説明

2価−3価金属系有機無機層状複合体およびその製造方法

【課題】Mg原子などの2価の金属原子を含有し、有機溶媒などの有機物中での分散性(特に、再分散性)に優れた有機無機層状複合体を提供すること。
【解決手段】下記式(1):
[RSiO(4-n)/2][(M2/2O)(M2/3O)][HO] (1)
(式(1)中、Rは有機基を表し、Mは2価の金属原子を表し、Mは3価の金属原子を表し、nは1〜3の整数であり、x、yおよびzは、0.5≦x/(y+2z/3)≦3で表される条件を満たす任意の数であり、wは構造水の分子数を表す。)
で表されるものであり、2価の金属原子と3価の金属原子の合計原子数100に対して3価の金属原子の原子数が1〜66%であることを特徴とする2価−3価金属系有機無機層状複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機無機層状複合体およびその製造方法に関し、より詳しくは、金属酸化物からなる無機層と前記金属酸化物にケイ素原子を介して結合した有機基からなる有機層とを備える有機無機層状複合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機無機複合材料は、金属やその化合物などの無機材料からなる部位と、炭化水素鎖などの有機材料からなる部位とを有し、前記無機材料に起因する性質と前記有機材料に起因する性質とを兼ね備える材料であり、様々な分野で使用されている。
【0003】
このような有機無機材料として、例えば、特開2009−185148号公報(特許文献1)には、中心原子としてSi原子を含有する4面体構造により形成された層と中心原子としてMg原子またはAl原子などの金属原子を含有する8面体構造により形成された層とが2:1型または1:1型の層状ケイ酸塩構造を形成している無機層、および前記Si原子に共有結合により結合した有機基により形成された有機層とを備える有機無機層状複合体が開示されている。
【0004】
また、J.Phys.Chem.B、1997年、第101巻、第4号、531〜539頁(非特許文献1)には、このような有機無機層状複合体である、8面体構造の中心原子としてMg原子またはAl原子を含有する層状無機有機ナノ複合体が開示されており、8面体構造の中心原子としてMg原子のみを含有する層状無機有機ナノ複合体はAl原子のみを含有するものに比べてシランの縮合度が高くなることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−185148号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】L.Ukrainczykら、J.Phys.Chem.B、1997年、第101巻、第4号、531〜539頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、Mg原子のみを含有する有機無機層状複合体は、有機溶媒などの有機物中での分散性が低く、粉体として回収した有機無機層状複合体を使用時に再度、有機物に均一に分散させることが困難であった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、Mg原子などの2価の金属原子を含有し、有機溶媒などの有機物中での分散性、特に、微粒子の状態で回収した後、再度、有機溶媒などの有機物に分散させた場合の分散性(以下、「再分散性」という)に優れた有機無機層状複合体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、有機無機層状複合体中の金属原子としてMg原子などの2価の金属原子とAl原子などの3価の金属原子とを併用することによって、有機物中での有機無機層状複合体の分散性(特に、再分散性)が2価の金属原子のみを含有するものに比べて向上することを見出した。ところが、2価の金属原子のみを含有する有機無機層状複合体および3価の金属原子のみを含有する有機無機層状複合体がともにシラノール基に比べてシロキサン結合を多く含有するものであるにもかかわらず、2価の金属原子と3価の金属原子とを併用した場合において、3価の金属原子の含有量が多くなりすぎると、シラノール基に比べてシロキサン結合の含有量が少なくなることがわかった。そこで、本発明者らは、さらに鋭意研究を重ねた結果、有機物中での分散性(特に、再分散性)に優れ、シラノール基に比べてシロキサン結合を多く含有する有機無機層状複合体を得るためには、2価の金属原子と3価の金属原子とを併用するとともに、3価の金属原子の含有量を抑制する必要があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体は、下記式(1):
[RSiO(4-n)/2][(M2/2O)(M2/3O)][HO] (1)
(式(1)中、Rは有機基を表し、Mは2価の金属原子を表し、Mは3価の金属原子を表し、nは1〜3の整数であり、x、yおよびzは、0.5≦x/(y+2z/3)≦3で表される条件を満たす任意の数であり、wは構造水の分子数を表す。)
で表されるものであり、2価の金属原子と3価の金属原子の合計原子数100に対して3価の金属原子の原子数が1〜66%であることを特徴とするものである。
【0011】
このような本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体においては、前記3価の金属原子の原子数が、2価の金属原子と3価の金属原子の合計原子数100に対して1〜45%であることが好ましく、1〜10%であることが特に好ましい。
【0012】
また、本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体の製造方法は、下記式(2):
Si(OR(4−n) (2)
(式(2)中、Rは有機基を表し、ORはアルコキシ基を表し、nは1〜3の整数である。)
で表されるオルガノアルコキシシラン、2価の金属原子を含む2価金属化合物および3価の金属原子を含む3価金属化合物を極性溶媒である第一溶媒に溶解して、ケイ素原子と2価の金属原子と3価の金属原子とを、ケイ素原子と金属原子の原子比(ケイ素原子数/2価の金属原子と3価の金属原子の合計原子数)が0.5以上3以下であり、2価の金属原子と3価の金属原子の合計原子数100に対して3価の金属原子の原子数が1〜66%である条件で含有する原料溶液を調製する調製工程と、
前記オルガノアルコキシシランと前記2価金属化合物と前記3価金属化合物とを加水分解するとともに脱水縮合させて、ケイ素原子と2価の金属原子と3価の金属原子とを含有する2価−3価金属系有機無機層状複合体を合成する反応工程と、
前記反応工程で得られた溶液に該溶液と相溶しない第二溶媒を加えて前記2価−3価金属系有機無機層状複合体を該第二溶媒に溶解させた後、該第二溶媒と相溶しない溶液を除去する除去工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
【0013】
このような本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体の製造方法においては、前記反応工程において、前記原料溶液に水を添加して前記2価−3価金属系有機無機層状複合体を合成することが好ましく、前記除去工程において、前記反応工程後の水溶液に少なくとも水と相溶しない前記第二溶媒を加えた後、該水溶液を除去することが好ましい。また、前記反応工程において、前記原料溶液のpHをアルカリ性に調整して前記オルガノアルコキシシランと前記2価金属化合物と前記3価金属化合物との反応を促進させることが好ましい。
【0014】
また、本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体の製造方法において、前記第一溶媒としては、無機系極性溶媒および有機系極性溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の極性溶媒が好ましく、水および水溶性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の極性溶媒がより好ましい。前記第二溶媒としては、酢酸エチル、トルエンおよびクロロホルムからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒が好ましい。
【0015】
さらに、本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体の製造方法は、前記除去工程後、さらに、前記第二溶媒を除去して前記2価−3価金属系有機無機層状複合体を回収する回収工程を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体およびその製造方法において、前記3価の金属原子としては、アルミニウム(Al)および鉄(III)(Fe(III))のうちの少なくとも1種の金属原子が好ましく、前記2価の金属原子としては、マグネシウム(Mg)、ニッケル(II)(Ni(II))、コバルト(II)(Co(II))、銅(II)(Cu(II))、マンガン(Mn)、鉄(II)(Fe(II))、リチウム(Li)、バナジウム(II)(V(II))、ジルコニウム(Zr)および亜鉛(Zn)からなる群から選択される少なくとも1種の金属原子が好ましい。
【0017】
なお、本明細書において、「溶解」とは、物質(溶質)が溶媒に溶けて均一混合物(溶液)となる現象であって、溶解後、溶質の少なくとも一部がイオンとなる場合、溶質がイオンに解離せず分子状で存在している場合、分子やイオンが会合して存在している場合などが含まれる。
【0018】
また、本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体が、2価の金属原子のみを含有する2価金属系有機無機層状複合体に比べて、有機物中での分散性(特に、再分散性)に優れたものとなる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体は、図1に示すように、中心原子として2価の金属原子Mおよび3価の金属原子Mを含有する8面体構造により形成された層(以下、「8面体シート」という)1aおよび中心原子としてSi原子を含有する4面体構造により形成された層(以下、「4面体シート」という)1bからなる無機層1と、前記Si原子に共有結合により結合した有機基2aからなる有機層2とによって形成される層構造(図1は2:1型層状ケイ酸塩構造を示す。)を有するものであると推察される。
【0019】
一方、従来の2価金属系有機無機層状複合体は、図2に示すように、中心原子として2価の金属原子Mのみを含有する8面体シート1cおよび中心原子としてSi原子を含有する4面体シート1bからなる無機層1と、前記Si原子に共有結合により結合した有機基2aからなる有機層2とによって形成される層構造を有するものであると推察される。このような2価金属系有機無機層状複合体を構成する8面体シート1cにおいては、中心原子が2価の金属原子Mのみであるため、8面体シート1cは層方向に成長しやすく、その結果、得られる有機無機層状複合体の粒径が大きくなり、有機物中に分散しにくくなると推察される。
【0020】
これに対して、本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体を構成する8面体シート1aにおいては、中心原子としてMg原子などの2価の金属原子MとAl原子などの3価の金属原子Mとが混在しているため、8面体シート1aの層方向への成長が抑制され、得られる有機無機層状複合体の粒径が小さくなるとともに、粒子の表面電位が2価金属系有機無機層状複合体に比べて高くなり、有機溶媒などの有機物に分散しやすくなると推察される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、2価の金属原子を含有し、有機溶媒などの有機物中での分散性(特に、再分散性)に優れ、シラノール基に比べてシロキサン結合を多く含有する有機無機層状複合体を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体の層構造の一例を示す模式図である。
【図2】従来の2価金属系有機無機層状複合体の層構造の一例を示す模式図である。
【図3】スメクタイト系層状粘土鉱物の層構造の一例を示す模式図である。
【図4】実施例1〜3、5、6および比較例1、4で得られた各層状複合体の動的光散乱法により測定した粒度分布を示すグラフである。
【図5】実施例2、4、6および比較例1〜4で得られた各層状複合体の29Si−HD/MAS NMRスペクトルを示すグラフである。
【図6】実施例2、3、5、6および比較例1〜3で得られた各層状複合体のX線回折パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0024】
先ず、本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体について説明する。本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体(以下、単に「本発明の有機無機層状複合体」ともいう。)は、下記式(1):
[RSiO(4-n)/2][(M2/2O)(M2/3O)][HO] (1)
(式(1)中、Rは有機基を表し、Mは2価の金属原子を表し、Mは3価の金属原子を表し、nは1〜3の整数であり、x、yおよびzは、0.5≦x/(y+2z/3)≦3で表される条件を満たす任意の数であり、wは構造水の分子数を表す。)
で表されるものである。上述したように、この有機無機層状複合体は、8面体シートの中心原子として2価の金属原子Mと3価の金属原子Mとが混在しているため、2価の金属原子のみを含有する有機無機層状複合体に比べて、有機溶媒などの有機物に対して高い分散性(特に、再分散性)を示す。
【0025】
本発明の有機無機層状複合体において、3価の金属原子の原子数は2価の金属原子と3価の金属原子との合計原子数100に対して1〜66%である。3価の金属原子の原子数が前記下限未満になると、本発明の有機無機層状複合体の有機物中での分散性(特に、再分散性)が低下し、他方、前記上限を超えると、シロキサン結合の含有量がシラノール基に比べて少なくなり、4面体シートの機械的強度(例えば、硬度)が低下し、その結果、本発明の有機無機層状複合体の機械的強度(例えば、硬度)が低下する。また、シロキサン結合の含有量が多くなることによって4面体シートの機械的強度が高くなり、機械的強度に優れた2価−3価金属系有機無機層状複合体が形成されるという観点から、前記3価の金属原子の含有量は45%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、15%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
また、本発明の有機無機層状複合体においては、前記3価の金属原子の含有量が10%以下であることが特に好ましい。3価の金属原子の含有量が10%以下になると、8面体シートの機械的強度(例えば、硬度)がさらに向上し、得られる2価−3価金属系有機無機層状複合体は機械的強度(例えば、硬度)に非常に優れたものとなる。なお、3価の金属原子の含有量が10%以下になると8面体シートの機械的強度がさらに向上する理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。先ず、従来の3価金属系有機無機層状複合体の構造について説明する。従来の3価金属系有機無機層状複合体は、中心原子として3価の金属原子のみを含有する8面体シートおよび中心原子としてSi原子を含有する4面体シートからなる無機層と、前記Si原子に共有結合により結合した有機基からなる有機層とによって形成される層構造を有するものであると推察される。このような3価金属系有機無機層状複合体における無機層の層構造は、8面体シートの中心原子が3価の金属原子のみであることから、図3に示すようなジ亜群(dioctahedral)のスメクタイト系層状粘土鉱物を構成する層状ケイ酸塩構造に類似するものであると推察される。ジ亜群の粘土鉱物中の8面体シートには、8面体構造の3つに1つの割合で空孔が存在することが知られており、3価金属系有機無機層状複合体中の8面体シートにおいても、同様の空孔が存在すると推察される。このような空孔が存在する8面体シートは、空孔が存在しない8面体シートに比べて、結晶性が低く、機械的強度が低くなるが、ジ亜群の粘土鉱物においては、図3に示したように、層間カチオンを介して層状ケイ酸塩構造が層方向に成長するため、機械的強度の低下が抑制される。これに対して、3価金属系有機無機層状複合体においては、4面体シート中のケイ素原子に有機基が共有結合しているため、無機層の層方向の成長が起こりにくく、粒径の小さい有機無機層状複合体が形成されるものの、無機層における機械的強度の低下は十分に抑制されないと推察される。
【0027】
一方、図2に示した2価金属系有機無機層状複合体における無機層の層構造は、8面体シート1cの中心原子が2価の金属原子のみであることから、トリ亜群(trioctahedral)のスメクタイト系層状粘土鉱物を構成する層状ケイ酸塩構造に類似するものであると推察される。トリ亜群の粘土鉱物の8面体シートには空孔が存在しないため、2価金属系有機無機層状複合体中の8面体シート1cにおいても空孔は存在しないと推察される。このような空孔が存在しない8面体シートにおいては、空孔が存在する8面体シートのような結晶性の低下やそれに起因する機械的強度の低下が起こらないため、2価金属系有機無機層状複合体は3価金属系有機無機層状複合体に比べて高い機械的強度を示すと推察される。
【0028】
本発明の有機無機層状複合体中の8面体シート1aには、図1に示したように、中心金属が3価の金属原子Mである8面体構造と中心原子が2価の金属原子Mである8面体構造が混在していると推察される。すなわち、本発明の有機無機層状複合体中の8面体シート1aは、空孔が存在する8面体シートと空孔が存在しない8面体シートとが面方向に混在したものであると推察される。上述したように、空孔が存在しない8面体シートは空孔が存在する8面体シートに比べて結晶性が高く、機械的強度が高いことから、これらが面方向に混在している本発明の有機無機層状複合体中の8面体シート1aにおいては、空孔が存在しない8面体シートの割合が多くなるにつれて、結晶性が高くなり、それに起因して機械的強度が高くなると推察される。そして、このような効果は、空孔が存在しない8面体シートの割合が90%以上、すなわち、3価の金属原子の含有量が10%以下になると、顕著に現れ、8面体シート1aの機械的強度が著しく向上すると推察される。
【0029】
本発明にかかる前記式(1)中のMは2価の金属原子を表す。このような2価の金属原子としては、マグネシウム(Mg)、ニッケル(II)(Ni(II))、コバルト(II)(Co(II))、銅(II)(Cu(II))、マンガン(Mn)、鉄(II)(Fe(II))、リチウム(Li)、バナジウム(II)(V(II))、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)が挙げられ、中でも、本発明の有機無機層状複合体の有機物中での分散性(特に、再分散性)が高く、分散粒径が小さくなるという観点から、マグネシウム(Mg)、ニッケル(II)(Ni(II))が好ましく、マグネシウム(Mg)が特に好ましい。本発明の有機無機層状複合体は、このような2価の金属原子のうちの1種を単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0030】
また、前記式(1)中のMは3価の金属原子を表す。このような3価の金属原子としては、アルミニウム(Al)、鉄(III)(Fe(III))が挙げられ、中でも、本発明の有機無機層状複合体の有機物中での分散性(特に、再分散性)が高く、分散粒径が小さくなるという観点から、アルミニウム(Al)が好ましい。本発明の有機無機層状複合体は、このような3価の金属原子のうちの1種を単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0031】
本発明にかかる前記式(1)中のRは有機基を表し、後述する本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体の製造方法に用いられるオルガノアルコキシシランに由来するものである。このような有機基の炭素数としては特に制限はないが、例えば、3〜18が好ましく、3〜12がより好ましい。
【0032】
このような有機基としては特に制限はなく、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基)、アリール基(例えば、フェニル基)などが挙げられる。また、これらの有機基には、(メタ)アクリロキシ基、フェニル基、グリシドキシ基、エポキシシクロヘキシル基、アミノ基、フェノキシ基、アセチル基、グリシジル基、ウレイド基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子)、メルカプト基、イソチオウロニウム基、酸無水物基(例えば、コハク酸無水物基)、含窒素複素環(例えば、イミダゾール環、イミダゾリン環、ピリジン環、ピロール環、アジリジン環、トリアゾール環)、ニトロ基、アミド基、カルボメトキシ基、アルデヒド基、ケトン基、水酸基、スルフォニル基、含硫黄複素環(例えば、チオフェン環)、シアノ基、イソシアネート基などの官能基が置換していることが好ましく、例えば、ラジカル重合型の樹脂と複合化する場合には、置換基として(メタ)アクリロキシ基を有する有機基が好ましい。本発明の有機無機層状複合体は、このような有機基のうちの1種を単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0033】
前記式(1)中のx、yおよびzは、本発明の有機無機層状複合体を製造する際に用いられる原料に含まれるケイ素原子、2価の金属原子および3価の金属原子の量に基づいて求めることができる。x/(y+2z/3)は、本発明の有機無機層状複合体に含まれるSi原子と金属原子(2価の金属原子および3価の金属原子)とのモル比を表す。
【0034】
また、前記構造水は、4面体シート中のシラノール基を構成する水酸基や8面体シート中の2価または3価の金属原子に結合した水酸基などに由来するものであり、その存在は、核磁気共鳴(NMR)測定によって確認することができる。なお、4面体構造にシラノール基が含まれている場合があるため、wの値は整数に限定されない任意の数であるが、[(y+z)/(y+2z/3)]−1≦w/(y+2z/3)≦[(y+z)/(y+2z/3)]+(1/2)で表される条件を満たすことが好ましい。w/(y+2z/3)は、構造水と金属原子(2価の金属原子および3価の金属原子)とのモル比を表す。
【0035】
このような本発明の有機無機層状複合体は、有機溶媒などの有機物中での分散性(特に、再分散性)に優れている。例えば、本発明の有機無機層状複合体を、最大分散粒径が好ましくは100nm以下、より好ましくは75nm以下、特に好ましくは50nm以下となるように、有機溶媒中に分散することが可能である。なお、前記最大分散粒径は、有機溶媒中に分散した本発明の有機無機層状複合体の粒度分布を動的光散乱法により測定することによって、この粒度分布における最大粒径として求めることができる。
【0036】
次に、本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体の製造方法(以下、「本発明の有機無機層状複合体の製造方法」ともいう。)について説明する。本発明の有機無機層状複合体は、以下で説明する調製工程、反応工程および除去工程を経て製造することができる。
【0037】
[調製工程]
先ず、本発明にかかる調製工程において、オルガノアルコキシシラン、2価の金属原子を含む2価金属化合物および3価の金属原子を含む3価金属化合物を極性溶媒である第一溶媒に溶解して、ケイ素原子と2価の金属原子と3価の金属原子とを含有する原料溶液を調製する。なお、この工程における「溶解」は、オルガノアルコキシシラン、2価金属化合物および3価金属化合物のうちの1種または2種以上が第一溶媒に粒子として分散した状態を含むものとする。
【0038】
本発明に用いられる前記オルガノアルコキシシランとしては、下記式(2):
Si(OR(4−n) (2)
(式(2)中、Rは有機基を表し、ORはアルコキシ基を表し、nは1〜3の整数である。)
で表されるものであれば特に制限はない。このオルガノアルコキシシランを構成するSi原子は、本発明の有機無機層状複合体を構成するSi原子(好ましくは、本発明の有機無機層状複合体中の4面体シートの中心原子であるSi原子)となり、前記式(2)中の有機基Rは、本発明の有機無機層状複合体中の有機層を構成する有機基Rとなる。
【0039】
前記式(2)中のORはアルコキシ基を表す。このようなアルコキシ基としては特に制限はないが、メトキシ基、エトキシ基などが好ましい。前記オルガノアルコキシシランは、このようなアルコキシ基のうちの1種を単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0040】
このようなオルガノアルコキシシランとしては、(メタ)アクリル系アルコキシシラン、ビニル系アルコキシシラン、アルキル系アルコキシシラン、芳香族アルコキシシラン、エポキシ系アルコキシシラン、アミノ系アルコキシシラン(例えば、−NH、−NHCH、−N(CHを有するアルコキシシラン)およびアルコキシシリルアミン、ウレイド系アルコキシシラン、ハロゲン系アルコキシシラン、メルカプト系アルコキシシラン、アルコキシシリル基を有するイソチオウロニウム塩、アルコキシシリル基を有する酸無水物、含窒素複素環(例えば、イミダゾール環、イミダゾリン環、ピリジン環、ピロール環、アジリジン環、トリアゾール環等)を有するオルガノアルコキシシラン、ニトロ基(−NO)を有するオルガノアルコキシシラン、カルボメトキシ基(−COOCH)を有するオルガノアルコキシシラン、アルデヒド基(−CH=O)を有するオルガノアルコキシシラン、ケトン基(−(C=O)−R)を有するオルガノアルコキシシラン、水酸基(−OH)を有するオルガノアルコキシシラン、スルフォニル基(−S(=O)−)を有するオルガノアルコキシシラン、含硫黄複素環(例えば、チオフェン環)を有するオルガノアルコキシシラン、シアノ基(−NC)を有するオルガノアルコキシシラン、イソシアネート基(−N=C=O)を有するオルガノアルコキシシランなどが好ましく、例えば、ラジカル重合型の樹脂と複合化する場合には、(メタ)アクリル系アルコキシシランがより好ましく、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。また、このようなオルガノアルコキシシランは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0041】
また、本発明の有機無機層状複合体に含まれる有機基の量を調整するために、必要に応じて、有機基を含有しないアルコキシシランを前記オルガノアルコキシシランと併用することができる。このような有機基を含有しないアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトシキシラン(TEOS)、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシランなどが挙げられる。このようなアルコキシシランは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。なお、有機基を含有しないアルコキシシランの使用割合が多い場合には、無機的な性質が強い有機無機層状複合体が形成されやすい。無機的な性質が強い有機無機層状複合体は、有機溶媒などの有機物との親和性が低く、樹脂被膜や樹脂成形体のフィラーとしては好ましくない。また、無機的な性質が強い有機無機層状複合体が形成されると、後述する除去工程において使用する第二溶媒が特定のものに限定される。このため、無機的な性質が強い有機無機層状複合体は、本発明の有機無機層状複合体の製造方法によって製造することが困難な場合がある。従って、本発明の有機無機層状複合体の製造方法において、有機基を含有しないアルコキシシランを使用する場合には、前記オルガノアルコキシシランと有機基を含有しないアルコキシシランとのモル比(オルガノアルコキシシラン:有機基を含有しないアルコキシシラン)を、50:50以上にすることが好ましく、70:30以上にすることがより好ましい。
【0042】
本発明に用いられる2価金属化合物としては、上述した2価の金属原子を含む金属化合物であれば特に制限はないが、オルガノアルコキシシランや3価金属化合物との反応性の観点から、2価の金属原子の無機塩、有機塩、アルコキシドが好ましい。無機塩としては、塩化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩などが好ましく、有機塩としては、酢酸塩などが好ましく、アルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシドなどが好ましい。このような2価金属化合物は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明に用いられる3価金属化合物としては、上述した3価の金属原子を含む金属化合物であれば特に制限はないが、オルガノアルコキシシランや2価金属化合物との反応性の観点から、3価の金属原子の無機塩、有機塩、アルコキシドが好ましい。無機塩としては、塩化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩などが好ましく、有機塩としては、酢酸塩などが好ましく、アルコキシドとしては、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、ブトキシドなどが好ましい。このような3価金属化合物は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明にかかる調製工程においては、このようなオルガノアルコキシシラン、2価金属化合物および3価金属化合物を極性溶媒である第一溶媒に溶解して原料溶液を調製する。このとき用いられる第一溶媒としては、極性溶媒であれば、無機系極性溶媒(例えば、水、無機酸)、有機系極性溶媒(例えば、アルコール、アセトン、有機酸)、およびこれら2種以上の混合溶媒のいずれの溶媒も用いることができるが、中でも、水、水溶性有機溶媒(例えば、炭素数1〜5の鎖状アルコールなどの低級アルコール、アセトン)、およびこれら2種以上の混合溶媒が好ましい。
【0045】
また、本発明にかかる調製工程においては、得られる原料溶液中に含まれるケイ素原子と金属原子の原子比(ケイ素原子数/2価の金属原子と3価の金属原子の合計原子数。以下、「ケイ素原子数/金属原子数」とも表す。)が0.5以上3以下となるように、前記原料溶液を調製する。原料溶液中のケイ素原子と金属原子の原子比を前記範囲に調整することによって、中心原子がケイ素原子である4面体シートと中心原子が2価および3価の金属原子である8面体シートからなる2:1型または1:1型のフィロケイ酸塩構造を有する無機層を形成することができる。特に、ケイ素原子数/金属原子数を1以上3以下に調整することによって2:1型のフィロケイ酸塩構造を有する無機層を形成することができ、0.5以上1以下に調整することによって1:1型のフィロケイ酸塩構造を有する無機層を形成することができる。
【0046】
また、本発明の有機無機層状複合体中に、1つの有機分子または有機分子の集合体であるコア粒子を内包させることによって、前記コア粒子とそれを内包する本発明の有機無機層状複合体からなる皮殻層とを含有する複合粒子を製造することができる。このような複合粒子を得るためには、例えば、本発明にかかる調製工程において、前記オルガノアルコキシシラン、2価金属アルコキシド、3価金属アルコキシド、および紫外線吸収分子や色素分子といった有機分子を、第一溶媒に溶解して原料溶液を調製すればよい。このような原料溶液中では、反応前に、オルガノアルコキシシランが2価および3価の金属アルコキシドに配位し、さらに、オルガノアルコキシシランが配位した金属アルコキシドが有機分子の周囲に会合して会合体が形成される。そして、このような会合体を反応させることによって、前記コア粒子とそれを内包する本発明の有機無機層状複合体からなる皮殻層とを含有する複合粒子が得られる。また、このような複合粒子は、原料溶液中のケイ素原子数/金属原子数が0.5以上3以下であれば特に問題なく製造することができるが、ケイ素原子数/金属原子数を1以上3以下に調整することによって容易に製造することが可能となる。
【0047】
さらに、本発明にかかる調製工程においては、得られる原料溶液中に含まれる3価の金属原子の原子数を2価の金属原子と3価の金属原子の合計原子数100に対して1〜66%となるように、前記原料溶液を調製する。3価の金属原子の原子数を前記範囲に調整することによって、シロキサン結合の含有量をシラノール基に比べて多くすることができ、その結果、4面体シートの機械的強度(例えば、硬度)が高くなり、本発明の有機無機層状複合体の機械的強度(例えば、硬度)も高くなる。また、シロキサン結合の含有量が多くなることによって4面体シートの機械的強度が高くなり、機械的強度に優れた2価−3価金属系有機無機層状複合体が形成されるという観点から、前記3価の金属原子の含有量を45%以下に調整することが好ましく、30%以下に調整することがより好ましく、15%以下に調整することがさらに好ましい。
【0048】
また、本発明にかかる調製工程においては、前記3価の金属原子の含有量を10%以下に調整することが特に好ましい。これにより、8面体シートの機械的強度(例えば、硬度)がさらに向上し、機械的強度(例えば、硬度)に非常に優れた2価−3価金属系有機無機層状複合体を得ることができる。
【0049】
[反応工程]
次に、本発明にかかる反応工程において、前記オルガノアルコキシシランと前記2価金属化合物と前記3価金属化合物とを加水分解するとともに脱水縮合させて、ケイ素原子と2価の金属原子と3価の金属原子とを含有する2価−3価金属系有機無機層状複合体を合成する。前記調製工程において調製した原料溶液中に水が存在する場合には、前記オルガノアルコキシシランと前記2価金属化合物と前記3価金属化合物は加水分解されるとともに脱水縮合する。一方、前記原料溶液中に水が存在しない場合には、原料溶液に水を添加することによって上記の加水分解反応および脱水縮合反応が進行する。このような水の添加量としては、前記オルガノアルコキシシラン、前記2価金属化合物および前記3価金属化合物を十分に加水分解することができる量であれば特に制限はない。
【0050】
また、本発明にかかる反応工程においては、原料溶液のpHをアルカリ性に調整することが好ましい。これにより、前記オルガノアルコキシシランと前記2価金属化合物と前記3価金属化合物との反応を促進させることができる。このようなpH調整は、2価および3価の金属化合物として2価および3価の金属原子の無機塩および/または有機塩を使用する場合に特に有効である。前記pH調整において添加するアルカリとしては特に制限はないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどを水溶液の状態で添加することが好ましい。このようにして調整される原料溶液のpHとしては、所望の程度以上の速度で結晶化が起こるpHであり且つ有機基が損なわれるような強アルカリ性でなければ特に制限はなく、また、前記オルガノアルコキシシランと2価および3価の金属化合物の種類に依存するため一律には規定できないが、pH8〜10程度に調整することが好ましい。
【0051】
このように、原料溶液中に水または水とアルカリが存在すると、前記オルガノアルコキシシラン並びに2価および3価の金属化合物のうち、先ず、2価および3価の金属化合物が加水分解され、もしくは金属水酸化物となり、いずれの場合においても−M−OHおよび−M−OHが生成する。このとき形成される加水分解物もしくは金属水酸化物の結晶構造は、中心原子として2価の金属原子および3価の金属原子を含有する8面体構造であると推察され、この8面体構造が成長することによって8面体シートが形成されると推察される。その後、−M−OHおよび−M−OHは、前記オルガノアルコキシシランの加水分解を促進させるとともに、加水分解により生成したシラノール基(Si−OH)と脱水縮合することによって、R−Si−O−MおよびR−Si−O−Mで表される結合を形成する。このとき、中心原子としてSi原子を含有する4面体構造が前記8面体構造に結合した状態で形成され、この4面体構造が8面体構造の成長に追従して成長することによって、4面体シートが形成されると推察される。
【0052】
このような加水分解反応および脱水縮合反応は、室温付近の温度で十分に進行するが、有機基を損なわない程度の一定の高い温度下で行ってもよい。また、このような反応は、条件次第で、直ちに完了する場合もあり、ある程度(例えば、1〜2日間程度)のエージングを要する場合もある。
【0053】
原料溶液(水やアルカリを添加した場合にはそれらの含むもの)における本発明の有機無機層状複合体の原料(前記オルガノアルコキシシラン、2価金属化合物および3価金属化合物、および使用した場合には有機基を含有しないアルコキシシラン)の初期含有量は特に制限はなく、また、前記オルガノアルコキシシラン並びに2価および3価の金属化合物の分子量に依存するため一律には規定できないが、原料溶液の総量100質量%に対して前記原料の総量が25質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、体積平均粒径が10〜500nmの微細な2価−3価金属系有機無機層状複合体が得られるという観点から、5質量%以下であることが特に好ましい。
【0054】
[除去工程]
次に、前記反応工程で得られた溶液に、この溶液と相溶しない第二溶媒を加えて本発明の有機無機層状複合体を第二溶媒に溶解させる。前記反応工程で得られた溶液と第二溶媒は2相に分離しているため、第二溶媒と相溶しない溶液を除去することによって、本発明の有機無機層状複合体を第二溶媒に溶解した状態で回収することができる。
【0055】
前記第二溶媒としては、前記反応工程で得られた溶液と相溶せず、本発明の有機無機層状複合体を溶解させることができるものであれば特に制限はないが、例えば、第一溶媒として水、水溶性有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を使用した場合には、前記反応工程で得られた溶液が水溶液または水性溶液であるため、水溶液または水性溶液からの抽出溶媒として使用される有機溶媒を第二溶媒として使用することができる。このような有機溶媒としては、例えば、n−ペンタン、2−メチルブタン、2,2−ジメチルプロパン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、n−オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−ノナン、n−デカンなどの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル;オルト蟻酸トリエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、1,1,2,2,−テトラクロロエタン、クロロベンゼン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。このような有機溶媒は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0056】
本発明の有機無機層状複合体は、親水性の無機層と疎水性の有機層を備えるものであるため、界面活性剤と同様に機能し、前記反応工程で得られた溶液と第二溶媒との相分離を妨げる傾向がある。このような傾向は、第二溶媒の疎水性が強いほど顕著であるため、第二溶媒としては、酢酸エチル、トルエンおよびクロロホルムといった、水や水性溶媒と若干相溶する有機溶媒が好ましい。
【0057】
本発明にかかる除去工程においては、前記反応工程で得られた溶液に第二溶媒を加えた後、十分に混合し、平衡状態となるように静置する。これにより、溶液は上層と下層の2層に分離する。例えば、第一溶媒として水、水溶性有機溶媒、またはこれらの混合溶媒を使用した場合、通常、下層に水溶液または水性溶液、上層に第二溶媒を含む溶液が位置する。このとき、上層の第二溶媒を含む溶液には主として本発明の有機無機層状複合体が溶質として存在する。一方、下層の水溶液または水性溶液には不純物(例えば、pH調整の際に生成した副生成物、必要以上に無機成分が多く含まれる有機無機複合体、未反応物など)が溶質として存在する。なお、第二溶媒がハロゲン系溶媒のように水より比重が重い溶媒である場合には、上層に水溶液または水性溶液、下層に第二溶媒を含む溶液が位置する。
【0058】
その後、前記水溶液または前記水性溶液を除去することによって、本発明の有機無機層状複合体を第二溶媒に溶解した状態で回収することができる。このようにして回収した溶液は、本発明の有機無機層状複合体を構成する有機基の種類によっては、そのまま塗料組成物や成形原料として用いることができる。また、本発明の有機無機層状複合体を含む前記溶液に有機モノマーを添加したり、既存の塗料組成物または成形原料を混合したりすることによって、本発明の有機無機層状複合体をフィラーとして含有する塗料組成物または成形原料を得ることができる。さらに、本発明の有機無機層状複合体を構成する有機基が、他の有機無機複合体の有機基と反応可能な(結合可能な)反応基を末端に有するものである場合には、これらの有機基同士を反応させることによって、本発明の有機無機層状複合体と他の有機無機複合体が結合し、被膜や成形体を形成することができる。
【0059】
なお、本発明にかかる除去工程においては、必要に応じて第二溶媒の種類を変更するなどして、同様の手順(抽出操作)を複数回繰り返してもよい。
【0060】
また、本発明の有機無機層状複合体の製造方法は、前記除去工程で得られた本発明の有機無機層状複合体を含有する溶液から第二溶媒を除去して、本発明の有機無機層状複合体を固体(好ましくは粉体、より好ましくは微粒子)の状態で回収する回収工程を含んでいてもよい。第二溶媒の除去方法としては、エバポレータなどを用いて第二溶媒を蒸発させる方法が挙げられる。特に、第二溶媒として酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、およびこれら2種以上の混合溶媒を使用した場合には、本発明の有機無機層状複合体を高温に曝すことなく第二溶媒を蒸発させることができる。
【0061】
このような回収工程により回収された本発明の有機無機層状複合体は、フィラーとして既存の塗料組成物または成形原料に添加してもよいし、溶媒に分散させて塗料組成物や成形原料として用いてもよいし、さらに有機モノマーを添加してもよい。いずれの場合においても、本発明の有機無機層状複合体を良好に分散させることができる。
【0062】
以上、本発明の有機無機層状複合体およびその製造方法の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態により実施することができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1)
50mlのメタノールに0.02g(0.0001mol)の塩化アルミニウム六水和物(和光純薬工業(株)製、特級)と2.01g(0.0099mol)の塩化マグネシウム六水和物(和光純薬工業(株)製、特級)を添加して撹拌し、これらを溶解した。得られた溶液に4.97g(0.02mol)の3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製「LS−3380」)を添加し、さらに30分間撹拌して原料溶液を得た。
【0065】
この原料溶液に200mlのイオン交換水を添加し、ミキサー(松下電器産業(株)製業務用ミキサー「MX151S」)を用いて40分間撹拌した後、撹拌しながら1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬工業(株)製、容量分析用)20.1mlを添加し、さらに10分間撹拌を継続した。その後、得られた溶液を1日間静置したところ、白色の沈殿物が生成した。
【0066】
この沈殿物を含む水溶液の透明上澄み液を除去した後、150mlの酢酸エチル(和光純薬工業(株)製、和光一級)を添加して十分に撹拌し、水溶液中の沈殿物を酢酸エチルに溶解させて抽出した。この抽出操作を3回繰り返してすべての沈殿物を酢酸エチルに溶解して回収した。
【0067】
得られた溶液をロータリーエバポレーター(バス温:30℃)を用いて濃縮し、酢酸エチルを完全に除去したところ、無色のメタクリル−Al−Mg系層状複合体(3.69g)を得た。
【0068】
(実施例2〜6)
塩化アルミニウム六水和物、塩化マグネシウム六水和物および1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の量を表1に示す量に変更した以外は実施例1と同様にしてメタクリル−Al−Mg系層状複合体を得た。
【0069】
(比較例1)
塩化アルミニウム六水和物を使用せず、塩化マグネシウム六水和物の量を2.03g(0.01mol)に変更し、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の量を20.0mlに変更した以外は実施例1と同様にして無色のメタクリル−Mg系層状複合体を得た。
【0070】
(比較例2)
塩化マグネシウム六水和物を使用せず、塩化アルミニウム六水和物の量を2.41g(0.01mol)に変更し、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の量を30.0mlに変更した以外は実施例1と同様にして無色のメタクリル−Al系層状複合体を得た。
【0071】
(比較例3〜4)
塩化アルミニウム六水和物、塩化マグネシウム六水和物および1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の量を表1に示す量に変更した以外は実施例1と同様にしてメタクリル−Al−Mg系層状複合体を得た。
【0072】
【表1】

【0073】
<有機溶媒中での再分散性>
実施例1〜6および比較例1〜4で得られた各層状複合体を1−メトキシ−2−プロパノール(和光純薬工業(株)製、和光特級、以下、「PGM」と略す。)に溶解し、層状複合体を25質量%含むPGM溶液を調製した。このPGM溶液を目視により観察したところ、金属原子としてAl原子とMg原子を含有する2価−3価金属系有機無機層状複合体(実施例1〜6および比較例3〜4)および金属原子としてAl原子のみを含有する3価金属系有機無機層状複合体(比較例2)を含むPGM溶液は、すべて無色透明であった。一方、金属原子としてMg原子のみを含有する2価金属系有機無機層状複合体(比較例1)を含むPGM溶液は、白濁していた。
【0074】
<粒度分布測定>
上記のようにして調製したPGM溶液中の層状複合体の粒度分布を、動的光散乱式粒度分布測定装置(日機装(株)製「UPA−EX250」)を用いてレーザートラップ法により、Set Zero:60秒、測定時間:60秒、測定回数:3回、PGMの屈折率(20℃):1.403、PGMの粘度(25℃):4.5cPの条件で測定した。なお、上記測定は、3回の測定における50%粒径のバラツキが10%以下となるまで繰り返した。図4には、実施例1〜3、5、6および比較例1、4で得られた各層状複合体の粒度分布を示す。また、得られた粒度分布から体積平均粒径Mνを求め、さらに、10%粒径、50%粒径、90%粒径のそれぞれについて、3回の測定結果(50%粒径のバラツキが10%以下のもの)の平均値を求め、D10、D50、D90とした。その結果を表2に示す。
【0075】
【表2】

【0076】
表2に示した結果から明らかなように、金属原子としてAl原子とMg原子を含有する2価−3価金属系有機無機層状複合体(実施例1〜6および比較例3〜4)および金属原子としてAl原子のみを含有する3価金属系有機無機層状複合体(比較例2)の体積平均粒径Mνは0.008μm以下であった。このことから、2価−3価金属系有機無機層状複合体および3価金属系有機無機層状複合体は、有機溶媒中での再分散性に優れるものであることがわかった。一方、比較例1で得られた金属原子としてMg原子のみを含有する2価金属系有機無機層状複合体(Al:0%)の体積平均粒径Mνは0.549μmであった。
【0077】
以上の結果から、2価の金属原子の一部を3価の金属原子で置換することによって得られる有機無機複合体は、有機溶媒中での分散性(特に、再分散性)に優れたものであることが確認された。
【0078】
29Si−NMR測定>
実施例および比較例で得られた各層状複合体を試料ホルダー(ブルカー・バイオスピン(株)製「ロータパッカーBL4」、品番:K811101)に入れ、核磁気共鳴(NMR)装置(ブルカー・バイオスピン(株)製「AVANCE400」)を用いて積算回数:800回の条件で、各層状複合体の29Si−HD/MAS NMRスペクトルを測定した。図5には、実施例2、4、6および比較例1〜4で得られた各層状複合体の29Si−HD/MAS NMRスペクトルを示す。
【0079】
図5に示した結果から明らかなように、金属原子としてAl原子とMg原子を含有する2価−3価金属系有機無機層状複合体のうち、Al原子が67%以上のものにおいては、HO−Si−O−Si結合(T)の含有量がSi−O−Si−O−Si結合(T)に比べて多くなることがわかった。一方、Al原子が66%以下になると、Si−O−Si−O−Si結合(T)の含有量が、HO−Si−O−Si結合(T)およびHO−Si−OH結合(T)に比べて多くなり、上記のようなシロキサン結合の含有量の低下が抑制されることが確認された。特に、Al原子の含有量が少なくなる(すなわち、Mg原子の含有量が多くなる)につれて、Si−O−Si−O−Si結合(T)の含有量が多くなる傾向にあり、層状複合体の無機層がより強化されることがわかった。
【0080】
<粉末X線回折(XRD)測定>
実施例および比較例で得られた各層状複合体をガラス製試料ホルダー((株)リガク製、CatNo.9200/2G、深さ0.2mm)に入れ、X線回折装置((株)リガク製「RINT−2200ゴニオメータ」)を用いて管電圧:40kV、管電流:30mA、測定方法:FT、放射線源:Cu(通常)、Co、CrまたはMo、開始角度:2.0°、終了角度:70°の条件で、各層状複合体のX線回折パターンを測定した。図6には、実施例2、3、5、6および比較例1〜3で得られた各層状複合体のX線回折パターンを示す。
【0081】
図6に示した結果から明らかなように、金属原子としてAl原子のみを含有する3価金属系有機無機層状複合体(Al:100%)においては、2θ=5°付近と2θ=20°付近にそれぞれ(001)面と(020)面に由来する回折ピークが観察され、前記3価金属系有機無機層状複合体は層間方向に良好な秩序性を有するものであることが確認された。
【0082】
これに対して、金属原子としてAl原子を5%(Mg原子を95%)含有する本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体においては、2θ=5°付近と2θ=20°付近に加えて、2θ=35°付近と2θ=60°付近にも回折ピークが観察された。2θ=35°付近と2θ=60°付近の回折ピークは、金属原子としてMg原子のみを含有する2価金属系有機無機層状複合体(Al:0%)のX線回折パターンから、それぞれ(200)面と(060)面に由来する回折ピークであると考えられ、本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体(Al:5%)は、層間方向だけでなく、面内方向にも良好な秩序性を有するものであることが確認された。
【0083】
また、金属原子としてMg原子のみを含有する2価金属系有機無機層状複合体の構造は、図6に示した回折ピークから、8面体シートに空孔がない2:1型層状ケイ酸塩構造であると考えられる。従って、本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体においては、8面体シートに空孔が少ない2:1型層状ケイ酸塩構造が形成していると考えられる。
【0084】
(実施例7)
塩化アルミニウム六水和物の代わりに1.24g(0.0033mol)の硝酸アルミニウム九水和物(和光純薬工業(株)製、特級)を用い、塩化マグネシウム六水和物の代わりに1.76g(0.0067mol)の硫酸ニッケル(II)六水和物(和光純薬工業(株)製、特級)を用い、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の量を23.1mlに変更し、酢酸エチルによる抽出回数を1回に変更した以外は実施例1と同様にして緑色のメタクリル−Al−Ni(II)系層状複合体(4.15g)を得た。
【0085】
(実施例8)
塩化アルミニウム六水和物の代わりに1.24g(0.0033mol)の硝酸アルミニウム九水和物(和光純薬工業(株)製、特級)を用い、塩化マグネシウム六水和物の代わりに1.14g(0.0067mol)の塩化銅(II)二水和物(和光純薬工業(株)製、純度:99.9%)を用い、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の量を23.1mlに変更し、酢酸エチルによる抽出回数を1回に変更した以外は実施例1と同様にして青色のメタクリル−Al−Cu(II)系層状複合体(3.72g)を得た。
【0086】
(実施例9)
塩化アルミニウム六水和物の代わりに1.24g(0.0033mol)の硝酸アルミニウム九水和物(和光純薬工業(株)製、特級)を用い、塩化マグネシウム六水和物の代わりに1.92g(0.0067mol)の硫酸亜鉛七水和物(和光純薬工業(株)製、特級)を用い、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の量を23.1mlに変更し、酢酸エチルによる抽出回数を1回に変更した以外は実施例1と同様にして白色のメタクリル−Al−Zn系層状複合体(3.61g)を得た。
【0087】
(実施例10)
塩化アルミニウム六水和物の代わりに0.89g(0.0033mol)の塩化鉄(III)六水和物(和光純薬工業(株)製、特級)を用い、塩化マグネシウム六水和物の代わりに1.76g(0.0067mol)の硫酸ニッケル(II)六水和物(和光純薬工業(株)製、特級)を用い、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液の量を23.1mlに変更し、酢酸エチルによる抽出回数を1回に変更した以外は実施例1と同様にして茶色のメタクリル−Fe(III)−Ni(II)系層状複合体(3.63g)を得た。
【0088】
(比較例5)
塩化アルミニウム六水和物を使用せず、塩化マグネシウム六水和物の代わりに2.63g(0.01mol)の硫酸ニッケル(II)六水和物(和光純薬工業(株)製、特級)を用いた以外は実施例1と同様にして緑色の沈殿物を含む水溶液を得た。この水溶液の透明上澄み液を除去した後、実施例1と同様に酢酸エチルによる抽出操作を行なったが、沈殿物が酢酸エチルに溶解せず、溶媒抽出が困難であった。そこで、ろ過により沈殿物を回収し、水洗、真空乾燥を行なって緑色のメタクリル−Ni(II)系層状複合体(6.38g)を得た。
【0089】
(比較例6)
塩化マグネシウム六水和物の代わりに1.70(0.01mol)の塩化銅(II)二水和物(和光純薬工業(株)製、純度:99.9%)を用いた以外は比較例1と同様にして青色のメタクリル−Cu(II)系層状複合体(3.54g)を得た。
【0090】
(比較例7)
塩化マグネシウム六水和物の代わりに2.88(0.01mol)の硫酸亜鉛七水和物(和光純薬工業(株)製、特級)を用いた以外は比較例1と同様にして白色のメタクリル−Zn系層状複合体(3.23g)を得た。
【0091】
<有機溶媒中での再分散性>
実施例1〜6および比較例1〜4の場合と同様に、実施例7〜10および比較例5〜7で得られた各層状複合体のPGM溶液(25質量%)を調製し、目視により層状複合体の再分散性を観察した。その結果を表3に示す。
【0092】
【表3】

【0093】
<粒度分布測定>
上記のようにして調製したPGM溶液中の層状複合体の粒度分布を実施例1〜6および比較例1〜4の場合と同様に動的光散乱法により測定した。なお、比較例5で得られた各層状複合体については、PGM溶液中に沈殿物が生成したため、上澄み液中の層状複合体の粒度分布を測定した。表4には、実施例7、10および比較例5で得られた各層状複合体の平均粒径を示す。
【0094】
【表4】

【0095】
表4に示した結果から明らかなように、比較例5で得られた金属原子としてNi(II)原子のみを含有する2価金属系有機無機層状複合体は、上澄み液中に分散している比較的粒径が小さいものであるにも関わらず、平均粒径は大きいものであった。これに対して、金属原子としてAl原子とNi(II)を含有する2価−3価金属系有機無機層状複合体は、モード平均粒径、体積平均粒径、面積平均粒径、個数平均粒径のいずれの平均粒径も小さく、有機溶媒中での再分散性に優れるものであることがわかった。
【0096】
すなわち、2価の金属原子の一部を3価の金属原子で置換することによって得られる有機無機複合体の有機溶媒中での分散性(特に、再分散性)が向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0097】
以上説明したように、本発明によれば、2価の金属原子を含有し、有機溶媒などの有機物中での分散性(特に、再分散性)に優れ、シラノール基に比べてシロキサン結合を多く含有する有機無機層状複合体を得ることが可能となる。
【0098】
したがって、本発明の2価−3価金属系有機無機層状複合体は、有機溶媒などの有機物に対する分散性(特に、再分散性)に優れており、さらに、硬度や耐摩耗性といった機械的強度にも優れているため、塗料組成物や成形原料に用いられるフィラーなどとして有用であり、優れた機械的強度を樹脂塗膜や樹脂成形体に付与することができる。
【符号の説明】
【0099】
1:無機層、1a:中心原子として2価および3価の金属原子を含有する8面体シート、1b:中心原子としてSi原子を含有する4面体シート、1c:中心原子として2価の金属原子のみを含有する8面体シート、1d:中心原子として3価の金属原子のみを含有する8面体シート、2:有機層、2a:有機基、3:層間カチオン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
[RSiO(4-n)/2][(M2/2O)(M2/3O)][HO] (1)
(式(1)中、Rは有機基を表し、Mは2価の金属原子を表し、Mは3価の金属原子を表し、nは1〜3の整数であり、x、yおよびzは、0.5≦x/(y+2z/3)≦3で表される条件を満たす任意の数であり、wは構造水の分子数を表す。)
で表されるものであり、2価の金属原子と3価の金属原子の合計原子数100に対して3価の金属原子の原子数が1〜66%であることを特徴とする2価−3価金属系有機無機層状複合体。
【請求項2】
前記3価の金属原子の原子数が、2価の金属原子と3価の金属原子の合計原子数100に対して1〜45%であることを特徴とする請求項1に記載の2価−3価金属系有機無機層状複合体。
【請求項3】
前記3価の金属原子の原子数が、2価の金属原子と3価の金属原子の合計原子数100に対して1〜10%であることを特徴とする請求項1に記載の2価−3価金属系有機無機層状複合体。
【請求項4】
前記3価の金属原子が、アルミニウム(Al)および鉄(III)(Fe(III))のうちの少なくとも1種の金属原子であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の2価−3価金属系有機無機層状複合体。
【請求項5】
前記2価の金属原子が、マグネシウム(Mg)、ニッケル(II)(Ni(II))、コバルト(II)(Co(II))、銅(II)(Cu(II))、マンガン(Mn)、鉄(II)(Fe(II))、リチウム(Li)、バナジウム(II)(V(II))、ジルコニウム(Zr)および亜鉛(Zn)からなる群から選択される少なくとも1種の金属原子であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の2価−3価金属系有機無機層状複合体。
【請求項6】
下記式(2):
Si(OR(4−n) (2)
(式(2)中、Rは有機基を表し、ORはアルコキシ基を表し、nは1〜3の整数である。)
で表されるオルガノアルコキシシラン、2価の金属原子を含む2価金属化合物および3価の金属原子を含む3価金属化合物を極性溶媒である第一溶媒に溶解して、ケイ素原子と2価の金属原子と3価の金属原子とを、ケイ素原子と金属原子の原子比(ケイ素原子数/2価の金属原子と3価の金属原子の合計原子数)が0.5以上3以下であり、2価の金属原子と3価の金属原子の合計原子数100に対して3価の金属原子の原子数が1〜66%である条件で含有する原料溶液を調製する調製工程と、
前記オルガノアルコキシシランと前記2価金属化合物と前記3価金属化合物とを加水分解するとともに脱水縮合させて、ケイ素原子と2価の金属原子と3価の金属原子とを含有する2価−3価金属系有機無機層状複合体を合成する反応工程と、
前記反応工程で得られた溶液に該溶液と相溶しない第二溶媒を加えて前記2価−3価金属系有機無機層状複合体を該第二溶媒に溶解させた後、該第二溶媒と相溶しない溶液を除去する除去工程と、
を含むことを特徴とする2価−3価金属系有機無機層状複合体の製造方法。
【請求項7】
前記反応工程において、前記原料溶液に水を添加して前記2価−3価金属系有機無機層状複合体を合成し、
前記除去工程において、前記反応工程後の水溶液に少なくとも水と相溶しない前記第二溶媒を加えた後、該水溶液を除去する、
ことを特徴とする請求項6に記載の2価−3価金属系有機無機層状複合体の製造方法。
【請求項8】
前記第一溶媒が、無機系極性溶媒および有機系極性溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の極性溶媒であることを特徴とする請求項6または7に記載の2価−3価金属系有機無機層状複合体の製造方法。
【請求項9】
前記第一溶媒が、水および水溶性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の極性溶媒であることを特徴とする請求項8に記載の2価−3価金属系有機無機層状複合体の製造方法。
【請求項10】
前記第二溶媒が、酢酸エチル、トルエンおよびクロロホルムからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒であることを特徴とする請求項6〜9のうちのいずれか一項に記載の2価−3価金属系有機無機層状複合体の製造方法。
【請求項11】
前記反応工程において、前記原料溶液のpHをアルカリ性に調整して前記オルガノアルコキシシランと前記2価金属化合物と前記3価金属化合物との反応を促進させることを特徴とする請求項6〜10のうちのいずれか一項に記載の2価−3価金属系有機無機層状複合体の製造方法。
【請求項12】
前記除去工程後、さらに、前記第二溶媒を除去して前記2価−3価金属系有機無機層状複合体を回収する回収工程を含むことを特徴とする請求項6〜11のうちのいずれか一項に記載の2価−3価金属系有機無機層状複合体の製造方法。
【請求項13】
前記3価の金属原子が、アルミニウム(Al)および鉄(III)(Fe(III))のうちの少なくとも1種の金属原子であることを特徴とする請求項6〜12のうちのいずれか一項に記載の2価−3価金属系有機無機層状複合体の製造方法。
【請求項14】
前記2価の金属原子が、マグネシウム(Mg)、ニッケル(II)(Ni(II))、コバルト(II)(Co(II))、銅(II)(Cu(II))、マンガン(Mn)、鉄(II)(Fe(II))、リチウム(Li)、バナジウム(II)(V(II))、ジルコニウム(Zr)および亜鉛(Zn)からなる群から選択される少なくとも1種の金属原子であることを特徴とする請求項6〜13のうちのいずれか一項に記載の2価−3価金属系有機無機層状複合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−95824(P2013−95824A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238899(P2011−238899)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】