説明

2成分現像剤

【課題】形成画像の画像濃度が所望する値を下回ることを抑制でき、長期間にわたって印刷する場合であっても、かぶり等の画像不良の発生を抑制できる2成分現像剤を提供すること。
【解決手段】正帯電性トナーとキャリアとを含み、正帯電性トナーは少なくとも結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を含むトナー母粒子と、外添剤とからなり、外添剤は、少なくともシリカを含み、シリカは、平均一次粒子径(X)が12〜30nmであり、トナー母粒子表面上の平均凝集数(Y1)と、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)との平均凝集比率(Y2/Y1)が0.97以上であり、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)が5〜15である、2成分現像剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正帯電性トナーとキャリアとからなる2成分現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真法においては、感光体ドラムの表面をコロナ放電等により帯電させた後、レーザー等により露光して静電潜像を形成し、この静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成し、さらにこのトナー像を記録媒体に転写して高品質な画像を得ている。通常トナー像の形成に使用するトナーには熱可塑性樹脂等の結着樹脂に、着色剤、電荷制御剤、離型剤等を混合して混練、粉砕、分級を行い平均粒径5〜10μmのトナー母粒子としたものが用いられる。そしてトナーに流動性を付与したり、トナーの帯電制御を行ったり、クリーニング性を向上させたりする目的で、シリカや酸化チタン等の無機微粉末等がトナーに外添されている。
【0003】
しかし、これらの無機微粉末は一般的に負に帯電する傾向があり、特にシリカは強い負帯電性を示す。そこで、これらの無機微粉末を正帯電性トナーに用いる場合、その表面に正帯電性の極性基が導入された無機微粉末が使用されている。実際に、外添剤としてシリカ微粉末が用いられる場合、アミノシランカップリング剤を用いて、アミノ基等の正帯電性の極性基をシリカに導入し、さらに、疎水性化剤を用いて疎水化処理した乾式シリカ微粉末や、シリコーンオイルで疎水化処理した湿式シリカ微粉末等が用いられている。
【0004】
これらの正帯電性の極性基が導入され、疎水化処理がされたシリカは、トナーに流動性や良好な帯電性能を与える目的で外添されることが多いが、粒子径の小さなシリカを用いた場合、その大きさによっては、シリカがトナー母粒子中に埋め込まれることがある。外添剤がトナー母粒子に埋め込まれると、トナーの流動性が低下するとともに、トナーの帯電量が所望する範囲内にならずに、所望する画像濃度を有する形成画像が得にくくなることがあった。
【0005】
このような問題に対し、トナーに流動性を与え、当該シリカのトナー表面への埋没を抑制するために、一次粒子が共有結合により結合して凝集した、火炎加水分解法により合成されるヒュームドシリカが用いられることがある。このような一次粒子が凝集したシリカを外添させたトナーとしては、例えば、6〜500個の微粒子が鎖状又は分岐状に共有結合した形状のシリカを用いることで、トナーに流動性を付与し、且つ外添剤のトナーへの埋没を抑制することができるトナーが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−365834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、例えば、正帯電性トナー(以下、単にトナーともいう)とキャリアとを混合した2成分現像剤において、トナーとキャリアとが撹拌されると、トナーに強いストレスがかかることで、凝集体を形成するシリカに割れが生じることがある。ここでシリカに正帯電極性基の導入や疎水化等の表面処理がされている場合、シリカの凝集体に割れが生じることによって、表面処理されていないシリカ表面が露出されることによる影響により、正帯電性トナーに帯電不良が生じ、形成画像にかぶり等の画像不良が発生したりする場合がある。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、形成画像の画像濃度が所望する値を下回ることを抑制でき、長期間にわたって印刷する場合であっても、かぶり等の画像不良の発生を抑制できる2成分現像剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、正帯電性トナーとキャリアとを含み、正帯電性トナーは少なくとも結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を含むトナー母粒子と、外添剤とからなり、外添剤は、少なくともシリカを含み、シリカは、平均一次粒子径(X)が12〜30nmであり、トナー母粒子表面上の平均凝集数(Y1)と、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)との平均凝集比率(Y2/Y1)が0.97以上であり、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)が5〜15である、2成分現像剤により上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0010】
(1) 正帯電性トナーとキャリアとを含む2成分現像剤であって、
前記正帯電性トナーは少なくとも結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を含むトナー母粒子と、外添剤とからなり、
前記外添剤は、少なくともシリカを含み、
前記シリカは、平均一次粒子径(X)が12〜30nmであり、トナー母粒子表面上の平均凝集数(Y1)と、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)との平均凝集比率(Y2/Y1)が0.97以上であり、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)が5〜15である、2成分現像剤。
【0011】
(2) 前記シリカが、火炎加水分解法で合成され、粉砕された後に疎水化された疎水性シリカである、(1)に記載の2成分現像剤。
【0012】
(3) 前記シリカの緩み見掛け比重が200g/l以上である、(1)又は(2)に記載の2成分現像剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、形成画像の画像濃度が所望する値を下回ることを抑制でき、長期間にわたって印刷する場合であっても、かぶり等の画像不良の発生を抑制できる、2成分現像剤を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0015】
本発明の2成分現像剤は、正帯電性トナーとキャリアとを含み、正帯電性トナーは少なくとも結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を含むトナー母粒子と、外添剤とからなり、外添剤は、少なくともシリカを含み、シリカは、平均一次粒子径(X)が12〜30nmであり、トナー母粒子表面上の平均凝集数(Y1)と、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)との平均凝集比率(Y2/Y1)が0.97以上であり、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)が5〜15である。以下、本発明の2成分現像剤で用いる正帯電性トナー、及びキャリアと、2成分現像剤の製造方法とについて順に説明する。
【0016】
[正帯電性トナー]
本発明の2成分現像剤に用いる正帯電性トナーを構成するトナー母粒子は、少なくとも、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を含む。そして、トナー母粒子はその表面にシリカが外添され、所望によりシリカの他の外添剤が外添されてもよい。以下、本発明において用いるトナー母粒子の必須の成分である、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤と、トナー母粒子の製造方法と、シリカと、シリカの他の外添剤と、外添処理とについて順に説明する。
【0017】
〔結着樹脂〕
本発明の2成分現像剤に用いるトナーは、少なくとも結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を含むトナー母粒子の表面に、シリカを含む外添剤が付着したものである。トナー母粒子の主要構成要素である結着樹脂は、従来からトナー用の結着樹脂として用いられている樹脂であれば特に制限なく本発明の結着樹脂として使用することができる。本発明で使用可能な結着樹脂の具体例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、トナー中における着色剤の分散性、トナーの帯電性、用紙に対する定着性の面から、スチレン−アクリル系樹脂、及びポリエステル系樹脂が好ましい。以下、ポリスチレン系樹脂、及びポリエステル系樹脂について説明する。
【0018】
スチレン−アクリル系樹脂は、スチレン系単量体とアクリル系単量体との共重合体である。スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン等が挙げられる。アクリル系単量体の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0019】
ポリエステル系樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合や共縮重合によって得られるものを使用することができる。ポリエステル系樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のアルコール成分やカルボン酸成分が挙げられる。
【0020】
アルコール成分としては、2価又は3価以上のアルコールを使用できる。2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上のアルコール類が挙げられる。
【0021】
カルボン酸成分としては、2価又は3価以上のカルボン酸成分を使用できる。2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、或いはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキル又はアルケニルコハク酸等の2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の3価以上のカルボン酸等が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
【0022】
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合のポリエステル樹脂の軟化点は、80〜150℃が好ましく、90〜140℃がより好ましい。
【0023】
結着樹脂としては、定着性が良好であることから熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂単独で使用するだけでなく、熱可塑性樹脂に架橋剤や熱硬化性樹脂を添加することができる。結着樹脂内に一部架橋構造を導入することにより、定着性を低下させることなく、トナーの保存安定性、形態保持性、耐久性等を向上させることができる。
【0024】
熱可塑性樹脂とともに使用できる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂やシアネート系樹脂が好ましい。好適な熱硬化性樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、50〜75℃が好ましく、55〜65℃がより好ましい。結着樹脂のガラス転移点が低すぎる場合、画像形成装置の現像部の内部でトナー同士が融着したり、保存安定性の低下により、トナー容器の輸送時や倉庫等での保管時にトナー同士が一部融着したりする場合がある。また、結着樹脂の強度が低下し、感光体ドラム等にトナーが付着しやすい。ガラス転移点が高すぎる場合、トナーの低温定着性が低下する傾向がある。
【0026】
なお、結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置としてセイコーインスツルメンツ社製示差走査熱量計DSC−6200を用い、吸熱曲線を測定することで求めることができる。測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25〜200℃、昇温速度10℃/分で常温常湿下にて測定して得られた吸熱曲線より結着樹脂のガラス転移点を求めることができる。
【0027】
〔着色剤〕
トナー母粒子に配合できる着色剤は、トナーの色に合わせて、公知の顔料や染料を使用できる。結着樹脂に添加できる好適な着色剤の具体例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック等の黒色顔料;黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー180等の黄色顔料;赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド238等の赤色顔料;マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニンブルー顔料)等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等の緑色顔料;亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等の白色顔料;バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等の体質顔料が挙げられる。これらの着色剤は、トナーを所望の色相に調整する目的等で2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
これらの着色剤の中では、例えば、ブラックトナーの着色剤としては、カーボンブラックが好ましく、イエロートナーの着色剤としては、C.I.ピグメントイエロー180が好ましい。シアントナーの着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3(銅フタロシアニンブルー顔料)が好ましく、マゼンタトナーの着色剤としては、C.I.ピグメントレッド238が好ましい。
【0029】
トナー母粒子における着色剤の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、着色剤の種類に応じて適宜定められる。トナー母粒子における着色剤の含有量は、好適な形成画像の画像濃度が得られる点から、例えば、結着樹脂100質量部に対して、1〜15質量部が好ましく、2〜8質量部がより好ましい。
【0030】
〔電荷制御剤〕
本発明の2成分現像剤に用いる正帯電性トナーは、結着樹脂中に正帯電性の電荷制御剤を含む。正帯電性トナーでは、特に後述するシリカ凝集体の割れにより、帯電不良や、感光体、現像ローラー等の汚染の問題が起こりやすい。
【0031】
正帯電性の電荷制御剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来よりトナーに使用されている電荷制御剤から適宜選択できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディープブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より迅速にトナーが所望範囲の帯電量を保持し得る点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0032】
4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0033】
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂において、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0034】
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
【0035】
〔離型剤〕
本発明の2成分現像剤に用いるトナーは、離型剤を含む。トナーが離型剤を含むことによって、トナーの定着性や耐オフセット性を向上させることができる。結着樹脂に配合できる離型剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。離型剤としてはワックスが好ましく、ワックスの例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックス等が挙げられる。これらの離型剤は2種以上を組み合わせて使用できる。かかる離型剤をトナーに添加することにより、オフセットや像スミアリング(画像をこすった際の画像周囲の汚れ)の発生をより効率的に抑制できる。
【0036】
離型剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な離型剤の使用量は、結着樹脂を100質量部とした場合に、1〜20質量部が好ましく、2〜10質量部がより好ましい。離型剤の使用量が過少である場合、形成画像におけるオフセットや像スミアリングの発生の抑制について所望の効果が得られない場合があり、離形剤の使用量が過多である場合、トナー同士の融着によってトナーの保存安定性が低下する場合がある。
【0037】
〔トナー母粒子の製造方法〕
本発明の2成分現像剤に用いるトナーの調製に用いられるトナー母粒子の製造方法は、トナー母粒子に含まれる成分が均一に混合される限り特に限定されない。トナー母粒子の製造方法の具体例としては、結着樹脂と、以上説明した、着色剤、電荷制御剤、離型剤等の成分とを、混合機等によって混合した後に、押出機等の混練機により溶融混練し、次いで、混練物を冷却し、これを粉砕・分級する方法が挙げられる。トナー母粒子の平均粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、一般的には、5μm以上10μm以下が好ましい。
【0038】
〔シリカ〕
本発明の2成分現像剤に用いるトナーは、結着樹脂中に、必須又は任意に着色剤、離型剤、電荷制御剤等の成分を配合して所望の粒子径のトナー母粒子を調製した後に、シリカを含む外添剤を付着させたものである。本発明において用いるシリカの種類は、平均一次粒子径が12〜30nmであり、トナー母粒子表面上の平均凝集数(Y1)と、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)との平均凝集比率(Y2/Y1)が0.97以上であり、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)が5〜15である限り、特に限定されない。好適なシリカの具体例としては、例えば、シリカの一次粒子同士が凝集体を形成するフュームドシリカ、特に好ましくは、火炎加水分解法により合成したフュームドシリカを粉砕処理し、その後疎水化処理された疎水性シリカが挙げられる。
【0039】
このように、疎水化処理の前に粉砕処理を行うことによって、シリカ一次粒子の凝集体を、シリカ凝集体の割れが生じにくい凝集数に調整でき、現像器内でトナーが強いストレスを受けた場合でも、トナーの帯電量の低下を抑制しやすく、形成画像におけるかぶりの発生も抑制しやすい。以下、火炎加水分解法、粉砕処理、疎水化処理について順に説明する。
【0040】
(火炎加水分解法)
火炎加水分解法によるフュームドシリカの合成方法は、例えば、四塩化ケイ素等の原料珪素化合物のガスを不活性ガスとともに燃焼バーナーの混合室に導入し、水素及び空気と混合して所定比率の混合ガスとし、この混合ガスを反応室で1000〜3000℃の温度で燃焼させてフュームドシリカを生成させ、冷却後、合成したフュームドシリカをフィルターで捕集する方法である。
【0041】
(粉砕処理)
得られたフュームドシリカの粉砕処理は、従来知られる粉砕機等により行うことができる。具体的には、ロッキングミキサー等の粉体混合機等を用いて、シリカとジルコニアビーズ等とを一緒に混合して粉砕処理する方法が挙げられる。
【0042】
(疎水化処理)
シリカの疎水化処理の方法としては、従来知られるシリカの疎水化処理方法により行うことができる。例えば、シリカを高速で撹拌しながら、疎水化処理剤であるアミノシラン、シリコーンオイル等を滴下又は噴霧する方法、撹拌されている疎水化処理剤の有機溶剤溶液中にシリカを添加する方法が挙げられる。疎水化処理後に加熱することにより疎水化処理されたシリカ粒子が得られる。疎水化処理剤を滴下又は噴霧する場合、疎水化処理剤は、そのまま、又は、有機溶剤等により希釈して用いることができる。
【0043】
疎水化処理剤であるアミノシランカップリング剤の具体例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。疎水化効果を補う為に、アミノシランカップリング剤と、アミノシランカップリング剤以外の疎水化処理剤とを併用できる。アミノシランカップリング剤以外の疎水化処理剤としては、疎水化効果、及びトナーの流動性の改良効果に優れることから、ヘキサメチルジシラザンを用いるのが好ましい。
【0044】
疎水化処理剤であるシリコーンオイルの種類は、所望の疎水化効果が得られる限り、特に限定されず、従来から疎水化処理剤として用いられている種々のシリコーンオイルを使用できる。シリコーンオイルとしては、直鎖シロキサン構造を有するものが好ましく、非反応性シリコーンオイル、反応性シリコーンオイルの何れも使用できる。シリコーンオイルの具体例としては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、クロロフェニルシリコーンオイル、アルキルシリコーンオイル、クロロシリコーンオイル、ポリオキシアルキレン変性シリコーンオイル、脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、シラノール基含有シリコーンオイル、アルコキシ基含有シリコーンオイル、アセトキシ基含有シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0045】
〔シリカの他の外添剤〕
本発明の2成分現像剤に用いるトナーは、本発明の目的を阻害しない範囲で、トナーの流動性、保存安定性、クリーニング性等を改良する目的で、シリカとともに、シリカの他の外添剤を、トナー母粒子の表面に付着させてもよい。
【0046】
シリカの他の外添剤としては、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナー用に使用されている外添剤から適宜選択できる。好適なシリカの他の外添剤の具体例としては、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0047】
シリカの他の外添剤の平均一次粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、典型的には0.01μm以上1.0μm以下が好ましい。
【0048】
シリカの他の外添剤の体積固有の抵抗値は、その表面に酸化スズ及び酸化アンチモンからなる被覆層を形成し、被覆層の厚さや、酸化スズと酸化アンチモンとの比率を変えることにより調整できる。また、シリカの他の無機微粒子は、シリカと同様に疎水化処理したものを用いることができる。
【0049】
〔外添処理〕
トナー母粒子の表面に外添剤としてシリカと、所望により、シリカの他の外添剤とを付着させることにより、トナーが製造される。外添剤をトナー母粒子の表面に付着させる方法は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、例えば、外添剤がトナー母粒子に埋め込まれないように処理条件を調整し、種々の混合機により、トナー母粒子と外添剤とを混合する方法が好ましい。混合機の具体例としては、タービン型撹拌機、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等が挙げられ、ヘンシェルミキサーがより好ましい。
【0050】
また、トナー母粒子の表面に外添するシリカの使用量は、本発明の2成分現像剤の質量に対して、0.5〜4質量%が好ましい。また、所望により、シリカの他の外添剤を外添する場合には、本発明の2成分現像剤の質量に対して、シリカの他の外添剤の使用量は、0.5〜3質量%が好ましい。
【0051】
[キャリア]
以下、本発明の2成分現像剤において用いるキャリアについて説明する。2成分現像剤を調製する場合、キャリアとして磁性キャリアを用いるのが好ましい。
【0052】
本発明の2成分現像剤に用いるトナーを2成分現像剤とする場合の好適なキャリアとしては、キャリア芯材が樹脂により被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、コバルト等の粒子や、これらの材料とマンガン、亜鉛、アルミニウム等との合金の粒子、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金等の粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム等のセラミックスの粒子、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、ロッシェル塩等の高誘電率物質の粒子、樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリア等が挙げられる。
【0053】
キャリア芯材を被覆する樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂、四フッ化エチレン・パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、アミノ樹脂(ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等)等が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0054】
キャリアの粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、電子顕微鏡により測定される粒子径で、20〜200μmが好ましく、25〜100μmがより好ましい。
【0055】
キャリアの見掛け密度は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。見掛け密度は、キャリアの組成や表面構造によって異なるが、典型的には、2.4×10〜3.0×10kg/mが好ましい。
【0056】
[2成分現像剤の製造方法]
2成分現像剤の製造方法は、トナーとキャリアとを均一に混合できれば特に限定されず、例えば、ボールミル等の混合装置によりトナーとキャリアとを混合すればよい。2成分現像剤におけるトナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%が好ましい。2成分現像剤におけるトナーの含有量をかかる範囲とすることにより、適度な画像濃度を維持し、トナー飛散の抑制によって画像形成装置内部の汚染や転写紙等へのトナーの付着を抑制できる。
【0057】
このように、シリカが外添されたトナーと、キャリアが混合されることで、通常、正帯電処理がされたシリカは正帯電性が非常に高いため、シリカとキャリアとの間で大きな鏡像力が働き、トナーに外添したシリカがキャリアに移行することがある。このような、トナーとキャリアとの混合により、シリカがキャリア表面に移行する際、シリカには大きなストレスがかかる。そのようなストレスにより、シリカ凝集体は、その凝集数によっては、割れが生じる場合があった。そこで、シリカ凝集体の割れを防止するため、本発明の2成分現像剤に用いるシリカは、その平均一次粒子径、及び平均凝集数が、以下のように規定されるシリカが用いられる。
【0058】
本発明の2成分現像剤において、トナー母粒子に外添されたシリカは、平均一次粒子径(X)が12〜30nmであり、トナー母粒子表面上の平均凝集数(Y1)と、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)との平均凝集比率(Y2/Y1)が0.97以上であり、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)が5〜15である。上述した混合条件により混合された、本発明の2成分現像剤における、トナー母粒子表面上のシリカの平均凝集数(Y1)、及びキャリア表面上のシリカの平均凝集数(Y2)、並びに平均凝集比率(Y2/Y1)は、例えば、以下のような測定方法により測定できる。
【0059】
<トナー母粒子表面のシリカの平均凝集数(Y1)測定方法>
フィールドエミッション走査電子顕微鏡(JSM−7401F、日本電子株式会社製)を用いて、0.5Kvの加圧電圧にて、倍率100,000倍のトナー母粒子の写真を撮影する。撮影した電子顕微鏡写真を画像解析ソフトウェア(WinROOF(三谷商事株式会社製))により解析し、好ましくは、トナー母粒子表面に付着しているシリカ凝集体50個以上について、一次粒子径と、凝集体を形成する1次粒子の数を測定する。次いで、各1次粒子の一次粒子径と、測定対象とした凝集体に含まれる1次粒子の数を用いて、平均一次粒子径と、平均凝集数を求める。
【0060】
<キャリア表面のシリカの平均凝集数(Y2)測定方法>
上述のトナー表面のシリカの平均凝集数(Y1)と、同様の測定方法により、キャリア表面のシリカの凝集体を形成する1次粒子の数を測定し、平均凝集数を求めることができる。
【0061】
このように測定された、トナー母粒子、及びキャリア表面上のシリカは、平均一次粒子径が12〜30nmであり、平均凝集数がトナー母粒子表面上の平均凝集数(Y1)と、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)との平均凝集比率(Y2/Y1)が0.97以上であり、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)が5〜15である場合、トナー母粒子への埋没が抑制され、現像器内で2成分現像剤が強いストレスを受けた場合でも、シリカの凝集体の割れを抑制できる。このため、形成画像の画像濃度が所望する値を下回ることを抑制でき、長期間にわたって印刷する場合であっても、かぶり等の画像不良が形成した画像に発生するのを抑制できる。
【0062】
平均凝集比率(Y2/Y1)が0.97未満である場合、現像器内でトナーが強いストレスを受けたときに、凝集体の割れが生じやすいシリカが2成分現像剤に存在し、割れたシリカ凝集体がキャリア表面に付着しやすくなっている。従って、平均凝集比率(Y2/Y1)が0.97未満である場合、トナーの帯電量が低下しやすく、かぶり等の画像不良が形成した画像に発生しやすくなる。
【0063】
また、シリカのキャリア表面上での一次粒子の平均凝集数(Y2)は、5〜15である。平均凝集数が5未満の場合、凝集体を形成する一次粒子の粒径が大きい凝集体が多く存在するため、所望する画像濃度を有する画像が得にくくなる。一方、平均凝集数が15超の場合、現像機内でトナーが強いストレスを受けた場合に、シリカ凝集体の割れが生じやすくなり、トナーの帯電量の低下を抑制できず、かぶり等の画像不良が形成した画像に発生しやすくなる。
【0064】
また、平均一次粒子径が12nm未満のシリカを用いた場合、シリカは凝集体を形成しやすくなり、シリカの一次粒子の凝集数が多くなりやすい。従って、シリカ凝集体の割れが生じやすくなり、トナーの帯電量の低下を抑制できず、かぶり等の画像不良が形成した画像に発生しやすくなる。一方、平均一次粒子径が30nm超のシリカを用いた場合、所望する画像濃度を有する画像が得にくくなる。
【0065】
以上説明した、本発明の2成分現像剤によれば、形成画像の画像濃度が所望する値を下回ることを抑制でき、長期間にわたって印刷する場合に、かぶり等の画像不良が形成した画像に発生するのを抑制できる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0067】
(疎水性シリカAの作製)
ジメチルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製)100g、及び3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製)100gをトルエン200gに溶解させた後、10倍に希釈した。次いで、ヒュームドシリカアエロジル#90(日本アエロジル株式会社製)200gを撹拌しながら、ジメチルポリシロキサンと3−アミノプロピルトリメトキシランとの希釈溶液を徐々に滴下した後、30分間超音波照射・撹拌して混合した。得られた混合物を150℃の恒温槽で加熱した後、トルエンをロータリーエヴァポレーターで留去して固形物を得た。得られた固形物を減圧乾燥機にて設定温度50℃で減量しなくなるまで乾燥した。さらに、電気炉にて、窒素気流下において200℃で3時間処理を行いシリカAの粗粉体を得た。シリカAの粗粉体をジェットミル(IDS型ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製))により解砕してバグフィルターで捕集し、疎水性シリカAを得た。
【0068】
(疎水性シリカE、G、I、Jの作製)
疎水性シリカAの製造における、ジメチルポリシロキサン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、及びトルエンの使用量を、表1に記す使用量に変え、ヒュームドシリカアエロジル#90を、表1に記すシリカに変えることの他は、疎水性シリカAと同様にして、疎水性シリカE、G、I、Jを得た。
【0069】
(疎水性シリカBの作製)
ヒュームドシリカアエロジル#90(日本アエロジル株式会社製)250gを、ロッキングミキサー(RM−10(愛知電機株式会社製))に仕込み、粒子径5mmのジルコニアビーズ5kgをロッキングミキサーに充填した後、90rpm、温度20℃、湿度60%の条件で1時間混合し、粉砕シリカを得た。ヒュームドシリカアエロジル#90を、得られた粉砕シリカ200gに変えることの他は、シリカAと同様にして、シリカBを得た。
【0070】
(疎水性シリカC、D、F、Hの作製)
疎水性シリカBの製造における、ヒュームドシリカアエロジル#90を、表1に記すシリカに変え、ロッキングミキサーでの混合時間を表1に記す時間に変えることの他は、疎水性シリカBと同様にして、粉砕シリカを得た。そして、疎水性シリカAの製造において用いた、ジメチルポリシロキサン、及び3−アミノプロピルトリメトキシシランの使用量を表1に記す使用量に変え、ヒュームドシリカアエロジル#90を、粉砕シリカに変えることの他は、疎水性シリカAと同様にして、疎水性シリカC、D、F、Hを得た。
【0071】
【表1】

【0072】
(トナー母粒子の作製)
結着樹脂(スチレン−アクリル系樹脂、ガラス移転点62℃、軟化点132℃(積水化学工業株式会社))100質量部、離型剤(カルナバワックス1号、(株式会社加藤洋行製))4質量部、着色剤(カーボンブラック、MA−100(エボニック・デグサ社製))12質量部、及び電荷制御剤(P−51(オリヱント化学工業株式会社製))1質量部をヘンシェルミキサーに投入して混合した後、二軸押出機により溶融昆練した。溶融混練物を冷却後、ハンマーミルにより粗粉砕した後、ターボミルで微粉砕した。微粉砕された粉体を、風力分級機により分級して、体積平均粒子径が6.47μmのトナー母粒子を得た。
【0073】
(キャリアの作製)
ポリアミドイミド樹脂30gを水2Lで希釈して希釈液を得た。得られた希釈液に、4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合体(FEP)120gを分散させた後、さらに酸化ケイ素3gを分散させて被覆層形成液を得た。この被覆層形成液とノンコートフェライトキャリアEF−35B(パウダーテック株式会社製、平均粒子径35μm)10kgとを、流動床被覆装置に投入して被覆を行った。その後、250℃で1時間焼付けを行い、キャリアを得た。
【0074】
〔実施例1〕
トナー全質量に対して、疎水性シリカC2質量%を加え、ヘンシェルミキサー(FM−20B(株式会社三井三池製作所製))で40m/sの速度で5分間混合してトナーを得た。得られたトナー30gと、キャリア300gとをボールミル(ユニバーサルボールミルUB32、(ヤマト科学株式会社製))により、速度75rpmで、30分間混合して2成分現像剤を調製した。なお、シリカの緩み見掛け比重、以下の方法に従って測定した。得られた測定結果を、表2に記す。
【0075】
<緩み見掛け比重測定方法>
100mlのステンレス製容器に、試料をゆっくりと充填する。試料が容器から溢れるまで充填したところで、充填を停止し、容器上端の余分な試料を、スクレイパーを用いてすり切り、容器内の試料の質量(g)を測定する。得られた試料の質量(g)とを、容器の容量(100ml)で割って緩み見掛け比重(g/l)を求めた。
【0076】
また、得られた2成分現像剤について、以下の方法に従って、シリカの平均一次粒子径、トナー母粒子表面のシリカの平均凝集数(Y1)、及び、キャリア表面のシリカの平均凝集数(Y2)を測定した。測定したトナー母粒子表面のシリカの凝集数(Y1)と、キャリア表面のシリカの凝集数(Y2)とから、シリカの平均凝集比率(Y2/Y1)を求めた。得られた測定結果を、表2に記す。
【0077】
<トナー母粒子表面のシリカの平均凝集数(Y1)測定方法>
フィールドエミッション走査電子顕微鏡(JSM−7401F、日本電子株式会社製)を用いて、0.5Kvの加圧電圧にて、倍率100,000倍のトナー母粒子の写真を撮影した。撮影した電子顕微鏡写真を画像解析ソフトウェア(WinROOF(三谷商事株式会社製))により解析し、トナー母粒子表面に付着しているシリカ凝集体50個について、一次粒子径と、凝集体を形成する1次粒子の数を測定した。次いで、各1次粒子の一次粒子径と、凝集体50個に含まれる1次粒子の数を用いて、平均一次粒子径と、平均凝集数を求めた。
【0078】
<キャリア表面のシリカの凝集数(Y2)測定方法>
上述したトナー表面のシリカの平均凝集数(Y1)と、同様の測定方法により、キャリア表面のシリカの凝集体を形成する1次粒子の数を測定し、平均凝集数を求めた。
【0079】
得られた2成分現像剤について、複合機(TASKalfa500ci(京セラミタ株式会社製))を評価機として用い、以下の方法に従って画像濃度、及びかぶりの測定値を評価した。2成分現像剤の、画像濃度、かぶりの評価結果を表3に記す。
【0080】
<画像濃度評価方法>
得られた2成分現像剤を用いて、通常環境(20〜23℃、湿度50〜65%)にて、複合機を用いて、印字率5.0%のモノクロ画像の30万枚連続印刷試験を行った。30万枚連続後に、画像評価用のサンプル画像を出力し、サンプル画像中のベタ部の画像濃度を、画像濃度計(スペクトロアイ(グレタグマクベス社製))により測定した。画像濃度1.20以上を○と判定し、1.20未満を×と判定した。
【0081】
<かぶり濃度評価方法>
得られた2成分現像剤を用いて、通常環境(20〜23℃、湿度50〜65%)にて、複合機を用いて、印字率0.2%のモノクロ画像の3000枚連続印刷試験を行った。3000枚連続後に、印字率50%の画像評価用のサンプル画像を出力し、最大のかぶり値を測定した。かぶり値は、画像濃度計(スペクトロアイ(グレタグマクベス社製))により測定した。かぶり値0.01以下を○とし、0.01超を×とした。
【0082】
〔実施例2〜4、及び比較例1〜6〕
使用する疎水性シリカの種類及び添加量を、表2記載の種類及び添加量に変えることの他は、実施例1と同様にして、実施例2〜4、及び比較例1〜6の2成分現像剤を得た。実施例2〜4、及び比較例1〜6の2成分現像剤について、シリカの緩み見掛け比重、シリカの平均一次粒子径、トナー表面のシリカの平均凝集数(Y1)、キャリア表面のシリカの平均凝集数(Y2)、及び、シリカの平均凝集比率(Y2/Y1)を表2記す。また、実施例2〜4、及び比較例1〜6の2成分現像剤の、画像濃度、及びかぶりの評価結果を表3に記す。
【0083】
〔比較例7〕
外添剤として、疎水性シリカCに変え、コロイダルシリカ(TG−C425(キャボットジャパン株式会社製))をトナー全質量に対して5質量%用いたことの他は、実施例1と同様にして、比較例7の2成分現像剤を得た。比較例7の2成分現像剤について、シリカの緩み見掛け比重、シリカの平均一次粒子径、トナー表面のシリカの平均凝集数(Y1)、キャリア表面のシリカの平均凝集数(Y2)、及び、シリカの平均凝集比率(Y2/Y1)を表2記す。また、比較例7の2成分現像剤の、画像濃度、及びかぶりの評価結果を表3に記す。
【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
シリカの平均一次粒子径(X)が12〜30nmであり、トナー母粒子表面上の平均凝集数(Y1)と、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)との平均凝集比率(Y2/Y1)が0.97以上であり、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)が5〜15である、実施例1〜4の2成分現像剤では、何れも、形成画像の画像濃度が所望する値を下回ることを抑制でき、長期間にわたって印刷する場合であっても、かぶり等の画像不良の発生を抑制できた。
【0087】
比較例1によれば、シリカのキャリア表面上での平均凝集数(Y2)が、5未満であり、シリカの一次粒子径が12〜30nmである場合は、凝集体がトナー表面に埋没しやすい。このため、形成画像の画像濃度が所望する値を下回りやすいことが分かる。また、比較例5、7によれば、平均一次粒子径が30nm超のシリカが用いられており、シリカの凝集数が少ない場合では、トナー表面に凝集体が埋没することが少なく、一次粒子の粒径が大きいことに起因して、形成画像の画像濃度が所望する値を下回りやすいことが分かる。
【0088】
比較例2〜6によれば、シリカのトナー母粒子表面上の平均凝集数(Y1)と、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)との平均凝集比率(Y2/Y1)が0.97未満の場合、シリカの割れが生じやすくなっていることで、トナーの帯電量が低下しやすく、かぶりによる画像不良が形成した画像に発生しやすいことが分かる。また、比較例6の2成分現像剤では、平均一次粒子径が12nm未満のシリカが用いられており、シリカは凝集体を形成しやすく、一次粒子の凝集数が多くなりやすい。その結果、凝集体としての外径が大きくなり、シリカの割れが生じやすくなっている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正帯電性トナーとキャリアとを含む2成分現像剤であって、
前記正帯電性トナーは少なくとも結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を含むトナー母粒子と、外添剤とからなり、
前記外添剤は、少なくともシリカを含み、
前記シリカは、平均一次粒子径(X)が12〜30nmであり、トナー母粒子表面上の平均凝集数(Y1)と、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)との平均凝集比率(Y2/Y1)が0.97以上であり、キャリア表面上の平均凝集数(Y2)が5〜15である、2成分現像剤。
【請求項2】
前記シリカが、火炎加水分解法で合成され、粉砕された後に疎水化された疎水性シリカである、請求項1に記載の2成分現像剤。
【請求項3】
前記シリカの緩み見掛け比重が200g/l以上である、請求項1又は2に記載の2成分現像剤。

【公開番号】特開2013−97243(P2013−97243A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241113(P2011−241113)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】