説明

2価リンカーおよびその結合体

式(V)、(VI)、および(VII)の化合物から誘導される2価リンカーであって、該式においてLは脱離基であり、他の変数は請求項に定義された通りであり、ビタミン、薬剤、診断剤、および/または画像剤結合体に含まれる、またはそれらの調製のための、2価リンカーが記載される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、米国特許法第35条119(e)項の下に、2004年7月23日出願の米国仮出願第60/590,580号の利益を主張する。なお、該仮出願の開示の全体を引用することにより本明細書に含める。
【0002】
本発明は、2価リンカー、ならびにその合成および使用に関する。特に、本発明は、ビタミン、薬剤、診断剤、および/または画像剤結合体の調製における、2価リンカーの合成および使用に関する。
【発明の背景】
【0003】
薬剤、ビタミン、診断剤、および画像剤結合体は、従来からヒトおよび動物における各種病状を治療、診断、および評価するために使用されている。多くの場合、これらの薬剤、ビタミン、診断、および画像剤結合体は、例えば、標的リガンドを、薬剤、診断剤、または画像剤から隔てる介在リンカーを含む。これらのリンカーは、結合体の中に個別に、または共に連結されて含められ、例えば、薬剤、診断剤、または画像剤を、結合体の他の部分、例えば、ビタミン、または他の標的リガンドから隔てるために使用される、多種多様な2価断片を含む。これらのリンカーは、ヒトおよび動物に投与される際に見られる代謝的、生理的、または生物学的条件下において、安定であってもよいし、あるいはそれとは別に、上記条件下で、分断および/または断片化の様々な経路を経過してもよい。一般に、薬剤、ビタミン、診断、および画像剤結合体において使用することが可能な、2価リンカーに対しては、不断に需要が存在する。
【発明の開示】
【0004】
例示的には、本発明は、別にビバレント・リンカーとも呼ばれる、2価(ダイバレント)リンカーであって、2種類以上の化学的実体を接合する、リンクする、接着する、付着する、またはその他のやり方で連結するのに使用することが可能なリンカーを含む。この接合、リンク、付着、または連結は、それらの化学的実体同士から成る結合体の形成に用いることが可能である。これらの化学的実体としては、標的リガンド、および、受容体結合性リガンド、例えば、ビタミンが挙げられる。これらの化学的実体としてはまた、各種疾病または病態を治療するための薬剤、および、各種疾病または病態を診断し、検出し、あるいはその他のやり方で監視するための画像および診断剤が挙げられる。
【0005】
一つの実施態様では、一つの化学的実体は、ビタミン受容体結合性反応基を含み、もう一つの実体は、薬剤、画像剤、診断剤、あるいは、薬剤、画像剤、診断剤に結合された、もう一つの2価リンカーを含む。2種以上の化学的実体において、その二つの実体の間の距離を変えるために、および/または、そのようにして調製される結合体の物理化学的性質を変えるために、2種以上の化学的実体の間に複数のリンカーを使用することが可能であることが理解される。
【0006】
別の実施態様では、第1求核剤によって置換が可能な第1脱離基、リンカー領域、および、第2求核剤によって置換が可能な第2脱離基を含む化合物であって、第1求核剤はビタミン受容体結合性反応基、およびリンカー領域は、同じであっても、異なっていてもよい1個以上の2価リンカー単位を含み、かつ、第2求核剤は、薬剤、画像剤、診断剤、またはさらに別の2価リンカーであることを特徴とする化合物が記載される。
【0007】
別の実施態様では、下記の構造(V)を有する化合物が記載される、すなわち、

上式において、nは1から約4までの整数であり;RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素、およびアルキル、例えば、任意に分枝してもよいC1-C4アルキルのような低級アルキルを含むアルキル、から成るグループから選ばれ;あるいは、RaおよびRbは、付属の炭素原子で結び付けられて炭素環を形成し;かつ、X1およびX2は、それぞれ独立に選ばれた脱離基である。一つの態様では、前記独立に選ばれる脱離基X1およびX2は、それぞれ、求核剤、例えば、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、または別の2価リンカー求核剤等によって置換が可能である。
【0008】
別の実施態様では、結合体は、脱離基X1およびX2の内の1個以上を、求核剤、例えば、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、または別の2価リンカー求核剤等によって置換することによって、式(V)の化合物から形成される。
【0009】
別の実施態様では、下記の構造(VI)を有する化合物が記載される、すなわち、

上式において、mは1から約4までの整数であり、かつ、X1およびX2は、それぞれ独立に選ばれた脱離基である。一つの態様では、前記独立に選ばれる脱離基X1およびX2は、それぞれ、求核剤、例えば、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、または別の2価リンカー求核剤等によって置換が可能である。
【0010】
別の態様では、結合体は、脱離基X1およびX2の内の1個以上を、求核剤、例えば、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、または別の2価リンカー求核剤等によって置換することによって、式(VI)の化合物から形成される。
【0011】
別の実施態様では、下記の構造(VII)を有する化合物が記載される、すなわち、

上式において、mは1から約4までの整数であり、かつ、X1およびX2は、それぞれ独立に選ばれた脱離基である。一つの態様では、前記独立に選ばれる脱離基X1およびX2は、それぞれ、求核剤、例えば、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、または別の2価リンカー求核剤等によって置換が可能である。
【0012】
別の態様では、結合体は、脱離基X1およびX2の内の1個以上を、求核剤、例えば、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、または別の2価リンカー求核剤等によって置換することによって、式(VII)の化合物から形成される。
【0013】
一つの態様では、結合体は、下記の構造(VIII)の内の一つを有する、すなわち、

上式において、nは1から約4までの整数であり;RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素、およびアルキル、例えば、任意に分枝してもよいC1-C4アルキルのような低級アルキルを含むアルキル、から成るグループから選ばれ;あるいは、RaおよびRbは、付属の炭素原子で結び付けられて炭素環を形成し;X1およびX2は、それぞれ独立に選ばれた脱離基であり;かつ、L1およびL2は、それぞれ独立に選ばれた2価リンカーである。
【0014】
別の実施態様では、結合体は、下記の構造(IX)の内の一つを有する、すなわち、

上式において、mは1から約4までの整数であり、X1およびX2は、それぞれ独立に選ばれた脱離基であり、かつ、L1およびL2は、それぞれ独立に選ばれた2価リンカーである。
【0015】
別の実施態様では、結合体は、下記の構造(X)の内の一つを有する、すなわち、

上式において、mは1から約4までの整数であり;X1およびX2は、それぞれ独立に選ばれた脱離基であり;かつ、L1およびL2は、それぞれ独立に選ばれた2価リンカーである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書では、結合体に使用される2価リンカー、または、結合体を調製する際に使用される2価リンカーが記載される。この2価リンカーは、薬剤結合体、画像剤結合体、および/または診断剤結合体を調製するのに使用される。薬剤結合体としては、標的剤結合体、例えば、米国特許出願US-2005-0002942-A1に記載されるビタミン受容体結合性薬剤結合体、および、米国特許出願US-2001-0031252-A1およびUS-2003-0086900-A1に記載される他の薬剤結合体が挙げられる。画像剤結合体および診断剤結合体としては、米国特許出願US-2004-0033195-A1および国際特許出願WO03/097647に記載されるものが挙げられる。前記特許出願公報それぞれの開示を、引用することにより本明細書に含める。
【0017】
薬剤の類縁体および誘導体の結合体、ビタミンの類縁体および誘導体の結合体、画像剤の類縁体および誘導体の結合体、および、診断剤の類縁体および誘導体の結合体は、本明細書に記載される2価リンカーを用いて調製が可能であることが理解される。さらに、別様に指定されない限り、薬剤という用語は、その類縁体および誘導体を含むと理解しなければならず、ビタミンという用語は、その類縁体および誘導体を含むと理解しなければならず、画像剤という用語は、その類縁体および誘導体を含むと理解しなければならず、診断剤という用語は、その類縁体および誘導体を含むと理解しなければならない。
【0018】
本明細書に記載される2価リンカーは、薬剤、ビタミン、画像剤、または診断剤、および、その結合される反応基からの全体距離を変えるためのスペーサーとして使用してもよい。さらに、本明細書に記載される2価リンカーは、薬剤、ビタミン、画像剤、または診断剤が含まれる、薬剤、ビタミン、画像剤、または診断剤結合体の物理化学的性質、可溶性、およびその他の性質を変えるために使用してもよい。
【0019】
例示的には、本明細書に記載される2価リンカーは、下式(I)を持つ、ビタミン受容体結合性薬剤結合体、ビタミン受容体結合性画像剤結合体、およびビタミン受容体結合性診断剤結合体を調製するのに使用されるリンカーの中に含められてもよい。すなわち、
V−L−D
V−L−IA
V−L−DA
(I)
上式において、Vは、その類縁体または誘導体を含む、ビタミン受容体結合性反応基、Lはリンカー、Dは、その類縁体または誘導体を含む、薬剤であり、IAは、その類縁体または誘導体を含む、画像剤であり、かつ、DAは、その類縁体または誘導体を含む、診断剤である。リンカー(L)は、本明細書に記載される2価リンカーを含む、複数の2価リンカーを含むことが可能である。
【0020】
一つの実施態様では、本明細書に記載される2価リンカーは、下式(II)の化合物である、すなわち、

上式において、nは1から約4までの整数であり;RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素、およびアルキル、例えば、任意に分枝してもよいC1-C4アルキルのような低級アルキルを含むアルキル、から成るグループから選ばれ;あるいは、RaおよびRbは、付属の炭素原子で結び付けられて炭素環を形成し;Rは、任意に置換されるアルキル基、任意に置換されるアシル基、または、適切に選択される窒素保護基であり;かつ、(*)は、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、その他の2価リンカー、または結合体の他方部分の付着点を示す。
【0021】
別の実施態様では、本明細書に記載される2価リンカーは、下式(III)の化合物を含む、すなわち、

上式において、mは1から約4までの整数であり;Rは、任意に置換されるアルキル基、任意に置換されるアシル基、または、適切に選択される窒素保護基であり;かつ、(*)は、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、その他の2価リンカー、または結合体の他方部分の付着点を示す。
【0022】
別の実施態様では、本明細書に記載される2価リンカーは、下式(IV)の化合物を含む、すなわち、

上式において、mは1から約4までの整数であり;Rは、任意に置換されるアルキル基、任意に置換されるアシル基、または、適切に選択される窒素保護基であり;かつ、(*)は、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、その他の2価リンカー、または結合体の他方部分の付着点を示す。
【0023】
別の実施態様では、本明細書に記載される2価リンカーは、下式(V)、(VI)、および(VII)の化合物を含む、すなわち、

上式において、nおよびmは、1から約4までの整数からそれぞれ独立に選ばれ;RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素、およびアルキル、例えば、任意に分枝してもよいC1-C4アルキルのような低級アルキルを含むアルキル、から成るグループから選ばれ;あるいは、RaおよびRbは、付属の炭素原子で結び付けられて炭素環を形成し;かつ、X1およびX2は、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、別の2価リンカー、または結合体の別部分によって求核的に置換される、それぞれ独立に選ばれる脱離基である。
【0024】
例示的には、本明細書に記載される2価リンカーによって形成されるビタミン薬剤結合体は、下式(VIII)の化合物を含む、すなわち、

上式において、V、D、およびnは本明細書に記載する通りであり;nは1から約4までの整数であり;RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素、およびアルキル、例えば、任意に分枝してもよいC1-C4アルキルのような低級アルキルを含むアルキル、から成るグループから選ばれ;あるいは、RaおよびRbは、付属の炭素原子で結び付けられて炭素環を形成し;L1およびL2は、結合体を調製するために使用される、それぞれ独立に選ばれる2価リンカーである。同様に、式(VIII)に対応する、ビタミン画像剤結合体およびビタミン診断剤結合体も、本明細書に記載される2価リンカーから形成が可能であることが理解される。
【0025】
例示的には、本明細書に記載される2価リンカーによって形成されるビタミン薬剤結合体は、下式(IX)の化合物を含む、すなわち、

上式において、V、D、およびnは本明細書に記載する通りであり;mは1から約4までの整数であり;L1およびL2は、結合体を完成するために使用される、それぞれ独立に選ばれる2価リンカーである。同様に、式(IX)に対応する、ビタミン画像剤結合体およびビタミン診断剤結合体も、本明細書に記載される2価リンカーから形成が可能であることが理解される。
【0026】
例示的には、本明細書に記載される2価リンカーによって形成されるビタミン薬剤結合体は、下式(X)の化合物を含む、すなわち、

上式において、V、D、およびnは本明細書に記載する通りであり;mは1から約4までの整数であり;L1およびL2は、結合体を完成するために使用される、それぞれ独立に選ばれる2価リンカーである。同様に、式(X)に対応する、ビタミン画像剤結合体およびビタミン診断剤結合体も、本明細書に記載される2価リンカーから形成が可能であることが理解される。
【0027】
さらに、V、L2、および/またはDの内の任意のものが、本明細書に記載される2価リンカー、例えば、式(VIII)、(IX)、および/または(X)の2価リンカー、のカルボニル基に接続される場合、その接続は、ヘテロ原子、例えば、酸素、硫黄、任意に置換される窒素等、を介して形成されることが理解されなければならない。
【0028】
別の例示の実施態様では、薬剤、ビタミン、画像剤、または診断剤結合体を調製するのに有用な中間体が、本明細書において記載される。このような中間体は、続いて他の成分に結合されて、ビタミン、画像剤、または診断剤結合体を形成してもよい。本明細書に記載される中間体は、下式XIの化合物を含む、すなわち、

上式において、V、D、L1、L2、X1、およびX2は本明細書に記載する通りであり;nは1から約4までの整数である。同様に、式(XI)に対応する、ビタミン画像剤結合体およびビタミン診断剤結合体も、本明細書に記載される2価リンカーから形成が可能であることが理解される。
【0029】
例示的には、本明細書に記載される2価リンカーによって形成されるビタミン薬剤結合体は、下式(XII)の化合物を含む、すなわち、

上式において、V、D、L1、L2、X1、およびX2は本明細書に記載する通りであり;mは1から約4までの整数である。同様に、式(XII)に対応する、ビタミン画像剤結合体およびビタミン診断剤結合体も、本明細書に記載される2価リンカーから形成が可能であることが理解される。
【0030】
例示的には、本明細書に記載される2価リンカーによって形成されるビタミン薬剤結合体は、下式(XIII)の化合物を含む、すなわち、

上式において、V、D、L1、L2、X1、およびX2は本明細書に記載する通りであり;mは1から約4までの整数である。同様に、式(XIII)に対応する、ビタミン画像剤結合体およびビタミン診断剤結合体も、本明細書に記載される2価リンカーから形成が可能であることが理解される。
【0031】
さらに、V、L2、および/またはDの内の任意のものが、本明細書に記載される2価リンカー、例えば、式(XI)、(XII)、および(XIII)の2価リンカー、のカルボニル基に接続される場合、その接続は、ヘテロ原子、例えば、酸素、硫黄、任意に置換される窒素等を介して形成されることが理解される。
【0032】
一つの例示の実施態様では、脱離基X1はアリールチオ基である。一つの態様では、このアリールチオ基はヘテロ・アリールチオ基であり、例えば、任意に置換される2-ピリジニルチオ、任意に置換される4-ピリジニルチオ等を含むが、ただしこれらに限定されない。別の例示の態様では、置換は、電子吸引性置換基、例えば、シアノ、ニトロ、アルキルスルフォニル、アリールスルフォニル、ハロ、ハロアルキル、アシルおよびその誘導体、カルボキシルおよびその誘導体等、および上記の組み合わせを含む。
【0033】
別の例示の実施態様では、脱離基X2はアリールオキシ基である。一つの態様では、このアリールオキシ基は任意に置換されるフェニル基である。別の例示の態様では、アリールオキシ基は、任意に置換されるヘテロ・アリールオキシ基であり、例えば、任意に置換されるベンゾトリアゾル等を含むが、ただしこれらに限定されない。別の例示の態様では、置換は、電子吸引性置換基、例えば、シアノ、ニトロ、アルキルスルフォニル、アリールスルフォニル、ハロ、ハロアルキル、アシルおよびその誘導体、カルボキシルおよびその誘導体等、および上記の組み合わせを含む。
【0034】
例示の脱離基X1は、下式(XIV)の化合物を含む、すなわち、

上式において、(*)は、本明細書に記載される2価リンカーの硫黄に対する付着点を示す。一つの態様では、式(XIV)を有する脱離基X1はそれぞれ、置換基、例えば、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ等から選ばれる1個以上の置換基、または追加の置換基によって任意に置換されてよい。それ以外の例示の脱離基としては、アルキルおよびアリールスルフォニル脱離基であって、例えば、以下のものを含むが、ただしそれに限定されない、すなわち、

上式において、Rは、それぞれが、例えば、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ等によって任意に置換されてよい、アルキルまたはアリールであり;(*)は、本明細書に記載される2価リンカーの硫黄に対する付着点を示す。
【0035】
例示の脱離基X2は、下式(XV)の化合物を含む、すなわち、

上式において、(*)は、本明細書に記載される2価リンカーのカルボニルに対する付着点を示す。一つの態様では、式(XV)を有する脱離基X2はそれぞれ、置換基、例えば、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、シアノ、ニトロ等から選ばれる1個以上の置換基、または追加の置換基によって任意に置換されてよい。
【0036】
脱離基、例えば、式XIII、XIV、およびXVに示される脱離基を含む2価リンカーは、本明細書に記載される実施例に記載される対応合成手順に従って調製されてもよい。
【0037】
別の例示の態様では、本明細書に記載される、ビタミン受容体結合性薬剤搬送結合体中間体は、下式を有する化合物、すなわち、

または、その保護された誘導体を含む。上式において、RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素、およびアルキル、例えば、任意に分枝してもよいC1-C4アルキルのような低級アルキルを含むアルキル、から成るグループから選ばれ;あるいは、RaおよびRbは、付属の炭素原子で結び付けられて炭素環を形成し;Yは水素、または置換基、例示としては、電子吸引性置換基、例えば、ニトロ、シアノ、ハロ、アルキルスルフォニル、カルボン酸誘導体等を含む置換基であるが、だたしこれらに限定されない;Isは、結合手であるか、または別の2価リンカーのいずれかであり、また、Vは本明細書に定義される通りである。これらの薬剤搬送結合体のシステインまたはホモシステイン部分には、他の置換基、例えば、より長い、および/または分枝したアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基等が任意に存在してもよいことが見て取れる。これらの薬剤搬送結合体のシステイン部分については環状変異種も想定が可能であることを理解しなければならない。別の態様では、Raは水素であり、Rbは、メチル等アルキルである。別の態様では、RaおよびRbは付属の炭素原子で結び付けられてスピロ・シクロプロピルを形成する。
【0038】
本明細書に記載されるビタミン受容体結合性薬剤搬送結合体中間体の、別の例示の態様では、中間体は、下式を有する化合物、すなわち、

または、その保護された誘導体を含む。上式において、Vは、ビタミン、またはその類縁体または誘導体であり、AAは、アミノ酸であって、例示として、天然のアミノ酸から選ばれるアミノ酸またはその立体異性体であり、RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素、およびアルキル、例えば、任意に分枝してもよいC1-C4アルキルのような低級アルキルを含むアルキル、から成るグループから選ばれ、あるいは、RaおよびRbは、付属の炭素原子で結び付けられて炭素環を形成し、Yは水素、または置換基、例示としては、電子吸引性置換基、例えば、ニトロ、シアノ、ハロ、アルキルスルフォニル、カルボン酸誘導体等を含む置換基であるが、ただしこれらに限定されず、nおよびmはそれぞれ独立に選ばれる整数、例えば、1、2、または3であり、かつ、pは整数、例えば、1、2、3、4、または5である。これらの薬剤搬送結合体のシステインまたはホモシステイン部分には、他の置換基、例えば、より長鎖のおよび/または分枝した、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基等、が任意に存在してもよいことが見て取れる。これらの薬剤搬送結合体のシステイン部分については環状変異種も想定が可能であることを理解しなければならない。AAはまた、任意の他のアミノ酸、例えば、下記の一般式を持つアミノ酸であってもよい、すなわち:
-N(R)-(CR'R'')q-C(O)-
上式において、Rは、水素、アルキル、アシル、または適当な窒素保護基であり、R'およびR''は、それぞれ、出現時に独立に選択される水素または置換基であり、qは整数、例えば、1、2、3、4、または5である。例示として、R'および/またはR''は、それぞれ独立に、水素、または、天然のアミノ酸上に存在する側鎖、例えば、メチル、ベンジル、ヒドロキシメチル、チオメチル、カルボキシル、カルボキシメチル、グアニジノプロピル等、および、それらの誘導体および保護された誘導体に対応するが、ただしこれらに限定されない。上述の式は、全ての立体異性変異種を含む。例えば、アミノ酸は、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、リシン、グルタミン、アルギニン、セリン、オルニチン、トレオニン等から選ばれてもよい。本明細書に記載されるビタミン受容体結合性薬剤搬送結合体中間体の、別の例示の態様では、薬剤、あるいは、その類縁体または誘導体は、アルキルチオ求核剤を含む。
【0039】
本明細書に記載される2価リンカーは、ある化学的、環境的、または生理的条件下において分断を経過することが見て取れる。特に、本明細書に記載される2価リンカーは、生理的条件下、例えば、グルタチオン仲介性機構の作用によって分断されてもよい。そのような実施態様では、このようなリンカーは、解除性リンカーとも呼ばれてもよい。
【0040】
本明細書に記載される2価リンカーの分断に関する例示の機構は、下記の1,4および1,6断片化機構を含む。すなわち、

上式において、Xは、外来性または内在性求核剤、グルタチオン、または生体還元剤等であり、ZまたはZ'のどちらかは、ビタミンまたはその類縁体または誘導体、あるいは、薬剤またはその類縁体または誘導体、あるいは、2価リンカーの他の部分と結合する、ビタミンまたは薬剤反応基である。上記断片化機構は、協奏的な機構として描かれているけれども、2価リンカーを最終的に断片化して、図示の最終産物を実現するために、任意の数の不連続工程が実行されてもよいことを理解しなければならない。例えば、結合手の分断は、前述の例に示されるベータ硫黄のアリール基またはジスルフィドによって与えられる安定性によって隣接支援されるカルバミン酸基の、酸触媒除去によって起こってもよいことが見て取れる。この実施態様のこれらの変異種では、解除性リンカーはカルバミン酸基である。それとは別に、断片化は、ジスルフィド基に対する求核性攻撃によって起動され、分断を生じてチオレートを形成してもよい。このチオレートは、分子間において、カルボン酸またはカルバミン酸基を置換させ、対応するチアシクロプロパンを形成してもよい。ベンジル含有2価リンカーの場合、ジスルフィド結合の例示の分断に次いで、得られたフェニルチオレートがさらに断片化されて、共鳴安定化中間体を形成することによって、カルボン酸またはカルバミン酸基を放出してもよい。いずれの場合にしろ、本明細書に記載される例示の2価リンカーの解除性は、存在する化学的、代謝的、生理的、または生物的条件に関連する任意の機構によって実現されてもよい。
【0041】
〔一般的ジスルフィド形成〕
ジスルフィド基は、一般に、下記のスキーム1に示されるように、アルキルまたはアリール・スルフォニル誘導体、または、対応するヘテロアリールジチオアルキル誘導体、例えば、ピリジン-2-イルジチオアルキル誘導体等を、アルキレンチオール誘導体と反応させることによって形成される。すなわち、

この反応に使用される溶媒としては、THF、EtOAc、CH2Cl2、CHCl3、CCl4、DMF、DMSO等が挙げられる。この変形に使用される温度範囲は、0℃と80℃の間を変動してよい。必要とされるアルキルまたはアリール・スルフォニルチオアルキル誘導体は、従来技術で認知済みのプロコールを用いて調製されてもよいが、また、Ranasinghe and Fuchs, Synth. Commun. 18(3), 227-32 (1988)の方法に従って調製されてもよい。なお、この論文の開示を引用することにより本明細書に含める。非対称的ジアルキルジスルフィドを調製する、他の方法は、WO88/01622、欧州特許出願第0116208A1号、および米国特許第4,691,024号に記載されるように、非対称的ヘテロアリール-アルキルジスルフィド、例えば、2-チオピリジニル、3-ニトロ-2-チオピリジニル、および類似のジスルフィドに対し、アルキルチオールを用いてチオール転位反応を引き起こすことに基づいている。なお、これらの開示を引用することにより本明細書に含める。
【0042】
〔一般的カルボン酸塩、チオカルボン酸塩、およびカルバミン酸塩形成〕
カルボン酸塩、チオカルボン酸塩、およびカルバミン酸塩は、一般に、それぞれ、ヒドロキシ置換化合物、チオ置換化合物、またはアミン置換化合物を、スキーム2に示されるように、活性化アルコキシカルボニル誘導体と反応させることによって形成される。すなわち、

上式において、Xは適当な脱離基であり、Qは、酸素、硫黄、任意に置換される窒素、任意に保護される窒素等である。この反応のために使用される溶媒は、THF、EtOAc、CH2Cl2、CHCl3、CCl4、DMF、DMSO等が挙げられる。この変換に使用される温度範囲は、0℃と80℃の間を変動してよい。反応を促進するために、任意の塩基性触媒、例えば、無機塩基、アミン塩基、ポリマー結合塩基等の使用が可能である。
【実施例】
【0043】
〔実施例1:6-トリフルオロメチル-1-[2-(2-ピリジニルジチオ)エトキシカルボニルオキシ]ベンゾトリアゾール〕
実施例1では、スキーム3に従って調製された。すなわち、

(a)4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、CH2Cl2;(b)Et2O;(c)CH3CH。
【0044】
工程(a) 10 mLの無水メタノールに溶解させた、4-(ジメチルアミン)ピリジン(3.0 g; 24.68 mmol; 1.03当量)の溶液を、10 mLの無水メタノールに懸濁させた、2-(2-ピリジルジチオ)エタノール塩酸(化合物(1a);C7H9NS2O.HCl;5.4 g;24 mmol)の懸濁液に加え、混合液を攪拌し、透明な液体を形成した。数分以内に、溶液は、微細な懸濁液を形成することによって濁った。この懸濁液をフラッシュクロマトグラフィー(FC)によって精製した。FCは、CH2Cl2に溶解させた5%メタノールを含む140 gシリカゲル60を用いて実行し、500 mlの溶媒貯留槽を有する24 cm x 4.3 cmシリカゲル・ベッドを形成した。20 mLのCH2Cl2に溶解させた前記懸濁液をアプライし、カラムをCH2Cl2に溶解させた5%メタノール液で溶出し、UV検出と連結させて30 mL毎の標準的な分画を収集した。産物化合物(1b)は、TLC(1:1ヘキサン:EtOAc)によって、分画2から9において検出できる。
【0045】
工程(b) 1-ヒドロキシ-6-(トリフルオロメチル)ベンゾトリアゾール(化合物(2);C7H4F3N3O;2.3 g;0.11 mol;Aldrich)を770 mLのエーテルに溶解し、上清を、2 LのRBフラスコに傾斜投入した。トリクロロメチルクロロフォルメート(化合物(3);C2Cl4O2;107 g;0.053 mol;6.0 mL)を、この透明な、無色の溶液に室温で15分間に渡って加えた。この混合液を、40-50℃の間の温度に1時間かけて穏やかに加熱し、室温に冷却した。溶液をろ過し、沈殿をエーテル(10 x 30 mL)にて洗浄した。この沈殿は白色粉末であり、減圧乾燥したところ、16.95 g(74%収率)が得られた。この他の合成上の詳細は、Ogura et al., Synthesis, 1987, 557-560によって記載される。なお、この論文の開示は引用することにより本明細書に含める。
【0046】
工程(c) 化合物(1b)(約7.5 mmol)を10 mLのアセトニトリルに溶解させた溶液を、化合物4(3.46 g; 8 mmol)を300 mlのアセトニトリルに溶解させた、攪拌下の透明溶液に、室温において2分間に渡って加えた。次に、この混合物を室温で24時間攪拌した。24時間後、混合物のTLC分析を実行した。さらに14時間、合計38時間混合物を攪拌した。混合物を濃縮し、50 mLの1N NaHCO3当量および100 mLの酢酸エチルで洗浄した。有機層を分離し、さらに1N NaHCO3当量(1 x 10 mL)で洗浄し、脱水し(Na2SO4による)、ろ過したところ、白色固体粉末が得られた。これを減圧下5時間乾燥したところ2.54 gが得られた。
【0047】
〔実施例2〕
実施例2は、下記のスキーム4に従って調製された。すなわち、

(a)ピリジン、CH2Cl2
【0048】
2-(2-ピリジルジチオ)エタノール塩酸(化合物(1b);8.8 g;39.33 mL)を78 mLのCH2Cl2に溶解し、2当量のピリジン(C5H5N;80.88 mL)を加えた。パラ-ニトロフェニルクロロフォルメート(化合物(6);8.08 g;40mL)を80 mLのCH2Cl2に溶解し、その溶液を、2-(2-ピリジルチオ)エタノール塩酸とピリジンの混合液に15分間に渡って加えた。得られた透明な溶液を室温で15時間攪拌した。15時間攪拌後に上記混合液をTLC分析したところ、反応の完了が示された。次に、この混合液をろ過し、沈殿したピリジン塩酸を除去した。淡黄色の透明なろ液を、脱イオン水で洗浄し(2 x 50 mL)、溶解したピリジン塩酸を除去し、脱水し(Na2SO4による)、ろ過し、減圧下に濃縮した(13.8 g)。CH2Cl2に溶解させたシリカゲル60(250 g)を用い、250 mLの溶媒貯留槽を有する50 cm x 4.2 cmシリカゲル・ベッドを形成した。産物化合物(7)約13.8 gを15 mL(10 mL + 5 mL)のCH2Cl2に溶解し、この溶液を、30 mL/分の溶出比で加え、UV検出と連結させて標準的な30 mL分画を収集したところ、13.3 gが得られた(収率96%)。
【0049】
〔実施例3〕
実施例3は、スキーム5に従って調製された。すなわち、

(a)無水CH2Cl2
【0050】
3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニルクロリド(化合物(8))を15 mLの無水CH2Cl2に溶解した。この溶液を氷浴で冷却した。4-エタノールチオフェノール(化合物(9))を10 mLのCH2Cl2に溶解し、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニルクロリド溶液を含む容器に結合した滴下漏斗に加えた。4-エタノイルチオフェノールの溶液を2から5分間に渡って加えた。4-エタノイルチオフェノール溶液を加えた後、混合液を室温に温め、次に2時間攪拌した。4-エタノイルチオフェノールの添加中に沈殿が形成された。室温における2時間の攪拌の終了後、混合液を5分間超音波処理し、沈殿を溶解させた。TLC分析したところ、3-ニトロ-2-ピリジンスルフェニルクロリドおよび4-エタノイルチオフェニールの外に、新規スポットが形成されることが示された。この反応混合液を飽和NaHCO3で洗浄した。有機層に100 mLのCH2Cl2を補充した。この産物を、減圧下に3時間乾燥した。
【0051】
〔実施例4〕
実施例4は、スキーム6によって調製された。すなわち、

【0052】
化合物(10)(0.025 g; 0.085 mmol)を、攪拌下に無水CH2Cl2に溶解した。パラ-ニトロフェニルクロロフォメート(化合物(11);0.020 g;1.2当量)を、1当量のトリエチルアミン(TEA)と共に攪拌下の溶液に加えた。TLC分析によって、化合物(10)は2時間後に消費されたことが示された。産物化合物(12)を、カラムクロマトグラフィー(7:3ヘキサン:EtOAc)によって単離した。
【0053】
〔実施例5:システイン・ジスルフィド結合を含む化合物の一般的調製〕
下記のスキーム7に示すように、Ranasinghe and Fuchs, Synth. Commun. 18(3), 227-32 (1988)の方法に従って調製されたチオスルフォネート(13)(1当量)のいずれかを、薬剤、薬剤類縁体、または、薬剤誘導体(14)と反応させ、薬剤チオスルフォネート(15)を、メタノールの溶液として得た。なお、前記論文の開示を引用することにより本明細書に含める。

【0054】
スキーム7を参照すると、Rはアルキルまたはアリールであり、Lは適当な脱離基、例えば、ハロゲン、ペンタフルオロフェニル等であり、nは1から約4までの整数であり、および、Xは、-O-、-NH-、-C(O)O-、または-C(O)NH-である。変換は、TLC(シリカゲル;CHCl3/MeOH = 9/1)によって各攪拌試料の消失を観察することによって監視すると好都合である。最終収率は83%であった(取り出された産物の質量は、合計収量38.9 mgの内32 mgであった)。
【0055】
下記のスキーム8に示すように、葉酸含有ペプチジル断片Pte-Glu-(AA)n-Cys-OH(18)は、酸感受性Fmoc-Cys(Trt)-Wang樹脂(16)においてFmoc-策を用いポリマー支援連続法によって調製される。すなわち、

(a)20%ピペリジン/DMF;(b)Fmoc-AA-OH、PyBop、DIPEA、DMF;(c)Fmoc-Glu(O-t-Bu)-OH、PyBop、PyBop、DIPEA、DMF;(d)1.N10(TFA)-Pte-OH;PyBop、DIPEA、DMSO;(e)TFAA、(CH2SH)2、i-Pr3SiH;(f)NH4OH、pH10.3。
【0056】
スキーム8を参照すると、R1はFmocであり、R2はトリチルであり、DIPEAはジイソプロピルエチルアミンである。PyBopは、効率的な結合を確保するために活性化試薬として与えた。Fmoc保護基は、標準条件下で各結合工程の後に除去される。適当に保護されたアミノ酸構成単位、例えば、Fmoc-Glu-OtBu、N10-TFA-Pte-OH等が、スキーム8に記載されるように用いられ、工程(b)ではFmoc-AA-OHで表される。以上、AAは、適当に保護された任意のアミノ酸開始材料を指す。
【0057】
Fmoc-AA-OHを含む結合順序(工程(a)および(b))は、固相支持ペプチド(17)を調製するために、「n」回実行される。nは整数であり、0から約100に等しくともよい。最終結合工程に続いて、残余のFmoc基が除去され、続いてペプチドはグルタメート誘導体に結合され(工程(c))、脱保護され、TFA-保護プテロイン酸に結合される(工程(d))。その後、ペプチドは、トリフルオロ酢酸、エタンジチオール、およびトリイソプロピルシランによる処理によって、ポリマー支持体から切り離される(工程(e))。この反応条件によって、t-Bu、t-Boc、およびTrt保護基は同時に除去される。TFA保護基は塩基による処理によって除去され(工程(f))、葉酸含有Cys-含有ペプチジル断片(18)が得られる。
【0058】
薬剤結合体は、葉酸誘導体(18)(0.9-0.95当量)を、脱イオン水に溶解した薬剤チオスルフォネート(15)(0.04M, pHは0.1N NaHCO3により7に調整)と、アルゴン雰囲気下に約30分反応させて、ジスルフィド結合を形成させることによって、調製する。メタノールを減圧蒸留した後、この結合体は、調製的HPLC(Prep Novapak HR C18 19 x 300 mMカラム;移動相(A)-1.0 mMリン酸バッファー、pH=6;有機相(B)-アセトニトリル;条件-30分において99%Aおよび1%Bから50%Aおよび50%Bまでの勾配、流速=15mL/分)によって精製される。
【0059】
〔実施例6a−6f〕
実施例6a−6fは、下記の一般手順によって調製された。-OH基を有する、対応する各薬剤のよく攪拌された溶液(無水CH2Cl2または無水THFに溶解した1当量液)に対し、6-(トリフルオロメチル)ベンゾトリアゾリル2-(2'-ピリジルジチオエチルカーボネート(1.3当量)、およびNN-ジメチルアミノピリジン(1.5当量)をアルゴン雰囲気下に加えた。この反応混合物を3時間攪拌し、ピリジルジチオ誘導化した薬剤を、シリカクロマトグラフィーによって単離した(各実施例について>65%)。本明細書に記載される手順、およびそれとは別に通例の手順、例えば、米国特許出願US-2005-0002942-A1に記載される手順によって調製された、対応するペプチジル断片(0.5当量)を、DMSOに溶解した。得られた透明な黄色の溶液に、ピリジルジチオ誘導化薬剤を加えた。30分後反応は完了し、結合体をHPLCによって精製した。実施例6eの場合、ペプチジル断片Pte-Glu-Asp-Arg-Asp-Asp-Cys-OHを先ず水に溶解し、溶液のpHを0.1N HClによって2.5に調整したところ、ペプチジル断片が沈殿した。このペプチジル断片を遠心にて収集し、乾燥し、DMSOに溶解し、次いで、前述のピリジルジチオ誘導化薬剤と反応させた。
【0060】
〔実施例6a〕

1H NMR (DMSO-d6) δ4.7(d, 1H), 4.95(t, 1H), 6.7(d, 4H), 6.9(t, 1H), 7.95(d, 2H), 8.1(d, 2H), 8.2(m, 1H), 8.3(s, 1H), 8.4(s, 1H), 8.7(s, 1H), 10.2(s, 1H), 11.8(d, 2H)。
【0061】
〔実施例6b〕

ES MS(m-H)- 1436.4, (m+H)+ 1438.3。
【0062】
〔実施例6c〕

1H NMR (DMSO-d6/D2O) δ1.0(s, 1H), 1.1(s, 1H), 1.6(s, 1H), 1.8(s, 1H), 2.1(s, 1H), 2.25(s, 3H), 2.65(dd, 2H), 3.7(d, 1H), 4.4(t, 1H), 4.55(q, 2H), 4.6(d, 2H), 4.95(d, 1H), 5.9(t, 1H), 6.15(s, 1H), 6.6(d, 2H), 7.85(d, 2H), 7.95(d, 2H), 8.6(s, 1H), 8.95(d, 1H)。
【0063】
〔実施例6d〕

1H NMR (DMSO−d6/D2O) δ1.0(s, 1H), 1.1(s, 1H), 1.65(s, 1H), 2.1(s, 1H), 2.25(s, 3H), 2.6(dd, 2H), 3.25(dd, 1H), 3.6(t, 2H), 3.7(d, 1H), 4.4(t, 1H), 4.6(d, 1H), 4.95(d, 1H), 5.9(t, 1H), 6.2(s, 1H), 6.6(d, 2H), 7.7(t, 1H), 7.9(d, 2H), 7.95(d, 2H), 8.6(s, 1H), 9.1(d, 2H)。
【0064】
〔実施例6e〕

1H NMR (DMSO-d6/D2O) δ10.85(d, 2H), 1.05(d, 2H), 1.2(d, 2H), 1.7(d, 2H), 3.95(d, 1H), 4.05(dd, 1H), 5.4(dd, 1H), 5.7(dd, 1H), 6.65(d, 2H), 7.6(d, 2H), 7.95(s, 1H), 8.65(s, 1H)。
【0065】
〔実施例6f〕

ES MS (m+H)+ 1487.23; 1H NMR (DMSO-d6/D2O) δ0.9(t, 2H), 1.3(t, 2H), 2.15(t, 2H), 3.2(dd, 1H), 4.0(t, 1H), 4.15(q, 1H), 5.3(s, 2H), 5.5(s, 2H), 6.6(d, 2H), 7.0(s, 1H), 7.4(m, 2H), 7.55(d, 2H), 8.0(d, 2H), 8.6(s, 1H)。
【0066】
〔実施例7〕

SN38(10-ヒドロキシ-7-エチルカンプトテシン)の中間体4-(2-ピリジニルジチオ)ベンジルカーボネートを、P. Senter et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 2875によって記載される手順に従って調製した。なお、上記論文の開示を引用することにより本明細書に含める。本明細書に記載されるやり方で調製されたペプチジル断片Pte-Glu-Asp-Arg-Asp-Cys-OHをDMSOに溶解し、得られた透明な黄色の溶液に、ピリジル-ジチオ誘導化薬剤を加えた。30分後反応は完了し、結合体をHPLCによって精製した。ES MS (m+H)+ 1425.38; 1H NMR (DMSO-d6/D2O) δ0.9(t), 1.15(t), 3.9(t), 4.0(t), 4.25(t), 5.1(m), 5.2(s), 5.4(s), 6.55(d), 7.25(d), 7.35(d), 7.5(d), 7.9(d), 8.55(s)。
【0067】
〔実施例8〕

実施例8の化合物は、本明細書に記載される手順、およびそれとは別に通例の手順、例えば、米国特許出願US-2005-0002942-A1に記載される手順によって調製された、ペプチジル断片Pte-Glu-Asp-Arg-Asp-Asp-Cys-OHから調製した。このペプチジル断片をさらに、チオスルフォネート、またはピリジルチオ活性化ビンブラスチンと反応させて、実施例8を形成した。ピリジルジチオ活性化ビンブラスチン中間体は、他の実施例に関して本明細書に記載される手順を用いて調製した。
【0068】
〔実施例9−13〕
実施例9−13の化合物は、本明細書に一般的に記載される手順に従って調製し、エレクトロスプレイ質量分析(ES MS)、および、その他の分光技術、例えば、1Dおよび2D NMRおよびUVを含む技術によってその特性を解明し、その例示的結果を本明細書に記載する。
【0069】
〔実施例9〕

UV(nm)233(最大), 255, 280; 1H NMR (D2O, NaOD, CD3CN) δ1.15(d, 3H), 2.3(s, 3H), 3.6(s, 1H), 3.85(s, 3H), 4.9(s, 1H), 5.3(s, 1H), 6.5(d, 2H), 7.3(m, 1H), 7.5(d, 2H), 7.65(d, 2H), 8.4(s, 1H)。
【0070】
〔実施例10〕

ES MS(m+H)+ 1382.3, (m+Na)+ 1405.4。
【0071】
〔実施例11〕

【0072】
〔実施例12〕

【0073】
〔実施例13〕

【0074】
上記例示の実施態様は、本発明を例示的に説明することを意図したものであって、いかなるやり方でも本明細書に記載される本発明を限定するものと解釈、または思量してはならない。例えば、下記の例示のビタミン-薬剤結合体によって一般的に表される化合物は、本明細書に記載される通りに本発明に含めなければならない、すなわち、

上式において、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素、またはアルキル、例えばメチルであり、かつ、lHは、ヘテロ原子、例えば、酸素、硫黄、任意に置換される窒素、または任意に保護される窒素等である。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1aは、実施例1、化合物5の質量スペクトラムを示す。図1bは、実施例1、化合物5の1H NMRスペクトラムを示す。
【図2】図2は、実施例3、化合物10の1H NMRスペクトラムを示す。
【図3】図3は、実施例4、化合物12の1H NMRスペクトラムを示す。
【図1a】

【図1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式の化合物であって、

上式において、
nは1から約4までの整数であり;
RaおよびRbは、それぞれ独立に、水素、およびアルキル、例えば、任意に分枝してもよいC1-C4アルキルのような低級アルキルを含むアルキル、から成るグループから選ばれ;あるいは、RaおよびRbは、付属の炭素原子で結び付けられて炭素環を形成し;かつ、
X1およびX2は、それぞれ独立に選ばれる脱離基であって、前記脱離基はそれぞれ、独立に選ばれる求核剤によって置換が可能である、
ことを特徴とする前記化合物。
【請求項2】
前記求核剤は、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、または別の2価リンカーのいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
下式の化合物であって、

上式において、
mは1から約4までの整数であり;かつ、
X1およびX2は、それぞれ独立に選ばれる脱離基であって、前記脱離基はそれぞれ、独立に選ばれる求核剤によって置換が可能である、
ことを特徴とする前記化合物。
【請求項4】
前記求核剤は、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、または別の2価リンカーのいずれかであることを特徴とする、請求項4に記載の化合物。
【請求項5】
下式の化合物であって、

上式において、
mは1から約4までの整数であり、かつ、
X1およびX2は、それぞれ独立に選ばれる脱離基であって、前記脱離基はそれぞれ、独立に選ばれる求核剤によって置換が可能である、
ことを特徴とする前記化合物。
【請求項6】
前記求核剤は、薬剤、ビタミン、画像剤、診断剤、または別の2価リンカーのいずれかであることを特徴とする、請求項5に記載の化合物。

【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−507560(P2008−507560A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522811(P2007−522811)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/026068
【国際公開番号】WO2006/012527
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(504389588)エンドサイト,インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】