説明

2成分混合物中の気体の濃度を検出するための気体センサおよび方法

【課題】 変動する圧力下で2成分混合物中の気体の濃度を検出することができる熱気体センサを提供する。
【解決手段】 記載したセンサは、拡散率と熱伝導率とを測定することによって、変動する圧力下で2成分混合物中の気体の濃度を検出することができる。センサは、熱伝導性のセル(1)の膜(12)を加熱したり、反対に冷却したりして、膜の温度THが第1の安定値から第2の安定値へ、およびその逆へと、遷移モードを介して遷移することができるように、提供される。セルは、膜の温度THの信号の代表値を生成し、センサはこの信号から、第1の安定値および信号の遷移モードにそれぞれ関する、第1および第2のパラメータを抽出する。気体の濃度および2成分混合物の圧力の値を、これら2つのパラメータから計算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱気体センサの分野に関する。より詳細には、本発明は、変動する圧力下で2成分混合物中の気体の濃度を検出するための熱気体センサに関する。本発明はまた、2成分混合物中の、変動する濃度を有する気体の濃度を検出するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
熱気体センサは、気体の熱伝導特性を利用し、気体の性質または気体混合物中の気体の濃度に関する情報を提供する。気体の熱伝導率λは、気体が温度勾配の影響下で熱を伝達する能力である。熱伝導率は、所定の圧力および温度では気体に固有の大きさであり、このため、熱伝導率の測定によって気体混合物の組成の指標を提供することができる。熱気体センサは、特に、酸素(O2)、窒素(N2)、アルゴン(Ar)、二酸化炭素(CO2)または大気(一定の組成を有するものとする)でさえあるような他の気体の中の、水素(H2)の濃度を測定するために使用される。なぜなら、水素は、より重い分子と比べてその熱伝導率が高いことにより、他の気体とは著しく異なるからである。以下の値を情報として提示する。
【0003】
【数1】

【0004】
熱気体センサは一般に、熱慣性の低い、電気的に絶縁性の膜を有し、その上に、この膜を加熱するデバイスと、膜の温度を測定するデバイスとが配置されている。この膜は従来より、ケイ素基材の上に蒸着した酸化ケイ素や窒化ケイ素から形成され、この基材は、気体の流れが膜のどちらの面でも循環するよう、部分的に膜の後面までエッチングされる。加熱デバイスおよび温度を測定するデバイスはそれぞれ、膜の前面にわたって蛇行する金属線によって形成された、第1および第2の電気抵抗を備える。温度測定デバイスに用いる金属は、温度によって変動する抵抗を有し、これによって、その末端における電圧を測定すれば、膜の温度が検出できるようになっている。膜を加熱デバイスで加熱すると、その温度は気体混合物または周囲気体の熱伝導率に依存する安定値で落ち着く。この結果、膜の温度の測定は、周囲気体の性質または気体混合物の組成の指標を提供する。このような気体センサの構造および動作の更なる詳細については、特許文献1を参照されたい。
【0005】
上述のタイプの気体センサにより、2成分気体混合物に関する変数、即ち気体のうち一方の濃度を、1つのパラメータ、即ち該混合物に物理的に接触している膜の温度に基づいて、測定することができる。上述のタイプの気体センサは特に、上で説明したように、他の気体中の水素の濃度を検出するのに役立つ。他の気体中の水素の割合を正確に検出することには、大きな関心が寄せられているが、それは、ここで問題とされていることが、設備導入や個人にとっての安全レベルに関わるからである。実際、水素は、たとえ低い濃度であっても、酸素とともに、爆発性の高い混合物を形成することが知られている。これと同じことは、約20%の酸素を含有する大気についても当てはまる。熱気体センサは、低コストかつ少ない空間要件でこのような指標を提供するため、大きな技術的関心を集めている。
【0006】
しかしながら、1つのパラメータ、即ち低い熱慣性を有する膜の温度に基づいて、気体のうち一方の濃度を測定する、という場合の2成分気体混合物に関する変数の測定は、この混合物の他の全ての変数が一定でない限り不可能である。特に、気体混合物の圧力は、その伝導率に重大な影響を及ぼす。変動する圧力下では、2成分混合物中の気体の濃度を、膜の温度測定だけに基づいて検出することは、不可能となる。
【0007】
このような状況は、例えば電気分解ユニットの中で発生する。これらのデバイスは特に、気体状態の水素を水から生成することを目的とする。これらは化石燃料に代わるクリーンエネルギを提案できるため、現在重要な開発の主題となっている。例えば特許文献2は、光発電設備で電源供給する電気分解装置を用いて、気体状態の水素を産生および貯蔵するための家庭用設備について記載している。この水素は、例えば電気自動車に備え付けられた燃料電池において燃料として用いられる。
【0008】
特許文献2に記載されたタイプの電気分解装置では、水素はアノードとカソードを用いて、液体状態の水から産生される。変形例では、電気分解装置を複数の電解槽のアセンブリによって形成し、各電解槽はアノードとカソードを有する。このようなデバイスは、特許文献3に記載されている。電気分解装置の構造がいかなるものであれ、水素はカソード側で産生され、アノード側では酸素が産生される。カソード側とアノード側それぞれにおける、産生プロセス中のこれらの気体の蓄積は、10〜数十バール程度の値まで、電気分解装置内の圧力が急峻に上昇する原因となる。酸素と水素の混合物の爆発のリスクを考えると、電気分解装置の全作動圧力幅にわたって、酸素中の水素のいかなる存在も、およびその逆も検出することが必要である。これを達成するために、および、上述のような熱気体センサの限界を考慮し、一般には、電気分解装置に設置する気体センサに圧力センサを追加する。そして、圧力と温度の測定を組み合わせて、気体の濃度を検出することができる。しかし、この解決策は、このタイプの検出のコストを大きく上昇させることになり、これは家庭用設備にとって主たる欠点となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許第4228484号
【特許文献2】欧州特許第2048759号
【特許文献3】英国特許第1145751号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、変動する圧力下で2成分混合物中の気体の濃度を検出することができる熱気体センサを提案することによって、上記の欠点を克服することである。より詳細には、本発明は、添付の請求項1による、変動する圧力下で2成分混合物中の気体の濃度を検出するためのセンサに関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
気体センサの特徴、特に上述のように加熱デバイスに供給する交流電源の周波数fの選択のおかげで、本発明による気体センサにより、気体混合物の単一のパラメータ、つまり連続モードの安定温度の測定ではなく、気体系の2つのパラメータ、静力学に関わるものと動力学に関わるものの測定が可能となる。この目的のために立てた数学的関数にこれら2つのパラメータを代入することにより、気体混合物に関する1つの変数ではなく、2つの変数、例えば気体のうちの1つの濃度と混合物の圧力とを検出することができる。気体センサに取り付けた独立したデバイスによって気体混合物の圧力を測定する必要はなくなる。
【0012】
本発明はまた、気体センサを用いて、変動する圧力下で2成分混合物中の気体の濃度を検出する方法に関し、この方法は、2成分混合物の伝導性に関する第1の特性パラメータを測定するステップと、2成分混合物の拡散率に関する第2の特性パラメータを測定するステップと、事前に立てておいた数学的関数とセンサの特性係数とを用いて、これらのパラメータから該気体の濃度と該2成分混合物の圧力の値を算出するステップとを含む。
【0013】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照した、単なる実施例として提供する以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明による気体センサの測定セルの断面図である。
【図2】図2は本発明によるセンサの、基本的な動作のダイアグラムを示す。
【図3】図3はこのセンサの測定信号の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
初めに言っておくが、本発明による気体センサは特に、上に概説した理由で、酸素中の水素を測定することを意図している。しかし、気体センサの、気体混合物に関する変数を検出するための動作原理は、あらゆる2成分混合物に拡張可能である。さらに、2つの気体のうちの1つは、その組成が一定であると想定できる大気であってもよい。以下の記述では、%Hと%Oはそれぞれ、分析対象の2成分混合物を形成する水素と酸素の割合であり、Pは圧力であり、別の気体に関する更なる参照は行わないことに留意されたい。
【0016】
本発明による気体センサは、従来、分析対象の2成分酸素/水素混合物に浸漬させることを意図した測定セルを有しており、この測定セルを図1に概略的に示し、全体にわたって参照符号1を付している。セル1は、剛性のベース10を備え、このベース10は中心に開口11を有し、また、熱慣性の低い、電気的かつ熱的に絶縁性の膜12で覆われている。開口11によって、周囲気体が循環して膜12の両側で熱を移動させることができる。よって、膜12の温度に関する気体の伝導率の影響は、ベース10を介した熱放射または熱伝導など、他の物理現象に関連する冷却に勝る。加熱デバイス13は、膜12上に、開口11の高さに配置され、一方膜12の温度TMの測定デバイス14は加熱デバイス13の近傍に配置される。周囲温度TAの測定デバイス15は、加熱デバイス13の影響を受けないよう、加熱デバイス13と空間を空けて配置される。
【0017】
特に有利な実施形態では、当業者には公知の微視力学デバイスの製造技術を用いて、セル1は、剛性のベース10を形成するケイ素のシートから作られている。膜12は、シリコン基材の上に蒸着した、または熱窒化または熱酸化によって得られた、窒化ケイ素Si34または酸化ケイ素SiO2の層から形成される。その厚さは、典型的には数百ナノメートルである。開口11は一般には、膜12の形成後に、ケイ素のシートを裏面から化学エッチングすることによって形成される。加熱デバイス13、膜12の温度TMの測定デバイス14は、開口11の上に、膜12にわたって蛇行する金属線によって形成されている。測定デバイス14を形成するために用いる金属は、抵抗RMを有し、この抵抗RMは、標準対照圧力下で公知のやり方で温度に依存して変動する。当業者に公知の、抵抗RMと膜12の温度TMとを結ぶ関係は、以下の式の通りである。
【0018】
【数2】

【0019】
ここで、係数αは、金属線14を形成する金属の特性であり、この金属は一般にはプラチナ、ニッケルまたはこれら2つの金属の合金である。同様に、周囲温度TAの測定デバイス15は、金属線から形成され、この金属の抵抗RAは温度によって変動する。また同様に、周囲温度TAは、関係式(1)によって抵抗RAの値と関連している。酸化ケイ素SiO2または窒化ケイ素Si34から形成される表面不活性化層16は、金属線14および15を覆う。
【0020】
セル1は、図2に概略的に示す交流電源20によって電源供給され、この交流電源は、加熱デバイス13に、周波数fの方形波交流電流を供給する。周波数fは、数ヘルツ〜数十ヘルツの範囲であり、セル1の配置やサイズによる。典型的には、周波数fは20ヘルツ程度である。加熱デバイス13が膜12を加熱したり、反対に冷却したりして、膜12の温度TMが第1の安定値THから第2の安定値TBへ、およびその逆へと、遷移モードを介して遷移することができるよう、この周波数fを選択する。本発明による気体センサのこの態様は、図3を参照することでより明らかになるであろう。膜12の温度TMは測定デバイス14によって与えられ、この測定デバイス14は、例えば測定デバイス14を形成する金属線の抵抗RMの値など、TMのアナログ信号による代表値を供給する。さらに、周囲温度TAは測定デバイス15によって与えられ、この測定デバイス15は、例えば測定デバイス15を形成する金属線の抵抗RAの値等、TAのアナログ信号による代表値を供給する。ここで、温度TMは周囲温度TAおよび周囲気体の熱伝導率λの関数であり、熱伝導率λそれ自体は周囲温度TAおよび該気体の性質の関数であることに留意しなければならない。
【0021】
【数3】

【0022】
結果として、まず、周囲気体の伝導率に関する情報を与えるために、膜12の温度TAを、周囲温度TAの1次影響において補正しなければならない。この目的のために、セル1から比RM/RAを出力し、これをアナログ/デジタルコンバータ21、コントローラ22、メモリモジュール23、タイムベース24を備える電子回路30で処理する。
【0023】
セル1の出力に配置されるアナログ/デジタルコンバータ21は、アナログ信号RM/RAを、コントローラ22で処理されるデジタル信号に変換する。コントローラ22に接続されたROMメモリモジュール23(読み出し専用メモリ)は、RM/RA信号の処理に必要な、気体センサの特性である複数の係数を記憶している。これらの係数については以下で説明する。コントローラ22は水晶で形成されたタイムベース24、および交流電源20にも接続され、コントローラ22は交流電源20の周波数fを調節する。
【0024】
図3を参照すると、時間に応じた、抵抗RMによって測定した膜12の温度TMの推移、および加熱デバイス13のための供給電源1の推移を示している。酸素と水素の気体混合物の存在下で、加熱デバイスで膜12を加熱すると、膜12の温度は、測定デバイス14で測定すると、TMから高安定値THへ上昇する。高安定値THは、加熱デバイス13から供給される熱をかなり容易に伝達する、周辺の気体混合物の熱伝導率に依存する。加熱デバイス13が膜12を加熱するのをやめると、膜12は、周囲媒体とほぼ同じ温度の低安定値TBまで冷却される。高安定値THと低安定値TBとの間で、膜12の温度TMは、冷却と再加熱それぞれの遷移モードtHBおよびtBHを通過するが、これらは原理的に、周辺の気体混合物の熱拡散率によって決定される。
【0025】
熱伝導率は静的モードにおける気体の挙動を定義するが、これと対照的に、拡散率は、気体の、ある温度から別の温度へ遷移する能力を特徴付けるものであり、動的モードにおける気体の挙動を定義する。熱伝導率と同様、気体混合物の拡散率は気体の性質、濃度および周囲圧力に依存するが、その依存の仕方はかなり異なる。本発明によると、高安定温度THによって供給される情報と遷移冷却モードtHBによって供給される情報とを組み合わせて、気体混合物の圧力に関わらず、その組成を検出する。
【0026】
実際、本発明の枠内で試行した数多くの系統的な測定とテストにより、分析対照の気体の様々な変数、%H、%OまたはPが、値TH、および、遷移冷却モードtHB中に簡単な数学的関数(上述の係数が使用される)によって測定した冷却勾配ptHBに関連することを示すことができた。ここで、膜12の冷却は、指数則e-k/Tに従う。よって、冷却tHB勾配ptHBは以下の関数で定義される。
【0027】
【数4】

【0028】
ここで、点Tiは3つあり、遷移冷却モードtHB中に異なる時間間隔で、例えば本例では点THの10、14および18msで測定される。点Tiの個数の選択、およびその時間間隔の選択は、セル1の配置、および2成分混合物を形成する気体の性質など、その他の数多くのパラメータに依存する。従って、これは厳格な規則に従うわけではないが、勾配ptHBを可能な限り有効に利用するために、経験的に実施する必要がある。
【0029】
コントローラ22で勾配ptHBを算出すれば、酸素/水素気体混合物に関する様々な変数が、本発明によるセンサの作動条件に従って適合された数学的関数から提供される。これらの関数は、測定対象の気体が、酸素中に水素があるものであるかその逆であるかによって、または気体混合物の圧力の範囲によって、極めて複雑なものとなる。実際、水素は酸素より非常に高い熱伝導率を有する。その結果として、高安定温度THは、ほぼ水素で形成された気体混合物の場合、主として酸素で形成された気体混合物におけるよりも低くなる。従って、THとTBとの差は小さくなり、測定の精度は下がる。一方で、動作圧力の範囲が広いと、その範囲が狭い場合に比べてきたい混合物の挙動にバリエーションが生まれ、これを気体混合物に関する変数の算出にあたって考慮しなければならない。
【0030】
以下の記述では、2つの数学的関数を提案するが、これらにより、単純な例と、より複雑な好適例とのそれぞれにおいて、気体混合物の組成の決定が可能となる。第1の例は、例えば圧力の範囲が1〜5バールの場合に対応する。第2の好適例は、例えば圧力の範囲が1〜20バールにわたる水素中の少量の酸素の検出などに適用する。本発明による気体センサの全ての作動条件が本明細書中で詳細に説明されるわけではないが、以下に挙げる数学的関数は、本発明の枠内から外れることなく、気体センサの複数の使用条件に適合させることができ、および対応するように修正することができる、ということに留意されたい。
【0031】
動作条件の第1の例は、0〜5バールにわたって圧力が変動する酸素中の0〜2%の水素の濃度の測定に関する。様々な計算やテストにより、圧力Pおよび水素の割合%Hは、それぞれ以下の関数によって正確に表すことができることがわかっている。
【0032】
【数5】

【0033】
ここで、係数a、b、c、d、e、fおよびA、B、C、D、E、Fは、気体センサの特性であり、較正手順によって決定される。この較正は、3つの異なる圧力範囲における値THおよびptHBの測定と、この圧力範囲における2つの異なる水素濃度の測定と、動作水素濃度の測定、そして、Pおよび%Hを測定した値と算出した値との差の、ソルバーによる最小化からなる。等式(4)および(5)はそれぞれ、水素のパーセンテージを500ppmの精度で、また、圧力の値を0.2バールの精度で提供する。
【0034】
動作条件の第2の例は、0〜20バールの圧力変動範囲にわたる水素中の0〜1%の酸素の濃度の測定に関する。この例では、圧力Pと酸素の割合%Oは、それぞれ以下の関数によって正確に表すことができる。
【0035】
【数6】

【0036】
ここで、係数g、h、i、j、k、lおよびG、H、I、J、K、L、Mは、上述のように決定され、TAは測定デバイス15で測定した周囲温度であり、Trefは較正ポイントが実行される基準温度であり、Prefは温度に応じた抵抗RMの変動を測定する基準圧力である。このアプローチにより、周囲温度TAの影響を、圧力に応じた気体の伝導率の依存カーブにおいて考慮することができる。これは温度の2次的補正である。これはまた、測定抵抗14および15の温度依存に対する圧力の影響も考慮する。こうして改良された等式(7)は、動作圧力全体にわたって、水素の割合の値を600ppmの精度で提供し、等式(6)により、圧力を0.5バールの精度で提供する。
【0037】
変動する圧力下で2成分混合物中の気体の濃度を検出するための気体センサについて、以上のように記載した。本発明による気体センサは、上に記載した実施形態によって束縛されず、添付の請求項で定義した本発明の枠内から外れることなく、様々な単純な修正や変更例が当業者によって想定可能であることを理解されたい。
【0038】
特に、本発明による気体センサで用いたパラメータは、高安定温度THと冷却勾配ptHBである。特定の文脈において、当業者は、発明的活動を何ら必要とせず、高安定温度THと膜の再加熱勾配ptHBなど、他のパラメータを選択することもできる。したがって、測定したパラメータから系に関する変数を導出する数学的関数は、上述の関数と大きく異なることもあり得る。
【0039】
膜12を加熱するため、または膜12の温度を測定するための他の手段が、本発明の枠内にある、ということにも言及しておかなければならない。例えば、分析対象の気体に浸漬する膜の温度は、熱可変抵抗を有する金属線よりも寧ろダイオードによって得ることができる、ということは公知である。さらに、フィラメントなど、低い熱慣性を有する他の要素を、膜に代えて使用してもよいことも想像できる。
【0040】
最後に、本発明は、変動する圧力下で2成分混合物中の気体の濃度を検出するための方法に関することに留意されたい。この方法は、気体混合物の安定モードにおけるパラメータと遷移モードにおけるパラメータとの測定、および、これらのパラメータから気体混合物に関する変数を算出するための数学的関数の決定に基づく。これらの値の測定およびこの方法の実施に特に適した気体センサについて、上で説明してきた。しかし、本発明による方法はこのようなセンサに制限されるものではなく、何らかの適切な手段で上述の測定を行えるあらゆるセンサに拡張することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2成分混合物中に配置することを意図した測定セル(1)であって、低い熱慣性を有する膜(12)を備え、前記膜(12)の両側には、前記膜(12)の加熱手段(13)と、前記膜(12)の温度TMの信号の代表値を供給する測定手段(14)とが配置されている、測定セル(1)と、
前記加熱手段(13)に電源供給するための、周波数fを有する交流電源(29)と、
電子回路(30)と、
を有する、変動する圧力下で前記2成分混合物中の気体の濃度を検出するためのセンサであって、
前記周波数fは、前記加熱手段(13)が前記膜(12)を加熱したり、反対に冷却したりして、前記膜(12)の前記温度TMが第1の安定値から第2の安定値へ、およびその逆へと、遷移モードを介して遷移することができるように選択されることと、
前記電子回路(30)は、前記信号を測定して、そこから前記第1の安定値および前記遷移モードにそれぞれ関する第1および第2のパラメータを抽出し、事前に立てておいた数学的関数と前記センサの特性係数とを用いて、前記パラメータから前記気体の濃度および前記2成分混合物の圧力の値を算出するために配置されることと、
を特徴とする、センサ。
【請求項2】
前記第1および第2の安定値はそれぞれ、前記膜の高安定温度THと低安定温度TBであり、
前記遷移モードは前記膜の遷移冷却モードtHBである
ことを特徴とする、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第1のパラメータは、前記高安定温度THの代表値であり、
前記第2のパラメータは、前記遷移冷却モード中の前記膜(12)の冷却速度ptHBの代表値である
ことを特徴とする、請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記膜(12)の前記冷却速度ptHBは以下の関数
ptHB=d/dt(In((TH-B)/(Ti-B)) (1)
によって与えられ、
ここで、点Tiは、前記膜(12)の前記遷移冷却モードtHB中に異なる時間間隔で選択される
ことを特徴とする、請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記2成分混合物の気体の前記濃度は、前記高安定温度THと前記冷却速度ptHBとの代表値である前記パラメータの、以下のタイプの多項式関数
A*TH+B*TH2+C*ptHB+D*ptHB2+E*(TH/ptHB)+F (3)
であり、
A、B、C、D、EおよびFは、前記センサの前記特性係数に含まれており、前記センサの較正によって得られる
ことを特徴とする、請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記2成分混合物の前記圧力は、前記高安定温度THと前記冷却速度ptHBとの代表値である前記パラメータの、以下のタイプの多項式関数
a*TH+b*TH2+c*ptHB+d*ptHB2+e*(TH/ptHB)+f (2)
であり、
a、b、c、d、eおよびfは、前記センサの前記特性係数に含まれており、前記センサの較正によって得られる
ことを特徴とする、請求項4に記載のセンサ。
【請求項7】
前記2成分混合物の気体の前記濃度は、前記高安定温度TH、前記冷却速度ptHB、前記周囲温度TA、基準温度Tref、および基準圧力Prefの代表値である前記パラメータの、以下のタイプの多項式関数
G*TH+H*ptHB+I*ptHB2+J*(TH/ptHB)+K*(TA-ref)*(P-ref)+L*(TA-ref)*(P-ref2+M (4)
であり、
G、H、I、J、K、LおよびMは、前記センサの前記特性係数に含まれており、前記センサの較正によって得られ、
refは、前記膜(12)の前記温度に応じて、前記較正が実行される基準温度であり、
refは、前記膜(12)の前記温度に応じて、前記信号が較正される基準圧力である
ことを特徴とする、請求項4に記載のセンサ。
【請求項8】
前記気体混合物の前記周囲温度TAの信号の代表値を供給する測定デバイス15を更に備え、
前記膜(12)の前記温度の前記信号の代表値は、最初に、前記周囲温度の前記信号の代表値から補正される
ことを特徴とする、請求項1〜7に記載のセンサ。
【請求項9】
2成分混合物の伝導性に関する第1の特性パラメータを測定するステップと、
前記2成分混合物の拡散率に関する第2の特性パラメータを測定するステップと、
事前に立てておいた数学的関数とセンサの特性係数とを用いて、前記パラメータから前期気体の濃度と前記2成分混合物の圧力の値を算出するステップと
を含む、気体センサを用いて、変動する圧力下で前記2成分混合物中の気体の濃度を検出する方法。
【請求項10】
前記第1および第2のパラメータは、周波数fで交流モードで測定され、それぞれ、前記センサの要素の、安定モードにおける高温THと、前記センサの要素の、遷移冷却モードにおける冷却速度ptHBの代表値であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記センサの要素の前記冷却速度ptHBは、以下の関数
ptHB=d/dt(In((TH-B)/(Ti-B)) (1)
で与えられ、
点Tiは、前記センサの前記遷移冷却モードtHB中に、異なる時間間隔で測定される
ことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記2成分混合物の気体の前記濃度は、前記高安定温度THと前記冷却速度ptHBとの代表値である前記パラメータの、以下のタイプの多項式関数
A*TH+B*TH2+C*ptHB+D*ptHB2+E*(TH/ptHB)+F (3)
であり、
A、B、C、D、EおよびFは、前記センサの前記特性係数に含まれており、前記センサの較正によって得られる
ことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記2成分混合物の前記圧力は、前記高安定温度THと前記冷却速度ptHBとの代表値である前記パラメータの、以下のタイプの多項式関数
a*TH+b*TH2+c*ptHB+d*ptHB2+e*(TH/ptHB)+f (2)
であり、
a、b、c、d、eおよびfは、前記センサの前記特性係数に含まれており、前記センサの較正によって得られる
ことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記2成分混合物の気体の前記濃度は、前記高安定温度TH、前記冷却速度ptHB、前記周囲温度TA、基準温度Tref、および基準圧力Prefの代表値である前記パラメータの、以下のタイプの多項式関数
G*TH+H*ptHB+I*ptHB2+J*(TH/ptHB)+K*(TA-ref)*(P-ref)+L*(TA-ref)*(P-ref2+M (4)
であり、
G、H、I、J、K、LおよびMは、前記センサの前記特性係数に含まれており、前記センサの較正によって得られ、
refは、前記膜(12)の前記温度に応じて、前記較正が実行される基準温度であり、
refは、前記膜(12)の前記温度に応じて、前記信号が較正される基準圧力である
ことを特徴とする、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−76699(P2013−76699A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−215768(P2012−215768)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【出願人】(510010894)ベレノス・クリーン・パワー・ホールディング・アーゲー (18)
【Fターム(参考)】