説明

2工程ミニエマルジョン法

本発明は、ナノ粒子を製造する方法および、前記方法により得ることができるナノ粒子に関する。本発明は、さらに、前記ナノ粒子を含む医薬組成物ならびに、医薬が1つまたはそれ以上の生理的バリアを横断することを要する疾患および状態の治療のための前記ナノ粒子の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子を製造する方法および、前記方法により得ることができるナノ粒子に関する。本発明は、さらに、前記ナノ粒子を含む医薬組成物ならびに、医薬が1つまたはそれ以上の生理的バリアを横断することを要する疾患および状態の治療のための前記ナノ粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
I.生物学的バリア
多くの薬剤が、bbbなどの生物学的バリアを横断することができる一方で、他の薬剤は、このようなバリアを効率的に通過しないか、または全く通過せず、そして、標的組織に直接投与された場合にのみ有効である。すなわち、多くの潜在的に効能のある薬剤が、bbbなどの生物学的バリアに対するその通過不能のために、臨床上有用でない。
前記生物学的バリアを経る薬剤浸透を増すために、多くのアプローチが、先行技術文献に記載されている。
【0003】
一つのアプローチは、前記バリア、例えば、前記bbb自体の機能を変えることであった。例えば、浸透剤は、(静脈注入によるなど)末梢投与された場合、前記bbbの開口を生じる。さらに、CNSに作用するいくつかの薬剤は、他の物質に対するbbbの浸透性を変化させることができ、コリン様アレコリンは、例えば、前記bbbを経る薬剤浸透の変化を引き起こすことが報告されている(非特許文献1)。
【0004】
他のアプローチは、薬剤分子自体の変更にある。例えば、タンパク質などの巨大分子は、前記bbbを全く通過しない。例えば、まず、前記巨大分子の活性部位、すなわち、生物学的に望ましい現象を起こす前記分子の部位をまず単離し、次いで、この活性部位のみを使用することができる。サイズが、前記bbbの浸透性を許容する要因の一つであるので、より小さな分子は前記bbbを直ちに通過することができるという見込みで、減少されたサイズが用いられる。前記bbbの通過をねらった巨大分子の他の変更には、タンパク質を糖化し、それにより、その前記bbbの浸透性を高めること、またはプロドラッグを形成することが含まれる。
【0005】
特許文献1は、タンパク質を糖化することを論じ、他方、特許文献2および特許文献3は、プロドラッグの形成を開示する。これらのプロドラッグは、脂肪酸キャリアと、それ自体で前記bbbを通過することができない神経活性薬剤から形成される。同様のシステムが、特許文献3に開示されている。
【0006】
さらに他のアプローチは、活性成分をマトリックスシステムから直接的に神経組織へ放出する制御性放出ポリマーの移植である。しかし、このアプローチは、侵襲的であり、脳または脊髄へ直接移植される場合、外科手術を必要とする(Sabelら、特許文献4;およびSabelら、特許文献5を参照されたい。)。
【0007】
これらの限界を克服するために、リポソーム、赤血球ゴースト、抗体−コンジュゲート、およびモノクローナル抗体コンジュゲートなどの薬剤キャリアシステムを用いる他のアプローチが試みられている。標的薬剤送達における主要問題の一つは、細網内皮系(RES)による、特に、肝臓および脾臓におけるマクロファージによる、注入されたキャリアの迅速なオプソニン化および取り込みである。この障害は、リポソームの場合、ホスファチジルイノシトール、モノシアロガングリオシド、またはスルホガラクトシルセラミドなどのいわゆる「ステルス(stealth)」脂質の組み込みにより部分的に克服される可能性がある。しかし、これらシステムはいずれも、医薬における広範な適用を可能とする融通性を欠く。
【0008】
II.薬剤送達ビヒクルとしてのナノ粒子
ナノ粒子は、いくつかの疾患、特に癌の検出および治療の新たな望みを提供する。ナノ粒子は、すなわち、医薬の多くの分野、特に癌治療に関し、大きな可能性を持つ。腫瘍殺滅薬剤を直接癌細胞に送達し、このため、化学治療の望ましくない副作用を回避する見込みにより、医薬界でナノ粒子には大きな関心がもたらされている。
【0009】
所望の標的組織に薬剤を運搬および送達するアプローチが、特許文献6に開示されている。この文献では、ポリマー材料から作製されたナノ粒子であって、哺乳動物に送達されるべき薬剤およびその上に堆積された界面活性剤コーティングを含むナノ粒子と、投与後、前記哺乳動物内における前記ナノ粒子の前記標的への輸送を可能とする医薬上許容されるキャリアおよび/または希釈剤を含む薬剤標的システムが開示されている。このアプローチでは、好ましくは<1,000nmの直径を有するポリマー粒子を含むナノ粒子が用いられる。
【0010】
アルキルシアノアクリレート(ACA、C1からC6)が、いくつかの適用のために有用なモノマーであることが立証されている。「スーパーグリュー(super glue)」として広く知られるものと並んで、それらは、手術において傷の封鎖のために用いられる(例えば、Indermil(登録商標)、n−ブチルシアノアクリレートBCA)。いずれの適用も、湿気由来の水や皮膚由来の水、皮膚タンパク質に存在するアミン、アルコールまたはホスフィンなどの微量の求核剤により、前記アニオン重合が容易に開始されるという事実に基づく。
【0011】
近年、ポリ(アクリルシアノアクリレート)ナノ粒子の合成に、かなりの努力が為されている。特に、ポリ(アクリルシアノアクリレート)ナノ粒子は、生物学的適合性があり、生物分解可能であり、そして、生物活性化合物の吸着、特に捕捉に関して顕著な傾向を示すことが報告されており、薬剤キャリアシステムとしての使用の有望な候補物となっている。多数の異なる化合物が、無機クリスタライト、例えば、マグネタイト{Arias, 2001 #1}から種々の薬剤(メトトレキサート{Reddy, 2004 #2}、ドキソルビシン{Steiniger, 2004 #4;Kattan, 1992 #3;Gulyaev, 1999 #5})まで、およびオリゴペプチド(ダラルジン(dalargin){Alyautdin, 1995 #6},{Olivier, 1999 #7})またはタンパク質(インスリン{Couvreur, 1988 #10;Behan, 2001 #8;Sullivan, 2004 #9})ですらも、「ペイロード(payload)」として使用されている。
【0012】
ポリ(アルキルシアノアクリレート)(ナノ)粒子の形成のための第一プロセスは、1970年代後期に、立体安定剤としてポリマー性、非イオン性界面活性剤を含み、アルキルシアノアクリレートモノマーが滴加されたHCl溶液(10−2から10−3モル・l−1)を用いて、Couvreur{Couvreur, 1979 #11}により開発された。次いで、多数の研究({Limouzin, 2003 #12}を参照されたい)により、界面活性剤を用いるまたは用いない分散および乳化技術の適用が報告されている。記載されている粒子は、100nm未満から1μmを超える範囲に渡るサイズの広い分布を示す。粒子サイズ、前記分散の安定性および前記ポリマーのモル質量は、連続相のpH{Behan, 2001 #13}、{Lescure, 1992 #14}、{El-Egakey, 1983 #15}、{Douglas, 1984 #16}ならびに界面活性剤のタイプおよび濃度{Douglas, 1985 #17}、{Vasnick, 1985 #18}に大きく依存する。
【0013】
ポリ(アルキルシアノアクリレート)ナノ粒子の調製のための非イオン性またはポリマー性界面活性剤を用いるエマルジョン重合の広範囲に渡る適用にも関わらず、いくつかの限界、特に、分散物の低いポリマー含量(〜1wt%)および前記モノマーに比して多量の界面活性剤(1:1またはそれより多い界面活性剤対モノマー比、例えば、{Seijo, 1990 #19}、{Alyautdin, 1995 #6})がある。加えて、市場入手可能なモノマー中に存在する安定剤は、重大な問題を引き起こす。適用される安定剤は、未知濃度のルイス酸であるので(MeSOH、SO)、粒子の特性における影響は予想でき、そして、これまで適用された技術では、容易に制御できない。SOの量が粒子サイズに影響を与え{Labib, 1991 #20}、{Lescure, 1992 #14}、およびそれゆえ、異なるバッチのアルキルシアノアクリレートモノマーを用いる場合、再現性の欠如に至ることが報告されている。
【0014】
今日まで、粒子表面の修飾は、例えば、ポリソルベートなどの物理的に吸着される{Alyautdin, 1995 #6}、{Olivier, 1999 #7}、もしくは、例えば、デキストランのヒドロキシ基{Chauvierre, 2004 #21}、{Douglas, 1985 #17}またはPEG{Peracchia, 1997 #22}により、前記粒子の表面に化学的に結合される界面活性剤の選択により達成されている。ポリソルベートでの修飾により、粒子が血液−脳関門を経て浸透することが可能となり、他方、PEG化粒子は、循環系において、長期の持続性を示す。
【0015】
それにも関わらず、前記ポリマー粒子を、特に設計する表面特性へさらに化学官能基化させることは、界面活性剤分子が前記粒子表面を占有しているために(使用する界面活性剤の量が多いために)、およびCOOなどのアンカー基がないために、達成することが困難である。これらの基は、タンパク質(例えば、抗体)のような(バイオ)分子{Lathia, 2004 #23;Nakajima, 1995 #24;Rasmussen, 1991 #25}を、細胞応答の特異的レセプターに向けるために、EDCカップリングにより結合するために必要とされる。
【0016】
III. ミニエマルジョン法により形成されるナノ粒子
先行技術文献から、ポリマーへの変換をミニエマルジョンにおいて行うことも、公知である。ミニエマルジョンは、例えば、水、油相、および1つ以上の界面活性剤の分散物であり、約50から500nmの液滴サイズを有する。前記ミニエマルジョンは、準安定であると考えられた(参考。非特許文献2;非特許文献3)。これらの分散物は、洗浄製品、化粧品またはボディケア製品の技術分野において広範な適用が見出されている。
【0017】
オレフィン系不飽和モノマーのフリーラジカルミニエマルジョン重合による水性一次分散液の調製が、例えば、特許文献7または特許文献8および特許文献9から公知である。これら公知の方法の場合、前記モノマーは、異なる低分子量のオリゴマー性またはポリマー性疎水性物質の存在下で共重合され得る。
【0018】
特許文献10から、下記工程を含む、ナノ粒子を調製する方法が公知である。:
−OおよびWタイプの液相、安定剤、1つ以上の医薬ならびに重合可能なモノマーを含む反応系を提供する工程、
−O/Wタイプのミニエマルジョンを形成する工程、および
−ナノ粒子を形成するために前記モノマーを重合する工程。
【0019】
特許文献10は、特に、非特許文献4に記載されているようなミニエマルジョン法を使用する。この方法は、周知の常套法とは、異なる順序の製造工程を含むことにより基本的に異なっており、このアプローチでは、分散された疎水性モノマーを含む液滴を親水性連続相に含むミニエマルジョンが、ポリマー粒子へと形成される。前記常套アプローチでは、前記ポリマーは、モノマーを含む溶液から直接形成される。
【0020】
しかし、特許文献10は、前記重合が、1つ以上の(第一級)アミンにより開始されることは開示していない。
特許文献11は、1〜250μmの直径を有する、インビボ分散のための有用な親水性ポリグルタメートミクロカプセルを開示する。前記ミクロカプセルは、厳密に規定された組織を特異的に標的することを目的とする。しかし、特許文献11は、前記ミニエマルジョン法を使用していない。
【0021】
特許文献12は、半導体および炭素原子含有材料へのアミノ酸オリゴマーの選択的結合のための組成物および方法に関する。一形態は、前記半導体または炭素原子含有材料を特異的に結合するアミノ酸オリゴマーを、前記材料の形成を生じ得る溶液と相互作用させることにより、前記半導体または炭素原子含有材料の粒子サイズを制御する方法である。同じ方法を用いて、前記半導体材料のナノ結晶粒子のアスペクト比を制御することができる。ここでも、しかし、前記ミニエマルジョン法によりナノ粒子を形成することは開示されていない。
【0022】
非特許文献5から、アンモニアをミクロエマルジョンへ添加することが公知である。しかし、この刊行物は、いわゆるストーバー法の変法によるシリカナノ粒子の(重縮合による)製造を記載する。さらには、非イオン性界面活性剤およびシクロヘキサンが添加され、30〜70nmの範囲のナノサイズのシリカが産出された。低い界面活性剤濃度では、前記アンモニア濃度が増すと、前記粒子サイズが増すことが示されている。より高い界面活性剤濃度では、前記アンモニア濃度が増すに従い、粒子サイズは小さくなる。このこととは別に、この引用文献は、ミニエマルジョン法の使用を開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許第5,260,308
【特許文献2】米国特許第4,933,324号
【特許文献3】WO89/07938号
【特許文献4】米国特許第4,883,666号
【特許文献5】米国特許出願第07/407,930号
【特許文献6】WO95/022963号
【特許文献7】WO98/02466
【特許文献8】ドイツ特許DE−A−19628143
【特許文献9】ドイツ特許DE−A−19628142
【特許文献10】WO2006/029845
【特許文献11】WO94/020106
【特許文献12】WO03/026590
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Saija, A., Princi, P., De Pasquale, R., Costa, G., "Arecoline but not haloperidol produces changes in the permeability of the blood-brain barrier in the rat." J. Pharm. Pha. 42:135-138 (1990)
【非特許文献2】Emulsion Polymerization and Emulsion Polymers, Editors P. A. Lovell and Mohamed S. El-Aasser, John Wiley and Sons, Chichester, New York, Weinheim, 1997, pages 700 et seq.
【非特許文献3】Mohamed S. El-Aasser, Advances in Emulsion Polymerization and Latex Technology, 30th Annual Short Course, Volume 3, Jun. 7-11, 1999, Emulsion Polymers Institute, Lehigh University, Bethlehem, Pa., USA
【非特許文献4】K. Landfester, "Polyreactions in miniemulsions", Macromol. Rapid Comm. 2001, 896-936. K. Landfester, N. Bechthold, F. Tiarks, and M. Antonietti, "Formulation and stability mechanisms of polymerizable miniemulsions"
【非特許文献5】"Synthesis of Nanosize Silica in a Nonionic Water-in-Oil Microemulsion: Effects of the Water/Surfactant Molar Ratio and Ammonia Concentration", Journal of Colloid and Interface Science 211, 210-220 (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的
ナノ粒子を製造する方法であって、界面活性剤の量をかなり低下でき、かつ、官能基を導入できる方法を提供することが、本発明の目的である。
また、PACAナノ粒子を製造するための改善された方法であって、粒子を高収率、固形分量で得ることができ、かつ、小さな粒子サイズおよび狭く均一な粒子分布を有する方法を提供することが、本発明の目的である。
【0026】
所望の放出特性に特に適合させ得る、医薬のための送達ビヒクルを提供することが、本発明のさらなる目的である。特に、種々の医学的状態のために使用するのに適し、かつ、動物やヒトの体の主要な生理学的または生物学的バリアを特異的に横断し得、かつ、その後、標的組織で前記薬剤の持続的放出または長期放出などの変更された放出特性を示す送達ビヒクルを提供することが、本発明の目的である。
さらに、薬剤送達ビヒクルを製造するための方法であって、前記ビヒクルの大規模製造に適した方法を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0027】
発明の概要
これらの目的は、独立クレームの対象事項により達成される。好ましい態様が、従属クレームに記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1:界面活性剤の濃度に伴う、150秒の超音波処理時間における粒子サイズ(白丸)およびMの変化(点線は、目視評価のための規準である)。
【図2】図2:BCAミニエマルジョンから得られたGPCエルグラムと、PBCA分散液から得られた溶出時間の4週間の間における変化
【図3】図3:SDSを用いて(サンプルS−10)、ルテンソールAT50を用いて(サンプルL−10)およびトゥイーン20を用いて(サンプルT−10)(写真、左から右)調製した分散液のTEM画像;ルテンソールAT50およびトゥイーン20を用いて調製した分散液の画像は、粒子を再分散させた後にのみ得ることができた。
【図4】図4:算出値と比較したpHの変化。各NaOH溶液の体積を選択して、最終分散液に関して算出pH値を得た。反応中のOHの消費は、算出においては無視した(点線は、目視評価のための規準である)。
【図5】図5:イニシエーター(NaOH溶液)体積(各部分の右側に記載した数)を用いて得られたポリマーのモル質量変化、7日後に凍結した粒子。
【図6】図6:脱/再重合について提唱するメカニズム{Ryan, 1996 #37}
【図7】図7:イニシエーター(アンモニア溶液)体積(各部分の右側に記載した数)を用いた場合の溶出体積の変化。調製後2日目に凍結したサンプル。
【図8】図8:(トリス塩基溶液)体積(各部分の右側に記載した数)を用いた場合の溶出体積の変化。調製後2日目に凍結したサンプル。
【図9】図9:0.5モル・l−1の6−アミノヘキサン酸で重合開始した(左)およびグリシン溶液で重合開始した(右)粒子サイズの変化(点線は、目視評価のための規準である)。右図の凡例中の数は、前記溶液のモル濃度(ダッシュの前)およびpH(ダッシュの後)を示す。
【図10】図10:6−アミノヘキサン酸で重合開始したサンプルのGPC溶出体積:a)pH4.4 b)pH5.5 c)pH10。
【図11】図11:グリシンで重合開始したサンプルのGPC溶出体積:a)Gly0.1 pH3.4;b)Gly0.5、pH3.4;c)Gly2.0、pH3.4。
【図12】図12:pH3および10での透析前および後のζ−ポテンシャル
【図13】図13:NaOH溶液(0.1モル・l−1、算出pH7)で重合開始したポリマーのH−NMRスペクトル
【図14】図14:6−アミノヘキサン酸溶液(pH4.4、0.5モル・l−1)で重合開始したポリマーのH−NMRスペクトル
【図15】図15:10%SDSおよび4.17%ヘキサデカンを含むNP−エマルジョンの粒子サイズにおけるアミノ酸L−ロイシン(0.125モル/l)の影響
【図16】図16:10%SDSおよび4.17%ヘキサデカンを含むNP−エマルジョンのゼータポテンシャルにおけるアミノ酸L−ロイシン(0.125モル/l)の影響
【図17】図17:10%SDSおよび4.17%ヘキサデカンを含むNP−エマルジョンの粒子サイズにおけるアミノ酸L−ロイシン(0.05モル/l)の影響
【図18】図18:10%SDSおよび4.17%ヘキサデカンを含むNP−エマルジョンのゼータポテンシャルにおけるアミノ酸L−ロイシン(0.05モル/l)の影響
【図19】図19:10%SDSおよび4.17%ヘキサデカンを含むNP−エマルジョンの粒子サイズにおけるアミノ酸L−ロイシン(0.1モル/l)の影響
【図20】図20:10%SDSおよび4.17%ヘキサデカンを含むNP−エマルジョンのゼータポテンシャルにおけるアミノ酸L−ロイシン(0.1モル/l)の影響
【図21】図21:0.05モル/lのL−ロイシン溶液9mlを用いて重合開始した、5%ルトロール(Lutrol)、2%SDSおよび6%ダイズ油を含むPBCA懸濁液の標準的方法
【図22】図22:5%ルトロール、2%SDSおよび6%ダイズ油を含むNPエマルジョンの粒子サイズにおけるアミノ酸L−ロイシン(0.1モル/l)の影響
【図23】図23:5%ルトロール、2%SDSおよび6%ダイズ油を含むNPエマルジョンのゼータポテンシャルにおけるアミノ酸L−ロイシン(0.1モル/l)の影響
【図24】図24:5%ルトロール、2%SDSおよび6%ダイズ油を含むNPエマルジョンの粒子サイズにおけるアミノ酸L−ロイシン(0.125モル/l)の影響
【図25】図25:5%ルトロール、2%SDSおよび6%ダイズ油を含むNPエマルジョンのゼータポテンシャルにおけるアミノ酸L−ロイシン(0.125モル/l)の影響
【図26】図26:5%ルトロール、2%SDSおよび6%ダイズ油を含むNPエマルジョンの粒子サイズにおけるアミノ酸L−ロイシン(0.05モル/l)の影響
【図27】図27:5%ルトロール、2%SDSおよび6%ダイズ油を含むNPエマルジョンにおけるアミノ酸L−ロイシン(0.05モル/l)の影響
【発明を実施するための形態】
【0029】
第一級または第二級アミン(本発明において、第一級アミンは、アンモニアも含むと定義する)を用いて前記ミニエマルジョン法の重合工程を開始することにより、一方で、狭いサイズ分布を有する小さなPACAナノ粒子が得られ、他方で、前記ナノ粒子を官能基化し得ることが判明した。
【0030】
2工程のミニエマルジョン法を、PACAナノ粒子、好ましくは、ポリ(n−ブチルシアノアクリレート)(PBCA)ナノ粒子の調製のために適用した。一例として、第一工程で、ミニエマルジョンを、n−ブチルシアノアクリレートの塩酸溶液から、ドデシル硫酸ナトリウムを界面活性剤として用いて調製する。第二工程で、重合を開始するために塩基性溶液を添加し、次いで、ポリマー性粒子を形成させる。イニシエーターとして第一もしくは第二アミンまたはアミノ酸を用いることにより、ポリマー粒子の表面の好都合な官能基化が可能となる。第三級または第四級アミンは、それらが求核剤として作用し得る限り、本発明の状況において作用させ得ることがさらに判明していることを特記する。しかしながら、第一級および第二級アミンが、本発明において好ましい。
【0031】
粒子サイズおよびサイズ分布における界面活性剤濃度および超音波処理時間の影響を、前記粒子サイズおよび前記ポリマーのモル質量の分布におけるイニシエーターのpH、濃度および量の影響とともに、研究した。検出された、前記粒子のζ−ポテンシャルのpH依存性は、アミノ酸を用いる重合開始後の前記粒子表面におけるカルボキシル基の存在を示す。
【0032】
結果として、本発明は、分散液中で安定な狭いサイズ分布を有し、再現性をもって官能基化可能で、かつ、ロード可能なPACAナノ粒子、特にPBCAナノ粒子の調製を開示する。前記ナノ粒子は、最少限のアニオン性界面活性剤ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いて10wt%より高い固形分量で達成されるような方法で、調製することができる。
【0033】
これらの要求を満たす非常に好都合な方法は、ポリ(アルキルシアノアクリレート)ナノ粒子を5%の固形分量で作製するために、前記ミニエマルジョン法を用いて1シングルモデル実験にて既に示されたように{Limouzin, 2003 #12}、安定な水中n−ブチルシアノアクリレートミニエマルジョンを形成した後、重合を開始するミニエマルジョン法の適用である。
【0034】
オストワルド熟成を妨げるために、疎水性の剤により得られるミニエマルジョンの高い安定性を利用して、分散させるBCAモノマーの量をさらに増すことが可能となり、そしてそれゆえ、最終分散液の固形分量を10%より多く増すことが可能となることを示す。重合は、最も簡単な場合、水酸化物溶液の添加により開始する。粒子サイズおよびサイズ分布における界面活性剤濃度および超音波処理時間の影響を、前記粒子サイズおよび前記ポリマーのモル質量の分布におけるイニシエーター溶液のpH、濃度および量の影響とともに研究した。イニシエーターとしての単官能基性または多官能基性アミンの適用により、前記ポリマーへの{Kulkarni, 1971 #27}、{Leonard, 1966 #28}、{Pepper, 1978 #29}、およびしたがって、前記粒子への官能基の導入が可能となることを示す。検出した、前記粒子のζ−ポテンシャルのpH依存性は、アミノ酸を用いる重合開始後の前記粒子表面におけるカルボキシル基の存在を示す。
【0035】
本発明の詳細な説明
第一の側面により、本発明により、下記の工程から成り、下記工程b)における重合を、1つ以上の第一級または第二級アミンにより開始することを特徴とするナノ粒子を製造する方法が提供される。:
a) OおよびW(水性)タイプの液相、1つ以上の安定剤ならびに重合可能なACAモノマーを含むO/Wミニエマルジョンを調製する工程、
b) 前記モノマーをアニオン重合により重合し、次いで、製造されたナノ粒子を単離する工程。
【0036】
驚くべきことに、前記モノマーの重合を開始するための第一級または第二級アミンの添加により、前記ナノ粒子の狭くかつ均一なサイズ分布が導かれ、かつ、前記ナノ粒子の製造において必要とされる界面活性剤の量がかなり低下することが判明した。前述のとおり、本発明は、必ずしも第一級または第二級アミンには限定されず、第三級、第四級アミンおよび他の試薬も、それらが強い求核剤である限り、用いてよい。この開発の利点は、明らかであり、前記粒子が小さいほど、想定される適用、特に、血液−脳関門を横断するためのインビボ適用に、より適することとなる。さらに、前記ナノ粒子を調製するために必要とされる界面活性剤(または安定剤)の量の低下により、患者への前記界面活性剤のインビボ負荷も低下し、また、前記粒子表面の界面活性剤分子による占有が回避されるので、前記ポリマー粒子の、特に設計する表面特性への化学官能基化が可能となる。前記利点は、「実施例」の章でより詳細に説明する。
【0037】
「ナノ粒子」の文言は、本明細書中、概して、生物学的適合性があり、かつ、十分量の前記ナノ粒子が、標的器官または組織、例えば、脳、肝臓、腎臓および肺などに到達することができるように、腹腔または経口または静脈内投与に続いてヒトまたは動物の体内に入った後、実質的に無傷な状態を維持するように、使用の環境による化学的および/または物理的破壊に対して十分抵抗性のあるキャリア構造を意味する。
【0038】
好ましい態様により、前記ナノ粒子は、1nmから20μmの直径を有し、好ましくは10nmから10μmの直径を有し、および最も好ましくは50nmから1,000nmの直径を有する。
さらに、前記ナノ粒子は、前述のとおり、好ましくは、その上に堆積された界面活性剤コーティングを含む。
【0039】
前記ナノ粒子の、適当な界面活性剤の十分なコーティングでの処理により、吸着された薬剤が、bbbなどの生理学的バリアをより良好に横断することが可能となる。この効果を開示しているいくつかの文献、特に、WO95/22963を引用し、本明細書中にその全容を組み込む。
【0040】
前記1つ以上の安定剤の量は、前記モノマー相に基づき、1から50%であり、好ましくは5から30%であり、および最も好ましくは10から25wt%である。本明細書中に用いる「安定剤の量」は、いくつかの安定剤の組み合わせの総量も含むことをさらに特記する。例えば、10から25重量%の前記量は、10%のドデシル硫酸ナトリウムと10%のポリソルベート80からなってよい。
【0041】
本発明において用いる「安定剤」の文言は、エマルジョンを安定化することができるあらゆる物質を含む。これらの物質は、好ましくは、界面活性および/または両親媒性物質、すなわち界面活性剤である。
【0042】
前記界面活性剤コーティングおよび/または安定剤は、好ましくは、1つ以上の下記の物質を含む。:
グリセロール、ソルビトールおよび他の1価または多価アルコール、好ましくは、ベンジルアルコールの脂肪酸エステル、グリセロールモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、またはソルビタンモノリエート(sorbitan monoleate);リン脂質、リン酸エステル、多糖、ベンジルベンゾエート、ポリエチレングリコール(PEG200、300、400、500、600)、ポリエチレングリコールヒドロキシステアレート、好ましくは、ソルトール(Solutol)HS15;ポロキサミン、好ましくは、ポロキサミン904、908または1508;ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル;エトキシル化トリグリセリド;エトキシル化フェノールおよびエトキシル化ジフェノール;ゲナポール(Genapol)(商標)およびバウキ(Bauki)シリーズの界面活性剤;ポリオキシルヒマシ油、好ましくは、クレモフォールELP;レシチン、脂肪酸の金属塩、脂肪アルコールスルフェートの金属塩;およびスルホコハクシネートの金属塩;好ましくは、ポリソルベート、より好ましくは、ポリソルベート20、60および最も好ましくは、ポリソルベート80;好ましくは、ポロキサマー、より好ましくは、ポロキサマー188、338または407;好ましくは、ポリオキシエチレングリコール、より好ましくは、ルテンソール(Lutensol)50または80;当該分野で公知のアニオン性界面活性剤(例えば、M.J. Rosen: "Surfactants and interfacial phenomena", Wiley & Sons, Inc. New York Chichester Brisbane Toronto Singapore 1989を参照されたい)、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム;ならびに、前記界面活性剤の2つ以上の混合物。
前述のとおり、ポリソルベート80が最も好ましい。
【0043】
界面活性剤コーティングが存在する場合、本発明はまた、前記コーティングを、得られたナノ粒子から少なくとも部分的に除去する方法も提供することを特記する。これは、好ましくは、透析または遠心分離によりなすことができる。前記安定剤は、製造法においては本質的に必要とされるが、最終ナノ粒子が形成された後に、少なくとも部分的に除去してよいことが、驚くべきことに判明した。言い換えれば、前記ナノ粒子の安定性を維持するのに必要とされず、しかし、インビボ適用に関して潜在的リスクを引き起こすおそれのある「過剰」の安定剤を除去することができる。前記ナノ粒子における前記安定剤の可能な最少量が、最低のインビボリスクを有するとみなすべきと考えられる。
【0044】
重合の好ましい方法は、K. Landfesterらにより開発されたミニエマルジョン法である。
ミニエマルジョンは、油、水、界面活性剤および疎水性物質を含む系を剪断することにより調製される50から500nmのサイズを有する、臨界的に安定化された油滴の分散物である。そのようなミニエマルジョンにおける重合により、初期の液滴とおよそ同じサイズを有する粒子が得られる(K. Landfester, Polyreactions in miniemulsions, Macromol. Rapid Comm. 2001, 896-936. K. Landfester, N. Bechthold, F. Tiarks, and M. Antonietti, Formulation and stability mechanisms of polymerizable miniemulsions. Macromolecules 1999, 32, 5222. K. Landfester, Recent Developments in Miniemulsions - Formation and Stability Mechanisms. Macromol. Symp. 2000, 150, 171)。
【0045】
前述のとおり、例えば、Landfesterら(既出)に開示されるような既に公知のミニエマルジョン法を用いて、前記ミニエマルジョンを調製してよい。これは、例えば、まず、O相およびW相中のモノマーと安定剤(前記のようなもの)を合わせることによりなしてよい。前記水相は、さらなる成分、例えば、適当なpH値を設定するためのHClを含んでよいことを特記する。第2に、すべての成分を混合するために、前記反応系を、例えばホモジェナイザーなどにより混合してよい。
【0046】
ミニエマルジョンそのものの調製は、前記反応系に、例えば、超音波や高圧ホモジェナイザーにより、高い剪断力を適用することにより行う。さらに、前記剪断力は、前記反応系のサイズや使用するホモジェナイザーにより、例えば、1〜10分の範囲の時間、適用してよい。基本的には、2から4分の範囲の時間を十分であると考える。しかし、ナノ粒子の調製に関する詳細や条件は、多くの要因、例えば、まさに使用する設備などにより変えてよいことを特記する。
【0047】
前記超音波ホモジェナイザーは、約60〜100%、好ましくは、約70〜90%の振幅を有してよい。
一態様によれば、この方法で使用する温度は、好ましくは、−1から5℃であり、好ましくは、0℃である。しかしながら、前記温度範囲は、前記範囲に限定されず、より広い範囲を用いることができる。
【0048】
概して、W相に対するO相の重量比は、5〜40%w/wであり、好ましくは、20〜30%w/wであり、より好ましくは、約25%w/wである。
一の好ましい態様によれば、前記アミンは、アンモニア、トリス塩基からなる群から、またはアミノ酸、好ましくは、フェニルアラニン、グリシン、L−ロイシン、トリプトファン、5−ヒドロキシトリプトファンまたは6−アミノヘキサン酸からなる群から選択される。
【0049】
ここで、5−ヒドロキシトリプトファンまたはトリプトファンは、一方では、重合のイニシエーターとして適しており、そして、他方では、bbbを経る輸送を高めるための分子としても役立ち得ることが判明したので(以下も参照されたい)、5−ヒドロキシトリプトファンまたはトリプトファンが、特に好ましい。トリプトファンまたは5−ヒドロキシトリプトファンを重合のイニシエーターとして用いる場合、十分数のこれら分子が、前記ナノ粒子の表面にも存在すると考えられる。こうして、トリプトファンまたは5−ヒドロキシトリプトファンは、さらに、bbbを経る輸送を高めるための手段としても役立ち得る。
【0050】
使用し得るさらなるアミノ酸は、アラニン、アスパラギン、ヒスチジン、イソロイシン、メチオニン、プロリン、セリン、トレオニン、グルタミン、チロシン、バリンおよびタウリンからなる群から選択される。
前述のような本発明の効果は、NaOHのみを用いる従来のアプローチによっては用い得ないことを特記する。
【0051】
本発明の方法では、好ましくは、治療薬および診断薬から選択される、好ましくは、1つ以上の医薬が、前記W相および/または前記O相に含まれる。
「薬剤」および「治療薬」の文言は、本明細書中、交換可能に使用することを特記する。
前記治療薬は、好ましくは、送達ビヒクルまたはキャリアを用いずに生理学的バリアを横断することができないか、または十分に横断することができない物質から選択され、ここで、前記生理学的バリアは、好ましくは、血液−脳関門(bbb)、血液−空気関門、血液−脳脊液関門および頬粘膜からなる群から選択される。
【0052】
好ましい一態様によれば、本発明の前記送達ビヒクルは、連接部位およびニューロエフェクター接合部位で作用する薬剤;全身および局所鎮痛剤;催眠薬および鎮静薬;鬱病および統合失調症などの精神疾患の治療のための薬剤;抗てんかん剤および抗けいれん剤;パーキンソン病およびハンチントン病、老化およびアルツハイマー病の治療のための薬剤;抗肥満薬;興奮性アミノ酸アンタゴニスト、神経栄養因子、および神経形成剤;栄養因子;CNSトラウマまたは発作の治療を目的とする薬剤;中毒および薬物濫用の治療のための薬剤;アンタコイド(antacoids)および抗-炎症剤;寄生虫感染および微生物により引き起こされる疾患のための化学治療薬;免疫抑制剤および抗-癌剤;ビタミン;ホルモンおよびホルモンアンタゴニスト;重金属および重金属アンタゴニスト;非金属性中毒薬のためのアンタゴニスト;癌の治療のための細胞活動抑止剤、好ましくは、ドキソルビシン;核医学での使用のための診断物質;免疫活性および免疫反応剤;トランスミッターならびにその対応するレセプターアゴニストおよびレセプターアンタゴニスト、その対応するプレカーサーおよび代謝産物;トランスポーターインヒビター;抗生物質;抗興奮剤;抗ヒスタミン剤;抗嘔吐剤;緩和剤;刺激剤;センスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチド;脳拡張剤;向精神薬;抗躁薬;血管拡張薬および収縮薬;抗-高血圧剤;片頭痛治療のための薬剤;催眠、高血糖および低血糖剤;抗喘息薬;抗ウイルス剤、好ましくは、抗HIV薬;疾患のDNAまたはアンチセンス治療に適した遺伝子材料;ならびにこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上の治療薬を含む。ナノ粒子を調製する前述の方法におけるこのような薬剤の添加に関しては、前記重合を開始する前に、すでに、疎水性の剤を添加することが好ましく、親水性の剤は、(前記ナノ粒子の表面への吸着により)この工程の前または後に添加してよいことを特記する。
【0053】
本明細書中で使用する「DNA」の文言は、基本的に、本発明の技術分野で考えられ得るあらゆるDNAを言う。好ましい態様では、前記「DNA」の文言は、2タイプのDNA、すなわち、一方において、プラスミドDNA、より好ましくは、腫瘍抑制遺伝子の情報を含むプラスミドDNA、よりいっそう好ましくは、腫瘍抑制遺伝子p53およびpRBの情報を含むプラスミドDNAと、他方において、アンチセンスオリゴヌクレオチド、より好ましくは、癌遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチド、よりいっそう好ましくは、Bcl2のような癌遺伝子に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むことを意味する。本発明では、1つのタイプのDNA(および、したがって、1つのタイプのDNAをロードしたナノ粒子)を用いてよい。別法として、異なるタイプのDNAでロードされ、かつ本発明に従い使用し得る複数のナノ粒子を生じる、2つ以上のタイプのDNAを用いてよい。
【0054】
驚くべきことに、DNA、特に、前記2つのタイプのDNAを、ナノ粒子上に吸着でき、そして、生じるDNA−ナノ粒子複合体を、生物体、特に、癌(特に、脳の癌、ただし、これに限定されない)を患っている生物体に接種することができた。その後、前記腫瘍の増殖の抑制を認めることができ、かつ、腫瘍の壊死およびアポトーシスさえも、誘導することができた。
【0055】
本発明の好ましいが不可欠ではない一態様では、プロモーターを含むプラスミドDNA、より好ましくは誘導性プロモーターを含むプラスミドDNAを前記ナノ粒子にロードすることができる。誘導性プロモーターを含むDNAを前記ナノ粒子上にロードし、かつそれを前記細胞内部で発現させるための新規工程により、誘導性プロモーター、およびそれにより、対応する遺伝子の発現の外部コントロールを達成することができ、そして、前記遺伝子を意のままに「スイッチ」オンおよびオフすることができる。先行技術を超える予想外の利点として、前記遺伝子/DNA発現のタイミングをコントロールすることができる。そのようなコントロールにより、継続的遺伝子発現の毒性副作用を減らし得、および/または、細胞が遺伝子産物に対して抵抗性となる蓋然性を低下でき、ネガティブ選択を得ることができる。
【0056】
本発明の好ましい態様では、ヒトパピローマウイルス上流調節領域(HPV−URR)を前記誘導性プロモーターとして使用した。前記腫瘍サプレッサーの発現は、デキサメタソンまたは他のインデューサーもしくは化合物の投与後に誘導される。このような方法で、前記腫瘍細胞のアポトーシスおよび前記腫瘍の退化を達成することができた。本発明に従い使用可能な他の例示的なプロモーターは、サイトメガリアウイルス(CMV)プロモーターまたはシミアンウイルス40(SV40)プロモーターである。
【0057】
さらに、腫瘍退化を含む強い効果を、1つ以上のタイプのDNA含有ナノ粒子と、1つ以上の細胞分裂停止作用物質を含むナノ粒子との組み合わせ投与により達成することができた。
好ましい一態様では、いっそうより好ましくは誘導性プロモーターに遅れて、腫瘍サプレッサーDNAを、細胞分裂停止作用化合物を含むナノ粒子複合体の接種の前に注入してよい。よりいっそう好ましい態様では、前記細胞分裂停止作用化合物は、ドキソルビシンである。
【0058】
細胞へのDNAのトランスフェクションのプロセスにおいて、および、ヒトまたは動物体の標的器官へのDNAの投与のプロセスでも同様に、第1の工程は、前述の方法での前記ナノ粒子の調製を含む。
さらなる情報は、WO2004/017945に明白に記載されており、その全内容を本明細書中に組み込む。
【0059】
典型的な活性成分(例えば、薬剤)は、神経系に影響を与える、または神経系の診断テストのために使用されるあらゆる物質であってよい。これらは、Gilmanら(1990)、"Goodman and Gilman's - The Pharmacological Basis of Therapeutics", Pergamon Press, New Yorkにより記載されており、以下の剤が含まれる。
アセチルコリンおよび合成コリンエステル、天然に生じるコリン様アルカロイドおよびその合成同種物、アンチコリンエステラーゼ剤、神経節刺激剤、アトロピン、スコポラミンおよび関連するアンチムスカリン剤、カテコールアミンならびに、エピネフリン、ノルエピネフリンおよびドーパミンなどの交感神経刺激剤、アドレナリン作用アゴニスト、アドレナリン作用レセプターアンタゴニスト、GABA、グリシン、グルタミン酸、アセチルコリン、ドーパミン、5−ヒドロキシトリプトアミン、およびヒスチジンなどのトランスミッター、神経活性ペプチド;オピオイド系鎮痛薬およびアンタゴニストなどの鎮痛薬および麻酔薬;ベンゾジアゼピン、バルビツレート、抗ヒスタミン、フェノチアジンおよびブチルフェノンなどの前麻酔薬および麻酔薬;オピオイド;制吐剤;抗コリン作用剤、アトロピン、スコポラミンまたはグリコピロレートなど;コカイン;クロラール誘導体;エトクロルビノール;グルテチミド;メチプリロン;メプロバメート;パラアルデヒド;ジスルフィラム;モルフィネ、フェンタニルおよびナロキソン;フェノチアジン、チオキサンテンおよび他のヘテロ環化合物(例えば、ハロペリドール)などの精神薬;デスイミプラミンおよびイミプラミンなどの三環式抗鬱剤;非定型抗鬱剤(例えば、フルオキセチンおよびトラゾドン)、イソカルボキサジドなどのモノアミンオキシダーゼインヒビター;リチウム塩;クロルジアゼポキシドおよびジアゼパムなどの抗不安薬;ヒダントインを含む抗てんかん剤、抗けいれん剤バルビツレート、イミノスチルベン(カルバマゼピンなど)、スクシンイミド、バルプロ酸、オキサゾリジンジオンおよびベンゾジアゼピン、L−DOPA/CARBIDOPAなどの抗パーキンソン薬、アポモルフィネ、アマタジン、エルゴリン、セレゲリン、ロピノロール、ブロモクリプチンメシレートおよびアンチコリン作用剤;バクロフェン、ジアゼパムおよびダントロレンなどの抗けいれん剤;興奮性アミノ酸アンタゴニスト、神経栄養因子および脳由来神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、または神経成長因子などの神経保護薬;ニューロトロフィン(NT)3(NT3);NT4およびNT5;ガングリオシド;神経形成剤;オピオイドアンタゴニストおよび抗鬱剤を含む中毒および薬物濫用の治療のための薬剤;オートコイド(autocoids)ならびに、ヒスタミン、ブラジキニン、カイジリン(kailidin)およびそれらの対応するアゴニストおよびアンタゴニストなどの抗炎症薬;寄生虫感染および微生物性疾患のための化学治療薬;アルキル化剤(例えば、ニトロソウレア)を含む抗癌剤および抗代謝剤;ナイトロジェンマスタード、エチレンアミンおよびメチルメラミン;アルキルスルホネート;葉酸類似体;ピリミジン類似体、プリン類似体、ビンカアルカノイド;および抗生物質。
【0060】
本発明における使用のための最も好ましい医薬は、下記の式により表わされるドキソルビシンであることをここでも強調する。
【化1】

【0061】
好ましい一態様によれば、前記診断薬は、核医学における診断および放射線治療において有用な診断薬からなる群から選択される。
好ましい態様では、前記O相は、親油性溶媒または疎水性物質、好ましくは、n−ヘキサン、ヘキサデカン、液体パラフィン、ビタミンE、ミグリオールまたはトリグリセリドの脂肪酸エステルを含む。疎水性物質の量は、通常、相対的に少なく、そして、オストワルド熟成を妨げるのに十分な量((さらに前記モノマーを含む)前記O相の総重量に基づき約2〜20%w/w)であるべきである。
【0062】
好ましくは、前記1つ以上の医薬および前記モノマーが前記O相に含まれる。この場合、前記医薬は、前記重合工程により形成された前記ナノ粒子に微細に分散される。別法として、前記1つ以上の医薬が、前記W相に存在し、および、前記モノマーが前記O相に含まれる。この場合、かなりの量の前記医薬が、形成された前記ナノ粒子に組み込まれることが判明した。本発明者らは、いかなる特定の理論にも拘束されることを欲しないが、前記ミニエマルジョンを調製することにより、例えば、高い剪断力を適用することにより、前記W相に含まれる前記医薬が、前記O相と密接に接触し、前記O相においても、前記剤の分散を生じると考えられる。
【0063】
さらに、溶液メディエーターを用いて、通常の環境下では、前記溶媒に十分量で溶解しない剤を溶液としてもよい。この物質群の例は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ポリソルベート80、ビタミンE、ポリエチレングリコール(PEG200、300、400、500、600)、ポロキサマー、ポリオキシヒマシ油(クレモフォールELP)、ポリオキシエチレングリコール、ポリエチレングリコールヒドロキシステアレート(ソルトール(Solutol))、ラブラフィル(Labrafil)、ラブラソール(Labrasol,)、レシチン、プロピレングリコール、ベンジルベンゾエート、グリセロールまたは一価もしくは多価アルコールの脂肪酸エステルまたはトリグリセリドである。
【0064】
所望により、前記1つ以上の医薬を、前記O相および前記W相の両方に添加することがさらに可能である。
好ましい態様では、使用する前記安定剤は、前記W相に含まれる。前記W相は、好ましくは、水、または酸、好ましくは塩酸もしくはリン酸を含む水溶液である。前記重合可能なモノマーは、ポリシアノアクリレート、好ましくは、ポリアルキルシアノアクリレート、および誘導体、共重合体ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるポリマー材料を形成するために使用する。「ポリアルキルシアノアクリレート」なる文言は、本明細書中、好ましくは、C1〜C6のアルキル基を含むと定義する。
【0065】
本発明において用いられる(製造される)ポリマー材料は、生物分解可能である。この文言は、生命体の体内で使用するのに適した、すなわち生物学的に不活性で、かつ、生理学的に許容され、無毒であることが知られており、かつ、本発明の送達システムにおいて、使用の環境下で生物分解可能な、すなわち、体により再吸収され得るあらゆるポリマー材料を意味する。
好ましい態様における本発明は、血液−脳関門を横切って活性輸送される分子を前記ナノ粒子の外部表面に結合する工程、または、血液−脳関門を横切って活性輸送される分子に対する脳内皮細胞レセプターに特異的な抗体を前記外部表面に結合する工程を含む。
【0066】
前述の分子は、好ましくは、トリプトファン、5−ヒドロキシトリプトファン、トランスフェリン、インスリン、メラトニン、セロトニン、またはインスリン様成長因子IおよびIIから選択される。この結合を行う技術およびメカニズムに関しては、WO03039677およびWO9104014の内容を完全に引用し、これらを本明細書中に出典明示により組み込む。例えば、この結合は、スぺーサー分子により、または直接共有結合によりなすことができる。
【0067】
経口摂取されたセロトニンは、これは、血液−脳関門を横切らないので、脳神経系のセロトニン作用経路内部に通過しない。しかしながら、セロトニンを合成するトリプトファンおよびその代謝産物5−ヒドロキシトリプトファン(5−HTP)は、前記血液−脳関門を通過することができ、通過する。
メラトニンは、それ自体で、細胞膜、および特に前記血液−脳関門を容易に通過することができる。
【0068】
第二の側面によれば、本発明は、前述の方法により得ることができるナノ粒子、およびこのようなナノ粒子と医薬上許容されるキャリアおよび/または希釈剤とを含む医薬組成物に関する。
実施態様において前記ナノ粒子を使用するために、それらは、蒸留水または通常の生理食塩水を用いて生理学的pHおよび浸透圧で、懸濁液に再構成してよい。
【0069】
典型的には、前記ナノ粒子は、懸濁液ml当たり0.1mgナノ粒子から懸濁液ml当たり100mgナノ粒子の範囲の濃度で、注入可能な懸濁液中に存在する。ml当たり10mgのナノ粒子が好ましい。使用するナノ粒子の量は、個々のナノ粒子に含まれる医薬の量に強く依存し、当業者または監督する医師は、前記ナノ粒子の投与量を特定の状況に容易に適合させることができる。
【0070】
好ましくは、前記送達ビヒクルまたは医薬組成物は、前記1つ以上の医薬のインビボでの長期放出または持続放出を示す。本発明の原則に従い作製されるこれらのナノ粒子は、数時間から6か月以上の範囲の時間で生物分解する。
【0071】
別法として、前記医薬組成物は、他の生理学的バリアに対して、および他の生物学的バリアを横切って前記送達ビヒクルを輸送するために、例えば、前記血液−空気関門に対しておよびそれを横切るために必要とされる他の形態をとってもよい。それゆえ、それは、例えば、前記組成物を吸入により問題のバリアへ送達するために、エアロゾルなどの形態を有していてよい。
【0072】
本発明は、さらに、医薬が1つ以上の生理学的バリアを横切ることを要する疾患および状態の治療のための医薬を製造するための、本明細書中に規定する送達ビヒクルまたは医薬組成物の使用を提供する。それは、特に、前述のとおり列挙した薬剤に対応する疾患の治療のために使用される。
【0073】
特に、前記送達ビヒクルについては、CNSに関連する疾患の治療における適用が見出される。さらに、進行したAIDSを有する多くの人−おそらく、成人の3分の1および全子供の半分−において、HIVは脳に侵入し、そしてこれを損傷し、HIV関連痴呆を誘発するので、これは、AIDSの治療を含む。この疾患は、乏しい集中力、低下した記憶ならびに緩慢な思考および動作により特徴付けられる。しかしながら、前記ウイルスを脳において標的することは特に困難である。ここで、本発明は、抗HIV剤を脳に送達することにより、新規な治療上の成功を開け得る。
【0074】
本明細書中に記載される全刊行物、特許出願、特許および他の引用文献は、出典明示によりその全容をここに組み込む。相反する場合は、定義を含め、本明細書が支配する。加えて、材料、方法および実施例は、単なる例示であり、限定を意図するものではない。
【実施例】
【0075】
材料
n−ブチルシアノアクリレート(BCA、Indermil(登録商標)、Henkel Loctide)を標準的な方法で使用した。塩酸(0.1モル・l−1)、水酸化ナトリウム溶液(0.1モル・l−1)、トリス塩基(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、アンモニア溶液(25%)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および全アミノ酸(6−アミノヘキサン酸、アルギニン(Arg)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)、システイン(Cys)、グリシン(Gly)、リジン(Lys))は、Aldrichから購入したフェニルアラニン(Phe)を除いてMerckから購入した。トゥイーン20は、Sigma−Aldrichから購入した。ルテンソールAT50、すなわち約50ユニットのEOブロック長を有するポリ(エチレンオキシド)ヘキサデシルエーテルは、BASF AGからの好意により授与された。全試薬は、標準的な方法で使用した。
【0076】
ナノ粒子の合成
n−ブチルシアノアクリレートミニエマルジョンの調製およびこれに続く重合の開始のための標準的な方法
12.0gの塩酸(0.1モル・l−1)中0.3gのSDSの溶液を、3.0gのBCA中0.125gのヘキサデカンの溶液に、超音波処理の直前に添加した。この二相性混合物をBranson sonifier W450(90%振幅0.5インチチップ)で2.5分間氷冷下に超音波処理した。超音波処理後、乳白色のエマルジョンが得られた。この標準的方法において、使用する量は変え、使用する前記試薬の比率は維持する。重合は、前記ミニエマルジョンを水酸化ナトリウム溶液(0.1モル・l−1)に攪拌下に注ぐことにより開始した。
【0077】
界面活性剤のバリエーション
界面活性剤のタイプの影響を決定するために、前記ミニエマルジョンを、異なる界面活性剤を用いる以外は前述の方法で調製した。SDSに加えて、ルテンソールAT50およびトゥイーン20を用いた(表1を参照されたい)。重合は、前記ミニエマルジョンを12.0gの水酸化ナトリウム溶液(0.1モル・l−1)に攪拌下に注ぐことにより開始した。
【0078】
超音波処理時間および界面活性剤の量のバリエーション
ミニエマルジョンを、界面活性剤としてSDSを用いて前述のように調製した。90、120、150および180秒の超音波処理時間後、500μlの前記ミニエマルジョンを回収し、次いで、375μlの水酸化ナトリウム溶液(0.1モル・l−1)に注入した。
【0079】
モル質量の時間依存性
ミニエマルジョンを、前述の方法で調製した(BCA9.0g、HD0.375g、HCl36.0g;SDS0.9g)。500μlのサンプルをピペットで回収し、前記ミニエマルジョンを36.0gの水酸化ナトリウム溶液(0.1モル・l−1)に攪拌下に注ぐ直前に、液体窒素に浸した容器に注入した。初めの120秒の間、10秒毎に、500μlのサンプルを採取し、前述と同じ方法で処理した。この操作を、サンプル回収の間隔を長くして、2週間かけて行った。凍結サンプルは凍結乾燥した。生じたポリマー粉末のモル質量を、GPCにより決定した。
【0080】
イニシエーターのタイプおよびイニシエーターの量のバリエーション
重合を開始するために、500μlの新鮮に調製したミニエマルジョンを、種々の量の水酸化ナトリウム溶液(0.1モル・l−1、表2を参照されたい)、トリス塩基溶液(0.1モル・l−1)、アンモニア溶液(0.1モル・l−1)(ともに表3)および種々のアミノ酸の溶液(表4を参照されたい)にワンショットで注入した。
【0081】
透析
前記分散液を、Amicon超遠心分離フィルター(30,000メンブレン、Millipore)を用いて透析した。
【0082】
キャラクタライゼーション
粒子サイズおよびζ−ポテンシャルを、Zetasizer Nano ZSで測定した。光子相関法(PCS)測定のために、35μlの前記分散液をピペットで、1回使用のポリスチレンキュベットに取り、次いで1.5mlの脱塩水で希釈した。
【0083】
ζ−ポテンシャル測定のために、50μlの前記分散液を5mlの総体積および所望のpHまで希釈した。pHは、0.1モル・l−1のNaOHおよびHCl溶液で調整した。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、前記ナノ粒子のポリ(n−ブチルシアノアクリレート)の重量平均分子量を決定した。重合が完了した後、サンプルを−22℃で凍結し、次いで凍結乾燥した。生じた粉末を1mlのTHF中に溶解し、この溶液を0.45μmの洗浄フィルターにより濾過した。装置は、Waters Styragel 5μm粒子、100nm孔サイズ、PSS SDV 5μm粒子、1μm孔サイズ、PSS SDV 10μm孔サイズカラムおよびThermal Separations Products AS100オートサンプラーを備えたThermal Separations Products P2000ポンプから構成した。溶出剤は、1ml・分−1の流速を有するTHFp.a.であった。シグナルを、Waters2410 RI−ディテクターおよびKnauer Variable Wavelength Monitor UV−ディテクターを用いて検出した。モル質量を、PSスタンダードに対して算出した。
【0084】
TEM画像を、80kVの高速電流でPhilipps TEM 400を用いて取得した。5μlの前記分散液を5mlの脱塩水で希釈し、4μlの液滴を炭素被覆銅格子(200メッシュ)上に載せ、次いで空気乾燥した。さらなる染色は行わなかった。
【0085】
これまで、PBCAナノ粒子は、ほとんど、典型的なエマルジョン法により調製された。強酸は、ACAの重合を効率的に阻害することが公知であるので{Pepper, 1978 #26}、{Pepper, 1983 #29}、{Costa, 1983 #30}、発明者らは、ここに、連続相としての0.1モル・l−1塩酸中でのミニエマルジョン化により、疎水性BCAの安定なモノマー滴を調製した。次いで、前記液滴の作製後、前記ミニエマルジョンをNaOH溶液に注ぐことにより、アニオン重合を開始した。前記ミニエマルジョンの調製中の前記モノマーのエバポレーションおよび重合中の前記分散液の加熱は、パルス超音波の使用および前記系の冷却により、最小限に抑えることができる。
【0086】
アニオン性界面活性剤SDSを、BCAミニエマルジョンおよび続いて形成されるPBCA分散液の安定化のために、まず選択した。結果を表1にまとめる。SDSの使用により、BCAに対して1%の界面活性剤を用いて、10%の固形分量でPBCA分散液が形成され得、直径約300nmの安定な粒子が得られる。SDS濃度を増すと、前記粒子サイズは低下し(図1を参照されたい)、かつ前記サイズ分布(PDI指標)は狭くなる。
【0087】
【表1】

【0088】
図1:界面活性剤濃度に伴う、150秒の超音波処理時間における粒子サイズ(白丸)およびMの変化(点線は、目視評価のための規準である)。
ミニエマルジョンにおける液滴の平衡サイズは、分散される相の量に対する界面活性剤の量により決定される。この平衡は、超音波のような強い剪断力の適用により達成する。特徴的な超音波処理時間後は、液滴サイズはそれ以上は低下させることができない。なお、より長い超音波処理時間を適用すると、サイズ分布はわずかに狭くなる。図1は、他の超音波処理時間に関する典型例としての150秒の超音波処理時間に関する粒子サイズの変化を示す。
【0089】
NaOH溶液と混合後2日目に測定した(1%のSDSを用いた)前記ポリマーの重量平均分子量Mは、約15,000g・モル−1の単相分布を示す。界面活性剤の量の増加とともに、Mの値は低下する。これは、2日後、より小さな粒子が、より大きな粒子よりも短い鎖を有するポリマーから構成されることを示す。前記分散液を、調製後2日目に凍結したことに注意しなければならない。さらなる実験は、前記ポリマーのモル質量が、平衡分布が達成されるまでは、当該期間中、変化することを示す。1週間後に凍結したサンプルは、もはや単相質量分布は示さないが、長鎖ポリマーの出現を示す(図2および以下の記載を参照されたい)。
【0090】
SDSを用いて調製した全ポリマー分散液は、長期の安定性を示した。調製後2ヵ月後ですら、相分離を観察することができなかった。カチオン性界面活性剤、すなわち、第四級アミンの適用により、前記モノマーおよび前記水相を混合した際、即時の重合が生じる。残存している第一級および第二級アミンがこの原因である可能性がある。
【0091】
所望される10%の高い固形分量で不安定な分散液(それぞれ、サンプルL−10(超音波処理時間=120秒、d=908nm)およびT−10(超音波処理時間=120秒、d=769nm))を生じる非イオン性界面活性剤ルテンソールAT50およびトゥイーン20を選択した。10%を超えるさらに多量のこれら界面活性剤は、ラテックス分散液を効率的に安定化させることができなかった。調製の1時間後にすでに、全分散液は相分離を示した。
これらのデータに基づき、10%の濃度のSDSおよび150秒の超音波処理時間を、後に続く実験のために選択した。
図2:BCAミニエマルジョンから得られたGPCエルグラムと、PBCA分散液から得られた溶出時間の4週間の間における変化
【0092】
図3は、3つの選択された分散液からのTEM顕微鏡写真を示す。S−10は、10wt%のSDSを用いて(150秒の超音波処理時間、表1でマークしたサンプルを参照されたい)、L−10は10wt%のルテンソールAT50を用いて、およびT−10は、10wt%のトゥイーン20を用いて調製した。後の2つのサンプルは、沈澱が生じた分散液を、その沈澱を再分散させるために振とうした後にのみ、調製することができた。SDSを用いて調製した粒子のより小さなサイズおよびより大きな均一性が、明らかに認められる。
【0093】
図3:SDS(サンプルS−10)、ルテンソールAT50(サンプルL−10)およびトゥイーン20(サンプルT−10)(写真の左から右)を用いて調製した分散液のTEM画像;ルテンソールAT50およびトゥイーン20を用いて調製した分散液の画像は、粒子を再分散させた後にのみ得ることができた。
【0094】
1.2 粒子サイズおよび分子量におけるイニシエーターNaOHの量の影響
種々のBCAエマルジョン重合実験から、分散媒質のpHが、粒子サイズおよび分子量に影響を与えることが公知である{Behan, 2001 #8}、{Lescure, 1992 #14}。
ミニエマルジョンにおいて得られるPBCA粒子の特性におけるpHの影響を調べる。重合媒質のpHを、異なる濃度のNaOH溶液を添加することにより調整し、重合を開始した(表2を参照されたい)。NaOH溶液と前記ミニエマルジョンのHClの間の中和反応が、重合の開始および成長の工程よりも速いと考えた。ミニエマルジョンの場合、重合pHは、pH=7まで増すことができた。従来のエマルジョン法では、より高いpH値では、重合が速すぎて、凝塊が形成されるので、重合のpHは、4〜5より高いpH値では行うことができなかった{Behan, 2001 #8}。
【0095】
【表2】

【0096】
ミニエマルジョンにて得られた分散液のpHに関して、特に、高い算出pH値を考慮すれば、前記値が、時間とともにコンスタントに低下し、1日後に、期待される値以下の安定な値に達することを特記することができる(図4)。これは、前記反応中に予想外に多量のOHが消費されることを意味し(約10−2モル・l−1)、これは、Clもイニシエーターとして作用することを完全に除外することはできないが、OHが開始分子であるという仮定を裏付ける。全pHに関する粒子サイズは、別に論じる、明らかな依存性を観察することができない0から200μlの小体積のイニシエーターを考慮せずに(なぜなら、ここでは、重合は緩慢すぎるので)、150nmから220nmの狭い範囲に見出すことができる。前記値は7日間有意に変化しないので、すべての分散液が、凝結方向に安定であると考えることができる。
【0097】
NaOH溶液を添加しない(0μl)ミニエマルジョンに関する前記値は、極度に緩慢な重合を伴う「かき乱されていない(unperturbed)」ミニエマルジョンにおける粒子サイズの変化を示す。調製の直後、第1のGPC測定を行った場合、前記ミニエマルジョンのpHは、pH1.0の不変値を有するので、前記ミニエマルジョンは、未だエマルジョンであって、ポリマー分散液はないと考えることが妥当である。GPC測定のために前記ミニエマルジョンを希釈すると、重合が開始し、そのため、実際の液滴のサイズは正確には示されない可能性がある。所定のpH(1.0)でのミニエマルジョン系でのn−BCAの重合速度は未知であるので、前記液滴の「凝結」の時間を決定することは不可能である。第1日目中の前記液滴の明らかな成長および、第1日目と第2日目の間の一定のサイズでもって、サイズの安定なポリマー粒子の形成が、この時間の後に完了したと見なすことができる。ヘテロ相開始反応により、OHの前記モノマーへの結合により、前記オリゴマーの親水性が増し、この結果、前記オリゴマーを連続相中で拡散させることが可能となり、次いで、前記液滴の成長を説明する前記液滴のオストワルド熟成が引き起こされ得る。7日後、前記分散液中に沈澱が認められる。これにより、巨大粒子は前記測定にもはや含まれないので、検出される粒子サイズはより小さくなる(そして、分布はより狭くなる)。さほど顕著ではないが、同じ効果を、100および200μlのNaOH溶液に関する値に関して認めることができる。
【0098】
より高い初期pHで調製した粒子は、明らかに、粒子サイズのこの低下を示さないので、液滴から粒子への変化が数分後に完了したと考えることができる。
まとめると、pH>2に関し、粒子サイズは、開始および重合中の連続相のpHにより、さほど影響を受けないようである。このpH以下では、液滴から粒子への変化のための時間は、液滴の成長(オストワルド熟成)の時間よりも遅い。
図4:算出値と比較したpHの変化。各NaOH溶液の体積を選択して、最終分散液に関して算出pH値を得た。反応中のOHの消費は、算出においては無視した(点線は、目視評価のための規準である)。
【0099】
異なるNaOH量の添加で得られたサンプルのGPCの記録を、図5に示す。0、100および200μlのイニシエーター溶液から生じる前記ポリマーのモル質量は、狭い質量分布(4,000g・モル−1で最大)と非常に少量の高分子ポリマーを示す。300から400μlの体積のイニシエーター(算定pH2.0および11.5)を用いて得られたポリマーは、約4,000gモル−1に一つの最大と600,000g・モル−1(PSスタンダードに対して与えられる)に一つの二相質量分布を示す。両極間の質量を有するポリマーフラクションは、少量でしか存在しない。対応する分散液は、算出される値よりもわずかに低いpH<3を有する。残りのサンプルは、算定値(pHダイアグラム中、「プラトー」に対応する算定値11.9から12.6)よりも有意に低いより大きなpH値を有する分散液に相当する。これらの条件下で形成されたポリマーは、約10,000g・モル−1に最大を有する単相質量分布を示す。
【0100】
これらの結果は、デキストランを立体安定剤として使用する従来のエマルジョン重合により粒子を調製したBehanら{Behan, 2001 #8}のものと同様である。初期に酸性媒質(pH2〜3)中で重合を行う限り、相対的に低分子量のポリマーが得られるが、初期に、前記重合媒質がより高いpH(pH5)を有すると、長鎖が追加的に現れる。Behan ら {Behan, 2001 #8}、{Behan, 2000 #31}により得られた値は、この記録で示される値よりも低いが、およその傾向は同じである。
図5:イニシエーター(NaOH溶液)体積(各部分の右側に記載した数)を用いて得られたポリマーのモル質量変化、7日後に凍結した粒子
【0101】
分散液の凍結を、調製後7日目に行ったことを強調しなければならない。あるpH(初期7)に関して、初期の質量分布は、調製後の期間中に変化することを示すことができたので(図2を参照されたい)、これは非常に重要である。それゆえ、多量の分散液を調製した。前記粒子サイズは125nmであった。
【0102】
凍結乾燥したミニエマルジョンは、GPCエルグラムにおいて、約1,400g・モル−1(PSスタンダードに対して算出する)の質量に対応する約33.3mlのピークを示す。これは、NaOH溶液は添加されていないので、ミニエマルジョン(Clにより開始され得る)または凍結したミニエマルジョンのいずれかで、重合が開始したことを示す。前記ミニエマルジョンをNaOH溶液に添加した直後、約10,000g・モル−1の最大Mを有するポリマー(約29mlの溶出体積)が形成される。48時間の間、モル質量分布の変化は認められない。この時間の後、高分子量および低分子量のポリマーが形成され始める。形成されたオリゴマーは、脱重合プロセスが進行している兆候である。これらのオリゴマーは消滅するが、長鎖ポリマーの量は、最終分散液が約1週間後に達するまで増加する。低分子量フラクションの最大は、7,500g・モル−1の値までシフトする(約30mlの溶出体積)。
【0103】
これらの観察は、図6に示すように、Ryan{Ryan, 1996 #37}により提唱されるpH依存性の脱/再重合/再開始メカニズムに従い、かつ、これを用いて説明することができる。
図6:脱/再重合について提唱するメカニズム{Ryan, 1996 #32}
【0104】
アミンイニシエーター
ACAのアニオン重合は、求核剤により開始する。アセテートイオンのような「弱い」求核剤ですら、ACAの重合を開始する能力を有する{Pepper, 1992 #33}、{Johnston, 1981 #34; Johnston, 1981 #35; Johnston, 1981 #36}。簡単に前述したように、成長しているポリマーは、イニシエーター分子により官能基化される。ナノ粒子がそのような官能基化されたポリマーから形成され、かつ、その官能基が(その親水性のために)粒子の表面にあることを保証できれば、このアプローチは、官能基化された表面を有するPACA(ナノ)粒子を調製する好都合な方法を提示する。
【0105】
ナノ粒子の表面調整により、生物医学適用に対するその可能性が高まる。前記表面における官能基の存在は、タンパク質またはヌクレオチドのような生物活性リガンドでのさらなる化学修飾のために必要とされる。さらなる化学反応のための可能性に加えて、アミノ基またはカルボキシル基のような荷電基の導入は、粒子の表面電荷に影響する。これは、結果として、分散液中での粒子の安定性{Chern, 2001 #37}および細胞における摂取動態{Lorenz, 2006 #38}、{Holzapfel, 2005 #39}に影響を及ぼし得る。
【0106】
極性、親水性アミンの適用により、生じるオリゴマーおよびポリマーは、開始アミンから生じる親水性の頭部と疎水性末端−(成長)ポリマーを有する界面活性剤様の両親媒性構造を有する。この構造のために、前記ポリマーの親水性官能基化末端は、ほぼ確実に、モノマーと水の間の界面の水性側に見出され得る。
【0107】
二官能基アミンにより、前記粒子の表面へ官能基をさらに導入することが可能となる。生物医学的適用およびタンパク質の粒子へのポテンシャル結合の範囲で、アミノ酸は、前記分子の開始部である「強い」求核剤部分(−NH)と、少なくともプロトン化された形態ではほぼ確実に重合を開始せず、それゆえその後の化学反応に有用な「弱い」求核部分(−COOH)を含むので、イニシエーターとして適当な候補である{Kulkarni, 1971 #27; Leonard, 1966 #28}。
前述のように、イニシエーターOHの量は、前記ポリマーのモル重量に関しては重要であるが、粒子サイズは、全ての適用したpH値にわたって、近接した範囲にある。これらパラメータにおける種々の量のアミンイニシエーターの影響をこの箇所で論じる。
【0108】
アンモニアおよびトリス塩基
モデルアミンとして、アンモニアとトリス塩基(トリス(ヒドロキシエチル)アミノエタン)を選択した。各0.1モル・l−1の濃度を有する溶液を、そのpH値(pH>9)を調整せずに、調製した。これは、溶液中のアミンに加えて、OHも存在することを示す。すなわち、アミンとヒドロキシルイオンの間で、重合の開始に関して競争がある。粒子サイズおよびPDIを表3にまとめる。OHを用いた実験におけるものと同体積のイニシエーター溶液を選択した。アンモニア(600μL−1000μl)を用いて調製したサンプルのいくつかは、調製後、わずかに黄色の着色を示す。これは、Leonard{Leonard, 1966 #44}により観察されており、ブチルエステル基の加水分解後の反応産物と解釈されている。
【0109】
イニシエーターの濃度により事実上影響を受けない、NaOH溶液を用いて調製した粒子のサイズと対照的に、アミンイニシエーターの濃度における明らかな依存性が認められる。両アミン溶液を用いて得られたポリマー粒子のサイズは、同じパターンに従い、アンモニアを用いて調製した粒子は、トリス塩基溶液を用いて調製した粒子よりも小さい。各々の100μlサンプルは、残りのサンプルよりも有意に大きな粒子サイズを示す。急な低下の後、前記値は、約400μlイニシエーター溶液で最小に達し、そして再び増加する。
【0110】
100μlおよびトリス塩基に関してはさらに200μlのイニシエーター体積を用いて得られた同程度に大きな粒子は、OHに関する、前記粒子のより長い凝結時間を用いて説明することができる。
アミンを用いて調製した粒子の直径は、NaOH溶液を用いて調製した粒子の直径よりも有意に小さい。約200nmの値の代わりに、前記粒子は60から100nm、特に、100から140nmの範囲である。これは、前記ポリマーの界面活性剤様構造によるさらなる安定化の結果であろう。
【0111】
【表3】

【0112】
アンモニアで重合開始したポリマーに関するモル質量分布(図7を参照されたい)は、OHで重合開始したポリマーから得られる値とは異なる。主な違いは、全サンプルにおける高モル質量ポリマーの出現である。前記量は、100μlから306.8μlのイニシエーター溶液まで増加する。分布は広く、そして、サンプルを通じて小さな変化しか示さない。低分子量フラクション(32mlの溶出体積で最大、M〜3,500g・モル-1)は、溶出体積の29mlへの最大のシフトを伴って(M〜10,000g・モル-1)、100μlから382.4μlまでコンスタントに低下している。より多くのイニシエーター溶液の適用を用いて、低分子量フラクションの量は再び増加し、約31mlでその最大を示す(M〜5,000g・モル-1)。
【0113】
トリス塩基溶液を用いて開始した前記ポリマーのモル質量分布(図8を参照されたい)は、OHで開始したポリマーサンプルならびにアンモニアで開始したサンプルのパターンと似通っている。多量の長鎖ポリマーは、中程度の量のイニシエーターでのみ認めることができ、他のセットで得られるものよりも低い値での広い分布を示す。低モル質量フラクションの最大は、約31mlで認めることができる(M〜5,000g・モル-1)。このフラクションの相対量は、100μlから443.3μlまでコンスタントに低下し、次いで再び増加して、1000μlのイニシエーター溶液で最大に達する。
図7:イニシエーター(アンモニア溶液)体積(各部分の右側に記載した数)を用いた場合の溶出体積の変化。調製後2日目に凍結したサンプル。
図8:イニシエーター(トリス塩基溶液)体積(各部分の右側に記載した数)を用いた場合の溶出体積の変化。調製後2日目に凍結したサンプル。
【0114】
アミノ酸
前記ポリマーのアミノ酸での官能基化のために、前記アミノ酸は、単独の、または少なくとも主要な開始分子であることが確認されなければならない。すなわち、ヒドロキシイオンによる重合の開始を最小限に抑えるために、前記アミノ酸溶液のpHは、低くなければならない。これは、他方で、前記アミノ基を、pKにより決定されるある程度までプロトン化し、「活性」イニシエーター、すなわち、脱プロトン化されたアミノ基を有するアミノ酸分子の量を低下させる。
【0115】
安定な分散液を、酸性溶液中でフェニルアラニンを、酸性および塩基性溶液中でグリシンおよび6−アミノヘキサン酸を用いて作製することができた。7より低いpH値を有するリジン、システイン、アルギニン、グルタミン酸およびアスパラギン酸溶液は常に、前記ミニエマルジョンの凝結および沈澱を生じる。塩基性溶液中では、凝結物は形成されなかったが、透明な黄色または橙色の着色溶液の形成を観察することができた。溶解および着色は、ブチルエステル基の加水分解および水溶性ポリシアノアクリル酸の形成の明らかな兆候である。着色は、Leonard {Leonard, 1966 #28}によれば、PACAの変性の兆項でもある。
【0116】
【表5】

【0117】
表5から入手でき、かつ図9に視覚化したデータは、粒子サイズが、350nmより大きな値から70nmもの低さの値までの範囲をカバーすることを示す。ほとんどすべての分散液が、0.1以下というPDIにより表される、極めて狭い分布を示す。
【0118】
NaOH溶液をイニシエーターとして用いた実験と対照的に、そして、アンモニアおよびトリス塩基を用いて調製した粒子の結果に従い、「活性」イニシエーターの量への粒子サイズの明らかな依存性を認めることができた。イニシエーター溶液のより高い濃度、より高いpHおよびより多くの量は、ほとんどすべてのシリーズにおいて、より小さな粒子を生じる。
【0119】
6−アミノヘキサン酸溶液を用いて調製した粒子のサイズに関し、イニシエーターのpHへの、およびある程度までイニシエーターの量への依存性が認められる(図9の左を参照されたい)。粒子サイズは、イニシエーター溶液のpHの増加に伴い増加し、pH4.4から5.4の間で大きな影響を有し、pH5.4から10.0の間でより小さな影響を有した。塩基性(pH10)6−アミノヘキサン酸溶液を用いて調製した粒子のサイズは、トリス塩基およびアンモニア溶液を用いて調製した粒子に関する値と同様の変化を示す。100μlから200μlのイニシエーター溶液の粒子サイズの低下後、曲線は、わずかな増加を示し、1000μlのイニシエーター溶液に関して最も高い値を有する。他の6−アミノヘキサン酸溶液を用いて調製した粒子も、イニシエーター溶液の初期体積からそれに続く体積までサイズの低下を示す。その後の値は、ほとんど一定を維持する。
【0120】
グリシン溶液を用いて調製した粒子に関する値は、ほとんどの場合において、前述のパターンに従う(図9右を参照されたい)。2モル・l−1のグリシン溶液を用いて調製した粒子が、最も小さいようであり、0.1モル・l−1溶液を用いて調製した粒子が、最も大きなサイズ値を示す。1つの濃度範囲内で、前記粒子サイズは、適用した最低のpHから最高のpHまで、0.5モル・l−1溶液を除いて低下する。同じ傾向を、100μlから1000μlのイニシエーター溶液で観察することができた。曲線の傾きは、グリシン溶液のpHおよび濃度の増加とともに、なだらかになる。
図9:0.5モル・l−1の6−アミノヘキサン酸で重合開始した(左)およびグリシン溶液で重合開始した(右)粒子サイズの変化(点線は、目視評価のための規準である)。右図の凡例中の数は、前記溶液のモル濃度(ダッシュ前)およびpH(ダッシュ後)を示す。
【0121】
前記アミノ酸と前記モノマーの反応から生じるオリゴマーは、前記アミノ酸の高い親水性のために、水溶性であると予想される。それゆえ、重合は、一滴に限られず、液滴は、凝結が開始しないか、または、PBCA鎖の疎水性が支配する限り、オストワルド熟成を受け、そして、前記分子はもはや水相には溶解できなくなる。少量の開始ポリマー鎖が存在する場合、より多くの成長鎖が存在する場合よりも凝結に時間がかかる。この時間中、粒子はそのサイズを増し得る。この効果にも関わらず、全サンプルで、狭い粒子サイズ分布を認めることができる。起こり得る、界面活性剤様オリゴマーから形成されるミセルの発生のために、粒子形成のプロセスがより複雑となっている可能性がある。
【0122】
重合時間が極端に長い場合、液滴は臨界サイズを超え得、これにより、凝結に至り、そして重合後、粒子の沈澱に至る。すなわち、100μlの6−アミノヘキサン酸溶液をpH4.4で、およびグリシン溶液を、0.5および2.0モル・l−1の濃度でpH2.4で使用して、安定な分散液を得ることはできなかった。
【0123】
粒子サイズにおけるこの変化にも関わらず、すべてのポリマーサンプルは、狭くかつ単相の、ほぼ同じモル質量(PSに対して修正した約4,000g・モル−1で最大)および質量分布を示す。4,000g・モル−1のモル質量に関し、重合度は約P〜26である。これは、モノマーとイニシエーターの比がほぼ1:25であることを意味する(下記のH−NMRを参照されたい)。均一なエルグラムについて、これは全サンプルに関して当てはまらなければならない。塩基性イニシエーター溶液(NaOH、NHおよびトリス塩基)を用いて調製した粒子と対照的に、前記イニシエーター体積の変化において、サンプル間で質量分布に有意な変化を認めることができない。これは、少なくとも試験した範囲における、イニシエーターのpH、濃度および体積の非依存性を含意する。調製のために使用した2つのアミノ酸の間には小さな偏差しかない。
図10:6−アミノヘキサン酸で重合開始したサンプルのGPC溶出体積:a)pH4.4 b)pH5.5 c)pH10
図11:グリシンで重合開始したサンプルのGPC溶出体積:a)Gly 0.1 pH3.4;b)Gly 0.5、pH3.4;c)Gly 2.0、pH3.4
【0124】
図12に示すように、ζ−ポテンシャルのpH依存性が、アミノ酸を用いて調製したサンプルに関して明らかに認められる。アミノ酸を用いて調製した粒子のζ−ポテンシャルは、酸性媒質(pH3)中で、塩基性媒質(pH10)よりも〜10mV高い。NaOH溶液を用いて調製した粒子は、わずかなpH依存性を伴うζ−ポテンシャルを示す。塩基性媒質中では、ブチルエステル基の加水分解が起こり得るため、これは驚くことではない。アミノ酸溶液を用いて調製した粒子と比較して、この効果は顕著ではない。
【0125】
ζ−ポテンシャルの〜50mVの増加は、前記粒子に吸着されるSDSの(透析による)分離による。よりいっそう透析を経ることで、分散液を脱安定化させる、SDSのさらなる除去が生じ、沈澱の形成に至る。この効果は、アミノ酸溶液で調製したサンプルでは観察することができない。反対に、透析後は、ζ−ポテンシャルのわずかな低下が生じる。分散液は透析中に希釈されるので、分散液のpHが増加し、生じるエステル基の加水分解により、前記粒子において、追加の負の電荷が形成され得る。
【0126】
粒子表面にカルボキシ基が存在する場合、ζ−ポテンシャルのpH依存性が認められる。塩基性媒質中では、酸基は脱プロトン化され、前記粒子上に負の電荷を残し、酸性媒質中では、酸基はプロトン化されるので、この負の電荷はもはや存在しない。それゆえ、ζ−ポテンシャル測定は、希釈した分散液のpHを3および10の値にそれぞれ調整した後で行った。なお、アミノ酸が粒子の表面に吸着されているだけの可能性がある。この可能性を排除するために、吸着された分子およびある程度までSDSを除去するために、分散液を透析した。
図12:pH3および10での透析前および透析後のζ−ポテンシャル
【0127】
図13および14は、NaOH溶液(0.1モル・l−1)および6−アミノヘキサン酸溶液(pH4.4、0.5モル・l−1)を用いて重合開始した分散液から得たポリマーのH−NMRスペクトルを示す。図13に、前記スペクトルのピークを同定でき、前記ポリマーと、ヘキサデカンをアサインできる。図14に示すスペクトルは、6−アミノヘキサン酸のプロトンから生じる可能性のある2つの追加のピークを示す。6−アミノヘキサン酸はCDClにおける溶解性に乏しいので、NMRにより検出するために、前記酸は、前記ポリマーに共有結合されなければならない。ピークの積分の比はa:3であり、アミノ酸対モノマーの比が約1:22であることを示し、これは、GPC値から得られた1:25の比に非常に良く一致している。
図13:NaOH溶液(0.1モル・l−1、算出pH7)で重合開始したポリマーのH−NMRスペクトル
図14:6−アミノヘキサン酸溶液(pH4.4、0.5モル・l−1)で重合開始したポリマーのH−NMRスペクトル
【0128】
アミノ酸の前記ポリマーへの結合の直接的に確認するため、フェニルアラニンをイニシエーターとして適用した。pBCAはUV活性を示さないので、それは、UVディテクターではなく、GPC装置のRI−ディテクターによってのみ検出することができる。UV活性イニシエーターフェニルアラニンの導入は、ポリマー鎖を標識し、その結果、それは、UVディテクターにより観察することができる。両ディテクターのシグナルがフェニルアラニンで重合開始したポリマーに関してほぼ適合するので、UVシグナルはフェニルアラニンから生じ、前記アミノ酸は前記ポリマーに共有結合しているはずと考えることができる。
【0129】
不幸にも、前記粒子を電子顕微鏡で直接観察することはできなかった。前記粒子は、乾燥中フィルムを形成する傾向があり、これによりTEMサンプルを調製することができない。凍結乾燥中ですら、フィルム形成プロセスが生じる。NaOH溶液を用いて調製した分散液を用いて可能なように微細粉末が得られる代わりに、オフホワイトのガム状の塊が、アミノ酸溶液を用いて調製した分散液の凍結乾燥の結果である。
低分子量、官能基化されたポリマーによる水の強い吸着または残りのモノマー{Behan, 2001 #8}が、この効果の理由である可能性がある。
【0130】
結論
ミニエマルジョンアプローチにより、官能基化された表面を有するpBCAナノ粒子を製造するための非常に強力で便利な手段が提供されることを示すことができた。アニオン性界面活性剤SDSの適用により、長期間安定な分散液を10%以上の固形分量で調製することが可能となり、「真の」pBCA粒子を、前記表面上に共有結合デキストランまたは他の立体安定剤を用いずに得ることができる。2工程の方法は、重合のpHを広げ、それゆえ、同程度に高分子量のpBCAを得ることが可能となる。得られる粒子サイズは、ほとんどpHにより影響されず、150から200nmの間に見出すことができる。
【0131】
アミン溶液を用いる重合開始により、前記粒子の表面に官能基を導入する簡単な方法が提供される。アミノ酸溶液のイニシエーターとしての適用により、前記粒子を官能基化し、かつ、前記粒子サイズを80から350nmの範囲に調整することが可能となる。アミノ酸の存在は、ζ−ポテンシャル測定とNMRにより確認した。予備実験は、蛍光色素、ビタミンならびに無機ナノ粒子のカプセル化を、この方法を用いて実施できることを示す。
【0132】
異なる濃度およびpH値で重合を開始するための、L−ロイシンを用いる2工程のミニエマルジョン法
2つの別個の溶液を調製する。
溶液1:
4.8mlの0.1M HPOをフラスコ(PP)に添加する。次いで、120mgのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)をこの溶液に添加する。生じた溶液を、SDSが完全に溶解するまで攪拌する。
溶液2:
49.76mgのヘキサデカンおよび1.05mlのn−ブチル−α−シアンアクリレート(BCA、Indermil)をフラスコに添加する。前記フラスコを均一溶液が形成されるまで攪拌する。
【0133】
溶液2を溶液1に添加し、次いでミニエマルジョンを、生じた懸濁液の4分間の超音波処理(振幅70%、0℃)によりすぐに形成する。重合を、L−ロイシンにより開始する。
次いで、10の異なる体積(100μL−1000μl)、3つの異なるpH値(4、5、6)および3つの異なるモル濃度のL−ロイシンの異なる溶液を調製する(0.125、0.05、0.1モル/l)(表を参照されたい)。前記調製したBCAミニエマルジョンの500μlを、これら溶液の各々に添加する。生じた混合物を短時間攪拌し、次いで室温で30分間置く。この後、生じたナノ粒子の粒子サイズ、多分散指数(PDI)およびゼータポテンシャルを、表6および図15〜20に記載のごとく決定する。
【0134】
【表6】

【0135】
ルトロールおよびSDSにより安定化されるナノ粒子の重合を異なる濃度およびpH値で開始するための、L−ロイシンを用いる2工程のミニエマルジョン法
2つの別個の溶液を調製する。
溶液1:
9.0mlの0.1M HPOをフラスコ(PP)に添加する。次いで、0.045gのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および0.1128gのルトロールF68をこの溶液に添加する。生じた溶液をSDSおよびルトロールが完全に溶解するまで攪拌する。
溶液2:
0.1353gのダイズ油および2.05ml(2.255g)のn−ブチル−α−シアンアクリレート(BCA、Indermil)をフラスコに添加する。このフラスコを、均一溶液が形成されるまで攪拌する。
【0136】
溶液2を溶液1に添加し、次いでミニエマルジョンを、生じた懸濁液の4分間の超音波処理(振幅70%、0℃)によりすぐに形成する。重合を、L−ロイシンにより開始する。
0.05モル/lのL−ロイシン溶液9mlを4および5のpH値で用いて、標準的方法を開始した。図21を参照されたい。次いで、10の異なる体積(100μL−1000μl)、異なるpH値(4、5、6)および異なるモル濃度のL−ロイシンの異なる溶液を調製する(0.125、0.05、0.1モル/l)(表7を参照されたい)。前記調製したBCAミニエマルジョンの500μlをこれら溶液の各々に添加する。生じた混合物を短時間振とうし、次いで、室温で30分間置く。この後、生じたナノ粒子の粒子サイズ、多分散指数(PDI)およびゼータポテンシャルを、表7および図22〜27に記載されているように決定する。
【0137】
【表7】

【0138】
参考文献
1. Arias, J. L.; Gallardo, V.; Gomez-Lopera, S. A.; Plaza, R. C.; Delgado, A. V. Journal of Controlled Release 2001, 77, 309-321.
2. Reddy, L. H.; Murthy, R. R. Acta Pharm. 2004, 51, 103-118.
3. Kattan, J.; Droz, J.-P.; Couvreur, P.; Marino, J.-P.; Boutan-Laroze, A.; Rougier, P.; Brault, P.; Vranckx, H.; Grognet, J.-M.; Morge, X.; Sancho-Garnier, H. Investigational New Drugs 1992, 10, 191-199.
4. Steiniger, S. C. J.; Kreuter, J.; Khalansky, A. S.; Skidan, I. N.; Bobruskin, A. I.; Smirnova, Z. S.; Severin, S. E.; Uhl, R.; Kock, M.; Geiger, K. D.; Gelperina, S. E. Int. J. Cancer 2004, 109, 759-767.
5. Gulyaev, A. E.; Gelperina, S. E.; Skidan, I. N.; Antropov, A. S.; Kivman, G. Y.; Kreuter, J. Pharmaceutical Research 1999, 1564-1569.
6. Alyautdin, R.; Gothier, D.; Petrov, V.; Kharkevich, D.; Kreuter, J. European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics 1995, 41, (1), 44-48.
7. Olivier, J.-C.; Fenart, L.; Chauvet, R.; Pariat, C.; Ceccelli, R.; Couet, W. Pharmaceutical Research 1999, 16, (12), 1836-1842.
8. Behan, N.; Birkinshaw, C. Macromolecular Rapid Communications 2001, 22, 41-43.
9. Sullivan, C. O.; Birkinshaw, C. Biomaterials 2004, 25, 4375-4382.
10. Couvreur, P. CRC Critical Revievs in Therapeutic Drug Carrier Systems 1988, 5, (1), 1-17.
11. Couvreur, P.; Kante, B.; Roland, M.; Speiser, P. Journal of Pharmaceutical Sciences 1979, 68, (12), 1521-1524.
12. Limouzin, C.; Caviggia, A.; Ganachaud, F.; Hemery, P. Macromolecules 2003, 36, 667-674.
13. Behan, N.; Birkinshaw, C.; Clarke, N. Biomaterials 2001, 22, 1335-1344.
14. Lescure, F.; Zimmer, C.; Roy, D.; Couvreur, P. Journal of Colloid and Interface Science 1992, 154, (1), 77-86.
15. El-Egakey, M. A.; Bentele, V.; Kreuter, J. International Journal of Pharmaceutics 1983, 13, 349-352.
16. Douglas, S. J.; Illum, L.; Davis, S. S.; Kreuter, J. Journal of Colloid and Interface Science 1984, 101, (1), 149-158.
17. Douglas, S. J.; Illum, L.; Davis, S. S. Journal of Colloid and Interface Science 1985, 103, (1), 154-163.
18. Vasnick, L.; Couvreur, P.; Christiaens-Leyh, D.; Roland, M. Pharmaceutical Research 1985, 36-41.
19. Seijo, B.; Fattal, E.; Roblot-Treupel, L.; Couvreur, P. International Journal of Pharmaceutics 1990, 62, 1-7.
20. Labib, A.; Lenaerts, V.; Chouinard, F.; Leroux, J.-C.; Oullet, R.; van Lier, J. E. Pharmaceutical Research 1991, 8, (8), 1027-1031.
21. Chauvierre, C.; Vauthier, C.; Labarre, D.; H., H. Colloid Polym Sci. 2004, 282, 1016-1025.
22. Peracchia, M. T.; Vauthier, C.; Passirani, C.; Couvreur, P.; Labarre, D. Life Sciences 1997, 61, (7), 749-761.
23. Lathia, J. D.; El-Sherif, D.; Dhoot, N. O.; Wheatley, M. A. Pharmaceutical Engineering 2004, 24, (1), 1-8.
24. Nakajima, N.; Ikada, Y. Bioconjugate Chem. 1995, 6, 123-130.
25. Rasmussen, S. R.; Larsen, M. R.; Rasmussen, S. E. Analytical Biochemistry 1991, 198, 138-142.
26. Pepper, D. C. Journal of Polymer Science: Polymer Symposium 1978, 62, 65-77.
27. Kulkarni, R. K.; Bartak, D. E.; Leonard, F. Journal of Polymer Science: Part A-1 1971, 9, 2977-2981.
28. Leonard, F.; Kulkarni, R. K.; Brandes, G.; Nelson, J.; Cameron, J. J. Journal of Applied Polymer Science 1966, 10, (259-272).
29. Pepper, D. C.; Ryan, B. Makromol. Chem. 1983, 184, 383-394.
30. Costa, G.; Cronin, J. P.; Pepper, D. C.; Loonan, C. Eur. Polym. J. 1983, 19, (10/11), 939-945.
31. Behan, N.; Birkinshaw, C. Macromolecular Rapid Communications 2000, 21, 884-886.
32. Ryan, B.; McCann, G. Macromolecular Rapid Communications 1996, 17, 217-227.
33. Pepper, D. C. Makromol. Chem., Macromol Symp. 1992, 60, 267-277.
34. Johnston, D. S.; Pepper, D. C. Makromol. Chem. 1981, 182, 393-406.
35. Johnston, D. S.; Pepper, D. C. Makromol. Chem. 1981, 182, 421-435.
36. Johnston, D. S.; Pepper, D. C. Makromol. Chem. 1981, 182, 407-420.
37. Chern, C.-S.; Sheu, J.-C. Polymer 2001, 42, 2349 - 1357.
38. Lorenz, M. R.; Holzapfel, V.; Musyanovych, A.; Nothelfer, K.; Walther, P.; Frank, H.; Landfester, K.; Schrezenmeier, H.; Mailaender, V. Biomaterials 2006, 27, 2820-2828.
39. Holzapfel, V.; Musyanovych, A.; Landfester, K.; Lorenz, M. R.; Mailaender, V. Macromol. Chem. Phys 2005, 206, 2440-2449.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含み、下記工程b)における重合を、1つ以上の第一級または第二級アミンにより開始することを特徴とする、ポリアルキルシアノアクリレート(PACA)ナノ粒子を製造する方法。:
a)OおよびWタイプの液相、安定剤ならびに重合可能なACAモノマーを含むO/Wミニエマルジョンを調製する工程、
b)前記モノマーをアニオン重合により重合し、次いで、製造されたナノ粒子を単離する工程。
【請求項2】
前記第一級または第二級アミンが、アンモニア、トリス塩基またはアミノ酸から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アミノ酸が、フェニルアラニン、グリシン、L−ロイシン、トリプトファン、5−ヒドロキシトリプトファンまたは6−アミノヘキサン酸から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記W相および/またはO相に、好ましくは治療薬および診断薬から選択される1つ以上の医薬が含まれる請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記治療薬が、送達ビヒクルまたはキャリアなしでは生理学的バリアを横断することができないか、または十分に横断することができない物質から選択される請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記生理学的バリアが、血液−脳関門(bbb)、血液−空気関門、血液−脳脊液関門および頬粘膜からなる群から選択される請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記O層が、親油性溶媒、好ましくは、n−ヘキサン、ヘキサデカン、液体パラフィン、ビタミンE、ミグリオールまたはトリグリセリドの脂肪酸エステル、および重合可能なACAモノマーを含む請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記モノマーから得られる前記ポリマー材料が、生物分解可能であり、かつ、ポリアルキルシアノアクリレートからなる群から選択される固体またはフィルム形成ポリマーを含む請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリアルキルシアノアクリレートが、ポリブチルシアノアクリレートおよび誘導体、共重合体ならびにそれらの混合物である請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記安定剤が、下記の物質の1つ以上を含む請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。:
グリセロール、ソルビトールおよび他の1価または多価アルコール、好ましくは、ベンジルアルコールの脂肪酸エステル、グリセロールモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、またはソルビタンモノリエート;リン脂質、リン酸エステル、多糖、ベンジルベンゾエート、ポリエチレングリコール(PEG200、300、400、500、600)、ポリエチレングリコールヒドロキシステアレート、好ましくは、ソルトールHS15;ポロキサミン、好ましくは、ポロキサミン904、908または1508;ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル;エトキシル化トリグリセリド;エトキシル化フェノールおよびエトキシル化ジフェノール;ゲナポール(Genapol)(商標)およびバウキ(Bauki)シリーズの界面活性剤;ポリオキシルヒマシ油、好ましくは、クレモフォールELP;レシチン、脂肪酸の金属塩、脂肪アルコールスルフェートの金属塩;およびスルホコハクシネートの金属塩;好ましくは、ポリソルベート、より好ましくは、ポリソルベート20、60および最も好ましくは、ポリソルベート80;好ましくは、ポロキサマー、より好ましくは、ポロキサマー188、338または407;好ましくは、ポリオキシエチレングリコール、より好ましくは、ルテンソール(Lutensol)50または80;アニオン性界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム;ならびに、前記界面活性剤の2つ以上の混合物。
【請求項11】
前記ナノ粒子の外部表面に、血液−脳関門を横切って活性輸送される分子が結合されるか、または、血液−脳関門を横切って活性輸送される分子に対する脳内皮細胞レセプターに特異的な抗体が前記外部表面に結合される請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記分子が、トリプトファン、5−ヒドロキシトリプトファン、トランスフェリン、インスリン、メラトニン、セロトニン、またはインスリン様成長因子IおよびIIから選択される請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の方法により得られるナノ粒子。
【請求項14】
請求項13に記載のナノ粒子と、医薬上許容されるキャリアおよび/または希釈剤とを含む医薬組成物。
【請求項15】
医薬が1つ以上の生理学的バリア、好ましくは血液−脳関門を横切ることを要する疾患および状態の治療のための医薬を製造するための、請求項13に記載のナノ粒子または請求項14に記載の医薬組成物の使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate


【公表番号】特表2009−541462(P2009−541462A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517261(P2009−517261)
【出願日】平成19年7月3日(2007.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056697
【国際公開番号】WO2008/003706
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(507080097)ナノデル テクノロジーズ ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】