説明

2剤混合型毛髪洗浄剤組成物

【課題】1ステップの洗髪行動で、化学処理などによる損傷毛髪に対して、優れた洗浄効果と毛髪補修・修復効果を奏する毛髪洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)アニオン性界面活性剤を少なくとも5質量%含有する第1剤と、(b)非水溶性シリコーン化合物0.1〜20質量%を含有し、かつ(c)カチオン界面活性剤及び(d)長鎖脂肪族アルコールを含有する乳化物からなる第2剤とからなり、組成物中の(a)成分と(b),(c)及び(d)成分の合計量との割合(a)/[(b)+(c)+(d)]が質量比で0.5〜20であり、使用時に前記第1剤と第2剤とが混合されることを特徴とする2剤混合型毛髪洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学処理等で損傷した毛髪に対して、1ステップの洗髪行動で良好な洗浄効果と、優れた毛髪ダメージの補修・修復効果とを発揮する2剤混合型の毛髪洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シャンプー等の毛髪洗浄剤組成物としては、アニオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を含有したものが使用されている。しかし、このようなシャンプーだけでは、洗髪後の髪の感触が悪いことから、より良い髪の感触を求めるためにリンスやコンディショナーが使用される。このように、良好な髪の感触のためにはシャンプー後、リンス・コンディショナー処理をするという2ステップ処理が広く用いられているが、一方では、1ステップのみで洗浄効果と良好な髪の感触を得たいという要求が存在する。このような要求に対して、2in1(ツーインワン)シャンプー(リンスインシャンプー)と呼ばれる製品が市販されている。
【0003】
また、最近では、カラーリングやパーマを活かしたヘアスタイルが流行し、これら化学処理による毛髪ダメージは深刻化している。具体的には、毛髪を構成しているタンパク質が化学処理によって変性し、タンパク質間の相互作用力が低下してしまう。それにより、強度が低下し、キューティクルの剥離などが生じる。また、タンパク質が分解を受け、洗髪時などにタンパク質の溶出が起こり易くなる。
【0004】
更には、カラーリングした毛髪では、日常のヘアケア行動で起こる褪色も問題である。これは、カラーリングによって毛髪中に浸透した色素や、毛髪が本来持っていたメラニンの分解物が、洗髪時に毛髪から溶出することによって起こる。これらの毛髪ダメージは、更に毛髪強度の低下を招いたり、カラーリングのサイクルを短くするなどのダメージが深刻化したりする原因となる。そのため、毛髪ダメージの補修・修復機能のより向上が、ヘアケア製品に求められている。
【0005】
補修・修復機能を得る方法として、アミノ酸又はペプチドをキューティクル層へ浸透させて高温プレスする方法(特許文献1:国際公開第2002/041857号パンフレット)、可溶化シルクペプチドと水溶性キトサン誘導体とカチオン化蛋白誘導体を用いる方法(特許文献2:特開2000−191445号公報)、可溶化シルクペプチドと糖アルコールと中性アミノ酸を用いる方法(特許文献3:特開2000−191446号公報)、特定の加水分解タンパク及び/又はその誘導体を含有する第1剤とその変性剤を含有する第2剤とを用いる方法(特許文献4:特開2003−300836号公報)、分子内にカルボキシル基及びフェノール基を有する成分とアミノ酸、タンパク加水分解物、ケラチン加水分解物から選ばれる成分を用いる方法(特許文献5:特開2004−91455号公報)、特定構造の二塩基酸ジエステル化合物とセリシンを用いる方法(特許文献6:特開2007−15936号公報)、融点が40℃以上の水溶性シリコーンと蛋白誘導体を用いる方法(特許文献7:特開2000−191447号公報)、キトサン類とステロール類とオキシカルボン酸を用いる方法(特許文献8:特開2007−8867号公報)、親油性カチオン界面活性剤とステロール類を用いる方法(特許文献9:特開2003−176214号公報)、グアニジノ基含有シロキサンを用いる方法(特許文献10:特表2008−533218号公報)、特定構造の有機ケイ素化合物又はこの有機ケイ素化合物と高分子化合物とを用いる方法(特許文献11:特開平10−158125号公報)、両親媒性アミド脂質とカチオン界面活性剤とシリコーン類を含有し、水で20倍希釈したときにpH1〜4.5となる組成物を用いる方法(特許文献12:特開2004−203786号公報)等が提案されている。
【0006】
近年、毛髪の補修・修復機能についても、前記したような2in1シャンプーと同様に洗浄効果と同時に1ステップで得られることが要望されている。しかし、上述した従来の方法では、アミノ酸やペプチド、可溶化シルクペプチド、加水分解タンパク、セリシン、水溶性シリコーン、オキシカルボン酸などの水への溶解性の高い化合物は、洗浄剤とともにすすぎ時の水により除去され易く、2in1シャンプーなどの1ステップで洗浄効果を得る洗浄剤組成物で、十分な補修・修復効果を得ることができなかった。
また、親油性カチオン界面活性剤やグアニジノ基含有シロキサン、有機ケイ素化合物、両親媒性アミド脂質、シリコーン類などの水に溶解し難い化合物を使用する場合は、乳化剤などを使用して水中で安定な状態を維持することが製剤化等の点で求められる。しかし、水中で安定状態を維持させると、洗髪中やすすぎ時の水でも安定な状態が維持され、このため洗髪やすすぎ時にこれら有効成分の多くが洗い流されてしまい、十分な効果が得られないのが現状であった。
従って、1ステップの洗浄行動で、化学処理等によりダメージを受けた毛髪に対して毛髪損傷の補修や修復効果と洗浄効果とを有効に発現させることは難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2002/041857号パンフレット
【特許文献2】特開2000−191445号公報
【特許文献3】特開2000−191446号公報
【特許文献4】特開2003−300836号公報
【特許文献5】特開2004−91455号公報
【特許文献6】特開2007−15936号公報
【特許文献7】特開2000−191447号公報
【特許文献8】特開2007−8867号公報
【特許文献9】特開2003−176214号公報
【特許文献10】特表2008−533218号公報
【特許文献11】特開平10−158125号公報
【特許文献12】特開2004−203786号公報
【特許文献13】特開昭59−187095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、1ステップの洗髪行動で、化学処理などによる損傷毛髪に対して優れた洗浄効果と毛髪補修・修復効果を奏する毛髪洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(a)アニオン性界面活性剤を少なくとも5質量%含有する第1剤と、(b)非水溶性シリコーン化合物0.1〜20質量%を含有し、かつ(c)カチオン性界面活性剤及び(d)長鎖脂肪族アルコールを含有する乳化物からなる第2剤とからなり、第1剤と第2剤とが使用時に混合され、混合物中の(a)/[(b)+(c)+(d)]が適切な範囲であることで、1ステップの洗髪行動で、化学処理などによる損傷毛髪に対して、優れた洗浄効果と毛髪補修・修復効果とを同時に奏することを見出した。
【0010】
一般的なシャンプー等の毛髪洗浄剤組成物では、アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤とが存在すると、両成分のイオン性相互作用により複合体が形成され、期待どおりのコンディショニングや洗浄効果を得ることが難しかった。そこで出願人は、特許文献13(特開昭59−187095号公報)にアニオン性界面活性剤を含有する(A)剤とカチオン性物質を含有する(B)剤とからなる2液型とし、シャンプー時にアニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤とが存在し、かつ両界面活性剤の複合体が同時に存在することで、有効に洗浄及びコンディショニングが行われることを提案した。しかし、この技術は毛髪のコンディショニング効果が十分とは言い難く、特に化学処理などで損傷した毛髪への毛髪補修・修復効果を満足に得ることは困難であった。
【0011】
これに対して、本発明では、毛髪へ適用時、好ましくは適用直前に、カチオン性界面活性剤及び長鎖脂肪族アルコールを含有する水中油型の乳化物中に非水溶性シリコーン化合物が乳化分散されて配合された第2剤を、洗浄成分であるアニオン性界面活性剤を含む第1剤と混合し、かかる混合物中の(a)/[(b)+(c)+(d)]が適切な範囲であることで、優れた毛髪補修・修復効果及び洗浄効果を得ることができる。本発明によれば、アニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤とが同時に存在することを使用前まで避けることができ、かつ使用時に両剤が適切に混合されることで、アニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤の一部が複合体を形成し、かかる複合体が形成されるに従って第2剤の乳化状態が崩れて不安定となり、水への溶解性の低い非水溶性シリコーン化合物がこのような不安定な乳化状態で毛髪に適用されることで毛髪へ効果的に吸着し、毛髪から洗い流されることなく高いコンディショニング効果を奏すると推測される。更に、この場合、混合物中に上記複合体と共に、複合体を形成することなくアニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤の残部が存在し、このため良好に泡立ち、高い洗浄力も得られ、しかも、アニオン性界面活性剤の存在によってシリコーン化合物の毛髪内部への浸透性も高まると推測される。よって、1ステップの洗浄行動で、十分に泡立ち良好な洗浄効果を発揮する上、毛髪のキューティクル剥離やタンパク溶出の抑制効果、カラーリングの褪色防止効果に優れ、高い毛髪ダメージの補修・修復効果を発揮する、従来にない毛髪洗浄剤組成物を提供できる。
【0012】
本発明では、非水溶性シリコーン化合物として後述の一般式(1)で示されるジメチルポリシロキサンを有効に配合でき、また、高重合度のシリコーン化合物を安定配合して高いコンディショニング効果を発揮させることができる。また、アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩及びエチレンオキサイドの平均付加モル数が1〜3モルでアルキル基の炭素数が12〜14のポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる1種以上が好適である。
更に、(b)成分/(c)成分の質量比が0.6〜2.5であることが、優れた洗浄効果及び毛髪補修・修復効果を得るのにより好適である。
【0013】
従って、本発明は下記の2剤混合型毛髪洗浄剤組成物を提供する。
請求項1:
(a)アニオン性界面活性剤を少なくとも5質量%含有する第1剤と、(b)非水溶性シリコーン化合物0.1〜20質量%を含有し、かつ(c)カチオン性界面活性剤及び(d)長鎖脂肪族アルコールを含有する乳化物からなる第2剤とからなり、使用時に前記第1剤と第2剤とが混合され、混合物中の(a)成分と(b),(c)及び(d)成分の合計量との割合(a)/[(b)+(c)+(d)]が質量比で0.5〜20であることを特徴とする2剤混合型毛髪洗浄剤組成物。
請求項2:
(b)成分の非水溶性シリコーン化合物が、下記一般式(1)で示されるジメチルポリシロキサンであることを特徴とする請求項1記載の2剤混合型毛髪洗浄剤組成物。
【化1】

(式中、nは25〜500の整数である。)
請求項3:
(a)アニオン性界面活性剤が、アルキル硫酸塩及びエチレンオキサイドの平均付加モル数が1〜3モルでアルキル基の炭素数が12〜14であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩から選ばれる1種以上の硫酸エステル型アニオン性界面活性剤である請求項1又は2記載の2剤混合型毛髪洗浄剤組成物。
請求項4:
第2剤が、(c)成分を0.1〜5質量%、及び(d)成分を0.2〜10質量%含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の2剤混合型毛髪洗浄剤組成物。
請求項5:
(b)成分/(c)成分の質量比が0.6〜2.5であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の2剤混合型毛髪洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、化学処理などにより損傷した毛髪に対して、1ステップの洗髪行動で十分に泡立ち良好な洗浄効果を発揮すると共に、優れたキューティクル剥離やタンパク質溶出の抑制効果及びカラーリングの褪色防止効果を発揮し、毛髪ダメージの補修及び修復効果に優れた2剤混合型毛髪洗浄剤組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明組成物の収容に好適な2室が独立したタイプのチューブ容器の一例であり、〔1−1〕は側面図と吐出口の下面図、〔1−2〕は正面図、〔1−3〕はa−a’面での断面図である。
【図2】本発明組成物の収容に好適な2室一体化タイプのチューブ容器の一例であり、〔2−1〕は側面図、〔2−2〕は正面図及び吐出口の下面図、〔2−3〕はb−b’面での断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、(a)アニオン性界面活性剤を含有する第1剤と、(c)カチオン性界面活性剤及び(d)長鎖脂肪族アルコールを含有する乳化物中に(b)非水溶性シリコーン化合物が乳化分散され配合された第2剤とからなる2剤混合型である。
【0017】
本発明の毛髪洗浄剤組成物を構成する第1剤は、(a)アニオン性界面活性剤が必須成分として含まれる。(a)アニオン性界面活性剤は、洗浄成分として作用するほか、泡質調整剤、水に難溶性の成分の可溶化剤等としても有効である。更に、本発明では、第1剤中に含まれる(a)成分のアニオン性界面活性剤の一部が、第2剤と混合した際にカチオン性界面活性剤と複合体を形成することで、第2剤の乳化物の乳化状態を不安定化させる作用を有し、第2剤中に安定分散していたコンディショニング成分である非水溶性シリコーン化合物を水中で不安定な状態として毛髪に吸着し易い状態にするものと推測される。更には、第2剤と混合した際に一部のアニオン性界面活性剤が、複合体を形成することなくそのまま混合物中に存在し、洗浄効果を示すと共に、第2剤中のコンディショニング成分の毛髪への浸透を促進し、毛髪内部の保護・補修効果の発現にも寄与していると推測される。
【0018】
アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル型、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン塩、スルホコハク酸アルキル塩等のスルホン酸型、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩等のN−アシルアミノ酸型、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル型等が挙げられる。
また、これらの界面活性剤の塩に使用される対イオンとしては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、アミノメチルプロパノール塩等のアミン塩などが挙げられる。
【0019】
アニオン性界面活性剤としては、中でも硫酸エステル型アニオン性界面活性剤が好ましく、とりわけアルキル基の炭素数が12〜14のアルキル硫酸塩、エチレンオキサイドの平均付加モル数が1〜3モルでアルキル基の炭素数が12〜14であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が特に好ましい。
【0020】
第1剤中に含まれるアニオン性界面活性剤の配合量は、第1剤中に少なくとも5%(質量%、以下同様。)必要であり、好ましくは10〜40%、より好ましくは15〜30%である。5%より少ないと、泡立ちに劣り、また、毛髪の補修・修復効果、特にキューティクル剥離及びタンパク質溶出抑制効果が満足に発揮されず、本発明の目的を達成できない。
【0021】
本発明にかかわる第1剤には、アニオン性界面活性剤に加えて、両性界面活性剤を配合することができる。両性界面活性剤としては、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のカルボキシベタイン型両性界面活性剤、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型、ラウリルアミノプロピオン酸等のアミノカルボン酸型、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩等のイミダゾリニウムベタイン型、レシチンなどを使用できる。更に、第1剤には、上記成分のほか、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてノニオン性界面活性剤、高分子化合物、油分、pH調整剤、色素、香料、精製水等の溶剤などを配合することができる。
【0022】
次に、第2剤に含まれる(b)非水溶性シリコーン化合物はコンディショニング成分であり、例えば下記一般式(1)で示されるメチルポリシロキサン、下記一般式(2)で示されるジメチコノール、メチルフェニルポリシロキサン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カチオン変性シリコーン等を挙げることができる。なお、非水溶性シリコーン化合物とは、実質的に水に溶解しないものであり、具体的には100gの水にシリコーン類1gを加えて25℃で攪拌した際に一部又は全部が溶解しないものを示す。
【0023】
【化2】

(式中、nは10〜3,000、好ましくは25〜500の整数である。)
【0024】
【化3】

[式中、R1は同一であっても異なっていてもよく、ヒドロキシル基又は炭素数1〜28のアルキル基であり、R2は同一であっても異なっていてもよく、ヒドロキシル基、メチル基、又はR3Z(R3は炭素数3〜6の2価のアルキレン基等の炭化水素基を表し、Zは−NR4(CH2cNR52及び−NR4(CH2c+53-から選ばれる1価の基を表す。ここで、R4は水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基、R5は炭素数1〜4のアルキル基等の炭化水素基を示し、Aはハロゲン原子、又は炭素数1〜4のアルキル硫酸である。cは2〜6の整数を表す。)である。p及びqは平均重合度を表し、pは1〜2,000の整数、qは1〜1,000の整数を表す。また、R1及びR2が全てメチル基である場合を除く。]
【0025】
非水溶性シリコーン化合物としては、上記一般式(1)で表されるものが好適であり、コンディショニング効果の高い高重合度のシリコーン化合物も安定配合できその効果を有効に発揮させることができ、とりわけ一般式(1)中のnが25〜500の整数であるジメチルポリシロキサンが、損傷毛髪の補修効果の点で最も好ましく配合できる。なお、上記ジメチルポリシロキサンの粘度(25℃における医薬部外品原料規格2006一般試験法粘度測定法第1法による測定値)は20〜10,000mm2/sである。
【0026】
(b)非水溶性シリコーン化合物の配合量は、第2剤中0.1〜20%であり、特に毛髪ダメージの補修効果と泡立ち感により優れることから、0.5〜5%が好ましい。0.1%未満では十分な補修効果が得られず、毛髪のキューティクル剥離やタンパク質溶出の抑制効果、カラーリングの褪色防止効果に劣る。20%を超えると十分な泡立ち感が得られない。
【0027】
第2剤に含まれる(c)カチオン性界面活性剤は、乳化剤として配合されるもので、通常の毛髪化粧料などに用いられるものであれば特に制限されないが、例えば下記一般式(3)で示される4級アンモニウム塩などが挙げられる。
【0028】
【化4】

[式中、R11、R12、R13及びR14のうち1又は2個は、直鎖又は分岐鎖状の炭素数8〜24のアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、又はR15−CONH−R16−(但し、式中R15は直鎖又は分岐鎖状の炭素数11〜25のアルキル基、アルケニル基、又はヒドロキシアルキル基を示し、R16は炭素数1〜3のアルキレン基を示す。)で、残りはベンジル基、炭素数3以下のアルキル基、又は(R17−O)mH(但し、式中R17は炭素数2〜3のアルキレン基を示し、mは1〜10の整数である。)である。Xはハロゲン原子、又は炭素数3以下のアルキル硫酸又は炭素数3以下のジアルキル硫酸を示す。]
【0029】
具体的には、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジ(ポリオキシエチレン)オレイルメチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム、塩化ステアリン酸アミドプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘン酸アミドプロピルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミドプロピルエチルジメチルアンモニウム等が挙げられる。特に毛髪感触向上効果の点から、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムが好ましい。
【0030】
また、酸性領域においてカチオン性を示す下記一般式(4)で示されるアミン型界面活性剤も使用できる。
21−Y−R22−N(R232 (4)
(式中、R21は直鎖又は分岐鎖状の炭素数11〜25のアルキル基、アルケニル基又はヒドロキシアルキル基を示し、R22は炭素数1〜3のアルキレン基、R23は炭素数1〜3のアルキル基を示す。Yは酸素原子、又は−CO−NH−又は−CO−O−を示す。)
【0031】
具体的には、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘン酸ジメチルアミノプロピルアミド、オレイン酸ジメチルアミノプロピルアミド、イソステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ヤシ油脂肪酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノエチルアミド、オレイン酸ジエチルアミノエチルアミド、イソステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ヤシ油脂肪酸ジエチルアミノエチルアミド、パーム脂肪酸ジエチルアミノエチルアミド、牛脂脂肪酸ジエチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ベヘン酸ジエチルアミノプロピルアミド、ステアロキシプロピルジメチルアミン等が挙げられる。
【0032】
また、下記一般式(5)で示されるグアニジン型界面活性剤も使用できる。
【化5】

[式中、A1は直鎖又は分岐鎖の炭素数8〜24のアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、R24−CO−、又はR24−O−R25−(但し、R24は直鎖又は分岐鎖の炭素数8〜25のアルキル基、アルケニル基、又はヒドロキシアルキル基、R25は炭素数1〜5のアルキレン基、又はヒドロキシアルキレン基である。)である。B1は炭素数2〜5のアルキレン基、又は−CH(COOR26)−(CH2r−(但し、R26は水素原子、又は炭素数1〜3のアルキル基を示し、rは1〜4の整数である。)を示し、X1はハロゲン原子又は有機アニオンを示す。]
【0033】
具体的には、ラウリン酸ブチルグアニジン酢酸塩、N−[3−アルキルオキシ−2−ヒドロキシプロピル]−L−アルギニン塩酸塩、N−ヤシ油脂肪酸アシルL−アルギニンエチル・ピロリドンカルボン酸塩等が挙げられる。
【0034】
カチオン性界面活性剤としては、これらの中で一般式(3)で示される4級アンモニウム塩、一般式(4)で示されるアミン型界面活性剤が好適であり、特に毛髪感触向上効果の点から、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘン酸ジメチルアミノプロピルアミドから選ばれる1種又は2種以上がより好適である。
【0035】
カチオン性界面活性剤の配合量は特に制限されないが、第2剤中0.1〜5%が好ましく、特に毛髪感触向上効果の点で、0.5〜3%がより好ましい。0.1%未満では、乳化物が十分に得られず、毛髪のキューティクル剥離やタンパク質溶出の抑制効果が満足に発揮されない場合があり、5%を超えると毛髪を洗浄した後にべたつきを感じる場合がある。
【0036】
第2剤に含まれる(d)長鎖脂肪族アルコールは乳化剤として配合されるもので、下記一般式(6)で示されるものが好適に使用される。
27−OH (6)
(式中、R27は直鎖又は分岐鎖の炭素数10〜24、好ましくは16〜22のアルキル基又はアルケニル基である。)
【0037】
具体的には、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の直鎖飽和アルコール類、イソステアリルアルコール、オクチルドデシルアルコール等の分岐飽和アルコール類、オレイルアルコール等の不飽和アルコール類、また、混合物として、ラノリンアルコール、硬化ヒマシ油アルコール、牛脂アルコール等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。中でも、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが、毛髪補修効果の点で好ましく、本発明の効果発現に好適である。
【0038】
長鎖脂肪族アルコールの配合量は特に限定されないが、第2剤中0.2〜10%が好ましく、特に毛髪感触向上効果の点で1〜7%がより好ましい。0.2%未満では、安定な乳化物が十分に得られず、タンパク質溶出抑制効果や褪色防止効果に劣る場合があり、10%を超えると毛髪を洗浄した後にべたつきを感じる場合がある。
【0039】
本発明は、(c)カチオン性界面活性剤及び(d)長鎖脂肪族アルコールを含有する乳化物中に(b)非水溶性シリコーン化合物の一部又は全部が乳化分散された水中油型の乳化物である第2剤が、(a)アニオン性界面活性剤を含有する第1剤と混合されたときに、第2剤の乳化物の乳化状態が不安定化することにより、毛髪ダメージの補修及び修復効果を得ることができる。この場合、好適な乳化状態を得るための(b)非水溶性シリコーン化合物と(c)カチオン性界面活性剤の質量の比、即ち、(b)/(c)は特に限定されないが、毛髪ダメージの補修及び修復効果の点から、0.6〜2.5が好ましい。(b)及び(c)成分の配合割合が上記範囲であることが、第1剤と第2剤との混合物を毛髪に適用時に第2剤の乳化物が効果的に不安定化し、優れた毛髪ダメージの補修及び修復効果と洗浄効果を得るのにより好適である。
【0040】
第2剤には、上記成分に加えて、本発明の効果を妨げない範囲でその他の公知成分を添加してもよい。具体的には、ノニオン性界面活性剤、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコールや糖アルコール、高分子化合物、油分、pH調整剤、色素、香料、水等の溶媒等を配合することができる。
【0041】
本発明の2剤混合型毛髪洗浄剤組成物は、第1剤と第2剤とが使用時に混合されるものであるが、混合物、即ち両剤が混合された組成物中の(a)アニオン性界面活性剤の質量に対する、(b)非水溶性シリコーン化合物と(c)カチオン性界面活性剤と(d)長鎖脂肪族アルコールとの合計質量の比、即ち(a)/[(b)+(c)+(d)]は、泡立ち、毛髪補修・修復効果の点から0.5〜20であり、特に1.5〜10が好ましい。このような比率範囲で混合されることで、第1剤と第2剤との混合物を毛髪に適用時に第2剤の乳化物が効果的に不安定化し、優れた毛髪ダメージの補修及び修復効果と洗浄効果を得ることができる。上記比率が0.5未満では、十分な泡立ちが得られない上、乳化物を不安定化する作用も十分に発揮されず、毛髪補修・修復効果が満足に得られない。また、20を超えると(b)、(c)及び(d)成分を十分に毛髪上に残すことができず、毛髪補修・修復効果が満足に得られない。
【0042】
この場合、第1剤と第2剤との混合割合は、上記比率が適切な範囲であれば、特に制限されないが、第1剤と第2剤とを質量比で10:1〜1:10、特に3:1〜1:3で混合して使用することが望ましく、1:1であってもよい。
【0043】
本発明の毛髪洗浄剤組成物は、例えば下記方法で調製できる。
第1剤は、アニオン性界面活性剤、更には両性界面活性剤、その他の配合成分などを精製水等の溶剤に溶解する方法などで調製できる。なお、第1剤に油分や香料などの水難溶性成分を配合する際に、アニオン性界面活性剤や両性界面活性剤等で溶解できない場合には、アニオン性界面活性剤やノニオン性界面活性剤などを用いて乳化物の形態で配合することもできる。
【0044】
第2剤の製造方法としては、カチオン性界面活性剤と長鎖脂肪族アルコールとを含む乳化物を公知の方法を用いて製造し、非水溶性シリコーン化合物を安定に分散させることができる。具体的には、カチオン性界面活性剤と長鎖脂肪族アルコールとを含む油相を60〜90℃に加熱して融解した後、この融解温度付近で非水溶性シリコーン化合物、及び水を添加、混合し、攪拌しながら冷却を行い乳化物を得る方法を採用できる。このとき、加熱融解した油相中にグリセリンやジグリセリン、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコールを第2剤全体の1〜50%程度添加した後、非水溶性シリコーン化合物及び水の一部を添加して攪拌することにより、高粘度状態で乳化する場合もある。この場合は、乳化した後に残りの水等を添加すればよい。また、他の調製方法として、水及び水溶性成分を含んだ水相を50〜90℃に加熱した後、この水相に、カチオン性界面活性剤と長鎖脂肪族アルコールと非水溶性シリコーン化合物を含む油相を60〜90℃に加熱し融解した状態で添加し、攪拌することにより乳化粒子を形成し、冷却して乳化物を得る方法などがある。
【0045】
本発明の2剤混合型毛髪洗浄剤組成物は、使用時、特に毛髪へ適用する直前に第1剤と第2剤とを混合できれば、その剤型や収容容器に特に制限はなく、収容容器は通常の毛髪洗浄剤組成物に用いられるものを使用できる。
2剤混合型毛髪洗浄剤組成物を充填する容器形態としては、特に限定されず、スクイズ容器、ポンプ容器、チューブ容器、ジャー容器、エアゾール容器などを使用することができる。第1剤と第2剤の容器形態は同じであってもよく、異なっていてもよい。この場合、本発明にかかわる第1剤と第2剤は、それぞれを別の収容容器に収容したり別包装とし、セット製剤としてもよいが、2剤混合型の一体型容器、例えば2室タイプの一体型の収容容器に収容し、容器から排出時に両製剤が混合される形態の製剤とすることが好適である。第1剤と第2剤が収容容器から適切量排出され、両製剤を適切な割合で混合でき、混合後に速やかに毛髪に塗布されるなどして適用されることが、本発明の効果発現に有効であり、このような収容容器が好適である。
【0046】
2剤混合型毛髪洗浄剤組成物の容器形態としては、図1、2に示すような製剤収容部が2室に分かれたチューブ容器や、特開平11−100082号公報又は特開2004−161292号公報などに記載のエアゾール容器など、製剤の収容部が2室に分かれた公知の容器が、一度の吐出操作で2剤を容器から取り出せて簡便である。
なおこの場合、収容容器の排出口の断面積は第1剤と第2剤の混合割合に合わせて設定されることが好ましく、第1剤と第2剤の排出口の断面積比は10:1〜1:10、特に3:1〜1:3の範囲から設定されることが好ましい。また、一回の排出量は第1剤と第2剤の混合割合に合わせて設定されることが好ましく、第1剤と第2剤の排出口の断面積比は10:1〜1:10、特に3:1〜1:3の範囲から設定されることが好ましく、1:1でもよい。
【0047】
図1は2室が独立したタイプのチューブ容器であり、〔1−1〕は側面図と吐出部(吐出口)の下面図、〔1−2〕は正面図、〔1−3〕はa−a’面での断面図である。図1のチューブ容器は、チューブ部1,2が2つの独立した円柱形状のチューブ状の内容物収容部3,4となり、両チューブ上端部5は横方向に圧着され封止されている。内容物収容部3,4の下端排出部に1つの内容物吐出口6を有する排出具7が填め込まれることで両排出部が一体化されており、内容物収容部3,4のそれぞれに収容された内容物が押し出されて内容物吐出口6から同時に吐出することで、2剤を一度の吐出操作で容器から取り出せるものである。
図2は2室が一体化したタイプのチューブ容器であり、〔2−1〕は側面図、〔2−2〕は正面図と吐出部(吐出口)の下面図、〔2−3〕はb−b’面での断面図である。図2のチューブ容器の円柱形のチューブ部11は、内容物収容部12が内容物収容部13の周縁部に配置され両収容部が一体化して形成され、チューブ部11のチューブ上端部14は横方向に圧着され封止されている。チューブ部11の下端排出部には内容物吐出口15を有する排出具16が填め込まれ、内容物収容部12,13のそれぞれに収容された内容物が押し出されて内容物吐出口15から同時に吐出することで、2剤を一度の吐出操作で容器から取り出せるものである。
【0048】
なお、第1剤及び第2剤の粘度は特に限定されないが、収容容器からの排出性やとり易さ、用時混合のし易さの点で、それぞれの製剤粘度が25℃で10〜5,000,000mPa・sであることが好ましく、特に100〜500,000mPa・sがより好ましい。特に、図1、2に示すような2室タイプのチューブ容器を使用する場合は、両製剤の粘度がそれぞれ25℃で500〜100,000mPa・sであることが好ましい。
更には、図1、2に示すような2室に分かれたチューブ容器を使用する場合、第1剤と第2剤を一定の比率で最後まで排出するためには、第1剤及び第2剤それぞれの吐出口の大きさを上記のように適宜調節することで排出量を調節できることから、特に粘度の限定を受けないが、第1剤と第2剤の粘度の比は好ましくは1/10〜10/1である。粘度測定は、B型粘度計、例えばBL型、BM型又はBH型粘度計を用いて求めることができる。
【実施例】
【0049】
以下、調製例、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は特にことわらない限り質量%である。
【0050】
〔調製例〕
表1〜6に示す組成の製剤(第1剤、第2剤)を下記方法で調製した。
なお、各製剤の粘度(25℃における回転粘度計(B型粘度計)による測定値。)は、第1剤は10〜1,600,000mPa・s、第2剤は20〜42,000mPa・sの範囲内で、両製剤の粘度比は1/800〜200/1であった。
【0051】
第1剤(1−1〜12)の調製
精製水に(a)成分、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド(2E.O.)、クエン酸の順に攪拌しながら添加し、溶解したものを第1剤とした。
第2剤(2−1〜28)の調製
(c)成分、(d)成分、ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)を混合し、80℃で攪拌しながら加熱溶解した。80℃に維持された溶融物に、80℃に加熱したソルビトール、更に(b)成分又は(b’)成分を添加し、精製水を徐々に添加して攪拌し、十分に乳化させた後、室温まで冷却し、乳化物を得、グリコール酸を添加し、これを第2剤とした。
なお、比較調製例の製剤は上記方法に準じて調製した。
【0052】
〔実施例、比較例〕
上記調製例で得られた第1剤と第2剤を表7〜11に示すように組合せ、各比率で使用直前に混合して毛髪洗浄剤組成物(シャンプー)を調製し、下記の評価を行った。結果を表7〜11に併記する。
なお、使用原料の詳細は表12に示すとおりであるが、表中のシリコーン化合物において、nは下記一般式(1)中のnの値を示す。
【0053】
【化6】

【0054】
損傷毛束の調製:
長さ30cm、質量10gの市販アジア人毛束を10倍量(100mL)の下記組成1で示したモデルブリーチ溶液中に室温で30分間浸漬した。その後、水道水で十分に洗浄し、乾燥したものを損傷毛束とした。
(組成1)モデルブリーチ溶液
過酸化水素 6%
アンモニア 3
塩化ナトリウム 5
水酸化ナトリウム 適量(pH10.8に調整)
精製水 残部
計 100%
【0055】
(1)キューティクル剥離抑制効果
各製剤を混合して調製した毛髪洗浄剤組成物の混合液1.0gを、40℃の温水で濡らした上記損傷毛束に塗布し、くしを用いて泡立てながら毛束全体に広げた。このくし通しを2分間行った後、40℃の温水(流速5L/分)中で45秒間すすぎ、その後、乾燥した。この洗髪、乾燥操作を10回繰り返したものを試料毛束とした。
試料毛束より毛髪(長さ20mm,50mg)をサンプリングして10mLのスクリューキャップ付ガラス瓶に入れ、これに10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)10mLを加え、スクリューキャップでふたをした後、超音波洗浄器(アズワン社製、型式:US−3)で10分間超音波処理を行った。この処理液を質量既知の遠心管に移し、残った毛髪に精製水5mLを加えて洗い、この洗液を同じ遠心管に移した。この洗浄操作を3回繰り返した。この処理液と洗液を合わせたものを遠心(12,000×g,15分)し、上清を捨てた。沈殿に精製水約10mLを加え攪拌した後、再度遠心(12,000×g,15分)し、上清を捨てた。この洗浄操作を2回繰り返した後、沈殿を遠心管と一緒に乾燥し、最後に質量を測定し、初期の遠心管の質量との差より、剥離したキューティクル質量を求めた。
剥離したキューティクル量(μg/mg hair)をもとに、キューティクル剥離抑制効果を次の3段階の基準で判定した。
【0056】
判定基準
◎:キューティクル剥離量が15μg/mg hair未満
○:キューティクル剥離量が15μg/mg hair以上、30μg/mg ha
ir未満
×:キューティクル剥離量が30μg/mg hair以上
【0057】
(2)タンパク質溶出抑制効果
(1)のキューティクル剥離抑制効果を測定するために毛髪洗浄剤組成物で処理した試料毛束より、毛髪(長さ10mm,25mg)をサンプリングし、スクリューキャップ付試験管に入れた。これに1.0mLの40mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を加えて毛髪が完全に緩衝液中に浸かるようにし、スクリューキャップで密栓した状態で40℃,24時間加温した。この液を別のスクリューキャップ付試験管に移し、乾燥させた後、6mol/L塩酸1.0mLを加え、スクリューキャップで密栓し、110℃で21時間加熱した。この液を用いてTakadaらの方法(J.Oleo Sci.,52,541−548(2003))に従ってアミノ酸を定量し、タンパク質溶出量とした。
タンパク質溶出量(nmole/mg hair)をもとに、タンパク質溶出抑制効果を次の3段階の基準で判定した。
判定基準
◎:タンパク質溶出量が10nmole/mg hair未満
○:タンパク質溶出量が10nmole/mg hair以上、20nmole/
mg hair未満
×:タンパク質溶出量が20nmole/mg hair以上
【0058】
(3)褪色抑制効果
長さ10cm、質量1gの黒色毛束を上記損傷毛束の調製法と同様に10倍量の組成1で示したモデルブリーチ溶液中に室温で30分間浸漬した。その後、温水で十分に洗浄し、乾燥した。更に市販染毛剤(ビューティラボヘアカラー<ナチュラルブラウン>;ホーユー(株)製)を毛束質量と同量塗布し、ラップに包んで室温で30分間処理し、次いで毛束質量の1/10量の10%POE(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムを塗布し、1分間櫛通しした後、温水で1分間すすぎ流し、乾燥したものを褪色評価用毛束とした。この毛束の色調を日本電色工業社製の色差計 SE2000にて測定し、初期値とした。
褪色評価用毛束を40℃の温水で濡らし、これに使用直前に混合し調製した毛髪洗浄剤組成物0.1gを塗布し、1分間くし通しして毛束全体に手早くなじませた。その後、温水で1分間すすぎ流し、乾燥した。この処理を30回繰り返した後、毛束の色調を再度色差計にて測定し、初期値との色差(ΔE*)を求めた。なお、この値と目視による印象とは下記のような関係である。
評価基準
◎:ΔE*が0以上1.6未満 ・・・色の変化がほとんどない
○:ΔE*が1.6以上2.5未満・・・色の変化がわずかにあるが問題ないレベル である
×:ΔE*が2.5以上 ・・・色の変化がかなりある
【0059】
(4)泡立ち感
男女計10名のパネラーに対し、使用直前に混合し調製した毛髪洗浄剤組成物を約10g使用して洗髪を行った。そして、洗髪時の「泡立ちのよさ」について下記4段階で評価した。
評点基準
4点:非常に泡立ちが良いと感じる
3点:泡立ちが良いと感じる
2点:泡立ちが良くないと感じる
1点:泡立たない
10名の評価結果を平均し、下記判定基準に基づいて判定を行った。
評価基準
◎:平均点が3.5点以上
○:平均点が2.8点以上3.5点未満
△:平均点が1.5点以上2.8点未満
×:平均点が1.5点未満
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
【表7】

【0067】
【表8】

【0068】
【表9】

【0069】
【表10】

【0070】
【表11】

*比較例13の洗浄剤組成物は、第1剤と第2剤を十分に攪拌混合後、1日以上放置し、更に使用の直前に十分攪拌したものを試料として用いて各評価を実施した。
【0071】
表7〜11の結果より、(a)〜(d)成分のいずれかを欠く場合(比較例1〜6)、(C)成分の含有量が不適切な場合(比較例7,8)、(a)/[(b)+(c)+(d)]の質量比が不適切な場合(比較例9,11)、一剤のみの製剤である場合(比較例10、12)、更には第1,2剤を混合後に1日以上放置した場合(比較例13)は、キューティクル剥離抑制効果、タンパク質溶出抑制効果、褪色抑制効果、泡立ち感のいずれかに劣るのに対して、本発明の2剤混合型毛髪洗浄剤組成物(実施例)は、優れた毛髪ダメージの補修・修復効果及び洗浄効果を有することが確認された。
なお、褪色抑制効果は、洗浄剤組成物で繰り返し洗浄したときの毛髪の褪色の程度を測定したものであり、比較例1,2、更には後述の比較例8〜10では、泡立ち感が低く十分な洗浄効果がないので毛髪中の色素が溶出し難いため褪色は生じず、褪色抑制効果は◎、○となった。
【0072】
【表12】

【符号の説明】
【0073】
1、2、11 チューブ部
3、4、12、13 内容物収容部
5、14 チューブ上端部
6、15 内容物吐出口
7、16 排出具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アニオン性界面活性剤を少なくとも5質量%含有する第1剤と、(b)非水溶性シリコーン化合物0.1〜20質量%を含有し、かつ(c)カチオン性界面活性剤及び(d)長鎖脂肪族アルコールを含有する乳化物からなる第2剤とからなり、使用時に前記第1剤と第2剤とが混合され、混合物中の(a)成分と(b),(c)及び(d)成分の合計量との割合(a)/[(b)+(c)+(d)]が質量比で0.5〜20であることを特徴とする2剤混合型毛髪洗浄剤組成物。
【請求項2】
(b)成分の非水溶性シリコーン化合物が、下記一般式(1)で示されるジメチルポリシロキサンであることを特徴とする請求項1記載の2剤混合型毛髪洗浄剤組成物。
【化1】

(式中、nは25〜500の整数である。)
【請求項3】
(a)アニオン性界面活性剤が、アルキル硫酸塩及びエチレンオキサイドの平均付加モル数が1〜3モルでアルキル基の炭素数が12〜14であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩から選ばれる1種以上の硫酸エステル型アニオン性界面活性剤である請求項1又は2記載の2剤混合型毛髪洗浄剤組成物。
【請求項4】
第2剤が、(c)成分を0.1〜5質量%、及び(d)成分を0.2〜10質量%含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の2剤混合型毛髪洗浄剤組成物。
【請求項5】
(b)成分/(c)成分の質量比が0.6〜2.5であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の2剤混合型毛髪洗浄剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−72090(P2012−72090A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218929(P2010−218929)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】