説明

2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸無水結晶含有粉末の製造方法

【課題】 アスコルビン酸2−グルコシドの生成率が35質量%に満たない場合であっても、有意に固結し難い粉末を製造することを可能にするアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含む溶液に、CGTaseを作用させ、次いでグルコアミラーゼを作用させてアスコルビン酸2−グルコシドの生成率が27質量%以上である溶液を得る工程;得られた溶液を精製して、アスコルビン酸2−グルコシド含量を86質量%超とする工程;制御冷却法又は擬似制御冷却法によってアスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶を析出させる工程;析出したアスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶を採取し、熟成、乾燥する工程を含むアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造方法を提供することによって解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸無水結晶含有粉末の製造方法に関し、詳細には、従来品に比べて有意に固結し難い2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸無水結晶含有粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
L−アスコルビン酸は、その優れた生理活性や抗酸化作用の故に、従来から飲食品、化粧品などを含め種々の用途に使用されている。反面、L−アスコルビン酸は、直接還元性故に不安定であり、酸化分解を受け易く、生理活性を失い易いという大きな欠点を有している。このL−アスコルビン酸の欠点を解消すべく、本出願人は、特許文献1において、共同出願人の一人として、L−アスコルビン酸の2位の水酸基に1分子のD−グルコースが結合した2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸(以下、本明細書では「アスコルビン酸2−グルコシド」と略称する。)を開示した。このアスコルビン酸2−グルコシドは、直接還元性を示さず、安定であり、かつ、生体内では、生体内にもともと存在する酵素によってL−アスコルビン酸とD−グルコースとに分解されてL−アスコルビン酸本来の生理活性を発揮するという画期的な特性を有している。特許文献1に開示された製造方法によれば、アスコルビン酸2−グルコシドは、L−アスコルビン酸とα−グルコシル糖化合物とを含有する溶液にシクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼ(以下、「CGTase」と略称する。)又はα−グルコシダーゼなどの糖転移酵素を作用させることによって生成される。
【0003】
本出願人は、さらに、特許文献2において、アスコルビン酸2−グルコシドの過飽和溶液からアスコルビン酸2−グルコシドを晶析させることに成功し、結晶アスコルビン酸2−グルコシドと、それを含むアスコルビン酸2−グルコシド結晶含有粉末を開示した。また、本出願人は、非特許文献1において、大量スケールのアスコルビン酸2−グルコシド高含有物の製造方法を開示している。なお、アスコルビン酸2−グルコシド結晶としては、現在のところ、無水結晶しか知られていない。因みに、非特許文献2及び3には、アスコルビン酸2−グルコシド結晶について、X線による構造解析の結果が報告されている。
【0004】
本出願人は、さらに、特許文献3及び4において、酵素反応によって生成したアスコルビン酸2−グルコシドを含有する溶液を、強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーに供してアスコルビン酸2−グルコシドの高含有画分を採取するアスコルビン酸2−グルコシド高含有物の製造方法を開示した。また、本出願人は、特許文献5において、酵素反応によって生成したアスコルビン酸2−グルコシドを含有する溶液からアニオン交換膜を用いる電気透析によってL−アスコルビン酸や糖類などの夾雑物を除去するアスコルビン酸2−グルコシド高含有物の製造方法を開示し、特許文献6においては、アスコルビン酸2−グルコシドを含有する溶液をアニオンイオン交換樹脂と接触させて、アニオンイオン交換樹脂に吸着された成分を選択的に脱着させてアスコルビン酸2−グルコシドの高含有画分を得るアスコルビン酸2−グルコシド高含有物の製造方法を開示した。
【0005】
因みに、特許文献7乃至11には、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearotheromophilus、現在ではジオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)に分類される)由来のCGTaseとそのCGTase蛋白をコードする遺伝子の塩基配列、塩基配列から決定されたアミノ酸配列、さらには、人為的に変異を導入して作製した変異体CGTaseとそれを用いた糖質の製造方法が開示されている。また、非特許文献4及び5には、澱粉質とL−アスコルビン酸とを含む溶液にバチルス・ステアロサーモフィルス由来CGTaseを作用させ、次いでグルコアミラーゼを作用させることによりアスコルビン酸2−グルコシドを生成させたことが開示されている。
【0006】
さらに、本出願人は、特許文献12において、L−アスコルビン酸とα−グルコシル糖化合物とを含有する溶液にα−イソマルトシルグルコ糖質生成酵素、又は、α−イソマルトシルグルコ糖質生成酵素とCGTaseを作用させてアスコルビン酸2−グルコシドを生成させるアスコルビン酸2−グルコシドの製造方法を開示した。また、本出願人による特許文献13及び14には、それぞれ、α−イソマルトシルグルコ糖質生成酵素及びα−イソマルトシル転移酵素が、L−アスコルビン酸への糖転移を触媒してアスコルビン酸2−グルコシドを生成することが開示されている。
【0007】
また、アスコルビン酸2−グルコシドの用途に関しては、例えば特許文献15乃至34に示すとおり、多数の提案が為されている。アスコルビン酸2−グルコシドは、その優れた特性のために、食品素材、食品添加物素材、化粧品素材、医薬部外品素材、或いは医薬品素材として、従来からのL−アスコルビン酸の用途はもとより、L−アスコルビン酸が不安定であるために従来はL−アスコルビン酸を用いることができなかったその他の用途にも広く使用されるに至っている。
【0008】
上述したとおり、アスコルビン酸2−グルコシドは、現在では、L−アスコルビン酸と澱粉質とを原料にして、種々の糖転移酵素を用いて製造できることが知られている。しかし、本出願人がこれまでに得た知見によれば、液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含有する溶液に糖転移酵素としてCGTaseを作用させる方法が、アスコルビン酸2−グルコシドの生成率が最も高く、工業的に優れた方法である。この知見に基づき、本出願人は、液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含有する溶液にCGTaseを作用させる方法によってアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を製造し、これを化粧品・医薬部外品素材及び食品素材、食品添加物素材として、それぞれ、商品名『AA2G』(株式会社林原生物化学研究所販売)及び商品名『アスコフレッシュ』(株式会社林原商事販売)として販売している(以下、これら化粧品・医薬部外品素材、食品素材及び食品添加物素材として販売されている従来のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を「医薬部外品級の粉末」と略称する。)。
【0009】
しかし、医薬部外品級の粉末は、製品規格上のアスコルビン酸2−グルコシドの純度が98.0質量%以上と比較的高純度であり、製造直後は粉末としての良好な流動性を備えているにもかかわらず、高温、高湿の環境下に長期間置くと、自重や吸湿により固結するという欠点を有している。斯かる欠点に鑑み、医薬部外品級の粉末は、その10kgずつをポリエチレン製の袋に詰め、乾燥剤と共に蓋付きスチール缶に入れた商品形態で販売されているが、本発明者らが得たその後の知見によれば、このような商品形態であっても医薬部外品級の粉末は、保存期間が長期に及ぶと、往々にして固結し、粉末としての有用性が損なわれてしまうという問題点を有している。化粧品素材や医薬部外品素材、或いは食品素材、食品添加物素材として用いられるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末が固結すると、本来、原料素材が流動性を有する粉末であることを前提に製造プラントが設計されている場合には、原料素材の輸送や篩い分け、混合などの工程に支障をきたす恐れがある。
【0010】
一方、本出願人が分析用の標準試薬として販売しているアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末(商品名『アスコルビン酸2−グルコシド 999』、コード番号:AG124、株式会社林原生物化学研究所販売。)(以下、「試薬級の粉末」と略称する。)(非特許文献6参照)は、医薬部外品級の粉末が固結する条件下でも固結せず、粉末としての性状を保っている。この試薬級の粉末は、医薬部外品級の粉末と同じく、L−アスコルビン酸と澱粉質とを含有する溶液にCGTaseを作用させる工程を経て、得られるアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液を精製、濃縮して、アスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶を析出させ、これを採取することによって製造される粉末であるが、通常の工程に加えて、一旦得られた結晶を溶解して再び晶析させる再結晶工程や、再結晶工程で得られた結晶を、純水等を用いて繰り返し洗浄する洗浄工程を追加することによって、アスコルビン酸2−グルコシドの純度を99.9質量%以上という極めて高純度のレベルにまで高めている点で、医薬部外品級の粉末とは異なっている。したがって、医薬部外品級の粉末においても、アスコルビン酸2−グルコシドの純度を99.9質量%以上にまで高めれば固結し難いアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末が得られるのではないかと推測される。
【0011】
しかしながら、アスコルビン酸2−グルコシドの純度を99.9質量%以上という高純度にするには、上述したとおり、通常の製造工程に加えて、再結晶工程や、純水等を用いた繰り返しの洗浄工程を追加する必要があり、製造に要する時間と労力が増すばかりでなく、再結晶工程や洗浄工程におけるアスコルビン酸2−グルコシドのロスが避けられず、製品の歩留まりが低下し、製造コストが大幅に上昇するという不都合がある。このため、医薬部外品級の粉末よりも固結し難いアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得ることを目的として単純にアスコルビン酸2−グルコシドの純度を99.9質量%以上にまで高めるという選択肢は現実的なものではない。また、本発明者らの知見によれば、試薬級の粉末には、1,3−ブチレングリコール水溶液などの化粧品及び医薬部外品に汎用される親水性溶媒と混合した場合に溶解性に劣るという欠点がある。
【0012】
このような状況下、本出願人は、種々試行錯誤を重ねた結果、液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含有する溶液にCGTaseを作用させ、次いでグルコアミラーゼを作用させる製造方法において、酵素反応によって得られる反応溶液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率を35質量%以上に高める場合には、一旦採取したアスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶を溶解、再結晶することなく、従来の医薬部外品級の粉末を製造するのとほぼ同じ工程によって、従来の医薬部外品級の粉末よりも有意に固結し難い粉末を製造することができることを見出し、特許文献35に開示した。しかしながら、上記の製造方法において、酵素反応によって得られる反応溶液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率を35質量%以上にまで高めるには、限られた特定のCGTaseを単独で、或いはイソアミラーゼ等の澱粉枝切り酵素と併用して用いる必要があり、製造方法としての汎用性に欠けるという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平3−139288号公報
【特許文献2】特開平3−135992号公報
【特許文献3】特開平3−183492号公報
【特許文献4】特開平5−117290号公報
【特許文献5】特開平5−208991号公報
【特許文献6】特開2002−088095号公報
【特許文献7】特開昭50−63189号公報
【特許文献8】特開昭63−39597号公報
【特許文献9】特開平5−244945号公報
【特許文献10】国際公開WO96033267号パンフレット
【特許文献11】国際公開WO99015633号パンフレット
【特許文献12】特開2004−065098号公報
【特許文献13】国際公開WO02010361号パンフレット
【特許文献14】国際公開WO01090338号パンフレット
【特許文献15】国際公開WO05087182号パンフレット
【特許文献16】特開平4−046112号公報
【特許文献17】特開平4−182412号公報
【特許文献18】特開平4−182413号公報
【特許文献19】特開平4−182419号公報
【特許文献20】特開平4−182415号公報
【特許文献21】特開平4−182414号公報
【特許文献22】特開平8−333260号公報
【特許文献23】特開2005−239653号公報
【特許文献24】国際公開WO06033412号パンフレット
【特許文献25】特開2002−326924号公報
【特許文献26】特開2003−171290号公報
【特許文献27】特開2004−217597号公報
【特許文献28】国際公開WO05034938号パンフレット
【特許文献29】特開2006−225327号公報
【特許文献30】国際公開WO06137129号パンフレット
【特許文献31】国際公開WO06022174号パンフレット
【特許文献32】特開2007−063177号公報
【特許文献33】国際公開WO06132310号パンフレット
【特許文献34】国際公開WO07086327号パンフレット
【特許文献35】国際公開WO2011/027790号パンフレット
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】『山陽技術雑誌』、第45巻、1号、63〜69頁(1997年)
【非特許文献2】マンダイ・タカヒコら、『カーボハイドレート・リサーチ』(Carbohydrate Research)、第232巻、197〜205頁(1992年)
【非特許文献3】イノウエ・ユタカら、『インターナショナル・ジャーナル・オブ・ファーマシューティクス』(International Journal of Pharmaceutics)、第331巻、38〜45頁(2007年)
【非特許文献4】『アプライド バイオケミストリー アンド マイクロバイオロジー』(Applied Biochemistry and Microbiology)、第l43巻、1号、36−40頁(2007年)
【非特許文献5】『アグリカルチュラル アンド バイオロジカル ケミストリー』(Agricultural Biological Chemistry)、第7巻、1751−1756頁(1991年)
【非特許文献6】『ワコー アナリティカル サークル』(Wako Analytical Circle)、29号、6頁(2003年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記の不都合を解決するために為されたもので、酵素反応によって得られる反応溶液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率が35質量%に満たない場合であっても、医薬部外品級の粉末に比べて有意に固結し難いアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を製造することを可能にするアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明者らはアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造方法について更に研究を重ね、種々試行錯誤を繰り返した結果、アスコルビン酸2−グルコシド含有溶液からアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を析出させるに際して後述する制御冷却法又は擬似制御冷却法を適用することによって、酵素反応によって得られる反応溶液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率が35質量%に満たないレベルであっても、医薬部外品級の粉末に比べて有意に固結し難いアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を、従来から行われている医薬部外品級の粉末の製造方法とほぼ変わらぬ工程で製造することができることを見出した。
【0017】
すなわち、本発明は、下記(ア)乃至(オ)の工程を含む、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造方法を提供することによって上記の課題を解決するものである:
(ア)原料として液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含む溶液に、CGTaseを作用させ、次いでグルコアミラーゼを作用させてアスコルビン酸2−グルコシドの生成率が27質量%以上であるアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液を得る工程;
(イ)得られたアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液を精製して、アスコルビン酸2−グルコシド含量を無水物換算で86質量%超とする工程;
(ウ)アスコルビン酸2−グルコシドを無水物換算で86質量%超含有する溶液から制御冷却法又は擬似制御冷却法によってアスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶を析出させる工程;
(エ)析出したアスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶を採取する工程;及び、
(オ)採取されたアスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶を、溶解、再結晶化することなく、熟成、乾燥し、必要に応じて粉砕することにより、無水物換算でアスコルビン酸2−グルコシドを98.0質量%を超え99.9質量%未満含有し、粉末X線回折プロフィルに基づき算出されるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度が90%以上であるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得る工程。
【0018】
このように本発明の製造方法によれば、酵素反応によって得られる反応溶液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率が、35質量%に達しないレベルであっても、少なくとも27質量%以上であれば、前記反応溶液を適宜精製して得られるアスコルビン酸2−グルコシド溶液から後述する制御冷却法又は擬似制御冷却法によってアスコルビン酸の無水結晶を析出させることにより、無水物換算でアスコルビン酸2−グルコシドを98.0質量%を超え99.9質量%未満含有し、粉末X線回折プロフィルに基づき算出されるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度が90%以上であるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得ることができる。
【0019】
斯かる製造方法によって得られるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、粉末中のアスコルビン酸2−グルコシドの純度は98.0質量%を超え99.9質量%未満と従来の医薬部外品級の粉末と同程度かそれに満たないレベルではあるものの、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度(以下、本明細書では単に「結晶化度」と略記する。)が90%以上と高く、医薬部外品級の粉末に比べて有意に固結し難い粉末であるとともに、アスコルビン酸2−グルコシドの純度が99.9質量%に満たない分、試薬級の粉末よりも化粧品及び医薬部外品に汎用される親水性溶媒への溶解性に優れる粉末である。斯かる粉末は、食品素材、食品添加物素材、化粧品素材、医薬部外品素材、及び医薬品素材として取り扱いが容易であり、好適に使用することができる。
【0020】
因みに、本発明の製造方法においては、酵素反応によって得られる反応溶液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は27質量%以上であれば良く、場合によっては35質量%以上であっても良い。本発明の製造方法は、上記生成率が35質量%に満たない27質量%以上35質量%未満のレベルにあっても、制御冷却法又は擬似制御冷却法を適用する点を除けば従来から行われている医薬部外品級の粉末の製造方法とほぼ変わらぬ工程で、医薬部外品級の粉末に比べて有意に固結し難い粉末を製造することができる点において特に優れている。また、本発明の製造方法は、上記生成率が35質量%以上である場合には、制御冷却法又は擬似制御冷却法を適用する点を除けば従来から行われている医薬部外品級の粉末の製造方法とほぼ変わらぬ工程で、自然冷却法によるよりも、より結晶化度が高く、医薬部外品級の粉末に比べて有意に固結し難い粉末を製造することができるという利点を有している。なお、本発明の製造方法においては、アスコルビン酸2−グルコシドの生成率が27質量%以上であるアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液を得る上記(ア)の工程において、必要であれば、イソアミラーゼ、プルラナーゼ等の澱粉枝切り酵素をCGTaseと併用し、反応液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率をさらに高めるようにしても良い。
【0021】
さらに、本発明の製造方法においては、アスコルビン酸2−グルコシド含有溶液を精製して、アスコルビン酸2−グルコシド含量を無水物換算で86質量%超とする前記(イ)の工程において、アニオン交換樹脂を充填剤として用いるカラムクロマトグラフィーと、強酸性カチオン交換樹脂を充填剤として用いる擬似移動床式のカラムクロマトグラフィーを行うようにしても良い。前記(イ)の工程において、上記アニオン交換樹脂を充填剤として用いるカラムクロマトグラフィーと、強酸性カチオン交換樹脂を充填剤として用いる擬似移動床式のカラムクロマトグラフィーとを組み合わせて行う場合には、アスコルビン酸2−グルコシド含量が無水物換算で86質量%超であるアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液をより効率良く得ることができるという利点が得られる。
【0022】
さらに、本発明者らが研究を重ねた結果、前記(ア)の工程において、酵素反応によって得られる反応溶液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率が27質量%以上となるCGTaseには、アミノ酸レベルで共通する特徴があることが判明した。
【0023】
すなわち、本発明は、前記CGTaseとして、下記(a)乃至(d)に示す部分アミノ酸配列を有するCGTaseを用いるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造方法を提供することによっても、上記の課題を解決するものである;
(a)Asn−Glu−Val−Asp−X−Asn−Asn;
(b)Met−Ile−Gln−X−Thr−Ala;
(c)Pro−Gly−Lys−Tyr−Asn−Ile;
(d)Val−X−Ser−Asn−Gly−Ser−Val。
(但し、XはPro又はAlaを、XはSer又はAspを、XはSer又はGlyをそれぞれ意味する。)
【0024】
上記(a)乃至(d)に示す部分アミノ酸配列を有するCGTaseとしては、例えば、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス又はサーモアナエロバクター・サーモスルフリゲネス(Thermoanaerobacter thermosulfurigenes)由来の天然型若しくは組換え型の酵素が挙げられ、より具体的には、例えば、配列表における配列番号1、3、4及び5のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するCGTaseが挙げられ、これらCGTaseは本発明において好適に用いることができる。
【0025】
本発明の製造方法によって得られるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、好適には、無水物換算でアスコルビン酸2−グルコシドを98.0質量%を超え99.9質量%未満含有し、粉末X線回折プロフィルに基づき算出されるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度が90%以上であることに加えて、原料由来のL−アスコルビン酸及び/又はD−グルコースを含有し、L−アスコルビン酸量が無水物換算で0.1質量%以下で、粉末全体の還元力が1質量%未満であるという特性を備えている。
【発明の効果】
【0026】
本発明の製造方法によれば、酵素反応によって得られる反応溶液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率が35質量%に満たない場合であっても、医薬部外品級の粉末に比べて有意に固結し難いアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を製造することができるので、酵素反応に用いる酵素、特にCGTaseに関して選択の幅が大きく広がるという大きな利点が得られる。また、本発明の製造方法によれば、酵素反応において27質量%以上という生成率を実現することができるCGTaseが共通して有している部分アミノ酸配列についての情報が提供されるので、この部分アミノ酸配列に基づいて、本発明の製造方法において使用することができるCGTaseを検索することが可能となるという利点が得られる。さらに、本発明の製造方法によれば、酵素反応によって得られる反応溶液からアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を析出させる晶析工程において制御冷却法又は擬似制御冷却法を用いる点を除けば、液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを原料として、従来の医薬部外品級の粉末の製造方法と工程的に変わるところのない製造方法によって、医薬部外品級の粉末よりも有意に固結し難いアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を製造することができるので、医薬部外品級の粉末の製造に従来から必要とされていたのと大差ない時間、労力、製造設備、及びコストで、医薬部外品級の粉末に比べて有意に固結し難いアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を製造することができるという優れた利点が得られる。
【0027】
因みに、本発明の製造方法によって製造されるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、これを粉末状の食品素材、食品添加物素材、化粧品素材、医薬部外品素材、及び医薬品素材などとして用いる場合には、粉末状素材を構成するアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末が有意に固結し難いので、保存、保管はもとより、取り扱いが容易であるとともに、原料が流動性のある粉末であることを前提に作られている製造プラントに使用しても、原料の輸送や、篩い分け、混合などのプロセスに支障をきたす恐れがないという利点が得られる。
【0028】
また、本発明の製造方法によって製造されるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、食品素材などに求められる粒度分布、すなわち、粒径150μm未満の粒子を粉末全体の70質量%以上、かつ、粒径53μm以上150μm未満の粒子を粉末全体の40乃至60質量%含有する粒度分布に容易に調整することができるので、これを食品素材、食品添加物素材、化粧品素材、医薬部外品素材、又は医薬品素材として用いても、従前からの製造工程や原料規格を変えることなく、従前どおりに使用できるという利点が得られる。さらに、本発明の製造方法によって製造されるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、L−アスコルビン酸及び/又はD−グルコースを含有し、且つ、粉末全体の還元力が0質量%を超え1質量%未満であるので、液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを原料にして製造された粉末であるにもかかわらず、アミノ酸や蛋白質などの分子内にアミノ基を有する他成分と混合しても変色などの品質低下を惹起する恐れがないという利点が得られる。さらに、本発明の製造方法によって製造されるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、L−アスコルビン酸含量が無水物換算で0質量%を超え0.1質量%以下であるので、粉末単独で長期間保存した場合でも、粉末自体が淡褐色に着色する恐れがなく、実質的に無着色で白色の粉末として、食品素材、食品添加物素材、化粧品素材、医薬部外品素材、及び医薬品素材として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実質的にアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶からなるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の特性X線による粉末X線回折パターンの一例である。
【図2】実質的に無定形部分からなるアスコルビン酸2−グルコシド含有粉末の特性X線による粉末X線回折パターンの一例である。
【図3】実質的にアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶からなるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末のシンクロトロン放射光による粉末X線回折パターンの一例である。
【図4】実質的に無定形部分からなるアスコルビン酸2−グルコシド含有粉末のシンクロトロン放射光による粉末X線回折パターンの一例である。
【図5】本発明で用いたジオバチルス・ステアロサーモフィルス Tc−91由来のCGTase遺伝子を含む組換えDNA「pRSET−iBTC12」の構造及び制限酵素認識部位を表す図である。
【図6】各種冷却パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.用語の定義
本明細書において以下の用語は以下の意味を有している。
【0031】
<結晶化度>
本明細書でいう「アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度」とは、下記式[1]によって定義される数値を意味する。
【0032】
式[1]:
【数1】

【0033】
式[1]において、解析値H100、H、Hsを求める基礎となる粉末X線回折プロフィル(profile)は、通常、反射式又は透過式の光学系を備えた粉末X線回折装置により測定することができる。粉末X線回折プロフィルは被験試料又は標準試料に含まれるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての回折角及び回折強度を含み、斯かる粉末X線回折プロフィルから結晶化度についての解析値を決定する方法としては、例えば、ハーマンス法、フォンク法などが挙げられる。これら解析方法のうち、ハーマンス法を用いるのが簡便さと精度の点で好適である。今日、これらの解析方法は、いずれもコンピューターソフトウェア化されていることから、斯かるコンピューターソフトウェアのいずれかが搭載された解析装置を備えた粉末X線回折装置を用いるのが好都合である。
【0034】
また、解析値H100を求める「実質的にアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶からなるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末標準試料」としては、アスコルビン酸2−グルコシドについての純度が99.9質量%以上(以下、特にことわらない限り、本明細書では質量%を「%」と略記する。ただし、本明細書でいう結晶化度に付された%はこの限りではない。)である粉末又は単結晶であって、粉末X線回折パターンにおいて、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶に特有な回折ピークを示し、実質的にアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶からなるものを用いる。斯かる粉末又は単結晶としては、上述した試薬級の粉末、又はこれを再結晶化して得られるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末又はアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の単結晶が挙げられる。因みに、実質的にアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶からなる上記アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末標準試料の粉末X線回折プロフィルを、ハーマンス法によるコンピューターソフトウェアにて解析した場合の解析値H100は、通常、70.2乃至70.5%程度となる。
【0035】
一方、解析値Hを求める「実質的に無定形部分からなるアスコルビン酸2−グルコシド含有粉末標準試料」としては、アスコルビン酸2−グルコシドについての純度が99.1%以上である粉末であって、その粉末X線回折パターンが無定形部分に由来するハローだけからなり、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶に特有な回折ピークを実質的に示さないものを用いる。斯かる粉末としては、例えば、上記した解析値H100を求める標準試料を適量の精製水に溶解し、濃縮した後、凍結乾燥し、さらに、カールフィッシャー法により決定される水分含量が2.0%以下となるまで真空乾燥することにより得られた粉末が挙げられる。斯かる処理を施した場合に、実質的に無定形部分からなる粉末が得られることは、経験上知られている。因みに、実質的に無定形部分からなる上記アスコルビン酸2−グルコシド含有粉末標準試料の粉末X線回折プロフィルを、ハーマンス法によるコンピューターソフトウェアにて解析した場合の解析値Hは、通常、7.3乃至7.6%程度となる。
【0036】
なお、解析値Hを求める標準試料としては、アスコルビン酸2−グルコシドについての純度が高いものの方が好ましいことはいうまでもないが、解析値H100を求める標準試料から上述のようにして調製される解析値Hを求める標準試料におけるアスコルビン酸2−グルコシドの純度は、後述する実験1−1に示すとおり、解析値H100を求める標準試料のアスコルビン酸2−グルコシド純度が99.9%以上と極めて高いにもかかわらず、99.1%にとどまる。よって、「実質的に無定形部分からなるアスコルビン酸2−グルコシド含有粉末標準試料」のアスコルビン酸2−グルコシド純度は、上記のとおり、99.1%以上とした。
【0037】
<平均結晶子径>
一般に、結晶含有粉末における1個の粉末粒子は複数の単結晶、すなわち、複数の結晶子により構成されると考えられている。結晶粉末における結晶子の大きさ(結晶子径)は結晶粉末の特性に反映されると考えられる。本明細書でいう「アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての平均結晶子径」とは、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を粉末X線回折分析に供し、得られた粉末X線回折パターンにおいて検出される回折ピークの内、5個の回折ピーク、すなわち、結晶子の不均一歪に起因する回折ピーク幅への影響が少ないとされる比較的低角の領域で、他の回折ピークとよく分離した、回折角(2θ)10.4°(ミラー指数(hkl):120)、13.2°(ミラー指数:130)、18.3°(ミラー指数:230)、21.9°(ミラー指数:060)及び22.6°(ミラー指数:131)の回折ピーク(図1の符号a乃至eを参照)を選択し、それぞれの半値幅(半価幅)と回折角とを用い、標準品としてケイ素(米国国立標準技術研究所(NIST)供給、X線回折用標準試料(『Si640C』)を用いた場合の測定値に基づき補正した後、下記式[2]に示す「シェラー(Scherrer)の式」によりそれぞれ算出された結晶子径の平均値を意味する。
【0038】
式[2]:
【数2】

【0039】
一般的な粉末X線回折装置には、係る結晶子径算出用のコンピューターソフトウェアが搭載されていることから、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末さえ入手できれば、当該結晶粉末におけるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の平均結晶子径は比較的容易に測定することができる。なお、被験試料は、粉末X線回折の測定に先立ち、被験試料を乳鉢によりすり潰した後、53μmの篩によりふるい分け、篩を通過した粉末を用いる。
【0040】
<還元力>
本明細書でいう「粉末全体の還元力」とは、D−グルコースを標準物質として用い、斯界において汎用されるソモジ−ネルソン法及びアンスロン硫酸法によりそれぞれD−グルコース換算に基づく還元糖量及び全糖量を求め、下記式[3]を用いて求めることができる、含まれる全糖量に対する還元糖量の百分率(%)を意味する。
【0041】
式[3]:
【数3】

【0042】
<粒度分布>
本明細書において、粉末の粒度分布は以下のようにして決定する。すなわち、日本工業規格(JIS Z 8801−1)に準拠する、目開きが425、300、212、150、106、75及び53μmの金属製網ふるい(株式会社飯田製作所製)を正確に秤量した後、この順序で重ね合わせてロータップふるい振盪機(株式会社田中化学機械製造所製、商品名『R−1』)へ装着し、次いで、秤取した一定量の試料を最上段のふるい(目開き425μm)上に載置し、ふるいを重ね合わせた状態で15分間振盪した後、各ふるいを再度正確に秤量し、その質量から試料を載置する前の質量を減じることによって、各ふるいによって捕集された粉末の質量を求める。その後、ふるい上に載置した試料の質量に対する、各ふるいによって捕集された各粒度を有する粉末の質量の百分率(%)を計算し、粒度分布として表す。
【0043】
<アスコルビン酸2−グルコシドの生成率>
本明細書でいう「アスコルビン酸2−グルコシドの生成率」とは、液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含有する溶液にCGTaseなどの酵素を作用させて得られる酵素反応液中における、無水物換算したアスコルビン酸2−グルコシドの含量(%)を意味する。
【0044】
<アスコルビン酸2−グルコシドの無水物換算での含量>
アスコルビン酸2−グルコシドの無水物換算での含量とは、水分を含めないで計算した場合の全質量に占めるアスコルビン酸2−グルコシドの質量百分率(%)を意味する。例えば、溶液中のアスコルビン酸2−グルコシドの無水物換算での含量とは、溶液に含まれる水分を含めないで、残りの全固形分に対するアスコルビン酸2−グルコシドの質量百分率を意味する。また、粉末中におけるアスコルビン酸2−グルコシドの無水物換算での含量とは、粉末中の水分を含めないで残部を粉末全質量として計算した場合の粉末全質量に対するアスコルビン酸2−グルコシドの質量百分率を意味する。
【0045】
<CGTaseの活性>
本明細書において「CGTaseの活性」は以下のように定義される。すなわち、0.3%(w/v)可溶性澱粉、20mM酢酸緩衝液(pH5.5)、1mM塩化カルシウムを含む基質水溶液5mlに対し、適宜希釈した酵素液0.2mlを加え、基質溶液を40℃に保ちつつ、反応0分目及び反応10分目に基質溶液を0.5mlずつサンプリングし、直ちに0.02N硫酸溶液15mlに加えて反応を停止させた後、各硫酸溶液に0.1Nヨウ素溶液を0.2mlずつ加えて呈色させ、10分後、吸光光度計により波長660nmにおける吸光度をそれぞれ測定し、下記式[4]により澱粉分解活性として算出する。CGTaseの活性1単位とは、斯かる測定条件で、溶液中の澱粉15mgのヨウ素呈色を完全に消失させる酵素の量と定義する。
【0046】
式[4]:
【数4】

【0047】
<イソアミラーゼの活性>
本明細書において「イソアミラーゼの活性」は以下のように定義される。すなわち、0.83%(w/v)リントナー(Lintner)可溶化ワキシーコーンスターチ、0.1M酢酸緩衝液(pH3.5)を含む基質水溶液3mlに対し、適宜希釈した酵素液0.5mlを加え、基質溶液を40℃に保ちつつ、反応30秒目と30分30秒目に基質溶液、を0.5mlずつサンプリングし、直ちに0.02N硫酸溶液を15mlずつ加えて反応を停止させ、各硫酸溶液に0.01Nヨウ素溶液を0.5mlずつ加え、25℃で15分間呈色させた後、吸光光度計により波長610nmにおける吸光度をそれぞれ測定し、下記式[5]により澱粉分解活性として算出する。イソアミラーゼの活性1単位とは、斯かる測定条件で、波長610nmの吸光度を0.004増加させる酵素の量と定義する。
【0048】
式[5]:
【数5】

【0049】
<プルラナーゼの活性>
本明細書において「プルラナーゼの活性」は以下のように定義される。すなわち、1.25%(w/v)プルラン(株式会社林原生物化学研究所製、プルラナーゼ活性測定用)水溶液を基質溶液とする。この基質溶液4mlと0.05Mクエン酸−リン酸緩衝液(pH5.8)0.5mlとを試験管に取り、30℃に予熱しておく。0.01M酢酸緩衝液(pH6.0)を用い、適宜希釈した酵素液0.5mlを加え、基質溶液を30℃に保ちつつ、反応30秒目(対照液)と30分30秒目(反応液)に基質溶液、を0.5mlずつサンプリングし、直ちにソモギ−銅液2mlに注入し反応を停止させ、ソモギ−ネルソン法に供し、吸光光度計により波長520nmにおける吸光度をそれぞれ測定することにより生成した還元力を測定し、下記式[6]によりプルラン分解活性として算出する。プルラナーゼの活性1単位とは、斯かる測定条件で、1分間に1マイクロモルのマルトトリオースに相当する還元力を遊離させる酵素の量と定義する。
【0050】
式[6]:
【数6】

【0051】
<制御冷却法>
本明細書でいう「制御冷却法」とは、「制御された冷却」によって結晶を晶析させる方法をいい、晶析工程として設定した作業時間を「τ」、晶析開始時の液温を「T」、晶析終了時の目標とする液温を「T」、時間「t」における液温を「T」とすると、時間tにおける液温Tが原則として下記式[7]で表される冷却方法をいう。
【0052】
式[7]:
【数7】

【0053】
制御冷却法を、晶析工程として設定する作業時間を横軸、晶析時の液温を縦軸としたグラフを用いてより具体的に(模式的に)表すならば、図6の符号aに示すごとくである。図6の符号aに示すとおり、制御冷却法によれば、液温が高い晶析の初期においては液温が緩やかに低下し、液温がある程度低下した晶析の後期においては液温が急速に低下することになり、t=τ/2の時点、つまり、晶析工程の中間点における液温「T」は、少なくとも T>[(T−T)/2+T] の関係(つまり、晶析工程の中間点における温度変化が総温度変化の50%未満となる)が維持される。この液温の時間に対する変化パターンにおいて、制御冷却法は、液温がTからTまで時間τをかけて直線的に低下する直線冷却(図6における符号b)や、液温が高い晶析の初期においては液温が指数関数的に急速に低下し、液温が低下した晶析の後期になるほど液温が緩やかに低下してゆく通常の自然冷却法(図6における符号c)とは明らかに区別される。なお、液温Tを上記式[7]で表される時間tの関数として変化させるには、例えば、市販されている汎用の晶析システム用プログラム恒温循環装置などを用いれば良い。
【0054】
晶析工程において斯かる制御冷却法を適用する場合には、アスコルビン酸2−グルコシドの種晶を添加した後、晶析の初期においては、液温の冷却が緩やかに行われるので、冷却による急激な過飽和度の上昇と二次的な結晶核の形成が抑制され、添加した種晶を結晶核とする結晶を優先的に成長させることができる。一方、添加した種晶を結晶核とする結晶が出揃った晶析の後期においては、液温を急速に冷却することにより、出揃った結晶を一斉に成長させることになるので、制御冷却法によれば、微結晶が少ない粒径が揃った結晶を含むマスキットが得られるという利点が得られる。なお、「制御冷却法」については、例えば、「久保田徳昭著、『分かり易いバッチ晶析』、分離技術会、平成22年4月30日発行、32〜47頁」に詳述されている。
【0055】
<擬似制御冷却法>
本明細書でいう「擬似制御冷却法」とは、文字どおり上記した制御冷却法に擬似した冷却法であり、液温Tを時間tに対して厳密に上記式[7]にしたがって変化させるのではなく、晶析に用いるアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液におけるアスコルビン酸2−グルコシド純度、濃度、過飽和度、種晶の量などにもよるけれども、作業時間t=τ/2の時点(晶析工程の中間点)で結晶核がおおむね出揃うことが望ましいことから、t=τ/2の時点における液温Tの変化量(T−T)が、総温度変化量(T−T)の5%以上50%未満、望ましくは、10%以上30%未満の範囲を維持するように液温Tを時間tに対して連続的又は段階的に低下させる冷却法を意味する。t=τ/2の時点における液温Tの変化量(T−T)が、総温度変化量(T−T)の5%以上50%未満であるように液温Tを時間tに対して連続的又は段階的に低下させる場合には、液温が高い晶析の初期においては液温Tが時間tに対して緩やかに低下し、液温がある程度低下した晶析の後期においては液温Tが時間tに対して急速に低下することになり、結果として、上述した制御冷却法には及ばない場合があるものの、微結晶が少ない粒径が揃った結晶を含むマスキットが得られるという、制御冷却法とほぼ同様の利点が得られる。
【0056】
具体的には、例えば、作業時間τを、少なくとも2つ、好ましくは3つ以上の区間に分け、晶析工程の初期の区間においては、冷却における温度勾配を緩やかに(冷却速度を遅く)し、初期乃至は中期から後期に向かうにしたがい、温度勾配を大きく(冷却速度を速く)して、t=τ/2の時点における液温Tの変化量(T−T)が総温度変化量(T−T)の5%以上50%未満、望ましくは、10%以上30%未満となるように液温Tを時間tに対して連続的又は段階的に低下させれば良い。t=τ/2の時点における液温Tの変化量(T−T)が総温度変化量(T−T)の50%以上である場合には、晶析の初期における冷却速度が早すぎて、冷却による急激な過飽和度の上昇によって二次的な結晶核が形成される恐れがあり、5%未満である場合には、晶析の初期における冷却速度が遅すぎて、添加した種晶を結晶核とする結晶が十分に出揃わないままに、急速な冷却が始まる晶析後期を迎えることになり、いずれにしても、微結晶が少ない粒径が揃った結晶を含むマスキットを得ることが困難になる。
【0057】
上述した制御冷却法を行うには、液温Tを式[7]で表される時間tの関数として変化させる必要があり、設定したプログラムで液温を制御することのできる装置や晶析缶が必須であるが、擬似制御冷却法によれば、t=τ/2の時点における液温Tの変化量(T−T)が総温度変化量(T−T)の5%以上50%未満、望ましくは、10%以上30%未満となるように液温Tを時間tに対して連続的又は段階的に低下させれば良いので、擬似制御冷却法には、液温を精密に制御する設備がない場合であっても、比較的容易に実行することができるという利点がある。
【0058】
2.本発明の製造方法によって得られるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末
以下、本発明の製造方法によって得られるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末について説明する。
【0059】
<アスコルビン酸2−グルコシド含量及びその他の夾雑物含量>
本発明の製造方法によって得られるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、上述したとおり、無水物換算で、アスコルビン酸2−グルコシドを98.0%を超え99.9%未満であるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末であり、好適な場合において、上記粉末は、原料由来のL−アスコルビン酸及び/又はD−グルコースを含有し、粉末全体の還元力が0%を超え1%未満である。良く知られているとおり、L−アスコルビン酸やD−グルコースは直接還元性を有し、アミノ酸や蛋白質などの分子内にアミノ基を有する化合物の共存下で加熱すると褐色の着色を引き起こすので、これらの物質が製品としてのアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末に含まれることは好ましくない。しかし、例えば、液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含有する溶液にCGTaseなどの酵素を作用させる工程を経てアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を製造する場合には、量の多寡はともかく、未反応のL−アスコルビン酸や、原料である液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかに由来するD−グルコースなどが、反応夾雑物として製品であるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末に混入することは避けられない。例えば、従来の医薬部外品級の粉末においては、含まれるL−アスコルビン酸とD−グルコースの量が、無水物換算した両者の合計で約1%にも達することがあり、食品素材などとして用いた場合に予期せぬ褐色の着色を引き起こすことがあった。
【0060】
そこで、本発明の製造方法においては、不可避的に避けられないL−アスコルビン酸及び/又はD−グルコースの混入を許容するとともに、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末における粉末全体の還元力を1%未満、詳細には0%を超え1%未満に規制することとした。後述する実験に示すとおり、本発明の製造方法によって本発明のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を製造する場合には、粉末全体の還元力を、0%を超え1%未満とすることは容易である。L−アスコルビン酸及び/又はD−グルコースを含有していても、粉末全体の還元力が0%を超え1%未満であれば、アミノ酸や蛋白質などの分子内にアミノ基を有する化合物の共存下で加熱しても褐色の着色を引き起こすことが実質的にない。したがって、L−アスコルビン酸及び/又はD−グルコースを含有し、かつ、粉末全体の還元力が0%を超え1%未満であるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、着色や変色を懸念することなく、食品、化粧品、医薬部外品、医薬品一般へ配合使用することができるという利点を有している。因みに、粉末全体の還元力が1%未満である場合、含まれるL−アスコルビン酸の量は、無水物換算で0.1%以下である。
【0061】
また、本発明の製造方法によって得られるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、L−アスコルビン酸含量が無水物換算で0.1%以下、詳細には0%を超え0.1%以下である。L−アスコルビン酸は、酸化防止剤や脱酸素剤として飲食品などに用いられているとおり、酸素との反応性が高い。このため、L−アスコルビン酸は、分子内にアミノ基を有する化合物の共存下で加熱すると褐色の着色を引き起こすだけでなく、L−アスコルビン酸を含有する粉末自体の着色にも深く関与していると考えられる。現に、後述する実験に示すとおり、医薬部外品級の粉末にはL−アスコルビン酸が0.2%程度含まれているが、本発明者らが得た知見によれば、医薬部外品級の粉末は、これを前述した商品形態で比較的長期間保存すると、往々にして、粉末自体が淡褐色に着色する現象が見られる。これに対し、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末におけるL−アスコルビン酸含量が0%を超え0.1%以下である場合には、この粉末を医薬部外品級の粉末と同様の商品形態で比較的長期間保存しても、粉末自体が淡褐色に着色する懸念がない。因みに、本発明の製造方法によれば、精製工程に、D−グルコースなどの糖類を除去するためのアニオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーに続き、カチオン交換樹脂又は多孔性樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーを行うことによって、特に、カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーとして擬似移動床式を用いる場合には、製造コストを上昇させることなく比較的容易に、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末におけるL−アスコルビン酸含量を、0%を超え0.1%以下にすることができる。
【0062】
<結晶化度及び平均結晶子径>
本発明の製造方法によって得られるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、粉末X線回折プロフィルに基づき算出されるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度が90%以上であり、且つ、平均結晶子径が1,400Å以上1,710Å未満である。以下の実験によって示すとおり、結晶化度及び平均結晶子径が上記レベルにある本発明のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、アスコルビン酸2−グルコシドの純度、すなわち、無水物換算でのアスコルビン酸2−グルコシドの含量が、医薬部外品級の粉末とほぼ同じレベルか、試薬級の粉末におけるアスコルビン酸2−グルコシドの純度に満たないにもかかわらず、医薬部外品級の粉末に比べて有意に固結し難く、また、試薬級の粉末に比べて化粧品及び医薬部外品に汎用される親水性媒体への溶解性に優れるという特性を備えている。
【0063】
<粒度分布>
本発明の製造方法によって得られるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、その好適な一態様において、粒径150μm未満の粒子を粉末全体の70%以上、かつ、粒径53μm以上150μm未満の粒子を粉末全体の40乃至60%含有する。本発明の製造方法によって得られるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、例えば、食品素材などに求められる上記の粒度分布に容易に調整することができるので、食品素材、食品添加物素材、化粧品素材、医薬部外品素材、又は医薬品素材として、製造工程や原料規格を変えることなく、従前どおりに使用できるという利点を有している。
【0064】
3.本発明のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造方法
以下、本発明のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造方法について説明する。
【0065】
本発明のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造方法は、基本的に、以下の(ア)乃至(オ)の工程を含んでいる:
(ア)液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含む溶液にCGTaseを作用させ、次いで、グルコアミラーゼを作用させてアスコルビン酸2−グルコシドを生成させることにより、グルコアミラーゼ処理後の反応液のアスコルビン酸2−グルコシド生成率が27%以上であるアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液を得る工程;
(イ)得られたアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液を精製して、アスコルビン酸2−グルコシド含量を無水物換算で86%超とする工程;
(ウ)アスコルビン酸2−グルコシドを無水物換算で86%超含有する溶液から制御冷却法又は擬似制御冷却法によってアスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶を析出させる工程;
(エ)析出したアスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶を採取する工程;及び、
(オ)採取されたアスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶を、溶解、再結晶化することなく、熟成、乾燥し、必要に応じて粉砕することにより、無水物換算でアスコルビン酸2−グルコシドを98.0%を超え99.9%未満含有し、粉末X線回折プロフィルに基づき算出されるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度が90%以上であるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得る工程。
以下、各工程について説明する。
【0066】
<(ア)の工程>
(ア)の工程は、液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含む溶液にCGTaseを作用させ、次いでグルコアミラーゼを作用させることにより、グルコアミラーゼ処理後の反応液のアスコルビン酸2−グルコシド生成率を27%以上とする工程である。まず、使用する原料及び酵素について説明し、次に、行われる酵素反応について説明する。
【0067】
A.使用原料及び酵素
(L−アスコルビン酸)
用いるL−アスコルビン酸としては、ヒドロキシ酸の形態のものであっても、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などの金属塩の形態のものであっても、さらには、それらの混合物であっても差し支えない。
【0068】
(液化澱粉若しくはデキストリン)
また、用いる液化澱粉若しくはデキストリンとしては、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉などを耐熱性α−アミラーゼで液化して得られる液化澱粉又はデキストリンが挙げられる。反応に際しては、CGTaseとともに、例えば、イソアミラーゼ(EC 3.2.1.68)、プルラナーゼ(EC 3.3.1.41)などの澱粉枝切り酵素を併用して、澱粉の枝分かれ部分を切断するのが好ましい。液化澱粉若しくはデキストリンは、シクロデキストリンやアミロースに比べ、工業的規模での大量製造に適した原料である。
【0069】
(CGTase)
用いるCGTase(EC2.4.1.19)としては、液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含有する溶液にCGTaseを単独で、若しくは澱粉枝切り酵素と共に作用させ、次いで、グルコアミラーゼを作用させたときに、27%以上の生成率でアスコルビン酸2−グルコシドを生成させることができる限り、その起源や由来に特段の制限はなく、天然の酵素であっても、遺伝子組換えによって得られる酵素であっても良く、さらには天然若しくは組換え型酵素にアミノ酸の置換、付加、欠失を導入した変異体酵素であっても良い。
【0070】
なお、本発明者らが得た知見によれば、液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含有する溶液にCGTaseを単独で、若しくは澱粉枝切り酵素と共に作用させ、次いで、グルコアミラーゼを作用させたときに、27%以上の生成率でアスコルビン酸2−グルコシドを生成させることができるCGTaseは、通常、共通する部分アミノ酸配列として、下記(a)乃至(d)に示す部分アミノ酸配列を有している:
(a)Asn−Glu−Val−Asp−X−Asn−Asn;
(b)Met−Ile−Gln−X−Thr−Ala;
(c)Pro−Gly−Lys−Tyr−Asn−Ile;
(d)Val−X−Ser−Asn−Gly−Ser−Val。
(但し、XはPro又はAlaを、XはSer又はAspを、XはSer又はGlyをそれぞれ意味する。)
【0071】
斯かるCGTaseとしては、例えば、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス又はサーモアナエロバクター・サーモスルフリゲネス由来の天然型若しくは組換え型酵素が挙げられ、具体的には、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス Tc−91株由来CGTase、すなわち配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列を有するCGTaseや、配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列に、遺伝子工学的手法によりアミノ酸残基の置換、欠失、付加を導入することにより作製したCGTase変異体、具体的には、配列表における配列番号4又は5で示されるアミノ酸配列を有するCGTase変異体、さらには、配列表における配列番号3で示されるアミノ酸配列を有するサーモアナエロバクター・サーモスルフリゲネスに由来するCGTaseや当該CGTaseの変異体などを好適な例として挙げることができる。
【0072】
なお、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス Tc−91株は、同じ出願人による特開昭50−63189号公報(特公昭53−27791号公報)に開示された微生物であり、当初、FERM−P 2225として1973年7月30日付で国内寄託され、現在は、受託番号FERM BP−11273として茨城県つくば市東1−1−1中央第6所在の独立行政法人産業技術総合研究所、特許生物寄託センターに国際寄託されている。因みに、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株由来のCGTaseは、約68,000ダルトンの分子量を有する酵素であり、他の微生物由来のCGTaseに比べ糖転移作用が強いことが知られている。また、当該CGTaseはその遺伝子がクローニングされ、遺伝子の塩基配列(配列表における配列番号2で示される塩基配列)から成熟型CGTaseのアミノ酸配列(配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列)が決定されており、当該CGTaseのアミノ酸配列上にはα−アミラーゼファミリーに分類される酵素群に共通して存在するとされる4つの保存領域が存在することが知られている。また、当該CGTase蛋白の立体構造はX線結晶構造解析によって既に明らかにされている。さらに、当該CGTaseの3つの触媒残基、すなわち、配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列における225番目のアスパラギン酸(D225)、253番目のグルタミン酸(E253)、324番目のアスパラギン酸(D324)も判明している(『工業用糖質酵素ハンドブック』、講談社サイエンティフィク社編集、講談社発行、56乃至63頁(1999年)参照)。
【0073】
また、サーモアナエロバクター・サーモスルフリゲネス由来のCGTaseとしては、具体的には、当該微生物由来のCGTaseが組換え型酵素として製造された酵素剤(商品名『トルザイム(Toruzyme)3.0L』、ノボザイム・ジャパン社製)が市販されている。サーモアナエロバクター・サーモスルフリゲネス由来のCGTaseについても、その理化学的性質やアミノ酸配列などが既に明らかにされている。
【0074】
(澱粉枝切り酵素)
液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含む溶液にCGTaseを作用させる際に、澱粉枝切り酵素を併用して、アスコルビン酸2−グルコシドの生成率を高めることができる。澱粉枝切り酵素としては、イソアミラーゼが、酵素活性及び基質特異性などの面で取り扱い易いので特に好ましい。イソアミラーゼとしては、例えば、シュードモナス・アミノデラモサ(Pseudomonas amyloderamosa)、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)、フラボバクテリウム・エスピー(Flavobacterium sp.)由来のものや、同微生物における遺伝子を組み換えて得られた変異イソアミラーゼを挙げることができる。なお、フラボバクテリウム・オドラタム由来のイソアミラーゼとしては、合同酒精株式会社製造のイソアミラーゼ酵素剤(商品名『GODO−FIA』)を使用することができる。
【0075】
また、プルラナーゼとしては、例えば、バチルス・エスピー(Bacillus sp.)、バチルス・アシドプルリティカス(Bacillus acidopullulyticas)、クレブシエラ・ニュウモニア(Klebsiella pneumoniae)、クレブシエラ・アエロジェネス(Klebsiella aerogenes)、フラボバクテリウム・ペニボランス(Flavobacterium pennivorans)、エンテロバクター・アエロジェネス(Enterobacter aerogenes)由来のものを挙げることができる。
【0076】
(グルコアミラーゼ)
用いるグルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)にも特に制限はなく、液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含有する溶液に、CGTaseを作用させ、次いで、グルコアミラーゼを作用させたときに、アスコルビン酸2−グルコシドを生成させることができる限り、その起源や由来に特段の制限はなく、天然の酵素であっても遺伝子組換えによって得られる酵素であっても良い。
【0077】
グルコアミラーゼは、通常、酵素反応液を加熱してCGTaseによる糖転移反応を停止させてから添加されるので、加熱後の酵素反応液の冷却に要するエネルギーと時間を節約することができるように、比較的高い温度、例えば40乃至60℃程度の温度で実用に足る酵素活性を発揮し得るものが望ましい。また、使用するグルコアミラーゼがα−グルコシダーゼを含んでいた場合、生成されたアスコルビン酸2−グルコシドが加水分解されてしまうので、グルコアミラーゼとしてはα−グルコシダーゼを実質的に含まないものを使用するのが望ましい。このような条件を満たすものであれば、使用するグルコアミラーゼの給源、純度には特段の制限はなく、例えば、グルコアミラーゼ剤として市販されているリゾプス属に属する微生物に由来する酵素剤(商品名『グルコチーム#20000』 ナガセケムテックス株式会社販売)や、アスペルギルス属の微生物に由来する酵素剤(商品名『グルクザイムAF6』 天野エンザイム株式会社販売)を好適に使用することができる。
【0078】
B.酵素反応
次に、L−アスコルビン酸への糖転移反応について説明する。まず、液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含有する溶液(通常は水溶液)にCGTaseを作用させる。液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含む水溶液にCGTaseを作用させると、CGTaseの酵素作用によって、L−アスコルビン酸の2位の水酸基に1個又は2個以上のD−グルコースが転移し、前記2位の水酸基に1個のD−グルコースが結合したアスコルビン酸2−グルコシドが生成するとともに、前記2位の水酸基に2個以上のD−グルコースが結合した2−O−α−マルトシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−マルトトリオシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−マルトテトラオシル−L−アスコルビン酸などのα−グリコシル−L−アスコルビン酸が生成する。
【0079】
CGTaseは、通常、基質濃度が1乃至40%になるように液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを溶解した水溶液に対し、基質1g当り1乃至500単位の割合で添加され、当該溶液をpH約3乃至10、温度30乃至70℃に保ちつつ、6時間以上、好ましくは約12乃至96時間反応させる。L−アスコルビン酸は酸化により分解しやすいので、反応中、溶液を嫌気又は還元状態に保つ一方、光を遮断するのが望ましく、必要に応じ、反応溶液に、例えば、チオ尿素、硫化水素などの還元剤を共存させる。
【0080】
溶液中の液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸との質量比は、無水物換算で8:2乃至3:7の範囲に設定するのが望ましい。液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとの割合がこの範囲より大きくなると、L−アスコルビン酸への糖転移は効率よく進行するものの、アスコルビン酸2−グルコシドの生成率がL−アスコルビン酸の始発濃度による制約を受け、低レベルに止まることとなる。逆に、L−アスコルビン酸の割合が上記した範囲より大きくなると、未反応のL−アスコルビン酸が著量残存することとなり、工業的生産には好ましくない。よって、上記した比率の範囲をもって最良とした。
【0081】
なお、CGTaseに加えて、澱粉枝切り酵素としてイソアミラーゼを併用する場合、イソアミラーゼは、液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含有する溶液中でCGTaseと共存させた状態で液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかに作用させるのが望ましく、添加量としては、イソアミラーゼの種類、至適温度、至適pHなどにもよるけれども、通常、基質1g当り200乃至2,500単位とし、55℃以下で反応させる。また、澱粉枝切り酵素としてプルラナーゼを用いる場合も、通常、基質1g当り1乃至500単位とし、イソアミラーゼに準じて用いれば良い。
【0082】
CGTase、又はCGTaseと澱粉枝切り酵素による酵素反応が一通り完了した後、酵素反応液を直ちに加熱してCGTase、又はCGTaseと澱粉枝切り酵素とを失活させて酵素反応を停止させ、次いで、この酵素反応液にグルコアミラーゼを作用させる。グルコアミラーゼを作用させると、L−アスコルビン酸の2位の水酸基に結合している2個以上のD−グルコース鎖は切断されて、2−O−α−マルトシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−マルトトリオシル−L−アスコルビン酸などのα−グリコシル−L−アスコルビン酸はアスコルビン酸2−グルコシドに変換されることになる。
【0083】
<(イ)の工程>
(イ)の工程は、上記(ア)の工程で得られたアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液を精製して、アスコルビン酸2−グルコシド含量を無水物換算で86%超とする工程である。すなわち、(ア)の工程で得られたアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液を、活性炭などにより脱色濾過し、濾液をカチオン交換樹脂により脱塩し、さらに、カラムクロマトグラフィーを適用することにより、溶液中のアスコルビン酸2−グルコシド含量を無水物換算で86%超、好ましくは88%以上にまで精製する。精製に用いるカラムクロマトグラフィーとしては、溶液中のアスコルビン酸2−グルコシド含量を無水物換算で86%超にまで高めることができる限り、原則的にどのようなカラムクロマトグラフィーを用いても良いが、好適な例としては、D−グルコースなどの糖類を除去するためのアニオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーに続き、カチオン交換樹脂又は多孔性樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーを行うのがよい。D−グルコースなどの糖類を除去するための望ましいアニオン交換樹脂としては、『アンバーライトIRA411S』、『アンバーライトIRA478RF』(以上、ローム・アンド・ハース社製)、『ダイヤイオンWA30』(三菱化学株式会社製)等が挙げられる。アスコルビン酸2−グルコシドとL−アスコルビン酸とを分離するための望ましいカチオン交換樹脂としては、『ダウエックス 50WX8』(ダウケミカル社製)、『アンバーライト CG120』(ローム・アンド・ハース社製)、『XT−1022E』(東京有機化学工業株式会社製)、『ダイヤイオンSK104』、『ダイヤイオン UBK 550』(以上、三菱化学株式会社製)等が挙げられる。多孔性樹脂としては、『トヨパールHW−40』(東ソー株式会社製)、『セルファインGH−25』(チッソ株式会社製)等を挙げることができる。カチオン交換樹脂又は多孔性樹脂を用いてカラムクロマトグラフィーを行う場合、カラムに負荷する原料液の濃度は固形分約10乃至50%、樹脂への負荷量は湿潤樹脂容積の約1/1000乃至1/20、湿潤樹脂容積とほぼ等量の精製水を線速度0.5乃至5m/時間で通液するのが望ましい。中でも、カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーとして擬似移動床式を用いる場合には、精製して得られるアスコルビン酸2−グルコシドの純度が高まり、L−アスコルビン酸やD−グルコースなどの夾雑物、特に、L−アスコルビン酸含量が低減され、L−アスコルビン酸含量が無水物換算で0.1%以下と少ないアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末が得られるので好ましい。因みに、カチオン交換樹脂を充填剤として用いる擬似移動床式のカラムクロマトグラフィーにおける溶離条件としては、操作温度、設定流速などにもよるが、擬似移動床式のカラムクロマトグラフィーに供されるアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液の濃度は無水物換算で60%以下、アスコルビン酸2−グルコシド含有溶液の負荷量は湿潤樹脂容積に対し容積比で1/20以下、溶離液として用いる精製水量は容積比で前記負荷量の30倍まで、通常、3〜20倍程度とするのが好ましい。
【0084】
溶液中のアスコルビン酸2−グルコシドの含量が無水物換算で86%以下である場合には、後続する(ウ)乃至(オ)の工程を経ても、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度が90%以上であるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得ることは困難である。その理由は、溶液中のアスコルビン酸2−グルコシドの含量が無水物換算で86%以下である場合には、その後の工程を経て得られるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末中のアスコルビン酸2−グルコシドの純度が低く、結晶化がスムースに進行しないためであると考えられる。
【0085】
アスコルビン酸2−グルコシド含量を無水物換算で86%超、好ましくは88%以上にまで精製した溶液は、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を析出させる工程に先立ち、所定の濃度、通常は、アスコルビン酸2−グルコシド濃度約65乃至85%まで濃縮される。濃縮液の温度は、通常、約30乃至45℃に調節される。この濃度及び温度は、アスコルビン酸2−グルコシドについての過飽和度としては1.05乃至1.50に相当する。
【0086】
<(ウ)の工程>
(ウ)の工程は、アスコルビン酸2−グルコシドを無水物換算で86%超、好ましくは88%以上含有する溶液から制御冷却法又は擬似制御冷却法によってアスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶を析出させる工程である。すなわち、上記(イ)の工程で所定の純度及び濃度にまで精製、濃縮し、所定の温度に調整したアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液を、助晶缶に移し、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の種晶を0.1乃至5%(w/v)、好適には0.5乃至2%(w/v)含有せしめ、緩やかに撹拌しつつ、制御冷却法又は擬似制御冷却法によって晶析工程の初期は液温をゆるやかに低下させ、晶析工程の後期において液温を急速に低下させ助晶する。晶析に要する時間はアスコルビン酸2−グルコシドの種晶の添加量によっても異なるものの、例えば、擬似制御冷却法による場合には、全晶析時間を少なくとも2つ、好ましくは3つ以上の区間に分け、各区間内では時間に対して温度を概ね直線的に低下させ、作業時間t=τ/2の時点(晶析工程の中間点)における液温Tの変化量(T−T)が、総温度変化量(T−T)の5%以上50%未満、望ましくは、10%以上30%未満の範囲を維持するように液温Tを時間tに対して連続的又は段階的に低下させるのが良い。例えば、48時間かけて液温を40℃から15℃まで冷却して結晶を晶析させる場合には、冷却時間を36時間と12時間の2つの区間に分け、液温を40℃から30℃まで36時間かけて冷却し、次いで、30℃から15℃まで12時間かけて冷却するか、又は、液温を40℃から35℃まで30時間かけて冷却し、次いで、35℃から15℃まで18時間かけて冷却するのが好ましく、さらに好ましくは、冷却時間を24時間、12時間、12時間の3つの区間に分け、最初の区間では24時間かけて液温を40℃から35℃まで冷却し、次の区間では12時間かけて35℃から27.5℃まで冷却し、さらに、最後の区間では12時間かけて液温を27.5℃から15℃まで冷却するのが好ましい。
【0087】
このように、制御冷却法又は擬似制御冷却法による場合には、温度制御を行うことなく自然冷却する晶析法に比べ、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の微結晶が生じ難く、粒径の揃った結晶を含むマスキットを得ることができる。また、後述するとおり、得られるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶粉末は、自然冷却法で得られる粉末に比べ、アスコルビン酸2−グルコシド純度、及び固結性の重要な指標となるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度の点でも高いという特徴を備えている。また、制御冷却法又は擬似制御冷却法による場合には、自然冷却する晶析法によって得られる粉末に比べて、より粒度分布の揃った粉末が得られるという利点がある。
【0088】
<(エ)の工程>
この工程は、(ウ)の晶析工程で得られたマスキットから、常法の分蜜方式に従い、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を遠心分離により採取する工程である。採取されたアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶は、表面に付着している非晶質の蜜を除去するため、少量の精製水をスプレー(シャワー)して洗浄される。なお、結晶の洗浄に用いる精製水の量は、通常、遠心分離前のマスキットの重量に対して、3%以上、10%までとするのが好ましい。すなわち、洗浄に用いられる精製水の量が3%未満では、洗浄が十分に行われず、非晶質の蜜が残り、所期のアスコルビン酸2−グルコシド純度が得られない恐れがある。一方、洗浄に用いられる精製水の量が10%を超えると、洗浄によって溶解、除去されるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の量が増し、結晶の収率が低下する恐れがある。
【0089】
<(オ)の工程>
(オ)の工程は、採取されたアスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶を、溶解、再結晶化することなく、熟成、乾燥し、必要に応じて粉砕する工程である。すなわち、遠心分離によって採取したアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を少量の脱イオン水や蒸留水などの精製水などで洗浄し、結晶表面に付着した不純物を洗い流す。洗浄に用いる水の量には特段の制限はないが、多すぎると表面の不純物だけでなく結晶自体も溶解するので歩留まりが低下し、加えて、洗浄水のコストも嵩むので、通常は、結晶質量の30%まで、好ましくは15〜25%の量の洗浄水を用いて結晶表面を洗浄するのが望ましい。洗浄された結晶は、所定の温度及び湿度雰囲気中に一定時間保持することにより、熟成、乾燥し、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末とされる。熟成、乾燥工程における結晶含有粉末の品温や雰囲気の相対湿度、並びに、熟成、乾燥時間は、所期の結晶化度を示す粉末が得られる限り、特段の制限はないものの、熟成、乾燥工程において、結晶含有粉末の品温は20乃至55℃、雰囲気の相対湿度は60乃至90%に保たれるのが好ましい。また、熟成、乾燥時間は、両者の合計で、約5乃至24時間とするのが好ましい。熟成、乾燥工程を経た結晶含有粉末は、次いで、室温まで自然放冷される。また、室温程度の清浄な空気を吹き付けて室温程度の品温にまで強制的に冷却することも有利に実施できる。得られた結晶粉末はそのまま、若しくは、必要に応じて粉砕して製品とされる。
【0090】
上記(ア)乃至(オ)の工程は、上記(エ)の制御冷却法又は擬似制御冷却法による晶析工程を除いて、医薬部外品級の粉末の製造工程と基本的に同じであり、試薬級の粉末の製造工程では必須とされる、再結晶工程や、結晶を繰り返し洗浄する工程は含まれていない。
【0091】
斯くして得られる粉末は、無水物換算でアスコルビン酸2−グルコシドを98.0%を超え99.9%未満含有し、粉末X線回折プロフィルに基づき算出されるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度が90%以上であるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末であり、より好ましくは、無水物換算でアスコルビン酸2−グルコシドを98.0%を超え99.9%未満含有し、粉末X線回折プロフィルに基づき算出されるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度が90%以上であり、且つ、原料由来のL−アスコルビン酸及び/又はD−グルコースを含有し、L−アスコルビン酸量が無水物換算で0.1%以下で、粉末全体の還元力が1%未満であるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である。斯かる粉末は、従来の医薬部外品級の粉末が固結する条件下でも固結せず、医薬部外品級の粉末に比べて有意に固結し難いアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である。さらに、当該粉末は、試薬級の粉末に比べ化粧品及び医薬部外品に汎用される親水性溶媒への溶解性に優れるという利点も有している。
【0092】
本発明の製造方法によって製造されるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、従来の医薬部外品級の粉末に比べて有意に固結し難いので、粉末原料を取り扱うことを前提に設計された製造プラントを用いる飲料を含めた食品製造、化粧品製造、医薬部外品製造、さらには医薬品製造の各分野において、他の単独若しくは複数の粉末状の食品素材、食品添加物素材、化粧品素材、医薬部外品素材、医薬品素材などに安心して含有せしめることができるという優れた利点を備えている。
【0093】
以下、本発明について、実験により具体的に説明する。
【0094】
<実験1:アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の固結性におよぼす結晶化度の影響>
結晶化度が0乃至100%の範囲にある複数のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を調製し、それらの固結性を試験することにより、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末における結晶化度と固結性との関連性を調べた。詳細は以下のとおり。
【0095】
<実験1−1:被験試料の調製>
<被験試料1>
実質的にアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶からなる標準試料として、試薬級のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末(商品名『アスコルビン酸2−グルコシド 999』、コード番号:AG124、純度99.9%以上)を使用し、これを被験試料1とした。
【0096】
<被験試料2>
実質的に無定形部分からなる標準試料としては、被験試料1を適量の精製水に溶解し、3日間かけて凍結乾燥した後、40℃以下で1晩真空乾燥して得られた、実質的に無定形部分からなる粉末を使用し、これを被験試料2とした。なお、被験試料2の水分含量をカールフィッシャー法により測定したところ、2.0%であった。
【0097】
<被験試料3、4>
被験試料3、4として、結晶化度が、被験試料1と被験試料2の間に入るものを以下の手順で調製した。すなわち、被験試料2と同様にして調製した無定形部分からなる粉末を金属製トレイ内に延展し、温度25℃、相対湿度90%に調整された恒温、恒湿のチャンバー内に24時間又は72時間収容することにより結晶化を促し、粉末を部分的に結晶化させた。その後、金属製トレイをチャンバーから取り出し、38℃で一晩真空乾燥することにより2種類の粉末を調製した。恒温、恒湿のチャンバー内の収容時間が24時間のものを被験試料3、72時間のものを被験試料4とした。なお、被験試料3及び4は、分析試験に供する直前まで蓋つきバイアル瓶内に密封し、乾燥剤とともにデシケーター内に密封保存した。
【0098】
<実験1−2:被験試料1乃至4のアスコルビン酸2−グルコシド純度と結晶化度>
<アスコルビン酸2−グルコシド純度>
被験試料1乃至4のアスコルビン酸2−グルコシド純度を以下のようにして求めた。すなわち、被験試料1乃至4のいずれかを精製水により2%溶液とし、0.45μmメンブランフィルターにより濾過した後、下記条件による液体クロマトグラフィー(HPLC)分析に供し、示差屈折計によるクロマトグラムに出現したピークの面積から計算し、無水物換算した。結果は表1に示した。
・分析条件
HPLC装置:『LC−10AD』(株式会社島津製作所製)
デガッサー:『DGU−12AM』(株式会社島津製作所製)
カラム:『Wakopak Wakobeads T−330』(和光純薬工業株式会社販売 H型)
サンプル注入量:10μl
溶離液:0.01%(容積/容積)硝酸水溶液
流 速:0.5ml/分
温 度:25℃
示差屈折計:『RID−10A』(株式会社島津製作所製)
データ処理装置:『クロマトパックC−R7A』(株式会社島津製作所製)
【0099】
<結晶化度>
被験試料1乃至4における結晶化度を以下のようにして求めた。すなわち、市販の反射光方式による粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社製、商品名『X’Pert PRO MPD』)を用い、Cu対陰極から放射される特性X線であるCuKα線(X線管電流40mA、X線管電圧45kV、波長1.5405Å)による粉末X線回折プロフィルに基づき、同粉末X線回折装置に搭載された専用の解析コンピューターソフトウェアを用い、被験試料1乃至4の各々についてハーマンス法による結晶化度の解析値を求めた。ハーマンス法による結晶化度の解析に先立ち、各粉末X線回折パターンにおけるピーク同士の重なり、回折強度、散乱強度などを勘案しながら、最適と判断されるベースラインが得られるように、ソフトウェアに設定された粒状度及びベンディングファクターをそれぞれ適切なレベルに合わせた。なお、ハーマンス法については、ピー・エイチ・ハーマンス(P.H.Harmans)とエー・ワイジンガー(A. Weidinger)、「ジャーナル・オブ・アプライド・フィジクス」(Journal of Applied Physics)、第19巻、491〜506頁(1948年)、及び、ピー・エイチ・ハーマンス(P.H.Harmans)とエー・ワイジンガー(A. Weidinger)、「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス」(Journal of Polymer Science)、第4巻、135〜144頁(1949年)に詳述されている。
【0100】
被験試料1についての結晶化度の解析値を解析値H100、被験試料2についての結晶化度の解析値を解析値Hとし、各被験試料についての結晶化度の解析値をHsとして前記した式[1]に代入することにより結晶化度を求めた。因みに被験試料1についてのハーマンス法による結晶化度の解析値(解析値H100)及び被験試料2についての同解析値(解析値H)は、それぞれ、70.23%及び7.57%であった。結果は表1に併せて示した。なお、標準試料である被験試料1及び2については、粉末X線回折パターンをそれぞれ図1及び図2に示した。
【0101】
図1に見られるとおり、被験試料1の粉末X線回折パターンにおいては、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶に特有な回折ピークが回折角(2θ)4乃至65°の範囲に明瞭かつシャープに出現し、無定形部分に特有なハローは一切認められなかった。一方、図2に見られるとおり、被験試料2の粉末X線回折パターンにおいては、図1の粉末X線回折パターンとは異なり、無定形部分に特有なハローがベースラインの膨らみとして著明に出現したものの、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶に特有な回折ピークは一切認められなかった。
【0102】
<実験1−3:被験試料1及び2のシンクロトロン放射光による粉末X線回折>
本実験では、被験試料1及び2がそれぞれ、解析値H100及びHを決定するための標準試料として適切なものであることをさらに裏付ける目的で、これら被験試料をシンクロトロン放射光(以下、「放射光」と言う。)をX線源に用い、微弱な回折や散乱のシグナルを検出することができる透過光方式の粉末X線回折に供した。なお、測定条件は次のとおりであった。
【0103】
<測定条件>
粉末X線回折装置:高速粉末X線回折装置(神津精機社販売、
型番『PDS−16』)、デバイシェラモード、
カメラ長:497.2mm
X線源 :偏向電磁石からの放射光(兵庫県ビームライン(BL08B2))
測定波長:0.7717Å(16.066keV)
測定強度:10フォトン/秒
測定角 :2乃至40°
露光時間:600秒間
画像撮影:イメージングプレート(富士フイルム社製、商品名『イメー
ジングプレート BAS−2040』)
画像読取装置:イメージアナライザー(富士フイルム社製、『バイオイ
メージアナライザーBAS−2500』)
【0104】
測定は、大型放射光施設「SPring−8」(兵庫県佐用郡佐用町光都1−1−1)内に設けられた「兵庫県ビームライン(BL08B2)」を利用して実施した。
【0105】
粉末X線回折の測定に先立ち、被験試料1及び2を乳鉢によりすり潰した後、53μmの篩によりふるい分け、篩を通過した粉末をX線結晶回折用のキャピラリー(株式会社トーホー販売、商品名『マークチューブ』、No.14(直径0.6mm、リンデマンガラス製))内に充填長が略30mmとなるように均一に充填した。次いで、キャピラリーを試料の充填終端で切断し、開口部を接着剤により封じた後、試料マウントへキャピラリーを粘土により固定し、キャピラリーの長手方向が粉末X線回折装置の光軸に対して垂直になるように、試料マウントを粉末X線回折装置に取り付けた。
【0106】
アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の配向による粉末X線回折プロフィルへの影響を除くため、測定中、キャピラリーの長手方向に、1回/60秒の周期で、試料マウントを±1.5mmの幅で等速往復振動させながら、キャピラリーの長手方向を回転軸として、試料マウントを2回/秒の周期で等速回転させた。
【0107】
被験試料1及び2について得られた粉末X線回折プロフィルを解析し、粉末X線回折パターンを作成する過程においては、測定精度を上げるため、常法にしたがい、各粉末X線回折プロフィルから粉末X線回折装置に由来するバックグラウンドシグナルを除去した。斯くして得られた被験試料1及び2についての粉末X線回折パターンをそれぞれ図3及び図4に示す。
【0108】
図3に見られるとおり、放射光を用いた粉末X線回折による被験試料1についての粉末X線回折パターンにおいてはアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶に特有な回折ピークが回折角(2θ)2乃至40°の範囲に明瞭かつシャープに出現した。図3と図1とを比較すると、放射光の波長(0.7717Å)、と特性X線の波長(1.5405Å)とが異なるため、図3においては、図1におけるほぼ2分の1の回折角(2θ)で各回折ピークが出現するという違いはあるものの、図1及び図3における回折パターンは極めてよく一致していた。また、図3における各回折ピークの強度は、図1における回折ピークの強度より100倍近く強いにもかかわらず、各回折ピークの半値幅は図1におけるよりも明らかに狭く、分離度も高かった。また、図3の粉末X線回折パターンにおいては、後述する図4におけるがごとき、無定形部分に特有なハローは一切認められなかった。このことは、被験試料1中のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の結晶性が極めて高く、被験試料1が実質的にアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶からなることを示している。
【0109】
一方、図4に示すとおり、放射光を用いた粉末X線回折による被験試料2についての粉末X線回折パターンにおいては、無定形部分に特有なハローがベースラインの膨らみとして著明に出現し、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶に特有な回折ピークは一切認められなかった。このことは、被験試料2が実質的に無定形部分からなることを示している。
【0110】
放射光をX線源として用いて得られた上記の結果は、被験試料1及び被験試料2が、式[1]における解析値H100及び解析値Hを決定するための標準試料として適切なものであることを裏付けている。
【0111】
<実験1−4:固結性試験>
被験試料1乃至4の各々について、その固結性を調べる目的で、以下の実験を行った。すなわち、実験1−1で調製した被験試料1乃至4を1gずつ秤取し、それぞれ別個に内底部が半球状の14ml容蓋つきポリプロピレン製円筒チューブ(ベクトン・ディッキンソン社販売、商品名『ファルコンチューブ2059』、直径1.7cm、高さ10cm)の内部に充填し、チューブを試験管立てに直立させた状態で50℃のインキュベーター(アドバンテック東洋株式会社販売、商品名『CI−410』)の内部に収容し、24時間にわたって静置した後、チューブをインキュベーター外に取り出し、チューブから蓋を外し、チューブを緩慢に転倒させることにより、被験試料を黒色プラスチック製平板上に取り出し、取り出された被験試料の状態を肉眼観察した。
【0112】
固結の有無は、被験試料が平板上でもなおチューブ内底部の半球状を明らかに保っている場合を「固結あり」(+)、被験試料がチューブ内底部の形状をわずかではあるが識別できる場合を「やや固結あり」(±)、被験試料が崩壊し、チューブ内底部の形状を保っていない場合を「固結なし」(−)と判定した。結果は、表1における「固結性」の欄に示すとおりであった。
【0113】
【表1】

【0114】
表1に示されるとおり、解析値H100を決定するための標準試料とした被験試料1(結晶化度100.0%)は、平板上に取り出すと崩壊し、チューブ内底部の形状を保っておらず、「固結なし」(−)と判断された。これに対し、解析値Hを決定するための標準試料とした被験試料2(結晶化度0.0%)は、チューブから平板上に取り出しても、なおチューブ内底部の半球状を明確に保っており、明らかに「固結あり」(+)と判断された。平板上に取り出された被験試料2が保っているチューブ内底部の半球状の形態は、平板に軽く振動を与えた程度では崩壊しないほどであった。
【0115】
結晶化度が88.3%である被験試料3は、被験試料2と同様に、チューブから平板上に取り出しても、なおチューブ内底部の半球状を明確に保っており、明らかに「固結あり」(+)と判断されたが、結晶化度が93.1%である被験試料4は、被験試料1と同様に、平板上に取り出した途端に崩壊し、「固結なし」(−)と判断された。
【0116】
なお、被験試料2乃至4は、上述したとおり、アスコルビン酸2−グルコシド純度が99.9%の被験試料1を基に調製したものであるが、上述したHPLC分析によれば、それらのアスコルビン酸2−グルコシド純度はいずれも99.1%にとどまった。この理由は定かではないが、調製途中に何らかの理由でアスコルビン酸2−グルコシドが、ごく微量ではあるが、分解などして失われたものと推測される。
【0117】
上記の結果は、無水物換算でアスコルビン酸2−グルコシドを99.1%以上含有する粉末の場合、結晶化度が高いほど固結性が低い傾向にあることを示しており、結晶化度が88.3%の被験試料3が「固結あり」(+)と判断され、結晶化度が93.1%の被験試料4が「固結なし」(−)と判断されたという事実は、上記固結性試験において、「固結あり」(+)から「固結なし」(−)に変わる臨界点が、結晶化度88.3%と93.1%の間にあることを示している。
【0118】
<実験2:アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の固結性と結晶化度の関係>
本実験では、実験1の結果に基づき、固結性と結晶化度の関係をさらに詳細に調べるために、結晶化度が0乃至100%の範囲にあり、アスコルビン酸2−グルコシドの純度が99.1乃至99.9%である7種類のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を用い、実験1におけると同様に固結性について試験した。
【0119】
<実験2−1:被験試料の調製>
実験1−1で調製した被験試料1と被験試料2とをそれぞれ適量とり、均一に混合することにより、表2に示す被験試料5乃至9の粉末を調製した。実験1−2に記載した方法によって求めた被験試料5乃至9のアスコルビン酸2−グルコシド純度と、結晶化度は表2に示すとおりであった。なお、表2における被験試料1及び2についての結果は表1から転記した。
【0120】
<実験2−2:固結性試験>
被験試料5乃至9を実験1−4の固結性試験に供した。結果を表2の「固結性」の欄に示した。なお、表2における被験試料1及び2についての「固結性」は、表1に記載した被験試料1及び2についての固結性試験結果を転記したものである。
【0121】
【表2】

【0122】
表2の結果に見られるとおり、結晶化度が29.9%である被験試料9は「固結あり」(+)と判断され、結晶化度が89.2%である被験試料8は「やや固結あり」(±)と判断された。これに対し、結晶化度が91.5%である被験試料7、結晶化度が92.6%である被験試料6、及び結晶化度が99.8%である被験試料5は、いずれも被験試料1と同様に、「固結なし」(−)と判断された。これらの結果は、無水物換算でアスコルビン酸2−グルコシドを99.1%以上99.9%未満含有するアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末において、結晶化度が90%以上の場合、本実験の条件下では固結しないことを示している。
【0123】
<実験3:アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の結晶化度に及ぼすアスコルビン酸2−グルコシド純度の影響>
先行する実験によって、アスコルビン酸2−グルコシド純度が99.1%以上という高純度のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末において、異なる結晶化度のものが存在することが明らかとなったので、本実験では、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の結晶化度とアスコルビン酸2−グルコシド純度との関係について検討した。さらに、アスコルビン酸2−グルコシド純度と固結性との関係について検討した。
【0124】
<実験3−1:被験試料の調製>
以下のようにして、L−アスコルビン酸と、デキストリンとを含有する水溶液から、表3に示すアスコルビン酸2−グルコシド純度が互いに異なる被験試料10乃至15を調製した。
【0125】
すなわち、デキストリン(松谷化学工業株式会社販売、商品名『パインデックス#100』)4質量部を水15質量部に加熱溶解し、L−アスコルビン酸3質量部を加え、pH5.5、液温を55℃に保ちつつ、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス Tc−62株由来のCGTaseをデキストリン1g当り100単位と、イソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所販売)をデキストリン1g当り250単位加え、50時間反応させ、アスコルビン酸2−グルコシドを生成させた。なお、反応液中には、2−O−α−マルトシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−マルトトリオシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−マルトテトラオシル−L−アスコルビン酸などのα−グリコシル−L−アスコルビン酸類も当然に生成していると推測される。
【0126】
反応液を加熱することにより酵素を失活させた後、pH4.5に調整し、グルコアミラーゼ(商品名『グルクザイムAF6』 天野エンザイム株式会社販売)をデキストリン1g当り50単位加え、24時間反応させることにより、上記のごときα−グリコシル−L−アスコルビン酸類をアスコルビン酸2−グルコシドにまで、また、混在するオリゴ糖をD−グルコースにまで分解した。この時点で、反応液におけるアスコルビン酸2−グルコシドについての生成率は39%であった。
【0127】
反応液を加熱することによりグルコアミラーゼを失活させ、活性炭で脱色濾過した後、濾液をカチオン交換樹脂(H型)のカラムに通液して脱塩した後、アニオン交換樹脂(OH型)にL−アスコルビン酸及びアスコルビン酸2−グルコシドを吸着させ、水洗してD−グルコースを除いた後、0.5N塩酸溶液で溶出した。さらに、この溶出液を固形分約50%にまで濃縮し、次いで、強酸性カチオン交換樹脂(ダウケミカル社製造、商品名『ダウエックス50WX4』、Ca2+型)を用いるカラムクロマトグラフィーに供した。カラムに、その湿潤樹脂容積の約1/50量負荷し、負荷量の50倍の精製水を線速度1m/時間で通液し、溶出液をカラム容積の0.05容積量ずつ分画した。その後、各画分の組成を実験1−2で述べたHPLC法により測定し、無水物換算でアスコルビン酸2−グルコシド含量が80%以上であった6画分につき、それらを濃度約76%まで減圧濃縮し、得られた濃縮液を助晶缶にとり、種晶として、実験1−1における被験試料1を2%ずつ加え、濃縮液を緩慢に撹拌しながら、2日間かけて液温を40℃から15℃にまで、約2日間かけて自然冷却し、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析させた。
【0128】
その後、常法にしたがい、バスケット型遠心分離機によりマスキットから結晶を採取し、少量の蒸留水で洗浄した後、熟成、乾燥し、25℃の空気を30分間吹き付け冷却し、粉砕することにより、表3に示す被験試料10乃至15を得た。また、被験試料16として、従来の医薬部外品級の粉末であるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末(商品名『AA2G』 株式会社林原生物化学研究所販売)を用いた。
【0129】
【表3】

【0130】
なお、表3に見られる被験試料1及び2は実験1−1におけると同様のものであり、それらのアスコルビン酸2−グルコシドの純度、結晶化度は先行する実験で得た結果をそのまま転記したものである。被験試料10乃至16の固結性を実験1−4におけると同様の方法で試験した。結果を表3に示す。なお、表3に見られる被験試料1及び2についての固結性試験の結果は表1におけるものをそのまま転記したものである。
【0131】
<実験3−2:保存性試験>
実験1−4等において行われた固結性試験が、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の実際の保存時における固結性を評価する試験として妥当なものであることを確認すべく、実験1−1の方法で得た被験試料1、実験3−1で得た被験試料10乃至15、及び被験試料16について、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末が実際に保存される状態、環境、期間などを想定した保存性試験を行った。
【0132】
すなわち、被験試料1及び被験試料10乃至16を10kgずつとり、それぞれを、二重にしたポリエチレン袋(縦800mm×横600mm)に入れたものを各被験試料につき1袋ずつ作製した。次いで各ポリエチレン袋を、開口部を上向きにし、開口したまま閉口することなくスチール缶に収納し(18リットル容)、スチール缶の蓋をせずに静置し、高温多湿を避けて、室内で45日間保存した。45日間保存後、スチール缶から各被験試料の入ったポリエチレン袋を取り出し、袋から被験試料を黒色プラスチック製平板上に取り出し、その際の被験試料の流動性と固結の状態を肉眼観察した。
【0133】
固結の有無は、被験試料中に塊状物が認められ、保存開始時と比べ流動性が低下している場合を「固結あり」(+)、塊状物が認められず、保存開始時と比べ流動性に変化がない場合を「固結なし」(−)と判定した。なお、本保存試験における各被験試料の保存形態は、開口部をゴムバンドで閉口していない点、乾燥剤を入れていない点、及び、スチール缶の蓋をしていない点を除き、医薬部外品級の粉末の商品形態と同じであり、実際に市場に流通し、保存される際の形態と同じである。なお、上記3つの相違点は、試験結果を早期に得られるように、保存試験での保存環境を実際の保存環境よりもやや過酷にすべく、設定された相違点である。結果を表3に併せて示した。
【0134】
表3に示されるとおり、実質的に無定形部分からなる被験試料2、及び医薬部外品級の粉末である被験試料16を除いて、その余の被験試料1及び被験試料10乃至15においては、アスコルビン酸2−グルコシド純度が高まるにつれ、結晶化度が高くなる傾向がある。さらに、固結性試験において、アスコルビン酸2−グルコシド純度がそれぞれ97.4%及び98.0%である被験試料10及び11が「固結あり」(+)又は「やや固結あり」(±)と判断されたのに対し、アスコルビン酸2−グルコシド純度が98.6乃至99.7%である被験試料12乃至15は「固結なし」(−)と判断された。これらの結果は、固結性を左右すると考えられるアスコルビン酸2−グルコシド純度についての閾値が98.0%付近にあることを示しており、「固結なし」(−)と評価されるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得るには98.0%を超えるアスコルビン酸2−グルコシド純度が必要であると結論づけることができる。
【0135】
また、被験試料12乃至15のアスコルビン酸2−グルコシド純度は98.6乃至99.7%であり、医薬部外品級の粉末である被験試料16のアスコルビン酸2−グルコシド純度98.9%とほぼ同じレベルであり、試薬級の粉末であって実質的にアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶からなる被験試料1の純度より有意に低いにもかかわらず、被験試料1と同様に全く固結は認められなかった。因みに、被験試料12乃至15の結晶化度は91.6乃至99.5%と90%以上であるが、医薬部外品級の粉末である被験試料16の結晶化度は88.9%と90%を下回っていた。これらの結果から、医薬部外品級の粉末である被験試料16よりも有意に固結し難いアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得るには、結晶化度を90%以上とする必要があると判断される。
【0136】
なお、表3の最下段に示すとおり、各被験試料を実際の商品形態に倣って、10kg入りの袋詰めの状態で45日間保存した保存性試験においても、アスコルビン酸2−グルコシドの純度がそれぞれ97.4%及び98.0%である被験試料10及び11が「固結あり」(+)と判断されたのに対し、アスコルビン酸2−グルコシド純度が98.6乃至99.7%である被験試料12乃至15は「固結なし」(−)と判断され、固結性試験と同様の結果が得られた。この事実は、実験1−4等における固結性試験が、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の実際の保存環境下での固結性を評価する試験として妥当なものであることを示している。
【0137】
<実験4:アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の還元力と着色との関係>
先行する実験で用いた被験試料は、いずれも、L−アスコルビン酸と澱粉質とを含む溶液にCGTaseを作用させる工程を経て得られたアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液から調製されるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である。このような製法による場合、得られる粉末には、量の多寡はともかく、製造方法に特有の夾雑物であるL−アスコルビン酸及びD−グルコースが含まれることになる。L−アスコルビン酸やD−グルコースは、いずれも還元性を有しており、含まれる量にもよるが、蛋白質やアミノ酸などのアミノ基を有する化合物を含む製品に使用した場合、製品に不都合な変色をもたらす恐れがある。中でも、L−アスコルビン酸は、酸素との反応性が高く、これを使用した製品に不都合な変色をもたらすだけでなく、従来の医薬部外品級の粉末を長期間保存した場合に往々にして認められた粉末自体の着色の原因ともなると考えられる。
【0138】
そこで、本実験では、先行する実験で用いた被験試料1及び被験試料12乃至16につき、それらの粉末におけるL−アスコルビン酸とD−グルコースとの合計量、L−アスコルビン酸量、さらには、粉末全体の還元力と着色性との関係について、下記の手順にて、加熱処理による加速試験を行うことにより検討した。
【0139】
10ml容螺子蓋付き試験管内に各被験試料を無水物換算で150mgずつ秤取し、試験管の開口部を塞いだ状態でオーブン(増田理化株式会社販売、商品名『DRYING−OVEN SA310』)内に収容し、80℃で3日間加温した。次いで、試験管から螺子蓋を外し、各被験試料に脱イオン水を3mlずつ加え、溶解させた後、分光光度計(株式会社島津製作所販売、商品名『UV−2400PC』)により波長400nmにおける吸光度を測定した。加温に伴う着色の度合いは、波長400nmにおける吸光度の数値が0.50未満である場合:「着色しないか、あるいは、実質的に着色しない」(−)、前記吸光度の数値が0.50以上である場合:「着色する」(+)、の2段階で判定した。結果を表4に示す。
【0140】
なお、各被験試料中のL−アスコルビン酸とD−グルコースの合計量は実験1−1で述べたHPLC法により決定した。また、粉末全体の還元力については、D−グルコースを標準物質として用い、斯界で汎用されているソモジ−ネルソン法及びアンスロン硫酸法により、それぞれ、還元糖量及び全糖量を測定し、それらを上述した式[3]に代入し、計算することにより求めた。各被験試料におけるL−アスコルビン酸とD−グルコースとの合計量、L−アスコルビン酸量、及び、粉末全体の還元力は表4に示すとおりであった。
【0141】
【表4】

【0142】
表4に示すとおり、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末においては、実質的にアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶からなる試薬級の粉末である被験試料1では、L−アスコルビン酸及びD−グルコース量は、いずれも検出限界以下であった。これに対し、本発明のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である被験試料12乃至15、及び、従来の医薬部外品級の粉末である被験試料16では、いずれの粉末においてもL−アスコルビン酸及び/又はD−グルコースが検出された。さらに、斯かる粉末においては、被験試料12乃至15のように、L−アスコルビン酸とD−グルコースの合計量が無水物換算で0.2%以下である場合には、「着色しないか、あるいは、実質的に着色しない」(−)と判断されたのに対し、被験試料16のように、L−アスコルビン酸とD−グルコースの合計量が無水物換算で0.3%に達すると、「着色する」(+)と判断された。さらに、斯かる粉末の着色性に最も強く関与すると考えられるL−アスコルビン酸については、被験試料12乃至15のように、その含量が無水物換算で0.1%以下である場合には、「着色しないか、あるいは、実質的に着色しない」(−)と判断されたのに対し、被験試料16のように、L−アスコルビン酸量が無水物換算で0.2%に達すると、「着色する」(+)と判断された。因みに、既述のごとく、L−アスコルビン酸は酸素との反応性が高く、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の着色に関与していると考えられるので、L−アスコルビン酸量が0%を超え0.1%以下の場合には、斯かる粉末を従来の医薬部部外品級の粉末の商品形態で長期保存した場合、実質的な着色を懸念しなくてよいと判断された。
【0143】
一方、還元力から見ると、被験試料12乃至15のように、粉末全体の還元力が0%を超え1%未満である場合、「着色しないか、あるいは、実質的に着色しない」(−)と判断されたのに対し、被験試料16のように、粉末全体の還元力が1%を超えると、「着色する」(+)と判断された。この結果は、上記したL−アスコルビン酸とD−グルコースの合計量を指標にして判定した結果と良く一致していた。
【0144】
以上の結果は、製造方法に起因して、不可避的に、L−アスコルビン酸及び/又はD−グルコースを検出できるレベルで含んでいても、粉末全体の還元力を0%を超え1%未満とする場合には、着色の懸念がないアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得ることができることを示している。また、使用した製品の着色だけでなく、粉末自体の着色という観点を含めれば、L−アスコルビン酸の含量は、無水物換算で0%を超え0.1%以下が好ましいことを示している。
【0145】
<実験5:晶析時の冷却方法がアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の結晶化度に及ぼす影響>
晶析時の冷却方法がアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の結晶化度に及ぼす影響を調べるために、下記に示す方法により、表5に示すアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末(被験試料17乃至22)を調製した。なお、酵素反応液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は、実験1−2の方法で測定した。
【0146】
<被験試料の調製方法>
(1)被験試料17
後述の参考例1の方法において、CGTase及びイソアミラーゼの作用時間を参考例1の半分である25時間目で停止し、アスコルビン酸2−グルコシド含量86%以上にまで精製した後、アスコルビン酸2−グルコシドを含む溶液を濃度約76%まで減圧濃縮した点、及び、得られた濃縮液を周囲にジャケットタンクを配した助晶缶に移し、ジャケットタンク内の水温を調整することにより、1.5日間かけて40℃から30℃へ緩やかに冷却した後、0.5日間かけて30℃から15℃へ急速に冷却する擬似制御冷却法により結晶を晶析させた点以外は、後述する参考例1におけると同様にしてアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である被験試料17を調製した。なお、酵素反応液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は25.3%であった。
(2)被験試料18
後述の実施例1の方法において、原料として用いた液化馬鈴薯澱粉をデキストリン(松谷化学工業株式会社販売、商品名「パインデックス#100」)に代えた点、及び、酵素反応後の溶液を精製、減圧濃縮後、40℃から15℃まで約2日間かけて自然冷却し結晶を晶出させた点以外は、実施例1におけると同様にしてアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である被験試料18を調製した。なお、酵素反応液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は27.0%であった。
(3)被験試料19
酵素反応後の溶液を精製、減圧濃縮後、周囲にジャケットタンクを配した助晶缶に移し、ジャケットタンク内の水温を調整することにより、1.5日間かけて40℃から30℃へ緩やかに冷却後、0.5日間かけて30℃から15℃へ急速に冷却する擬似制御冷却法により結晶を晶析させた点以外は被験試料18と同様にしてアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である被験試料19を調製した。なお、酵素反応液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は27.0%であった。
(4)被験試料20
後述の実施例4の方法において、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析する際、アスコルビン酸2−グルコシドを含む溶液を、濃度約76%にまで減圧濃縮し、得られた40℃の溶液を助晶缶に移し、40℃から15℃まで約2日間かけて自然冷却し結晶を晶出させた以外は、実施例4におけると同様にしてアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である被験試料20を調製した。なお、酵素反応液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は32.5%であった。
(5)被験試料21
酵素反応後の溶液を精製、減圧濃縮後、周囲にジャケットタンクを配した助晶缶に移し、ジャケットタンク内の水温を調整することにより、1.5日間かけて40℃から30℃へ緩やかに冷却後、0.5日間かけて30℃から15℃へ急速に冷却する擬似制御冷却法により結晶を晶析させた点以外は被験試料20と同様にしてアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である被験試料21を調製した。なお、酵素反応液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は32.5%であった。
(6)被験試料22
実験3−1における被験試料の調製方法において、CGTaseとイソアミラーゼによる酵素反応を反応30時間で停止し、精製してアスコルビン酸2−グルコシド含量を86.2%まで高めた溶液を、濃度約76%にまで減圧濃縮し、得られた40℃の溶液を助晶缶に移し、40℃から15℃まで約2日間かけて冷却する自然冷却法により結晶を晶出させた以外は、実験3−1におけると同様にしてアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である被験試料22を調製した。なお、酵素反応液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は35.3%であった。
【0147】
<アスコルビン酸2−グルコシド純度及び結晶化度の測定>
実験1−2におけると同様の方法によって、被験試料17乃至22のアスコルビン酸2−グルコシド純度、及びアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度を測定した。
【0148】
<平均結晶子径>
被験試料17乃至22の平均結晶子径を以下の方法により測定した。既述の式[2]による算出のために、各被験試料の結晶化度の測定に用いた粉末X線回折プロフィルに基づき作成された回折パターンにおいて、図1の符号a乃至eで示す回折ピークに該当する、回折角(2θ)10.4°(ミラー指数(hkl):120)、13.2°(ミラー指数:130)、18.3°(ミラー指数:230)、21.9°(ミラー指数:060)及び22.6°(ミラー指数:131)に検出される5個の回折ピークについての半値幅と回折角(2θ)につき、粉末X線回折装置(スペクトリス株式会社製、商品名『X’Pert PRO MPD』)に付属する解析処理用コンピューターソフトウェア(『エクスパート ハイスコア プラス(X’pert Highscore Plus)』を用いて処理し、次いで、同ソフトウェア中の「シェラー(Scherrer)の式」によるプログラムにて、これら被験試料におけるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の平均結晶子径を算出した。
【0149】
以上の結果を表5に示す。
【0150】
【表5】

【0151】
表5に示すとおり、アスコルビン酸2−グルコシドの生成率が27.0%又は32.5%の酵素反応液を、精製、濃縮後、L−アスコルビン酸2−グルコシド含有溶液から、擬似制御冷却法によりアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析させて調製した被験試料19及び21は、結晶化度が90%を超え、平均結晶子径はそれぞれ1,450Å及び1,650Åであった。これに対し、アスコルビン酸2−グルコシドの生成率が25.3%の酵素反応液を、精製、濃縮後、L−アスコルビン酸2−グルコシド含有溶液から、同じく擬似制御冷却法によりアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析させて調製した被験試料17は、平均結晶子径は1,410Åと比較的大きかったものの、結晶化度は90%に満たなかった。また、アスコルビン酸2−グルコシドの生成率が被験試料19及び21と同じく27.0%又は32.5%である酵素反応液を、精製、濃縮後、L−アスコルビン酸2−グルコシド含有溶液から、自然冷却法によりアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析させて調製した被験試料18及び20は、結晶化度が90%に満たず、平均結晶子径がそれぞれ1,220Å及び1,250Åといずれも低かった。一方、アスコルビン酸2−グルコシドの生成率が35.3%の酵素反応液を、精製、濃縮後、L−アスコルビン酸2−グルコシド含有溶液から、自然冷却法によりアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析させて調製した被験試料22は、結晶化度が98.9%と高く、平均結晶子径も1,705Åと高かった。
【0152】
実験5の結果は、アスコルビン酸2−グルコシドの生成率が同じ反応液から調製したアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末であっても、擬似制御冷却法によってアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析させた場合の方が、自然冷却によって晶析させた場合よりも結晶化度が高く、かつ、平均結晶子径も大きくなることを示している。また、自然冷却によってアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析させる場合には、酵素反応液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率が35%を超えないと、結晶化度が90%を超えるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末が得られないのに対し、晶析時に擬似制御冷却法を適用する場合には、酵素反応液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率が35%に満たない、32.5%(被験試料21)や27.0%(被験試料19)であっても、結晶化度が90%を超えるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末が得られている。これらの結果は、擬似制御冷却法が結晶化度の上昇や、結晶子径の増大に有効であり、酵素反応液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率が27.0%以上であれば、精製、濃縮後、擬似制御冷却法又は制御冷却法を用いることによって、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度が90%を超えるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得ることができることを示している。なお、被験試料19及び21は、アスコルビン酸2−グルコシドの純度が98.0%超99.9%未満の範囲内にあり、かつ、結晶化度が90%を超えているので、従来の医薬部外品級の粉末に比べて有意に固結し難いアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である。
【0153】
<実験6:平均結晶子径が親水性溶媒に対する溶解性に及ぼす影響>
被験試料として、上記実験で用いた被験試料17乃至22、後述の実施例1乃至4の方法で製造したアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末、実験1−1で調製した被験試料1及び実験3−1で用いた被験試料16(医薬部外品級の粉末)を用い、化粧品や医薬部外品で汎用されている親水性溶媒に対する溶解性を調べた。
【0154】
すなわち、上記被験試料或いは実施例1乃至4の粉末のいずれかを、各々0.25g秤量し、内底部が半球状の14ml容蓋付きポリプロピレン製円筒チューブ(ベクトン・ディッキンソン社販売、商品名「ファルコンチューブ2059」に入れた。各々の試料を入れたチューブに、1,3−ブチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)を脱イオン水で30%濃度に希釈したものを5ml加え、50℃の恒温水槽で、30分間加温した後、2回転倒させ、さらに50℃で15分保持し、目視により、粉末が完全に溶解したと見なされる場合を「溶解性良」(−)、不溶物の残存が確認される場合を「溶解性不良」(+)と判定した。この不溶物の残存が確認される場合、さらに50℃で15分保持し、その時粉末が完全に溶解したと見なされた場合は「溶解性やや不良」(±)と判定した。結果を表6に示す。
【0155】
さらに、上記被験試料或いは実施例1乃至4の粉末を用い、実験1−4及び実験3−2の方法により、固結性試験及び保存性試験を実施した。結果を併せて表6に示す。なお、被験試料1及び16についての平均結晶子径は実験5の方法で測定し、表6に併せて示した。また、被験試料1及び16についてのアスコルビン酸2−グルコシド純度、結晶化度、固結性及び保存性の結果は、表3に記載した被験試料1及び16についての結果を転記したものである。
【0156】
【表6】

【0157】
表6に示すように、平均結晶子径が1,670Å以下である被験試料16乃至21及び後述の実施例1乃至4の粉末は「溶解性良」(−)と判定された。これに対し、平均結晶子径が1,705Åの被験試料22は、「溶解性やや不良」(±)と判定された。平均結晶子径が1,770Åの被験試料1(試薬級の粉末)は、「溶解性不良」(+)と判定された。さらに、被験試料1、19、21、22、及び実施例1乃至4の粉末は、固結性試験及び保存性試験において、「固結しない」(−)と判定されたのに対し、被験試料16乃至18及び20は、「固結する」(+)と判定された。この結果から、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の親水性溶媒に対する溶解性に影響を及ぼす平均結晶子径の閾値は1,705Åよりも小さいと推測され、平均結晶子径が1,700Å未満、より詳細には1,670Å以下のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、試薬級の粉末よりも親水性溶媒に対する溶解性が優れていると判断された。さらに、溶解性、固結性、及び保存性のいずれにおいても良い評価が得られた被験試料19、21、及び、実施例1乃至4の粉末のうち、最も小さな平均結晶子径は1,450Å(被験試料19)であるので、好ましい平均結晶子径の範囲は1,400Å以上1,700Å未満、より好ましくは1,450Å以上1,670Å以下であると判断された。
【0158】
<実験7:各種微生物由来CGTaseによるアスコルビン酸2−グルコシドの生成率>
液化澱粉とL−アスコルビン酸を含有する溶液にCGTaseを作用させ、次いで、グルコアミラーゼを作用させる酵素反応によってアスコルビン酸2−グルコシドを生成させる酵素反応系において、CGTaseの由来の違いが、酵素反応で得られる酵素反応液中のアスコルビン酸2−グルコシド生成率にどのような影響を及ぼすかを調べるべく、以下の実験を行った。
【0159】
<市販CGTase>
各種微生物由来のCGTaseのうち、市販されているCGTaseとしては、以下のCGTaseを用いた。すなわち、バチルス・マセランス(Bacillus macerans)由来のCGTaseとしては、市販のCGTase(商品名『コンチザイム』、天野エンザイム株式会社販売)を、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス由来のCGTaseとしては、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス Tc−91株由来CGTase(株式会社林原生物化学研究所製)を、サーモアナエロバクター・サーモスルフリゲネス由来のCGTaseとしては、組換え型酵素として販売されている市販のCGTase(商品名『トルザイム(Toruzyme) 3.0L』、ノボザイムズ・ジャパン株式会社販売)を用いた。
【0160】
<実験7−1:各種微生物由来CGTaseの調製>
<実験7−1−1:パエニバチルス・イリノイセンシス NBRC15379株由来CGTaseの調製>
パエニバチルス・イリノイセンシス NBRC15379株を、デキストリン2%、塩化アンモニウム0.5%、リン酸水素カリウム0.05%、硫酸マグネシウム0.025%及び炭酸カルシウム0.5%を含む液体培地で27℃、3日間培養し、培養液を遠心分離して得たそれぞれの遠心上清を常法に従い硫安塩析、透析することによりCGTaseの粗酵素液を得た。得られたCGTase粗酵素液を、それぞれDEAE−トヨパール 650Sゲル(東ソー株式会社製)を用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィー及びブチル−トヨパール 650Mゲル(東ソー株式会社製)を用いた疎水カラムクロマトグラフィーに供して精製し、部分精製CGTaseを調製した。
【0161】
<実験7−1−2:ジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株CGTase変異体の調製>
ジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株起源のCGTaseは、前記したごとくその遺伝子がクローニングされ、遺伝子の塩基配列(配列表における配列番号2で示される塩基配列)から成熟型CGTaseのアミノ酸配列(配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列)が決定されている。当該CGTaseの遺伝子DNAに下記の手順で変異を導入し、野生型CGTaseよりもアスコルビン酸2−グルコシドの生成能に優れるCGTase変異体を取得した。
【0162】
すなわち、本発明者らが保有しているジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−11273)由来のCGTase遺伝子を用い、そのコードするアミノ酸配列を変えることなく変異させて制限酵素切断部位などを導入又は欠失させ、それをプラスミドベクターに組換え、野生型CGTaseをコードする遺伝子を含む組換えDNAを作製した。当該組換えDNA「pRSET−iBTC12」の構造を図5に示した。次いで、得られた組換えDNAにおける野生型CGTaseの活性残基を含む領域をコードする遺伝子断片(Nde I−EcoT22I断片)を切り出し、PCR変異キット(商品名『GeneMorph PCR Mutagenesis Kit』、ストラタジーン社販売)を用いて試験管内でランダムに変異を加え、元の組換えDNAに戻すことにより様々なアミノ酸置換が生じたCGTase変異体をコードする遺伝子混合物を作製した。その変異遺伝子を発現プラスミドベクターに組込み、組換えDNAを作製した。当該組換えDNAを用いて大腸菌を形質転換し、CGTase変異体遺伝子ライブラリーを作製した。
【0163】
次に、得られた遺伝子ライブラリーから13,000株を超える形質転換体を単離し、培養して得られた菌体からCGTase変異体を含む溶菌液を粗酵素液として調製した。得られた粗酵素液をL−アスコルビン酸と澱粉部分分解物とを含む水溶液に作用させ、生成するα−グリコシルL−アスコルビン酸をグルコアミラーゼ処理してアスコルビン酸2−グルコシドを生成させ、その生成量を野生型CGTaseと比較することによって、アスコルビン酸2−グルコシド高生産型CGTase変異体を産生する形質転換体をスクリーニングした。そのスクリーニングの過程で目的とする変異CGTase遺伝子を保持する形質転換体2株、すなわち、#129株及び#268株を得た。当該形質転換体がそれぞれ保持する変異CGTase遺伝子の塩基配列を解読したところ、形質転換体#129株が産生するCGTase変異体は、配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列において2箇所のアミノ酸残基が置換しており、第176番目のグリシン残基(G)がアルギニン残基(R)に、及び、第452番目のチロシン残基(Y)がヒスチジン残基(H)に置換したアミノ酸配列、すなわち配列表における配列番号4で示されるアミノ酸配列を有することが判明した。また、形質転換体#268株が産生するCGTase変異体は、配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列において1箇所のアミノ酸残基が置換しており、第228番目のリジン残基(K)がイソロイシン残基(I)に置換したアミノ酸配列、すなわち、配列表における配列番号5で示されるアミノ酸配列を有していることが判明した。これらCGTase変異体を、配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列においてアミノ酸残基は置換した箇所とアミノ酸置換に基づき、それぞれG176R/Y452H、及び、K228Iと名付けた。
【0164】
上記CGTase変異体をコードする遺伝子DNAを保持する形質転換体2株を、それぞれ、アンピシリンNa塩100μl/mlを含むT培地(培地1L当り、バクト−トリプトン12g、バクト−イーストエキストラクト24g、グリセロール5ml、17mM リン酸一カリウム、72mM リン酸二カリウムを含有)を用いて37℃で24時間好気的に培養した。培養液を遠心分離して得た菌体を超音波破砕器(商品名『Ultra Sonic Homogenizer UH−600』、エムエステー株式会社製)を用いて破砕処理し、破砕液上清を60℃で30分間熱処理し、宿主由来の非耐熱性蛋白質を変性、失活させた。熱処理液をさらに遠心分離しCGTase変異体の部分精製標品をそれぞれ調製した。
【0165】
なお、上述した各CGTaseの酵素活性は、前記した方法に従い測定し、式[4]を用いて算出した。
【0166】
<実験7−2:アスコルビン酸2−グルコシド生成反応>
デキストリン(商品名『パインデックス #1』、松谷化学工業株式会社販売)5質量部を水20質量部に加えて加熱溶解し、L−アスコルビン酸3質量部を加え、pHを5.5に調整し基質溶液とした。これに、上述した市販のCGTase、及び、実験7−1で調製したCGTaseのいずれかをデキストリン固形分1g当り100単位加え、55℃で40時間反応させ、反応液を加熱することにより酵素を失活させることにより、アスコルビン酸2−グルコシドとともに、2−O−α−マルトシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−マルトトリオシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−マルトテトラオシル−L−アスコルビン酸などのα−グリコシル−L−アスコルビン酸を生成させた。次いで、得られた反応液を加熱し酵素を失活させた後、pH4.5に調整し、これにグルコアミラーゼ剤(天野エンザイム株式会社販売、商品名『グルクザイムAF6』、6,000単位/g)をデキストリン固形分1g当り50単位加え55℃で24時間処理し、α−グリコシル−L−アスコルビン酸をアスコルビン酸2−グルコシドにまで、また、混在する糖質をD−グルコースにまで分解した後、反応液を加熱することによりグルコアミラーゼを失活させ酵素反応液1乃至6を得た。
【0167】
<実験7−3:アスコルビン酸2−グルコシド生成率の測定>
実験7−2で得た酵素反応液1乃至6におけるアスコルビン酸2−グルコシド生成率を以下のようにして求めた。すなわち、酵素反応液1乃至6をそれぞれ精製水により2%溶液とし、0.45μmメンブランフィルターにより濾過した後、実験1−2記載のHPLC分析に供し、示差屈折計によるクロマトグラムに出現したピークの面積から反応液のアスコルビン酸2−グルコシド含量を計算し、無水物換算した。結果を表7に示す。なお、表7に示す各酵素反応液中のアスコルビン酸2−グルコシド生成率は、各CGTaseについて同一の条件でアスコルビン酸2−グルコシド生成反応及びグルコアミラーゼ処理を5回繰り返した場合にも、若干のばらつきの範囲内で再現性よく得られる値である。
【0168】
【表7】

【0169】
表7に示すとおり、バチルス・マセランス由来のCGTaseを用いた場合(反応液1)には、グルコアミラーゼ処理後のアスコルビン酸2−グルコシド生成率は16%にとどまり、パエニバチルス・イリノイセンシス由来のCGTaseを用いた場合(反応液2)も、アスコルビン酸2−グルコシド生成率は18%と低かった。一方、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス Tc−91株由来のCGTaseを用いた場合(反応液3)にはアスコルビン酸2−グルコシド生成率は28%に達し、サーモアナエロバクター・サーモスルフリゲネス由来のCGTaseを用いた場合(反応液4)には、アスコルビン酸2−グルコシド生成率は30%に達した。さらに、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株CGTase変異体であるG176R/Y452H及びK228Iをそれぞれ用いた場合(反応液5及び6)にはアスコルビン酸2−グルコシド生成率はそれぞれ32%及び31%に達した。
【0170】
この結果は、バチルス・マゼランス由来、及び、パエニバチルス・イリノイセンシス由来のCGTaseでは、収率よくアスコルビン酸2−グルコシドを製造することができず、これら微生物由来のCGTaseがアスコルビン酸2−グルコシドの製造に適さないことを明瞭に示すものである。
【0171】
<実験8:アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末のアスコルビン酸2−グルコシド純度及び諸物性に及ぼす晶析方法の影響>
アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を析出させる晶析方法として、従来から用いられている自然冷却法と、擬似制御冷却法とを用い、実験7で得たアスコルビン酸2−グルコシド生成率が異なる酵素反応液3乃至6から、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を調製し、粉末のアスコルビン酸2−グルコシド純度及び諸物性に及ぼす晶析方法の影響を調べた。なお、酵素反応液の段階でアスコルビン酸2−グルコシド生成率が顕著に低い酵素反応液1及び2、すなわちバチルス・マセランス由来CGTase及びパエニバチルス・イリノイセンシス由来CGTaseを作用させて得た酵素反応液については、効率よいアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造が見込めないと判断し、粉末の調製は行わなかった。
【0172】
<実験8−1:被験試料の調製>
<被験試料23乃至26>
実験7で得たアスコルビン酸2−グルコシド生成率が異なる酵素反応液3乃至6のそれぞれを、活性炭で脱色濾過し、濾液をカチオン交換樹脂(H型)にて脱塩し、次いで、アニオン交換樹脂(OH型)にL−アスコルビン酸及びアスコルビン酸2−グルコシドを吸着させ、水洗してD−グルコースを含む糖質を除いた後、0.5N塩酸水溶液で溶出した。さらに、この溶出液を固形分約50%にまで濃縮し、強酸性カチオン交換樹脂(商品名『ダイヤイオン UBK 550』Na型、三菱化学株式会社製)を充填したカラムクロマトグラフィーに供した。アスコルビン酸2−グルコシド含量が86%以上となるようにアスコルビン酸2−グルコシド高含有画分を採取した。採取した画分を合わせて固形物濃度約75%まで濃縮し、酵素反応液3乃至6のそれぞれに対応する、アスコルビン酸2−グルコシド含有溶液3乃至6(アスコルビン酸2−グルコシドを無水物換算で86.3乃至87.1%含有)を得た。
【0173】
上記アスコルビン酸2−グルコシド含有溶液3乃至6をそれぞれ助晶缶にとり、各糖液の容量に対して約2%(w/v)のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を種晶として加えて攪拌しつつ40℃から15℃まで約48時間かけて自然冷却することにより助晶し、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析させたマスキットを調製した。前記マスキットから、常法により、バスケット型遠心分離機によりアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を採取し、採取したアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶をマスキット重量に対し8%の脱イオン水を用いて洗浄し、40℃で3時間、熟成、乾燥させた後、25℃の清浄な空気を30分間吹き付けて強制冷却し、粉砕することにより、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末とした。アスコルビン酸2−グルコシド含有溶液3乃至6のそれぞれから自然冷却法にて得られたアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末をそれぞれ被験試料23乃至26とした。
【0174】
<被験試料23c乃至26c>
上記で調製した無水物換算でのアスコルビン酸2−グルコシド含量が異なるアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液3乃至6のそれぞれを、減圧下で固形物濃度約75%にまで濃縮し、助晶缶にとり、溶液の容量に対して約2%(w/v)のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を種晶として加えて攪拌しつつ、40℃から15℃まで約48時間かけて擬似制御冷却法により助晶した以外は、上記と同様にして、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析させたマスキットを調製した。なお、擬似制御冷却法は、全48時間の晶析時間を24時間、12時間、12時間の3つの区間に分け、最初の区間では24時間かけて液温を40℃から35℃まで冷却し、次の区間では12時間かけて35℃から27.5℃まで冷却し、さらに、最後の区間では12時間かけて液温を27.5℃から15℃まで冷却することによって行った。得られたマスキットから、常法により、バスケット型遠心分離機によりアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を採取し、採取したアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶をマスキット重量に対し8%の脱イオン水を用いて洗浄し、40℃で3時間、熟成、乾燥させた後、25℃の清浄な空気を30分間吹き付けて強制冷却し、粉砕することにより、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末とした。アスコルビン酸2−グルコシド含有溶液3乃至6のそれぞれから擬似制御冷却法によって得られたアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末をそれぞれ被験試料23c乃至26cとした。
【0175】
<実験8−2:被験試料23乃至26、及び、被験試料23c乃至26cのアスコルビン酸2−グルコシド純度及び諸物性>
上記で得た被験試料23乃至26及び被験試料23c乃至26cについて、実験6と同様にアスコルビン酸2−グルコシド純度、結晶化度、平均結晶子径、固結性、及び、親水性溶媒である1,3−ブチレングリコールへの溶解性を調べた。結果を表8に示した。なお、比較のため、医薬部外品級の粉末である被験試料16の結果についても表6から転記し併せて表8に示した。
【0176】
【表8】

【0177】
表8に示すとおり、被験試料23乃至26、被験試料23c乃至26cのアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末における無水物換算でのアスコルビン酸2−グルコシド含量、すなわちアスコルビン酸2−グルコシド純度は、いずれも98%を超え、これら被験試料は、従来の医薬部外品級のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である被験試料16と同等の高純度のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末であった。
【0178】
一方、結晶化度に関しては、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の晶析工程において従来の自然冷却法を適用して調製した被験試料23乃至26では、従来の医薬部外品級の粉末である被験試料16と同等の90%未満に止まったのに対し、晶析工程において擬似制御冷却法を適用して調製した被験試料23c乃至26cはいずれも90%以上の値を示し、擬似制御冷却法が、得られるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の結晶化度を高める効果があることがあらためて確認された。また、結晶化度と同様に、粉末の平均結晶子径においても被験試料23乃至26では1,220乃至1,280Åの範囲に止まっていたのに対し、被験試料23c乃至26cでは1,480乃至1,540Åと高い値が得られた。
【0179】
また、粉末の固結性についても結晶化度が90%未満、平均結晶子径が1,400Å未満の被験試料23乃至26が、「固結する」(+)と判定されたのに対し、結晶化度が90%以上、平均結晶子径が1,400Å以上の被験試料23c乃至26cは「固結しない」(−)と判定された。なお、1,3−ブチレングリコールへの溶解性についてはいずれの被験試料も「溶解性良」(−)と判定された。
【0180】
上記実験7及び8の結果は、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造において、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス由来のCGTase及びその変異体酵素、又は、サーモアナエロバクター・サーモスルフリゲネス由来のCGTaseを用いてアスコルビン酸2−グルコシド生成率27%以上の酵素反応液を得、アスコルビン酸2−グルコシド含量86%以上にまで精製し、晶析工程において擬似制御冷却法又は制御冷却法を適用すれば、結晶化度90%以上の固結し難い粉末が製造できることを示している。
【0181】
<実験9:澱粉枝切り酵素の併用が各種微生物由来CGTaseによるアスコルビン酸2−グルコシドの生成率に及ぼす影響>
液化澱粉とL−アスコルビン酸を含有する溶液にCGTaseを作用させ、次いで、グルコアミラーゼを作用させる酵素反応によってアスコルビン酸2−グルコシドを生成させる酵素反応系において、澱粉枝切り酵素の併用が、各種微生物由来CGTaseを用いた酵素反応で得られる反応液中のアスコルビン酸2−グルコシド生成率にどのような影響を及ぼすかを調べるべく、以下の実験を行った。
【0182】
<実験9−1:アスコルビン酸2−グルコシド生成反応>
実験7で用いた各種CGTaseとともに、澱粉枝切り酵素としてデキストリン固形分1g当たり1,000単位のイソアミラーゼ酵素剤(シュードモナス・アミロデラモサ由来、株式会社林原製)を作用させた以外は実験7と同様にアスコルビン酸2−グルコシド生成反応を行い、グルコアミラーゼ処理して後述する表9に示す酵素反応液7乃至12をそれぞれ得た後、実験1−2の方法で酵素反応液7乃至12におけるアスコルビン酸2−グルコシド生成率を測定した。結果を表9に示した。
【0183】
【表9】

【0184】
表9に見られるとおり、澱粉枝切り酵素を併用した場合、バチルス・マセランス由来のCGTaseの場合(反応液7)及び、パエニバチルス・イリノイセンシス由来のCGTaseの場合(反応液8)には、グルコアミラーゼ処理後のアスコルビン酸2−グルコシド生成率はそれぞれ21%又は25%であった。一方、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス由来のCGTase(反応液9)ではアスコルビン酸2−グルコシド生成率は37%、サーモアナエロバクター・サーモスルフリゲネス由来のCGTase(反応液10)では、アスコルビン酸2−グルコシド生成率は33%であった。さらに、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株由来CGTaseの変異体であるG176R/Y452H及びK228Iを用いた場合(反応液11及び12)では、それぞれ37%及び36%であった。
【0185】
CGTaseの由来によってばらつきはあるものの、CGTaseによる酵素反応に澱粉枝切り酵素(イソアミラーゼ)を併用することにより、酵素反応液7乃至12のいずれにおいても、グルコアミラーゼ処理後のアスコルビン酸2−グルコシド生成率は、CGTaseを単独で用いた場合(表7の反応液1乃至6を参照)よりもそれぞれ3乃至9%有意に増加した。しかしながら、バチルス・マセランス由来のCGTaseの場合(反応液7)及び、パエニバチルス・イリノイセンシス由来のCGTaseの場合(反応液8)には、澱粉枝切り酵素を併用した場合であっても、グルコアミラーゼ処理後のアスコルビン酸2−グルコシド生成率はそれぞれ21%又は25%に止まり、それ以外のCGTaseを単独で用いた場合(表7の反応液3乃至6を参照)よりも顕著に低い生成率であった。
【0186】
上記結果は、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株由来のCGTase、サーモアナエロバクター・サーモスルフリゲネス由来のCGTase、及び、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株由来CGTaseの変異体であるG176R/Y452H及びK228Iでは、澱粉枝切り酵素を併用することにより、澱粉枝切り酵素を使用せずCGTase単独で作用させた場合に比べ約3乃至9%程度高い生成率が得られることから、より効率よくアスコルビン酸2−グルコシドを製造できることを示している。
【0187】
また、上記結果から、バチルス・マゼランス由来及びパエニバチルス・イリノイセンシス由来のCGTaseの場合、澱粉枝切り酵素を併用したとしても、生成率よくアスコルビン酸2−グルコシドを製造することができず、これらのCGTaseはアスコルビン酸2−グルコシドの製造に適さないことがあらためて確認された。
【0188】
<実験10:CGTaseと澱粉枝切り酵素を併用して得た反応液からのアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造に及ぼす晶析方法の影響>
本実験では、CGTaseと澱粉枝切り酵素を併用して得た反応液からのアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造において、晶析方法が粉末のアスコルビン酸2−グルコシド純度及び諸物性に及ぼす影響を実験8と同様に検討した。なお、アスコルビン酸2−グルコシド生成率が低い酵素反応液7及び8については、実験8と同様の理由により粉末の調製は行わなかった。
【0189】
<実験10−1:被験試料の調製>
<被験試料27乃至30>
実験9で得た酵素反応液9乃至12をそれぞれ実験8と同様に精製し、アスコルビン酸2−グルコシド含量86%以上のアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液9乃至12とした後、実験8−1と同様の自然冷却法を適用してアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析し、それぞれ調製したアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を被験試料27乃至30とした。
【0190】
<被験試料27c乃至30c>
アスコルビン酸2−グルコシドの晶析工程において、実験8と同じ擬似制御冷却法を適用した以外は被験試料27乃至30の場合と同様にしてアスコルビン酸2−グルコシド含量86%以上のアスコルビン酸2−グルコシド含有溶液9乃至12からアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を調製し、それぞれ被験試料27c乃至30cとした。
【0191】
<実験10−2:被験試料27乃至30及び被験試料27c乃至30cのアスコルビン酸2−グルコシド純度及び諸物性>
被験試料27乃至30、及び、被験試料27c乃至30cのアスコルビン酸2−グルコシド純度、結晶化度、平均結晶子径、固結性及び親水性溶媒としての1,3−ブチレングリコールへの溶解性を実験8と同様にそれぞれ調べた。結果を表10に示した。また、比較のため、医薬部外品級の粉末である被験試料16の結果についても表6から転記し併せて表10に示した。
【0192】
【表10】

【0193】
表10から明らかなように、被験試料28の場合を除けば、被験試料27、29、30、及び、被験試料27c乃至30cのいずれもアスコルビン酸2−グルコシド純度は99.2%以上となり、また、結晶化度は92.6%以上、平均結晶子径は1,440Å以上となり、試験した条件下では固結性を示さない粉末であった。酵素反応の段階でのアスコルビン酸2−グルコシド生成率が33%に止まった酵素反応液から晶析工程において自然冷却法を適用して調製した被験試料28は、アスコルビン酸2−グルコシド純度は99.2%であったものの、結晶化度が88.0%、平均結晶子径が1,280Åとなり、また、固結性試験において「固結する」(+)と判定された。一方、被験試料28cの結果から明らかなように、酵素反応の段階でのアスコルビン酸2−グルコシド生成率が33%に止まった場合であっても、晶析工程において擬似制御冷却法を適用すれば、結晶化度は90%以上、平均結晶子径は1,400Å以上となり、固結性を示さない粉末を得ることができる。
【0194】
上記結果は、アスコルビン酸2−グルコシド生成反応において澱粉枝切り酵素を併用し、アスコルビン酸2−グルコシド生成率を35%以上にまで高めた酵素反応液からは、晶析工程における冷却方法にかかわらず結晶化度が90%以上の固結し難いアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を製造することができること、及び、アスコルビン酸2−グルコシド生成反応においてアスコルビン酸2−グルコシド生成率が33%程度と35%未満に止まった場合であっても、晶析工程において擬似制御冷却法又は制御冷却法を適用すれば、結晶化度が90%以上と高く、固結し難い優れた物性を有するアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末が製造できることを示している。
【0195】
<実験11:アスコルビン酸2−グルコシドの製造に好適なCGTaseに共通する部分アミノ酸配列>
アスコルビン酸2−グルコシドの製造に好適なCGTaseを特徴づける目的で、アスコルビン酸2−グルコシドの製造に好適な前記ジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株由来CGTaseとその変異体酵素のアミノ酸配列(配列表における配列番号1、4及び5)と、サーモアナエロバクター・サーモスルフリゲネス由来CGTaseのアミノ酸配列(配列表における配列番号3)、及び、アスコルビン酸2−グルコシドの製造に適さない前記バチルス・マゼランス由来CGTaseのアミノ酸配列(配列表における配列番号6)とパエニバチルス・イリノイセンシス由来CGTaseのアミノ酸配列(配列表における配列番号7)を比較した。なお、アミノ酸配列の比較においては、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株由来CGTaseとバチルス・マゼランス由来CGTaseのアミノ酸配列としては、出願人が独自に決定し、本願と同じ出願人による特開昭61−135581号公報にそれぞれ開示されたものを用いた。また、サーモアナエロバクター・サーモスルフリゲネス由来CGTaseのアミノ酸配列としては、遺伝子データベース『GenBank』にアクセッションNo.35484として登録されているものを用いた。さらに、パエニバチルス・イリノイセンシス由来CGTaseのアミノ酸配列としては、パエニバチルス・イリノイセンシス NBRC15379株のCGTase遺伝子を出願人が独自にクローニングし決定した塩基配列にコードされるアミノ酸配列を用いた。
【0196】
上記したアミノ酸配列の比較において、アスコルビン酸2−グルコシドの製造に好適なCGTase、すなわち、ジオバチルス・ステアロサーモフィラス Tc−91株由来CGTase及びその変異体酵素、及び、サーモアナエロバクター・サーモスルフリゲネス由来CGTaseに共通して存在し、且つ、アスコルビン酸2−グルコシドの製造に適さないCGTase、すなわち、バチルス・マゼランス由来CGTaseとパエニバチルス・イリノイセンシス由来CGTaseに存在しない部分アミノ酸配列として、下記(a)乃至(d)の部分アミノ酸配列が認められた。
(a)Asn−Glu−Val−Asp−X−Asn−Asn;
(b)Met−Ile−Gln−X−Thr−Ala;
(c)Pro−Gly−Lys−Tyr−Asn−Ile;及び
(d)Val−X−Ser−Asn−Gly−Ser−Val
(但し、XはPro又はAlaを、XはSer又はAspを、XはSer又はGlyをそれぞれ意味する。)
【0197】
以上の結果から、本発明の製造方法によるアスコルビン酸2−グルコシドの製造に好適なCGTase、すなわち、アスコルビン酸2−グルコシドの生成率が27%以上となるCGTaseは、上記(a)乃至(d)の部分アミノ酸配列を有すると特徴づけることができることが判明した。
【0198】
以下、実施例、比較例及び参考例に基づき本発明をさらに詳しく説明する。しかしながら、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
【実施例1】
【0199】
<アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造>
液化馬鈴薯澱粉4質量部を水20質量部に加えて加熱溶解し、L−アスコルビン酸3質量部を加え、pHを5.5に調整し基質溶液とした。これに、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス Tc−91株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−11273)由来のCGTaseの粗酵素液(株式会社林原生物化学研究所製造)を液化馬鈴薯澱粉の固形分1g当り100単位を加え、55℃で40時間反応させ、アスコルビン酸2−グルコシドとともに、2−O−α−マルトシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−マルトトリオシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−マルトテトラオシル−L−アスコルビン酸などのα−グリコシル−L−アスコルビン酸を生成させた。
【0200】
本反応液を加熱し酵素を失活させた後、pH4.5に調整し、これにグルコアミラーゼ剤(天野エンザイム株式会社販売、商品名『グルクザイムAF6』、6,000単位/g)を液化馬鈴薯澱粉の固形分1g当り50単位加え55℃で24時間処理し、α−グリコシル−L−アスコルビン酸をアスコルビン酸2−グルコシドにまで、また、混在する糖質をD−グルコースにまで分解した。本反応液中のL−アスコルビン酸2−グルコシドの生成率は約28%であった。
【0201】
本反応液を加熱し酵素を失活させ、活性炭で脱色濾過し、濾液をカチオン交換樹脂(H型)にて脱塩し、次いで、アニオン交換樹脂(OH型)にL−アスコルビン酸及びアスコルビン酸2−グルコシドを吸着させ、水洗してD−グルコースを除いた後、0.5N塩酸水溶液で溶出した。さらに、この溶出液を固形分約50%にまで濃縮し、強酸性カチオン交換樹脂(商品名『ダイヤイオン UBK 550』Na型、三菱化学株式会社製)を充填した10本のカラムを用いた擬似移動床式のカラムクロマトグラフィーに供した。カラムにその湿潤樹脂容積の約40分の1量チャージし、チャージ量の約5倍の溶離液を連続的にカラムに供給し、L−アスコルビン酸含量の少ない、アスコルビン酸2−グルコシド高含有画分を連続的に採取した。採取した画分におけるアスコルビン酸2−グルコシド含量は無水物換算で87.2%であった。
【0202】
この画分を減圧濃縮し、濃度を約76%とした。これを助晶缶にとり、分析用の標準試薬として販売されているL−アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末(株式会社林原生物化学研究所販売、商品名『アスコルビン酸2−グルコシド 999』(コード番号:AG124、アスコルビン酸2−グルコシド純度99.9%以上))を種晶として2%加えて40℃とし、穏やかに撹拌しつつ40℃から30℃へ1.5日間かけて冷却した後、30℃から15℃へ0.5日間かけて冷却する擬似制御冷却法により、アスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶を析出させた。
【0203】
析出した結晶をバスケット型遠心分離機で回収し、少量の冷精製水でスプレーし洗浄した後、38℃で3時間、熟成、乾燥した後、25℃の空気を45分間吹き付け冷却し、粉砕してアスコルビン酸2−グルコシド純度99.3%、L−アスコルビン酸とD−グルコースの合計含量0.1%、L−アスコルビン酸含量0.1%未満、粉末全体の還元力0.27%、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度90.3%、その平均結晶子径が1,460Åであるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得た。因みに、上記結晶化度の測定はハーマンス法にて行い、実験1−2で求めた解析値H100及びHを用いて行った。本粉末の粒度分布を測定したところ、粒径150μm未満の粒子が91.0%、粒径が53μm以上150μm未満の粒子が50.7%含まれていた。
【0204】
本粉末は、医薬部外品向け美白成分などとして市販されている従来の医薬部外品級の粉末と比べ、固結し難く、化粧品及び医薬部外品に汎用される親水性溶媒への溶解性に優れているので取扱い容易である。本粉末は、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である点では従来の医薬部外品級の粉末と何ら変わりがないので、従来の医薬部外品級の粉末と同様に、それ単独で、或いは他の成分と混合して、粉末状の食品素材、食品添加物素材、化粧品素材、医薬部外品素材、医薬品素材などとして好適に用いることができる。
【実施例2】
【0205】
<アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造>
液化澱粉とL−アスコルビン酸とを含む溶液にCGTaseを作用させる際に、液化澱粉の固形分当たり5単位のプルラナーゼ(株式会社林原生物化学研究所販売、商品コード(EN201)、クレブシエラ・ニューモニア(アエロバクター・アエロジェネス)由来を作用させたこと、及び、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析させる際、溶液の温度を40℃から35℃へ1.5日間かけて冷却した後、35℃から15℃へ0.5日間かけて冷却する擬似制御冷却法を適用した以外は、実施例1と同様にして、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を製造した。なお、グルコアミラーゼ処理後の反応液におけるアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は約29.5%であった。アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の晶析に供した溶液のアスコルビン酸2−グルコシド含量は無水物換算で91.8%であった。
【0206】
本品は、アスコルビン酸2−グルコシド純度99.5%、L−アスコルビン酸とD−グルコースの合計含量0.1%、L−アスコルビン酸含量0.1%未満、粉末全体の還元力0.21%、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度91.0%、その平均結晶子径が1,540Åであるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末であった。因みに、上記結晶化度の測定はハーマンス法にて行い、実験1−2で求めた解析値H100及びHを用いて行った。本粉末の粒度分布を測定したところ、粒径150μm未満の粒子が93.0%、粒径が53μm以上150μm未満の粒子が53.7%含まれていた。
【0207】
本粉末は、医薬部外品向け美白成分などとして市販されている従来の医薬部外品級の粉末と比べ、固結し難く、化粧品及び医薬部外品に汎用される親水性溶媒への溶解性に優れているので取扱い容易である。本粉末は、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である点では従来の医薬部外品級の粉末と何ら変わりがないので、従来の医薬部外品級の粉末と同様に、それ単独で、或いは他の成分と混合して、粉末状の食品素材、食品添加物素材、化粧品素材、医薬部外品素材、医薬品素材などとして好適に用いることができる。
【実施例3】
【0208】
<アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造>
コーンスターチ5質量部を水15質量部に加え、市販の液化酵素を加え加熱溶解し、L−アスコルビン酸3質量部を加え、pHを5.5に調整し基質溶液とした。これに、サーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)属由来のCGTase遺伝子を組み換えてバチラス属の菌株で発現させた市販のCGTase(ノボザイム(NOVOZYME)社販売、商品名『トルザイム(Toruzyme)3.0L』)(例えば、特許文献30及び31参照)を、コーンスターチの固形分1g当り100単位加えて55℃で50時間反応させアスコルビン酸2−グルコシド、及びその他のα−グリコシル−L−アスコルビン酸を生成させた。
【0209】
この反応液を加熱し酵素を失活させた後、pHを4.5に調整し、これにグルコアミラーゼ剤(ナガセケムテックス株式会社販売、商品名『グルコチーム#20000』、20,000単位/g)をコーンスターチの固形分1g当り50単位加え、55℃で24時間反応させ、2−O−α−マルトシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−マルトトリオシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−マルトテトラオシル−L−アスコルビン酸などのα−グリコシル−L−アスコルビン酸をアスコルビン酸2−グルコシドにまで、また、混在する糖質をD−グルコースにまで分解した。本反応液におけるアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は約31%であった。
【0210】
本反応液を加熱し酵素を失活させた後、活性炭で脱色濾過し、濾液をカチオン交換樹脂(H型)にて脱塩し、次いで、アニオン交換樹脂(OH型)にL−アスコルビン酸及びアスコルビン酸2−グルコシドを吸着させ、水洗してD−グルコースを除いた後、0.5N塩酸溶液で溶出し、さらに多孔性樹脂(商品名『トヨパールHW−40』、東ソー株式会社製)を用いたカラムクロマトグラフィーに供して、アスコルビン酸2−グルコシドを高含有し、L−アスコルビン酸量の少ない画分を採取した。採取した画分におけるアスコルビン酸2−グルコシド含量は無水物換算で88.6%であった。
【0211】
この画分を減圧濃縮し、濃度約76%とし、これを助晶缶にとり、実施例1で製造したアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を種晶として2%加えて40℃とし、穏やかに撹拌しつつ40℃から33℃へ1.5日間かけて冷却した後、33℃から15℃へ0.5日間かけて冷却する擬似制御冷却法により、アスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶を晶析させた。
【0212】
バスケット型遠心分離機で結晶を回収し、結晶を少量の蒸留水でスプレーし洗浄した後、35℃で8時間、熟成、乾燥した後、25℃の空気を15分間吹き付け冷却し、粉砕することによりアスコルビン酸2−グルコシド純度99.2%、L−アスコルビン酸とD−グルコースの合計含量0.1%、L−アスコルビン酸含量0.1%未満、粉末全体の還元力0.17%、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度91.5%、その平均結晶子径1,610Åであるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得た。因みに、上記結晶化度の測定はハーマンス法にて行い、実験1−2で求めた解析値H100及びHを用いて行った。本粉末の粒度分布を測定したところ、粒径が150μm未満の粒子が83.2%、粒径が53μm以上150μm未満の粒子が57.1%含まれていた。
【0213】
本粉末は、医薬部外品向け美白成分などとして市販されている従来の医薬部外品級の粉末と比べ、固結し難く、化粧品及び医薬部外品に汎用される親水性溶媒への溶解性に優れているので取扱い容易である。本粉末は、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である点では従来の医薬部外品級の粉末と何ら変わりがないので、従来の医薬部外品級の粉末と同様に、それ単独で、或いは他の成分と混合して、粉末状の食品素材、食品添加物素材、化粧品素材、医薬部外品素材、医薬品素材などとして好適に用いることができる。
【実施例4】
【0214】
<アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造>
コーンスターチ6質量部を水15質量部に加え、市販の液化酵素を加え加熱溶解し、L−アスコルビン酸3質量部を加えた溶液に市販のCGTase(ノボザイム(NOVOZYME)社販売、商品名『トルザイム(Toruzyme)3.0L』)を作用させたこと、その際に、コーンスターチの固形分当たり500単位のイソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造、シュードモナス・アミロデラモサ(ATCC 21262)由来を作用させたこと、及び、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析させる際、溶液の温度を40℃から35℃へ24時間かけて冷却した後、35℃から30℃へ12時間かけ、さらに、30℃から15℃へ12時間かけて冷却する擬似制御冷却法を適用した以外は、実施例1と同じ方法を用い、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を製造した。なお、グルコアミラーゼ処理後の反応液におけるアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は約32.5%であった。アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の晶析に供した溶液のアスコルビン酸2−グルコシド含量は無水物換算で89.6%であった。
【0215】
本品は、アスコルビン酸2−グルコシド純度99.7%、L−アスコルビン酸とD−グルコースの合計含量0.1%、L−アスコルビン酸含量0.1%未満、粉末全体の還元力0.10%、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度92.4%、その平均結晶子径1,670Åであるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得た。因みに、上記結晶化度の測定はハーマンス法にて行い、実験1−2で求めた解析値H100及びHを用いて行った。本粉末の粒度分布を測定したところ、粒径150μm未満の粒子が94.5%、粒径が53μm以上150μm未満の粒子が55.3%含まれていた。
【0216】
本粉末は、医薬部外品向け美白成分などとして市販されている従来の医薬部外品級の粉末と比べ、固結し難く、化粧品及び医薬部外品に汎用される親水性溶媒への溶解性に優れているので取扱い容易である。本粉末は、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末である点では従来の医薬部外品級の粉末と何ら変わりがないので、従来の医薬部外品級の粉末と同様に、それ単独で、或いは他の成分と混合して、粉末状の食品素材、食品添加物素材、化粧品素材、医薬部外品素材、医薬品素材などとして好適に用いることができる。
【実施例5】
【0217】
<アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造>
コーンスターチ5質量部を水15質量部に加え、市販の液化酵素を加え加熱溶解し、L−アスコルビン酸3質量部を加え、pHを5.5に調整し基質溶液とした。これに、実験7及び9で用いたジオバチルス・ステアロサーモフィルス Tc−91株由来CGTaseの変異体G176R/Y452Hをコーンスターチの固形分1g当り100単位加えて55℃で50時間反応させアスコルビン酸2−グルコシド及びその他のα−グリコシル−L−アスコルビン酸を生成させた。
【0218】
この反応液を加熱し酵素を失活させた後、pHを4.5に調整し、これにグルコアミラーゼ剤(ナガセケムテックス株式会社販売、商品名『グルコチーム#20000』、20,000単位/g)をコーンスターチの固形分1g当り50単位加え、55℃で24時間反応させ、2−O−α−マルトシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−マルトトリオシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−マルトテトラオシル−L−アスコルビン酸などのα−グリコシル−L−アスコルビン酸をアスコルビン酸2−グルコシドにまで、また、混在する糖質をD−グルコースにまで分解した。本反応液におけるアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は31.5%であった。
【0219】
本反応液を加熱し酵素を失活させた後、活性炭で脱色濾過し、濾液をカチオン交換樹脂(H型)にて脱塩し、次いで、アニオン交換樹脂(OH型)にL−アスコルビン酸及びアスコルビン酸2−グルコシドを吸着させ、水洗してD−グルコースを除いた後、0.5N塩酸溶液で溶出し、さらに多孔性樹脂(商品名『トヨパールHW−40』、東ソー株式会社製)を用いたカラムクロマトグラフィーに供して、アスコルビン酸2−グルコシドを高含有し、L−アスコルビン酸量の少ない画分を採取した。採取した画分におけるアスコルビン酸2−グルコシド含量は無水物換算で87.6%であった。
【0220】
これを助晶缶にとり、標準試薬級のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末(商品名『アスコルビン酸2−グルコシド 999』、コード番号:AG124、アスコルビン酸2−グルコシド純度99.9%以上、株式会社林原生物化学研究所販売)を種晶として2%加えて40℃とした後、穏やかに撹拌しつつ、溶液の温度を40℃から35℃へ24時間かけて冷却した後、35℃から30℃へ12時間かけ、さらに、30℃から15℃へ12時間かけて冷却する擬似制御冷却法を適用し、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析させた。バスケット型遠心分離機で結晶を回収し、結晶をマスキット重量に対し約5%の精製水でスプレーし洗浄した後、35℃で8時間、熟成、乾燥し、20℃の空気を10分間吹き付けて冷却し、粉砕して、無水物換算でアスコルビン酸2−グルコシドを99.2%、L−アスコルビン酸とD−グルコースを合計0.4%、L−アスコルビン酸を0.1%未満含有し、粉末全体の還元力0.50%のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得た。
【0221】
本アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度は90.4%、平均結晶子径は1,480Åであった。因みに、上記結晶化度の測定はハーマンス法にて行い、実験1−2で求めた解析値H100及びHを用いて行った。本品の粒度分布を測定したところ、粒径150μm未満の粒子が85.2%、粒径53μm以上150μm未満の粒子が69.3%含まれていた。本品を用い、実験1−4と同じ方法により固結性試験を行ったところ、「固結なし」(−)と判定された。また、実験6と同じ方法により1,3−ブチレングリコールへの溶解性を試験したところ、溶解性「良」と判定された。
【0222】
本製造方法によって製造されたアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、市販されている従来の医薬部外品級のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末(商品名『AA2G』、株式会社林原商事販売)と比べて、アスコルビン酸2−グルコシド純度においてそれほどの違いがないにもかかわらず、有意に固結し難い粉末であり、保存や取扱いが容易である。本品は、アスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶含有粉末である点では従来の医薬部外品級のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末と同様であり、保存や取り扱いが容易である分、食品素材、食品添加物素材、化粧品素材、医薬部外品素材、及び医薬品素材などとしてより好適に用いることができる。
【実施例6】
【0223】
<アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造>
液化馬鈴薯澱粉4質量部を水20質量部に加えて加熱溶解し、L−アスコルビン酸3質量部を加え、pHを5.5に調整し基質溶液とした。これに、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス Tc−91株由来のCGTを澱粉の固形分1g当り100単位、フラボバクテリウム・オドラタス由来イソアミラーゼ(製品名『GODO−FIA』、合同酒精株式会社製)を澱粉の固形分1g当たり500単位加え、55℃で40時間反応させ、アスコルビン酸2−グルコシドとともに、2−O−α−マルトシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−マルトトリオシル−L−アスコルビン酸、2−O−α−マルトテトラオシル−L−アスコルビン酸などのα−グリコシル−L−アスコルビン酸を生成させた。
【0224】
本反応液を加熱し酵素を失活させた後、pH4.5に調整し、これにグルコアミラーゼ剤(天野エンザイム株式会社販売、商品名『グルクザイムAF6』、6,000単位/g)を澱粉の固形分1g当り50単位加え55℃で24時間処理し、α−グリコシル−L−アスコルビン酸をアスコルビン酸2−グルコシドにまで、また、混在する糖質をD−グルコースにまで分解した。本反応液中のL−アスコルビン酸2−グルコシドの生成率は約36%であった。
【0225】
本反応液を加熱し酵素を失活させ、活性炭で脱色濾過し、濾液をカチオン交換樹脂(H型)にて脱塩し、次いで、アニオン交換樹脂(OH型)にL−アスコルビン酸及びアスコルビン酸2−グルコシドを吸着させ、水洗してD−グルコースを除いた後、0.5N塩酸水溶液で溶出した。さらに、この溶出液を固形分約50%にまで濃縮し、強酸性カチオン交換樹脂(商品名『ダイヤイオン UBK 550』Na型、三菱化学株式会社製)を充填した10本のカラムを用いた擬似移動床式のカラムクロマトグラフィーに供した。溶出液を固形分濃度約50%にまで濃縮し、カラムにその樹脂容積の約1/40量チャージし、チャージ量の約15倍の溶離液をカラムに供給することによりアスコルビン酸2−グルコシドを溶出し、L−アスコルビン酸含量の少ない、アスコルビン酸2−グルコシド高含有画分を採取した。採取した画分におけるアスコルビン酸2−グルコシド含量は無水物換算で約86.6%であった。
【0226】
この画分を減圧濃縮し、濃度を約76%とした。これを助晶缶にとり、試薬級のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末(商品名『アスコルビン酸2−グルコシド 999』、コード番号:AG124、アスコルビン酸2−グルコシド純度99.9%以上、株式会社林原生物化学研究所販売)を種晶として2%加えて40℃とし、穏やかに撹拌しつつ溶液の温度を40℃から35℃へ20時間かけて冷却した後、35℃から30℃へ16時間かけて冷却し、さらに、30℃から15℃へ12時間かけて冷却する擬似制御冷却法を適用することにより48時間かけて冷却し、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析させた。バスケット型遠心分離機で結晶を回収し、結晶をマスキット重量に対し約5%の精製水でスプレーし洗浄した後、38℃で3時間、熟成、乾燥し、20℃の空気を45分間吹き付けて冷却し、粉砕して、無水物換算でアスコルビン酸2−グルコシドを99.5%、L−アスコルビン酸とD−グルコースを合計で0.1%、L−アスコルビン酸を0.1%未満含有し、粉末全体の還元力0.21%のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得た。
【0227】
本製造方法によって製造されたアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度は93.9%、平均結晶子径は1,630Åであった。因みに、上記結晶化度の測定はハーマンス法にて行い、実験1−2で求めた解析値H100及びHを用いて行った。本品の粒度分布を測定したところ、粒径150μm未満の粒子が91.2%、粒径53μm以上150m未満の粒子が57.3%含まれていた。本品を用い、実験1−4と同じ方法により固結性試験を行ったところ、「固結なし」(−)と判定された。また、実験6と同じ方法により1,3−ブチレングリコールへの溶解性を試験したところ、溶解性「良」と判定された。
【0228】
本品は、従来の医薬部外品級のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末に比べ有意に固結し難い粉末であり、食品素材、食品添加物素材、化粧品素材、医薬部外品素材、及び医薬品素材などとして有利に利用することができる。
【実施例7】
【0229】
<アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造>
アスコルビン酸2−グルコシド生成反応において、CGTaseとしてサーモアナエロバクター由来の組換え型CGTase(商品名『トルザイム(Toruzyme)3.0L』、ノボザイム(NOVOZYME)社販売)を、また、CGTaseと併用する澱粉枝切り酵素として、バチルス・アシドプルリティカス由来のプルラナーゼ(商品名『プロモザイム』、ノボザイム・ジャパン社販売)を澱粉の固形分1g当り50単位使用し、また、晶析工程において、5段階で40℃から15℃まで計48時間かけて冷却する擬似制御冷却法、すなわち、40℃から38℃へ12時間、38℃から35℃へ12時間、35℃から30℃へ8時間、30℃から23℃へ8時間、さらに、23℃から15℃へ8時間かけて冷却する擬似制御冷却法を適用した以外は実施例6と同様にして、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を製造し、無水物換算でアスコルビン酸2−グルコシドを99.3%、L−アスコルビン酸とD−グルコースを合計で0.1%、L−アスコルビン酸を0.1%未満含有し、粉末全体の還元力が0.28%のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得た。なお、本製造において、グルコアミラーゼ処理後の反応液におけるアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は32.9%であった。アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の晶析に供した溶液のアスコルビン酸2−グルコシド含量は無水物換算で86.4%であった。
【0230】
本アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度は96.4%、平均結晶子径は1,570Åであった。因みに、上記結晶化度の測定はハーマンス法にて行い、実験1−2で求めた解析値H100及びHを用いて行った。本品の粒度分布を測定したところ、粒径150μm未満の粒子が92.2%、粒径53μm以上150m未満の粒子が54.8%含まれていた。本品を用い、実験1−4と同じ方法により固結性試験を行ったところ、「固結なし」(−)と判定された。また、実験6と同じ方法により1,3−ブチレングリコールへの溶解性を試験したところ、溶解性「良」と判定された。
【0231】
本製造方法によって製造されたアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、市販されている従来の医薬部外品級のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末(商品名『AA2G』、株式会社林原商事販売)と比べて、アスコルビン酸2−グルコシド純度においてそれほどの違いがないにもかかわらず、有意に固結し難い粉末であり、保存や取扱いが容易である。
【0232】
本品は、アスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶含有粉末である点では従来の医薬部外品級のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末と同様であり、保存や取り扱いが容易である分、食品素材、食品添加物素材、化粧品素材、医薬部外品素材、及び医薬品素材などとしてより好適に用いることができる。
【実施例8】
【0233】
<アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造>
アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の晶析工程において、汎用の晶析システム用プログラム恒温循環装置を用い、温度制御した熱媒体を助晶缶のジャッケットに流して、温度を40℃から15℃へ、前記式[7]に近似させた20段階の冷却プロファイルにて48時間かけて冷却する制御冷却法を適用することにより、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶を晶析させた以外は、実施例3と同様の方法によりアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を製造した。得られた粉末は、無水物換算でアスコルビン酸2−グルコシドを99.6%、L−アスコルビン酸とD−グルコースを合計で0.1%、L−アスコルビン酸を0.1%未満含有し、粉末全体の還元力が0.17%のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末であった。なお、本製造において、グルコアミラーゼ処理後の反応液におけるアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は約31%であった。アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の晶析に供した溶液のアスコルビン酸2−グルコシド含量は無水物換算で88.7%であった。
【0234】
本アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度は93.0%、平均結晶子径は1,650Åであった。因みに、上記結晶化度の測定はハーマンス法にて行い、実験1−2で求めた解析値H100及びHを用いて行った。本品の粒度分布を測定したところ、粒径150μm未満の粒子が90.4%、粒径53μm以上150m未満の粒子が65.3%含まれていた。本品を用い、実験1−4と同じ方法により固結性試験を行ったところ、「固結なし」(−)と判定された。また、実験6と同じ方法により1,3−ブチレングリコールへの溶解性を試験したところ、溶解性「良」と判定された。
【0235】
本製造方法によって製造されたアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末は、市販されている従来の医薬部外品級のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末(商品名『AA2G』、株式会社林原商事販売)と比べて、アスコルビン酸2−グルコシド純度においてそれほどの違いがないにもかかわらず、有意に固結し難い粉末であり、保存や取扱いが容易である。
【0236】
本品は、アスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶含有粉末である点では従来の医薬部外品級のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末と同様であり、保存や取り扱いが容易である分、食品素材、食品添加物素材、化粧品素材、医薬部外品素材、及び医薬品素材などとしてより好適に用いることができる。
【0237】
<比較例1:アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造>
アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の晶析工程において擬似制御冷却法を適用せず、従来の自然冷却法を用いた以外は実施例1におけると同様にしてアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を製造し、無水物換算でアスコルビン酸2−グルコシドを98.6%、L−アスコルビン酸とD−グルコースを合計で0.5%、L−アスコルビン酸を0.3%含有し、粉末全体の還元力0.72%のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得た。なお、本製造において、グルコアミラーゼ処理後の反応液におけるアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は28.4%、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の晶析に供した溶液のアスコルビン酸2−グルコシド含量は無水物換算で86.5%であった。
【0238】
本アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度は87.5%、平均結晶子径は1,290Åであった。因みに、上記結晶化度の測定はハーマンス法にて行い、実験1−2で求めた解析値H100及びHを用いて行った。本品の粒度分布を測定したところ、粒径150μm未満の粒子が74.8%、粒径53μm以上150μm未満の粒子が68.6%含まれていた。本品を用い、実験1−4と同じ方法で固結性試験を行ったところ、「固結あり」(+)と判定された。また、実験6と同じ方法により1,3−ブチレングリコールへの溶解性を試験したところ、溶解性「良」と判断された。
【0239】
<比較例2:アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造>
アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の晶析工程において擬似制御冷却法を適用せず従来の自然冷却法を用いた以外は実施例3におけると同様にしてアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を製造し、無水物換算でアスコルビン酸2−グルコシドを98.3%、L−アスコルビン酸とD−グルコースを合計で0.6%、L−アスコルビン酸を0.4%含有し、粉末全体の還元力0.85%のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得た。なお、本製造において、グルコアミラーゼ処理後の反応液におけるアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は30.5%、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶の晶析に供した溶液のアスコルビン酸2−グルコシド含量は無水物換算で87.8%であった。
【0240】
本アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度は86.6%、平均結晶子径は1,310Åであった。因みに、上記結晶化度の測定はハーマンス法にて行い、実験1−2で求めた解析値H100及びHを用いて行った。本品の粒度分布を測定したところ、粒径150μm未満の粒子が76.5%、粒径53μm以上150μm未満の粒子が68.4%含まれていた。本品を用い、実験1−4と同じ方法で固結性試験を行ったところ、「固結あり」(+)と判定された。また、実験6と同じ方法により1,3−ブチレングリコールへの溶解性を試験したところ、溶解性「良」と判断された。
【0241】
<参考例1:アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造>
馬鈴薯澱粉5質量部を水15質量部に加え、市販の液化酵素を加え加熱溶解し、L−アスコルビン酸3質量部を加え、pHを5.5に調整し基質溶液とした。これに、CGTase(株式会社林原生物化学研究所製造、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス Tc−91株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター 受託番号FERM BP−11273)由来)とイソアミラーゼ(株式会社林原生物化学研究所製造)を、それぞれ馬鈴薯澱粉1g当り100単位及び1,000単位加えて55℃で50時間反応させアスコルビン酸2−グルコシド及びその他のα−グリコシル−L−アスコルビン酸を生成させた。この反応液を加熱し酵素を失活させた後、pHを4.5に調整し、これにグルコアミラーゼ剤(ナガセケムテックス株式会社販売、商品名『グルコチーム#20000』、20,000単位/g)を馬鈴薯澱粉1g当り50単位加え、55℃で24時間反応させ、α−グリコシル−L−アスコルビン酸をアスコルビン酸2−グルコシドにまで、また、混在する糖質をD−グルコースにまで分解した。本反応液におけるアスコルビン酸2−グルコシドの生成率は約38%であった。
【0242】
本反応液を加熱し酵素を失活させた後、活性炭で脱色濾過し、濾液をカチオン交換樹脂(H型)にて脱塩し、次いで、アニオン交換樹脂(OH型)にL−アスコルビン酸及びアスコルビン酸2−グルコシドを吸着させ、水洗してD−グルコースを除いた後、0.5N塩酸溶液で溶出し、さらに、多孔性樹脂(商品名『トヨパールHW−40』、東ソー株式会社製)を用いたカラムクロマトグラフィーに供して、アスコルビン酸2−グルコシドを高含有し、L−アスコルビン酸量の少ない画分を採取した。採取した画分におけるアスコルビン酸2−グルコシド含量は無水物換算で87.6%であった。
【0243】
この画分を減圧濃縮し、濃度約76%とし、これを助晶缶にとり、実施例1で製造したアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を種晶として2%加えて40℃とし、穏やかに撹拌しつつ自然冷却法にて2日間で15℃まで冷却し、アスコルビン酸2−グルコシドの無水結晶を晶析させた。バスケット型遠心分離機で結晶を回収し、結晶を少量の蒸留水でスプレーし洗浄した後、35℃で8時間、熟成、乾燥し、20℃の空気を10分間吹き付け冷却し、粉砕することによりアスコルビン酸2−グルコシド純度98.5%、L−アスコルビン酸とD−グルコースの合計の含量0.1%未満、L−アスコルビン酸含量0.1%未満、粉末全体の還元力0.15%、アスコルビン酸2−グルコシド無水結晶についての結晶化度91.8%、その平均結晶子径が1,320Åであるアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を得た。因みに、上記結晶化度の測定はハーマンス法にて行い、実験1−2で求めた解析値H100及びHを用いて行った。本粉末の粒度分布を測定したところ、粒径150μm未満の粒子が83.0%、粒径53μm以上150μm未満の粒子が57.7%含まれていた。本粉末を用い、実験1−4、実験3−2及び実験6と、それぞれ同じ方法により固結性試験、保存性試験及び溶解性試験を行ったところ、本粉末は固結性試験及び保存性試験において「固結なし」(−)と判定されたものの、溶解性試験において、「溶解性不良」(−)と判定された。
【産業上の利用可能性】
【0244】
以上のとおり、本発明のアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末の製造方法によれば、澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを原料として、酵素反応液中のアスコルビン酸2−グルコシドの生成率が35%に満たない場合であっても、晶析工程において制御冷却法又は擬似制御冷却法を適用することによって、従来の医薬部外品級の粉末よりも有意に固結し難いアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を製造することができる。このように本発明の製造方法は、使用する酵素についてその選択の幅を広げるとともに、限られた資源である澱粉若しくはデキストリンとL−アスコルビン酸とを原料として、より効率的にアスコルビン酸2−グルコシド無水結晶含有粉末を工業的規模で製造することを可能にするものであり、その産業上の有用性には格別のものがある。
【符号の説明】
【0245】
図1において、
a:結晶子径の算出に用いる回折角(2θ)10.4°(ミラー指数(hkl):120)の回折ピーク
b:結晶子径の算出に用いる回折角(2θ)13.2°(ミラー指数:130)の回折ピーク
c:結晶子径の算出に用いる回折角(2θ)18.3°(ミラー指数:230)の回折ピーク
d:結晶子径の算出に用いる回折角(2θ)21.9°(ミラー指数:060)の回折ピーク
e:結晶子径の算出に用いる回折角(2θ)22.6°(ミラー指数:131)の回折ピーク
図5において、
pUC ori:プラスミドpUCの複製開始点
T7:T7プロモーター
白矢印(Amp):アンピシリン耐性遺伝子
黒矢印:CGTase遺伝子
図6において、
a:制御冷却曲線
b:直線冷却
c:自然冷却曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(ア)乃至(オ)の工程を含む、2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸無水結晶含有粉末の製造方法:
(ア)原料として液化澱粉若しくはデキストリンのいずれかとL−アスコルビン酸とを含む溶液に、ジオバチルス・ステアロサーモフィルス又はサーモアナエロバクター・サーモスルフリゲネス由来の天然型若しくは組換え型シクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼ又はそれらの変異体酵素を作用させ、次いでグルコアミラーゼを作用させて2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸の生成率が27質量%以上である2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸含有溶液を得る工程;
(イ)得られた2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸含有溶液を精製して、2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸含量を無水物換算で86質量%超とする工程;
(ウ)2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸を無水物換算で86質量%超含有する溶液から制御冷却法又は擬似制御冷却法によって2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸の無水結晶を析出させる工程;
(エ)析出した2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸の無水結晶を採取する工程;
(オ)採取された2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸の無水結晶を、溶解、再結晶化することなく、熟成、乾燥し、必要に応じて粉砕することにより、無水物換算で2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸を98.0質量%を超え99.9質量%未満含有し、粉末X線回折プロフィルに基づき算出される2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸無水結晶についての結晶化度が90%以上であり、且つ、粒径が150μm未満の粒子を粉末全体の70質量%以上、及び53μm以上150μmの粒子を40乃至60質量%含有する2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸無水結晶含有粉末を得る工程。
【請求項2】
前記シクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼが、下記(a)乃至(d)に示す部分アミノ酸配列を有するシクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼである請求項1記載の2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸無水結晶含有粉末の製造方法;
(a)Asn−Glu−Val−Asp−X−Asn−Asn;
(b)Met−Ile−Gln−X−Thr−Ala;
(c)Pro−Gly−Lys−Tyr−Asn−Ile;
(d)Val−X−Ser−Asn−Gly−Ser−Val。
(但し、XはPro又はAlaを、XはSer又はAspを、XはSer又はGlyをそれぞれ意味する。)
【請求項3】
前記シクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼが、配列表における配列番号1、3、4又は5のいずれかで示されるアミノ酸配列を有するシクロマルトデキストリン・グルカノトランスフェラーゼである請求項1又は2記載の2−O−α−D−グルコシル−L−アスコルビン酸無水結晶含有粉末の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−55933(P2013−55933A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153261(P2012−153261)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2012−529462(P2012−529462)の分割
【原出願日】平成24年3月7日(2012.3.7)
【出願人】(397077760)株式会社林原 (10)
【Fターム(参考)】