説明

2段クリック機能付きスイッチ

【課題】高寿命、低コストの製品を提供すると共に、組立不良を低減して品質を向上し、小型でショートストロークの2段クリック機能付きスイッチを提供する。
【解決手段】2段クリック機能付きの接点ばね(1)と平板または箱型のスイッチ基台(11)とを組み合わせて、2段クリック機能付きスイッチ(10)を構成する。接点ばね(1)は、1枚の円形ばね材(2)に長孔(3)を形成し、長孔(3)よりも外側に皿状ないしドーム形状の第1の可動接点部(4)を形成すると共に、長孔(3)よりも中心側にドーム形状の第2の可動接点部(5)を形成し、隣り合う長孔(3)の間を連結部(9)によりつなぎ、連結部(9)の凹面側の突起状部分に第1の可動接点(6)を形成し、また第2の可動接点部(5)の凹面側中央に第2の可動接点(7)を形成し、円形ばね材(2)の外周端に2個以上の支持片(8)を中心角に対し等間隔に形成してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオ機器、ビデオ機器、通信機器、測定器、その他の電気機器、カメラなどの光学機器に信号入力部として組み込まれる2段階のクリック機能付きのスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、1枚の接点ばね(第1可動接点)で2段階の感触(クリック感)を得ることを開示している。その特許文献1の第1可動接点の形状では、中央の円板部と外周縁のリング状枠部との連結片が中央の円板部の直径線上に狭い幅のものとして2個しか存在しない。このため、寿命試験によると、荷重、クリック率が増加するにつれて、連結片の根本部分にクラックが発生しやすく、寿命が短いという欠点があった。
【0003】
また、特許文献1の技術によると、外周縁のリング状枠部は、中心に対して90度ごとに4個、または180度ごとに2個の絞り部を有している。それらの絞り部は、平板状のリング状枠部に半径方向のビードを形成し、ビードの形成位置でリング状枠部の材料を周方向に引き寄せ、ドーナツ形状のリング状枠部の全体を歪ませて、リング状枠部にクリック機能を持たせている。その技術では、ビードの形成によって、連結片が第1可動接点の外周底面より高くなるため、一段目の動作ストロークが長く、繰り返し疲労に弱いという欠点もある。
【0004】
また、特許文献2は、2枚ばね式の2段スイッチ(2段クリックばね)を開示している。その2段クリックばねでは、重ね合わせるための構造上、接触部の突起形状を設けたり、位置ずれしないような形状にしたりするため、複雑な形状にする必要があった。また2枚ばねを組み立てるため、加工工数がかかり、これがコストアップの要因となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−352664号公報
【特許文献2】特開2005−259462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の解決課題は、従来の1枚の接点ばねに比べて高寿命で、低コストの製品を提供すると共に、2枚ばね式の2段クリックばねに比べ、低コスト、組立不良を低減して品質を向上し、小型でショートストロークの接点ばねの製作を可能として、小型機器に利用しやすい2段クリック機能付きのスイッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題のもとに、本発明は、2段クリック機能付きの接点ばね(1)と平板型または箱型のスイッチ基台(11)とを組み合わせて、2段クリック機能付きスイッチ(10)を構成している。
【0008】
接点ばね(1)は、1枚の円形ばね材(2)に2個以上の円弧状の長孔(3)を中心角に対して等間隔で同一円の円周方向に不連続として形成し、長孔(3)よりも外側の円形ばね材(2)の部分を皿状ないしドーム形状に形成して、反転復帰可能な第1の可動接点部(4)を形成すると共に、長孔(3)よりも中心側の円形ばね材(2)の部分を第1の可動接点部(4)と同じ向きの凹凸としてドーム形状に形成して、反転復帰可能な第2の可動接点部(5)を形成し、隣り合う長孔(3)の間で第1の可動接点部(4)と第2の可動接点部(5)とを連結部(9)によってつなぎ、連結部(9)の凹面側の突起状部分により第1の可動接点(6)を形成し、また、第2の可動接点部(5)の凹面側中央に第2の可動接点(7)を形成し、円形ばね材(2)の外周端に2個以上の支持片(8)を中心角に対し等間隔に形成して、構成されている。そして、第1の可動接点部(4)の反転荷重は、第2の可動接点部(5)の反転荷重よりも小さく設定され、かつ第1の可動接点部(4)の復帰荷重は、第2の可動接点部(5)の復帰荷重よりも小さく設定されている(請求項1)。
【0009】
また、スイッチ基台(11)は、上記の接点ばね(1)に向き合う面において、第1の可動接点部(4)に対応する位置に第1の固定接点(12)を有し、第2の可動接点部(5)に対応する位置に第2の固定接点(13)を有している(請求項1)。
【0010】
上記の2段クリック機能付きスイッチ(10)において、連結部(9)および第1の可動接点(6)は、隣合う2つの支持片(8)の円周方向中間位置に形成されている(請求項2)。第1の可動接点部(4)は、異なる形状の複数の皿状ないしドーム形状から構成されており、異なる形状の境界位置で円形ばね材(2)の中央位置を中心とする円形の曲げ部(4a)を形成している(請求項3)。
【0011】
上記の2段クリック機能付きスイッチ(10)において、第2の可動接点部(5)は、異なる形状の複数のドーム形状の組み合わせ、およびドーム形状と円錐面との異なる形状の組み合わせの何れかにより構成されており、異なる形状の境界位置で円形ばね材(2)の中央位置を中心とする円形の曲げ部(5a)を形成している(請求項4)。長孔(3)および支持片(8)は、中心角に対し等間隔で同じ位相のもとに4個形成されている(請求項5)。
【0012】
上記の2段クリック機能付きスイッチ(10)において、スイッチ基台(11)は、平板型として構成されており、附属部品としてカバーシート(14)を具備しており、2段クリック機能付きの接点ばね(1)は、平板型のスイッチ基台(11)とカバーシート(14)との間で保持される(請求項6)。
【0013】
上記の2段クリック機能付きスイッチ(10)において、スイッチ基台(11)は、箱型として構成されており、2段クリック機能付きの接点ばね(1)は、箱型のスイッチ基台(11)の内部で保持されている(請求項7)。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る2段クリック機能付きスイッチ(10)では、次の効果が得られる。1枚の円形ばね材(2)によって、反転復帰可能な第1の可動接点部(4)および反転復帰可能な第2の可動接点部(5)が皿状ないしドーム形状として形成され、それぞれについて独立にクリック動作が得られるから、既存の2枚ばねを使用した2段クリック接点よりも、部品点数が減少し、製品が低コストとなる(請求項1)。
【0015】
また、1つのスイッチ基台(11)に、第1の固定接点(12)および第2の固定接点(13)があり、それらが同じ面にあって、接点ばね(1)の変形方向、すなわちスイッチ基台(11)の面に垂直な方向に変位しないから、2段クリック動作のときのストロークに変化がなく、安定な2段クリック動作が長い期間にわたり確保できる(請求項1)。
【0016】
既存の2枚ばねを使用した2段クリック接点では、組み合わせ時の位置ずれを防止するために、ぞれを位置決めする手段が必要であった。これに対して、本発明では、複数の連結部(9)の存在によって、第1の可動接点部(4)と第2の可動接点部(5)とが1枚の円形ばね材(2)によって位置決め状態で連結されるため、相対的な位置ずれが発生することはなく、また連結部(9)が2個以上あり、その幅も大きくできるから、それぞれの連結部分に作用する曲げ応力や負荷が緩和され、高寿命化が図られる(請求項1)。
【0017】
従来の例によると、一段目の動作ストロークを短くするために、水平方向で曲げて寄せ、絞り部によりドーナツ形状部の全体を歪ませて、クリック感触を得ている。これに対して本発明では、1枚の円形ばね材(2)から第1の可動接点部(4)および第2の可動接点部(5)を皿状ないしドーム形状として形成するだけで、それぞれ独立にクリック動作を行わせているから、構成が簡単になり、しかも小型でショートストロークの製品の製作も容易となる(請求項1)。
【0018】
複数の円弧状の長孔(3)が第1の可動接点部(4)と第2の可動接点部(5)とを材料の変形機能上から分離しているため、それらの2つのクリック動作が独立して段階的に得られる。また、第1の可動接点部(4)と第2の可動接点部(5)との間の反転荷重、復帰荷重の設定によって、2つのクリック動作(反転動作・復帰動作)に優先付けが行われるため、スイッチ動作の優先順位が確実となる(請求項1)。
【0019】
隣合う2つの支持片(8)の円周方向の中間位置に、第1の可動接点(6)および連結部(9)が形成されていると、2つの支持片(8)の間で第1の可動接点部(4)がスイッチ操作時の力でたわみ変形しやすいため、クリック感が良くなり、固定接点(12)に対する第1の可動接点(6)の接触も良好となる(請求項2)。
【0020】
第1の可動接点部(4)や第2の可動接点部(5)が単一の形状であれば、それらが単純な形状となるため、その製作が容易となる。これに対して、第1の可動接点部(4)や第2の可動接点部(5)が複数の異なる形状のものとして形成されていると、異なる形状の境界位置に円形の曲げ部(4a、5a)が形成されるため、それらの曲げ部(4a、5a)によって第1の可動接点部(4)および第2の可動接点部(5)の剛性が調節でき、クリック動作のための反転力、復帰力の設定にも柔軟に対応できる(請求項3および請求項4)。
【0021】
長孔(3)および支持片(8)が中心角に対し等間隔で同じ位相のもとに4個形成されていると、全体のバランスがよく、スイッチ操作のときに、斜め方向の力や中心から外れた力が作用したときでも、安定したクリック動作、スイッチング動作が期待できる(請求項5)。
【0022】
上記の2段クリック機能付きスイッチ(10)において、2段クリック機能付きの接点ばね(1)が平板型のスイッチ基台(11)とカバーシート(14)との間で保持されていると、2段クリック機能付きスイッチ(10)が薄型のものとして構成でき、しかもカバーシート(14)が内部の接点ばね(1)を包み込むため、内部の接触部分が水の浸入やごみの侵入などから保護され、スイッチの使用環境の悪い位置での使用も可能となる(請求項6)。
【0023】
上記の2段クリック機能付きスイッチ(10)において、スイッチ基台(11)が箱型として構成されていると、カメラのシャターボタンのスイッチとして使用するときなど、組み込み先の機器の基板やフレームに対して取付けや組み込みが容易となり、箱型のスイッチ基台(11)の内部でスイッチングに必要な空間も周囲の部品に影響されず確保できる(請求項7)。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の2段クリック機能付きスイッチの接点ばねの平面図である。
【図2】薄型の2段クリック機能付きスイッチに用いられる平板型のスイッチ基台の平面図である。
【図3】接点ばねを平板型のスイッチ基台に組み込んで、薄型の2段クリック機能付きスイッチを組み立てた状態を示し、図1のA−A矢印方向に対応する位置での断面図である。
【図4】図1のB−B矢印方向に対応する位置において、薄型の2段クリック機能付きスイッチの動作前の説明図であり、(1)はスイッチ動作前の断面図、(2)はスイッチ動作前の回路図である。
【図5】図1のB−B矢印方向に対応する位置において、薄型の2段クリック機能付きスイッチの説明図であり、(1)は1段目のスイッチ動作時の断面図、(2)は1段目のスイッチ動作時の回路図である。
【図6】図1のB−B矢印方向に対応する位置において、薄型の2段クリック機能付きスイッチの説明図であり、(1)は2段目のスイッチ動作時の断面図、(2)は2段目のスイッチ動作時の回路図である。
【図7】箱型の2段クリック機能付きスイッチに用いられる箱型のスイッチ基台の平面図である。
【図8】接点ばねを箱型のスイッチ基台に組み込んで、箱型の2段クリック機能付きスイッチを組み立てた状態を示し、(1)はスイッチ動作前の断面図、(2)はスイッチ動作前の回路図である。
【図9】接点ばねを箱型のスイッチ基台に組み込んで、箱型の2段クリック機能付きスイッチを組み立てた状態を示し、(1)は1段目のスイッチ動作時の断面図、(2)は1段目のスイッチ動作時の回路図である。
【図10】接点ばねを箱型のスイッチ基台に組み込んで、箱型の2段クリック機能付きスイッチを組み立てた状態を示し、(1)は2段目のスイッチ動作時の断面図、(2)は2段目のスイッチ動作時の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、図1の2段クリック機能付きの接点ばね1を主要部とし、実施例1では、接点ばね1に図2の平板型のスイッチ基台11を組み合わせて、薄型の2段クリック付機能きスイッチ10を構成しており、また、実施例2では、接点ばね1に図7の箱型のスイッチ基台11を組み合わせて、箱型の2段クリック付機能きスイッチ10を構成している。
【実施例1】
【0026】
図1ないし図6は、薄型の2段クリック付機能きスイッチ10を示している。図1および図3において、接点ばね1は、厚み0.04〜0.1mmの程度で銀またはニッケルメッキのステンレス板を直径3〜6mmの円形に打ち抜いた1枚の円形ばね材2により構成されている。円形ばね材2は、2個以上、好ましくは4個の円弧状の長孔3を中心角に対し等間隔で円周方向に不連続として有しており、これらの長孔3よりも外側の部分で皿状ないしドーム形状の反転復帰可能な第1の可動接点部4を形成すると共に、長孔3よりも中心側の部分で第1の可動接点部4と同じ向きの凹凸のドーム形状の反転復帰可能な第2の可動接点部5を形成している。
【0027】
円弧状の長孔3、第1の可動接点部4および第2の可動接点部5は、通常、円形ばね材2の打ち抜き加工の際に、打ち抜きまたは曲げ加工によって形成されるが、円形ばね材2の打ち抜き加工の後の打ち抜きまたは曲げ加工によって形成することもできる。曲げ加工のときに、第1の可動接点部4は、単一の皿状ないしドーム形状、または異なる形状の複数の皿状ないしドーム形状から構成されている。また、第2の可動接点部5は、単一のドーム形状により形成されるか、または異なる形状の複数のドーム形状の組み合わせ、もしくはドーム形状と円錐面との異なる形状の組み合わせにより構成されている。
【0028】
図示の例において、第1の可動接点部4は、異なる形状の2つの皿状面により形成されているため、それらの境界位置にゆるやかな1つの曲げ部4aが形成されている。また第2の可動接点部5は、裾部の円錐面と頂部のドーム形状とを組み合わせにより形成されているため、それらの境界位置に1つの曲げ部5aが形成されている。これらの曲げ部4a、5aは、円形ばね材2の中央位置を中心とする円形として現れており、図1上で点線により表されている。
【0029】
曲げ部4a、5aは、円形ばね材2の剛性を高めるため、皿状の第1の可動接点部4およびドーム形状の第2の可動接点部5を凸側から押して、それらを反転させるときの荷重、すなわち反転荷重を加減するときに有効である。通常、これらの曲げ部4a、5aの形成によって、反転荷重は、曲げ部4a、5aのないものよりも大きくなる。なお、長孔3が存在しているため、曲げ加工による曲げ部4a、5aの形成は、長孔3のないときよりも容易となる。
【0030】
第1の可動接点部4と第2の可動接点部5とは、隣り合う長孔3の間で連結部9によってつながっている。この例の場合、連結部9は、4つの長孔3に対応して4個あり、それらの幅(隣り合う長孔3の間隔)は、長孔3の長さを増減することによって調節できる。なお、後述するように、連結部9は、スイッチング動作(クリック動作)のときに折り曲がり部分となり、折り曲がりによって凹面側に突出する突起状部分により、4個の第1の可動接点6を形成している。なお、連結部9の曲げによりその部分に繰り返し疲労が起きやすいことから、連結部9の幅は、耐用年数やスイッチング動作の回数などを考慮して設定される。
【0031】
また、第2の可動接点部5は、凹面側の中央部分に、第2の可動接点7を形成している。この第2の可動接点7は、図示のように、凹面の平坦なままの形態とするか、あるいは図示しないが、凹面側に凸の1または2以上の突起状のものとして形成する。
【0032】
図示の例において、皿状の第1の可動接点部4は、凹面側で大きな直径の曲面となっており、これに対し、ドーム形状の第2の可動接点部5は、第1の可動接点部4の中心位置にあって、凹面側で小さな直径の曲面となっている。このため、第2の可動接点部5の剛性は、第1の可動接点部4の剛性よりも大きくなっている。したがって、第1の可動接点部4の反転荷重は、第2の可動接点部5の反転荷重よりも小さく設定されており、かつ第1の可動接点部4の復帰荷重は、第2の可動接点部5の復帰荷重よりも小さく設定されている。なお、前記のように、これらの荷重の設定は、曲げ部4a、5aの形成によっても調節できる。
【0033】
円形ばね材2の外周端は、2個以上、好ましくは4個の支持片8を中心角に対して等間隔に形成している。これらの支持片8は、スイッチ基台11の上面に接し、第1の可動接点6や、第2の可動接点7をスイッチ基台11の第1の固定接点12や、第2の固定接点13に接しない状態として支持する。連結部9は、スイッチング動作のときに、第1の可動接点部4の変形を促すために、隣合う2つの支持片8の円周方向の中間に位置し、2つの支持片8の間で形成されている。
【0034】
つぎに、図2において、平板型のスイッチ基台11は、その上面で第1の固定接点12、第2の固定接点13を有しており、スイッチ基台11の附属部品としてカバーシート14を具備している。カバーシート14は、絶縁性のフイルムシート、ゴムシートなどの粘着シートで構成され、スイッチ基台11の周縁に粘着や接着などの固着手段によって固定される。
【0035】
第1の固定接点12は、四角形の1つの対角線上で2分割され、一端をそれぞれ第1の可動接点6に対応する位置で円形として形成され、他端をスイッチ基台11から突出させ、突出部分で第1の端子15を形成している。また、第2の固定接点13は、四角形の他の1つの対角線上で連続しており、中心位置で第2の可動接点7に対応する位置で円形を形成し、両端をスイッチ基台11から突出させて、突出部分で第2の端子16を形成している。第1の端子15、第2の端子16は、図4ないし図6の(2)、図8ないし図10の(2)において、回路上でa、b、cとしても表示されている。
【0036】
図3は、接点ばね1を平板型のスイッチ基台11に組み込んで、薄型(シート型)の2段クリック機能付きスイッチ10を構成した状態を示している。接点ばね1は、スイッチ基台11の面に対して凹面を対向させて置かれる。このとき、第1の可動接点6、第2の可動接点7は、それぞれ第1の固定接点12、第2の固定接点13に対して非接触の状態で向き合っている。
【0037】
この状態で、カバーシート14は、スイッチ基台11の附属部品としてスイッチ基台11の周縁に粘着や接着などの固着手段によって固定される。なお、通常、カバーシート14は、前記の通り、粘着シートであり、接点ばね1の凸面に粘着面で接着され、その周縁でスイッチ基台11に接着する。このため、接点ばね1とカバーシート14との間に、相対的なずれはない。この結果、接点ばね1は、スイッチ基台11とカバーシート14との間で動き止め状態で保持され、カバーシート14は、内部の接点ばね1を包み込み、水の浸入やごみの侵入などから保護する。
【0038】
図4ないし図6は、接点ばね1を平板型のスイッチ基台11に組み込んで、薄型(シート型)の2段クリック機能付きスイッチ10を構成したときの動作状態を示している。図4の(1)のように、接点ばね1は、スイッチ基台11の面に対して凹面を対向させて置かれる。このときに、第1の可動接点6、第2の可動接点7は、それぞれ第1の固定接点12、第2の固定接点13に対して非接触の状態で向き合っているから、それらの接続状態は、図4の(2)のように、a、b、cの間で電気的に開放している。
【0039】
図5の(1)のように、操作者が第2の可動接点部5に対して矢印方向から力を加え、その力を次第に増加させて行くと、まず、第1の可動接点部4は、偏平な状態に変形し、やがて凹凸の向きを反転させ、第1の可動接点6を第1の固定接点12に接触させる。この反転のときに、第1のクリック動作(1段目の動作)が起こり、操作者は、力の急変によってクリック感を得る。この第1のクリック動作によって、図5の(2)のように、a、cの間が電気的に導通状態となる。
【0040】
図6の(1)のように、引き続き操作者が矢印方向の力を加えて行くと、つぎに、第2の可動接点部5は、偏平な状態に変形し、やがて凹凸の向きを反転して、第2の可動接点7を第2の固定接点13に接触させる。この反転によっても第2のクリック動作(2段目の動作)が起こり、操作者は、力の急変によってクリック感を得る。この第2のクリック動作によって、図6の(2)のように、a、b、cの間が電気的に導通状態となる。
【0041】
このように、2段クリック機能付き接点スイッチ10は、その名の通り、接点ばね1の凹凸の向きの反転によって2段階的にクリック動作(第1のクリック動作および第2のクリック動作)をする。このクリック動作の過程で、第1の可動接点部4の反転荷重は、第2の可動接点部5の反転荷重よりも小さく設定されているから、反転動作は、常時、上記の順序となる。
【0042】
図示の例によると、長孔3および支持片8が中心角に対し等間隔で同じ位相のもとに4個形成されているから、全体のバランスがよく、スイッチ操作のときに、斜め方向の力や中心から外れた力が作用したときでも、安定したクリック動作、スイッチング動作が期待できる。
【0043】
ここで操作者が第2の可動接点部5に対して矢印方向の力を弱めていくと、先ず、第2の可動接点部5が復帰してもとの状態に戻り、次に、第1の可動接点部4が復帰してもとの状態に戻る。この過程で、第2の可動接点7が第2の固定接点13から離れ、つぎに第1の可動接点6が第1の固定接点12から離れる。このようにして、2段クリック機能付き接点スイッチ10の接点ばね1は、図4の(1)のもとの状態に復帰する。
【0044】
2段階的なクリック動作時の反転荷重や、復帰荷重は、第1の可動接点部4の凹曲面や、第2の可動接点部5の凹曲面の形状、曲げ部4a、5aの曲げ角度などによって調節できる。第1の可動接点部4の凹曲面や、第2の可動接点部5の凹曲面の設定によって、矢印方向のストロークも調節できるが、通常、全体的なストロークは、支持片8の高さ(下向きの突出寸法)を変更することによって行う。
【実施例2】
【0045】
つぎに、図7ないし図10は、本発明に係る箱型の2段クリック機能付きスイッチ10を示している。箱型の2段クリック機能付きスイッチ10は、図1の2段クリック機能付きの接点ばね1を主要部として利用し、この接点ばね1を図7の箱型のスイッチ基台11の内部に組み合わせて構成されている。
【0046】
図7のように、スイッチ基台11は、プラスチックなどの絶縁体により上面開口型の箱として成形されており、図2と同様に、内底面に第1の固定接点12、第2の固定接点13を有しており、それらの第1の端子15、第2の端子16は、箱の側面から突出して、図8ないし図10の(2)のa、b、cに対応している。そして、接点ばね1は、箱型のスイッチ基台11の内部に収納され、第1の固定接点12、第2の固定接点13に対して接離する。
【0047】
図8ないし図10の(1)のように、接点ばね1は、箱型のスイッチ基台11の内部に納められ、図示しないが、止めリングなどによって保持されか、または接点ばね1の凸面に柔軟なカバーや剛体のスイッチボタンなどのスイッチトップのはめ込みによって外れないように保持される。
【0048】
箱型の2段クリック付きスイッチ10でも、薄型の2段クリック機能付きスイッチ10と同様に動作する。図8の(1)のスイッチ動作前の状態のときに、第1の可動接点6、第2の可動接点7は、それぞれ第1の固定接点12、第2の固定接点13に対して非接触の状態で向き合っているから、それらの接続状態は、図8の(2)のように、a、b、cの間で電気的に開放している。
【0049】
図9の(1)のように、操作者が第2の可動接点部5に対し矢印方向から力を加えると、第1のクリック動作(1段目の動作)が起こり、第1の可動接点6は第1の固定接点12に接触する。この動作によって、図9の(2)のように、a、cの間が電気的に導通状態となる。
【0050】
図10の(1)のように、引き続き操作者が矢印方向の力を加えて行くと、つぎに、第2のクリック動作(2段目の動作)が起こり、第2の可動接点7は、第2の固定接点13に接触する。このとき、図10の(2)のように、a、b、cの間が電気的に導通状態となる。
【0051】
ここで操作者が第2の可動接点部5に対して矢印方向の力を弱めていくと、先ず、第2の可動接点部5が復帰し、次に、第1の可動接点部4が復帰してもとの状態に戻る。このようにして、接点ばね1は、もとの状態に復帰する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る2段クリック機能付きスイッチ10は、各種機器のプッシュスイッチとして広く用いられるが、特に、カメラなどのシャターボタンのように、確実な2段クリック機能(2段動作)を必要とする用途に適する。
【符号の説明】
【0053】
1 2段クリック機能付き接点ばね
2 円形ばね材
3 長孔
4 第1の可動接点部 4a 曲げ部
5 第2の可動接点部 5a 曲げ部
6 第1の可動接点
7 第2の可動接点
8 支持片
9 連結部
10 2段クリック機能付きスイッチ
11 スイッチ基台
12 第1の固定接点
13 第2の固定接点
14 カバーシート
15 第1の端子
16 第2の端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2段クリック機能付きの接点ばね(1)とスイッチ基台(11)とを組み合わせて構成されており、
上記2段クリック機能付きの接点ばね(1)は、1枚の円形ばね材(2)に2個以上の円弧状の長孔(3)を中心角に対して等間隔で同一円の円周方向に不連続として形成し、長孔(3)よりも外側の円形ばね材(2)の部分を皿状ないしドーム形状に形成して、反転復帰可能な第1の可動接点部(4)を形成すると共に、長孔(3)よりも中心側の円形ばね材(2)の部分を第1の可動接点部(4)と同じ向きの凹凸としてドーム形状に形成して、反転復帰可能な第2の可動接点部(5)を形成し、隣り合う長孔(3)の間で第1の可動接点部(4)と第2の可動接点部(5)とを連結部(9)によってつなぎ、連結部(9)の凹面側の突起状部分により第1の可動接点(6)を形成し、また、第2の可動接点部(5)の凹面側中央に第2の可動接点(7)を形成し、円形ばね材(2)の外周端に2個以上の支持片(8)を中心角に対し等間隔に形成してなり、さらに、第1の可動接点部(4)の反転荷重を第2の可動接点部(5)の反転荷重よりも小さく設定し、かつ第1の可動接点部(4)の復帰荷重を第2の可動接点部(5)の復帰荷重よりも小さく設定してなり、
上記スイッチ基台(11)は、2段クリック機能付きの接点ばね(1)に向き合う面において、第1の可動接点部(4)に対応する位置に第1の固定接点(12)、第2の可動接点部(5)に対応する位置に第2の固定接点(13)をそれぞれ有する、ことを特徴とする2段クリック機能付きスイッチ(10)。
【請求項2】
隣合う2つの支持片(8)の円周方向中間位置に、連結部(9)および第1の可動接点(6)を形成する、ことを特徴とする請求項1記載の2段クリック機能付きスイッチ(10)。
【請求項3】
第1の可動接点部(4)を異なる形状の複数の皿状ないしドーム形状から構成し、異なる形状の境界位置で円形ばね材(2)の中央位置を中心とする円形の曲げ部(4a)を形成する、ことを特徴とする請求項1、または請求項2記載の2段クリック機能付きスイッチ(10)。
【請求項4】
第2の可動接点部(5)を異なる形状の複数のドーム形状の組み合わせ、およびドーム形状と円錐面との異なる形状の組み合わせの何れかにより構成し、異なる形状の境界位置で円形ばね材(2)の中央位置を中心とする円形の曲げ部(5a)を形成する、ことを特徴とする請求項1、請求項2、または請求項3記載の2段クリック機能付きスイッチ(10)。
【請求項5】
長孔(3)および支持片(8)を中心角に対し等間隔で同じ位相のもとに4個形成する、ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、または請求項4記載の2段クリック機能付きスイッチ(10)。
【請求項6】
スイッチ基台(11)を平板型として構成し、スイッチ基台(11)にカバーシート(14)を附属させておき、スイッチ基台(11)とカバーシート(14)との間で2段クリック機能付きの接点ばね(1)を保持する、ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、または請求項5記載の2段クリック機能付きスイッチ(10)。
【請求項7】
スイッチ基台(11)を箱型として構成し、2段クリック機能付きの接点ばね(1)を箱型のスイッチ基台(11)の内部で保持する、ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、または請求項5記載の2段クリック機能付きスイッチ(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−177044(P2010−177044A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18422(P2009−18422)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(391011696)不二電子工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】