2次(再充電)リチウム電池用正極材料
【課題】定序橄欖石(ordered olivine)または菱面体晶NASICON構造を有し、少なくとも1つの構成成分(constituent)としてポリアニオン(PO4)3−を含有する、アルカリイオン再充電電池用電極材料として使用される遷移金属化合物を提供すること。
【解決手段】再充電電気化学セル用の正極材料であって、該セルは負極および電解質をも備え、該正極が、式LiMPO4を有する化合物を含み、Mが少なくとも1つの第1列遷移金属カチオンである、正極材料などが提供される。また、この正極材料を用いた再充電電気化学セルも提供される。
【解決手段】再充電電気化学セル用の正極材料であって、該セルは負極および電解質をも備え、該正極が、式LiMPO4を有する化合物を含み、Mが少なくとも1つの第1列遷移金属カチオンである、正極材料などが提供される。また、この正極材料を用いた再充電電気化学セルも提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、1996年12月4日出願の仮出願第60/032,346号の一部継続出願であり、且つ1996年4月23日出願の仮出願第60/016,060号の一部継続出願である。上記各開示文献の全文を放棄することなく本願に援用する。本発明に関する研究はRobert A. Welch Foundation, Houston, Texasによって支援された。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、2次(再充電)アルカリイオン電池に関する。より具体的には、本発明は、アルカリイオン電池用の電極として使用される材料に関する。本発明は、定序橄欖石(ordered olivine)または菱面体晶NASICON構造を有し、少なくとも1つの構成成分(constituent)としてポリアニオン(PO4)3−を含有する、アルカリイオン再充電電池用電極材料として使用される遷移金属化合物を提供する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
今日のリチウム電池は、負極として固体還元剤を、そして正極として固体酸化剤を用いている。放電時、金属性負極は、Li+イオンをLi+イオン電解質に、そして電子を外部回路に供給する。典型的に、正極は、ゲスト種として電解質から可逆的にLi+イオンが注入される電子伝導性ホスト(electronically conducting host)であり、外部回路からの電子によって電荷補償される(charge-compensated)。リチウム2次電池の負極および正極における化学反応は可逆的でなければならない。充電時、外場(external field)によって正極から電子を除去することによって、Li+イオンを解放して電解質に戻し、これにより、親ホスト構造(parent host structure)を回復し、外場によって負極に電子を追加することによって、電荷補償Li+イオンを引き寄せて負極に戻し、これにより、外場を元の組成に回復する。
【0004】
今日の再充電リチウムイオン電池は、負極として、リチウムが可逆的に注入されるコークス材料を使用し、正極ホスト材料として積層(layered)または骨組遷移金属酸化物(framework transition-metal oxide)を使用している(Nishiらの米国特許第4,959,281号)。Coおよび/またはNiを用いた積層酸化物は、高価であり、電解質から不要な種が混入(incorporation)することによって劣化(degrade)し得る。[M2]O4スピネル骨組を有するLi1±x[Mn2]O4のような酸化物は、強力な三次元結合およびリチウム注入のための相互接続された格子間空間(interstitial space)を提供する。しかし、O2−イオンのサイズが小さいことによって、Li+イオンにとって利用可能な自由容積(free volume)が制限され、これにより、電極の電力容量(power capability)が制限される。O2−イオンを比較的大きなS2−イオンで代替すると、Li+イオンにとって利用可能な自由容積は増大するが、その場合、1次セル(elementary cell)の出力電圧を低減することにもなる。
【0005】
格子間空間におけるLi+イオン移動のためにより大きな自由容積を提供するホスト材料は、より高いリチウムイオン伝導率σLi、ひいてはより高い電力密度の実現を可能にするであろう。出力電圧ために、ひいてはより高いエネルギー密度のために、酸化物が必要である。安価で、無公害な遷移金属原子は、その電池を環境的に良性(environmentally benign)なものにするであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって以下が提供された:
(1)再充電電気化学セル用の正極材料であって、該セルは負極および電解質をも備え、該正極が、式LiMPO4を有する化合物を含み、Mが少なくとも1つの第1列遷移金属カチオンである、正極材料。
(2)Mが、Mn、Fe、CoおよびNiよりなる群から選択される、項目1に記載の正極材料。
(3)Mが、複数のカチオンの組合せであり、該カチオンの少なくとも1つが、Mn、Fe、CoおよびNiよりなる群から選択される、項目1に記載の正極材料。
(4)Mが、Fe1−xMnxまたはFe1−xTixであり、0<x<1である、項目3に記載の正極材料。
(5)前記正極材料が、式LiFePO4を有する、項目2に記載の正極材料。
(6)再充電電気化学セル用の正極材料であって、該セルは負極および電解質をも備え、該正極材料が、式YxM2(PO4)3を有する菱面体晶NASICON材料を含み、Mが少なくとも1つの第1列遷移金属カチオンであり、0≦x≦5であり、YがLiまたはNaである、正極材料。
(7)Mが、Fe、V、MnおよびTiよりなる群から選択される、項目5に記載の正極材料。
(8)前記正極材料が、式Li3+xFe2(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目7に記載の正極材料。
(9)前記正極材料が、式Li3Fe2(PO4)3を有する、項目7に記載の正極材料。
(10)式Li1+xTi2(PO4)3を有する、項目7に記載の正極材料。
(11)式Li2FeTi(PO4)3を有する、項目7に記載の正極材料。
(12)式LixTiNb(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目7に記載の正極材料。
(13)式Li1+xFeNb(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目7に記載の正極材料。
(14)(a)Na2Fe2(PO4)3を調製する工程と、
(b)イオン交換反応が起こるように該Na2Fe2(PO4)3を溶融リチウム塩に接触させる工程と、
を包含する方法によって調製される、項目7に記載の正極材料。
(15)直接固体状態反応によって調製される、項目7に記載の正極材料。
(16)再充電電気化学セル用の正極材料であって、該セルは負極および電解質をも備え、該正極材料が、式YxM2(PO4)y(XO4)3−yを有する菱面体晶NASICON材料を含み、0<y≦3であり、Mが遷移金属原子であり、0≦x≦5であり、YがLiまたはNaであり、X=Si、AsまたはSである、正極材料。
(17)前記正極材料が、式Li1+xFe2(SO4)2(PO4)を有し、0≦x≦2である、項目16に記載の正極材料。
(18)(a)FeCl3、(NH4)2SO4およびLiH2PO4を含む水性溶液を調製する工程と、
(b)該溶液を蒸発させて乾燥材料を得る工程と、
(c)該乾燥材料を約500℃に加熱する工程と、
を包含する方法によって調製される、項目17に記載の正極材料。
(19)再充電電気化学セル用の正極材料であって、該セルは負極および電解質をも備え、該正極材料が、式A3−xV2(PO4)3を有する菱面体晶NASICON材料を含み、AがLi、Naまたはその組合せであり得、0≦x≦2である、正極材料。
(20)前記正極材料が、式Li2−xNaV2(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目19に記載の正極材料。
(21)(a)Na3V2(PO4)3を調製する工程と、
(b)イオン交換反応が起こるように該Na3V2(PO4)3を溶融リチウム塩に接触させる工程と、
を包含する方法によって調製される、項目19に記載の正極材料。
(22)直接固体状態反応によって調製される、項目19に記載の正極材料。
(23)負極、正極および電解質を備えた2次電池であって、該正極は、式LiMPO4を有する定序橄欖石化合物を含み、Mが少なくとも1つの第1列遷移金属カチオンである、電池。
(24)Mが、Mn、Fe、CoおよびNiよりなる群から選択される、項目23に記載の電池。
(25)Mが、複数のカチオンの組合せであり、該カチオンの少なくとも1つが、Mn、Fe、CoおよびNiよりなる群から選択される、項目23に記載の電池。
(26)MがFe1−xMnxまたはFe1−xTixであり、0≦x≦1である、項目25に記載の電池。
(27)負極、正極および電解質を備えた2次電池であって、該正極は、式YxM2(PO4)3を有する菱面体晶NASICON材料を含み、Mが少なくとも1つの第1列遷移金属カチオンで、0≦x≦5であり、YがLiまたはNaであり、該材料がLi2+xFeTi(PO4)3以外である、電池。
(28)Mが、Fe、V、MnおよびTiよりなる群から選択される、項目27に記載の電池。
(29)前記正極材料が、式Li3+xFe2(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目28に記載の電池。
(30)前記正極材料が、式Li3Fe2(PO4)3を有する、項目29に記載の電池。
(31)前記正極材料が、式Li2FeTi(PO4)3を有する、項目28に記載の電池。
(32)前記正極材料が、式LixTiNb(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目28に記載の電池。
(33)前記正極材料が、式Li1+xFeNb(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目28に記載の電池。
(34)負極、正極および電解質を備えた2次電池であって、該正極は、式YxM2(PO4)y(XO4)3−yを有する菱面体晶NASICON材料を含み、0<y≦3であり、Mが遷移金属原子であり、0≦x≦5であり、YがLiまたはNaであり、X=Si、AsまたはSである、電池。
(35)前記正極材料が、式Li1+xFe2(PO4)(SO4)2を有し、0≦x≦2である、項目34に記載の電池。
(36)負極、正極および電解質を備えた2次電池であって、該正極は、式A3−xV2(PO4)3を有する菱面体晶NASICON材料を含み、AがLi、Naまたはその組合せであり得、0≦x≦2である、電池。
(37)前記正極材料が、式Li2+xNaV2(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目36に記載の電池。
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、環境的に良性である、鉄のような、8面体サイト遷移金属酸化剤を有する、3次元骨組ホスト構造を形成する、より大きな4面体酸化物ポリアニオンを含有する酸化物を提供することによって、これらの目標を公知の2次電池正極材料よりも適切に満足する。
【0008】
本発明は、負極、正極および電解質を備えた再充電電気化学セル用の電極材料を提供する。このセルは、電極セパレータ(electrode separator)をさらに含み得る。本願において「電気化学セル」とは、電池の部分構造(building block)または内部部分のみを指すものではなく、広義に電池を意味する。正極または負極のいずれが本発明の材料を含んでいてもよいが、好ましくはこの材料は正極において有用である。
【0009】
一般に、1つの局面において、本発明は、一般式LiMPO4(但し、Mは、少なくとも1つの第1列遷移金属カチオン)を有する定序橄欖石化合物を提供する。正極材料の場合1放電/充電サイクルで、電池の外部回路によって供給/除去される電荷補償電子によって遷移金属Mカチオン(複数のカチオンの組合せ)を還元/酸化した際に、アルカリイオンLi+を定序橄欖石構造のホストMPO4骨組の格子間空間へ/から電池の電解質から/に可逆的に注入/抽出し得る。具体的には、好ましくは、Mは、Mn、Fe、Co、Ti、Niまたはその組合せである。置換基Mとして使用する遷移金属の組合せの例には、Fe1−xMnxおよびFe1−xTix(但し、0<x<1)が含まれるが、これらに限定はされない。
【0010】
本発明の定序橄欖石電極化合物の好適な式には、LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、LiNiPO4および、Li1−2xFe1−xTixPO4またはLiFe1−xMnxPO4(但し、0<x<1)のような混合遷移金属化合物が含まれるが、これらに限定はされない。しかし、一般式LiMPO4および定序橄欖石構造を持つその他の化合物が、本発明の範囲内に含まれることが当業者には理解されるであろう。
【0011】
本願に記載の一般式LiMPO4の電極材料は、典型的に、ジグザグ鎖(zigzag chains)および線状鎖(linear chains)によって規定される複数の平面を有する定序橄欖石構造を有し、M原子は8面体のジグザグ鎖を占め(occupy)、Li原子は8面体サイトの1つおきの平面の線状鎖を占める。
【0012】
別の局面において、本発明は、電極セパレータを有するまたは有していない、負極、正極および電解質を備えた再充電電気化学セル用の電極材料を提供する。この電極材料は、式YxM2(PO4)3(但し、0≦x≦5)を有する菱面体晶NASICON材料を含む。好ましくは、本発明の化合物は、再充電電気化学セルの正極として有用である。充電中に、電池の外部回路によって供給される電荷補償電子によって遷移金属Mカチオン(あるいは複数のカチオンの組合せ)が還元される際に、アルカリイオンYは、電池の電解質から菱面体晶M2(xo4)3NASICONホスト骨組の格子間空間に注入され得る。電池の充電中にはこれとは逆のプロセスが起こる。本発明の材料が、単一菱面体晶相(single rhombohedral phase)または2相、例えば、斜方晶および単斜晶で構成され得ることが想定されているが、これらの材料は、好ましくは、単相の菱面体晶NASICON化合物である。一般に、Mは少なくとも1つの第1列遷移金属カチオンであり、YはLiまたはNaである。好適な化合物の場合、MはFe、V、MnまたはTiであり、YはLiである。
【0013】
ホストMカチオンの酸化還元エネルギーは、XO4ポリアニオンの適切な選択によって変化させ得る。但し、Xは、Si、P、AsまたはSから選択され、本構造は、複数のこのようなポリアニオンの組合せを含み得る。酸化還元エネルギーを調整することにより、電池内に使用される電解質に対する電池電圧を最適化することが可能になる。本発明は、従来の正極材料の酸化物イオンO2−を、ポリアニオン(XO4)m−で代替することにより以下の利点を得る:(1)アルカリイオンにとって利用可能な自由容積を拡大し得る、ポリアニオンのより大きなサイズ、および(2)M−O−X結合を用いたMカチオンの酸化還元エネルギーを安定化し、これにより、環境的に良性であるFe3+/Fe2+および/またはTi4+/Ti3+またはV4+/V3+の酸化還元対(redox couples)によって許容可能な開回路電圧Vocを形成する共有X−O結合。
【0014】
本発明の菱面体晶NASICON電極化合物の好適な式には、式Li3+xFe2(PO4)3、Li2+xFeTi(PO4)3、LixTiNb(PO4)3およびLi1+xFeNb(PO4)3(但し、0<x<2)を有するものが含まれるが、これらに限定はされない。上記化合物のいずれにおいても、LiをNaに代替して、Naイオン再充電電池用の正極材料を提供し得ることが当業者には理解される。例えば、Naイオン再充電電池中で、Na3+xFe2(PO4)3、Na2+xFeTi(PO4)3、NaxTiNb(PO4)3およびNa1+xFeNb(PO4)3(但し、0<x<2)を使用し得る。この局面においては、Na+が作動イオン(working ion) であり、負極および電解質はNa化合物を含む。
【0015】
菱面体晶NASICON構造を有する本発明の化合物は、全ての角をXO44面体(X=Si、P、AsまたはS)と共有するMO68面体骨組を形成する。このXO44面体は、全ての角を8面体と共有する。MO68面体の対は、その3つの面が3つのXO44面体で架橋され、これにより、6方晶c軸(菱面体晶[111]方位)に平行に配列された「ランタン(lantern)」ユニットを形成する。これらのXO44面体のそれぞれは、2つの異なる「ランタン」ユニットに架橋している。Li+またはNa+イオンは、M2(XO4)3骨組内の格子間空間を占める。一般に、菱面体晶NASICON骨組を有するYxM2(XO4)3化合物は、Mカチオンの所望の原子価のために、化学量論比のY、MおよびXO4基の固体状態反応によって調製され得る。但し、YがLiである場合、上記化合物は、300℃の溶融LiNO3浴中でLi+をNa+とイオン交換することによって、Na類似体から間接的に調製され得る。例えば、菱面体晶LiTi2(PO4)3は、Li2CO3またはLiOH・H2O、TiO2、およびNH4H2PO4・H2Oをよく混合した混合物を、空気中200℃で焼成してH2OおよびCO2を除去し、その後、空気中約850℃で24時間加熱し、さらに約950℃で24時間加熱することによって調製され得る。しかし、類似の固体状態反応によるLiFe2(PO4)3の調製は、望ましくない単斜晶の骨組を与える。菱面体晶型(rhombohedral form)を得るためには、例えば、NaCO3、Fe{CH2COOH}2およびNH4H2PO4・H2Oの固体状態反応によって菱面体晶Na3Fe2(PO4)3を調製することが必要である。次に、菱面体晶型のLi3Fe2(PO4)3は、300℃において、溶融LiNO3浴中でLi+をNa+とイオン交換することによって得られる。菱面体晶Na化合物が再充電Naイオン電池の正極材料として有用であることが当業者には理解されるであろう。
【0016】
本発明の別の局面において、菱面体晶NASICON電極化合物は、菱面体晶NASICON骨組構造の場合、一般式YxM2(PO4)y(XO4)3−y(但し、0<y≦3、Mは遷移金属原子、YはLiまたはNa、且つX=Si、AsまたはSであり、対カチオンとして機能する)を有する。この局面の場合、この化合物は、電極材料の少なくとも一部としてリン酸アニオンを含む。好適な電極材料において、この化合物は、再充電電池の正極に使用される。この一般式を有する好適な化合物には、Li1+xFe2(SO4)2(PO4)(但し、0≦x≦1)が含まれるが、これらに限定はされない。
【0017】
典型的に、上記の菱面体晶NASICON化合物は、リチウム化合物、鉄化合物、リン酸化合物および硫酸塩化合物を含む水性溶液を調製し、この溶液を蒸発させて乾燥した材料を得て、そしてこの乾燥した材料を約500℃に加熱することによって調製され得る。好ましくは、この水性出発溶液は、FeCl3、(NH4)2SO4およびLiH2PO4を含む
別の実施形態において、本発明は、電極セパレータを有するまたは有していない、負極、正極および電解質を備えた再充電電気化学セル用の電極材料を提供する。この電極材料は、一般式A3−xV2(PO4)3の菱面体晶NASICONを有する。これらの化合物において、AはLi、Naまたはその組合せであり得、0≦x≦2である。好適な実施形態において、この化合物は、単相の菱面体晶NASICON材料である。一般式A3−xV2(PO4)3の菱面体晶NASICON電極化合物用の好適な式には、式Li2−xNaV2(PO4)3(但し、0≦x≦2)を有するものが含まれるが、これらに限定はされない。
【0018】
一般に、一般式A3−xV2(PO4)3の菱面体晶NASICON材料は、図9に示す処理によって調製され得る。あるいは、Li2NaV2(PO4)3は、LiCO3、NaCO3、NH4H2PO4・H2OおよびV2O3から、直接固体状態反応によって調製され得る。
【0019】
別の局面において本発明は、電気化学セルが2つの電極および電解質を含み、電極セパレータを有するまたは有していない、2次(再充電)電池を提供する。一般に、これらの電極は、負極および正極と呼ばれる。本発明の2次電池は、一般に、上記の化合物を、電極材料として、好ましくは正極材料として含む。より具体的には、本発明の電池は、上記の定序橄欖石化合物または上記の菱面体晶NASICON化合物を含む正極を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1 図1は、電池の電圧V対負荷(load)を流れるIの典型的な分極曲線を示す。典型的な曲線の電圧降下(Voc−V)≡η(I)は、電池抵抗Rb(I)の測定値である。界面電圧降下は、領域(i)において飽和する。領域(ii)の曲線の傾きは、dV/dI≒Rel+Rc(A)+Rc(C)であり、電解質抵抗Rel、および負極および正極における電流コレクタ抵抗値(current-collector resistances)の合計である。領域(iii)は、拡散制限的である(diffusion-limited)。より大きな電流Iの場合、通常の処理では、イオンの電極/電解質界面への移動またはイオンの電極/電解質界面からの除去が、平衡反応を維持するのに十分な早さで行われない。
【図2A】図2A、図2Bおよび図2C 図2Aは、橄欖石Li1−xFePO4を正極、リチウムを負極とした場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)における放電/充電曲線を示す。3.4Vにおけるプラトーは、リチウム負極に対するFe3+/Fe2+酸化還元対に対応する。4.1Vにおけるプラトーは、Mn3+/Mn2+対に対応する。図2Bは、リチウム負極に対して橄欖石Li1−xFe0.5Mn0.5PO4を正極とした場合の0.05mA・cm−2(1.13mA・g−1)における放電/充電曲線を示す。図2Cは、橄欖石LixFePO4の場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。
【図2B】図2A、図2Bおよび図2C 図2Aは、橄欖石Li1−xFePO4を正極、リチウムを負極とした場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)における放電/充電曲線を示す。3.4Vにおけるプラトーは、リチウム負極に対するFe3+/Fe2+酸化還元対に対応する。4.1Vにおけるプラトーは、Mn3+/Mn2+対に対応する。図2Bは、リチウム負極に対して橄欖石Li1−xFe0.5Mn0.5PO4を正極とした場合の0.05mA・cm−2(1.13mA・g−1)における放電/充電曲線を示す。図2Cは、橄欖石LixFePO4の場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。
【図2C】図2A、図2Bおよび図2C 図2Aは、橄欖石Li1−xFePO4を正極、リチウムを負極とした場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)における放電/充電曲線を示す。3.4Vにおけるプラトーは、リチウム負極に対するFe3+/Fe2+酸化還元対に対応する。4.1Vにおけるプラトーは、Mn3+/Mn2+対に対応する。図2Bは、リチウム負極に対して橄欖石Li1−xFe0.5Mn0.5PO4を正極とした場合の0.05mA・cm−2(1.13mA・g−1)における放電/充電曲線を示す。図2Cは、橄欖石LixFePO4の場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。
【図3】図3 図3は、LiFePO4からのLiの化学的抽出(脱リチウム化(delithiation) )によって調製されたFePO4の場合の185mA・g−1におけるFePO4/LiClO4+PC+DME/Liコインセル(coin cell)の放電/充電曲線を示す。
【図4】図4 FePO4粒子内へのリチウム注入時のLiFePO4/FePO4界面の動きを示す模式図である。
【図5A】図5Aおよび図5B 図5Aは、Na3Fe2(PO4)3からイオン交換によって調製されたLi3Fe2(PO4)3の菱面体晶R3c(NASICON)骨組構造を示し、図5Bは、固体状態反応によって調製されたLi3Fe2(PO4)3の単斜晶P21/n骨組構造を示す。FeO68面体およびPO44面体の大きな開口3次元骨組は、リチウムイオンの容易な拡散を可能にする。
【図5B】図5Aおよび図5B 図5Aは、Na3Fe2(PO4)3からイオン交換によって調製されたLi3Fe2(PO4)3の菱面体晶R3c(NASICON)骨組構造を示し、図5Bは、固体状態反応によって調製されたLi3Fe2(PO4)3の単斜晶P21/n骨組構造を示す。FeO68面体およびPO44面体の大きな開口3次元骨組は、リチウムイオンの容易な拡散を可能にする。
【図6A】図6Aおよび図6B 図6Aは、菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3(但し、0<x<2)の場合の0.1mA・cm−2におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3へのリチウム注入の曲線の形状は、単斜晶型のものとは驚く程異なっている。しかし、2.8Vにおける平均Vocは同じままである。格子間空間内におけるLi+イオンの配分は、非常に無秩序に、xに伴って連続的に変化するようである。図6Bは、単斜晶Li3+xFe2(PO4)3(但し、0<x<2)の場合の0.1mA・cm−2におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。
【図6B】図6Aおよび図6B 図6Aは、菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3(但し、0<x<2)の場合の0.1mA・cm−2におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3へのリチウム注入の曲線の形状は、単斜晶型のものとは驚く程異なっている。しかし、2.8Vにおける平均Vocは同じままである。格子間空間内におけるLi+イオンの配分は、非常に無秩序に、xに伴って連続的に変化するようである。図6Bは、単斜晶Li3+xFe2(PO4)3(但し、0<x<2)の場合の0.1mA・cm−2におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。
【図7A】図7Aおよび図7B 図7Aは、菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3の場合の電流密度0.05〜0.5mA・cm−2におけるリチウムに対する放電曲線を示す。電流密度を0.05〜0.5mA・cm−2に高めた際の可逆的な容量損失(capacity loss)が示されている。この損失は、単斜晶の場合に生じるものと比較して大幅に低減されている。図7Bは、単斜晶Li3+xFe2(PO4)3の場合の電流密度0.05〜0.5mA・cm−2における放電曲線を示す。
【図7B】図7Aおよび図7B 図7Aは、菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3の場合の電流密度0.05〜0.5mA・cm−2におけるリチウムに対する放電曲線を示す。電流密度を0.05〜0.5mA・cm−2に高めた際の可逆的な容量損失(capacity loss)が示されている。この損失は、単斜晶の場合に生じるものと比較して大幅に低減されている。図7Bは、単斜晶Li3+xFe2(PO4)3の場合の電流密度0.05〜0.5mA・cm−2における放電曲線を示す。
【図8】図8 図8は、菱面体晶LixNaV2(PO4)3の場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)における放電/充電曲線を示す。菱面体晶LixNaV2(PO4)3は、リチウム負極に対して、平均閉回路電圧3.8Vで、100mAh・g−1の場合に、1.5Li/化学式単位(formula unit)を可逆的にインターカレートする。
【図9】図9は、菱面体晶NASICON骨組を有するLi2NaV2(PO4)3の固体状態合成を示す。
【図10】図10は、Li1+xFe(PO4)(SO4)2(但し、0≦x≦2)の場合の、0.1mA・cm−2におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
例示的な実施形態の説明
今日の2次(再充電)リチウム電池は、負極として固体還元剤を、そして正極として固体酸化剤を用いている。リチウム2次電池の負極および正極における化学反応は可逆的であることが重要である。放電時、金属性負極は、Li+イオンをLi+イオン電解質に、そして電子を外部回路に供給する。正極は、大きな固溶性範囲にわたって電解質の作動Li+イオンをゲスト種として可逆的に注入/抽出し得るホスト化合物である(Goodenough 1994)。Li+イオンをゲスト種として正極に注入すると、Li+イオンは、外部回路からの電子によって電荷補償される。充電時、外場によって正極から電子を除去することによって、Li+イオンを解放して電解質に戻し、これにより、親ホスト構造を回復する。結果的に外場によって負極に電子が追加されることにより、電荷補償Li+イオンを引き寄せて負極に戻し、これにより、外場を元の組成に回復する。
【0022】
本発明は、リチウム2次(再充電)電池の正極として使用される新規な材料を提供する。本発明の正極材料と共に使用される負極は、リチウムの還元剤ホストまたは元素リチウム自身のようなあらゆるリチウム負極材料であり得ることが理解される。好ましくは、負極材料は、リチウムの還元剤ホストである。負極および正極の両方が、電解質へ/からの作動イオンの可逆的な注入/除去のためのホストである場合、その電気化学セルは一般に「ロッキングチェア」セルと呼ばれる。2次電池におけるさらなる暗示的な要件は、反復される放電/再充電サイクルにわたって、電極/電解質界面だけでなく、ホスト粒子間の電気的接触をも維持することである。
【0023】
反応中の電極間の原子の移動の結果、電極粒子の容積は変化するので、この要件は通常、固体電極と共に結晶性またはガラス性の電解質を使用することを排除する。より高い電圧を実現するために、最高被占分子軌道(HOMO)および最低空分子軌道(LUMO)間に大きなエネルギーギャップ窓(energy gap window)を有する非水性液体(non-aqueous liquid)またはポリマー電解質を2次リチウム電池に用いる。例えば、現実的な量の、LiClO4、LiBF4およびLiPF6のような非常にイオン性の高いリチウム塩を、実験的に最適化されたプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)またはジメチルカーボネート(DMC)の混合物に溶解させて、本発明の正極と共に使用する許容可能な電解質を提供することができる。当業者であれば、(ClO4)−アニオンは爆発性であり、典型的に商用には適していないことが認識される。
【0024】
全般的な設計考察
電池の電力出力Pは、電池によって流される電流Iと、正負のポスト(posts)間の電圧Vの積である(等式1)。
【0025】
P=IV
(1)
電圧Vは、電池の内部抵抗Rbによって、その開回路値Voc(I=0)から電圧降下IRbだけ低減される。
【0026】
V=Voc−IRb
(2)
電圧の開回路値は、等式3によって決まる。
【0027】
Voc=(μA−μc)/(−nF)<5V
(3)
等式3において、nは作動イオンによって運ばれる電子電荷の数であり、Fはファラデー定数である。開回路電圧の大きさは、負極還元剤および正極酸化剤の電気化学的電位の達成可能な差μA−μCによって、そしてさらに、液体電解質のHOMO(最高被占分子軌道)およびLUMO(最低空分子軌道)間のエネルギーギャップEgによって、または固体電解質の価電子帯の最高点(top)と伝導帯の最低点(bottom)との間のエネルギーギャップEgによって、Voc<5Vに制限される。
【0028】
還元剤による電解質の還元に対する熱力学的安定性を得るためには、金属性還元剤負極フェルミエネルギーεF、または気体性または液体還元剤のHOMOである化学的電位μAは、液体電解質のLUMOまたは固体電解質の伝導帯未満でなければならない。同様に、酸化剤による電解質の酸化に対する熱力学的安定性を得るためには、気体性または液体酸化剤のLUMOまたは金属性酸化剤正極のフェルミエネルギーである化学的電位μCは、液体電解質のHOMOまたは固体電解質の価電子帯よりも高くなければならない。従って、熱力学的安定性によって、Vocを最大化するために電解質の「窓(window)」Egを反応物質のエネルギーμAおよびμCに適合させなければならないのと同様、
μA−μC≦Eg
(4)
という制約が導入される。等式1および2から、高い最大電力Pmax(等式5)を達成するためには、可能な限り高いVocだけでなく、低い内部電池抵抗Rb(等式6参照)も要求されることが分かる。
【0029】
Pmax=ImaxVmax
(5)
Rb=Rel+Rin(A)+Rin(C)+Rc(A)+Rc(C)
(6)
イオン電流に対する電解質抵抗Relは、イオン伝導率σiの電解質によって充填される格子間空間の有効厚さL対幾何学的面積Aの比に比例する(等式7)。
【0030】
Rel=(L/σiA)
(7)
イオンは拡散的に移動するので、σi(等式8参照)は温度と共に高くなる。動作温度TopにおいてAσi≦0.1Scm−1(最大σiは、強酸中における室温陽子伝導率σHを表す)であることから、大きな幾何学的面積Aおよび小さな厚さLを有する膜セパレータを使用する必要があることが分かる。
【0031】
σLi=(B/T)exp(−Eα/kT)
(8)
電解質−電極界面の作動イオンの移動に対する抵抗(resistance to transport)は、各電極における幾何学的面積および界面面積の比に比例する。
【0032】
Rin〜A/Ain
(9)
そのセルの化学反応で界面上でのイオン移動が行われる場合、等式9から、多孔性の小粒子電極を構成する必要があることが分かる。大きな電極容量を達成し且つそれを維持する、即ち、可逆反応において電極材料を高い比(fraction)で利用するためには、粒子間の良好な電子的接触および多数の放電/充電サイクルにわたる大きな粒子−電解質界面面積を達成し、それを維持することが必要である。可逆的な反応が1次相変化を含む場合、サイクルを繰り返すうちに、粒子が破損する、あるいは互いの接触を失って、電流コレクタへの連続的な電子通路が途切れる場合がある。
【0033】
粒子間の電気的接触の損失は、容量(capacity)の不可逆的な損失につながる。可逆的な容量の減衰も起こり得る。粒子の破損なしで2相プロセス(あるいは拡散フロント(diffusion front)における急峻なゲスト種勾配さえも)が起こる場合、第2相が電極粒子を貫通する際に界面(または拡散フロント)の面積が減少する。臨界界面面積では、界面上での拡散が電流Iを維持するのに十分に高速でなく、粒子の全てがアクセス可能ではない場合がある。アクセス不可能な電極の容積はIと共に増大し、Iと共に増大する拡散制限的な可逆的容量減衰につながる。この問題は、より低いイオン伝導率σLiにおいてより重大である。
【0034】
負荷を流れる電流Iに対する電池電圧Vは、分極曲線と呼ばれる。典型的な曲線である図1の電圧降下(Voc−V)≡η(I)は、電池抵抗の測定値である(等式10参照)。
【0035】
Rb(I)=η(I)/I
(10)
充電時、η(I)=(Vapp−Voc)は過電圧と呼ばれる。界面電圧降下は、図1の領域(i)において飽和する。従って、領域(ii)において、この曲線の傾きは、
dV/dI≒Rel+Rc(A)+Rc(C)
(11)
である。領域(iii)は、拡散制限的である。比較的大きな電流Iの場合、通常の処理では、イオンを電極/電解質界面に動かすまたはイオンを電極/電解質界面から除去することが、平衡反応を維持するために十分に高速に行われない。
【0036】
電池電圧V対充電状態、または一定の電流Iが流れている時間は、放電曲線と呼ばれる。
【0037】
正極材料
2次リチウム電池に使用される本発明の正極材料は、リチウムを可逆的に注入できるホスト構造で構成される。そのセルが達成し得る最大電力出力Pmax(等式5参照)は、開回路電圧Voc=ΔE/e、および最大電力の電流Imaxにおける過電圧η(I)に依存する。
【0038】
Vmax=Voc−η(Imax)
(12)
ΔEは、負極の仕事関数(または還元剤のHOMO)と正極の仕事関数(または酸化剤のLUMO)との間のエネルギー差である。高いVocを得るためには、酸化物またはハロゲン化物の正極を使用する必要がある。大きなVocおよび良好な導電率を得るためには、正極が酸化物であることが好ましい。η(Imax)を最小化するためには、電極が良好な電子部品(electronic)且つイオン伝導体であり、且つ電極/電解質界面上における質量移動に対する低い抵抗を提供しなければならない。高いImaxを得るためには、大きな電極/電解質表面積を有する必要がある。さらに、電極粒子内において2相界面がある場合、この界面上の質量移動速度が、電流を維持するのに十分に大きくなければならない。この制約によって、電流が増加するに従って、電極容量が制限される傾向がある。
【0039】
稠密な複数の酸素アレイを有する酸化物ホスト構造は、Li1−xCoO2のように積層化されていもよく(Mizushimaら 1980)、またはマンガンスピネル(manganese spinels)Li1−x[Mn2]O4のように3次元(3D)的に強力に結合していてもよい(Thackeray 1995、Thackerayら 1983、Thackerayら 1984、GuyomardおよびTarascon 1992、およびMasquelierら 1996)。強力に結合した層間のファンデルワールスギャップへのLiのインターカレーションは高速であり得るが、液体電解質からの不要な種が付随し得る。一方、スピネル骨組[Mn2]O4内において起こるように、稠密な酸素アレイ内の強力な3D結合がゲストLi+イオンに与える自由容積は、室温において高い移動度を得るには小さ過ぎ、Imaxが制限される。この格子間空間容積の制約により、スピネル型構造はLi+イオンの注入に対して選択的ものになるが、Li+イオン移動度ひいてはLi+イオン伝導率σLiが低減される。オキソスピネルは、低電力セルにおいて商業的に使用するのに十分に高いσLiを有する(Thackerayら 1983)が、注入の高電力セル用には許容不可能である。
【0040】
本発明は、8面体サイト遷移金属酸化剤カチオンを有する3D骨組ホスト構造を形成する比較的大きな4面体ポリアニオンを含有する正極材料を提供することにより、これらの欠点を克服する。NASICON構造を有する本発明の正極材料においては、遷移金属イオンはポリアニオンによって分離され、これにより、電子伝導率は、金属性ではなくポーラロン性になる。しかし、σLiの利得は、電子伝導率の損失を相殺するために必要な利得よりも大きい。
【0041】
ある化合物から別の化合物への所与のカチオン酸化還元対のエネルギーの変化は、(a)存在する他のイオンからのクーロン場のマーデルング合算(Madelung summation)によって、純粋なイオンモデルについて計算され得るカチオンにおける結晶電界の大きさ、および(b)最隣接の対カチオンにおける共有結合の強さによって変調され得る、結合への共有貢献度の2つの要因に依存する。より強い方は、カチオンにおける負のマーデルング電位(negative Madelung potential)であり、より高い方は、カチオンの所与の酸化還元エネルギーである。同様に、より強い方は、遷移金属カチオンにおける電子の共有結合であり、より高い方は、そのカチオンの所与の酸化還元エネルギーである。カチオンホスト遷移金属イオンの酸化還元エネルギーが低い程、Vocは大きくなる。
【0042】
ある正極の対象酸化還元対は、遷移金属カチオンMにおけるd軌道起源(d-orbital parentage)または酸化物中の希土類カチオンLnにおける4f軌道起源(4f-orbital parentage)の反結合状態に関連する。より強い方は、カチオン−アニオン共有混合であり、より高い方は、所与のLUMO/HOMO酸化還元対のエネルギーである。同じアニオン原子価電子と競合する最隣接のカチオンによる、所与のMまたはLnカチオンにおけるカチオン−アニオンの強さの変調は、誘起効果として知られている。Li+イオンの4面体から8面体格子間空間への移動の際に、スピネル[M2]O4骨組内の酸化還元エネルギーを約1eVだけ上げることによって示されるように、構造の変化は、主に、マーデルングエネルギーを変化させる。等構造のFe2(XO4)3化合物における(MoO4)2−または(WO4)2−から(SO4)2−ポリアニオンへの変化の際に、Fe3+/Fe2+酸化還元エネルギーを0.6eVだけ下げることによって示されるように、対カチオンの変化は構造ではなく、主に誘起効果を変化させる。正極における所与の酸化還元対のエネルギーを上げることにより、共通の負極を利用する複数のセルから得られる電圧が下がる。逆に、負極の酸化還元エネルギーを上げることにより、共通の正極に対するセル電圧が上がる。
【0043】
本発明は、2次(再充電)電池用の、少なくとも1つの構成成分として酸化物ポリアニオン(PO4)3−を含む、酸化物ポリアニオンを含有する新規な正極材料を提供する。例えば、本発明の正極材料は、一般式LiM(PO4)を有していてもよく、定序橄欖石構造または比較的自由な菱面体晶NASICON骨組構造を有する。本発明の正極材料は、定序橄欖石構造の場合にはLiM(PO4)、または菱面体晶NASICON骨組構造の場合にはYxM2(PO4)y(XO4)3−y(但し、0<y≦3であり、Mは遷移金属元素であり、YはLiまたはNaであり、X=Si、AsまたはSであり、対カチオンとして機能する)の一般式を有する。
【0044】
Mg2SiO4の橄欖石構造は、若干歪んだ酸素原子アレイで構成され、Mg2+イオンが2つの異なる方法で8面体サイトの半分を占めている。ある基面の場合には、c軸に沿った、角を共有する8面体のジグザグ鎖を形成し、別の基面の場合には、やはりc軸に沿った、辺を共有する8面体の線状鎖を形成する。
【0045】
本発明の定序LiMPO4橄欖石構造の場合、M原子が8面体のジグザグ鎖を占め、Li原子が8面体サイトの別の平面の線状鎖を占める。本発明の本実施形態において、Mは好ましくはMn、Fe、Co、Niまたはその組合せである。全てのリチウム原子を除去すると、同じPbnm斜方晶空間群を有する積層FePO4型構造が残る。これらの相は、リチウムの可逆的な抽出または注入によって、いずれの端、例えば、LiFePO4(トリファイライト)またはFePO4(ヘテロサイト(heterosite))からでも調製され得る。
【0046】
図2A、図2Bおよび図2Cは、それぞれ、Li1−xFePO4、Li1−xFe0.5Mn0.5PO4およびLixFePO4(但し、0≦x≦5)の場合の、0.05mA・cm−2(それぞれ0.95mA・g−1および1.13mA×g−1)におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。3.4Vにおけるプラトーは、Fe3+/Fe2+酸化還元対に対応し、4.1Vにおけるプラトーは、Mn3+/Mn2+対に対応する。PCおよびDME中に電解質としてのLiClO4がある場合、リチウム負極に対して、正極を4.3Vまでしか充電できず、従って、この電解質の場合LiMnPO4、LiCoPO4、LiNiPO4からリチウムを抽出することはできなかった。しかし、鉄が存在する場合、Mn3+/Mn2+対はアクセス可能になる。このアクセス不可能性(inaccessibility)は、ポリアニオン(PO4)3−の存在下における、Mn3+/Mn2+、Co3+/Co2+、Ni3+/Ni2+対の安定性に起因する。本発明の化合物におけるPO44面体の比較的強い共有原子価によって、8面体サイトにおける酸化還元対が安定化し、これにより、観察された高いVocが得られる。
【0047】
FePO4へのリチウムの挿入は、研究された数サイクルにわたって可逆的であった。図3は、LiFePO4からのLiの化学的抽出(脱リチウム化)によって調製されたFePO4の場合の185mA・g−1における、FePO4/LiClO4+PC+DME/Liコインセルの放電/充電曲線を示す。本発明のLixFePO4材料は、良好な容量の正極を表し、安価で、環境的に良性な複数の元素を含んでいる。ほぼ6方最密な酸化物イオンアレイ(nearly close-packed-hexagonal oxide-ion array)は、Li+イオンの移動に比較的小さな自由容積を提供し、これは、一見、室温にて比較的小さな電流密度しか支持しないようであるが、電流密度を上げても、閉回路電圧Vは下がらない。むしろ、可逆的にセル容量を下げる。電流を低減することによって、容量は容易に回復する。
【0048】
図4に模式的に示すように、リチウム注入は、粒子の表面から、2相界面の後で内側に向かって進行する。図示したシステムの場合は、LixFePO4/Li1−xFePO4界面である。リチウム化(lithiation)が進行するに従って、界面の表面積は小さくなる。界面上の単位面積当たりの一定のリチウム移動速度において、臨界表面積に達すると、界面上で移動する全リチウムの速度では電流を維持することができなくなる。この時点で、セルの性能は拡散制限的になる。電流が高い程、合計臨界界面面積は大きく、よって、セル性能が拡散制限的になる前の挿入リチウムの濃度xは小さくなる。リチウム抽出時、粒子のコア(core)において母相が成長して粒子表面に戻ってくる。従って、反復される複数のサイクルにわたって、母相は維持され、セルによって与えられる電流密度を下げることによって容量の損失が可逆的になる。従って、この容量の損失は、通常は不可逆的なプロセスである容積変化の結果生じる粒子間における電気的接触の破壊に起因するものではないと思われる。
【0049】
さらに、本発明は、菱面体晶NASICON骨組を示す新規な正極材料を提供する。本願において使用されるNASICONとは、ナトリウム超イオン伝導体Na1+3xZr2(P1−xSixO4)3の骨組ホストの省略である。化合物Fe2(SO4)3は、菱面体晶NASICON構造および関連単斜晶型の2つの形態を持つ(Goodenoughら 1976、Longら 1979)。各構造は、角を共有する3つのSO44面体によって架橋される2つのFeO68面体からなる構成単位を複数含む。これらの構造単位は、各4面体が1つの8面体のみと角を共有し、各8面体が1つの4面体と角を共有するように、隣接するFe2(SO4)3基本部分構造のFeO68面体と角を共有する1つの構造単位のSO44面体を架橋することにより、3D骨組を形成する。菱面体晶型の場合、部分構造は平行に配列し、単斜晶相の場合には互いにほぼ垂直となるように配列する。つぶれた(collapsed)単斜晶型は、Li+イオンに対して比較的小さな自由容積を有する。この理由から、菱面体晶型が好ましい。これらの構造において、FeO68面体は直接的に接触しない。従って、Fe2+からFe3+への電子の移動はポーラロン性になり、これにより起動される。
【0050】
LixFe2(SO4)3は、リチウム負極に対してVoc=3.6VのLi+イオン再充電電池の正極用の候補材料として報告されている(ManthiramおよびGoodenough 1989)。硫酸塩は、Liについて所望の比較的大きな自由容積を提供するように思われるが、正極材料に硫酸塩を用いた電池は相転移の問題を生じて、電子伝導率を低下させる傾向がある。菱面体晶および単斜晶の両方のFe2(SO4)3への可逆的なリチウム挿入は、3.6Vのリチウム負極に対する平坦な閉回路電圧を与える(ManthiramおよびGoodenough 1989、Okadaら 1994、Nanjundaswamyら 1996)。いずれの親相も、骨組を元の状態のまま残す変位的遷移によってFe2(SO4)3の菱面体晶型から誘導される斜方晶リチウム化相Li2Fe2(SO4)3を伴う重大な固溶体を持たない。粉末X線回折によって、リチウム化は2相プロセスで起こることが確認される(Nanjundaswamyら 1996)。電流密度を上げることによって、閉回路電圧Vは大幅には変化せず、容量は可逆的に減少する。所与の電流密度に対する容量の減少量は、リチウム化界面の移動の場合により大きくなる。骨組の格子間空間は、高速なLi+イオンの移動を可能にするが、斜方晶/単斜晶界面上におけるリチウムの移動は、斜方晶/菱面体晶界面上における移動よりも遅く、これにより、増加する電流密度に伴う可逆的な容量の損失は、菱面体晶親相の場合よりも単斜晶の場合の方が大きくなる。
【0051】
本発明の正極材料は、正極材料の少なくとも1つの構成成分として1つ以上のリン酸イオンを用いることによって、公知の硫酸塩正極材料の相転移を回避する。図5Aおよび図5Bに示すように、Li3Fe2(PO4)3の菱面体晶R3c(NASICON)および単斜晶P21/n骨組構造は、上記の硫酸塩のものに類似している。
【0052】
本発明の別の実施形態は、式A3−xV2(PO4)3を有する菱面体晶NASICON正極材料である。但し、AはLi、Naまたはその組合せであり得る。菱面体晶A3−xV2(PO4)3は、リチウム負極に対して、平均閉回路電圧3.8Vで、100mA・g−1の場合に、1.5Li/化学式単位を可逆的にインターカレートする(図8参照)。本発明の菱面体晶A3−xV2(PO4)3化合物の電圧および容量性能は、高電圧正極材料LiMn2O4(4.0V)、LiCoO2(4.0V)およびLiNiO2(4.0V)に匹敵する。VO68面体およびPO44面体の大きな開いた3次元の骨組は、リチウムイオンが容易に拡散することを可能にし、高電力電池として魅力的である。この材料のさらなる利点は、既に開発されているCo、NiまたはMnを用いるシステムとは異なり、比較的安価で毒性の低い遷移金属元素(V)を含んでいることである。
【実施例】
【0053】
実施例1 定序橄欖石LiMPO4化合物
化学量論比のLi2CO3またはLiOH・H2O、Fe{CH2COOH}2およびNH4H2PO4・H2Oをよく混合した混合物から定序橄欖石化合物LiFePO4を調製した。この混合物を、300〜350℃で焼成してNH3、H2OおよびCO2を除去し、その後、Ar中約800℃で24時間加熱して、LiFePO4を得た。同様の固体状態反応を用いて、LiMnPO4、LiFe1−xMnxPO4、LiCoPO4およびLiNiPO4を調製した。LiFePO4からのLiの化学的抽出によってLiFePO4からFePO4を得た。Li1−xFePO4の充電/放電曲線およびLiFePO4の放電/充電サイクルは、電流密度0.05mA・cm2−における、容量0.6Li/化学式単位の場合のリチウムに対するほぼ3.5Vの電圧と共に同様の結果であった(図2Aおよび図2C参照)。使用した電解質は、電圧をV<4.3Vに制限する幅(window)を有していた。使用した電解質の場合、LiMnPO4、LiCoPO4およびLiNiPO4からリチウムを抽出することはできなかった。なぜなら、これらは、抽出開始のためにV>4.3Vの電圧を必要とするからである。しかし、LiFe1−xMnxPO4からのLi抽出は、0≦x≦0.5で行われた。Mn3+/Mn2+対は、リチウムに対して4.0Vで電圧プラトーを与える。
【0054】
実施例2 菱面体晶NASICON LixM2(PO4)3構造
本願発明者らは、リン酸を有する等構造の硫酸塩における酸化還元エネルギーを比較し、硫酸塩およびリン酸の異なる誘起効果に起因する変化の大きさを得た。菱面体晶Li1+xTi2(PO4)3は、リチウムに対して平坦な開回路電圧Voc=2.5Vを示すことが分かった。これは、FeTi(SO4)3の場合に見られるTi4+/Ti3+レベルよりも約0.8V低い。この平坦な電圧V(x)は、2相プロセスを示す。x=0.5の場合に菱面体晶相および斜方晶相の混在が見られた(DelmasおよびNadiri 1988、WangおよびHwu 1992)。本発明のLi2+xFeTi(PO4)3は放電時に単相を維持する。
【0055】
M=Fe、Fe/VまたはVの3つの全てのリン酸Li3M2(PO4)3は、固体状態反応によって調製された場合、単斜晶Fe2(SO4)3構造を有する。本願発明者らは、これらの化合物が、ナトリウム類似体Na3Fe2(PO4)3から、300℃でLiNO3におけるイオン交換によって調製された場合に、菱面体晶構造を示すことを見いだした。菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3にリチウムを注入する場合の図6Aの放電/充電曲線は、2.8Vの平均Vocを示す。これは、単斜晶型の場合の曲線(図6B参照)とは驚く程の違いである。本願発明者らは、Li3Fe2(PO4)3に最大2リチウム/化学式単位を注入して、Li5Fe2(PO4)3を導くことが可能であることを見いだした。Li3+xFe2(PO4)3(但し、0<x<2)の格子間空間におけるLi+イオン配分は、非常に無秩序に、xに伴って連続的に変化するようである。図7Aは、電流密度を0.05mA・cm−2から0.5mA・cm−2まで上げたときの、可逆的な容量の損失を示す。電流密度20mA・cm−2でもまだ、菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3について95mAh・g−1の可逆的な放電容量が見られる。これは、単斜晶システムの場合(図7B参照)に得られるものと比較して大幅に低減されている。電流密度23mA・g−1(または1mA・cm−2)の場合、コインセルにおいて、95mAh・g−1の初期容量が40サイクル目まで維持された。
【0056】
NASICON骨組を持つ本発明の別の正極材料Li2FeTi(PO4)3を固体状態反応によって調製した。この材料は、3.0から2.5Vの範囲の電圧を有する。
【0057】
菱面体晶TiNb(PO4)3は、約1200℃での固体状態反応によって調製可能である。最大3リチウム分子/化学式単位を注入することが可能であり、これにより、LixTiNb(PO4)3において、x>2のリチウムに対して1.8VでNb4+/Nb3+へのアクセスが可能になる。組成範囲0<x<2において、おそらく、電圧範囲2.5V<V<2.7VにおけるTi4+/Ti3+対に対応する0<x<1の範囲の段階、および2.2V<V<2.5Vの範囲内のNb5+/Nb4+対に対応する1<X<2段階の2つの段階が識別可能である。これらの酸化還元エネルギーは互いにオーバーラップしているようである。この割り当ては、LiltxTi2(PO4)3におけるTi4+/Ti3+対が、菱面体晶LiTi2(PO4)3および斜方晶Li3Ti2(PO4)3の2つの相の存在に起因して、2.5Vにおいて平坦なプラトーを与えることに基づいている。構造中にNbが存在することによって、0<x<2の範囲における第2相の形成が抑制される。
【0058】
菱面体晶LiFeNb(PO4)3およびLi2FeTi(PO4)3は、それぞれNaFeNb(PO4)3およびNa2FeTi(PO4)3から、約300℃で、溶融LiNO3を用いてイオン交換によって調製し得る。2Li/化学式単位をLi2+xFeTi(PO4)3に可逆的に注入でき、容量の損失は0.5mA・cm−2と小さい。2.7V<V<3.0Vの範囲における第1のLi原子の挿入はFe3+/Fe2+酸化還元対に対応し、2.5V<V<2.7Vの範囲における第2のLi原子の挿入はTi4+/Ti3+酸化還元対に対応する。Li1+xFeNb(PO4)3にリチウムを注入した場合に得られるV対xの曲線によって、NASICON関連構造を有するリン酸におけるFe3+/Fe2+、Nb5+/Nb4+酸化還元エネルギーの相対位置の場所がさらに確認される。この構造に3つのリチウム原子を注入することが可能であり、放電曲線において、リチウムに対して、Fe3+/Fe2+に対応して2.8V、Nb5+/Nb4+に対応して2.2V、およびNb4+/Nb5+に対応して1.7Vの3つの別々のプラトーができる。
【0059】
本発明の菱面体晶A3−xV2(PO4)3化合物は、ナトリウム類似体Na3V2(PO4)3からイオン交換によって調製し得る。本発明によって、直接的な固体状態反応によって、NASICON骨組を有する菱面体晶Li2NaV2(PO4)3を調製することも可能であった(図9)。菱面体晶LixNaV2(PO4)3の場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)における放電/充電曲線を図8に示す。
【0060】
FeCl3、(NH4)2SO4およびLiH2PO4を含む水性溶液を得て、この溶液を撹拌し、乾燥状態になるまで蒸発させ、得られた乾燥材料を約500℃に加熱することによって、菱面体晶LiFe2(SO4)2(PO4)を調製し得る。菱面体晶Li1+xFe2(PO4)(SO4)2(但し、0<x<3)の場合の、0.1mA・cm−2におけるリチウムに対する放電/充電曲線を図10に示す。
【0061】
本願において開示され、請求の範囲に記載された組成物および/または方法は全て、本願の開示内容に照らして、過度な実験を行うことなく、作製および実施可能である。本発明の組成物および方法を好適な実施形態に関して記載したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本願に記載の組成物および/または方法および工程または工程の順序を改変することが可能であることが、当業者には明らかであろう。より具体的には、本願に記載の作用剤(agents)を、化学的にも構造的にも関係のある特定の作用剤で代替して、同様の結果を得ることが可能であることが明らかであろう。このような当業者に明らかな代替および改変は全て、添付の請求項によって規定される本発明の趣旨、範囲および概念の範囲内であるものとする。
【0062】
参考文献
本願に記載のものを補足する例示的な手順に関する詳細またはその他の詳細を提供する限りにおいて、以下の参考文献を具体的に本願に援用する。
【0063】
【表1】
【0064】
以下の図面は本願明細書の一部をなすものであり、本発明のさらなる特定の局面を示すために設けられている。本明細書中に示す具体的な実施形態の詳細な説明と合わせて1つ以上の図面を参照することにより本発明をより良く理解することができる。
【技術分野】
【0001】
本願は、1996年12月4日出願の仮出願第60/032,346号の一部継続出願であり、且つ1996年4月23日出願の仮出願第60/016,060号の一部継続出願である。上記各開示文献の全文を放棄することなく本願に援用する。本発明に関する研究はRobert A. Welch Foundation, Houston, Texasによって支援された。
【0002】
1.発明の分野
本発明は、2次(再充電)アルカリイオン電池に関する。より具体的には、本発明は、アルカリイオン電池用の電極として使用される材料に関する。本発明は、定序橄欖石(ordered olivine)または菱面体晶NASICON構造を有し、少なくとも1つの構成成分(constituent)としてポリアニオン(PO4)3−を含有する、アルカリイオン再充電電池用電極材料として使用される遷移金属化合物を提供する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
今日のリチウム電池は、負極として固体還元剤を、そして正極として固体酸化剤を用いている。放電時、金属性負極は、Li+イオンをLi+イオン電解質に、そして電子を外部回路に供給する。典型的に、正極は、ゲスト種として電解質から可逆的にLi+イオンが注入される電子伝導性ホスト(electronically conducting host)であり、外部回路からの電子によって電荷補償される(charge-compensated)。リチウム2次電池の負極および正極における化学反応は可逆的でなければならない。充電時、外場(external field)によって正極から電子を除去することによって、Li+イオンを解放して電解質に戻し、これにより、親ホスト構造(parent host structure)を回復し、外場によって負極に電子を追加することによって、電荷補償Li+イオンを引き寄せて負極に戻し、これにより、外場を元の組成に回復する。
【0004】
今日の再充電リチウムイオン電池は、負極として、リチウムが可逆的に注入されるコークス材料を使用し、正極ホスト材料として積層(layered)または骨組遷移金属酸化物(framework transition-metal oxide)を使用している(Nishiらの米国特許第4,959,281号)。Coおよび/またはNiを用いた積層酸化物は、高価であり、電解質から不要な種が混入(incorporation)することによって劣化(degrade)し得る。[M2]O4スピネル骨組を有するLi1±x[Mn2]O4のような酸化物は、強力な三次元結合およびリチウム注入のための相互接続された格子間空間(interstitial space)を提供する。しかし、O2−イオンのサイズが小さいことによって、Li+イオンにとって利用可能な自由容積(free volume)が制限され、これにより、電極の電力容量(power capability)が制限される。O2−イオンを比較的大きなS2−イオンで代替すると、Li+イオンにとって利用可能な自由容積は増大するが、その場合、1次セル(elementary cell)の出力電圧を低減することにもなる。
【0005】
格子間空間におけるLi+イオン移動のためにより大きな自由容積を提供するホスト材料は、より高いリチウムイオン伝導率σLi、ひいてはより高い電力密度の実現を可能にするであろう。出力電圧ために、ひいてはより高いエネルギー密度のために、酸化物が必要である。安価で、無公害な遷移金属原子は、その電池を環境的に良性(environmentally benign)なものにするであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によって以下が提供された:
(1)再充電電気化学セル用の正極材料であって、該セルは負極および電解質をも備え、該正極が、式LiMPO4を有する化合物を含み、Mが少なくとも1つの第1列遷移金属カチオンである、正極材料。
(2)Mが、Mn、Fe、CoおよびNiよりなる群から選択される、項目1に記載の正極材料。
(3)Mが、複数のカチオンの組合せであり、該カチオンの少なくとも1つが、Mn、Fe、CoおよびNiよりなる群から選択される、項目1に記載の正極材料。
(4)Mが、Fe1−xMnxまたはFe1−xTixであり、0<x<1である、項目3に記載の正極材料。
(5)前記正極材料が、式LiFePO4を有する、項目2に記載の正極材料。
(6)再充電電気化学セル用の正極材料であって、該セルは負極および電解質をも備え、該正極材料が、式YxM2(PO4)3を有する菱面体晶NASICON材料を含み、Mが少なくとも1つの第1列遷移金属カチオンであり、0≦x≦5であり、YがLiまたはNaである、正極材料。
(7)Mが、Fe、V、MnおよびTiよりなる群から選択される、項目5に記載の正極材料。
(8)前記正極材料が、式Li3+xFe2(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目7に記載の正極材料。
(9)前記正極材料が、式Li3Fe2(PO4)3を有する、項目7に記載の正極材料。
(10)式Li1+xTi2(PO4)3を有する、項目7に記載の正極材料。
(11)式Li2FeTi(PO4)3を有する、項目7に記載の正極材料。
(12)式LixTiNb(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目7に記載の正極材料。
(13)式Li1+xFeNb(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目7に記載の正極材料。
(14)(a)Na2Fe2(PO4)3を調製する工程と、
(b)イオン交換反応が起こるように該Na2Fe2(PO4)3を溶融リチウム塩に接触させる工程と、
を包含する方法によって調製される、項目7に記載の正極材料。
(15)直接固体状態反応によって調製される、項目7に記載の正極材料。
(16)再充電電気化学セル用の正極材料であって、該セルは負極および電解質をも備え、該正極材料が、式YxM2(PO4)y(XO4)3−yを有する菱面体晶NASICON材料を含み、0<y≦3であり、Mが遷移金属原子であり、0≦x≦5であり、YがLiまたはNaであり、X=Si、AsまたはSである、正極材料。
(17)前記正極材料が、式Li1+xFe2(SO4)2(PO4)を有し、0≦x≦2である、項目16に記載の正極材料。
(18)(a)FeCl3、(NH4)2SO4およびLiH2PO4を含む水性溶液を調製する工程と、
(b)該溶液を蒸発させて乾燥材料を得る工程と、
(c)該乾燥材料を約500℃に加熱する工程と、
を包含する方法によって調製される、項目17に記載の正極材料。
(19)再充電電気化学セル用の正極材料であって、該セルは負極および電解質をも備え、該正極材料が、式A3−xV2(PO4)3を有する菱面体晶NASICON材料を含み、AがLi、Naまたはその組合せであり得、0≦x≦2である、正極材料。
(20)前記正極材料が、式Li2−xNaV2(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目19に記載の正極材料。
(21)(a)Na3V2(PO4)3を調製する工程と、
(b)イオン交換反応が起こるように該Na3V2(PO4)3を溶融リチウム塩に接触させる工程と、
を包含する方法によって調製される、項目19に記載の正極材料。
(22)直接固体状態反応によって調製される、項目19に記載の正極材料。
(23)負極、正極および電解質を備えた2次電池であって、該正極は、式LiMPO4を有する定序橄欖石化合物を含み、Mが少なくとも1つの第1列遷移金属カチオンである、電池。
(24)Mが、Mn、Fe、CoおよびNiよりなる群から選択される、項目23に記載の電池。
(25)Mが、複数のカチオンの組合せであり、該カチオンの少なくとも1つが、Mn、Fe、CoおよびNiよりなる群から選択される、項目23に記載の電池。
(26)MがFe1−xMnxまたはFe1−xTixであり、0≦x≦1である、項目25に記載の電池。
(27)負極、正極および電解質を備えた2次電池であって、該正極は、式YxM2(PO4)3を有する菱面体晶NASICON材料を含み、Mが少なくとも1つの第1列遷移金属カチオンで、0≦x≦5であり、YがLiまたはNaであり、該材料がLi2+xFeTi(PO4)3以外である、電池。
(28)Mが、Fe、V、MnおよびTiよりなる群から選択される、項目27に記載の電池。
(29)前記正極材料が、式Li3+xFe2(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目28に記載の電池。
(30)前記正極材料が、式Li3Fe2(PO4)3を有する、項目29に記載の電池。
(31)前記正極材料が、式Li2FeTi(PO4)3を有する、項目28に記載の電池。
(32)前記正極材料が、式LixTiNb(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目28に記載の電池。
(33)前記正極材料が、式Li1+xFeNb(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目28に記載の電池。
(34)負極、正極および電解質を備えた2次電池であって、該正極は、式YxM2(PO4)y(XO4)3−yを有する菱面体晶NASICON材料を含み、0<y≦3であり、Mが遷移金属原子であり、0≦x≦5であり、YがLiまたはNaであり、X=Si、AsまたはSである、電池。
(35)前記正極材料が、式Li1+xFe2(PO4)(SO4)2を有し、0≦x≦2である、項目34に記載の電池。
(36)負極、正極および電解質を備えた2次電池であって、該正極は、式A3−xV2(PO4)3を有する菱面体晶NASICON材料を含み、AがLi、Naまたはその組合せであり得、0≦x≦2である、電池。
(37)前記正極材料が、式Li2+xNaV2(PO4)3を有し、0≦x≦2である、項目36に記載の電池。
【0007】
(発明の要旨)
本発明は、環境的に良性である、鉄のような、8面体サイト遷移金属酸化剤を有する、3次元骨組ホスト構造を形成する、より大きな4面体酸化物ポリアニオンを含有する酸化物を提供することによって、これらの目標を公知の2次電池正極材料よりも適切に満足する。
【0008】
本発明は、負極、正極および電解質を備えた再充電電気化学セル用の電極材料を提供する。このセルは、電極セパレータ(electrode separator)をさらに含み得る。本願において「電気化学セル」とは、電池の部分構造(building block)または内部部分のみを指すものではなく、広義に電池を意味する。正極または負極のいずれが本発明の材料を含んでいてもよいが、好ましくはこの材料は正極において有用である。
【0009】
一般に、1つの局面において、本発明は、一般式LiMPO4(但し、Mは、少なくとも1つの第1列遷移金属カチオン)を有する定序橄欖石化合物を提供する。正極材料の場合1放電/充電サイクルで、電池の外部回路によって供給/除去される電荷補償電子によって遷移金属Mカチオン(複数のカチオンの組合せ)を還元/酸化した際に、アルカリイオンLi+を定序橄欖石構造のホストMPO4骨組の格子間空間へ/から電池の電解質から/に可逆的に注入/抽出し得る。具体的には、好ましくは、Mは、Mn、Fe、Co、Ti、Niまたはその組合せである。置換基Mとして使用する遷移金属の組合せの例には、Fe1−xMnxおよびFe1−xTix(但し、0<x<1)が含まれるが、これらに限定はされない。
【0010】
本発明の定序橄欖石電極化合物の好適な式には、LiFePO4、LiMnPO4、LiCoPO4、LiNiPO4および、Li1−2xFe1−xTixPO4またはLiFe1−xMnxPO4(但し、0<x<1)のような混合遷移金属化合物が含まれるが、これらに限定はされない。しかし、一般式LiMPO4および定序橄欖石構造を持つその他の化合物が、本発明の範囲内に含まれることが当業者には理解されるであろう。
【0011】
本願に記載の一般式LiMPO4の電極材料は、典型的に、ジグザグ鎖(zigzag chains)および線状鎖(linear chains)によって規定される複数の平面を有する定序橄欖石構造を有し、M原子は8面体のジグザグ鎖を占め(occupy)、Li原子は8面体サイトの1つおきの平面の線状鎖を占める。
【0012】
別の局面において、本発明は、電極セパレータを有するまたは有していない、負極、正極および電解質を備えた再充電電気化学セル用の電極材料を提供する。この電極材料は、式YxM2(PO4)3(但し、0≦x≦5)を有する菱面体晶NASICON材料を含む。好ましくは、本発明の化合物は、再充電電気化学セルの正極として有用である。充電中に、電池の外部回路によって供給される電荷補償電子によって遷移金属Mカチオン(あるいは複数のカチオンの組合せ)が還元される際に、アルカリイオンYは、電池の電解質から菱面体晶M2(xo4)3NASICONホスト骨組の格子間空間に注入され得る。電池の充電中にはこれとは逆のプロセスが起こる。本発明の材料が、単一菱面体晶相(single rhombohedral phase)または2相、例えば、斜方晶および単斜晶で構成され得ることが想定されているが、これらの材料は、好ましくは、単相の菱面体晶NASICON化合物である。一般に、Mは少なくとも1つの第1列遷移金属カチオンであり、YはLiまたはNaである。好適な化合物の場合、MはFe、V、MnまたはTiであり、YはLiである。
【0013】
ホストMカチオンの酸化還元エネルギーは、XO4ポリアニオンの適切な選択によって変化させ得る。但し、Xは、Si、P、AsまたはSから選択され、本構造は、複数のこのようなポリアニオンの組合せを含み得る。酸化還元エネルギーを調整することにより、電池内に使用される電解質に対する電池電圧を最適化することが可能になる。本発明は、従来の正極材料の酸化物イオンO2−を、ポリアニオン(XO4)m−で代替することにより以下の利点を得る:(1)アルカリイオンにとって利用可能な自由容積を拡大し得る、ポリアニオンのより大きなサイズ、および(2)M−O−X結合を用いたMカチオンの酸化還元エネルギーを安定化し、これにより、環境的に良性であるFe3+/Fe2+および/またはTi4+/Ti3+またはV4+/V3+の酸化還元対(redox couples)によって許容可能な開回路電圧Vocを形成する共有X−O結合。
【0014】
本発明の菱面体晶NASICON電極化合物の好適な式には、式Li3+xFe2(PO4)3、Li2+xFeTi(PO4)3、LixTiNb(PO4)3およびLi1+xFeNb(PO4)3(但し、0<x<2)を有するものが含まれるが、これらに限定はされない。上記化合物のいずれにおいても、LiをNaに代替して、Naイオン再充電電池用の正極材料を提供し得ることが当業者には理解される。例えば、Naイオン再充電電池中で、Na3+xFe2(PO4)3、Na2+xFeTi(PO4)3、NaxTiNb(PO4)3およびNa1+xFeNb(PO4)3(但し、0<x<2)を使用し得る。この局面においては、Na+が作動イオン(working ion) であり、負極および電解質はNa化合物を含む。
【0015】
菱面体晶NASICON構造を有する本発明の化合物は、全ての角をXO44面体(X=Si、P、AsまたはS)と共有するMO68面体骨組を形成する。このXO44面体は、全ての角を8面体と共有する。MO68面体の対は、その3つの面が3つのXO44面体で架橋され、これにより、6方晶c軸(菱面体晶[111]方位)に平行に配列された「ランタン(lantern)」ユニットを形成する。これらのXO44面体のそれぞれは、2つの異なる「ランタン」ユニットに架橋している。Li+またはNa+イオンは、M2(XO4)3骨組内の格子間空間を占める。一般に、菱面体晶NASICON骨組を有するYxM2(XO4)3化合物は、Mカチオンの所望の原子価のために、化学量論比のY、MおよびXO4基の固体状態反応によって調製され得る。但し、YがLiである場合、上記化合物は、300℃の溶融LiNO3浴中でLi+をNa+とイオン交換することによって、Na類似体から間接的に調製され得る。例えば、菱面体晶LiTi2(PO4)3は、Li2CO3またはLiOH・H2O、TiO2、およびNH4H2PO4・H2Oをよく混合した混合物を、空気中200℃で焼成してH2OおよびCO2を除去し、その後、空気中約850℃で24時間加熱し、さらに約950℃で24時間加熱することによって調製され得る。しかし、類似の固体状態反応によるLiFe2(PO4)3の調製は、望ましくない単斜晶の骨組を与える。菱面体晶型(rhombohedral form)を得るためには、例えば、NaCO3、Fe{CH2COOH}2およびNH4H2PO4・H2Oの固体状態反応によって菱面体晶Na3Fe2(PO4)3を調製することが必要である。次に、菱面体晶型のLi3Fe2(PO4)3は、300℃において、溶融LiNO3浴中でLi+をNa+とイオン交換することによって得られる。菱面体晶Na化合物が再充電Naイオン電池の正極材料として有用であることが当業者には理解されるであろう。
【0016】
本発明の別の局面において、菱面体晶NASICON電極化合物は、菱面体晶NASICON骨組構造の場合、一般式YxM2(PO4)y(XO4)3−y(但し、0<y≦3、Mは遷移金属原子、YはLiまたはNa、且つX=Si、AsまたはSであり、対カチオンとして機能する)を有する。この局面の場合、この化合物は、電極材料の少なくとも一部としてリン酸アニオンを含む。好適な電極材料において、この化合物は、再充電電池の正極に使用される。この一般式を有する好適な化合物には、Li1+xFe2(SO4)2(PO4)(但し、0≦x≦1)が含まれるが、これらに限定はされない。
【0017】
典型的に、上記の菱面体晶NASICON化合物は、リチウム化合物、鉄化合物、リン酸化合物および硫酸塩化合物を含む水性溶液を調製し、この溶液を蒸発させて乾燥した材料を得て、そしてこの乾燥した材料を約500℃に加熱することによって調製され得る。好ましくは、この水性出発溶液は、FeCl3、(NH4)2SO4およびLiH2PO4を含む
別の実施形態において、本発明は、電極セパレータを有するまたは有していない、負極、正極および電解質を備えた再充電電気化学セル用の電極材料を提供する。この電極材料は、一般式A3−xV2(PO4)3の菱面体晶NASICONを有する。これらの化合物において、AはLi、Naまたはその組合せであり得、0≦x≦2である。好適な実施形態において、この化合物は、単相の菱面体晶NASICON材料である。一般式A3−xV2(PO4)3の菱面体晶NASICON電極化合物用の好適な式には、式Li2−xNaV2(PO4)3(但し、0≦x≦2)を有するものが含まれるが、これらに限定はされない。
【0018】
一般に、一般式A3−xV2(PO4)3の菱面体晶NASICON材料は、図9に示す処理によって調製され得る。あるいは、Li2NaV2(PO4)3は、LiCO3、NaCO3、NH4H2PO4・H2OおよびV2O3から、直接固体状態反応によって調製され得る。
【0019】
別の局面において本発明は、電気化学セルが2つの電極および電解質を含み、電極セパレータを有するまたは有していない、2次(再充電)電池を提供する。一般に、これらの電極は、負極および正極と呼ばれる。本発明の2次電池は、一般に、上記の化合物を、電極材料として、好ましくは正極材料として含む。より具体的には、本発明の電池は、上記の定序橄欖石化合物または上記の菱面体晶NASICON化合物を含む正極を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1 図1は、電池の電圧V対負荷(load)を流れるIの典型的な分極曲線を示す。典型的な曲線の電圧降下(Voc−V)≡η(I)は、電池抵抗Rb(I)の測定値である。界面電圧降下は、領域(i)において飽和する。領域(ii)の曲線の傾きは、dV/dI≒Rel+Rc(A)+Rc(C)であり、電解質抵抗Rel、および負極および正極における電流コレクタ抵抗値(current-collector resistances)の合計である。領域(iii)は、拡散制限的である(diffusion-limited)。より大きな電流Iの場合、通常の処理では、イオンの電極/電解質界面への移動またはイオンの電極/電解質界面からの除去が、平衡反応を維持するのに十分な早さで行われない。
【図2A】図2A、図2Bおよび図2C 図2Aは、橄欖石Li1−xFePO4を正極、リチウムを負極とした場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)における放電/充電曲線を示す。3.4Vにおけるプラトーは、リチウム負極に対するFe3+/Fe2+酸化還元対に対応する。4.1Vにおけるプラトーは、Mn3+/Mn2+対に対応する。図2Bは、リチウム負極に対して橄欖石Li1−xFe0.5Mn0.5PO4を正極とした場合の0.05mA・cm−2(1.13mA・g−1)における放電/充電曲線を示す。図2Cは、橄欖石LixFePO4の場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。
【図2B】図2A、図2Bおよび図2C 図2Aは、橄欖石Li1−xFePO4を正極、リチウムを負極とした場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)における放電/充電曲線を示す。3.4Vにおけるプラトーは、リチウム負極に対するFe3+/Fe2+酸化還元対に対応する。4.1Vにおけるプラトーは、Mn3+/Mn2+対に対応する。図2Bは、リチウム負極に対して橄欖石Li1−xFe0.5Mn0.5PO4を正極とした場合の0.05mA・cm−2(1.13mA・g−1)における放電/充電曲線を示す。図2Cは、橄欖石LixFePO4の場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。
【図2C】図2A、図2Bおよび図2C 図2Aは、橄欖石Li1−xFePO4を正極、リチウムを負極とした場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)における放電/充電曲線を示す。3.4Vにおけるプラトーは、リチウム負極に対するFe3+/Fe2+酸化還元対に対応する。4.1Vにおけるプラトーは、Mn3+/Mn2+対に対応する。図2Bは、リチウム負極に対して橄欖石Li1−xFe0.5Mn0.5PO4を正極とした場合の0.05mA・cm−2(1.13mA・g−1)における放電/充電曲線を示す。図2Cは、橄欖石LixFePO4の場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。
【図3】図3 図3は、LiFePO4からのLiの化学的抽出(脱リチウム化(delithiation) )によって調製されたFePO4の場合の185mA・g−1におけるFePO4/LiClO4+PC+DME/Liコインセル(coin cell)の放電/充電曲線を示す。
【図4】図4 FePO4粒子内へのリチウム注入時のLiFePO4/FePO4界面の動きを示す模式図である。
【図5A】図5Aおよび図5B 図5Aは、Na3Fe2(PO4)3からイオン交換によって調製されたLi3Fe2(PO4)3の菱面体晶R3c(NASICON)骨組構造を示し、図5Bは、固体状態反応によって調製されたLi3Fe2(PO4)3の単斜晶P21/n骨組構造を示す。FeO68面体およびPO44面体の大きな開口3次元骨組は、リチウムイオンの容易な拡散を可能にする。
【図5B】図5Aおよび図5B 図5Aは、Na3Fe2(PO4)3からイオン交換によって調製されたLi3Fe2(PO4)3の菱面体晶R3c(NASICON)骨組構造を示し、図5Bは、固体状態反応によって調製されたLi3Fe2(PO4)3の単斜晶P21/n骨組構造を示す。FeO68面体およびPO44面体の大きな開口3次元骨組は、リチウムイオンの容易な拡散を可能にする。
【図6A】図6Aおよび図6B 図6Aは、菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3(但し、0<x<2)の場合の0.1mA・cm−2におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3へのリチウム注入の曲線の形状は、単斜晶型のものとは驚く程異なっている。しかし、2.8Vにおける平均Vocは同じままである。格子間空間内におけるLi+イオンの配分は、非常に無秩序に、xに伴って連続的に変化するようである。図6Bは、単斜晶Li3+xFe2(PO4)3(但し、0<x<2)の場合の0.1mA・cm−2におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。
【図6B】図6Aおよび図6B 図6Aは、菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3(但し、0<x<2)の場合の0.1mA・cm−2におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3へのリチウム注入の曲線の形状は、単斜晶型のものとは驚く程異なっている。しかし、2.8Vにおける平均Vocは同じままである。格子間空間内におけるLi+イオンの配分は、非常に無秩序に、xに伴って連続的に変化するようである。図6Bは、単斜晶Li3+xFe2(PO4)3(但し、0<x<2)の場合の0.1mA・cm−2におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。
【図7A】図7Aおよび図7B 図7Aは、菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3の場合の電流密度0.05〜0.5mA・cm−2におけるリチウムに対する放電曲線を示す。電流密度を0.05〜0.5mA・cm−2に高めた際の可逆的な容量損失(capacity loss)が示されている。この損失は、単斜晶の場合に生じるものと比較して大幅に低減されている。図7Bは、単斜晶Li3+xFe2(PO4)3の場合の電流密度0.05〜0.5mA・cm−2における放電曲線を示す。
【図7B】図7Aおよび図7B 図7Aは、菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3の場合の電流密度0.05〜0.5mA・cm−2におけるリチウムに対する放電曲線を示す。電流密度を0.05〜0.5mA・cm−2に高めた際の可逆的な容量損失(capacity loss)が示されている。この損失は、単斜晶の場合に生じるものと比較して大幅に低減されている。図7Bは、単斜晶Li3+xFe2(PO4)3の場合の電流密度0.05〜0.5mA・cm−2における放電曲線を示す。
【図8】図8 図8は、菱面体晶LixNaV2(PO4)3の場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)における放電/充電曲線を示す。菱面体晶LixNaV2(PO4)3は、リチウム負極に対して、平均閉回路電圧3.8Vで、100mAh・g−1の場合に、1.5Li/化学式単位(formula unit)を可逆的にインターカレートする。
【図9】図9は、菱面体晶NASICON骨組を有するLi2NaV2(PO4)3の固体状態合成を示す。
【図10】図10は、Li1+xFe(PO4)(SO4)2(但し、0≦x≦2)の場合の、0.1mA・cm−2におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
例示的な実施形態の説明
今日の2次(再充電)リチウム電池は、負極として固体還元剤を、そして正極として固体酸化剤を用いている。リチウム2次電池の負極および正極における化学反応は可逆的であることが重要である。放電時、金属性負極は、Li+イオンをLi+イオン電解質に、そして電子を外部回路に供給する。正極は、大きな固溶性範囲にわたって電解質の作動Li+イオンをゲスト種として可逆的に注入/抽出し得るホスト化合物である(Goodenough 1994)。Li+イオンをゲスト種として正極に注入すると、Li+イオンは、外部回路からの電子によって電荷補償される。充電時、外場によって正極から電子を除去することによって、Li+イオンを解放して電解質に戻し、これにより、親ホスト構造を回復する。結果的に外場によって負極に電子が追加されることにより、電荷補償Li+イオンを引き寄せて負極に戻し、これにより、外場を元の組成に回復する。
【0022】
本発明は、リチウム2次(再充電)電池の正極として使用される新規な材料を提供する。本発明の正極材料と共に使用される負極は、リチウムの還元剤ホストまたは元素リチウム自身のようなあらゆるリチウム負極材料であり得ることが理解される。好ましくは、負極材料は、リチウムの還元剤ホストである。負極および正極の両方が、電解質へ/からの作動イオンの可逆的な注入/除去のためのホストである場合、その電気化学セルは一般に「ロッキングチェア」セルと呼ばれる。2次電池におけるさらなる暗示的な要件は、反復される放電/再充電サイクルにわたって、電極/電解質界面だけでなく、ホスト粒子間の電気的接触をも維持することである。
【0023】
反応中の電極間の原子の移動の結果、電極粒子の容積は変化するので、この要件は通常、固体電極と共に結晶性またはガラス性の電解質を使用することを排除する。より高い電圧を実現するために、最高被占分子軌道(HOMO)および最低空分子軌道(LUMO)間に大きなエネルギーギャップ窓(energy gap window)を有する非水性液体(non-aqueous liquid)またはポリマー電解質を2次リチウム電池に用いる。例えば、現実的な量の、LiClO4、LiBF4およびLiPF6のような非常にイオン性の高いリチウム塩を、実験的に最適化されたプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)またはジメチルカーボネート(DMC)の混合物に溶解させて、本発明の正極と共に使用する許容可能な電解質を提供することができる。当業者であれば、(ClO4)−アニオンは爆発性であり、典型的に商用には適していないことが認識される。
【0024】
全般的な設計考察
電池の電力出力Pは、電池によって流される電流Iと、正負のポスト(posts)間の電圧Vの積である(等式1)。
【0025】
P=IV
(1)
電圧Vは、電池の内部抵抗Rbによって、その開回路値Voc(I=0)から電圧降下IRbだけ低減される。
【0026】
V=Voc−IRb
(2)
電圧の開回路値は、等式3によって決まる。
【0027】
Voc=(μA−μc)/(−nF)<5V
(3)
等式3において、nは作動イオンによって運ばれる電子電荷の数であり、Fはファラデー定数である。開回路電圧の大きさは、負極還元剤および正極酸化剤の電気化学的電位の達成可能な差μA−μCによって、そしてさらに、液体電解質のHOMO(最高被占分子軌道)およびLUMO(最低空分子軌道)間のエネルギーギャップEgによって、または固体電解質の価電子帯の最高点(top)と伝導帯の最低点(bottom)との間のエネルギーギャップEgによって、Voc<5Vに制限される。
【0028】
還元剤による電解質の還元に対する熱力学的安定性を得るためには、金属性還元剤負極フェルミエネルギーεF、または気体性または液体還元剤のHOMOである化学的電位μAは、液体電解質のLUMOまたは固体電解質の伝導帯未満でなければならない。同様に、酸化剤による電解質の酸化に対する熱力学的安定性を得るためには、気体性または液体酸化剤のLUMOまたは金属性酸化剤正極のフェルミエネルギーである化学的電位μCは、液体電解質のHOMOまたは固体電解質の価電子帯よりも高くなければならない。従って、熱力学的安定性によって、Vocを最大化するために電解質の「窓(window)」Egを反応物質のエネルギーμAおよびμCに適合させなければならないのと同様、
μA−μC≦Eg
(4)
という制約が導入される。等式1および2から、高い最大電力Pmax(等式5)を達成するためには、可能な限り高いVocだけでなく、低い内部電池抵抗Rb(等式6参照)も要求されることが分かる。
【0029】
Pmax=ImaxVmax
(5)
Rb=Rel+Rin(A)+Rin(C)+Rc(A)+Rc(C)
(6)
イオン電流に対する電解質抵抗Relは、イオン伝導率σiの電解質によって充填される格子間空間の有効厚さL対幾何学的面積Aの比に比例する(等式7)。
【0030】
Rel=(L/σiA)
(7)
イオンは拡散的に移動するので、σi(等式8参照)は温度と共に高くなる。動作温度TopにおいてAσi≦0.1Scm−1(最大σiは、強酸中における室温陽子伝導率σHを表す)であることから、大きな幾何学的面積Aおよび小さな厚さLを有する膜セパレータを使用する必要があることが分かる。
【0031】
σLi=(B/T)exp(−Eα/kT)
(8)
電解質−電極界面の作動イオンの移動に対する抵抗(resistance to transport)は、各電極における幾何学的面積および界面面積の比に比例する。
【0032】
Rin〜A/Ain
(9)
そのセルの化学反応で界面上でのイオン移動が行われる場合、等式9から、多孔性の小粒子電極を構成する必要があることが分かる。大きな電極容量を達成し且つそれを維持する、即ち、可逆反応において電極材料を高い比(fraction)で利用するためには、粒子間の良好な電子的接触および多数の放電/充電サイクルにわたる大きな粒子−電解質界面面積を達成し、それを維持することが必要である。可逆的な反応が1次相変化を含む場合、サイクルを繰り返すうちに、粒子が破損する、あるいは互いの接触を失って、電流コレクタへの連続的な電子通路が途切れる場合がある。
【0033】
粒子間の電気的接触の損失は、容量(capacity)の不可逆的な損失につながる。可逆的な容量の減衰も起こり得る。粒子の破損なしで2相プロセス(あるいは拡散フロント(diffusion front)における急峻なゲスト種勾配さえも)が起こる場合、第2相が電極粒子を貫通する際に界面(または拡散フロント)の面積が減少する。臨界界面面積では、界面上での拡散が電流Iを維持するのに十分に高速でなく、粒子の全てがアクセス可能ではない場合がある。アクセス不可能な電極の容積はIと共に増大し、Iと共に増大する拡散制限的な可逆的容量減衰につながる。この問題は、より低いイオン伝導率σLiにおいてより重大である。
【0034】
負荷を流れる電流Iに対する電池電圧Vは、分極曲線と呼ばれる。典型的な曲線である図1の電圧降下(Voc−V)≡η(I)は、電池抵抗の測定値である(等式10参照)。
【0035】
Rb(I)=η(I)/I
(10)
充電時、η(I)=(Vapp−Voc)は過電圧と呼ばれる。界面電圧降下は、図1の領域(i)において飽和する。従って、領域(ii)において、この曲線の傾きは、
dV/dI≒Rel+Rc(A)+Rc(C)
(11)
である。領域(iii)は、拡散制限的である。比較的大きな電流Iの場合、通常の処理では、イオンを電極/電解質界面に動かすまたはイオンを電極/電解質界面から除去することが、平衡反応を維持するために十分に高速に行われない。
【0036】
電池電圧V対充電状態、または一定の電流Iが流れている時間は、放電曲線と呼ばれる。
【0037】
正極材料
2次リチウム電池に使用される本発明の正極材料は、リチウムを可逆的に注入できるホスト構造で構成される。そのセルが達成し得る最大電力出力Pmax(等式5参照)は、開回路電圧Voc=ΔE/e、および最大電力の電流Imaxにおける過電圧η(I)に依存する。
【0038】
Vmax=Voc−η(Imax)
(12)
ΔEは、負極の仕事関数(または還元剤のHOMO)と正極の仕事関数(または酸化剤のLUMO)との間のエネルギー差である。高いVocを得るためには、酸化物またはハロゲン化物の正極を使用する必要がある。大きなVocおよび良好な導電率を得るためには、正極が酸化物であることが好ましい。η(Imax)を最小化するためには、電極が良好な電子部品(electronic)且つイオン伝導体であり、且つ電極/電解質界面上における質量移動に対する低い抵抗を提供しなければならない。高いImaxを得るためには、大きな電極/電解質表面積を有する必要がある。さらに、電極粒子内において2相界面がある場合、この界面上の質量移動速度が、電流を維持するのに十分に大きくなければならない。この制約によって、電流が増加するに従って、電極容量が制限される傾向がある。
【0039】
稠密な複数の酸素アレイを有する酸化物ホスト構造は、Li1−xCoO2のように積層化されていもよく(Mizushimaら 1980)、またはマンガンスピネル(manganese spinels)Li1−x[Mn2]O4のように3次元(3D)的に強力に結合していてもよい(Thackeray 1995、Thackerayら 1983、Thackerayら 1984、GuyomardおよびTarascon 1992、およびMasquelierら 1996)。強力に結合した層間のファンデルワールスギャップへのLiのインターカレーションは高速であり得るが、液体電解質からの不要な種が付随し得る。一方、スピネル骨組[Mn2]O4内において起こるように、稠密な酸素アレイ内の強力な3D結合がゲストLi+イオンに与える自由容積は、室温において高い移動度を得るには小さ過ぎ、Imaxが制限される。この格子間空間容積の制約により、スピネル型構造はLi+イオンの注入に対して選択的ものになるが、Li+イオン移動度ひいてはLi+イオン伝導率σLiが低減される。オキソスピネルは、低電力セルにおいて商業的に使用するのに十分に高いσLiを有する(Thackerayら 1983)が、注入の高電力セル用には許容不可能である。
【0040】
本発明は、8面体サイト遷移金属酸化剤カチオンを有する3D骨組ホスト構造を形成する比較的大きな4面体ポリアニオンを含有する正極材料を提供することにより、これらの欠点を克服する。NASICON構造を有する本発明の正極材料においては、遷移金属イオンはポリアニオンによって分離され、これにより、電子伝導率は、金属性ではなくポーラロン性になる。しかし、σLiの利得は、電子伝導率の損失を相殺するために必要な利得よりも大きい。
【0041】
ある化合物から別の化合物への所与のカチオン酸化還元対のエネルギーの変化は、(a)存在する他のイオンからのクーロン場のマーデルング合算(Madelung summation)によって、純粋なイオンモデルについて計算され得るカチオンにおける結晶電界の大きさ、および(b)最隣接の対カチオンにおける共有結合の強さによって変調され得る、結合への共有貢献度の2つの要因に依存する。より強い方は、カチオンにおける負のマーデルング電位(negative Madelung potential)であり、より高い方は、カチオンの所与の酸化還元エネルギーである。同様に、より強い方は、遷移金属カチオンにおける電子の共有結合であり、より高い方は、そのカチオンの所与の酸化還元エネルギーである。カチオンホスト遷移金属イオンの酸化還元エネルギーが低い程、Vocは大きくなる。
【0042】
ある正極の対象酸化還元対は、遷移金属カチオンMにおけるd軌道起源(d-orbital parentage)または酸化物中の希土類カチオンLnにおける4f軌道起源(4f-orbital parentage)の反結合状態に関連する。より強い方は、カチオン−アニオン共有混合であり、より高い方は、所与のLUMO/HOMO酸化還元対のエネルギーである。同じアニオン原子価電子と競合する最隣接のカチオンによる、所与のMまたはLnカチオンにおけるカチオン−アニオンの強さの変調は、誘起効果として知られている。Li+イオンの4面体から8面体格子間空間への移動の際に、スピネル[M2]O4骨組内の酸化還元エネルギーを約1eVだけ上げることによって示されるように、構造の変化は、主に、マーデルングエネルギーを変化させる。等構造のFe2(XO4)3化合物における(MoO4)2−または(WO4)2−から(SO4)2−ポリアニオンへの変化の際に、Fe3+/Fe2+酸化還元エネルギーを0.6eVだけ下げることによって示されるように、対カチオンの変化は構造ではなく、主に誘起効果を変化させる。正極における所与の酸化還元対のエネルギーを上げることにより、共通の負極を利用する複数のセルから得られる電圧が下がる。逆に、負極の酸化還元エネルギーを上げることにより、共通の正極に対するセル電圧が上がる。
【0043】
本発明は、2次(再充電)電池用の、少なくとも1つの構成成分として酸化物ポリアニオン(PO4)3−を含む、酸化物ポリアニオンを含有する新規な正極材料を提供する。例えば、本発明の正極材料は、一般式LiM(PO4)を有していてもよく、定序橄欖石構造または比較的自由な菱面体晶NASICON骨組構造を有する。本発明の正極材料は、定序橄欖石構造の場合にはLiM(PO4)、または菱面体晶NASICON骨組構造の場合にはYxM2(PO4)y(XO4)3−y(但し、0<y≦3であり、Mは遷移金属元素であり、YはLiまたはNaであり、X=Si、AsまたはSであり、対カチオンとして機能する)の一般式を有する。
【0044】
Mg2SiO4の橄欖石構造は、若干歪んだ酸素原子アレイで構成され、Mg2+イオンが2つの異なる方法で8面体サイトの半分を占めている。ある基面の場合には、c軸に沿った、角を共有する8面体のジグザグ鎖を形成し、別の基面の場合には、やはりc軸に沿った、辺を共有する8面体の線状鎖を形成する。
【0045】
本発明の定序LiMPO4橄欖石構造の場合、M原子が8面体のジグザグ鎖を占め、Li原子が8面体サイトの別の平面の線状鎖を占める。本発明の本実施形態において、Mは好ましくはMn、Fe、Co、Niまたはその組合せである。全てのリチウム原子を除去すると、同じPbnm斜方晶空間群を有する積層FePO4型構造が残る。これらの相は、リチウムの可逆的な抽出または注入によって、いずれの端、例えば、LiFePO4(トリファイライト)またはFePO4(ヘテロサイト(heterosite))からでも調製され得る。
【0046】
図2A、図2Bおよび図2Cは、それぞれ、Li1−xFePO4、Li1−xFe0.5Mn0.5PO4およびLixFePO4(但し、0≦x≦5)の場合の、0.05mA・cm−2(それぞれ0.95mA・g−1および1.13mA×g−1)におけるリチウムに対する放電/充電曲線を示す。3.4Vにおけるプラトーは、Fe3+/Fe2+酸化還元対に対応し、4.1Vにおけるプラトーは、Mn3+/Mn2+対に対応する。PCおよびDME中に電解質としてのLiClO4がある場合、リチウム負極に対して、正極を4.3Vまでしか充電できず、従って、この電解質の場合LiMnPO4、LiCoPO4、LiNiPO4からリチウムを抽出することはできなかった。しかし、鉄が存在する場合、Mn3+/Mn2+対はアクセス可能になる。このアクセス不可能性(inaccessibility)は、ポリアニオン(PO4)3−の存在下における、Mn3+/Mn2+、Co3+/Co2+、Ni3+/Ni2+対の安定性に起因する。本発明の化合物におけるPO44面体の比較的強い共有原子価によって、8面体サイトにおける酸化還元対が安定化し、これにより、観察された高いVocが得られる。
【0047】
FePO4へのリチウムの挿入は、研究された数サイクルにわたって可逆的であった。図3は、LiFePO4からのLiの化学的抽出(脱リチウム化)によって調製されたFePO4の場合の185mA・g−1における、FePO4/LiClO4+PC+DME/Liコインセルの放電/充電曲線を示す。本発明のLixFePO4材料は、良好な容量の正極を表し、安価で、環境的に良性な複数の元素を含んでいる。ほぼ6方最密な酸化物イオンアレイ(nearly close-packed-hexagonal oxide-ion array)は、Li+イオンの移動に比較的小さな自由容積を提供し、これは、一見、室温にて比較的小さな電流密度しか支持しないようであるが、電流密度を上げても、閉回路電圧Vは下がらない。むしろ、可逆的にセル容量を下げる。電流を低減することによって、容量は容易に回復する。
【0048】
図4に模式的に示すように、リチウム注入は、粒子の表面から、2相界面の後で内側に向かって進行する。図示したシステムの場合は、LixFePO4/Li1−xFePO4界面である。リチウム化(lithiation)が進行するに従って、界面の表面積は小さくなる。界面上の単位面積当たりの一定のリチウム移動速度において、臨界表面積に達すると、界面上で移動する全リチウムの速度では電流を維持することができなくなる。この時点で、セルの性能は拡散制限的になる。電流が高い程、合計臨界界面面積は大きく、よって、セル性能が拡散制限的になる前の挿入リチウムの濃度xは小さくなる。リチウム抽出時、粒子のコア(core)において母相が成長して粒子表面に戻ってくる。従って、反復される複数のサイクルにわたって、母相は維持され、セルによって与えられる電流密度を下げることによって容量の損失が可逆的になる。従って、この容量の損失は、通常は不可逆的なプロセスである容積変化の結果生じる粒子間における電気的接触の破壊に起因するものではないと思われる。
【0049】
さらに、本発明は、菱面体晶NASICON骨組を示す新規な正極材料を提供する。本願において使用されるNASICONとは、ナトリウム超イオン伝導体Na1+3xZr2(P1−xSixO4)3の骨組ホストの省略である。化合物Fe2(SO4)3は、菱面体晶NASICON構造および関連単斜晶型の2つの形態を持つ(Goodenoughら 1976、Longら 1979)。各構造は、角を共有する3つのSO44面体によって架橋される2つのFeO68面体からなる構成単位を複数含む。これらの構造単位は、各4面体が1つの8面体のみと角を共有し、各8面体が1つの4面体と角を共有するように、隣接するFe2(SO4)3基本部分構造のFeO68面体と角を共有する1つの構造単位のSO44面体を架橋することにより、3D骨組を形成する。菱面体晶型の場合、部分構造は平行に配列し、単斜晶相の場合には互いにほぼ垂直となるように配列する。つぶれた(collapsed)単斜晶型は、Li+イオンに対して比較的小さな自由容積を有する。この理由から、菱面体晶型が好ましい。これらの構造において、FeO68面体は直接的に接触しない。従って、Fe2+からFe3+への電子の移動はポーラロン性になり、これにより起動される。
【0050】
LixFe2(SO4)3は、リチウム負極に対してVoc=3.6VのLi+イオン再充電電池の正極用の候補材料として報告されている(ManthiramおよびGoodenough 1989)。硫酸塩は、Liについて所望の比較的大きな自由容積を提供するように思われるが、正極材料に硫酸塩を用いた電池は相転移の問題を生じて、電子伝導率を低下させる傾向がある。菱面体晶および単斜晶の両方のFe2(SO4)3への可逆的なリチウム挿入は、3.6Vのリチウム負極に対する平坦な閉回路電圧を与える(ManthiramおよびGoodenough 1989、Okadaら 1994、Nanjundaswamyら 1996)。いずれの親相も、骨組を元の状態のまま残す変位的遷移によってFe2(SO4)3の菱面体晶型から誘導される斜方晶リチウム化相Li2Fe2(SO4)3を伴う重大な固溶体を持たない。粉末X線回折によって、リチウム化は2相プロセスで起こることが確認される(Nanjundaswamyら 1996)。電流密度を上げることによって、閉回路電圧Vは大幅には変化せず、容量は可逆的に減少する。所与の電流密度に対する容量の減少量は、リチウム化界面の移動の場合により大きくなる。骨組の格子間空間は、高速なLi+イオンの移動を可能にするが、斜方晶/単斜晶界面上におけるリチウムの移動は、斜方晶/菱面体晶界面上における移動よりも遅く、これにより、増加する電流密度に伴う可逆的な容量の損失は、菱面体晶親相の場合よりも単斜晶の場合の方が大きくなる。
【0051】
本発明の正極材料は、正極材料の少なくとも1つの構成成分として1つ以上のリン酸イオンを用いることによって、公知の硫酸塩正極材料の相転移を回避する。図5Aおよび図5Bに示すように、Li3Fe2(PO4)3の菱面体晶R3c(NASICON)および単斜晶P21/n骨組構造は、上記の硫酸塩のものに類似している。
【0052】
本発明の別の実施形態は、式A3−xV2(PO4)3を有する菱面体晶NASICON正極材料である。但し、AはLi、Naまたはその組合せであり得る。菱面体晶A3−xV2(PO4)3は、リチウム負極に対して、平均閉回路電圧3.8Vで、100mA・g−1の場合に、1.5Li/化学式単位を可逆的にインターカレートする(図8参照)。本発明の菱面体晶A3−xV2(PO4)3化合物の電圧および容量性能は、高電圧正極材料LiMn2O4(4.0V)、LiCoO2(4.0V)およびLiNiO2(4.0V)に匹敵する。VO68面体およびPO44面体の大きな開いた3次元の骨組は、リチウムイオンが容易に拡散することを可能にし、高電力電池として魅力的である。この材料のさらなる利点は、既に開発されているCo、NiまたはMnを用いるシステムとは異なり、比較的安価で毒性の低い遷移金属元素(V)を含んでいることである。
【実施例】
【0053】
実施例1 定序橄欖石LiMPO4化合物
化学量論比のLi2CO3またはLiOH・H2O、Fe{CH2COOH}2およびNH4H2PO4・H2Oをよく混合した混合物から定序橄欖石化合物LiFePO4を調製した。この混合物を、300〜350℃で焼成してNH3、H2OおよびCO2を除去し、その後、Ar中約800℃で24時間加熱して、LiFePO4を得た。同様の固体状態反応を用いて、LiMnPO4、LiFe1−xMnxPO4、LiCoPO4およびLiNiPO4を調製した。LiFePO4からのLiの化学的抽出によってLiFePO4からFePO4を得た。Li1−xFePO4の充電/放電曲線およびLiFePO4の放電/充電サイクルは、電流密度0.05mA・cm2−における、容量0.6Li/化学式単位の場合のリチウムに対するほぼ3.5Vの電圧と共に同様の結果であった(図2Aおよび図2C参照)。使用した電解質は、電圧をV<4.3Vに制限する幅(window)を有していた。使用した電解質の場合、LiMnPO4、LiCoPO4およびLiNiPO4からリチウムを抽出することはできなかった。なぜなら、これらは、抽出開始のためにV>4.3Vの電圧を必要とするからである。しかし、LiFe1−xMnxPO4からのLi抽出は、0≦x≦0.5で行われた。Mn3+/Mn2+対は、リチウムに対して4.0Vで電圧プラトーを与える。
【0054】
実施例2 菱面体晶NASICON LixM2(PO4)3構造
本願発明者らは、リン酸を有する等構造の硫酸塩における酸化還元エネルギーを比較し、硫酸塩およびリン酸の異なる誘起効果に起因する変化の大きさを得た。菱面体晶Li1+xTi2(PO4)3は、リチウムに対して平坦な開回路電圧Voc=2.5Vを示すことが分かった。これは、FeTi(SO4)3の場合に見られるTi4+/Ti3+レベルよりも約0.8V低い。この平坦な電圧V(x)は、2相プロセスを示す。x=0.5の場合に菱面体晶相および斜方晶相の混在が見られた(DelmasおよびNadiri 1988、WangおよびHwu 1992)。本発明のLi2+xFeTi(PO4)3は放電時に単相を維持する。
【0055】
M=Fe、Fe/VまたはVの3つの全てのリン酸Li3M2(PO4)3は、固体状態反応によって調製された場合、単斜晶Fe2(SO4)3構造を有する。本願発明者らは、これらの化合物が、ナトリウム類似体Na3Fe2(PO4)3から、300℃でLiNO3におけるイオン交換によって調製された場合に、菱面体晶構造を示すことを見いだした。菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3にリチウムを注入する場合の図6Aの放電/充電曲線は、2.8Vの平均Vocを示す。これは、単斜晶型の場合の曲線(図6B参照)とは驚く程の違いである。本願発明者らは、Li3Fe2(PO4)3に最大2リチウム/化学式単位を注入して、Li5Fe2(PO4)3を導くことが可能であることを見いだした。Li3+xFe2(PO4)3(但し、0<x<2)の格子間空間におけるLi+イオン配分は、非常に無秩序に、xに伴って連続的に変化するようである。図7Aは、電流密度を0.05mA・cm−2から0.5mA・cm−2まで上げたときの、可逆的な容量の損失を示す。電流密度20mA・cm−2でもまだ、菱面体晶Li3+xFe2(PO4)3について95mAh・g−1の可逆的な放電容量が見られる。これは、単斜晶システムの場合(図7B参照)に得られるものと比較して大幅に低減されている。電流密度23mA・g−1(または1mA・cm−2)の場合、コインセルにおいて、95mAh・g−1の初期容量が40サイクル目まで維持された。
【0056】
NASICON骨組を持つ本発明の別の正極材料Li2FeTi(PO4)3を固体状態反応によって調製した。この材料は、3.0から2.5Vの範囲の電圧を有する。
【0057】
菱面体晶TiNb(PO4)3は、約1200℃での固体状態反応によって調製可能である。最大3リチウム分子/化学式単位を注入することが可能であり、これにより、LixTiNb(PO4)3において、x>2のリチウムに対して1.8VでNb4+/Nb3+へのアクセスが可能になる。組成範囲0<x<2において、おそらく、電圧範囲2.5V<V<2.7VにおけるTi4+/Ti3+対に対応する0<x<1の範囲の段階、および2.2V<V<2.5Vの範囲内のNb5+/Nb4+対に対応する1<X<2段階の2つの段階が識別可能である。これらの酸化還元エネルギーは互いにオーバーラップしているようである。この割り当ては、LiltxTi2(PO4)3におけるTi4+/Ti3+対が、菱面体晶LiTi2(PO4)3および斜方晶Li3Ti2(PO4)3の2つの相の存在に起因して、2.5Vにおいて平坦なプラトーを与えることに基づいている。構造中にNbが存在することによって、0<x<2の範囲における第2相の形成が抑制される。
【0058】
菱面体晶LiFeNb(PO4)3およびLi2FeTi(PO4)3は、それぞれNaFeNb(PO4)3およびNa2FeTi(PO4)3から、約300℃で、溶融LiNO3を用いてイオン交換によって調製し得る。2Li/化学式単位をLi2+xFeTi(PO4)3に可逆的に注入でき、容量の損失は0.5mA・cm−2と小さい。2.7V<V<3.0Vの範囲における第1のLi原子の挿入はFe3+/Fe2+酸化還元対に対応し、2.5V<V<2.7Vの範囲における第2のLi原子の挿入はTi4+/Ti3+酸化還元対に対応する。Li1+xFeNb(PO4)3にリチウムを注入した場合に得られるV対xの曲線によって、NASICON関連構造を有するリン酸におけるFe3+/Fe2+、Nb5+/Nb4+酸化還元エネルギーの相対位置の場所がさらに確認される。この構造に3つのリチウム原子を注入することが可能であり、放電曲線において、リチウムに対して、Fe3+/Fe2+に対応して2.8V、Nb5+/Nb4+に対応して2.2V、およびNb4+/Nb5+に対応して1.7Vの3つの別々のプラトーができる。
【0059】
本発明の菱面体晶A3−xV2(PO4)3化合物は、ナトリウム類似体Na3V2(PO4)3からイオン交換によって調製し得る。本発明によって、直接的な固体状態反応によって、NASICON骨組を有する菱面体晶Li2NaV2(PO4)3を調製することも可能であった(図9)。菱面体晶LixNaV2(PO4)3の場合の0.05mA・cm−2(0.95mA・g−1)における放電/充電曲線を図8に示す。
【0060】
FeCl3、(NH4)2SO4およびLiH2PO4を含む水性溶液を得て、この溶液を撹拌し、乾燥状態になるまで蒸発させ、得られた乾燥材料を約500℃に加熱することによって、菱面体晶LiFe2(SO4)2(PO4)を調製し得る。菱面体晶Li1+xFe2(PO4)(SO4)2(但し、0<x<3)の場合の、0.1mA・cm−2におけるリチウムに対する放電/充電曲線を図10に示す。
【0061】
本願において開示され、請求の範囲に記載された組成物および/または方法は全て、本願の開示内容に照らして、過度な実験を行うことなく、作製および実施可能である。本発明の組成物および方法を好適な実施形態に関して記載したが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本願に記載の組成物および/または方法および工程または工程の順序を改変することが可能であることが、当業者には明らかであろう。より具体的には、本願に記載の作用剤(agents)を、化学的にも構造的にも関係のある特定の作用剤で代替して、同様の結果を得ることが可能であることが明らかであろう。このような当業者に明らかな代替および改変は全て、添付の請求項によって規定される本発明の趣旨、範囲および概念の範囲内であるものとする。
【0062】
参考文献
本願に記載のものを補足する例示的な手順に関する詳細またはその他の詳細を提供する限りにおいて、以下の参考文献を具体的に本願に援用する。
【0063】
【表1】
【0064】
以下の図面は本願明細書の一部をなすものであり、本発明のさらなる特定の局面を示すために設けられている。本明細書中に示す具体的な実施形態の詳細な説明と合わせて1つ以上の図面を参照することにより本発明をより良く理解することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再充電電気化学セル用の正極材料であって、1つ以上の化合物を含み、橄欖石構造を有する該化合物のうちの少なくとも1つの化合物は、一般式LiMPO4を含み、Mは、Mnと、10%までの1つ以上のその他の金属とを含む、正極材料。
【請求項2】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、Feを含む、請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記正極材料は、Mn3+/Mn2+対に対応する、リチウムに対する約4.1Vの少なくとも1つの放電プラトーを有する、請求項1に記載の正極材料。
【請求項4】
橄欖石構造を有する前記化合物は、ナノメートルスケールの粒子サイズを有する粒子に含まれる、請求項1に記載の正極材料。
【請求項5】
橄欖石構造を有する前記化合物は、ジグザグ鎖および線状鎖によって規定される複数の平面を有し、リチウム原子は、8面体サイトの1つおきの平面の線状鎖を占める、請求項1に記載の正極材料。
【請求項6】
M原子は、8面体サイトの1つおきの平面の8面体サイトのジグザグ鎖を占める、請求項5に記載の正極材料。
【請求項7】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、Tiを含む、請求項1に記載の正極材料。
【請求項8】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、2つの電子殻によって充填された金属を含む、請求項1に記載の正極材料。
【請求項9】
前記10%までの1つ以上のその他の金属は、少なくとも2つのさらなる金属を含む、請求項1に記載の正極材料。
【請求項10】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、Coを含む、請求項1に記載の正極材料。
【請求項11】
Mは、Mnと、10%までの1つ以上のその他の遷移金属とを含む、請求項1に記載の正極材料。
【請求項12】
正極を備えた再充電電気化学セルであって、該正極は1つ以上の化合物を含み、橄欖石構造を有する該化合物のうちの少なくとも1つの化合物は、一般式LiMPO4を含み、Mは、Mnと、10%までの1つ以上のその他の金属とを含む、再充電電気化学セル。
【請求項13】
橄欖石構造を有する前記化合物は、ナノメートルスケールの粒子サイズを有する粒子に含まれる、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項14】
前記正極材料は、Mn3+/Mn2+対に対応する、リチウムに対する約4.1Vの少なくとも1つの放電プラトーを有する、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項15】
Mは、Mnと、10%までの1つ以上のその他の遷移金属とを含む、請求項14に記載の再充電電気化学セル。
【請求項16】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、Feを含む、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項17】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、Tiを含む、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項18】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、Coを含む、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項19】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、2つの電子殻によって充填された金属を含む、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項20】
前記10%までの1つ以上のその他の金属は、少なくとも2つのさらなる金属を含む、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項21】
橄欖石構造を有する前記化合物は、ジグザグ鎖および線状鎖によって規定される複数の平面を有し、リチウム原子は、8面体サイトの1つおきの平面の線状鎖を占める、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項22】
M原子は、8面体サイトの1つおきの平面の8面体サイトのジグザグ鎖を占める、請求項21に記載の再充電電気化学セル。
【請求項1】
再充電電気化学セル用の正極材料であって、1つ以上の化合物を含み、橄欖石構造を有する該化合物のうちの少なくとも1つの化合物は、一般式LiMPO4を含み、Mは、Mnと、10%までの1つ以上のその他の金属とを含む、正極材料。
【請求項2】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、Feを含む、請求項1に記載の正極材料。
【請求項3】
前記正極材料は、Mn3+/Mn2+対に対応する、リチウムに対する約4.1Vの少なくとも1つの放電プラトーを有する、請求項1に記載の正極材料。
【請求項4】
橄欖石構造を有する前記化合物は、ナノメートルスケールの粒子サイズを有する粒子に含まれる、請求項1に記載の正極材料。
【請求項5】
橄欖石構造を有する前記化合物は、ジグザグ鎖および線状鎖によって規定される複数の平面を有し、リチウム原子は、8面体サイトの1つおきの平面の線状鎖を占める、請求項1に記載の正極材料。
【請求項6】
M原子は、8面体サイトの1つおきの平面の8面体サイトのジグザグ鎖を占める、請求項5に記載の正極材料。
【請求項7】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、Tiを含む、請求項1に記載の正極材料。
【請求項8】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、2つの電子殻によって充填された金属を含む、請求項1に記載の正極材料。
【請求項9】
前記10%までの1つ以上のその他の金属は、少なくとも2つのさらなる金属を含む、請求項1に記載の正極材料。
【請求項10】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、Coを含む、請求項1に記載の正極材料。
【請求項11】
Mは、Mnと、10%までの1つ以上のその他の遷移金属とを含む、請求項1に記載の正極材料。
【請求項12】
正極を備えた再充電電気化学セルであって、該正極は1つ以上の化合物を含み、橄欖石構造を有する該化合物のうちの少なくとも1つの化合物は、一般式LiMPO4を含み、Mは、Mnと、10%までの1つ以上のその他の金属とを含む、再充電電気化学セル。
【請求項13】
橄欖石構造を有する前記化合物は、ナノメートルスケールの粒子サイズを有する粒子に含まれる、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項14】
前記正極材料は、Mn3+/Mn2+対に対応する、リチウムに対する約4.1Vの少なくとも1つの放電プラトーを有する、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項15】
Mは、Mnと、10%までの1つ以上のその他の遷移金属とを含む、請求項14に記載の再充電電気化学セル。
【請求項16】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、Feを含む、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項17】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、Tiを含む、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項18】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、Coを含む、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項19】
前記1つ以上のその他の金属のうちの1つは、2つの電子殻によって充填された金属を含む、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項20】
前記10%までの1つ以上のその他の金属は、少なくとも2つのさらなる金属を含む、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項21】
橄欖石構造を有する前記化合物は、ジグザグ鎖および線状鎖によって規定される複数の平面を有し、リチウム原子は、8面体サイトの1つおきの平面の線状鎖を占める、請求項12に記載の再充電電気化学セル。
【請求項22】
M原子は、8面体サイトの1つおきの平面の8面体サイトのジグザグ鎖を占める、請求項21に記載の再充電電気化学セル。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−43811(P2012−43811A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250808(P2011−250808)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【分割の表示】特願2008−321661(P2008−321661)の分割
【原出願日】平成9年4月23日(1997.4.23)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【分割の表示】特願2008−321661(P2008−321661)の分割
【原出願日】平成9年4月23日(1997.4.23)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】
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