64mmol)及びピリジン80mlを加え、攪拌した。次いで、ヨウ素16g(63mmol)を分割して添加し、液温を100〜110℃を保ちながら、攪拌させながら6時間反応させた。析出物を濾過し、冷却したエタノールで洗浄した後、乾燥させ、褐色固体として、1−[2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−2−オキソエチル]ピリジニウムヨージド16gを得た(単離収率69%)。
【0034】
比較例1(R=R=フッ素原子、X=ヨウ素原子の場合;5,6,7,8−テトラヒドロ−7,7−ジメチル−3−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−6,8−メタノイソキノリンの合成;非特許文献2に記載の方法)
攪拌装置、還流冷却器及び温度計を備えた300mlのガラス製四つ口フラスコに、参考例3と同様な方法で合成した1−[2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−2−オキソエチル]ピリジニウムヨージド1.1g(3.0mmol)、(1R)−(−)−ミルテナール((1R)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン−2−カルボキシアルデヒド)0.5g(3.3mmol)、酢酸アンモニウム2.8g(36mmol)及びメタノール10mlを加え、攪拌しながら60〜65℃で20時間反応させた。反応終了後、反応溶液の一部を取り出して薄層クロマトグラフィーで分析したところ、5,6,7,8−テトラヒドロ−7,7−ジメチル−3−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−6,8−メタノイソキノリンの生成は認められなかった。
【0035】
比較例2(R=R=フッ素原子、X=ヨウ素原子の場合;5,6,7,8−テトラヒドロ−7,7−ジメチル−3−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−6,8−メタノイソキノリンの合成;非特許文献3に記載の方法)
温度計、還流冷却器及び攪拌装置を備えた100mlのガラス製四口フラスコに、参考例3と同様な方法で合成した1−[2−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−2−オキソエチル]ピリジニウムヨージド1.1g(3.0mmol)、(1R)−(−)−ミルテナール((1R)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン−2−カルボキシアルデヒド)0.50g(3.3mmol)、酢酸アンモニウム0.51g(6.6mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド15mlを加え、攪拌しながら70〜75℃で6時間反応させた。反応溶液の一部を取り出して薄層クロマトグラフィーで分析したところ、5,6,7,8−テトラヒドロ−7,7−ジメチル−3−(2’,4’−ジフルオロフェニル)−6,8−メタノイソキノリンの生成は認められなかった。
【0036】
比較例3(R=R=水素原子(無置換)、X=ヨウ素原子の場合;5,6,7,8−テトラヒドロ−7,7−ジメチル−3−フェニル−6,8−メタノイソキノリンの合成;非特許文献3に記載の方法)
温度計、還流冷却器及び攪拌装置を備えた100mlのガラス製四口フラスコに、参考例3と同様な方法で合成した1−[2−フェニル−2−オキソエチル]ピリジニウムヨージド9.8g(30mmol)、(1R)−(−)−ミルテナール((1R)−6,6−ジメチルビシクロ[3.1.1]ヘプト−2−エン−2−カルボキシアルデヒド)5.0g(33mmol)、酢酸アンモニウム5.1g(66mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド50mlを加え、攪拌しながら70〜75℃で6時間反応させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、水を加えてヘキサン200mlで5回抽出した。抽出液を水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。濾過後、得られた濾液を減圧下で濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=400/10(容量比))で精製し、白色固体として、5,6,7,8−テトラヒドロ−7,7−ジメチル−3−フェニル−6,8−メタノイソキノリン4.0gを得た(単離収率;48%)。
【0037】
H−NMR(CDCl,δ(ppm)):8.21(1H、m)、7.96(2H、m)、7.51〜7.25(4H、m)、3.02(2H、m)、2.84(1H、m)、2.71(1H、m)、2.31(1H、m)、1.41(3H、s)、1.23(1H、m)、0.62(3H、s)
【0038】
比較例1の結果から、基質であるピリジニウム塩のカウンターアニオンがヨウ素イオン(即ち、X=ヨウ素原子)である場合、非特許文献2記載の方法では、本発明のような2−(2’,4’−置換フェニル)ピリジン化合物(2’位、4’位に置換基が導入されている化合物)の合成には適していないことが判明した。当該事実は先行技術文献(非特許文献2)からは何ら予測できないことである。
【0039】
又、比較例2及び3の結果から、非特許文献3記載の方法では、2−(無置換フェニル)ピリジン化合物(2’位、4’位に置換基が導入されていない化合物)の合成には適用が可能であるものの(比較例3参照)、本発明の2−(2’,4’−置換フェニル)ピリジン化合物(2’位、4’位に置換基が導入されている化合物)の合成には適していないことが判明した。
【0040】
本願発明の方法は、実施例と比較例の対比からも分かるように、2−(2’,4’−置換フェニル)ピリジン化合物(2’位、4’位に置換基が導入されている化合物)の合成に特に適していることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物の製造方法に関する。本発明の2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物は、有機電界発光素子の発光材料用原料として有用な化合物である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア源の存在下、一般式(1)
【化1】

(式中、R及びRは、同一又は異なっていても良く、フッ素原子又はフルオロアルキル基を表し、Xは塩素原子又は臭素原子を表す。)
で示される1−[2−(2’,4’−ジ置換フェニル)2−オキソエチル]ピリジニウム塩と一般式(2)
【化2】

(式中、R及びRは同一又は異なっていても良く、水素原子又は炭素原子数1〜3のアルキル基、Aはメチレン基を示し、nは0又は1を示す。)
で示される環状不飽和アルデヒド化合物とを反応させることを特徴とする、一般式(3)
【化3】

(式中、R、R、R、R、A及びnは前記と同義である。)
で示される2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記環状不飽和アルデヒド化合物の使用量は、1−[2−(2’,4’−ジ置換フェニル)2−オキソエチル]ピリジニウム塩に対して0.5〜10モルである請求項1記載の2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物の製造方法。
【請求項3】
アンモニア源が有機酸アンモニウム塩である請求項1記載の2−(2’,4’−ジ置換フェニル)ピリジン化合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−229113(P2010−229113A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80802(P2009−80802)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー使用合理化技術実用化開発/高効率有機EL照明の実用化研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願」
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】