説明

2度撚集合機

【課題】素線に撚り返しが確実に付与せられかつ撚線の直線性が失われないようにする。
【解決手段】2度撚集合機は、各素線(W1)に撚時に発生する素線(W1)のねじりを打ち消す程度の撚り方向と逆方向のねじりを予め与えるねじり手段を備えており、前記ねじり手段は、全素線供給ボビン(9)の上方位置において左右側枠部(3) (4)に渡し止められかつ各フライヤ回転中心垂直軸(42)の上方に素線通過孔(45)を有しかつフライヤ(40)の下端環部(39)の素線(W1)を通過孔(45)を介して目板(18)に案内する水平素線ガイド部材(46)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2度撚集合機に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、たとえばノート型パソコンの基板と液晶画面をつなぐ電線のようなITに関連したコンピュータに使用される電線や携帯電話に使用される電線などは、これに用いられる素線が直径30μm以下に細線化してきており、10数μmの超極細線まで使用されるようになってきた。
【0003】
一般に極細線には銅合金が使用されるため、線が硬くて脆弱であるが、従来の2度撚集合機では、撚るさいに生じる素線のねじれを打ち消すような逆のねじりを予め素線に与える撚り返しがないため、撚り合わせるさいに断線が頻繁に起こる。さらに、撚り上がった線にねじれが起きたりする。このような極細線を撚り合わせる場合、一般的に撚り返しのある筒型撚線機が使用される。なぜなら、2度撚集合機では撚り返しがないからである。そこで、2度撚集合機で撚り返すことが考えられるが、この場合、2度撚集合機の本体外に回転素線供給装置が用いられているため、全体として広いスペースを必要とするし、両方に動力を要するので、電気使用量も必然的に多くなる。
【0004】
この問題を解決するため、本発明者は、下記特許文献1に開示されているような上記本体外に回転素線供給装置を必要としない2度撚集合機を提案した。すなわち、この2度撚集合機は、軸受を有する前後垂直部および両垂直部の下端間にある中間水平部よりなるクレードルと、クレードルの中間水平部に軸線を垂直にして配置せられた複数の素線供給ボビンと、クレードルの周囲を回転せしめられるアーチ状フライヤと、アーチ状フライヤの前端が取り付けられかつ周壁に横長孔を有する第1中空水平主軸と、アーチ状フライヤの後端が取り付けられかつ周壁に横長孔を有する第2中空水平主軸と、横長孔より中空部内にはめ入れられて第1中空水平主軸に取り付けられかつ複数の素線供給ボビンから繰り出された複数の素線を中空部および横長孔を通してアーチ状フライヤに案内するとともにアーチ状フライヤの回転にともなって複数の素線に1回目の撚を与える第1撚付与兼ガイドローラと、横長孔より中空部内にはめ入れられて第2中空水平主軸に取り付けられかつアーチ状フライヤの後端から引き出された複数の素線を横長孔および中空部を通して外へ向け案内するとともにアーチ状フライヤの回転にともなって複数の素線に2回目の撚を与える第2撚付与兼ガイドローラと、複数の素線に1回目の撚を与える前に、各素線に撚時に発生する素線のねじりを打ち消す程度の撚方向と逆方向のねじりを予め与えるねじり手段と、クレードルの前垂直部にある軸受に受けられた第1中空水平主軸後部と連通するように同垂直部背面に設けられた撚口と、撚口の後方に位置するように同垂直部に取り付けられた目板とを備えており、第2中空水平主軸の中空部から外に引き出された撚線が機外で巻き取られるようになされており、ねじり手段は、ボビンの素線を摺動通過させる下端環部を有しかつボビンの周囲を回転せしめられる略逆L状フライヤと、略逆L状フライヤの上端垂直短筒部が取り付けられたフライヤ回転中心垂直軸と、フライヤ回転中心垂直軸をボビン嵌合用垂直軸の上方に位置せしめるとともにボビン嵌合用垂直軸に対し着脱自在となされた連結部材と、各素線供給ボビンの後方位置においてクレードルの中間水平部に立てられた逆L状でフライヤ回転中心垂直軸の上方に素線通過孔を有する素線上向き誘導部材と、素線上向き誘導部材の水平部前端上面に取り付けられかつ素線通過孔を通過した素線を目板に案内するとともにボビンの回転にともなって素線にねじりを与えるねじり付与兼ガイドローラと、第2中空水平主軸の回転動力を各ボビン嵌合用垂直軸に伝達する伝動機構とよりなり、複数のボビン嵌合用垂直軸すべてがボビンとともに同時に同方向に同一回転数で回転せしめられるようになされているものである。
【特許文献1】特許第3396759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記提案度撚集合機で製造した撚線には、キンクが発生したり撚線が蛇行状となったりするという問題があった。そこで、本発明者はこの問題を究明したところ、つぎのことが判明した。すなわち、上記提案2度撚集合機は、各素線に撚時に発生する素線のねじりを打ち消す程度の撚方向と逆方向のねじりを予め与えるねじり手段の一部に、各素線供給ボビンの後方位置においてクレードルの中間水平部に立てられた逆L状でフライヤ回転中心垂直軸の上方に素線通過孔を有する素線上向き誘導部材と、素線上向き誘導部材の水平部前端上面に取り付けられかつ素線通過孔を通過した素線を目板に案内するとともにボビンの回転にともなって素線にねじりを与えるねじり付与兼ガイドローラとを有している。ところで、ねじり付与兼ガイドローラは、ねじり手段の構造上撚口より高い位置にならざるを得ないため、フライヤの下端環状部から撚口に至る素線部分は、ガイドローラのところで鋭角に折れ曲がる。その結果、フライヤの下端環部を摺動通過しボビンの回転にともなってねじりを付与された素線が、ガイドローラ部分で強い摩擦抵抗によりしごかれた状態になり、素線の移動にともなってねじりがガイドローラとの接触部分を境にして相対的にフライヤ方向に押し戻され密になる反面、撚口側にはねじりがなくなる。押し戻されたねじりの密度が摩擦抵抗に打ち勝つ一定値を超えると、ねじりを付与された状態で素線はガイドローラとの接触部分を通過する。このような現象が反復するため、最終的に複数の素線が撚り合わされた撚線にはキンクが発生したり、撚線が蛇行状になったりして撚線の直線性が損なわれる。
【0006】
本発明の目的は、撚線を構成する複数の素線それぞれに撚り返しを確実に付与しかつ製品である撚線の直線性が失われないように改良された2度撚集合機を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による2度撚集合機は、軸受を有する上下水平部、両水平部の間にある中間水平部、上水平部と中間水平部の各周縁部を連結している複数の側枠部および中間水平部と下水平部の各周縁部を連結している複数の支持脚部よりなるクレードルと、クレードルの中間水平部に軸線を垂直にして配置せられた複数の素線供給ボビンと、クレードルの周囲を回転せしめられるアーチ状フライヤと、アーチ状フライヤの上端が取り付けられかつ周壁に縦長孔を有する第1中空垂直主軸と、アーチ状フライヤの下端が取り付けられかつ周壁に縦長孔を有する第2中空垂直主軸と、縦長孔より中空部内にはめ入れられて第1中空垂直主軸に取り付けられかつ複数の素線供給ボビンから繰り出された複数の素線を中空部および縦長孔を通してアーチ状フライヤに案内するとともにアーチ状フライヤの回転にともなって複数の素線に1回目の撚を与える第1撚付与兼ガイドローラと、縦長孔より中空部内にはめ入れられて第2中空垂直主軸に取り付けられかつアーチ状フライヤの下端から引き出された複数の素線を縦長孔および中空部を通して外へ向け案内するとともにアーチ状フライヤの回転にともなって複数の素線に2回目の撚を与える第2撚付与兼ガイドローラと、複数の素線に1回目の撚を与える前に、各素線に撚時に発生する素線のねじりを打ち消す程度の撚方向と逆方向のねじりを予め与えるねじり手段と、クレードルの上水平部にある軸受に受けられた第1中空垂直主軸後部と連通するように同水平部下面に設けられた撚口と、撚口の下方に位置するように同水平部に取り付けられた目板とを備え、第2中空垂直主軸の中空部から外に引き出された撚線が機外で巻き取られるようになされており、ねじり手段は、ボビンの素線を摺動通過させる下端環部を有しかつボビンの周囲を回転せしめられる略逆L状フライヤと、略逆L状フライヤの上端垂直短筒部が取り付けられたフライヤ回転中心垂直軸と、フライヤ回転中心垂直軸をボビン嵌合用垂直軸の上方に位置せしめるとともにボビン嵌合用垂直軸に対し着脱自在となされた連結部材と、全素線供給ボビンの上方位置において複数の側枠部に渡し止められかつ各フライヤ回転中心垂直軸の上方に素線通過孔を有しかつフライヤの下端環部の素線を通過孔を介して目板に案内する水平素線ガイド部材と、第2中空水平主軸の回転動力を各ボビン嵌合用垂直軸に伝達する伝動機構とよりなり、複数のボビン嵌合用垂直軸すべてがボビンとともに同時に同方向に同一回転数で回転せしめられるようになされているものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明による2度撚集合機によれば、撚線を構成する複数の素線それぞれに撚り返しを確実に付与できかつ製品である撚線の直線性が失われない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0010】
なお、以下、「前」とは図2の紙面表側、図4〜6の下側を、「後」とは図2の紙面裏側、図4〜6の上側を、「左」とは図2および図4〜6の左側を、「右」とは図2および図4〜6の右側をそれぞれいうものとする。
【0011】
図示の2度撚集合機は、軸受を有する上下水平部(1)(2) 、両水平部(1)(2)の間にある中間水平部(3)、上水平部(1)と中間水平部(3)の各周縁部を連結している左右側枠部(4)(5)および中間水平部(3)と下水平部(2)の各周縁部を連結している左右支持脚部(6)(7)よりなるクレードル(8)と、クレードル(8)の中間水平部(3)に軸線を垂直にして配置せられた7つの素線供給ボビン(9)と、クレードル(8)の周囲を回転せしめられるアーチ状フライヤ(10)と、アーチ状フライヤ(10)の上端が中央に貫通孔を有する周面テーパ状円盤(11)を介して取り付けられかつ周壁に縦長孔を有する第1中空垂直主軸(12)と、アーチ状フライヤ(10)の下端が中央に貫通孔を有する周面テーパ状円盤(13)を介して取り付けられかつ周壁に縦長孔を有する第2中空垂直主軸(14)と、縦長孔より中空部内にはめ入れられて第1中空垂直主軸(12)に取り付けられかつ7つの素線供給ボビン(9)から繰り出された7本の素線(W1)を中空部および縦長孔を通してアーチ状フライヤ(10)に案内するとともにアーチ状フライヤ(10)の回転にともなって7本の素線(W1)に1回目の撚を与える第1撚付与兼ガイドローラ(15)と、縦長孔より中空部内にはめ入れられて第2中空垂直主軸(14)に取り付けられかつアーチ状フライヤ(10)の後端から引き出された7本の素線(W1)を縦長孔および中空部を通して外へ案内するとともにアーチ状フライヤ(10)の回転にともなって7本の素線(W1)に2回目の撚を与える第2撚付与兼ガイドローラ(16)と、7本の素線(W1)に1回目の撚を与える前に、各素線(W1)に撚時に発生する素線(W1)のねじりを打ち消す程度の撚り方向と逆方向のねじりを予め与えるねじり手段と、クレードル(8)の上水平部(1)にある軸受に受けられた第1中空垂直主軸(12)の下部と連通するように同水平部(1)下面に設けられた撚口(17)と、撚口(17)の下方に位置するように同水平部(1)に取り付けられた目板(18)とを備え、後述のように、第2中空垂直主軸(14)の中空部から外に引き出された撚線(W2)が機外で巻き取られるようになされている。
【0012】
上下水平部(1)(2)および中間水平部(3)はともに円形である。平面からみると、6つの素線供給ボビン(9)は、仮想六角形の角の位置に、1つの素線供給ボビン(9)が同六角形の中心位置にそれぞれあるように、中間水平部(3)に配置せられている。第1中空垂直主軸(12)の上部は横断面横長方形の中空垂直フレーム(19)の前壁(19a)上部に固定せられた上支持体(20)に回転自在に支持されられるとともに、同下部はクレードル(8)の上水平部(1)にある軸受に受けられている。第2中空垂直主軸(14)の上部はクレードル(8)の下水平部(2)にある軸受に受けられるとともに、同下部は中空垂直フレーム(19)の前壁(19a)の高さの中央よりやや下方に固定せられた下支持体(21)に回転自在に支持されている。下支持体(21)の下方でかつ後方にモータ(22)が配置せられている。モータ(22)の上下の脚は、中空垂直フレーム (19)の前壁(19a)の下部後面に設けられた縦長の後向き台(23)の後面に固定され、モータ(22)の一部は中空垂直フレーム(19)の後壁(19b)にあけられた窓より後方に突出している。モータ(22)の出力軸(24)にプーリ(25)が、第2中空垂直主軸(14)の下支持体(21)からの下方突出部(14a)にプーリ(26)がそれぞれ取り付けられ、両プーリ(25)(26)にエンドレスベルト(27)が掛け渡されており、モータ(22)の回転動力がこれらの伝動機構を介して第2中空水平主軸(14)に伝達せられ、アーチ状フライヤ(10)が回転せられる。下支持体(21)の下方には、第2中空水平主軸(14)の中空部下端開口と連通するように設けられた中空垂直軸(28)と、中空垂直軸(28)の下端にふたまた状アームを介して取り付けられた大径ローラ(29)および小径ローラ(30)の対を有する過撚機構(31)が配置せられており、第2中空垂直主軸(14)の中空部から引き出された撚線(W2)が回転せしめられる中空軸(28)を通過させられ、そして、まず大径ローラ(29)の下から上にめぐらされ、つぎに小径ローラ(30)の下から上へめぐらされ、さらに大径ローラ(29)の下から上にめぐらせられてそのまま下方へ導かれることにより、撚線(W2)の撚が戻らないようにこれに余分の撚が与えられ、塑性変形せられる。中空垂直軸(28)の右方やや上方には、上巻き付けドラム(32)および下巻き付けドラム(33)よりなるキャプスタン(34)が配置されており、その上方でクレードル(8)の中間水平部(3)の右方に巻き取りドラム(35)が配置せられている。過撚機構(31)の下方には、撚線(W2)をキャプスタン(34)の下巻き付けドラム(33)に案内するガイドローラ(36)が配置せられている。過撚機構(31)、キャプスタン(34) および巻き取りドラム(35)には、前記1つのモータ(22)の回転動力が伝動機構を介して伝達せられるようになされている。キャプスタン(34)により引き取られた撚線(W2)は、下巻き付けドラム(33)の右から上巻き付けドラム(32)の左に至り、上巻き付けドラム(32)の上半と、下巻き付けドラム(33)の下半を順次後ろから前にかけて数回めぐり、最後に下巻き付けドラム(33)からキャプスタン(34)の上方に設けられたガイドローラ(37)およびさらにその上方に配置せられた一対の水平トラバースローラ(38)に挟まれて案内され、巻き取りドラム(35)に至る。
【0013】
前記ねじり手段は、素線供給ボビン(9)の素線(W1)を摺動通過させる下端環部(39)を有しかつ素線供給ボビン(9)の周囲を回転せしめられる略逆L状フライヤ(40)と、略逆L状フライヤ(40)の上端垂直短筒部(41)が取り付けられたフライヤ回転中心垂直軸(42)と、フライヤ回転中心垂直軸(42)をボビン嵌合用垂直軸(43)の上方に位置せしめるとともにボビン嵌合用垂直軸(43)に対し着脱自在となされた連結部材(44)と、全素線供給ボビン(9)の上方位置において左右側枠部(3)(4)に渡し止められかつ各フライヤ回転中心垂直軸(42)の上方に素線通過孔(45)を有しかつ略逆L状フライヤ(40)の下端環部(39)の素線(W1)を通過孔(45)を介して目板(18)に案内する水平素線ガイド部材(46)と、第2中空垂直主軸(14)の回転動力を各ボビン嵌合用垂直軸(43)に伝達する後に詳しく述べる伝動機構とよりなり、7つのボビン嵌合用垂直軸(43)すべてが素線供給ボビン(9)とともに同時に同方向に同じ回転数で回転せしめられるようになされている。素線通過孔(45)には、素線(W1)の通過抵抗を軽減し得るように、下端に鍔を有する小径のセラミックス製短筒(45a)がはめ入れられて水平素線ガイド部材(46)に固着されている。
【0014】
略逆L状フライヤ(40)の水平部(40a)の外端から折れ曲がって下方にのびた垂下部(40b)は外下向きに斜めになっている。略逆L状フライヤ(40)の下端環部(39)は、素線供給ボビン(9)から離れてその胴長さの中程に位置している。ボビン嵌合用垂直軸(43)の上端寄りには、水平溝(47)が形成せられ、同軸(43)の長さの中程には、素線供給ボビン(9)のフランジ(48)にあけられた孔(49)にはまるキャリヤピン(50)を備えた鍔(51)が設けられ、同軸(43)の鍔(51)より下方にのびた部分が、クレードル(6)の中間水平部(3)に貫通状に設けられた軸受(52)に受けられるとともに、軸受(52)からの下方突出部(43a)に図3および図6に示すようにプーリが取り付けられている。すなわち、図6において、中央ボビン嵌合用垂直軸(43)の下方突出部(43a)には、上中下の3つのプーリ(53) (54) (55)が、左前、左後、右前および右後のボビン嵌合用垂直軸(43)の下方突出部(43a)には、それぞれ上下の2つのプーリ(56) (57)、(58) (59)、(60) (61)、(62) (63)が、前および後のボビン嵌合用垂直軸(43)の下方突出部(43a)には、それぞれ1つのプーリ(64)、(65) が取り付けられている。また、第2中空垂直主軸(14)には、上方延長部(14a)が設けられ、この上方延長部(14a)にプーリ(66)が取り付けられている。さらに、クレードル(8)の下水平部(2)の上側には、水平前方突出部(67a)付き軸取付け部材(67)が固定せられており、水平前方突出部(67a)に上方にのびかつ第2中空垂直主軸(14)の上方延長部(14b)と平行な上方突出軸(68)が設けられ、この上方突出軸(68)に上下2つのプーリ(69)(70)を有する垂直短筒(71)が回転自在にはめ止められている。そして、下プーリ(70)は第2中空垂直主軸(14)の上方延長部(14b)のプーリ(66)と、上プーリ(69)は中央ボビン嵌合用垂直軸(43)の下方突出部(43a)の下プーリ(55)とそれぞれ並べられている。これらのプーリに対し、ベルトがつぎのように掛けられている。すなわち、第2中空垂直主軸(14)の上方延長部(14b)のプーリ(66)と上方突出軸(68)の下プーリ(70)に第1ベルト(72)が、上方突出軸(68)の上プーリ(69)と中央ボビン嵌合用垂直軸(43)の下方突出部(43a)の下プーリ(55)に第2ベルト(73)が、中央ボビン嵌合用垂直軸(43)の下方突出部(43a)の上プーリ(53)と左前および左後のボビン嵌合用垂直軸(43)の下方突出部(43a)の上プーリ(56)(58)に第3ベルト(74)が、中央ボビン嵌合用垂直軸(43)の下方突出部(43a)の中間プーリ(54)と右前および右後のボビン嵌合用垂直軸(43)の下方突出部(43a)の下プーリ(61)(63)に第4ベルト(75)が、右前ボビン嵌合用垂直軸(43)の下方突出部(43a)の上プーリ(60)と前ボビン嵌合用垂直軸(43)の下方突出部(43a)のプーリ(64)に第5ベルト(76)が、左後ボビン嵌合用垂直軸(43)の下方突出部(43a)の下プーリ(59)と後ボビン嵌合用垂直軸(43)の下方突出部(43a)のプーリ(65)に第6ベルト(77)がそれぞれ掛けられており、これにより第2中空垂直主軸(14)の回転にともない7つのボビン嵌合用垂直軸(43)すべてが素線供給ボビン(9)とともに同時に同方向に同じ回転数で回転せしめられる。
【0015】
連結部材(44)は、下面中央に開口しかつボビン嵌合用垂直軸(43)の上端部(43b)がはまる有底孔(78)を備えた円形ブロック状であり、連結・分離用水平ピン(79)を具備している。ボビン嵌合用垂直軸(43)の上端部(43b)が連結部材(44)の有底孔(78)にはめられた状態において、前記上端部(43b)の水平溝(47)を水平ピン(79)が摺動しうるように、水平溝(47)の壁が孔壁の一部となる水平有底孔(80)があけられ、孔底に圧縮ばね(81)が収められている。水平ピン(79)には分離用切欠き(82)が形成せられており、常態では、ばね力により切欠き(82)は水平溝(47)から離れ、水平ピン(79)が水平溝(47)にはまっており、その一端が水平有底孔(80)の開口より突出している。その結果、連結部材(44)はボビン嵌合用垂直軸(43)の上端部(43b)と連結されている。素線供給ボビン(9)をボビン嵌合用垂直軸(43)から離脱させるさいには、水平有底孔(80)の開口より突出している水平ピン(79)をばね力に抗して孔底に向かって押す。すると、水平ピン(79)の切欠き(82)が水平溝(47)の外側に到来し、水平溝(47)に水平ピン(79)が存在しないことになるため、連結が解除されて連結部材(44)をボビン嵌合用垂直軸(43)から外すことができる。連結部材(44)の上面には、素線供給ボビン(9)から繰り出される素線(W1)に張力を付与するための制動手段であるパーマヒストルクコントローラ(83)が固定せられている。この実施の形態では、パーマヒストルクコントローラの垂直軸がフライヤ回転中心垂直軸(42)になる。クレードル(8)の上水平部(1)の後部に垂下状突出棒(84)が設けられている。垂下状突出棒(84)には、目板(18)の基端に固着せられた垂直短筒部(85)が嵌合固定せられている。目板(18)には、中央の1本の素線(W1)用中心ガイドローラが設けられるとともに、中心ガイドローラを中心として描かれる同一円周上に等間隔になるように6本の素線(W1)を分散せしめる6つの分散用ガイドローラが設けられている。この実施の形態では、目板(18)に分散用ガイドローラが設けられているが、代わりに単にガイド孔を設けてもよい。アーチ状フライヤ(10)の反対側には同一のアーチ状フライヤ(86)が、略逆L状フライヤ(40)の反対側には同一の略逆L状フライヤ(87)が存在するが、これらは単にバランスをとるためのものである。
【0016】
目板(18)のやや下方に、断線検知用銅製リング(88)が配置せられている。素線(W1)も銅製であり、素線(W1)がなんらかの理由で切断すると断線検知用銅製リング(88)に接触し、通電して警報ランプが点灯するとともに、機械の運転が自動的に停止するようになっている。
【0017】
中空垂直フレーム(19)の前壁(19a)には、アーチ状フライヤ(10) (86)の回転に支障がないように窓があけられている。そして、アーチ状フライヤ(10) (86)の長さの中程にアーチ状フライヤ(10) (86)の通過間隙をおいて両極のうち一方の極を有する磁石(89)が中空垂直フレーム(19)の後壁(19b)の前面に取り付けられ、同他方の極を有する磁石(90)が前記磁石(89)に対向して右側枠部(5)に取り付けられており、アーチ状フライヤ(10) (86)の回転につれてクレードル(8)がとも回りしないようになされている。
【0018】
中空垂直フレーム(19)の前壁(19a)の前面左半には、カバー(91)が中空垂直フレーム(19)の左壁(19c)に蝶番(図示略)で開閉自在に取り付けられており、上支持体(20) からガイドローラ(36)にかけての部材を覆っている。カバー(91)の右壁には取手(図示略)が設けられている。また、中空垂直フレーム(19)の後壁(19b)にあけられた窓より後方に突出しているモータ(22)の一部を覆うカバー(93)が、中空垂直フレーム(19)の左壁(19c)に固着されている。中空垂直フレーム(19)の前壁(19a)の前面右半上部には、操作盤(92)が配置せられている。
【0019】
上記2度撚集合機において、モータ(22)が稼動せられ、アーチ状フライヤ(10)と全ての素線供給ボビン(9)とが回転せしめられる。そして、各素線供給ボビン(9)から繰り出された素線(W1)は、それぞれ略逆L状フライヤ(40)の下端環部(39)を通り、水平素線ガイド部材(46)の通過孔(45)から目板(18)を経て撚口(17)に導入せられる。このさい、略逆L状フライヤ(40)の下端環部(39)から水平素線ガイド部材(46)の通過孔(45)までの素線(W1)は、通過孔(45)を中心として円錐周面を描くように回転するが、通過孔(45)から目板(18)までは直線的に移動する。素線供給ボビン(9)は、図1、図5および図7に矢印で示すように、上からみて時計方向に回転せしめられ、略逆L状フライヤ(40)も同方向に回転する。素線供給ボビン(9)および略逆L状フライヤ(40)の回転方向は、アーチ状フライヤ(10)の回転(図1に示すように、上からみて時計方向回転)により複数の素線(W1)に撚を与える方向と逆方向に素線(W1)にねじりを与える方向であり、かつ素線(W1)が素線供給ボビン(9)に巻き付けられている方向と逆の方向である。素線(W1)は、キャプスタン(34)の回転による撚線(W2)の引き取りにより上方に引き上げられ、略逆L状フライヤ(40)の下端環部(39)から撚口(17)までの間に、素線供給ボビン(9)の回転にともなってねじられるのであるが、このねじりは、撚時に発生する素線(W1)のねじりを打ち消す程度のものとなされる。略逆L状フライヤ(40)の下端環部(39)から水平素線ガイド部材(46)の通過孔(45)までの間の素線部分と通過孔(45)から目板(18)までの素線部分は、鈍角をなすので、通過孔(45)の縁による摩擦抵抗はほとんどなく、摩擦抵抗によりしごかれた状態になることがない。したがって通過孔(45)を通過したさい付与された素線(W1)のねじりが断続的になくなるということはない。
【0020】
なお、本発明の実施の形態では、素線供給ボビン数が7つであるが、7つに限らず複数であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】中空垂直フレームおよびカバーのそれぞれ一部を切り欠いた2度撚集合機の左側面図である。
【図2】カバーの一部を切り欠いた2度撚集合機の正面図である。
【図3】図1の要部の拡大断面図で、7つのボビン嵌合用垂直軸への回転動力伝達機構の断面のみは、図6のIII―III線にそうものである。
【図4】図3のIV−IV線にそう断面図である。
【図5】図3のV−V線にそう断面図である。
【図6】図3のVI−VI線にそう断面図である。
【図7】図3のA部分の拡大断面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線にそう断面図である。
【符号の説明】
【0022】
(1) クレードルの上水平部
(2) クレードルの下水平部
(3) クレードルの下中間水平部
(4) クレードルの左側枠部
(5) クレードルの右側枠部
(6) クレードルの左支持脚部
(7) クレードルの右支持脚部
(8) クレードル
(9) 素線供給ボビン
(10) アーチ状フライヤー
(12) 第1中空垂直主軸
(14) 第2中空垂直主軸
(15) 第1撚付与兼ガイドローラ
(16) 第2撚付与兼ガイドローラ
(17) 撚口
(18) 目板
(39) 略逆L状フライヤの下端環部
(40) 略逆L状フライヤ
(41) 略逆L状フライヤの上端垂直端筒部
(42) 略逆L状フライヤの回転中心垂直部
(43) ボビン嵌合用垂直部
(44) 連結部材
(45) 素線通過孔
(46) 水平素線ガイド部材
(W1) 素線
(W2) 撚線




【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受を有する上下水平部、両水平部の間にある中間水平部、上水平部と中間水平部の各周縁部を連結している複数の側枠部および中間水平部と下水平部の各周縁部を連結している複数の支持脚部よりなるクレードルと、クレードルの中間水平部に軸線を垂直にして配置せられた複数の素線供給ボビンと、クレードルの周囲を回転せしめられるアーチ状フライヤと、アーチ状フライヤの上端が取り付けられかつ周壁に縦長孔を有する第1中空垂直主軸と、アーチ状フライヤの下端が取り付けられかつ周壁に縦長孔を有する第2中空垂直主軸と、縦長孔より中空部内にはめ入れられて第1中空垂直主軸に取り付けられかつ複数の素線供給ボビンから繰り出された複数の素線を中空部および縦長孔を通してアーチ状フライヤに案内するとともにアーチ状フライヤの回転にともなって複数の素線に1回目の撚を与える第1撚付与兼ガイドローラと、縦長孔より中空部内にはめ入れられて第2中空垂直主軸に取り付けられかつアーチ状フライヤの下端から引き出された複数の素線を横長孔および中空部を通して外へ向け案内するとともにアーチ状フライヤの回転にともなって複数の素線に2回目の撚を与える第2撚付与兼ガイドローラと、複数の素線に1回目の撚を与える前に、各素線に撚時に発生する素線のねじりを打ち消す程度の撚方向と逆方向のねじりを予め与えるねじり手段と、クレードルの上水平部にある軸受に受けられた第1中空垂直主軸後部と連通するように同水平部下面に設けられた撚口と、撚口の下方に位置するように同水平部に取り付けられた目板とを備え、第2中空垂直主軸の中空部から外に引き出された撚線が機外で巻き取られるようになされており、ねじり手段は、ボビンの素線を摺動通過させる下端環部を有しかつボビンの周囲を回転せしめられる略逆L状フライヤと、略逆L状フライヤの上端垂直短筒部が取り付けられたフライヤ回転中心垂直軸と、フライヤ回転中心垂直軸をボビン嵌合用垂直軸の上方に位置せしめるとともにボビン嵌合用垂直軸に対し着脱自在となされた連結部材と、全素線供給ボビンの前方位置において複数の側枠部に渡し止められかつ各フライヤ回転中心垂直軸の上方に素線通過孔を有しかつフライヤの下端環部の素線を通過孔を介して目板に案内する水平素線ガイド部材と、第2中空水平主軸の回転動力を各ボビン嵌合用垂直軸に伝達する伝動機構とよりなり、複数のボビン嵌合用垂直軸すべてがボビンとともに同時に同方向に同一回転数で回転せしめられるようになされている2度撚集合機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−144195(P2006−144195A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338843(P2004−338843)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(000253237)濱名鐵工株式会社 (2)
【Fターム(参考)】