説明

2バンド発振器

【課題】 2つの発振信号を切り替えて共通の端子から出力する場合に、発振信号の減衰を少なくする。
【解決手段】 第1の周波数帯の発振信号を出力する第1の発振トランジスタ11と、第1の発振トランジスタ11のコレクタに電源を供給する第1のインダクタ12と、第1の発振トランジスタ11の動作を切り替える第1のスイッチ素子16と、第2の周波数帯の発振信号を出力する第2の発振トランジスタ21と、第2の発振トランジスタ21のコレクタに電源を供給する第2のインダクタ22と、第2の発振トランジスタ21の動作を切り替える第2のスイッチ素子26と、第1の周波数帯の発振信号又は第2の周波数帯の発振信号を外部に出力する出力端子30とを備え、第1のインダクタ12と出力端子30との間に第1のスイッチ素子16を介挿し、第2のインダクタ22と出力端子と30の間に第2のスイッチ素子22を介挿した

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2バンド切替型発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、PCS(1900MHz帯のセルラー電話)用及びDCS(1800MHz帯のセルラー電話)用に使用される2バンド切替型電圧制御発振器は、PCS用VCO回路10とDCS用VCO回路20とで構成されており、これら2つのVCO回路10,20は基本的に同一の回路構成となっている。
【0003】
PCS用VCO回路10とDCS用VCO回路20はそれぞれデジタルトランジスタDTr-1,DTr-2を有し、一方のデジタルトランジスタDTr-1のベ−スは他方のデジタルトランジスタDTr-2のコレクタに接続され、このデジタルトランジスタDTr-2のベ−スにスイッチ端子Vswが接続されている。したがって、スイッチ端子Vswに負のスイッチ電圧を印加してデジタルトランジスタDTr-2がオン状態になると、電源電圧端子(Vcc)からの電源電圧はDCS用VCO回路20の発振用とバッファ用のトランジスタTr-2にバイアス電圧を加え、DCS用VCO回路20が1800MHz帯の周波数で動作する。
【0004】
この時、デジタルトランジスタDTr-1のベ−スには正の電圧が印加されるため、デジタルトランジスタDTr-1はオフ状態となり、PCSの1900MHzの回路は発振動作しない。これとは反対に、スイッチ端子Vswに正のスイッチ電圧を印加すると、デジタルトランジスタDTr-2はオフ状態になるため、DCSの1800MHzの回路は発振動作しないが、デジタルトランジスタDTr-2のコレクタに負の電圧が印加されたこととなるため、デジタルトランジスタDTr-1のベ−スにそのまま負の電圧が印加される。これにより、電源電圧端子(Vcc)からの電源電圧はPCS用VCO回路10の発振用とバッファ用のトランジスタTr-1にバイアス電圧を加え、PCS用VCO回路10が1900MHz帯の周波数で動作する(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−060433号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来構成では、発振信号はそれぞれのVCO10、20の出力端RFout−1、RFout−2から出力されるが、これら2つの出力端を相互に接続して共通出力端とすると、出力される発振信号のレベルが減衰してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、2つの発振信号を切り替えて共通の端子から出力する場合に、発振信号の減衰を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の解決手段として、コレクタから第1の周波数帯の発振信号を出力する第1の発振トランジスタと、前記第1の発振トランジスタのコレクタに電源を供給する第1のインダクタと、前記第1の発振トランジスタの動作/非動作を切り替える第1のスイッチ素子と、コレクタから第2の周波数帯の発振信号を出力する第2の発振トランジスタと、前記第2の発振トランジスタのコレクタに前記電源を供給する第2のインダクタと、前記第2の発振トランジスタの動作/非動作を切り替える第2のスイッチ素子と、前記第1の周波数帯の発振信号又は前記第2の周波数帯の発振信号を外部に出力する出力端子とを備え、前記第1のインダクタと前記出力端子との間に前記第1のスイッチ素子を介挿し、前記第2のインダクタと前記出力端子との間に前記第2のスイッチ素子を介挿した。
【0009】
また、第2の解決手段として、前記第1の発振トランジスタのコレクタを前記第1のインダクタに直接接続すると共に、前記第1の発振トランジスタのベースには前記第1のスイッチ素子を介して電源を供給し、前記第2の発振トランジスタのコレクタを前記第2のインダクタに直接接続すると共に、前記第2の発振トランジスタのベースには前記第2のスイッチ素子を介して電源を供給した。
【0010】
また、第3の解決手段として、前記第1の発振トランジスタのコレクタ及びベースに前記第1のスイッチ素子を介して電源を供給し、前記第2の発振トランジスタのコレクタ及びベースに前記第2のスイッチ素子を介して電源を供給した。
【0011】
また、第4の解決手段として、前記第1のインダクタを前記第1の周波数帯の発振信号の1/4波長の長さを有する第1のストリップ線路で構成し、前記第2のインダクタを前記第1の周波数帯の発振信号の1/4波長の長さを有する第1のストリップ線路で構成した。
【0012】
また、第5の解決手段として、前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子をそれぞれトランジスタで構成した。
【発明の効果】
【0013】
第1の解決手段によれば、コレクタから第1の周波数帯の発振信号を出力する第1の発振トランジスタと、第1の発振トランジスタのコレクタに電源を供給する第1のインダクタと、第1の発振トランジスタの動作/非動作を切り替える第1のスイッチ素子と、コレクタから第2の周波数帯の発振信号を出力する第2の発振トランジスタと、第2の発振トランジスタのコレクタに電源を供給する第2のインダクタと、第2の発振トランジスタの動作/非動作を切り替える第2のスイッチ素子と、第1の周波数帯の発振信号又は第2の周波数帯の発振信号を外部に出力する出力端子とを備え、第1のインダクタと出力端子との間に第1のスイッチ素子を介挿し、第2のインダクタと出力端子との間に第2のスイッチ素子を介挿したので、一方の発振トランジスタから出力される発振信号が他方の発振トランジスタのコレクタに接続されたインダクタによって減衰することがない。
【0014】
また、第2の解決手段によれば、第1の発振トランジスタのコレクタを第1のインダクタに直接接続すると共に、第1の発振トランジスタのベースには第1のスイッチ素子を介して電源を供給し、第2の発振トランジスタのコレクタを第2のインダクタに直接接続すると共に、第2の発振トランジスタのベースには第2のスイッチ素子を介して電源を供給したので、各発振トランジスタのベースに印加する電圧によって各発振トランジスタの動作/非動作を切り替えられる。
【0015】
また、第3の解決手段によれば、第1の発振トランジスタのコレクタ及びベースに第1のスイッチ素子を介して電源を供給し、第2の発振トランジスタのコレクタ及びベースに第2のスイッチ素子を介して電源を供給したので、各発振トランジスタのコレクタ及びベースに印加する電圧によって動作/非動作を切り替えられる。
【0016】
また、第4の解決手段として、第1のインダクタを第1の周波数帯の発振信号の1/4波長の長さを有する第1のストリップ線路で構成し、第2のインダクタを第1の周波数帯の発振信号の1/4波長の長さを有する第1のストリップ線路で構成したので、コレクタから出力される発振信号の減衰がない。
【0017】
また、第5の解決手段として、第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子をそれぞれトランジスタで構成したので、ベースに印加する電圧によって各スイッチ素子を簡単に制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は第1の実施形態を示す。第1の発振トランジスタ11(NPN型)は第1の周波数帯(およそ1.8GHz帯)で発振する。第1の発振トランジスタ11のコレクタには第1インダクタ12を介して電源端子Vccから給電される。第1のインダクタ12はストリップ線路で構成され、その長さは第1の周波数帯の発振信号のおよそ1/4波長の長さを有する。ベースには第1の共振回路13が結合される。第1の共振回路13にはバラクタダイオード13aと共振線路13bとが設けられ、バラクタダイオード13aに制御電圧Vtが印加される。第1の発振トランジスタ11のベースには抵抗14、15によりバイアス電圧が印加されるが、電源側の抵抗14は第1のスイッチ素子16を介して第1のインダクタ12に接続される。第1のスイッチ素子16はトランジスタ(PNP型)で構成され、エミッタが第1のインダクタ12に接続され、コレクタが抵抗14に接続される。
【0019】
第2の発振トランジスタ21(NPN型)は第2の周波数帯(およそ3.6GHz帯)で発振する。第2の発振トランジスタ21のコレクタには第2インダクタ22を介して電源端子Vccから給電される。第2のインダクタ22はストリップ線路で構成され、その長さは第2の周波数帯の発振信号のおよそ1/4波長の長さを有する。この長さは、第1の周波数帯に対しては1/2波長に相当している。ベースには第2の共振回路23が結合される。第2の共振回路23にはバラクタダイオード23aと共振線路23bとが設けられ、バラクタダイオード23aに制御電圧Vtが印加される。第2の発振トランジスタ21のベースには抵抗24、25によりバイアス電圧が印加されるが、電源側の抵抗24は第2のスイッチ素子26を介して第2のインダクタ22に接続される。第2のスイッチ素子26はトランジスタ(PNP型)で構成され、エミッタが第2のインダクタ22に接続され、コレクタが抵抗24に接続される。
【0020】
出力端子30には第1の周波数帯の発振信号又は第2の周波数帯の発振号が出力される。そのために、第1のスイッチ素子16が第1のコンデンサ17を介して出力端子30に結合され、第2のスイッチ素子26が第2のコンデンサ27を介して出力端子30に結合される。この出力の切替は第1のスイッチ素子16及び第2のスイッチ素子26によって制御される。
【0021】
ここで、第1の周波数帯の発振信号を出力する場合は、第1のスイッチ素子16のベースにローの電圧を印加してこれをオンにする。第1の発振トランジスタ11は、ベースにバイアス電圧が印加されて第1の周波数帯で発振する。第2のスイッチ素子26はオフのままとする。第1の発振トランジスタ11のコレクタから出力された発振信号は第1のスイッチ素子16、第1のコンデンサ17を介して出力端子30に出力される。このとき、第2のスイッチ素子26はオフ状態であるので、発振信号が第2のインダクタ22側及び第2の発振トランジスタ21のコレクタ側へは伝送されないので発振信号のロスはない。
【0022】
同様に、第2の周波数帯の発振信号を出力する場合は、第2のスイッチ素子26のベースにローの電圧を印加してこれをオンにする。第2の発振トランジスタ21は、ベースにバイアス電圧が印加されて第2の周波数帯で発振する。第1のスイッチ素子16はオフのままとする。第2の発振トランジスタ21のコレクタから出力された発振信号は第2のスイッチ素子26、第1のコンデンサ27を介して出力端子30に出力される。このとき、第1のインダクタ12を構成するストリップラインが第2の周波数帯に対しては2/1波長の長さに相当するが、第1のスイッチ素子16がオフ状態であるので、発振信号が第1のインダクタ12側及び第1の発振トランジスタ11のコレクタ側へは伝送されないので発振信号のロスはない。
【0023】
図2に示す第2の実施形態では、第1の発振トランジスタ11のコレクタが第1のインダクタ12に直接接続される代わりに、第1のスイッチ素子16と抵抗14との接続点に接続され、同様に、第2の発振トランジスタ21のコレクタが第2のインダクタ22に直接接続される代わりに、第2のスイッチ素子26と抵抗24との接続点に接続されていることが図1とは異なる。すなわち、第1の発振トランジスタ11のコレクタは第1のスイッチ素子16を介して第1のインダクタ12に接続され、第2の発振トランジスタ21のコレクタは第2のスイッチ素子26を介して第2のインダクタ22に接続されている。その他の構成は図1と同じである。
【0024】
図2の構成においても、第1の周波数帯の発振信号を出力する場合は、第1のスイッチ素子16のベースにローの電圧を印加してこれをオンにする。第1の発振トランジスタ11は、コレクタとベースに第1のインダクタ12から電源が供給されて第1の周波数帯で発振する。第2のスイッチ素子26はオフのままとする。第1の発振トランジスタ11のコレクタから出力された発振信号は第1のコンデンサ17を介して出力端子30に出力される。このとき、第2のスイッチ素子26はオフ状態であるので、発振信号が第2のインダクタ22側へは伝送されないので発振信号のロスはない。
【0025】
同様に、第2の周波数帯の発振信号を出力する場合は、第2のスイッチ素子26のベースにローの電圧を印加してこれをオンにする。第2の発振トランジスタ21は、コレクタとベースに第2のインダクタ22から電圧が印加されて第2の周波数帯で発振する。第1のスイッチ素子16はオフのままとする。第2の発振トランジスタ21のコレクタから出力された発振信号は第2のコンデンサ27を介して出力端子30に出力される。このとき、第1のスイッチ素子16はオフ状態であるので、第1のインダクタ12の長さが第2の周波数帯に対しては1/2波長になるが、発振信号が第1のインダクタ12側へは伝送されないので発振信号のロスはない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の2バンド発振器の第1実施形態の構成を示す回路図である。
【図2】本発明の2バンド発振器の第2実施形態の構成を示す回路図である。
【図3】従来の2バンド発振器の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0027】
11:第1の発振トランジスタ
12:第1のインダクタ
13:第1の共振回路
13a:バラクタダイオード
13b:共振線路
14、15:抵抗
16:第1のスイッチ素子
17:第1のコンデンサ
21:第2の発振トランジスタ
22:第2のインダクタ
23:第2の共振回路
23a:バラクタダイオード
23b:共振線路
24、25:抵抗
26:第2のスイッチ素子
27:第2のコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレクタから第1の周波数帯の発振信号を出力する第1の発振トランジスタと、前記第1の発振トランジスタのコレクタに電源を供給する第1のインダクタと、前記第1の発振トランジスタの動作/非動作を切り替える第1のスイッチ素子と、コレクタから第2の周波数帯の発振信号を出力する第2の発振トランジスタと、前記第2の発振トランジスタのコレクタに前記電源を供給する第2のインダクタと、前記第2の発振トランジスタの動作/非動作を切り替える第2のスイッチ素子と、前記第1の周波数帯の発振信号又は前記第2の周波数帯の発振信号を外部に出力する出力端子とを備え、前記第1のインダクタと前記出力端子との間に前記第1のスイッチ素子を介挿し、前記第2のインダクタと前記出力端子との間に前記第2のスイッチ素子を介挿したことを特徴とする2バンド発振器。
【請求項2】
前記第1の発振トランジスタのコレクタを前記第1のインダクタに直接接続すると共に、前記第1の発振トランジスタのベースには前記第1のスイッチ素子を介して電源を供給し、前記第2の発振トランジスタのコレクタを前記第2のインダクタに直接接続すると共に、前記第2の発振トランジスタのベースには前記第2のスイッチ素子を介して電源を供給したことを特徴とする請求項1に記載の2バンド発振器。
【請求項3】
前記第1の発振トランジスタのコレクタ及びベースに前記第1のスイッチ素子を介して電源を供給し、前記第2の発振トランジスタのコレクタ及びベースに前記第2のスイッチ素子を介して電源を供給したことを特徴とする請求項1に記載の2バンド発振器。
【請求項4】
前記第1のインダクタを前記第1の周波数帯の発振信号の1/4波長の長さを有する第1のストリップ線路で構成し、前記第2のインダクタを前記第1の周波数帯の発振信号の1/4波長の長さを有する第1のストリップ線路で構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の2バンド発振器。
【請求項5】
前記第1のスイッチ素子及び前記第2のスイッチ素子をそれぞれトランジスタで構成したことを特長とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の2バンド発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−319769(P2006−319769A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−141454(P2005−141454)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】