説明

2つの金(I)原子が該2つの金(I)原子を接続している共有リンクにおいてそれぞれ炭素原子に共有結合された化合物の、癌の治療のための使用

本発明は、癌、特に、プラチナを主成分とする化学療法剤に耐性である癌の治療に関するものである。2つの金(I)原子が該2つの金(I)原子を接続している共有リンクにおいてそれぞれ炭素原子に共有結合された有効量の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む癌の治療のための医薬品組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌の治療に関するものであり、特に、これに限らないが、プラチナを主成分とする化学療法剤に耐性である癌の治療に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラチナ薬(例えばシスプラチナム及びカルボプラチナム、それぞれシスプラチン及びカルボプラチンとしても知られている)は、広く用いられている臨床的に活性な抗腫瘍剤である。それらの活性は、DNA複製又は転写を阻害するようにDNAを架橋させて細胞増殖を妨害すると共に腫瘍の成長を遅らせる能力に基づいている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プラチナ薬の活性に対する1つの制限は耐性の発達であり、結果として抗腫瘍活性の減少又は喪失になる。プラチナ剤に対する耐性を起こす生化学的及び薬理学的変化は複雑であり、増加したグルタチオン、変更されたDNA修復プロセス、及びメタロチオネインを含め、多数説明されてきた(非特許文献1)。関係付けられてきた1つのDNA修復プロセスは、DNAミスマッチ修復の喪失又は減少である(非特許文献2)。この耐性を克服又は回避することができる新たな療法の発達は、卵巣及び肺癌を含む多くのヒト癌の治療に意味を有するであろう。
【0004】
癌化学療法における金を主成分とする化合物の使用は、一連の理論的根拠、即ち、平面正方形型Pt(II)及びAu(III)間の類似、Au(I)の免疫調節効果との類似、及びAu(I)及びAu(III)の周知の抗腫瘍剤への錯化に基づいてきた(非特許文献3)。Au(I)を主成分とする化合物の癌治療における使用は、アキラル又はキラルである、リンや硫黄を主成分とする配位子の集合を含む化合物に、又は生物学的に関連する配位子に焦点を合わせてきた(非特許文献4)。現在まで、有機金属金含有錯体の使用は、シスプラチン及びカルボプラチンのようなPt(II)を主成分とする周知の系に対する構造的及び電子的類似点のため、Au(III)系の使用に集中してきた(非特許文献4及び非特許文献5)。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、2つの金(I)原子が該2つの金(I)原子を接続している共有リンクにおいてそれぞれ炭素原子に共有結合された有効量の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む癌の治療のための医薬品組成物が提供される。
【0006】
本発明の第2の態様は、2つの金(I)原子が該2つの金(I)原子を接続している共有リンクにおいてそれぞれ炭素原子に共有結合された、化学療法剤としての使用のための化合物を提供する。
【0007】
本発明の第3の態様は、2つの金(I)原子が該2つの金(I)原子を接続している共有リンクにおいてそれぞれ炭素原子に共有結合された化合物の、癌の治療のための薬剤の調製における使用を提供する。
【0008】
本発明の第4の態様は、ヒト又は動物の患者の癌を治療する方法であって、2つの金(I)原子が該2つの金(I)原子を接続している共有リンクにおいてそれぞれ炭素原子に共有結合された治療上有効量の化合物を前記患者に投与することを含む方法を提供する。
【0009】
本発明は、2つの金(I)原子が該2つの金(I)原子を接続している共有リンクにおいてそれぞれ炭素原子に共有結合された化合物が細胞毒性研究において予想外に高い効力を見せるという観察及びこのような化合物を含む医薬品組成物は癌の治療において有効性を示すはずであるということを示唆するDNA架橋アッセイに基づいている。如何なる特定の理論にも限定されることを望まないが、高い細胞毒性及び架橋挙動は、発明の化合物における2つの金(I)原子の提供でDNA架橋が容易になっていることに関連する可能性があるということが提案される。更に、少なくとも部分的には、金(I)と炭素との電気陰性度における類似性の結果として生じている金(I)−炭素共有結合の比較的高い安定性によってこの効果が高められている可能性があるということが仮定される。しかしながら、この説明は、決して本発明の範囲を限定するものとしてとられるべきではない。
【0010】
本発明の一部を形成している化合物は、プラチナ薬に感受性がある細胞株及びプラチナ薬に耐性である細胞株の全体にプラチナ薬より非常に効力があるということが観察された。従って、本発明は、プラチナ薬と比較して癌治療において大幅に改善された有効性を見せそうな化学療法剤を提供する。
【0011】
更に又、発明の化合物は、シスプラチナム又はカルボプラチナム耐性である細胞株において特に高い効力を示す。従って、本発明は、プラチナ薬による治療に最早反応しない癌を治療することにおいて特に効果的であるべき化学療法剤を提供する。
【0012】
従って、本発明は、特に腫瘍細胞がプラチナ薬に対する耐性を発達させた場合における癌の治療の重要な前進を意味する。
【0013】
好ましくは、本発明において使用される化学療法剤(即ち、2つの金(I)原子がそれぞれ炭素原子に共有結合された化合物)は、第1炭素原子に共有結合された第1金(I)原子と、第2炭素原子に共有結合された第2金(I)原子とを有する。好ましくは、前記化合物は共有リンクの一部として置換又は非置換の芳香族基を含む。
【0014】
第1炭素原子は、置換又は非置換の芳香族基の一部であることが好ましい。即ち、好ましくは、前記第1炭素原子は、置換又は非置換の芳香族基の環炭素原子形成部分である。前記置換又は非置換の芳香族基は、置換又は非置換のフェニル基であってもよい。
【0015】
第2炭素原子は、置換又は非置換のアルキル、アルケン、アルキン、アリール又は芳香族基の一部であってもよい。好ましくは、一部が第2炭素原子である前記芳香族基は、置換又は非置換のフェニル基である。
【0016】
好ましい実施形態において、発明の化合物は、式1によって表される部分を含む。
(式1)

式中、Auは第1金(I)原子、Auは第2金(I)原子、Cは第1炭素原子、Cは第2炭素原子、Zは連結基であり、nは0又は1、即ち、第1及び第2炭素原子間に連結基が提供されていてもされていなくてもよい。
【0017】
本発明の更なる好ましい実施形態において、前記化学療法剤は、前記金(I)原子のそれぞれに結合された配位子を含み、該配位子はそれぞれ、PR、P(OR)、CNR、NCR、PR(CHOR)3−n、N12、[N12−N−CH]、PN12、及びP[N12−N−CH]からなる群から選択され、式中、Rは置換又は非置換の炭化水素部分であり、Rは、H、Me、SO、PO、アルキル及びアリールからなる群から選択され、任意の1つの配位子における各Rは同じ又は異なるものである。好ましくは、Rは、置換又は非置換のアルキル、アルケン、アルキン、アリール又は芳香族基であり、任意の1つの配位子における各Rは同じ又は異なるものである。又、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びフェニル基からなる群から選択されてもよい。本発明の特に好ましい実施形態において、配位子はPPhである。
【0018】
本発明の医薬品組成物の「有効量」とは、患者に投与されたとき、治療されるべき特定の疾患又は状態の症状を改善する量のことである。本発明の組成物の有効量は、ある量の組成物を患者に投与し、結果を観察することによって当業者により決定することができる。加えて、当業者は、特定の疾患又は状態を有する患者を同定することに精通していて、これらの疾患又は状態に苦しむ患者を容易に同定することできる。
【0019】
発明の組成物は、化学療法剤に従来から使用されているような任意の経路によって投与することができる。
【0020】
本発明の組成物は、単独に、又は、賦形剤、希釈液、及び担体等、当該技術においてよく知られた他の成分を含む組成物の一部として患者に投与することができる。前記組成物は、経口で、直腸に、非経口で(筋内又は皮下の静脈に)、大槽内に、膣内に、腹膜内に(これは卵巣癌を治療することに特に適しているかもしれない)、クモ膜下腔内に、膀胱内に、局所的に(粉末、軟膏又は滴剤)、或いは舌下又は鼻内噴霧として、ヒト及び動物に投与することができる。
【0021】
注射剤に適している組成物は、生理的に許容される滅菌水溶又は非水溶液、分散系、懸濁液又は乳濁液、及び無菌の注射可能な溶液又は分散系への再構築のための無菌粉末を含むことができる。好適な水溶性及び非水溶性担体、希釈液、溶媒又は媒体の例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、これらの適切な混合物、植物油(オリーブ油のような)及びオレイン酸エチルのような注射可能有機エステルが挙げられる。適当な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングを用いて、分散系の場合に必要な粒子サイズの維持によって、及び界面活性剤を用いて維持することができる。
【0022】
これらの組成物は、保存、湿潤、乳化及び分配剤のようなアジュバントを含むこともできる。微生物の活動の防止は、様々な抗菌及び抗黴剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等によって確実にすることができる。等張剤、例えば糖、塩化ナトリウム等を含むことも望ましいかもしれない。注射可能な薬剤形態の長期にわたる吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを用いてもたらすことができる。
【0023】
経口投与用の固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、及び顆粒が挙げられる。このような固体剤形において、活性薬剤は、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムのような少なくとも1つの慣習的な不活性賦形剤(又は担体)、又は(a)例えば、澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸のような充填剤又は増量剤、(b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート類、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアカシアのような結合剤、(c)例えば、グリセロールのような湿潤剤、(d)例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカ澱粉、アルギン酸、ある種の複合ケイ酸塩及び炭酸ナトリウムのような崩壊剤、(e)例えば、パラフィンのような溶解遅延剤、(f)例えば、第四級アンモニウム複合体のような吸収促進剤、(g)例えば、アセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセロールのような湿潤剤、(h)例えば、カオリン及びベントナイトのような吸着剤、及び(i)例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムのような潤滑剤、又はこれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤及び丸剤の場合、剤形は緩衝剤を含んでもよい。
【0024】
高分子量ポリエチレングリコール等と同様にラクトース又は乳糖のような賦形剤を用いている軟質及び硬質充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として、同様のタイプの固体組成物を使用してもよい。
【0025】
錠剤、カプセル、丸剤、及び顆粒のような固体剤形は、腸溶コーティング等、当該技術においてよく知られているコーティング及び殻で調製することができる。それらは、鎮定剤を含んでもよく、腸管のある部分に遅延した方法で活性薬剤を放出するような組成物でもあり得る。用いることができる包埋組成物の例は、高分子物質及びワックスである。活性薬剤は、適当であるならば、上述の賦形剤の1つ以上と共にマイクロカプセルに入れられた形にもなり得る。
【0026】
経口投与用の液体剤形としては、薬学的に許容される乳濁液、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが挙げられる。活性薬剤に加えて、液体剤形は、水又はその他溶媒等、当該技術において一般に用いられる不活性希釈剤、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1.3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、特に、綿実油、落花生油、穀物胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル又はこれらの物質の混合物等を含有することができる。
【0027】
このような不活性希釈剤の他、前記組成物は、湿潤剤、乳化及び懸濁化剤、甘味、香料添加及び芳香剤等のアジュバントを含むこともできる。
【0028】
懸濁液は、活性薬剤に加え、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天及びトラガカント、又はこれらの物質の混合物等の懸濁化剤を含有することができる。
【0029】
好ましくは、直腸投与用の組成物は、カカオ脂、ポリエチレングリコール又は座薬ワックス等の適切な非刺激性の賦形剤又は担体と本発明の組成物とを混合することによって調製することができる坐薬であり、これらは、常温では固体であるが体温では液体であるので、直腸又は膣腔で溶解して有効分を放出する。
【0030】
本発明の組成物の局所投与用の剤形としては、軟膏、粉末、スプレー及び吸入薬が挙げられる。活性薬剤は、生理的に許容される担体及び必要であれば任意の防腐剤、緩衝剤、又は推進薬と無菌状態で混合される。眼科用製剤、眼軟膏、粉末、及び溶液も、本発明の範囲内であるとして考えられる。
【0031】
本発明の活性化合物は、約0.1〜約1,000mg/日の範囲の投与量レベルで患者に投与することができる。約70キログラムの体重を有する通常のヒト成人では、約0.01〜約7000mg/kg体重/日の範囲の投与量で充分である。しかしながら、用いる具体的な投与量は変更することができる。例えば、投与量は、患者に必要なもの、治療している状態の重大度、及び用いている組成物の薬理活性を含む多くの要因によって決めることができる。特定の患者のための最適投与量の決定は当業者によく知られている。静脈内投与の場合、前記化学療法剤は、各治療の間におよそ4週までの間隔で、12回まで患者に与えてもよい。この場合、静脈内投与は、比較的短い期間、例えば数分にわたる静脈への注入であっても、約30分から数時間のようなより長い期間にわたる静脈内注入による点滴を通じてでもよい。或いは、中心線を介して注入ポンプを用い、例えば数日から多数の週又は月までのより長い期間にわたる持続注入(持続静注又は移動注入としても知られている)によって前記薬剤を静脈内に投与してもよい。
【0032】
加えて、本発明の組成物は、水、エタノール等の薬学的に許容される溶媒と溶媒和同様非溶媒和の形で存在することができる。一般に、溶媒和の形は、本発明のために非溶媒和の形に等しいとみなされる。
【0033】
本発明の組成物は、追加の治療薬と共に投与することができる。この療法は、化学療法剤を含むことができるが、これに限定されるものではない。好ましくは、本発明の組成物及び共に投与された治療剤は、より持続した効果を生むために互いに連動して作用する。これらの2つの治療剤は、1つの薬学的に許容される担体において、又は別々に投与されることもできる。
【0034】
前記化学療法剤は、手術又は放射線療法に対するアジュバントとして患者に投与してもよい。
【0035】
本発明の一部を形成している好ましい化合物の第1類は、式2によって表される。
(式2)

式中、L及びL´は配位子、R´及びR´´は置換又は非置換の二価の炭化水素部分、aは0〜3、bは0〜3である。金部分の芳香環上の置換パターンは、オルト、メタ又はパラであってもよい。
【0036】
R´´´は、H、SO、PO2−、COH、OH、(CH)CH、O(CH)CH、S(CH)CH、アミノ酸基、1〜6の炭素原子を含む置換又は非置換の直鎖又は分枝アルキル基又は部分(例えば、C−Cアルキル基又は部分、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル又はt−ブチル)であって、置換の場合、1又は2の置換基(例えば、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、アルコキシ、ヒドロキシル、アリール、ヘテロアリール、Rが水素又はメチル又はエチルであるエステルCO、及びRが水素又はメチル又はエチルであるアミドC(O)NHR)を持てるもの、アミノ基NR´´´´C(O)(R´´´´´)であってもよく、R´´´´及びR´´´´´は同じでも異なっていてもよく、R´´´´及びR´´´´´は、H、アルキル(例えばnが0〜6である(CH)CH)、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルからなる群から個々に選択され、(選択的にヘテロ原子を含む)環、置換又は非置換のアリール(例えば、フェニル又はナフチル等、1、2、3又は4の置換基(例えば、シアノ、ハロゲン、ニトロ、トリフロロメチル、アルキル、アルキルチオ、アルコキシ及びヒドロキシル)を選択的に持っているC−C10アリール基)、又は、ヘテロアリール基(例えば、5又は6員環のような、O、S及びNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する5から10員芳香環を有する(例えば、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリジニル、ピロリル及びピラゾリル基))又は、シアノ、ニトロ、ハロゲン、アルキル、アルキルチオ、アルコキシ及び水酸基と置換することができる非アリール複素環基(例えば、テトラヒドロフラニル又はピロリジニル)のような置換又は非置換の複素環基を共に形成してもよい。
【0037】
この類の化合物の好ましい例は、次からなる群から選択される。

【0038】
本発明の一部を形成している化合物の第2類は、式3によって表される。
(式3)

式中、L及びL´は配位子、R´及びR´´は置換又は非置換の二価の炭化水素部分、aは0〜3、bは0〜3である。金部分の芳香環上の置換パターンは、オルト、メタ又はパラであってもよい。
【0039】
R´´´は、H、SO、PO2−、COH、OH、(CH)CH、O(CH)CH、S(CH)CH、アミノ酸基、1〜6の炭素原子を含む置換又は非置換の直鎖又は分枝アルキル基又は部分(例えば、C−Cアルキル基又は部分、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル又はt−ブチル)であって、置換の場合、1又は2の置換基(例えば、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、アルコキシ、ヒドロキシル、アリール、ヘテロアリール、Rが水素又はメチル又はエチルであるエステルCO、及びRが水素又はメチル又はエチルであるアミドC(O)NHR)を持てるもの、アミノ基NR´´´´C(O)(R´´´´´)であってもよく、R´´´´及びR´´´´´は同じでも異なっていてもよく、R´´´´及びR´´´´´は、H、アルキル(例えばnが0〜6である(CH)CH)、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルからなる群から個々に選択され、(選択的にヘテロ原子を含む)環、置換又は非置換のアリール(例えば、フェニル又はナフチル等、1、2、3又は4の置換基(例えば、シアノ、ハロゲン、ニトロ、トリフロロメチル、アルキル、アルキルチオ、アルコキシ及びヒドロキシル)を選択的に持っているC−C10アリール基)、又は、ヘテロアリール基(例えば、5又は6員環のような、O、S及びNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する5から10員芳香環を有する(例えば、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリジニル、ピロリル及びピラゾリル基))又は、シアノ、ニトロ、ハロゲン、アルキル、アルキルチオ、アルコキシ及び水酸基と置換することができる非アリール複素環基(例えば、テトラヒドロフラニル又はピロリジニル)のような置換又は非置換の複素環基を共に形成してもよい。
【0040】
この類の化合物の好ましい例は、次からなる群から選択される。

【0041】
本発明の一部を形成している化合物の第3類は、式4によって表される。
(式4)

式中、L及びL´は配位子、R´及びR´´は置換又は非置換の二価の炭化水素部分、aは0〜3、bは0〜3、Xは連結基である。Xは、O、S、PR又はNRからなる群から選択することができ、Rは、置換又は非置換の炭化水素部分である。金部分の芳香環上の置換パターンは、オルト、メタ又はパラであってもよい。
【0042】
R´´´は、H、SO、PO2−、COH、OH、(CH)CH、O(CH)CH、S(CH)CH、アミノ酸基、1〜6の炭素原子を含む置換又は非置換の直鎖又は分枝アルキル基又は部分(例えば、C−Cアルキル基又は部分、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル又はt−ブチル)であって、置換の場合、1又は2の置換基(例えば、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、アルコキシ、ヒドロキシル、アリール、ヘテロアリール、Rが水素又はメチル又はエチルであるエステルCO、及びRが水素又はメチル又はエチルであるアミドC(O)NHR)を持てるもの、アミノ基NR´´´´C(O)(R´´´´´)であってもよく、R´´´´及びR´´´´´は同じでも異なっていてもよく、R´´´´及びR´´´´´は、H、アルキル(例えばnが0〜6である(CH)CH)、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルからなる群から個々に選択され、(選択的にヘテロ原子を含む)環、置換又は非置換のアリール(例えば、フェニル又はナフチル等、1、2、3又は4の置換基(例えば、シアノ、ハロゲン、ニトロ、トリフロロメチル、アルキル、アルキルチオ、アルコキシ及びヒドロキシル)を選択的に持っているC−C10アリール基)、又は、ヘテロアリール基(例えば、5又は6員環のような、O、S及びNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する5から10員芳香環を有する(例えば、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリジニル、ピロリル及びピラゾリル基))又は、シアノ、ニトロ、ハロゲン、アルキル、アルキルチオ、アルコキシ及び水酸基と置換することができる非アリール複素環基(例えば、テトラヒドロフラニル又はピロリジニル)のような置換又は非置換の複素環基を共に形成してもよい。
【0043】
この類の化合物の好ましい例は、次からなる群から選択される。

【0044】
本発明の一部を形成している化合物の第4類は、式5によって表される。
(式5)

式中、L及びL´は配位子、R´及びR´´は置換又は非置換の二価の炭化水素部分、aは0〜3、bは0〜3である。金部分の芳香環上の置換パターンは、オルト、メタ又はパラであってもよい。
【0045】
R´´´は、H、SO、PO2−、COH、OH、(CH)CH、O(CH)CH、S(CH)CH、アミノ酸基、1〜6の炭素原子を含む置換又は非置換の直鎖又は分枝アルキル基又は部分(例えば、C−Cアルキル基又は部分、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル又はt−ブチル)であって、置換の場合、1又は2の置換基(例えば、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、アルコキシ、ヒドロキシル、アリール、ヘテロアリール、Rが水素又はメチル又はエチルであるエステルCO、及びRが水素又はメチル又はエチルであるアミドC(O)NHR)を持てるもの、アミノ基NR´´´´C(O)(R´´´´´)であってもよく、R´´´´及びR´´´´´は同じでも異なっていてもよく、R´´´´及びR´´´´´は、H、アルキル(例えばnが0〜6である(CH)CH)、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルからなる群から個々に選択され、(選択的にヘテロ原子を含む)環、置換又は非置換のアリール(例えば、フェニル又はナフチル等、1、2、3又は4の置換基(例えば、シアノ、ハロゲン、ニトロ、トリフロロメチル、アルキル、アルキルチオ、アルコキシ及びヒドロキシル)を選択的に持っているC−C10アリール基)、又は、ヘテロアリール基(例えば、5又は6員環のような、O、S及びNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する5から10員芳香環を有する(例えば、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリジニル、ピロリル及びピラゾリル基))又は、シアノ、ニトロ、ハロゲン、アルキル、アルキルチオ、アルコキシ及び水酸基と置換することができる非アリール複素環基(例えば、テトラヒドロフラニル又はピロリジニル)のような置換又は非置換の複素環基を共に形成してもよい。
【0046】
この類の化合物の好ましい例は、次からなる群から選択される。

【0047】
本発明の一部を形成している化合物の第5類は、式6によって表される。
(式6)

式中、Yは、(R´)AuL´及び

からなる群から選択され、
式中、L及びL´は配位子、R´及びR´´は置換又は非置換の二価の炭化水素部分、aは0〜3、bは0〜3である。金部分の芳香環上の置換パターンは、オルト、メタ又はパラであってもよい。
【0048】
R´´´は、H、SO、PO2−、COH、OH、(CH)CH、O(CH)CH、S(CH)CH、アミノ酸基、1〜6の炭素原子を含む置換又は非置換の直鎖又は分枝アルキル基又は部分(例えば、C−Cアルキル基又は部分、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、ブチル、i−ブチル又はt−ブチル)であって、置換の場合、1又は2の置換基(例えば、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、アルコキシ、ヒドロキシル、アリール、ヘテロアリール、Rが水素又はメチル又はエチルであるエステルCO、及びRが水素又はメチル又はエチルであるアミドC(O)NHR)を持てるもの、アミノ基NR´´´´C(O)(R´´´´´)であってもよく、R´´´´及びR´´´´´は同じでも異なっていてもよく、R´´´´及びR´´´´´は、H、アルキル(例えばnが0〜6である(CH)CH)、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルからなる群から個々に選択され、(選択的にヘテロ原子を含む)環、置換又は非置換のアリール(例えば、フェニル又はナフチル等、1、2、3又は4の置換基(例えば、シアノ、ハロゲン、ニトロ、トリフロロメチル、アルキル、アルキルチオ、アルコキシ及びヒドロキシル)を選択的に持っているC−C10アリール基)、又は、ヘテロアリール基(例えば、5又は6員環のような、O、S及びNから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有する5から10員芳香環を有する(例えば、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリジニル、ピロリル及びピラゾリル基))又は、シアノ、ニトロ、ハロゲン、アルキル、アルキルチオ、アルコキシ及び水酸基と置換することができる非アリール複素環基(例えば、テトラヒドロフラニル又はピロリジニル)のような置換又は非置換の複素環基を共に形成してもよい。
【0049】
本発明の好ましい実施形態において、L及びL´は、同じである。更に又、好ましくは、R´及びR´´は同じである。
【0050】
この類の化合物の好ましい例は、次からなる群から選択される。

【0051】
式2〜6において、L及びL´は同じでも異なっていてもよい。L及び/又はL´は、PR、P(OR)、CNR、NCR、PR(CHOR)3−n、N12(ヘキサメチレンテトラミン)、[N12−N−CH]、PN12、及びP[N12−N−CH]からなる群から選択することができ、Rは、任意の望ましい置換又は非置換の炭化水素部分、例えば、置換又は非置換のアルキル、アルケン、アルキン、アリール又は芳香族基である。このように、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びフェニル基からなる群から選択されてもよい。PRにおける各R基がフェニルであること、及び配位子がPPhであることが特に好ましい。又、R´及びR´´はそれぞれ、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン及びフェニレン基からなる群から独立に選択されてもよい。Rは、H、SO、PO、アルキル(特にメチル)及びアリールからなる群から選択され、任意の1つの配位子における各Rは同じでも異なっていてもよい。加えて、L及び/又はL´は、化合物の溶解度を制御するように選択されてもよい。好適な配位子には、グリコール、ポリエーテル、クラウンエーテル及び糖が含まれる。複数のホスフィン配位子を含有している化合物のときは、該複数のホスフィン配位子の2以上が、PEGリンカー、クラウンエーテル等を通して連結されてもよい。
【0052】
活性金(I)含有化合物に対するプロドラッグとして機能する化合物を調製することができ、それをある形態で投与すれば、生体内で活性金(I)含有形態に変換されるということが想定される。従って、本発明の更なる態様は、金(I)原子の少なくとも1つが、生体内で金(I)原子に還元可能な金(III)原子によって置換されている、活性金(I)含有化合物に対するプロドラッグに関するものである。
【0053】
本発明の第5の態様は、金(III)原子である第1金原子と、金(I)原子又は金(III)原子の何れかである第2金原子とを有し、前記第1及び第2金原子がそれぞれ、該第1及び第2金原子を接続している共有リンクにおいて炭素原子に共有結合され、金(III)原子が生体内で金(I)原子に還元可能である有効量の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む癌の治療のための医薬品組成物を提供する。
【0054】
本発明の第6の態様は、金(III)原子である第1金原子と、金(I)原子又は金(III)原子の何れかである第2金原子とを有し、前記第1及び第2金原子がそれぞれ、該第1及び第2金原子を接続している共有リンクにおいて炭素原子に共有結合され、金(III)原子が生体内で金(I)原子に還元可能である、化学療法剤としての使用のための化合物を提供する。
【0055】
本発明の第7の態様は、金(III)原子である第1金原子と、金(I)原子又は金(III)原子の何れかである第2金原子とを有し、前記第1及び第2金原子がそれぞれ、該第1及び第2金原子を接続している共有リンクにおいて炭素原子に共有結合され、金(III)原子が生体内で金(I)原子に還元可能である化合物の、癌の治療のための薬剤の調製における使用を提供する。
【0056】
本発明の第8の態様は、ヒト又は動物の患者の癌を治療する方法であって、金(III)原子である第1金原子と、金(I)原子又は金(III)原子の何れかである第2金原子とを有し、前記第1及び第2金原子がそれぞれ、該第1及び第2金原子を接続している共有リンクにおいて炭素原子に共有結合され、金(III)原子が生体内で金(I)原子に還元可能である治療上有効量の化合物を前記患者に投与することを含む方法を提供する。
好ましくは、前記第2金原子は金(III)原子である。
【0057】
本発明の第5、第6、第7及び第8の態様の一部を形成している化合物に存在する各金(III)原子に適当な数の配位子が提供されるべきであるということは言うまでもない。従って、金(I)原子を金(III)原子に置換し、活性金(I)含有化合物に対するプロドラッグを提供する場合、該金(I)原子に結合されていた1つのL又はL´基は、3つのL又はL´基と置換されなければならない。化合物全体の電荷は、配位子の適切な選択によって予め選択することができる。例えば、中性の金(III)含有化合物を提供するためには、それぞれが−1の電荷を持つ3つの陰イオン配位子を選択することができる。適切な配位子、例えばポルフィリン又はクラウンエーテルを金(III)含有化合物に使用して化合物の溶解度を操作することができる。
【0058】
以下の非限定的実施例及び添付図面を参照して本発明を説明する。
【実施例】
【0059】
臨床的に有用な薬剤シスプラチナム及びカルボプラチナムに対して感受性がある或いは獲得耐性を有すると知られている一連の対細胞株を用い、化合物A〜F(下記)の化学療法の活性と、シスプラチナム及びカルボプラチナムのそれとの比較を行なった。化合物Aの合成の詳細については、付録Aを参照されたい。

【0060】
シスプラチナム、カルボプラチナム、及び化合物A〜Fに対する細胞株の感受性は、MTT方法の変更バージョンである生育阻害アッセイ(付録Bに説明したMTT方法の変更バージョン)を用いて決定した。
【0061】
以下は、生育阻害アッセイで用いた11の異なる細胞株の簡単な説明である。
【0062】
A2780細胞株(図1〜9の1)は、シスプラチナム及びカルボプラチナムに感受性があるヒト卵巣細胞株である。A2780cis(2)及びA2780carb(3)細胞株は、それぞれシスプラチナム及びカルボプラチナム耐性であるA2780細胞株の変更バージョンである。
【0063】
細胞株mcp1(4)及びmcp8(5)は、ミスマッチ修復欠損があるプラチナ耐性A2780サブラインである。
【0064】
cor123(6)は、プラチナ薬に感受性がある非小細胞肺癌細胞株である。cor123/cpr(7)細胞株は、シスプラチナム及びカルボプラチナムに耐性となるように変更されたcor123細胞株の変更バージョンである。
【0065】
ccu24(8)細胞株は、クリスティ病院で腫瘍生検から発達させた上皮性卵巣癌細胞株であり、ccu24/cpr(9)細胞株は、シスプラチナム及びカルボプラチナム耐性であるこの細胞株の変更バージョンである。
【0066】
L1210(10)はネズミ白血病細胞株であり、L1210/M1140(11)はそのプラチナ薬剤耐性サブラインである。
【0067】
表1は、6つの発明の化合物(A〜F)及びシスプラチナムのそれぞれの活性を調査するために実施した第1の一連のアッセイの結果を示す。表2は、化合物A〜F及びカルボプラチナムに関して実施した更なる一連のアッセイの結果を示す。
【表1】

表1:テストされた化合物のIC50(nM)。*比較データ。
【表2】

表2:テストされた化合物のIC50値(nM)。*比較データ。
【0068】
表2に示した結果は、表1に示したデータの再現性を示す。
【0069】
11の細胞株に対する化合物A〜Fの効果に関するデータは、以下の通りに要約することができる。
1)化合物A〜Fはプラチナ薬よりかなり効力がある(nMをμMと比較して)。
2)発明の化合物A〜Fは、親細胞株においてよりプラチナ耐性細胞株において活性である。化合物Aを例にとる。
a)A2780cis細胞株(IC50 0.2nM)は、親の(感受性がある)A2780−Sライン(IC50 13.4nM)より60倍以上化合物Aに感受性がある。
b)A2780carb細胞株(IC50 0.6nM)は、親のA2780−Sライン(IC50 13.4nM)より20倍以上化合物Aに感受性がある。
3)1より多くのAu(I)原子を含有している化合物は、一金化合物より効力がある。
【0070】
この付帯感受性は、マウスとヒトの両方の腫瘍細胞株に見られる。
【0071】
この感受性の増加の根底にある機構を調査するため、予備研究を実施している。コメットアッセイ(付録Cに説明している)を用いてこれらの研究を実施し、DNAに対する損傷を測定した。結果を、図1(シスプラチナム)、2(カルボプラチナム)、3〜8(化合物A〜F)及び9(フェニル金トリフェニルホスフィン、PAuP)に示す。
【0072】
親の(プラチナ感受性がある)A2780、L1210及びcor123細胞株にはシスプラチナム及びカルボプラチナムによって広範囲なDNA架橋が生じるが、プラチナ耐性細胞株に見られる架橋はそれより非常に少ないということが図1及び2から分かる。これは、DNAがプラチナ薬の標的であり、耐性細胞におけるDNA損傷の減少により耐性が生じるという仮説と一致している。これは、DNA修復、薬物の失活の増加、又は薬物取り込みの減少を含む多くの機構によって生じ得る。
【0073】
対照的に、親の(プラチナ感受性がある)細胞株においてよりプラチナ耐性細胞株においてより多くのDNA損傷が化合物A〜Fによって生じるということが図3〜8から分かる。
【0074】
図9は比較データを説明しており、分子中に1より多くの金原子を有することの重要性を示している。PAuPで見られる架橋のレベルは、二金化合物と比較して低い。又、一金化合物は細胞毒性がずっと少ない(ID50>10000nm、表1)。
【0075】
表3は、コメットアッセイにおいて得られたDNA架橋結果を用いた以下の計算の結果を示す。
【0076】
親の(感受性がある)細胞株におけるDNA架橋/プラチナ薬剤耐性細胞株におけるDNA架橋
【表3】

表3:DNA架橋(コメット)実験の要約。Au(III)は[Au(η2−CCH=NC)Cl]、Au(I)は[Au(C)(PPh)]である。*比較データ。
【0077】
シスプラチンの結果は、プラチナ耐性細胞株と比較して、親細胞株における活性の増加(即ち、均一より大きい比率)という期待された傾向を示している。発明の化合物(A〜F)はそれぞれ、耐性細胞株の全てについて1.00を著しく下回る比率を有しているので、親の(プラチナ感受性がある)細胞株においてよりプラチナ耐性細胞株において多くのDNA架橋が化合物A〜Fによって生じるという上記観察が確認される。
【0078】
従って、化合物A〜Fは、生体外でプラチナ耐性細胞株における細胞殺害の強化を示しているが、これはプラチナ耐性細胞株におけるDNA損傷の増加のためのようである。これの根底にある正確な機構は、まだ完全には解明されていない。しかしながら、プラチナ耐性ミスマッチ修復欠損mcp1(非特許文献6)及びmcp8細胞株において活性が見られる。従って、発明の化合物は、ミスマッチ修復欠損がある腫瘍において強化された活性を示すようであるということが提案される。
【0079】
化合物A〜Fは、単純金属化合物であって、プラチナを含有しない。卵巣及び肺を含む多くの癌において治療の失敗の原因としてプラチナ薬に対する耐性が挙げられているので、プラチナ耐性細胞を選択的に殺す発明の化合物の能力は重要な臨床的意味を有すると言える。
【0080】
付録A
化合物の合成
全ての溶媒は、使用前にN雰囲気下で乾燥及び精製した。全ての化学物質は商業的な供給源から購入したが、[ClAu(SC)]は文献の方法(非特許文献14)によって調製した。
【0081】
1,4−ビス(トリフェニルホスフィノ金(I))ベンゼン(A)の調製
−78°でエーテル(20mL)に溶解させた1,4−ジブロモベンゼン(0.074g、0.31mmol)に第三ブチルリチウム(0.75mL、1.25mmol)を加え、反応混合物を30分間攪拌した。チオフェン(5mL)及び[ClAu(SC)](0.200g、0.62mmol)をこの混合物に加え、反応を1.5時間攪拌した。そしてトリフェニルホスフィン(0.083g、0.32mmol)を加え、その溶液を更に1.5時間攪拌した後、室温に温め、更に30分間攪拌した。そして減圧下でジエチルエーテルを除去し、粗製物質をジクロロメタンに抽出して濾過し、リチウム塩を除去した。そして熱いエーテルから化合物を再結晶させた。収量0.286g、93%、mp139°decomp.、NMR: H:7.70〜7.49ppm、aryl−H; 31P{H}:44.8ppm; 13C{H}:168.0、139.7、133.3、130.2、128.1、131.0ppm;微量分析:Found C=50.2;H=3.9;P=6.0;Calc:C=50.7;H=3.4;P=6.2。
【0082】
同様の方法で化合物[1,4−ビス(LAu)C]を調製することができ、Lは任意の所望の配位子、例えば、CNBu、PEt、P(OMe)又はNCMeである。
【0083】
この実験手順は、他の多芳香族系に拡張することができる。その例は、4,4´−ビス(トリフェニルホスフィノ金(I))ビフェニルである。
【0084】
4,4´−ビス(トリフェニルホスフィノ金(I))ビフェニルの調製
方法1−[ClAu(SC)]を用いて
−78°でエーテル(20mL)に溶解させた4,4´−ジブロモビフェニル(0.096g、0.31mmol)に第三ブチルリチウム(0.75mL、1.25mmol)を加え、反応混合物を30分間攪拌した。チオフェン(5mL)及び[ClAu(SC)](0.200g、0.62mmol)をこの混合物に加え、反応を1.5時間攪拌した。そしてトリフェニルホスフィン(0.083g、0.62mmol)を加え、その溶液を更に1.5時間攪拌した後、室温に温め、更に30分間攪拌した。そして減圧下でジエチルエーテルを除去し、粗製物質をジクロロメタンに抽出して濾過し、リチウム塩を除去した。そして熱いエーテルから化合物を再結晶させた。収量0.275g、83%、mp138°decomp.、NMR: H:7.70〜7.47ppm、aryl−H; 31P{H}:44.9ppm; 13C{H}:170.5、139.9、134.8、131.6、131.5、129.5、126.4ppm;微量分析:Found:C=53.8;H=3.6;P=5.8;Calc:C=53.2;H=3.6;P=6.1。
【0085】
同様の方法で化合物[1,4−ビス(LAu)C]を調製することができ、Lは任意の所望の配位子、例えば、CNBu、PEt、P(OMe)又はNCMeである。
【0086】
方法2−[ClAu(AsPh)]を用いて
−78°でエーテル(20mL)に溶解させた4,4´−ジブロモビフェニル(0.096g、0.31mmol)に第三ブチルリチウム(0.75mL、1.25mmol)を加え、反応混合物を30分間攪拌した。チオフェン(5mL)及び[ClAu(AsPh)](0.128g、0.62mmol)(非特許文献15)をこの混合物に加え、反応を1.5時間攪拌した。そしてトリフェニルホスフィン(0.083g、0.62mmol)を加え、その溶液を更に1.5時間攪拌した後、室温に温め、更に30分間攪拌した。そして減圧下でジエチルエーテルを除去し、粗製物質をジクロロメタンに抽出して濾過し、リチウム塩を除去した。そして熱いエーテルから化合物を再結晶させた。収量0.265g、80%、mp138°decomp.、NMR: H:7.70〜7.47ppm、aryl−H; 31P{H}:44.9ppm; 13C{H}:170.5、139.9、134.8、131.6、131.5、129.5、126.4ppm;微量分析:Found:C=53.6;H=3.5;P=6.1;Calc:C=53.2;H=3.6;P=6.1。
【0087】
同様の方法で化合物[1,4−ビス(LAu)C]を調製することができ、Lは任意の所望の配位子、例えば、CNBu、PEt、P(OMe)又はNCMeである。
【0088】
4,4´−ビス(トリフェニルホスフィノ金(I))ビフェニルは、単結晶X線回折研究によっても特徴付けられている。
【0089】
結晶形:単斜晶系、空間群P21/c、a=18.6224(2)Å、b=10.27190(10)Å、c=24.0682(3)Å、β=102.634°、Z=4、T=150K、R=4.05。
【0090】
2つの金(III)原子を含有しているプロドラッグ化合物の調製
生体内で金(I)原子に還元可能である2つの金(III)原子を含有しているプロドラッグ化合物の調製に適している反応スキームの例を下に示す。

【0091】
Rは、任意の必要な化学基、例えば、水素、メチル、エチル、プロピル等であればよい。
【0092】
付録B
生育阻害アッセイ
方法MTTを一部修正したものを利用して細胞毒性研究を行なった(非特許文献7)。アッセイの原理は、5日の時間経過にわたる様々な投与量で薬物の生育阻害効果を評価することである。このアッセイは、96穴マイクロタイタプレートにおいて行なった。細胞株の倍加時間に応じ、穴当たり400〜1,000の細胞の密度で細胞をまいた。全ての細胞希釈は、10%のFCS(ウシ胎仔血清)を含有している増殖培地において行なった。
【0093】
調査する化合物は、DMSO(ジメチルスルホキシド)に溶解させた。化合物の系列希釈を行なって細胞懸濁液にし、DMSOの比率が0.5%未満にとどまるようにした。200μlの細胞と薬物との混合物を三通り96穴プレートに加えた。5%のCOそして37℃で5日間プレートを培養した。この時間の後、インキュベータからプレートを除去し、50μlのMTT[3−(4,5−ジメチル−チアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド]の3mg/ml溶液を各穴に加え、同じ条件で更に3時間培養した。各穴からの培地を吸引し、ホルマザン結晶を200μlのDMSOに可溶化させた。プレートは、Multiskanプレートリーダを用いて540nm及び690nmで読み込んだ。三つの吸光度値の平均及び標準偏差を用いて生育阻害曲線を作成し、これらの曲線からIC50値を算出した。
【0094】
付録C
コメットアッセイ
DNA損傷は、単細胞ゲル電気泳動法(SCGE)アッセイ、又はOstling及びJohnsonによって最初に開発された「コメットアッセイ」によって測定した(非特許文献8)。これは、個々の細胞内のDNA損傷及び修復能力の程度を決定するための方法である(非特許文献9〜非特許文献11)。異なるDNA損傷薬剤の作用機構を調査するためにこの技術を用いることができるということが以前に示されている(非特許文献12)。
【0095】
細胞は、トリプシン処理し、0.5mlの氷冷した新鮮な培地に懸濁して、アガロース中に包理する前にプラスチック24穴シャーレへ移した。架橋研究のため、既処理及びコントロール試料を氷で冷やし(DNA損傷のいかなる修復をも防止するため)、セシウム−137線源(0.4Gy/分)で20Gyの線量まで照射を与えた。既処理サンプルと同様の方法で、コントロール(非照射、薬物処理されていない細胞)を氷上に維持した。
【0096】
一端がフロストされたガラス顕微鏡スライドを蒸留水中で1%の通常のアガロースでプレコートした。これらのスライドは、使用前に終夜空気乾燥した。PBSの1%の低融点アガロース(LMP)混合物を融解させて45℃に保持した。そして1mlのLMPを氷上の0.5mlの細胞懸濁液に加え、結果として生じた混合物を、プレコートしたガラス顕微鏡スライド上へピペットで加えて、1〜2分間で固めてから製氷皿へ移した。これらのスライドは、氷冷した溶菌液(100mMのEDTA、10mMのトリス−HCl、1%のトリトンX100、1%のDMSO、2.5MのNaCl)に1時間浸漬し、新鮮な再蒸留水に15分間浸漬することによって3回洗浄した。
【0097】
そしてスライドを平台型電気泳動槽上に配置し、アルカリ巻き戻し用溶液(50mMのNaOH、pH12.5に緩衝された1mMのEDTA)でカバーして(5〜6mm)、抑えた照明の下で45分間放置し、DNAを巻き戻させてから電気泳動を0.6V/cmで25分間かけた。各スライドは、2×1mlの0.4Mのトリス−HCl、pH8.0ですすぎ、空気中で乾燥させた。そして、乾燥したスライドを再蒸留水で20分間再水和させ、2×1mlのヨウ化プロピジウム溶液(2.5μg/ml)を加えて、15分間染色を行なった。そして、スライドを1リットルの再蒸留水に1時間浸漬し、余分な背景染色を減らした。スライドをカバースリップしてから、580nmのリフレクタ及び590nmのバリアフィルタセットを有する50ワットの水銀源からの緑光を用いてエピ蛍光顕微鏡(Zeiss-Jenamed)により250x拡大で検査した。画像は、付属のソニーHAD−1インターラインCCDカメラ及びKometソフトウェア分析パッケージ(Kinetic Imaging)を用いて取り込んだ。2つの複製スライドのそれぞれからの25の画像を取り込んで分析し、Oliveらによって定義されたような個々の「コメットモーメント」(非特許文献13)を算出した。画像の全蛍光は、存在するDNAの量を表わし、ピクセルで測定された画像の長さは、DNAの移動の長さを表わす。画像のヘッド及びテール領域を特定し、それぞれの強度を決定した。テールモーメントは、テールに存在するDNAの割合をテールの長さの半分で乗算することによって算出する。
【0098】
【非特許文献1】Hrubisko, M.、McGown, A.T.、Fox, B.W.“The role of metalothionein, glutathione, glutathione S-transferases and DNA repair in resistance to platinum drugs in a series of L1210 cell lines made resistant to platinum agents.”Biochemical Pharmacology、1993、45、253-256。
【非特許文献2】Fink, D.、Aebi, S.、Howell, S.B.“The role of DNA mismatch repair in drug resistance.”Clinical Cancer Research、1998、4、1-6。
【非特許文献3】Chemical Reviews、1999、9、2589-2600。
【非特許文献4】Critical Reviews in Oncology/Hematology、2002、42、225-248。
【非特許文献5】Expert Reviews in Anticancer Therapy、2002、2、347-346。
【非特許文献6】Colella G、Marchini S、D'Incalci M.“Mismatch repair is associated with resistance to DNA minor groove alkylating agents.”British Journal of Cancer、1999、80(3-4)、338-343。
【非特許文献7】Alley, M.C.、Scudiero, D.A.、Monks, A.、Hursey, M.L.、Czerwinski, M.J.、Fine, D.L.、Abbott, B.J.、Mayo, J.G.、Shoemaker, R.H.、Boyd, M.R.“Feasibility of drug screening with panels of human tumor cell lines using a microculture tetrazolium assay.”Cancer research、1988、48、589-601。
【非特許文献8】Ostling, O.及びJohnson, J.“Microelectrophoretic studies of radiation induced DNA damage in individual mammalian cells.”Biochemical and Biophysical Research Communications、1984、123、29-298。
【非特許文献9】McKelvey-Martin, V.J.、Green, M.H.、Schmezer, P.、Pool-Zobel, B.L.、De Meo, M.P.及びCollins, A.“The single cell gel electrophoresis assay (comet assay): a European review.”Mutatation Research、1993、288、47-63。
【非特許文献10】Collins, A.R.、Fleming, I.M. and Gedik, C.M.“In vitro repair of oxidative and ultraviolet-induced DNA damage in supercoiled nucleoid DNA by human cell extract.”Biochimica et Biophysica Acta、1994、1219、724-727。
【非特許文献11】Olive, P.L.及びBanath, J.P.“Sizing highly fragmented DNA in individual apoptotic cells using the comet assay and a DNA crosslinking agent.”Experimental Cell Research、1995、221、19-26。
【非特許文献12】Ward, T.H.、Butler, J.、Shahbakhti, H.及びRichards, J.T.(1997)。“Comet assay studies on the activation of two diaziridinylbenzoquinones in K562 cells.”Biochemical Pharmacology、1997、53、1115-1121。
【非特許文献13】Olive, P.L、Banath, J.P.及びDurand, R.E.“Heterogeneity in radiation-induced DNA damage and repair in tumor and normal cells measured using the "comet" assay.”Radiation Research、1990、122、86-94。
【非特許文献14】R. Uson、A. Laguna、M. Laguna、Inorganic Synthesis、1989、26、85-91。
【非特許文献15】J. Organomet. Chem.、2002、648、1-7。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】シスプラチナムでの治療後の、親で耐性の細胞株におけるDNA架橋のグラフ表示である。
【図2】カルボプラチナムでの治療後の、親で耐性の細胞株におけるDNA架橋のグラフ表示である。
【図3】化合物Aでの治療後の、親でプラチナ耐性の細胞株におけるDNA架橋のグラフ表示である。
【図4】化合物Bでの治療後の、親でプラチナ耐性の細胞株におけるDNA架橋のグラフ表示である。
【図5】化合物Cでの治療後の、親でプラチナ耐性の細胞株におけるDNA架橋のグラフ表示である。
【図6】化合物Dでの治療後の、親でプラチナ耐性の細胞株におけるDNA架橋のグラフ表示である。
【図7】化合物Eでの治療後の、親でプラチナ耐性の細胞株におけるDNA架橋のグラフ表示である。
【図8】化合物Fでの治療後の、親でプラチナ耐性の細胞株におけるDNA架橋のグラフ表示である。
【図9】本発明の二金化合物との比較のための、一金化合物フェニル金トリフェニルホスフィン(PAuP)での治療後の、親でプラチナ耐性の細胞株におけるDNA架橋のグラフ表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの金(I)原子が該2つの金(I)原子を接続している共有リンクにおいてそれぞれ炭素原子に共有結合された有効量の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む癌の治療のための医薬品組成物。
【請求項2】
前記化合物は、第1炭素原子に共有結合された第1金(I)原子と、第2炭素原子に共有結合された第2金(I)原子とを有する請求項1に記載の医薬品組成物。
【請求項3】
前記化合物は共有リンクの一部として置換又は非置換の芳香族基を含む請求項2に記載の医薬品組成物。
【請求項4】
第1炭素原子は、置換又は非置換の芳香族基の一部である請求項2又は3に記載の医薬品組成物。
【請求項5】
前記置換又は非置換の芳香族基は、置換又は非置換のフェニル基である請求項4に記載の医薬品組成物。
【請求項6】
第2炭素原子は、置換又は非置換のアルキル、アルケン、アルキン、アリール又は芳香族基の一部である請求項2乃至5の何れか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項7】
一部が第2炭素原子である前記芳香族基は、置換又は非置換のフェニル基である請求項6に記載の医薬品組成物。
【請求項8】
前記化合物は、式

を有する部分を含み、式中、Auは前記第1金(I)原子、Auは前記第2金(I)原子、Cは前記第1炭素原子、Cは前記第2炭素原子、Zは連結基、nは0又は1である請求項2乃至7の何れか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項9】
前記化合物は、前記金(I)原子のそれぞれに結合された配位子を含み、該配位子はそれぞれ、PR、P(OR)、CNR、NCR、PR(CHOR)3−n、N12、[N12−N−CH]、PN12、及びP[N12−N−CH]からなる群から個々に選択され、式中、Rは置換又は非置換の炭化水素部分であり、Rは、H、Me、SO、PO、アルキル及びアリールからなる群から選択され、任意の1つの配位子における各Rは同じ又は異なるものである前記何れかの請求項に記載の医薬品組成物。
【請求項10】
Rは、置換又は非置換のアルキル、アルケン、アルキン、アリール又は芳香族基であり、任意の1つの配位子における各Rは同じ又は異なるものである請求項9に記載の医薬品組成物。
【請求項11】
Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びフェニル基からなる群から選択される請求項9又は10に記載の医薬品組成物。
【請求項12】
配位子はPPhである請求項9、10又は11に記載の医薬品組成物。
【請求項13】
前記化合物は、式

を有し、式中、L及びL´は配位子、R´及びR´´は置換又は非置換の二価の炭化水素部分、aは0又は3、bは0又は3、R´´´は、H、SO、PO2−、COH、OH、(CH)CH、O(CH)CH、S(CH)CH、又はR´´´´及びR´´´´´が(CH)CHであるNR´´´´C(O)(R´´´´´)、nは0乃至6である請求項1乃至7の何れか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項14】
前記化合物は、

からなる群から選択される式を有する請求項13に記載の医薬品組成物。
【請求項15】
前記化合物は、式

を有し、式中、L及びL´は配位子、R´及びR´´は置換又は非置換の二価の炭化水素部分、aは0又は3、bは0又は3、R´´´は、H、SO、PO2−、COH、OH、(CH)CH、O(CH)CH、S(CH)CH、又はR´´´´及びR´´´´´が(CH)CHであるNR´´´´C(O)(R´´´´´)、nは0乃至6である請求項1乃至7の何れか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項16】
前記化合物は、式

を有し、式中、L及びL´は配位子、R´及びR´´は置換又は非置換の二価の炭化水素部分、aは0又は3、bは0又は3、R´´´は、H、SO、PO2−、COH、OH、(CH)CH、O(CH)CH、S(CH)CH、又はR´´´´及びR´´´´´が(CH)CHであるNR´´´´C(O)(R´´´´´)、nは0乃至6、Xは連結基である請求項1乃至7の何れか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項17】
Xは、O、S、PR又はNRからなる群から選択され、Rは、置換又は非置換の炭化水素部分である請求項16に記載の医薬品組成物。
【請求項18】
前記化合物は、式

を有し、式中、L及びL´は配位子、R´及びR´´は置換又は非置換の二価の炭化水素部分、aは0又は3、bは0又は3、R´´´は、H、SO、PO2−、COH、OH、(CH)CH、O(CH)CH、S(CH)CH、又はR´´´´及びR´´´´´が(CH)CHであるNR´´´´C(O)(R´´´´´)、nは0乃至6である請求項1乃至7の何れか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項19】
前記化合物は、式

を有し、式中、Yは、(R´)AuL´及び

からなる群から選択され、式中、L及びL´は配位子、R´及びR´´は置換又は非置換の二価の炭化水素部分、aは0又は3、bは0又は3、R´´´は、H、SO、PO2−、COH、OH、(CH)CH、O(CH)CH、S(CH)CH、又はR´´´´及びR´´´´´が(CH)CHであるNR´´´´C(O)(R´´´´´)、nは0乃至6である請求項1乃至7の何れか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項20】
L及びL´は、PR、P(OR)、CNR、NCR、PR(CHOR)3−n、N12、[N12−N−CH]、PN12、及びP[N12−N−CH]からなる群から独立に選択され、Rは置換又は非置換の炭化水素部分であり、Rは、H、Me、SO、PO、アルキル及びアリールからなる群から選択され、任意の1つの配位子における各Rは同じ又は異なるものである請求項13乃至19の何れか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項21】
Rは、置換又は非置換のアルキル、アルケン、アルキン、アリール又は芳香族基であり、任意の1つの配位子における各Rは同じ又は異なるものである請求項20に記載の医薬品組成物。
【請求項22】
Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル及びフェニル基からなる群から選択される請求項20又は21に記載の医薬品組成物。
【請求項23】
配位子はPPhである請求項20、21又は22に記載の医薬品組成物。
【請求項24】
R´及びR´´はそれぞれ、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン及びフェニレン基からなる群から独立に選択される請求項13乃至23の何れか1項に記載の医薬品組成物。
【請求項25】
2つの金(I)原子が該2つの金(I)原子を接続している共有リンクにおいてそれぞれ炭素原子に共有結合された、化学療法剤としての使用のための化合物。
【請求項26】
2つの金(I)原子が該2つの金(I)原子を接続している共有リンクにおいてそれぞれ炭素原子に共有結合された化合物の、癌の治療のための薬剤の調製における使用。
【請求項27】
癌はプラチナ薬に耐性である請求項26に記載の化合物の使用。
【請求項28】
癌は、シスプラチナム及び/又はカルボプラチナムに耐性である請求項27に記載の化合物の使用。
【請求項29】
癌は、卵巣又は肺癌である請求項26、27又は28に記載の化合物の使用。
【請求項30】
前記化合物は、請求項1乃至24の何れか1項に従って定義されている請求項26乃至29の何れか1項に記載の化合物の使用。
【請求項31】
ヒト又は動物の患者の癌を治療する方法であって、2つの金(I)原子が該2つの金(I)原子を接続している共有リンクにおいてそれぞれ炭素原子に共有結合された治療上有効量の化合物を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項32】
癌はプラチナ薬に耐性である請求項31に記載の方法。
【請求項33】
癌は、シスプラチナム及び/又はカルボプラチナムに耐性である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
癌は、卵巣又は肺癌である請求項31、32又は33に記載の方法。
【請求項35】
前記化合物は、請求項1乃至24の何れか1項に従って定義されている請求項31乃至34の何れか1項に記載の方法。
【請求項36】
金(III)原子である第1金原子と、金(I)原子又は金(III)原子の何れかである第2金原子とを有し、前記第1及び第2金原子がそれぞれ、該第1及び第2金原子を接続している共有リンクにおいて炭素原子に共有結合され、金(III)原子が生体内で金(I)原子に還元可能である有効量の化合物と、薬学的に許容される賦形剤とを含む癌の治療のための医薬品組成物。
【請求項37】
前記第2金原子は金(III)原子である請求項36に記載の医薬品組成物。
【請求項38】
金(III)原子である第1金原子と、金(I)原子又は金(III)原子の何れかである第2金原子とを有し、前記第1及び第2金原子がそれぞれ、該第1及び第2金原子を接続している共有リンクにおいて炭素原子に共有結合され、金(III)原子が生体内で金(I)原子に還元可能である、化学療法剤としての使用のための化合物。
【請求項39】
金(III)原子である第1金原子と、金(I)原子又は金(III)原子の何れかである第2金原子とを有し、前記第1及び第2金原子がそれぞれ、該第1及び第2金原子を接続している共有リンクにおいて炭素原子に共有結合され、金(III)原子が生体内で金(I)原子に還元可能である化合物の、癌の治療のための薬剤の調製における使用。
【請求項40】
ヒト又は動物の患者の癌を治療する方法であって、金(III)原子である第1金原子と、金(I)原子又は金(III)原子の何れかである第2金原子とを有し、前記第1及び第2金原子がそれぞれ、該第1及び第2金原子を接続している共有リンクにおいて炭素原子に共有結合され、金(III)原子が生体内で金(I)原子に還元可能である治療上有効量の化合物を前記患者に投与することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−516980(P2007−516980A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544563(P2006−544563)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005440
【国際公開番号】WO2005/058421
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(506207587)ザ・ユニバーシティ・オブ・ソルフォード (1)
【出願人】(505395858)ザ・ユニバーシティ・オブ・マンチェスター (18)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF MANCHESTER
【Fターム(参考)】