説明

2成分現像剤

【課題】グリセリン、又はグリセリン誘導をアルコール成分として用いたトナーを利用しつつも、トナーを所望の帯電量に帯電させることができる、2成分現像剤を提供すること。
【解決手段】トナーと、キャリアとを含み、トナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を含み、結着樹脂が、少なくともグリセリン、及び/又はグリセリン誘導体と、エチレングリコールとを含む2価又は3価以上のアルコール成分と、2価又は3価以上のカルボン酸成分との共重合体であるポリエステル樹脂であり、キャリアは、キャリアコアがコート剤により被覆され、且つ平均円形度が0.98以上であり、コート剤は、フッ素樹脂と、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選択される1種類以上のポリアミド/イミド系樹脂とを含む、2成分現像剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真法等の画像形成方法においては、静電潜像担持体(感光体)の表面をコロナ放電等により帯電させた後、レーザー等により露光して静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、さらにこのトナー像を記録媒体に転写して高品質な画像を得ている。通常トナー像の形成に使用するトナーには熱可塑性樹脂等の結着樹脂に、着色剤、電荷制御剤、離型剤等を混合して混練、粉砕、分級を行い平均粒径5〜10μmのトナー粒子としたものが用いられる。そしてトナーに流動性を付与したり、トナーの帯電量の制御を行ったり、転写されずに感光体上に残留したトナーのクリーニング性を向上させたりする目的で、シリカや酸化チタン等の無機微粉末等がトナーに外添されている。
【0003】
かかるトナーに関して、省エネルギー化、装置の小型等の観点から、定着ローラーを極力加熱することなく良好に定着可能な、低温定着性に優れるトナーが望まれている。しかし、低温定着性に優れるトナーは、融点やガラス転移点の低い結着樹脂や、低融点の離型剤を使用していることが多く、一般的に、高温で保存する場合に凝集しやすい問題がある。
【0004】
かかる、課題を解決するために種々の検討が行われており、例えば、3価の多価アルコールであるグリセリンをモノマーとして用いたポリエステル樹脂を結着樹脂として用いたトナーが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−20170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トナーは、トナーを短時間で所望の帯電量に帯電させやすいことや、高速での印字に適性を有するため、トナーとキャリアとを含む2成分現像剤として使用されることが多い。しかし、特許文献1に記載の、グリセリンをモノマーとして用いたポリエステル樹脂は、グリセリンが低分子量且つ多価アルコールであるため分子鎖中に負帯電性のエステル結合を多く含むため、トナーが正帯電性トナーである場合、トナーを2成分現像剤として用いたとしても、トナーを所望の帯電量に帯電させにくくなる可能性がある。このため、低温定着性と高温での保存安定性を損なうことなく、帯電性に関する前述の課題が解決されたトナーが求められている。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、グリセリン、又はグリセリン誘導体をアルコール成分として合成したポリエステル樹脂を用いたトナーを利用しつつも、トナーを所望の帯電量に帯電させることができる、2成分現像剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、正帯電性トナーと、キャリアとを含み、正帯電性トナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を含み、結着樹脂が、少なくともグリセリン、及び/又はグリセリン誘導体と、エチレングリコールとを含む2価又は3価以上のアルコール成分と、2価又は3価以上のカルボン酸成分との共重合体であるポリエステル樹脂であり、キャリアは、キャリアコアがコート剤により被覆され、且つ平均円形度が0.98以上であり、コート剤は、フッ素樹脂と、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選択される1種類以上のポリアミド/イミド系樹脂とを含む、2成分現像剤により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
(1) 正帯電性トナーと、キャリアとを含み、
前記正帯電性トナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を含み、
前記結着樹脂が、少なくともグリセリン、及び/又は1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール及びアシル基の炭素原子数が8〜20であるモノアシルグリセロールからなる群から選択される少なくとも1種類以上のグリセリン誘導体と、エチレングリコールとを含む2価又は3価以上のアルコール成分と、2価又は3価以上のカルボン酸成分との共重合体であるポリエステル樹脂であり、
前記キャリアは、キャリアコアがコート剤により被覆され、且つ平均円形度が0.98以上であり、
前記コート剤は、フッ素樹脂と、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選択される1種類以上のポリアミド/イミド系樹脂とを含む、2成分現像剤。
【0010】
(2) 前記アルコール成分において、前記グリセリン、及び/又はグリセリン誘導体の含有量(A)と、前記エチレングリコールの物質量(B)との物質量比A/Bが、15%以下である、(1)記載の2成分現像剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、グリセリン、及び/又はグリセリン誘導をアルコール成分として用いたトナーを利用しつつも、トナーを所望の帯電量に帯電させることができる、及び2成分現像剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0013】
本発明に係る2成分現像剤は、正帯電性トナー(以下、単にトナーともいう)と、キャリアとを含み、正帯電性トナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を含み、結着樹脂が、少なくともグリセリン、及び/又はグリセリン誘導体と、エチレングリコールとを含む2価又は3価以上のアルコール成分と、2価又は3価以上のカルボン酸成分との共重合体であるポリエステル樹脂であり、キャリアは、キャリアコアがコート剤により被覆され、且つ平均円形度が0.98以上であり、コート剤は、フッ素樹脂と、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選択される1種類以上のポリアミド/イミド系樹脂とを含むものである。以下、本発明の2成分現像剤を構成する正帯電性トナー、及びキャリアと、2成分現像剤の製造方法とについて、順に説明する。
【0014】
[正帯電性トナー]
本発明の2成分現像剤に含まれる正帯電性トナーは、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を含む。また、2成分現像剤に含まれる正帯電性トナーは、その表面に外添剤が付着したものであってもよい。以下、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、離型剤、及び外添剤と、正帯電性トナーの製造方法とについて、順に説明する。
【0015】
〔結着樹脂〕
2成分現像剤に含まれる正帯電性トナーは結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる。ポリエステル樹脂は、少なくともグリセリン、及び/又はグリセリン誘導体と、エチレングリコールとを含む2価又は3価以上のアルコール成分と、2価又は3価以上のカルボン酸成分との共重合体である。以下、結着樹脂について、アルコール成分、カルボン酸成分、及び結着樹脂の製造方法について順に説明する。
【0016】
(アルコール成分)
本発明において、結着樹脂として用いるポリエステル樹脂の単量体として使用される、2価又は3価以上のアルコール成分は、少なくともグリセリン、及び/又はグリセリン誘導体と、エチレングリコールとを含む。
【0017】
グリセリン誘導体としては、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、及びモノアシルグリセロール等が挙げられる。モノアシルグリセロールにおけるアシル基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、飽和アシル基であっても、不飽和アシル基であってもよい。また、モノアシルグリセロールにおけるアシル基は、直鎖のアシル基であっても分岐鎖のアシル基であってもよい。モノアシルグリセロールにおけるアシル基の炭素原子数は、12〜20が好ましい。より好ましいグリセリン誘導体としては、プロパンジオールが挙げられ、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールのいずれか、又は双方が含まれるものが特に好ましい。
【0018】
グリセリン、及びグリセリン誘導体の製造方法は特に限定されず、グリセリン、及びグリセリン誘導体は、化学合成、発酵法、これらの方法の組合せ等によって製造される。例えば、植物油脂を加水分解し、得られた反応物からグリセリンを精製する方法が挙げられる。また、水素化分解触媒の存在下に、得られたグリセリンと水素とを反応させて、グリセリン誘導体としてのプロパンジオールを得る方法が挙げられる(特開2010−111618参照)。
【0019】
また、低温定着性に優れるトナーを得やすいことから、アルコール成分は、グリセリン、及び/又はグリセリン誘導体に加え、エチレングリコールを含む。グリセリン、及び/又はグリセリン誘導体とエチレングリコールとの物質量比((グリセリン、及び/又はグリセリン誘導体)/エチレングリコール)は、15%以下であるのが好ましい。グリセリン、及び/又はグリセリン誘導体とエチレングリコールとをかかる比率で用いる場合、特に、低温定着性が良好なトナーを得やすい。
【0020】
アルコール成分における、グリセリン、グリセリン誘導体、及びエチレングリコールの含有量の総量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、典型的には、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0021】
アルコール成分は、本発明の目的を阻害しない範囲で、グリセリン、グリセリン誘導体、及びエチレングリコールの他の、2価、又は3価以上のアルコール成分を含んでいてもよい。グリセリン、グリセリン誘導体、及びエチレングリコールの他の、2価、又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上のアルコール類が挙げられる。
【0022】
(カルボン酸成分)
結着樹脂として用いるポリエステル樹脂の単量体として使用される2価又は3価以上のカルボン酸成分としては、以下のものが挙げられる。2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、或いはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキル又はアルケニルコハク酸等の2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の3価以上のカルボン酸等が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
【0023】
(結着樹脂の製造方法)
結着樹脂として用いるポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知のポリエステル樹脂の製造方法から適宜選択できる。ポリエステル樹脂の製造方法としては、例えば、前述のアルコール成分とカルボン酸成分とを反応容器に入れ、触媒の存在下に、200〜250℃で、副生する揮発性成分を除去しながら重縮合反応を行う方法が挙げられる。重縮合反応中には、揮発性成分を除去し、重縮合反応を促進する目的で、反応容器を減圧することができる。触媒としては、例えば、スズ、チタン、アンチモン、マンガン、ニッケル、亜鉛、鉛、鉄、マグネシウム、カルシウム、ゲルマニウム等の金属や、これらの金属含有化合物が挙げられる。
【0024】
ポリエステル樹脂を製造する際の、アルコール成分と、カルボン酸成分との使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。アルコール成分と、カルボン酸成分との使用量は、典型的には、アルコール成分に含まれる水酸基のモル数が、カルボン酸成分に含まれるカルボキシル基のモル数の4倍以上となる量が好ましく、4〜5倍となる量がより好ましい。アルコール成分に含まれる水酸基のモル数を、カルボン酸成分に含まれるカルボキシル基のモル数に対して増加させる場合、得られるトナーの酸価が低下し、トナーの吸水量が増加する傾向がある。このため、アルコール成分に含まれる水酸基のモル数の、カルボン酸成分に含まれるカルボキシル基のモル数に対する倍率を調整することにより、得られるトナーの酸価と吸水量とを調整することができる。
【0025】
カルボン酸成分が、酸ハライド、又は低級アルキルエステルである場合、ハロカルボニル基、又は低級アルコキシカルボニル基のモル数をカルボキシル基のモル数として、カルボン酸成分に含まれるカルボキシル基のモル数を算出する。また、カルボン酸成分が酸無水物である場合、酸無水物基のモル数を2倍した数を、カルボキシル基のモル数として、カルボン酸成分に含まれるカルボキシル基のモル数を算出する。
【0026】
なお、本発明において用いる正帯電性トナーは、カーボンニュートラルの観点から、結着樹脂を構成するポリエステルの原料として、バイオマス由来の材料を利用するのが好ましい。バイオマスの種類は特に限定されず、植物バイオマスであっても動物バイオマスであってもよい。
【0027】
バイオマス由来の材料の中では、大量に入手しやすく安価であることから、植物バイオマス由来の材料がより好ましい。ポリエステルの原料の中では、グリセリン、及び/又はグリセリン誘導体をバイオマス由来の材料として用いるのが好ましい。バイオマスから、グリセリン、及び/又はグリセリン誘導体を製造する方法の具体例としては、植物性油脂、又は動物性油脂の酸、塩基等による化学的加水分解や、又は酵素、微生物等による生物的加水分解が挙げられる。また、グリセリンは、グルコース等の糖類を含む基質から発酵法により製造することもできる。
【0028】
大気中に存在するCOのうち、放射性炭素(14C)を含むCOの濃度は、大気中において一定に保たれている。一方、植物は大気中の14Cを含むCOを光合成の過程において取り込むことで、自らの有機成分における炭素中の14Cの濃度が、大気中における14Cを含むCOの濃度と同じ比率となっており、その濃度は107.5pMC(percent Modern Carbon)である。また、動物における炭素も、植物に含まれる炭素に由来するため、動物の有機成分における炭素中の14Cの濃度も、植物と同様である。
【0029】
ここで、トナー中に含まれる14Cの濃度をXpMCとすると、下記式(1)により、トナー中の炭素のうちのバイオマス由来の炭素の比率を求めることができる。
<式(1)>
バイオマス由来の炭素の比率(%)=(X/107.5)×100 (1)
【0030】
また、カーボンニュートラルの観点から特に好ましいプラスチック製品として、製品に含まれる炭素中のバイオマス由来の炭素の割合が25%以上であるプラスチック製品に対して、バイオマスプラマーク(日本バイオプラスチック協会認証)が与えられる。そして、トナーに含まれる炭素中のバイオマス由来の炭素の割合が25%以上となる、トナー中の14Cの濃度Xを上記式(1)から求めると、26.9pMC以上となる。従って、トナーに含まれる炭素の放射性炭素同位体14Cの濃度が26.9pMC以上となるように、ポリエステル樹脂を調製することが好ましい。なお、石油化学製品の炭素元素中における14Cの濃度は、ASTM−D6866に従って測定できる。
【0031】
ポリエステル樹脂の軟化点は、80℃以上150℃以下が好ましく、90℃以上140℃以下がより好ましい。
〔着色剤〕
本発明の2成分現像剤に含まれる正帯電性トナーは結着樹脂中に着色剤を含む。トナーには、トナー粒子の所望する色に合わせて、公知の顔料や染料から適宜選択して用いることができる。トナーに添加する好適な着色剤の具体例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック等の黒色顔料;黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等の赤色顔料;マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等の緑色顔料;亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等の白色顔料;バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等の体質顔料が挙げられる。これらの着色剤は、トナーを所望の色相に調整する目的等で2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0032】
着色剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、結着樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜7質量部がより好ましい。
【0033】
〔電荷制御剤〕
本発明の2成分現像剤に含まれる正帯電性トナーは、正帯電性の電荷制御剤を含む。正帯電性の電荷制御剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナーに使用されている正帯電性の電荷制御剤から適宜選択できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディーブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より迅速な立ち上がり性が得られる点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するポリスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等の1種、又は2種以上が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0035】
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂において、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0036】
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
【0037】
正帯電性の電荷制御剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。正帯電性の電荷制御剤の使用量は、典型的には、結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましい。電荷制御剤の使用量が過少である場合、所定の極性にトナーを安定して帯電させ難いため、形成画像の画像濃度を長期にわたって維持しにくくなる可能性がある。また、かかる場合、電荷制御剤が均一に分散しにくく、形成画像におけるかぶりやトナーによる感光体の汚染が起こりやすくなる。電荷制御剤の使用量が過多である場合、耐環境性の悪化による、高温高湿下での帯電不良に起因する画像不良や、トナーによる感光体の汚染等が起こりやすくなる。
【0038】
〔離型剤〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、離型剤が含まれる。離型剤は、トナーの定着性や耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーに添加する離型剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。離型剤としてはワックスが好ましく、ワックスの例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックス等が挙げられる。これらの離型剤は2種以上を組み合わせて使用できる。かかる離型剤をトナーに添加することにより、オフセットや像スミアリング(画像をこすった際の画像周囲の汚れ)の発生をより効率的に抑制することができる。
【0039】
離型剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な離型剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して、1〜5質量部が好ましい。離型剤の使用量が過少である場合、形成画像におけるオフセットや像スミアリングの発生の抑制について所望の効果が得られない場合があり、離型剤の使用量が過多である場合、トナー同士の融着によってトナーの保存安定性が低下する場合がある。
【0040】
〔外添剤〕
トナーの流動性、保存安定性、クリーニング性等を改良する目的で、外添剤をトナーの表面に付着させてもよい。
【0041】
外添剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナー用に使用されている外添剤から適宜選択できる。好適な外添剤の具体例としては、シリカや、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0042】
外添剤の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、典型的には0.01〜1.0μmが好ましい。
【0043】
外添剤の体積固有の抵抗値は、外添剤の表面に酸化スズ及び酸化アンチモンからなる被覆層を形成し、被覆層の厚さや、酸化スズと酸化アンチモンとの比率を変えることにより調整できる。
【0044】
外添剤のトナーに対する使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。外添剤の使用量は、典型的には、トナー100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。かかる範囲の量で外添剤を使用する場合、流動性、保存安定性、クリーニング性に優れるトナーを得やすい。
【0045】
〔正帯電性トナーの製造方法〕
本発明において用いる正帯電性トナーは、結着樹脂である上述のポリエステル樹脂中に、必要に応じて、着色剤、電荷制御剤、離型剤等の成分を混合後溶融混練し、得られた混練物を粉砕・分級することにより製造できる。トナーの製造に用いる溶融混練装置は特に限定されず、熱可塑性樹脂の溶融混練に使用される装置から適宜選択できる。混練装置の具体例としては、一軸、又は二軸の押出機等が挙げられる。粉砕・分級されたトナーの平均粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、一般的には、5〜10μmが好ましい。
【0046】
このようにして得られるトナーは、必要に応じて、その表面を外添剤により処理してもよい。外添剤によるトナーの処理方法は特に限定されず、従来知られる外添剤による処理方法から適宜選択できる。具体的には、外添剤の粒子がトナー母粒子に埋め込まれないように処理条件を調整し、ヘンシェルミキサーやナウターミキサー等の混合機によって、外添剤による処理が行われる。
[キャリア]
本発明の2成分現像剤に含まれるキャリアは、キャリアコア(キャリア芯材)が特定の樹脂を含むコート剤により被覆されたものである。以下、キャリアを構成するキャリアコア、及びコート剤について順に説明する。
【0047】
本発明の2成分現像剤に含まれるキャリアは、キャリアコア(キャリア芯材)が特定の樹脂を含むコート剤により被覆されたものである。以下、キャリアを構成するキャリアコア、コート剤、及びキャリアの製造方法について順に説明する。
【0048】
〔キャリアコア〕
キャリアコアの種類は、従来から、2成分現像剤用のキャリアに使用されるキャリアコアであれば特に限定されない。キャリアコアの具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、コバルト等の粒子や、これらの材料とマンガン、亜鉛、アルミニウム等との合金の粒子、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金等の粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム等のセラミックスの粒子、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、ロッシェル塩等の高誘電率物質の粒子、樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリア等が挙げられる。
【0049】
また、本発明において用いるキャリアは、平均円形度が0.980以上のものを用いる。キャリアの円形度は、円形度が高いキャリアコアを用いてキャリアを調製する方法や、キャリアコアをコート剤で被覆した後にキャリア表面に機械的及び機械的又は熱的応力を加える方法により調整できる。キャリアコアの円形度はキャリアコアを調製する際の、焼成温度、焼成時間等の製造条件を調整することで調整できる。一般的な傾向として、焼成時間を長くするほど、又は焼成温度を高くするほど、キャリアコアの円形度を高くすることができる。しかし、焼成時間が長すぎたり、焼成温度が高すぎたりする場合、キャリアコアの溶融等により、かえってキャリアコアの円形度が低くなる場合があるので注意を要する。以下、キャリアの平均円形度の測定方法について説明する。
【0050】
<平均円形度測定方法>
キャリアの平均円形度は、日立製作所社製FE−SEM(S−800)を用い、倍率100〜300倍に拡大したキャリア像を100個無作為にサンプリングし、その画像情報を、インターフェースを介したニコレ社製画像解析装置(LuzexIII)によって解析して得る。具体的には、キャリアの平均円形度は、以下の式により算出する。
円形度=(円相当径から求めた円周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0051】
〔コート剤〕
キャリアコアを被覆するコート剤としては特にポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選択される1種以上のポリアミド/イミド系樹脂と、フッ素樹脂とを含む。なお、本出願の明細書、及び特許請求の範囲では、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂の総称について「ポリアミド/イミド系樹脂」と記載する。
【0052】
コート剤の成分としてポリアミド/イミド系樹脂を用いることにより、フッ素樹脂を含むコート剤をキャリアコア表面に、良好に固定しやすくなる。また、コート剤の成分としてフッ素樹脂を用いることにより外添剤等のキャリアへの付着を抑制できる。このため、2成分現像剤において、ポリアミド/イミド系樹脂と、フッ素樹脂とを含むコート剤を用いる場合、キャリアとトナーとが撹拌される際のストレスによる、キャリア表面からのコート剤の剥離と、キャリア表面への外添剤等の付着とが抑制され、長期間連続して印字を行う場合でも、トナーを所望帯電量に帯電させやすい。
【0053】
コート剤における、フッ素樹脂、及びポリアミド/イミド系樹脂の合計の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が特に好ましく、100質量%が最も好ましい。コート剤が含んでいてもよい、フッ素樹脂、並びにポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂以外の他の樹脂としては、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、アミノ樹脂等が挙げられる。
【0054】
以下、フッ素樹脂、及びポリアミド/イミド系樹脂について順に説明する。
【0055】
(フッ素樹脂)
フッ素樹脂は、従来から2成分現像剤に含まれるキャリアのコート剤として使用されているものであれば特に限定されず、適宜選択して使用することができる。フッ素樹脂の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等が挙げられる。これらのフッ素樹脂の中では、キャリアコア表面に固着されやすくコート層の形成が容易であることから、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、及び四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)からなる群から選択される1種以上の樹脂がより好ましい。
【0056】
(ポリアミド/イミド系樹脂)
ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂は、従来から2成分現像剤に含まれるキャリアのコート剤として使用されているものであれば特に限定されず、適宜選択して使用することができる。ポリアミド樹脂の具体例としては、脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等)、少なくともジアミン成分が脂肪族化合物であるポリアミド(ナイロン6T、ナイロン6T共重合体、ナイロン9T等)、又は半芳香族(共重合)ポリアミド(ナイロンMXD6、ナイロン6T/6、ナイロン6T/66、ナイロン6T/12、ナイロン6I/6、ナイロン6I/66、ナイロン6T/6I、ナイロン6T/6I/6、ナイロン6T/6I/66、ナイロン6T/MST等)等が挙げられる。また、ポリイミド樹脂の具体例としては、ピロメリット酸(PMDA)系ポリイミド、ビフェニルテトラカルボン酸系ポリイミド、ビスマレイミド系樹脂(ビスマレイミド/トリアジン系等)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸系ポリイミド、アセチレン末端ポリイミド、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。また、ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、トリメリット酸を用いたポリアミドイミド等が挙げられる
【0057】
〔キャリアの製造方法〕
本発明の2成分現像剤に含まれるキャリアは、キャリアコアを、コート剤により被覆した後、コート剤により被覆されたキャリアコアを加熱処理してコート剤をキャリアコア表面に固着させて製造される。キャリアを製造する際のコート剤の使用量は、キャリアコアの質量に対して、0.1〜15質量%が好ましく、1〜7質量%がより好ましい。
【0058】
キャリアコアをコート剤により被覆する方法は特に限定されず、従来、キャリアを製造する際に行われている方法から適宜選択される。キャリアコアをコート剤により被覆する方法は、コート剤の溶液をキャリアコアに噴霧した後に溶媒を除去する湿式法であってもよく、コート剤の粉体をキャリアコアの表面に付着させる乾式法のいずれであってもよい。操作が簡易であり、有機溶媒に難溶な樹脂にも適用可能であるため、キャリアコアのコート剤による被覆は、乾式法により行うのがより好ましい。キャリアコアをコート剤の粉体により被覆する方法は特に限定されず、例えば、ノビルタ(登録商標)(ホソカワミクロン株式会社製)等の乾式コーティング装置を用いる方法が挙げられる。
【0059】
以下、好適なコート剤である、ポリアミド/イミド系樹脂とフッ素樹脂とを含むコート剤によりキャリアコアを被覆する方法について説明する。キャリアコアを、乾式法によりコート剤の粉体により被覆する方法としては、ポリアミド/イミド系樹脂と、フッ素樹脂とを含むコート剤により単層で被覆する方法や、キャリアコアを、ポリアミド/イミド系樹脂からなる層と、フッ素樹脂からなる層とからなる2層により被覆する方法が挙げられる。キャリアコアを2層により被覆する場合、ポリアミド/イミド系樹脂からなる層、及びフッ素樹脂からなる層のいずれが外層であっても構わないが、コート剤のキャリアコアへの結合の強さや、コート剤への外添剤等の付着のしにくさを考慮すると、ポリアミド/イミド系樹脂からなる層が内層であり、フッ素樹脂からなる層が外層であるのが好ましい。
【0060】
ポリアミド/イミド系樹脂と、フッ素樹脂とを含む混合物からなるコート剤により単層でキャリアコアを被覆する場合、1回の被覆操作によりキャリアを調製でき、キャリアの調製が容易である点で好ましい。
【0061】
なお、単層でコートする場合のコート層や、キャリアコアを多層によりコートする場合のポリアミド/イミド系樹脂層、フッ素樹脂層、及び芳香族ポリエーテルケトン系樹脂は、本発明の目的を阻害しない範囲で、ポリアミド/イミド系樹脂、フッ素樹脂、及び芳香族ポリエーテルケトン系樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。ポリアミド/イミド系樹脂、及びフッ素樹脂以外の樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、アミノ樹脂等が挙げられる。また、キャリアコアを多層によりコートする場合、本発明の目的を阻害しない範囲で、ポリアミド/イミド系樹脂層、フッ素樹脂層、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂層の各々の間に、前述のポリアミド/イミド系樹脂、フッ素樹脂、及び芳香族ポリエーテルケトン系樹脂以外の樹脂が存在してもよい。
【0062】
ポリアミド/イミド系樹脂の使用量は、キャリアコア粒子100質量部に対して0.1〜2.5質量部が好ましく、0.3〜1.5質量部がより好ましい。また、フッ素樹脂の使用量は、キャリアの全質量に対して0.5〜5%が好ましい。
【0063】
上記の方法により、乾式法によって、コート剤の粉体によりキャリアコアを被覆した後に、コート剤の粉体により被覆されたキャリアコアを加熱処理してキャリアが得られる。加熱処理の温度は、コート剤に含まれる樹脂の種類によって異なるが、典型的には、250〜320℃で行われる。また、キャリアコアを加熱する時間は特に限定されず、典型的には、30分〜2時間である。かかる加熱処理によって、コート剤が軟化・溶融してキャリアコア表面に固着される。
【0064】
キャリアの粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、電子顕微鏡により測定される粒子径で、20〜200μmが好ましく、30〜150μmがより好ましい。
【0065】
キャリアの見掛け密度は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。見掛け密度は、キャリアの組成や表面構造によって異なるが、典型的には、2400〜3000kg/mが好ましい。
【0066】
[2成分現像剤の製造方法]
2成分現像剤の製造方法は、トナーとキャリアとを均一に混合できれば特に限定されず、例えば、ボールミル等の混合装置によりトナーとキャリアとを混合すればよい。2成分現像剤におけるトナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、2〜20質量%が好ましく、4〜15質量%が好ましい。2成分現像剤におけるトナーの含有量をかかる範囲とすることにより、形成画像において適度な画像濃度を維持し、現像装置等からのトナー飛散の抑制によって画像形成装置内部の汚染や転写紙等へのトナーの付着を抑制できる。
【0067】
以上説明した、本発明の2成分現像剤は、グリセリン、又はグリセリン誘導を利用しつつも、低温定着性に優れ、高温で保存する場合にトナーを所望の帯電量に帯電させることができる。このため、本発明の2成分現像剤、及びそれを用いた2成分現像剤は種々の画像形成装置において好適に使用される。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0069】
〔合成例1〕
(グリセリン誘導体の調製)
ポリエステルのモノマーとして用いたグリセリン誘導体は以下のプロパンジオールを用いた。
1,3−プロパンジオール:サステラプロパンジオール(植物由来,デュポン社製)。
1,2−プロパンジオール:下記の合成例で得た1,2−プロパンジオール。
【0070】
(1,2−プロパンジオールの製造)
植物油脂を加水分解することによりグリセリンを得た。具体的には、植物油に対して、植物油を完全に鹸化するのに必要な量に対して2倍の量の10%水酸化ナトリウム水溶液を加え、加熱下に植物油を完全に鹸化させた。鹸化後の反応液から、グリセリンの水溶液を分離した後、グリセリンの水溶液を蒸留により精製した。蒸留されたグリセリンを活性炭により処理し、精製されたグリセリンを得た。
【0071】
上記方法により得られたグリセリンから、グリセリン誘導体としてプロパンジオールを製造した。
まず、還流冷却器を有する反応器に、エチレングリコール(200g)、硝酸第二銅三水和物(76g)を加え、80℃で2時間加熱撹拌後、テトラエトキシシラン(52g)を滴下し80℃で2時間加熱撹拌した。その後、水(18g)を滴下し80℃で3時間加熱撹拌し沈澱物を得た。生成した沈殿物を約120℃で乾燥させ、400℃で2時間、空気中で焼成し、銅/シリカ触媒(銅含有量50%)を得た。得られた銅/シリカ触媒(3g)に、テトラアンミン白金(II)硝酸塩[Pt(NH3)4(NO3)2](29.8mg)の水溶液を添加し、ロータリーエバポレーターで乾燥乾固させた。得られた固体を120℃で乾燥させ、400℃で2時間、空気中で焼成し、銅−白金/シリカ触媒(Cu/Pt/Si=50/0.5/17)(銅含有量50%)を得た。
次いで、撹拌機付きの500mLの鉄製オートクレーブに、銅−白金/シリカ触媒2g、及びグリセリン200gを加え、水素置換した。その後、230℃のオートクレーブ内に、水素を5L/分(25℃、H)で導入し、圧力2MPa、7時間反応させ反応液を得た。得られた反応液を定法の精製方法により1,2−プロパンジオールを得た。
【0072】
〔合成例2〕
(ポリエステル樹脂Aの合成)
合成例1で得たプロパンジオール72.20量部、エチレングリコール3.10質量部、テレフタル酸11.62質量部、フマル酸104.40質量部、及び無水トリメリット酸3.84質量部、並びに縮合触媒として酸化ジブチルスズ1質量部及びハイドロキノン0.3質量部を反応容器に仕込み、200℃、常圧下で水を除去しながら5時間反応させて、ポリエステル樹脂Aを得た。
【0073】
(ポリエステル樹脂Bの合成)
アルコール成分、及びカルボン酸成分の種類及び量を、表1に記載の種類及び量に変えることの他は、ポリエステル樹脂Aと同様にして、ポリエステル樹脂Bを合成した。
【0074】
【表1】

【0075】
〔製造例1〕
(トナーAの製造)
結着樹脂としてポリエステル樹脂Aを100質量部、マゼンタ顔料(PR122(山陽色素株式会社))5質量部、電荷制御剤(P−51(オリヱント化学工業株式会社製))1質量部、ワックス(離型剤、WEP−3(日油株式会社製))5質量部を、ヘンシェルミキサー(20B(日本コークス株式会社製))を用いて混合した。
得られた混合物を、二軸押出機(PCM−30(株式会社池貝製))を用いて、材料供給速度6kg/hr、軸回転数160rpm、シリンダー温度120℃の条件にて溶融混練した後冷却して混練物を得た。得られた混練物を粉砕機(ロートプレックス16/8型(株式会社東亜機械製作所製))で粗粉砕した後、粉砕機(ターボミルRS(ターボ工業株式会社製))で微粉砕し、得られた微粉砕品をエルボージェット(EJ−LABO型式EJ−L−3(日鉄鉱業株式会社製))で分級して、体積平均粒子径8μmのトナー母粒子を得た。
【0076】
(外添処理)
得られたトナー母粒子100質量部に対して、外添剤として、疎水性シリカ微粒子(RA−200H(日本アエロジル株式会社製))1.0質量部を加え、ヘンシェルミキサー(10C(日本コークス株式会社製))により回転数3000rpm、ジャケット制御温度20℃にて2分間混合して、外添処理されたトナーAを得た。
【0077】
(トナーBの製造)
結着樹脂として用いるポリエステル樹脂を、ポリエステル樹脂Bに変えることの他は、トナーAと同様にしてトナーBを製造した。
【0078】
〔製造例2〕
(キャリアAの製造)
トリメット酸無水物(TMA)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを加え、共重合させて得られたポリアミドイミド樹脂の極性溶媒溶液(ポリアミドイミド樹脂溶液)に、末端に反応基を付加させたテトラエトキシシランをポリアミドイミド樹脂100質量部に対して10質量部の割合で含有させた。さらに、ポリアミドイミド樹脂とテトラエトキシシランとの合計量100重量部に対して、フッ素樹脂としてテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(MP−102(デュポン株式会社製))100質量部を分散させ、フッ素樹脂と、テトラエトキシシランを含有するポリアミドイミド樹脂とが重量比で50:50の割合からなる、コート剤を得た。
【0079】
次に、MnO40質量部、MgO9質量部、Fe50質量部、SrO1質量部をボールミルにて2時間調合粉砕し、その後1000℃で5時間焼成し、キャリアコアを得た。
【0080】
得られたキャリアコア100重量部に対して、上記コート剤を5重量部の割合で、流動コーティング装置を用いて上記コア材にスプレーコートした。その後、機械式コーティング装置(ノビルタ(登録商標)130(ホソカワミクロン株式会社製))内に加え、5000rpmで5分間コーティングを行った。上記コート剤によりコーティングされたコアキャリアを、小型高温チャンバー(STH−120(エスペック株式会社製))により280℃で1時間熱処理を行って、キャリアAを得た。得られたキャリアAの平均円形度を、下記の方法に従って測定したところ、0.985であった。
【0081】
<平均円形度測定方法>
キャリアの平均円形度は、日立製作所社製FE−SEM(S−800)を用い、倍率100〜300倍に拡大したキャリア像を100個無作為にサンプリングし、その画像情報を、インターフェースを介したニコレ社製画像解析装置(LuzexIII)によって解析して得た。具体的には、キャリアの平均円形度は、以下の式により算出した。
円形度=(円相当径から求めた円周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0082】
(キャリアBの製造)
焼成条件を微調整して得たキャリアコアを用いたことの他は、キャリアAと同様にして、表2に記載の円形度のキャリアBを製造した。
【0083】
(キャリアCの製造)
コート剤として、フッ素樹脂のみからなるコート剤を用いることの他は、キャリアBと同様にして、表2に記載の円形度のキャリアCを製造した。
【0084】
(キャリアDの製造)
コート剤を下記のように調製することの他は、キャリアBと同様にして、表2に記載の円形度のキャリアDを製造した。
【0085】
トリメット酸無水物(TMA)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)とを加え、共重合させて得られたポリアミドイミド樹脂の極性溶媒溶液(ポリアミドイミド樹脂溶液)に、末端に反応基を付加させたテトラエトキシシランをポリアミドイミド樹脂100質量部に対して10質量部の割合で含有させた。さらに、ポリアミドイミド樹脂とテトラエトキシシランとの合計量100重量部に対して、エポキシ樹脂(エピコート1001(三菱化学株式会社製))100質量部を分散させ、エポキシ樹脂と、テトラエトキシシランを含有するポリアミドイミド樹脂とが重量比で50:50の割合からなる、コート剤を得た。
【0086】
(キャリアEの製造)
焼成条件を微調整して得たキャリアコアを用いたことの他は、キャリアAと同様にして、表2に記載の円形度のキャリアEを製造した。
【0087】
(キャリアFの製造)
焼成条件を微調整して得たキャリアコアを用いたことの他は、キャリアAと同様にして、表2に記載の円形度のキャリアFを製造した。
【0088】
【表2】

【0089】
〔実施例1〕
(2成分現像剤の調製)
キャリアAと、キャリアAの質量に対して10質量%のトナーAとを、ボールミルで30分間混合して2成分現像剤を調製した。
【0090】
得られた2成分現像剤を、複合機(TASKalfa−550i(京セラミタ株式会社製))の黒色用現像器に充填し、また得られたトナーを黒色用トナーコンテナに充填し、下記方法に従い、画像濃度、かぶり濃度、帯電量、トナーの飛散状態、及び低温定着性を評価した。また、実施例1のトナーを用い、下記方法に従い、耐熱保存性、及び放射性炭素濃度を評価した。画像濃度、かぶり濃度、帯電量、及びトナーの飛散状態の評価結果を表3に記す。低温定着性、及び耐熱保存性の評価結果を表4に記す。放射性炭素濃度を表5に記す。
【0091】
<画像濃度>
評価用の初期画像を印字し、初期画像の画像濃度を反射濃度計(RD914(グレタグマクベス社製))により測定した。次いで印字率5%にて100,000枚連続して印字を行った後に、評価用の画像を印字して初期画像と同様に画像濃度を測定した。画像濃度1.4以上を○、1.3以上1.4未満を△、1.3未満を×と判定した。
【0092】
<かぶり濃度>
画像濃度の測定に用いた評価用画像の非印字部の反射濃度を反射濃度計(RD914(グレタグマクベス社製))により測定した。また、印字前の被記録紙の反射濃度を測定した。評価用画像の被印字部の反射濃度と、印字前の被記録紙の反射濃度との差をかぶり濃度とした。かぶり濃度0.003以下を◎、0.003超0.007以下を○、0.007超を×と判定した。
【0093】
<帯電量>
評価用の初期画像を印字し、初期画像形成時のトナーの帯電量を、吸引式小型帯電量測定装置(TReK社製)を用いて現像スリーブ上のトナーを吸引して測定した。次いで印字率5%にて100,000枚連続して印字を行った。100,000枚の連続印字後のトナーの帯電量を、初期の帯電量と同様に測定した。
【0094】
<トナー飛散>
100,000枚の連続印字後に現像器の下部に設置したトレーに蓄積したトナー(飛散トナー)を回収し、その量(飛散量)を計測した。飛散量が50mg以下を「○」と評価し、50mg超200mg以下を「△」と評価し、200mg超を「×」と評価した。
【0095】
<低温定着性>
画像濃度1.3以上のソリッド画像上を、布帛により覆った500gの分銅を用いて分銅の自重のみが画像にかかるように5往復させて摩擦し、摩擦後の画像濃度を測定した。画像濃度の測定は、グレタグマクベススペクトロアイ(グレタグマクベス社製)を用いて行った。下式に従って、摩擦前後の画像濃度から定着率を算出した。
定着率(%)=(摩擦後画像濃度/摩擦前画像濃度)×100
【0096】
上記の摩擦試験において90%以上の定着率が得られ、コールドオフセットの生じない最低の温度を定着下限温度とした。また、上記の摩擦試験において90%以上の定着率が得られ、ホットオフセットの生じない最高の温度を定着上限温度とした。
【0097】
<耐熱保存性>
実施例1のトナー3gを、58℃にて3時間保存した後、室温まで冷却した。冷却されたトナーを、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)により、振動目盛り5にて、330メッシュの篩を用いて篩別した。耐熱保存性の評価は、通過率90質量%以上を◎とし、80%以上90%未満を〇とし、70%以上80%未満を△とし、70%未満を×とした。
【0098】
<放射性炭素濃度測定>
実施例1のトナー中に含まれる14Cの濃度を、ASTM−D6866に準拠して測定した。
【0099】
〔実施例2〕
トナーAをトナーBに変えることの他は、実施例1と同様にして2成分現像剤を調製した。画像濃度、かぶり濃度、帯電量、及びトナーの飛散状態の評価結果を表3に記す。低温定着性、及び耐熱保存性の評価結果を表4に記す。放射性炭素濃度を表5に記す。
【0100】
〔実施例3〕
キャリアAをキャリアBに変えることの他は、実施例1と同様にして2成分現像剤を調製した。画像濃度、かぶり濃度、帯電量、及びトナーの飛散状態の評価結果を表3に記す。低温定着性、及び耐熱保存性の評価結果を表4に記す。放射性炭素濃度を表5に記す。
【0101】
〔比較例1〕
キャリアAをキャリアCに変えることの他は、実施例1と同様にして2成分現像剤を調製した。画像濃度、かぶり濃度、帯電量、及びトナーの飛散状態の評価結果を表3に記す。低温定着性、及び耐熱保存性の評価結果を表4に記す。放射性炭素濃度を表5に記す。
【0102】
〔比較例2〕
キャリアAをキャリアDに変えることの他は、実施例1と同様にして2成分現像剤を調製した。画像濃度、かぶり濃度、帯電量、及びトナーの飛散状態の評価結果を表3に記す。低温定着性、及び耐熱保存性の評価結果を表4に記す。放射性炭素濃度を表5に記す。
【0103】
〔比較例3〕
キャリアAをキャリアEに変えることの他は、実施例1と同様にして2成分現像剤を調製した。画像濃度、かぶり濃度、帯電量、及びトナーの飛散状態の評価結果を表3に記す。低温定着性、及び耐熱保存性の評価結果を表4に記す。放射性炭素濃度を表5に記す。
【0104】
〔比較例4〕
キャリアAをキャリアFに変えることの他は、実施例1と同様にして2成分現像剤を調製した。画像濃度、かぶり濃度、帯電量、及びトナーの飛散状態の評価結果を表3に記す。低温定着性、及び耐熱保存性の評価結果を表4に記す。放射性炭素濃度を表5に記す。
【0105】
【表3】

【0106】
【表4】

【0107】
【表5】

【0108】
2成分現像剤において、分子量の比較的小さいグリセリン、又はグリセリン誘導体をモノマーとして使用したポリエステル樹脂を結着樹脂として用いたトナーを用いる場合、トナーを所望の帯電量に帯電させにくい傾向がある。しかし、実施例1〜3の2成分現像剤は、キャリアコアが、フッ素樹脂と、ポリアミド/イミド系樹脂とを含むコート剤により被覆されたキャリアを用いることで、グリセリン、又はグリセリン誘導体を利用しつつも、トナーを所望の帯電量に帯電させることができるので、画像濃度の良好な画像を形成でき、かぶりが生じにくい。また、実施例1〜3に記載の2成分現像剤に含まれるトナーによれば、100,000枚の連続印字後も、画像濃度の良好な画像を形成でき、かぶりとトナー飛散とを抑制できた。さらに、実施例1〜3に記載の2成分現像剤に含まれるトナーは、アルコール成分として、グリセリン誘導体、及びエチレングリコールを用いているため、低温での定着性と耐熱保存性とが優れていた。
【0109】
比較例1では、キャリアのコート剤にフッ素樹脂は含まれているが、ポリアミドイミド樹脂が含まれていない。このため、比較例1の2成分現像剤では、初期画像の印字時点においてはトナーを所望の帯電量に帯電させることができるが、100,000枚の連続印字後においては、帯電量が著しく低下し、かぶりとトナー飛散とが生じた。コート剤にポリアミドイミド樹脂が含まれていないため、コート剤がキャリアコア表面に良好に固着しにくく、連続印字の際に撹拌によりキャリアに与えられるストレスによって、キャリアにおけるコート剤の剥離が生じたものと考えられる。また、比較例2では、キャリアのコート剤にポリアミドイミド樹脂は含まれているが、フッ素樹脂が含まれていない。このため、比較例2の2成分現像剤では、初期画像の印字時点、及び100,000枚の連続印字後においても十分な帯電量が得られておらず、画像濃度の良好な画像を形成しにくい。ポリアミドイミド樹脂が軟質の材料であるため、キャリアにおけるコート剤の削れや、キャリア表面への外添剤等の付着が生じたものと考えられる。
【0110】
比較例3及び4では、キャリアの平均円形度が0.980より低いキャリアを用いている。比較例3及び4の2成分現像剤では、初期画像の印字時点においては、良好な画像を形成できるが、100,000枚の連続印字後においては、画像濃度の良好な画像を形成しにくい。比較例3及び4の現像剤に含まれるキャリアは、平均円形度が低いため、連続印字の際の撹拌によって、キャリア−キャリア間や、キャリア−トナー間の衝突によるストレスを受けやすい。このため、比較例3及び4の現像剤では、キャリアにおけるコート剤の剥離や、キャリア表面への外添剤等の付着により、トナーを所望の帯電量に帯電させにくくなり、これにともない、画像濃度の低下、かぶり、トナー飛散が生じたと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正帯電性トナーと、キャリアとを含み、
前記正帯電性トナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤、及び電荷制御剤を含み、
前記結着樹脂が、少なくともグリセリン、及び/又は1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール及びアシル基の炭素原子数が8〜20であるモノアシルグリセロールからなる群から選択される少なくとも1種類以上のグリセリン誘導体と、エチレングリコールとを含む2価又は3価以上のアルコール成分と、2価又は3価以上のカルボン酸成分との共重合体であるポリエステル樹脂であり、
前記キャリアは、キャリアコアがコート剤により被覆され、且つ平均円形度が0.98以上であり、
前記コート剤は、フッ素樹脂と、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選択される1種類以上のポリアミド/イミド系樹脂とを含む、2成分現像剤。
【請求項2】
前記アルコール成分において、前記グリセリン、及び/又はグリセリン誘導体の含有量(A)と、前記エチレングリコールの物質量(B)との物質量比A/Bが、15%以下である、請求項1記載の2成分現像剤。

【公開番号】特開2013−114228(P2013−114228A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263040(P2011−263040)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】