説明

2室型プレフィルドシリンジ

【課題】各栓体の装着が容易で、安価に実施することができ、しかも、第2収容室に収容した液体を蒸気で加熱滅菌できるものでありながら、第1収容室内で薬液を凍結乾燥することができ、また、筒体を合成樹脂材料で容易に形成できるようにする。
【解決手段】互いに別体の前側筒体部分(2a)と後側筒体部分(2b)とを保密状に接続して筒体(2)にする。前側筒体部分(2a)内に前側栓体(5)を装着し、前側栓体(5)の後方に第1収容室(8)を形成する。後側筒体部分(2b)内には、中間栓体(6)と後側栓体(7)とを前側から順に装着して、中間栓体(6)と後側栓体(7)との間に第2収容室(9)を形成する。前側筒体部分(2a)の後端寄り部から後側筒体部分(2b)の前端寄り部までの間の、第1収容室(8)の内周面に、中間栓体(6)による封止を解除するバイパス(16)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒体内に複数の栓体を配置して先端側から順に第1収容室と第2収容室を形成した、2室型プレフィルドシリンジに関し、さらに詳しくは、各栓体の装着が容易であるうえ、安価に実施することができ、しかも、第2収容室に収容した液体を蒸気で加熱滅菌できるものでありながら、第1収容室内で薬液を凍結乾燥することができ、また、筒体を合成樹脂材料で容易に形成できる、2室型プレフィルドシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
筒体内の収容室に予め薬剤が収容された、いわゆるプレフィルドシリンジには、筒体内に複数の栓体を配置して、先端側から順に第1収容室と第2収容室とを形成し、粉末やマイクロカプセル、粒剤などの固形あるいは液状の薬剤と、その溶解液または分散液あるいは他の薬液等の液体とを、互いに分離させた状態で収容する、2室型プレフィルドシリンジがある(例えば、特許文献1参照、以下、従来技術という。)。
【0003】
上記の従来技術は、先端に注射針装着部材が固定可能であり、後端にプランジャ挿入口が開口されている筒体を備える。この筒体の内部には、先端側から順に前側栓体と中間栓体と後側栓体とが装着されており、この前側栓体と中間栓体との間に第1収容室が形成され、中間栓体と後側栓体との間に第2収容室が形成されている。上記の第1収容室の内周面には、中間栓体による封止を解除するバイパスが形成してある。上記の第1収容室には所定の薬剤が収容され、第2収容室内にはその溶解液、分散液もしくは他の薬液等の液体が収容される。そして上記のプランジャの押圧により上記の中間栓体が保密摺動して上記のバイパスに達すると、その中間栓体による封止が解除され、このバイパスを介して第1収容室と第2収容室とが互いに連通する。この連通状態で後側栓体が前進すると、上記の第2収容室内の液体がバイパスを経て第1収容室内へ流入し、上記の薬剤が溶解、分散もしくは混合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−142203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術では、上記の筒体内に第1収容室と第2収容室とが長さ方向に形成してあるので、筒体の全長が長い。このため上記の各栓体を筒体後端の、例えばプランジャ挿入口から所定位置へ挿入することが容易でない問題がある。
【0006】
またこの従来技術では、第2収容室に液体を収容したのちオートクレイブで蒸気により加熱滅菌されるが、この滅菌処理で中間栓体に付着した水分を充分に乾燥させることが容易でなく、その後に第1収容室内へ収容した粉末などの薬剤がこの水分で悪影響を受ける虞がある。
【0007】
さらに上記の従来技術では、上記の液体を蒸気で加熱滅菌するため、この滅菌処理に先だって第1収容室に薬剤を収容することができない。一方、第2収容室に液体を予め収容してあると、その後に第1収容室へ収容する薬剤を、その第1収容室内で凍結乾燥することができない。従って凍結乾燥薬剤を第1収容室に収容するには、他の工程で凍結乾燥させたのち、得られた乾燥物を第1収容室に充填するしかなく、操作が煩雑であるうえ、凍結乾燥薬剤を精緻に秤量して第1収容室へ収容することが容易でない問題がある。
【0008】
また、上記のバイパスは、上記の中間栓体で封止されてはならず、しかもこのバイパスの前後は中間栓体等で保密状に封止できる必要がある。上記の従来技術では、ガラス製筒体の管壁の一部を加熱軟化させ外側へ膨出することで、上記のバイパスを形成してある。しかしこの筒体を合成樹脂で形成する場合は、長さ方向の中間部内面に拡径部を形成するため、金型構造が複雑となり、特に小口径にあってはこのバイパスを備えた筒体の形成が容易でない問題もある。
【0009】
本発明の技術的課題は上記の問題点を解消し、各栓体の装着が容易であるうえ、安価に実施することができ、しかも、第2収容室に収容した液体を蒸気で加熱滅菌できるものでありながら、第1収容室内で薬液を凍結乾燥することができ、また、筒体を合成樹脂材料で容易に形成できる、2室型プレフィルドシリンジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の課題を解決するために、例えば本発明の実施の形態を示す図1から図20に基づいて説明すると、次のように構成したものである。
即ち本発明は2室型プレフィルドシリンジに関し、先端に注射針取付部(3)が設けられ後端にプランジャ挿入口(4)が開口されている筒体(2)を備えており、この筒体(2)が互いに別体に形成された前側筒体部分(2a)と後側筒体部分(2b)とを備えるとともに、この両筒体部分(2a・2b)が保密状に互いに接続してあり、上記の前側筒体部分(2a)内に前側栓体(5)が装着されて、この前側栓体(5)の後方に第1収容室(8)が形成され、上記の後側筒体部分(2b)内に後側栓体(7)が装着されて、この後側栓体(7)の前方に第2収容室(9)が形成され、上記の前側栓体(5)と後側栓体(7)との間に、上記の両収容室(8・9)を互いに区画する中間栓体(6)が装着してあり、上記の中間栓体(6)と前記の前側栓体(5)との間の第1収容室(8)の内周面に、上記の中間栓体(6)による封止を解除するバイパス(16)が形成してあることを特徴とする。
【0011】
上記の前側筒体部分と後側筒体部分とは、これらを互いに接続したのち、前記の従来と同様の手順により、上記の第1収容室へ薬剤を収容し、第2収容室へ液体を収容してもよいが、予め第1収容室へ薬剤を収容し、第2収容室へ液体を収容したのち、上記の前側筒体部分と後側筒体部分とを互いに接続してもよい。この場合、各栓体は両筒体部分を互いに接続する前の、上記の薬剤や液体の収容前、または収容直後に、それぞれ各筒体部分内へ装着される。
【0012】
なお本発明では、例えば薬剤が液体である場合等は、予め第1収容室へその薬剤を収容したのち両筒体部分を互いに接続し、その後に第2収容室へ液体を収容してもよい。また上記の前側筒体部分の先端が大きく開口してある場合等は、予め第2収容室へ液体を収容したのち両筒体部分を互いに接続し、その後に第1収容室へ薬剤を収容することも可能である。
【0013】
上記の後側栓体がこれに連結されたプランジャにより押圧されて前進すると、第2収容室内の液体を介して中間栓体が押圧され、保密摺動しながら前進する。この中間栓体が上記のバイパスを形成した位置に達すると、この中間栓体による封止が解除され、このバイパスを介して第1収容室と第2収容室とが互いに連通する。この状態でプランジャにより後側栓体をさらに前進させると、第2収容室内の液体が第1収容室内へ流入し、第1収容室内の薬剤が流入した液体に溶解、分散もしくは混合される。
【0014】
上記の第2収容室内の液体が流出し終わると、後側栓体が中間栓体に当接した状態となる。この状態からさらに後側栓体をプランジャで押圧して前進させると、この後側栓体を介し上記の中間栓体が押圧されてバイパスの前方へ移動し、これにより、前側栓体と中間栓体との間が保密状態に封止される。その後、通常のシリンジを扱う場合と同様の手順で前記の注射針取付部に注射針が装着され、プランジャが押圧されることにより、上記の液体に溶解、分散もしくは混合された薬剤が患者へ投与される。
【0015】
上記の前側筒体部分と後側筒体部分とは、任意の形状や構造の部材で互いに接続することができる。例えば、上記の前側筒体部分の後端部と後側筒体部分の前端部とのいずれか一方に、筒状の接続部を一体に形成して、この接続部を介して上記の両筒体部分を互いに接続してもよい。この場合は部品点数が少なく済み、安価に実施できて好ましい。
【0016】
この場合、上記の中間栓体は上記の後側筒体部分内に装着することができる。このように装着すると、この後側筒体部分内に上記の第2収容室を形成して上記の液体を収容したのち密封状態にでき、この後側筒体部分を一つのユニットとして取り扱うことができて好ましい。
【0017】
この中間栓体を後側筒体部分内に装着した場合には、上記のバイパスは、その前側筒体部分の後端寄り部と後側筒体部分の前端寄り部とのいずれか一方または両方に形成することができる。この場合には、バイパスを筒体部分の中間部に形成する必要がないので、構造の簡単な金型によりこれらの筒体部分を形成できて好ましい。
【0018】
一方、上記の中間栓体は、単一の栓体で構成して安価に実施してもよいが、第1中間栓体とこれよりも後方に装着される第2中間栓体とを備えた構成にしてもよい。
例えば、上記の中間栓体を、上記の前側筒体部分内に装着された第1中間栓体と、上記の後側筒体部分内に装着された第2中間栓体とを備えた構成にすることができる。この場合、上記の第1収容室は上記の前側栓体と第1中間栓体との間に形成され、上記の第2収容室は上記の第2中間栓体と後側栓体との間に形成されており、上記のバイパスは少なくとも上記の第1中間栓体による封止を解除するように構成される。
【0019】
この場合、両筒体部分を互いに接続した状態では、第1中間栓体と第2中間栓体との間に空気室が形成される。そして前述のように、上記の後側栓体がプランジャに押圧されて前進すると、第2収容室内の液体を介して第2中間栓体が押圧されるとともに、上記の空気室内の空気を介して第1中間栓体が押圧され、いずれの栓体も保密摺動しながら前進する。この第1中間栓体が上記のバイパスを形成した位置に達すると、この第1中間栓体による封止が解除され、このバイパスを介して空気室と第1収容室とが互いに連通する。この状態でプランジャにより後側栓体をさらに前進させると、第2中間栓体の前進とともに空気室内の空気が第1収容室内へ流入する。
【0020】
上記の空気室内の空気が流出し終わると、第2中間栓体が第1中間栓体に当接した状態となり、さらに後側栓体をプランジャで押圧して前進させると、第2収容室内の液体を介して両中間栓体が前進し、第2中間栓体もバイパス形成位置に達する。これにより、この第2中間栓体による封止も解除され、上記の第1収容室と第2収容室とがバイパスを介して互いに連通する。この状態でプランジャにより後側栓体をさらに前進させると、第2収容室内の液体が第1収容室内へ流入し、第1収容室内の薬剤が流入した液体に溶解、分散もしくは混合される。
【0021】
上記の第2収容室内の液体が流出し終わると、後側栓体が第2中間栓体に当接した状態となる。この状態からさらに後側栓体をプランジャで押圧して前進させると、この後側栓体と第2中間栓体とを介し上記の第1中間栓体が押圧されてバイパスの前方へ移動し、これにより、前側栓体と第1中間栓体との間が保密状態に封止される。その後、上記のように前記の注射針取付部に注射針を装着し、プランジャを押圧することにより、上記の液体に溶解、分散もしくは混合された薬剤が患者へ投与される。
【0022】
上記の中間栓体が上記の第1中間栓体と第2中間栓体とを備える場合、上記のバイパスは、上記の第1中間栓体と第2中間栓体とを合わせた長さよりも長く形成して、このバイパスを上記の第1収容室の内周面にのみ形成すればよい。しかし、上記の筒体の内周面のうち上記の両中間栓体間に、即ち、上記の空気室の内周面に、上記の第2中間栓体による封止を解除する第2バイパスを形成すると、上記の第1収容室の内周面に形成されているバイパスの長さを、第1中間栓体よりも長くするだけでよく、両中間栓体を併せた長さよりも短くできる。
【0023】
なお、上記の第2バイパスを設けた場合は、第1中間栓体がバイパスに達する前に第2中間栓体が第2バイパスに達すると、第2収容室内の液体が第2バイパスを経て空気室内へ流入し、その後に第1中間栓体がバイパスに達すると、空気室内の液体がバイパスを経て第1収容室内へ流入する。また、第2中間栓体が第2バイパスに達する前に第1中間栓体がバイパスに達すると、空気室内の空気がこのバイパスを経て第1収容室内へ流入し、その後に第2中間栓体がバイパスに達すると、第2収容室内の液体が空気室と第2バイパスと上記のバイパスとを順に経て第1収容室内へ流入する。
【0024】
また上記の筒体は、上記の両筒体部分とは別体に形成された筒状の接続部材を備える構成とし、この接続部材を介して上記の両筒体部分を互いに接続することも可能である。なおこの接続部材は、例えば上記の薬剤や液体を収容する前に、前側筒体部分の後端部と後側筒体部分の前端部の、いずれか一方に予め接続しておいてもよい。
【0025】
この場合、上記の中間栓体が上記の第1中間栓体と第2中間栓体とを備える場合、この第1中間栓体を上記の前側筒体部分内に装着し、第2中間栓体を上記の接続部材内と後側筒体部分内とのいずれかに装着することができる。しかし、第1中間栓体を上記の接続部材内に装着し、第2中間栓体を後側筒体部分内に装着してもよく、この場合には、上記のバイパスを前側筒体部分の後端寄り部と接続部材の内周面とのいずれか一方または両方に形成することができ、バイパスを筒体部分の中間部に形成する必要がないので、構造の簡単な金型によりこれらの筒体部分を形成できて好ましい。
【0026】
また上記の中間栓体が単一の栓体で形成される場合は、この中間栓体を接続部材内に装着することができ、この場合も、上記と同様、上記のバイパスを前側筒体部分の後端寄り部と接続部材の内周面とのいずれか一方または両方に形成することができ、バイパスを筒体部分の中間部に形成する必要がないので、構造の簡単な金型によりこれらの筒体部分を容易に形成できて好ましい。
【0027】
さらに、上記の中間栓体が単一の栓体で形成される場合に、この中間栓体を接続部材内に装着することも可能である。この場合には、上記のバイパスは、前側筒体部分の後端寄り部や後側筒体部分の前端寄り部に形成することも可能であるが、このバイパスの少なくとも一部を上記の接続部材の内周面に形成してもよく、この場合は両筒体部分の端部の形状を簡略にできるので好ましい。即ち上記のバイパスは、上記の前側筒体部分の後端寄り部と、後側筒体部分の前端寄り部と、接続部材の内周面との、少なくともいずれかに形成することができる。
【0028】
上記の前側筒体部分の後端は上記の後側筒体部分に臨ませて大きく開口してあるので、上記の薬剤はこの前側筒体部分の後端開口から第1収容室へ容易に収容させることができる。このため、上記の注射針取付部は上記の前側筒体部分の先端部に一体に形成してもよく、この場合は部品点数が少なく済み、安価に実施できて好ましい。
【0029】
また、上記の前側筒体部分の先端部に注射針装着部の後部を外嵌固定して、この注射針装着部の先端に上記の注射針取付部を形成してもよい。この場合は前側筒体部分の形状を簡略にできて好ましい。特に、上記のバイパスを上記の後側筒体部分の前端寄り部や接続部材の内周面に形成する場合には、この前側筒体部分をバイパスが形成されていない直筒状に形成できるので、合成樹脂材料はもとより、ガラス材料でも容易に形成できて好ましい。
【0030】
上記の両筒体部分を形成する材料は、特定の材料に限定されず、熱可塑性樹脂などの合成樹脂材料のほか、ガラス材料など、任意の材料で形成することができる。この熱可塑性合成樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂などを挙げることができ、特定の熱可塑性合成樹脂に限定されないが、なかでもシクロオレフィンポリマーやシクロオレフィンコポリマーなどの環状ポリオレフィン樹脂を用いると、高い透明性を確保できるうえ、例えばオートクレーブ滅菌の際の高温(例えば121℃)に耐える耐熱性があり、凍結乾燥に伴う温度変化や圧力変化に対する十分な強度(環境適正)を備えており、水蒸気透過性が極めて少なく、撥水性に優れており、化学的溶出や吸着が防止できる耐薬品性にも優れているので、上記の前側筒体部分と後側筒体部分との少なくともいずれか一方が、この環状ポリオレフィン樹脂で形成してあると好ましい。
【0031】
上記の注射針取付部には注射針内の通路と連通する液出口路が形成してあるが、注射針が未装着の状態では、この注射針取付部にキャップを装着してこの液出口路を封鎖してあり、注射針はこのキャップを取り外したのちこの注射針取付部に装着される。この場合、上記の液出口路が気密状に封鎖されていると、筒体内で各栓体が前進して前側栓体と液出口路との間の空気が圧縮される。この結果、その圧力により栓体の移動抵抗が大きくなって、プランジャの操作が容易でなくなるうえ、プランジャによる押圧力を除くと栓体が後退する虞もある。
【0032】
そこで、上記のキャップに、空気の流通は許容するが雑菌などの異物の通過は阻止するフィルタを付設して、上記の液出口路をこのフィルタにより封鎖すると、両筒体部分同士を互いに接続する場合や、中間栓体を移動させて両収容室同士を互いに連通させる場合などに、前側栓体の前方の空間内の空気を上記の液出口路から上記のフィルタを介して排出させて、筒体内の圧力上昇を抑制することができ、しかも雑菌などがこの液出口路から筒体内へ侵入することを防止できて好ましい。
【0033】
上記の第1収容室に収容される薬剤は、特定の成分や収容量、製造方法のものに限定されず、粉末やマイクロカプセル、粒剤などの固形薬剤であってもよく、さらには液状の薬剤であってもよい。しかしこの薬剤が凍結乾燥により得られたものであると、第2収容室から流入する液体に容易に溶解、分散もしくは混合させることができて好ましく、特にその凍結乾燥薬剤が上記の第1収容室内で凍結乾燥されたものであると、所定量の薬剤を正確に且つ容易に収容できてさらに好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明は上記のように構成され作用することから、次の効果を奏する。
【0035】
(1)前側筒体部分と後側筒体部分とを互いに接続する前に、各筒体部分内へ栓体を装着することができるので、各筒体部分の開口端から栓体装着位置までの寸法が短く済み、各栓体を所定位置へ容易に装着することができる。
【0036】
(2)前側筒体部分内に第1収容室が形成され、後側筒体部分内に第2収容室が形成されており、各収容室へ薬剤や液体を収容したのち、両筒体部分同士を互いに接続できることから、第2収容室に液体を収容して中間栓体で密封したのち蒸気により加熱滅菌する工程を、第1収容室への薬剤の収容とは独立した別の工程で行うことができる。この結果、この滅菌処理で中間栓体に付着した水分を充分に乾燥させることができる。
【0037】
(3)2室型プレフィルドシリンジにあっては、第1収容室に収容する薬剤が、同じ有効成分で収容量のみ異なる場合には、第2収容室に収容される液体の成分とその収容量が同一である場合がある。また、上記の薬剤が異なる場合でも、第2収容室に収容される液体の成分とその収容量が同一の場合もある。本発明では、第2収容室に液体を収容したのち蒸気により加熱滅菌する工程を、第1収容室への薬剤の収容とは独立した別の工程で行うことができるので、この液体を収容した後側筒体部分や上記の接続部材を固定した後側筒体部分をひとつの共通ユニット部品として汎用化させて、大量に生産し在庫しておくことができ、全体として2室型プレフィルドシリンジを安価に製造することができる。
【0038】
(4)各収容室内へは、互いに独立した別の工程で薬剤や液体を収容できるので、一方の工程で第1収容室内へ薬液を収容してこれを凍結乾燥し、他方の工程で第2収容室に液体を収容してこれを蒸気で加熱滅菌したのち、両筒体部分同士を互いに接続することができる。即ち、第2収容室に収容した液体を蒸気で加熱滅菌できるものでありながら、第1収容室内で薬液を凍結乾燥することができるので、第1収容室へ所定量の凍結乾燥薬剤を容易に収容することができる。
【0039】
(5)上記のバイパスを、前側筒体部分の後端寄り部と、後側筒体部分の前端寄り部と、これらを接続する接続部材の内周面とのうちのいずれか又はこれらの複数個所に形成した場合には、筒体部分の中間部にバイパスを形成する必要がないので、これらの筒体部分が合成樹脂材料製であっても、構造の簡単な金型で容易に且つ安価に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1実施形態を示す、組付状態の2室型プレフィルドシリンジの断面図である。
【図2】第1実施形態の、組付前の2室型プレフィルドシリンジの断面図である。
【図3】第1実施形態の操作手順を示し、図3(a)は連通状態の2室型プレフィルドシリンジの断面図であり、図3(b)は混合を完了した2室型プレフィルドシリンジの断面図であり、図3(c)は投与時の2室型プレフィルドシリンジの断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示し、図4(a)は図2相当図であり、図4(b)は図1相当図である。
【図5】本発明の第3実施形態を示し、図5(a)は図2相当図であり、図5(b)は図1相当図である。
【図6】本発明の第4実施形態を示し、図6(a)は図2相当図であり、図6(b)は図1相当図である。
【図7】本発明の第5実施形態を示す、図1相当図である。
【図8】本発明の第6実施形態を示す、接続部材近傍の断面図である。
【図9】本発明の第7実施形態を示す、図1相当図である。
【図10】第7実施形態の、図2相当図である。
【図11】第7実施形態の操作手順を示し、図11(a)は第1収容室と空気室とが連通した状態の2室型プレフィルドシリンジの断面図であり、図11(b)は空気室内の空気が流出し終わった状態の2室型プレフィルドシリンジの断面図である。
【図12】第7実施形態の操作手順を示し、図12(a)は混合を完了した2室型プレフィルドシリンジの断面図であり、図12(b)は投与時の2室型プレフィルドシリンジの断面図である。
【図13】本発明の第8実施形態を示し、図13(a)は図2相当図であり、図13(b)は図1相当図である。
【図14】本発明の第9実施形態を示し、図14(a)は図2相当図であり、図14(b)は図1相当図である。
【図15】本発明の第10実施形態を示し、図15(a)は図2相当図であり、図15(b)は図1相当図である。
【図16】本発明の第11実施形態を示し、図16(a)は図2相当図であり、図16(b)は図1相当図である。
【図17】本発明の第12実施形態を示す、図1相当図である。
【図18】本発明の第13実施形態を示し、図18(a)は図2相当図であり、図18(b)は図1相当図である。
【図19】本発明の第13実施形態の操作手順を示し、図19(a)は第2収容室と空気室とが連通した状態の2室型プレフィルドシリンジの断面図であり、図19(b)は第2収容室内の液体が空気室へ流出し終わり、空気室と第1収容室とが連通した状態の2室型プレフィルドシリンジの断面図であり、図19(c)は空気室内の液体が第1収容室へ流出し終わった状態の2室型プレフィルドシリンジの断面図である。
【図20】本発明の変形例を示す、前側筒体部分の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1から図3は本発明の第1実施形態を示し、図1は組付状態の2室型プレフィルドシリンジの断面図であり、図2は組付前の2室型プレフィルドシリンジの断面図であり、図3は操作手順を示す2室型プレフィルドシリンジの断面図である。
【0042】
図1に示すように、この2室型プレフィルドシリンジ(1)は合成樹脂製等の筒体(2)を備えている。この筒体(2)の先端には注射針取付部(3)が一体に設けてあり、後端にプランジャ挿入口(4)が開口してある。上記の筒体(2)の内部には、先端側から順に前側栓体(5)と中間栓体(6)と後側栓体(7)とがそれぞれ保密摺動可能に装着されており、この前側栓体(5)と中間栓体(6)との間に第1収容室(8)が形成され、中間栓体(6)と後側栓体(7)との間に第2収容室(9)が形成されている。この第1収容室(8)には、粉末状等の薬剤(10)が収容され、第2収容室(9)にその溶解液や分散液等の液体(11)が収容される。なお、上記の薬剤(10)は粉末のほか、マイクロカプセルや粒剤、凍結乾燥薬剤などの固形薬剤であってもよく、さらには液状の薬剤であってもよい。また上記の液体(11)は、第1収容室(8)に収容した薬剤(10)と異なる薬液や、希釈用の蒸留水などであってもよい。
【0043】
上記の注射針取付部(3)の内部には液出口路(12)が形成してあり、この液出口路(12)を介して筒体(2)内が外部空間に連通するように構成してある。この注射針取付部(3)に装着したキャップ(13)にはフィルタ(14)が付設してあり、このフィルタ(14)で上記の液出口路(12)が蓋してある。このフィルタ(14)は、例えば孔径が0.2μm以下のメンブランフィルタを用いてあり、筒体(2)内からの空気の流出は許容するが、雑菌や塵埃などの異物が外部から筒体(2)内へ侵入することは阻止してある。
【0044】
上記の筒体(2)の先端部内面には、長さ方向に突条(15)が設けてある。また、上記の前側栓体(5)と中間栓体(6)との間の、上記の第1収容室(8)には、軸方向に長い溝状のバイパス(16)が内周面の所定部位に形成してある。このバイパス(16)の長さは、上記の中間栓体(6)の軸方向の長さよりも長い寸法に形成してある。
【0045】
図1と図2に示すように、上記の筒体(2)は互いに別体に形成された前側筒体部分(2a)と後側筒体部分(2b)とからなる。この前側筒体部分(2a)は例えば環状ポリオレフィン樹脂で形成され、後側筒体部分(2b)は例えばポリプロピレン樹脂で形成されている。
【0046】
上記の後側筒体部分(2b)内には、上記の中間栓体(6)と後側栓体(7)とが前側から順に装着され、この中間栓体(6)と後側栓体(7)との間に上記の第2収容室(9)が形成されている。この後側筒体部分(2b)の前端部には、大径の接続部(17)が一体に形成してあり、この接続部(17)の内周面に、多数の環状突部(18)が形成してある。
【0047】
一方、上記の前側筒体部分(2a)内には、上記の前側栓体(5)が装着され、この前側栓体(5)の後方に上記の第1収容室(8)が、上記の後側筒体部分(2b)内の中間栓体(6)へ臨ませて形成してある。そしてこの前側筒体部分(2a)の後端寄り部に、上記のバイパス(16)が軸方向に沿った溝状に形成してある。従ってこのバイパス(16)を備えた前側筒体部分(2a)は、簡単な構造の金型で容易に成型される。
【0048】
上記の両筒体部分(2a・2b)が互いに接続される前に、上記の薬剤(10)は上記の第1収容室(8)に収容される。なおこの薬剤(10)が凍結乾燥材である場合は、この薬剤(10)を収容した前側筒体部分(2a)が、図示しない凍結乾燥装置内で凍結され、減圧下で凍結乾燥される。同様に上記の液体(11)も、上記の両筒体部分(2a・2b)が互いに接続される前に、上記の第2収容室(9)に収容され、中間栓体(6)と後側栓体(7)とで保密摺動可能に封止されて、オートクレイブで蒸気により加熱滅菌されたのち、中間栓体(6)と後側栓体(7)とが十分に乾燥される。
【0049】
上記の両筒体部分(2a・2b)は、上記の接続部(17)内へ上記の前側筒体部分(2a)の後端部を挿入することで、保密状に互いに接続され、プランジャ挿入口(4)から挿入されたプランジャ(19)が上記の後側栓体(7)に連結されて、図1に示す組付状態の2室型プレフィルドシリンジ(1)にされる。
【0050】
次に、図1から図3に基づき、上記の薬剤を患者へ投与する手順について説明する。
上記のプランジャ(19)を操作して上記の後側栓体(7)を押圧すると、上記の第2収容室(9)内の液体(11)を介して上記の中間栓体(6)が押圧され、保密摺動しながら前進する。そして図3(a)に示すように、この中間栓体(6)が上記のバイパス(16)を形成した位置に達すると、この中間栓体(6)による封止が解除され、このバイパス(16)を介して上記の第2収容室(9)が前記の第1収容室(8)と連通する。
【0051】
この連通状態で、上記のプランジャ(19)を操作して上記の後側栓体(7)をさらに押圧すると、後側栓体(7)は前進するが中間栓体(6)は前進せず、第2収容室(9)内の液体(11)が第1収容室(8)内へ流入する。第1収容室(8)内の薬剤(10)はこの流入した液体(11)に溶解、分散もしくは混合される。そして上記の第2収容室(9)から液体(11)が流出し終わると、上記の後側栓体(7)が中間栓体(6)に当接した状態となる。この状態で、2室型プレフィルドシリンジ(1)を振蕩させるなどして上記の液体(11)に上記の薬剤(10)を充分に溶解、分散もしくは混合させたのち、図3(b)に示すように、上記の注射針取付部(3)から前記のキャップ(13)を取り外し、これに代えて注射針(20)を装着する。
【0052】
この状態から、上記の後側栓体(7)をプランジャ(19)で押圧して前進させると、この後側栓体(7)とともに上記の中間栓体(6)がバイパス(16)の前方へ移動し、これにより、前記の前側栓体(5)と中間栓体(6)との間の空間が保密状態に封止される。そしてさらに上記のプランジャ(19)を操作して後側栓体(7)と中間栓体(6)を前進させると、第1収容室(8)内の収容物を介して前側栓体(5)が保密摺動して前進する。この前側栓体(5)が筒体(2)の先端部に達すると、前側栓体(5)の外周面が前記の突条(15)で押圧され、この突条(15)の両脇に軸方向の連通路が形成される。上記の後側栓体(7)と中間栓体(6)がさらに前進すると、上記の第1収容室(8)内の空気はこの連通路を介して前記の液出口路(12)から注射針(20)内を経て外部へ排出され、図3(c)に示す投薬時の状態となる。その後は通常のシリンジを扱う場合と同様の手順で上記のプランジャ(19)を押圧することにより、上記の液体(11)に溶解、分散もしくは混合された薬剤(10)が注射針(20)の先端から送り出され、患者へ投与される。
【0053】
上記の第1実施形態では、上記の接続部(17)を上記の後側筒体部分(2b)に一体に形成した。しかし本発明では、例えば図4に示す第2実施形態のように、前側筒体部分(2a)に接続部(17)を一体に形成してもよい。
【0054】
即ちこの第2実施形態では、図4(a)に示すように、前側筒体部分(2a)の後端部に大径の接続部(17)が一体に形成してあり、この接続部(17)の内周面に、多数の環状突部(18)が形成してある。なお、この前側筒体部分(2a)は例えばポリプロピレン樹脂で形成され、後側筒体部分(2b)は例えば環状ポリオレフィン樹脂で形成されている。そして、この後側筒体部分(2b)の前端部を上記の接続部(17)内へ挿入することで、両筒体部分(2a・2b)が保密状に互いに接続され、後側栓体(7)にプランジャ(19)が連結されて、図4(b)に示す組付状態の2室型プレフィルドシリンジ(1)にされる。その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0055】
上記の第1実施形態や第2実施形態では、上記の前側筒体部分(2a)の後端寄り部にバイパス(16)を形成した。しかし本発明では、例えば図5に示す第3実施形態のように、このバイパス(16)を後側筒体部分(2b)の前端寄り部に形成してもよい。
【0056】
即ちこの第3実施形態では、上記の第1実施形態と同様に、後側筒体部分(2b)の前端部に接続部(17)が一体に形成してあるが、第1実施形態と異なり、後側筒体部分(2b)の前端寄り部に、軸方向に沿った溝状のバイパス(16)が形成してある。前側筒体部分(2a)の後端部は直筒状に形成してあり、この前側筒体部分(2a)の後端部を上記の接続部(17)内へ挿入することで、両筒体部分(2a・2b)が保密状に互いに接続される。そして、後側栓体(7)にプランジャ(19)が連結されて、図5(b)に示す組付状態の2室型プレフィルドシリンジ(1)にされる。その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0057】
上記の各実施形態では、前側筒体部分(2a)と後側筒体部分(2b)とのいずれか一方に接続部(17)を一体に形成して、この接続部(17)により両筒体部分(2a・2b)同士を互いに接続した。しかし本発明では、例えば図6に示す第4実施形態のように、両筒体部分(2a・2b)とは別体の、筒状の接続部材(21)を用いて両筒体部分(2a・2b)を互いに接続してもよい。
【0058】
即ちこの第4実施形態では、図6(a)に示すように、筒体(2)が、互いに別体に形成された、前側筒体部分(2a)と後側筒体部分(2b)と両者間に配置される筒状の接続部材(21)とからなる。この両筒体部分(2a・2b)は、例えばそれぞれ環状ポリオレフィン樹脂で形成されており、接続部材(21)は例えばポリプロピレン樹脂で形成されている。
【0059】
上記の接続部材(21)の両端には、それぞれ大径の接続部(17)が形成されており、この接続部(17)の内周面に、多数の環状突部(18)が形成してある。また、この接続部材(21)の中央部の内周面には、軸方向に沿った溝状のバイパス(16)が両接続部(17・17)間に形成してある。これに対し、上記の前側筒体部分(2a)の後端部や、後側筒体部分(2b)の前端部は、それぞれ直筒状に形成してある。
【0060】
上記の両筒体部分(2a・2b)は、上記の前側筒体部分(2a)の後端部を上記の接続部材(21)の前側の接続部(17)内へ挿入し、後側筒体部分(2b)の前端部を接続部材(21)の後側の接続部(17)内へ挿入することで、この接続部材(21)を介して保密状に互いに接続される。なおこの接続部材(21)は、両筒体部分(2a・2b)を互いに接続する際にそれぞれの端部を接続部(17)内へ挿入して接続してもよく、或いは、上記の薬剤(10)や液体(11)を収容する前に、いずれか一方の筒体部分の端部を予め一方の接続部(17)内へ挿入して接続しておいてもよい。
【0061】
上記の接続部材(21)を介して上記の両筒体部分(2a・2b)を互いに接続したのち、後側栓体(7)にプランジャ(19)が連結されて、図6(b)に示す組付状態の2室型プレフィルドシリンジ(1)にされる。その他の構成は上記の第1実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0062】
上記の各実施形態では、いずれも上記の中間栓体(6)を上記の後側筒体部分(2b)内に装着した。しかし本発明では、例えば図7に示す第5実施形態のように、中間栓体(6)を接続部材(21)内に装着することも可能である。
【0063】
即ち、この第5実施形態では、上記の第4実施形態と同様、前側筒体部分(2a)と後側筒体部分(2b)とが筒状の接続部材(21)を介して保密状に互いに接続してある。この接続部材(21)の内周面にはバイパス(16)が形成してあり、このバイパス(16)よりも後方に、上記の中間栓体(6)が装着してある。この接続部材(21)は、上記の後側筒体部分(2b)へ固定することにより、この接続部材(21)を固定した後側筒体部分(2b)を一つのユニットにしてもよく、或いは、上記の前側筒体部分(2a)へ固定することにより、この接続部材(21)を固定した前側筒体部分(2a)を一つのユニットにしてもよい。その他の構成は上記の第4実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0064】
上記の第4実施形態や第5実施形態では、上記のバイパス(16)を接続部材(21)の内周面に形成した。しかし本発明では、この接続部材を用いる場合でも、上記のバイパスを前側筒体部分の後端寄り部や後側筒体部分の前端寄り部に形成してもよい。さらに上記の第1実施形態から第3実施形態では、上記のバイパスを前側筒体部分と後側筒体部分とのいずれか一方に形成した。しかし本発明ではこのバイパスを、前側筒体部分の後端寄り部と後側筒体部分の前端寄り部とに亘って形成するなど、2つの部材に亘って形成することも可能である。
【0065】
例えば図8に示す第6実施形態では、上記の第4実施形態と同様、接続部材(21)を介して両筒体部分(2a・2b)同士が保密状に形成してある。しかしこの第6実施形態では、前側筒体部分(2a)の後端部と後側筒体部分(2b)の前端部とが、僅かな隙間をあけて互いに付き合わせた状態に接続されている。そしてこの前側筒体部分(2a)の後端寄り部と後側筒体部分(2b)の前端寄り部との両者に、溝状のバイパス(16)が形成してある。前側筒体部分(2a)に形成したバイパス(16)と後側筒体部分(2b)に形成したバイパス(16)とは、上記の隙間を介して互いに連続している。その他の構成は上記の第4実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0066】
なお上記の第6実施形態において、上記のバイパス(16)は、前側筒体部分(2a)の後端寄り部と後側筒体部分(2b)の前端寄り部との、いずれか一方に形成してもよい。この場合は上記の隙間をあけることなく、前側筒体部分(2a)の後端部と後側筒体部分(2b)の前端部とを互いに付き合わせることができ、上記の隙間に液体が残ることを防止できて好ましい。
【0067】
上記の各実施形態では、いずれも中間栓体(6)を単一の栓体で構成した場合について説明した。しかし本発明では、例えば図9から図12に示す第7実施形態のように、この中間栓体(6)を第1中間栓体(6a)とこれよりも後側に装着される第2中間栓体(6b)とを備える構成にしてもよい。
【0068】
即ち、図9に示すように、この第7実施形態の2室型プレフィルドシリンジ(1)は、上記の第1実施形態と同様、合成樹脂製等の筒体(2)を備えており、この筒体(2)の先端には注射針取付部(3)が一体に設けてあり、後端にプランジャ挿入口(4)が開口してある。そして上記の筒体(2)は、図9と図10に示すように、互いに別体に形成された前側筒体部分(2a)と後側筒体部分(2b)とからなる。
【0069】
しかし上記の第1実施形態と異なり、上記の筒体(2)の内部には、先端側から順に前側栓体(5)と第1中間栓体(6a)と第2中間栓体(6b)と後側栓体(7)とがそれぞれ保密摺動可能に装着されている。即ち、上記の前側筒体部分(2a)内に上記の前側栓体(5)と上記の第1中間栓体(6a)とが装着してあり、この前側栓体(5)と第1中間栓体(6a)との間に上記の第1収容室(8)が形成してある。また、上記の後側筒体部分(2b)内に、上記の第2中間栓体(6b)と後側栓体(7)とが前側から順に装着してあり、この第2中間栓体(6b)と後側栓体(7)との間に上記の第2収容室(9)が形成してある。そして、上記の第1中間栓体(6a)と第2中間栓体(6b)との間に空気室(24)が形成してある。
【0070】
上記の前側栓体(5)と第1中間栓体(6a)との間の、上記の第1収容室(8)の所定部位、即ち、前側筒体部分(2a)の中間部位には、軸方向に長い突条からなるバイパス(16)が内周面に形成してある。このバイパス(16)の長さは、上記の両中間栓体(6a・6b)の軸方向の長さの合計よりも長い寸法に形成してある。
【0071】
上記の後側筒体部分(2b)の前端部には、上記の第1実施形態と同様、大径の接続部(17)が一体に形成してあり、この接続部(17)の内周面に多数の環状突部(18)が形成してある。そして、上記の両筒体部分(2a・2b)が互いに接続される前に、上記の薬剤(10)が上記の第1収容室(8)に収容され、第1中間栓体(6a)で保密摺動可能に封止される。なおこの薬剤(10)が凍結乾燥材である場合は、この薬剤(10)を収容した前側筒体部分(2a)が、図示しない凍結乾燥装置内で凍結され、減圧下で凍結乾燥される。同様に上記の液体(11)も、上記の両筒体部分(2a・2b)が互いに接続される前に、上記の第2収容室(9)に収容され、第2中間栓体(6b)と後側栓体(7)とで保密摺動可能に封止されて、オートクレイブで蒸気により加熱滅菌されたのち、第2中間栓体(6b)と後側栓体(7)とが十分に乾燥される。
【0072】
上記の両筒体部分(2a・2b)は、上記の接続部(17)内へ上記の前側筒体部分(2a)の後端部を挿入することで、保密状に互いに接続される。このとき、図9に示すように、第1中間栓体(6a)と第2中間栓体(6b)との間に上記の空気室(24)が形成される。そしてプランジャ挿入口(4)から挿入されたプランジャ(19)が上記の後側栓体(7)に連結されて、図9に示す組付状態の2室型プレフィルドシリンジ(1)にされる。その他の構成は上記の第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0073】
次に、図11と図12に基づき、上記の薬剤を患者へ投与する手順について説明する。
上記のプランジャ(19)を操作して上記の後側栓体(7)を押圧すると、上記の第2収容室(9)内の液体(11)を介して上記の第2中間栓体(6b)が押圧され、さらに空気室(24)内の空気を介して上記の第1中間栓体(6a)が押圧されて、いずれも保密摺動しながら前進する。そして図11(a)に示すように、この第1中間栓体(6a)が上記のバイパス(16)を形成した位置に達すると、この第1中間栓体(6a)による封止が解除され、このバイパス(16)を介して上記の空気室(24)が前記の第1収容室(8)と連通する。即ち、第1中間栓体(6a)の外周面が突条からなるバイパス(16)で押圧され、このバイパス(16)の両脇に軸方向の連通路が形成され、この連通路を介して空気室(24)と第1収容室(8)とが互いに連通する。
【0074】
この連通状態で、上記のプランジャ(19)を操作して上記の後側栓体(7)をさらに押圧すると、後側栓体(7)と第2中間栓体(6b)とは前進するが上記の第1中間栓体(6a)は前進せず、空気室(24)内の空気が上記のバイパス(16)を経て第1収容室(8)内へ流入する。そして、この空気室(24)内の空気が流出し終わると、上記の第2中間栓体(6b)が第1中間栓体(6a)に当接した状態となる。そしてさらに後側栓体(7)をプランジャ(19)で押圧して前進させると、第2収容室(9)内の液体(11)を介して両中間栓体(6a・6b)が前進し、第2中間栓体(6b)もバイパス(16)を形成した位置に達する。これによりこの第2中間栓体(6b)による封止も解除され、図11(b)に示すように、上記の第1収容室(8)と第2収容室(9)とがこのバイパス(16)を介して互いに連通した状態となる。
【0075】
この連通状態で、上記のプランジャ(19)を操作して上記の後側栓体(7)をさらに押圧すると、後側栓体(7)は前進するが両中間栓体(6a・6b)は前進せず、第2収容室(9)内の液体(11)がバイパス(16)を経て第1収容室(8)内へ流入する。第1収容室(8)内の薬剤(10)はこの流入した液体(11)に溶解、分散もしくは混合される。そして上記の第2収容室(9)から液体(11)が流出し終わると、上記の後側栓体(7)が第2中間栓体(6b)に当接した状態となる。この状態で、2室型プレフィルドシリンジ(1)を振蕩させるなどして、上記の液体(11)に上記の薬剤(10)を充分に溶解、分散もしくは混合させたのち、図12(a)に示すように、上記の注射針取付部(3)から前記のキャップ(13)を取り外し、これに代えて注射針(20)を装着する。
【0076】
この状態から、上記の後側栓体(7)をプランジャ(19)で押圧して前進させると、この後側栓体(7)とともに上記の両中間栓体(6a・6b)がバイパス(16)の前方へ移動し、これにより、前記の前側栓体(5)と第1中間栓体(6a)との間の空間が保密状態に封止される。そしてさらに上記のプランジャ(19)を操作して後側栓体(7)と両中間栓体(6a・6b)を前進させると、第1収容室(8)内の収容物を介して前側栓体(5)が保密摺動して前進する。この前側栓体(5)が筒体(2)の先端部に達すると、前側栓体(5)の外周面が前記の突条(15)で押圧され、この突条(15)の両脇に軸方向の連通路が形成される。上記の後側栓体(7)と両中間栓体(6a・6b)がさらに前進すると、上記の第1収容室(8)内の空気はこの連通路を介して前記の液出口路(12)から注射針(20)内を経て外部へ排出され、図12(b)に示す投薬時の状態となる。その後は通常のシリンジを扱う場合と同様の手順で上記のプランジャ(19)を押圧することにより、上記の液体(11)に溶解、分散もしくは混合された薬剤(10)が注射針(20)の先端から送り出され、患者へ投与される。
【0077】
上記の第7実施形態では、上記の接続部(17)を上記の後側筒体部分(2b)に一体に形成した。しかし本発明では、例えば図13に示す第8実施形態のように、前側筒体部分(2a)に接続部(17)を一体に形成してもよい。
【0078】
即ちこの第8実施形態では、図13(a)に示すように、前側筒体部分(2a)の後端部に大径の接続部(17)が一体に形成してあり、この接続部(17)の内周面に、多数の環状突部(18)が形成してある。なお、この前側筒体部分(2a)は例えばポリプロピレン樹脂で形成され、後側筒体部分(2b)は例えば環状ポリオレフィン樹脂で形成されている。そして、この後側筒体部分(2b)の前端部を上記の接続部(17)内へ挿入することで、両筒体部分(2a・2b)が保密状に互いに接続され、後側栓体(7)にプランジャ(19)が連結されて、図13(b)に示す組付状態の2室型プレフィルドシリンジ(1)にされる。その他の構成は上記の第7実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0079】
上記の第7実施形態や第8実施形態では、前側筒体部分(2a)と後側筒体部分(2b)とのいずれか一方に接続部(17)を一体に形成して、この接続部(17)により両筒体部分(2a・2b)同士を互いに接続した。しかし本発明では、中間栓体(6)が第1中間栓体(6a)と第2中間栓体(6b)とを備える場合においても、例えば図14に示す第9実施形態のように、両筒体部分(2a・2b)とは別体の、筒状の接続部材(21)を用いて両筒体部分(2a・2b)を互いに接続してもよい。
【0080】
即ちこの第9実施形態では、図14(a)に示すように、上記の筒体(2)が上記の両筒体部分(2a・2b)とは別体に形成した筒状の接続部材(21)を備えている。上記の接続部材(21)の両端には、それぞれ大径の接続部(17)が形成されており、この接続部(17)の内周面に多数の環状突部(18)が形成してある。なお、この接続部材(21)は、例えばポリプロピレン樹脂で形成されており、これに対し、上記の両筒体部分(2a・2b)は、例えばそれぞれ環状ポリオレフィン樹脂で形成されている。
【0081】
上記の両筒体部分(2a・2b)は、上記の前側筒体部分(2a)の後端部を上記の接続部材(21)の前側の接続部(17)内へ挿入し、後側筒体部分(2b)の前端部を接続部材(21)の後側の接続部(17)内へ挿入することで、この接続部材(21)を介して保密状に互いに接続される。この接続部材(21)は、両筒体部分(2a・2b)を互いに接続する際にそれぞれの端部を接続部(17)内へ挿入して接続してもよく、或いは上記の薬剤(10)や液体(11)を収容する前に、いずれか一方の筒体部分の端部を予め一方の接続部(17)内へ挿入して接続しておいてもよい。
【0082】
上記の両筒体部分(2a・2b)が上記の接続部材(21)を介して互いに接続されたのち、後側栓体(7)にプランジャ(19)が連結されて、図14(b)に示す組付状態の2室型プレフィルドシリンジ(1)にされる。その他の構成は上記の第7実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0083】
図15は本発明の第10実施形態を示す。
この第10実施形態では、上記の第9実施形態と同様に、筒体(2)が、互いに別体に形成された前側筒体部分(2a)と後側筒体部分(2b)と接続部材(21)とを備えており、両筒体部分(2a・2b)はこの接続部材(21)で保密状に互いに接続してある。この両筒体部分(2a・2b)は、例えばそれぞれ環状ポリオレフィン樹脂で形成されており、接続部材(21)は例えばポリプロピレン樹脂で形成されている。
【0084】
上記の前側筒体部分(2a)内には前側栓体(5)が装着してあり、上記の接続部材(21)内に第1中間栓体(6a)が装着してある。そしてこの前側栓体(5)と第1中間栓体(6a)との間に第1収容室(8)が形成してある。この第1収容室(8)の内周面のうち、上記の前側筒体部分(2a)の後端寄り部に溝状のバイパス(16)が形成してある。このため、このバイパス(16)を備えた前側筒体部分(2a)は、構造の簡単な金型で容易に且つ安価に成型される。上記の接続部材(21)の両端にそれぞれ大径の接続部(17)が形成されていることや、この接続部材(21)と両筒体部分(2a・2b)との接続のタイミングなど、その他の構成は上記の第9実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0085】
上記の第10実施形態では、上記のバイパス(16)を前側筒体部分(2a)の後端寄り部に形成した。しかし本発明では、このバイパスを接続部材の内面の前端寄り部に形成してもよく、或いは、前側筒体部分の後端寄り部と接続部材の前端寄り部とに亘って形成してもよい。
【0086】
例えば図16に示す第11実施形態では、図16(a)に示すように、接続部材(21)を長めに形成して、両端部にそれぞれ大径の接続部(17)を形成してあり、内周面の前端寄り部に溝状のバイパス(16)を形成するとともに、このバイパス(16)よりも後方に、第1中間栓体(6a)を保密摺動可能に装着してある。そして前側の接続部(17)に前側筒体部分(2a)の後端部を挿入して接続することにより、前側筒体部分(2a)内に装着した前側栓体(5)と上記の第1中間栓体(6a)との間に第1収容室(8)が形成してある。
【0087】
上記の接続部材(21)の後側の接続部(17)には後側筒体部分(2b)の前端部が挿入され、これにより、その接続部材(21)を介して両筒体部分(2a・2b)が互いに接続される。そして、後側栓体(7)にプランジャ(19)を連結して、図16(b)に示す組付状態の2室型プレフィルドシリンジ(1)にされる。他の構成は上記の第10実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0088】
図17は本発明の第12実施形態を示す。
この第12実施形態では、上記の第10実施形態と同様、筒体(2)が、互いに別体に形成された前側筒体部分(2a)と後側筒体部分(2b)と接続部材(21)とを備えており、両筒体部分(2a・2b)はこの接続部材(21)で保密状に互いに接続してある。そして、この両筒体部分(2a・2b)は、例えばそれぞれ環状ポリオレフィン樹脂で形成されており、接続部材(21)は例えばポリプロピレン樹脂で形成されている。
【0089】
しかしこの第12実施形態では、上記の第10実施形態と異なり、上記の接続部材(21)内には第2中間栓体(6b)が装着してあり、第1中間栓体(6a)は上記の前側筒体部分(2a)内で前側栓体(5)の後方に装着してある。即ち、前側筒体部分(2a)内に前側栓体(5)と第1中間栓体(6a)とが前側から順に装着されて、この前側栓体(5)と第1中間栓体(6a)との間に第1収容室(8)が形成してある。そして、上記の第1収容室(8)の内周面に、上記の第1中間栓体(6a)による封止を解除するバイパス(16)が形成してある。
【0090】
一方、上記の後側筒体部分(2b)内には後側栓体(7)が装着してあり、この後側栓体(7)と上記の第2中間栓体(6b)との間に第2収容室(9)が形成してある。従って、上記の前側筒体部分(2a)は単体で一つのユニットを構成しており、後側筒体部分(2b)は上記の接続部材(21)を固定した状態で、別の一つのユニットを構成している。その他の構成は上記の第10実施形態と同様であり、同様に作用するので説明を省略する。
【0091】
上記の接続部材は、いずれも両端に接続部を形成した。しかし本発明では、接続部材の先端部と後端部のいずれか一方または両方を直筒状に形成し、この直筒状端部に対面する前側筒体部分の後端部や後側筒体部分の前端部に大径の接続部を形成して、この接続部内へ上記の接続部材の直筒状端部を挿入することで保密状に接続してもよい。
【0092】
上記の第7実施形態から第12実施形態では、いずれも第1収容室(8)の内周面にのみバイパス(16)を形成した。この場合のバイパス(16)の長さは、上記の第1中間栓体(6a)と第2中間栓体(6b)とを合わせた長さよりも長い寸法に形成される。
しかし本発明では、中間栓体(6)が第1中間栓体(6a)と第2中間栓体(6b)とを備える場合に、例えば図18と図19に示す第13実施形態のように、筒体(2)の内周面のうち上記の両中間栓体(6a・6b)間に、その第2中間栓体(6b)による封止を解除する第2バイパス(25)を形成してもよく、この場合には、上記のバイパス(16)の長さを、第1中間栓体(6a)よりは長いが、第1中間栓体(6a)と第2中間栓体(6b)とを合わせた長さよりは短くすることができる。
【0093】
即ちこの第13実施形態では、図18に示すように、上記の第11実施形態と同様、前側筒体部分(2a)と後側筒体部分(2b)とが接続部材(21)を介して互いに接続してあり、この接続部材(21)が筒体(2)の一部を構成している。
上記の接続部材(21)は、両端部にそれぞれ大径の接続部(17)が形成してあり、内周面の前端寄り部に溝状のバイパス(16)が形成され、このバイパス(16)よりも後方に、第1中間栓体(6a)が保密摺動可能に装着してある。上記のバイパス(16)の長さは、上記の第1中間栓体(6a)よりも僅かに長いが、第1中間栓体(6a)と後述の第2中間栓体(6b)とを合わせた長さよりは短い寸法に形成してある。そして、前側の接続部(17)に前側筒体部分(2a)の後端部を挿入して接続することにより、前側筒体部分(2a)内に装着した前側栓体(5)と上記の第1中間栓体(6a)との間に第1収容室(8)が形成してある。この第1収容室(8)内には、上記の各実施形態と同様、薬剤(10)が収容してある。
【0094】
一方、後側筒体部分(2b)内には、前側から順に第2中間栓体(6b)と後側栓体(7)とが装着してあり、この第2中間栓体(6b)と後側栓体(7)との間に第2収容室(9)が形成してある。この第2収容室(9)には、上記の薬剤(10)の溶解液や分散液等の液体(11)が収容される。さらにこの後側筒体部分(2b)の内周面のうち、上記の第2中間栓体(6b)よりも前側の先端寄り部に、第2のバイパス(25)が形成してある。この第2バイパス(25)の長さは、上記の第2中間栓体(6b)よりも僅かに長い寸法に形成してある。
【0095】
上記の後側筒体部分(2b)は、前端部が上記の接続部材(21)の後側の接続部(17)内へ挿入され、これにより、その接続部材(21)を介して両筒体部分(2a・2b)が互いに接続される。そして後側栓体(7)にプランジャ(19)を連結して、図18(b)に示す組付状態の2室型プレフィルドシリンジ(1)にされる。その他の構成は上記の第11実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0096】
次に、図19に基づいて、上記の薬剤を患者へ投与する手順について説明する。
上記のプランジャ(19)を操作して上記の後側栓体(7)を押圧すると、上記の第2収容室(9)内の液体(11)を介して上記の第2中間栓体(6b)が押圧され、さらに空気室(24)内の空気を介して上記の第1中間栓体(6a)が押圧されて、いずれも保密摺動しながら前進する。そして図19(a)に示すように、上記の第2中間栓体(6b)が上記の第2バイパス(25)を形成した位置に達すると、この第2中間栓体(6b)による封止が解除され、この第2バイパス(25)を介して上記の第2収容室(9)が上記の空気室(24)と連通する。
【0097】
この連通状態で、上記のプランジャ(19)を操作して上記の後側栓体(7)をさらに押圧すると、後側栓体(7)の前進により第2収容室(9)内の液体(11)が空気室(24)に流入する。そして、第2収容室(9)内の液体(11)が流出し終わると、上記の後側栓体(7)が第2中間栓体(6b)に当接した状態となる。そしてさらに後側栓体(7)をプランジャ(19)で押圧して前進させると、空気室(24)内の液体(11)と空気を介して第1中間栓体(6a)が前進し、この第1中間栓体(6a)が上記のバイパス(16)を形成した位置に達する。これにより、この第1中間栓体(6a)による封止も解除され、図19(b)に示すように、上記の空気室(24)と第1収容室(8)とがこのバイパス(16)を介して互いに連通した状態となる。
【0098】
さらに後側栓体(7)をプランジャ(19)で押圧して前進させると、この後側栓体(7)と第2中間栓体(6b)とは前進するが上記の第1中間栓体(6a)は前進せず、空気室(24)内の空気と液体(11)が上記のバイパス(16)を経て第1収容室(8)内へ流入する。そして、この空気室(24)内の空気と液体(11)が流出し終わると、図19(c)に示すように、上記の第2中間栓体(6b)が第1中間栓体(6a)に当接した状態となる。第1収容室(8)内の薬剤(10)はこの流入した液体(11)に溶解、分散もしくは混合される。その後は前記の第7実施形態と同様に操作され、上記の液体(11)に溶解、分散もしくは混合された薬剤(10)が患者へ投与される。
【0099】
上記の第12実施形態では、第1中間栓体(6a)がバイパス(16)に達する前に、第2中間栓体(6b)が第2バイパス(25)に達したが、本発明ではこれに代えて、第2中間栓体(6b)が第2バイパス(25)に達する前に、第1中間栓体(6a)がバイパス(16)に達するように構成してもよい。この場合は、まず第1中間栓体(6a)がバイパス(16)に達して、空気室(24)内の空気がこのバイパス(16)を経て第1収容室(8)内へ流入し、その後に第2中間栓体(6b)が第2バイパス(25)に達すると、第2収容室(9)内の液体(11)が、空気室(24)と第2バイパス(25)と上記のバイパス(16)とを順に経て第1収容室(8)内へ流入する。
【0100】
上記の各実施形態では、上記の前側筒体部分(2a)の先端に注射針取付部(3)を一体に設けた。しかし本発明では、例えば図20に示す変形例のように、注射針取付部(3)を備えた注射針装着部材(22)を前側筒体部分(2a)とは別体に形成して、この注射針装着部材(22)を前側筒体部分(2a)の先端部に固定してもよい。
【0101】
即ちこの変形例の注射針装着部材(22)は、先端に注射針取付部(3)が形成してあり、後部に大径の筒状装着部(23)が形成されている。そしてこの筒状装着部(23)を上記の前側筒体部分(2a)の先端部へ保密状に外嵌することで、この注射針装着部材(22)がその前側筒体部分(2a)に固定される。この変形例によれば前側筒体部分(2a)の前端部の形状を簡略にできるので好ましく、特に、上記の第3実施形態や第4実施形態、或いは第11実施形態のように、この前側筒体部分(2a)の内周面にバイパスを形成しない場合には、この前側筒体部分(2a)の全体を直筒状に形成でき、合成樹脂材料はもとより、ガラス材料でも容易に形成することができる利点がある。
【0102】
上記の各実施形態や変形例で説明した2室型プレフィルドシリンジは、本発明の技術的思想を具体化するために例示したものであり、各部材の形状や寸法、構造などをこれらの実施形態のものに限定するものではなく、本発明の特許請求の範囲内において種々の変更を加え得るものである。
【0103】
例えば、上記の各実施形態では、各筒体部分を環状ポリオレフィン樹脂やポリプロピレン樹脂で形成したが、本発明では他の合成樹脂材料で形成してもよく、ガラス材料など合成樹脂材料以外の任意の材料で形成することも可能である。
また上記の各実施形態では、周面に2本の環状リブを備えた栓体を用いたが、この栓体は3本以上の環状リブを備えたものであってもよく、リブ間に軸方向の突条を備えたものであってもよい。即ちこの各栓体は、特定の形状や構造、材質のものに限定されない。
【0104】
また、上記の各実施形態では、上記の接続部の内周面に多数の環状突部を形成して、この接続部内へ他の筒体部分の端部を挿入することで、筒体部分同士や筒体部分と接続部材とを保密状に接続した。しかし本発明に用いるこの接続部は、保密状に接続できる構造であればよく、例えば螺着構造など、他の接続構造を採用してもよい。例えば、一方の筒体部分の端部の外周面に雄ねじ部を形成し、他方の筒体部分の端部に大径の接続部を形成して、この接続部の内面に雌ねじ部を形成し、この雌ねじ部を上記の雄ねじ部に螺着して固定してもよい。この場合には、接続のために大きな力が必要とされないので、例えば投薬準備の際にも手作業で簡単に接続できて好ましい。
【0105】
さらに上記の各実施形態では、上記のバイパスとして、軸方向に長い溝を周方向に複数形成したが、本発明の上記のバイパスは他の形状であってもく、周方向に一か所以上形成してあればよい。
また上記の実施形態では、第1収容室に粉末薬剤を収容したが、本発明のこの第1収容室に収容される薬剤は、特定の成分や収容量、製造方法のものに限定されず、凍結乾燥材やマイクロカプセル、粒剤、凍結乾燥薬剤などの固形薬剤であってもよく、さらには液状の薬剤であってもよいことは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の2室型プレフィルドシリンジは、各栓体の装着が容易であるうえ、安価に実施することができ、しかも、第2収容室に収容した液体を蒸気で加熱滅菌できるものでありながら、第1収容室内で薬液を凍結乾燥することができ、また、筒体を合成樹脂材料で容易に形成できるので、特に凍結乾燥材を収容する2室型プレフィルドシリンジに好適であるが、他の薬剤を収容する2室型プレフィルドシリンジにも好適である。
【符号の説明】
【0107】
1…2室型プレフィルドシリンジ
2…筒体
2a…前側筒体部分
2b…後側筒体部分
3…注射針取付部
4…プランジャ挿入口
5…前側栓体
6…中間栓体
6a…第1中間栓体
6b…第2中間栓体
7…後側栓体
8…第1収容室
9…第2収容室
10…薬剤
12…液出口路
13…キャップ
14…フィルタ
16…バイパス
17…接続部
21…接続部材
22…注射針装着部材
25…第2バイパス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に注射針取付部(3)が設けられ後端にプランジャ挿入口(4)が開口されている筒体(2)を備えており、
この筒体(2)が互いに別体に形成された前側筒体部分(2a)と後側筒体部分(2b)とを備えるとともに、この両筒体部分(2a・2b)が保密状に互いに接続してあり、
上記の前側筒体部分(2a)内に前側栓体(5)が装着されて、この前側栓体(5)の後方に第1収容室(8)が形成され、上記の後側筒体部分(2b)内に後側栓体(7)が装着されて、この後側栓体(7)の前方に第2収容室(9)が形成され、
上記の前側栓体(5)と後側栓体(7)との間に、上記の両収容室(8・9)を互いに区画する中間栓体(6)が装着してあり、
上記の中間栓体(6)と前記の前側栓体(5)との間の第1収容室(8)の内周面に、上記の中間栓体(6)による封止を解除するバイパス(16)が形成してあることを特徴とする、2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項2】
上記の前側筒体部分(2a)の後端部と後側筒体部分(2b)の前端部とのいずれか一方に筒状の接続部(17)が一体に形成してあり、この接続部(17)を介して上記の両筒体部分(2a・2b)が互いに接続してある、請求項1に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項3】
上記の中間栓体(6)は、上記の後側筒体部分(2b)内に装着してある、請求項2に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項4】
上記のバイパス(16)が、上記の前側筒体部分(2a)の後端寄り部と後側筒体部分(2b)の前端寄り部との少なくともいずれか一方に形成してある、請求項3に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項5】
上記の中間栓体(6)は、上記の前側筒体部分(2a)内に装着された第1中間栓体(6a)と、上記の後側筒体部分(2b)内に装着された第2中間栓体(6b)とを備えており、
上記の第1収容室(8)は上記の前側栓体(5)と第1中間栓体(6a)との間に形成され、上記の第2収容室(9)は上記の第2中間栓体(6b)と後側栓体(7)との間に形成されており、
上記のバイパス(16)は少なくとも上記の第1中間栓体(6a)による封止を解除する、請求項1または2に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項6】
上記の筒体(2)の内周面のうち上記の両中間栓体(6a・6b)間に、その第2中間栓体(6b)による封止を解除する第2バイパス(25)が形成されている、請求項5に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項7】
上記の筒体(2)は上記の両筒体部分(2a・2b)とは別体に形成された筒状の接続部材(21)を備えており、この接続部材(21)を介して上記の両筒体部分(2a・2b)が互いに接続してある、請求項1に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項8】
上記の中間栓体(6)は、上記の前側筒体部分(2a)内に装着された第1中間栓体(6a)と、上記の接続部材(21)内と後側筒体部分(2b)内とのいずれかに装着された第2中間栓体(6b)とを備えており、
上記の第1収容室(8)は上記の前側栓体(5)と第1中間栓体(6a)との間に形成され、上記の第2収容室(9)は上記の第2中間栓体(6b)と後側栓体(7)との間に形成されており、
上記のバイパス(16)は少なくとも上記の第1中間栓体(6a)による封止を解除する、請求項7に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項9】
上記の筒体(2)の内周面のうち上記の両中間栓体(6a・6b)間に、その第2中間栓体(6b)による封止を解除する第2バイパス(25)が形成されている、請求項8に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項10】
上記の中間栓体(6)が上記の接続部材(21)内に装着してある、請求項7に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項11】
上記の中間栓体(6)は、上記の接続部材(21)内に装着された第1中間栓体(6a)と、上記の後側筒体部分(2b)内に装着された第2中間栓体(6b)とを備えており、
上記の第1収容室(8)は上記の前側栓体(5)と第1中間栓体(6a)との間に形成され、上記の第2収容室(9)は上記の第2中間栓体(6b)と後側栓体(7)との間に形成されており、
上記のバイパス(16)は少なくとも上記の第1中間栓体(6a)による封止を解除する、請求項7に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項12】
上記の筒体(2)の内周面のうち上記の両中間栓体(6a・6b)間に、その第2中間栓体(6b)による封止を解除する第2バイパス(25)が形成されている、請求項11に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項13】
上記のバイパス(16)が、上記の前側筒体部分(2a)の後端寄り部と上記の接続部材(21)の内周面との少なくともいずれかに形成してある、請求項10から12のいずれか1項に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項14】
上記の中間栓体(6)が上記の後側筒体部分(2b)内に装着してある、請求項7に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項15】
上記のバイパス(16)が、上記の前側筒体部分(2a)の後端寄り部と後側筒体部分(2b)の前端寄り部と上記の接続部材(21)の内周面との少なくともいずれかに形成してある、請求項14に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項16】
上記の注射針取付部(3)が上記の前側筒体部分(2a)の先端部に一体に形成してある、請求項1から15のいずれか1項に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項17】
上記の前側筒体部分(2a)の先端部に注射針装着部材(22)が外嵌固定してあり、この注射針装着部材(22)の先端に上記の注射針取付部(3)が形成してある、請求項1から15のいずれか1項に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項18】
上記の前側筒体部分(2a)と後側筒体部分(2b)との少なくともいずれか一方が、環状ポリオレフィン樹脂で形成してある、請求項1から17のいずれか1項に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項19】
上記の注射針取付部(3)へ装着したキャップ(13)に、空気の流通は許容するが雑菌などの異物の通過は阻止するフィルタ(14)が付設してあり、上記の注射針取付部(3)に形成した液出口路(12)がこのフィルタ(14)により封鎖してある、請求項1から18のいずれか1項に記載の2室型プレフィルドシリンジ。
【請求項20】
上記の第1収容室(8)に収容した薬剤(10)が凍結乾燥されている、請求項1から19のいずれか1項に記載の2室型プレフィルドシリンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−245284(P2011−245284A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99308(P2011−99308)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(500232123)大和特殊硝子株式会社 (6)
【出願人】(000206956)大塚製薬株式会社 (230)
【Fターム(参考)】