説明

2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤

【課題】刺激臭を軽減できると共に有効成分を毛髪内部へ効率よく浸透させることができ、且つ高温での長期保存安定性に優れ、しかもすすぎ時にきしみのない感触を付与することができる2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤を提供する。
【解決手段】本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤は、少なくともアルカリ剤を含み、毛髪を酸化染毛または脱色する際に用いる2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤において、(A)アルキル基の炭素数が16以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル、(B)炭素数16以上の直鎖飽和高級アルコール、(C)ステアリン酸グリセリル、および(D)炭素数16以上の直鎖アルキル基を持つアニオン性界面活性剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪を酸化染毛や脱色する際に用いる2剤式酸化染毛・脱色剤用の第1剤に関するものであり、特に刺激臭を軽減できると共に有効成分を毛髪内部へ効率よく浸透させることができ、且つ高温での長期保存安定性に優れ、しかもすすぎ時にきしみのない感触を付与することができる2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
染毛剤を使用する目的は、白髪を黒ないし茶褐色に染めることによって白髪を目立たなくする「白髪染め」、黒い髪を明るい色に染めて容貌に変化を与えてファッション性を付与する「おしゃれ染め」、或いは両者の機能を合わせ有する「おしゃれ白髪染め」などがあるが、いずれも美容を目的とするものである。
【0003】
こうした染毛剤としては、従来から酸化染毛剤が知られているが、酸化染毛剤は、酸化染料やアルカリ剤を主成分として含む第1剤と、酸化剤を主成分として含む第2剤とから構成される2剤式酸化染毛剤が汎用されている。こうした、2剤式酸化染毛剤は、使用時に第1剤と第2剤を混合して用いられるものである。
【0004】
上記2剤式酸化染毛剤は、第1剤に含まれるアルカリ剤と第2剤に含まれる酸化剤(主に過酸化水素)が反応することによって、毛髪中のメラニン色素を分解する(脱色)と共に、酸化染料が発色することで毛髪を明るくして染色を行うものである。
【0005】
近年では、いずれの目的で使用するにしても、明るい色合いに染毛する要望が強くなっており、毛髪を明るい色合いに染めるためには毛髪中のメラニン色素を分解する必要があり、そのためには第1剤中のアルカリ剤の配合量を多くする傾向がある。
【0006】
ところで、第1剤中に含有されるアルカリ剤としては、一般的にアンモニア水や炭酸水素アンモニウム等のアンモニウム塩が使用されているが、こうしたアルカリ剤の使用量増加に伴ってアンモニア刺激臭の発生や基剤の安定性の低下、毛髪の損傷が大きくなって髪のパサツキを引き起こし、すすぎ時にきしみが生じるといった問題が起こる。また、アルカリ剤の使用量増加による皮膚刺激の問題がある。こうした問題を解決するために、これまでにも様々な技術が提案されている。
【0007】
例えば特許文献1では、アンモニアの代わりに刺激臭の少ないアルカノールアミンや無機アルカリを使用する方法が提案されている。また、特許文献2では、イソパラフィンと非イオン性界面活性剤と高分子化合物を配合することにより、刺激臭を低減している。特許文献3では、トリグリセリドを構成成分とする油剤と高級アルコールとエステル型非イオン性界面活性剤を配合することにより、刺激臭を低減している。特許文献4では、炭素数20〜25の高級アルコールと炭素数10〜19の高級アルコールと界面活性剤を配合することにより、刺激臭を低減している。特許文献5では、炭素総数25以上である第4級アンモニウム塩と高級アルコールとノニオン性界面活性剤を配合することにより、刺激臭を低減している。
【0008】
しかしながら、これらの技術では、アルカリ剤や染料等を毛髪内部へ効率良く浸透させにくく、脱色や染色といった第1剤が本来目的とする効果を十分に発揮することができず、毛髪にも大きな損傷を与えるという欠点がある。また、これまで提案されている技術では、すすぎ時において毛髪に「きしみ」が生じるという問題がある。こうした状況は、2剤式酸化染毛剤において、第1剤に酸化染料を含有させずに構成される2剤式脱色剤組成物においても同様である。以下では、2剤式の酸化染毛剤と酸化脱色剤で用いる第1剤を合わせて、「2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤」(以下、単に「第1剤」と呼ぶことがある)と呼んでいる。
【0009】
また、上記のように第1剤中に一般的に含有されるアルカリ剤であるアンモニアや炭酸水素アンモニウム等のアンモニウム塩では、これらのアルカリ剤に起因した頭皮刺激や毛髪損傷も問題となっている。こうした問題に対し、例えば特許文献6には、フィチン酸またはその塩を配合することにより頭皮刺激を緩和する技術が提案されている。この技術では、2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤中にフィチン酸またはその塩を配合することによって、頭皮刺激を緩和する効果は有効に発揮されるのであるが、刺激臭の発生や有効成分の浸透に関しては、依然として不十分である。
【0010】
近年「おしゃれな白髪染め」を目的に高濃度のアルカリ剤や染料が配合される場合が多く、第1剤の安定性が低下し、特に高温安定性を十分に確保することが困難になる傾向である。また、倉庫等に長期保存された場合は、夏場の気温上昇による高温での安定性確保が必要になる。こうしたことから、2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤は、比較的高温で保存された場合であっても、長期に亘って安定であるという特性(これを「長期保存安定性」と呼ぶ)にも優れていることが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−189717号公報 特許請求の範囲等
【特許文献2】特開2003−221319号公報 特許請求の範囲等
【特許文献3】特開2003−073243号公報 特許請求の範囲等
【特許文献4】特開2004−189638号公報 特許請求の範囲等
【特許文献5】特開2008−184447号公報 特許請求の範囲等
【特許文献6】特開2007−039351号公報 特許請求の範囲等
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこうした状況の下でなされたものであり、その目的は、刺激臭を軽減できると共に有効成分を毛髪内部へ効率よく浸透させることができ、且つ高温での長期保存安定性に優れ、しかもすすぎ時にきしみのない感触を付与することができる2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成することができた本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤とは、少なくともアルカリ剤を含み、毛髪を酸化染毛または脱色する際に用いる2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤において、(A)アルキル基の炭素数が16以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル、(B)炭素数16以上の直鎖飽和高級アルコール、(C)ステアリン酸グリセリル、および(D)炭素数16以上の直鎖アルキル基を持つアニオン性界面活性剤を含有する点に要旨を有するものである。
【0014】
本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤においては、上記(A)の成分において、酸化エチレンのmol数が30〜40molのものと100〜200molのものを夫々含有し、その配合比が1:1〜20:1(質量比)であることが好ましい。
【0015】
本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤に含まれるアルカリ剤としては、アンモニアまたは炭酸水素アンモニウムのいずれかを用いたときにその効果を有効に発揮させることができる。
【0016】
本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤においては、更に、(E)ラノリンおよび(F)コレステロール誘導体や、(G)フィチン酸またはその塩、等を含有することも好ましく、含有される成分に応じた効果が発揮される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、少なくともアルカリ剤を含み、毛髪を酸化染毛または脱色する際に用いる2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤において、(A)アルキル基の炭素数が16以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル、(B)炭素数16以上の直鎖飽和高級アルコール、(C)ステアリン酸グリセリル、および(D)炭素数16以上の直鎖アルキル基を持つアニオン性界面活性剤を含有させることによって、刺激臭を軽減できると共に有効成分を毛髪内部へ効率よく浸透させることができ、且つ高温での長期保存安定性に優れ、しかもすすぎ時にきしみのない感触を付与することができる2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明者らは、上記目的に適う2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤を実現するべく、様々な角度から検討した。その結果、(A)アルキル基の炭素数が16以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル、(B)炭素数16以上の直鎖飽和高級アルコール、(C)ステアリン酸モノグリセリル、および(D)炭素数16以上の直鎖アルキル基を持つアニオン性界面活性剤を含有させたものでは、上記目的が見事に達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤は、上記の成分(A)〜(D)を含有させたものである。これらの成分は従来から化粧料において使用されてきたものであるが、各成分による作用について説明する。
【0020】
炭素数16以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル[上記成分(A)]は、アルカリ剤による刺激臭を抑えると共に、アルカリ剤や染料等を毛髪内部に効率良く浸透させる上で必要な成分である。こうした効果を発揮させるためには、0.1質量%以上(2剤式酸化染毛・脱色剤第1剤全体に占める割合)含有させることが好ましいが、10質量%(2剤式酸化染毛・脱色剤第1剤全体に占める割合)を超えると刺激臭を抑えることができなくなり、更に第2剤との混合性や毛髪への塗布性が悪くなる。
【0021】
炭素数16以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、具体的には、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等を挙げることができる。
【0022】
上記炭素数16以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルは、酸化エチレンのmol数が30〜40molのものと、100〜200molのものを夫々含有し、それらの配合比[酸化エチレンのmol数が30〜40molのもの:酸化エチレンのmol数が100〜200molのもの]が1:1〜20:1(質量比)であることが好ましい。これによって、ポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有させることによる効果が最も有効に発揮される。
【0023】
炭素数16以上の直鎖飽和高級アルコール[上記成分(B)]は、上記成分(A)と同様に、アルカリ剤による刺激臭を抑えると共に、アルカリ剤や染料等を毛髪内部に効率良く浸透させる上で必要な成分である。こうした効果を発揮させるためには、1質量%以上(2剤式酸化染毛・脱色剤第1剤全体に占める割合)含有させることが好ましいが、20質量%(2剤式酸化染毛・脱色剤第1剤全体に占める割合)を超えると第2剤との混合性が悪くなる。
【0024】
炭素数16以上の直鎖飽和高級アルコールとしては、具体的には、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等を挙げることができる。
【0025】
ステアリン酸モノグリセリル[上記成分(C)]は、上記成分(A)、(B)と同様に、アルカリ剤による刺激臭を抑えると共に、アルカリ剤や染料等を毛髪内部に効率良く浸透させる上で必要な成分である。こうした効果を発揮させるためには、0.1質量%以上(2剤式酸化染毛・脱色剤第1剤全体に占める割合)含有させることが好ましいが、10質量%(2剤式酸化染毛・脱色剤第1剤全体に占める割合)を超えると第2剤との混合性が悪くなる。
【0026】
炭素数16以上の直鎖アルキル基を持ったアニオン性界面活性剤[上記成分(D)]は、上記成分(A)、(B)、(C)と同様に、アルカリ剤による刺激臭を抑えると共に、アルカリ剤や染料等を毛髪内部に効率良く浸透させる上で必要な成分である。こうした効果を発揮させるためには、0.1質量%以上(2剤式酸化染毛・脱色剤第1剤全体に占める割合)となるように含有させることが好ましいが、10質量%(2剤式酸化染毛・脱色剤第1剤全体に占める割合)を超えると第2剤と混合し、毛髪に塗布した後、ヘアカラー施術後でのすすぎ時にきしみが生じる。
【0027】
炭素数16以上の直鎖アルキル基を持ったアニオン性界面活性剤は、具体的には、セチル硫酸ナトリウム、セトステアリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、ベヘニル硫酸ナトリウム等を挙げることができ、また脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸)等を適切なアルカリ剤(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、炭酸水素アンモニウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等)で中和して使用することも可能である。
【0028】
本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤で含有させるアルカリ剤については、代表的なものとしてアンモニアや炭酸水素アンモニウム等を挙げることができるが、これら以外にモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のアルカノールアミンや水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機アルカリやアルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸またはその塩類が併用できる。
【0029】
上記のような成分(A)〜(D)を配合することにより、アルカリ剤(特にアンモニアや炭酸水素アンモニウム)による刺激臭を低減できると共に、アルカリ剤や染料等を毛髪内部に効率良く浸透させることができるものとなる。こうした効果が発揮される理由については、その全てを明らかにした訳ではないが、おそらく次のように考えることができた。即ち、本発明のような炭素数16以上のアルキル基を含む物質で構成される組成物は、層状の構造をとり、組成物中にアルカリ剤や染料等を保持できる。そのため、空気中に刺激臭を放出せずに、毛髪へ塗布した際に染料等を効率よく毛髪中に浸透させることができるものと考えられる。特に、(A)成分の炭素数16以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルのうち、酸化エチレンのmol数が30〜40molのもの(a)と、100〜200molのもの(b)を併用したものは、刺激臭を更に低減できるものとなる。
【0030】
また、上記のような成分(A)〜(D)からなる第1剤は、早期に分離することなく、高温での長期保存安定性にも優れたものとなる。
【0031】
本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤は、上記成分(A)〜(D)を基本的に含むものであるが、必要によって、(E)ラノリンおよび(F)コレステロール誘導体や、(G)フィチン酸またはその塩、等を含有させることも好ましく、含有される成分に応じた効果が発揮される。これらの成分を含有させることによる効果は次の通りである。
【0032】
ラノリン[上記成分(E)]を配合した第1剤を用いてヘアカラー施術した毛髪は、毛髪の指通りが良好になる。こうした効果を発揮させるためには、ラノリンは0.01質量%以上(2剤式酸化染毛・脱色剤第1剤全体に占める割合)となるように含有させることが好ましい。しかしながら、その量が過剰になると毛髪上にラノリンが過剰に付着し指通りが却って悪化するため、10質量%以下(2剤式酸化染毛・脱色剤第1剤全体に占める割合)とすることが好ましい。
【0033】
ラノリンとしては、具体的には、液状ラノリン、還元ラノリン、吸着精製ラノリン等を挙げることができる。
【0034】
コレステロール誘導体[成分(F)]を配合した第1剤を用いてヘアカラー施術した毛髪は、コレステロール誘導体を配合しないものに比べて、毛髪にしっとりとした感触を付与し毛髪のコンディションを良好にする。こうした効果を発揮させるためには、コレステロール誘導体は0.05質量%以上(2剤式酸化染毛・脱色剤第1剤全体に占める割合)となるように含有させることが好ましい。しかしながら、コレステロール誘導体の含有量が過剰になると、毛髪上にコレステロール誘導体が過剰に付着し仕上がりの感触が重たくなり過ぎるので、5質量%以下(2剤式酸化染毛・脱色剤第1剤全体に占める割合)となるように含有させることが好ましい。
【0035】
コレステロール誘導体としては、具体的には、軟質ラノリン脂肪酸コレステリル、イソステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル等を挙げることができる。
【0036】
フィチン酸またはその塩[上記成分(G)]は、それを配合した第1剤を用いてヘアカラー施術したときに、皮膚刺激を緩和する上で有効な成分である。フィチン酸は、塩の形態で含有させてもその効果が発揮されるが、その効果を発揮させるためには、フィチン酸換算で0.1質量%以上(2剤式酸化染毛・脱色剤第1剤全体に占める割合)となるように含有させることが好ましい。しかしながら、フィチン酸(またはその塩)の量があまり多くなってもその効果が飽和するので、10質量%以下(2剤式酸化染毛・脱色剤第1剤全体に占める割合)とすることが好ましい。
【0037】
フィチン酸またはその塩を含有させることによって皮膚刺激の緩和効果が得られる理由については、その全てを明らかにした訳ではないが、おそらく次のように考えることができた。即ち、フィチン酸は分子量660.1と大きい物質であり、フィチン酸が刺激の原因であるアルカリ剤と塩を形成するため、頭皮への浸透性が低下し、刺激の緩和効果が得られると考えられる。
【0038】
本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤は、酸化染毛剤および脱色剤の両方を含むものであるが、酸化染毛剤として用いるときに配合される酸化染料としては、例えば、p−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、p−アミノフェノール、等を挙げることができる。
【0039】
酸化染毛剤として用いるときには、必要によって、カップラーを配合することもできる。こうしたカップラーとしては、例えば、α−ナフトール、レゾルシン、m−アミノフェノール、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、p−アミノ−o−クレゾール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、等を挙げることができる。
【0040】
また上記物質の他、「医薬部外品原料規格2006」(薬事日報社)に記載されたものを適宜用いることができる。さらに酸性染料、塩基性染料、HC染料等を配合することもできる。
【0041】
本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤は、少なくともアルカリ剤(染毛剤の場合には、更に酸化染料)を含有する酸化染毛・脱色用第1剤において、上記成分(A)〜(D)を基本的に含み、必要によって、(E)ラノリンおよび(F)コレステロール誘導体や、(G)フィチン酸またはその塩、等を含有させるものであるが、酸化染毛・脱色用第1剤に通常含まれる添加剤を含むものであっても良い。こうした添加剤としては、例えば保湿剤、油脂類、シリコーン類、カチオン化ポリマー、増粘・ゲル化剤、キレート剤、酸化防止剤、pH調整剤、溶剤、消炎剤、香料、色素等を通常程度配合することができる。
【0042】
これらの添加剤を例示すると、保湿剤としては、1,3−ブチレングリコ−ル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、ヒアルロン酸ナトリウム、クエン酸塩、コンドロイチン硫酸、乳酸ナトリウム、2−ピロリドン−5−カルボン酸ナトリウム、トリメチルグリシン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、コラーゲン分解ペプチド、エラスチン分解ペプチド、加水分解ケラチン液およびシリル化物(N−[2−ヒドロキシ−3−[3−(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解ケラチン)、大豆たん白加水分解物およびシリル化物(N−[2−ヒドロキシ−3−[3−(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解大豆たん白)、加水分解シルクおよびシリル化物(N−[2−ヒドロキシ−3−[3−(ジヒドロキシメチルシリル)プロポキシ]プロピル]加水分解シルク)、小麦蛋白分解ペプチド、カゼイン分解ペプチド等の蛋白・ペプチド類およびその誘導体、アルギニン、セリン、グリシン、グルタミン酸等のアミノ酸類、アロエ抽出物、ハマメリス水、ヘチマ水、カモミラエキス、カンゾウエキス等の動物・植物抽出成分等が挙げられる。
【0043】
油脂類としては、パラフィン、流動パラフィン、ワセリン、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、蜜ろう、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等、スクワラン、水添ポリイソブテン等の炭化水素類、ヤシ油、パーム油、パーム核油、サンフラワー油、オリーブ油、アボカド油、ゴマ油、月見草油、小麦胚芽油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ローズヒップ油、メドウフォーム油、ティーツリー油、ハッカ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、山茶花油、椿油、トウツバキ種子油、小麦胚芽油、綿実油、大豆油、落花生油、コメヌカ油、シア脂、ホホバ油等の植物油脂類、2−エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ステアリン酸イソセチル等の脂肪酸エステル類等が挙げられる。
【0044】
シリコーン類としては、低粘度ジメチルポリシロキサン、高粘度ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルシロキサン(デカメチルシクロペンタシロキサン)、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、アミノ変性ポリシロキサン、カチオン変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0045】
カチオン化ポリマー類としては、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体、カチオン化セルロース誘導体、カチオン化澱粉、カチオン化グアーガム、4級化ポリビニルピロリドン誘導体等が挙げられる。
【0046】
増粘・ゲル化剤としては、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸、トラガントガム、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタアクリル酸エステル共重合体、アクリル酸・メタアクリル酸アルキル共重合体、ポリビニルアルコール、高重合ポリエチレングリコール等を挙げることができる。
【0047】
キレート剤としては、エデト酸塩(エデト酸四ナトリウム)、ホスホン酸類、ポリアミノ酸類等を挙げることができる。
【0048】
酸化防止剤としては、アスコルビン酸およびその塩類(アスコルビン酸ナトリウム)、またはアスコルビン酸誘導体、亜硫酸ナトリウム、チオグリコール酸およびその塩類、システイン、トコフェロールおよびその誘導体、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0049】
pH調整剤としては、リン酸、リンゴ酸、酒石酸、炭酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、塩酸、硫酸、硝酸若しくはそれらの塩類、アンモニア、モノエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二ナトリウム若しくはそれらの塩類等が挙げられる。
【0050】
溶剤類としては、エタノール、2−プロパノール、ポリエチレングリコール等の低級アルコール類等を例示することができる。
【0051】
消炎剤としては、グリチルリチン酸およびその誘導体(グリチルリチン酸ジカリウム)、グアイアズレン等を例示することができる。
【0052】
本発明の2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤の剤型は、クリーム剤型やジェル状剤型が有用であるが、液状の剤型で用いることもできる。
【実施例】
【0053】
次に、実施例によって本発明をより具体的に示すが、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0054】
下記表1に示す各種配合割合で各種原料を配合して、2剤式酸化染毛剤用第2剤(以下、単に「第2剤」と呼ぶ)を調製した。下記の実施例では、全て表1に示す第2剤を使用した。
【0055】
【表1】

【0056】
(実施例1)
下記表2〜5に示す各種配合割合で各種原料を配合して、酸化染毛用第1剤を夫々調製した。ポリオキシエチレンセチルエーテルは、尚、下記表2〜5においては「POEセチルエーテル」と表記したものは、ポリオキシエチレンセチルエーテルを意味する。また、POEセチルエーテルの後ろの( )内の数字は酸化エチレンのmol数を表している(後記表6、7についても同様)。これら第1剤および第2剤を用いて、下記の方法によって各項目について評価した。その結果を、下記表2〜5に併記する。
【0057】
(刺激臭の評価方法)
下記表2〜5に成分組成を示した第1剤と、表1に示した第2剤を、1:1(質量比)となるように混合した後の混合物の臭気について、専門のパネラー(10名)が官能試験を行い、その合計値を求め下記の基準によって評価した。
【0058】
(刺激臭の評価基準)
3点:刺激臭がわずかに感じられた
2点:刺激臭が感じられた
1点:刺激臭が強く感じられた
(合計値の基準)
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0059】
(染色の評価方法I)
下記表2〜5に成分組成を示した第1剤(処方例1〜25)と、表1に示した第2剤を、1:1(質量比)となるように混合したものを、化学的処理(酸化染毛・脱色処理等)を受けていない人由来の毛髪の毛束(10cm、1.0g、100%白髪毛)に塗布し、35℃、30分間放置した。次いで、水洗、ラウリル硫酸トリエタノールアミン10%水溶液で洗浄した後風乾させた。この段階で、専門のパネラー(10名)により毛束の染色の程度を目視にて観察し、その合計値を求め下記の基準によって評価した。毛束が染まる度合いによって、うすい茶色から濃い茶色に変化する。
【0060】
(染色の評価基準I)
3点:濃く染まる
2点:若干染まりがうすい
1点:染まりがうすい
(合計値の基準)
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0061】
(染色の評価方法II)
下記表2〜5に成分組成を示した第1剤と、表1に示した第2剤を、1:1(質量比)となるように混合したものを、化学的処理(酸化染毛・脱色処理等)を受けていない人由来の毛髪の毛束(10cm、1.0g、100%白髪毛)に塗布し、35℃、30分間放置した。次いで、水洗、ラウリル硫酸トリエタノールアミン10%水溶液で洗浄した後風乾させた。
【0062】
上記処理を行った毛束のL*、a*、b*を色差計(日本電色工業株式会社製、「Spectro color Meter SE2000」)にて測定し、L*値を比較することにより酸化染毛剤(茶色)の染色の度合いを下記の基準によって評価した。L*値が小さいほど染色性が高く濃い色であることを示す。
【0063】
◎:L* 24.00未満
○:L* 24.00以上、24.50未満
△:L* 24.50以上、25.00未満
×:L* 25.00以上
【0064】
(長期保存安定性の評価方法基準)
下記表2〜5に成分組成を示した第1剤の各試料を、50℃の恒温槽に1ヶ月保存し、分離の有無を目視で確認し、下記の基準で評価した。
(長期保存安定性の評価基準)
○: 分離がみられなかった
×: 分離がみられた
【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
上記表2の結果から明らかなように、POEセチルエーテルのモル数が30〜40molのものと100〜200molのものを併用することによって(処方例4〜8)、刺激臭を抑えることができ、良好な染色性を得られることが分かる。
【0070】
また表3の結果から明らかなように、POEセチルエーテルのモル数が30〜40molのものと100〜200molのものを1:1〜20:1(質量比)の比率で配合することによって(処方例11〜14)、刺激臭を抑えることができると共に、良好な染色性を得られることが分かる。
【0071】
表4の結果から明らかなように、炭素数16以上の直鎖飽和高級アルコールを配合することによって(処方例6、17、18)、刺激臭を抑えることができると共に、良好な染色性を得られることが分かる。
【0072】
表5の結果から明らかなように、炭素数16以上の直鎖アルキル基を持ったアニオン性界面活性剤を配合することによって(処方例6、21〜23)、刺激臭を抑えることができ、良好な染色性を得られることが分かる。
【0073】
(実施例2)
(指通り・しっとり感の評価方法)
下記表6に成分組成を示した第1剤(処方例26〜31:処方例30,31は脱色剤)と、前記表1に示した第2剤を、1:1(質量比)となるように混合したものを、化学的処理(酸化染毛・脱色処理等)を受けていない人由来の毛髪の毛束(10cm、1.0g、100%白髪毛)に塗布し、35℃、30分間放置した。次いで、水洗、ラウリル硫酸トリエタノールアミン10%水溶液で洗浄した。その際の毛髪の指通りについて、専門のパネラー(10名)により評価した。また、乾燥後のしっとり感について、専門のパネラー(10名)によりその合計値を求め下記の評価基準によって判断した。その結果を、下記表6に併記する。
【0074】
(指通りの評価基準)
3点:明らかに指通りが良い
2点:指通りが若干良い
1点:指通りが悪い
(合計値の評価基準)
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0075】
(しっとり感の評価基準)
3点:非常にしっとりしている
2点:しっとりしている
1点:パサついている
(合計値の評価基準)
◎:26〜30点
○:21〜25点
△:16〜20点
×:10〜15点
【0076】
【表6】

【0077】
上記表6の結果から明らかなように、ラノリンを使用した場合は指通りが特に良好な結果となり、コレステロール誘導体を使用した場合はしっとりとした感触に優れた結果となっている。また、所定量のラノリンとコレステロール誘導体を組み合わせて配合する(処方例26〜31)ことで指通りが良好であり且つしっとりした仕上がりとなることが分かる。
【0078】
また、表2〜6の結果から、アニオン性界面活性剤の炭素数が12であるラウリル硫酸ナトリウムを用いた処方例25を除いて、長期保存安定性も良好であることが分かる。
【0079】
(実施例3)
(刺激感の評価方法)
下記表7に成分組成を示した第1剤(処方例6、32〜36:処方例35、36は脱色剤)と、表1に示した第2剤を、1:1(質量比)となるように混合したものを、パネラー28名の前腕内側部に塗布し(1平方センチメーター、約0.2g)、15分間放置し、刺激感(チクチク・ピリピリ感等)の有無、腕の左右での強弱について調査した。そして、「処方例6の方が、刺激が強い」、「同程度」および「処方例32〜34の方が、刺激が強い」の評価を行い、その評価の割合によってその刺激感を比較した。また脱色剤として「処方例35の方が刺激が強い」、「同程度」および「処方例36の方が刺激が強い」の評価を行い、その評価の割合によって刺激感を比較した。
【0080】
この方法は、「刺激が強い」と評価される割合が小さい方が低刺激性であることを示すものであり、頭皮刺激との相関関係があることが確認されている方法である。その結果を、下記表7に併記する。
【0081】
【表7】

【0082】
この結果から明らかなように、所定量のフィチン酸を含有させる(処方例32〜34、36(脱色剤))ことによって、皮膚刺激性(頭皮刺激性)が低減されることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともアルカリ剤を含み、毛髪を酸化染毛または脱色する際に用いる2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤において、(A)アルキル基の炭素数が16以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル、(B)炭素数16以上の直鎖飽和高級アルコール、(C)ステアリン酸グリセリル、および(D)炭素数16以上の直鎖アルキル基を持つアニオン性界面活性剤を含有することを特徴とする2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤。
【請求項2】
(A)の成分において、酸化エチレンのmol数が30〜40molのものと100〜200molのものをそれぞれ含有し、その配合比が1:1〜20:1(質量比)である請求項1に記載の2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤。
【請求項3】
前記アルカリ剤がアンモニアまたは炭酸水素アンモニウムの少なくともいずれかである請求項1または2に記載の2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤。
【請求項4】
更に、(E)ラノリン、(F)コレステロール誘導体をそれぞれ含有する請求項1〜3のいずれかに記載の2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤。
【請求項5】
更に、(G)フィチン酸またはその塩を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の2剤式酸化染毛・脱色剤用第1剤。

【公開番号】特開2010−254633(P2010−254633A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108066(P2009−108066)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000213482)中野製薬株式会社 (57)
【Fターム(参考)】