説明

2分割グロメツトインナ

【目的】 曲げ外力が作用した場合にも変形の少ないグロメットインナを得る。
【構成】 環状体の軟質部分と硬質部分とから成るグロメットの前記硬質部分を構成し、前記環状体を2分割して端部相互を互いに突き合わせて結合し、前記環状体の状態でパネルの貫通孔内周縁に嵌合される2分割グロメットインナにおいて,前記端部の結合部を、筋向かいに配置したことを特徴とする。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、主に樹脂等の硬質材料で成形され、ゴム等の軟質弾性材料製の筒状のグロメットアウタの端部に取り付けられる2分割グロメットインナに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種のグロメットインナを用いたグロメットの例として、実開昭59−25115号公報に記載のものが知られている。このグロメットは、図5に示すように弾性材料製のグロメットアウタ(同公報では「弾性部分」と称されている)1と、その端部に嵌合された剛性材料製のグロメットインナ(同公報では「剛性部分」と称されている)3とで構成されている。グロメットインナ3は、パネル5の貫通孔5aの内周縁に嵌合される環状のもので、グロメットアウタ1の防水リップ1aをパネル5に密接させるようにしている。従って、グロメット全体としては硬質のグロメットインナ3の部分でパネル5に取り付けられるから、取り付けが確実であり、取り付け状態を長く維持することができる。
【0003】
そして、前記グロメットインナ3は電線Hを通すために図6のように中心線で2分割されている。各分割体3a、3bは同一形状のもので、分割した端部7a、7b及び端部7c、7d相互を互いに突き合わせ、凹部9と凸部11とを嵌合させることにより、環状の前記グロメットインナ3を構成する。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、従来のグロメットインナ3は、端部7a、7b、端部7c、7dの結合部分Kが対称線(中心線)上に一直線に並ぶため、曲げ外力を受けた場合、結合部分Kに応力が集中しやすく、結合部分Kのガタが拡大して大きく変形し、パネル5の貫通孔5aに対する嵌合が外れるおそれがあった。
【0005】
本考案は、曲げ外力を受けた場合にも変形しにくいグロメットインナを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本考案は、環状体の軟質部分と硬質部分とから成るグロメットの前記硬質部分を構成し、前記環状体を2分割して端部相互を互いに突き合わせて結合し、前記環状体の状態でパネルの貫通孔内周縁に嵌合される2分割グロメットインナにおいて,前記端部の結合部を、筋向かいに配置したことを特徴としている。
【0007】
【作用】
本考案のグロメットインナでは、端部相互の結合部が互いに筋向かいとなっているので、曲げ外力を受けても結合部に応力が集中しにくい。したがって、応力が分散されることにより、変形が小さく押さえられる。
【0008】
【実施例】
以下、本考案の一実施例を図面を参照しながら説明する。
【0009】
図1は実施例のグロメットインナ21を正面から見た図である。このグロメットインナ21は、硬質樹脂製の長円形状の環状体の硬質部分であり、対称形状に2分割されており、各分割体21a、21bを互いに端部23a、23b相互及び端部23c、23d相互を突き合わせて結合することにより構成されている。
各分割体21a、21bは、組み立て品である環状体(グロメットインナ21)
の径方向に沿う左右対称線(中央線)Cを基準にした場合、一端23a、23cがその中央線Cの位置より長めに形成され、他端23b、23dが中央線Cの位置より短めに形成されている。
【0010】
一方の分割体21aの各端部23a、23dには、オスメス嵌合用の凸部25aと凹部27aとがそれぞれ形成され、対称的に向かい合わせたもう一つの分割体21bの凸部25bと凹部27bとにそれぞれ嵌合するようになっている。そして、両分割体21a、21bを結合した際に、その結合部Kが、環状体(グロメットインナ1)の左右対称線(中央線)Cから外れて位置し,筋向かいの配置となっている。
【0011】
図2は、上記のグロメットインナ21を、軟質弾性材料で成形され軟質部分を構成するグロメットアウタ29の端部に嵌合し、全体としてグロメットを構成した状態を示す。グロメットインナ21は、一対の分割体21a、21aを結合した状態で、車体側パネル5の貫通孔5aの内周縁に嵌合されている。この状態でグロメットアウタ29の防水リップ29aがパネル5に密接している。
【0012】
次に作用を説明する。
【0013】
上記のグロメットインナ21は、図1に示すように、結合部Kがグロメットインナ21の左右対称線Cから外れた位置にあるので、図2に示すように曲げ外力f1 またはf2 が作用した場合にも、結合部Kに応力が集中しにくくなる。よって、応力が分散されるようになり、それによって結合部Kのガタが余り拡大しなくなり、全体の変形量が小さく押さえられる。従って、防水リップ29aのパネル5に対する密接も維持することができる。
【0014】
この点をさらに説明する。
【0015】
本考案実施例及び従来のグロメットインナの変形量を比べて見るに際し、いまグロメットインナを、図3(本考案実施例)及び図4(従来例)に示すような両端固定の長さ55mmの梁にたとえてみる。図3の梁には、右端から7mmの位置にガタ(隙間)1mmの結合部Kが存在する。図4の梁には、長さ方向の中央部に同じ大きさのガタ(1mm)を持つ結合部Kが存在する。ここで、図3(a)、図4(a)に示す無荷重の状態から、梁の中央に外力Fが作用した場合を考えて見ると、ガタ分1mmがあるため、図のエッジ部e、eが突き当たるまで梁が折れ曲がるように変形する。図3(b)、図4(b)は最終的に両エッジ部e、eが突き当たった状態を示す。この状態での変形量を比較してみると、図3の梁の場合は2.17mmであるのに対し、図4の梁の場合は4.92mmとなった。このように、同じガタが存在しても結合部Kが中央Cから外れるほど変形量が小さくなることがわかる。
【0016】
但し、両結合部Kが双方共に中央Cからずれている必要は必ずしもなく、両結合部Kが筋向かいに配置され、一方の結合部Kが中央Cからずれていれば効果はある。
【0017】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案のグロメットインナによれば、応力集中が少なくなり、変形が小さく収まる。よって、嵌合の外れが抑制され、密閉性も高くなる。
【提出日】平成4年1月22日

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 環状体の軟質部分と硬質部分とから成るグロメットの前記硬質部分を構成し、前記環状体を2分割して端部相互を互いに突き合わせて結合し、前記環状体の状態でパネルの貫通孔内周縁に嵌合される2分割グロメットインナにおいて,前記端部の結合部を、筋向かいに配置したことを特徴とする2分割グロメットインナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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