説明

2以上のアミノ基を有するシラン化合物及びその製造方法

【解決手段】下記一般式(1)


(式中、R1、R2は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、R4、R5は炭素数1〜10の1価炭化水素基、R3は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基であり、aは1〜10の整数、bは1〜10の整数、nは0、1又は2である。)
で示される2以上のアミノ基を有するシラン化合物。
【効果】本発明により提供される2以上のアミノ基を有するシラン化合物は、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤として使用した場合、悪影響が生じずに、添加による特性向上を図ることができるため、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な2以上のアミノ基を有するシラン化合物及びその製造方法に関する。この新規化合物は、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤等として有用である。
【背景技術】
【0002】
アミノ基を有するシラン化合物は、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤として有用であり、このようなアミノ基を有するシラン化合物としては、例えば「シリコーンハンドブック」,日刊工業新聞社,伊藤邦雄著,p.55〜56(非特許文献1)記載のアミノプロピルトリメトキシシラン等の1級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物やN−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等の2級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物、また、ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン等の3級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物等が知られている。
【0003】
しかしながら、これらの化合物は1分子あたり1つのアミノ基しか有していないため、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤として使用した場合、アミノ基導入による効果の発現が少ない場合がある。
【0004】
上記問題を解決するため、2以上のアミノ基を有するアルコキシシラン化合物が提案されており、この2以上のアミノ基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えば「シリコーンハンドブック」,日刊工業新聞社,伊藤邦雄著,p.55〜56(非特許文献1)記載のアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノエチルアミノ基を有するアルコキシシラン化合物、特開2005−298428号公報(特許文献1)記載の2以上の保護されたアミノ基を有するアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0005】
上記化合物はアミノ基を2つ以上有するため、アミノ基導入の効果がより発現するが、アルコキシシリル基部位は1ヶ所であり、アルコキシシリル基部位でのカップリング効果の発現が少ない場合がある。
【0006】
更に上記アミノエチルアミノ基を有するアルコキシシラン化合物においては、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤として用いた場合、含有するアミノエチルアミノ基により熱による黄変が生じる可能性があり、上記特開2005−298428号公報記載の2以上の保護されたアミノ基を有するアルコキシシラン化合物においては、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤として用いた場合、後処理時や経時でシリル保護基が脱保護されたトリアルキルシラノールやシロキサン化合物が副生するため、添加による効果が低減したり、生成するトリアルキルシラノールやシロキサンによる悪影響が生じたりする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−298428号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「シリコーンハンドブック」,日刊工業新聞社,伊藤邦雄著,p.55〜56
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤等として用いた場合に、悪影響が生じず、且つ添加効果が大きい新規なアミノ基を有するシラン化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、特定のアミノ基を有するシラン化合物が、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤として使用した場合、悪影響が生じずに、添加による特性向上を図ることができることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0011】
従って、本発明は、下記に示す2以上のアミノ基を有するシラン化合物及びその製造方法を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1、R2は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、R4、R5は炭素数1〜10の1価炭化水素基、R3は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基であり、aは1〜10の整数、bは1〜10の整数、nは0、1又は2である。)
で示される2以上のアミノ基を有するシラン化合物。
請求項2:
下記一般式(2)
【化2】

(式中、R3は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基、R4、R5は炭素数1〜10の1価炭化水素基、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、nは0、1又は2である。)
で示されるハロアルキルシラン化合物と、下記一般式(3)
【化3】

(式中、R1、R2は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、aは1〜10の整数、bは1〜10の整数である。)
で示されるアミン化合物を反応させることを特徴とする請求項1記載の2以上のアミノ基を有するシラン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明により提供される2以上のアミノ基を有するシラン化合物は、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤として使用した場合、悪影響が生じずに、添加による特性向上を図ることができるため、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1で得られたN,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミンの1H−NMRスペクトルである。
【図2】実施例1で得られたN,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミンのIRスペクトルである。
【図3】実施例2で得られたN,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミンの1H−NMRスペクトルである。
【図4】実施例2で得られたN,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミンのIRスペクトルである。
【図5】実施例3で得られたN,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)エチレンジアミンの1H−NMRスペクトルである。
【図6】実施例3で得られたN,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)エチレンジアミンのIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の2以上のアミノ基を有するシラン化合物は、下記一般式(1)
【化4】

(式中、R1、R2は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、R4、R5は炭素数1〜10の1価炭化水素基、R3は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基であり、aは1〜10の整数、bは1〜10の整数、nは0、1又は2である。)
で示される化合物である。
【0015】
ここで、R1、R2は、炭素数1〜10、好ましくは1〜6の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基等が例示される。また、炭化水素基の水素原子の一部又は全部が置換されていてもよく、該置換基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子からなる基、シアノ基、アミノ基、芳香族炭化水素基、エステル基、エーテル基、アシル基、スルフィド基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。
【0016】
また、R1とR2とが結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成している場合、R1の炭素原子とR2の炭素原子とが直接結合したものの他、R1の炭素原子とR2の炭素原子とが、1個以上の酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子を介して結合して環を形成したものであってもよい。R1とR2とが環を形成した場合の環中に含まれる炭素数は、好ましくは3〜6である。
【0017】
3は、炭素数1〜10、好ましくは1〜8の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基であり、アルキレン基、アラルキレン基等が挙げられ、具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、イソブチレン基等が例示される。
【0018】
4、R5は、炭素数1〜10、好ましくは1〜6の1価炭化水素基であり、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基等が例示される。
【0019】
上記一般式(1)で示される2以上のアミノ基を有するシラン化合物の具体例としては、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(トリメトキシシリルメチル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(メチルジメトキシシリルメチル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(ジメチルメトキシシリルメチル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(トリエトキシシリルメチル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(メチルジエトキシシリルメチル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(ジメチルエトキシシリルメチル)エチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(トリメトキシシリルメチル)エチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(メチルジメトキシシリルメチル)エチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(ジメチルメトキシシリルメチル)エチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(トリエトキシシリルメチル)エチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(メチルジエトキシシリルメチル)エチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(ジメチルエトキシシリルメチル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−ジメチルメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−メチルジエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−ジメチルエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−ジメチルメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−メチルジエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−ジメチルエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(トリメトキシシリルメチル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(メチルジメトキシシリルメチル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(ジメチルメトキシシリルメチル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(トリエトキシシリルメチル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(メチルジエトキシシリルメチル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(ジメチルエトキシシリルメチル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(トリメトキシシリルメチル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(メチルジメトキシシリルメチル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(ジメチルメトキシシリルメチル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(トリエトキシシリルメチル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(メチルジエトキシシリルメチル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(ジメチルエトキシシリルメチル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−ジメチルメトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−メチルジエトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−ジメチルエトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−ジメチルメトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−メチルジエトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−ジメチルエトキシシリルプロピル)ヘキサメチレンジアミン、N,N−ビス(トリメトキシシリルメチル)アミノエチルピペリジン、N,N−ビス(メチルジメトキシシリルメチル)アミノエチルピペリジン、N,N−ビス(ジメチルメトキシシリルメチル)アミノエチルピペリジン、N,N−ビス(トリエトキシシリルメチル)アミノエチルピペリジン、N,N−ビス(メチルジエトキシシリルメチル)アミノエチルピペリジン、N,N−ビス(ジメチルエトキシシリルメチル)アミノエチルピペリジン、N,N−ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミノエチルピペリジン、N,N−ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)アミノエチルピペリジン、N,N−ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)アミノエチルピペリジン、N,N−ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミノエチルピペリジン、N,N−ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミノエチルピペリジン、N,N−ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)アミノエチルピペリジン、N,N−ビス(トリメトキシシリルメチル)アミノエチルモルホリン、N,N−ビス(メチルジメトキシシリルメチル)アミノエチルモルホリン、N,N−ビス(ジメチルメトキシシリルメチル)アミノエチルモルホリン、N,N−ビス(トリエトキシシリルメチル)アミノエチルモルホリン、N,N−ビス(メチルジエトキシシリルメチル)アミノエチルモルホリン、N,N−ビス(ジメチルエトキシシリルメチル)アミノエチルモルホリン、N,N−ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミノエチルモルホリン、N,N−ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)アミノエチルモルホリン、N,N−ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)アミノエチルモルホリン、N,N−ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミノエチルモルホリン、N,N−ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミノエチルモルホリン、N,N−ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)アミノエチルモルホリン、N,N−ビス(トリメトキシシリルメチル)アミノエチル−N’−メチルピペラジン、N,N−ビス(メチルジメトキシシリルメチル)アミノエチル−N’−メチルピペラジン、N,N−ビス(ジメチルメトキシシリルメチル)アミノエチル−N’−メチルピペラジン、N,N−ビス(トリエトキシシリルメチル)アミノエチル−N’−メチルピペラジン、N,N−ビス(メチルジエトキシシリルメチル)アミノエチル−N’−メチルピペラジン、N,N−ビス(ジメチルエトキシシリルメチル)アミノエチル−N’−メチルピペラジン、N,N−ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミノエチル−N’−メチルピペラジン、N,N−ビス(メチルジメトキシシリルプロピル)アミノエチル−N’−メチルピペラジン、N,N−ビス(ジメチルメトキシシリルプロピル)アミノエチル−N’−メチルピペラジン、N,N−ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミノエチル−N’−メチルピペラジン、N,N−ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミノエチル−N’−メチルピペラジン、N,N−ビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)アミノエチル−N’−メチルピペラジン等が例示される。
【0020】
また、本発明における上記一般式(1)で示される2以上のアミノ基を有するシラン化合物の製造方法は、例えば、下記一般式(2)
【化5】

(式中、R3は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基、R4、R5は炭素数1〜10の1価炭化水素基、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、nは0、1又は2である。)
で示されるハロアルキルシラン化合物と、下記一般式(3)
【化6】

(式中、R1、R2は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、aは1〜10の整数、bは1〜10の整数である。)
で示されるアミン化合物を反応させて製造する方法が挙げられる。
【0021】
上記一般式(2)におけるR3、R4、R5及び上記一般式(3)におけるR1、R2は上述したものが例示できる。
【0022】
上記ハロアルキルシラン化合物とアミン化合物の反応においては、ハロゲン化水素が副生するが、これは上記一般式(3)で示されるアミン化合物自身を塩基として捕捉してもよく、他のアミン化合物を塩基として捕捉してもよい。他のアミン化合物としては上記一般式(3)で示されるアミン化合物の他、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ジメチルアニリン、メチルイミダゾール、テトラメチルエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等が例示される。
【0023】
上記一般式(2)で示されるハロアルキルシラン化合物と上記一般式(3)で示されるアミン化合物の配合比は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、上記一般式(3)で示されるアミン化合物自身を塩基として捕捉する場合はハロアルキルシラン化合物1モルに対し、アミン化合物0.1〜15.0モル、特に0.2〜5.0モルの範囲が好ましく、他のアミン化合物を塩基として捕捉する場合は0.1〜14.0モル、特に0.1〜4.0モルの範囲が好ましい。
【0024】
また、他のアミン化合物を塩基として捕捉する場合の他のアミン化合物の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、ハロアルキルシラン化合物1モルに対し、0.1〜10.0モル、特に0.1〜3.0モルの範囲が好ましい。
【0025】
また、反応温度は特に限定されないが、常圧又は加圧下で−20〜200℃、特に0〜150℃が好ましい。なお、圧力範囲は0.1〜10MPaが好ましく、雰囲気は窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下が好ましい。反応時間は通常1〜30時間の範囲である。
【0026】
なお、反応は無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。用いられる溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素溶媒、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒などが例示される。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0027】
反応終了後にはアミン化合物の塩が生じるが、これは反応液を濾過、又はエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等を添加し、分離するなどの方法により除去できる。以上のようにして塩を除去した反応液からは、蒸留等の通常の方法で目的物を回収することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び実験例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0029】
[実施例1]N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、3−クロロプロピルトリメトキシシラン(198.7g、1.0mol)を仕込み、120℃に加熱した。内温が安定した後、N,N−ジメチルエチレンジアミン(132.3g、1.5mol)を2時間かけて滴下し、その後3時間撹拌した。生じた塩酸塩を濾過により除去した後、蒸留した。沸点153℃/60Paの留分を40.2g得た。
【0030】
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
質量スペクトル
m/z 354,206,160,121,91,58
1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)
図1にチャートで示す。
IRスペクトル
図2にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物はN,N−ジメチル−N’,N’−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミンであることが確認された。
【0031】
[実施例2]N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、N,N−ジエチルエチレンジアミン(174.3g、1.5mol)を仕込み、120℃に加熱した。内温が安定した後、3−クロロプロピルトリメトキシシラン(198.7g、1.0mol)を2時間かけて滴下し、その後3時間撹拌した。生じた塩酸塩を濾過により除去した後、蒸留した。沸点166℃/130Paの留分を55.2g得た。
【0032】
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
質量スペクトル
m/z 354,206,160,121,86
1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)
図3にチャートで示す。
IRスペクトル
図4にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物はN,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミンであることが確認された。
【0033】
[実施例3]N,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、N,N−ジエチルエチレンジアミン(174.3g、1.5mol)を仕込み、120℃に加熱した。内温が安定した後、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン(182.7g、1.0mol)を2時間かけて滴下し、その後3時間撹拌した。生じた塩酸塩を濾過により除去した後、蒸留した。沸点139℃/20Paの留分を53.1g得た。
【0034】
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル、IRスペクトルを測定した。
質量スペクトル
m/z 322,190,144,105,86
1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶媒)
図5にチャートで示す。
IRスペクトル
図6にチャートで示す。
以上の結果より、得られた化合物はN,N−ジエチル−N’,N’−ビス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)エチレンジアミンであることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1、R2は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、R4、R5は炭素数1〜10の1価炭化水素基、R3は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基であり、aは1〜10の整数、bは1〜10の整数、nは0、1又は2である。)
で示される2以上のアミノ基を有するシラン化合物。
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】

(式中、R3は炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の2価炭化水素基、R4、R5は炭素数1〜10の1価炭化水素基、Xは塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、nは0、1又は2である。)
で示されるハロアルキルシラン化合物と、下記一般式(3)
【化3】

(式中、R1、R2は炭素数1〜10の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環を形成してもよく、aは1〜10の整数、bは1〜10の整数である。)
で示されるアミン化合物を反応させることを特徴とする請求項1記載の2以上のアミノ基を有するシラン化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−121906(P2011−121906A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281392(P2009−281392)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】