説明

2価アルコール類、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、それらからなる成形体、および光学素子

【課題】高屈折率樹脂材料用の2価アルコール類、その重合体であるポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、それらの樹脂の成形体および光学素子を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される2価アルコール類、およびその重合体であるポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、それらの樹脂からからなる成形体および光学素子。


〔式中、Lは炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基、又は炭素数2以上12以下のポリ(オキシエチレン)基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオレン構造を有する新規2価アルコール類、およびそれからなる重合体、特にポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、さらにそれらからなる成形体、および光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高屈折率を有する樹脂材料は、従来のガラス材料と比較して高い加工性を有していることなどから、メガネレンズ、カメラ等のレンズ、光ディスク用レンズ、fθレンズ、画像表示媒体の光学系素子、光学膜、フィルム、基板、各種光学フィルター、プリズム、通信用光学素子等に幅広く応用が検討されている。
【0003】
特に、フルオレン構造を有する樹脂材料は比較的高い屈折率を有し、かつ複屈折が比較的小さいことが知られており、また高い耐熱性を期待できることからも種々検討されている。特許文献1では、9、9´−ジフェニルフルオレン構造を有し、耐熱性と機械的強度に優れたポリカーボネート樹脂が開示されている。
【0004】
これら従来の9、9´−ジフェニルフルオレン構造よりも、分子内の共役芳香環数が多く、かつ分子構造の対称性が高いことから、より高屈折化・低複屈折化できることが期待される構造を有する分子として、スピロビフルオレンが存在する。特許文献2では、このようなスピロ炭素を有する複環状構造を単位骨格として有する樹脂について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4196326号公報
【特許文献2】特開2006−089585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のポリカーボネート系樹脂は、9、9´−ジフェニルフルオレン構造を有するモノマーを単独重合、もしくはそれより低屈折率性を示す単位骨格を共重合成分として有した樹脂で構成されている。そのため、更なる高屈折率化を図るにはより高屈折率性を示す共重合成分の開発が必要不可欠である。
【0007】
特許文献2に記載のスピロ炭素を有する複環状構造型樹脂は、より高屈折率性を示すことが期待できるものの、ガラス転移点が334℃から340℃と高く、成形加工時にかかるコストや着色が発生しやすいことなど、加熱成形で加工する上での問題点がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み、加工性の高い高屈折率樹脂材料を製造することのできる2価アルコール類、およびその重合体、とくにポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、さらにそれらからなる成形体、および光学素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を達成するため、次の<1>から<7>のように構成した2価アルコール類、および該2価アルコール類からなるポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、さらにそれらからなる成形体、および光学素子を提供するものである。
【0010】
<1> 下記一般式(1)で表されることを特徴とする2価アルコール類。
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、Lは炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基、又は炭素数2以上12以下のポリ(オキシエチレン)基を示す。〕
【0013】
<2> ポリマー中に下記一般式(2)で表される繰返し単位を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂。
【0014】
【化2】

【0015】
〔式中、Lは炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基、又は炭素数2以上12以下のポリ(オキシエチレン)基を示す。〕
【0016】
<3> <2>に記載のポリカーボネート樹脂において、一般式(2)で表される繰返し単位のモル比率〔一般式(2)で表される繰返し単位の数をポリマー中の全繰返し単位数の和で徐し、百分率で表記した値〕が10パーセント以上であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
【0017】
<4> <3>に記載のポリカーボネート樹脂において、全ポリマー中の繰返し単位中、<2>に記載の一般式(2)で表される繰返し単位以外の繰返し単位に、一般式(3)または(4)で表される繰返し単位から選ばれた少なくとも1種類以上の繰返し単位を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂。
【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
〔一般式(3)および(4)中、Tは炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基、炭素数2以上12以下のポリ(オキシエチレン)基、又は単結合を示す。R1、R2は各々水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又は炭素数6以上12以下のアリール基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。Uは炭素数1以上13以下のアルキレン基,炭素数2以上13以下のアルキリデン基,炭素数5以上13以下のシクロアルキレン基,炭素数5以上13以下のシクロアルキリデン基,炭素数6以上13以下のアリーレン基,フルオレニデン、−O−,−S−,−SO−,−CO−又は単結合を示す。R1、R2、T及びUは構造単位ごとに異なっていてもよい。〕
【0021】
<5> ポリマー中に下記一般式(2)で表される繰返し単位を含有することを特徴とするポリエステル樹脂。
【0022】
【化5】

【0023】
〔式中、Lは炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基、又は炭素数2以上12以下のポリ(オキシエチレン)基を示す。〕
【0024】
<6> <2>から<5>に記載のポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂からなる成形体。
【0025】
<7> <2>から<5>に記載のポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂からなる光学素子。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、加工性の高い高屈折率材料を製造することのできる2価アルコール類、およびその重合体、とくにポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、さらにそれらからなる成形体、および光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】モノマー1aと7aの共重合体の組成比と光学特性の関係を示すグラフである。
【図2】一般式(2)内のLの炭素・酸素原子数とガラス転移点の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、上記構成により本発明の課題を達成することができるが、具体的にはつぎのような形態によることができる。
本発明に係る2価アルコール類は、下記一般式(1)で表される化合物からなることを特徴とする。
【0029】
【化6】

【0030】
一般式(1)中、Lは炭素数2以上12以下、好ましくは炭素数2以上6以下のオキシアルキレン基、又は炭素数2以上12以下、好ましくは炭素数2以上4以下のポリ(オキシエチレン)基を示す。一般式(1)で表される2価アルコール類の構造中のL内に含まれる炭素数が2未満ではこれを重合して得られるポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂のガラス転移点が高くなり、加熱による溶融成型が困難である。また、炭素数が12を超えると、これを重合して得られるポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂の成形体は、熱に対して十分な形状安定性を得にくい。
【0031】
次に、本発明に係る2価アルコール類の製造方法について説明する。
まず、本発明の一般式(1)で表される2価アルコール類は、下記式(5)
【0032】
【化7】

【0033】
で表される2,2´−ジヒドロキシ−9,9´−スピロビフルオレンに、炭酸セシウム等の存在下で、下記一般式(6)
【0034】
【化8】

【0035】
〔式中、Xはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子を示し、Lは炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基、又は炭素数2以上12以下のポリ(オキシエチレン)基を示す。〕
で表されるハロゲン化アルコール類を作用させることで製造できる。このうち、2,2´−ジヒドロキシ−9,9´−スピロビフルオレンは、Helv. Chim. Acta、62巻、2285から2302頁(1979年)に記載の方法等で合成できる。
【0036】
2,2´−ジヒドロキシ−9,9´−スピロビフルオレンに対して作用させる、一般式(6)で表されるハロゲン化アルコール類の化学量論比は、(作用させる一般式(6)のハロゲン化アルコール類のモル数)/(2,2´−ジヒドロキシ−9,9´−スピロビフルオレンの化合物類のモル数)が2以上100以下であることが好ましい。この値が2より小さいと、副生成物が生じて一般式(1)で示される2価アルコール類の収率が低下するおそれがあり、また100よりも大きいと一般式(6)で表されるハロゲン化アルコール類の使用量が多くなり生産にコストがかかるおそれがある。
【0037】
反応条件は特に限定されないが、一般には反応溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドやジメチルスルホキシド等の極性溶媒が用いられ、反応温度は100℃から150℃、反応時間は12時間から48時間を要する。得られた反応生成物は再結晶法もしくはクロマトグラフィー等の方法により容易に精製可能である。
【0038】
本発明の一般式(1)で表される2価アルコール類を重合して得られる本発明のポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂は比較的高屈折率でありながら、低複屈折性を有した樹脂である。一般に芳香環を分子中に有するポリマーは分子の配向性が高く、結果として複屈折性の高い樹脂材料となり易い。しかしながら、一般式(1)で表される2価アルコール類内のスピロビフルオレン骨格は二つのフルオレン環平面が直交する対称性の高い構造であるため、単位骨格あたりの固有複屈折が小さく、結果として樹脂の複屈折性が低減されているものと考えることができる。
【0039】
さらに、一般式(1)中のLで表した炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基、炭素数2以上12以下のポリ(オキシエチレン)基は、本発明の一般式(1)で表される2価アルコール類を重合して得られるポリマーのガラス転移点を低下させる働きがある。ガラス転移点の低下により、溶融時の加工性を向上すると同時に溶融粘弾性を低下させ、成形時の応力複屈折を低減することが可能となる。これらの特性が複合して、本発明のポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂は低複屈折性を有するに至っていると推察される。
【0040】
本発明のポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂は、一般式(1)で表される2価アルコール類を重合成分として合成されるものであり、ポリマー中に下記一般式(2)で表される繰返し単位を含有することを特徴とする。
【0041】
【化9】

【0042】
〔式中、Lは炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基、又は炭素数2以上12以下のポリ(オキシエチレン)基を示す。〕
ここで、一般式(2)で表される繰返し単位のモル比率は10パーセント以上であることがより好ましく、25パーセント以上であることが更に好ましい。ここで、繰返し単位のモル比率とは、一般式(2)で表される繰返し単位の数をポリマー中の全繰返し単位数の和で徐し、百分率で表記した値を指す。一般式(2)で表される繰返し単位のモル比率が大きいほど、一般式(1)の2価アルコール類縁体の持つ高屈折率性がポリマーにより強く反映されることとなる。
【0043】
ポリマー中のその他の共重合成分としては、所望の特性を満たすものであれば特に限定されるものではないが、下記の一般式(7)または(8)
【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
〔一般式(7)および(8)中、Tは炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基、炭素数2以上12以下のポリ(オキシエチレン)基、又は単結合を示す。R1、R2は各々水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基,炭素数1以上6以下のアルコキシ基又は炭素数6以上12以下のアリール基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。Uは炭素数1以上13以下のアルキレン基,炭素数2以上13以下のアルキリデン基,炭素数5以上13以下のシクロアルキレン基,炭素数5以上13以下のシクロアルキリデン基,炭素数6以上13以下のアリーレン基,フルオレニデン、−O−,−S−,−SO−,−CO−又は単結合を示す。R1、R2、T及びUは構造単位ごとに異なっていてもよい。〕に示される共重合成分をより好適に含有することができる。また、これらの共重合成分は、単独で用いても、もしくは複数種類用いてもよい。
【0047】
一般式(7)または(8)で表される2価アルコール類を共重合成分とした場合、合成されるポリマーには、下記一般式(3)および(4)で表される繰返し単位から選ばれた少なくとも1種類以上の繰返し単位が含有される。
【0048】
【化12】

【0049】
【化13】

【0050】
〔一般式(3)および(4)中、Tは炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基、炭素数2以上12以下のポリ(オキシエチレン)基、又は単結合を示す。R1、R2は各々水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又は炭素数6以上12以下のアリール基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。Uは炭素数1以上13以下のアルキレン基,炭素数2以上13以下のアルキリデン基,炭素数5以上13以下のシクロアルキレン基,炭素数5以上13以下のシクロアルキリデン基,炭素数6以上13以下のアリーレン基,フルオレニデン、−O−,−S−,−SO−,−CO−又は単結合を示す。R1、R2、T及びUは構造単位ごとに異なっていてもよい。〕
【0051】
この場合、共重合比率に応じて一般式(7)または(8)の2価アルコール類縁体の持つ熱的安定性・光学特性がポリマーに反映される。
【0052】
本発明のポリカーボネー樹脂およびポリエステル樹脂に一般式(3)および(4)の繰返し単位が含まれる場合は、一般式(3)および(4)で表される繰返し単位のモル比率が90パーセント以下であるのが好ましく、75パーセント以下であることが更に好ましい。
【0053】
本発明のポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂に、一般式(2)、(3)および(4)の2価アルコール類残基以外の任意の繰返し単位が含まれる場合、一般式(2)、(3)および(4)以外の繰返し単位のモル比率が10パーセント以下であることが好ましい。ここで繰返し単位のモル比率とは、一般式(2)、(3)および(4)以外の繰返し単位の総数をポリマー中の全繰返し単位数の和で徐し、百分率で表記したものを指す。この一般式(2)、(3)および(4)以外の繰返し単位のモル比率が10パーセントを超えると、耐熱安定性や高屈折率性、低複屈折性など所望の物性が得られないおそれがある。
【0054】
本発明のポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂は、様々な方法によって製造することができるが、以下に示す三つの方法を独立に行うか、またはそれらを組み合わせて段階的に重合することで効率良く製造することができる。
【0055】
まず、第一の方法は、有機溶媒と塩基性水溶液の混合溶液中において、一般式(1)、(7)または(8)で示される2価アルコール類とホスゲン又はホスゲン誘導体を反応させて界面縮重合させる方法である。
【0056】
この反応では、まずアルカリ金属化合物等を溶解した塩基性水溶液と、一般式(1)、(7)または(8)で示される2価アルコール類及び不活性有機溶剤との混合液に、ホスゲン又はホスゲン誘導体を導入して反応させることで、所望のポリカーボネートが得られる。ここで不活性有機溶剤としてはジクロロメタン(塩化メチレン)、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼンのような塩素化炭化水素類や、アセトフェノンなどが挙げられる。反応条件は特に限定されないが、通常反応初期は0℃から常温の範囲内で冷却し、その後0℃から70℃の温度の範囲内で30分から6時間反応させるのが一般的である。
【0057】
また、反応に用いるホスゲン又はホスゲン誘導体の量は、(作用させるホスゲン又はホスゲン誘導体のモル数)/(反応に使用される2価アルコール類の総モル数)が0.3以上1.5以下となることが好ましい。この値が0.3よりも小さいと未反応の2価アルコール類が残って収率が低下するおそれがあり、またこの値が1.5よりも大きいと使用するホスゲン又はホスゲン誘導体の量が多くなるため反応後の分離精製が困難となるおそれがある。
【0058】
反応促進を目的として、有機溶媒に相間移動触媒を添加して用いてもよい。ここで相関移動触媒としては、トリエチルアミンやテトラメチルエチレンジアミン、ピリジンのような有機塩基類が挙げられる。
【0059】
また、重合度の調整等を目的とし、反応溶液に末端停止剤を添加しておいてもよい。末端停止剤としては通常ポリカーボネートの重合に用いられるものでよく、各種のものを用いることができる。具体的には、フェノールやp−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール等の一価フェノールが挙げられる。また、ホスゲン誘導体としては、炭酸ビス(トリクロロメチル)、ブロモホスゲン、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(シアノフェニル)カーボネート、クロロぎ酸トリクロロメチル等が挙げられる。
【0060】
次に、本発明の樹脂を合成する第二の方法は、一般式(1)、(7)または(8)で表される2価アルコール類と炭酸ジエステルをエステル交換反応させる方法である。この方法で用いられる炭酸ジエステルとしては各種のものがあり、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(ニトロフェニル)カーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ジナフチルカーボネート、ビスフェノールAビスフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、ブチルフェニルカーボネート、シクロヘキシルフェニルカーボネート、ビスフェノールAメチルフェニルカーボネートなどが好適に用いられる。また、このエステル交換反応では、一般式(1)、(7)または(8)で示される2価アルコール類は、いずれも炭酸ジエステルの誘導体として用いることもできる。
【0061】
使用される炭酸ジエステルの量は、(作用させる炭酸ジエステルのモル数)/(反応に使用される2価アルコール類の総モル数)が1.0以上2.5以下の範囲にあることが好ましい。この値が1.0よりも小さいと未反応の2価アルコール類が残って収率が低下するおそれがあり、またこの値が2.5よりも大きいと使用する炭酸ジエステルの量が多くなるため反応後の分離精製が困難となるおそれがある。また、このエステル交換反応においても、必要に応じて、第一の方法で挙げた末端停止剤を添加しておいてもよい。
【0062】
このエステル交換法では、反応温度は通常350℃の以下の条件であることが好ましく、さらに好ましくは300℃以下の条件で、反応の進行に合わせて次第に温度を上げていくのが望ましい。該エステル交換反応は350℃を超えるとポリマーの熱分解が起こり好ましくない。また、反応圧力は、使用するモノマーの蒸気圧や反応により生じる生成物の沸点に応じて、反応が効率よく行われるように適宜調整することができる。エステル交換反応の結果、用いたエステル化合物から生じる重合体以外の副生成物が減圧により除去できる場合は、反応速度と収率を向上させるために反応が進行するにつれて減圧条件で行い、概副生成物を除去しながら反応を行うことが好ましい。反応時間は目標の分子量となるまで行えばよく、通常、10分から12時間程度である。
【0063】
このエステル交換反応は、バッチ式もしくは連続的に行うことができ、用いられる反応器は、その材質およびその構造は特に制限されず、通常の加熱機能と攪拌機能を有していればよい。さらに、反応器の形状は槽型のみならず、押出機型のリアクターでもよい。
【0064】
そして、上記のエステル交換反応は通常無溶媒条件下で行われるが、用いる2価アルコール類の融点が高く反応が進行しにくい場合などには、得られる重合体に対して1から200重量パーセントの不活性有機溶剤の存在下で行ってもよい。ここで不活性有機溶剤としては、ジフェニルエーテル、ハロゲン化ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、ジフェニルスルホン、ポリフェニルエーテル、ジクロロベンゼン、メチルナフタレン等の芳香族化合物、トリシクロ(5.2.10)デカン、シクロオクタン、シクロデカンなどのシクロアルカン、ジクロロメタン(塩化メチレン)、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、クロロベンゼンのような塩素化炭化水素類が挙げられる。また、必要に応じて不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。ここで、不活性ガスとしては、例えばヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、窒素などが挙げられる。
【0065】
また、必要に応じて、エステル交換反応において通常使用される触媒を用いることができる。ここで、用いることのできるエステル交換触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどんのアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アミン類・四級アンモニウム塩類等の含窒素塩基性化合物あるいはホウ素化合物などが挙げられる。この中でも含窒素塩基性化合物は、触媒能の高さと反応系中からの除去のしやすさという点で好ましく、トリヘキシルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルアミノピリジン等が好適に用いられる。
【0066】
上記触媒の使用量は、全2価アルコール類1モルに対して1×10−2〜1×10−8モル、好ましくは1×10−3〜1×10−7モルである。この触媒の添加量が1×10−8モル未満では十分な触媒効果が得られないおそれがあり、また1×10−2モルを超えると、得られる重合体の物性、特に耐熱性、耐加水分解性の低下を招くおそれがある。
【0067】
更に、本発明の樹脂を合成する第三の方法は、一般式(1)、(7)および(8)で示される2価アルコール類とジカルボン酸誘導体を反応させ、エステル重合を行う方法である。この方法で用いられるジカルボン酸誘導体には特に制限はなく、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族カルボン酸類、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族カルボン酸類、およびそれらジカルボン酸の酸塩化物、それらジカルボン酸のメチルエステル、それらジカルボン酸のエチルエステル、そしてフタル酸無水物、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸無水物等が用いられる。
【0068】
使用されるジカルボン酸誘導体の量は、(作用させるジカルボン酸誘導体のモル数)/(反応に使用される2価アルコール類の総モル数)が0.7以上1.5以下の範囲にあることが好ましい。この値が0.7よりも小さいと未反応の2価アルコール類が多く残って収率が低下するおそれがあり、またこの値が1.5よりも大きいと未反応のジカルボン酸誘導体が多く残って収率が低下するおそれがある。
【0069】
このエステル重合では、反応温度は通常350℃以下の条件であることが好ましく、さらに好ましくは300℃以下の条件で反応の進行に合わせて次第に温度を上げていくのが望ましい。エステル重合の結果、用いたジカルボン酸誘導体から生じる重合体以外の副生成物が減圧により除去できる場合は、反応速度と収率を向上させるために反応が進行するにつれて減圧条件で行い、概副生成物を除去しながら反応を行うことが好ましい。反応時間は目標の分子量となるまで行えばよく、通常、10分から12時間程度である。
【0070】
このエステル重合反応は、バッチ式もしくは連続的に行うことができ、用いられる反応器は、その材質およびその構造は特に制限されず、通常の加熱機能と攪拌機能を有していればよい。さらに、反応器の形状は槽型のみならず、押出機型のリアクターでもよい。
【0071】
そして、上記のエステル重合反応は、得られる重合体に対して1から200重量パーセントの不活性有機溶剤の存在下で行ってもよい。ここで不活性有機溶剤としては、ジフェニルエーテル、ハロゲン化ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、ジフェニルスルホン、ポリフェニルエーテル、ジクロロベンゼン、メチルナフタレン等の芳香族化合物、トリシクロ(5.2.10)デカン、シクロオクタン、シクロデカンなどのシクロアルカン、ジクロロメタン(塩化メチレン)、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ペンタクロロエタン、クロロベンゼンのような塩素化炭化水素類が挙げられる。また、必要に応じて不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。ここで、不活性ガスとしては、例えばヘリウム、アルゴン、二酸化炭素、窒素などが挙げられる。
【0072】
上記三つの方法により得られた重合体は、公知の方法で精製可能であり、例えばメタノール、水等の貧溶媒で再沈殿法により精製することができる。再沈殿により得られた重合物を、減圧条件下加熱乾燥を行って残留溶媒を除去することで、本発明のポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂を製造することができる。乾燥温度は通常100℃から350℃の範囲であることが好ましい。100℃未満では残存溶媒が十分除去できず、350℃を超えるとポリマーの熱分解が起こり所望の物性が得られないおそれがある。
【0073】
本発明のポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂においては、本来の目的が損なわれない範囲内で、添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、ガラス繊維やガラスビーズ、ガラスパウダー等のガラス材、酸化ケイ素や酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等の金属酸化物微粒子の無機充填剤、リン系加工熱安定剤、ヒドロキシルアミン類の加工熱安定剤、ヒンダートフェノール類等の酸化防止剤、ヒンダートアミン類等の光安定剤、ベンゾトリアゾール類やトリアジン類・ベンゾフェノン類・ベンゾエート類等の紫外線吸収剤、リン酸エステル類やフタル酸エステル類・クエン酸エステル類・ポリエステル類等の可塑剤、シリコーン類等の離型剤、リン酸エステル類やメラミン類等の難燃剤、脂肪酸エステル系界面活性剤類の帯電防止剤、有機色素着色剤、耐衝撃性改良剤等の物質が挙げられる。添加剤は、これらの添加剤を単独で用いてもよいし、組み合わせて使用してもよい。
【0074】
本発明のポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂は、公知の方法で上記添加剤を混合することができる。例えば、スクリュー押し出し機、ローラータイプミル、ニーダーミル、ミキサー、高圧ホモジナイザー、湿式メディア粉砕機(ビーズミル、ボールミル、ディスクミル)、超音波分散機等を用いる方法が挙げられる。こうして得られたポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂は、既知の成形方法、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、プレス成形、カレンダー成形等により、各種成形体および光学素子を製造するのに供することができる。
【0075】
射出成形により本発明のポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂を成形し、光学素子を作成する際には、あらかじめ本発明のポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂をペレタイザーによってペレット化しておくのが好ましい。このペレットを溶融シリンダーおよびスクリューからなる混練部を備えた射出成形装置に投入し、この混練部での加熱溶融混練を経て、任意の形状の成形用金型に射出できる。型面が鏡面処理を施された任意の形状の平面、凹または凸型面である成形用金型を用いることで、任意の形状の光学素子を製造することができる。
【0076】
プレス成形により本発明のポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂を成形し、光学素子を作成する際には、あらかじめ本発明のポリカーボネート樹脂およびポリエステル樹脂を乳鉢、スタンプミル、ボールミルなどの粉砕機によって粉末化しておくのが好ましい。この粉末を、型面が鏡面処理を施された任意の形状の平面、凹または凸型面である成形用金型に封じ、樹脂のガラス転移点以上の温度に金型を加熱して溶融を行ったのちにプレス圧を付加することで、任意の形状の光学素子を製造することができる。
【実施例1】
【0077】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
[実施例1−1]
モノマー(1a)の合成
【0078】
【化14】

【0079】
まず、モノマー1aの合成前駆体である2,2´−ジヒドロキシ−9,9´−スピロビフルオレン(5)
【0080】
【化15】

【0081】
を合成した。
1L四つ口フラスコに塩化アルミニウム(127g,0.948mol)及びニトロメタン(250mL)を入れた。この溶液に塩化アセチル(67.3mL,0.948mol)を加え、溶液を0℃に保った。この溶液に、9,9´−スピロビフルオレン(9)
【0082】
【化16】

【0083】
(100g,0.316mol)を乾燥ジクロロメタン(300mL)に溶解させた溶液を1時間かけて滴下した。0℃で1時間攪拌した後、室温まで昇温して2時間攪拌した。氷の入った塩酸水溶液(濃度1M)に反応後の溶液を注いで未反応の塩化アルミニウムを分解した後、有機層を炭酸水素ナトリウム飽和水溶液及び塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄した。この有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧除去し固形物を得た。この固形物をジクロロメタンに溶解させたのちn−へキサン中に注ぎ再沈殿させ、2,2´−ジアセチル−9,9´−スピロビフルオレン(10)
【0084】
【化17】

【0085】
(95.4g,収率76%)を得た。
次いで、500mLナスフラスコに2,2´−ジアセチル−9,9´−スピロビフルオレン(10)(10.0g,25mmol)及びメタクロロ過安息香酸(40%含水物)(21.6g,75mmol)を入れた後、12時間加熱還流させた。
【0086】
室温まで冷却した後、亜硫酸ナトリウム飽和水溶液を加えて攪拌し、有機層を炭酸水素ナトリウム飽和水溶液及び塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄した。この有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧除去した。酢酸エチルとn−へキサン、及びジクロロメタンを混合した(混合比で、酢酸エチル:n−へキサン:ジクロロメタン=1:4:2)溶媒を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離精製を行った。減圧乾燥により溶媒を除去し、2,2´−ジアセトキシ−9,9´−スピロビフルオレン(11)
【0087】
【化18】

【0088】
(9.45g,収率87%)を得た。
100mLナスフラスコに2,2´−ジアセトキシ−9,9´−スピロビフルオレン(11)(6.35g,14.7mmol)及びメタノール(20mL)を入れた。この溶液に水酸化ナトリウム(1.25g,31.3mmol)を溶解した水溶液(10mL)を加えて30分室温で攪拌した。
【0089】
希塩酸(濃度3M)を加えて溶液を酸性にした後、ジエチルエーテルを用いて有機層を抽出した。この有機層を塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧除去した。酢酸エチルとn−へキサンを混合した(混合比で、酢酸エチル:n−へキサン=1:4)溶媒を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離精製を行った。減圧乾燥により溶媒を除去し、2,2´−ジヒドロキシ−9,9´−スピロビフルオレン(5)(5.05g,収率99%)を得た
【0090】
100mL二つ口ナスフラスコに、上記の方法で合成した2,2´−ジヒドロキシ−9,9´−スピロビフルオレン(5)(1.50g,4.31mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(10mL)、2−クロロエタノール(0.604mL,9.00mmol)及び炭酸セシウム(2.93g,9.00mmol)を入れ、アルゴン雰囲気下110℃で12時間攪拌した。
【0091】
反応終了後、水に注いでN,N−ジメチルホルムアミドと炭酸セシウムを水に溶解させ、残りの固形物を濾過した。この固形物をジクロロメタンに溶解させ、無水硫酸マグネシウムでこの溶液を乾燥した後、溶媒を減圧除去した。酢酸エチルとn−へキサンを混合した(混合比で、酢酸エチル:n−へキサン=1:2〜3:2)溶媒を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離精製を行った。減圧乾燥により溶媒を除去し、モノマー1a(933mg,収率50%)を得た。
【0092】
[実施例1−2]
モノマー(1b)の合成
【0093】
【化19】

【0094】
実施例1−1と同等の条件で、2−クロロエタノールの代わりに2−ブロモヘキサノ−ル(1.22mL,9.00mmol)を用いて反応を行った結果、モノマー1b(1.30g,収率55%)を得た。
【0095】
[実施例1−3]
モノマー(1c)の合成
【0096】
【化20】

【0097】
実施例1−1と同等の条件で、2−クロロエタノールの代わりに12−ブロモドデカノ−ル(1.83g,6.90mmol)を用いて反応を行った結果、モノマー1c(1.02g,収率33%)を得た。
【0098】
[実施例1−4]
モノマー(1d)の合成
【0099】
【化21】

【0100】
実施例1−1と同等の条件で、2−クロロエタノールの代わりに2−(2−クロロエトキシ)エタノール(0.949mL,9.00mmol)を用いて反応を行い、反応後はエタノールを展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離精製を行った。減圧乾燥により溶媒を除去した結果、モノマー1d(2.04g,収率86%)を得た。
【0101】
[実施例1−5]
モノマー(1e)の合成
【0102】
【化22】

【0103】
100mL二つ口ナスフラスコに、2,2´−ジヒドロキシ−9,9´−スピロビフルオレン5(4.00g,11.5mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(40mL)、2−{2−(2−クロロエトキシ)エトキシ}エタノール(3.64mL,25.0mmol)及び炭酸セシウム(8.14g,25.0mmol)を入れ、アルゴン雰囲気下110℃で12時間攪拌した。
【0104】
反応終了後、水に注いでN,N−ジメチルホルムアミドと炭酸セシウムを水に溶解させ、残りの固形物を濾過した。この固形物をジクロロメタンに溶解させ、無水硫酸マグネシウムでこの溶液を乾燥した後、溶媒を減圧除去した。酢酸エチルとn−へキサンを混合した(混合比で、酢酸エチル:メタノール=1:9:1)溶媒を展開溶媒としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる分離精製を行った。減圧乾燥により溶媒を除去し、モノマー1e(6.23g,収率86%)を得た。
【0105】
[実施例2−1]
1aのポリカーボネート重合体(1)の合成
20mLシュレンク型反応管にアルゴン雰囲気下、モノマー1a(800mg,1.83mmol)、炭酸ジフェニル(393mg,1.83mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(2.24mg,18.3μmol)を入れ、180℃で30分間加熱攪拌した。さらに、段階的に反応容器内を減圧にするにつれて逐次反応温度を昇温していった(400hPa,200℃で20分間加熱攪拌の後、160hPa,220℃で20分間、40hPa,230℃で20分間、1hPa,250℃で30分間攪拌)。
【0106】
その後室温に冷却し、得られた固形物をジクロロメタン(20mL)に溶解させ、この溶液をメタノール(100mL)に攪拌しながら加えて再沈殿させた。得られた沈殿を減圧下で乾燥し、重合体(1)(745mg,収率88%)を得た。
【0107】
[実施例2−2]
1a(90%)と7a(10%)のポリカーボネート共重合体(2)の合成
【0108】
【化23】

【0109】
20mLシュレンク型反応管にアルゴン雰囲気下、モノマー1a(1.80g,4.12mmol)、モノマー7a(大阪ガスケミカル製:BPEF[製品名]、201mg,0.458mmol)、炭酸ジフェニル(981mg,4.58mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(5.6mg,45.8μmol)を入れた。続いて実施例2−1と同等の条件で反応と後処理を行い、重合体(2)(1.59g,収率75%)を得た。
【0110】
[実施例2−3]
1a(75%)と7a(25%)のポリカーボネート共重合体(3)の合成
20mLシュレンク型反応管にアルゴン雰囲気下、モノマー1a(1.50g,3.44mmol)、モノマー7a(502mg,1.15mmol)、炭酸ジフェニル(981mg,4.58mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(5.6mg,45.8μmol)を入れた。続いて実施例2−1と同等の条件で反応と後処理を行い、重合体(3)(1.63g,収率77%)を得た。
【0111】
[実施例2−4]
1a(50%)と7a(50%)のポリカーボネート共重合体(4)の合成
20mLシュレンク型反応管にアルゴン雰囲気下、モノマー1a(1.00g,2.29mmol)、モノマー7a(1.01mg,2.29mmol)、炭酸ジフェニル(981mg,4.58mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(5.6mg,45.8μmol)を入れた。続いて実施例2−1と同等の条件で反応と後処理を行い、重合体(4)(1.68g,収率79%)を得た。
【0112】
[実施例2−5]
1a(25%)と7a(75%)のポリカーボネート共重合体(5)の合成
20mLシュレンク型反応管にアルゴン雰囲気下、モノマー1a(500mg,1.15mmol)、モノマー7a(1.51g,3.44mmol)、炭酸ジフェニル(981mg,4.58mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(5.6mg,45.8μmol)を入れた。続いて実施例2−1と同等の条件で反応と後処理を行い、重合体(5)(1.83g,収率86%)を得た。
【0113】
[実施例2−6]
1a(10%)と7a(90%)のポリカーボネート共重合体(6)の合成
20mLシュレンク型反応管にアルゴン雰囲気下、モノマー1a(200mg,0.458mmol)、モノマー7a(1.81g,4.12mmol)、炭酸ジフェニル(981mg,4.58mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(5.6mg,45.8μmol)を入れた。続いて実施例2−1と同等の条件で反応と後処理を行い、重合体(6)(1.81g,収率85%)を得た。
【0114】
[実施例2−7]
1bのポリカーボネート重合体(7)の合成
20mLシュレンク型反応管にアルゴン雰囲気下、モノマー1b(427mg,0.779mmol)、炭酸ジフェニル(162mg,0.779mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(0.951mg,7.8μmol)を入れた。続いて実施例2−1と同等の条件で反応と後処理を行い、重合体7(412mg,収率92%)を得た。
【0115】
[実施例2−8]
1cのポリカーボネート重合体(8)の合成
20mLシュレンク型反応管にアルゴン雰囲気下、モノマー1c(668mg,0.931mmol)、炭酸ジフェニル(199mg,0.931mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(1.13mg,9.3μmol)を入れた。続いて実施例2−1と同等の条件で反応と後処理を行い、重合体(8)(567mg,収率82%)を得た。
【0116】
[実施例2−9]
1dのポリカーボネート重合体(9)の合成
20mLシュレンク型反応管にアルゴン雰囲気下、モノマー1d(1.77mg,3.38mmol)、炭酸ジフェニル(724mg,3.38mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(4.13mg,33.8μmol)および酸化防止剤として亜リン酸トリフェニル(3.38μL,12.9μmol)を入れた。続いて実施例2−1と同等の条件で反応と後処理を行い、重合体(9)(1.46g,収率78%)を得た。
【0117】
[実施例2−10]
1eのポリカーボネート重合体(10)の合成
20mLシュレンク型反応管にアルゴン雰囲気下、モノマー1e(1.14g,1.82mmol)、炭酸ジフェニル(390mg,1.82mmol)および4−ジメチルアミノピリジン(2.22mg,18.2μmol)を入れた。続いて実施例2−1と同等の条件で反応と後処理を行い、重合体(10)(1.10g,収率95%)を得た。
【0118】
[比較例2−1]
7aのポリカーボネート重合体(11)の合成
20mLシュレンク型反応管にアルゴン雰囲気下、モノマー7a(1.00g,2.28mmol)、炭酸ジフェニル(489mg,2.28mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(2.8mg,22.8μmol)および酸化防止剤として亜リン酸トリフェニル(2.28μL,8.7μmol)を入れた。続いて実施例2−1と同等の条件で反応と後処理を行い、重合体(11)(932mg,収率88%)を得た。
【0119】
[実施例3−1]
光学素子用円板成型体の作成例
重合体1(0.30g)をメノウ乳鉢で粉砕処理後、内径15mmの円筒状形状を有する金型に入れた。この金型の開放部の両面を、鏡面処理された平面を有する直径15mmの円柱状金型で封じた。200℃で10分加熱して、封じた樹脂を溶融させたのちに、金型の両面から50MPaの圧力を加えた。100℃まで冷却したのちに圧力を開放し、円板状の透明成型体を得た。
【0120】
[各重合体の分析・評価]
作成した重合体の分析・評価方法について説明する。分析・評価項目として、分子量分布測定、ガラス転移点及び屈折率測定が挙げられ、以下、各項目の測定方法の詳細について説明する。
【0121】
(1)分子量分布
重合体について、クロロホルムを送液(0.085mL/分)としたゲルパーミッションクロマトグラフ(GPC:Gel Permission Chromatograph)測定を行った。分析装置は二種のポリスチレンゲルカラム(東ソー株式会社製、TSKgel G5000HXL[製品名],G4000HXL[製品名])を装填した高速液体クロマトグラフ装置(日本分光社製:Gulliver[製品名])を用いた。重合体の装置流路内の保持時間を分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間と対比して、近似的に数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を算出した。
【0122】
(2)ガラス転移点(Tg)
重合体について示差走査熱量測定装置(DSC:Differential Scanning Calorimetry、島津製作所社製:DSC−60[製品名])を用いて、常温から300℃の範囲で測定を行い、ガラス転移点(Tg)を求めた。
【0123】
(3)屈折率(nd)およびアッペ数(νd)
重合体をN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、溶液をガラス基板上に滴下した後、ガラス基板を250℃に昇温して30分保持し、溶媒を留去して厚さ平均0.7mmの膜を成膜した。27℃において、dスペクトル線(波長587.56nm)に対する屈折率(nd)をカルニュー屈折計(島津デバイス製造社製:KPR−30[製品名])を用いて測定し、該重合体のアッペ数(νd)を算出した。
【0124】
それぞれの重合体について得られた結果を下記の表1に示す。
【0125】
【表1】

【0126】
また、下記の表2及び図1に、表1の結果から求めた、モノマー1aと7aの共重合体の組成比と光学特性の関係を示す。
【0127】
【表2】

【0128】
また、下記の表3及び図2に、表1の結果から求めた、一般式(2)内のLの炭素・酸素原子数とガラス転移点の関係を示す。
【0129】
【表3】

【0130】
表1及び図1に記載の結果より明らかな様に、実施例2−1〜2−9の重合体は比較例2−1の公知モノマーの単独重合体と比べて高屈折率を示す。また、実施例2−1〜2−10の重合体はいずれも比較例2−1の公知モノマーの単独重合体と比べて低アッペ数を示す。
【0131】
また、実施例のいずれの重合体もガラス転移点が156℃以下であり、加熱による成形が容易である。図2に示すとおり、一般式(2)で示される繰返し単位の構造中、Lで示されるオキシアルキレン基、ポリ(オキシエチレン)基の分子鎖の長さに応じて、多様なガラス転移点温度の樹脂を生産することができる。中でも、実施例2−1、2−5〜2−10の重合体は比較例2−1の公知モノマーの単独重合体よりもガラス転移点が低いため、より低温での成型加工が可能である。
【0132】
以上より、本発明の樹脂は公知モノマーの単独重合体と比べて高屈折性、低アッペ性、低ガラス転移点の性質のうち、少なくとも一つ以上の特性が向上していることが分かる。このことから、本発明の2価アルコール類は、本発明の樹脂を種々の光学系に応じた所望の屈折率、アッペ数、ガラス転移温度に調整可能であり、光学用の高屈折熱可塑性樹脂の原材料として特に有用であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の2価アルコール類は、加工性の高い高屈折率樹脂材料を製造することができるので、その重合体のポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂からなる成形体、およびカメラ等のレンズ、光ディスク用レンズ、fθレンズ、画像表示媒体の光学系素子、光学膜、プリズム等の光学素子に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする2価アルコール類。
【化1】

〔式中、Lは炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基、又は炭素数2以上12以下のポリ(オキシエチレン)基を示す。〕
【請求項2】
ポリマー中に下記一般式(2)で表される繰返し単位を含有することを特徴とするポリカーボネート樹脂。
【化2】

〔式中、Lは炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基、又は炭素数2以上12以下のポリ(オキシエチレン)基を示す。〕
【請求項3】
前記ポリマー中に含有する前記一般式(2)で表される繰返し単位のモル比率が10パーセント以上であることを特徴とする請求項2に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項4】
前記ポリマー中にさらに下記一般式(3)および(4)で表される繰返し単位から選ばれた少なくとも1種類以上の繰返し単位を含有することを特徴とする請求項2または3に記載のポリカーボネート樹脂。
【化3】

【化4】

〔一般式(3)および(4)中、Tは炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基、炭素数2以上12以下のポリ(オキシエチレン)基、又は単結合を示す。R1、R2は各々水素原子、炭素数1以上6以下のアルキル基、炭素数1以上6以下のアルコキシ基又は炭素数6以上12以下のアリール基であり、互いに同じであっても異なっていてもよい。Uは炭素数1以上13以下のアルキレン基,炭素数2以上13以下のアルキリデン基,炭素数5以上13以下のシクロアルキレン基,炭素数5以上13以下のシクロアルキリデン基,炭素数6以上13以下のアリーレン基,フルオレニデン、−O−,−S−,−SO−,−CO−又は単結合を示す。R1、R2、T及びUは構造単位ごとに異なっていてもよい。〕
【請求項5】
ポリマー中に下記一般式(2)で表される繰返し単位を含有することを特徴とするポリエステル樹脂。
【化5】

〔式中、Lは炭素数2以上12以下のオキシアルキレン基、又は炭素数2以上12以下のポリ(オキシエチレン)基を示す。〕
【請求項6】
請求項2乃至5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂からなる成形体。
【請求項7】
請求項2乃至5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂またはポリエステル樹脂からなる光学素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−209054(P2010−209054A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60272(P2009−60272)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】