説明

2液硬化型水性接着剤

【課題】 木質材料を接着させる際に、作業上十分な閉鎖堆積時間を確保でき、短い圧締時間で優れた接着力を発揮できる2液硬化型水性接着剤を提供する。
【解決手段】 2液硬化型水性接着剤は、下記(A)液及び(B)液からなる。(A)分子内にアセトアセチル基を有する高分子化合物(A1)を含む水性溶液又は水性エマルジョン;(B)分子内の側鎖に、無置換又はモノ置換カルバモイル基及び/又は炭化水素−オキシ−カルボニル基を有するとともに、分子内の側鎖にヒドラジド基を有するヒドラジド基含有ポリマー
ヒドラジド基含有ポリマー(B)は、(メタ)アクリルアミド系ポリマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー(B1-a)と、ヒドラジン(B1-b)との反応生成物である(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)を好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液硬化型水性接着剤に関し、より詳細には、木質材料を接着させる際に、気温や材料温度の影響を受けにくく、作業上十分な閉鎖堆積時間を確保することができるとともに、短い圧締時間であっても、優れた接着力を発揮させることができる2液硬化型水性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、「接着剤を、被着材の所定の面に塗布した後、被着材同士を重ね合わせて堆積させて圧締を開始させるまでの時間であって、被着体どうしを密着させて接着させることが可能なように圧締を開始させる際に許容される時間」を「堆積時間」と称し、特に、「接着剤を、被着材の所定の面に塗布した後、被着材同士を重ね合わせて堆積させるまでの、空気中に放置しておく時間であって、被着材同士を重ね合わせて堆積させた後に、被着体どうしを密着させて接着させることが可能なように圧締を開始させる際に許容される時間」を「開放堆積時間」と称し、また、「接着剤を、被着材の所定の面に塗布して、被着材同士を重ね合わせて堆積させた後、圧締を開始させるまでの時間であって、被着体どうしを密着させて接着させることが可能なように圧締を開始させる際に許容される時間」を「閉鎖堆積時間」と称する。また、「接着剤を、被着材の所定の面に塗布し、被着材同士を重ね合わせて堆積させて圧締させた後、圧締を解除するまでの時間であって、被着体どうしを密着させて接着させることが可能なように圧締を継続する際に許容される時間」を「圧締時間」と称している。
【0003】
従って、接着剤を塗布してから圧締させるまでの時間である堆積時間には、接着剤を塗布してから、被着材同士を重ね合わせて堆積させるまでの時間である開放堆積時間と、被着材同士を重ね合わせて堆積させてから、圧締させるまでの時間である閉鎖堆積時間とが含まれる。そして、圧締を開始してから解圧するまでの時間(圧締養生時間)である圧締時間が、堆積時間又は閉鎖堆積時間の後に継続されることになる。
【0004】
木質材料が重ね合わせられた木質材料板(フラッシュパネルなど)は、木質材料を重ね合わせて積み上げ、圧締して強固に接着させることにより生産され、木質材料を接着させる際には、従来、酢酸ビニルエマルジョンを主成分とする木工用水性接着剤(「木工用酢ビエマルジョン系水性接着剤」と称する場合がある)が広く使用されてきた。この木工用酢ビエマルジョン系水性接着剤は、接着性が発現される機構が、水分が被着材中に拡散することにより硬化する機構であるため、接着させる際には、気温や材料温度の影響を大きく受けてしまう欠点がある。具体的には、夏期(例えば、気温が30℃である場合)では、閉鎖堆積時間(すなわち、被着体どうしを密着させて接着させることが可能なように圧締を開始させる際に許容される時間)や、圧締時間(すなわち、被着体どうしを密着させて接着させることが可能なように圧締を継続する際に許容される時間)が短くなってしまい、一方、冬期(例えば、気温が5℃である場合)では、逆に、閉鎖堆積時間や、圧締時間が長くなり、その差が極端であるため、安定した作業時間を設定しにくいという問題があった。
【0005】
このような欠点を改善するため、木工用水性接着剤として、例えば、アセトアセチル基含有高分子化合物を含む第1液[(A液)]と、ヒドラジン化合物を含む第2液[(B)液]とからなる2液分別塗布型水性接着剤を使用する方法が採用されている(特許文献1参照)。また、樹脂エマルジョンおよびアセトアセチル化ポリビニルアルコールを含む第1液[(A液)]と、ヒドラジン誘導体を含む第2液[(B)液]とからなる2液分別塗布型水性接着剤も提案されている(特許文献2参照)。これらの2液分別塗布型水性接着剤は、接着性が発現される機構が、化学反応により硬化する機構であるため、接着させる際には、気温や材料温度の影響を受けにくくなっている。しかしながら、このような従来の2液分別塗布型水性接着剤は、速硬化型(瞬硬化型)であるので、ヒドラジン化合物としては、通常、アジピン酸ジヒドラジドなどの低分子量のヒドラジド化合物が用いられている。そのため、この2液分別塗布型水性接着剤は、ゲル化速度が速く、例えば、低分子量のヒドラジド化合物を含む(B)液をプライマー成分として使用して、2つの被着面のうち一方の被着面に塗布し、(A)液を主剤として使用し、他方の被着面に塗布した後、プライマー塗布面と、主剤塗布面とを接触させると、直ちにゲル化が進行してしまい、プレス(圧締)までの許容される閉鎖堆積時間が非常に短く、作業性の面で難点がある。
【0006】
また、木質材料の接着においては、耐水性を要求される場合が多く、この場合は、水性高分子−イソシアネート系化合物の接着剤(「水性高分子−イソシアネート系接着剤」と称する場合がある)が使用される。この水性高分子−イソシアネート系接着剤も、基本的には、木工用酢ビエマルジョン系水性接着剤と同様に、気温や材料温度の影響を大きく受けてしまうという欠点がある。
【0007】
さらに、従来の水性高分子−イソシアネート系接着剤は、プレス解圧後において、接着層の剥離がなく、最終接着性能として、高度な耐水性を要求されるJAS構造用集成材の規格に適合するためには、圧締時間が30分以上必要であり、圧締時間が非常に長く、生産性が低い。
【0008】
そのため、フラッシュパネル等の木質材料が重ね合わせられた木質材料板の製造において、木質材料を接着させる際に、気温や材料温度の影響を受けにくく、さらに、作業上十分な閉鎖堆積時間を確保することができるとともに、短い圧締時間であっても、優れた接着力を発揮させることができる2液硬化型水性接着剤(特に、2液分別塗布型水性接着剤)が求められている。
【0009】
【特許文献1】特公平1−60192号公報
【特許文献2】特許第3181048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、例えば、アセトアセチル基含有高分子化合物を含む第1液と、ヒドラジン化合物を含む第2液とからなる2液分別塗布型水性接着剤において、第3液として、イソシアネート化合物を用い、この第3液としてのイソシアネート化合物が配合され、耐水性が向上されたアセトアセチル基含有高分子化合物を含む第1液[(A)液]と、ヒドラジン化合物を含む第2液[(B)液]とからなる2液分別塗布型水性接着剤を用いる方法が検討されている。しかしながら、従来の2液分別塗布型水性接着剤は、速硬化型であるため、閉鎖堆積時間が短く、フラッシュパネル等の木質材料が重ね合わせられた木質材料板の製造において、木質材料を接着させる際に、作業上、十分な閉鎖堆積時間を確保することが困難となっていた。そのため、未だに、木質材料を接着させる際に、作業上十分な閉鎖堆積時間を確保することができるとともに、短い圧締時間であっても、優れた接着力を発揮させることができる2液硬化型水性接着剤(特に、2液分別塗布型水性接着剤)が開発されていないのが現状である。
【0011】
なお、従来の2液分別塗布型水性接着剤は、速硬化型(瞬硬化型)であるので、前述のように、低分子量のヒドラジド化合物が用いられており、通常、高分子量のヒドラジド化合物は用いられていない。そのため、ヒドラジド化合物として、ヒドラジド基を含有するポリマーの例が挙げられていても、ヒドラジド基を含有するポリマーは、速硬化性を発揮させるために、分子量が低い(例えば、1万未満である)ことが重要である。
【0012】
従って、本発明の目的は、木質材料を接着させる際に、気温や材料温度の影響を受けにくく、作業上十分な閉鎖堆積時間を確保することができるとともに、短い圧締時間であっても、優れた接着力を発揮させることができる2液硬化型水性接着剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、さらに、優れた耐水性を発揮させることができる2液硬化型水性接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、アセトアセチル基含有高分子化合物の水性溶液又は水性エマルジョンを第1液[(A)液]とする2液分別塗布型水性接着剤において、第2液[(B)液]として、特定のヒドラジド基を含有する化合物を用いると、閉鎖堆積時間および圧締時間を制御することができることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。
【0014】
すなわち、本発明は、下記(A)液及び(B)液からなる2液硬化型水性接着剤である。
(A)分子内にアセトアセチル基を有する高分子化合物(A1)を含む水性溶液又は水性エマルジョン
(B)分子内の側鎖に、無置換又はモノ置換カルバモイル基及び/又は炭化水素−オキシ−カルボニル基を有するとともに、分子内の側鎖にヒドラジド基を有するヒドラジド基含有ポリマー
【0015】
本発明の2液硬化型水性接着剤において、ヒドラジド基含有ポリマー(B)は、エチレン性不飽和結合を有するモノマー成分の重合により形成された骨格又は主鎖を有していることが好ましい。ヒドラジド基含有ポリマー(B)としては、(メタ)アクリルアミド系ポリマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー(B1-a)と、ヒドラジン(B1-b)との反応生成物である(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)を好適に用いることができる。
【0016】
また、分子内にアセトアセチル基を有する高分子化合物(A1)としては、分子内にアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコールを好適に用いることができる。高分子化合物(A1)を含む水性溶液又は水性エマルジョン(A)中には、さらに、イソシアネート系化合物(A2)が含まれていてもよい。
【0017】
本発明の2液硬化型水性接着剤は、2液分別塗布型水性接着剤であってもよい。
【0018】
本発明は、また、2液硬化型水性接着剤を用いて、被着材を接着させる方法であって、2液硬化型水性接着剤として、前記2液硬化型水性接着剤を用い、且つ、一方の被着材の表面に水性溶液又は水性エマルジョン(A)を塗布し、他方の被着材の表面にヒドラジド基含有ポリマー(B)を塗布することにより、2つの被着材を接着させることを特徴とする2液硬化型水性接着剤による被着材の接着方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の2液硬化型水性接着剤は、木質材料を接着させる際に、気温や材料温度の影響を受けにくく、作業上十分な閉鎖堆積時間を確保することができるとともに、短い圧締時間であっても、優れた接着力を発揮させることができる。さらに、優れた耐水性を発揮させることができる。そのため、前記2液硬化型水性接着剤を用いることにより、優れた生産性で、フラッシュパネル等の木質材料が重ね合わせられた木質材料板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
[(A)液]
本発明では、2液硬化型水性接着剤における第1液[(A)液]として、分子内にアセトアセチル基[アセチル−アセチル基;CH3−C(=O)−CH2−C(=O)−]を有する高分子化合物(A1)(「アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)」と称する場合がある)を含む水性溶液又は水性エマルジョン(A)を用いている。(A)液中のアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)は、アセトアセチル基を利用して、2液硬化型水性接着剤における第2液[(B)液]として用いられているヒドラジド基含有ポリマー(B)と反応して架橋反応が進行し、この架橋反応により、2液硬化型水性接着剤の接着性が発現されている。
【0021】
(アセトアセチル基含有高分子化合物(A1))
アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)としては、分子内にアセトアセチル基を少なくとも1つ有する高分子化合物であれば特に制限されない。アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)において、アセトアセチル基は、高分子化合物中に少なくとも1つ含有されていればよく、例えば、高分子鎖の主鎖中(主鎖の内部中や末端など)又は側鎖中(側鎖の内部中や末端など)に含有されている。アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)としては、アセトアセチル基を、主鎖の末端や側鎖の末端に有していることが好ましく、特に、側鎖の末端に有していることが好ましい。
【0022】
より具体的には、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)としては、例えば、水溶性の高分子化合物(例えば、ポリビニルアルコール;ヒドロキシエチルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース;デンプンなどのヒドロキシル基含有水溶性高分子化合物など)を公知の方法によりアセトアセチル化した水溶性高分子化合物や、アセトアセチル基含有モノマー[例えば、アセトアセトキシメチル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2−アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、3−アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、4−アセトアセトキシブチル(メタ)アクリレートなどのアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート;ビニルアセトアセテート;アリルアセトアセテートなど]に対応する(由来する)構成単位(繰り返し単位)を含む水溶性高分子化合物などが挙げられる。なお、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0023】
アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)としては、例えば、分子内にアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル化ポリビニルアルコール)、分子内にアセトアセチル基を有する変性ヒドロキシアルキルセルロース(アセトアセチル化ヒドロキシアルキルセルロース)、分子内にアセトアセチル基を有するデンプン(アセトアセチル化デンプン)等の分子内にアセトアセチル基を有する水溶性高分子化合物(アセトアセチル化水溶性高分子化合物)を好適に用いることができ、なかでも、アセトアセチル化ポリビニルアルコールを好適に用いることができる。
【0024】
なお、前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコール中のヒドロキシル基における水素原子が、アセトアセチル基に変性された変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル変性ポリビニルアルコール)である。前記アセトアセチル化ポリビニルアルコールにおいて、その分子中のアセトアセチル化度(アセトアセチル化変性度)は、特に制限されず、例えば、0.1〜20モル%程度の範囲から選択することができ、好ましくは2〜20モル%(特に、3〜10モル%)程度である。アセトアセチル化ポリビニルアルコールにおける分子中のアセトアセチル化度は、2モル%未満であると、アセトアセチル化ポリビニルアルコールとヒドラジノ基含有アミド系化合物(B)との反応が遅くなり、一方、20モル%を超えると、アセトアセチル化ポリビニルアルコールの溶解性の点などで問題があり、2液硬化型水性接着剤組成物の調製が困難になる。
【0025】
また、アセトアセチル化ポリビニルアルコールの重合度は、特に制限されず、例えば、200〜3000(好ましくは500〜2500、さらに好ましくは1000〜2000)程度の範囲から選択することができる。
【0026】
さらに、アセトアセチル化ポリビニルアルコールにおいて、そのけん化度も特に制限されず、例えば80〜100モル%(好ましくは85〜98モル%)程度の範囲から選択することができる。なお、アセトアセチル化ポリビニルアルコールとしては、ケン化度が異なる複数のアセトアセチル化ポリビニルアルコールを混合して用いることもできる。
【0027】
アセトアセチル化ポリビニルアルコールの調製方法は、特に制限されず、例えば、ポリビニルアルコールとジケテン等を反応させる公知の方法などが挙げられる。このようなアセトアセチル化ポリビニルアルコールとしては、例えば、日本合成化学工業株式会社から商品名「ゴーセファイマーZ100」、商品名「ゴーセファイマーZ200」、商品名「ゴーセファイマーZ200H」、商品名「ゴーセファイマーZ210」、商品名「ゴーセファイマーZ220」、商品名「ゴーセファイマーZ320」などが市販されている。
【0028】
(アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を含む水性溶液)
(A)液において、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を含む水性溶液(「水性溶液(A)」と称する場合がある)としては、分子内にアセトアセチル基を少なくとも1つ有する高分子化合物を含む水性溶液であれば特に制限されない。該水性溶液(A)におけるアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)としては、前記例示のアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)(例えば、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ヒドロキシアルキルセルロース、アセトアセチル化デンプン等のアセトアセチル化水溶性高分子化合物など)から適宜選択して用いることができる。
【0029】
なお、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)として、アセトアセチル化ポリビニルアルコールを用いる場合、水性溶液(A)中に、アセトアセチル化されていない通常のポリビニルアルコールを添加して(配合して)、作業性等を改善することも可能である。
【0030】
水性溶液(A)は、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が組み合わせられて用いられていてもよい。
【0031】
(アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を含む水性エマルジョン)
一方、(A)液において、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を含む水性エマルジョン(「水性エマルジョン(A)」と称する場合がある)としては、分子内にアセトアセチル基を少なくとも1つ有する高分子化合物を含む水性エマルジョンであれば特に制限されない。水性エマルジョン(A)におけるアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)としては、前記例示のアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)から適宜選択して用いることができる。水性エマルジョン(A)中におけるアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)の含有形態は、特に制限されない。例えば、水性エマルジョン(A)において、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)は、乳化剤として用いられることにより、水性エマルジョン(A)中に含まれていてもよく、エマルジョン粒子を構成する主ポリマー成分として用いられることにより、水性エマルジョン(A)中に含まれていてもよい。
【0032】
水性エマルジョン(A)において、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)が乳化剤として用いられている場合、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)としては、例えば、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ヒドロキシアルキルセルロース、アセトアセチル化デンプンなどを用いることができる。この場合、エマルジョン粒子を構成する主成分としては、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂成分や、スチレン−ブタジエンゴム等のゴム成分などが挙げられる。すなわち、水性エマルジョン(A)としては、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)が乳化剤として用いられた各種樹脂エマルジョン(例えば、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル系樹脂エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョンなど)や、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)が乳化剤として用いられたゴムラテックス(例えば、スチレン−ブタジエンゴムラテックスなど)が挙げられる。
【0033】
また、水性エマルジョン(A)において、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)がエマルジョン粒子を構成する主ポリマー成分として用いられている場合、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)としては、例えば、アセトアセチル化された水溶性高分子化合物(例えば、アセトアセチル化ポリビニルアルコールなど)や、分子内にアセトアセチル基を少なくとも1つ有するモノマー(アセトアセチル基含有モノマー)に対応する構成単位を含む水溶性高分子化合物などを用いることができる。従って、水性エマルジョン(A)は、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)が、必要に応じて乳化剤(例えば、界面活性剤、酸、アルカリなど)や、樹脂エマルジョン等を用いて、エマルジョン化された水性エマルジョンなどが挙げられる。前記乳化剤や樹脂エマルジョンとしては、特に制限されず、公知の乳化剤や樹脂エマルジョンから適宜選択して用いることができる。例えば、樹脂エマルジョンとしては、酢酸ビニル系樹脂エマルジョン(ポリ酢酸ビニルエマルジョン、エチレン−酢酸ビニル系樹脂エマルジョンなど)、アクリル系樹脂エマルジョン(アクリル酸エステル共重合樹脂エマルジョンなど)、ゴムラテックス(スチレン−ブタジエン系樹脂エマルジョンなど)等が挙げられる。なお、酢酸ビニル系樹脂エマルジョンやアクリル系樹脂エマルジョン等の樹脂エマルジョンは、乳化重合物であってもよく、溶液重合等により得られたポリマーを乳化させた乳化物であってもよい。
【0034】
なお、水性エマルジョン(A)中のアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)において、アセトアセチル基含有モノマーに対応する構成単位を含む水溶性高分子化合物としては、アセトアセチル基含有モノマーと、必要に応じて、前記アセトアセチル基含有モノマーと共重合可能なモノマー(「共重合モノマー」と称する場合がある)との重合(特に乳化重合)により得られる水溶性高分子化合物を好適に用いることができる。前記アセトアセチル基含有モノマーとしては、前記に例示したアセトアセチル基含有モノマーなどが挙げられる。アセトアセチル基含有モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】
前記共重合モノマーとしては、アセトアセチル基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限されず、例えば、各種のエチレン性不飽和単量体を用いることができる。共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどのアクリル系単量体;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基含有ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどのヒドロキシル基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有ビニル単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有ビニル単量体;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどのアルコキシ基含有ビニル単量体;N−ビニルピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリンなどの複素環含有ビニル単量体;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン類やジエン類などが挙げられる。共重合性モノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0036】
なお、アセトアセチル基含有モノマーに対応する構成単位を含む水溶性高分子化合物は、共重合性モノマー成分として、酢酸ビニルが用いられている場合、少なくとも部分的にケン化されていてもよい。
【0037】
このように、本発明において、(A)液として用いる水性エマルジョン(A)は、(1)アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を乳化剤として用いて、ポリマーの乳化又はモノマーの乳化重合により得られた水性エマルジョンや、(2)アセトアセチル基含有モノマーと、必要に応じて共重合モノマーとの重合(特に乳化重合)により得られる水溶性高分子化合物の水性エマルジョン等の何れであってもよく、またこれらを2種以上組み合わせたものであってもよい。すなわち、水性エマルジョン(A)は、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が組み合わせられて用いられていてもよい。
【0038】
水性エマルジョン(A)としては、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)が乳化剤として用いられた各種樹脂エマルジョン(特に、アクリル系樹脂エマルジョン)が好適である。
【0039】
(A)液は、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を含む水性溶液又は水性エマルジョンであり、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を含む水性溶液と、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を含む水性エマルジョンとが組み合わせられていてもよい。
【0040】
(A)液におけるアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)の濃度(固形分濃度)としては、特に制限されないが、例えば、1〜25質量%(好ましくは3〜10質量%)の範囲から選択することができる。アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)の濃度が、(A)液全量に対して1質量%未満であると、ヒドラジド基含有ポリマー(B)との反応性が低下して、初期接着強さが低下し、一方、25質量%を超えると、(A)液全体の粘度が高くなり、塗布しにくくなるなどの作業性が低下する。
【0041】
なお、(A)液が、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を含む水性エマルジョンである場合、(A)液における固形分濃度としては、60質量%以下(例えば、10〜60質量%、好ましくは15〜40質量%、さらに好ましくは15〜30質量%)であることが望ましい。
【0042】
なお、本発明では、(A)液としてのアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を含む水性溶液又は水性エマルジョン(A)中には、酸、アルカリ、界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤など)等の乳化剤や、樹脂エマルジョン(前記に例示の樹脂エマルジョンなど)の他、充填剤(カオリン、タルク、クレー、炭酸カルシウムなど)、可塑剤、着色剤、防腐剤、防錆剤、防かび剤、粘度調整剤、濡れ促進剤、粘性改良剤、香料等の公知の添加剤などが含まれていてもよく、また、水性の有機溶媒(例えば、メタノール、エタノールなどのアルコールやグリコールエーテル類など)が含まれていてもよい。
【0043】
(A)液としてのアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を含む水性溶液又は水性エマルジョン(A)の調製方法は、特に制限されず、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)の種類や、水性溶液又は水性エマルジョン等の含有形態などに応じて適宜選択することができる。また、市販されているアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を含む水性溶液又は水性エマルジョンを使用することもできる。なお、乳化剤、樹脂エマルジョン、各種添加剤、下記に示されるイソシアネート系化合物(A2)などを用いる場合、これらは、適宜な段階で(例えば、水性溶液や水性エマルジョンの調製中や、調製後などで)配合することができる。
【0044】
(イソシアネート系化合物(A2))
本発明では、(A)液としてのアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を含む水性溶液又は水性エマルジョン(A)中に、さらに、イソシアネート系化合物(A2)が含まれていてもよい。イソシアネート化合物(A2)を水性溶液又は水性エマルジョン(A)に配合することにより、2液硬化型水性接着剤の耐水性や初期接着強さを向上させることができる。このようなイソシアネート化合物(A2)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネート系化合物を用いることができる。イソシアネート化合物(A2)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0045】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネ−ト等の脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0046】
脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0047】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネ−ト、p−フェニレンジイソシアネ−ト、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,4−ジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,5−ジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルエ−テルジイソシアネ−ト、2−ニトロジフェニル−4,4´−ジイソシアネ−ト、2,2´−ジフェニルプロパン−4,4´−ジイソシアネ−ト、3,3´−ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジイソシネ−ト、4,4´−ジフェニルプロパンジイソシアネ−ト、3,3´−ジメトキシジフェニル−4,4´−ジイソシアネ−ト等の芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0048】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、ω,ω´−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0049】
なお、本発明では、イソシアネート系化合物(A2)としては、前記例示の脂肪族ポリイソシアネ−ト、脂環式ポリイソシアネ−ト、芳香族ポリイソシアネ−ト、芳香脂肪族ポリイソシアネ−トによる二量体や三量体、反応生成物又は重合物(例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの二量体や三量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなど)なども用いることができる。
【0050】
なお、イソシアネート化合物(A2)の配合量が多くなるに従い、耐水性能は向上するが、イソシアネート化合物(A2)は、接着物が「特殊合板の日本農林規格の2類以上」の耐水性を要求される場合に、用いられることが多い。このように、イソシアネート化合物(A2)を用いる場合、イソシアネート化合物(A2)の添加量としては、(A)液中のアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)100質量部に対して、1〜30質量部(好ましくは5〜20質量部)の範囲から選択することができ、15質量部程度であることが好ましい。イソシアネート化合物(A2)の割合が、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)100質量部に対して、1質量部未満であると、耐水性向上に与える効果が少なく、一方、30質量部を超えると、可使時間が短くなるなどの制約が生じ、作業性が低下する。
【0051】
なお、イソシアネート化合物(A2)は、(B)液中のヒドラジド基含有ポリマー(B)におけるヒドラジド基などと反応して、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)の架橋に関与していると思われる。
【0052】
[(B)液]
本発明では、2液硬化型水性接着剤における第2液[(B)液]として、分子内の側鎖に、無置換又はモノ置換カルバモイル基[「−C(=O)−NHR」(Rは水素原子または炭化水素基である)]、及び/又は、炭化水素−オキシ−カルボニル基[「−C(=O)−OR´」(R´は炭化水素基である)]を有するとともに、分子内の側鎖にヒドラジド基[「−C(=O)−NH−NH2」;カルバゾイル基]を有するヒドラジド基含有ポリマー(「ヒドラジド基含有ポリマー(B)」と称する場合がある)を用いている。ヒドラジド基含有ポリマー(B)は、ヒドラジド基が、(A)液中のアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)におけるアセトアセチル基(特に、末端のアセチル基)と反応して、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を架橋させる。
【0053】
前記式「−C(=O)−NHR」におけるRや、前記式「−C(=O)−OR´」におけるR´としての炭化水素基としては、特に制限されず、例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基等)などが挙げられ、アルキル基が好適である。該アルキル基としては、特に制限されず、例えば、炭素数が1〜20のアルキル基であってもよいが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の低級のアルキル基[好ましくは炭素数が1〜4(さらに好ましくは炭素数が1〜3、特に炭素数が1又は2)のアルキル基]が好適である。RやR´としての炭化水素基は、1種のみであってもよく、2種以上が組み合わせられていてもよい。
【0054】
ヒドラジド基含有ポリマー(B)としては、分子内の側鎖に無置換又はモノ置換カルバモイル基及び/又は炭化水素−オキシ−カルボニル基を少なくとも1つ有するとともに、分子内の側鎖にヒドラジド基を少なくとも1つ有するヒドラジド基含有ポリマーであれば特に制限されない。ヒドラジド基含有ポリマー(B)は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。このようなヒドラジド基含有ポリマー(B)において、1分子中の無置換又はモノ置換カルバモイル基及び/又は炭化水素−オキシ−カルボニル基の数や、1分子中のヒドラジド基の数としては、それぞれ、1つ以上であれば特に制限されず、ヒドラジド基含有ポリマー(B)の重合度(又は重量平均分子量)やヒドラジド化率などに応じて適宜選択することができる。なお、1分子中のヒドラジド基の数としては、2つ以上であることが好ましい。
【0055】
なお、ヒドラジド基含有ポリマー(B)は、骨格又は主鎖に、アミド結合部位(「−NHCO−」結合部位)を有していないことが重要である。
【0056】
本発明では、ヒドラジド基含有ポリマー(B)のヒドラジド化率(カルバゾイル基化率)としては、25モル%以上(好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは35モル%以上、特に40モル%以上)の範囲から適宜選択することができる。なお、ヒドラジド基含有ポリマー(B)のヒドラジド化率の上限としては、無置換又はモノ置換カルバモイル基を有しているため100モル%未満であれば特に制限されないが、閉鎖堆積時間などを考慮すると、例えば、98モル%以下(好ましくは90モル%以下、さらに好ましくは85モル%以下、特に70モル%以下)であることが望ましい。ヒドラジド基含有ポリマー(B)は、そのヒドラジド化率が25モル%未満であると、2液硬化型水性接着剤の接着強さが低下する。
【0057】
本発明において、ヒドラジド基含有ポリマー(B)のヒドラジド化率(モル%)とは、ヒドラジド基含有ポリマー(B)を構成している繰り返し単位(構成単位またはモノマー単位)の全モル数に対して、ヒドラジド基を有している繰り返し単位(構成単位またはモノマー単位)のモル数の割合(モル%)を意味している。
【0058】
ヒドラジド基含有ポリマー(B)のヒドラジド化率(モル%)は、酸化還元滴定方法を利用して求めることができる。具体的には、ヒドラジド基含有ポリマー(B)が、例えば、モノマー単位として、ヒドラジド基を有するモノマー単位(分子量:Mh)と、無置換又はモノ置換カルバモイル基を有するモノマー単位(分子量:Ma)とを有している場合、次のようにして、ヒドラジド基含有ポリマー(B)のヒドラジド化率(モル%)を求めることができる。もちろん、他のヒドラジド基含有ポリマー(B)についても、同様にして、ヒドラジド化率(モル%)を求めることができる。
【0059】
まず、ヒドラジド基含有ポリマー(B)[モノマー単位として、ヒドラジド基を有するモノマー単位(分子量:Mh)と、無置換又はモノ置換カルバモイル基を有するモノマー単位(分子量:Ma)とを有しているヒドラジド基含有ポリマー(B)]を約0.1g程度の質量で正確に秤量し(質量:W)、ヨウ素フラスコ中に入れた後、脱イオン水を80ml加えて、ヒドラジド基含有ポリマー(B)を脱イオン水に溶解させて、ヒドラジド基含有ポリマー(B)の水溶液を調製する。ヒドラジド基含有ポリマー(B)の水溶液を調製した後、3規定の水酸化ナトリウム水溶液(3N−NaOH)を約10ml加え、1時間攪拌する。1時間攪拌した後、1/10規定のヨウ素液(1/10N−ヨウ素液)をホールピペットを用いて50ml加え、4時間攪拌する。4時間攪拌した後、3規定の塩酸水溶液(3N−HCl)を約15ml加え、10分間攪拌する。10分間攪拌した後、澱粉を指示薬として加え、1/10規定のチオ硫酸ナトリウム液で滴定を行い(液が褐色から無色透明になった時点を終点とする)、1/10規定のチオ硫酸ナトリウム液の滴定量を測定し、ヒドラジド基含有ポリマー(B)の水溶液についての1/10規定のチオ硫酸ナトリウム液の滴定量(W1)を求める。
【0060】
また、ヒドラジド基含有ポリマー(B)を用いずに、前記と同様の操作を行って、1/10規定のチオ硫酸ナトリウム液の滴定量を測定し、ヒドラジド基含有ポリマー(B)を含有していない脱イオン水(ブランク状態)についての1/10規定のチオ硫酸ナトリウム液の滴定量(W0)を求める。
【0061】
そして、下記の計算式(1)に従って、ヒドラジド基含有ポリマー(B)のヒドラジド化率(モル%)を算出する。
【0062】
ヒドラジド化率(モル%)=[mh/(mh+ma)]×100 (1)
[計算式(1)において、mhはヒドラジド基を有するモノマー単位のモル数であり、下記の計算式(1a)により求められる。また、maは無置換又はモノ置換カルバモイル基を有するモノマー単位のモル数であり、下記の計算式(1b)により求められる]
h=0.000025×(W0−W1) (1a)
[計算式(1a)において、W1はヒドラジド基含有ポリマー(B)の水溶液についての1/10規定のチオ硫酸ナトリウム液の滴定量であり、W0はブランク状態についての1/10規定のチオ硫酸ナトリウム液の滴定量である]
a=[W−(Mh×mh)]/Ma (1b)
[計算式(1b)において、Wはヒドラジド基含有ポリマー(B)の質量である。Mhはヒドラジド基を有するモノマー単位の分子量であり、Maは無置換又はモノ置換カルバモイル基を有するモノマー単位の分子量である。mhは前記に同じ]
【0063】
なお、ヒドラジド基含有ポリマー(B)は、分子内の側鎖に無置換又はモノ置換カルバモイル基及び/又は炭化水素−オキシ−カルボニル基を1つ以上有するとともに、分子内の側鎖にヒドラジド基を1つ以上有していれば、分子中に(特に分子内の側鎖に)、1種又は2種以上の他の基を有していてもよい。このような他の基としては、特に制限されず、例えば、カルボキシル基、エステル結合を有する基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基など)、ジ置換カルバモイル基、炭化水素基(アルキル基、アリール基、シクロアルキル基など)、アルキル−カルボニル−オキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ヒドロキシ−アルキル−オキシ−カルボニル基、エポキシ−アルキル−オキシ−カルボニル基、アミノ−アルキル−オキシ−カルボニル基、アルコキシ−アルキル−オキシ−カルボニル基等が挙げられる。
【0064】
ヒドラジド基含有ポリマー(B)は、ポリマーであるため、その主鎖の繰り返し単位(構成単位またはモノマー単位)の数は、2以上となっている。ヒドラジド基含有ポリマー(B)における主鎖の繰り返し単位の数としては、2以上であれば、特に制限されず、目的とする閉鎖堆積時間や圧締時間などに応じて適宜選択することができる。具体的には、ヒドラジド基含有ポリマー(B)における主鎖の繰り返し単位の数としては、例えば、下記の重量平均分子量に相当する数(例えば、100〜1500)の範囲から選択することができる。
【0065】
本発明では、ヒドラジド基含有ポリマー(B)の重量平均分子量としては、10000未満であってもよいが、10000以上の範囲から選択することが好適である。また、ヒドラジド基含有ポリマー(B)の重量平均分子量の上限としては、特に制限されず、目的とする閉鎖堆積時間や圧締時間などに応じて適宜選択することができ、例えば、150000以下であってもよい。具体的には、ヒドラジド基含有ポリマー(B)の重量平均分子量としては、例えば、10000〜150000(好ましくは12000〜100000、さらに好ましくは15000〜50000)の範囲から選択することができる。
【0066】
なお、ヒドラジド基含有ポリマー(B)の重量平均分子量は、ゲルパーミェーションクロマトグラフにより求めることができる。具体的には、装置商品名「HLC−8220GPC」(東ソー社製)を用いて、下記の測定条件で測定することにより、ヒドラジド基含有ポリマー(B)の重量平均分子量を求めることができる。
測定条件
カラム:TSK−GEL ALPHA−2500, TSK−GEL ALPHA−4000 ,TSK−GEL ALPHA−6000
カラム温度:40℃
溶離液:10Mm LiBr水溶液
流速:1ml/min
スタンダード:Poly(ethylene oxide);分子量150, 620, 1470, 2.4×104, 5.0×104, 1.07×105, 1.4×105 , 2.5×105, 5.4×105
【0067】
本発明では、ヒドラジド基含有ポリマー(B)としては、その骨格又は主鎖として、エチレン性不飽和結合を有するモノマー成分(「エチレン性不飽和単量体」と称する場合がある)の重合(共重合を含む)により形成された骨格又は主鎖を有していることが好ましい。このような骨格又は主鎖としては、例えば、繰り返し単位(構成単位またはモノマー単位)として、「−CH2−CR1X−」(R1は水素原子又はメチル基であり、Xは無置換又はモノ置換カルバモイル基を含有する基、または炭化水素−オキシ−カルボニル基を含有する基である)と、「−CH2−CR1Y−」(Yはヒドラジド基を含有する基である。R1は前記に同じ)とを少なくとも有している骨格又は主鎖などが挙げられる。前記式「−CH2−CR1X−」において、Xとしての無置換又はモノ置換カルバモイル基を含有する基としては、無置換又はモノ置換カルバモイル基を含有している基であれば特に制限されず、例えば、無置換又はモノ置換カルバモイル−アルキル基等の無置換又はモノ置換カルバモイル−有機基であってもよいが、無置換又はモノ置換カルバモイル基が好適である。すなわち、無置換又はモノ置換カルバモイル基は、骨格又は主鎖の炭素原子に、2価の有機基を介して結合していてもよいが、直接に結合していることが好ましい。
【0068】
また、Xとしての炭化水素−オキシ−カルボニル基を含有する基としては、炭化水素−オキシ−カルボニル基を含有している基であれば特に制限されず、例えば、炭化水素−オキシ−カルボニル−アルキル基等の炭化水素−オキシ−カルボニル−有機基であってもよいが、炭化水素−オキシ−カルボニル基が好適である。すなわち、炭化水素−オキシ−カルボニル基は、骨格又は主鎖の炭素原子に、2価の有機基を介して結合していてもよいが、直接に結合していることが好ましい。
【0069】
さらに、前記式「−CH2−CR1Y−」において、Yとしてのヒドラジド基を含有する基としては、ヒドラジド基を含有している基であれば特に制限されず、ヒドラジド−アルキル基等のヒドラジド−有機基であってもよいが、ヒドラジド基が好適である。すなわち、ヒドラジド基は、骨格又は主鎖の炭素原子に、2価の有機基を介して結合していてもよいが、直接に結合していることが好ましい。
【0070】
従って、ヒドラジド基含有ポリマー(B)としては、繰り返し単位として、無置換又はモノ置換(メタ)アクリルアミドによる「−CH2−CR1(CONHR)−」(R、R1は前記に同じ)、及び/又は、(メタ)アクリル酸エステルによる「−CH2−CR1(COOR´)−」(R´、R1は前記に同じ)と、(メタ)アクリル酸ヒドラジドによる「−CH2−CR1(CONHNH2)−」(R1は前記に同じ)とを少なくとも有している(メタ)アクリル酸ヒドラジド系共重合体が好適である。なお、該(メタ)アクリル酸ヒドラジド系共重合体には、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドラジド−(メタ)アクリルアミド系共重合体、(メタ)アクリル酸ヒドラジド−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、(メタ)アクリル酸ヒドラジド−(メタ)アクリルアミド−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体などが含まれる。このような(メタ)アクリル酸ヒドラジド系共重合体は、繰り返し単位として、(メタ)アクリル酸ヒドラジド、無置換又はモノ置換(メタ)アクリルアミドまたは(メタ)アクリル酸エステルに対して共重合が可能なモノマー成分による繰り返し単位を有していてもよい。このような繰り返し単位としては、例えば、「−CH2−CR12−」(R1は前記に同じ。R2はヒドラジド基、無置換又はモノ置換カルバモイル基および炭化水素−オキシ−カルボニル基以外の基である)が挙げられる。なお、R2の基としては、例えば、カルボキシル基、フェニル基、アルキル−カルボニル−オキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基、ヒドロキシ−アルキル−オキシ−カルボニル基、エポキシ−アルキル−オキシ−カルボニル基、アミノ−アルキル−オキシ−カルボニル基、水素原子、アルキル基、アルキレン基、アルコキシ−アルキル−オキシ−カルボニル基、複素環、N,N−ジアルキル−アミノ−アルキル−オキシ−カルボニル基などが挙げられる。このようなR2の各種基におけるアルキル基部位(例えば、アルキル−カルボニル−オキシ基におけるアルキル基部位など)のアルキル基としては、特に制限されず、例えば、炭素数が1〜20のアルキル基から適宜選択することができる。
【0071】
なお、(メタ)アクリル酸ヒドラジド系共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体などのいずれの形態の共重合体であってもよいが、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0072】
本発明では、アクリル酸ヒドラジド、メタクリル酸ヒドラジドを、(メタ)アクリル酸ヒドラジドと総称する。また、アクリルアミド、メタクリルアミドを、(メタ)アクリルアミドと総称し、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルを、(メタ)アクリル酸エステルと総称する。なお、その他の化合物についても同様に総称する。
【0073】
このような(メタ)アクリル酸ヒドラジド系共重合体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド系ポリマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー(B1-a)と、ヒドラジン(B1-b)との反応生成物である(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)などが挙げられる。なお、(メタ)アクリルアミド系ポリマーと、ヒドラジン(B1-b)との反応により得られる(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)は、(メタ)アクリルアミド系ポリマーにおける無置換又はモノ置換カルバモイル基が、ヒドラジン(B1-b)との反応により、部分的に、ヒドラジド基(カルバゾイル基)に変換された(ヒドラジド化された)アミノ変性ポリ(メタ)アクリルアミド系ポリマーである。また、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーと、ヒドラジン(B1-b)との反応により得られる(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)は、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーにおける炭化水素−オキシ−カルボニル基が、ヒドラジン(B1-b)との反応により、部分的に、ヒドラジド基(カルバゾイル基)に変換された(ヒドラジド化された)ヒドラジド変性ポリ(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーである。さらに、(メタ)アクリルアミド系ポリマーおよび(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーと、ヒドラジン(B1-b)との反応により得られる(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)は、(メタ)アクリルアミド系ポリマーにおける無置換又はモノ置換カルバモイル基、及び/又は、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーにおける炭化水素−オキシ−カルボニル基が、ヒドラジン(B1-b)との反応により、部分的に、ヒドラジド基(カルバゾイル基)に変換された(ヒドラジド化された)(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマーである。
【0074】
(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)を得るための(メタ)アクリルアミド系ポリマーとしては、繰り返し単位として、無置換又はモノ置換(メタ)アクリルアミド単位を少なくとも有しているポリマーであれば特に制限されないが、例えば、無置換又はモノ置換(メタ)アクリルアミドのみによる(メタ)アクリルアミド系ホモポリマー(例えば、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド等)の他、無置換又はモノ置換(メタ)アクリルアミドと、該無置換又はモノ置換(メタ)アクリルアミドに対して共重合が可能なモノマー成分とによる(メタ)アクリルアミド系コポリマー[例えば、アクリルアミド−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリルアミド−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等]などを用いることができる。
【0075】
なお、(メタ)アクリルアミド系ホモポリマーや(メタ)アクリルアミド系コポリマーにおいて、無置換又はモノ置換(メタ)アクリルアミドとしては、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドにおける窒素原子が無置換又はモノ置換の状態となっている(メタ)アクリルアミドであれば特に制限されず、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0076】
(メタ)アクリルアミド系ポリマーとしては、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミドを好適に用いることができる。(メタ)アクリルアミド系ポリマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
また、(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)を得るための(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーとしては、繰り返し単位として、(メタ)アクリル酸エステル単位を少なくとも有しているポリマーであれば特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステルのみによる(メタ)アクリル酸エステル系ホモポリマー(例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸プロピル、ポリアクリル酸イソプロピル、ポリアクリル酸n−ブチル等のポリアクリル酸アルキルや、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸イソプロピル、ポリメタクリル酸n−ブチル等のポリメタクリル酸アルキルなど)の他、(メタ)アクリル酸エステルと、該(メタ)アクリル酸エステルに対して共重合が可能なモノマー成分とによる(メタ)アクリル酸エステル系コポリマー[例えば、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルが用いられた(メタ)アクリル酸エステル系コポリマー等]などを用いることができる。
【0078】
なお、(メタ)アクリル酸エステル系ホモポリマーや(メタ)アクリル酸エステル系コポリマーにおいて、(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に制限されず、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。
【0079】
(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーとしては、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチルなどのポリアクリル酸の低級アルキルエステルを好適に用いることができる。(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
また、(メタ)アクリルアミド系コポリマーや(メタ)アクリル酸エステル系コポリマーにおいて、無置換又はモノ置換(メタ)アクリルアミドや(メタ)アクリル酸エステルに対して共重合が可能なモノマー成分としては、例えば、カルボキシル基含有ビニル単量体、スチレン系単量体、ビニルエステル類、ハロゲン化ビニル、ビニルエーテル類、シアノ基含有ビニル単量体、ヒドロキシル基含有ビニル単量体、エポキシ基含有ビニル単量体、アミノ基含有ビニル単量体、オレフィン類やジエン類、アルコキシ基含有ビニル単量体、複素環含有ビニル単量体、ジ置換(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。このようなモノマー成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられていてもよい。
【0081】
無置換又はモノ置換(メタ)アクリルアミドや(メタ)アクリル酸エステルに対して共重合が可能なモノマー成分において、カルボキシル基含有ビニル単量体、スチレン系単量体、ビニルエステル類、ハロゲン化ビニル、ビニルエーテル類、シアノ基含有ビニル単量体、ヒドロキシル基含有ビニル単量体、エポキシ基含有ビニル単量体、アミノ基含有ビニル単量体、オレフィン類やジエン類、アルコキシ基含有ビニル単量体、複素環含有ビニル単量体は、前記アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)の項で例示されているものから適宜選択して用いることができる。また、ジ置換(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0082】
一方、ヒドラジン(B1-b)としては、ヒドラジン水和物(ヒドラジン・一水和物など)、無水ヒドラジンのいずれであってもよい。ヒドラジン(B1-b)は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いられていてもよい。ヒドラジン(B1-b)としては、ヒドラジン水和物(特に、ヒドラジン・一水和物)を好適に用いることができる。
【0083】
なお、(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)のヒドラジド化率(モル%)は、(メタ)アクリルアミド系ポリマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー(B1-a)における無置換又はモノ置換カルバモイル基及び/又は炭化水素−オキシ−カルボニル基のモル数に対するヒドラジン(B1-b)のモル数の割合等を適宜調整することにより、コントロールすることができる。また、(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)の重量平均分子量は、(メタ)アクリルアミド系ポリマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー(B1-a)の重量平均分子量を適宜調整することにより、コントロールすることができる。
【0084】
このような(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)は、例えば、下記式(1)により表すことができる。
【化1】

(式(1)中、Zは「−NHR」(Rは水素原子又は炭化水素基である)または「−OR´」(R´は炭化水素基である)である。R1は水素原子またはメチル基である。Aは、(メタ)アクリル酸ヒドラジド、(メタ)アクリルアミドまたは(メタ)アクリル酸エステルと共重合が可能なモノマー成分による繰り返し単位である。nは1以上の整数である。mは1以上の整数である。pは0又は1以上の整数である)
【0085】
なお、前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマーは、便宜上、ブロック共重合体のように表現されているが、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体などのいずれの形態を有していてもよい。
【0086】
式(1)におけるZは、「−NHR」および「−OR´」のうち、いずれか一方であってもよく、両方であってもよい。すなわち、前記式(1)で表される(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマーは、「−CH2−CR1(CONHR)−」で表される繰り返し単位、および「−CH2−CR1(COOR´)−」で表される繰り返し単位のうち、少なくとも一方の繰り返し単位を有している。なお、RやR´としての炭化水素基としては、前記と同様である。具体的には、RやR´に係る炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基などが挙げられ、アルキル基(特に、低級のアルキル基)が好適である。Rとしては、水素原子、低級のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など)が好ましい。Rとしては特に水素原子が好適である。
【0087】
また、式(1)におけるR1は、水素原子またはメチル基であり、水素原子が好適である。
【0088】
さらにまた、式(1)におけるAは、(メタ)アクリル酸ヒドラジド、無置換又はモノ置換(メタ)アクリルアミドまたは(メタ)アクリル酸エステルと共重合が可能なモノマー成分による単位であり、該モノマー成分としては、(メタ)アクリル酸ヒドラジド、無置換又はモノ置換(メタ)アクリルアミドまたは(メタ)アクリル酸エステルと共重合が可能なものであれば特に制限されず、例えば、前述のように、カルボキシル基含有ビニル単量体、スチレン系単量体、ビニルエステル類、ハロゲン化ビニル、ビニルエーテル類、シアノ基含有ビニル単量体、ヒドロキシル基含有ビニル単量体、エポキシ基含有ビニル単量体、アミノ基含有ビニル単量体、オレフィン類やジエン類、アルコキシ基含有ビニル単量体、複素環含有ビニル単量体、ジ置換(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これらのモノマー成分の具体例も前記と同様である。従って、式(1)におけるAは、「−CH2−CR12−」(R1、R2は前記に同じ)であってもよい。
【0089】
さらに、式(1)におけるn、m、pは、各繰り返し単位の数であり、n、mは1以上の整数、pは0又は1以上の整数であるので、n、m、pは次の関係を有している。
0<n/(n+m+p)<1
0<m/(n+m+p)<1
0≦p/(n+m+p)<1
【0090】
(B)液としては、ヒドラジド基含有ポリマー(B)を含む水性溶液、またはヒドラジド基含有ポリマー(B)を含む水性分散液(水性エマルジョンなど)が好適であり、特にヒドラジド基含有ポリマー(B)を含む水性溶液を好適に用いることができる。
【0091】
(B)液として、ヒドラジド基含有ポリマー(B)を含む水性溶液又は水性分散液(水性エマルジョンなど)を用いる場合、(B)液(水性溶液又は水性分散液)におけるヒドラジド基含有ポリマー(B)の濃度(固形分濃度)としては、特に制限されないが、例えば、5質量%以上(5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%)の範囲から選択することができる。ヒドラジド基含有ポリマー(B)の濃度が、(B)液全量に対して5質量%未満であると、ヒドラジド基含有ポリマー(B)と、(A)液中のアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)との反応性が低下する。
【0092】
なお、本発明では、(B)液としてのヒドラジド基含有ポリマー(B)中には、酸、アルカリ、界面活性剤(カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤など)等の乳化剤や、樹脂エマルジョン(前記に例示の樹脂エマルジョンなど)の他、充填剤(カオリン、タルク、クレー、炭酸カルシウムなど)、可塑剤、着色剤、防腐剤、防錆剤、防かび剤、粘度調整剤、濡れ促進剤、粘性改良剤、香料等の公知の添加剤などが含まれていてもよく、また、水性の有機溶媒(例えば、メタノール、エタノールなどのアルコールやグリコールエーテル類など)が含まれていてもよい。
【0093】
(B)液としてのヒドラジド基含有ポリマー(B)、またはヒドラジド基含有ポリマー(B)を含む水性溶液又は水性分散液としては、ヒドラジド基含有ポリマー(B)の調製方法や、水性溶液又は水性分散液等の含有形態などに応じて適宜選択することができる。例えば、ヒドラジド基含有ポリマー(B)を含む水性溶液は、水性溶媒中で、(メタ)アクリルアミド系ポリマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー(B1-a)とヒドラジン(B1-b)とを反応させて得られる(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)を含む反応生成物を、精製せずに、そのまま用いてもよいが、該反応生成物から(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)を、公知の方法により析出させて分離させることにより、(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)を得て、この(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)を水に溶解又は分散させて、調製することができる。
【0094】
具体的には、(メタ)アクリルアミド系ポリマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー(B1-a)としてポリアクリルアミドを用い、ヒドラジン(B1-b)としてヒドラジン・一水和物を用いて、(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)としてアクリル酸ヒドラジド−アクリルアミド共重合体(アミノポリアクリルアミド)を含む水性溶液を調製する場合、例えば、ポリアクリルアミドと、水とを混合させて水溶液を調製した後、該水溶液に、100%のヒドラジン・一水和物を加えて、所定の温度(例えば、40〜95℃)で所定の時間(例えば1時間以上)、攪拌することにより、(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)としてのアクリル酸ヒドラジド−アクリルアミド共重合体を含む反応生成物を得た後、該反応生成物を、アクリル酸ヒドラジド−アクリルアミド共重合体の貧溶媒(メタノール等のアルコール系溶媒など)中に導入して、アクリル酸ヒドラジド−アクリルアミド共重合体を析出させて沈殿物とし、ろ過等により沈殿物を分離させることにより、アクリル酸ヒドラジド−アクリルアミド共重合体を単離し、その後、該アクリル酸ヒドラジド−アクリルアミド共重合体を水に所定の割合で溶解させることにより、所定濃度のアクリル酸ヒドラジド−アクリルアミド共重合体を含む水性溶液を調製することができる。
【0095】
このような(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)としては、例えば、(メタ)アクリルアミド系ポリマーとヒドラジン(B1-b)との反応により得られるアミノ変性ポリ(メタ)アクリルアミド系ポリマーとして、大塚化学株式会社から商品名「APA−P250」、商品名「APA−P280」、商品名「APA−M950」、商品名「APA−M980」などが市販されている。
【0096】
[2液硬化型水性接着剤]
本発明の2液硬化型水性接着剤は、前述のように、第1液[(A)液]としてアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を含む水性溶液又は水性エマルジョン(A)が用いられ、且つ第2液[(B)液]としてヒドラジド基含有ポリマー(B)が用いられた2液硬化型の水性接着剤である。このように、(B)液の有効成分として、ポリマーとしてのヒドラジド基含有ポリマー(B)を用いているので(すなわち、ヒドラジド基が高分子体の側鎖に導入されていることから)、プライマー成分としてのヒドラジド基含有ポリマー(B)が、主剤成分としての(A)液のアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)と接触した際においても、低分子量のヒドラジド化合物をプライマー成分とした際と比較すると、ゲル化反応速度が大きく低下しており、硬化速度が遅くなっている。すなわち、本発明の2液硬化型水性接着剤は、速硬化型ではない。そのため、本発明の2液硬化型水性接着剤を用いて木質材料を接着させる際には、閉鎖堆積時間を、作業上、十分な時間[例えば、30秒以上(30秒〜5分)、好ましくは45秒〜3分、さらに好ましくは50秒〜2分]で確保することができる。しかも、本発明の2液硬化型水性接着剤は、同一の高分子主鎖に、複数の架橋点を有することから、架橋密度が高くなり、短い圧締時間であっても、優れた接着性や耐水性を発揮させることができる。
【0097】
もちろん、(A)液および(B)液の反応(架橋反応)の反応機構は、化学反応により硬化する機構であるため、2液硬化型水性接着剤は、(A)液と(B)液とを接触させて架橋反応を生じさせる際には、気温や材料温度の影響をほとんど受けずに、架橋反応を進行させることができ、接着させる際には気温や材料温度の影響を受けにくい。
【0098】
特に、(A)液として、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)およびイソシアネート系化合物(A2)が含まれている水性溶液又は水性エマルジョンを用いることにより(具体的には、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を含む水性溶液又は水性エマルジョン中に、イソシアネート系化合物(A2)が配合された形態の水性溶液又は水性エマルジョンを用いることにより)、圧締時間が短くても[例えば、10分以下(好ましくは5分以下、さらに好ましくは2〜4分、特に3分程度)であっても]、高度な耐水性を要求されるJAS構造用集成材の規格に適合し、生産性を大きく向上させることができる。
【0099】
しかも、本発明の2液硬化型水性接着剤は、水性であるので、取り扱い性や作業性が優れており、さらに環境にも優しい。特に、(B)液として、毒性の低い成分を用いているので、人体に対する安全性が高い。
【0100】
本発明の2液硬化型水性接着剤により接着させることができる被着体としては、例えば、木材、合板、チップボード、パーチクルボード、ハードボードなどの木質材料;スレート板、珪カル板、モルタル、タイルなどの無機質材料;メラミン樹脂化粧板、ベークライト板、発泡スチロールなどのプラスチック材料;段ボール紙、板紙、クラフト紙などの紙質材料などが挙げられる。従って、例えば、フラッシュパネル、化粧合板、プレハブパネル、集成材などにおける木質材料の貼り合わせや、縁貼り、ホゾ、ダボ、トメ、ハギ、角木などを用いた木質材料の組み立てなどの木材工業における木質材料の接着、段ボール、合紙、紙管、紙の製袋などの紙加工などで利用することができる。
【0101】
本発明の2液硬化型水性接着剤は、(A)液と、(B)液とを組み合わせて用いた2液硬化型の水性接着剤であるので、(A)液及び(B)液の2液を混合して用いてもよいが、(A)液と(B)液とを別々に塗布して用いることが好ましい。すなわち、接着させる2つの被着材のそれぞれの所定の面(被接着面)に、(A)液と(B)液とを塗布して(いわゆる、分別塗布して)用いることが好ましい。このように、本発明の2液硬化型水性接着剤は、使用時に、(A)液と(B)液とを混合して用いるのではなく、(A)液と(B)液とを別々に塗布して用いる2液分別塗布型水性接着剤(いわゆる「ハネムーン型水性接着剤」)として好適に用いることができる。
【0102】
なお、2液硬化型水性接着剤を分別塗布の形態で用いる場合、接着させる2つの被接着面の一方の面に、(A)液及び(B)液をのうち何れか一方の液を塗布した後、その塗布面上に他方の液を塗布して(いわゆる、重ね塗り塗布して)、用いることもできる。この重ね塗り塗布では、(B)液を塗布して乾燥させた後、この(B)液の表面に(A)液を重ねて塗布する方法を好適に採用することができる。
【0103】
もちろん、2液硬化型水性接着剤を塗布した後は、両被接着面を合わせて圧着することにより、被接着面同士を接着させることができる。
【0104】
このように、本発明の2液硬化型水性接着剤は、気温や材料温度の影響を受けにくく、しかも、木質材料を接着させる際には、作業上十分な閉鎖堆積時間を確保することができるとともに、短い圧締時間であっても、優れた接着力を発揮させることができるので、該2液硬化型水性接着剤を用いると、複数枚の木質材料を重ね合わせて接着させた木質材料の積層体(例えば、フラッシュパネル、化粧合板、プレハブパネル、集成材など)を、優れた生産性で生産することが可能となる。
【0105】
[接着方法]
本発明の2液硬化型水性接着剤による被着材の接着方法では、2液硬化型水性接着剤として、前記2液硬化型水性接着剤、すなわち、第1液[(A)液]としてアセトアセチル基含有高分子化合物(A1)を含む水性溶液又は水性エマルジョン(A)が用いられ、且つ第2液[(B)液]としてヒドラジド基含有ポリマー(B)が用いられた2液硬化型の水性接着剤を用い、且つ、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)と、ヒドラジド基含有ポリマー(B)との反応性を調整することにより、閉鎖堆積時間及び圧締時間を制御して、被着材を接着させている。アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)と、ヒドラジド基含有ポリマー(B)との反応性は、ヒドラジド基含有ポリマー(B)の重量平均分子量の大きさや分子鎖の長さの他、ヒドラジド基含有ポリマー(B)における分子中に含有されているヒドラジド基の数、アセトアセチル基含有高分子化合物(A1)に対するヒドラジド基含有ポリマー(B)の割合などによりコントロールすることができる。
【0106】
なお、被着材に、2液硬化型の水性接着剤を塗布する際には、前述のように、(i)分別塗布方法により、接着させる2つの被着材のそれぞれの所定の面(被接着面)に、(A)液と(B)液とをそれぞれ別に塗布してもよく、(ii)重ね塗り塗布方法により、(A)液及び(B)液をのうち何れか一方の液を塗布した後、その塗布面上に他方の液を塗布してもよい。
【実施例】
【0107】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
【0108】
(実施例1)
2液硬化型水性接着剤の各成分として、下記(A)液と、下記(B)液とを用いた。
【0109】
・(A)液
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計付きの反応容器に、水:400部を入れ、これに、商品名「ゴーセファイマーZ200」(日本合成化学工業株式会社製、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール):100部を加えて80℃に保った。アセトアセチル変性ポリビニルアルコールが完全に溶解した後、液温を50℃まで冷却した後、商品名「DL−612」(旭化成工業株式会社製、スチレン−ブタジエン共重合体系エマルジョン):500部を加え攪拌して混合した後、室温まで冷却して、主剤(ベース)を作製した。
【0110】
前記主剤:100質量部に対して、商品名「スミジュール44V20」(住化バイエルウレタン株式会社製;4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート)を15質量部の割合で加え、十分に攪拌して、第1液[(A)液]を得た。
【0111】
・(B)液
商品名「APA−P250」(大塚化学株式会社製、アミノポリアクリルアミド、重量平均分子量:23000、ヒドラジド化率:48モル%)を、水に溶解させて、濃度が20質量%の水溶液を調製して、第2液[(B)液]を得た。
【0112】
(実施例2)
2液硬化型水性接着剤の各成分として、下記(A)液と、下記(B)液とを用いた。
【0113】
・(A)液
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計付きの反応容器に、水:400部を入れ、これに、商品名「ゴーセファイマーZ200」(日本合成化学工業株式会社製、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール):50部を加えて80℃に保った。アセトアセチル変性ポリビニルアルコールが完全に溶解した後、液温を50℃まで冷却した後、商品名「DL−612」(旭化成工業株式会社製、スチレン−ブタジエン共重合体系エマルジョン):550部を加え攪拌して混合した後、室温まで冷却して、主剤(ベース)を作製した。
【0114】
前記主剤:100質量部に対して、商品名「スミジュール44V20」(住化バイエルウレタン株式会社製;4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート)を15質量部の割合で加え、十分に攪拌して、第1液[(A)液]を得た。
【0115】
・(B)液
実施例1と同様にして得られた第2液[(B)液]を用いた。
【0116】
(実施例3)
2液硬化型水性接着剤の各成分として、下記(A)液と、下記(B)液とを用いた。
【0117】
・(A)液
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計付きの反応容器に、水:400部を入れ、これに、商品名「ゴーセファイマーZ200」(日本合成化学工業株式会社製、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール):100部を加えて80℃に保った。アセトアセチル変性ポリビニルアルコールが完全に溶解した後、液温を50℃まで冷却した後、商品名「OM28NT」(クラレ株式会社製;エチレン−酢酸ビニル共重合エマルジョン):500部を加え攪拌して混合した後、室温まで冷却して、主剤(ベース)を作製した。
【0118】
前記主剤:100質量部に対して、商品名「スミジュール44V20」(住化バイエルウレタン株式会社製;4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート)を15質量部の割合で加え、十分に攪拌して、第1液[(A)液]を得た。
【0119】
・(B)液
実施例1と同様にして得られた第2液[(B)液]を用いた。
【0120】
(実施例4)
2液硬化型水性接着剤の各成分として、下記(A)液と、下記(B)液とを用いた。
【0121】
・(A)液
実施例1と同様にして得られた第1液[(A)液]を用いた。
【0122】
・(B)液
モノマー単位として、アクリル酸ヒドラジド単位およびアクリル酸アミド単位を有しており、且つヒドラジド化率が36モル%であるアミノポリアクリルアミド(商品名「APA−P230」(大塚化学株式会社製、重量平均分子量:23000)を、水に溶解させて、濃度が20質量%の水溶液を調製して、第2液[(B)液]を得た。
【0123】
(実施例5)
2液硬化型水性接着剤の各成分として、下記(A)液と、下記(B)液とを用いた。
【0124】
・(A)液
実施例1と同様にして主剤を作製し、該主剤を第1液[(A)液]として用いた。具体的には、攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計付きの反応容器に、水:400部を入れ、これに、商品名「ゴーセファイマーZ200」(日本合成化学工業株式会社製、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール):100部を加えて80℃に保った。アセトアセチル変性ポリビニルアルコールが完全に溶解した後、液温を50℃まで冷却した後、商品名「DL−612」(旭化成工業株式会社製、スチレン−ブタジエン共重合体系エマルジョン):500部を加え攪拌して混合した後、室温まで冷却して、第1液[(A)液]を得た。
【0125】
従って、実施例5に係る(A)液中には、硬化剤(架橋剤)が含まれていない。
【0126】
・(B)液
実施例1と同様にして得られた第2液[(B)液]を用いた。
【0127】
(比較例1)
2液硬化型水性接着剤の各成分として、下記(A)液と、下記(B)液とを用いた。
【0128】
・(A)液
攪拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計付きの反応容器に、水:400部を入れ、これに、商品名「クラレポバール217」(株式会社クラレ製、ポリビニルアルコール):100部を加えて80℃に保った。ポリビニルアルコールが完全に溶解した後、液温を50℃まで冷却した後、商品名「DL−612」(旭化成工業株式会社製、スチレン−ブタジエン共重合体系エマルジョン):500部を加え攪拌して混合した後、室温まで冷却して、主剤(ベース)を作製した。
【0129】
前記主剤:100質量部に対して、商品名「スミジュール44V20」(住化バイエルウレタン株式会社製;4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート)を15質量部の割合で加え、十分に攪拌して、第1液[(A)液]を得た。
【0130】
・(B)液
実施例1と同様にして得られた第2液[(B)液]を用いた。
【0131】
(比較例2)
硬化型水性接着剤の成分として、下記(A)液を用いた。すなわち、比較例2に係る硬化型水性接着剤では、プライマーとして利用される第2液[(B)液]が用いられておらず、第1液[(A)液]のみが用いられている。
【0132】
・(A)液
実施例1と同様にして得られた第1液[(A)液]を用いた。
【0133】
(比較例3)
2液硬化型水性接着剤の各成分として、下記(A)液と、下記(B)液とを用いた。
【0134】
・(A)液
実施例1と同様にして得られた第1液[(A)液]を用いた。
【0135】
・(B)液
アジピン酸ジヒドラジド(商品名「アジピン酸ジヒドラジド」大塚化学株式会社製)を、水に溶解させて、濃度が8質量%の水溶液を調製して、第2液[(B)液]を得た。
【0136】
(比較例4)
硬化型水性接着剤の成分として、下記(A)液を用いた。すなわち、比較例4に係る硬化型水性接着剤では、プライマーとして利用される第2液[(B)液]が用いられておらず、第1液[(A)液]のみが用いられている。
【0137】
・(A)液
実施例5と同様にして得られた第1液[(A)液]を用いた。
【0138】
従って、比較例4に係る(A)液中には、硬化剤(架橋剤)が含まれていない。
【0139】
(評価)
実施例1〜4および比較例1〜3に係る各2液硬化型水性接着剤(比較例2の場合は、1液硬化型水性接着剤)について、下記の試験サンプル作製方法(1)により試験サンプルを作製した後、下記の常態接着強さの測定方法、煮沸繰り返し接着強さの測定方法、煮沸はく離試験方法、減圧加圧試験方法により、常態接着強さ、煮沸繰り返し接着強さを測定するとともに、日本農林規格協会(JAS協会)が規格している構造用集成材についての規格に適合しているか否かを評価した。評価結果は表1に示した。
【0140】
また、実施例1および比較例3に係る各2液硬化型水性接着剤について、下記の試験サンプル作製方法(2)により試験サンプルを作製した後、下記の常態接着強さの測定方法、煮沸繰り返し接着強さの測定方法、煮沸はく離試験方法、減圧加圧試験方法により、常態接着強さ、煮沸繰り返し接着強さを測定するとともに、日本農林規格協会(JAS協会)が規格している構造用集成材についての規格に適合しているか否かを評価した。評価結果は表2に示した。
【0141】
さらに、実施例1、実施例5および比較例4に係る各2液硬化型水性接着剤(比較例4の場合は、1液硬化型水性接着剤)について、下記の初期接着強さの測定方法により、初期接着強さを測定した。測定結果は表3に示した。
【0142】
(試験サンプル作製方法(1))
ホワイトウッド(長さ:300mm、幅:100mm、厚み30mm;3ply)の両面を、プレイナーにて平滑に仕上げて、両面が平滑に仕上げられた2個のホワイトウッドを得た後、一方のホワイトウッドの片面に、23℃、50%RHの雰囲気下で、プライマーとして第2液[(B)液]を塗布量:20g/m2で塗布し{なお、比較例3に係る第2液[(B)液]の塗布量は40g/m2とする}、室温(20〜25℃)にて乾燥させた。その後、他方のホワイトウッドの片面に、23℃、50%RHの雰囲気下で、第1液[(A)液]を塗布量:200g/m2で塗布し、閉鎖堆積時間が1分となる条件で、2個のホワイトウッドを、第2液[(B)液]の塗布面と、第1液[(A)液]の塗布面とが接触する形態で貼り合わせ、貼り合わせプレス機にて、圧締圧力:10kg/cm2、圧締時間:3分間の条件で、圧締し、解圧させた後、室温(20〜25℃)にて6日間養生させて、試験サンプルを各3個作製した。
なお、比較例2に係る硬化型水性接着剤は、プライマーとしての第2液[(B)液]が用いられていないので、第2液[(B)液]を塗布しなかったこと以外は、前記と同様にして、試験サンプルを各3個作製した。
【0143】
(試験サンプル作製方法(2))
ホワイトウッド(長さ:300mm、幅:100mm、厚み30mm;3ply)の両面を、プレイナーにて平滑に仕上げて、両面が平滑に仕上げられた2個のホワイトウッドを得た後、一方のホワイトウッドの片面に、23℃、50%RHの雰囲気下で、プライマーとして第2液[(B)液]を塗布量:20g/m2で塗布し{なお、比較例3に係る第2液[(B)液]の塗布量は40g/m2とする}、室温(20〜25℃)にて乾燥させた。その後、他方のホワイトウッドの片面に、23℃、50%RHの雰囲気下で、第1液[(A)液]を塗布量:200g/m2で塗布し、閉鎖堆積時間が0分となる条件で(すなわち、第1液[(A)液]を塗布した後、直ちに)、2個のホワイトウッドを、第2液[(B)液]の塗布面と、第1液[(A)液]の塗布面とが接触する形態で貼り合わせ、貼り合わせプレス機にて、圧締圧力:10kg/cm2、圧締時間:3分間の条件で、圧締し、解圧させた後、室温(20〜25℃)にて6日間養生させて、試験サンプルを各3個作製した。
【0144】
(常態接着強さの測定方法)
試験サンプル作製方法(1)または試験サンプル作製方法(2)で得られた試験サンプルについて、JIS K 6806(2003)に準拠して、常態接着強さを測定した。また、被着材における破壊の状態を調べ、破壊した面積のせん断面積に対する割合を材破率(%)として求めた。具体的には、試験サンプル作製方法(1)または試験サンプル作製方法(2)で試験サンプルを得た後、試験サンプルを長さ:30mm、幅:25mmのサイズに切断して試験片を作製し、室温(20〜25℃)にて6日間養生した後、23℃、50%RHの雰囲気下で、試験サンプルの圧縮せん断接着強さ(N/mm2)を測定した。
【0145】
(煮沸繰り返し接着強さの測定方法)
試験サンプル作製方法(1)または試験サンプル作製方法(2)で得られた試験サンプルについて、JIS K 6806(2003)に準拠して、煮沸繰り返し接着強さを測定した。また、被着材における破壊の状態を調べ、破壊した面積のせん断面積に対する割合を材破率(%)として求めた。具体的には、試験サンプル作製方法(1)または試験サンプル作製方法(2)で試験サンプルを得た後、試験サンプルを長さ:30mm、幅:25mmのサイズに切断して試験片を作製し、室温(20〜25℃)にて6日間養生した後、該試験片を沸騰水中に4時間浸せきした後、60±3℃の空気中で20時間乾燥し、更に沸騰水中に4時間浸せきしてから、室温の水中に冷めるまで浸し、濡れたままの状態で、23℃、50%RHの雰囲気下で、試験サンプルの圧縮せん断接着強さ(N/mm2)を測定した。
【0146】
(煮沸はく離試験方法)
試験サンプル作製方法(1)または試験サンプル作製方法(2)で得られた試験サンプルについて、日本農林規格協会(JAS協会)が規格している構造用集成材についての煮沸はく離試験を行って、日本農林規格協会(JAS協会)が規格している構造用集成材についての規格に適合しているか否かを評価した。具体的には、試験サンプルを長さ75mmに切断して試験片を作製した後、該試験片を煮沸水中に4時間浸せきし、更に室温(10〜25℃)の水中に1時間浸せきした後、水中から取りだした試験片を70±3℃の恒温乾燥器中に入れ、器中に湿気がこもらないようにして24時間以上乾燥し、乾燥後の含水率が試験前の含水率以下となるようにする。
その後、試験片の両木口面におけるはく離の長さを測定し、両木口面におけるはく離率及び同一接着層におけるはく離の長さの合計を算出する。
【0147】
なお、はく離率は、次の計算式「はく離率(%)=(LA/LB)×100(LAは両木口面のはく離の長さの合計であり、LBは両木口面の接着層の長さの合計である)」によって算出する。また、はく離の長さの測定に当たっては、干割れ、節等による木材の破壊は、はく離とみなさない。
【0148】
そして、日本農林規格協会(JAS協会)により規格された構造用集成材について、JAS協会により規格された煮沸はく離試験に関する規格に適合している場合を「○」とし、適合していない場合を「×」として評価した。
【0149】
なお、日本農林規格(JAS)によると、構造用集成材の規格としては、前述のような煮沸はく離試験の結果、試験片の両木口面におけるはく離率が5%以下であり、かつ、同一接着層におけるはく離の長さの合計がそれぞれの長さの4分の1以下であることとなっている。
【0150】
(減圧加圧試験方法)
試験サンプル作製方法(1)または試験サンプル作製方法(2)で得られた試験サンプルについて、日本農林規格協会(JAS協会)が規格している構造用集成材についての減圧加圧試験を行って、日本農林規格協会(JAS協会)が規格している構造用集成材についての規格に適合しているか否かを評価した。具体的には、試験サンプルを長さ75mmに切断して試験片を作製した後、該試験片を室温(10〜25℃)の水中に浸せきし、0.085MPaの減圧を5分間行い、更に0.51±0.03MPaの加圧を1時間行う。この処理を2回繰り返した後、試験片を水中からとり出し、70±3℃の恒温乾燥器中に入れ、器中に湿気がこもらないようにして24時間以上乾燥し、乾燥後の含水率が試験前の含水率以下となるようにする。
その後、試験片の両木口面におけるはく離の長さを測定し、両木口面におけるはく離率及び同一接着層におけるはく離の長さの合計を算出する。
【0151】
なお、はく離率は、次の計算式「はく離率(%)=(LA/LB)×100(LAは両木口面のはく離の長さの合計であり、LBは両木口面の接着層の長さの合計である)」によって算出する。また、はく離の長さの測定に当たっては、干割れ、節等による木材の破壊は、はく離とみなさない。
【0152】
そして、日本農林規格協会(JAS協会)により規格された構造用集成材について、JAS協会により規格された減圧加圧試験に関する規格に適合している場合を「○」とし、適合していない場合を「×」として評価した。
【0153】
なお、日本農林規格(JAS)によると、構造用集成材の規格としては、前述のような減圧加圧試験の結果、試験片の両木口面におけるはく離率が5%以下であり、かつ、同一接着層におけるはく離の長さの合計がそれぞれの長さの4分の1以下であることとなっている。
【0154】
(初期接着強さの測定方法)
厚さ10mmのパーチクルボード(小名浜合板社製)を8cm×8cmの大きさに切り出して、パーチクルボード片を作製した。また、厚さ3mmのMDF(ネルソンパイン・インダストリーズ・リミテッド社製)を8cm×9cmに切り出して、MDF片を作製した。そして、前記のパーチクルボード片の片面に、前記のMDF片を、パーチクルボード片におけるいずれかの一辺でMDF片が約1cmはみ出す形態で、あらかじめ接着して(いわゆる「捨て貼り」を行って)、片面にMDF片が接着されたパーチクルボード片を作製した。
【0155】
(B)液をMDF片(8cm×9cm、厚さ3mm)の表面に塗布し乾燥させた。その後、(A)液を、片面にMDF片が接着されたパーチクルボード片におけるパーチクルボード側の表面に塗布し、該塗布面に、(B)液を塗布し乾燥させたMDF片のB液の塗布面を、同じ一辺でMDFが約1cmはみ出す形態で、重ね合わせて、圧締圧力5kgf/cm2にて3分間圧締した。圧締後、開圧(解圧)し、直ちにMDF片を引きはがし、その際の接着強さ(N/80mm幅)を測定し、初期接着強さとした。
【0156】
なお、比較例4に係る硬化型水性接着剤は、プライマーとしての第2液[(B)液]が用いられていないので、第2液[(B)液]を塗布しなかったこと以外は、前記と同様にして、接着強さ(N/80mm幅)を測定し、初期接着強さを求めた。
【0157】
【表1】

【0158】
【表2】

【0159】
【表3】

【0160】
表1および表2より、実施例1〜4に係る2液硬化型水性接着剤は、JISにより規定されている常態接着強さ及び煮沸繰り返し接着強さが、ともに良好である。さらに、実施例1〜4に係る2液硬化型水性接着剤を用いると、JASにより規格された試験である煮沸はく離試験や減圧加圧試験についても、JASにより規格された構造用集成材に関する厳しい規格に適合した構造用集成材を製造することが可能となっている。
【0161】
従って、実施例に係る2液硬化型水性接着剤は、木質材料を接着させる際の閉鎖堆積時間として、作業上十分な時間(1分程度)を確保することができるとともに、短い圧締時間(3分程度)であっても、優れた接着力を発揮させることができる。すなわち、実施例に係る2液硬化型水性接着剤を用いると、JASにより規格された構造用集成材に関する厳しい規格にも、適合した構造用集成材を製造することができ、優れた生産性で構造用集成材を製造することが可能である。
【0162】
なお、JASにより規格された構造用集成材に関する規格は、試験片の長さが75mmであり、JISによる常態接着強さ及び煮沸繰り返し接着強さを測定する際のサイズより大きく、厳しい規格となっている。
【0163】
また、表3より、(A)液が硬化剤(架橋剤)を含有していると、優れた初期接着強さを発揮させることができることが確認された。もちろん、(A)液は硬化剤を含有していなくても、初期接着強さは優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)液及び(B)液からなる2液硬化型水性接着剤。
(A)分子内にアセトアセチル基を有する高分子化合物(A1)を含む水性溶液又は水性エマルジョン
(B)分子内の側鎖に、無置換又はモノ置換カルバモイル基及び/又は炭化水素−オキシ−カルボニル基を有するとともに、分子内の側鎖にヒドラジド基を有するヒドラジド基含有ポリマー
【請求項2】
ヒドラジド基含有ポリマー(B)が、エチレン性不飽和結合を有するモノマー成分の重合により形成された骨格又は主鎖を有している請求項1記載の2液硬化型水性接着剤。
【請求項3】
ヒドラジド基含有ポリマー(B)が、(メタ)アクリルアミド系ポリマー及び/又は(メタ)アクリル酸エステル系ポリマー(B1-a)と、ヒドラジン(B1-b)との反応生成物である(メタ)アクリル酸ヒドラジド系ポリマー(B1)である請求項1又は2記載の2液硬化型水性接着剤。
【請求項4】
分子内にアセトアセチル基を有する高分子化合物(A1)が、分子内にアセトアセチル基を有する変性ポリビニルアルコールである請求項1〜3の何れかの項に記載の2液硬化型水性接着剤。
【請求項5】
高分子化合物(A1)を含む水性溶液又は水性エマルジョン(A)中に、さらに、イソシアネート系化合物(A2)が含まれている請求項1〜4の何れかの項に記載の2液硬化型水性接着剤。
【請求項6】
2液分別塗布型水性接着剤である請求項1〜5の何れかの項に記載の2液硬化型水性接着剤。
【請求項7】
2液硬化型水性接着剤を用いて、被着材を接着させる方法であって、2液硬化型水性接着剤として、請求項1〜6の何れかの項に記載の2液硬化型水性接着剤を用い、且つ、一方の被着材の表面に水性溶液又は水性エマルジョン(A)を塗布し、他方の被着材の表面にヒドラジド基含有ポリマー(B)を塗布することにより、2つの被着材を接着させることを特徴とする2液硬化型水性接着剤による被着材の接着方法。

【公開番号】特開2006−316133(P2006−316133A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138428(P2005−138428)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000105648)コニシ株式会社 (217)
【出願人】(302060306)大塚化学株式会社 (88)
【Fターム(参考)】