説明

2液反応型ポリウレタン樹脂組成物及びこれを硬化させてなるポリウレタン樹脂

【課題】 主剤成分の相溶性及び貯蔵安定性が優れた2液反応型ポリウレタン樹脂組成物を提供することである。また、耐水性と機械特性に優れたポリウレタン樹脂を与える2液反応型ポリウレタン樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】
主剤(A)と硬化剤(B)からなる2液反応型ポリウレタン樹脂組成物であって、前記主剤(A)が、(a)ひまし油系ポリオール、(b)芳香族モノアミンポリオール、並びに(c)ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及びこれらのカルボジイミド変性体からなる群から選ばれた有機イソシアネート化合物を反応させてなるウレタンプレポリマーを含有し、前記硬化剤(B)が、(d)ひまし油系ポリオール、(e)ポリテトラメチレンエーテルグリコール、(f)アミンポリオール、及び(g)ポリアミンを含有している2液反応型ポリウレタン樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液反応型ポリウレタン樹脂組成物及びこれを硬化させてなるポリウレタン樹脂に関し、より詳細には、優れた貯蔵安定性、相溶性及び耐水性を有する2液反応型ポリウレタン樹脂組成物及びこれを硬化させてなるポリウレタン樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
2液反応型ポリウレタン樹脂は、機械塗装を行うことにより、広域面積の施工において大幅な人員削減とコスト削減とを図ることができるため、スプレー防水材、スプレー床材、注型エラストマー等に広く利用されている。
【0003】
従来、これらの2液反応型ポリウレタン樹脂には、イソシアネートを主成分とする主剤成分と、アミン化合物を主成分とした硬化剤成分とが用いられており、得られるポリウレタン樹脂はイソシアネート化合物とアミン化合物の反応により生成するウレア結合を主骨格とするものである。しかしながら、アミン化合物を大量に使用するために硬化速度が速くなってしまい、平滑な樹脂表面が得られないうえ、ウレア結合の増加に伴って樹脂が脆くなってしまうという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、硬化剤成分としてアミン化合物とポリアルキレンポリオールとを併用することが報告されているが(特許文献1)、これら2成分のイソシアネート化合物との反応速度を比較すると、アミン化合物の反応速度の方が極端に大きいために反応が均一に進行せず、均一な樹脂が得られ難いなどの問題があった。
【0005】
また、これを解決するために、ポリアルキレンポリオールの末端にエチレンオキサイドをブロック付加して1級水酸基とすることにより、イソシアネートとの反応性を向上させることが考えられるが、このエチレンオキサイドからなる構造は親水性が非常に高いために、塗膜の耐水性が低下する傾向にあり、浸水条件で使用する場合には、樹脂の膨潤や被着体からの剥離が問題となっている。
【0006】
さらに、ひまし油系ポリオールとポリイソシアネート化合物からなるウレタンプレポリマーを含有する主剤と、ひまし油系ポリオールとポリアミン化合物とを含有する硬化剤成分とを用いることによって、高い耐水性が得られることが報告されている(特許文献2)。しかしながら、ポリアミン化合物を多量に配合しているために反応が不均一に進行しやすく、樹脂表面の平滑性が失われる傾向にある。また、上記ウレタンプレポリマーと未反応のポリイソシアネート化合物との相溶性が悪いため、ひまし油系ポリオールの平均水酸基数が高くなると、未変性イソシアネートの析出によって主剤が白濁してしまい、貯蔵安定性が低下してしまう等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−323253号公報(請求項2)
【特許文献2】特開2001−181567号公報(請求項2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の2液反応型スプレー塗料の上記問題点を解決するために為されたものであり、本発明の目的は、2液反応型ポリウレタン樹脂組成物の一方の成分である主剤の相溶性及び貯蔵安定性が優れた2液反応型ポリウレタン樹脂組成物を提供することである。また、耐水性と機械特性に優れたポリウレタン樹脂を与える2液反応型ポリウレタン樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の2液反応型ウレタン組成物は、主剤(A)と硬化剤(B)からなる2液反応型ポリウレタン樹脂組成物であって、前記主剤(A)が、(a)ひまし油系ポリオール、(b)芳香族モノアミンポリオール、及び(c)ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及びこれらのカルボジイミド変性体なる群から選ばれた有機イソシアネート化合物を反応させてなるウレタンプレポリマーを含有し、前記硬化剤(B)が、(d)ひまし油系ポリオール、(e)ポリテトラメチレンエーテルグリコール、(f)アミンポリオール、及び(g)ポリアミンを含有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、主剤成分の相溶性及び貯蔵安定性に優れた2液反応型ポリウレタン樹脂組成物が提供される。また、耐水性と機械特性に優れたポリウレタン樹脂を与える2液反応型ポリウレタン樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の2液反応型ポリウレタン樹脂組成物は、主剤(A)と硬化剤(B)とを混合することにより、硬化を行うものである。
【0012】
本発明における主剤(A)は、(a)ひまし油系ポリオールと、(b)芳香族モノアミンポリオールと、(c)ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及びこれらのカルボジイミド変性体からなる群から選ばれた有機イソシアネート化合物とを混合し、反応させたウレタンプレポリマーを含有している。
【0013】
ここで、本発明における主剤(A)に使用する(a)ひまし油系ポリオールとは、ひまし油、ひまし油とポリオールとのエステル交換反応生成物、ひまし油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物、及びこれらにアルキレンオキサイドを付加してなるポリオールなどであり、ひまし油及び/又はひまし油脂肪酸を原料として得られる末端水酸基を有するポリオールである。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
(a)ひまし油系ポリオールの配合量は、主剤(A)100重量部に対して、10〜70重量部、より好ましくは20〜50重量部である。(a)ひまし油系ポリオールの配合量が10重量部より少なくなると、主剤の貯蔵安定性が低下する傾向にあり、また、(a)ひまし油系ポリオールが70重量部より多くなると、主剤の粘度が高くなる傾向にある。
【0015】
また、本発明における主剤(A)に使用される(b)芳香族モノアミンポリオールは、芳香族モノアミンに炭素数が2〜4のアルキレンオキサイドを付加したものである。
【0016】
芳香族モノアミンとしては、アニリンのほか、炭化水素基や、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子など、ウレタン化反応に関与しない置換基をベンゼン環上に有するアニリン誘導体が挙げられる。
【0017】
また、炭素数が2〜4のアルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられる。中でも、耐水性に優れることから、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドを用いるのがより好ましい。
【0018】
さらに、上記炭素数が2〜4であるアルキレンオキサイドの付加モル数は、芳香族モノアミン1モルに対して平均2〜10モルであることが好ましい。この範囲より小さいとウレタンプレポリマーの貯蔵安定性が低下しやすくなり、この範囲より大きいと、主剤(A)全体の相溶性が得られ難くなる。
【0019】
(b)芳香族モノアミンのポリオールの配合量は、主剤(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。(b)芳香族アミンポリオールの配合量が0.1重量部より少なくなると、相溶性向上効果が十分に得られず、特に低温条件において主剤(A)の白濁が起こりやすくなる。また、芳香族アミンポリオールが10重量部より多くなると、主剤(A)が高粘度になる傾向にある。
【0020】
本発明における主剤(A)に使用する(c)有機イソシアネート化合物とは、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、又はこれらのカルボジイミド変性体であり、これらの1種又は2種以上の混合物も(c)有機イソシアネート化合物として使用することができる。
【0021】
本発明の主剤(A)における(c)有機イソシアネート化合物の配合量は、NCO/OH当量比が2〜10となるように決めることが好ましく、3〜7であることがより好ましい。NCO/OH当量比が2より小さくなると、主剤(A)の粘度が高くなる傾向にあり、混合不良を起こし易くなる。また、NCO/OH当量比が10より大きいと、未反応のイソシアネートの割合が大きくなり、未反応のイソシアネートの結晶化や、相溶性の低下により主剤(A)の白濁が起こりやすくなる。
【0022】
本発明における主剤(A)の粘度は、25℃において3000mPa・s以下であることが好ましい。25℃における粘度が3000mPa・sを超えると、硬化剤(B)との混合に使用するポンプがキャビテーションを起こし易くなるため好ましくない。
【0023】
本発明における主剤(A)は、白濁を生じていないことが必要である。白濁を生じている場合、主剤(A)成分の分離や、硬化剤(B)と反応させて得られるポリウレタン樹脂の硬化不良などの問題が生じやすいからである。
【0024】
本発明における主剤(A)に含まれるウレタンプレポリマーには、本発明の効果を損なわない程度に、他のポリオール化合物を使用することができる。具体的には、ポリアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリブタジエンポリオール、ポリカーボネートポリオールなど、ポリウレタン樹脂の製造に使用されるポリオール化合物が挙げられる。
【0025】
本発明における硬化剤(B)は、(d)ひまし油系ポリオール、(e)ポリテトラメチレンエーテルグリコール、(f)アミンポリオール、及び(g)ポリアミンを含有している。
【0026】
本発明における硬化剤(B)に使用される(d)ひまし油系ポリオールとしては、主剤(A)の場合と同様に、ポリウレタン樹脂原料として通常使用されているものであれば何れでもよく、ひまし油、ひまし油とポリオールとのエステル交換反応生成物、ひまし油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物、及びこれらにアルキレンオキサイドを付加してなるポリオールなどであり、ひまし油及び/又はひまし油脂肪酸を原料として得られる末端水酸基を有するポリオールを挙げることができる。これらは単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0027】
(d)ひまし油系ポリオールの配合量は、硬化剤(B)100重量部中に、20〜80重量部の範囲で含まれていることが好ましく、より好ましくは40〜70重量部の範囲である。(d)ひまし油系ポリオールの配合量が20重量部より少ない場合には、後述の(e)アミンポリオールの割合が多くなるため、反応の不均一化が起こりやすくなり、樹脂表面の平滑性が得られにくくなり、80重量部より多い場合には、後述の(e)アミンポリオールの割合が少なくなるため、主剤と硬化剤の相溶性が低下し、混合不良が起こり易くなる。
【0028】
本発明における硬化剤(B)に使用される(e)ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、平均水酸基価が100〜600mgKOH/gであることが好ましい。平均水酸基価が100mgKOH/g未満であると耐水性が低下する傾向があり、600mgKOH/gを超えると引張伸びなどの機械特性が低下する傾向がある。
【0029】
(e)ポリテトラメチレンエーテルグリコールの配合量は、硬化剤(B)100重量部中に、1〜40重量部の範囲で含まれていることが好ましく、より好ましくは3〜30重量部の範囲である。(e)ポリテトラメチレンエーテルグリコールの配合量を上記範囲内とすることにより、ポリウレタン樹脂の機械強度をより良好なものとすることができる。
【0030】
硬化剤(B)に含まれる(d)ひまし油系ポリオールと(e)ポリテトラメチレンエーテルグリコールとの重量割合は、(d)/(e)=95/5〜50/50であることが好ましく、95/5〜60/40であることがより好ましい。上記範囲内とすることにより、得られるポリウレタン樹脂の引張強度や引張伸びなどの機械特性がより良好なものとなる。
【0031】
また、本発明における硬化剤(B)に使用される(f)アミンポリオールとしては、上記(b)芳香族モノアミンポリオールを含む芳香族アミンポリオールや、脂肪族アミンポリオールが挙げられる。芳香族アミンポリオールとしては、アニリン、トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノ−3、3’−ジエチルジフェニルメタンなどにアルキレンオキサイドを付加したものが挙げられる。また、脂肪族アミンポリオールとしては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどにアルキレンオキサイドを付加したものが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。これらのうち、ポリウレタン樹脂の耐水性を向上させるという観点から芳香族アミンポリオールが好ましい。
【0032】
(f)アミンポリオールの配合量としては、硬化剤(B)100重量部中に、10〜50重量部の範囲で含まれていることが好ましく、より好ましくは15〜40重量部の範囲である。(f)アミンポリオールの配合量が10重量部より少ない場合には相溶性の向上効果が十分ではなく、50重量部より多い場合には、粘度上昇が起こる傾向にあり、また、得られるポリウレタン樹脂が硬く、脆いものになりやすい。
【0033】
本発明における硬化剤(B)に使用される(g)ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミンなどの脂肪族ポリアミン、アニリン、トルエンジアミン、4,4’−ジアミノ−3、3’−ジエチルジフェニルメタン、ジエチルトルエンジアミンなどの芳香族アミン化合物が挙げられる。なかでも、耐水性や強度に優れているという観点から、芳香族アミンがより好ましい。
【0034】
(g)ポリアミンの配合量は、硬化剤(B)100重量部中に、0.5〜15重量部であることが好ましい。アミン化合物が15重量部より多くなると、硬化時間が短くなりすぎるために、樹脂の表面平滑性の低下やピンホールの発生が起こりやすくなる傾向にある。
【0035】
本発明における硬化剤(B)には、硬化時間を短縮するために、一般的に用いられているポリウレタン樹脂の金属系硬化触媒やアミン触媒を使用することもできる。例えば、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート、ジブチルチンジオクテートなどの錫触媒や、オクチル酸鉛、オクテン酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛触媒、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどのビスマス触媒、トリエチレンジアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミンなどのアミン触媒が挙げられる。
【0036】
本発明における硬化剤(B)の粘度は、主剤(A)と同様に、25℃において3000mPa・s以下であることが好ましい。25℃における粘度が3000mPa・sを超えると、主剤との混合に使用するポンプがキャビテーションを起こしやすいため好ましくない。
【0037】
また、本発明の主剤(A)及び硬化剤(B)は、それぞれ可塑剤を含有していてもよい。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレートなどのフタル酸エステルや、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸エステルなどを用いることができる。可塑剤を配合することにより、主剤(A)と硬化剤(B)の相溶性をさらに向上させることができる。可塑剤の配合量としては、主剤(A)及び硬化剤(B)を所定の割合で反応させて得られたポリウレタン樹脂100重量部に対して20重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることがより好ましい。可塑剤の量が20重量部より多くなると、得られるポリウレタン樹脂から可塑剤がブリードアウトしやすくなり、上塗り材料との接着性が低下する傾向にある。
【0038】
本発明の2液反応型ポリウレタン樹脂組成物における主剤(A)及び硬化剤(B)の混合割合は、NCO/OH比が1.0〜1.2となるようにすることが好ましい。NCO/OH比が1.0より小さい場合には、硬化不良や耐水性や強度の低下が起こる傾向にあり、NCO/OH比が1.2より大きい場合には、過剰のイソシアネート成分が空気中の水分と反応し、ポリウレタン樹脂が発泡し易くなる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下において、「部」、「%」とあるのは、特に断らない限り、それぞれ「重量部」、「重量%」である。
【0040】
<(b)芳香族モノアミンポリオールの合成>
(芳香族モノアミンポリオール1の合成)
オートクレーブにアニリン93g(1モル)を入れた後、オートクレーブ内を窒素で置換した。次に、温度を100℃、圧力0.2MPaに維持しながら、エチレンオキサイド88g(2モル)を導入し、2時間熟成反応を行なうことにより、芳香族モノアミンポリオール1を得た(水酸基価:620mgKOH/g、25℃での粘度:800mPa・s)。
【0041】
(芳香族モノアミンポリオール2の合成)
オートクレーブにアニリン93g(1モル)を入れた後、オートクレーブ内を窒素で置換した。次に、温度を100℃、圧力0.2MPaに維持しながら、プロピレンオキサイド116g(2モル)を導入し、2時間熟成反応を行なうことにより、アミンポリオール2を得た(水酸基価:535mgKOH/g、50℃での粘度:1300mPa・s)。
【0042】
(芳香族モノアミンポリオール3の合成)
オートクレーブにアニリン93g(1モル)を入れた後、オートクレーブ内を窒素で置換した。次に、温度を100℃、圧力0.2MPaに維持しながら、ブチレンオキサイド144g(2モル)を導入し、2時間熟成反応を行なうことにより、アミンポリオール3を得た(水酸基価:470mgKOH/g、25℃での粘度:2000mPa・s)。
【0043】
<(f)アミンポリオールの合成方法>
(アミンポリオール1の合成)
オートクレーブに2,4−トルエンジアミン122g(1モル)を入れた後、オートクレーブ内を窒素で置換した。次に、温度を100℃、圧力0.2MPaに維持しながら、プロピレンオキサイド232g(4モル)を導入し、2時間熟成反応を行なうことにより、アミンポリオール1を得た(水酸基価:634mgKOH/g、25℃での粘度:34000mPa・s)。
【0044】
<スプレー塗装>
本発明のポリウレタン樹脂組成物を用いたスプレー塗装は、従来公知の方法で行なうことができ、例えば、高圧2成分衝突混合型吹き付け装置及びスプレーガンを用い、主剤及び硬化剤の液温を30〜90℃とし、吐出圧力8.2〜11.2MPaで行なうことができる。高圧2成分衝突混合型吹き付け装置としては、ガスマー社製H−2000等が挙げられる。また、スプレーガンとしては、ガスマー社製GX−7ガン、グラスクラフト社製プロブラーガン等が挙げられる。
【0045】
<ウレタンプレポリマーの製造>
ウレタンプレポリマー及び後述する硬化剤の製造に使用する原料を、表1にまとめて示した。
【0046】
【表1】

【0047】
(ウレタンプレポリマー1〜6の製造)
窒素置換したフラスコに、表2に示すひまし油系ポリオールを26〜29部、上記で合成した芳香族モノアミンポリオールを1部〜3部、イソシアネート1を51〜53部の割合で混合し、90℃で1時間反応させ、反応終了後、イソシアネート2(ウレタンプレポリマー5及び6に関してはイソシアネート3)を20部の割合で混合することにより、ウレタンプレポリマー1〜6を得た。また、各ウレタンプレポリマー1〜6のNCO/OH比、粘度(mPa・s、25℃)及び貯蔵安定性(20℃、24時間)の測定結果についても表2に併せて示した。
【0048】
【表2】

【0049】
ウレタンプレポリマーの貯蔵安定性は20℃で24時間保存後の状態を目視で確認し、濁りがあるかどうかを確認し、濁りが無いものを○、濁り又は分離が観られたものを×とした。また、粘度測定は、JISZ8803に準拠し、回転粘度計〔ブルックフィールドエンジニアリングラボラトリーズインコーポレーティッド(BROOKFIELD ENGINEERING LABORATORIES,INC.)社製、商品名:B型粘度計BM〕を用いて、25℃にて測定した。
【0050】
<主剤(A)の製造>
主剤A1〜A6として、ウレタンプレポリマー1〜6をそれぞれそのまま用いた。
【0051】
<硬化剤(B)の製造>
(硬化剤B1〜B5の製造)
表3に示すひまし油系ポリオールを53部〜70部、ポリテトラメチレンエーテルグリコールを5〜20部、アミンポリオールを17部〜25部およびポリアミンを2部〜10部の割合で混合した。続いて、前記混合物100部に対して、金属系硬化触媒であるジオクチルチンジラウレート0.4部を混合することにより、硬化剤B1〜B5を得た。また、各硬化剤B1〜B5の粘度(mPa・s、25℃)の測定結果についても表3に併せて示した。各硬化剤の粘度測定は、主剤(A)の場合と同条件で測定した。
【0052】
【表3】

【0053】
<スプレー塗装及びポリウレタン樹脂の製造>
(実施例1〜7、比較例1および2)
表4に記載した主剤(A)及び硬化剤(B)を用いて、下記の方法で製造した。即ち、高圧2成分衝突混合型吹き付け装置としてガスマー社製H−2000を、スプレーガンとしてガスマー社製GX−7ガンを使用し、主剤と硬化剤を容量比1:1で、それぞれ液温50℃に加温して、吐出圧力8.2〜10.2MPaでスプレー塗装を行い、膜厚1mmのポリウレタン樹脂の塗膜が得られた。
【0054】
<ポリウレタン樹脂の評価>
塗膜外観評価は上記の方法で塗装を行うことにより得られる塗膜を用いて、表面平滑性、ピンホール有無、耐水性、強度、伸びおよび相溶性を下記の方法で測定し、その結果を表4に併せて示した。
(1)表面平滑性
塗膜表面に凹凸がないものを○、凹凸があるものを×とした。
(2)ピンホールの有無
塗膜表面にピンホールがみられないものを○、ピンホールが見られるのものを×とした。
(3)耐水性
上記塗膜から20mm×40mm×1mmに切り出した試験片を23℃の水道水に3ヶ月間浸漬した後の重量増加率を測定した。
(4)引張強度
上記塗膜を用いて、JIS A6021に準じて測定した。
(5)引張伸び
上記塗膜を用いて、JIS A6021に準じて測定した。
(6)相溶性
実施例1〜7、比較例1および2で用いた主剤および硬化剤を40℃に加温した。続いて、200mLのポリカップに主剤50mLと硬化剤50mLとをホモディスパーで3秒間攪拌した後静置し、硬化したポリウレタン樹脂を目視にて観察した。ポリウレタン樹脂が透明のものを○、濁り又は混合不良が見られるものを×とした。
【0055】
【表4】

【0056】
<評価結果>
表4から明らかなように、主剤A1〜A5及び硬化剤B1〜B4を使用した実施例1〜7のポリウレタン樹脂は、何れも良好な結果であった。特に、23℃の水道水に3ヶ月浸漬した後の吸水率は1%以下であり、耐水性に優れていることが明らかとなった。
【0057】
一方、比較例1のポリウレタン樹脂では、硬化剤にアミンポリオールが含まれないために、表面平滑性、ピンホールおよび相溶性が悪く、また、吸水率も大きく耐水性が劣ることが分かる。また、比較例2のポリウレタン樹脂は、主剤に芳香族モノアミンポリオールが含まれていないために相溶性が劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の2液反応型ウレタン組成物は低粘度であり、これを使用すれば耐水性が高く、強度や伸びなどの機械特性に優れた硬化物が得られるので、スプレー塗料の分野で利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤(A)と硬化剤(B)からなる2液反応型ポリウレタン樹脂組成物であって、
前記主剤(A)が、
(a)ひまし油系ポリオール、
(b)芳香族モノアミンポリオール、及び
(c)ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及びこれらのカルボジイミド変性体からなる群から選ばれた有機イソシアネート化合物
を反応させてなるウレタンプレポリマーを含有し、
前記硬化剤(B)が、
(d)ひまし油系ポリオール、
(e)ポリテトラメチレンエーテルグリコール、
(f)アミンポリオール、及び
(g)ポリアミン
を含有していることを特徴とする2液反応型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記硬化剤(B)に含まれる(d)ひまし油系ポリオールと(e)ポリテトラメチレンエーテルグリコールが、重量比で95/5〜50/50であることを特徴とする請求項1に記載の2液反応型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
スプレー塗料用であることを特徴とする請求項1または2に記載の2液反応型ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の2液反応型ポリウレタン樹脂組成物を硬化させてなるポリウレタン樹脂。


【公開番号】特開2010−275425(P2010−275425A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129303(P2009−129303)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】