説明

2型糖尿病の処置に有用な組成物

2型糖尿病の処置のための医薬を調製するための、スタチンと組み合わせた、L-カルニチンおよび/またはアルカノイル L-カルニチン、またはその医薬上許容される塩の使用が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、2型糖尿病およびその臨床的合併症の処置のための、スタチンと組み合わせた L-カルニチンまたはアルカノイル L-カルニチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
糖尿病は、世界中に広まった疾患であり、微小血管領域(microvascular district)、例えば糖尿病性網膜症、糖尿病性ニューロパシーおよび腎症、ならびに大血管領域(macrovascular district)、例えばアテローム性動脈硬化、末梢血管障害、心筋梗塞および卒中を含む主要な臨床的合併症と関連する。
【0003】
2型糖尿病ならびにその微小血管性および大血管性の合併症を特徴付けるインスリン抵抗性はまた、シンドローム X、多嚢胞性卵巣症候群、肥満、高血圧、高脂血症および高コレステロール血症 (J. Am. Osteopath. Assoc.、2000 Oct.; 100(10):621-34; Jama、2002 Nov.、27;288 (20):2579-88) にも関与する。
【0004】
高脂血症、高コレステロール血症および高血圧が、冠動脈心疾患(CHD)の発症において決定的な役割を果たすことが知られている。
【0005】
タンパク質のグリコシル化の増大が、上記全ての糖尿病の合併症に関与することは周知である (Diabetologia 2001 Feb; 44(2):129-46)。
【0006】
前記合併症は、個人の人生および幸福に対する深刻な脅威を構成する。
【0007】
糖尿病性疾患の様々な臨床型が知られており、最も一般的なものは 2型および 1型糖尿病である。2型糖尿病は、インスリンの作用に対する感受性の低下(インスリン抵抗性)によって特徴付けられ、この欠陥を補うために体内のインスリンレベルの増大をもたらし、結果としてグルコースレベルの増大をもたらす。
【0008】
正常よりも高いが糖尿病の範囲にはない血中グルコースレベルを有する人々は、“前糖尿病”を有する。
【0009】
インスリン抵抗性は、糖尿病を発症する機会を増大させる無症状の(silent)状態である。インスリン抵抗性の状態においては、筋肉、脂肪および肝臓の細胞は、インスリンを適切に利用しない。膵臓は、より多く生産することによってインスリンの需要に応じようとする。多すぎる脂肪はインスリンを利用する筋肉の能力を妨げるため、過剰な体重もまた、インスリン抵抗性に寄与する。運動不足は、インスリンを利用する筋肉の能力をさらに減少させる。
【0010】
インスリン抵抗性および肥満に関連する前糖尿病(obesity-linked to pre-diabetes)は、高血圧、すなわち循環器疾患の最も重要な危険因子の一つである高血圧の増大した危険因子であり得、それは心臓発作または卒中につながり得る。処置されないままである場合、高血圧は、様々な他の命を脅かす状態、例えば腎臓障害およびうっ血性心不全にもつながり得る。
【0011】
糖尿病または前糖尿病は、以下の試験の1つを用いて検出することができる:
- 一晩絶食した後に血中グルコースを測定する、空腹時グルコース試験。この試験は、午前中に行われる場合に最も信頼性がある。100 から 125 mg/dL の空腹時グルコースレベルは、正常より高いが、糖尿病と呼ばれるほど高くはない。この状態は、前糖尿病または空腹時血糖異常(IFG)と呼ばれ、患者がしばらくの間、恐らくインスリン抵抗性を有していたことを示唆する。IFG は、患者がより糖尿病を発症し易いが、未だそれにかかっていないことを意味し、前糖尿病状態と考えられる。
- 一晩の絶食後および患者が医師または研究室から提供された甘い液体を飲んだ後 2 時間で血中グルコースを測定する、グルコース耐性試験。液体を飲んだ後 2 時間で、患者の血中グルコースが 140 から 199 mg/dL の間に収まる場合、患者のグルコース耐性は正常より高いが糖尿病ほど高くはない。前糖尿病の1形態でもあるこの状態は、耐糖能障害(IGT)と呼ばれ、IFG と同様に、インスリン抵抗性の前歴および糖尿病を発症する危険を指し示す。
【0012】
インスリン抵抗性は、空腹時インスリンの測定によって評価することができる。
【0013】
多数の報告によって、2型糖尿病それ自体に加えて多くの疾患状態、例えば異脂肪血症、肥満、動脈性高血圧ならびに糖尿病性疾患自体に特徴的な特定の大血管性および微小血管性の徴候におけるインスリン抵抗性の関与が確認されてきた。インスリン抵抗性と肥満、高血圧および異脂肪血症との組み合わせは、シンドローム X として知られている。
【0014】
2型糖尿病の処置のための、長年にわたって用いられている薬剤、例えばビグアナイドおよびスルホニル尿素薬は、市場で入手可能である。これらのうちの多く、例えばメトホルミン(methformin)は、副作用として、消化管疾患、腎臓、心臓、肝臓、肺の不全症状態におけるアシドーシスの危険等を呈する。スルホニル尿素は、可能性のある副作用として、低血糖の発現を有する。最近市場に導入された薬剤はチアゾリジンジオン(thiazolidonide)であり、その副作用、例えば肝臓毒性、増大した LDL コレステロール、体重増加および浮腫は、懸念を与えている。
【0015】
高脂血症は、しばしば存在する高血圧と共に、アテローム性動脈硬化の危険因子および糖尿病における主要な死因である循環器疾患の危険因子を構成する、糖尿病性疾患の深刻な側面である。
【0016】
循環器疾患は、高い生活水準を有する工業国における主要な死因として認識されている。
【0017】
それに罹患している対象の身体障害(disability)および病弱さ(invalidity)の観点からも、保健機関(health facilities)および保険の実費の観点からも、社会的費用は膨大である。
【0018】
異脂肪血症は、結果としても、しばしば糖尿病と関連する。
【0019】
WO 99/01126 において、変化した脂質代謝に起因する疾患を処置するために有用な、スタチンとアルカノイル L-カルニチンの組み合わせが記載されている。
【0020】
WO0074675 において、スタチンの投与に起因する毒性を減少させるためのカルニチンの使用が記載されている。
【0021】
Clin Ter. 1992 Jan; 140(1 Pt 2):17-22 において、腎不全を有する患者における、シンバスタチンと組み合わせた L-カルニチンのトリグリセリド低下作用が記載されている。
【0022】
Atherosclerosis 188, 2006, 455-461 において、2型糖尿病を有する患者においてリポタンパク質(a)を低下させる際における、シンバスタチンと組み合わせた L-カルニチンの有効性が記載されている。
【0023】
Minerva Medica、Vol.80、No.3 において、2型糖尿病を有する患者における高血圧の処置のための L-カルニチンの使用が記載されている。
【0024】
Muscle & Nerves 34: August 2006、153-162 において、カルニチン異常を含む脂肪酸酸化欠損およびミトコンドリア障害を有する患者におけるスタチンの使用が、一般集団において期待されるよりも高い代謝性筋肉疾患の罹患率をもたらすことが報告されている。
【0025】
これらの文書においては、インスリン抵抗性またはタンパク質グリコシル化の減少についてのいかなる言及も存在しない。
【0026】
これらの疾患の根底にあると認められる、いわゆる危険因子に対して益々多くの注意が向けられており、この病理像(pathological picture)の様々な源に作用することができ、同時に、特定の抗糖尿病薬の場合のような、そのために治療を中断することが必要になることさえある深刻な副作用を伴わない医薬に対する認知された需要が未だ存在する。
【発明の概要】
【0027】
本発明の説明
驚くべき事に、その特定の薬理学的作用で知られる物質の特定の組み合わせが、2型糖尿病の処置、タンパク質グリコシル化の減少、およびこれらの状態に関連する病理的側面(pathological aspect)に特に適応されることがこの度見出された。
【0028】
本発明による組み合わせは、L-カルニチンおよび/または1以上のアルカノイル L-カルニチン、またはそれらの医薬上許容される塩の一つ、ならびにスタチンを包含する。
【0029】
L-カルニチンの医薬上許容される塩は、毒性または副作用を生じさせない酸と L-カルニチンのあらゆる塩を意味する。
【0030】
これらの酸は、薬理学者および薬学の専門家に周知である。かかる塩の非限定的な例は、以下である: 塩化物、臭化物、オロト酸塩、アスパラギン酸塩、酸アスパラギン酸塩、酸クエン酸塩、クエン酸マグネシウム塩、リン酸塩、酸リン酸塩、フマル酸塩および酸フマル酸塩、フマル酸マグネシウム塩、乳酸塩、マレイン酸塩および酸マレイン酸塩、シュウ酸塩、酸シュウ酸塩、パモ酸塩、酸パモ酸塩、硫酸塩、酸硫酸塩、グルコースリン酸塩、酒石酸塩および酸酒石酸塩、グリセロリン酸塩、ムケート(mucate)、酒石酸マグネシウム塩、2-アミノ-エタンスルホン酸塩、2-アミノ-エタンスルホン酸マグネシウム塩、メタンスルホン酸塩、酒石酸コリン塩、トリクロロ酢酸塩、ならびにトリフルオロ酢酸塩。
【0031】
L-カルニチンの医薬上許容される塩は、FDA によって承認され、引用により本明細書に取込まれている刊行物 Int. J. of Pharm. 33 (1986), 201-217 に記載される塩をも意味する。
【0032】
本発明による組み合わせは、その個々の構成成分についての我々の知識に基づいて予測することができない、インスリン抵抗性およびタンパク質グリコシル化の減少に対する驚くべき相乗効果を発揮する。
【0033】
したがって、かかる組み合わせを有することの利点は、当該分野の専門家にとって明白である。実際に、インスリン抵抗性を処置すること、タンパク質グリコシル化およびそれらに関連する病理的形態(pathological form)、例えば糖尿病に関連する微小血管性および大血管性の合併症を低減することが可能である。
【0034】
したがって、本発明の一つの目的は、2型糖尿病の処置のためならびにタンパク質グリコシル化およびそれらに関連する病理的形態を低減するための医薬を調製するための、好ましいものはシンバスタチンであるが、シンバスタチン、ロバスタチン(lovastatin)、フルバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、ロバスタチン(rovastatin)およびロスバスタチンからなる群から選択されるスタチンと組み合わせた、L-カルニチン、および/またはアセチル、プロピオニル、バレリル、イソバレリル、ブチリルおよびイソブチリル L-カルニチンからなる群から選択される1以上のアルカノイル L-カルニチン、またはそれらの医薬上許容される塩の一つの使用である。
【0035】
本発明による組み合わせは、その不存在下では実質的に活性が損なわれるような他の有用な要素も包含し得る。
【0036】
本発明による組み合わせは、本発明のさらなる目的を構成する栄養補助食品として製剤することもできる。
【0037】
本発明の他の目的は、医薬としての、特に、インスリン抵抗性ならびに 2型糖尿病およびタンパク質グリコシル化に起因するその合併症の処置のための医薬を調製するための、上記の組み合わせの様々な使用である。
【0038】
特に、本発明は、インスリン抵抗性、例えば 2型糖尿病、シンドローム X、多嚢胞性卵巣症候群、肥満、高血圧、高脂血症(hperlipidaemia)および高コレステロール血症を含む疾患の処置に有用な医薬の調製のための、上記の組み合わせの使用を提供する。
【0039】
本発明による医薬は、個々の疾患状態を処置するために、またはそれらに対して予防的もしくは保護的な作用を及ぼすために、または上で見られる1以上の治療的側面を包含する複雑な病理像(pathological picture)を処置するために用いることができる。例えば、特に肥満に関連する 2型糖尿病の特定の重症の型における、タンパク質グリコシル化の低減、2型糖尿病およびインスリン抵抗性の処置ならびに心血管系に対する抗脂血的および保護的作用のための複合的作用(combined action)を有する医薬である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の詳細な説明
本発明による組み合わせは、医学分野において公知であり、臨床業務において既に用いられている活性成分を含む。したがって、それらはここしばらくの間ずっと市場に存在している製品であり、ヒトまたは動物への投与に適したグレードのものであるため、とても容易に入手することができる。
【0041】
スタチンは、コレステロール レベルを下げるために用いられる既知のクラスの薬剤である。スタチンは、市場で入手可能であるか、または文献に記載されている既知の方法によって調製することができる。
【0042】
L-カルニチンおよびそのアルカノイル誘導体は既知の化合物であり、その調製方法は US 4,254,053 に記載されている。
【0043】
糖尿病の処置における、これまでのカルニチンの治療上の使用は、既にいくつか知られている。
【0044】
例えば、WO 98/01128 は、IGF-1 のレベルを増大させるための、アセチル(acetil) L-カルニチン、イソバレリル(isovaleril) L-カルニチン、プロピオニル(propionil) L-カルニチンの使用を開示する。糖尿病は、WO 98/01128 に記載される治療可能な病態の長いリストの中にも含まれている。
【0045】
WO 98/41113 は、真性糖尿病を有する患者のための、ガンマ リノール酸、アセチル(acetil) L-カルニチン、無機塩およびビタミンからなる治療的栄養組成物を記載している。
【0046】
US 4,362,719 は、若年発症真性糖尿病の処置における L-カルニチンおよびアシル(acil) L-カルニチンの使用を記載している。
【0047】
US 5,430,065 は、非インスリン依存性の糖尿病を有する患者の長期処置における L-カルニチンおよびアシル(acil) L-カルニチンの使用を記載している。
【0048】
Journal of Cellular Physiology 203; 2005; 439-446 において、培地へのアセチル L-カルニチンの添加が、筋細胞(myocite)のインスリン処理に応答する能力に劇的に影響したことが報告されている。
【0049】
上記刊行物のいずれも、スタチンと組み合わせた L-カルニチンおよび/または1以上のアルカノイル L-カルニチンが、2型糖尿病および 2型糖尿病に起因するタンパク質グリコシル化に関連する疾患の処置のための医薬を調製するために有用である可能性を記載してはいない。
【0050】
本発明によれば、多くのスタチンを、それらの薬理学的特徴によっておよび当該分野における専門家の通常の知識に基づいて、1以上のカルニチンと組み合わせることも可能である。
【0051】
この事は、本明細書において実証される相乗効果の考慮は別にして、個々の構成成分の用量および割合が、当該分野の専門家により、通常の前臨床試験および臨床試験によって、または栄養製品(dietetic product)の製剤に関する通常の考察によって決定され得ることを示す。
【0052】
ヒトに使用するための医薬組成物の調製のために推奨される個々の化合物の量は、以下である。
シンバスタチン: 5 mg から 80 mg/日、好ましくは 15 から 40 mg/日; 最も好ましくは 20 mg/日。
L-カルニチンおよび/またはアルカノイル L-カルニチン: 0.5 から 5 g/日、好ましくは 1.5 から 3 g/日; 最も好ましくは 2 g/日。
【0053】
医薬組成物は、活性成分が単一の医薬形態(錠剤、小袋(sachet)、カプセル、バイアル)で存在するかまたは活性成分が協調して逐次的方法で投与され得る単位形態(unitary form)を有し得る。後者の場合において、医薬組成物は、構成成分を別々の容器内に供給し、その連続投与のための説明書を添付して、処方することができる。
【0054】
本発明に包含される組成物は、完全に慣行的なものであり、医薬産業における慣習である方法を用いて得られる。選択される投与経路にしたがって、組成物は経口、非経口または静脈内の投与に適した固体または液体の形態である。本発明による組成物は、活性成分と共に、少なくとも1の医薬上許容される媒体または賦形剤を含有する。特に有用なものは、製剤補助剤(formulation adjuvant)、例えば可溶化剤、分散剤、懸濁剤および乳化剤であり得る。一般的な参考文献は、最新版の Remington's Pharmaceutical Sciences Handbook である。
【0055】
上記の通り、インスリン抵抗性および糖尿病は、高血圧、すなわち心臓発作または卒中につながり得る循環器疾患の最も重要な危険因子の一つである高血圧の、増大した危険因子であり得る。処置されないままである場合、高血圧は、広範な他の命を脅かす状態、例えば腎臓障害およびうっ血性心不全にもつながり得る。本発明の組成物は、高血圧を処置するために有用な既知の薬剤と共に、またはさらなる抗糖尿病薬と共に、医師の処方および経験にしたがって投与され得る。
【0056】
以下の実施例は、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0057】
実施例 1
db/db マウスにおける抗糖尿病および血清脂質低下活性
実験動物における突然変異により、肥満、高脂血症およびインスリン抵抗性と関連する非インスリン依存性糖尿病を発現し、新しい抗糖尿病化合物の有効性を試験することを可能にするモデルを開発することが可能になった (Reed and Scribner, Diabetes, obesity and metabolism 1: 75-86, 1999)。
【0058】
多く用いられる遺伝的糖尿病マウスモデルは、C57BL/KsJ db/db マウスである。
【0059】
このモデルの遺伝学的基礎は、レプチン抵抗性を生じさせ、不十分なインスリン分泌および高血糖の結果生じる症候と共に過食、肥満、高インスリン血症およびインスリン抵抗性をもたらす、レプチン受容体遺伝子の欠損である (Kodama et al., Diabetologia 37: 739 - 744, 1994; Chen et al, Cell 84: 491 - 495, 1996)。高血糖が肥満およびインスリン抵抗性を伴うため、db/db マウスはヒトにおける 2型糖尿病に近い特徴を有し、インスリン感作性の化合物をアッセイするために有用である。
【0060】
実験に用いる C57BL/KsJ db/db マウスは、(Ch. River を介して) Jackson Lab によって供給された。標準的な条件 (22±2℃; 湿度 55±15%; 15-20 換気/時間; 午前 7 時から午後 7 時までが明期である 12 時間の明暗周期) において、標準的な 4 RF21 食餌(Mucedola)で 10 日間順化した後、吸収後の状態で(午前8時30分から午後4時30分まで絶食)、Jelco 22G カテーテル(Johnson and Johnson)を用いて尾静脈から血液サンプルを回収した。処理群におけるマウスのよく一致した分布を保証するため、血漿中のグルコース、インスリン、トリグリセリド、コレステロール、遊離脂肪酸および尿素のレベルをチェックした。
【0061】
処理の開始時において、動物の体重をチェックし、動物の水および餌の消費の監視スケジュールを決めた。
【0062】
マウスを群に分け、日に2回、以下で経口的に処理した:
シンバスタチン 100 mg/kg;
L-カルニチン内塩 400 mg/kg;
アセチル L-カルニチン HCl 592 mg/kg (L-カルニチンに対して等モル量);
プロピオニル L-カルニチン HCl 627 mg/kg (L-カルニチンに対して等モル量);
L-カルニチン内塩 400 mg/kg + シンバスタチン 100 mg/kg;
アセチル L-カルニチン HCl 592 mg/kg + シンバスタチン 100 mg/kg;
プロピオニル L-カルニチン HCl 627 mg/kg + シンバスタチン 100 mg/kg。
【0063】
実験の間に、血清グルコースレベル、グルコース耐性(OGTT)、多くの脂質状態変数(lipid status variable)および体重増加をモニターした。
【0064】
本発明による組み合わせは、摂食中の状態(表 1); 吸収後の状態(表 2); および絶食状態(表 3)における血清グルコースレベルを低下させることができ、グルコース耐性を改善することができ(表 4)、上記の通り糖尿病の微小血管性および大血管性の合併症の発生において重要な役割を果たすタンパク質グリコシル化の指標であるフルクトサミンのレベルを減少させることができた(表 5)。
【0065】
本発明による組み合わせはまた、血清トリグリセリドレベルを減少させ(表 6)、HDL-コレステロール レベルを増大させる(表 7)、優れた能力を示す。
【0066】
HDL-コレステロール値の増大は、アテローム性動脈硬化ならびに心血管性の合併症、例えばアテローム性動脈硬化および梗塞の危険の減少の指標を構成する。
【0067】
表 1
日に2回、12 日間、表に示される化合物および用量で経口的に処理された db/db マウスの血中グルコースレベル。
最後の処理後およそ 15 時間での、摂食中の状態におけるサンプル。

【表1】

【0068】
表 2
日に2回、12 日間、表に示される化合物および用量で経口的に処理された db/db マウスの血中グルコースレベル。
最後の処理後 8 時間での、吸収後の状態(午前 9 時から午後 5 時まで絶食)におけるサンプル。

【表2】

【0069】
表 3
日に2回、18 日間、表に示される化合物および用量で経口的に処理された db/db マウスの血中グルコースレベル。
最後の処理後 5 時間での、18 時間絶食させたマウスにおけるサンプル。

【表3】

【0070】
表 4
日に2回、18 日間、表に示される化合物および用量で経口的に処理された db/db マウスの血液における OGTT の曲線下面積(AUC)。
最後の処理後 5 時間での、18 時間絶食させたマウスにおける OGTT 試験 (グルコース 3 g/kg)。

【表4】

【0071】
表 5
日に2回、25 日間、表に示される化合物および用量で経口的に処理された db/db マウスの血漿フルクトサミンレベル。
最後の処理後 7.5 時間での、吸収後の状態(午前 9 時から午後 4時30分まで絶食)におけるサンプル。

【表5】

【0072】
表 6
日に2回、25 日間、表に示される化合物および用量で経口的に処理された db/db マウスの血漿トリグリセリドレベル。
最後の処理後 7.5 時間での、吸収後の状態(午前 9 時から午後 4時30分まで絶食)におけるサンプル。

【表6】

【0073】
表 7
日に2回、25 日間、表に示される化合物および用量で経口的に処理された db/db マウスの血漿 HDL-コレステロールレベル。
最後の処理後 7.5 時間での、吸収後の状態(午前 9 時から午後 4時30分まで絶食)におけるサンプル。

【表7】

【0074】
上で報告される結果は、単一の構成成分に対する、本発明による組み合わせの予想外の相乗作用をはっきりと実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2型糖尿病およびその合併症の処置のための医薬を調製するための、スタチンと組み合わせた、L-カルニチンおよび/またはアルカノイル L-カルニチン、またはその医薬上許容される塩の使用。
【請求項2】
アルカノイル L-カルニチンが、アセチル、プロピオニル、バレリル、イソバレリル、ブチリルおよびイソブチリル L-カルニチンからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
L-カルニチンまたはアルカノイル L-カルニチンの医薬上許容される塩が、塩化物、臭化物、オロト酸塩、アスパラギン酸塩、酸アスパラギン酸塩、酸クエン酸塩、クエン酸マグネシウム塩、リン酸塩、酸リン酸塩、フマル酸塩および酸フマル酸塩、フマル酸マグネシウム塩、乳酸塩、マレイン酸塩および酸マレイン酸塩、シュウ酸塩、酸シュウ酸塩、パモ酸塩、酸パモ酸塩、硫酸塩、酸硫酸塩、グルコースリン酸塩、酒石酸塩および酸酒石酸塩、グリセロリン酸塩、ムケート、酒石酸マグネシウム塩、2-アミノ-エタンスルホン酸塩、2-アミノ-エタンスルホン酸マグネシウム塩、メタンスルホン酸塩、酒石酸コリン塩、トリクロロ酢酸塩ならびにトリフルオロ酢酸塩からなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
スタチンが、シンバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、ロバスタチンおよびロスバスタチンからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
スタチンが、シンバスタチンである、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
2型糖尿病の合併症が、インスリン抵抗性およびタンパク質グリコシル化に起因する、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記合併症が、微小血管性の疾患、例えば糖尿病性網膜症、糖尿病性ニューロパシーおよび腎症; 微小血管性の疾患、例えばアテローム性動脈硬化、末梢血管障害、心筋梗塞および卒中; 多嚢胞性卵巣症候群; シンドローム X; 肥満、高血圧および異脂肪血症を含む群から選択される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
投与される医薬が、5 mg から 80 mg/日、好ましくは 15 から 40 mg/日; 最も好ましくは 20 mg/日の量のスタチンならびに 0.5 から 5 g/日、好ましくは 1.5 から 3 g/日; 最も好ましくは 2 g/日の量のカルニチンおよび/またはその誘導体を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
医薬が、錠剤、小袋、カプセルまたはバイアルの形態における経口または非経口の投与に適した固体または液体の形態である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
医薬が、単一の医薬形態であるかまたは連続投与のための別々の容器中に存在する、請求項8に記載の使用。

【公表番号】特表2010−519333(P2010−519333A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551926(P2009−551926)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062545
【国際公開番号】WO2008/104239
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(591043248)シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ (92)
【氏名又は名称原語表記】SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】