説明

2−{3−[(E)−2−(4,6−ジメチル−ピリジン−2−イル)−ビニル]−1H−インダゾール−6−イルアミノ}−N−{4−ヒドロキシ−ブチ−2−ニル)ベンズアミドの多形型又は非晶質型

【課題】下記式I:


で表される化合物の結晶多形型、非晶質型及び混合物の提供。
【解決手段】本発明により、当該化合物等は、医薬組成物の治療と予防の用途に提供され、望ましくない眼の新血管形成に関連する加齢性黄斑変性などの疾患などの眼科疾患が治療される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の背景
米国特許願第10/737,655号は、特定のタンパク質キナーゼ類の活性を調節及び/又は阻害するインダゾール化合物に関する。なおこの特許願は本願に援用するものである。これらの化合物は、タンパク質キナーゼ類によって仲介される新血管形成及び/又は細胞増殖に関連する加齢性黄斑変性(AMD)及び糖尿病性網膜症(DR)などの疾患等の眼科疾患を治療するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
米国特許願第10/737,655号に開示されている一化合物は、2-{3-[(E)-2-(4,6-ジメチル-ピリジン-2-イル)-ビニル]-1H-インダゾール-6-イルアミノ}-N-{4-ヒドロキシ-ブチ-2-イニル)ベンズアミドであり、その構造は下記式Iで表される。
【化1】

【0003】
脈絡膜新生血管形成(CNV)については、式Iで表される化合物が、血管内皮増殖因子(VEGF)のシグナリング(脈絡膜に新生血管が生成するのに必要な機序として知られている)の強力な阻害剤であることは知られている。
【0004】
米国の及び国際的なヘルスレジストレーション当局(health registration authority)の規定[例えば、FDAの医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準(Good Manufacturing Practices)(「GMP」)]に従って哺乳類に投与するのに使う式Iで表される化合物を含有する医薬組成物を製造するには、式Iで表される化合物を、安定な形態で、例えば一定の物理特性を有する安定な結晶型で製造する必要がある。さらに、当該技術分野では、可溶性又は経口の生物学的利用率能などが改良されて特性を高められた、改良型の式Iで表される化合物を提供する必要がある。
【発明の開示】
【0005】
本発明の要約
本発明は、下記式I:
【化2】

で表される化合物又はその医薬として許容できる塩もしくは溶媒和物の多形型を含む結晶型、非晶質型及び固体型並びにそれらの混合物;医薬組成物;加齢性黄斑変性、糖尿病性網膜症、細胞増殖及び新血管形成などの眼の疾患を含むタンパク質キナーゼの活性で仲介される疾患症状を治療する方法;並びにVEGF受容体を含むタンパク質キナーゼ受容体の活性を調節する方法を提供するものである。
【0006】
一側面で、本発明は、結晶型の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0007】
別の側面で、本発明は、結晶型が実質的に純粋のIa型多形である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0008】
別の側面で、本発明は、約24.4、11.9及び6.6の回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0009】
別の側面で、本発明は、図1に示したのとほぼ同じ回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0010】
別の側面で、本発明は、10℃/分の走査速度で走査してDSCで測定すると約122℃で溶融吸熱を示す結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0011】
別の側面で、本発明は、実質的に純粋のII型多形である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0012】
別の側面で、本発明は、約27.3、22.5及び20.1の回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0013】
別の側面で、本発明は、図2に示したのとほぼ同じ回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0014】
別の側面で、本発明は、10℃/分の走査速度で走査してDSCで測定すると約208℃で溶融吸熱を示す結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0015】
別の側面で、本発明は、実質的に純粋のIII 型多形である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0016】
別の側面で、本発明は、約32.1、24.2及び25.2の回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0017】
別の側面で、本発明は、図3に示したのとほぼ同じ回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0018】
別の側面で、本発明は、10℃/分の走査速度で走査してDSCで測定すると約179℃で溶融吸熱を示す結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0019】
別の側面で、本発明は、実質的に純粋のIV型多形である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0020】
別の側面で、本発明は、約24.7、17.9及び23.6の回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する多形である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0021】
別の側面で、本発明は、図4に示したのとほぼ同じ回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0022】
別の側面で、本発明は、10℃/分の走査速度で走査すると約205℃で結晶の溶融吸熱が始まることを特徴とする結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0023】
別の側面で、本発明は、実質的に純粋のV型多形である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0024】
別の側面で、本発明は、約24.5、23.4及び25.4の回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する多形である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0025】
別の側面で、本発明は、図5に示したのとほぼ同じ回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0026】
別の側面で、本発明は、10℃/分の走査速度で走査すると約133℃、160℃及び206℃で結晶の溶融吸熱が始まることを特徴とする結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0027】
別の側面で、本発明は、実質的に純粋のVI型多形である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0028】
別の側面で、本発明は、約24.8、16.9及び26,3の回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する多形である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0029】
別の側面で、本発明は、図6に示したのとほぼ同じ回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0030】
別の側面で、本発明は、10℃/分の走査速度で走査すると約133℃、146℃及び203℃で結晶の溶融吸熱が始まることを特徴とする結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0031】
別の側面で、本発明は、非晶質型の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0032】
別の側面で、本発明は、結晶型のシャープなピークの特徴が全く無く約4°〜約40°の範囲内の回折角(2θ)にブロードなピークを示す粉末X線回折パターンを有する非晶質型の式Iで表される化合物を提供する。
【0033】
別の側面で、本発明は、図7に示したのとほぼ同じ粉末X線回折パターンを有する非晶質型の式Iで表される化合物を提供する。
【0034】
別の側面で、本発明は、以下の固体型すなわちIa、II、III 、IV型の多形及び非晶質型のうち少なくとも2種を含有する混合物である固体型の式Iで表される化合物又はその医薬として許容できる塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0035】
別の側面で、本発明は、多形型Iaと多形型IIの混合物である固体型の式Iで表される化合物を提供する。
【0036】
別の側面で、本発明は、実質的に純粋のIa型とII型の多形である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0037】
別の側面で、本発明は、約11.8、24.4及び6.5の回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する多形である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0038】
別の側面で、本発明は、図7に示したのとほぼ同じ回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0039】
別の側面で、本発明は、10℃/分の走査速度で走査すると約122℃及び約206℃で結晶の溶融吸熱が始まることを特徴とする結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0040】
別の側面で、本発明は、実質的に純粋のIa型多形である結晶型の式Iで表される化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0041】
別の側面で、本発明は、実質的に純粋のII型多形である結晶型の式Iで表される化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0042】
別の側面で、本発明は、実質的に純粋のIII 型多形である結晶型の式Iで表される化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0043】
別の側面で、本発明は、実質的に純粋のIV型多形である結晶型の式Iで表される化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0044】
別の側面で、本発明は、実質的に純粋のV型多形である結晶型の式Iで表される化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0045】
別の側面で、本発明は、実質的に純粋のVI型多形である結晶型の式Iで表される化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0046】
別の側面で、本発明は、無定形型の式Iで表される化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0047】
別の側面で、本発明は、以下の固体型すなわちIa、II、III 、IV、V型の多形及び非晶質型のうち少なくとも2種を含有する混合物である固体型の式Iで表される化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0048】
別の側面で、本発明は、Ia型多形とII型多形の混合物である固体型の式Iで表される化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0049】
別の側面で、本発明は、Ia型多形とII型多形の混合物である結晶型の式Iで表される化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【0050】
別の側面で、本発明は、結晶型の式Iで表される化合物(Ia、II、III 、IV、VもしくはVI型の多形);非晶質型の式Iで表される化合物;又は固体型の式Iで表される化合物(Ia、II、III 、IV、VもしくはVI型の多形);又はそれらの混合物を含有する医薬組成物の治療のために有効な量を、必要とする哺乳類に投与することを含む、タンパク質キナーゼの活性で仲介される哺乳類の疾患症状を治療する方法を提供する。
【0051】
別の側面で、本発明は、タンパク質キナーゼの活性によって仲介される、眼の疾患に関連する哺乳類の疾患症状を治療する方法を提供する。
【0052】
別の側面で、本発明は、タンパク質キナーゼの活性で仲介される、加齢性黄斑変性、糖尿病性網膜症、細胞増殖又は新血管形成に関連する哺乳類の疾患症状を治療する方法を提供する。
【0053】
別の側面で、本発明は、結晶型の式Iで表される化合物(Ia、II、III 、IV、VもしくはVI型の多形);非晶質型の式Iで表される化合物;又は固体型の式Iで表される化合物(Ia、II、III 、IV、VもしくはVI型の多形);又はそれらの混合物の有効量を、キナーゼ受容体に接触させることを含んでなるタンパク質キナーゼ受容体の活性を調節する方法を提供する。
【0054】
別の側面で、本発明は、VEGF受容体であるタンパク質キナーゼ受容体の活性を調節する方法を提供する。
【0055】
別の側面で、本発明は、実質的に純粋のIV型多形を約120℃に加熱することを含む、実質的に純粋のIV型多形を実質的に純粋のII型多形に変換する方法を提供する。
【0056】
別の側面で、本発明は、II型とIV型の多形の混合物である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0057】
別の側面で、本発明は、約90%のII型及び約10%のIV型の多形の混合物である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0058】
別の側面で、本発明は、約80%のII型及び約20%のIV型の多形の混合物である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0059】
別の側面で、本発明は、約70%のII型及び約30%のIV型の多形の混合物である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【0060】
別の側面で、本発明は、約60%のII型及び約40%のIV型の多形の混合物である結晶型の式Iで表される化合物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
本発明の詳細な説明
定義
下記の用語は、本願で使用する場合、下記意味を有する。
本明細書及びその特許請求の範囲で使用する場合、単数形の「a」、「an」、「the」は、明らかに断らない限り複数の指示対象を含む。
【0062】
用語「含む(comprising)」と「含む(including)」は、オープンで限定しない意味で使用される。
【0063】
用語「多形(polymorph)」は、同じ化合物の他の結晶型と比べて異なる空間格子配列を有する、化合物の結晶型を意味する。
【0064】
用語「非晶質」は化合物の非結晶型を意味する。
【0065】
用語「医薬として許容できる塩」は、特定の化合物の遊離酸と遊離塩基の生物学的有効性を保持しかつ生物学的などに有害でない塩を意味するものとする。本発明の化合物は、充分に酸性の、充分に塩基性の又はこれら両方の性質の官能基を有し、したがって多種類の無機もしくは有機の塩基及び無機及び有機の酸と反応して医薬として許容できる塩を形成できる。代表的な医薬として許容できる塩としては、本発明の化合物と、無機もしくは有機の酸又は無機塩基との反応で製造される塩があり、それらの塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、リン酸塩、一水素リン酸塩、二水素リン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプロン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオル酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン-1,4二酸塩、ヘキシン-1,6-二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、y-ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン-1-スルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩及びマンデル酸塩がある。
【0066】
多形型及び非晶質型の式Iで表される化合物
本発明は、幾種類かの多形結晶型と非晶質型の式Iで表される化合物を提供する。結晶型又は非晶質型の化合物は各々、粉末X線回折のパターン(すなわち、各種回折角(2θ)におけるX線回折ピーク)、示差走査熱量測定法(DSC)のサーモグラムの吸熱点で示されるような溶融開始点(及び水和型の場合は脱水開始点)、水溶性、International Conference on Harmonization(ICH)の高強度光の条件下での光安定性、並びに物理的及び化学的貯蔵安定性のうちの一つ以上によって特徴付けることができる。
【0067】
本発明の多形型又は非晶質型各々の粉末X線回折パターンは、40 kVと50 mAで作動するCuX線源を備えたShimadzu XRD-6000 X線回折計で測定した。試料を試料ホルダーに入れ、パックしてスライドガラスで平坦にした。分析中、試料は、60 rpmで回転させ、4°から40°までの角度(θ-2θ)で、0.04°のステップにて5°/分の速度又は0.02°のステップにて2°/分の速度で分析した。限られた量の物質しか入手できない場合、試料は、シリコンプレート上において(ゼロのバックグランド)、回転せずに分析した。ピークの位置(2θ)が、一般に+0.1°又は‐0.1°程度のいくらかの装置間ばらつきを示すことは、当業者は分かっているであろう。したがって、本発明の固体型が所定の図に示してあるのとほぼ同じ粉末X線パターンを有していると記載されている場合の用語「ほぼ同じ」は、前記回折ピーク位置の装置間ばらつきを含むものとする。
【0068】
DSCサーモグラムは、Mettler Toledo DSC821e装置を、10℃/分の走査速度にて30-250℃の温度範囲で使って得た。試料を、密閉されて単一通孔を有する40μlのアルミニウム製坩堝に入れて秤量した。外挿溶融開始温度及び該当する場合は脱水開始温度を計算した。
【0069】
本発明の化合物の示す吸熱点は、いくつかの要因によって、添付図面に示した吸熱点の上下に変動することがある(結晶多形が溶融する場合は約0.01〜5℃及び多形が脱水する場合は約0.01〜20℃)。このような偏差に関与する要因としては、DSC分析を実施する際の加熱速度(すなわち走査速度)、DSCの開始温度を定義して決定する方法、使用される校正法の標準、装置の校正、相対湿度及び試料の化学的純度がある。与えられた試料について観察される吸熱点は、装置毎に異なることもあるが、一般に、装置が同様に校正されているならば、本願に定義されている範囲内にあるだろう。
【0070】
本発明の多形型又は非晶質型は、好ましくは実質的に純粋であり、このことは、多形型又は非晶質型の式Iで表される化合物が各々、他の多形型又は非晶質型のこの化合物を含む不純物を、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは3重量%未満、好ましくは1重量%未満含有していることを意味する。
【0071】
本発明の固体型は、混合物中に共存していることもある。本発明の多形型及び/又は非晶質型の混合物は、その混合物中に存在する多形型及び/又は非晶質型各々のX線回折ピークの特徴を持っている。例えば、2種の多形の混合物は、それらの実質的に純粋な多形に対応するX線回折パターンのたたみこみ(convolution)である粉末X線回折パターンを有している。
【0072】
Ia型多形
Ia型多形は、式Iで表される化合物の水和結晶である。Ia型のDSCは、10℃/分の走査速度で走査すると、122℃に溶融吸熱を示す。Ia型の水溶性は0.1 M リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)中、0.8 μg/mLである。Ia型の粉末X線回折データは以下の通りである。
【0073】
【表1】

【0074】
II型多形
II型多形は、式Iで表される化合物の無水結晶である。II型のDSCは、10℃/分の走査速度で走査すると、208℃に溶融吸熱を示す。II型の水溶性は0.1 M リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)中、1.3 μg/mLである。II型の粉末X線回折データは以下の通りである。
【0075】
【表2】

【0076】
III 型多形
III 型多形は、式Iで表される化合物の水和結晶である。III 型のDSCは、10℃/分の走査速度で走査すると、179℃に溶融吸熱を示す。III 型の水溶性は0.1 M リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)中、3.2 μg/mLである。III 型の粉末X線回折データは以下の通りである。
【0077】
【表3】

【0078】
IV型多形
IV型多形は、式Iで表される化合物の無水結晶である。IV型のDSCは、10℃/分の走査速度で走査すると、205℃に溶融吸熱を示す。IV型の水溶性は0.1 M リン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)中、1.3 μg/mLである。IV型の粉末X線回折データは以下の通りである。
【0079】
【表4】

【0080】
V型多形
V型多形は、式Iで表される化合物のエタノールで溶媒和された結晶である。V型のDSCは、10℃/分の走査速度で走査すると、133℃、160℃及び206℃に溶融吸熱を示す。V型の粉末X線回折データは以下の通りである。
【0081】
【表5】

【0082】
VI型多形
VI型多形は、式Iで表される化合物の酢酸エチル溶媒和物である。VI型のDSCは、10℃/分の走査速度で走査すると、133℃、146℃及び203℃に溶融吸熱を示す。VI型の粉末X線回折データは以下の通りである。
【0083】
【表6】

【0084】
非晶質型
非晶質型の式Iで表される化合物は、典型的な非晶質の4〜40°の幅広の隆起ピークを示し、結晶型の特徴のシャープなピークが全くない粉末X線回折パターンを示す。
【0085】
多形混合物I
上記結晶型と非晶質型は混合物で存在することもあり、その混合物には、固体型が上記固体型を少なくとも2種含有する混合物として存在している。Ia型とII型を含む多形混合物は、走査速度10℃/分で走査したときのDSCで測定される122℃と206℃での溶融吸熱(それぞれIa型とII型の溶融吸熱と類似している)が特徴である。Ia型とII型の多形混合物の粉末X線回折データは以下の通りである。
【0086】
【表7】

【0087】
医薬組成物
本発明の活性薬剤(すなわち本願に記載されている、多形型又は非晶質型の式Iで表される化合物又はその混合物)を配合して、獣医及びヒト両方の医療用途に適した医薬組成物を調製できる。本発明の医薬組成物は、治療のために有効な量の活性薬剤及び1種以上の不活性の医薬として許容できる担体及び任意に他の治療用成分、安定剤などを含有している。上記1種以上の担体は、前記配合物の他の成分と共存可能でかつ配合物の賦形剤に不適切に悪影響を及ぼさないという意味で医薬として許容できるものでなければならない。本発明の医薬組成物は、さらに、希釈剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、粘稠化剤、滑沢剤、保存剤(抗酸化薬を含む)、着香剤、味覚マスキング剤、無機塩(例えば、塩化ナトリウム)、抗菌剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)、甘味剤、静電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN 20」や「TWEEN 80」などのポリソルベート及びBASFから入手できるF68やF88などのプルロニック)、ソルビタンエステル、脂質(例えば、レシチンや他のホスファチジルコリンなどのリン脂質、ホスファチジルエタノールアミン、脂肪酸や脂肪酸エステル、ステロイド(例えば、コレステロール))及びキレート化剤(例えば、EDTA、亜鉛などの適切なカチオン)を含有していてもよい。本発明の組成物に使用するのに適切な他の医薬添加剤及び/又は添加物は、「Remington:The Science & Practice of Pharmacy」19 th ed.,Williams & Williams,(1995);「Physician’s Desk Reference」52nd ed.,Medical Economics,Montvale NJ(1998);及び「Handbook of Pharma- ceutical Excipients」Third Ed., Ed.Kibbe,Pharmaceutical Press, 2000に列挙されている。本発明の活性薬剤は、経口、直腸、局所、鼻腔、眼又は非経口(腹腔内、静脈内、皮下又は筋肉内の注射を含む)の投与を行うのに適した組成物を含む組成物に配合できる。
【0088】
この配合物中の活性薬剤の量は、剤形、治療すべき症状、目標患者の集団及びその外の考慮事項を含む各種要因によって変化し、一般に当業者は容易に決定できる。治療のために有効な量は、タンパク質キナーゼを調節し、規制し又は阻害するのに必要な量である。実際には、この量は、特定の活性薬剤、治療すべき症状の重篤度、患者集団、配合物の安定性などによって大きく変化する。組成物は、一般に活性薬剤を、おおむね約0.001重量%から約99重量%まで含有し、好ましくは約0.01重量%から約5重量%まで含有し、そしてより好ましくは約0.01重量%から約2.0重量%まで含有し、そしてまた組成物が含有する添加剤及び/又は添加物の相対的量によって左右される。
【0089】
本発明の医薬組成物は、治療のために有効な量の活性成分としての活性薬剤を、1種以上の適切な医薬担体と、通常の手順で混合することによって調製される通常の剤形で投与される。これらの手順によって、所望の製剤に対して適切に、活性成分の混合、造粒及び圧縮又は溶解が行われる。
【0090】
採用される医薬担体は、固体又は液体でもよい。代表的な固体の担体としては、乳糖、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アラビアゴム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などがある。代表的な液体の担体としては、シロップ、落花生油、オリーブ油、水などがある。同様に、担体は、当該技術分野で知られている遅延物質又は徐放物質、例えばグリセリンモノステアレートもしくはグリセリンジステアレート単独又はこれらとワックスとの混合物、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メタクリル酸メチルなどを含有していてもよい。
【0091】
各種の医薬形態を採用できる。したがって、固体担体を使用する場合、製剤は、錠剤にするか、粉末もしくはペレットの形態で硬質ゼラチンカプセル中に入れるか、又はトローチもしくはロージンジの形態にすることができる。固体担体の量は、変えることができるが、一般に約25 mg〜約1 gである。液体担体を使用する場合、製剤は、シロップ剤、乳剤、軟質ゼラチンカプセル剤、アンプルもしくはバイアルに入れた滅菌注射用水剤もしくは懸濁剤、又は非水性の液体懸濁剤の形態でもよい。
【0092】
安定な水溶性剤形を得るために、活性薬剤の医薬として許容できる塩を、有機又は無機の酸の水溶液、例えば、コハク酸又はクエン酸の0.3 M溶液に溶解する。可溶性塩型を入手できない場合は、その活性薬剤を適切な補助溶媒又は補助溶媒の混合物に溶解してもよい。適切な補助溶媒の例としては、限定されないが、全容積の0〜60%の範囲内の濃度のアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール 300、ポリソルベート 80、グリセリンなどがある。また、本発明の組成物は、塩型の活性薬剤を、水又は生理食塩水又はデキストロース溶液などの適正な水性賦形剤に溶解して得た溶液の形態でもよい。
【0093】
本発明の組成物に使用される活性薬剤の実際の投与量は、使用される特定の複合体、配合される特定の組成、投与法と特定の部位、治療される宿主と疾患によって変化することは分かるであろう。当業者は、薬剤の実験データを考慮しながら通常の投与量決定試験を利用して、与えられた一組の症状に対する最適の投与量を確認できる。経口投与の場合、一般に採用される代表的な1日当たりの投与量は、適正な時間間隔をおいて繰り返す治療の過程で、約0.001〜約1000 mg/kg 体重であり、より好ましくは約0.001〜約50 mg/kg体重である。プロドラッグは、一般に、充分に活性の活性型の重量レベルに化学的に均等である重量レベルで投与される。
【0094】
本発明の組成物は、広く知られている医薬組成物製造法で製造することができ、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣剤製造、研和、乳化、カプセル内への充填、エントラッピング(entrapping)又は凍結乾燥などの通常の方法を使用する。医薬組成物は、1種以上の生理学的に許容できる担体を使って通常の方法で配合することができ、これら担体は、活性化合物を、医薬として使用できる製剤に加工しやすくする添加剤及び補助剤から選択できる。
【0095】
適正な配合は選択される投与経路によって決まる。本発明の薬剤は、注射用に、水性水剤として、好ましくは生理学的に共存できる緩衝液、例えばハンクス液、リンゲル液又は生理食塩水の緩衝液に配合できる。経粘膜投与用には、浸透すべきバリアーに対して適切な浸透剤を配合に使用する。かような浸透剤は当該技術分野では広く知られている。
【0096】
経口投与用に、本発明の化合物は、その活性化合物を、当該技術分野で知られている医薬として許容できる担体と混合することによって容易に配合できる。かような担体によって、本発明の化合物を、治療される患者が経口摂取する錠剤、丸剤、糖衣剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして配合することができる。経口で使う医薬製剤は、固体の添加剤を活性成分(活性薬剤)と混合して使い、得られた混合物を任意に粉砕し、次いで、必要に応じて適切な補助剤を添加した後に顆粒の混合物を加工して錠剤又は糖衣剤のコアが得られる。適切な添加剤としては、乳糖、スクロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖類などの充填剤、及びセルロース製剤例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、ガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム又はポリビニルピロリドン(PVP)がある。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、カンテン又はアルギン酸もしくはその塩例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤を添加してもよい。
【0097】
糖衣剤のコアには適切なコーティングをつける。これを行うには、糖の濃溶液を使用するが、この溶液は、任意にアラビアガム、ポリビニルピロリドン、Carbopolゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液及び適切な有機溶媒もしくは溶媒混合物を含有していてもよい。活性薬剤の異なる組合わせを識別又は特徴付けするため、錠剤又は糖衣剤のコーティングに染料又は顔料を添加してもよい。
【0098】
経口で使用できる医薬製剤としては、ゼラチン及びグリセリンもしくはソルビトールなどの可塑剤製のソフトシールドカプセル(soft,sealed capsule)のみならずゼラチン製のプッシュフィットカプセル(push-fit capsule)がある。プッシュフィットカプセルには、活性成分を、乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤及び/又はタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤及び任意に安定剤と混合して入れてもよい。ソフトカプセル中の活性薬剤は、脂肪油、流動パラフィン又は液状ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁されていてもよい。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与用の配合物はすべて、経口投与に適切な投与量でなければならない。口腔投与用の組成物は、通常の方式で配合された錠剤又はローレンジの形態であればよい。
【0099】
鼻腔内投与用又は吸入による投与用に本発明によって使用される化合物は、適切な噴射剤、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素などの適切なガスを使って、圧縮パック又はネブライザーからエーロゾルをスプレイする形式で便利に送達される。圧縮されたエーロゾルの場合、投与単位は、計量された量を送達するバルブを設けることによって決定できる。吸入器又は注入器などで使うゼラチン製のカプセル又はカートリッジは、本発明の化合物及び適切な粉末ベース例えば乳糖もしくはデンプンの粉末混合物を入れて配合できる。
【0100】
本発明の化合物は、注射、例えばボーラス注射又は連続注入による非経口投与用に配合できる。注射用配合物は、例えばアンプル又はマルチ投与容器の単位投与形態で保存剤を添加して提供できる。本発明の組成物は、油状又は水性の賦形剤による懸濁剤、水剤又は乳剤の形態でもよく、そして懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤などの配合剤を含有していてもよい。
【0101】
非経口投与用の医薬配合物としては、水溶性型の活性化合物の水溶液がある。さらに、活性薬剤の懸濁剤は、適正な油状の注射用懸濁剤として調製できる。適切な親油性溶媒又は賦形剤としては、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成の脂肪酸エステル又はリポソームがある。水性の注射用懸濁剤は、その懸濁剤の粘度を増大する物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランを含有していてもよい。懸濁剤は、任意に、適切な安定剤、又は高濃度の溶液を調製できるように化合物の溶解性を増大する薬剤を含有していてもよい。
【0102】
眼に投与する場合、活性薬剤は、その化合物が、例えば前眼房、後眼房、硝子体、眼房水、硝子体液、角膜、虹彩/毛様体、水晶体、脈絡膜/網膜及び強膜を含む眼の角膜と内部の領域に浸透できるよう、充分な期間、眼球表面に接触保持されるように医薬として許容できる眼科用賦形剤に入れて送達される。医薬として許容できる眼科用賦形剤は例えば軟膏、植物油又はカプセル化物質でよい。本発明の化合物は、硝子体液及び眼房水又はサブテノン(subtenon)中に直接注射してもよい。
【0103】
あるいは、活性成分は、使用する前に適切な賦形剤例えば発熱物質を含有していない滅菌水で再構成される粉末の形態でもよい。本発明の化合物は、例えば、カカオバター又は他のグリセリドなどの通常の坐薬ベースを含む坐薬又は保持浣腸剤などの直腸用組成物に配合することもできる。
【0104】
上記配合物に加えて、本発明の化合物は、デポ製剤として配合することもできる。かような長期間作用する配合物は移植(例えば、皮下もしくは筋肉内)又は筋肉注射によって投与できる。したがって、例えば、本発明の化合物は、適切なポリマー物質又は疎水性物質(例えば許容可能な油中の乳濁液として)又はイオン交換樹脂又は僅かに可溶性の誘導体例えば僅かに可溶性の塩とともに配合できる。
【0105】
疎水性化合物用の医薬担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー及び水性相を含む補助溶媒系である。この補助溶媒系はVPD補助溶媒系でもよい。VPDは、無水エタノールの溶液に対して、3%w/vのベンジルアルコール、8%w/vの非極性界面活性剤のポリソルベート80及び65%w/vのポリエチレングリコール 300を含有する溶液である。このVPD補助溶媒系(VPD:5W)は、デキストロースの5%水溶液により1:1比率で希釈されたVPDを含有している。この補助溶媒系は疎水性化合物を充分に溶解し、かつそれ自体全身投与したときの毒性は低い。勿論、補助溶媒系の比率は、その溶解性と毒性特性を破壊することなくかなり変えることができる。さらに、この補助溶媒の成分の特性(identity)は変えることができる。例えば、ポリソルベート 80の代わりに他の低毒性の非極性界面活性剤を使用することができ、ポリエチレングリコールの画分の大きさを変えることができ、他の生体適合性ポリマー例えばポリビニルピロリドンをポリエチレングリコールの代わりに使うことができそして他の糖類又は多糖類をデキストロースの代わりに使用できる。
【0106】
あるいは、疎水性医薬化合物用に他のデリバリー系を採用できる。リポソームとエマルジョンは、疎水性薬物をデリバリーする賦形剤又は担体の公知の例である。ジメチルスルホキシドなどの特定の有機溶媒も、より大きい毒性を通常犠牲にして採用できる。さらに、これら化合物は、治療用薬剤を含有する固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリックスなどの徐放系を使ってデリバリーできる。各種の徐放性物質が、当業者によって製造され知られている。徐放性カプセルは、その化学的性質によって、化合物を、数週間から100日間まで放出できる。治療用薬剤の化学的性質と生物学的安定性によって、タンパク質を安定化する追加の戦略も採用できる。
【0107】
本発明の医薬組成物は、適切な固相又はゲル相の担体又は添加剤を含有していてもよい。このような担体又は添加剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、糖類、デンプン類、セルロース誘導体、ゼラチン及びポリエチレングリコール類などのポリマーがある。
【0108】
方法
本発明の化合物と組成物は、タンパク質キナーゼの活性を仲介するのに有用である。さらに詳しく述べると、これら化合物は、抗新血管形成剤として及びタンパク質キナーゼの活性、とりわけVEGF、FGF、CDK複合体、TEK、CHK1、LCK、FAK及びホスホリラーゼキナーゼに関連する活性などを調節及び/又は阻害する薬剤として有用であるので、タンパク質キナーゼによって仲介される細胞の増殖に関連する、ヒトを含む哺乳類の癌などの疾患を治療する。
【0109】
タンパク質キナーゼによる調節又は規制によって仲介される疾患を治療するため、治療のために有効な量の本発明の化合物が、一般に医薬組成物の形態で投与される。用語「有効量」は、かような治療を必要とする哺乳類に投与するとき、1種以上のタンパク質キナーゼ例えばチロシンキナーゼ類の活性で仲介される疾患を治療のために充分な薬剤の量を意味するものである。したがって本発明の化合物の治療のために有効な量は、1種以上のタンパク質キナーゼの活性を変更調節又は阻害して、その活性で仲介される疾患の症状を減退又は軽減するのに充分な量である。与えられた化合物の有効量は、疾患の症状とその重篤度及び治療を要する哺乳類の特性と状態(例えば体重)などの要因によって変わるが、当業者は日常的に決定できる。用語「治療」は、チロシンキナーゼなどの1種以上のタンパク質キナーゼの活性で少なくとも部分的に受けるヒトなどの哺乳類の疾患症状を少なくとも軽減することを意味するものであり、特に、その哺乳類がその疾患症状に冒されやすいことが分かっているが冒されているとまだ診断されていないときに疾患症状が発症しないように予防すること、その疾患症状を調節及び/又は阻止すること、及び/又はその疾患症状を軽減することが含まれている。代表的な疾患症状としては、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、リウマチ様関節炎、乾癬、加齢性黄斑変性(AMD)及び癌(充実性腫瘍)がある。
【0110】
タンパク質キナーゼの活性、例えばキナーゼ類の活性のモジュレーターとしての本発明の化合物の活性は、生体内及び/又は生体外の検定法を含む当業者が利用できるどの方法でも測定できる。活性を測定する適切な検定法の例としては、Parast C.et al., BioChemistry, 37, 16788-16801(1998);Jeffrey et al., Nature, 376, 313-320(1995);国際特許願公開第WO97/34876号及び同第WO96/14843号に記載されている検定法がある。
【実施例】
【0111】
実施例
以下の実施例は、本発明を例証するために提供するものであり、本発明を限定するとみなすべきではない。特に断らない限り、温度はすべて摂氏で記載し、部数と%はすべて重量部と重量%である。HPLCのデータは、Hewlett Packard HP-1100 HPLCを使って得た。
【0112】
実施例1:Ia型多形
式Iで表される化合物(100 g,HPLCで測定した純度が92%)を、塩化メチレン中20%エタノールの溶液(5 L)に添加した。得られた混合物を、元の容積の約80%まで、減圧濃縮する。固形分を濾過し減圧乾燥してIa型95gを得る。
【0113】
実施例2:II型多形
式Iで表される化合物(100 g)を、メチルt-ブチルエーテルと酢酸エチルの1:1溶液(5 L)に添加する。得られた混合物を減圧濃縮し、残留物をメタノール(5 L)に添加する。得られたメタノール溶液を、12時間還流加熱し、室温まで放冷し、次いで固形分を濾過し減圧乾燥してII型95 gを得る。
【0114】
実施例3:III 型多形
式Iで表される化合物(100 g)を、テトラヒドロフラン(2.5 L)と酢酸エチル(2.5 L)の溶液に添加し、その混合物を12時間還流加熱する。油状沈澱が生成することが観察され、その沈澱は、その溶液を放冷して一夜室温に保持すると固体に変化する。その固体を濾過し減圧乾燥してIII 型95 gを得る。
【0115】
実施例4:IV型多形
式Iで表される化合物(100 g)を、テトラヒドロフラン(2.5 L)と酢酸エチル(2.5 L)の溶液に添加し、その混合物を12時間還流加熱する。油状沈澱が生成することが観察され、その沈澱は、その溶液を放冷して一夜室温に保持すると固体に変化する。その混合物を濾過し減圧乾燥してIV型95 gを得る。
【0116】
実施例5 :V型多形
式Iで表される化合物(100 g)をエタノール(7 L)に添加し、次いでその混合物を1時間還流過熱する。生成した混合物をほぼ4 Lまで減圧濃縮する。その濃縮物に、いくらかのII型の結晶を添加し、次いでその混合物をほぼ500 mLまで減圧濃縮する。固体を濾過し、氷冷エタノールで洗浄する。得られた固体を減圧乾燥してV型95 g(1:1エタノール溶媒和物)を得る。
【0117】
実施例6:VI型多形
式Iで表される化合物(25 g)を、テトラヒドロフラン(250 mL)に添加して両者の混合物を45℃まで昇温することによって溶解する。その溶液を、全容積を約250 mLに維持する速度で常に酢酸エチル(合計500 mL)を供給しながら減圧(約60 mbar)蒸発させる。生成した褐色の懸濁液を室温まで放冷し続いてさらに氷浴で冷却する。沈澱した褐色の固体(非晶質)を濾過し、冷酢酸エチル(100 mL)で洗浄する。静置すると、自然に結晶化が始まり、その結晶した固体を濾過し、冷酢酸エチル(100 mL)で洗浄し、次いで減圧オーブンで乾燥して(70℃で25 mm Hg)VI型(1:1の酢酸エチル溶媒和物)を得る。
【0118】
実施例7:非晶質型
これらの実験は、ハステロイC22ステンレス鋼31LウエルプレートのCrystallicsで実施する。このプレートは容積が50μlの個々のウエル96個を備えている。IV型3.5 gをテトラヒドロフラン400 mLに溶解して原液を作製した。その原液を92ウエルプレートに添加して、濃度が8.3及び16.6 g/100 mLヘプタンの生成物を作製する。その溶液を、4.8℃/分の速度で80℃まで加熱して80℃で1時間保持する。生成した溶液を0.6℃/分の速度で20℃まで冷却して1時間保持する。固体を濾過によって分離し減圧乾燥して非晶質型を得る。
【0119】
実施例8:多形混合物I
上記結晶型と非晶質型は、混合物として存在することもあり、その混合物中には、固体型が、前記固体型の少なくとも2種を含有する混合物として存在している。
【0120】
例えば、IaとII型を含有する多形混合物は、I型の化合物をメタノールに添加し(15 mg/2 mL溶媒)その混合物を室温にて24時間攪拌することによって製造される。生成したスラリーを濾過し減圧蒸発させてIa型とII型を含有する多形混合物を得る。
【0121】
本発明の多くの変形及び他の実施態様を、前記説明に提示された教示事項の恩恵を受ける、本発明が関連する当該技術分野の当業者は思いつくであろう。したがって、本発明は開示された特定の実施態様に限定すべきではなく、そしてその変形及び他の実施態様は本願の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものであると解すべきである。本願には特定の用語が使用されているが、それは、包括的で説明的な意味でのみ使用され限定するために使用していない。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明のIa型多形の粉末X線回折図である。
【図2】本発明のII型多形の粉末X線回折図である。
【図3】本発明のIII 型多形の粉末X線回折図である。
【図4】本発明のIV型多形の粉末X線回折図である。
【図5】本発明のV型多形の粉末X線回折図である。
【図6】本発明のVI型多形の粉末X線回折図である。
【図7】本発明の多形混合物Iの粉末X線回折図である。
【図8】本発明の非晶質型の粉末X線回折図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式I:
【化1】

で表される化合物又はその医薬として許容できる塩もしくは溶媒和物の結晶型。
【請求項2】
前記結晶型が、Ia、II、III 、IV、V又はVI型のいずれかの実質的に純粋の多形である、請求項1に記載の結晶型。
【請求項3】
前記結晶型がII型の実質的に純粋の多形である、請求項1に記載の結晶型。
【請求項4】
前記結晶型が、約27.3、22.5 及び20.1の回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項3に記載の結晶型。
【請求項5】
前記結晶型が、図2に示すものと本質的に同じ回折角(2θ)にピークを有する粉末X線回折パターンを有する、請求項3に記載の結晶型。
【請求項6】
前記結晶型が、DSCにより10℃/分の走査速度で走査して測定するとき、約208℃で溶融吸熱を示す、請求項3 に記載の結晶型。
【請求項7】
前記結晶型が、Ia型とII型の実質的に純粋の多形であるか又はII型とIV型の実質的に純粋の多形である、請求項1に記載の結晶型。
【請求項8】
下記式I:
【化2】

で表される化合物又はその医薬として許容できる塩もしくは溶媒和物の非晶質型。
【請求項9】
以下の固体型すなわちIa型、II型、III 型、IV型の多形型及び非晶質型のうち少なくとも2種を含む混合物である下記式I:
【化3】

で表される化合物又はその医薬として許容できる塩もしくは溶媒和物の固体型。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の結晶型、非晶質型又は固体型又はその医薬として許容できる塩もしくは溶媒和物のいずれかを含む医薬組成物。
【請求項11】
タンパク質キナーゼの活性が仲介する哺乳類の疾患症状の治療を必要とする哺乳類に、治療のため有効な量の請求項10に記載の医薬組成物を投与することを含む、当該症状の治療方法。
【請求項12】
哺乳類の疾患症状が、加齢性黄斑変性、糖尿病性網膜症、細胞増殖又は血管新生に関連する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
タンパク質キナーゼの受容体に、請求項1〜9のいずれか1項に記載の結晶型、非晶質型又は固体型又はその医薬として許容できる塩もしくは溶媒和物の有効量を接触させることを含む、タンパク質キナーゼ受容体の活性調節方法。
【請求項14】
前記タンパク質キナーゼ受容体がVEGFの受容体である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項2に記載の実質的に純粋のIV型多形を約120℃に加熱することを含む、請求項2に記載の実質的に純粋のIV型多形を、請求項3に記載の実質的に純粋のII型多形に変換する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−188522(P2006−188522A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−140(P2006−140)
【出願日】平成18年1月4日(2006.1.4)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】