説明

2液性無電解銀めっき液

【課題】光沢に優れ、変色、ムラのない銀皮膜を形成することが可能な、スプレー塗布用等として有用な2液性無電解銀めっき液を提供する。
【解決手段】(i)銀化合物及びアンモニアを含む銀含有水溶液、並びに
(ii)還元剤を含む還元剤含有水溶液
の2液からなり、
更に、一般式:R12N(CH2CH2NR3n4(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルコシキ基又はエポキシ基である。nは、1〜4の整数である。)で表されるエチレンアミン類が、銀含有水溶液及び還元剤含有水溶液のいずれか一方又は両方に含まれていることを特徴とする、2液性無電解銀めっき液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液性無電解銀めっき液、及び無電解銀めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無電解銀めっき液は、古くから鏡等の装飾用品や電機産業分野において、広く利用されている。従来、ABS樹脂等のプラスチックに無電解銀めっきを行う場合には、クロム酸等を用いてエッチング処理を施した後、パラジウム等の触媒金属を付与し、その後、無電解銀めっき浴に浸漬して銀めっき皮膜を形成する方法が広く行われている。
【0003】
この様な浸漬法に用いる無電解銀めっき浴としては、各種組成のめっき浴が知られおり(下記特許文献1〜4等参照)、いずれのめっき浴を用いる場合にも、被めっき物の形状に左右されることなく銀皮膜を形成することが可能である。しかしながら、浸漬法では、白い外観の銀皮膜が形成され易く、光沢の良好な銀皮膜を形成することは困難である。更に、めっきムラ、変色等が生じ易いという欠点もある。また、被めっき物をめっき浴に浸漬することから、大きな設備を必要とし、皮膜形成に長時間を要するという問題点もある。
【0004】
反射板等の良好な光沢が要求される製品に対しては、スパッタリング等の気相法を適用することにより、良好な光沢を有する銀皮膜を形成することが可能である。しかしながら、スパッタリング法は生産性が低いことからコストが高く、めっき皮膜の状態は被めっき物の形状に左右されるという欠点がある。
【0005】
近年、硝酸銀、アンモニア及び水酸化ナトリウムを含む銀溶液と、酒石酸、グルコース及びホルマリンを含む還元剤溶液の2液をスプレーで吹き付けて銀めっき皮膜を形成するスプレー用の無電解銀めっき液が提案されている(下記特許文献5参照)。
【0006】
しかしながら、この様なスプレー用銀めっき液では、形成される銀皮膜に、ムラ、変色などが生じ易く、優れた光沢を有する外観の良好な銀めっき皮膜を形成することは困難である。
【特許文献1】特開昭50−93234号公報
【特許文献2】特開平1−201485号公報
【特許文献3】特開平2−173272号公報
【特許文献4】特開2003−293148号公報
【特許文献5】特開平11−335858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した如き従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、光沢に優れ、変色、ムラのない銀皮膜を形成することが可能な、スプレー塗布用等として有用な2液性無電解銀めっき液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、銀−アンモニア錯体液と、還元剤を含有する水溶液の2液からなる無電解銀めっき液に、更に、添加剤として、特定のエチレンアミン類を添加した無電解銀めっき液によれば、スプレー法により被めっき物に吹き付けることにより、ムラなく、優れた光沢を有する銀めっき皮膜を形成できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の2液性無電解銀めっき液、及び無電解銀めっき方法を提供するものである。
1.(i)銀化合物及びアンモニアを含む銀含有水溶液、並びに
(ii)還元剤を含む還元剤含有水溶液
の2液からなり、
更に、一般式:R12N(CH2CH2NR3n4(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルコシキ基又はエポキシ基である。nは、1〜4の整数である。)で表されるエチレンアミン類が、銀含有水溶液及び還元剤含有水溶液のいずれか一方又は両方に含まれていることを特徴とする、2液性無電解銀めっき液。
2. 銀含有水溶液における銀化合物濃度が、5〜60mmol/lであって、アンモニア量が銀イオン1モルに対して2〜20モルであり、
還元剤含有水溶液における還元剤濃度が0.01〜0.5mol/lであり、
銀含有水溶液及び還元剤含有水溶液に含まれる一般式:R12N(CH2CH2NR3n4(式中、R1、R2、R3、R4及びnは、上記に同じ)で表されるエチレンアミン類の合計量が、下記条件を満足することを特徴とする上記項1に記載の2液性無電解銀めっき液:
(i)n=1のエチレンアミン類の場合には、銀イオン1モルに対して2〜10モル;
(ii)n=2のエチレンアミン類の場合には、銀イオン1モルに対して0.015〜0.85モル;
(iii)n=3のエチレンアミン類の場合には、銀イオン1モルに対して1.5×10−3〜150×10−3モル;
(iv)n=4のエチレンアミン類の場合には、銀イオン1モルに対して0.2×10−3〜12.5×10−3モル;
(v)n値の異なるエチレンアミン類を併用する場合には、各エチレンアミン類の量は、上記(i)〜(iv)の範囲を基準として、混合モル比に応じた範囲とする。
3.上記項1又は2に記載の2液性無電解銀めっき液の銀含有水溶液と還元剤含有水溶液を、被めっき物に同時に吹き付けることを特徴とする無電解銀めっき方法。
【0010】
本発明の2液性無電解銀めっき液は、
(i)銀化合物及びアンモニアを含む銀含有水溶液、並びに
(ii)還元剤を含む還元剤含有水溶液
の2液からなり、更に、一般式:R12N(CH2CH2NR3n4(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルコシキ基又はエポキシ基である。nは、1〜4の整数である。)で表されるエチレンアミン類が、銀含有水溶液及び還元剤含有水溶液のいずれか一方又は両方に含まれているものである。
【0011】
銀含有水溶液に配合する銀化合物としては、水溶性の銀化合物であれば特に限定なく使用でき、その具体例としては、硝酸銀、硫酸銀等の無機塩、酢酸銀等の有機酸塩等を挙げることができる。銀化合物は一種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0012】
銀化合物の濃度は、5〜60mmol/l程度とすることが好ましく15〜45mmol/l程度とすることがより好ましい。銀化合物の濃度が低すぎる場合には、形成される銀皮膜の外観が黄色を帯び易くなり、一方、銀化合物の濃度が高すぎる場合には、形成される銀皮膜の外観が白くざらついた状態になり易いので好ましくない。
【0013】
銀含有水溶液におけるアンモニア含有量は、銀イオン1モルに対して、2〜20モル程度とすることが好ましく、2〜10モル程度とすることがより好ましい。アンモニア濃度が低すぎる場合には、形成される銀皮膜は、白く、ざらついた状態となり易く、アンモニア濃度が高すぎると、銀皮膜の外観が黄色を帯び易くなるので、いずれも好ましくない。尚、アンモニアは、通常、アンモニア水として添加すればよい。
【0014】
還元剤としては、従来から無電解めっき液に配合されている各種の還元剤を用いることができる。この様な還元剤の具体例としては、ヒドラジンヒドラート、硫酸ヒドラジン等のヒドラジン化合物、ジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボラン等のアミンボラン類、水素化硼素ナトリウム、水素化硼素カリウム等の水素化硼素塩、ホルマリン等を挙げることできる。還元剤は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。特に、ヒドラジンヒドラートが好ましい。
【0015】
還元剤含有水溶液における還元剤濃度は、0.01〜0.5mol/l程度とすることが好ましく、0.1〜0.4mol/l程度とすることがより好ましい。還元剤の濃度が低すぎると、形成される銀皮膜が黄色を帯びやすく、一方、還元剤濃度が高すぎると、形成される銀皮膜は、白く、ムラが生じ易いので、いずれも好ましくない。
【0016】
本発明の無電解銀めっき液では、添加剤として、一般式:R12N(CH2CH2NR3n4(式中、R1、R2、R3、R4及びnは上記に同じ。)で表されるエチレンアミン類を用いることが必要である。該エチレンアミン類を用いることによって、ムラのない良好な光沢を有する銀皮膜を形成することが可能となる。
【0017】
一般式:R12N(CH2CH2NR3n4において、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルコシキ基又はエポキシ基であり、nは、1〜4の整数である。アルキル基としては、メチル、エチル、iso−プロピル、n−プロピル、tert−ブチル、sec.−ブチル、iso−ブチル、n−ブチル等の炭素数1〜4程度の直鎖状又は分枝状のアルキル基を例示できる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso―ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜4程度の直鎖状又は分枝状のアルコシキ基を例示できる。
【0018】
上記一般式で表されるエチレンアミン類の具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のR1、R2、R3及びR4が全て水素原子である化合物の他、N−メチルエチレンジアミン、N,N'−ジメチルエチレンジアミン、N,N,N'−トリメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N, N'−ジエチルエチレンジアミン、N,N,N'−トリエチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチルエチレンジアミン、N−プロピルエチレンジアミン、N,N'−ジプロピルエチレンジアミン、N,N,N'−トリプロピルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラプロピルエチレンジアミン、N−イソプロピルエチレンジアミン、N, N'−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N,N'−トリイソプロピルエチレンジアミン、N,N,N'N'−テトライソプロピルエチレンジアミン、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N',N'',N''−ペンタエチルジエチレントリアミン、N,N,N',N'',N''',N'''−ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、N,N,N',N'',N''',N'''−ヘキサエチルトリエチレンテトラミン等のR1、R2、R3及びR4の全て又は一部がアルキル基である化合物;N−エポキシエチレンジアミン、N,N'−ジエポキシエチレンジアミン、N,N,N'−トリエポキシエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラエポキシエチレンジアミン、N−プロポキシエチレンジアミン、N,N'−ジプロポキシエチレンジアミン、N,N,N'−トリプロポキシエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラプロポキシエチレンジアミン、N,N,N',N'',N''−ペンタエポキシジエチレントリアミン、N,N,N',N'',N''−ペンタプロポキシジエチレントリアミン、N,N,N',N'',N''',N'''−ヘキサエポキシトリエチレンテトラミン、N,N,N',N'',N''',N'''−ヘキサプロポキシトリエチレンテトラミン等のR1、R2、R3及びR4全て又は一部がエポキシ、プロポキシ基である化合物等を挙げることができる。これらの内で、R1、R2、R3及びR4が全て水素原子である化合物が好ましい。
【0019】
エチレンアミン類は、銀含有水溶液及び還元剤含有水溶液のいずれか一方又は両方に添加することができる。特に、銀含有水溶液に添加することが好ましい。
【0020】
エチレンアミン類の使用量は、銀含有水溶液と還元剤含有水溶液に含まれるエチレンアミン類の合計量として、エチレンジアミン等のn=1のエチレンアミン類については、銀イオン1モルに対して、2〜10モル程度とすることが好ましく、4〜8モル程度とすることがより好ましい。ジエチレントリアミン等のn=2のエチレンアミン類については、銀イオン1モルに対して、0.015〜0.85モル程度とすることが好ましく、0.03〜0.45モル程度とすることがより好ましい。トリエチレンテトラミン等のn=3のエチレンアミン類については、銀イオン1モルに対して、1.5×10−3〜150×10−3モル程度とすることが好ましく、10×10−3〜100×10−3モル程度とすることがより好ましい。テトラエチレンペンタミン等のn=4のエチレンアミン類については、銀イオン1モルに対して、0.2×10−3〜12.5×10−3モル程度とすることが好ましく、1×10−3〜8×10−3モル程度とすることがより好ましい。
【0021】
エチレンアミン類は、一種単独又は二種以上混合して用いることができる。n値が同一のエチレンアミン類を併用する場合には、合計量が上記した範囲内にあればよい。また、n値が異なるエチレンアミン類を混合して用いる場合には、各エチレンアミン類の使用量の範囲は、上記した使用量の範囲を基準として、その混合モル比に応じた割合とすればよい。例えば、n=1のエチレンアミン類とn=2のエチレンアミン類を1:1のモル比で用いる場合には、それぞれ、上記した使用量範囲の1/2の範囲とすればよい。即ち、n=1のエチレンアミン類については、銀化合物1モルに対して1〜5モル程度の範囲とし、n=2のエチレンアミン類については、銀イオン1モルに対して、0.0075〜0.425モル程度の範囲とすればよい。同様に、3種類以上のエチレンアミン類を併用する場合にも、各エチレンアミン類の使用量の範囲は、上記した使用量範囲を基準として、その混合モル比に応じた割合とすればよい。
【0022】
尚、本発明の無電解銀めっき液は、銀含有水溶液と還元剤含有水溶液の2液性であり、エチレンアミン類の合計量は、実際の使用時の銀含有水溶液と還元剤含有水溶液の噴霧割合に基づいて決めればよい。
【0023】
上記した銀含有水溶液及び還元剤含有水溶液は、いずれも、pH9程度以上とすることが好ましい。pHを9以上とすることによって、良好な銀めっき皮膜を安定して形成することができる。pHの上限については限定的ではないが、液管理の容易さの点から、pH14程度以下とすることが好ましい。pH調整は、通常、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、アンモニアなどを用いて行えばよい。
【0024】
本発明の無電解銀めっき液は、所定の濃度範囲の銀化合物及びアンモニアを含む銀含有水溶液と、還元剤を含有する還元剤含有水溶液をそれぞれ、別個に調製することによって得ることができ、更に、エチレンアミン類は、銀含有水溶液と還元剤含有水溶液のいずれか一方又は両方に加えればよい。
【0025】
本発明の無電解銀めっき液を用いて銀めっき皮膜を形成するには、通常、それぞれ別個に調製した銀含有水溶液と還元剤含有水溶液を、吹き付け位置が一致するように同時に被めっき物表面に吹き付ければよい。この様な方法によれば、両溶液が吹き付けられた位置において、還元反応が生じて銀めっき皮膜が形成される。
【0026】
この際、被めっき物の表面に、触媒付与を行わず直接めっき液を吹き付けることで、めっき皮膜を形成させることも可能であるが、無電解めっき処理前に無電解めっき用の触媒物質を付着させておくことがより好ましい。触媒物質を付着させる方法としては、塩酸第一スズを含む塩酸溶液によって被めっき物表面を処理した後、塩化パラジウムを含む溶液で処理する方法、塩化パラジウム及び塩化第一スズを含む溶液によって被めっき物表面を処理した後、硫酸水溶液、塩酸水溶液等を用いて活性化する方法などを例示できる。これらの方法は、センシタイジング−アクチベーティング法、キャタリスト法等として知られている公知の方法である。本発明では、これらの公知の触媒付与方法を適宜適用でき、浸漬法及びスプレー法のいずれの方法を採用してもよい。
【0027】
無電解銀めっきを行う際のめっき液の液温については特に限定的ではないが、液温が高すぎるとアンモニアの蒸発が激しく起こるので、通常、10〜40℃程度の液温とすることが好ましい。
【0028】
銀含有水溶液と還元剤含有水溶液を吹き付ける方法については特に限定的ではなく、被めっき物表面の同一の位置両溶液を同時に吹き付けることが可能な方法であればよく、通常、スプレーガンを用いて吹き付ければよい。スプレーガンについては特に限定はなく、例えば、双頭スプレーガン、同芯スプレーガン等を用いることができる。また、スプレーガンを2丁用いても良い。
【0029】
各スプレーガンから噴霧される液量は、特に限定的ではないが、通常、銀含有水溶液100体積部に対して、還元剤含有水溶液を50〜500体積部程度噴霧することが好ましい。
【0030】
噴霧圧力についても限定的ではないが、例えば、0.2〜0.6MPa程度とすればよい。噴射量は、特に限定的ではないが、例えば、銀含有水溶液と還元剤含有水溶液のそれぞれについて100〜600ml/分程度の噴霧量とすればよい。
【0031】
めっき時間については特に限定的ではないが、一箇所の吹き付け位置について、例えば、1〜5秒程度の吹き付け時間とすればよい。
【0032】
被めっき物の種類については、特に限定はなく、金属、プラスチックス、セラミックス等各種の材質の物品に対して良好な光沢を有する銀めっき皮膜を形成できる。
【0033】
特に、室内装飾品、自動車、自転車部品、家具等に対して良好な光沢を有する銀皮膜を形成するために有効に用いることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の無電解銀めっき液によれば、良好な光沢を有し、ムラ、変色等のほとんどない優れた外観の銀めっき皮膜を形成することができる。
【0035】
本発明のめっき液によれば、スプレー法によって良好な外観の銀めっき皮膜を形成できるので、大規模な装置は必要なく、安価に、短時間に良好な銀めっき皮膜を形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0037】
実施例1〜8及び比較例1
ABS樹脂にアンダーコートとしてアクリルシリコン塗料を塗布して樹脂層を形成した試験片の表面に、スプレーガン〔アネスト岩田(株)製、W−100−132G〕を用いて、活性化液〔商標名:TMPセンシタイザー、奥野製薬工業(株)製〕を吹き付けた後、洗浄を行った。次に、同様にスプレーガンを用いて、試験片の表面にPd触媒液〔商標名:TMPアクチベーター、奥野製薬工業(株)〕を吹き付けて、無電解めっき用Pd触媒を付与し、水洗した。
【0038】
このようにして処理した試験片(20cm×15cm)に、下記表1に示す組成の銀含有水溶液(溶液A)と還元剤含有水溶液(溶液B)をスプレーガンで15秒間同時に吹き付けて、銀めっき皮膜を形成した。スプレーの噴霧圧力は、0.3MPa、噴射量は、A液200ml/分、B液200ml/分で行った。
【0039】
形成された皮膜について、目視で外観を評価した。ムラ、変色のない光沢に優れた銀皮膜が形成された場合を、○と評価する。
【0040】
【表1】

【0041】
以上の結果から明らかなように、本発明の無電解銀めっき液によれば、ムラ、変色などのない良好な無電解銀めっき皮膜が形成された。これに対して、エチレンアミン類を含有しない比較例1の無電解銀めっき液を用いる場合には、形成されるめっき皮膜には、ムラが生じており、光沢の劣るものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)銀化合物及びアンモニアを含む銀含有水溶液、並びに
(ii)還元剤を含む還元剤含有水溶液
の2液からなり、
更に、一般式:R12N(CH2CH2NR3n4(式中、R1、R2、R3及びR4は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アルコシキ基又はエポキシ基である。nは、1〜4の整数である。)で表されるエチレンアミン類が、銀含有水溶液及び還元剤含有水溶液のいずれか一方又は両方に含まれていることを特徴とする、2液性無電解銀めっき液。
【請求項2】
銀含有水溶液における銀化合物濃度が、5〜60mmol/lであって、アンモニア量が銀イオン1モルに対して2〜20モルであり、
還元剤含有水溶液における還元剤濃度が0.01〜0.5mol/lであり、
銀含有水溶液及び還元剤含有水溶液に含まれる一般式:R12N(CH2CH2NR3n4(式中、R1、R2、R3、R4及びnは、上記に同じ)で表されるエチレンアミン類の合計量が、下記条件を満足することを特徴とする請求項1に記載の2液性無電解銀めっき液:
(i)n=1のエチレンアミン類の場合には、銀イオン1モルに対して2〜10モル;
(ii)n=2のエチレンアミン類の場合には、銀イオン1モルに対して0.015〜0.85モル;
(iii)n=3のエチレンアミン類の場合には、銀イオン1モルに対して1.5×10−3〜150×10−3モル;
(iv)n=4のエチレンアミン類の場合には、銀イオン1モルに対して0.2×10−3〜12.5×10−3モル;
(v)n値の異なるエチレンアミン類を併用する場合には、各エチレンアミン類の量は、上記(i)〜(iv)の範囲を基準として、混合モル比に応じた範囲とする。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の2液性無電解銀めっき液の銀含有水溶液と還元剤含有水溶液を、被めっき物に同時に吹き付けることを特徴とする無電解銀めっき方法。


【公開番号】特開2006−16659(P2006−16659A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195145(P2004−195145)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(591021028)奥野製薬工業株式会社 (132)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】