説明

2液性ポリウレタン系コート剤、それを用いた積層体、及び太陽電池用バックシート

【課題】密着性、耐久性に優れた2液性ポリウレタン系コート剤、それを用いた積層体、及び太陽電池用バックシートを提供する。
【解決手段】イソシアネート化合物、好ましくは3官能以上のイソシアネート化合物を含んでなる液(A)とケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体、好ましくはビニルアルコール残基単位0.01〜10モル%を含有するケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含んでなる液(B)とからなる2液性ポリウレタン系コート剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密着性、耐久性に優れた2液性ポリウレタン系コート剤、それを用いた積層体、及び太陽電池用バックシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対する関心から太陽光発電に対する期待が高まっている。太陽電池は太陽光のエネルギーを直接電気に変換するものであり、結晶系、あるいはアモルファスシリコン系の半導体等が使用されている。一般的な太陽電池は、結晶系シリコンからなる太陽電池セルをエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる封止膜で保護し、さらに表面はガラス、裏面はバックシートにより保護された構成になっている。
【0003】
これらの太陽電池は屋外で使用されるため、その部材には高い耐久性、耐候性が要求され、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる封止膜とバックシートとの間には高い密着性が求められる。
【0004】
近年、電気絶縁性に優れるポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムを用いたバックシートが開発されるようになってきた。しかし、ポリエステルフィルムは、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなる封止膜との密着性に劣るという欠点があった。
【0005】
そこで、密着性を改善するべく、バックシートの封止膜と貼り合わせる面にコロナ処理を施す方法が提案されている(特許文献1)。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体に対し良好な熱接着性を有する接着性フィルムを、バックシートにさらに積層させることが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−243999号公報
【特許文献2】特開平10−25357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に提案されたコロナ処理を施しても密着性の十分な改良には至っていない。また、特許文献2に提案された方法は接着性フィルムを作製した後に、接着剤により積層するため加工工程が煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、イソシアネート化合物を含む液(A)とケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)とからなる2液性ポリウレタン系コート剤を用いると、簡便にポリエステルフィルムとの密着性を向上させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、イソシアネート化合物を含む液(A)とケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)を含むことを特徴とする2液性ポリウレタン系コート剤、それによりコートされた積層体、及び太陽電池用バックシートに関するものである。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の2液性ポリウレタン系コート剤は、イソシアネート化合物を含む液(A)とケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)との2液を含むものである。
【0012】
ここで2液性とは、少なくとも2つの成分(主剤と硬化剤)に分かれていて使用直前に混合されることを意味し、使用直前に3つ以上の成分が混合されることも含む。
【0013】
該液(A)としては、イソシアネート化合物を含む液状物であれば如何なるものを用いることもでき、例えばイソシアネート化合物と有機溶剤とからなる溶液、イソシアネート化合物と水とからなる水溶液,懸濁液、液状イソシアネート化合物等を挙げることができ、その中でも塗布性に優れる2液性ポリウレタン系コート剤となることからイソシアネート化合物と有機溶剤とからなる溶液であることが好ましい。
【0014】
そして、該液(A)を構成するイソシアネート化合物としては、例えば芳香族イソシアネート化合物、脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物、及びこれらのポリイソシアネート誘導体などが挙げられる。
【0015】
芳香族イソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート(2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m−、p−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’−、2,4’−、または2,2’−ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’−トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω′−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、ナフタレンジイソシアネート(1,5−、1,4−又は1,8−ナフタレンジイソシアネートもしくはその混合物)(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、等が挙げられる。
【0016】
脂肪族イソシアネート化合物としては、例えばトリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプエート、リジンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば単環式脂環族ジイソシアネート、架橋環式脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0017】
単環式脂環族ジイソシアネートとしては、例えば1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート)、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4′−、2,4′−又は2,2′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)もしくはこれらの混合物)(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(1,3−または1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物)(水添XDI)、ダイマー酸ジイソシアネート、トランスシクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート(水添TDI)、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート(水添TMXDI)等を挙げることができる。
【0018】
架橋環式脂環族ジイソシアネートとしては、例えばノルボルネンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル、ビシクロヘプタントリイソシアネート、ジイソシアナートメチルビシクロヘプタン、ジ(イソシアナートメチル)トリシクロデカン等が挙げられる。
【0019】
これらのポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記イソシアネート化合物の多量体(2量体、3量体、5量体、7量体、ウレチジンジオン、ウレイトンイミン、イソシヌレート変性体、ポリカルボジイミド等)、ウレタン変性体(例えば、上記イソシアネート化合物又は多量体におけるイソシアネート基の一部をモノオールやポリオールで変性又は反応したウレタン変性体など)、ビウレット変性体(例えば、上記イソシアネート化合物と水との反応により生成するビウレット変性体など)、アロファネート変性体(例えば、上記イソシアネート化合物と、モノオール又はポリオール成分との反応より生成するアロファネート変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記イソシアネート化合物とジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン(例えば、上記イソシアネート化合物と炭酸ガス等との反応により生成するオキサジアジントリオンなど)などを挙げることができる。
【0020】
これらの誘導体のうち、3官能以上のイソシアネート基を形成できる誘導体、例えば、3個以上の活性水素原子を有する成分と上記イソシアネート化合物とのアダクト体が好ましい。3個以上の活性水素原子を有する成分としては、3官能以上のポリオール、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどのC3−12脂肪族ポリオールなどが挙げられる。なお、このようなアダクト体は、未反応モノマーの含有量が少ないアダクト体が好ましい。未反応モノマー含有量の少ないアダクト体は、反応生成物を慣用の分離精製方法、例えば、薄膜蒸留や抽出などを用いて製造できる。アダクト体のイソシアネート含量は、例えば、1〜30重量%、好ましくは3〜25重量%、さらに好ましくは5〜20重量%程度である。
【0021】
上記のイソシアネート化合物は単独で用いてもよいし、2種以上で用いてもよい。
【0022】
具体的商品としては、「コロネートL」、「コロネートHL」、「コロネート2030」、「コロネート2031」、「ミリオネートMR」、「ミリオネートMTL」(商品名、日本ポリウレタン株式会社製)、「タケネートD−102」、「タケネートD−110N」、「タケネートD−200」、「タケネートD−202」、「タケネート300S」、「タケネート500」(商品名、武田薬品株式会社製)、「スミジュールN3300」、「スミジュールT−80」、「スミジュール44S」、「スミジュールPF」、「スミジュールL」、「スミジュールN」、「デスモジュールL」、「デスモジュールIL」、「デスモジュールN」、「デスモジュールHL」、「デスモジュールT65」、「デスモジュール15」、「デスモジュールR」、「デスモジュールRF」、「デスモジュールSL」、「デスモジュールZ4273」(商品名、住化バイエルウレタン株式会社製)等が挙げられる。
【0023】
中でも、特に耐久性に優れるコート剤が得られることから、芳香族イソシアネート化合物が好ましく、特にジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びこれらイソシアネート化合物のアダクト体が好ましく、さらにジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート及び/またはトリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体が好ましい。
【0024】
また、該液(A)は、密着性に優れる2液性ポリウレタン系コート剤となることから3官能以上のイソシアネート化合物を含むものであることが好ましい。
【0025】
該液(A)がイソシアネート化合物の溶液である場合の有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤、塩化メチレン等の塩素系有機溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤を挙げることができ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上でもよい。中でも、塗布性に優れる2液性ポリウレタン系コート剤となることから、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、塩化メチレンが好ましく、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0026】
イソシアネート化合物を含む液(A)中のイソシアネート化合物の濃度は、塗布性に優れる2液性ポリウレタン系コート剤となることから1〜100重量%が好ましく、10〜100重量%が更に好ましい。
【0027】
該液(A)の製造方法としては、特に制限は無く公知の方法を用いることができ、例えばイソシアネート化合物、有機溶剤を室温混合する方法、加熱混合する方法等が挙げられ、室温混合する方法が好ましく用いられる。
【0028】
該液(B)は、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液であれば如何なるものを用いることもでき、例えばケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体と有機溶剤からなる溶液、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体と水からなる懸濁液、液状ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体等を挙げることができ、その中でも塗布性に優れる2液性ポリウレタン系コート剤となることからケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体と有機溶剤とからなる溶液であることが好ましい。
【0029】
該液(B)を構成するケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、例えばエチレン残基単位及びビニルアルコール残基単位からなる共重合体、エチレン残基単位、ビニルアルコール残基単位及び酢酸ビニル残基単位からなる共重合体を挙げることができ、これら共重合体であれば制限は無く用いることができ、その中でも、特に密着性に優れる2液性ポリウレタン系コート剤となることから、ビニルアルコール残基単位0.01〜10モル%、特に0.1〜5.0モル%であるケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。また、同様に特に密着性に優れた2液性ポリウレタン系コート剤となることから酢酸ビニル残基単位が15〜80重量%であるケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体であることが好ましく、特に塗布性にも優れる2液性ポリウレタン系コート剤となることから酢酸ビニル残基単位が20〜50重量%、さらに20〜45重量%であるケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。さらに、該ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体は、メルトフローレイト(MFRと記すこともある。)が1〜20000g/10分であることが好ましく、10〜3000g/10分であることが更に好ましく、50〜2400g/10分が特に好ましい。
【0030】
該ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体は、例えば高圧重合法、エマルジョン重合法、または溶液重合法により製造されたエチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル残基単位を加水分解し、ビニルアルコール残基単位にケン化することにより得ることができる。この際、例えば、高圧法により製造されたエチレン−酢酸ビニル共重合体を加水分解する方法としては、アルカリ又は酸を触媒として加水分解反応を行う方法を挙げることができ、具体的には良溶媒にエチレン−酢酸ビニル共重合体を溶解させて均一系で反応を行う均一ケン化法、メタノール、エタノールのような貧溶媒中でペレット又は粉体のまま不均一系で反応を行う不均一ケン化法等が挙げられる。また、このようなケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体は、例えば(商品名)メルセンH 6410M(東ソー株式会社製)、(商品名)メルセンH 6210M(東ソー株式会社製)、(商品名)メルセンH H6960(東ソー株式会社製)、(商品名)メルセンH 3051R(東ソー株式会社製)等が市販品として入手することができる。
【0031】
本発明においてケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)を構成する場合もある有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶剤、塩化メチレン等の塩素系有機溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤を挙げることができ、これらは単独で用いてもよいし、2種以上でもよい。そして、特に塗布性に優れる2液性ポリウレタン系コート剤となることからトルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、塩化メチレンが好ましく、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンが特に好ましい。
【0032】
ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)中のケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体の濃度は、塗布性に優れる2液性ポリウレタン系コート剤となることから1〜90重量%が好ましく、10〜75重量%が更に好ましく、10〜50重量%が特に好ましい。
【0033】
本発明に用いるケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)を製造するには、特に制限は無く公知の方法を用いることができ、例えばケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体、有機溶剤を室温混合する方法、加熱混合する方法等が挙げられ、溶解が早いことから加熱混合する方法が好ましく用いられる。加熱混合する際の温度は30〜150℃が好ましく、特に好ましくは50〜110℃である。
【0034】
本発明の2液性ポリウレタン系コート剤は、該イソシアネート化合物を含む液(A)と該ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)を混合配合することによりコート剤として作用するものであり、その際の配合比はコート剤として作用することが可能であれば如何なるものでもよく、特に密着性に優れるものとなることからイソシアネート化合物を含む液(A)の量は、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)100重量部に対し、0.01〜150重量部であることが好ましく、0.1〜100重量部であることがさらに好ましく、0.1〜60重量部であることが特に好ましい。
【0035】
そして、これらを混合配合する際に、特に制限は無く公知の方法を用いることができ、例えばイソシアネート化合物を含む液(A)とケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)を室温混合する方法、加熱混合する方法等が挙げられ、室温混合する方法が好ましく用いられる。
【0036】
また、本発明の2液性ポリウレタン系コート剤を混合配合し、コート剤として作用する際は、耐久性に優れるコート剤となることから、カルボジイミド化合物を含むことが好ましく、該カルボジイミド化合物を用いる際には、イソシアネート化合物を含む液(A)とケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)を混合配合する際に添加すればよい。そして、より簡便な取り扱いが可能となることから、該カルボジイミド化合物は、液(A)及び/または液(B)に配合しておくことが好ましい。
【0037】
該カルボジイミド化合物としては、分子内に1個以上のカルボジイミド基を有する化合物であれば如何なるものでもよく、例えばN,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’−ジ(o−トルイル)カルボジイミド、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド等の一官能性カルボジイミド化合物;p−フェニレン−ビス(2,6−キシリルカルボジイミド)、p−フェニレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、p−フェニレン−ビス(メシチルカルボジイミド)、テトラメチレン−ビス(t−ブチルカルボジイミド)、シクロヘキサン−1,4−ビス(メチレン−t−ブチルカルボジイミド)等の二官能性カルボジイミド化合物;多官能性カルボジイミド化合物等が挙げられ、その中でも多官能性カルボジイミド化合物が好ましい。該一官能性カルボジイミド化合物としては、例えば(商品名)スタバクゾールI(RheinChemie社製)、該多官能性カルボジイミド化合物としては、例えば(商品名)エラストスタブH01(日清紡社製)、(商品名)スタバクゾールP(RheinChemie社製)、(商品名)スタバクゾールP−400(RheinChemie社製)等の商品名で一般的に知られているカルボジイミド化合物が挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は1種又は2種以上が使用できる。また、添加することが好ましいカルボジイミド化合物の配合量としては、得られる2液性ポリウレタン系コート剤の耐久性が向上することから、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)100重量部に対して0.01〜5.0重量部添加することが好ましく、0.05〜3.0重量部がさらに好ましく、0.1〜2.0重量部が特に好ましい。
【0038】
本発明の2液性ポリウレタン系コート剤を混合配合し、コート剤として作用する際には、その速乾性を高めるためにウレタン化反応触媒を含むことが好ましく、該ウレタン化反応触媒としては、特に限定は無く公知のものを用いることができる。例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等のアミン系触媒、テトラメチル錫、テトラオクチル錫、ジメチルジオクチル錫、トリエチル錫塩化物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート等の錫系触媒等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。中でも触媒活性が高いことからジブチル錫ジラウレートが好適に使用される。また、該ウレタン化反応触媒を用いる際には、イソシアネート化合物を含む液(A)とケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)を混合配合する際に添加すればよい。そして、より簡便な取り扱いが可能となることから、該ウレタン化反応触媒は、イソシアネート化合物を含む液(A)及び/又はケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)に配合しておくことが好ましい。また、添加することが好ましいウレタン化反応触媒の配合量としては、得られる2液性ポリウレタン系コート剤の速乾性が向上することから、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)100重量部に対して0.0001〜1重量部添加することが好ましく、0.001〜0.5重量部がさらに好ましく、0.001〜0.1重量部が特に好ましい。
【0039】
さらに、本発明の2液性ポリウレタン系コート剤は、着色を抑制できることから酸化防止剤を含むことが好ましく、該酸化防止剤としては、何ら制限はなく、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、より大きな効果を発現するために2種以上を併用して用いることができる。また、添加することが好ましい酸化防止剤の配合量としては、得られる2液性ポリウレタン系コート剤の着色を抑制できることから、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)100重量部に対して0.001〜1.0重量部添加することが好ましく、0.001〜0.5重量部がさらに好ましく、0.001〜0.1重量部が特に好ましい。
【0040】
そして、これらの酸化防止剤の中でも、着色を抑制する効果が大きいことから、フェノール系酸化防止剤である2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)が好ましい。
【0041】
また、酸化防止剤も該ウレタン化反応触媒と同様にイソシアネート化合物を含む液(A)及び/又はケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)に配合しておくことが好ましい。
【0042】
本発明の2液性ポリウレタン系コート剤には、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を含有していても良い。各種添加剤としては、例えば、染料、有機顔料、無機顔料、無機補強剤、可塑剤、アクリル加工助剤等の加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、ワックス、結晶核剤、可塑剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、防徽剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填材、有機充填材等を挙げることができる。
【0043】
本発明の2液性ポリウレタン系コート剤は、各種フィルム、シート、成形体、発泡体の表面コート等のコートに有用であり、特に易接着コート剤として有用である。中でもポリエステルフィルム用コート剤として優れた密着性を発揮し、ポリエステルフィルムに易接着コート剤としてコートすることにより、エチレン−酢酸ビニル共重合体からなる封止膜との密着性を向上させることができる。
【0044】
本発明の2液性ポリウレタン系コート剤を用いると、本発明の2液性ポリウレタン系コート剤からなるコート層及び基材を有する積層体を得ることができる。
【0045】
基材としては、例えば樹脂フィルム、発泡体、布、不織布、合成繊維、合成皮革、皮革、金属、金属酸化物、ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紙、木材、ガラス、石材、陶器、磁器等の基材を挙げることができる。
【0046】
樹脂フィルムとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、及びポリフッ化ビニル等のフッ素樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム;ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレン系樹脂鹸化物フィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂フィルム等の樹脂フィルム等を挙げることができる。また、樹脂フィルムはアルミニウム、酸化アルミニウム及び/または酸化ケイ素等の金属及び/または金属酸化物の蒸着処理を行っても良い。
【0047】
金属としては、例えばアルミニウム、銅、ステンレス等の金属箔、金属フィルム、金属シート等の各種フィルム、無機コーティングを施したものを例示することができる。
【0048】
発泡体としては、例えばポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、フェノール樹脂発泡体、ポリウレタン発泡体等を挙げることができる。
【0049】
中でも利用範囲の広い積層体が得られることから樹脂フィルムが好ましく、ポリエステルフィルムが更に好ましい。
【0050】
本発明の2液性ポリウレタン系コート剤を用い積層体を製造する際には、例えばグラビアコーター、ビードコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ロールコーター、スピンコーター等を用いることができる。コート層の密着性を高めることができることから、コート後、更に40〜120℃でエージングすることが好ましい。
【0051】
本発明の2液性ポリウレタン系コート剤は、例えば、レジャーシート、テント、ビニールハウス、ベランダ用シート、雨合羽、雨傘、幌、防水布、自動車用カバーシート、建築用カバーシート、太陽電池バックシート等屋外環境で使用される屋外用積層体のコートに好適に用いられる。また、バリアフィルム、レトルト等の食品、飲料、医薬品および医薬部外品などの各種の産業分野における包装用積層体のコートにも好適に用いられる。
【0052】
また、本発明の2液性ポリウレタン系コート剤は、例えばポリエステルフィルム;アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の無機物を蒸着したポリエステルフィルム、フッ素系樹脂フィルム等をコートすることにより、太陽電池モジュールを構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体封止膜、ポリビニルブチラール封止膜等の封止膜との易接着コート層として作用することから太陽電池用バックシートとすることが可能である。
【発明の効果】
【0053】
本発明の2液性ポリウレタン系コート剤は、密着性、耐久性に優れており、様々な分野で有用である。
【実施例】
【0054】
以下に実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明の理解を助けるための例であって本発明はこれらの実施例により何等の制限を受けるものではない。尚、用いた試薬等は断りのない限り市販品を用いた。
【0055】
(試薬等)
実施例、比較例の中で用いた試薬等は、以下の略号を用いて表す。
【0056】
<エチレン−酢酸ビニル共重合体>
EVA−1;ウルトラセン(登録商標)727(酢酸ビニル残基単位含量28重量%、MFR=2200g/10分)、東ソー株式会社製。
EVA−2;ウルトラセン(登録商標)760(酢酸ビニル残基単位含量42重量%、MFR=70g/10分)、東ソー株式会社製。
EVA−3;ウルトラセン(登録商標)726−2(酢酸ビニル残基単位含量33重量%、MFR=700g/10分)、東ソー株式会社製。
EVA−4;ウルトラセン(登録商標)751(酢酸ビニル残基単位含量28重量%、MFR=5.7g/10分)、東ソー株式会社製。
【0057】
<イソシアネート化合物を含む液>
イソシアネート化合物(A1);(商品名)コロネートL(トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンからなるアダクト体の酢酸エチル溶液、イソシアネート含量13.4重量%)、日本ポリウレタン工業株式会社製。
イソシアネート化合物(A2);(商品名)コロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシヌレート変性体、イソシアネート含量21.0wt%)、日本ポリウレタン工業株式会社製。
【0058】
<カルボジイミド化合物>
カルボジイミド(C1);エラストスタブ(登録商標)H01、日清紡社製。
【0059】
<酸化防止剤>
AO−60(ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート));アデカスタブ(登録商標)AO−60、旭電化工業株式会社製。
【0060】
<基材>
PET−1;ポリエチレンテレフタレートフィルム、メリネックス(登録商標)タイプS(厚み:100μm),帝人デュポンフィルム株式会社製。
【0061】
<封止膜>
エチレン−酢酸ビニル共重合体としてEVA−4を100重量部、架橋剤として1,1−ジ(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを2重量部、架橋助剤としてトリアリルイソシアヌレートを2重量部、シランカップリング剤としてγ−メタクリロプロピルトリメトキシシランを0.5重量部を配合し温度110℃に設定した20mmΦの単軸押出機にて溶融混練しペレットを得た。
【0062】
得られたペレットを圧縮成形して厚さ0.5mmの封止膜を作製した。圧縮成形は、110℃で300秒間加熱した後、30℃で300秒間冷却して行った。
【0063】
(物性試験法)
<密着性>
積層体のコート層に接着剤を塗布した裏打ちテープを貼り、コート層と基材の剥離強度(25mm幅)を測定し、密着性を評価した。装置は、引張試験機((商品名)テンシロンRTE−1210、オリエンテック製)を用いた。
【0064】
<湿熱試験>
高温高湿器((商品名)ETAC HI FLEX FX4200、楠本化成株式会社製)を用いて、温度85℃、相対湿度85%RHの条件で試験片を500時間放置した。
【0065】
実施例1
3リットルの撹拌翼付きセパラブルフラスコに、メタノールを1000ml、EVA−1を300g、水酸化ナトリウムを5g入れ、45℃に加温して5時間ケン化反応を行った。反応後内容物をろ過し、メタノールで洗浄した後、中和、水洗、真空乾燥してケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAOH−1と記す。)を得た。EVAOH−1は、酢酸ビニル残基単位含量24重量%、ビニルアルコール残基単位1.6モル%、MFR=2250g/10分であった。
【0066】
0.5リットルのセパラブルフラスコに、トルエンを85重量部、得られたEVAOH−1を15重量部入れ、撹拌しながら70℃に加温して1時間かけて溶解した後冷却し、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液を得た。
【0067】
得られたケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液100重量部に対し、イソシアネート化合物(A1)を5重量部添加して混合しコート剤を調製した。
【0068】
得られたコート剤を、スピンコーター((商品名)1H−DX、ミカサ株式会社製)を用いて基材であるPET−1に塗布し、乾燥機((商品名)SPH−101、エスペック株式会社製)中で100℃、24時間エージングし、コート剤からなるコート層、及びポリエステルフィルムからなる積層体を得た。得られた積層体の密着性を評価した結果を表1に示す。得られた2液性ポリウレタン系コートを用いると密着性に優れることが判った。
【0069】
実施例2
3リットルの撹拌翼付きセパラブルフラスコに、メタノールを1000ml、EVA−3を300g、水酸化ナトリウムを5g入れ、45℃に加温して2時間ケン化反応を行った。反応後内容物をろ過し、メタノールで洗浄した後、中和、水洗、真空乾燥してケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAOH−2と記す。)を得た。EVAOH−2は、酢酸ビニル残基単位含量32.3重量%、ビニルアルコール残基単位0.1モル%、MFR=680g/10分であった。
【0070】
0.5リットルのセパラブルフラスコに、トルエンを85重量部、得られたEVAOH−2を15重量部入れ、撹拌しながら70℃に加温して1時間かけて溶解した後冷却した後、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液100重量部に対し、ウレタン化反応触媒としてジブチル錫ジラウレートを0.005重量部入れた。
【0071】
更にケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液100重量部に対し、イソシアネート化合物(A1)を0.5重量部添加して混合しコート剤を調製した。
【0072】
得られたコート剤を用いて実施例1と同様に積層体を作製し密着性を評価した。結果を表1に示す。得られた2液性ポリウレタン系コート剤は密着性に優れることが判った。
【0073】
実施例3
3リットルの撹拌翼付きセパラブルフラスコに、メタノールを1000ml、EVA−2を300g、水酸化ナトリウムを20g入れ、45℃に加温して1時間ケン化反応を行った。反応後内容物をろ過し、メタノールで洗浄した後、中和、水洗、真空乾燥してケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAOH−3と記す。)を得た。EVAOH−3は、酢酸ビニル残基単位含量35.8重量%、ビニルアルコール残基単位2.8モル%、MFR=68g/10分であった。
【0074】
0.5リットルのセパラブルフラスコに、トルエンを80重量部、酢酸エチルを5重量部、得られたEVAOH−3を15重量部入れ、撹拌しながら70℃に加温して1時間かけて溶解した後冷却し、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液100重量部に対し、カルボジイミド化合物としてカルボジイミド(C1)を0.2重量部入れた。更にケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液100重量部に対し、イソシアネート化合物(A2)を2.0重量部添加して混合しコート剤を調製した。
【0075】
得られたコート剤を用いて実施例1と同様に積層体を作製し密着性を評価した。結果を表1に示す。得られた2液性ポリウレタン系コート剤は密着性に優れることが判った。
【0076】
実施例4
2リットルの撹拌翼付きオートクレーブに、メタノールを1000ml、EVA−2を300g、ナトリウムメトキシドを13.4g入れ、40℃に加温して0.3時間ケン化反応を行った。反応後内容物をろ過し、メタノールで洗浄した後、中和、水洗、真空乾燥してケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAOH−4と記す。)を得た。EVAOH−4は、酢酸ビニル残基単位含量41.5重量%、ビニルアルコール残基単位0.25モル%、MFR=71g/10分であった。
【0077】
0.5リットルのセパラブルフラスコに、トルエンを60重量部、得られたEVAOH−4を40重量部入れ、撹拌しながら70℃に加温して1時間かけて溶解した後冷却し、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液100重量部に対し、酸化防止剤としてAO−60を0.01重量部入れた。更にケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液100重量部に対し、イソシアネート化合物(A1)を10重量部添加して混合しコート剤を調製した。
【0078】
得られたコート剤を用いて実施例1と同様に積層体を作製し密着性を評価した。結果を表1に示す。得られた2液性ポリウレタン系コート剤は密着性に優れることが判った。
【0079】
比較例1
0.5リットルのセパラブルフラスコに、トルエンを85重量部、EVA−4を15重量部入れ、撹拌しながら70℃に加温して1時間かけて溶解した後冷却した。更にエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液100重量部に対し、イソシアネート化合物(A1)を5重量部添加して混合した。
【0080】
得られた液を用いて実施例1と同様に積層体を作製し密着性を測定した。結果を表1に示す。得られた液は密着性に劣るものであった。
【0081】
比較例2
0.5リットルのセパラブルフラスコに、トルエンを85重量部、実施例1で得られたEVAOH−1を15重量部入れ、撹拌しながら70℃に加温して1時間かけて溶解した後冷却した。
【0082】
得られた液をスピンコーター((商品名)1H−DX、ミカサ株式会社製)を用いて基材であるPET−1に塗布し、乾燥機((商品名)SPH−101、エスペック株式会社製)中で100℃、24時間エージングした後、積層体を得た。得られた積層体を用いて実施例1と同様に密着性を評価した。結果を表1に示す。得られたコート層は密着性に劣るものであった。
【0083】
比較例3
イソシアネート化合物(A1)をスピンコーター((商品名)1H−DX、ミカサ株式会社製)を用いて基材であるPET−1に塗布し、乾燥機((商品名)SPH−101、エスペック株式会社製)中で100℃、24時間エージングした後、積層体を得た。得られた積層体を用いて実施例1と同様に密着性を評価した。結果を表1に示す。得られた液は密着性に劣るものであった。
【0084】
【表1】

実施例5
実施例1で得られた積層体を太陽電池用バックシートとして用いた。下から、ガラス基板(北陸板硝子製)/封止膜/シリコンウェハー/封止膜/実施例1の積層体の順に重ねて、遠赤外加熱炉(テーピ熱学株式会社製)を用い、温度100℃で5分間仮接着した後、温度150℃に設定したオーブン中で20分間熱接着し、太陽電池相当の積層体を作製した。熱接着は、実施例1の積層体のコート層と封止膜を合せて行った。得られた太陽電池相当の積層体の湿熱試験を実施したところ、接着性が良いものであった。PETフィルムにコートした2液性ポリウレタン系コート剤が易接着コート剤として作用したためと思われる。
【0085】
比較例4
下から、ガラス基板(北陸板硝子製)/封止膜/シリコンウェハー/封止膜/PET−1の順に重ねて、遠赤外加熱炉(テーピ熱学株式会社製)を用い、温度100℃で5分間仮接着した後、温度150℃に設定したオーブン中で20分間熱接着し、太陽電池相当の積層体を作製した。得られた太陽電池相当の積層体の湿熱試験を実施したところ、PETフィルムと封止膜の密着性が悪く、一部剥離しているとこをが見られた。PETフィルムを2液性ポリウレタン系コート剤によりコートしなかったためと思われる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の2液性ポリウレタン系コート剤は、密着性、耐久性に優れており、様々な分野において極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート化合物を含む液(A)とケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液(B)を含むことを特徴とする2液性ポリウレタン系コート剤。
【請求項2】
液(A)が、3官能以上のイソシアネート化合物を含む液であることを特徴とする請求項1に記載の2液性ポリウレタン系コート剤。
【請求項3】
液(A)が、芳香族イソシアネート化合物を含む液であることを特徴とする請求項1又は2に記載の2液性ポリウレタン系コート剤。
【請求項4】
液(B)が、ビニルアルコール残基単位0.01〜10モル%を含有するケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の2液性ポリウレタン系コート剤。
【請求項5】
液(B)が、酢酸ビニル残基単位15〜80重量%を含有するケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を含む液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の2液性ポリウレタン系コート剤。
【請求項6】
液(B)100重量部に対し、液(A)を0.01〜150重量部の割合で配合することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の2液性ポリウレタン系コート剤。
【請求項7】
液(A)及び/または液(B)が、さらにカルボジイミド化合物を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の2液性ポリウレタン系コート剤。
【請求項8】
液(A)及び/または液(B)が、さらにウレタン化反応触媒を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の2液性ポリウレタン系コート剤。
【請求項9】
液(A)及び/または液(B)が、さらに酸化防止剤を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の2液性ポリウレタン系コート剤。
【請求項10】
易接着コート剤であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の2液性ポリウレタン系コート剤。
【請求項11】
ポリエステルフィルム用のコート剤であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の2液性ポリウレタン系コート剤。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかの項に記載の2液性ポリウレタン系コート剤からなるコート層及び基材を有することを特徴とする積層体。
【請求項13】
基材が樹脂フィルムであることを特徴とする請求項12に記載の積層体。
【請求項14】
樹脂フィルムがポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項11又は12に記載の積層体。
【請求項15】
請求項12〜14のいずれかに記載の積層体を含むことを特徴とする太陽電池用バックシート。

【公開番号】特開2013−18824(P2013−18824A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151540(P2011−151540)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】