説明

2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法

【課題】移送路が上り勾配部を有する場合であっても、上り勾配部と干渉させることなく2以上のプレキャストコンクリート構造物を連接させた姿勢で移送することのできる、2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法を提供する。
【解決手段】プレキャストボックスカルバート1,1は、相互に隙間Sを置いて、少なくとも隙間Sの上方および下方の2箇所で隙間調整材2,2を介して連接されて移送され、前方のプレキャストボックスカルバート1が上り勾配部Rbに進入する際に隙間調整材2を調整して上り勾配部と同勾配の姿勢とする姿勢調整をおこない、後続のプレキャストボックスカルバート1が上り勾配部Rbに進入する際にも隙間調整材2を調整して上り勾配部と同勾配の姿勢とする姿勢調整をおこなう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水管路や電力配線、地下道などに供される共同溝等の暗渠やL型の擁壁等のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、都市部の幹線道路直下に上下水道、電力配線、各種地下道などのための共同溝(もしくは暗渠)を構築する方法として、現在、先行して地盤を開削して土留めをおこない、プレキャスト製の函渠(カルバート、ヒューム管等のプレキャストボックスカルバート)の搬入ポイントから所定の移送ポイントまで延びる移送路を構築し、地下空間に搬入された函渠をウィンチ等で牽引(横引きともいう)しながら所定の敷設位置まで移送し、これを順次繰り返しながら、函渠同士を接合して暗渠を構築する方法が開発され、多くの実績を挙げている。
【0003】
より具体的に説明すると、上記移送路は、たとえばコンクリート製の基盤からなり、この基盤内に、断面がコの字状、もしくはCの字状の型鋼等からなる凹溝材をその開口を上方に臨ませた姿勢で埋設し、さらに、この型鋼の内部に多数の鋼球を収容して構成される。この鋼球上で、函渠の下面に装着された突起(型鋼や、型鋼とコンクリートの複合体)が直接載置され、鋼球の回転、転動等によってその移送時の摩擦抵抗が低減された姿勢で、函渠が所定の敷設位置まで移送されるものである。
【0004】
また、函渠の底版にはたとえばグラウト充填孔が設けてあり、敷設位置にある函渠の底版下方と移送路との間の空間、移送路を構成する鋼球間の空隙等にグラウト等が充填硬化されることで、函渠と移送路を構成する基盤との一体化が図られ、函渠の設置がおこなわれる。
【0005】
敷設位置に順次移送設置された函渠同士が一体に連結されることにより、所定の縦断線形および長さを有した暗渠が構築されるものである。
【0006】
上記する暗渠の構築方法は、いわゆる横引き工法(もしくはボックスベアリング横引き工法)とも称されており、本出願人等によってなされた関連技術も多数開示されており、その一部として、たとえば特許文献1〜8を挙げることができる。
【0007】
これらの公開技術は、上記する一連の横引き工法に関する基本発明、移送路の勾配等のために転動してしまう鋼球の姿勢を保障するための発明、グラウトの充填方法に関する発明、移送路を構成する凹溝材における鋼球の占積率を規定した発明、移送路の途中で回転台を設け、函渠の移送方向の転換を図るようにした発明、などに関するものであり、その内容は多岐に亘っている。
【0008】
上記する横引き工法を適用することにより、特にその工期短縮が最優先される都市部の幹線道路直下における、共同溝等の暗渠の構築は可及的に短時間で、しかも安全かつ効率的におこなわれている。しかし、その一層の工期短縮を図るための方策の一つとして、函渠を1基ずつ移送する方法に代わって、2以上の函渠を連接し、この連接された複数の函渠を一度に敷設位置まで移送するという方法の発案に本発明者等は至っている。
【0009】
そして、本発明者等は、2以上の函渠(プレキャストコンクリート構造物)を連接して移送する際に生じ得る課題を掲げ、その課題を解決できる技術思想に至ったものである。
【0010】
ここで、上記する課題を図6を参照して説明する。本発明者等の掲げる課題とは、移送路が上り勾配部を有する場合、たとえば、平坦部から上り勾配部に移行する線形(図示例)や、下り勾配部から上り勾配部に移行する線形などを有する、いわゆる谷越えの場合に、2以上のプレキャストコンクリート構造物である函渠K,Kが緊張材T等で連接されることで、それらの進行方向の函渠全体の厚み(一つの函渠の厚みがtの場合に、これが2つ連接されて全体厚みは2t)が厚くなってしまう結果、この上り勾配部に進行方向前方の函渠が進入した際に、該前方の函渠が上り勾配部と干渉する可能性が極めて高く、この干渉によって函渠移送ができなくなるという課題である。
【0011】
このように、移送路が上り勾配部を有する、いわゆる谷超えの場合は往々にして想定されること、上記する谷越えとは反対の線形である、いわゆる山超えの場合には、2以上のプレキャストコンクリート構造物が連接されて移送される場合であっても山を超えたプレキャストコンクリート構造物が移送路と干渉するといった課題は生じ得ないこと、に鑑みれば、この谷超え移送路における上記課題を解消できる2以上のプレキャストコンクリート構造物を連続敷設する方法が提供されることで、上記する横引き工法の汎用性は一層拡大することは理解に易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第2879021号公報
【特許文献2】特開2007−332599号公報
【特許文献3】特開2007−262848号公報
【特許文献4】特開2005−90226号公報
【特許文献5】特開2004−225529号公報
【特許文献6】特開2002−194705号公報
【特許文献7】特開2002−161573号公報
【特許文献8】特開2002−88889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、敷設位置まで通じる移送路がその途中で上り勾配部を有する場合であっても、移送されるプレキャストコンクリート構造物と該上り勾配部とが干渉することなく、2以上のプレキャストコンクリート構造物を連接させた姿勢で移送することができ、もってその工期の一層の短縮を実現することのできる、2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成すべく、本発明による2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法は、連接された2以上のプレキャストコンクリート構造物を、少なくとも上り勾配部を有する移送路を経て敷設位置まで移送して連続敷設する方法において、前記移送路は、基盤路と、該基盤路に配設された凹溝状のレールと、該レール内に配された多数の転動体と、から構成されており、前記連接された2以上のプレキャストコンクリート構造物が、牽引手段もしくは押出し手段にて該転動体上を移送される、2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法であって、前記2以上のプレキャストコンクリート構造物は、相互に隙間を置いて、かつ、少なくとも該隙間の上方および下方の2箇所で隙間調整材を介して連接された姿勢で転動体上を移送され、進行方向前方のプレキャストコンクリート構造物が前記上り勾配部に進入する際に、少なくとも上方の前記隙間調整材を調整して前記上方の隙間を狭くし、該前方のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配部と同勾配の姿勢とする第1の姿勢調整をおこない、次いで、後続のプレキャストコンクリート構造物が前記上り勾配部に進入する際に、下方の前記隙間調整材を調整して前記下方の隙間を狭くし、該後続の暗渠構成体も上り勾配部と同勾配の姿勢とする第2の姿勢調整をおこなうことで、連接された2以上のプレキャストコンクリート構造物の上り勾配部への移送がおこなわれることを特徴とするものである。
【0015】
本発明による2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法は、特に、その移送路に上り勾配部を有する場合、たとえば、その途中に平坦部から前記上り勾配部に移行する縦断線形を有している移送路、その途中に下り勾配部から前記上り勾配部に移行する縦断線形を有している移送路、に対して、2以上のプレキャストコンクリート構造物を連接させた姿勢で移送して連続敷設する方法に関するものである。
【0016】
ここで、「プレキャストコンクリート構造物」とは、プレキャスト製のコンクリート構造物(コンクリート造、RC造、SRC造など)の全般を示称するものであり、上下水管路や電力配線、地下道などに供される共同溝等の暗渠(断面形状が矩形、正方形、円形、楕円形など)や、L型、U型、門型等の擁壁等を含むものである。また、「連続敷設」とは、2以上のプレキャストコンクリート構造物を相互に隣接させながら連続的に敷設し、必要に応じて相互に繋ぐことで所定延長の暗渠や擁壁等を施工することを意味している。このプレキャストコンクリート構造物の移送に際しては、適宜の方法によって地下空間が構築され、その際に、プレキャストコンクリート構造物の搬入地点(たとえば、地上からの吊り下ろし地点、地上からランプを介して地下空間へ通じる場合はこのランプの出発点など)から、各プレキャストコンクリート構造物の敷設位置まで通じる移送路も同時に構築される。なお、少なくとも、最初のプレキャストコンクリート構造物がその敷設位置に移送されるまでに移送路が完全に構築されていればよく、必ずしも、移送路の完成を待ってプレキャストコンクリート構造物の移送が開始される必要はない。
【0017】
また、地下空間の構築方法も任意であり、シールド工法や推進工法で適用される掘進機を使用して地下空間を先行施工してもよいし、地上部を一時的に占有し、開削工法にて地盤の掘削をおこない、地盤が掘削されてできた掘削壁面に土留めを施工することで地下空間(移送空間)を形成してもよい。なお、開削工法を適用する場合には、この移送空間の上方に仮の路盤を形成し、2以上のプレキャストコンクリート構造物の連続敷設に並行して該仮の路盤を地上交通路等に供するのが好ましい。
【0018】
ここで、形成される移送路は、基盤路と、この基盤路に配設された凹溝状のレールと、このレール内に配された多数の転動体と、から構成されている。
【0019】
基盤路は、たとえばRC造を含むコンクリート製の基盤であり、2以上のプレキャストコンクリート構造物が連続敷設された完成形においては、この基盤路と相互に繋がれたプレキャストコンクリート構造物とがモルタル等を介して一体化されるものである。
【0020】
また、凹溝状のレールは、たとえば、断面がコの字状、もしくはCの字状の型鋼がその開口を上方に向けた姿勢で上記基盤路内に埋設等されたものであり、たとえば、2条のレールが所定の間隔を置いて配設され、被移送のプレキャストコンクリート構造物の底版下面がこの2条のレールに案内されるようにして移送されるものである。
【0021】
さらに、この凹溝状のレール内には、多数の転動体が配されている。ここで、この転動体は、ボールベアリング等の鋼球からなり、この鋼球が凹溝状のレール内に回転自在で隙間なく敷き詰められていてもよいし、分散して配されていてもよいが、鋼球の効果的な転動を奏する上では、鋼球同士が離れて配されているのがよい。また、上記する公開公報で開示のごとく、鋼球を保持するための粘着マットや網等の保持層が凹溝内に配されていてもよい。このような保持層にて鋼球を保持する形態は、特に、下り勾配部や上り勾配部等、該保持層がない場合に鋼球が転動してしまう線形部に対して好適である。尤も、凹溝内に鋼球が密に配されている場合には、このような保持層がない場合でも、下り勾配部、上り勾配部での鋼球の転動の虞はない。
【0022】
また、凹溝から転動体が上方に突出している場合には、プレキャストコンクリート構造物の底版のたとえばフラットな下面が、直接的にこの転動体上に載置され、移送されるが、転動体が凹溝から突出していない場合には、プレキャストコンクリート構造物の底版の下面に、型鋼等で形成された突起もしくは突条を取り付けておき、その一部を凹溝内の転動体と直接的に当接するようにしておくのがよい。尤も、プレキャストコンクリート構造物がレールを脱線することなく移送されるために、後者の形態が選定されるのが好ましい。
【0023】
上記構成の移送路上を、連接された2以上のプレキャストコンクリート構造物が、たとえばウィンチ等の牽引手段にて牽引されながら移送され、もしくは、プレキャストコンクリート構造物後方から押出し機等の押出し手段にて押出されるようにして移送されるものであり、その移送手段は、移送路の線形(縦断線形、平面線形)等によって適宜選定される。一般的な横引き工法は、牽引手段にてプレキャストコンクリート構造物をその前方から牽引するものであるが、たとえば、複雑な線形の移送路上でプレキャストコンクリート構造物を移送する場合には、前方から牽引手段にて牽引する際にこの牽引手段を何度か設置し直す等の必要性が考えられるため、このような場合には、押出し手段にて後方からプレキャストコンクリート構造物を押出す方法が有効となり得る。なお、押出し機の一つの形態としては、移送路上を自走できる本体と、この本体に装着された油圧シリンダ機構と、から構成されるようなものであり、本体を基盤路に固定し、この基盤路に反力をとりながら油圧シリンダ機構を作動してそのロッドを前方に伸ばしながらプレキャストコンクリート構造物を押出し、次いで、基盤路への本体固定を解除し、ロッドを収容した後に該本体が前方に移送されたプレキャストコンクリート構造物付近まで進み、以後、この動作を繰り返しながらプレキャストコンクリート構造物の移送をおこなうものである。
【0024】
本発明の連続敷設方法では、2以上のプレキャストコンクリート構造物が相互に隙間を置いて(相互に遊び空間を有して)、さらに、少なくともこの隙間の上方と下方の2箇所で隙間調整材を介して連接された姿勢で、上記する転動体上を移送されるものである。
【0025】
ここで、この隙間調整材の一例として、2以上のPC鋼棒やPC鋼線等の緊張材と、緊張材同士を繋ぐカップラー等の繋ぎ材と、のユニットを挙げることができる。たとえば、相互に連接されるプレキャストコンクリート構造物それぞれの対向側面から、双方の緊張材が上記隙間内に伸び、双方の緊張材の端部を繋ぎ材で繋ぐような形態においては、この繋ぎ材の回転締め付け等で双方の緊張材同士を引きつけながら、隙間を狭くする等の調整を図ることができる。
【0026】
なお、「隙間の上方と下方の2箇所」とは、プレキャストコンクリート構造物の高さ方向において、その中央レベルに対する上方領域の任意のレベルと下方領域の任意のレベルのことであり、各レベルにおいて、プレキャストコンクリート構造物の幅方向に2以上の隙間調整材が設けられるものであってよい。
【0027】
たとえば、下方の隙間調整材はそのままで、上方の隙間調整材のみを調整して該上方の隙間を狭くすることにより、連接される2基のプレキャストコンクリート構造物のうち、後方のプレキャストコンクリート構造物は平坦姿勢のままであり、これに対して前方のプレキャストコンクリート構造物が斜めに持ち上げられるようにしてその姿勢が変更される。
【0028】
そして、進行方向前方のプレキャストコンクリート構造物が上り勾配部に進入する際には、上方の隙間調整材を調整して上方の隙間を狭くし、前方のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配と同勾配の姿勢とする第1の姿勢調整が図られ、次いで、後続のプレキャストコンクリート構造物が上り勾配部に進入する際には、下方の隙間調整材を調整して下方の隙間も同様に狭くし、該後続のプレキャストコンクリート構造物も上り勾配と同勾配の姿勢とする第2の姿勢調整が図られる。ここで、「進入する際」とは、プレキャストコンクリート構造物が進入する前のタイミング、進入後のタイミング、の双方を含む意味であり、少なくともプレキャストコンクリート構造物と上り勾配部との干渉防止が図られるような適宜のタイミングで姿勢調整が実行される。
【0029】
このような第1、第2の姿勢調整が順次おこなわれることにより、後方のプレキャストコンクリート構造物は勿論のこと、進行方向前方のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配部と干渉させることなく、該上り勾配部に進入させることができ、移送させることができる。
【0030】
たとえば3基のプレキャストコンクリート構造物が連接される場合の上記姿勢調整を概説すれば、進行方向前方のプレキャストコンクリート構造物に対して第1の姿勢調整が図られ、次いで、該前方のプレキャストコンクリート構造物が上り勾配部を進行する適宜のタイミングで2番目のプレキャストコンクリート構造物に対して第2の姿勢調整が図られ、次いで、最後尾のプレキャストコンクリート構造物が上り勾配部に進入する前後の適宜のタイミングで、該最後尾のプレキャストコンクリート構造物に対して第2の姿勢調整が図られるものである。なお、4基以上のプレキャストコンクリート構造物が連接された姿勢で移送される場合も同様である。
【0031】
上記するように、本発明の2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法によれば、連接される2以上のプレキャストコンクリート構造物が移送される移送路が上り勾配部を有する場合であっても、この上り勾配部とプレキャストコンクリート構造物とを干渉させることなく、安全かつ効率的に移送させることが可能となる。したがって、上り勾配部を有する複雑な縦断線形の移送路に対して、一度に複数のプレキャストコンクリート構造物を効率的に移送させることができ、従来のプレキャストコンクリート構造物の連続敷設方法に比して、その構築条件を格段に広範囲とでき、しかもその構築工程を格段に短縮することができるものである。
【0032】
また、本発明による2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法の好ましい実施の形態は、前記第1の姿勢調整に先行して、該第1の姿勢調整で形成される前記下方の隙間を保持する第1の隙間保持材が介層され、第2の姿勢調整に先行して、該第1の隙間保持材が取り除かれるものである。
【0033】
また、本発明による2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法の好ましい実施の形態は、前記第1の姿勢調整に先行して、該第1の姿勢調整で形成される前記下方の隙間を保持する第1の隙間保持材と、前記上方の隙間を保持する第2の隙間保持材と、が介層され、前記第2の姿勢調整に先行して、該第1の隙間保持材および第2の隙間保持材が取り除かれるものである。
【0034】
上記する連続敷設方法の実施の形態は、姿勢調整された後のプレキャストコンクリート構造物相互の姿勢を所定時間確実に保障するために、第1の隙間保持材を下方の隙間に介層させるもの、これに加えて第2の隙間保持材を上方の隙間に介層させるものであり、保持姿勢を解除したいタイミングで介層された隙間保持材を取り除くものである。なお、これらの隙間保持材は、プレキャストコンクリート構造物が移送路に搬入される前に、もしくは搬入された際に、予め取付けられていてもよい。
【0035】
ここで、これら第1、第2の隙間保持材として、たとえばライナープレートをはじめとする適宜の軸材、板材、ブロック材を適用できる。
【0036】
また、本発明による2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法の好ましい実施の形態は、前記連接された2以上のプレキャストコンクリート構造物が牽引手段にて移送される場合において、少なくとも進行方向後方のプレキャストコンクリート構造物が、その重心よりも下方位置を被牽引点として牽引されるものである。
【0037】
この実施形態として、進行方向前方のプレキャストコンクリート構造物の重心よりも下方位置に、たとえばこのプレキャストコンクリート構造物の壁内を貫通する貫通孔が設けてあり、ウィンチ等で牽引される緊張材は、この貫通孔に挿通され、進行方向後方のプレキャストコンクリート構造物の壁面もしくは壁内部の重心よりも下方位置の被牽引点に固定される形態を挙げることができる。このように、進行方向後方のプレキャストコンクリート構造物の重心よりも下方位置を被牽引点として、連接された2以上のプレキャストコンクリート構造物がウィンチ等で牽引されることで、牽引移送時のプレキャストコンクリート構造物の安定姿勢が保障されることが本発明者等によって確認されている。なお、進行方向前方のプレキャストコンクリート構造物の重心よりも下方位置を被牽引点として、連接された2以上のプレキャストコンクリート構造物が牽引される形態であっても、牽引移送時のプレキャストコンクリート構造物の安定姿勢を保障することができる。
【0038】
さらに、本発明による2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法の好ましい実施の形態は、前記連接された2以上のプレキャストコンクリート構造物がそれぞれ、その進行方向前方の下端領域に勾配部を有しており、これがプレキャストコンクリート構造物と前記上り勾配部との干渉防止手段となっているものである。
【0039】
上記するように進行方向前方のプレキャストコンクリート構造物の姿勢を第1の姿勢調整にて調整することで、該プレキャストコンクリート構造物と上り勾配部との干渉は抑止されるものであるが、その干渉防止をより高い確率で保障するべく、連接された各プレキャストコンクリート構造物の進行方向前方の下端領域にテーパー状、湾曲状の勾配部を設けたものである。
【0040】
なお、上記する下端領域の勾配部に加えて、もしくはこれとは別途の形態として、この進行方向前方の下端領域に、変形吸収性のある緩衝材やクッション材を配しておき、プレキャストコンクリート構造物と上り勾配が万一干渉した場合であっても、干渉時の衝撃を該緩衝材等で吸収するようにしておいてもよい。
【発明の効果】
【0041】
以上の説明から理解できるように、本発明の2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法によれば、プレキャストコンクリート構造物が移送される移送路が上り勾配部を有した縦断線形を備えている場合であっても、2以上のプレキャストコンクリート構造物を一度に、しかも、該上り勾配部と干渉させることなく、安全かつ効率的に移送することが可能となり、このような移送路を有する場所での連続敷設施工を可及的に短い工期で実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法において、連接された2つのプレキャストボックスカルバートが牽引手段にて牽引されている状況を説明した模式図である。
【図2】(a)は、平坦部から上り勾配部への縦断線形を有する移送路において、上り勾配部に進入する前段階で、進行方向前方のプレキャストボックスカルバートを上り勾配部と同勾配の姿勢に調整している状況(第1の姿勢調整)を説明した模式図であり、(b)は、次いで、後続のプレキャストボックスカルバートが上り勾配部に進入する際に、該後続のプレキャストボックスカルバートも上り勾配部と同勾配の姿勢に調整している状況(第2の姿勢調整)を説明した模式図である。
【図3】(a)、(b)はそれぞれ、図2a,bに対応する図であって、2つのプレキャストボックスカルバートの間に第1、第2の隙間保持材が介層されている状況を説明した図である。
【図4】プレキャストボックスカルバートの他の実施の形態を使用して、連接された2つのプレキャストボックスカルバートが牽引手段にて牽引されている状況を説明した模式図である。
【図5】プレキャストボックスカルバートが移送される移送空間の上方を地上交通に供しながら、該プレキャストボックスカルバートが敷設位置にて基盤路と一体化されている状況を説明した模式図である。
【図6】従来のプレキャストボックスカルバートの移送方法を説明した図であって、2つの管体を連接した姿勢で、平坦部から上り勾配部へ進入させる際に、進行方向前方の管体が上り勾配部と干渉している状況を説明した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図示例は、プレキャストコンクリート構造物としてプレキャストボックスカルバートを取り上げたものであるが、L型やU型、門型の擁壁等、ボックスカルバート以外のプレキャストコンクリート構造物を本発明の敷設方法の適用対象としてもよいことは勿論のことである。また、図示例は、2つのプレキャストボックスカルバートを連接した姿勢で移送する方法を説明したものであるが、3以上のプレキャストボックスカルバートを連接した姿勢で移送するものであってもよいことは勿論のことである。また、図示例は、連接されたプレキャストボックスカルバートが、平坦部から上り勾配部への移送区間を移送される状況を説明しているが、移送路が下り勾配部から上り勾配部への移送区間を有し、この移送区間を2以上のプレキャストボックスカルバートが連接された姿勢で移送される場合にも本発明の構築方法が適用できることは勿論のことである。また、移送されるプレキャストボックスカルバートは、図示例の構成、形態に限定されるものでなく、その内部構造は任意であるし、たとえば、2基以上のプレキャストボックスカルバートが積層されて一つのユニットを構成し、2以上のユニットが移送方向に連接された姿勢で移送され、敷設位置で基盤路と一体化されるものであってもよい。さらに、移送空間の構築は、開削工法のほか、シールド工法や推進工法が適用されてもよい。
【0044】
図1は、本発明の2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法において、連接された2つのプレキャストボックスカルバートが牽引手段にて牽引されている状況を説明した模式図であり、図2は、a,bの順に、平坦部から上り勾配部への縦断線形を有する移送路において、上り勾配部に進入する前段階で、進行方向前方のプレキャストボックスカルバートを上り勾配部と同勾配の姿勢に調整している状況(第1の姿勢調整)を説明した模式図と、次いで、後続のプレキャストボックスカルバートが上り勾配部に進入する際に、該後続のプレキャストボックスカルバートも上り勾配部と同勾配の姿勢に調整している状況(第2の姿勢調整)を説明した模式図を示したものである。
【0045】
プレキャストボックスカルバート1は、プレキャスト製でRC造のカルバート、鋼製のカルバート、鋼とRCの合成構造のカルバートなどであり、その中央のレベルラインCLよりも上方と下方のそれぞれに、双方を繋ぐ隙間調整用の連接材2,2(隙間調整材)をそれぞれの隅角部付近に有している。なお、上方、下方の連接材2,2の設置位置や基数等は図示例に限定されるものではない。
【0046】
連接材2は、プレキャストボックスカルバート1に開設された貫通孔に挿通されたPC鋼棒等の緊張材21と、この緊張材21,21を繋ぐカップラー等の調整材22と、から構成されており、たとえば、緊張材21は、不図示の楔留め材等でプレキャストボックスカルバート1の壁内に定着される。ここで、カップラー等からなる調整材22の具体的な内部構成として、図1中の拡大図a,bで示す形態を挙げることができる。拡大図aで示す形態は、カップラー22の内部に緊張材21,21が伸び、双方をナット23,23を介してカップラー22に固定する形態である。一方、拡大図bで示す形態は、カップラー22の内部に緊張材21,21が伸びて当接し、双方をナット23,23でカップラー22に固定するとともに、双方の当接箇所をパイプ24で防護する形態である。
【0047】
なお、図示例では、各プレキャストボックスカルバート1が4つの調整材22,…を有していて、連接されるプレキャストボックスカルバート1,1の間の隙間Sの調整の際に、いずれの調整材22にて緊張材21の長さ調整(隙間調整)をおこなってもよい実施例を示しているが、連接されるプレキャストボックスカルバート1のいずれか一方にのみ調整材22が設けられた実施例であってもよい。
【0048】
中央のレベルラインCLよりも上方と下方に設けられた連接材2,2の長さを調整材22,22にて調整することで、上方の隙間S2,下方の隙間S1を所望に調整することができる。
【0049】
また、プレキャストボックスカルバート1の底版には、たとえば複数の注入孔12,12が開設されており、該プレキャストボックスカルバート1が所定の敷設位置に移送された際に、プレキャストボックスカルバート1の内部からモルタル等を充填し、その下方の移送路Rとプレキャストボックスカルバート1の間の空間にモルタル等を充填硬化させ、双方の一体化を図ることができるようになっている。
【0050】
連接された2つのプレキャストボックスカルバート1,1のうち、その進行方向(X方向)前方のプレキャストボックスカルバート1の重心よりも下方位置には緊張材31が挿通する貫通孔14が設けてあり、この貫通孔14を介して、進行方向(X方向)後方のプレキャストボックスカルバート1の重心よりも下方の被牽引点KPに緊張材31が固定され、この緊張材31がウィンチ等の牽引手段3にて牽引されることで、2つの移送路R,R上を移送される。
【0051】
この移送路Rは、たとえば地盤を開削し、掘削されてできた掘削壁面が土留めされることで形成された移送空間IK内に構築されるものであり、たとえばクレーン等の重機にて、地上からプレキャストボックスカルバート1をこの移送空間IK内に吊り下ろし、たとえば2つのプレキャストボックスカルバート1,1を移送路R,R上に順次載置し、双方を連接するとともに緊張材31を進行方向前方のプレキャストボックスカルバート1に繋いだ後に、移送が開始される。
【0052】
ここで、移送路Rは、たとえばコンクリート製の基盤路R1と、この基盤路R1内に埋設されたC型鋼、H型鋼などからなる凹溝状のレールR2と、このレールR2の凹溝内に収容された鋼球等からなる多数の転動体R3,…と、から構成される。
【0053】
この転動体R3は、レールR2の凹溝内に直接的に収容されてもよいし、粘着マットや網等の保持層(不図示)が凹溝内に配され、この保持層にてその位置決めがなされた姿勢で凹溝内に収容されてもよい。
【0054】
プレキャストボックスカルバート1の底版下面には、2条のレールR,R内の転動体R3,…上に当接する型鋼などからなる脚11,11が設けてあり、転動体R3の転動もしくは回転により、可及的に低減された摩擦抵抗のもとで、この脚11,11が移動できるようになっている。
【0055】
本発明の連続敷設方法では、その移送路Rが、少なくとも上り勾配部を有するものであり、移送されるプレキャストボックスカルバート1がこの上り勾配部との間で干渉することなく、スムースに移送されることをその特徴とするものである。
【0056】
ここで、図2a,bは、移送路Rが、平坦部Raと上り勾配部Rbとからなる区間を有し、この平坦部Raから上り勾配部Rbへ移送される際のプレキャストボックスカルバート1,1の姿勢調整を説明するものである。なお、この縦断線形以外にも、移送路Rが、その途中に下り勾配部から上り勾配部へ移行する区間、下り勾配部から平坦部へ移行し、さらに平坦部から上り勾配へ移行する区間、等を有するものであっても、本発明の構築方法もしくは移送方法が適用できることに変わりはない。
【0057】
まず、図2aの一点鎖線で示すように、プレキャストボックスカルバート1,1はともに、その大きさが同程度の下方の隙間S1と上方の隙間S2をもった姿勢で平坦部Ra上を移送される。
【0058】
平坦部Raから上り勾配部Rbへの移行に先んじて、上方の連接材2の長さを短く調整し(カップラーにPC鋼棒をよりねじ込むことで、隙間調整用の連接材2に張力Q1を生じさせる)、進行方向前方のプレキャストボックスカルバート1を上り勾配部Rbの傾斜角:θと同程度の角度に姿勢調整する。この姿勢調整により、下方の隙間S1はそのままで、上方の隙間が相対的に短いS2’になっている。
【0059】
姿勢調整された2つのプレキャストボックスカルバート1,1を牽引手段にて牽引し、次に、図2bで示すように、後続のプレキャストボックスカルバート1が上り勾配部Rbに進入する際に、徐々に下方の連接材2の長さを調整し(カップラーにPC鋼棒をよりねじ込むことで連接材2に張力Q2を生じさせる)、後続のプレキャストボックスカルバート1も前方のプレキャストボックスカルバート1と同程度の勾配に姿勢調整する。この姿勢調整により、下方の隙間は、上方の隙間S1’と同程度の隙間S2’となっている。
【0060】
このように、上り勾配部Rbへの進入の際に、進行方向前方のプレキャストボックスカルバート1と後続のプレキャストボックスカルバート1の姿勢調整を所望に実行することで、双方のプレキャストボックスカルバート1,1をともに上り勾配部Rbと何等干渉させることなく上り勾配部Rbへ進入させることができ、以後の移送を継続することができる。
【0061】
また、図3a、bはそれぞれ、図2a,bに対応する図であって、2つのプレキャストボックスカルバートの間にライナープレート等からなる第1、第2の隙間保持材が介層されている状況を説明した図である。
【0062】
上方の隙間S2には、相対的に短めの第2の隙間保持材42がいずれか一方のプレキャストボックスカルバート1に予め取り付けられており、下方の隙間S1には、相対的に長めの第1の隙間保持材41が同様に予めいずれか一方のプレキャストボックスカルバート1に取付けられている。
【0063】
これら第1の隙間保持材41、第2の隙間保持材42により、図3aにおける姿勢調整の際の下方の隙間S1,上方の隙間S1’を保証することができ、このことは、進行方向前方のプレキャストボックスカルバート1の傾斜角:θを保障することをも意味する。
【0064】
次に、後続のプレキャストボックスカルバート1が上り勾配部Rbに進入する際には、第1の隙間保持材41を取り除き、その代わりに第2の隙間保持材42と同程度の長さの隙間保持材41’を下方の隙間S1’に介層させることで、上り勾配部Rbを移送される2つのプレキャストボックスカルバート1,1間の上下の隙間を、同程度の隙間に保障することができる。
【0065】
図4は、プレキャストボックスカルバートの他の実施の形態を使用して、連接された2つのプレキャストボックスカルバートが牽引手段にて牽引されている状況を説明した模式図である。
【0066】
図示するプレキャストボックスカルバート1Aは、その進行方向前方の下端領域に勾配部13を有したものであり、この勾配部13により、プレキャストボックスカルバート1と上り勾配部Rbとの干渉防止をより高い確率で保障することができる。なお、図示を省略するが、この勾配部13に加えて、もしくはこれとは別途の形態として、この進行方向前方の下端領域に、緩衝材やクッション材を配しておき、プレキャストボックスカルバート1と上り勾配部Rbが万一干渉した場合であっても、干渉時の衝撃を該緩衝材等で吸収するようにしておいてもよい。
【0067】
図5は、プレキャストボックスカルバートが移送される移送空間の上方を地上交通に供しながら、該プレキャストボックスカルバートが敷設位置にて基盤路と一体化されている状況を説明した模式図である。
【0068】
既述するように、開削工法にて地盤を掘削し、土留めDを施工することで移送空間IKを形成し、この移送空間IKの下面に上り勾配部を有する移送路Rが構築される。
【0069】
たとえば、地上から移送空間IK内の搬入位置へ吊り下ろされた2以上のプレキャストボックスカルバート1,…は、その搬入地点で連接され、連接された2以上のプレキャストボックスカルバート1,…は、その途中に位置する上り勾配部Rbを介して移送路Rをその敷設位置まで移送される。
【0070】
敷設位置においては、プレキャストボックスカルバート1の底版に開設された注入孔12を介してその内部からモルタル等が注入され、これがプレキャストボックスカルバート1と基盤路R1の間の空間、レールR2の間の転動体R3,…間の空隙を満たし、硬化することで、移送路Rとプレキャストボックスカルバート1の一体化が図られる。
【0071】
連接する2以上のプレキャストボックスカルバート1,…が順次移送され、相互に繋がれることで所定長さの暗渠が構築される。
【0072】
なお、この移送空間IKの上方には仮の路盤KRが設置され、2以上のプレキャストボックスカルバート1,…の連続敷設に並行して該仮の路盤KRが地上の任意使用(図示例のごとき地上交通など)に供されるのが好ましい。
【0073】
上記する本発明の2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法によれば、その移送路の途中に上り勾配部が存在する場合であっても、2以上のプレキャストボックスカルバートを連接した姿勢で、該上り勾配部と何等干渉させることなく、複数基を一気に移送することが可能となるため、多様な縦断線形の移送路に対して、さらに工期の短縮が図られた横引き工法を実現することができる。
【0074】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
1,1A…プレキャストボックスカルバート(プレキャストコンクリート構造物)、11…脚、12…注入孔、13…勾配部、2…隙間調整用の連接材(隙間調整材)、21…緊張材(PC鋼棒)、22…調整材(カップラー)、3…牽引手段(ウィンチ)、31…緊張材、41…第1の隙間保持材(下方の隙間を保持する保持材)、42…第2の隙間保持材(上方の隙間を保持する保持材)、S…隙間、S1…下方の隙間、S2…上方の隙間、R…移送路、R1…基盤路、R2…凹溝状のレール、R3…転動体(鋼球)、Ra…平坦部、Rb…上り勾配部、M…モルタル、IK…移送空間、D…土留め、KR…仮の路盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連接された2以上のプレキャストコンクリート構造物を、少なくとも上り勾配部を有する移送路を経て敷設位置まで移送して連続敷設する方法において、前記移送路は、基盤路と、該基盤路に配設された凹溝状のレールと、該レール内に配された多数の転動体と、から構成されており、前記連接された2以上のプレキャストコンクリート構造物が、牽引手段もしくは押出し手段にて該転動体上を移送される、2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法であって、
前記2以上のプレキャストコンクリート構造物は、相互に隙間を置いて、かつ、少なくとも該隙間の上方および下方の2箇所で隙間調整材を介して連接された姿勢で転動体上を移送され、
進行方向前方のプレキャストコンクリート構造物が前記上り勾配部に進入する際に、少なくとも上方の前記隙間調整材を調整して前記上方の隙間を狭くし、該前方のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配部と同勾配の姿勢とする第1の姿勢調整をおこない、
次いで、後続のプレキャストコンクリート構造物が前記上り勾配部に進入する際に、下方の前記隙間調整材を調整して前記下方の隙間を狭くし、該後続の暗渠構成体も上り勾配部と同勾配の姿勢とする第2の姿勢調整をおこなうことで、連接された2以上のプレキャストコンクリート構造物の上り勾配部への移送がおこなわれることを特徴とする、2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法。
【請求項2】
前記第1の姿勢調整に先行して、該第1の姿勢調整で形成される前記下方の隙間を保持する第1の隙間保持材が介層され、第2の姿勢調整に先行して、該第1の隙間保持材が取り除かれる、請求項1に記載の2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法。
【請求項3】
前記第1の姿勢調整に先行して、該第1の姿勢調整で形成される前記下方の隙間を保持する第1の隙間保持材と、前記上方の隙間を保持する第2の隙間保持材と、が介層され、前記第2の姿勢調整に先行して、該第1の隙間保持材および第2の隙間保持材が取り除かれる、請求項1に記載の2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法。
【請求項4】
前記連接された2以上のプレキャストコンクリート構造物が牽引手段にて移送される場合において、少なくとも進行方向後方のプレキャストコンクリート構造物が、その重心よりも下方位置を被牽引点として牽引される、請求項1〜3のいずれかに記載の2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法。
【請求項5】
前記連接された2以上のプレキャストコンクリート構造物がそれぞれ、その進行方向前方の下端領域に勾配部を有しており、これがプレキャストコンクリート構造物と前記上り勾配部との干渉防止手段となっている、請求項1〜4のいずれかに記載の2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法。
【請求項6】
前記移送路が、平坦部から前記上り勾配部に移行する縦断線形を有している、請求項1〜5のいずれかに記載の2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法。
【請求項7】
前記移送路が、下り勾配部から前記上り勾配部に移行する縦断線形を有している、請求項1〜5のいずれかに記載の2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法。
【請求項8】
地盤が掘削されてできた掘削壁面が土留めされることで移送空間が形成され、この移送空間の底面に前記移送路が配されており、
前記移送空間の上方に仮の路盤が設置可能であり、2以上のプレキャストコンクリート構造物の連続敷設に並行して該仮の路盤が地上の任意使用に供される、請求項1〜7のいずれかに記載の2以上のプレキャストコンクリート構造物を上り勾配を経て連続敷設する方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−102531(P2011−102531A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227600(P2010−227600)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000230010)ジオスター株式会社 (77)
【Fターム(参考)】