説明

2型糖尿病治療用の医薬組成物

本発明は、2型糖尿病治療用の医薬組成物であって、(R)−7−[3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブチリル]−3−トリフルオロメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−α]ピラジン−1−カルボン酸メチルエステル又はその製薬学的に許容される塩及びメトホルミン又はその製薬学的に許容される塩(塩酸塩など)を含む医薬組成物、その製造方法並びに当該医薬組成物を使用する2型糖尿病の治療方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2型糖尿病治療用の医薬組成物に関し、特に、(R)−7−[3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブチリル]−3−トリフルオロメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−α]ピラジン−1−カルボン酸メチルエステル又はその塩とメトホルミン又はその塩(塩酸塩など)との固定用量配合剤を含んでなる医薬組成物に関する。また本発明は、2型糖尿病治療用の当該組成物の製造方法及び当該組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
2型糖尿病は、インスリン抵抗性とインスリン分泌の減少という二重の内分泌障害を伴う複雑な病態生理から生じる慢性進行性疾患である。2型糖尿病の治療は一般的に食事療法と運動から始め、その後に経口の抗糖尿病単剤治療が続く。多数の患者にとってこれらの療法は 長期にわたる治療期間中、糖血症を十分に調節することができず、診断後数年以内に併用療法の必要性が生じる。しかしながら二種類以上の経口抗糖尿病薬の同時処方は、複雑で、多数の患者にとっては従うことが難しい治療計画になる可能性がある。二種類以上の抗糖尿病薬をひとつの錠剤に配合することは、患者の日常の投与計画に複雑さをもたらすことなく併用療法を実現する可能性のある手段を提供する。そのような製剤は他の疾患適応症において広く受け入れられている。例えば、高血圧症薬(ロサルタンカリウムとヒドロクロロチアジドとの配合剤であるハイザール(HYZAAR、登録商標))やコレステロール降下薬(シンバスタチンとエゼチミブとの配合剤であるバイトリン(VYTORIN、登録商標))がある。効果的で忍容性に優れた治療法の選択は、配合剤の設計において重要なステップである。さらに配合剤の成分は、補完的メカニズムと、相性のよい薬物動態特性を有することが必須である。二種類の経口抗糖尿病薬を含む市販配合剤の例として、グルコバンス(登録商標、メトホルミンとグリブリド)、アバンダメット(登録商標、メトホルミンとロシグリタゾン)及びメタグリップ(登録商標、メトホルミンとグリピジド)がある。
【0003】
メトホルミンは、糖尿病性の細小血管合併症及び大血管性合併症の全負荷を減少させ、また2型糖尿病患者の生命を延長することが証明された唯一の経口抗糖尿病薬である。さらにメトホルミン治療は、通常、体重過多患者の体重減少や脂質異常症患者の脂質プロファイルの改善と関連付けられる。
【0004】
ジペプチジルぺプチダーゼ−4(DPP-4)阻害剤は、2型糖尿病患者の治療と血糖コントロールの改善を目的として開発されている新しい種類の薬剤である。2型糖尿病の治療に対して現在臨床試験にある特定の薬剤として、MK-0431、ビルダグリプチン(LAF-237)、サクサグリプチン(BMS-47718)、P93/01(プロシディオン)、SYR322(武田薬品)、GSK823093、ロシュ0730699、TS021(大正製薬)、E3024(エーザイ)及びPHX-1149(フェニックス)がある。例えば、2型糖尿病患者へのビルダグリプチンを経口投与すると、HbA1cの顕著な減少と関連して、空腹時グルコース及び食後グルコース可動域が減少することが見出された。2型糖尿病の治療に対するDPP-4阻害剤の適用に関する報告として、下記の公表文献を参照することができる:(1)H. -U. Demuth他、「2型糖尿病−ジペプチジルぺプチダーゼ−IV阻害剤による治療」、Biochim. Biophys.
Acta. 1751:33-44(2005)(非特許文献1)、及び(2)K. Augustyns他、「プロリン特異的ジペプチジルぺプチダーゼ阻害剤:2型糖尿病の治療への新たなアプローチとしてのDPP-4阻害剤」、Expert Opin.
Ther. Patants, 15:1387-1407(2005)(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】H. -U. Demuth他、「2型糖尿病−ジペプチジルぺプチダーゼ−IV阻害剤による治療」、Biochim. Biophys.Acta. 1751:33-44(2005)
【非特許文献2】K. Augustyns他、「プロリン特異的ジペプチジルぺプチダーゼ阻害剤:2型糖尿病の治療への新たなアプローチとしてのDPP-4阻害剤」、Expert Opin.Ther. Patants, 15:1387-1407(2005)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(R)−7−[3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブチリル]−3−トリフルオロメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−α]ピラジン−1−カルボン酸メチルエステルは化合物Aであり、下記構造式を有する。
【化1】

化合物A
【0007】
本発明は、乾式又は湿式処理法により製造される、化合物A又はその塩とメトホルミンとの固定用量配合剤を含んでなる医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、化合物A又はその塩とメトホルミンのふたつの有効成分を即時放出し、また、メトホルミンを持続放出しながら化合物A又はその塩を即時放出する。1つの実施態様において、本発明の医薬組成物は、錠剤の形態、特にフィルムコーティング錠の形態にある。本発明の医薬組成物は、カプセル剤などの他の経口投与の剤形であってもよい。
【0008】
また本発明は、乾式又は湿式処理法による、化合物A又はその塩とメトホルミンとの固定用量配合剤を含んでなる医薬組成物の製造方法を提供する。乾式処理法は乾燥圧縮と乾式造粒とを含み、湿式処理法は湿式造粒を含む。
【0009】
本発明の他の態様は、2型糖尿病の治療を必要とする患者に、本発明の医薬組成物の治療的有効量を投与することによる2型糖尿病の治療方法を提供することである。
【0010】
上記及び他の態様は、下記の詳細な説明から容易に明らかとなる。
【0011】
本発明は、化合物A又はその製薬学的に許容される塩とメトホルミン又はその製薬学的に許容される塩との固定用量配合剤を含んでなる新規医薬組成物、当該医薬組成物の製造方法、及び当該医薬組成物を使用する2型糖尿病の治療方法に関する。具体的には、本発明は、化合物A又はその製薬学的に許容される塩とメトホルミン塩酸塩との固定用量配合剤を含んでなる医薬組成物に関する。
【発明の効果】
【0012】
化合物A又はその塩のDPP-4活性に対する阻害時間はMK-0431の阻害時間より長く、その阻害力はMK-0431の阻害力より強力である。したがって、化合物A又はその塩とメトホルミン又はその塩とを含んでなる組成物は、臨床診療において重要な意義を持つ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一態様において、本発明は、化合物A又はその製薬学的に許容される塩とメトホルミン又はその製薬学的に許容される塩との固定用量配合剤を含んでなる医薬組成物の薬用投与剤形に関する。そのような剤形は、粉末又は固形であってもよく、錠剤、カプセル、薬包などが挙げられる。具体的な固形剤形は、化合物A又はその製薬学的に許容される塩とメトホルミン塩酸塩(1,1−ジメチルビグアナイド塩酸塩)の固定用量配合剤を含んでなる錠剤に関連する。
【0014】
化合物A又はその塩のDPP-4活性に対する阻害時間はMK-0431の阻害時間より長く、その阻害力はMK-0431の阻害力より強い。したがって、化合物A又はその塩とメトホルミン又はその塩(例えば塩酸塩など)とを含んでなる組成物は、臨床診療において重要な意義を持つ。
【0015】
本発明の具体的な態様において、組成物は、(1)2種の医薬原体のひとつとして、化合物A又はその製薬学的に許容される塩;(2)第2の医薬原体として、メトホルミン又は塩酸塩などのその塩;及び(3)潤滑剤又は流動促進剤を含む。本発明の態様の一実施態様において、医薬組成物は、1種以上の結合剤(バインダー);1種以上の希釈剤;1種以上の界面活性剤又は湿潤剤;1種以上の崩壊剤;及び1種以上の抗酸化剤からなる群より選ばれる1種以上の賦形剤を含んでもよい。
【0016】
化合物Aの製薬学的に許容される塩として、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、メシル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、乳酸塩及びリンゴ酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の医薬組成物に組み入れられる化合物A又はその塩の用量は、活性部分として約1 mgから約500 mgの含量である。化合物A又はその塩の好ましい用量は、活性部分として約25 mgから250 mgの含量である。個々の用量は、化合物A又はその塩の活性部分の25、50、75、100、150、200、300、400及び500 mgである。
【0018】
本発明の固定用量配合剤医薬組成物に組み入れられる化合物A又はその塩の活性部分の単位用量は、25、50、75、100、150、200、300、400及び500 mgである。化合物A又はその塩の好ましい用量は、50又は100 mgである。
【0019】
本発明の固定用量配合剤に組み入れられるメトホルミン塩酸塩の単位用量は、250、500、625、750、850、1000、1250及び1500 mgである。メトホルミン塩酸塩のこれらの単位用量は、中国及び/又は米国において、2型糖尿病治療のための販売に対する承認用量である。
【0020】
本発明の固定用量配合剤における化合物A又はその塩及びメトホルミン又は塩酸塩などのその塩の用量の具体的な実施態様は、下記のとおりである:
(1)25 mgの化合物A又はその塩(例えば30.25 mgのリン酸塩)及び250 mgのメトホルミン塩酸塩;
(2)25 mgの化合物A又はその塩(例えば30.25 mgのリン酸塩)及び500 mgのメトホルミン塩酸塩;
(3)50 mgの化合物A又はその塩(例えば60.5 mgのリン酸塩)及び250 mgのメトホルミン塩酸塩;
(4)50 mgの化合物A又はその塩(例えば60.5 mgのリン酸塩)及び500 mgのメトホルミン塩酸塩;
(5)50 mgの化合物A又はその塩(例えば60.5 mgのリン酸塩)及び850 mgのメトホルミン塩酸塩;
(6)50 mgの化合物A又はその塩(例えば60.5 mgのリン酸塩)及び1000 mgのメトホルミン塩酸塩;
(7)100 mgの化合物A又はその塩(例えば121.0 mgのリン酸塩)及び250 mgのメトホルミン塩酸塩;
(8)100 mgの化合物A又はその塩(例えば121.0 mgのリン酸塩)及び500 mgのメトホルミン塩酸塩;
(9)100 mgの化合物A又はその塩(例えば121.0 mgのリン酸塩)及び850 mgのメトホルミン塩酸塩;
(10)100 mgの化合物A又はその塩(例えば121.0 mgのリン酸塩)及び1000 mgのメトホルミン塩酸塩;
(11)100 mgの化合物A又はその塩(例えば121.0 mgのリン酸塩)及び1500 mgのメトホルミン塩酸塩;
【0021】
本発明の医薬組成物は、湿式又は乾式処理法により製造される。一実施態様において、医薬組成物は湿式処理法により製造される。この実施態様の一分野において、医薬組成物は湿式造粒法により製造される。湿式造粒において、高せん断造粒又は流動層造粒を使用することができる。一実施態様において、流動層造粒を使用することは、高い径方向強度を有する錠剤を提供する上で有利である。
【0022】
第二の実施態様において、医薬組成物は乾式処理法により製造される。この実施態様の一分野において、医薬組成物は直接圧縮法又は乾式造粒法により製造される。乾式造粒法の実施態様は、ローラー圧縮である。
【0023】
乾式又は湿式処理法により得られた医薬組成物は、錠剤に圧縮したり、カプセル化したり、又は計量して薬包に入れてもよい。
【0024】
医薬組成物は1種以上の潤滑剤又は流動促進剤を含む。潤滑剤の実例として、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、水素化ヒマシ油及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい潤滑剤はステアリン酸マグネシウム若しくはステアリルフマル酸ナトリウム又はこれらの混合物である。流動促進剤の実例として、コロイド性二酸化ケイ素、リン酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム及びタルクが挙げられる。
【0025】
本発明の医薬組成物は、任意に1種以上の結合剤を含む。結合剤の実例として、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)、ヒドロキシエチルセルロース、スターチ1500、ポリビニルピロリドン(ポビドン)及びコポビドンが挙げられる。好ましい結合剤はポリビニルピロリドンである。
【0026】
本発明の医薬組成物は、任意に1種以上の希釈剤を含む。希釈剤の実例として、マンニトール、ソルビトール、ジヒドロリン酸カルシウム二水和物、微結晶性セルロース及び粉末セルロースが挙げられる。好ましい希釈剤は微結晶性セルロースである。微結晶性セルロースはいくつかの供給業者から入手可能であり、FMCコーポレーションで製造されるアビセルPH-101、アビセルPH-102、アビセルPH-103、アビセルPH-105及びアビセルPH-200が挙げられる。
【0027】
本発明の医薬組成物は、任意に崩壊剤を含む。崩壊剤は、いくつかの修飾スターチのひとつ、修飾セルロースポリマー又はポリカルボン酸でよく、例えば架橋ヒドロキシメチルセルロースナトリウム、スターチグリコール酸ナトリウム、ポラクリリンカリウム及びヒドロキシメチルセルロースカルシウム(CMCカルシウム)などが挙げられる。一実施態様において、崩壊剤は架橋ヒドロキシメチルセルロースナトリウムである。架橋ヒドロキシメチルセルロースナトリウムNFタイプAは、アクジゾル(Ac-di-sol、商標)として市販されている。
【0028】
本発明の医薬組成物は、任意に1種以上の界面活性剤又は湿潤剤を含む。界面活性剤はアニオン性、カチオン性又は中性でよい。アニオン性界面活性剤として、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデカン硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、及びステアリン酸塩及びタルクと混合したラウリン酸ナトリウムが挙げられる。カチオン性界面活性剤として、塩化ベンザルコニウム及び臭化アルキルトリメチルアンモニウムが挙げられる。中性界面活性剤として、オレイン酸モノグリセリル、ポリオキシエチレン無水ソルビタン脂肪酸エステル、ポリビニルアルコール及び無水ソルビタンエステルが挙げられる。湿潤剤の実例として、ポロキサマ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンひまし油誘導体及びポリオキシエチレンステアリン酸塩が挙げられる。
【0029】
抗酸化剤は、化学安定性に影響を与えるため、製剤に任意に添加することができる。抗酸化剤は、α−トコフェロール、γ−トコフェロール、δ−トコフェロール、トコフェロールが豊富な天然物の抽出物、L−アスコルビン酸及びそのナトリウム塩又はカルシウム塩、パルミチン酸アスコルビル、没食子酸プロピル、没食子酸オクチル、没食子酸ドデシル、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)及びブチルヒドロキシアニソール(BHA)からなる群より選ばれる。一実施態様において、抗酸化剤はBHT又はBHAである。
【0030】
本発明の医薬組成物の好ましい剤形は、圧縮法により製造される錠剤である。そのような錠剤は、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースの混合物でフィルムコーティングされていてもよい。この混合物は、二酸化チタン及び/又は、酸化鉄、染料、レーキなどの他の着色剤;二酸化チタン及び/又は、酸化鉄、染料、レーキなどの他の着色剤を含むポリビニルアルコール(PVA)及びポリエチレングリコール(PEG)の混合物;又はその他の適切な短時間遊離型フィルムコーティング剤を含む。コーティングは、最終錠剤に対して味覚マスキング及びさらなる安定性を与える。市販フィルムコーティング剤は、調合された粉体混合物であるオパドライ(Opadry、登録商標)であり、カラーコン(Colorcon)により提供される。
【0031】
最終的に、必要に応じて甘味剤及び/又は香味剤を添加してもよい。
【0032】
本発明の一実施態様において、医薬組成物は、2種の医薬原体のひとつとして約3〜20重量%の化合物A又はその塩;第2の医薬原体として約25〜94重量%のメトホルミン又はその塩(例えば塩酸塩など);約0〜35重量%の結合剤;及び約0.1〜10重量%の潤滑剤を含む。この実施態様の一分野において、結合剤はポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルセルロースであり、潤滑剤はステアリン酸マグネシウム又はステアリルフマル酸ナトリウムである。この分野の下位分野において、結合剤はポリビニルピロリドンであり、潤滑剤はステアリルフマル酸ナトリウムである。他の分野において、医薬組成物は、任意に約0〜3重量%の界面活性剤及び/又は0〜70重量%の希釈剤を含む。この分野の下位分野において、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムであり、希釈剤は微結晶性セルロースである。
【0033】
第2の実施態様において、本発明の医薬組成物は湿式造粒法により製造され、2種の医薬原体のひとつとして約5〜18重量%の化合物A又はその塩;第2の医薬原体として約65〜77重量%のメトホルミン又はその塩(例えば塩酸塩など);約4〜9重量%の結合剤;及び約1〜2重量%の潤滑剤を含む。この実施態様の一分野において、結合剤はポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルセルロースであり、潤滑剤はステアリン酸マグネシウム又はステアリルフマル酸ナトリウムである。この分野の下位分野において、結合剤はポリビニルピロリドンである。他の分野において、医薬組成物は、任意に約0.5〜1重量%の界面活性剤及び/又は5〜15重量%の希釈剤を含む。この分野の下位分野において、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムであり、希釈剤は微結晶性セルロースである。
【0034】
本発明の他の実施態様において、商業的開発に対して想定される医薬組成物は以下のとおりである:
【0035】
力価として、50 mgの化合物A又はその塩/500 mgのメトホルミン又は塩酸塩などのその塩を含む錠剤:
約9重量%の化合物A又はその塩;約73重量%のメトホルミン又は塩酸塩などのその塩;約7重量%の結合剤;約1〜2重量%の潤滑剤;及び任意に約10重量%の希釈剤及び/又は約0.5重量%の界面活性剤を含んでなる錠剤。この実施態様の一分野において、有効成分は化合物A又はその塩であり、結合剤はポリビニルピロリドンであり、潤滑剤はステアリン酸マグネシウム又はステアリルフマル酸ナトリウムであり、希釈剤は微結晶性セルロースであり、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0036】
力価として、50 mgの化合物A又はその塩/850 mgのメトホルミン又は塩酸塩などのその塩を含む錠剤:
約6重量%の化合物A又はその塩;約76重量%のメトホルミン又は塩酸塩などのその塩;約7重量%の結合剤;約1〜2重量%の潤滑剤;及び任意に約10重量%の希釈剤及び/又は約0.5重量%の界面活性剤を含んでなる錠剤。この実施態様の一分野において、潤滑剤はステアリン酸マグネシウム又はステアリルフマル酸ナトリウムであり、希釈剤は微結晶性セルロースであり、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0037】
力価として、50 mgの化合物A又はその塩/1000 mgのメトホルミン又は塩酸塩などのその塩を含む錠剤:
約5重量%の化合物A又はその塩;約77重量%のメトホルミン塩酸塩;約7重量%の結合剤;約1〜2重量%の潤滑剤;及び任意に約10重量%の希釈剤及び/又は約0.5重量%の界面活性剤を含んでなる錠剤。この実施態様の一分野において、有効成分は化合物A又はその塩であり、結合剤はポリビニルピロリドンであり、潤滑剤はステアリン酸マグネシウム又はステアリルフマル酸ナトリウムであり、希釈剤は微結晶性セルロースであり、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0038】
力価として、100 mgの化合物A又はその塩/500 mgのメトホルミン又は塩酸塩などのその塩を含む錠剤:
約17重量%の化合物A又はその塩;約65重量%のメトホルミン塩酸塩;約7重量%の結合剤;約1〜2重量%の潤滑剤;及び任意に約9重量%の希釈剤及び/又は約0.5重量%の界面活性剤を含んでなる錠剤。この実施態様の一分野において、有効成分は化合物A又はその塩であり、結合剤はポリビニルピロリドンであり、潤滑剤はステアリン酸マグネシウム又はステアリルフマル酸ナトリウムであり、希釈剤は微結晶性セルロースであり、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0039】
力価として、100 mgの化合物A又はその塩/850 mgのメトホルミン又は塩酸塩などのその塩を含む錠剤:
約11重量%の化合物A又はその塩;約75重量%のメトホルミン塩酸塩;約7重量%の結合剤;約1〜2重量%の潤滑剤;及び任意に約4重量%の希釈剤及び/又は約0.5重量%の界面活性剤を含んでなる錠剤。この実施態様の一分野において、有効成分は化合物A又はその塩であり、結合剤はポリビニルピロリドンであり、潤滑剤はステアリン酸マグネシウム又はステアリルフマル酸ナトリウムであり、希釈剤は微結晶性セルロースであり、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0040】
力価として、100 mgの化合物A又はその塩/1000 mgのメトホルミン又は塩酸塩などのその塩を含む錠剤:
約10重量%の化合物A又はその塩;約77重量%のメトホルミン塩酸塩;約7重量%の結合剤;約1〜2重量%の潤滑剤;及び任意に約4重量%の希釈剤及び/又は約0.5重量%の界面活性剤を含んでなる錠剤。この実施態様の一分野において、有効成分は化合物A又はその塩であり、結合剤はポリビニルピロリドンであり、潤滑剤はステアリン酸マグネシウム又はステアリルフマル酸ナトリウムであり、希釈剤は微結晶性セルロースであり、界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0041】
本発明のメトホルミン又は塩酸塩などのその塩は、即時放出型又は持続放出型である。
【0042】
また本発明の医薬錠剤組成物は、医薬製剤技術において既知の多種の賦形剤から選ばれる1種以上の付加的な製剤処方成分を含有してもよい。医薬組成物に求められる特性に従って、いかなる種類の成分も、錠剤組成物の製造における既知の用途に基づいて単独で又は組み合わせて選ぶことができる。係る成分には、希釈剤、圧縮補助剤、流動促進剤、崩壊剤、潤滑剤、香味剤、調味剤、甘味剤及び保存剤が含まれるが、これらに限定ざれない。
【0043】
本願明細書において使用される「錠剤」の用語は、コーティングされているか否かを問わず、すべての形状及びサイズの圧縮された医薬製剤を意味する。コーティングに使用することができる物質には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、二酸化チタン、タルク、甘味剤、着色剤及び調味剤が含まれる。
【0044】
一実施態様において、本発明の医薬組成物は湿式造粒(高せん断造粒及び/又は流動層造粒)により製造される。造粒は、顆粒を形成するため、結合剤を造粒溶液又は造粒ボウルに添加するプロセスである。湿式造粒法に含まれるステップには以下のステップが含まれる:
(1)医薬原体であるメトホルミン又は塩酸塩などのその塩及び化合物A又はその塩を造粒ボウルに加える;
(2)任意の崩壊剤をステップ1に加える;
(3)高せん断造粒に関しては、結合剤(例えばポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルセルロースなど)を乾燥させ、造粒ボウルに加えてから短時間乾燥混合させた後、界面活性剤(例えばラウリル硫酸ナトリウムなど)添加又は無添加の水を加える。流動層造粒に関しては、両方の医薬原体とも造粒ボウルに加えてから、結合剤水溶液から成る造粒溶液を、流動化時に、界面活性剤添加又は無添加で加える;
(4)高せん断造粒により製造した顆粒を、オーブンでトレイ乾燥させるか又は流動層乾燥機で乾燥させる。流動層造粒により製造した顆粒については、顆粒は流動層乾燥機で乾燥させる;
(5)乾燥させた顆粒を適当な粉砕機でサイズ変更する;
(6)任意の希釈剤(例えば微結晶性セルロース及びジヒドロリン酸カルシウム二水和物)を、適当な混合機中で、乾燥させた顆粒と混合する;
(7)潤滑剤又は流動促進剤(例えばステアリン酸マグネシウム及びステアリルフマル酸ナトリウムなど)を、適当な混合機中で、ステップ6で得られた混合物に加える;
(8)ステップ7で得られた潤滑化した顆粒混合物は、瓶、薬包若しくはカプセルに詰めてもよく、又は所望の錠剤形に圧縮してもよい;及び、
(9)得られた錠剤は、必要に応じてフィルムコーティングしてもよい。
【0045】
乾燥処理(直接圧縮又は乾燥造粒)法に含まれるステップには以下のステップが含まれる:
(1)医薬原体であるメトホルミン塩酸塩及び化合物A又はその塩を適当な混合機に加える;
(2)任意の崩壊剤をステップ1に加える;
(3)任意のバインダー及び/又は希釈剤をステップ2に加える;
(4)潤滑剤又は流動促進剤をステップ3に加える;
(5)ステップ4で得られた混合物は、瓶、薬包若しくはカプセルに詰めてもよく、若しくは所望の錠剤形に圧縮してもよく、又はローラー圧縮機を通して処理してもよい;
(6)ローラー圧縮機を通して処理する場合、必要であれば顆粒を適当な粉砕機でサイズ変更する;
(7)圧縮特性を改善するため、適当な混合機中で、得られた顆粒に任意の希釈剤を添加してもよい;
(8)任意の潤滑剤又は流動促進剤を、ステップ7で得られた混合物に加える;
(9)ステップ8で得られた潤滑化した顆粒混合物は、瓶、薬包若しくはカプセルに詰めてもよく、又は所望の錠剤形に圧縮してもよい;及び、
(10)ステップ5又はステップ9で得られた錠剤は、必要に応じてフィルムコーティングしてもよい。
【0046】
また本発明は、本発明の固定用量配合剤医薬組成物のひとつの治療的有効量を、2型糖尿病の治療を必要とする患者に経口投与することによる2型糖尿病の治療方法を提供する。一実施態様において、係る治療を必要とする患者はヒトである。他の実施態様において、医薬組成物は錠剤型である。固定用量配合剤を含んでなる医薬組成物は、1日1回(QD)、1日2回(BID)又は1日3回(TID)投与することができる。
【0047】
以下の実施例により、本発明の範囲にある実施態様がさらに説明され明示される。実施例は本発明を説明する目的にのみ与えられるのであって、本発明を限定するものとして考慮することを意図するものではなく、本発明の精神と範囲から逸脱することなく本発明には多くのバリエーションが考えられる
【実施例1】
【0048】
湿式造粒錠剤当たり50 mgの化合物A及び500 mgのメトホルミン塩酸塩を含んでなる固定用量配合剤

処理中に除去される。
【0049】
製造法:
化合物A及びメトホルミン塩酸塩を、高せん断造粒機又は流動層造粒機に投入した。高せん断造粒の場合、ポリビニルピロリドン結合剤に加えて、ラウリル硫酸ナトリウムを含む精製水を、3〜5分間かけてAPI(医薬原体)に添加した。湿った材料は、40℃でトレイ乾燥させるか又は45〜60℃の入口温度で流動層乾燥機により3〜6分間乾燥させた。流動層造粒の場合、ポリビニルピロリドン及びラウリル硫酸ナトリウムを含む精製水を、30〜60分間かけてAPIに添加した。湿った材料は、45〜60℃の入口温度で流動層乾燥機により乾燥させた。次に、乾燥させた材料は、細粒を得るため微粉砕機を用いて粉砕した。粉砕後、微結晶性セルロースを顆粒に添加し、双殻混合機中で200回転させて混合した後、潤滑剤(ステアリルフマル酸ナトリウム)を添加し、さらに100回転させて混合した。潤滑された混合物は回転錠剤プレス機を用いて圧縮し、675 mgの非コーティング錠剤を得た。この錠剤は、オパドライ(登録商標)II懸濁液(ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、二酸化チタン及びタルクを含む。着色剤は添加又は無添加である。)により任意にコーティングし、およそ2.5%増量して、692 mgのコーティング錠剤を得た。
【0050】
具体的説明:製剤中の50 mgの化合物Aは、化合物Aのリン酸塩60.5 mgなど化合物Aの製薬学的に許容される塩でよいが、推論の結果として、以下に示す実施例2〜7は同様であるが、繰り返しではない。メトホルミン塩酸塩は、メトホルミン又は他の製薬学的に許容されるその塩でよい。以下に示す実施例2〜7は同様であるが、繰り返しではない。
【実施例2】
【0051】
湿式造粒錠剤当たり50 mgの化合物A及び850 mgのメトホルミン塩酸塩を含んでなる固定用量配合剤

処理中に除去される。
【0052】
製造法:錠剤は、基本的に実施例1の手順を用いて湿式造粒により製造し、1103 mgの非コーティング錠剤を得た。この錠剤は、27.9 mgのオパドライ(登録商標)IIフィルムコーティング調製液により任意にコーティングし、1131 mgのコーティング錠剤を得た。
【実施例3】
【0053】
湿式造粒錠剤当たり50 mgの化合物A及び1000 mgのメトホルミン塩酸塩を含んでなる固定用量配合剤

処理中に除去される。
【0054】
製造法:錠剤は、基本的に実施例1の手順を用いて湿式造粒により製造し、1286 mgの非コーティング錠剤を得た。得られた錠剤は、オパドライ(登録商標)II懸濁液(ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、二酸化チタン及びタルクを含む。着色剤は添加又は無添加である。)により任意にコーティングし、およそ2.5%増量して、1319 mgのコーティング錠剤を得た。
【実施例4】
【0055】
湿式造粒錠剤当たり50 mgの化合物A及び500 mgのメトホルミン塩酸塩を含んでなる固定用量配合剤

処理中に除去される。
【0056】
製造法:
化合物A及びメトホルミン塩酸塩を、高せん断造粒機又は流動層造粒機に投入した。高せん断造粒の場合、ポリビニルピロリドン結合剤に加えて、精製水を3〜5分間かけてAPIに添加した。湿った材料は、40℃でトレイ乾燥させるか又は45〜60℃の入口温度で流動層乾燥機により3〜6分間乾燥させた。流動層造粒の場合、ポリビニルピロリドン及びラウリル硫酸ナトリウムを含む精製水を、30〜60分間かけてAPIに添加した。湿った材料は、45〜60℃の入口温度で流動層乾燥機により乾燥させた。次に、乾燥させた材料は、細粒を得るため微粉砕機を用いて粉砕した。粉砕後、微結晶性セルロースを顆粒に添加し、双殻混合機中で200回転させて混合した後、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム)を添加し、さらに100回転させて混合した。潤滑された混合物は回転錠剤プレス機を用いて圧縮し、675 mgの非コーティング錠剤を得た。次に、この錠剤は、オパドライ(登録商標)II懸濁液(ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、二酸化チタン及びタルクを含む。着色剤は添加又は無添加である。)により任意にフィルムコーティングし、およそ2.5%増量して、692 mgのコーティング錠剤を得た。
【実施例5】
【0057】
湿式造粒錠剤当たり50 mgの化合物A及び1000 mgのメトホルミン塩酸塩を含んでなる固定用量配合剤

処理中に除去される。
【0058】
製造法:
化合物A及びメトホルミン塩酸塩を、高せん断造粒機又は流動層造粒機に投入した。高せん断造粒の場合、ポリビニルピロリドン結合剤に加えて、ラウリル硫酸ナトリウムを含む精製水を3〜5分間かけてAPIに添加した。湿った材料は、40℃でトレイ乾燥させるか又は45〜60℃の入口温度で流動層乾燥機により3〜6分間乾燥させた。流動層造粒の場合、ポリビニルピロリドンを含む精製水を30〜60分間かけてAPIに添加した。湿った材料は、45〜60℃の入口温度で流動層乾燥機により乾燥させた。次に、乾燥させた材料は、細粒を得るため微粉砕機を用いて粉砕した。粉砕後、微結晶性セルロースを顆粒に添加し、双殻混合機中で200回転させて混合した後、潤滑剤(ステアリン酸マグネシウム)を添加し、さらに100回転させて混合した。潤滑された混合物は回転錠剤プレス機を用いて圧縮し、1286 mgの非コーティング錠剤を得た。次に、この錠剤は、オパドライ(登録商標)II懸濁液(ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、二酸化チタン及びタルクを含む。着色剤は添加又は無添加である。)により任意にフィルムコーティングし、およそ2.5%増量して、1319 mgのコーティング錠剤を得た。
【実施例6】
【0059】
湿式造粒錠剤当たり100 mgの化合物A及び1000 mgのメトホルミン塩酸塩を含んでなる固定用量配合剤

処理中に除去される。
【0060】
製造法:錠剤は、基本的に実施例1の手順を用いて流動層造粒により製造し、1271.50 mgの非コーティング錠剤を得た。
【実施例7】
【0061】
湿式造粒錠剤当たり100 mgの化合物A及び500 mgのメトホルミン塩酸塩を含んでなる固定用量配合剤

処理中に除去される。
【0062】
製造法:錠剤は、基本的に実施例1の手順を用いて流動層造粒により製造し、739.50 mgの非コーティング錠剤を得た。
【試験例1】
【0063】
化合物A及びMK-0431のインビトロ活性及び選択性の研究
方法:
融解させたDPP4-Glo.を緩衝させ、室温まで平衡化させた。また、凍結保存させたフルオレセイン検査薬を使用前に緩衝させた。DPP4-Glo.を基質に懸濁し、超純水を加え、この混合物を均一となるよう少し混合し、1 mMの基質を得た。フルオレセイン検査薬を黄色瓶に入れ、DPP4-Glo.を加えた。フルオレセイン検査薬は1分間で溶解する必要があった。試験化合物はDMSOで溶解し、最終処理濃度の50倍とした。50倍濃度の試験化合物2 μLを各試験管に添加し、2 μLのDMSOを陰性対照群とブランク対照群に添加した。46 μLのトリス緩衝溶液を各試験管に添加し、ブランク対照群には48 μLのトリス緩衝溶液を添加した。2 μLのDPP4酵素を陰性対照群と試験サンプル群の各試験管に添加し、この試験管を振盪し混合させた後、遠心分離した。試験管の物質をすべて96ウェルプレートに移し、基質とDPP4-Glo.を1:49の割合で混合した。この混合物を振盪し、十分に混合した。50 μLのDDP4-Glo.と基質との混合物を室温で30〜60分間静置した後、各96ウェルプレートに添加し、プレートをフィルムで密封した。96ウェル中の物質は、プレート振動器により300〜500 rpmで30秒間、ゆっくりと混合した。室温で30分間〜3時間放置した後、化学発光値をノボスター(NOVOstar)多機能マイクロプレートリーダーにより測定した。
【0064】

【0065】
結果:DPP4に対する化合物Aの阻害活性は、対照薬であるMK-0431より優れており、阻害選択性についても同様である。
【試験例2】
【0066】
それぞれの単回投与によるカニクイザル血清のDPP4活性に対する化合物A及びMK-0431の阻害作用
実験動物は8匹の健常成体カニクイザルであり、雌雄は半数ずつであった。カニクイザルには、自由な水分摂取で8時間以上の絶食後、試験化合物を経口投与した。静脈血を、投与前、投与後1、3、9、12及び24時間にそれぞれ採取した。血清は、3000 rpmで10分間の遠心分離後に分別した。カニクイザルに対して化合物A又はMK-0431を10 mg/kgで単回投与した後、DPP4活性を測定し、血清DPP4活性の阻害と持続時間を観察した。血清中の化合物A又はMK-0431の濃度は、液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析により測定した。実験においては交差投与を適用し、動物には、直前の投与から少なくとも7〜10日の休養後にもう一度投与した。
【0067】

【0068】
表9より、化合物Aが、カニクイザルの血清DPP4活性を単回経口投与後顕著に阻害することが示される。化合物Aの阻害強度と持続時間は、その両方とも同一用量でMK-0431の阻害強度と持続時間より優れている。10 mg/kgの化合物Aは、12時間においても75%を超える血清DPP4活性阻害作用を維持することができる。
【試験例3】
【0069】
それぞれメトホルミンと併用した化合物A及びMK-0431の遺伝性肥満糖尿病ウィスター(Wistar)ラットに対する効果
14〜19週齢の雄性ウィスターラットを各群5〜6匹の5群に分割した。化合物A(10 mg/kg体重/日、経口)、MK-0431(10 mg/kg体重/日、経口)及びメトホルミン(100 mg/kg体重/日;市販飼料中に5 ppmの割合で混合)を、ウィスターラットに14日間投与した。血液は尾静脈より採取した。血漿グルコース及びヘモグロビンA1は、それぞれ酵素法による市販のキット(NC-ROPET、日本ケミファ社)で測定した。結果は、各群(n =5〜6)の平均値±標準偏差で表わし、ダネット検定(Dunnett’s test)で分析して表10に示した。危険率1%未満を有意とした。
【0070】

:P<0.01 対照群との比較
【0071】
表10から明らかなように、化合物Aとメトホルミンの併用投与は、血漿グルコース及びヘモグロビン濃度を著しく低下させ、その強度は、MK-0431とメトホルミンの併用投与の場合より大きい。
【試験例4】
【0072】
それぞれメトホルミンと併用した化合物Aリン酸塩及びMK-0431リン酸塩の遺伝性肥満糖尿病ウィスター(Wistar)ラットにおけるグルコース負荷試験
13〜14週齢の雄性ウィスターラットを各群5匹の5群に分割した。化合物Aリン酸塩(30 mg/kg体重/日、経口)、MK-0431リン酸塩(30 mg/kg体重/日、経口)及びメトホルミン(100 mg/kg体重/日)を、ウィスターラットに7日間投与した。経口グルコース負荷試験(2 gグルコース/kg/5 mL、経口)は、一晩絶食後直ちに行った。グルコース負荷前並びに120分及び240分後に尾静脈より血液を採取し、血漿グルコースを酵素法(アンコールケミカルシステム;ベーカー社)により測定した。結果は、各群(n = 5)の平均値±標準偏差で表わし、ダネット検定(Dunnett’s test)で分析して表11に示した。
【0073】

:P<0.01 対照群との比較
【0074】
表11から明らかなように、化合物Aリン酸塩とメトホルミンの併用投与は、グルコース負荷試験後の血漿グルコースの増加を著しく低下させ、その強度は、MK-0431リン酸塩とメトホルミンの併用投与の場合より大きい。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)約3〜20重量%の(R)−7−[3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブチリル]−3−トリフルオロメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−α]ピラジン−1−カルボン酸メチルエステル又はその製薬学的に許容される塩;
(b)約25〜94重量%のメトホルミン又はその塩(塩酸塩など);
(c)約0.1〜10重量%の潤滑剤;及び、
(d)約0〜35重量%の結合剤;
を含んでなる医薬組成物。
【請求項2】
さらに(a)希釈剤、(b)崩壊剤、(c)界面活性剤、(d)湿潤剤、及び(e)抗酸化剤からなる群より選ばれる1種以上の賦形剤を含んでなる請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の医薬組成物であって、
(a)約5〜18重量%の(R)−7−[3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブチリル]−3−トリフルオロメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−α]ピラジン−1−カルボン酸メチルエステル又はその製薬学的に許容される塩;
(b)約65〜77重量%のメトホルミン又はその塩(塩酸塩など);
(c)約1〜2重量%の潤滑剤;及び、
(d)約4〜9重量%の結合剤;
を含んでなる医薬組成物。
【請求項4】
さらに約0.5〜1重量%の界面活性剤及び/又は5〜15重量%の希釈剤を含んでなる請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
潤滑剤がステアリン酸マグネシウム又はステアリルフマル酸ナトリウムであり、結合剤がポリビニルピロリドンである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項6】
請求項3に記載の医薬組成物であって、
(a)約9重量%の(R)−7−[3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブチリル]−3−トリフルオロメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−α]ピラジン−1−カルボン酸メチルエステル又はその製薬学的に許容される塩;
(b)約73重量%のメトホルミン又はその塩(塩酸塩など);
(c)約1〜2重量%の潤滑剤;及び、
(d)約7重量%の結合剤;
を含んでなる医薬組成物。
【請求項7】
さらに約0.5重量%の界面活性剤及び/又は約10重量%の希釈剤を含んでなる請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項3に記載の医薬組成物であって、
(a)約5重量%の(R)−7−[3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブチリル]−3−トリフルオロメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−α]ピラジン−1−カルボン酸メチルエステル又はその製薬学的に許容される塩;
(b)約77重量%のメトホルミン又はその塩(塩酸塩など);
(c)約1〜2重量%の潤滑剤;及び、
(d)約7重量%の結合剤;
を含んでなる医薬組成物。
【請求項9】
さらに約0.5重量%の界面活性剤及び/又は約10重量%の希釈剤を含んでなる請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
(a)(R)−7−[3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブチリル]−3−トリフルオロメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−α]ピラジン−1−カルボン酸メチルエステル又はその製薬学的に許容される塩が、25〜500 mgの単位用量で存在し;
(b)メトホルミン又はその塩(塩酸塩など)が、250、500、625、750、850、1000、1250及び1500 mgの単位用量で存在し;
(c)約1〜2重量%の潤滑剤;
(d)約7重量%の結合剤;任意に、
(e)約10重量%の希釈剤;及び任意に、
(f)約0.5重量%の界面活性剤
を含んでなる医薬組成物。
【請求項11】
潤滑剤がステアリルフマル酸ナトリウムであり、結合剤がポリビニルピロリドンであり、任意の希釈剤が微結晶性セルロースであり、任意の界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウムである請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の医薬組成物であって、(R)−7−[3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブチリル]−3−トリフルオロメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−α]ピラジン−1−カルボン酸メチルエステル又はその製薬学的に許容される塩が25、50、75、100、150、200、300、400及び500 mgの単位用量で存在し、メトホルミン又はその塩(塩酸塩など)が250、500、850、1000、1250及び1500 mgの単位用量で存在する医薬組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の医薬組成物であって、(R)−7−[3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブチリル]−3−トリフルオロメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−α]ピラジン−1−カルボン酸メチルエステル又はその製薬学的に許容される塩が50及び100 mgの単位用量で存在し、メトホルミン又はその塩(塩酸塩など)が500、850及び1000 mgの単位用量で存在する医薬組成物。
【請求項14】
医薬組成物が錠剤の形態又は他の経口投与剤形にある請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
2型糖尿病の治療を必要とするヒトにおける2型糖尿病の治療方法であって、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物を経口投与することを含んでなる治療方法。
【請求項16】
さらに香味剤、着色剤及び甘味剤からなる群より選ばれる1種以上の剤を含んでなる請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
湿式造粒法により製造される請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、製薬学的に許容される塩が、リン酸塩、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、メシル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、乳酸塩及びリンゴ酸塩からなる群より選ばれる医薬組成物。
【請求項19】
メトホルミン又はその塩(塩酸塩など)が即時放出型又は持続放出型である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物
【請求項20】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、(R)−7−[3−アミノ−4−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−ブチリル]−3−トリフルオロメチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−イミダゾ[1,5−α]ピラジン−1−カルボン酸メチルエステル又はその製薬学的に許容される塩のヒトに対する1日用量が25〜1000 mgであり、メトホルミン又はその塩(塩酸塩など)のヒトに対する1日用量が250〜3000 mgである医薬組成物。
【請求項21】
医薬組成物が1日1回、1日2回又は1日3回投与される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。


【公表番号】特表2013−521223(P2013−521223A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502429(P2012−502429)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【国際出願番号】PCT/CN2010/070910
【国際公開番号】WO2010/111905
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(510166892)ジエンス ヘンルイ メデイシンカンパニー リミテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI MEDICINE CO.,LTD.
【Fターム(参考)】