説明

2層フレキシブル銅張積層基材及びその製造方法

【課題】酸性銅めっき浴組成物を用いて、樹脂フィルム面に銅厚付けめっきを施し、平滑で光沢外観を有し、耐剥離性に優れる2層フレキシブル銅張積層基材(2層FCCL)及びこのような2層FCCLを、酸性銅めっき浴組成物を用い、かつ電気めっき工程が1工程の湿式めっき法による製造方法を提供することである。
【解決手段】酸性銅めっき浴組成物とシード層なる導電性金属被覆樹脂フィルムとを用いて、湿式めっき法による2層FCCLの製造方法であって、親水化表面改質を施した樹脂フィルム面に、無電解ニッケルめっきシード層を形成させる工程と、この酸性銅めっき浴組成物中で、1次銅めっきを介さずに湿式電気めっきを施し、シード層上に銅導電層を厚付けめっきさせる工程とを含む2層フレキシブル銅張積層基材の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2層フレキシブル銅張積層基材及びその製造方法に関し、より詳細には、酸性銅めっき浴組成物を用いて、樹脂フィルム面に銅を厚付けめっきさせて平滑で光沢外観を有し、しかも、耐剥離性に優れ、かつ、ファインパターン化されやすい2層フレキシブル銅張積層基材(2層FCCL)に関する。
【0002】
また、本発明は、このような2層FCCLを、酸性銅めっき浴組成物を用い、かつ電気めっき工程が、1工程の湿式めっき法である2層フレキシブル銅張積層基材の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
近年、携帯電話、パソコン、ビデオ、ゲーム機等の電子機器は、使用部品の高密度化及び小型化が進み、それらを実装させるプリント基板等においても、実装させる回路も一層の高密度化が求められ、その基板の少なくとも片面もしくは多層基板の層間接続に使用されるスルーホールやブライントビアホールも、更に小径化、高アスペクト化の傾向にあるのが実情である。
【0004】
また、これらの実装回路は、従来から積層板に設けるブラインドビアホールやスルーホール等の微小孔中に析出させる導電性金属によって各回路層間の接続が行われ、また、そのブライントビアホールには、通常、ブライントビアホールの内側面及び底面に導電性金属被膜を形成させるブライントビアホールめっき法等によって各層間の接続が行われる。一方、スルーホールについても、通常、スルーホールの内側面に均一に導電性金属被膜を形成させるスルーホールめっき法により、基板の各層間の接続が行われるのが一般的である。
【0005】
このような基板に係わって、ポリイミド樹脂フィルムは、例えば、プリント配線板(PWB)、フレキシブルプリント配線板(FPC)、テープ自動ボンディング用(TAB)テープ、チップオンフィルム(COF)テープ等の電子部品用絶縁基板材として広く用いられている。また、このようなPWB、FPC、TABテープ、COFテープは、ポリイミド樹脂フィルムの少なくとも片面に、金属導体層として、主に銅を被覆させた金属被覆ポリイミドフィルム基材が用いられている。
【0006】
また、このような金属被覆ポリイミドフィルム基材を加工(叉は製造)するに、従来から、例えば、1)接着剤を介してポリイミドフィルムと銅箔とを接合させて得られる3層銅ポリイミド基材と、2)ポリイミドフィルムに直接、銅層を形成させてえられる2層銅ポリイミド基材とがある。また、その後者の2層銅ポリイミド基材[=2層フレキシブル銅張積層板(Flexible Copper Clad Laminate;2層FCCL)]には、銅箔にポリイミドを成膜させるキャスティング法と、銅箔とポリイミドフィルムを熱可塑性ポリイミドで熱圧着させるラミネート法と、スパッタリングでシード層を形成後、電気めっきにより導体層を形成させるスパッタ/めっき法(メタライズ法)とがあって、それぞれ対銅密着力、寸法安定性、ファインパターン等の観点で一長一短がある。その中でも特にファインパターン化に有利とされているのがスパッタ/めっき法(メタライズ法)による2層FCCLであると言われている。
【0007】
そこで、例えば、特許文献1には、携帯電子機器の小型化及び薄型化にともない、当初より小さいTABテープやCOFテープに対しても、より小型化及び薄型化、すなわち、より高密度化させて、配線ピッチが一層狭まる技術傾向に対処するために、導電化処理されたポリイミドフィルム上に0.5〜2μm範囲の無光沢銅めっきを施した後、銅めっき層の厚さが20μm以下になるように光沢銅めっきを施した2層めっき基材(叉は基板)が記載されている。
【0008】
このように銅層厚が薄くできて、かつ、その厚さが自在にコントロールできるなどに着目されている2層めっき基材は、屈曲性を有し、厚さが10μm以下の銅層とポリイミドフィルムとの接合界面が平坦であることから、ファインパターンの形成に適している基材とも言われている。ところが、近年に至っては、更なる微細なファインパターン化が要求されることから、このような2層めっき基板を用いているPWB、FPC、TABテープ、C0Fテープ等の電子部品を製造する場合、特に露光ムラやエッチングムラを起こす原因となるため、その2層めっき基板の表面は、より平滑であることが求められている。
【0009】
また、既に上記するファインパターン化に有利とされるスパッタ/めっき法(メタライズ法)は、通常、(1)前処理として、ポリイミド樹脂フィルム表面にプラズマ処理をし、真空下でのスパッタリングによる金属化処理等から装置が大がかりになってしまう。また、(2)プラズマ処理、スパッタリング処理等の乾式処理後に、めっきによる湿式処理を行うために、製造プロセスの連続化が困難で、生産性が低くコスト高になる傾向にある。また、(3)電気銅めっき後の膨れや熱処理(ベーキングとも称す)による膨れが発生しやすく、「ポリイミド−無電解ニッケルめっき」間、「無電解ニッケルめっき−電気銅めっき」間の密着性が部分的に低下する傾向にある。
【0010】
そこで、特許文献2には、これらの問題に対処するために、特にプラズマ処理やスパッタリング処理をすることなく、湿式処理を主体のプロセスで、連続処理化が容易で、絶縁抵抗の劣化やマイグレーションを促進させることなく、めっき析出安定性がよく、更にポリイミド樹脂フィルムと金属との平滑性及び密着性をポリイミド樹脂の種類によらず確保できるポリイミド樹脂材の表面金属化方法が提案されている。
【0011】
すなわち、その表面金属化方法とは、ポリイミド樹脂材の前処理としてカルボニル基を分子内に有する、特にジメチルホルムアミドなどの非プロトン系極性溶剤を用いてのポリイミド樹脂材の表面処理工程と、表面酸化処理工程と、アルカリ性水溶液での処理工程を含み、無電解ニッケルめっき処理後の厚付け銅めっき処理は、アルカリ性無電解銅めっき処理叉はアルカリ性電気銅めっき処理を行って2層FCCLを得るポリイミド樹脂材の表面金属化方法である。
【0012】
また、特許文献3には、PWB、FPC、TAB及びCOFとして多用されているポリイミドフィルムの少なくとも片面を、酸素プラズマで表面改質させた後、Ni、Cr、Ni−Cr合金等をスパッタさせて導電性金属のシード層を形成させた上に、スパッタ銅層を施して1次銅めっきをさせ、次いで電気銅めっき法、若しくは無電解銅めっき法で銅厚付けさせてなる2層FCCLが、3層基板と同等以上の(400N/m以上)耐熱密着力を発揮し、また、その要因は、この酸素プラズマによる前処理によって、そのポリイミド樹脂表面に適度のラフネスさと化学的変質とが付与されていると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−23344号公報
【特許文献2】特開2007−262481号公報
【特許文献3】特開2008−78276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このような状況下に、本発明者らは、以前から前記特許文献1〜3を含めてこれらの技術分野に着目し、この分野に用いられる各種の基板面に酸性銅めっき処理を施してなす研究経緯下に、ブラインドビアホールやスルーホールの内部やコーナー部のめっき付き回り性、めっき面のレベリング性などのめっき外観にも優れた特性を発揮し、また下地不良にも対応する新規なめっき用レベリング剤を提案している。また、これらの成果に基づいて、このレベリング剤を一成分とする酸性銅めっき浴組成物を用いることで、スルーホールやブラインドビアホールなどの微小孔を有する基板、あるいは銅などの導電性金属被覆された樹脂フィルムに、高い信頼性で銅めっきを施せる基板の銅めっき方法として、既に特許出願(特願2006−243651号)している(特開2008−63624号公報参照)。
【0015】
すなわち、酸性銅めっき浴を用いることにより、スルーホールやブラインドビアホールなどの微小孔を有する基板、あるいは銅などの導電性金属を表面に被覆した樹脂フィルムに対し、従来品と比べて、より高い信頼性で銅めっき処理を施すことができたのである。
【0016】
そこで、本発明の目的は、近年に至って、各種の電子機器に係わって、使用部品の高密度化及び小型化が進み、それらを実装させるプリント基板等に設ける実装回路も一層の高密度化が求められ、更に小径化、高アスペクト化傾向にある状況下に、新規に開発した酸性銅めっき浴組成物を用いて、ポリイミドフィルムなどの樹脂フィルムに、1次銅めっきを介さずに、湿式厚付けめっきされた2層フレキシブル銅張積層基材(2層FCCL)が、そのめっき層が平滑で光沢外観を呈し、しかも、その銅めっき層が耐剥離性に優れ、かつ、ファインパターン化しやすい金属被覆樹脂フィルム基材を提供することである。
【0017】
また、本発明の他の目的は、このような2層FCCLを、この新規に開発した酸性銅めっき浴組成物を用いて、全プロセスがウエットプロセスで、しかも、その銅付け工程が1工程で厚付けめっきできる金属被覆樹脂フィルム基材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、めっき用レベリング剤である「ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイト」−「(メタ)アクリルアミド類」−「二酸化イオウ」との共重合体を1成分とする酸性銅めっき浴組成物中で、予め導電性Ni金属被膜シード層を形成させた樹脂フィルムに、1次銅めっきを介さずに、厚付け銅めっきさせたところ、その2層フレキシブル銅張積層板(2層FCCL)が、平滑な光沢外観を呈して、しかも、得られた銅めっき層の耐剥離性が格段に向上することを見出して、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明によれば、前処理として親水化改質された樹脂フィルム基板面に、予め無電解めっき法で、Ni又はその合金の被覆厚10〜300nm範囲にあるシード層が形成され、
そのシード層上に、酸性銅めっき浴組成物を用いて、ストライク銅めっきなる1次銅めっきを介さずに、銅めっき被覆厚0.05〜50μm範囲で厚付けめっきされていることを特徴とする2層フレキシブル銅張積層基材を提供する。
【0020】
また、本発明によれば、この被覆厚10〜300nm範囲のNi又はその合金被覆シード層が施されている樹脂フィルム基板及び用いた新規に開発した酸性銅めっき浴組成物と、得られる2層フレキシブル銅張積層基材(2層FCCL)の銅めっき層が平滑で、光沢外観で、耐剥離性なる作用効果に係って、
(1) 用いた樹脂フィルム基板が、シード層として無電解めっきの導電性金属のニッケル・シード層が施されたポリイミドフィルムである2層フレキシブル銅張積層基材を提供できる。
(2) 酸性銅めっき浴組成物が(A)銅イオン成分、(B)有機酸及び/叉は無機酸成分、(C)塩素イオン成分、(D)有機ポリマー成分、(E)ブライトナー成分、及び(F)めっき用レベリング剤としてのジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと(メタ)アクリルアミド類と二酸化イオウとの共重合体成分で構成されている2層フレキシブル銅張積層基材を提供できる。
【0021】
また、本発明によれば、上記する作用効果を発揮する2層フレキシブル銅張積層基材(2層FCCL)を、新規に開発した酸性銅めっき浴組成物を用いて、シード層形成と、そのシード層上に銅導電層を厚付けめっきさせる工程とからなる全工程が、ウエットプロセスで、しかも、全銅付け工程が一段工程であることを特徴とする2層フレキシブル銅張積層基材(2層FCCL)の製造方法を提供する。
【0022】
すなわち、
親水化表面改質を施した樹脂フィルム基板面に、無電解めっき法で、予めNi又はその合金などの導電性金属シード層を形成させる工程と、
前記酸性銅めっき浴組成物中で、ストライク銅めっきなる1次銅めっきを介さずに、一段工程で湿式電気めっきさせて、このシード層上に銅導電層を厚付けめっきさせる工程と、からなる2層フレキシブル銅張積層基材の製造方法である。
【0023】
また、このような2層フレキシブル銅張積層基材の製造方法に係わって、本発明では、
(1):シード層としての導電性金属が、Ni又はその合金の何れかである2層フレキシブル銅張積層基材の製造方法を提供することができる。
(2):用いた前記樹脂フィルム基板が、無電解ニッケルめっきさせたポリイミドフィルムである2層フレキシブル銅張積層基材の製造方法を提供することができる。
(3):用いた前記酸性銅めっき浴組成物が(A)銅イオン成分、(B)有機酸及び/叉は無機酸成分、(C)塩素イオン成分、(D)有機ポリマー成分、(E)ブライトナー成分、及び(F)めっき用レベリング剤としてのジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと(メタ)アクリルアミド類と二酸化イオウとの共重合体成分で構成されている2層フレキシブル銅張積層基材の製造方法を提供することができる。
(4)また、(D)有機ポリマー成分がポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロルニック型界面活性剤、テトロニック型界面活性剤、ポリエチレングリコール・グリセリルエーテル、ポリエチレングリコール・ジアルキルエーテルの群から選らばれる少なくとも1種である2層フレキシブル銅張積層基材の製造方法を提供することができる。
(5)また、(E)ブライトナー成分がスルホアルキルスルホン酸塩、有機ジスルフィド化合物及びジチオカルバミン酸誘導体から選ばれる少なくとも1種である2層フレキシブル銅張積層基材の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、導電性金属被覆された樹脂フィルムのシード層に、ストライク銅めっきなる1次銅めっきを介さずに、厚付けめっきなる2次銅めっきを施してなる2層フレキシブル銅張積層基材は、用いた酸性銅めっき浴組成物の特性が活かされて、厚付け銅めっき層が、平滑で、光沢外観を有し、耐剥離性に優れ、しかも、ファインパターン化されやすい2層フレキシブル銅張積層基材を提供することができた。
【0025】
また、本発明によれば、用いた酸性銅めっき浴組成物などの特性が活かされて、シード層形成、その銅導電層の厚付けめっきなどの全工程がウエット・プロセスで、しかも、全銅付け工程が1工程で、このような平滑、光沢外観、優れた耐剥離性を発揮し、その銅被覆面がファインパターン化されやすい2層フレキシブル銅張積層基材(2層FCCL)を、簡便な装置で、ライニングコストが低く、明らかに高信頼性で、かつ高生産性で製造できる2層FCCLの製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明における2層フレキシブル銅張積層基材及びその製造方法の実施形態について、更に詳細に説明する。
【0027】
<本発明に用いる酸性銅めっき浴組成物>
既に説明するように、本発明に用いる酸性銅めっき浴組成物は、(A)銅イオン成分、(B)有機酸及び/叉は無機酸成分、(C)塩素イオン成分、(D)有機ポリマー成分、(E)ブライトナー成分、及び(F)めっき用レベリング剤であるジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと(メタ)アクリルアミド類と二酸化イオウとの共重合体成分で構成されていることが特徴である。
【0028】
その(A)銅イオン成分としては、通常、酸性溶液において溶解する銅化合物であればよく、特に制限はない。本発明において、例えば、硫酸銅(5水和物が好ましい)、酸化銅、塩化銅、炭酸銅、ピロリン酸銅や、メタンスルホン酸銅、プロパンスルホン酸銅等のアルカンスルホン酸銅、プロパノールスルホン酸銅等のアルカノールスルホン酸銅、酢酸銅、クエン酸銅、酒石酸銅などの有機酸銅及びその塩などが挙げられる。これらの銅化合物の何れか1種の単独叉は何れか2種以上を組み合わせて適宜用いることができる。
【0029】
また、この(A)銅イオン成分の銅イオンの濃度は、酸性銅めっき浴組成物中において、好ましくは10〜75g/Lで、より好ましくは15〜65g/Lであることが好適である。特に、酸性銅めっき浴組成物がスルーホールめっき及び樹脂フィルムめっきに用いる場合は、銅イオンとして15〜30g/Lで、ブラインドビアホールめっきに用いる場合は、銅イオンとして25〜65g/Lの濃度であることが好適である。また、銅イオン源として硫酸銅5水和物を用いる場合、酸性銅めっき浴組成物中におけるその濃度は、好ましくは40〜300g/Lであることが好適である。また、スルーホール及び金属スパッタフィルムに用いる場合には、好ましくは60〜120g/Lで、ブラインドビアホールに用いる場合には、好ましくは100〜250g/Lであることが好適である。
【0030】
また、(B)有機酸及び/叉は無機酸成分としては、銅を溶解しうるものであれば特に制限はなく適宜好適に用いられる。本発明において、この有機酸叉は無機酸の好ましい具体例として、例えば、無機酸として硫酸を、また、有機酸としてメタンスルホン酸、プロパンスルホン酸等のアルカンスルホン酸類、プロパノールスルホン酸等のアルカノールスルホン酸類、クエン酸、酒石酸、ギ酸等の有機酸類などが挙げられる。これらの有機酸や無機酸の何れか1種の単独叉は何れか2種以上を組み合わせて適宜好適に用いることができる。
【0031】
また、この(B)有機酸及び/叉は無機酸成分の濃度は、酸性銅めっき浴組成物中において、好ましくは30〜300g/Lで、より好ましくは50〜250g/Lであることが好適である。特に、スルーホールめっき及び樹脂フィルムめっきに使用する場合は、150〜250g/Lで、ブラインドビアホールめっきに使用する場合は、50〜150g/Lであることが好適である。また、この酸成分が硫酸である場合、酸性銅めっき浴組成物中の濃度は、好ましくは30〜300g/Lであることが好適である。また、スルーホール及び金属スパッタフィルム用としては、好ましくは150〜250g/Lで、ブラインドビアホールとしては、好ましくは50〜150g/Lであるのが好適である。
【0032】
また、本発明に用いる酸性銅めっき浴組成物には、(C)塩素イオン成分として、その濃度が塩素イオンとして20〜100mg/Lで含有していることが好ましく、特に30〜70mg/Lで含有させることが好適である。
【0033】
また、この(D)有機ポリマー成分は、めっき液の濡れ性を向上させる湿潤剤として作用するものであり、本発明においては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プルロニック型界面活性剤、テトロニック型界面活性剤、ポリエチレングリコール・グリセリルエーテル及びポリエチレングリコール・ジアルキルエーテルなどを適宜好適に挙げることができる。ここで、ポリエチレングリコールとしては、オキシエチレン重合度が10〜500の範囲、ポリプロピレングリコールとしては、オキシプロピレン重合度が1〜20の範囲にあるものが適宜好適に用いられる。
【0034】
また、プルロニック型界面活性剤としては、例えば一般式(I)
【0035】
【化1】


[式中、aおよびcは、それぞれ1〜30の数、bは1〜100の数を示す]
で表される化合物を、テトロニック型界面活性剤としては、例えば一般式(VII)
【0036】
【化2】


[式中、dは1〜200の数、eは1〜40の数を示す]
で表される化合物を挙げることができる。
【0037】
さらに、ポリエチレングリコール・グリセリルエーテルとしては、例えば一般式(VIII)
【化3】


[式中、f、gおよびhは、それぞれ1〜200の数を示す]
で表される化合物を挙げることができ、ポリエチレングリコール・ジアルキルエーテルとしては、例えば一般式(IX)
【0038】
【化4】


[式中、RおよびRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜5のアルキル基、iは2〜200の数を示す]
で表される化合物を挙げることができる。
【0039】
また、本発明において、(D)有機ポリマー成分として、これらのポリマー成分の何れか1種単独で叉は何れか2種以上を組み合わせて適宜好適に用いることができ、また、これら(D)有機ポリマー成分の濃度は、酸性銅めっき浴組成物中において、好ましくは100〜20000mg/Lでよく、特に1000〜10000mg/Lの範囲にあることが好適である。
【0040】
また、この(E)ブライトナー成分は、めっき層の結晶配列を均一化する作用を有している。本発明においては、例えば、メルカプトアルキルスルホン酸塩、有機ジスルフィド化合物及びジチオカルバミン酸誘導体などを挙げることができる。
【0041】
ここで、メルカプトアルキルスルホン酸塩としては、例えば一般式(X)
【化5】


[式中、Lは炭素数1〜18の飽和または不飽和のアルキレン基、Mはアルカリ金属を示す]
で表される化合物を挙げることができる。
【0042】
また、有機ジスルフィド化合物としては、例えば一般式(XI)
【化6】


[式中、LおよびLは、それぞれ独立に炭素数1〜18の飽和叉は不飽和のアルキレン基、XおよびXは、それぞれ独立に硫酸塩基またはリン酸塩基を示す]
で表される化合物を挙げることができる。
【0043】
また、ジチオカルバミン酸誘導体としては、例えば一般式(XII)
【化7】


[式中、RおよびR10は、それぞれ独立に水素原子叉は炭素数1〜3のアルキル基、Lは炭素数3〜6のアルキレン基、Xは硫酸塩基叉はリン酸塩基を示す]
で表される化合物を挙げることができる。
【0044】
本発明においては、これらの(E)ブライトナー成分の何れかの1種単独で叉は何れか2種以上を組み合わせて適宜好適に用いることができる。また、この(E)ブライトナー成分の濃度は、酸性銅めっき浴組成物中において、好ましくは0.02〜200mg/Lで、より好ましくは0.2〜5.0mg/Lの範囲にあることが好適である。
【0045】
また、この(F)めっき用レベリング剤は、一般式(XIII)
【化8】


[式中、R、Rは、それぞれ独立にメチル基、エチル基叉はヒドロキシエチル基で、R、Rが共にヒドロキシル基ではなく、Rはメチル基またはエチル基である]
で表される構造単位を有するジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと、一般式(XIV)
【0046】
【化9】


[式中、Rは水素原子またはメチル基であり、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、もしくは水酸基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基、または一緒になって環内にエーテル結合を含んでもよい炭素数2〜7のアルキレン基である]
で表わされる構造単位を有する(メタ)アクリルアミド類と、
一般式(XV)
【0047】
【化10】


で表される構造単位を有する二酸化イオウとの共重合体である。
【0048】
これらの共重合体として、本発明において、例えば、ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトとしては、ジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイト、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイト、ジアリルジエチルアンモニウムメチルサルフェイト、ジアリル(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルサルフェイト、ジアリルエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェイト、ジアリルジメチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリルジエチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリル(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリルエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムエチルサルフェイトを適宜好適に挙げることができる。なお、この場合、ヒドロキシエチルは、好ましくは2−ヒドロキシエチルである。
【0049】
また、本発明において、
(1)これらの共重合体において、反応に供せられる(メタ)アクリルアミド類としては、Rが水素原子のときはアクリルアミド類となり、一方、Rがメチル基のときは、メタクリルアミド類となる。
(2)またR、Rは、それぞれ独立に、水素原子、若しくは水酸基を有しても良い炭素数1〜4のアルキル基であるか、または一緒になってエーテル結合を含んでも良い炭素数2〜7のアルキレン基である。
(3)またR、Rがそれぞれ独立に、水素原子、若しくは水酸基を有しても良い炭素数1〜4のアルキル基の場合、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数2〜3の2−ヒドロキシアルキル基であることが好適である。
【0050】
そこで、(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドなどを挙げることができる。
【0051】
また、R、Rが一緒になってエーテル結合を含んでも良い炭素数2〜7のアルキレン基の場合、(メタ)アクリルアミドのアミノ基部分がモルフォリノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基となることが好ましい。
【0052】
この場合、(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、アクロイルモルフォリン、アクロイルピペリジン、アクロイルピロリジン、メタクロイルモルフォリン、メタクロイルピペリジン、メタクロイルピロリジンなどを挙げることができる。
【0053】
また、本発明におけるこれらの共重合体は、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイト系共重合体を例にすると、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとアクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−メチルアクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−エチルアクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN,N−ジメチルアクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−メチルーN−エチルアクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN,N−ジエチルアクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−メチル−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−メチル−(2−ヒドロキプロピル)アクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−エチル−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−エチル−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとアクロイルモルフォリンと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとアクロイルピペリジンと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとアクロイルピロリジンと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとメタクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−メチルメタクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−エチルメタクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN,N−ジメチルメタクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−メチルーN−エチルメタクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN,N−ジエチルメタクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−メチル−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−メチル−(2−ヒドロキプロピル)メタクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−エチル−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとN−エチル−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとメタクロイルモルフォリンと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとメタクロイルピペリジンと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトとメタクロイルピロリジンと二酸化イオウとの共重合体などを挙げることができる。
【0054】
また、その他にも前記例示したジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイト系共重合体において、モノマーのジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイトの換りに、ジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイト、ジアリルジエチルアンモニウムメチルサルフェイト、ジアリル(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルサルフェイト、ジアリルエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェイト、ジアリルジメチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリルジエチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリル(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリルエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムエチルサルフェイトとした共重合体なども、併せて、挙げることができる。
【0055】
これらの共重合体においては、ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイト/(メタ)アクリルアミド類/二酸化イオウのモノマーモル比は、得られる共重合体の安定性の観点から、通常、1/(0.001〜100)/(0.001〜1)であり、好ましくは1/(0.005〜10)/(0.005〜1)、さらに好ましくは1/(0.01〜10)/(0.01〜1)、特に好ましくは1/(0.05〜5)/(0.05〜1)、最も好ましくは1/(0.08〜3)/(0.05〜1)である。
【0056】
本発明の共重合体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量で、通常300〜50,000、好ましくは500〜25,000、より好ましくは800〜10,000の範囲である。
【0057】
これらの共重合体の製造方法に特に制限はないが、例えば以下に示す方法により、所望の共重合体を効率よく製造することができる。
【0058】
すなわち、極性溶媒中において、一般式(XVI)
【化11】


[式中、R、R、Rは、それぞれ前記と同じである。]
で表されるジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと、一般式(XVII

【0059】
【化12】


[式中、R、R、Rは、それぞれ前記と同じである。]
で表される(メタ)アクリルアミド類と、二酸化イオウとを共重合させることにより、本発明で用いる共重合体が得られる。
【0060】
そこで、本発明において用いるジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトモノマーとしては、例えば、ジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイト、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイト、ジアリルジエチルアンモニウムメチルサルフェイト、ジアリル(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルサルフェイト、ジアリルエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェイト、ジアリルジメチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリルジエチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリル(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリルエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムエチルサルフェイトなどが挙げられ、適宜好適に用いられる。なお、これらのモノマーのヒドロキシエチル基として、好ましくは2−ヒドロキシエチルである。
【0061】
また、ここで用いるジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトのモノマーは、例えばジアリルアルキルアミンとジアルキル硫酸とのアルキル化反応等によって適宜製造することができる。
【0062】
すなわち、
(1) ジアリルジメチルアンモニウムメチルサルフェイト、ジアリルエチルメチルアンモニウムメチルサルフェイト、ジアリル(ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムメチルサルフェイトは、それぞれジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン、ジアリル(ヒドロキシエチル)アミンにジメチル硫酸を加えて反応させるメチル化反応により製造することができる。
(2) また、ジアリルジエチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイト、ジアリルエチル(ヒドロキシエチル)アンモニウムエチルサルフェイトは、それぞれ、ジアリルエチルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリル(ヒドロキシエチル)アミンに、ジエチル硫酸を加えて反応させるエチル化反応により製造することができる。
【0063】
さらに、モノマーとして用いる(メタ)アクリルアミド類に係わって、上記一般式(XVII)中、Rが水素原子のときはアクリルアミド類となり、一方、Rがメチル基のときは、メタクリルアミド類となる。また、これらR、Rは、それぞれ独立に、水素原子、若しくは水酸基を有しても良い炭素数1〜4のアルキル基であるか、または一緒になってエーテル結合を含んでも良い炭素数2〜7のアルキレン基である。R、Rが、それぞれ独立に、水素原子、若しくは水酸基を有しても良い炭素数1〜4のアルキル基の場合は、好ましくはR、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、炭素数2〜3の2−ヒドロキシアルキル基であることが好適である。
【0064】
この場合、(メタ)アクリルアミド類としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−メチル−N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−メチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−エチル−N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミドなどを挙げることができる。
【0065】
また、R、Rが一緒になってエーテル結合を含んでも良い炭素数2〜7のアルキレン基の場合、好ましくは(メタ)アクリルアミドのアミノ基部分がモルフォリノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基となることが好適である。この場合、例えば、(メタ)アクリルアミドとしては、アクロイルモルフォリン、アクロイルピペリジン、アクロイルピロリジン、メタクロイルモルフォリン、メタクロイルピペリジン、メタクロイルピロリジンなどを挙げることができる。
【0066】
そこで、これらの共重合体を製造する際に、用いられる極性溶媒としては、ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイト、(メタ)アクリルアミド類、また、二酸化イオウを溶解させる溶媒であるが、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどがあげられ、本発明においては、これらの溶媒の何れか単独叉は何れか2種以上を混合して適宜好適に用いることができる。
【0067】
また、これらの共重合体を製造するに、ラジカル共重合反応のために用いられる重合触媒としては、ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと(メタ)アクリルアミド類と二酸化イオウとを重合し得るものであれば特に制限はないが、第三−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドのような有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルのような脂肪族アゾ化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムのような無機過酸化物、硝酸アンモニウム、硝酸カリウムのような硝酸塩等が挙げられる。また、空気等の酸素を含む気体、放射線、紫外線、可視光線も挙げられる。
【0068】
また、これらの共重合体を製造するに、ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイト/(メタ)アクリルアミド類/二酸化イオウの仕込みモノマーモル比は、得られる共重合体の安定性の観点から、通常、1/(0.001〜100)/(0.001〜1)であり、好ましくは1/(0.005〜10)/(0.005〜1)で、さらに好ましくは1/(0.01〜10)/(0.01〜1)で、特に好ましくは1/(0.05〜5)/(0.05〜1)で、最も好ましくは1/(0.08〜3)/(0.05〜1)である。
【0069】
また、これらの共重合体を製造するに、通常、上記ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと(メタ)アクリルアミド類と二酸化イオウとを含む極性溶媒溶液に、上記重合触媒を加え、室温下または加熱条件下、適宜撹拌操作を加えることにより共重合が行われる。重合温度は−100℃〜80℃が好ましい。また、重合時間は1〜100時間が好ましい。また、反応終了した後、アルコールやアセトン等の共重合体を溶解させない溶媒を加えることにより、この共重合体を再沈させ、回収することもできる。
【0070】
以上から、このようにして得られた「ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイト」−「(メタ)アクリルアミド類」−「二酸化イオウ」との共重合体は、めっき用レベリング剤として、被めっき体表面の凸部に吸着して、凸部のめっき析出を抑制する作用に優れている。また、この共重合体は、本発明に用いる酸性銅めっき浴組成物の一成分として、ブラインドビアホールやスルーホールの内部やコーナー部のめっき付き回り性およびめっき面のレベリング性などのめっき外観のいずれにおいても優れており、かつ下地不良に対応できるなどの特性を発揮する。また、このような酸性銅めっき浴組成物を用いることにより、スルーホールやブラインドビアホールなどの微小孔を有する基板、あるいは銅などの金属を表面に被覆した樹脂フィルムに対し、高い信頼性で銅めっき処理を施すことができる。
【0071】
また、本発明において、酸性銅めっき浴組成物を構成している(F)めっき用レベリング剤成分の濃度は、酸性銅めっき浴組成物中、好ましくは10〜1200mg/Lで、特に好ましくは50〜500mg/Lの濃度範囲で、適宜好適に用いられる。
【0072】
<本発明に用いるポリイミド樹脂フィルム基板>
既に詳細に説明するように、携帯電話、パソコン、テレビ、ビデオ、音楽プレーヤー、デジタルカメラ、ゲーム機等の電子機器に係わって、その技術領域は、益々薄く、高密度化、小型化及び軽量化傾向にあって、また、これらの電子機器に使用されている各種部品も高密度化及び小型化の傾向にあるのが実情である。また、それらを実装させる基板材に係わって、ポリイミド樹脂フィルムが、例えば、プリント配線板(PWB)、フレキシブルプリント配線板(FPC)、テープ自動ボンディング用(TAB)テープ、チップオンフィルム(COF)テープ等の電子部品用絶縁基板材として広く用いられている。
【0073】
そこで、本発明でも使用するポリイミド樹脂フィルムは、通常、芳香族化合物が直接イミド結合で連結された芳香族ポリイミドで、そのイミド結合を介して芳香族同士の共役構造を有し、この強分子間力を持つイミド結合により、ポリマー中で最も高い熱的、機械的、化学的特性を有し、本発明おいては、後述する実施例に見られるように、東レ・デュポン社製の商品名:カプトン100−ENのポリイミド樹脂フィルムを用いた。
【0074】
<本発明による2層フレキシブル銅張積層基材とその製造方法>
そこで、本発明においては、ポリイミド樹脂フィルム材を用いて、2層フレキシブル銅張積層基材(2層FCCL)を、既に上記に説明した酸性銅めっき浴組成物を用いて、予めNi又はその合金などの導電性金属のシード層形成を含めて、そのシード層上に銅導電層を厚付けめっき処理する全工程を、ウエット・プロセスで、しかも、従来からの銅付けめっき法とは異なり、その全銅付け工程が1工程であることを特徴とする2層フレキシブル銅張積層基材(2層FCCL)の製造方法について、以下に説明する。
【0075】
本発明によれば、
(1):フレキシブルで、耐熱性で、耐薬品性に優れるポリイミド樹脂フィルム面を表面改質させて親水性化させる前処理工程を施す。その表面改質法は、従来からの真空下での常圧プラズマ処理、コロナ処理、イオン照射処理とは異なって、アルカリ湿式改質法でその表面にポリアミック酸改質層を形成させる。次いで、パラジウム(Pd)系触媒で、その表面にPdイオンを吸着させた後、還元処理させて、[吸着Pdイオン]→[還元金属化]させてなる親水性の表面改質層とする。
【0076】
すなわち、このアルカリ湿式改質法による一連の変異挙動は、通常、ポリイミド樹脂はアルカリ性水溶液で処理すると、その表面の一部が加水分解を受けてイミド環の一部が開裂し、アミド基とカルボキシル基を生成する。この生成されたカルボキシル基はカチオンイオン交換をしやすいので金属イオンを吸着させることができる。
【0077】
(2):このように親水化表面改質された樹脂フィルム面に、無電解めっき法で、予めNi又はその合金などの導電性金属のめっきを施して、導電性金属のシード層を形成させる。Niの合金としては、Ni−P、Ni−B、Ni−Cuなどの合金が挙げられる。通常、Ni-Crなどをスパッタリング法で、40〜3000Å層厚のシード層を形成させるのが一般的であるが、本発明においては、荏原ユージライト(株)製のFCCL無電解めっき工法で、10〜300nmの層厚の無電解Ni又はその合金めっきのシード層を形成させた。
【0078】
(3):次いで、本発明による酸性銅めっき浴組成物中で、ストライク銅めっきなる1次
銅めっきを介さずに、湿式電気めっきさせて、この樹脂フィルムのシード層上に、一段工
程で自在に層厚をコントロールさせながら銅導電層を厚付けめっきさせて、本発明による
銅付け被覆厚0.05〜50μm範囲にある2層フレキシブル銅張積層基材を製造させた。
【0079】
また、表面に金属被膜形成した樹脂フィルム材に、銅めっき処理を施す方法において、例えば、厚さ12〜50μm程度のポリイミドやポリエステルなどの樹脂フィルム表面に、従来法では、真空蒸着、スパッタリング等により、4〜3000nm程度の厚さの銅、ニッケル、クロム等の金属、「ニッケル−クロム」合金などを乾式被膜させてなるシード層であるのに対して、本発明においては、上記する如くのFCCL無電解ニッケルめっき工法による湿式無電解ニッケルめっき処理して、10〜300nm程度の導電性のニッケルシード層を形成させればよい。
【0080】
このようにして、表面に金属被膜が形成された樹脂フィルムを、本発明における酸性銅めっき浴組成物で銅めっきを行う条件は、通常の硫酸銅めっきの条件でよい。すなわち、液温23〜27℃程度、平均陰極電流密度1〜3A/dm程度で0.1〜250分間程度めっきを行えばよい。この際のめっき厚さは、0.05〜50μm程度である。また、一般的にはエアレーション等による液攪拌下に銅めっきを行うことが好ましい。
【0081】
また、従来法の特にメタライズ法では、真空蒸着、スパッタリング等の工程で、極く薄い金属で被覆した樹脂フィルムを、しかも、従来の酸性銅めっき浴でめっきした場合、めっき厚が10μmより薄い場合は、添加剤のレベリング効果が発揮されず、表面に凸凹が多い粗い表面状態となり光沢外観が得られないという問題があったが、本発明において、用いた「酸性銅めっき浴組成物」では、このような薄いめっき厚(約3〜5μm厚さ)でも、表面が非常に細かい結晶状態となり、高い信頼性で平滑な光沢銅めっき表面を得ることができる。また、めっき厚をこれより厚くしても、良好な光沢外観が得られることはいうまでもない。
【0082】
以上から、本発明による2層フレキシブル銅張積層基材(2層FCCL)の製造方法は、装置が高価で、ランニングコストが高く、また、真空工程を要して、低生産性である従来法や、特にメタライズ法(スパッタ/めっき法)による2層FCCLの製造方法に比べると、明らかに安価でインライン化が可能な無電解Niめっきによるシード層形成を含め、全工程が湿式法(オールウエットプロセス)で、しかも、得られる2層フレキシブル銅張積層基材がファインパターン化に適宜対応できることを特徴とする2層FCCLの製造方法と言える。
【0083】
また、既に説明済みのように、本発明に用いた(A)銅イオン成分、(B)有機酸及び/叉は無機酸成分、(C)塩素イオン成分、(D)有機ポリマー成分、(E)ブライトナー成分、及び(F)めっき用レベリング剤としてのジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと(メタ)アクリルアミド類と二酸化イオウとの共重合体成分で構成された酸性銅めっき浴組成物が、本発明による2層フレキシブル銅張積層基材の製造用のめっき処理剤として、適宜好適に提供できたことも本発明の特徴である。
【0084】
さらには、このような酸性銅めっき浴組成物を、本発明による2層フレキシブル銅張積層基材の製造用めっき処理剤として用いることで、予め導電性金属被膜のシード層を形成させた樹脂フィルム面に、1次銅めっきを介さずに、厚付け銅めっきさせて製造される2層フレキシブル銅張積層基材(2層FCCL)が、平滑な光沢外観を呈して、しかも、後述する実施例からも明らかなように、得られた銅めっき層の耐剥離性を格段に向上させることも本発明の特徴である。
【実施例】
【0085】
以下に、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にいささかも限定されるものではない。
【0086】
実施例1
(1)本発明に用いる「酸性銅めっき浴組成物−1」の一成分となる(F)めっき用レベリング剤である[ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイト]と[アクリルアミド]と[二酸化イオウ]との三元共重合体成分を以下のようにして調製した。
【0087】
攪拌機、温度計、ジムロート式還流冷却管を備えた1リットルの4つ口丸底セパラブルフラスコ中にジアリルメチルアミン167.1g(1.5モル)を仕込み、攪拌しながら硫酸ジエチル232.5g(1.5モル)を20〜50℃に保ちながらゆっくり滴下し、50℃で24時間反応させた後、水212.9gを加えて、濃度65質量%の「ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトモノマー水溶液」を調製した。
【0088】
次いで、この65質量%のジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトモノマー(DAEMAESモノマーと略称)水溶液(モノマー含有量1.5モル)に、モノマー濃度を60質量%に調整するための水を加えた後、氷水で冷却・攪拌しながら、二酸化イオウを、DAEMAESモノマーに対し当モル、さらに、アクリルアミド13.3g(0.19モル)を加え溶解させた。次いで、得られたDAEMAESモノマーとアクリルアミドと二酸化イオウとの混合物を60℃に維持しながら、濃度28.5質量%の過硫酸アンモニウム(APS)水溶液71.3g(全モノマーに対して4.0質量%)を分割して加えて48時間、共重合反応させて[ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイト]:[アクリルアミド]:[二酸化イオウ]=8:1:8のモル比になるようにして、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトとアクリルアミドと二酸化イオウとの「三元共重合体−1」である(F)めっき用レベリング剤水溶液を得た。
【0089】
次いで、得られた溶液の一部をアセトンで再沈殿させ、得られた白色固体をろ別し、50℃で48時間真空乾燥した。得られた白色粉末状の三元共重合体のIRスペクトルから、1320cm−1と1130cm−1に−SO−に起因する吸収、1220cm−1に硫酸エステルに起因する吸収および1680cm−1にアミドの吸収帯が見られたことから、ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトとアクリルアミドと二酸化イオウとの三元共重合体(モル比8:1:8)であることを支持している。
【0090】
また、この三元共重合体の重量平均分子量(Mw)は、下記の方法による測定で1500であり、また、その重合収率は、下記の方法により、95.0%であった。この三元共重合体を、以下の実施例における酸性銅めっき浴組成物中のレベリング剤に供した。
【0091】
(2)酸性銅めっき浴組成物の組成
<酸性銅めっき浴組成物−1>
(A)銅イオン成分;硫酸銅5水和物 120g/L
(B)無機酸成分;硫酸 150g/L
(C)塩素イオン成分;塩素 50mg/L
(D)有機ポリマー成分;ポリエチレングリコール*1 2000mg/L
(E)ブライトナー成分;SPS*2 1mg/L
(F)めっき用レベリング剤成分;三元共重合体−1 500mg/L
[注]*1:HO−(CO)−H n=90
*2:NaOS−C−S−S−C−SONa
【0092】
(3)次いで、荏原ユージライト(株)製のFCCL無電解ニッケルめっき工法で、シード層としての無電解ニッケルめっき被覆させたポリイミドフィルム(東レ・デュポン製の商品名:カプトン100−EN)の樹脂フィルム材に、1次銅めっきを介さずに、この「酸性銅めっき浴組成物−1」を用いて、銅めっき被覆厚10μmの厚付けめっきを施した。
【0093】
なお、この湿式電解めっきのめっき条件は、25℃、平均陰極電流密度2A/dmで25分間、エアレーション攪拌下にて酸性銅めっきを行った。次いで、得られた2層フレキシブル銅張積層ポリイミドフィルム基材を目視観察したところ、そのフィルム面は、極めて平滑で、著しい光沢外観を呈していた。併せて、「Ni−Cu間の耐剥離性」及び「長期耐熱試験(90°ピール強度)」を測定・評価して、その結果を表1示した。
【0094】
本発明に係わって、測定、評価した各種の物性評価法、強度測定法について、以下にそれぞれ記載した。
【0095】
<Ni−Cu間の耐剥離性>
銅めっき被覆樹脂フィルム材を長さ10cm、幅1cmの供試片の樹脂フィルム側を火で数秒間火あぶると、樹脂フィルム−被覆金属間に剥離が生じる。その樹脂フィルムと被覆金属とを手で引き剥がすと、通常、フィルム上に金属は残らないが、両者間に剥離を生じるものは、フィルム上にシード層のNiが残るので、この状態変化の有無を目視判断する。
【0096】
<長期耐熱試験(90°ピール強度)>
<JIS C 6471>
2層FCCL樹脂フィルム材に対して10mm幅の切り込みを入れ、長期耐熱試験(150℃×168Hr)に曝した供試片を「JIS C 6471」に準拠させて、90°ピール強度N/mを測定する。なお、供試片とする樹脂フィルム材には東レ・デュポン(株)製のカプトン100−ENを用いた。
【0097】
その装置は、有効軽量範囲内のメモリで、その誤差が指示値の±1%であり、引き剥がす時の荷重が試験機の容量の15〜85%で、クロスヘッド速度を毎分約50mmに保てる引張り試験機および引き剥がし力を連続的に記録できる記録計とする。また、試料の銅箔除去面に対する銅箔の引き剥がし方向の角度を90±5°に保持するための機能を持つ指示具からなる。試料の導体幅を測定した後、引張り試験機に固定し、引張り方向と垂直方向に引き剥がし速さに同調してしゅう動することができる指示具を用いる。なお、表1に示す「平常状態(常態)とは、20〜30℃の常温・常圧空気中における測定値を示す。
【0098】
<共重合体の重量平均分子量(Mw)>
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、日立L−6000型高速液体クロマトグラフを使用し、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC法)によって測定した。
溶離液流路ポンプは日立L−6000、検出器はショーデックスRI−101示差屈折率検出器、カラムはショーデックスアサヒパックの水系ゲル濾過タイプのGS−220HQ(排除限界分子量3,000)とGS−620HQ(排除限界分子量200万)とを直列に接続したものを用いた。サンプルは溶離液で0.5g/100mlの濃度に調製し、20μlを用いた。溶離液には、0.4モル/リットルの塩化ナトリウム水溶液を使用した。
【0099】
カラム温度は30℃で、流速は1.0ml/分で実施した。標準物質として、分子量106、194、440、600、1470、4100、7100、10300、12600、23000などのポリエチレングリコールを用いて較正曲線を求め、その較正曲線を基に共重合体の重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0100】
<共重合体の重合収率>
GPC法により得られたピーク面積比により求めた。
【0101】
比較例1
実施例1における「酸性銅めっき浴組成物−1」の代わりに、下記に示す「硫酸銅めっき浴組成物H−1」を用いた以外は、実施例1と同様にして、めっきを行い、めっきされた基板について外観、「Ni−Cu間の耐剥離性」の各評価を行いその結果を表1に示す。
【0102】
<酸性銅めっき浴組成物H−1>
(A)硫酸銅5水和物 120g/L
(B)硫酸 150g/L
(C)塩素イオン 50mg/L
CU−BRITE TH−R−A*3 40ml/L
CU−BRITE TH−R−B*4 2.5ml/L
[注]*3:荏原ユージライト(株)製で、炭化水素系有機化合物および窒素系有機化合
物を主剤とする添加剤。
*4:*3と同じく荏原ユージライト(株)製で、硫黄系有機化合物を主剤とする
添加剤。
【0103】
比較例2
実施例1における「酸性銅めっき浴組成物−1」の代わりに、下記に示す「硫酸銅めっき浴組成物H−2」を用いた以外は、実施例1と同様にして、めっきを行い、めっきされた基板について外観、「Ni−Cu間の耐剥離性」の各評価を行いその結果を表1に示す。
【0104】
<酸性銅めっき浴組成物H−2>
(A)硫酸銅5水和物 120g/L
(B)硫酸 150g/L
(C)塩素イオン 50mg/L
CU−BRITE TH*5 5ml/L
[注]*5:*3と同じ炭化水素系有機化合物,窒素系有機化合物,硫黄系有機化合物を
主剤とする添加剤
【0105】
比較例3
実施例1における「酸性銅めっき浴組成物−1」の代わりに、下記に示す「硫酸銅めっき浴組成物H−3」を用いた以外は、実施例1と同様にして、めっきを行い、めっきされた基板について外観、「Ni−Cu間の耐剥離性」の各評価を行いその結果を表1に示す。
【0106】
<酸性銅めっき浴組成物H−3>
(A)硫酸銅5水和物 120g/L
(B)硫酸 150g/L
(C)塩素イオン 50mg/L
(D)ポリエチレングリコール*6 500mg/L
(E)SPS*7 1mg/L
(F)レベリング剤成分;二元共重合体−2*8 1000mg/L
[注]*6:*1と同じ
*7:*2と同じ
*8:ジアリルエチルメチルアンモニウムエチルサルフェイトとアクリルアミドと
二酸化イオウのモル比が1/1の交互共重合体
【0107】
実施例2
この実施例2は、延び率(JIS Z2241)を評価するテストピースの作製である。
実施例1で用いた「酸性銅めっき浴組成物−1」とほぼ同様な成分組成からなる「酸性銅めっき浴組成物−2」を用いて、SUS板上に実施例1と同様のめっきプロセスで、銅めっき処理をさせた時の延び率(JIS Z2241)を測定評価し、その結果を表2に示した。
【0108】
電流条件;2A/dmで60μmの製膜、温度;25℃
<酸性銅めっき浴組成物−2>
(A)銅イオン成分;硫酸銅5水和物 120g/L
(B)無機酸成分;硫酸 150g/L
(C)塩素イオン成分;塩素 50mg/L
(D)有機ポリマー成分;ポリエチレングリコール*1 2000mg/L
(E)ブライトナー成分;SPS*2 2mg/L
(F)めっき用レベリング剤成分;三元共重合体−1 100mg/L
【0109】
比較例4
実施例2における「酸性銅めっき浴組成物−2」に代えて、下記に示す「酸性銅めっき浴組成物H−4」を用いた以外は、実施例2と同様にして、「酸性銅めっき浴組成物H−4」の延び率(JIS Z2241)を測定評価し、その結果を表2に示した。
【0110】
<酸性銅めっき浴組成物H−4>
(A)硫酸銅5水和物 120g/L
(B)硫酸 150g/L
(C)塩素イオン 50mg/L
(D)ポリエチレングリコール*1 1000mg/L
以上から、表1及び表2から明らかなように、本発明による全工程がウエット・プロセスである製造方法によって得られた2層フレキシブル銅張積層基材は、そのウエット工程に併せて、明らかに用いた「酸性銅めっき浴組成物」の特性が活かされて、従来法では得られない「めっき銅層」が、外観光沢で、その銅層が著しく耐剥離性に優れていることが、よく理解される。
【0111】
また、特に「長期耐熱試験(90°ピール強度)」に係わって、本発明による2層フレキシブル銅張積層基材が、スパッタメッキ法又はメタライズ法による2層基板材と同等の400N/mの以上の耐熱強度(耐熱密着力)を発揮していることは、極めて有効利用の高い2層フレキシブル銅張積層基材と言える。
【0112】
【表1】

【0113】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0114】
以上から、本発明によれば、新規に開発した酸性銅めっき浴組成物を用いて、FCCL無電解めっき工法で導電性のNi又はその合金シード層を形成させた金属被覆樹脂フィルムに対し、1次銅めっきを介さずに、厚付け銅めっきさせてなる2層フレキシブル銅張積層基材(2層FCCL)は、平滑な光沢外観で、しかも、耐剥離性に優れている銅金属被覆樹脂フィルム基材を提供する。
【0115】
また、本発明によれば、シード層形成が無電解めっき工法と、用いる酸性銅めっき浴組成物の特性が活かされて、その導電性のNi又はその合金シード層上には、1次銅めっきを介さずに、湿式厚付け銅めっき層が、一段工程の湿式銅めっきで形成されることから、極めてファインパターン化しやすい2層フレキシブル銅張積層基材(2層FCCL)を提供する。
【0116】
また、本発明によれば、このような平滑、光沢外観、優れた耐剥離性を発揮し、その銅被覆面がファインパターン化されやすい2層フレキシブル銅張積層基材(2層FCCL)を、用いた酸性銅めっき浴組成物などの特性が活かされて、シード層形成、その銅導電層の厚付けめっきなどの全工程がウエット・プロセスで、しかも、全銅付け工程が一段工程であることから、簡便な装置で、ランニングコストが低く、明らかに高信頼性で、かつ高生産性で製造できる2層FCCLの製造方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水化表面改質された樹脂フィルム基板に、予め無電解めっき法で形成された、被覆厚10〜300nm範囲にあるNi又はその合金の導電性金属シード層の上に、酸性銅めっき浴組成物を用いて、ストライク銅めっきなる1次銅めっきを介さずに、銅めっきが0.05〜50μm範囲の被覆厚で厚付けめっきされていることを特徴とする2層フレキシブル銅張積層基材。
【請求項2】
前記樹脂フィルム基板が、無電解めっき法で、予め導電性金属のニッケル・シード層が施されているポリイミドフィルムである請求項1に記載の2層フレキシブル銅張積層基材。
【請求項3】
前記酸性銅めっき浴組成物が(A)銅イオン成分、(B)有機酸及び/叉は無機酸成分、(C)塩素イオン成分、(D)有機ポリマー成分、(E)ブライトナー成分、及び(F)めっき用レベリング剤としてのジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと(メタ)アクリルアミド類と二酸化イオウとの共重合体成分で構成されてなる請求項1叉は2に記載の2層フレキシブル銅張積層基材。
【請求項4】
酸性銅めっき浴組成物とシード層として導電性金属を被覆させた樹脂フィルムとを用いて、湿式厚付けめっきさせる2層フレキシブル銅張積層基材(2層FCCL)の製造方法であって、
親水化表面改質を施した樹脂フィルム面に、無電解めっき法で導電性金属めっきシード層を被覆厚10〜300nm範囲で形成させる工程と、
前記酸性銅めっき浴組成物中で、ストライク銅めっきなる1次銅めっきを介さずに、湿式電気めっき処理して、前記シード層上に銅導電層を被覆厚0.05〜50μm範囲で厚付けめっきさせる工程と、
を含むことを特徴とする2層フレキシブル銅張積層基材の製造方法。
【請求項5】
シード層として前記導電性金属が、Ni又はその合金の何れかである請求項4に記載の2層フレキシブル銅張積層基材の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂フィルムが、無電解めっき法で、予め導電性金属のニッケル・シード層が施されたポリイミドフィルムである請求項4叉は5に記載の2層フレキシブル銅張積層基材の製造方法。
【請求項7】
前記酸性銅めっき浴組成物が(A)銅イオン成分、(B)有機酸及び/叉は無機酸成分、(C)塩素イオン成分、(D)有機ポリマー成分、(E)ブライトナー成分、及び(F)めっき用レベリング剤としてのジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイトと(メタ)アクリルアミド類と二酸化イオウとの共重合体成分で構成されてなる請求項4〜6の何れか1項に記載の2層フレキシブル銅張積層基材の製造方法。
【請求項8】
前記(D)有機ポリマー成分がポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロルニック型界面活性剤、テトロニック型界面活性剤、ポリエチレングリコール・グリセリルエーテル、ポリエチレングリコール・ジアルキルエーテルの群から選らばれる少なくとも1種である請求項7に記載の2層フレキシブル銅張積層基材の製造方法。
【請求項9】
前記(E)ブライトナー成分がスルホアルキルスルホン酸塩、有機ジスルフィド化合物及びジチオカルバミン酸誘導体から選ばれる少なくとも1種である請求項7叉は8に記載の2層フレキシブル銅張積層基材の製造方法。

【公開番号】特開2010−159478(P2010−159478A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22636(P2009−22636)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000120386)荏原ユージライト株式会社 (48)
【Fターム(参考)】