説明

2成分貼合せ用接着剤

本発明は、250〜5000g/molの分子量を有し1分子あたりに少なくとも2個のエポキシ基を有するポリマーを含有する成分A、式(I):R−フェニル−(−O−R)[式中、R=H、C〜Cアルキル、a=1、2または3、R=−O−CH−CHOH−CH−NH−CH−フェニル−CH−NH]で示される化合物を含有する成分Bからなり、成分A:Bのエポキシ/NH比は、0.75:1〜1.25:1である、2成分組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族構成要素を高い割合で含有するエポキシ成分およびアミノ成分に基づく2成分結合剤に関する。さらに、本発明は、この結合剤系を含有する2成分貼合せ用接着剤および2成分コーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7,282,543号は既知である。これには、少なくとも1個の第4級アミノ基を含むポリエポキシ樹脂を含有する水性組成物が記載され、そのアミノ基は、それぞれエポキシ基を有する1または2個の置換基を含む。水性ポリアミノ化合物は、架橋剤として記載されている。
【0003】
欧州特許出願公開第1 086 190号は既知である。これには、ビスフェノールAまたはF、レゾルシノール、またはエポキシ基を有する脂肪族ポリオールに基づくエポキシ樹脂、ならびにアミノ基またはカルボキシル基を有する化合物に基づく架橋剤を含む、フィルム基材のための反応系が記載されている。芳香族基を含有する架橋剤は記載されていない。
【0004】
独国特許出願公開第4128487号は既知である。これには、アミン硬化剤により架橋可能なエポキシ分散体が記載されている。ここで、エポキシ結合剤は、芳香族ポリオールとポリエポキシドの反応生成物として記載されている。アミン含有ポリエポキシドは記載されておらず、したがって、芳香核および第1級アミノ基を有するアミンは記載されていない。
【0005】
欧州特許出願公開第1 219 656号も既知である。これは、ガスバリヤー性を有するコーティング組成物を特許請求し、1成分は、少なくとも1個のエポキシ−アミン単位を含みmXDAの誘導体であるエポキシ樹脂であり、硬化剤は、XDAとモノカルボン酸および後にアミド基を形成する多官能性化合物とを反応させることによる化合物である。
【0006】
欧州特許出願公開第1 437 393号も既知である。これは、エポキシ樹脂成分を有する接着剤および前記のエポキシ樹脂に対する硬化剤を特許請求し、このエポキシ樹脂は少なくとも40%のXDA構造を含む。
【0007】
従来技術の2成分コーティング剤の場合には、mXDAまたはpXDAを通常は架橋剤として使用する。これらは第1級芳香族アミンである。このようなアミンは、様々な環境条件下でフィルム材料中に移動し得る。したがって、接着結合した製品で食品と接触状態になり得る接着剤中の、このようなアミンの量を、可能な限り減少させるべきである。
【0008】
上記の系のさらなる欠点は、混合した接着剤の粘度が高いために、薄層での塗布が難しい場合が多いことである。反応混合物を希釈するために、有機溶媒を添加できることが知られている。しかしながら、結合前またはさらなる加工の前に、このような有機溶媒を層から除去しなければならない。この追加の処理工程は面倒であり、その上、工業衛生の理由から、このような溶媒を抽出し処分する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,282,543号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1 086 190号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第4128487号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1 219 656号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1 437 393号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、エポキシ樹脂および低粘性アミン反応生成物からなる2成分組成物を利用可能にすることである。本発明のさらなる主題は、2成分組成物に基づく、2成分貼合せ用接着剤または2成分コーティング剤である。本発明のさらなる主題は、例えば酸素または香料などの気体物質または拡散性物質に対して、ごく低いレベルの透過性を示す、被覆フィルムを製造するための、このようなコーティング剤の使用である。本発明のさらなる主題は、溶媒を追加することなしに低い加工粘性を示す、対応する結合剤から構成される接着剤またはコーティング剤を利用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、250〜5000g/molの分子量を有し1分子あたりに少なくとも2個のエポキシ基を有するポリマーを含有する成分A、および式(I):
【化1】

[式中、
=H、C〜Cアルキル、
=−O−CH−CHOH−CH−NH−CH−フェニル−CH−NH
a=1、2または3]
で示される少なくとも1種の化合物を含有する成分Bからなる2成分組成物であって、ここで、成分A:Bのエポキシド/アミン比は0.75:1〜1.25:1である2成分組成物により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の2成分結合剤組成物の1つの構成要素は、成分A、ポリエステル、ポリアミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリオレフィン、または芳香族ポリエポキシドに基づくポリマーからなる。本発明によれば、これらのポリマーが1分子あたりに少なくとも2個のエポキシ基を含む必要がある。エポキシ官能要素を介してポリマー合成で直接的にエポキシ基を導入する、あるいは、二重結合を含むポリマー中にエポキシ基を導入することができ、後者についてはエポキシ基へと変換する。さらに、OH基を有する、または、イソシアネート基を有するポリマーを、OH基とまたはイソシアネート基と反応性の基をさらに含む低分子量エポキシ化合物と反応させることも可能である。
【0013】
適当なベースポリマーの1種は、OH官能性ポリオレフィンである。ポリオレフィンは当業者に既知であり、多くの分子量で得ることができる。エチレン鎖、プロピレン鎖、またはホモポリマーまたはコポリマーとしてのより高い鎖のα−オレフィンに基づくこのようなポリオレフィンを、官能基を含有するモノマーの共重合またはグラフト反応のいずれかによって官能化することができる。さらに、これらのベースポリマーに、例えば酸化によって、後でOH基を備えることも可能である。
【0014】
例えば、成分(A)を製造するためのベースポリマーのさらなる群を、オレフィン(コ)ポリマー、例えばエチレン/アクリレートゴム、ブチルゴム;天然ゴム;スチレンコポリマーの群から、単独でまたは混合物で選択することができ、上記コポリマーは、ランダム、交互性、グラフトまたはブロックコポリマーである。
【0015】
ベースポリマーのさらなる例は、それ自体が既知の、熱可塑性エラストマー(TPE)でもある。これらは、例えば、熱可塑性ゴムであると理解される。本発明によれば、このような熱可塑性エラストマーを、特に、スチレンブロックポリマー、例えばスチレン−ジエンコポリマー(SBS、SIS)、スチレン−エチレン/ブチレンコポリマー(SEBS)、またはスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンコポリマー(SEPS、SEP)の群から選択する。
【0016】
成分(A)を製造するためのベースポリマーとして適当な、さらなるオレフィン性ポリマーは、例えば、1,3−ブタジエンの、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)の、2−メチル−1,3−ヘキサジエンの、2−メチル−1,3−シクロペンタジエンの、およびさらなる共重合性モノマーの、単独重合体または共重合体である。
【0017】
上記のオレフィン性ベースポリマーは、複数の不飽和二重結合を含有することができる。これらを主ポリマー鎖に含有させることができ、および/または、これらを側鎖に含有させる。特に、ビニル官能基を含有させる。既知の方法にしたがってこれらの二重結合を反応させることができるため、ベースポリマーがエポキシ基を含む。こうして得たエポキシ基含有ポリマーは、本発明において、成分(A)として適当である。ポリオレフィン構造を有するさらなる適当なベースポリマーは、官能基(例えばOH基)を含有することができる。次いで、既知の方法にしたがって、上記の化合物がエポキシ基を含むように、これらを二官能性化合物と反応させることができる。エポキシ基を有する、成分(A)に適当な、ポリマーが得られる。
【0018】
適当なベースポリマーのさらなる種類は、ポリエステルポリオールである。これらは、酸およびアルコール成分の重縮合、特に1種のポリカルボン酸または2種以上のポリカルボン酸の混合物と、1種のポリオールまたは2種以上のポリオールの混合物との重縮合によって得ることができる。適当なポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環の基本要素を有するものである。適用可能であれば、遊離カルボン酸の代わりに、それらの酸無水物またはそれらのC1−5モノアルコールとのエステルを重縮合に使用することもできる。
【0019】
ポリカルボン酸との反応におけるジオールとして、複数のポリオールを使用することができる。例えば、1分子あたりに2〜4個の1級または2級OH基、および2〜20個の炭素原子を有する脂肪族ポリオールが適当である。より高い官能性のアルコールの一部も同様に使用できる。ポリエーテルポリオールは、ジオール成分としても使用することができる。ポリエーテルポリオールは、低分子量ポリオールとアルキレンオキシドとを反応させて得ることが好ましく、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールまたは異性体ブタンジオールと、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドとの反応生成物である。このようなポリエステルポリオールの製造方法は当業者に既知であり、これらの生成物は市販されている。
【0020】
ベースポリマーのさらなる種類は、ポリアミド骨格を含む。ポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸またはポリカルボン酸との反応生成物である。標的合成によりポリアミド中に末端OH基を導入することができる。
【0021】
ベースポリマーのさらなる種類は、アクリレートに基づくポリオールである。これらは、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、またはマレイン酸エステルなどの(メタ)アクリルエステルを重合することにより製造されるポリマーである。通常、(メタ)アクリル酸のC〜C15アルキルエステルを重合させることが好ましい。
【0022】
これに関して、OH基を有するモノマーを含有させることもできる。他の共重合性モノマーを任意に含有させることもできる。他の適当なポリ(メタ)アクリレートは、少なくとも2個のOH基を含む。これらは、好ましくは、ポリマーの末端に存在してよい。この種のOH官能性ポリ(メタ)アクリレートは、当業者に既知である。その後、既知の方法にしたがってそれらを官能化させ、エポキシ基を得ることができる。別の方法は、エポキシ基を有するアクリレートポリマーを直接的に生じ、ここで、グリシジル基を含有するモノマーを重合させる。適当な重合方法は、当業者に既知である。
【0023】
ベースポリマーのOH基を、エポキシ基およびOH基と反応する基を含有する低分子量化合物と、既知の方法にしたがって反応させることができる。このような基の例は、NCO基、ハロゲン、無水物、またはエステルである。反応後に、エポキシ基を含み成分Aとして適当なポリマーが得られる。
【0024】
適当なベースポリマーのさらなる種類は、ポリウレタンである。ポリオール(特にジオールおよび/またはトリオール)をジ−またはトリイソシアネート化合物と反応させることによって、これらを製造することができる。これに関し、末端がNCO官能化されたプレポリマーが得られるように量比を選択する。ポリマーは、特に直鎖状であり、すなわち、主にジオールとジイソシアネートから製造する。少量の割合の3官能性モノマーを追加的に使用することができる。
【0025】
PUポリマーの合成に関し、使用可能なポリオールおよびポリイソシアネートは、当業者に既知である。これらは、接着剤用途で既知の、単量体の脂肪族、脂環式、または芳香族ポリイソシアネートであり、特に、ジ−またはトリイソシアネートが使用される。既知のオリゴマー、例えばビウレットまたはイソシアヌレートを用いることもできる。これらを、例えばポリエステル合成のためのポリオールとしても知られているポリオールと、特にジオールと、反応させる。
【0026】
PUプレポリマーの製造方法も、同様に当業者に既知である。NCO官能性PUプレポリマーが得られるように、化学量論過剰でイソシアネートの量を選択する。合成に関し、NCO:OH比の選択により分子量の増加を避けることができる。プレポリマー中の未反応の残留モノマーの割合を、非対称のイソシアネートを選択することにより、同様に減少させることができる。別の種類の製造は、過剰の未反応イソシアネートを反応混合物から蒸留する。その後、イソシアネート基をエポキシ基を含有するアルコールと反応させてよい。
【0027】
1分子あたり少なくとも2個のエポキシ基を有する既知のポリエポキシ樹脂は、エポキシ基を有するポリマーとして、好ましく適当である。これらのポリエポキシドのエポキシ当量を、例えば50〜1000g/molエポキシドの、幅広い限度で選択することができる。ポリエポキシドは、原則として、飽和、不飽和、環式または非環式、脂肪族、脂環式、芳香族、または複素環ポリエポキシ化合物であり得る。適当なポリエポキシドの例として、エピクロロヒドリンとポリフェノールとを、アルカリの存在下で反応させることにより製造する、既知のポリグリシジルエーテルが挙げられる。このために適当なポリフェノールは、例えばレゾルシノール、ピロカテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA(ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン)、ビスフェノールF(ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)1,1−イソブタン、4,4'−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)1,1−エタン、または 1,5−ヒドロキシナフタレンである。対応するアミノ化合物を反応させてエポキシ樹脂を得ることも可能である。芳香族ヒドロキシアルキルまたはアミノアルキル芳香族化合物も同様に反応させることができる。一般に50〜約300g/molエポキシドのエポキシ当量を有する室温で流動性のエポキシ樹脂が、特に使用される。
【0028】
特に好ましい態様において、成分Aは、芳香核を含む、式(II):
【化2】

[式中、
=H、CH、C
b=1または2、
c=1、2、3または4、
=エポキシ基を有するC〜Cアルキル、
環=フェニル、ビフェニル、ナフチル]
で示されるエポキシ化合物である。
【0029】
この芳香核は、例えばフェニル、ジフェニル、ナフチル単位を含むことができ、可能であればアルキル置換基を有することもできる。b=2およびc=2または3であることが好ましい。これらは、特に、パラ位が官能基で置換されていない要素である。このような芳香核の適当な例は、1,3−置換フェニル、2,2'−または2,4'−置換ビフェニル、2,4'−置換メチレンジフェニル構造である。m−キシリレンジアミンの、m−キシリレンジイソシアネートの、またはレゾルシノールの、エポキシ基で置換した誘導体が、特に適当である。
【0030】
本発明により適当な、成分Aのポリエポキシ化合物は、2〜10個、特に2、4または6個のエポキシ基を、1分子あたりに含む。ポリエポキシ化合物の具体的な態様は、化合物の鎖末端にまたは側鎖末端として、エポキシ基を含む。ポリエポキシ化合物は、単独でまたは異なる構造を有する混合物として存在してよい。
【0031】
粘度または粘着力などの適当な塗布特性を得るため、分子量(GPCにより測定できる数平均分子量 MN)を200〜10,000g/mol、好ましくは250〜5000g/mol、特に250〜2500g/molにする。溶媒を含有しない接着剤には極めて低い分子量が好ましく、溶媒を含有する系に対して、より高い分子量を選択することもできる。
【0032】
本発明の結合剤系は、成分Aと架橋する成分Bとして、第1級アミノ基を必ず含む芳香族化合物を含有する。これらは、式(I):
【化3】

[式中、
=H、C〜Cアルキル、
a=1、2または3、
=−O−CH−CHOH−CH−NH−CH−フェニル−CH−NH
好ましくはa=2または3、およびR=H]
で示される化合物である。
【0033】
例えば過剰のジアミノアルキルベンゼンと反応させた芳香族グリシジルエーテルから、
これらの化合物を製造することができる。芳香核を有する適当なジエポキシドまたはトリエポキシドは、特にピロカテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、2,4−ヒドロキシトルエン、任意に同様に1,3−または1,5−または1,6−ナフトールの反応生成物である。これらを、例えばエピクロロヒドリンまたは類似化合物と反応させ、ジ−またはトリエポキシ置換化合物を得ることができる。さらなる反応のための芳香族ジアミンとして、キシリレンジアミン(XDA)、特にmXDAがアミン成分として適当である。
【0034】
過剰のアミノ基が存在するように、ジアミン(例えばXDA)中のアミノ基のグリシジル基に対する量比を選択し、全てのエポキシ基を反応させる。そのため、エポキシドを含有しない成分Bが製造される。一つの態様において、エポキシド/NH比は、0.9:4〜1.1:4となる(H酸NH基として計算)。別の態様において、完全に反応していないXDAが過剰に存在するように、NH官能基の量に対するエポキシ基の量を選択する。この場合、成分Bは、XDAと式(I)で示される化合物の混合物である。これに関し、未反応のジアミンが(成分Aに基づいて)ほぼ50重量%含まれるように出発物質を選択する。
【0035】
本発明により適当な硬化剤成分Bを製造するための反応は既知である。ここで、適当なジ−またはトリエポキシ化合物を、相当する量のXDA、特にmXDAと混合し、適用可能であればわずかに加熱して、反応させる。適用可能であれば、これを溶媒(必要であれば反応後に、蒸留により除去することができる溶媒)中で行うこともできる。
【0036】
成分Bとして本発明により適当な化合物は、第1級アミノ基を含む。それらは第2級アミノ基ならびに追加のOH基をさらに含有する。これらの化合物の分子量は、約450〜2500g/molであり、特に約1500g/mol以下である。
【0037】
本発明の2成分組成物を、成分Aとして適当なエポキシ樹脂および成分Bのポリアミノ化合物から製造する。(NH基としての)アミノ基のエポキシ基に対する割合がほぼ等モルになるように、2つの成分を液体状態で混合する。過剰の未反応アミノ基を避けるために、特に、その割合は、約0.75:1〜1.25:1、特に0.95:1〜1.05:1である。2成分を別々に保存し、処理の前に混合する。その後、構成要素が架橋される。
【0038】
2成分貼合せ用接着剤を、上記の組成物から製造することができる。これらの貼合せ用接着剤に追加の構成要素、例えば溶媒、可塑剤、触媒、安定剤、接着促進剤、顔料またはフィラーを含有させることが有利である。
【0039】
一つの態様において、本発明に適当な接着剤は、少なくとも1種の粘着付与樹脂を含有する。この樹脂は、さらなる粘着性をもたらす。相溶性の(すなわち大部分が均質な混合物を形成する)全ての樹脂を、原則として使用することができる。これらは、例えば芳香族、脂肪族、または脂環式炭化水素樹脂ならびにそれらの変性誘導体または水素化誘導体であり得る。樹脂は、分子量1500g/mol以下、特に1000g/mol以下の低い分子量を一般に有する。樹脂を、接着剤に基づいて0〜50重量%、好ましくは20重量%までの量で使用することができる。
【0040】
可塑剤、例えば白色鉱油、ナフテン系鉱油、パラフィン系炭化水素油、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレンオリゴマー、水素化ポリイソプレンおよび/またはポリブタジエンオリゴマー、フタレート、アジペート、ベンゾエートエステル、植物油または動物油、およびそれらの誘導体を含有させることもできる。食品規制に関して承認されていないものではない可塑剤が特に好ましい。
【0041】
任意に使用できる安定剤または酸化防止剤として、フェノール、高分子量立体障害型フェノール、多官能性フェノール、硫黄含有フェノールおよびリン含有フェノール、またはアミンが適当である。
【0042】
シラン化合物を、接着促進剤として、接着剤にさらに加えることができる。既知の有機官能性シラン、例えば(メタ)アクリルオキシ官能性シラン、エポキシ官能性シラン、アミン官能性シラン、または非反応的に置換されたシランを添加することができ、接着促進剤として使用することができる。その例は、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−メタアクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシメチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシメチルトリエトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、または対応するジアルコキシ誘導体である;ブトキシ基、プロポキシ基、特にメトキシ基またはエトキシ基が好ましくは適当である。好ましい態様において、上記シランを0.1〜5重量%、接着剤に添加する。シランの選択に応じて、1つの成分にのみそれを混合させることが有利である。それによって、早期の反応や貯蔵安定性の低下を防ぐことができる。
【0043】
本発明の接着剤は、任意に追加的に存在する添加剤として、触媒を含有することもできる。エポキシ基の反応を触媒することができる全ての既知の化合物を触媒として使用することができる。その例は、チタネート、例えばテトラブチルチタネートまたはチタンテトラアセチルアセトネート;ビスマス化合物、例えばビスマストリス−2−エチルヘキサノエート;錫カルボキシレート、例えばジブチル錫ジラウレート(DBTL)、ジブチル錫ジアセテート、またはジブチル錫ジエチルヘキサノエート;錫オキシド、例えばジブチル錫オキシドおよびジオクチル錫オキシド;有機アルミニウム化合物、例えばアルミニウムトリスアセチルアセトネート;キレート化合物、例えばジルコニウムテトラアセチルアセトネート;アミン化合物またはそのカルボン酸塩、例えばオクチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、モルホリン、N−メチルモルホリン、および1,8−ジアザビシクロ−(5,4,0)−ウンデセン−7(DBU);アミノ基を有するシラン化合物である。触媒を、接着剤の総重量に基づいて、0.01〜約5重量%、好ましくは0.05〜1重量%、特に好ましくは0.1重量%より多い量で使用する。
【0044】
本発明の特定の態様において、顔料をコーティング剤にさらに添加する。これらは、細かく微細化された顔料であり、例えば5μm未満の粒径を有する。本発明の一つの態様においては、結合剤の1成分中に分散させることができるフレーク状顔料を対象とする。それらは、その後、細かく分散した形状で存在し、すなわち、顔料またはフィラーをフレーク形状で分散させることはそれらが厚みをほとんど有さないことを意味する。このような顔料は当業者に既知であり、例えば、種々の組成物の層状ケイ酸塩である。他の方法ではナノ顔料を使用する。これらは、通常、500nm未満、特に100nm未満の粒径を有する。これらのナノ顔料は、例えば、TiO、SiO、Fe、または同様のオキシドまたはオキシハイドレートに基づくものであってよい。このような顔料は当業者に既知であり、当業者は普通の検討によりそれらを選択することができ、一方または両方の結合剤成分中に、既知の方法を用いて微細に分散させることができる。
【0045】
本発明によれば、接着剤は溶媒を含有することもできる。これらは、120℃までの温度で蒸発させることができる普通の溶媒である。溶媒を脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、特にC〜Cアルコール、ならびに水の群から選択することができる。好ましい態様において、2成分接着剤は溶媒を含まない。
【0046】
接着剤は特に広い領域のコーティングに適当であるため、それらは、約20〜90℃の塗布温度において低い粘性を有する。構成要素を混合直後に測定した本発明の貼合せ用接着剤の粘度は、塗布温度において、200〜5000mPas、好ましくは300〜3000mPasである(20〜60℃、ブルックフィールド粘度計、EN ISO 2555による)。
【0047】
多層フィルムを製造するために、フィルム材料として既知の軟質フィルムを使用することができる。これらの物質は、フィルム状の熱可塑性物質、例えば、ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP、CPP、OPP)などのポリオレフィン、ポリビニルクロリド(PVC)、ポリスチレン(PS)、PETなどのポリエステル、ポリアミド、セロファンなどの有機ポリマーから作られ、金属箔または紙も基材として使用可能である。 フィルム材料を、例えばポリマーを官能基または追加の成分で修飾することにより、修飾することもでき、例えば顔料、染料、または発泡層をフィルム中に含有させることができる。フィルムは着色された、印刷された、無色のまたは透明のものであってよい。
【0048】
2成分貼合せ用接着剤において、既知の補助剤および添加剤を、成分Aまたは成分Bに、後者が添加剤と反応しないのであれば、加えることができる。本発明の格別な態様は溶媒を含有しない形式で作用するが、溶媒を含有させることができる。特に、成分Aおよび成分Bの選択によって、室温(例えば25℃)で低粘性の成分AおよびBの混合物を得ることが確実になる。
【0049】
本発明の接着剤を、特に貼合せ用接着剤として使用することができる。これに関して、フィルム上に接着剤を薄層で塗布する。その直後に、任意に含有させた溶媒を蒸発させ、その後、第2のフィルムを接着剤層上に適用し、圧力下で圧縮させる。本発明による低粘性を有する選択のために、溶媒を含まないことも同様に可能である。
【0050】
本発明の特定の態様は、水溶性2成分接着剤を使用可能にすることにある。これに関し、改善された水溶性または水和性を示すために、成分が多くの極性基を含む場合が有利である。この場合、さらなる構成要素として乳化剤または分散補助剤を使用することがさらに有利である。これらは、たとえ少量であっても、成分が水中に分散する能力を補助する。乳化剤を、組成物に基づいて0.1〜5重量%の分量で混合させる。2成分の混合および架橋の後に、網目が形成される。これはもはや水溶性ではないが、それにもかかわらず、良好なバリヤー特性を有する。
【0051】
本発明のさらなる態様は、2成分被覆剤用の2成分組成物を使用する。これらの被覆剤は、原則として貼合せ用接着剤について記載したものと同じ成分を含有することができる。しかしながら、選択に関して気をつけねばならないことは、被覆剤は架橋後に滑らかな非粘着性の表面を示すことである。その上にコーティング剤を液状で塗布する基材に関してのみ、良好な接着性が存在する。
【0052】
非粘着性の表面を製造する際に、少量でのみ使用すべきまたは避けるべき成分は、当業者によく知られている。このような成分の例は、少量の可塑剤、少量の粘着付与樹脂または低いガラス転位温度を有する結合剤である。
【0053】
本発明の対象は、本発明に適する貼合せ用接着剤を使用して接着的に結合させた多層フィルムでもあり、これに関し、既知のプラスティックフィルム、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、PVC、ポリアミド、またはその他のもので作られたフィルムを基材として使用することができる。本発明の接着剤を用いて、このフィルム上に連続相を生じさせ、その塗布直後に、第2の同一または異なるフィルムと結合させる。2層フィルムに加えて、さらなる処理工程を用いる多層フィルムの製造も可能である。本発明の一態様は透明フィルムを対象とし、このために、本発明の接着剤も透明であり着色されていない場合に有利である。他のプラスチックでないフィルム、例えば紙または金属箔を、これらの多層フィルムに含有させることもできる。
【0054】
本発明の接着剤層の特に有利な特性は、層のバリヤー効果が高いことである。香料は、従来の方法で結合させたフィルムよりも、このような多層フィルムを、より透過しにくいことが明らかに示されている。気体(例えば酸素、または水蒸気)の拡散に関する改善された安定性も注目される。
【0055】
本発明の接着剤は、種々の層の間に良好な接着を示す。接着剤層中に、気泡や欠損は見られない。
【0056】
本発明のさらなる対象は、軟質複合基材上にコーティングを施すための、本発明の組成物の使用である。これに関して、上記の添加剤および補助剤をコーティング剤中に含有させることができる。コーティング剤は、液状であるか、90℃まで加熱することによって流動可能な方法で塗布され得る。これらのコーティングは、架橋後に柔軟であるため、特に軟質多層フィルム用に使用することができる。好ましい態様において、本発明のコーティング剤を20〜60℃の塗布温度で塗布する。この温度で測定した粘度は、200〜3000mPas、特に1500mPasまでである。
【0057】
架橋後に、表面が粘着性でない固体層が得られる。このようなフィルムを既知の方法でさらに加工することができ、さらなる積層を適用するか、あるいはそれらを包装する。
【0058】
適当な結合剤を、2成分コーティング剤または2成分接着剤中に、簡単な方法でさらに処理することができる。これらの接着剤またはコーティング剤をフィルム基材上で用いる際、優れたバリヤー特性を有する複合フィルムが得られる。バリヤー特性は、種々の成分に関連し得り、例えば酸素の拡散を減少することができる。他の態様は、水の拡散を減らす。香料の拡散を減らすことがさらに可能である。
【0059】
本発明により製造した複合フィルムは、高いレベルの柔軟性を示す。それらは透明な形状で具体化することができ、すなわち、それらはフィラーとしてナノ粒子のみを含有するか、フィラーを含有しない;しかし、層を着色させるか顔料で色をつけることもできる。種々の基板材料に対する接着は良好である。複合材料に機械的負荷をかけた状況においてさえ、接着結合した表面の間に分離は見られない。例えば、本発明の複合材料から包装を製造することができる。バリヤー効果の結果として、このような包装は、取り扱いに慎重を要する品目、例えば食品または医薬品用に適当である。
【実施例】
【0060】
〔実施例1、本発明の接着剤〕
成分A:テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エポキシ等量、約102g/molエポキシド。
【0061】
成分B:m−レゾルシノールジグリシジルエーテルを、m−キシリレンジアミンと、1:3のモル比で反応させる(アミン等量、約55g/molNH)。
【0062】
1.5部のAおよび1.0部のBから接着剤を製造する。成分を40℃で混合し、同じ温度で塗布する。架橋は60分後に見られる。
【0063】
〔実施例2〕
実施例1と同様に、結合剤系を製造する。成分B中に含有される0.5%DBTLは、触媒として、これに添加される。
【0064】
2成分接着剤(実施例1および実施例2)は、混合後、40℃で1000mPasの粘度を有する。
【0065】
〔さらなる実験〕
【表1】

【0066】
種々の添加剤を実施例1の接着剤中に導入させる。上記の量は、2成分接着剤混合物全体に対して記載される。樹脂、安定剤、および接着促進剤を、成分B中に混合させ、実施例3および4の溶媒を、両方の成分に同じ割合で加える。
【0067】
〔比較例8〕
Henkel社より市販されている普通のポリウレタン貼合せ用接着剤(商品名:UR 7782とUR 6083)を混合する。
【0068】
これに関し、1の成分はOH−含有ポリエステル結合剤(分子量、約2200g/mol)からなり、架橋剤成分はTDI反応生成物に基づく芳香族イソシアネートプレポリマーからなる。2つの成分を約1:1のNCO:OH比で混合し、貼合せ用接着剤として使用する。
【0069】
次のフィルムを互いに接着結合させる:
PET(ポリエチレンテレフタレート)(約12μm)
PE(ポリエチレン)
OPP(延伸ポリプロピレン)
OPA(延伸ポリアミド)
SiO−PET(シロキサン被覆ポリエチレンテレフタレート)。
【0070】
接着剤1、2、および8の薄層(2g/m)を、実験室用の塗装機を用いてフィルム基材上に塗布し、その直後に第2のフィルムに結合させる。室温(25℃)で48時間、保管した後、透過性を測定する。
【0071】
【表2】

【0072】
条件1:測定=相対湿度50%でのOTR、標準圧力O;透過性(cm/m・24h・1bar)。
【0073】
条件2:測定=相対湿度0%でのOTR、標準圧力O;透過性(cm/m・24h・1bar)、(O透過性は、DIN53380による透過性である)。
【0074】
本発明の接着剤のバリヤー効果は、PU接着剤のものよりも良好である。
【0075】
【表3】

【0076】
測定:インストロン接着、室温で2日、架橋する(N/15mm)、DIN53504による。
【0077】
試験結合を上記に示したように製造した。
【0078】
実施例3、4、5、および6の接着結合したOPP/OPPフィルムも同様に製造し、接着について試験した。
【0079】
接着は、比較例の接着剤の接着よりも良好である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
250〜5000g/molの分子量を有し1分子あたりに少なくとも2個のエポキシ基を有するポリマーを含有する成分A、および式(I):
【化1】

[式中、
=H、C〜Cアルキル、
a=1、2または3、
=−O−CH−CHOH−CH−NH−CH−フェニル−CH−NH
で示される化合物を含有する成分Bからなる2成分組成物であって、
成分A:Bのエポキシド/NH比は、0.75:1〜1.25:1である、2成分組成物。
【請求項2】
ポリマーAが、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリブタジエン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、または芳香族ポリエポキシ樹脂から選択される、請求項1に記載の2成分組成物。
【請求項3】
成分Aが、式(II):
【化2】

[式中、
=H、CH、C
b=1または2、
c=1、2、3または4、
=エポキシ基を有するC〜Cアルキル、
環=フェニル、ビフェニル、ナフチル]
で示される化合物を含有する、請求項1または2に記載の2成分組成物。
【請求項4】
化合物(II)がフェニル環を含み、式中、R=H、R=末端エポキシ基を有するC〜Cアルキル、b=2およびc=2または3である、請求項3に記載の2成分組成物。
【請求項5】
成分Bが、50重量%以下のmXDAをさらに含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の2成分組成物。
【請求項6】
成分Bが、芳香環および2または3個のグリシジルエーテル置換基を含有する芳香族エポキシドとmXDAとの0.5:4〜1.6:4、特に0.9〜1.1:4のエポキシ基:NH基の割合を有する反応生成物として製造される、請求項5に記載の2成分組成物。
【請求項7】
成分Aが、キシリレンジアミンに基づくエポキシポリマーであり、成分Bが、キシリレンジアミンとエポキシ基を含有するレゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、またはヒドロキシヒドロキノンとの反応生成物であるポリアミンを少なくとも50%含有する、請求項1〜6のいずれかに記載の2成分組成物。
【請求項8】
触媒、溶媒、水、可塑剤、接着促進剤、樹脂、中和剤、乳化剤、安定剤および/または顔料をさらに含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の2成分組成物。
【請求項9】
接着剤が、溶媒としてC〜Cアルコールまたは水を含有する、または有機溶媒を含まない、請求項8に記載の2成分組成物。
【請求項10】
接着促進剤として、1、2、3、または4個の加水分解性基を有するシラン、特にアミノシランまたはエポキシシランを、0.1〜5重量%含有する、請求項8または9に記載の2成分組成物。
【請求項11】
成分を混合した直後の粘度が、20〜60℃で測定して、200mPas〜5000mPas(塗布温度で、EN ISO 2555に従って測定)、特に300〜3000mPasである、請求項8〜10のいずれかに記載の2成分組成物。
【請求項12】
フィルムおよび紙を貼り合せるための接着剤としての請求項8〜11のいずれかに記載の2成分組成物の使用。
【請求項13】
軟質フィルム用のコーティング剤としての、請求項1〜7のいずれかに記載の2成分組成物の使用。
【請求項14】
バリヤー特性を有するコーティングとしての、請求項12または13に記載の使用。
【請求項15】
食品包装用のコーティングとしての、請求項12〜14のいずれかに記載の使用。

【公表番号】特表2012−531508(P2012−531508A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518839(P2012−518839)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056310
【国際公開番号】WO2011/000619
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(391008825)ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン (309)
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D−40589 Duesseldorf,Germany
【Fターム(参考)】