説明

2つのグラフィックを表示する表示装置

【課題】2以上のグラフィックを単一の表示領域に表示する改良された手段の提供。
【解決手段】第1基板50は後面56に第1グラフィック60に対応するエッチング領域58を含み、第2基板70は前面74に第1グラフィックのネガに対応するエッチング領域76を含み、第1基板50はエッチング領域に光を伝える光パイプとして働き、第2光源84は第2基板70の背後にある。第2光源と第1基板の後面との間に、第2グラフィック82に対応する光透過領域83を不透明領域82'で構成するマスク層80を有し、第1光源のみが点灯するとき第1グラフィックが表示され、第2光源のみが点灯するとき不透明領域が光の伝達を妨げ第2グラフィックが表示される。第2グラフィック82表示中、第1グラフィックを形成するエッチング領域58は隠される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのグラフィックを表示するための表示装置に関する。特に、本発明は、自動車両内で使用することができる、例えばボタン、スイッチ又はノブなどの可動コントロールで使用するための表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
押しボタンは、多くの異なる機能を制御するために種々のインターフェイスで使用される。一般に、各ボタンは、ボタンの特定の機能や起動状態を示すテキスト、記号、又はその他の視覚的指示などでラベルづけされている。本明細書では、このようなテキスト、記号又は視覚的指示を「グラフィック」と称する。そして、ユーザによってボタンが押されたときに、例えばバックライトが点灯又は消灯して、それぞれある機能の起動又は非起動を示すように、グラフィックを制御可能に表示することができる。
【0003】
多数の異なるコントロールを有する必要がある、又は有することが望ましい用途においては、使い易さのためにボタンを十分に大きくしたまま、必要なボタンの数が使用できる空間を超える場合に問題が生じ得る。
【0004】
この問題の解決方法は、各グラフィックに異なる機能を関連付けて、各ボタンに2つの異なるグラフィックを設けることである。この方法では、ボタンが第1の機能を実行するよう設定されているときは第1グラフィックが表示され、ボタンが第2の機能を実行するよう設定されているときは第2グラフィックが表示される。しかし、今度は、使用していないグラフィックを隠しながら、所定の時間に2つのグラフィックのうちの一方だけをユーザにどのようにして選択的に表示するかという別の問題が生じる。
【0005】
この問題に対する幾つかの既知の解決方法では、2色の照明を提供する2以上の別個の光源と組み合わせて、グラフィックの各々に関連付けられたカラーフィルタを使用する。色に頼るこのような従来技術の手法の例が、下記の特許文献1及び2に記載されている。照明の色を変えることによって、ユーザに表示されるグラフィックを変えることができる。しかし、この方法では、フィルタが2つのグラフィックのうちの一方を排除する働きをするように選択可能な色の波長が十分に異ならなければならないため、選択可能な色に制限がある。
【0006】
グラフィックの各々をより明確に区別できるようにするため、多くの従来技術の表示装置では、互いに隣接してグラフィックを設け、グラフィックの片方だけが点灯しているときでも、第1グラフィックの存在により第2グラフィックの外観が変わることがないようにしている。しかし、この配置でグラフィックを提供することは、グラフィックを重ね合わせた場合よりも広い表面積を有するボタンを不可避的に必要とする。
【0007】
本発明の目的は、2以上のグラフィックを、固定表示領域又はボタンのような可動コントロールの一部となる単一の表示領域に表示する改良された手段を提供することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】フランス国特許出願公開第2928223号明細書
【特許文献2】特開平2008−015122号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明によれば、2つのグラフィックを表示するための表示装置が提供され、この表示装置は、
前面と後面を有する第1光透過基板を備え、第1光透過基板は、その後面に、表示すべき第1グラフィックに対応する少なくとも1つのエッチング領域を含み、
第1光透過基板の背後に第1光透過基板から離間して配置された第2光透過基板を備え、第2光透過基板は、前面と後面を有し、第2光透過基板は、その前面に、第1グラフィックのネガに対応する少なくとも1つのエッチング領域を含み、
第1光透過基板内に光を放射するよう配置された第1光源を備え、第1光透過基板は、第1光透過基板内で放射された光を少なくとも1つのエッチング領域に伝える光パイプとして働き、
第2光透過基板の背後に配置され、光を第1及び第2光透過基板を通して、表示の見者に向けて放射するよう配置された第2光源と、
少なくとも1つの不透明領域を有し、少なくとも1つの不透明領域が、表示すべき第2グラフィックに対応する少なくとも1つの光透過可能領域を構成するマスク層を備え、マスク層は、第2光源と第1光透過基板の後面との間に設けられ、
使用中に、第1光源が点灯しかつ第2光源が点灯していないときに、第1光透過基板内を伝わる光は、第1光透過基板の後面のエッチング領域に入射し、第1光透過基板の前面から外に向けられ、それによって第1グラフィックのみを表示の見者に表示し、第2光源が点灯しかつ第1光源が点灯していないときに、第2光源によって放射された光は、マスク層の不透明領域によって遮られ、マスク層の光透過領域を通過し、第1及び第2光透過基板を通過し、それによって第2グラフィックのみを表示の見者に表示し、通過光はまた、第1光透過基板の後面のエッチング領域か、第2光透過基板の前面のエッチング領域のいずれかを通り、第2グラフィックが表示されているときに第1グラフィックが隠される。
【0010】
本明細書では、「前」及び「前方」という言葉は、表示グラフィックを見ているユーザに相対的により近い、又はユーザの方へ向けられた構成に対して使用される。同様に、「後」又は「後方」という言葉は、表示グラフィックを見ているユーザから相対的に最も遠い、又はユーザから離れる方へ向けられた構成に対して使用される。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、第1光透過基板及び第2光透過基板は、それぞれの前面及び後面で、又は基板の表面間で実質的に同じ厚さを有する。
【0012】
また好ましい実施形態では、第1光透過基板と第2光透過基板とは、空隙により離れている。
【0013】
これは、第1光透過基板及び第2光透過基板のエッチング領域(エッチングされた領域)が波長選択性のないものである場合に特に好都合である。
【0014】
第1光透過基板及び第2光透過基板のエッチング領域は、粗面領域であってもよい。
【0015】
第1光透過基板は、第1光源及び第2光源の両方からの光に対して透明であることが好ましい。同様に、第2光透過基板は、第2光源からの光に対して透明であることが好ましい。ただし、光源の一方又は他方からの光が、例えば白色光などのブロードバンド(broad band)ならば、基板の一方又は他方は、表示されるグラフィックが、その一方の色付き基板の色となるように、色付き、即ち、特定の光の波長に対して透明であってもよい。
【0016】
マスク層は第2光透過基板の前面と、第1光透過基板の後面との間に配置されることが好ましい。
【0017】
より好ましくは、マスク層は、第2光透過基板の前面に、第2光透過基板の前面領域上の層によって設けられた、少なくとも1つの不透明領域を備えるので、個別のマスク基板は必要ない。
【0018】
好ましい実施形態では、マスク層は、第2光透過基板の前面に不透明なプリント領域を備える。マスク層は、表示される第2グラフィックの形状の反転又はネガに相当する形状の少なくとも1つの不透明領域を有する。第2光透過基板も、第1グラフィックを形成するエッチング領域の反転又はネガに相当する形状の同じ前面のエッチング領域を有している。本発明の好ましい実施形態では、マスク層は第2光透過基板の前面のエッチング領域の一部(しかし全部ではない)に重なる。
【0019】
この、又は各不透明領域は、第2光源によって放出された光の波長を遮るだけでなく、不透明領域が、表示装置を照らす周囲の外部光から来る入射光を吸収するように、黒色であることが好ましい。これにより、例えば太陽光などの周囲の外部光が表示装置を照らしたときに、装置のユーザから第2グラフィックの反転画像を形成する層の外観を隠す助けとなる。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では両方の基板は平面だが、基板はある程度湾曲することができるのがよく、これは表示装置が湾曲したボタンに使用される場合や、湾曲した表示パネル又はダッシュボードの後ろに使用される場合に望ましい。第1及び第2光透過基板は平行であることが好ましい。幾つかの実施形態では、平面である第1光透過基板であって、第1光源から第1光透過基板に光を伝えるために第1光透過基板に垂直に延びる光パイプに接続された第1光透過基板が設けられることが望ましい。
【0021】
表示装置は、第1光透過基板及び第2光透過基板の両方を支持する支持フレームを更に備えてもよい。好ましくは、支持フレームは、第2光透過基板の背後に角錐状の空間を構成し、第2光源によって第2光透過基板が均一に照明されるように、第2光源は角錐状の空間の頂点内に光を放出する。
【0022】
好ましくは、表示装置は、第1光透過基板の前に透明な又は曇った(smoked)カバーを更に備える。
【0023】
好ましくは、第1及び第2光源は、他の光源と比較して全体のサイズが小さく消費電力が小さいために、発光ダイオード(Light Emitting Device:LED)である。
【0024】
光源の照明を制御するため、第1及び第2光源は共通の回路基板上に取り付けられていることが好ましい。より好ましくは、回路基板は第2光透過基板の背後に配置されている。
【0025】
本発明は、本発明による表示装置を含む押しボタンを更に提供する。この実施形態では、第1及び第2グラフィックは、押しボタンの2つの異なる機能に対応するのがよい。
【0026】
以下、添付図面を参照し、単なる例によって本発明を更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるデュアル(dual)グラフィック押しボタンを組み込んだ表示装置の断面図である。
【図2】図1の押しボタンに表示することができる第1グラフィックの例である。
【図3】図2の第1グラフィックの反転画像を示す図である。
【図4】図1のボタンに表示することができる第2グラフィックの反転画像を示す図である。
【図5】第1及び第2グラフィックを重ね合わせた図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明の好ましい実施形態による表示装置10を示す。表示装置10は、選択された機能によって押しボタン12の2つのグラフィックのいずれかを表示するよう配置され、次に押しボタン12の一方又は他方のグラフィックを選択的に照明する照明状態を決定する。
【0029】
この例では、押しボタン12は、例えば自動車のダッシュボードの一部を形成する場合がある固定された筐体14内に取り付けられている。押しボタン12は、表示装置10の構成要素をボタン12のユーザから保護するカバー16を備える。ユーザに押されたときのカバー16は、矢印5が示すように、相対的に前後に動くことができる。カバー16は一般に、矩形の前面又は側面18と、4つの同様の側壁20を有し、側壁20の各々は、前面18のそれぞれのエッジ22から垂直に伸びている。前面18は後述のように、透明、曇り、あるいは少なくとも一部が半透明である。
【0030】
カバー16の前面18が筐体14の前面26に平行であるが前面26からオフセットした平面内に位置し、かつ、カバー16の前部27が筐体14から突出するように、側壁20は筐体14の開口部24内に少なくとも一部分が受け入れられる。
【0031】
押しボタン12は、カバー16の背後かつ内部に位置する支持フレーム28を更に含む。この実施形態では、支持フレーム28は実質的に矩形の断面領域を有し、一体的に形成された4つの側壁30を備え、側壁30の各々は同様の形状を有する。側壁30の各々は、カバー16のそれぞれの側壁20に平行な平面内にある外側面32と、それぞれの外側面32に対して、ある角度で傾斜した内側面34とを備える。このように、各側壁30の各々は、ほぼ三角形の断面形状を有し、4つの内側面34は、フレーム28の中心を通る角錐状の空間36を構成する。フレームの前面38内の開口部が、フレーム28の後面40内の開口部のよりも広い面積を有するように、内側面34には角度が付けられている。
【0032】
支持フレーム28の後面40は、後面が内側面34の各々と結合している場所で、1つ以上の圧力パッド42と接触している。各圧力パッド42は、弾力性のあるアーム44に取り付けられ、アーム44は、圧力パッド42を筐体14の背後に取り付けられた回路基板46からある距離に保持する。
【0033】
押しボタン12を操作するには、ユーザは指又は親指をカバー16の前面18に押し付け、カバー16を更に開口部24内に押し込む。これにより、支持フレーム28が各圧力パッド42に押し付けられ、各圧縮パッド42が回路基板46の方へ押される。ボタンカバー16が5の方向に押されると(5)、各圧力パッド42上の接点48が回路基板と接触し、押しボタン12の選択された機能に応じて必要な回路を完成する。
【0034】
押しボタン12は、いつでも回路の特定の状態に応じて2つの異なる機能を有するように設計される。このように、ボタン12は、本明細書では第1グラフィックと第2グラフィックと称する2つの異なるグラフィックの一方又は他方を選択的に表示するよう設計されており、これらのグラフィックの各々は、照明されているときに、ボタン12のカバー16の前側18を通して見ることができ、ボタン12の現在の機能を示す。
【0035】
このようにグラフィックを表示するために、押しボタン12は、第1光透過層又は基板50を備え、この基板50は、本実施形態では、支持フレーム28の前方でカバー16の内部に配置された平面状の光パイプ50を備える。第1光透過基板50は、表示領域52全体にわたって広がり、指示フレーム28の前面38とカバー16の前面18との間に位置する。第1光透過基板50は、光表示領域52の一端で光パイプのステム部分54に接続され、ステム部分54は、表示領域52から離れるように後方に垂直に延び、指示フレーム28の側壁30の1つとカバー16の側壁20の1つとの間に位置する。
【0036】
第1光透過基板50及び光パイプのステム部分54は、クリアで透明な材料で、例えばポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)又はポリカーボネイトで成形することによって、単一部品として形成される。
【0037】
第1の基板50は、基板の前面と後面、即ち表面68、56の間の空間によって定められた厚さを有する。第1の基板50の後面56は、少なくとも1つのエッチング領域58を含む。基板50用に選択された素材に応じて、エッチング領域58は、例えば酸又は溶液を使用することなどによる化学エッチング、例えばサンドブラストによる物理エッチング、あるいはレーザーエッチングによって形成できる。エッチングは、基板の厚みが、エッチング領域と非エッチング領域とで実質的に同じになるよう、表面を粗くする方法、即ちテクスチャリング方法とすることが好ましい。
【0038】
エッチング領域58は、表示すべき第1グラフィック60に対応し、その一例を図2に示す。図2では、エッチング領域58はプラス記号の形状である。一般に、表示領域52の境界内にあるエッチング領域58は、少なくとも1つの非エッチング領域58’によって境界づけられており、図2の例における非エッチング領域58’は、エッチング領域58の形状の反転像又はネガ像である。
【0039】
第1光源62は、本実施形態においては発光ダイオード(LED)62であるが、光パイプのステム(軸)部分54の自由端64に近接して配置される。LED62は、点灯すると、滑らかで内部が反射壁を有する、光パイプのステム部分54の端部64内に光を放出する。放出された光は、全反射によって光パイプのステム部分54内を第1光透過基板50の方へ伝わり、次いで、光パイプのステム部分54と第1光透過基板50との間の結合部において角度をつけた表面66からの全反射によって、第1光透過基板50の表示領域52内に向けられる。エッチング領域58とは別に、第1光透過基板50もまた滑らかで全反射する前面及び後面68、56を有し、そのため、全反射により、第1光透過基板50全体に光が伝わる。
【0040】
この(又は各)エッチング領域58は、エッチング領域58で第1光透過基板50内から内部に入射した光を散乱するよう働く、粗くした(凹凸のついた)テクスチャを有する。表示領域52では、内部に伝わった光の一部が第1光透過基板50の後面56にあるエッチング領域58に内部入射する。この内部入射光は、この(又は各)エッチング領域58の粗面により、あらゆる方向に散乱され、一部の光は、第1光透過基板の後方から外に向かって散乱するため、ユーザの視界から消える。基板が透明であるため、エッチング領域58に内部入射した光は、エッチング領域ではほとんど吸収されない。したがって、エッチング領域に入射した光の残りは、第1光透過基板のバルク内で前方に散乱されて、第1光透過基板50の前面68の方に向かう。基板50の前面68は、表示領域52の全範囲にわたって延びる平滑で透明な表面である。前方に散乱した光の一部は、(表面の法線に対して測定した)大きな内部入射角を有し、第1光透過基板50により形成される光パイプ内に全反射により閉じ込められるが、前方に散乱した光の一部は、この光が第1光透過基板50の前面68から外に伝わるに十分小さな入射内角を有する。次いで、第1光透過基板50から放出された光は、カバー16の前面18の半透明又は透明領域を通り、第1グラフィック60が表示装置10の見者に見えるようにする。
【0041】
次いで、第1グラフィック60が表示装置10のユーザによって見られているため、非エッチング領域58’は、実質的に暗いまま、又は光っていないままである。
【0042】
当業者は、カバー16の前面18は当然、完全に透明である必要がないことが認識するであろう。本発明の好ましい実施形態では、全面18が曇っており(スモークが付けられており)、即ち、表示ユニット10の外部周囲光の入射の多くを吸収する中性濃度の染料(neutral density dye)によって着色されており、表示ユニットの内部構造をユーザの視界から実質的に隠すようになっている。
【0043】
本実施形態では、第1光源62は回路基板46上に取り付けられている。例えばボタンが押されたときのボタン12の動きに対応するため、光源62の周りに遮蔽部材(スクリーン部材)69が設けられている。遮蔽部材69は回路基板46の表面から実質的に垂直に伸びる壁部71を備える。壁部71の間の間隙73は、最も小さいときで、光パイプのステム部分54の幅とほぼ等しく、ステム部分54の端部64が壁部71の間に受け入れられる。壁部71の高さは、ボタン12が押されていない状態のときに、壁部71の上端75又はその近くで、ステム部分54の端部64が、間隙73内位置するような高さである。ボタン12が押された状態のときは、ステム部分54の端部64は、光源62の方に向かって間隙73内で下方に移動する。
【0044】
本実施形態では、壁部71の内側面77は、間隙73が上端75の方に向かって先細になるよう角度が付けられている。このように、光源62によって放出された光は光パイプのステム部分54の端部64内に向けられる。
【0045】
押しボタン12は、第2光透過層又は基板70を更に備え、この第2光透過基板70は、表示領域52を完全に覆って延びている。第2光透過基板は、基板の前面74と後面79との間隔によって定められる厚さを有する。第2光透過基板70の厚さは、第1光透過基板50の厚さと同じである。第2光透過基板70は、第1光透過基板50の表示部52の背後に位置し、本実施形態では、第2光透過基板70は支持フレーム28の前面38にある窪み72に位置する。このように、第2光透過基板70は、支持フレーム28の前面38の開口部内に収まり、これを覆う。
【0046】
第2光透過基板70は、好ましくは、第1光透過基板50と同じクリアで透明な素材、例えばポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)又はポリカーボネイトで成形することにより形成される。
【0047】
第2光透過基板70の前面74は、図3に示すように、第1グラフィック60の反転又はネガ78と対応する1つ以上のエッチング領域76を含む。第2光透過基板70のこの又は各エッチング領域76は、表示領域52の境界内にあるため、第1グラフィック60と同じ形状を有する1つ以上の非エッチング領域76’の境界を定める。
【0048】
基板70用に選択された素材に応じて、例えば酸又は溶液を使用する化学エッチングによって、また例えばサンドブラストよる物理エッチングによって、あるいはレーザーエッチングによって、エッチング領域76を形成することができる。
【0049】
第2光透過基板70のこの又は各エッチング領域76は、第2の基板の前面74に設けられ、第1光透過基板50のこの又は各エッチング領域58は、第1の基板の後面56に設けられている。この配置の利点は、後により詳細に説明するように、エッチング領域58、76それぞれの平面を接近させ、視差効果を最小にできることである。
【0050】
表示装置10は、表示すべき第2グラフィック82の反転像82’(本例では、図4及び図5に示すように数字の「2」である)に対応する(一致する)形状のマスク層80を更に備える。マスク層80は、少なくとも1つの不透明領域を形成し、この不透明領域は、本実施形態では、数字の「2」の反転又はネガ画像を有する第2光透過基板70の前面74に設けられた連続するプリント領域82’である。それよって、マスクは、第2光透過基板70の前面74に非プリント部位又は領域83を構成する。非プリント領域は、第2グラフィック82の形状そして透明領域83である。そして、光は、非プリント領域83を通って光り、第2グラフィック82を表示することができる。
【0051】
マスク層80がエッチング領域76に重なった状態で、第2光透過基板70のマスク層80とエッチング領域76とは、第2光透過基板の同じ側面に設けられる。この利点は、マスク層の背後のエッチング領域76が、表示装置10の見者に対して視界から完全に隠れることである。同時に、マスク層が隣接したエッチング層58、76に接近しているため、これらのエッチング層を通る半透明状態での光の透過による散乱効果があったとしても、マスク層80によって提供された第2グラフィック82の提供された像は鮮明に構成される。
【0052】
本実施形態では第2の発光ダイオード(LED)84である第2光源84が、回路基板46に取り付けられ、支持フレーム28の背後の中心に配置されるので、光源84によって放出された光は、支持フレームの後面40にある開口部を通過し、角錐状の空間36を通って、第2光透過基板70へ向かう。支持フレーム28の壁30の角度が付いた内側面34と、その結果として形成される空間36の形状により、第2光源84によって放出された光は、第2光透過基板70の領域全体に均一に伝わる。
【0053】
第1及び第2光透過基板50、70のエッチング領域58、76は両方とも、第1及び第2の基板50、70それぞれの後面及び前面56、74を通る第2光源からの光の透過に対して半透明である。この透過光は散乱され、これによって、第2光源84の前方に他の光散乱器が必要ないように、透過光を散乱するという利点が得られる。
【0054】
第1光源から第1光透過基板50に光を伝えるために光パイプ54を使用する利点は、ボタンカバー16の移動(5)中に光の整合を維持したまま、共通の回路基板46上に、第1及び第2光源62、84を両方を取り付けることができことである。したがって、ボタン12を押す動き5の間、第1グラフィック又は第2グラフィックの表示は影響されない。
【0055】
第2光源84が点灯すると、放出された光は第2光透過基板70を透過する。第2光伝送基板70の前面74上の不透明領域80は、これらの領域で透過光を遮り、放出された光は第2光透過基板70の前面74の非プリント領域83だけを通過し、次いで、第1光透過基板50を通過して、ボタン12のユーザの方へ向かう。放出された光は、カバー16の透明又は半透明領域を通過し、このようにして、第2グラフィック82の照明像がユーザに表示される。
【0056】
第1グラフィック60に対応する、第1光透過基板50の後面56上のエッチング領域58と、第1グラフィック60の反転又はネガ78に対応する、第2光透過基板70の前面74上のエッチング領域76とは、互いに一致するように整列している。エッチング領域58、76の組み合わせは、マスク層80によって遮られず、第2及び第1光透過基板70、50を通過し、それによって装置10の使用者が見ることのできる、第2光源84からのすべての光がエッチング領域58、76の一方又は他方を通過したことを意味する。2つのエッチング領域58、76のエッチングの程度又は量は、第2光源84からの光の通過におけるこれらの領域による散乱が実質的に等しくなるように選択される。このように、第1グラフィック60を形成するエッチング領域の形状は、第2光透過基板70のエッチング領域76によって実質的に隠される。
【0057】
さらに、第1グラフィック60及び第2グラフィック82の両方は、両方の場合とも、グラフィックの見者に届く光は、同じようにエッチングされた領域58、76によって散乱されるので、同様の又は同じ視覚的外観又は「テクスチャ」で表示される。
【0058】
本発明の特定の利点は、好ましくは同じ素材で形成され、同じ光特性を有する2つの同じような基板50、70の使用していることである。これによって、(同じエッチング技術を使用して形成できる)エッチング領域が同じ前方光散乱特性を有することができる。これら2つの同様な基板の各々は、十分安定的でもあるので、ポジとネガのエッチング領域58、76を、互いに一致させた状態に維持でき、これによって、これらのエッチング領域を接触させることなく、より用意に互いに接近させることができるので、整合されたエッチング領域58と76との間の認識可能な視差効果を最小にするか又は解消できる。
【0059】
別の利点に、第1及び第2グラフィックの外観上目に見える平面が実質的に同一になることである。
【0060】
このように、第2光源84が点灯し、第1光源62が消灯している場合、第1グラフィック60のエッチング領域58によって生じる照明にばらつきを生じることなく、第2グラフィック82の均一な照明がユーザに提供される。このようにして第2光源84が点灯し、第2グラフィック82が表示されるときには、第1グラフィック60が非表示又は隠される。
【0061】
ネガ又は反転像のエッチング領域76が存在しない場合、第2グラフィック82を表示するために、第2光透過基板70を通過する光の一部は、第1光透過基板50のエッチング領域58を照らし、また光の別の一部は、エッチング領域58を照らさずに第1光透過基板50を通過する。これにより、表示される光の強度のばらつきが、第1グラフィック60の形状でエッチング領域58により生じる。このようにして、第1グラフィック60は依然として、表示10の見者が部分的に見ることができる。
【0062】
第1及び第2光源62、84は、例えば両方が同じタイプの白色又は色付きLEDであるなど、同じスペクトル特性を有していても良い。2つの光源からの光量はもちろん、異なる光経路における異なる光損失、特に光経路における相対的な散乱及び伝透過の相対効率の違いを考慮して、異なっていても良い。また、第1及び第2光源62、84を、第1及び第2グラフィックが一方又は他方の色で表示されるように、異なる色にすることもできる。必要なことは、第1及び第2光透過基板50、70のエッチング領域58、76からの散乱が、第2光源84の光に対してマッチングし、よって、第2グラフィック82が表示されているときに、第1グラフィック60が隠されることである。
【0063】
本実施形態では、マスク層80は第2光透過層70の前面74にあるプリント領域80によって形成されるが、別の実施形態では、マスク層80は別個の層でも良い。マスク層80は、第2光源84と第1光透過基板50の後面56との間の任意の適切な位置に設けることができる。
【0064】
本実施形態では、第1光透過基板50の後面56と第2光透過基板70の前面74との間に最小ギャップ86が存在するように、第2光透過基板70は第1光透過基板50の表示領域52と平行であり、かつ離間している。好ましい実施形態では、このギャップ86は空隙86であるが、第2光透過基板70のエッチング領域76が、第1光透過基板50の表示領域52内の光の透過に影響しないようにするために必要である。空隙86が存在せず、第2光透過基板の前面74が表示領域52の後面56と接触している場合、エッチング領域76もまた、第1光透過基板50内を透過する光を第1の基板50の前面68の外へ向け、第1グラフィック60は見えなくなる。
【0065】
表示装置10のこの設計により2つのグラフィックが、前記ボタンなどの可動コントロール(可動制御部)の一部でも良く、自動車のダッシュボードなどの固定された表示パネルの一部でも良い、同じ表示領域52内に選択的に表示される。図5は、前述の実施形態におけるボタン12の前面18にある第1及び第2グラフィック60、82の相対的な位置を示す。この例では、第1及び第2グラフィック60、82は完全に重ね合わせて示されているが、本発明の別の実施形態では、両方のグラフィックが同時に表示される場合を可能にするよう、第1及び第2グラフィックの一部が重複していても、あるいは全く重複していなくても良いことは理解されよう。このような実施形態はすべて、2つのグラフィックが一度に1つのみ表示され、第1及び第2光透過基板の表面のエッチングが、第2グラフィックが表示されているときに隠れる限り、本発明の範囲内である。
【0066】
装置10の作動中、第1グラフィック60を表示したいときは、第1光源62を点灯し、第2光源84を消灯する。第2グラフィック82を表示する必要がある場合は、ボタン12の機能の変更に従って、第1光源62を消灯し、第2光源84を点灯する。このように、2つのグラフィック60、82のいずれかが、ボタン12の現在の機能に応じて点灯する。
【0067】
本発明の表示装置がボタン12のグラフィック又は記号60、82の表示に関して説明してきたが、表示装置10はその他の表示で使用しても良く、特に使用できる表示領域に制限がある場合に使用しても良いことは理解されよう。表示装置10は、警告ライトを表示するために、例えば、電話のハンドセット、家電の表示、又は車両内のダッシュボードにおいて使用することもできる。
【0068】
したがって、上述した本発明は、例えばボタンなどの単一の表示領域において2つ以上のグラフィックを表示する改良された手段を提供する。光学システムは、2つの異なる色の異なる画像の表示をカラーフィルタに依存せず、色を選択していないエッチング領域に依存しているため、本発明は色を2つの光源のスペクトル出力により決定されるような所望する任意の色で異なる像を表示できる。そして、グラフィックの色を、表示装置のユーザに役立つ情報を知らせるために変更できるように、色をコントロール可能に変更できる光源を使用できる。発光色を変更できる光源の例として、赤、緑、青のLEDが単一のユニットにパッケージされているLEDユニットが挙げられる。本発明はまた、ドライバーや乗車している人に情報を表示するために使用できるスペースが限られている、自動車環境で特に有用なコンパクトな表示装置を提供する。
【0069】
特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱することなく、上記部品の構造及び配置に対して、種々の変更、修正及び/又は追加を行うことができることは認識されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのグラフィックを表示するための表示装置であって、
前面と後面とを有する第1光透過基板を備え、前記第1光透過基板は、その後面に、表示すべき第1グラフィックに対応する少なくとも1つのエッチング領域を含み、
前記第1光透過基板の背後に前記第1光透過基板から離間して配置された第2光透過基板を備え、前記第2光透過基板は、前面と後面を有し、前記第2光透過基板は、その前面に、前記第1グラフィックのネガに対応する少なくとも1つのエッチング領域を含み、
前記第1光透過基板内に光を放射するよう配置された第1光源を備え、前記第1光透過基板は、前記第1光透過基板内で前記放射された光を前記少なくとも1つのエッチング領域に伝える光パイプとして働き、
前記第2光透過基板の背後に配置され、光を前記第1及び第2光透過基板を通して、表示の見者に向けて放射するよう配置された第2光源と、
少なくとも1つの不透明領域を有し、前記少なくとも1つの不透明領域が、表示すべき第2グラフィックに対応する少なくとも1つの光透過可能領域を構成するマスク層を備え、前記マスク層は、前記第2光源と前記第1光透過基板の前記後面との間に設けられ、
使用中に、第1光源が点灯しかつ第2光源が点灯していないときに、前記第1光透過基板内を伝わる光は、前記第1光透過基板の前記後面の前記エッチング領域に入射し、前記第1光透過基板の前記前面から外に向けられ、それによって前記第1グラフィックのみを表示の見者に表示し、前記第2光源が点灯しかつ前記第1光源が点灯していないときに、前記第2光源によって放射された光は、前記マスク層の不透明領域によって遮られ、前記マスク層の前記光透過領域を通過し、前記第1及び第2光透過基板を通過し、それによって前記第2グラフィックのみを表示の見者に表示し、前記通過光はまた、前記第1光透過基板の前記後面の前記エッチング領域か、前記第2光透過基板の前記前面の前記エッチング領域のいずれかを通り、前記第2グラフィックが表示されているときに第1グラフィックが隠される
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1光透過基板内を伝わる光は、前記第1光透過基板の前記後面の前記エッチング領域に入射し、前記第1光透過基板の前記前面の前記エッチング領域によって散乱され、それによって前記第1グラフィックのみを表示の見者に表示する
ことを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1光透過基板及び前記第2光透過基板は、前記第1及び第2光透過基板それぞれの前記前面と前記後面との間に実質的に同じ厚さを有する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1光透過基板と前記第2光透過基板との間は、空隙で間隔を隔てられている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1光透過基板及び前記第2光透過基板のエッチング領域は、波長選択的ではない
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記マスク層は、前記第2光透過基板の前記前面と前記第1光透過基板の前記後面との間に位置する
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの不透明領域は、前記第2光透過基板の前記前面のある領域上の層によって与えられる
ことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記マスク層は、不透明なプリント領域を有する
ことを特徴とする請求項7記載の表示装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの不透明領域は、黒色である
ことを特徴とする請求項1〜8の何れか一項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記マスク層は、前記第2光透過基板の前記前面の前記少なくとも1つのエッチング領域の、全部ではないが、一部分に重なっている
ことを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記第1光透過基板の前記エッチング領域及び前記第2光透過基板の前記エッチング領域は、粗面領域である
ことを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の表示装置。
【請求項12】
前記第1光透過基板と前記第2光透過基板とは、平行である
ことを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の表示装置。
【請求項13】
前記第1光透過基板は平面であり、前記第1光源から前記第1光透過基板に光を伝えるために前記第1光透過基板に垂直に延びる光パイプに接続されている
ことを特徴とする請求項1〜12の何れか一項に記載の表示装置。
【請求項14】
前記表示装置は、前記第1光透過基板の前に、透明又は半透明のカバーを更に備える
ことを特徴とする請求項1〜13の何れか一項に記載の表示装置。
【請求項15】
表示装置を含む押しボタンであって、前記表示装置は請求項1〜14の何れか一項に記載の表示装置であり、前記第1及び第2グラフィックは、前記押しボタンの2つの異なる機能に対応する
ことを特徴とする押しボタン。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−163961(P2012−163961A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−25342(P2012−25342)
【出願日】平成24年2月8日(2012.2.8)
【出願人】(505450755)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド (140)
【Fターム(参考)】